説明

リバウンド抑制剤

【課題】ダイエット後のリバウンドを抑制する作用を有する、摂取しやすい形態の組成物を提供すること。
【解決手段】1)インスリン分泌抑制物質、2)β受容体刺激物質、3)アドレナリン分泌促進物質、4)細胞内cAMP分解抑制物質、5)遊離脂肪酸のミトコンドリア内への取り込み促進物質、6)β酸化活性化物質、及び7)TCA回路活性化物質から選択される少なくとも一種を含む組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摂取により脂肪燃焼を促進する、ダイエット後のリバウンドの抑制に有用な組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食生活やライフスタイルの変化に伴い増加している肥満、過体重は、各種生活習慣病の原因となっているだけではなく、社会・経済的にも多大な負担をもたらすことはよく知られている。このような社会背景から、肥満の解消および適正体重の維持は極めて重要である。
【0003】
肥満改善については様々なダイエット法が提唱されており、なかでもカロリー制限によるダイエットは効果が高い。しかしながら、カロリー制限などによるダイエットを止めると、一旦減少した体重が元の体重以上となるまで増加してしまう現象がしばしば起こることが知られている。このようにダイエットにより肥満がかえって増悪してしまう現象は、リバウンドとして知られており、肥満自体と同様に近年問題になっている。
【0004】
このような状況のもと、様々なダイエット法が報告されているにもかかわらず、それら報告においてはダイエット効果の持続やリバウンド抑制に関しての記載・示唆がほとんどされていないのが現状である。例えば、特許文献1には、後発酵茶抽出成分を含有するリバウンド予防用飲料が記載されているが、そのような飲食品の報告例は非常に少ない。
【0005】
リバウンドが起きてしまう原因は、減量によって体が擬似的に飢餓状態に陥った状態になるためであることが知られている。即ち、減量により体脂肪が減少すると、脂肪細胞からのレプチンの分泌量も減少する。血中のレプチン濃度が通常より低い状態を体内センサーが感知した結果、体脂肪を適正量へ戻すよう体の生理機能が調整されて、食欲増進、消費カロリー抑制、摂取カロリーの増加、基礎代謝の減少等をもたらす。その結果、体脂肪の増加が促される。
【0006】
また、非特許文献1には、β受容体を刺激することが知られているシトラス、アドレナリン分泌促進物質として知られているカプサイシン、細胞内cAMP分解抑制物質として知られているカフェイン、及びβ酸化活性化物質として知られているセサミンを含有する健康食品が記載されている。
【特許文献1】特開2005−278478号公報
【非特許文献1】「サントリー健康情報誌 自然のちから」、自然のちから編集部、平成15年1月10日、p.57
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
肥満の解消と同様に適正体重の維持は極めて重要である。それにもかかわらず、肥満解消については様々な方法が提唱されている一方でダイエット効果の持続やリバウンド抑制に関して記載又は示唆する文献はほとんどない。
【0008】
従って、本発明の目的は、ダイエット後のリバウンドを抑制する作用を有する、摂取しやすい形態の飲食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、脂肪燃焼のメカニズムをサポートする物質、即ち、脂肪細胞からの脂肪動員を促進することのできるβ受容体刺激物質、アドレナリン分泌促進物質および細胞内cAMP分解抑制物質;遊離脂肪酸の代謝を促進することのできる遊離脂肪酸のミトコンドリア内への取込み促進物質、β酸化活性化物質およびTCA回路活性化物質;および中性脂肪の脂肪細胞への取り込みを刺激するインスリンの分泌を抑制する作用を有する物質を組み合わせることにより、ダイエット後のリバウンドを抑制する効果が得られることを見出した。
【0010】
即ち、本発明は、
(1)下記の1)〜7)の物質からなる群から選択される少なくとも一種を含む、ダイエット後のリバウンドを抑制するための組成物;
1)インスリン分泌抑制物質
2)β受容体刺激物質
3)アドレナリン分泌促進物質
4)細胞内cAMP分解抑制物質
5)遊離脂肪酸のミトコンドリア内への取り込み促進物質
6)β酸化活性化物質
7)TCA回路活性化物質
(2)少なくとも、5)の物質と6)の物質とを含む、(1)記載の組成物;
