説明

リフロー装置

【課題】リフロー装置の所望の炉の温度を急速に低下させ、さらに、冷却動作をフラックスの効率的回収に役立たせる。
【解決手段】リフロー時には、上部炉体Z1a〜Z7aおよび下部炉体Z1b〜Z7bの対向間隙を被加熱物が所定の速度で搬送されると共に、これらの上部炉体および下部炉体のそれぞれの温度が予め設定された温度に制御される。切り替えに伴って温度を低下させる場合には、サブの供給路を介して常温のN2が所望の炉体に対して、追加的に供給され
る。N2の追加的供給に加えて、炉内のガスをラジエターボックス41a〜41gおよび
冷却兼フラックス回収装置61A、61Bを循環冷却させるようになされる。さらに、バルブの開き具合によって循環させるガスの流量を制御することができるので、通常運転動作時には、流量を切り替え時に比して少なくしてフラックス回収を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、リフロー装置に関し、特に、切り替え動作時に要する時間を短時間とできくものである。
【背景技術】
【0002】
電子部品またはプリント配線基板に対して、予めはんだ組成物を供給しておき、リフロー炉の中に基板を搬送コンベヤで搬送するリフロー装置が使用されている。リフロー装置は、基板を搬送する搬送コンベヤと、この搬送コンベヤによって被加熱物としての基板が供給されるリフロー炉本体とを備えている。リフロー炉は、例えば、搬入口から搬出口に至る搬送経路に沿って、複数のゾーンに分割されており、これらの複数のゾーンがインライン状に配列されている。複数のゾーンは、その機能によって、加熱ゾーン、冷却ゾーンなどの役割を有する。
【0003】
加熱ゾーンのそれぞれは、上部炉体および下部炉体を有する。例えばゾーンの上部炉体から基板に対して熱風が吹きつけられ、下部炉体から基板に対して熱風が吹きつけられることによって、はんだ組成物内のはんだを溶融させて基板の電極と電子部品とがはんだ付けされる。リフロー装置では、被加熱物例えば基板の表面温度を所望の温度プロファイルにしたがって制御することによって、所望のはんだ付けを行うことができる。基板の種類、はんだの種類等を変更した場合に、短時間の内に変更後のはんだに対応することが作業性の向上のために要請される。
【0004】
例えば下記の特許文献1には、加熱用ヒータの通電をオフすると共に、外気または不活性ガスを特定のゾーンに送り込むことによって、短時間で特定のゾーンの温度を低下させることが記載されている。また、下記の特許文献2には、炉内の高温暖気を強制的に排出すると共に、炉内に冷気を供給して強制的に冷却することが記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開平11−145611号公報
【特許文献2】特開平6−170524号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらの特許文献1および特許文献2に記載のものは、リフロー装置の炉内の高温ガスに対して冷却された大気または不活性ガスを外部から導入して強制的に炉内の温度を急速に低下させている。大気を導入する方法は、リフロー装置から接着剤硬化装置への切り換え時には使用できるが、不活性ガスの雰囲気下でリフローを行うリフロー装置に対しては適用することができない。また、炉の全体に冷却された大気または不活性ガスを導入するので、ゾーン毎に細かな温度制御に不向きな問題があった。
【0007】
リフロー装置で使用されるはんだ組成物は、粉末はんだ、溶剤、フラックスを含む。フラックスは、成分としてロジンなどを含み、はんだ付けされる金属表面の酸化膜を除去し、はんだ付けの際に加熱で再酸化するのを防止し、はんだの表面張力を小さくして濡れを良くする塗布剤の働きをするものである。このフラックスは、加熱により、気化しリフロー炉内に充満する。気化したフラックスは、温度の低い部位に付着し易く、気化したフラックスが付着すると、付着している部位から滴下し、基板の上面に付着することもあり、基板の性能を損うこととなる。また、炉体内において温度が低下する部分に堆積する等によりリフロー工程に大きな影響を与える場合もある。したがって、リフロー炉内のフラックスを除去または回収することが要請されている。
