説明

リフレクター用樹脂組成物、リフレクター用樹脂フレーム、リフレクター、及び半導体発光装置

【課題】リフレクターとする際の成形性及び生産性が高く、リフレクターとした場合に優れた耐熱性を発揮し得るリフレクター用樹脂組成物、当該樹脂組成物を用いたリフレクター用樹脂フレーム、リフレクター、半導体発光装置、及び当該樹脂組成物を用いた成形方法を提供する。
【解決手段】ポリメチルペンテン樹脂と、白色顔料と、球状溶融シリカ粒子及び/又は異形断面ガラス繊維と、を含むリフレクター用樹脂組成物、及び当該樹脂組成物を用いたリフレクター用樹脂フレーム、リフレクター、半導体発光装置、及び当該樹脂組成物を用いた成形方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リフレクター用樹脂組成物、リフレクター用樹脂フレーム、リフレクター、及び半導体発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体発光装置の一つであるLED素子は、小型で長寿命であり、省電力性に優れることから、表示灯等の光源として広く利用されている。そして近年では、より輝度の高いLED素子が比較的安価に製造されるようになったことから、蛍光ランプ及び白熱電球に替わる光源としての利用が検討されている。このような光源に適用する場合、大きな照度を得るために、表面実装型LEDパッケージ、即ち、アルミニウム等の金属製の基板(LED実装用基板)上に複数のLED素子を配置し、各LED素子の周りに光を所定方向に反射させるリフレクター(反射体)を配設する方式が多用されている。
【0003】
しかし、LED素子は発光時に発熱を伴うため、このような方式のLED照明装置では、LED素子の発光時の温度上昇によりリフレクターが劣化してその反射率が低下することで輝度が低下し、LED素子の短寿命化等を招くこととなる。従って、リフレクターには耐熱性が要求されることとなる。
【0004】
上記耐熱性の要求に応えるべく、特許文献1では、発光ダイオードのリフレクターに用いるポリマー組成物を提案し、具体的には、ポリフタルアミド、カーボンブラック、二酸化チタン、ガラス繊維、及び酸化防止剤を含むポリマー組成物を開示している。そして、当該組成物について熱老化後の反射率を測定し、カーボンブラックを含有しないポリマー組成物に比べて、当該組成物では良好な反射率が得られ、黄変も少ないことを示している。
また、特許文献2では、光半導体素子と蛍光体等の波長変換手段とを組み合わせた光半導体装置に用いる熱硬化性光反射用樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2006−503160号公報
【特許文献2】特開2009−149845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献2に記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物の熱老化試験は150℃で500時間というより実用的な条件で検証しているが、成形時間が90秒と熱可塑性樹脂に比べ長く、またポストキュアとして150℃で2時間が必要なため、生産性に問題があった。
【0007】
特許文献1に記載のポリマー組成物の熱老化試験は170℃で3時間という短時間での評価であり、より長時間の実用的な条件での耐熱耐久性で良好な結果が得られるかどうかは不明である。
【0008】
また、特許文献1に記載のポリマー組成物には、ガラス繊維が補強剤として使用されているが、ガラス繊維は異方性の粒子のため、一般的な射出成形等の成形時には、金型内での樹脂の流れ方向(MD:Machine Derection)とその垂直方向(TD:Transverse Derection) で補強の効果が異なる現象が発生し、成形物の反りなど不良品が発生しやすい。また、補強の効果を上げるために、ガラス繊維を増量すると流動性を阻害するという新たな問題が発生し、成形性は著しく低下する。今後の素子の小型化を考慮すれば、成形性の向上も今後の重要な要求項目となる。
【0009】
上記従来技術に鑑みて、単にガラス繊維でない補強剤を代替材料として使用した場合であっても必ずしもリフレクター用として実用的な樹脂組成物が得られるわけではなかった。
また、本発明者の研究によれば、ガラス繊維に換えてポーラスなシリカ粒子を配合した場合、リフレクター等を製造する工程において水の蒸発による発泡が生じてしまい、成形品に微細孔が形成され、欠陥品を発生させてしまう場合があることが見出された。
【0010】