(3)1)ないし7)の物質を含む、(1)または(2)に記載の組成物;
(4)1)の物質がバナバ葉エキスであり、
2)の物質が荷葉エキスであり、
3)の物質がカプサイシンであり、
4)の物質がカフェインまたはその塩であり、
5)の物質がL−カルニチンもしくはアシルL−カルニチンまたはその塩であり、
6)の物質がセサミン類であり、
7)の物質がビタミンB1またはその塩であることを特徴とする、(1)〜(3)のいずれか1項に記載の組成物;
(5)経口用組成物である、(1)〜(4)のいずれか1項に記載の組成物;
(6)錠剤の形態である、請求項(1)〜(5)のいずれか1項に記載の組成物;
(7)飲食品である、(1)〜(6)のいずれか1項に記載の組成物;
(8)ダイエットが、低カロリー食の摂取によるダイエットであることを特徴とする、(1)〜(7)のいずれか1項に記載の組成物;
(9)低カロリー食が、機能成分として、L−カルニチンもしくはアシルL−カルニチンまたはその塩、キシロオリゴ糖、食物繊維、ビタミンおよびミネラルからなる群から選択される少なくとも一種を含有する低カロリー食であることを特徴とする、(8)に記載の組成物;および
(10)ダイエットのための低カロリー食と、そのダイエットによるリバウンドを抑制するための(1)〜(7)のいずれか1項に記載の組成物とを含む、リバウンドを伴わないかまたは殆ど伴わないダイエットのためのキット;
である。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、体脂肪燃焼メカニズムを包括的にサポートして体脂肪燃焼を促進させることができ、ダイエット後のリバウンドを抑制することのできる飲食品を提供することを可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の組成物は、下記の1)〜7)の機能成分のうちの1または複数を含むことを特徴とする。
【0013】
1)インスリン分泌抑制物質
本明細書における「インスリン分泌抑制物質」との用語は、膵臓からのインスリンの分泌を抑制する作用を有する物質のことをいう。そのような物質はよく知られており、例えば、バナバ葉エキス、ギムネマ、桑葉などが挙げられるが、これらに限定されない。中でも、バナバ葉エキス、特にバナバ葉エキス末を用いるのが好ましい。
【0014】
本発明でいうバナバ葉エキスは、ミソハギ科オオバナサルスベリ(バナバ(Lagerstroemia speciosa Pers.)の葉を含水エタノールで抽出して精製したものである。バナバは、血中の糖をコントロールし、これによりインスリンの放出を減少させることのみならず、ホルモン感受性リパーゼの活性を上昇させて脂肪分解を高め、脂肪燃焼の場を整えることが知られている(池田義雄 薬理と治療 Vol.27 No.5:829-835 (1999))。
【0015】
2)β受容体刺激物質
本明細書における「β受容体刺激物質」との用語は、主に脂肪細胞に存在するアドレナリンβ受容体を刺激する作用を有する物質のことをいい、アドレナリンβ受容体アゴニスト、βアゴニストもこの定義に含まれる。その例には、荷葉エキス、シトラス、パロアッスルなどが挙げられるが、これらに限定されない。なかでも、本発明においては荷葉エキス、特に荷葉エキス末が好ましい。
【0016】
本発明に用いられる荷葉エキスは、ハス属のハス(Nelumbo nucifera Gaertn.)やキバナハス(N.lutea Pers.)等の葉から製造することができる。それは、具体的には、ハスの葉を水もしくはメタノール、エタノール、プロパノール、アセトン等の親水性有機溶媒、又はこれらの混合溶媒で抽出することにより抽出液として得ることができる。また、それは、当該抽出液を濃縮した濃縮液或いは乾燥した粉末の形態で用いてもよい。抽出原料に関しては、生薬として流通している、蓮芯、蓮子芯、荷梗等を購入して使用することもできる。
【0017】
荷葉エキス末は脂肪細胞のアドレナリンβ受容体に作用して脂肪動員に働くのと同時に、骨格筋中のUCP−3による体熱産生も促進することが知られている。(Y.Fukaya et al. New Food Industry. Vol.45 No.5:41-48 (2003))
3)アドレナリン分泌促進物質
本明細書における「アドレナリン分泌促進物質」との用語は、交感神経からのアドレナリンの分泌を促進する作用を有する物質のことをいい、その例には、カプサイシン、カプシエイト、リンゴポリフェノールなどが挙げられる。中でも、本発明においてはカプサイシンが好ましい。