【0008】
上述したように、外部から冷気を導入する方法は、炉内の温度を急速に低下させることができるが、温度低下に伴うフラックスの凝縮に対する考慮が払われておらず、フラックス回収装置を別個に設置する必要があった。
【0009】
したがって、この発明の目的は、リフロー装置の所望の炉の温度を急速に低下させることができ、さらに、冷却動作をフラックスの効率的回収に役立たせることができるリフロー装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、この発明は、搬送される被加熱物の搬送路に沿って複数のゾーンにリフロー炉が順次分割され、複数のゾーンの温度を制御することによって、搬送される被加熱物をリフローするリフロー装置において、
複数のゾーンの中の一部または全てのゾーンの炉体内の雰囲気ガスを循環冷却させると共に、フラックスを回収する冷却兼フラックス回収装置と、
各ゾーンの雰囲気ガスの循環経路中に挿入され、流量が制御可能な流量制御部とを備え、
フラックス回収時に比してゾーンの温度を低下させる時に流量制御部を制御することによって流量をより多くするようにしたリフロー装置である。
【0011】
具体的には、ゾーンのそれぞれの炉体が上部炉体と下部炉体とから構成され、上部炉体と下部炉体のそれぞれに対して冷却兼フラックス回収装置および流量制御部が独立して設けられる。
【0012】
好ましくは、複数のゾーンの中で、ゾーン内の設定温度を変更する場合に、1または複数のゾーンに対して、ゾーン内のガスに比して低温のガスが追加的に導入される。
【0013】
炉体のガスが送風機により発生する圧力の高い箇所から冷却兼フラックス回収装置に対して供給され、
送風機により発生する圧力の低い箇所に対して冷却兼フラックス回収装置からのガスが供給される。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、リフロー装置の複数ゾーンの炉体に対して冷却兼フラックス回収装置を設け、炉体と冷却兼フラックス回収装置との間に流量制御部を設ける。フラックス回収時に比してゾーンの温度を低下させる時に流量制御部を制御することによって流量をより多くして、短時間に温度を下げることができる。通常運転動作時では、冷却兼フラックス回収装置によってフラックス回収を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、この発明の一実施の形態によるリフロー装置の外板を除く概略的構成を示す。なお、この発明は、リフロー装置に限らずフロー装置に対しても適用することができる。図1では、説明の便宜上リフロー炉外に配置されるフラックス回収装置の図示が省略されている。なお、以下に説明する一実施の形態は、この発明の好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、この発明の範囲は、以下の説明において、特にこの発明を限定する旨の記載がない限り、これらの実施の形態に限定されないものとする。
【0016】
プリント配線基板の両面に表面実装用電子部品が搭載された被加熱物が搬送コンベヤの上に置かれ、搬入口11からリフロー装置の炉体内に搬入される。搬送コンベヤが所定速度で矢印方向(図1に向かって左から右方向)へ被加熱物を搬送し、被加熱物が搬出口12から取り出される。
【0017】
