説明

レイアウト設計装置、レイアウト設計方法、レイアウト設計プログラム、および記録媒体

【課題】簡単かつ効率的なLSIチップのレイアウト設計をおこなうことにより、LSIチップの製造期間の短縮化および製造コストの低廉化を図ること。
【解決手段】第3配線層データ303に形成されている残余のグローバル配線データ701、702と、第5配線層データ305に形成されている固定信号線分データ402とを接続する。具体的には、接続部207は、第5配線層データ305と第3配線層データ303の高さ情報の差分を長さとする接続信号線分データ901、902を生成する。そして、この接続信号線分データ901、902を、消去部206による消去処理によって生成された残余のグローバル配線データ701、702の端部と、固定信号線分データ402の端部との間に配線する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、LSIチップのレイアウト設計をおこなうレイアウト設計装置、レイアウト設計方法、レイアウト設計プログラム、および記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、LSIチップのレイアウトでは、ネットリストからユーザのネットを用いて、LSIチップを複数の格子に分割して最適な配線経路をCADにより探索してグローバル配線をおこない、この後にLSIチップの各格子内の詳細配線をおこなうという、2段階の配線処理をおこなっていた(たとえば、下記特許文献1〜4を参照。)。
【0003】
また近年、タイミング収束作業をおこなうための工数の減少、および設計時間の短縮化を図るため、あらかじめ設計済みのSCAN回路やBIST回路が埋め込まれたストラクチャードASICが開発されている(たとえば、下記非特許文献1を参照。)。このストラクチャードASICでは、多層構造の配線層のうち、複数の基本配線層が共通化されており、残余の配線層は、ユーザの仕様に合わせてカスタマイズできるカスタマイズ配線層とされている。
【0004】
【特許文献1】特開平1−207947号公報
【特許文献2】特開平5−160375号公報
【特許文献3】特開平5−181936号公報
【特許文献4】特開平7−86404号公報
【非特許文献1】“富士通株式会社ホームページ” [online]、[2004年5月6日検索]、 インターネット<URL:http://pr.fujitsu.com/jp/news/2003/06/26.html>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1〜4の従来技術では、LSIチップの各格子内に配線されたグローバル配線が、当該格子内に配置されたセルを通過する場合、詳細配線処理において、同一層内で格子内のセルを迂回するように詳細配線をおこなったり、または、他の配線層に迂回して詳細配線をおこなっていた。
【0006】
したがって、非特許文献1の従来技術のようなストラクチャードASICにおいて、上述した詳細配線処理によってレイアウト設計をおこなうと、カスタマイズ配線層の配線パターンがLSIチップごとに異なる場合がある。このため、LSIチップの製造工程が複雑化し、製造期間が長期化するという問題があった。またこれにより、製造コストも増加して、安価なLSIチップを供給できないという問題があった。
【0007】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、簡単かつ効率的なLSIチップのレイアウト設計をおこなうことにより、LSIチップの製造期間の短縮化および製造コストの低廉化を図ることができるレイアウト設計装置、レイアウト設計方法、レイアウト設計プログラム、および記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、この発明にかかるレイアウト設計装置、レイアウト設計方法、レイアウト設計プログラム、および記録媒体は、端子に接続されていない信号線分が形成されているセルをLSIチップ上に配置し、前記LSIチップの任意の配線層に信号線を配線し、配置されたセルの信号線分と、配線された信号線とを接続することを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、LSIチップの任意の配線層に配線された信号線を、セルの配置により当該配線層とは異なる他の配線層に配線されている信号線分にアサインすることができる。
【0010】
また、配線された信号線のうち、配置されたセルを通過する一部の信号線を消去し、配置されたセルの信号線分と、配線された信号線のうち、消去された一部の信号線以外の残余の信号線とを接続することとしてもよい。
【0011】
この発明によれば、セルを通過する一部の信号線を、配置されたセルの信号線分にアサインすることができる。
【0012】
さらに、配線された信号線が、配置されたセルを通過するかどうかを検出し、前記信号線が前記セルを通過することが検出された場合、前記一部の信号線を消去することとしてもよい。
【0013】