【0018】
カプサイシンはトウガラシの辛み成分として知られ、中枢神経、副腎のアドレナリンを介してアドレナリンβ受容体に作用し脂肪動員、体熱産生に寄与するとの報告がされている(非特許文献:C. J. K. Henry and B. Emery Human Nutrition; Clinical Nutrition 40C 165-168 (1985))。
【0019】
本発明に用いられるカプサイシンは、合成品であっても、トウガラシ等の植物から抽出、精製されたものであってもよい。あるいは、トウガラシ等の植物からの粗製抽出物をそのまま用いてもよい。
【0020】
4)細胞内cAMP分解抑制物質
本明細書における「細胞内cAMP分解抑制物質」とは、細胞内伝達物質であるcAMPの細胞内における分解を抑制する作用を有する物質のことをいい、その例には、カフェインや黄杞茶などが挙げられるが、これらに限定されない。中でも、本発明においてはカフェインが好ましい。本発明において用いられるカフェインは、遊離体であっても、食品学的若しくは薬学的に許容可能な塩、たとえば塩酸塩の形態であってもよい。(また、本明細書において用いられる「カフェイン」には、カフェインの溶媒和物、たとえば水和物も含まれるものとする。)カフェインはコーヒーやお茶などに広く含まれているため、本発明においてはこれら飲料を細胞内cAMP分解抑制物質として用いてもよい。しかしながら、それら飲料の抽出物のようにある程度カフェインが濃縮されたものを用いることが好ましい。カフェイン抽出物は一般に市販されている。例えば「茶の素」(商品名、白鳥製薬(株)製)等がその例である。
【0021】
カフェインはcAMPの分解を抑制することによりホルモン感受性リパーゼの働きを高め、脂肪動員に作用するとの報告がある(Kogure A et al. Clin Exp. Pharmacol. Physiol, 29:391-394 (2002))。
【0022】
5)遊離脂肪酸のミトコンドリア内への取り込み促進物質
本明細書における「遊離脂肪酸のミトコンドリア内への取り込み促進物質」との用語は、L−カルニチンのように、ミトコンドリア内への遊離脂肪酸の輸送を促進する物質のことをいう。
【0023】
L−カルニチンは、体内において必須アミノ酸のリジン及びメチオニンから生合成される他、牛肉、豚肉、羊肉等から、日常的に摂取されている物質である。また、医薬品においては、塩化物であるL−塩化カルニチンの使用が認められており、安全性の高い成分とされている。L−カルニチンは、化学合成及び光学分割されたものや微生物などを用いて発酵し精製・抽出したもの;カルニチンが豊富に含まれる牛肉や羊肉などからアルコール、水や熱水などで抽出したエキス;当該抽出エキスをデキストリンなどを用いてスプレードライで粉末化したもの、またはそれに準ずる製法により得られるもの等、多種の経路に得られたものが存在するが、本発明組成物においてはいずれも使用可能である。また、本発明において用いられるL−カルニチンは、遊離体であっても、その食品学的若しくは薬学的に許容可能な塩の形態であっても、アセチルL−カルニチンのようなアシルL−カルニチンおよびその食品学的若しくは薬学的に許容可能な塩でもよい。そのようなL−カルニチンもしくはアシルL−カルニチンの塩には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛等の金属との塩、アンモニウム塩、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩等があるが、これらに限定されるものではない。また、これらは単独であるいは組み合わせて使用することもできる。
【0024】
6)β酸化活性化物質
本明細書における「β酸化活性化物質」との用語は、ミトコンドリアにおける脂肪酸のβ酸化反応を活性化させる作用を有する物質のことをいい、その例には、セサミン類や緑茶カテキン、共役リノール酸などが挙げられる。中でも、本発明においてはセサミン類が好ましい。
【0025】
