説明

リフロー炉

【課題】気化したフラックスが予備加熱ゾーンと本加熱ゾーンと冷却ゾーンに配置されたファンを回転させるためのモータ回転軸に付着して固化することを防止するため、気化したフラックスが固化する前の流動性を有する液化の状態で効率的、かつ、確実に回収する。
【解決手段】フラックス回収装置10Aを構成するドレン部20は、モータベース16のファンとの対向側であって、かつ、回転軸14の周辺部に形成されている。ドレン部20のファンとの対向面は、モータベース16の平面位置からモータベース16の背面側に設けられた排出口46に向かって傾斜した傾斜面20aとなっている。ファンの回転駆動によりモータベース16の中心部に集まってくるフラックスは、モータベース16の中心部に形成されたドレン部20に流入されて傾斜面20aに沿って流動され、ドレン部20から排出口46、ドレン管およびパイプ管48を経由して回収用容器34に収容される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リフロー処理により発生した気化したフラックスの一部が予備加熱ゾーンと本加熱ゾーンと冷却ゾーンに配置されているファンを回転させるためのモータ回転軸に付着して固化することを防止するためのフラックス回収装置を備えたリフロー炉に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント基板と電子部品とのはんだ付けを行う場合には、一般にリフロー炉が利用される。リフロー炉は、基板を搬送する搬送コンベアと、搬送コンベアによって基板が供給されるトンネル状のリフロー本体(マッフル)とを備えている。リフロー本体内部には、搬入口から搬出口に至る搬送経路に沿って、予備加熱ゾーンと本加熱ゾーンと冷却ゾーンが設けられている。予備加熱ゾーンおよび本加熱ゾーンのそれぞれには、一組の熱風吹き出しヒータおよびファンが設置されている。熱風吹き出しヒータおよびファンは、搬送コンベアの上方および下方のそれぞれに設置されており、搬送コンベアによって搬送される基板に対して上下方向から熱風を吹き付けることにより、はんだペーストに含まれるはんだを溶融させて基板の電極に電子部品等を固着させる。また、冷却ゾーンには、予備加熱ゾーンと本加熱ゾーンで加熱されたプリント基板を冷却する冷却風を吹き出すファンと、このファンを回転させるためのモータが設置されている。
【0003】
ここで、はんだペーストには、粉末はんだ、溶剤、フラックスが含まれている。このうちフラックスは、成分としてロジンなどを含んでおり、はんだ付けされる金属表面の酸化膜を除去すると共にはんだ付けの際に加熱で再酸化するのを防止し、はんだの表面張力を小さくして濡れ性を良くする効果を有する。
【0004】
一方で、フラックスは、ヒータによる加熱により、気化してリフロー本体内に充満する。リフロー本体内に充満した気化したフラックスは、一般的にはマッフル外に設けられたフラックス成分を除去する除去装置を介して清浄化された後、循環路を経由してマッフル内に再び戻される。しかしながら、予備加熱ゾーンと本加熱ゾーンと冷却ゾーンに配置されているファンの回転に伴い、ファンの背面側に回り込む流れが生じるため、この流れにより気化したフラックスの一部がファンの背面側に回り込む。ファンの背面側に回り込んだ気化したフラックスは、ここで冷やされ流動性のある液体のフラックスとなる。気化したフラックスが液体のフラックスとなった後に、モータの回転が停止して内部温度が低下すると、液化したフラックスの粘度が増加して流動性が低下し、ベース部にフラックスが固まって堆積する。このとき、フラックスがファン回転軸で固化すると、ファンの回転を妨げてしまうという問題が発生する。
【0005】
このようなフラックスの堆積等を防止するために、リフロー炉のケーシングの底部にファンの軸心から外周に向かって傾斜する傾斜部と、フラックスを液化することを可能にする温度のガスを導入するためのガス導入口とを備えたリフロー炉が提案されている(特許文献1参照)。このリフロー炉のケーシングの底面部の周縁の2箇所にはフラックス回収口が設けられており、底面部のフラックスを傾斜面に沿って流動させてフラックス回収口に流入させることにより、フラックス成分の堆積を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−272793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に開示されるリフロー炉では以下のような問題がある。すなわち、ファンの背面側に回り込んで液化したフラックスは、ファンの回転時に発生するファン中心部に向かう風により、傾斜面の傾斜方向に反して流動し、ファンの回転軸(中心部)に集まってしまう傾向があった。このとき、回転軸のシール部にフラックスが浸入すると、ファンの停止に伴う温度の低下によってフラックスが固着してしまい、次のファンの運転時には、フラックスの固着によりモータ軸が固まってモータ過負荷でモータが正常に回転しないという問題があった。この場合には、リフロー炉を可動させることができないので、モータに固着したフラックスを除去するための作業が必要となるという問題が発生する。