搬入口11から搬出口12に至る搬送経路に沿って、リフロー炉が例えば9個のゾーンZ1からZ9に順次分割され、これらのゾーンZ1〜Z9がインライン状に配列されている。入り口側から7個のゾーンZ1〜Z7が加熱ゾーンであり、出口側の2個のゾーンZ8およびZ9が冷却ゾーンである。冷却ゾーンZ8およびZ9に関連して強制冷却ユニット14が設けられている。
【0018】
上述した複数のゾーンZ1〜Z9がリフロー時の温度プロファイルにしたがって被加熱物の温度を制御する。図2に温度プロファイルの例の概略を示す。横軸が時間であり、縦軸が被加熱物例えば電子部品が実装されたプリント配線基板の表面温度である。最初の区間が加熱によって温度が上昇する昇温部R1であり、次の区間が温度がほぼ一定のプリヒート(予熱)部R2であり、次の区間が本加熱部R3であり、最後の区間が冷却部R4である。
【0019】
昇温部R1は、常温からプリヒート部R2(例えば150°C〜170°C)まで基板を加熱する期間である。プリヒート部R2は、等温加熱を行い、フラックスを活性化し、電極、はんだ粉の表面の酸化膜を除去し、また、プリント配線基板の加熱ムラをなくすための期間である。本加熱部R3(例えばピーク温度で220°C〜240°C)は、はんだが溶融し、接合が完成する期間である。本加熱部R3では、はんだの溶融温度を超える温度まで昇温が必要とされる。本加熱部R3は、プリヒート部R2を経過していても、温度上昇のムラが存在するので、はんだの溶融温度を超える温度までの加熱が必要とされる。最後の冷却部R4は、急速にプリント配線基板を冷却し、はんだ組成を形成する期間である。
【0020】
図2において、曲線1は、鉛フリーはんだの温度プロファイルを示す。共晶はんだの場合の温度プロファイルは、曲線2で示すものとなる。鉛フリーはんだの融点は、共晶はんだの融点より高いので、プリヒート部R2における設定温度が共晶はんだに比して高いものとされている。
【0021】
リフロー装置では、図2における昇温部R1の温度制御を、主としてゾーンZ1およびZ2が受け持つ。プリヒート部R2の温度制御は、主としてゾーンZ3、Z4およびZ5が受け持つ。本加熱部R3の温度制御は、ゾーンZ6およびZ7が受け持つ。冷却部R4の温度制御は、ゾーンZ8およびゾーンZ9が受け持つ。
【0022】
加熱ゾーンZ1〜Z7のそれぞれは、それぞれ送風機を含む上部炉体15および下部炉体35を有する。例えばゾーンZ1の上部炉体15および下部炉体35から搬送される被加熱物に対して熱風が吹きつけられる。
【0023】
図3を参照して加熱装置の一例について説明する。例えばゾーンZ6を搬送方向に対して直交する面で切断した場合の断面が図3に示されている。上部炉体Z6aと下部炉体Z6bとの対向間隙内で、プリント配線基板の両面に表面実装用電子部品が搭載された被加熱物Wが搬送コンベヤ31上に置かれて搬送される。上部炉体Z6a内および下部炉体Z6b内は、雰囲気ガスである例えば窒素ガス(N2 )が充満している。上部炉体Z6aおよび下部炉体Z6bは、被加熱物Wに対して熱風(熱せられた雰囲気ガス)を噴出して被加熱物Wを加熱する。なお、熱風と共に赤外線を照射しても良い。
【0024】
上部炉体Z6aは、例えばターボファンの構成の送風機16と、ヒータ線を複数回折り返して構成したヒータ18と、熱風が通過する多数の小孔を有するパネル(蓄熱部材)19とを有し、パネル19の小孔を通過した熱風が被加熱物Wに対して上側から吹きつけられる。パネル19は、例えばアルミニウムからなる。
【0025】
下部炉体Z6bも上述した上部炉体Z6aと同様の構成を有する。すなわち、例えばターボファンの構成の送風機26と、ヒータ線を複数回折り返して構成したヒータ28と、熱風が通過する多数の小孔を有するパネル(蓄熱部材)29とを有する。パネル29の小孔を通過した熱風が被加熱物Wに対して下側から吹きつけられる。
【0026】