本発明におけるセサミン類の定義には、セサミンおよびその類縁体が含まれる。セサミンおよびその類縁体は、例えば特開平4−9331号公報に記載されたジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタン誘導体である。具体的には、セサミン、セサミノール、エピセサミン、エピセサミノール、セサモリン、2−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−6−(3−メトキシー4−ヒドロキシフェニル)−3,7−ジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタン、2,6−ビス(3―メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)−3,7−ジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタン、および2−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−6−(3−メトキシー4−ヒドロキシフェノキシ)−3,7−ジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタンが例示される。なかでも、本発明においてはセサミン及びエピセサミンが好ましい。さらに、セサミン類の定義には、セサミンおよびその類縁体の配糖体、セサミンおよびその類縁体の代謝物も含まれる。本発明に用いるセサミンおよびその類縁体は、例えば特開平4−9331号公報に記載された方法によって得られ、これらは抽出物のまま、または必要に応じて精製品として使用することができる。
【0026】
7)TCA回路活性化物質
本明細書における「TCA回路活性化物質」との用語は、トリカルボン酸(TCA)回路を活性化する作用を有する物質のことをいう。その例には、ビタミンB1やクエン酸等が含まれる。中でも、本発明においてはビタミンB1が好ましい。
【0027】
ビタミンB1は、TCA回路や糖質のエネルギー変換を促進することからエネルギー代謝を活性化し、より効果的に脂肪燃焼を促進する。本発明においては、ビタミンB1またはその塩酸塩のような食品学的若しくは薬学的に許容可能な塩を用いることができる。
【0028】
ダイエット後のリバウンド抑制作用
上記1)〜7)の物質のいずれか1種、好ましくは5)および6)の物質、特に好ましくは1)〜7)の物質を含有する本発明の組成物は、ダイエット後のリバウンドを抑制する作用を有する。ダイエット後のリバウンドとは、ダイエットにより減少した体重がダイエット前の体重に戻るか、またはダイエット前の体重よりも増加する現象をいう。リバウンド抑制作用を得るために、本発明組成物は、好ましくはダイエット終了後に摂取されるが、その摂取はダイエット終了前に開始してもよい。
【0029】
飲食品及び医薬組成物
本発明に係る組成物は、リバウンド抑制作用を有する飲食品や医薬組成物等として用いることができるが、気軽に日常的に摂取できる飲食品として用いることが好ましい。この場合には、ダイエット後に用いることを考慮すると、熱量の高い食品の形態とすることは避けるべきである。従って、飲食品として用いる場合には、低カロリー食品の形態とすることが好ましい。本発明組成物は、リバウンド抑制作用を有する健康食品として実施することが特に好ましい。ここでいう健康食品には、リバウンド抑制作用を有する旨の表示を容器や説明書に付した飲食品(例えば、特定保健用食品や条件付き特定保健用食品のような機能性食品)も含まれる。なお、食品としての使用の態様には、本発明の組成物を食品添加剤として用いる場合も含まれるものとする。
【0030】
投与形態
本発明組成物は、経口用組成物であることが好ましく、その形態は特に限定されない。例えば、錠剤、顆粒剤、液剤、カプセル剤、丸剤、粉末剤、キャンデー、ドロップ、トローチ、ガム、粉末ジュース、ドリンク剤、調味料、加工食品等の形態で提供することが可能である。本発明の組成物がダイエット後のリバウンド防止の目的で使用されることを考慮すると、継続的な服用遵守が特に重要となる。したがって、飲みやすさの観点から錠剤が好ましい。錠剤の形状は特に限定されず、円形平面錠、円形曲面錠あるいは異型錠などいずれであってもよい。また、錠剤の大きさも特に限定されないが、服用のし易さ並びに取り扱いの容易さを考慮すると、円形錠の場合には、その直径は5〜14mm程度が好ましい。錠剤の重量は、各種機能性成分の含有量ならびに錠剤の形状にもよるが、服用のし易さおよび取り扱いの容易さを考慮すると、例えば、錠剤重量として、50〜500mg程度が好ましい。
【0031】