以上から、本発明は、リフレクターとする際の成形性及び生産性が高く、リフレクターとした場合に優れた耐熱性を発揮し得るリフレクター用樹脂組成物、当該樹脂組成物を用いたリフレクター用樹脂フレーム、リフレクター、半導体発光装置、及び当該樹脂組成物を用いた成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、下記の発明により当該目的を達成できることを見出した。すなわち、本発明は下記の通りである。
【0012】
[1] ポリメチルペンテン樹脂と、白色顔料と、球状溶融シリカ粒子及び/又は異形断面ガラス繊維と、を含むリフレクター用樹脂組成物。
[2] [1]に記載のリフレクター用樹脂組成物の硬化物からなるリフレクター用樹脂フレーム。
[3] 厚さが0.1〜0.5mmである[2]に記載のリフレクター用樹脂フレーム。
[4] [1]に記載のリフレクター用樹脂組成物の硬化物からなるリフレクター。
【0013】
[5] 光半導体素子と、前記光半導体素子の周りに設けられ、該光半導体素子からの光を所定方向に反射させるリフレクターとを基板上に有し、前記リフレクターの光反射面が上記[1]に記載のリフレクター組成物の硬化物からなる半導体発光装置。
[6] [1]に記載のリフレクター用樹脂組成物を射出温度200〜400℃、金型温度20〜100℃で射出成形する成形方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、リフレクターとする際の成形性及び生産性が高く、リフレクターとした場合に優れた耐熱性を発揮し得るリフレクター用樹脂組成物、当該樹脂組成物を用いたリフレクター用樹脂フレーム、リフレクター、半導体発光装置、及び当該樹脂組成物を用いた成形方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の半導体発光装置の一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の半導体発光装置の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[1.リフレクター用樹脂組成物]
本発明のリフレクター用樹脂組成物は、ポリメチルペンテン樹脂と、白色顔料と、球状溶融シリカ粒子及び/又は異形断面ガラス繊維と、を含んでなる。
【0017】
ポリメチルペンテン樹脂を用いることで、耐熱性、特にリフレクターとした際に経時的な反射率の低下を抑えることができる。また、樹脂の屈折率が1.46とシリカ粒子の屈折率に非常に近いため、混合した際でも透過率や反射率などの光学特性の阻害を抑えることが可能である。
ポリメチルペンテン樹脂としては4−メチルペンテン−1の単独重合体が好ましいが、4−メチルペンテン−1と他のα−オレフィン、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン等の炭素数2ないし20のα−オレフィンとの共重合体で通常4−メチル−1−ペンテンを90モル%以上含む4−メチルペンテン−1を主体とした共重合体でもよい。
4−メチルペンテン−1の単独重合体の分子量はゲルパーミッションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量Mwが1,000以上、特に5,000以上が好ましい。
【0018】
本発明に係る球状溶融シリカ粒子及び異形断面ガラス繊維は、通常熱可塑樹脂組成物及びエポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂のような熱硬化樹脂組成物に配合されるものを単独もしくは混合して、使用することができる。
【0019】
ここで、「球状溶融シリカ粒子」の「球状」とは、ガラス繊維のような繊維状、凹凸差の大きな形状、厚みの薄い薄片状といった形状でなく、中心からの表面までの最大距離と最小距離とが同程度である形状をいい、具体的には、下記平均球形度が0.8以上の略球形もしく球形をいう。略球形もしく球形といった形状であることで、異方性が無く、高充填することができ、かつ金型への流動性、耐金型摩耗性等にも優れる。
【0020】
上記平均球形度は、日本電子社製走査型電子顕微鏡「FE−SEM、モデルJSM−6301F」にて撮影した粒子像を画像解析して測定することができる。すなわち、粒子の投影面積(A)と周囲長(PM)を写真から測定する。周囲長(PM)に対応する真円の面積を(B)とすると、その粒子の真円度はA/Bとして表示できる。そこで、試料粒子の周囲長(PM)と同一の周囲長を持つ真円を想定すると、PM=2πr、B=πr2であるから、B=π×(PM/2π)2となり、個々の粒子の球形度は、球形度=A/B=A×4π/(PM)2として算出することができる。このようにして得られた任意の粒子200個の球形度を求めその平均値を粉末の平均球形度とする。なお、通常の市販品で「球状(球形)」である旨が表示されているものは、平均球形度が0.8以上になっている。