上部炉体Z6aに対して、冷却兼フラックス回収装置としてのラジエターボックス41fが設けられる。ラジエターボックス41fは、例えば外板で囲まれた空間内で上部炉体Z6aの背面側に設置される。下部炉体Z6bに対して、冷却兼フラックス回収装置61Aが設けられる。冷却兼フラックス回収装置61Aは、例えば外板で囲まれた空間内で下部炉体Z6bの背面側に設置される。ラジエターボックス41fは、上部炉体Z6aから導出された雰囲気ガスを冷却させるラジエター部42と、冷却によって液化されたフラックスを回収する回収容器43とからなる。冷却兼フラックス回収装置61Aは、下部炉体Z6bから導出された雰囲気ガスを空冷および水冷を併せた冷却方式で冷却させる。
【0027】
炉内の雰囲気ガスは、ラジエターボックス41fおよび冷却兼フラックス回収装置61Aを循環して冷却され、炉内に戻される。この循環経路中に図示しないが、0%(遮断)〜100%(全開)の範囲でガスの流量を制御する流量制御手段としてのバルブが設けられる。バルブは、個々に制御することが可能とされており、通常運転時、および切り替え時のそれぞれにおいて適切な流量のガスを循環させるように制御される。
【0028】
上部炉体Z6a内における風の流れを模式的に図4に示す。送風機16は、モータ38とモータ38により回転される羽根39とを有している。ターボファンの場合、羽根39が回転すると、周辺の2箇所から送風が行われ、この風が炉体上部に2箇所設けられた穴50および51を介して上部炉体Z6a内に送り込まれる。さらに、ヒータ18およびパネル19を通過して被加熱物Wに吹きつけられる。さらに、送風機16は、中心部付近の穴を介して炉体内の雰囲気ガスを導入する。
【0029】
送風機16によって熱風が循環する経路中に雰囲気ガスをラジエターボックス41fに導出するための導出口としての穴52が設けられる。穴52は、炉内において圧力が高い箇所に設けられる。圧力が低い箇所には、ラジエターボックス41fからのガスを上部炉体Z6a内に導入するための導入口としての穴53が設けられる。これらの穴52および53は、実際には、接続用管54および55のそれぞれの一端側の開口に対応している。接続用管54および55のそれぞれとラジエターボックス41fの接続用管とが図示を省略したホースによって接続されている。下部炉体Z6bにおいても、炉内において圧力が高い箇所に設けられた穴から雰囲気ガスが冷却兼フラックス回収装置61Aに導出され、冷却兼フラックス回収装置61Aからのフラックス成分が減少したガスが炉内において圧力が低い箇所に設けられた穴から導入される。
【0030】
なお、ラジエターボックス41fおよび冷却兼フラックス回収装置61Aは、リフロー装置の全ゾーンまたは一部の複数ゾーンと関連して設けられる。
【0031】
図5は、インライン状に配列された複数のゾーン(上部炉体Z1a,Z2a,・・・,Z7aおよび下部炉体Z1b,Z2b,・・・,Z7bからなる)と、ラジエターボックス41a〜41gおよび冷却兼フラックス回収装置61Aおよび61Bとの配置の関係を概略的に示す。炉内の雰囲気ガスとしては、不活性ガス例えば窒素ガスN2が使用される

【0032】
リフロー時には、上部炉体Z1a,Z2a,・・・,Z7aおよび下部炉体Z1b,Z2b,・・・,Z7bの対向間隙を被加熱物が所定の速度で搬送されると共に、これらの上部炉体および下部炉体のそれぞれの温度が予め設定された温度となるように制御される。さらに、送風機の送風量も所定値とされる。
【0033】
図示しないN2発生装置は、例えば超低温の液化窒素を気化させることでN2が発生される。炉体Z1a、Z4a、Z6a、Z6bに対して、白い矢印で示すように、稼働時にN2が供給される。このメインのN2供給路と別に、サブのN2供給路を設け、サブのN供給
路にバルブを配し、必要時にサブの供給路を通じてN2が炉内に供給される。はんだの種