この発明によれば、セルを通過する一部の信号線を自動検出して、レイアウト設計処理の効率化を図ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかるレイアウト設計装置、レイアウト設計方法、レイアウト設計プログラム、および記録媒体によれば、簡単かつ効率的なLSIチップのレイアウト設計をおこなうことにより、LSIチップの製造期間の短縮化および製造コストの低廉化を図ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかるレイアウト設計装置、レイアウト設計方法、レイアウト設計プログラム、および記録媒体の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、下記の実施の形態にかかるレイアウト設計装置およびレイアウト設計方法は、たとえば、この実施の形態にかかるレイアウト設計プログラムが記録された記録媒体を備えるCADによって実現することができる。
【0016】
(実施の形態)
(レイアウト設計装置のハードウェア構成)
まず、この発明の実施の形態にかかるレイアウト設計装置のハードウェア構成について説明する。図1は、この発明の実施の形態にかかるレイアウト設計装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0017】
図1において、レイアウト設計装置は、CPU101と、ROM102と、RAM103と、HDD(ハードディスクドライブ)104と、HD(ハードディスク)105と、FDD(フレキシブルディスクドライブ)106と、着脱可能な記録媒体の一例としてのFD(フレキシブルディスク)107と、ディスプレイ108と、I/F(インターフェース)109と、キーボード110と、マウス111と、スキャナ112と、プリンタ113と、を備えている。また、各構成部はバス100によってそれぞれ接続されている。
【0018】
ここで、CPU101は、レイアウト設計装置の全体の制御を司る。ROM102は、ブートプログラムなどのプログラムを記憶している。RAM103は、CPU101のワークエリアとして使用される。HDD104は、CPU101の制御にしたがってHD105に対するデータのリード/ライトを制御する。HD105は、HDD104の制御で書き込まれたデータを記憶する。
【0019】
FDD106は、CPU101の制御にしたがってFD107に対するデータのリード/ライトを制御する。FD107は、FDD106の制御で書き込まれたデータを記憶したり、FD107に記憶されたデータをレイアウト設計装置に読み取らせたりする。
【0020】
また、着脱可能な記録媒体として、FD107のほか、CD−ROM(CD−R、CD−RW)、MO、DVD(Digital Versatile Disk)、メモリーカードなどであってもよい。ディスプレイ108は、カーソル、アイコンあるいはツールボックスをはじめ、文書、画像、機能情報などのデータを表示する。このディスプレイ108は、たとえば、CRT、TFT液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイなどを採用することができる。
【0021】
I/F109は、通信回線を通じてインターネットなどのネットワーク114に接続され、このネットワーク114を介して他の装置に接続される。そして、I/F109は、ネットワーク114と内部のインターフェースを司り、外部装置からのデータの入出力を制御する。I/F109には、たとえばモデムやLANアダプタなどを採用することができる。
【0022】
キーボード110は、文字、数字、各種指示などの入力のためのキーを備え、データの入力をおこなう。また、タッチパネル式の入力パッドやテンキーなどであってもよい。マウス111は、カーソルの移動や範囲選択、あるいはウィンドウの移動やサイズの変更などをおこなう。ポインティングデバイスとして同様に機能を備えるものであれば、トラックボールやジョイスティックなどであってもよい。
【0023】
スキャナ112は、画像を光学的に読み取り、レイアウト設計装置内に画像データを取り込む。なお、スキャナ112は、OCR機能を持たせてもよい。また、プリンタ113は、画像データや文書データを印刷する。プリンタ113には、たとえば、レーザプリンタやインクジェットプリンタを採用することができる。
【0024】
(レイアウト設計装置の機能的構成)
つぎに、この発明の実施の形態にかかるレイアウト設計装置の機能的構成について説明する。図2は、この発明の実施の形態にかかるレイアウト設計装置の機能的構成を示すブロック図である。
【0025】
図2において、レイアウト設計装置200は、記憶部201と、配置部202と、チャネル形成部203と、探索部204と、配線部205と、消去部206と、接続部207と、検出部208と、から構成されている。記憶部201は、ユーザのネットリストを記憶する。この記憶部201は、図1に示したRAM103、HD105、FD107などの読み書き可能な記録媒体によってその機能を実現する。
【0026】