【0008】
そこで、本発明は、上記課題を解決するものであって、その目的は、気化したフラックスが予備加熱ゾーンと本加熱ゾーンと冷却ゾーンに配置されているファンを回転させるためのモータ回転軸に付着して固化することを防止するため気化したフラックスが固化する前の流動性を有する液化の状態で効率的、かつ、確実に回収することが可能なフラックス回収装置を備えたリフロー炉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明に係るリフロー炉は、モータと当該モータと回転軸を介して接続されたファンとファンを収容するケース部材とを有するリフロー本体と、当該リフロー本体のリフロー処理によって発生したフラックスを回収するフラックス回収装置とを備えたリフロー炉であって、フラックス回収装置は、ケース部材に取り付けられるベース部材と、ベース部材のファンとの対向側であってかつ回転軸の周辺部に設けられ、リフロー処理により発生したフラックスを流入させて外部に排出するドレン部とを備えるものである。
【0010】
ファンの回転駆動により、ファンとベース部材との間には回転軸方向に流れる風(圧力)が発生する。そのため、ファンの背面側に流れ込んだフラックスは、中心方向に流れる風により回転軸に集まってくる。本発明においては、ベース部材のファンとの対向側であってかつ回転軸の周辺部にドレン部が設けられるので、ファンの回転駆動により回転軸に集まってくるフラックスはドレン部に流入され、ドレン部から外部に排出される。なお、本発明においてフラックスとは、気化した状態のフラックス、流動性のある液体のフラックスおよび固化したフラックスを含むものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ベース部材であって回転軸の周辺部にドレン部が設けられるので、回転軸に必然的に集まってくるフラックスを効率的かつ確実にドレン部に流入させることができ、回転軸におけるフラックスの固着を防止することができる。その結果、フラックス固着による駆動部やファン、ベース部材の取り外し作業や清掃作業等の作業時間を削減できるので、生産効率を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るリフロー炉の構成例を示す図である。
【図2】フラックス回収装置の構成例を示す斜視図である。
【図3】フラックス回収装置の構成例を示す上面図である。
【図4】フラックス回収装置の構成例を示す側面図である。
【図5】フラックス回収装置の構成例を示す断面図である。
【図6】フラックス回収装置の要部の構成例を示す拡大断面図である。
【図7】シール部材の他の構成例を示す図である。
【図8】フラックス回収装置の要部の構成例を示す斜視図である。
【図9】フラックス回収装置の着脱時の構成例を示す斜視図である。
【図10】窒素パージを説明するための図である。
【図11】通常時のメンテナンスの動作例を示す図である。
【図12】異常時のメンテナンスの動作例を示す図である。
【図13】本発明の第2の実施の形態に係るフラックス回収装置の構成例を示す図である。
【図14】フラックス加熱用ヒータを説明するための図である。
【図15】本発明の第3の実施の形態に係るフラックス回収装置の構成例を示す図である。
【図16】フラックス回収装置の構成例を示す上面図である。
【図17】通常時および異常時のメンテナンスの動作例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、発明を実施するための最良の形態(以下実施の形態とする)について説明する。
<1.第1の実施の形態>
[リフロー炉の構成例]
図1に示すように、リフロー炉100は、リフロー本体(マッフル)40と搬送コンベア80とヒータ50とファン60とモータ12とフラックス回収装置10Aとを備えている。リフロー本体40は、搬入口40aと搬出口40bとを有したトンネル状に延びる匡体からなり、搬入口40aから搬出口40bに至る搬送経路に沿って予備加熱ゾーンZ1と本加熱ゾーンZ2と冷却ゾーンZ3とを有する。搬送コンベア80は、搬入口40aから搬出口40bに至る搬送経路に沿って延在しており、プリント基板70をリフロー本体40の搬入口40aから搬出口40bに向かって所定の速度で搬送する(矢印X方向)。