類を例えば共晶はんだと鉛フリーはんだとを切り替える場合に、炉内の温度を下降させることが必要とされる場合がある。例えば新たなはんだの種類に対して設定される温度に対して実際の温度が10°C以上高いような場合には、許容範囲内(例えば5°Cの差)まで炉内の温度を低下させることが必要となる。この温度差は、制御用の表示パネル(図示せず)を操作者が監視することによって、あるいは温度センサによって自動的に検出することができる。検出した温度差を許容範囲まで低下させる制御がなされる。
【0034】
このように、切り替えに伴って温度を低下させる場合には、上述したサブの供給路を介して常温のN2が炉体Z3a、Z3b、Z5a、Z5b、Z7a、Z7bの内の所望のも
のに対して、先端が塗りつぶされた矢印で示すように、追加的に供給される。各炉体に対してガス導出口およびガス導入口とがそれぞれ設けられる。ガス導出口は、炉内において圧力が高い箇所に設けられ、ガス導入口が炉内において圧力が低い箇所に設けられる。
【0035】
炉内の温度を急速に低下させることによって温度切り替えを短時間で行うことができる。N2の追加的供給に加えて、炉内の雰囲気ガスをラジエターボックスおよび冷却兼フラ
ックス回収装置を循環冷却させるようになされる。図5の例においては、全ての上部炉体Z1a〜Z7aと関連してラジエターボックス41a〜41gが設けられている。ラジエターボックス41a〜41gは、図3を参照して説明したように、空冷方式でもって雰囲気ガスを冷却すると共に、フラックスを回収する装置である。ラジエターボックス41a〜41gに対してそれぞれダクト71a〜77aをそれぞれ介して上部炉体Z1a〜Z7aから雰囲気ガスが導入される。冷却後のガスがダクトおよびバルブ71b〜77bをそれぞれ介して上部炉体Z1a〜Z7aに対して戻される。
【0036】
下部炉体に関連して冷却兼フラックス回収装置61Aおよび61Bが設置される。これらの冷却兼フラックス回収装置は、空冷および水冷コンデンサ内蔵の循環冷却ボックスの構成とされている。ボックスに対して、炉体からの雰囲気ガスが導入され、ボックスで充分冷却された雰囲気ガスが炉に対してバルブを通じて戻される。
【0037】
冷却兼フラックス回収装置61Aに対して、ダクト86aおよび87aをそれぞれ通じて下部炉体Z6bおよびZ7bの下面から雰囲気ガスが導入される。冷却兼フラックス回収装置61Aにおいて、雰囲気ガスが冷却され、冷却によって凝集または凝固したフラックスが回収される。冷却されたガスがバルブ86bおよび87bをそれぞれ通じて下部炉体Z6bおよびZ7bの底面から戻される。圧力差によって雰囲気ガスが冷却兼フラックス回収装置61Aを循環するようになされる。
【0038】
冷却兼フラックス回収装置61Bに対して、ダクト83a、84aおよび85aをそれぞれ通じて下部炉体Z3b、Z4b、Z5bの下面から雰囲気ガスが導入される。冷却兼フラックス回収装置61Bにおいて、雰囲気ガスが冷却され、冷却によって凝集または凝固したフラックスが回収される。冷却されたガスがバルブ83bおよび84bをそれぞれ通じて下部炉体Z3b、Z4b、Z5bの底面から戻される。圧力差によって雰囲気ガスが冷却兼フラックス回収装置61Bを循環するようになされる。
【0039】
上部炉体Z1a〜Z7aとラジエターボックス41a〜41gとのそれぞれの間にバルブ71b〜77bを配されている。下部炉体Z3b〜Z7bと冷却兼フラックス回収装置61A、61Bとのそれぞれの間にバルブ83b〜87bを配されている。これらのバルブは、流量を0%〜100%の範囲で独立して制御することができる。バルブとしては、コントロールバルブの単独の構成、または開閉バルブと流量制御手段とを組合せ構成を使用することができる。
【0040】
通常運転動作と、はんだの種類、基板の種類等に応じて各ゾーンの設定温度を変更する切り替え動作との両方がなされる。通常運転および切り替え動作の両者において、メインのN2の供給動作は、継続的になされる。切り替え時に、例えば10°C以上の温度差が