【0021】
球状溶融シリカ粒子は、例えば炉内の溶融ゾーンに形成させた火炎中に、二酸化ケイ素粉末原料(例えば珪石粉末)を粉末状態で空気等のキャリアガスに同伴させ、バーナーから噴射する工程を経て製造される。一般的には、市販品を使用することができる。
【0022】
球状溶融シリカ粒子の体積平均粒径は耐熱性と成形性のバランスの観点から0.1〜500μmであることが好ましく、1〜200μmであることがより好ましく、5〜150μmであることがさらに好ましい。当該体積平均粒径は、レーザー光回折法による粒度分布測定における質量平均値D50として求めることができる。
【0023】
また、「異形断面ガラス繊維」とは、断面の短径と長径が異なる断面形状を有する繊維をいう。樹脂流れ方向(MD)とその垂直方向(TD)にほぼ等しく補強することができるため成形物の反り防止に優れる。
異形断面ガラス繊維とは、断面の短径D1が0.5〜25μm、長径D2が0.6〜300μm、D1に対するD2の比D2/D1が1.2〜30である断面形状を有する平均繊維長0.75〜300μmのガラス繊維であることが好ましい。当該繊維径および繊維長は、ガラス繊維積層体の任意な点からランダムに所定量のガラス繊維を抜き取り、抜き取った繊維を乳鉢等で粉砕し、画像処理装置により計測することで求めることができる。
【0024】
球状溶融シリカ粒子及び/又は異形断面ガラス繊維の含有量は、ポリメチルペンテン樹脂100質量部に対し、10〜300質量部であることが好ましく、30〜200質量部であることがより好ましく、50〜120質量部であることがさらに好ましい。
【0025】
本発明に係る白色顔料としては、酸化チタン、硫化亜鉛、酸化亜鉛、硫化バリウム、チタン酸カリウム等を単独もしくは混合して使用することが可能で、なかでも酸化チタンが好ましい。白色顔料の含有量は、ポリメチルペンテン樹脂100質量部に対し、5〜200質量部であることが好ましく、10〜150質量部であることがより好ましく、20〜80質量部であることがさらに好ましい。
【0026】
白色顔料の平均粒径は成形性を考慮し高い反射率を得る観点から一次粒度分布において0.10〜0.50μmであることが好ましく、0.10〜0.40μmであることがより好ましく、0.21〜0.25μmであることがさらに好ましい。平均粒径は、レーザー光回折法による粒度分布測定における質量平均値D50として求めることができる。
【0027】
本発明のリフレクター用樹脂組成物は、既述のポリメチルペンテン樹脂と、球状溶融シリカ粒子及び/又は異形断面ガラス繊維と、白色顔料とを既述のような所定比で混合して作製することができる。混合方法としては、2本ロールあるいは3本ロール、ホモジナイザー、プラネタリーミキサー等の撹拌機、ポリラボシステムやラボプラストミル等の溶融混練機等の公知の手段を適用することができる。これらは常温、冷却状態、加熱状態、常圧、減圧状態、加圧状態のいずれで行ってもよい。
【0028】
なお、本発明の効果を損なわない限り、種々の添加剤を含有させることができる。例えば、樹脂組成物の性質を改善する目的で種々のウィスカー、シリコーンパウダー、熱可塑性エラストマー、有機合成ゴム、脂肪酸エステル、グリセリン酸エステル、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の内部離型剤や、ベンゾフェノン系、サリチル酸系、シアノアクリレート系、イソシアヌレート系、シュウ酸アニリド系、ベンゾエート系、ヒンダートアミン系、ベンゾトリアゾール系、フェノール系の酸化防止剤や、ヒンダードアミン系、ベンゾエート系の光安定剤といった添加剤を配合することができる。
【0029】
本発明のリフレクター用樹脂組成物を用いることで、種々の成形体を成形することができ、より厚みの薄い成形体(例えば、リフレクター)を作製することができる。このような成形体は、本発明の成形方法により、すなわち、本発明のリフレクター用樹脂組成物を用い、射出温度を200〜400℃、金型温度を20〜100℃として作製することが好ましい。
【0030】
以上のような本発明のリフレクター用樹脂組成物は、基材上に塗布し硬化させた複合材料やリフレクター用樹脂組成物の硬化物として種々の用途に適用することができる。例えば、太陽電池の光反射シートやLEDを始めとした照明やテレビ用の光源のリフレクターとして適用することができる。
【0031】