【0014】
ヒータ50、ファン60およびモータ12は、予備加熱ゾーンZ1および本加熱ゾーンZ2のそれぞれに設置され、搬送コンベア80の上下方向のそれぞれに対向して配置されている。本例の場合、予備加熱ゾーンZ1は上下1対のヒータ50とファン60とモータ12からなるユニットが3ユニット構成となっており、同様に、本加熱ゾーンZ2は上下1対のヒータ50とファン60とモータ12からなるユニットが2ユニット構成となっている。予備加熱ゾーンZ1および本加熱ゾーンZ2の1ユニットを構成するヒータ50およびファン60は、箱状をなすケース部材40aに収容されている。
【0015】
予備加熱ゾーンZ1および本加熱ゾーンZ2に設置されるヒータ50は、リフロー本体40内部の気体を加熱させて高温の熱風を生成する。ファン60は、例えばシロッコファンからなり、モータ12の駆動により回転駆動してヒータ50によって加熱された熱風をプリント基板70の上下方向から吹き付ける。これにより、プリント基板70のはんだが溶融され、プリント基板70の電極に電子部品等が固着される。なお、予備加熱ゾーンZ1および本加熱ゾーンZ2に設置されるヒータ50、ファン60およびモータ12は、同一の構成のものを用いている。
【0016】
冷却ゾーンZ3には、予備加熱ゾーンZ1と本加熱ゾーンZ2で加熱されたプリント基板を冷却する冷却風を吹き出すファンおよびモータ(図示省略)が設置されている。本例の場合、冷却ゾーンZ3の構成は、予備加熱ゾーンZ1および本加熱ゾーンZ2のユニット構成からヒータ50を取り除いた構成となっており、ファンとモータとにより冷蔵機92を構成している。
【0017】
フラックス回収装置10Aは、ヒータ50およびファン60によるプリント基板70へのリフロー処理により発生した気化したフラックスを流動性のある液体のフラックス状態で効率的に回収するための装置であり、本例の場合、ファン60およびモータ12毎に設けられる。フラックス回収装置10Aは、各予備加熱ゾーンZ1および本加熱ゾーンZ2で発生するフラックスの成分に応じて予備加熱ゾーンZ1、本加熱ゾーンZ2および冷却ゾーンZ3の各ゾーン毎に異なる構成とすることもできるし、各ゾーンを構成するユニット単位で異なる構成にすることができる。フラックス回収装置10Aについては後述する。
【0018】
[リフロー炉の動作例]
続けて、リフロー炉100の動作の一例について説明する。図1に示すように、表面実装用電子部品が搭載されたプリント基板70が搬送コンベア80上に載置され、搬入口40aからリフロー炉100の内部に搬入される。リフロー炉100内の予備加熱ゾーンZ1では、搬送コンベア80の上下に設置されたヒータ50、ファン60およびモータ12の駆動により熱風がプリント基板70に吹き付けられる。これにより、フラックスが活性化されると共に電極やはんだペーストの表面の酸化膜が除去される。
【0019】
このとき、リフロー処理によって発生した気化したフラックスは、リフロー本体40内に充満し、図示しないが一般的には炉外に設けられたフラックス成分を除去する除去装置を介して清浄化され、循環路を経由して炉内に再び戻される。しかしながら、予備加熱ゾーンZ1と本加熱ゾーンZ2と冷却ゾーンZ3に配置されているファン60の回転に伴い、ファン60の背面側に回り込む流れが生じるため、この流れにより気化したフラックスの一部が、ファン60の背面側に回り込む。本例の場合、モータ12やファン60毎にフラックス回収装置10Aが設置されているので、予備加熱ゾーンZ1に設置されたファン60の背面側に回り込んだ気化したフラックスの一部はフラックス回収装置10Aによって回収される。
【0020】
続けて、本加熱ゾーンZ2にプリント基板70が搬送されると、はんだが溶融されてプリント基板70の電極に電子部品が固着される。このときに発生するフラックス等も、上述したようにフラックス回収装置10Aによって回収される。最後に、冷却ゾーンZ3にプリント基板70が搬送されると、急速にプリント基板70が冷却されて、はんだ組成が形成される。そして、冷却ゾーンZ3で冷却されたプリント基板70は、搬出口40bから搬出される。なお、熱風の吹き付けにより発生した気化したフラックスは、上述したように、冷却ゾーンZ3の冷蔵機92毎に設けられたフラックス回収装置10Aによっても回収される。
【0021】
[フラックス回収装置の構成例]