配置部202は、記憶部201からネットリストを抽出して、端子に接続されていない固定信号線分が形成されているセルをLSIチップ上に配置する。ここで、LSIチップは、たとえば、あらかじめ設計済みのSCAN回路やBIST回路が埋め込まれたストラクチャードASICである。具体的な構造としては、半導体基板に複数の配線層が積層された多層配線構造とされている。
【0027】
また、この配置部202は、具体的には、端子に接続されていない固定信号線分が形成されているセルをLSIチップ上に配置するように、当該セルに関するセルデータを入力する。このセルは、インバータ、組み合わせ回路、FFなどのほか、PLLやRAMなど特定の機能を有するマクロセルを含むものである。また固定信号線分は、セルの端子に接続されていない信号線分であり、本発明のためにあらかじめ用意されたものである。ここで、LSIチップに関するLSIチップデータの一部について説明する。図3は、LSIチップに関するLSIチップデータの一部を示す概略斜視図である。
【0028】
図3において、LSIチップデータ300は、半導体基板に関する基板データ310と、半導体基板の表面となる第1配線層に関する第1配線層データ301と、半導体基板に積層されている第2〜第6配線層に関する第2〜第6配線層データ302〜306とを有している。図示しないが、第1、第3、第5配線層は、配線方向が同一であり、第2、第4、第6配線層は、配線方向が同一である。また、第1、第3、第5配線層の配線方向と、第2、第4、第6配線層の配線方向とは直交している。
【0029】
つぎに、LSIチップの任意の格子に配置されたセルに関するセルデータについて説明する。図4は、LSIチップの任意の格子に配置されたセルに関するセルデータ400を示す概略斜視図である。図4において、このセルデータ400は、セルの上面に形成された複数(図4では4本)の固定信号線分が形成されているセルに関する情報である。
【0030】
セルデータ400は、基板表面(第1配線層データ301)からの高さをあらわす高さ情報(高さ方向の座標値)も有している。第5配線層データ305には、セルの上面に関する上面データ401と、セルの上面に形成された固定信号線分に関する固定信号線分データ402と、当該固定信号線分データ402の形成領域403とが、あらわされている。
【0031】
また、チャネル形成部203は、固定信号線分が形成されている配線層以外の配線層のうち、配置されたセルを重複する領域にチャネルを形成する。具体的には、セルデータ400の配置処理により、固定信号線分データ402がない配線層データにチャネルに関するチャネルデータを生成する。チャネルデータが生成される配線層データは、固定信号線分データ402を有する配線層データ以外の配線層データである。
【0032】
また、チャネルデータが生成される配線層データは、固定信号線分データ402の配線方向と同一配線方向の配線層データである。また、チャネルデータが生成される領域は、固定信号線分データ402の形成領域403と同一の大きさであり、形成領域403とは高さ方向の座標値が異なる領域である。
【0033】
このチャネルの形成処理について具体的に説明する。図5は、この発明の実施の形態にかかるチャネルの形成処理を示す説明図である。図4に示したセルの配置処理により、図5に示した第5配線層データ305には、固定信号線分データ402を有するセルの上面データ401が形成されている。このセルの配置処理により、チャネル形成対象となる配線層データとして、配線方向が同一である第1配線層データ301または第3配線層データ303が決定される。ここでは一例として第3配線層データ303が決定されたこととする。
【0034】
第3配線層データ303において、配置されたセルデータ400の上面データ401のうち、固定信号線分データ402を含む形成領域403と高さ方向の座標値のみが異なる領域が指定され、この指定領域500にチャネルデータ501を形成する。
【0035】
また、探索部204は、記憶部201からネットリストを抽出して、LSIチップ上に配線されるグローバル配線の配線経路を探索する。図6は、探索された配線経路の一例を示す説明図である。LSIチップをあらわすLSIチップデータ300は、複数の格子データに分割されている。そして、始点となる端子情報601を有する格子データ610から終点となる端子情報602を有する格子データ620までの最短となる配線経路600を探索する。この探索処理は、たとえば、迷路法などの周知の手法によっておこなうことができる。
【0036】
配線部205は、LSIチップの任意の配線層に信号線を配線する。具体的には、LSIチップの任意の配線層に信号線を配線するように、当該信号線に関する信号線データを入力する。この信号線データの入力処理(配線処理)は、配置部202によって配置処理されたセルデータ400(図4を参照。)と、チャネル形成部203によって形成されたチャネルデータ501(図5を参照。)と、探索部204によって探索されたグローバル配線の配線経路(図6を参照。)と、を用いておこなう。
【0037】