[2.リフレクター用樹脂フレーム]
本発明のリフレクター用樹脂フレームは既述の本発明のリフレクター用樹脂組成物を成形した硬化物からなる。具体的には、本発明のリフレクター用樹脂をペレットとし、射出成形により所望の形状の樹脂フレームとすることで、本発明のリフレクター用樹脂フレームが製造される。リフレクター用樹脂フレームの厚さは0.1〜0.5mmであることが好ましい。
【0032】
既述のように、本発明のリフレクター用樹脂組成物は金型への流動性が良好なため、例えば形状が異方性であるガラス繊維を用いて作製した樹脂フレームに比べてより厚みの小さい樹脂フレームを作製することができる。具体的には0.1〜0.5mmの厚みの樹脂フレームを作製することができる。また、このようにして成形してなる本発明のリフレクター用樹脂フレームは、厚みを小さくしても、ガラス繊維等の異方性のフィラーを含むことに起因する反りの発生がないため、形態安定性や取り扱い性にも優れる。
【0033】
本発明のリフレクター用樹脂フレームは、これにLEDチップを載せてさらに公知に封止剤により封止を行い、ダイボンディングを行なって所望の形状にすることで、半導体発光装置とすることができる。なお、本発明のリフレクター用樹脂フレームは、リフレクターとして作用するが、半導体発光装置を支える枠としても機能している。
【0034】
なお、本発明のリフレクター用樹脂フレームは、当該フレームを製造する工程において水による発泡が抑えられるため、不良を生じるほどの微細孔が形成されることがない。従って、当該フレームを用いた製品(例えば、半導体発光素子)において、微細孔に起因した不良が生じ難くなるため、当該製品としての耐久性を向上させることができる。
【0035】
[3.リフレクター]
本発明のリフレクターは、既述の本発明のリフレクター用樹脂組成物を硬化した硬化物からなる。
当該リフレクターは、後述する半導体発光装置と組み合わせて用いてよいし、他の材料からなる半導体発光装置(LED実装用基板)と組み合わせて用いてもよい。
本発明のリフレクターは、主として、半導体発光装置のLED素子からの光をレンズ(出光部)の方へ反射させる作用を有する。リフレクターの詳細については、本発明の半導体発光装置に適用されるリフレクター(後述するリフレクター12)と同じであるためここでは省略する。
【0036】
なお、本発明のリフレクターは、当該リフレクターを製造する工程において水による発泡が抑えられるため、不良を生じるほどの微細孔が形成されることがない。従って、当該リフレクターを用いた製品(例えば、半導体発光素子)において、微細孔に起因した不良が生じ難くなるため、当該製品としての耐久性を向上させることができる。
上記のように、本発明のリフレクター用樹脂組成物を用いてリフレクターを形成した半導体発光素子は、当該リフレクターに不良を生じるほどの微細孔が形成されることがないため、微細孔に起因した不良が生じ難くなる。そのため、当該製品としての耐久性が向上することになる。
【0037】
[4.半導体発光装置]
本発明の半導体発光装置は、図1に例示するように、光半導体素子(例えばLED素子)10と、この光半導体素子10の周りに設けられ、光半導体素子10からの光を所定方向に反射させるリフレクター12とを基板14上に有してなる。そして、リフレクター12の光反射面の少なくとも一部(図1の場合は全部)が既述の本発明のリフレクター組成物の硬化物で構成されてなる。
【0038】
光半導体素子10は、放射光(一般に、白色光LEDにおいてはUV又は青色光)を放出する、例えば、AlGaAs、AlGaInP、GaP又はGaNからなる活性層を、n型及びp型のクラッド層により挟んだダブルヘテロ構造を有する半導体チップ(発光体)であり、例えば、一辺の長さが0.5mm程度の六面体の形状をしている。そして、ワイヤーボンディング実装の形態の場合には、リード線16を介して不図示の電極(接続端子)に接続されている。
【0039】
リフレクター12の形状は、レンズ18の端部(接合部)の形状に準じており、通常、角形、円形、楕円形等の筒状又は輪状である。図1の概略断面図においては、リフレクター12は、筒状体(輪状体)であり、リフレクター12のすべての端面が基板14の表面に接触、固定されている。
なお、リフレクター12の内面は、光半導体素子10からの光の指向性を高めるために、テーパー状に上方に広げられていてもよい(図1参照)。
また、リフレクター12は、レンズ18側の端部を、当該レンズ18の形状に応じた形に加工された場合には、レンズホルダーとしても機能させることができる。
【0040】