次に、フラックス回収装置10Aの構成の一例について説明する。本発明に係るフラックス回収装置10Aは、図2〜図5に示すように、ベース部材の一例であるモータベース16とハイネックカラー部18とドレン部20とドレン管38と回収用容器34とを備えている。なお、モータベース16に堆積した液体のフラックスは、その自重により下方に流動するため、本発明に係るフラックス回収装置10は基本的に図1に示すリフロー炉100の搬送コンベア80の下方側にのみ設置されるものとする。
【0022】
モータベース16は、ステンレス(SUS)やアルミ等の耐食性、耐熱性に優れた金属材料からなると共にファン60よりも若干大きな外径を有した円盤状の部材であって、ファン60等を収容するケース部材40a(図1参照)の底面部にねじ等の締結部材を介して取り付けられている。モータベース16は、ファン60との対向側に、モータベース16の周縁に沿って形成された壁部16bと、壁部16bから回転軸14に向かって平面部の高さが低くなるように傾斜した傾斜面16aとを有する。回転軸14の周辺部には後述するようにドレン部20が形成されるので、傾斜面16aによりモータベース16に堆積したフラックスを効果的にモータベース16に形成されるドレン部20に流動させることができる。
【0023】
モータ12は、モータベース16の背面側(ファン60と反対側)に中央ドレンブロック22を介して取り付けられている。モータ12は、例えば商用の電源部200に接続されており、図示しない制御装置からの指示に基づいて回転軸14を介してファン60を回転駆動させる。回転軸14は、一端がモータ12に回転可能に取り付けられ、他端のモータベース16からファン60側に延出した部分がファン60に取り付けられている。
【0024】
図6に示すように、回転軸14の外周面14aと中央ドレンブロック22の内周面22aとの間には、回転軸14と中央ドレンブロック22との間隙S1へのフラックスヒューム等の浸入を防止するためのシール部材32が介挿されている。シール部材32には、例えば、オイルシールやVパッキン、テフロン(登録商標)シール等の接触型のシール部材や、非接触型のシール部材(例えば、ラビリンスシール)等が用いられる。本例では、Vパッキンおよびテフロン(登録商標)シールを使用した例を示している。
【0025】
ここで、他のシール部材32を使用した場合について説明する。図7(A)に示すように、シール部材32として非接触型のシールを用いた場合、非接触型であるため、グリスが不要となり、低コスト化を図ることができるという効果を有する。続けて、図7(B)に示すように接触型のVパッキンを用いた場合、および、図7(C)に示すように接触型のオイルシールを用いた場合、フラックスの回転軸14の間隙S1への流入を効果的に防止できるという効果を有する。また、図7(D)に示すように、接触型のテフロン(登録商標)シールを用いた場合、フラックスの流入を効果的に防止できると共に、グリスが不要となるという効果を得ることができる。
【0026】
ハイネックカラー部18は、図6に示すように、シール部材32の上方であって回転軸14の周方向に沿うようにして設けられ、回転軸14と中央ドレンブロック22との間隙S1へのフラックス等の浸入を防止するものである。このハイネックカラー部18は、ベース部18aと円筒部18bと折返部18cとが一体形成されて構成されている。ベース部18aは、回転軸14の内径と略同一の内径を有する環状体からなり、モータベース16の上面部にねじ等の締結部材を介して取り付けられている。円筒部18bは、ベース部18aの内周縁部から上方に向かって立設されると共に、回転軸14の周方向に沿って形成されている。折返部18cは、円筒部18bの上端縁から外方に折り返して所定の長さだけ外方に延出している。このような構成により、主にフラックスヒュームの回転軸14の間隙S1への浸入を確実に防止できるようになる。
【0027】
ドレン部20は、モータベース16に堆積するフラックス等をモータベース16から外部に排出するための溝(谷部)により構成され、モータベース16の中心に位置する回転軸14の周辺部に形成されている。つまり、本例においてドレン部20は、モータベース16の中心部であって、回転軸14の周方向に沿うようにして形成されている。ドレン部20をモータベース16の中心部に形成するのは、ファン60の回転時に発生する中心に向かう風によりフラックスがモータベース16の中心部(回転軸14)に集まってくることを考慮したためである。このドレン部20は、図2、図5および図8に示すように、モータベース16の平面位置からモータベース16の背面側に設けられるドレン管38(排出口46)に向かって傾斜した傾斜面20aを有する。この傾斜面20aの上流側Cは、その中央部が高く両側の壁面部20bに向かって低くなるように湾曲した山型形状となっている(図8参照)。ドレン部20の傾斜面20aの下流側に位置した壁面部20bには、図8に示すように、ドレン部20に流入したフラックスを外部に排出するための排出口46が形成されている。排出口46には、斜め外下方に延在するドレン管38が接続されている。なお、ドレン管38は、第1の排出管の一例を構成している。