図7は、この発明の実施の形態にかかるグローバル配線処理を示す説明図である。このグローバル配線処理は、図5に示したチャネルデータ501を有する第3配線層データ303におこなった配線処理である。図7において、探索部204によって探索された配線経路600にしたがって、第3配線層データ303にグローバル配線データ700の配線処理をおこなう。グローバル配線データ700がセルデータ400を通過する場合、チャネルデータ501を通過するように、グローバル配線データ700を配線する。
【0038】
また、消去部206は、配線部205によって配線された信号線のうち、配置部202によって配置されたセルを通過する一部の信号線を消去する。具体的には、配線部205によって配線されたグローバル配線データ700のうち、配置部202によって配置されたセルデータ400を通過する一部のグローバル配線データを消去する。ここで、この配線消去処理をより具体的に説明する。図8は、この発明の実施の形態にかかる配線消去処理を示す説明図である。この配線消去処理は、図7に示したグローバル配線データ700およびチャネルデータ501を有する第3配線層データ303におこなった処理である。
【0039】
図8において、配線部205によって配線されたグローバル配線データ700のうち、チャネルデータ501内に存在する一部のグローバル配線データ710を消去する。この消去処理は、設計者が、図1に示したキーボード110やマウス111を用いて一部のグローバル配線データ710を消去してもよく、また、後述する検出部208によって検出された一部のグローバル配線データ710を消去することとしてもよい。
【0040】
接続部207は、配置部202によって配置されたセルの固定信号線分と、配線部205によって配線された信号線とを接続する。具体的には、配置部202によって配置されたセルデータ400の固定信号線分データ402と、配線部205によって配線されたグローバル配線データ700とを接続する。すなわち、接続部207は、固定信号線分データ402と、消去部206によって消去された一部のグローバル配線データ710以外の残余のグローバル配線データとを接続する。
【0041】
ここで、この接続処理をより具体的に説明する。図9は、この発明の実施の形態にかかる接続処理を示す説明図である。この接続処理は、図8において第3配線層データ303に形成されている残余のグローバル配線データ701、702と、第5配線層データ305に形成されている固定信号線分データ402との接続をおこなった処理である。
【0042】
図9において、接続部207は、第5配線層データ305と第3配線層データ303の高さ情報の差分を長さとする接続信号線分データ901、902を生成する。そして、この接続信号線分データ901、902を、消去部206による消去処理によって生成された残余のグローバル配線データ701、702の端部と、固定信号線分データ402の端部との間に配線する。
【0043】
また、検出部208は、配線部205によって配線されたグローバル配線データ700(図7を参照。)が、配置部202によって配置されたセルデータ400(図4を参照。)を通過するかどうかを検出する。具体的には、図8において、配線部205によって配線されたグローバル配線データ700のうち、チャネルデータ501内に存在する一部のグローバル配線データ710を検出する。
【0044】
この検出処理は、グローバル配線データ700の座標値と、チャネルデータ501の座標値を比較することによって検出することができる。この場合、消去部206は、検出部208によって検出された一部のグローバル配線を消去することとなる。これにより、消去処理を自動実行することができる。
【0045】
なお、上述した配置部202、探索部204、配線部205、消去部206、接続部207、および検出部208は、具体的には、たとえば、図1に示したROM102、RAM103、HD105、FD107等に記録されたプログラムを、CPU101が実行することによってその機能を実現する。
【0046】
(レイアウト設計処理手順)
つぎに、この発明の実施の形態にかかるレイアウト設計処理手順について説明する。図10は、この発明の実施の形態にかかるレイアウト設計処理手順を示すフローチャートである。
【0047】
図10において、まず、セルの配置処理をおこなう(ステップS1001)。このセルの配置処理は、具体的には、図4に示したように、LSIチップデータ300にセルデータ400を配置するように入力する。これにより、第5配線層データ305には、固定信号線分データ402を有するセルの上面データ401が形成される。
【0048】
つぎに、チャネルの形成処理をおこなう(ステップS1002)。このチャネルの形成処理は、図5に示したように、セルの配置処理により、チャネル形成対象となる配線層データとして、配線方向が同一である第3配線層データ303が決定される。そして、第3配線層データ303において、配置されたセルデータ400の上面データ401のうち、固定信号線分データ402を含む形成領域403と高さ方向の座標値のみが異なる領域が指定され、この指定領域500にチャネルデータ501を形成する。