本発明の組成物を経口用製剤として調製する場合、必要に応じて、各種添加剤を適宜選択して配合することができる。そのような添加剤としては、例えば、錠剤として製造する場合には、(1)乳糖、デンプン、部分アルファー化デンプン、結晶セルロース、D−マンニトール、ブドウ糖、炭酸カルシウムおよびリン酸カルシウムなどの賦形剤、(2)デンプン、クロスカルメロースナトリウムのような崩壊剤、(3)ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースなどの結合剤、(4)ステアリン酸マグネシウム、ショ糖脂肪酸エステル、タルク、含水二酸化ケイ素のような滑沢剤があげられる。また、さらに必要により、安定化剤、矯味剤、着色剤などを配合することができる。これらの添加剤の種類および配合割合は、本発明組成物が求められている特性を考慮して、適宜選択し、設定することができる。
【0032】
各種投与形態の組成物の製造方法は特に限定されず、例えば、錠剤を製造する場合には、湿式顆粒圧縮法または直打法などを適宜選択することができる。打錠条件は任意に設定すればよく、例えば、ロータリー打錠機等を用いて圧縮成形し、500kgf〜3000kgfの範囲の打錠圧で打錠すればよい。また、機能性成分由来の苦味などがある場合には、必要により、適宜コーティング皮膜を施してもよい。
【0033】
本発明の組成物を用いる場合における各成分の量に制限はないが、一日摂取量としての以下の量の各成分を、単回または複数回で摂取できるように組成物に配合することが好ましい。
【0034】
1)バナバ葉エキス等のインスリン分泌抑制物質:50−200mg
2)荷葉エキス等のβ受容体刺激物質:50−500mg
3)カプサイシン等のアドレナリン分泌促進物質:0.002mg−25mg
4)カフェインまたはその塩等の細胞内cAMP分解抑制物質:50−500mg
5)L−カルニチンまたはその塩等の遊離脂肪酸のミトコンドリア内への取り込み促進物質:100−3000mg(フリー体換算)
6)セサミン類等のβ酸化活性化物質:1−100mg(好ましくは5−60mg)
7)ビタミンB1またはその塩等のTCA回路活性化物質:0.3−250mg(好ましくは0.3−25mg)
本発明組成物とダイエットとの組合せ
本発明のリバウンド抑制組成物をダイエットと組み合わせて用いることにより、リバウンドを伴わないかまたは殆ど伴わないダイエットが可能となる。そのリバウンドが抑制されるダイエット方法は特に限定されないが、たとえば、通常食に代えて低カロリー食を摂取する、いわゆる低カロリーダイエットなどが挙げられる。従って、一つの側面において、本発明は、ダイエットのための低カロリー食と、そのダイエットによるリバウンドを抑制するためのリバウンド抑制組成物とを含む、リバウンドを伴わないかまたは殆ど伴わないダイエットのためのキットに関する。
【0035】
低カロリー食
低カロリー食としては、たとえば、コンニャク、寒天、きのこ類、海藻類のように多くのものが知られているが、典型的なものは、低カロリーでありながらタンパク質、ビタミン、ミネラルを十分に含むように規格化されたフォーミュラ食である。フォーミュラ食は、脂肪以外の筋肉などの組織を維持しつつ減量できるように設計されている。低カロリー食のカロリーは1食あたり、200kcal以下が好ましく、更に好ましくは、170〜200kcal程度である。
【0036】
また低カロリー食には、低カロリーである性質を保持したまま、必要により機能成分を添加してもよい。たとえば、脂肪燃焼促進作用の期待できるL−カルニチンもしくはアシルL−カルニチン、整腸作用の知られているキシロオリゴ糖、体調の維持に必要なタンパク質、各種ビタミンやミネラルなどを、任意に選択して、またはそれらの全てを添加することができる。これら機能成分の添加量は適宜設定できるが、たとえば、L−カルニチンに関しては、脂肪燃焼促進作用を示す量を添加し、キシロオリゴ糖であれば整腸作用の期待できる量(例えば、一日あたり約0.7g)を添加し、各種タンパク質、ビタミン、及びミネラルに関しては、一日必要量の33%相当量を添加すればよい。
【0037】
L−カルニチンに関しては、本発明のリバウンド抑制組成物に関して上記したL−カルニチンまたはその塩を用いればよい。
【0038】
本明細書におけるキシロオリゴ糖との用語は、キシランまたはヘミセルロースの分解などにより得られる、いくつかの分子のキシロースがβ-1,4結合で結合したオリゴ糖である。それには、例えば、キシロビオース(重合度2)、キシロトリオース(重合度3)が含まれるが、これらに限定されない。キシランの分解によって得られるキシロオリゴ糖の重合度は1〜10の範囲にあるが、本発明で用いるキシロオリゴ糖は、キシロビオース(重合度2)を主成分(好ましくは69%以上含む)とするものが望ましい。キシランの給源は、広く天然界に求められるが、特にキシラン含有の高いコーンコブ・綿実粕や、産業副産物として大量に得られる麦芽粕・稲ワラ等が適している。キシランの分解は、酵素処理や爆砕処理などの物理的処理またはそれらを組み合わせた処理により行うことができる。そのようなキシランの分解によるキシロオリゴ糖の製造は、特開昭63−112979号のような文献を参照して容易に行うことができる。