【0028】
ドレン管38には、パイプ管48が接続されている。パイプ管48は、その外径がドレン管38の内径と略同一に選定され、ドレン管38の内側に挿脱可能な構成となっている。これにより、ドレン部20の排出部では、ドレン管38とパイプ管48との二重構造を有する。なお、パイプ管48は、第2の排出管の一例を構成している。パイプ管48の長手方向の長さは、ドレン管38の長手方向の長さ以上に選定され(図12参照)、パイプ管48をドレン管38内側に挿入したときにパイプ管48の先端部が排出口46の近傍位置まで延在するようになっている。これにより、排出口46近傍でフラックスが詰まった場合でも、詰まったフラックスはドレン管38ではなくパイプ管48の内側に溜まることになるため、パイプ管48毎引き抜くことで、排出口46近傍でのフラックス詰まりを回避できるようになる。パイプ管48の先端外周部には、図9に示すように、ねじ溝48aが形成されており、ドレン管38の内側に形成された図示しないねじ溝にパイプ管48をねじ込むことでドレン管38に取り付け可能となっている。
【0029】
パイプ管48の外側の端部には、後述する回収用容器34の蓋として機能する容器用蓋42が取り付けられている。容器用蓋42は、回収用容器34の外径と略同一の径を有する頂面部42aと、頂面部42aの外周縁に立設された側壁部42bとから構成される。側壁部42bの内周面には、回収用容器34のねじ溝34aに対応したねじ溝42cが形成されている。
【0030】
回収用容器34は、パイプ管48を介してドレン管38に連結され、ドレン部20、排出口46、ドレン管38およびパイプ管48を経由して流れてきたフラックスを収容するものである。回収用容器34の上端周縁には、図9に示すように、ねじ溝34aが形成されている。容器用蓋42に形成されたねじ溝42cに回収用容器34のねじ溝34aを嵌め込むことで、回収用容器34をパイプ管48に着脱可能に取り付けることが可能となっている。この回収用容器34は、作業者が取り外し易く、かつ、フラックスがある程度収容可能な大きさに選定される。また、回収用容器34は、回収用容器34の内部に回収されたフラックス量を確認し易いように透明材料により構成しても良い。
【0031】
中央ドレンブロック22には、図10に示すように、回転軸14の外周面14aと中央ドレンブロック22の内周面22aとの間隙S1に窒素ガスを注入するための窒素空間部S2が設けられている。窒素空間部S2は、間隙S1に窒素ガスを注入して間隙S1内部の圧力P2をリフロー本体40側の圧力P1よりも高圧に設定するための空間であり、内側の導入口が間隙S1に連通され、外側の注入口が外部に連通している。窒素空間部Sの注入口にはハーフユニオン30が取り付けられ、ハーフユニオン30には窒素ガスを生成するための窒素発生部300が接続されている。また、中央ドレンブロック22には、窒素空間部S2とは別に、シール部材32のグリスを注入するための図示しないグリス注入部が設けられている。
【0032】
本例では、リフロー炉100がオンされると、リフロー本体40の内部には、図示しない窒素導入口から窒素ガスが導入され、炉内の圧力P1が500Paに設定される。また、リフロー炉100がオンされると、窒素発生部300からハーフユニオン30を介して窒素空間部S2に窒素ガスが注入され、間隙S1の圧力P2が例えば0.3MPa以下に調整される。これにより、回転軸14の外周面14aと中央ドレンブロック22の内周面22aとの間隙S1の圧力P2がリフロー本体40内の圧力P1よりも高圧となり、間隙S1からリフロー本体40へ窒素のガスの流れができるので、間隙S1にフラックスが浸入することを確実に防止できる。
【0033】
[通常のメンテナンス時の動作例]
図11に示すように、リフロー炉100がオンされてファン60が駆動されると、ファン60の背面側には外側から中心に向かう風が発生する。この中心に向かう風により、ファン60の背面側に回り込んだ気化したフラックスがモータベース16により冷却され流動性のある液体のフラックスは、モータベース16の傾斜面16aに沿ってモータベース16の中心に設けられた回転軸14に集まってくる。このモータベース16の中心に集まった流動性のある液体のフラックスは、回転軸14の周辺部に形成されたドレン部20にそのまま流入される。
【0034】