存在する場合には、冷却動作がなされる。例えば鉛フリーのはんだから共晶はんだに切り替える時には、ゾーンZ3、Z4、Z5のそれぞれのヒータ温度を30°C下げる必要があり、炉内の温度も同様に下げる必要がある。この場合の温度低下を短時間で行うのが冷却動作である。
【0041】
冷却動作は、サブ供給路を通じてN2を追加的に供給する動作と、ラジエターボックス
または冷却兼フラックス回収装置と炉体の間のバルブを全開する動作とによって達成される。例えばゾーンZ3、Z4、Z5のそれぞれの温度を大幅に低下させる動作は、これらのゾーンのヒータをオフとするヒータオフ動作と、ゾーンZ3およびZ5に対するN2 の追加的供給動作と、バルブ73b,74b,75b,83b,84b,85bの全開動作とによってなされる。その結果、これらのゾーンの温度を短時間で低下させることが可能となる。冷却動作によって、温度差が許容範囲内例えば5°C以下となったゾーンからバルブが閉じられるか、フラックス回収に必要な程度までバルブが閉じられる。
【0042】
この発明の一実施の形態では、それぞれが上部炉体および下部炉体で構成される複数のゾーンの全てに対してラジエターボックス41a〜41gが設けられている。したがって、全てのゾーンの温度制御を所望のものとすることができる。また、大幅な冷却の必要性が高いゾーンに対しては、下部炉体に対して冷却兼フラックス回収装置を設けているので、短時間の温度低下を実現できる。さらに、ラジエターボックス41a〜41gを循環させるか否かのみならず、バルブの開き具合によって循環させるガスの流量を制御することができるので、通常運転動作時には、流量を切り替え時に比して少なくしてフラックス回収を行うことができる。しかも、フラックスの発生の程度等を考慮して、通常運転動作時にゾーン毎に独立して流量を制御することができ、効果的なフラックス回収が可能となる。さらに、取り替え動作時においても、フラックス回収動作を継続することができ、効果的なフラックス回収が可能となる。さらに、バルブの制御を自動的に行うことができ、作業効率を高くすることができる。
【0043】
この発明の他の実施の形態について、図6および図7を参照して説明する。図6は、図3と同様に、例えばゾーンZ6を搬送方向に対して直交する面で切断した場合の断面を示す。上部炉体Z6aおよび下部炉体Z6bのそれぞれの構成は、図3を参照して説明したのと同様である。
【0044】
他の実施の形態では、ラジエターボックス41fの代わりに、上部炉体Z6aに対して、冷却兼フラックス回収装置141Aが設けられる。冷却兼フラックス回収装置141Aは、例えば外板で囲まれた空間内で上部炉体Z6aの背面側に設置される。下部炉体Z6bに対して、冷却兼フラックス回収装置161Aが設けられる。冷却兼フラックス回収装置161Aは、例えば外板で囲まれた空間内で上部炉体Z6bの背面側に設置される。冷却兼フラックス回収装置141Aは、上部炉体Z6aから導出された雰囲気ガスを冷却し、冷却によって液化したフラックスを回収する回収部とからなる。同様に、冷却兼フラックス回収装置161Aは、下部炉体Z6bから導出された雰囲気ガスを冷却し、冷却によって液化したフラックスを回収する回収部とからなる。
【0045】
図7は、インライン状に配列された複数のゾーン(上部炉体Z1a,Z2a,・・・,Z7aおよび下部炉体Z1b,Z2b,・・・,Z7bからなる)と、冷却兼フラックス回収装置141A、141B、161Aおよび161Bとの配置の関係を概略的に示す。炉内の雰囲気ガスとしては、不活性ガス例えば窒素ガスN2が使用される。
【0046】
リフロー時には、上部炉体Z1a,Z2a,・・・,Z7aおよび下部炉体Z1b,Z2b,・・・,Z7bの対向間隙を被加熱物が所定の速度で搬送されると共に、これらの上部炉体および下部炉体のそれぞれの温度が予め設定された温度となるように制御される。さらに、送風機の送風量も所定値とされる。
【0047】