【0039】
また、機能成分以外にも、各種賦形剤や香料などの添加剤を低カロリー食に配合することができる。そのような賦形剤や添加剤は、目的に応じて公知のものを適宜選択して用いればよい。
【0040】
本発明において用いられる低カロリー食の形態は特に限定されないが、顆粒剤、錠剤、液剤、カプセル剤、丸剤、粉末剤、ドリンク剤等が挙げられる。飲みやすさを考慮すると、顆粒剤の形態で提供することが好ましい。
【0041】
低カロリー食品のひとつであるフォーミュラ食は、水に懸濁して飲用することが多い。懸濁用に用いる水の量は通常約300g程度である。従って、懸濁液の調製や飲用の容易さを考慮すると、フォーミュラ食の1食あたりの量は50g程度であることが好ましい。好ましくは、この量のフォーミュラ食がアルミパウチで個別包装される。
【実施例】
【0042】
以下に、本発明について実施例を挙げて詳細に説明する。但し、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0043】
試験例1
低カロリー食品として、以下のとおりフォーミュラ食を調製した。
【0044】
脂肪燃焼促進剤であるL−カルニチン(ロンザジャパン株式会社)、整腸作用の知られているキシロオリゴ糖(サントリー株式会社)、タンパク質、ビタミン類、およびミネラルに、その他の賦形剤や香料などを適量加えて、常法に従って混合・造粒することによって、表1に示す処方を有する低カロリー食品の試験サンプルA(フォーミュラ食)を製造した。その1食分である50gの熱量は179kcalであった。
【0045】
【表1】

【0046】
試験例2
試験例1で製造した試験サンプルAを用いて以下の試験を行った。
【0047】
被験者として、男性3名および女性6名を選んだ。被験者の年齢は26〜53歳であった。被験者の体重の平均は59.2±10.1kgであり、体脂肪率の平均は26.6±4.8%であり、BMIの平均は22.5±1.9kg/mであった。
【0048】
試験はオープン試験で行った。試験サンプルAを1日1回摂取することを原則とし、試験中に計56食を摂取させた。試験サンプルAは、350mLの水に溶解させてから被験者に摂取させた。体重、体脂肪率は、バイオスペース社製ボディーコンポジションアナライザーInBody720を用いて測定した。また、安全性を確認するため、採血、採尿も同時に行った。
【0049】
表2に体重、体脂肪率、BMIの変化を示した。試験サンプルAを56食摂取することにより、平均体重が2.8±1.7kg減少した。また、体脂肪率およびBMIの有意な減少も認められた。即ち、被験者は低カロリー食による減量に成功した。
【0050】
【表2】

【0051】
実施例1
機能成分としてのL−カルニチン(ロンザジャパン株式会社)、セサミン類(竹本油脂株式会社)、荷葉エキス末(松浦薬業株式会社)、カプサイシン(日本新薬株式会社)、カフェイン(白鳥製薬株式会社)、バナバ葉エキス末(株式会社常盤植物化学研究所)、ビタミンB1(田辺製薬株式会社)を、賦型剤のショ糖脂肪酸エステル、セルロース、酸化ケイ素、澱粉、乳糖と混合し、打錠機にて打錠して、表3に示す処方を有する錠剤(試験サンプルB)を製造した。当該錠剤の直径は8mmであり、錠剤あたりの重さは250mgであった。
【0052】
【表3】

【0053】
実施例2
実施例1で製造した試験サンプルB(錠菓)を用いて以下の試験を行った。
【0054】
試験例2において試験サンプルAの摂取により減量した被験者を本試験の対象者とした。対象者には、試験期間を通じて通常食を1日3回摂取させた。一般に、低カロリー食から通常食に戻すと、リバウンドが起こることが多いとされている。対象者には、さらに試験サンプルBを1日6粒、最初の4週間継続摂取させた。但し、検査を行う摂取開始前と摂取開始4週間後にはサンプルを摂取させなかった。朝食前および夕食前に各々試験サンプルBを3粒ずつ、水またはぬるま湯を用いてかまずに摂取させた。
【0055】
検査は、摂取開始前、摂取開始4週間後、および2週間のwash out期間終了後に行った。体重、体脂肪率、および臍部周囲径を測定した。体重および体脂肪率はバイオスペース社製ボディーコンポジションアナライザーInBody720を用いて測定した。臍部周囲径は立位にて測定した。また、安全性を確認するため、採血および採尿も同時に行った。