ドレン部20に流入されたフラックスは、ドレン部20の排出口46、ドレン管38およびパイプ管48を経由して回収用容器34の内部に収容される。作業者は、所定のタイミングにおいて回収用容器34に一定量のフラックスが溜まったか否かを確認し、回収用容器34内にフラックスが一定量溜まったと判断した場合には、図11に示すように、回収用容器34をパイプ管48の容器用蓋42から取り外した後、回収用容器34の中身であるフラックスを回収する。そして、回収用容器34の中身を空にしたら、再度、回収用容器34を容器用蓋42に取り付けてセットする。
【0035】
[異常発生時の動作例]
図12に示すように、リフロー炉100の停止後、フラックスの温度の低下により排出経路の途中において流動性のある液体のフラックスが固化してフラックスが詰まった場合には、作業者はドレン管38からパイプ管48を引き抜く。排出経路途中で詰まった固化したフラックスは、ドレン管38ではなく引き抜かれたパイプ管48側に堆積しているので、ドレン管38に固化したフラックスが残ってしまうことを回避できる。作業者は、取り外したパイプ管48の内部を清掃して固化したフラックスを取り除き、再度、パイプ管をドレン管38に取り付けてセットする。
【0036】
以上説明したように、第1の実施の形態によれば、モータベース16であって回転軸14の周辺部にドレン部20が設けられているので、ファン60の回転時に回転軸14に必然的に集まってくる気化したフラックスが固化する前の流動性を有する液化のフラックスを効率的かつ確実にドレン部20に流入させて外部に排出させることができる。これにより、フラックスの回転軸14への浸入を回避して、回転軸14におけるフラックスの固着を防止することができる。その結果、フラックス固着によるモータ12やファン60、モータベース16の取り外し作業や清掃作業等の作業時間を削減できるので、その分、生産性を大幅に向上させることができる。
【0037】
また、第1の実施の形態では、ドレン部20をモータベース16の一箇所に設け、そのドレン部20に接続されるドレン管38を斜め外下方に引き出している。そのため、リフロー炉100の開閉可能な一方の側面にドレン管38を引き出すことで、回収用容器34の取り外し作業や清掃作業を容易かつ効率的に行うことができる。これにより、作業者の作業負担を大幅に軽減することができる。
【0038】
また、ドレンの構成をドレン管38とパイプ管48との二重構造としているので、フラックスが排出経路途中で停滞した(詰まった)場合でも、内側のパイプ管48をドレン管38から取り外すことで、パイプ管48内部をリフロー炉100の外で簡単に清掃することができる。また、ドレン管38にフラックスが残ることがないので、フラックスの詰まり等を確実に防止できる。
【0039】
また、回転軸14の周方向に沿って折り返し構造を有したハイネックカラー部18を設けることで、シール部材32と回転軸14との間隙S1にフラックスやフラックスヒュームが浸入することを効果的に防止することができる。さらに、本実施の形態によれば、回転軸14と中央ドレンブロック22との間隙S1の圧力をリフロー本体40内の圧力よりも高圧に設定するので、間隙S1にフラックスやフラックスヒュームが浸入することを確実に防止することができる。
【0040】
<2.第2の実施の形態>
第2の実施の形態に係るフラックス回収装置10Bはフラックスを加熱するヒータを備える点において、上記第1の実施の形態で説明したフラックス回収装置10Aと異なっている。なお、その他のフラックス回収装置10Bの構成は上述した第1の実施の形態で説明したフラックス回収装置10Aと同一であるため、共通の構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0041】
[フラックス回収装置の構成例]
図13および図14に示すように、フラックス回収装置10Bを構成するドレン管38の排出口46側には、フラックス加熱用ヒータ90を取り付けるためのヒータ取付部39が設けられている。ヒータ取付部39は、ドレン管38の外径よりも拡径された部位であって、その矩形状の外面の下側角部のそれぞれにフラックス加熱用ヒータ90を挿入するためのヒータ挿入孔39a,39aが形成されている。
【0042】
フラックス加熱用ヒータ90は、棒状のいわゆるカードリッジヒータからなり、ヒータ挿入孔39aに装着されて、ドレン管38の下側からドレン管38およびパイプ管48を加熱するものである。本例では、2個のフラックス加熱用ヒータ90を用いているが、1個のフラックス加熱用ヒータ90を用いても良いし、3個以上のフラックス加熱用ヒータ90を用いても良い。また、フラックス加熱用ヒータ90の取付位置は、ヒータ取付部38bの下側角部に限定されることはなく、ヒータ取付部38bの上部であっても良いし、左右であっても良い。フラックス加熱用ヒータ90の外側端部には配線が接続され、この配線の他端には電源部200が接続されている。電源部200は、例えば商用電源の200Vが利用される。