リフレクター12は、図2に示すように、光反射面側だけを本発明のリフレクター用樹脂組成物からなる光反射層12aとしてもよい。この場合、光反射層12aの厚さは、熱抵抗を低くする等の観点から、500μm以下とすることが好ましく、300μm以下とすることがより好ましい。光反射層12aが形成される部材12bは、公知の耐熱性樹脂で構成することができる。
【0041】
既述のようにリフレクター12上にはレンズ18が設けられているが、これは通常樹脂製であり、目的、用途等により様々な構造が採用され、着色されることもある。
【0042】
基板14とリフレクター12とレンズ18とで形成される空間部は、透明封止部であってよいし、必要により空隙部であってもよい。この空間部は、通常、透光性及び絶縁性を与える材料等が充填された透明封止部であり、ワイヤーボンディング実装において、リード線16に直接接触することにより加わる力、及び、間接的に加わる振動、衝撃等により、光半導体素子10との接続部、及び/又は、電極との接続部からリード線16が外れたり、切断したり、短絡したりすることによって生じる電気的な不具合を防止することができる。また、同時に、湿気、塵埃等から光半導体素子10を保護し、長期間に渡って信頼性を維持することができる。
【0043】
この透光性及び絶縁性を与える材料(透明封止剤組成物)としては、通常、シリコーン樹脂、エポキシシリコーン樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。これらのうち、耐熱性、耐候性、低収縮性及び耐変色性の観点から、シリコーン樹脂が好ましい。
【0044】
以下に、図1に示す半導体発光装置の製造方法の一例について説明する。
まず、上記本発明の反射材樹脂組成物を、所定形状のキャビティ空間を備える金型を用いたトランスファー成形、圧縮成形、射出成形等により、所定形状のリフレクター12を成形する。その後、別途、準備した光半導体素子10、電極及びリード線16を、接着剤又は接合部材により基板14に固定し、さらにリフレクター12に基板14上に固定する。次いで、基板14及びリフレクター12により形成された凹部に、シリコーン樹脂等を含む透明封止剤組成物を注入し、加熱、乾燥等により硬化させて透明封止部とする。その後、透明封止部上にレンズ18を配設して、図1に示す半導体発光装置が得られる。
なお、透明封止剤組成物が未硬化の状態でレンズ18を載置してから、組成物を硬化させてもよい。
【実施例】
【0045】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、本実施例1,2及び比較例1〜3において使用した材料は下記の通りである。
【0046】
(1)樹脂
ポリメチルペンテン樹脂 :TPX RT18(三井化学(株)製、分子量:MW50万〜60万)
シクロポリオレフィン樹脂:ZEONOR 1600(日本ゼオン(株)製)
(2)無機粒子
球状溶融シリカ :F−HS20(キンセイマテック(株)製、平均粒径22μm)
異形断面ガラス繊維:CSG3PA−820(日東紡(株)製、繊維長3mm)
球状多孔性シリカ :SYLYSIA780(富士シリカ化学(株)製、平均粒径12μm)
ガラス繊維 :CSX3J−451(日東紡(株)製、繊維長3mm)
(3)白色顔料
酸化チタン粒子 :PF−691(石原産業(株)製 ルチル型構造 平均粒径0.21μm)
【0047】
(4)添加剤
シランカップリング剤:KBM−303(信越化学(株)製)
離型剤 :SZ−2000(堺化学(株)製)
酸化防止剤 :IRGANOX1010(チバ・ジャパン(株)製)
光安定剤 :IRGAFOS168(チバ・ジャパン(株)製)
【0048】
[実施例1〜2、比較例1〜3]
表1に示す配合において、各種材料を配合、混練し、リフレクター用樹脂組成物を得た。なお、混練はロールで行った。
【0049】
これらの組成物につき、250〜280℃、10秒、50MPaの条件で、750mm×750mm×厚さ0.6mmにプレス成形し、成形体を作製した。
この成形体について下記諸特性を評価した。結果を下記表1に示す。
【0050】
(評価1)
・加工性
混練性および安定なペレット作製可否にて評価した。表中の「○」は安定したペレット化が可能であることを示し、「△」は多少不安定であるが作製可能であることを示し、「×」は非常に困難であることを示す。
【0051】
(評価2)
・耐熱性(外観の黄変性)
成形体を150℃で24時間、500時間放置する前と放置した後で、その放置前後での表面の色の変化を目視で観察した。放置前の白色を保っていれば良好な耐熱性を有することになる。表中の「○」は白色を保っていることを示し、「△」は多少黄色身を帯びているが白色を保っていることを示し、「×」は黄変していることを示す。