下部炉体Z3b,Z4b,Z5b,Z6b,Z7bのそれぞれと関連して冷却兼フラックス回収装置161Aおよび161Bが設けられている。この下部炉体に関連する冷却のための構成は、上述したこの発明の一実施の形態と同様である。冷却動作は、サブ供給路を通じてのN2の追加的供給と、冷却兼フラックス回収装置の循環冷却とによってなされ
る。
【0048】
上部炉体Z3a,Z4a,Z5a,Z6a,Z7aのそれぞれとに関連して冷却兼フラックス回収装置141Aおよび141Bが設置される。これらの冷却兼フラックス回収装置141Aおよび141Bは、冷却兼フラックス回収装置161Aおよび161Bと同様に、空冷および水冷コンデンサ内蔵の循環冷却ボックスの構成とされている。圧力差によって、ボックスに対して、炉体からの雰囲気ガスが導入され、ボックスで充分冷却された雰囲気ガスが炉に対してバルブ73b,74b,75b,76b,77bを通じて戻される。冷却兼フラックス回収装置141Aおよび141Bにおいてフラックス回収がなされる。
【0049】
2の追加的供給に加えて、炉内の雰囲気ガスを冷却兼フラックス回収装置141A,
141B,161A,161Bを循環冷却させることによって、炉内の温度を急速に低下させることによって切り替え作業を短時間で行うことができる。
【0050】
この発明の他の実施の形態においても、バルブ73b〜77bおよび83b〜87bは、流量を0%〜100%の範囲で独立して制御することができる。バルブとしては、コントロールバルブの単独の構成、または開閉バルブと流量制御手段とを組合せ構成を使用することができる。
【0051】
通常運転動作と、はんだの種類、基板の種類等に応じて各ゾーンの設定温度を変更する切り替え動作との両方がなされる。通常運転および切り替え動作の両者において、メインのN2の供給動作は、継続的になされる。切り替え時に、例えば10°C以上の温度差が
存在する場合には、冷却動作がなされる。
【0052】
冷却動作は、サブ供給路を通じてN2を追加的に供給する動作と、冷却兼フラックス回
収装置と炉体との間のバルブを全開する動作とによって達成される。例えばゾーンZ3、Z4、Z5のそれぞれの温度を大幅に低下させる場合には、これらのゾーンのヒータをオフとするヒータオフ動作と、ゾーンZ3およびZ5に対するN2の追加的供給動作と、バ
ルブ73b、74b、75b、83b、84b、85bの全開動作とがなされる。その結果、これらのゾーンの温度を短時間で低下させることが可能となる。冷却動作によって、温度差が許容範囲内例えば5°C以下となったゾーンから、バルブが閉じられるか、フラックス回収に必要な程度、バルブが開けられた状態とされる。
【0053】
この発明の他の実施の形態では、冷却動作が必要とされる可能性のある複数のゾーンに対して冷却兼フラックス回収装置が設けられている。したがって、これらのゾーンの温度制御を所望のものとすることができる。また、上下に冷却兼フラックス回収装置を設けているので、空冷のみに比してより強力な冷却を行うことができ、短時間の温度低下を実現できる。さらに、冷却兼フラックス回収装置を循環させるか否かのみならず、バルブによって循環させるガスの流量を制御することができるので、通常運転動作時には、流量を切り替え時に比して少なくしてフラックス回収を行うことができる。しかも、フラックスの発生の程度等を考慮して、通常運転動作時にゾーン毎に独立して流量を制御することができ、効果的なフラックス回収が可能となる。さらに、切り替え動作時においてもフラックス回収動作を継続させることができ、効果的なフラックス回収が可能となる。さらに、バルブの制御を自動的に行うことができ、作業効率を高くすることができる。
【0054】