【0043】
図示しない制御部は、例えば、リフロー炉100の電源のオンと同時にフラックス加熱用ヒータ90をオンさせてドレン管38およびパイプ管48を加熱する。このドレン管38およびパイプ管48の加熱により、ドレン管38およびパイプ管48の内部のフラックスが加熱され、フラックスが回収用容器34に至る経路途中で停滞、堆積しないようにする。なお、フラックス加熱用ヒータ90による温度制御は、一定時間加熱したら停止する間欠的な制御であっても良いし、温度センサによりドレン管38等の温度を測定し、測定した温度結果に基づいてフラックス加熱用ヒータ90のオンオフ制御をするようにしても良い。また、フラックス加熱用ヒータ90の温度は、使用するフラックスの種類に応じて異ならせても良い。さらに、予備加熱ゾーンZ1と本加熱ゾーンZ2とでは発生するフラックスの成分が異なるので、各ゾーンで温度を異ならせるように制御しても良い。
【0044】
以上説明したように、第2の実施の形態によれば、ヒータ50やファン60の停止後に温度低下が著しいドレン管38にフラックス加熱用ヒータ90を設置しているので、ドレン部20やドレン管38付近での温度低下を確実に防止できる。これにより、フラックスの粘土低下による停滞(詰まり)を効果的に防止でき、円滑かつ確実にフラックスを流動させて回収用容器34に収容させることができる。その結果、フラックスの固着によるモータ12等の各構成部品の取り外し作業や清掃作業等の作業時間を削減でき、生産効率を大幅に向上させることができる。
【0045】
<3.第3の実施の形態>
第3の実施の形態に係るフラックス回収装置10Cはドレン部20をモータベースの周縁部に設けている点において、ドレン部20をモータベースの中央部に設ける上記第1の実施の形態と異なっている。なお、その他のフラックス回収装置10Cの構成は上述した第1の実施の形態で説明したフラックス回収装置10Aと同一であるため、共通の構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0046】
図15および図16に示すように、フラックス回収装置10Cを構成するドレン部20は、モータベース16の上面(ファン60と対向する面)の周縁部からモータベース16を斜め外下方に貫通するようにして形成されている。本例では、ドレン部20が2箇所に設けられ、これらのドレン部20,20がモータベース16の周縁部の対向した位置に配設されている。モータベース16の上面は、モータベース16の中心部から外方向のドレン部20に向かって傾斜した傾斜面16cとなっている。これにより、液化したフラックスは、傾斜面16cに沿って外方向に流動し、ドレン部20に流れ込んで後述する回収用容器34に排出される。
【0047】
図17に示すように、ドレン部20には、パイプ管48が接続されている。パイプ管48は、その外径がドレン部20の内径と略同一に選定されており、ドレン部20の内側に挿脱可能に構成される。パイプ管48の長手方向の長さは、ドレン部20の長手方向の長さよりも長く選定され、パイプ管48をドレン部20の内側に挿入したときにパイプ管48の先端部がドレン部20の流入口20cの近傍位置まで延在するようになっている。パイプ管48の先端外周部にはねじ溝が形成されており、ドレン部20の内側に形成されたねじ溝にパイプ管48をねじ込むことでドレン部20に固定して取り付けることが可能となっている。パイプ管48の他端部には、後述する回収用容器34の蓋として機能する容器用蓋42が設けられている。容器用蓋42の内周面には、回収用容器34のねじ溝に対応したねじ溝が形成されている。
【0048】
回収用容器34は、パイプ管48を介してドレン部20に連結され、ドレン部20およびパイプ管48を経由して流れてきたフラックスを収容するものである。回収用容器34の上端周縁にはねじ溝が形成されており、容器用蓋42に形成されたねじ溝に回収用容器34を嵌め込むことで回収用容器34をパイプ管48に着脱可能に取り付けることが可能となっている。この回収用容器34は、作業者が取り外し易く、かつ、フラックスの量がある程度収容可能な大きさに選定される。また、回収用容器34は、回収用容器34内に回収されたフラックス量を確認し易いように透明材料により構成しても良い。
【0049】