【0056】
図1に体重、図2に体脂肪率、図3に臍部周囲径の推移を示した。試験サンプルBを摂取した期間(0〜4週間)おいては、ダイエット後のリバウンドによる体重増加は認められなかった。むしろ、体重および体脂肪率が低下する傾向が示された(図1および2)。また、臍部周囲径の全体の平均値も有意(P<0.01)に減少した(図3)。
【0057】
一方、試験サンプルBの4週間継続摂取終了後から2週間のwash out期間中は、体重、臍部周囲径及び体脂肪率について、増加傾向を示した(図1〜3)。
【0058】
また、血液検査および尿検査により、本試験に用いた試験サンプルBの安全性が確認された。
【0059】
以上より、本発明組成物により、フォーミュラ食を用いて体重を減少させた者におけるリバウンドを、生体に悪影響をもたらすことなく抑えることができることを確認した。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】図1は、本発明組成物を摂取した被験者の体重の推移を示すグラフである。
【図2】図2は、本発明組成物を摂取した被験者の体脂肪率の推移を示すグラフである。
【図3】図3は、本発明組成物を摂取した被験者の臍部周囲径の推移を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の1)〜7)の物質からなる群から選択される少なくとも一種を含む、ダイエット後のリバウンドを抑制するための組成物。
1)インスリン分泌抑制物質
2)β受容体刺激物質
3)アドレナリン分泌促進物質
4)細胞内cAMP分解抑制物質
5)遊離脂肪酸のミトコンドリア内への取り込み促進物質
6)β酸化活性化物質
7)TCA回路活性化物質
【請求項2】
少なくとも、5)の物質と6)の物質とを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
1)ないし7)の物質を含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
1)の物質がバナバ葉エキスであり、
2)の物質が荷葉エキスであり、
3)の物質がカプサイシンであり、
4)の物質がカフェインまたはその塩であり、
5)の物質がL−カルニチンもしくはアシルL−カルニチンまたはその塩であり、
6)の物質がセサミン類であり、
7)の物質がビタミンB1またはその塩であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
経口用組成物である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
錠剤の形態である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
飲食品である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
ダイエットが、低カロリー食の摂取によるダイエットであることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
低カロリー食が、機能成分としてL−カルニチンもしくはアシルL−カルニチンまたはその塩、キシロオリゴ糖、食物繊維、ビタミンおよびミネラルからなる群から選択される少なくとも一種を含有する低カロリー食であることを特徴とする、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
ダイエットのための低カロリー食と、そのダイエットによるリバウンドを抑制するための請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物とを含む、リバウンドを伴わないかまたは殆ど伴わないダイエットのためのキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−246437(P2007−246437A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−71817(P2006−71817)
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【出願人】(000001904)サントリー株式会社 (319)
【Fターム(参考)】