以上、この発明の実施の形態について具体的に説明したが、この発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。例えばこの発明による冷却動作は、はんだの種類以外の切り替例えば温度プロファイルの切り替えに対しても適用することができる。さらに、ラジエターボックス或いは冷却兼フラックス回収装置からガスを炉体内に戻す場合に、炉内の温度の低下を防止するために、戻すガスを加熱してから戻すようにしても良い。さらに、冷却兼フラックス回収装置を全ゾーンに対して共通に設けるようにしても良く、逆に、ゾーン毎に設けるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】この発明の一実施の形態によるリフロー装置の概略を示す略線図である。
【図2】リフロー時の温度プロファイルの例を示すグラフである。
【図3】この発明の一実施の形態によるリフロー装置の一つのゾーンの構成の一例を示す断面図である。
【図4】この発明の一実施の形態における上部炉体におけるガスの流れを模式的に示す略線図である。
【図5】この発明の一実施の形態におけるラジエターボックスおよび冷却兼フラックス回収装置とリフロー装置との配置関係の説明に用いる略線図である。
【図6】この発明の他の実施の形態によるリフロー装置の一つのゾーンの構成の一例を示す断面図である。
【図7】この発明の他の実施の形態におけるラジエターボックスおよび冷却兼フラックス回収装置とリフロー装置との配置関係の説明に用いる略線図である。
【符号の説明】
【0056】
11・・・搬入口
12・・・搬出口
14・・・強制冷却ユニット
Z1a〜Z7a・・・上部炉体
Z1b〜Z7b・・・下部炉体
16,26・・・送風機
18,28・・・ヒータ
19,29・・・パネル
31・・・搬送コンベヤ
41a〜41g・・・ラジエターボックス
61A,61B,141A,141B,161A,161B・・・冷却兼フラックス回収装置
71a〜77a,83a〜87a・・・ダクト
71b〜77b,83b〜87b・・・バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される被加熱物の搬送路に沿って複数のゾーンにリフロー炉が順次分割され、上記複数のゾーンの温度を制御することによって、搬送される上記被加熱物をリフローするリフロー装置において、
上記複数のゾーンの中の一部または全てのゾーンの炉体内の雰囲気ガスを循環冷却させると共に、フラックスを回収する冷却兼フラックス回収装置と、
上記各ゾーンの上記雰囲気ガスの循環経路中に挿入され、流量が制御可能な流量制御部とを備え、
フラックス回収時に比してゾーンの温度を低下させる時に上記流量制御部を制御することによって上記流量をより多くするようにしたリフロー装置。
【請求項2】
上記ゾーンのそれぞれの炉体が上部炉体と下部炉体とから構成され、上記上部炉体と上記下部炉体のそれぞれに対して上記冷却兼フラックス回収装置および上記流量制御部が独立して設けられた請求項1記載のリフロー装置。
【請求項3】
上記複数のゾーンの中で、上記ゾーン内の設定温度を変更する場合に、1または複数の上記ゾーンに対して、上記ゾーン内のガスに比して低温のガスを追加的に導入するようにした請求項1記載のリフロー装置。
【請求項4】
上記炉体のガスが上記送風機により発生する圧力の高い箇所から上記冷却兼フラックス回収装置に対して供給され、
上記送風機により発生する圧力の低い箇所に対して上記冷却兼フラックス回収装置からのガスが供給される請求項1記載のリフロー装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−190061(P2009−190061A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−33415(P2008−33415)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(390005223)株式会社タムラ製作所 (526)
【出願人】(596126867)株式会社タムラエフエーシステム (46)
【Fターム(参考)】