以上説明したように、第3の実施の形態によれば、上記第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。すなわち、ドレンの構成をドレン部20とパイプ管48との二重構造としているので、フラックスが排出経路途中で停滞した(詰まった)場合でも、内側のパイプ管48をドレン部20から取り外すことで、パイプ管48内部をリフロー炉100の外で簡単に清掃することができる。また、ドレン部20にフラックスが残ることがないので、フラックスの詰まり等を確実に防止できる。
【符号の説明】
【0050】
10A,10B,10C・・・フラックス回収装置、12・・・モータ、14・・・回転軸、16・・・モータベース(ベース部材)、16a・・・傾斜面、18・・・ハイネックカラー部、20・・・ドレン部、34・・・回収用容器、38・・・ドレン管(第1の排出管)、40・・・リフロー本体、48・・・パイプ管(第2の排出管)、50・・・ヒータ、60・・・ファン、70・・・プリント基板、80・・・搬送コンベア、90・・・フラックス加熱用ヒータ、100・・・リフロー炉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと当該モータと回転軸を介して接続されたファンと前記ファンを収容するケース部材とを有するリフロー本体と、当該リフロー本体のリフロー処理によって発生したフラックスを回収するフラックス回収装置とを備えたリフロー炉であって、
前記フラックス回収装置は、
前記ケース部材に取り付けられるベース部材と、
前記ベース部材の前記ファンとの対向側であってかつ前記回転軸の周辺部に設けられ、前記リフロー処理により発生した前記フラックスを流入させて外部に排出するドレン部と
を備えることを特徴とするリフロー炉。
【請求項2】
前記ドレン部には、当該ドレン部に流れ込んだ前記フラックスを外部に排出するための排出口が設けられ、
前記ドレン部は、前記ベース部材の平面部から前記排出口に向かって傾斜した傾斜面を有する
ことを特徴とする請求項1に記載のリフロー炉。
【請求項3】
前記ベース部材の前記ファンと対向する対向面は、
前記ベース部材の周縁部から前記ドレン部に向かって前記対向面の高さが低くなるように傾斜した傾斜面からなる
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のリフロー炉。
【請求項4】
前記ベース部材と前記回転軸との間隙への前記フラックスの浸入を防止するための折り返し構造を有したハイネックカラー部をさらに備える
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載のリフロー炉。
【請求項5】
前記ドレン部の前記排出口に接続される第1の排出管と、
前記第1の排出管の内側に挿脱可能に取り付けられる第2の排出管と、
前記第2の排出管の前記排出口とは反対側の端部に取り付けられ、前記ドレン部から排出された前記フラックスを回収するための回収容器と
をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載のリフロー炉。
【請求項6】
前記フラックスは、前記リフロー処理により気化したフラックスが、前記ファンの回転に伴い、当該ファンと前記ベース部材との間に回り込んで冷却されて液化したものである
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載のリフロー炉。
【請求項7】
モータと当該モータと回転軸を介して接続されたファンと前記ファンを収容するケース部材とを有するリフロー本体と、当該リフロー本体のリフロー処理によって発生したフラックスを回収するフラックス回収装置とを備えたリフロー炉であって、
前記フラックス回収装置は、
前記リフロー本体に取り付けられるベース部材と、
前記ベース部材の前記ファンとの対向側であってかつ前記ベース部材の周縁部に設けられ、前記リフロー処理により発生した前記フラックスを流入させて外部に排出するドレン部と
前記ドレン部の内側に挿脱可能に取り付けられる排出管と、
前記排出管の下流側の端部に取り付けられ、前記ドレン部から前記排出管を介して排出される前記フラックスを回収するための回収容器と
を備えることを特徴とするリフロー炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−121101(P2011−121101A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−282261(P2009−282261)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【出願人】(000199197)千住金属工業株式会社 (101)
【Fターム(参考)】