【0052】
(評価3)
・耐熱性:光反射率
成形体を150℃で24時間、500時間放置する前と放置した後で、波長230〜780nmにおける光反射率を分光光度計UV−2550(島津製作所製)を使用して測定した。表1には、波長450nmの結果を示す。
【0053】
(評価4)
・成形性:反り
シリンダー温度270〜300℃、射出圧力115MPa、射出保圧時間4.5s、冷却時間5.0s、金型温度80℃にて、射出成形によりリフレクター付きLEDフレームを作製し、反りを測定した。反りはフラットな定盤の上に置いた際の、定盤との隙間の最大値より得た。結果を下記表1に示す。
【0054】
(評価5)
・成形性:微細孔有無
上記方法にて得られた成形体断面を切断し、各成形体に微細孔が存在するかを外観評価より確認した。結果を下記表1に示す。表中の「○」は微細孔が見られないことを示し、「×」は微細孔が見られることを示す。
【0055】
[比較例4]
実施例1において、ポリメチルペンテン樹脂の換わりに市販されているポリフタルアミド樹脂(テレフタル酸単位と1,9−ノナンジアミン単位:2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位のモル比が85:15からなり、融点が306℃の樹脂)を使用し、直径50mm×厚さ3mmの硬化物を成形し、これを上記実施例と同様に、成形直後、耐熱試験後(150℃で24時間、500時間)の光反射率を測定したところ、それぞれ94%(耐熱試験前)、83%(24時間後)、62%(500時間後)であった。尚、成形時間は10秒で、反りは6.3mmであった。
【0056】
[比較例5]
実施例1において、ポリメチルペンテン樹脂の換わりに市販されているエポキシ樹脂(トリグリシジルイソシアヌレートとヘキサヒドロ無水フタル酸とをエポキシ樹脂へ当量となるよう溶解混合した混合物に、硬化触媒テトラ−n−ブチルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジオチオエートが含有された樹脂)を使用し、150℃で時間90秒硬化、さらに150℃2時間のポストキュアより直径50mm×厚さ3mmの硬化物に成形し、これを上記実施例と同様に、成形直後、耐熱試験後(150℃で24時間、500時間)の光反射率を測定したところ、それぞれ95%(耐熱試験前)、90%(24時間後)、78%(500時間後)であった。反りは1mm以下であった。
【0057】
【表1】

【0058】
表1より、本発明の樹脂組成物は生産性、耐熱性、成形性に優れていることが確認できた。耐熱性は市販の熱可塑性樹脂組成物よりも優れ、市販の熱硬化性樹脂組成物同等レベルであり、成形時間は市販の熱可塑性樹脂組成物同等レベルであり、市販の熱硬化性樹脂組成物よりも早いことから、生産性にも優れていることが確認された。
以上から、本発明のリフレクター用樹脂組成物は、リフレクターや半導体発光装置用の反射材に有用であるといえる。
【符号の説明】
【0059】
10・・・光半導体素子
12・・・リフレクター
14・・・基板
16・・・リード線
18・・・レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリメチルペンテン樹脂と、白色顔料と、球状溶融シリカ粒子及び/又は異形断面ガラス繊維と、を含むリフレクター用樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のリフレクター用樹脂組成物の硬化物からなるリフレクター用樹脂フレーム。
【請求項3】
厚さが0.1〜0.5mmである請求項2に記載のリフレクター用樹脂フレーム。
【請求項4】
請求項1に記載のリフレクター用樹脂組成物の硬化物からなるリフレクター。
【請求項5】
光半導体素子と、前記光半導体素子の周りに設けられ、該光半導体素子からの光を所定方向に反射させるリフレクターとを基板上に有し、
前記リフレクターの光反射面が請求項1に記載のリフレクター組成物の硬化物からなる半導体発光装置。
【請求項6】
請求項1に記載のリフレクター用樹脂組成物を射出温度200〜400℃、金型温度20〜100℃で射出成形する成形方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−180432(P2012−180432A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43309(P2011−43309)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】