【0049】
そして、グローバル配線の配線経路600を探索し、探索された配線経路600にしたがってグローバル配線処理をおこなう(ステップS1003)。このグローバル配線処理は、図7に示したように、第3配線層データ303上にグローバル配線データ700を重畳する。
【0050】
このあと、配線処理されたグローバル配線が、チャネルを通過しているかどうかを判断する(ステップS1004)。この判断は、設計者が表示画面からグローバル配線データ700がチャネルデータ501に重畳されているかどうかを視認することによって判断してもよく、また、検出部208によってグローバル配線データ700がチャネルデータ501に重畳されているかどうかを検出することとしてもよい。
【0051】
グローバル配線がチャネルを通過していない場合(ステップS1004:No)、当該チャネルの消去処理をおこなう(ステップS1005)。一方、グローバル配線がチャネルを通過している場合(ステップS1004:Yes)、配線消去処理をおこなう(ステップS1006)。この配線消去処理は、図8に示したように、配線部205によって配線されたグローバル配線データ700のうち、チャネルデータ501内に存在する一部のグローバル配線データ710を消去する。
【0052】
この配線消去処理のあと、接続処理をおこなう(ステップS1007)。この接続処理では、図9に示したように、第3配線層データ303に形成されている残余のグローバル配線データ701、702と、第5配線層データ305に形成されている固定信号線分データ402とを接続する。
【0053】
そして、接続処理(ステップS1007)またはチャネル消去処理(ステップS1005)のあと、詳細配線処理をおこなう(ステップS1008)。この詳細配線処理は、図3に示したLSIチップの各格子内でおこなう配線処理である。
【0054】
この実施の形態によれば、あらかじめ用意された固定信号線分により、たとえば、上述した第5配線層を固定配線層とすることができ、セルを乗り越えるための配線層として位置づけることができる。したがって、レイアウト設計されたLSIチップデータ300を用いてLSIチップを製造する場合、固定配線層については、固定信号線分だけの配線層となり、その他あらたな配線がされていないため、LSIチップごとのマスク層のパターンを単一パターンに固定することができる。これにより、製造コストの低減化および製造期間の短縮化を図ることができる。
【0055】
また、グローバル配線を自由におこない、この配線処理されたグローバル配線を固定信号線分にアサインするため、グローバル配線前にあらかじめアサインしておく場合にくらべて、無駄のない、より最適なレイアウト設計をおこなうことができる。
【0056】
さらに、グローバル配線前にチャネルを設定し、グローバル配線後に固定信号線分をアサインするだけであるため、グローバル配線のコアである経路探索処理の改造が不要であり、既存の経路探索アルゴリズムをそのまま流用することができ、汎用性の高いレイアウト設計をおこなうことができる。
【0057】
以上説明したように、レイアウト設計装置、レイアウト設計方法、レイアウト設計プログラム、および記録媒体によれば、セルに固定信号線分をあらかじめ設置しておき、これをグローバル配線の配線経路の一部として利用して配線することによって、セル上を通過するための配線層におけるパターンを固定化し、LSIチップ毎に必要となるマスク層数を減少できるという効果を奏する。
【0058】
なお、本実施の形態で説明したレイアウト設計方法は、予め用意されたプログラムをパーソナル・コンピュータやワークステーション、CAD等のコンピュータで実行することにより実現することができる。このプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク、CD−ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行される。またこのプログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することが可能な伝送媒体であってもよい。
【0059】
(付記1)端子に接続されていない信号線分が形成されているセルをLSIチップ上に配置する配置手段と、
前記LSIチップの任意の配線層に信号線を配線する配線手段と、
前記配置手段によって配置されたセルの信号線分と、前記配線手段によって配線された信号線とを接続する接続手段と、
を備えることを特徴とするレイアウト設計装置。
【0060】
(付記2)さらに、前記配線手段によって配線された信号線のうち、前記配置手段によって配置されたセルを通過する一部の信号線を消去する消去手段を備え、
前記接続手段は、
前記配置手段によって配置されたセルの信号線分と、前記配線手段によって配線された信号線のうち、前記消去手段によって消去された一部の信号線以外の残余の信号線とを接続することを特徴とする付記1に記載のレイアウト設計装置。
【0061】
(付記3)前記配線手段によって配線された信号線が、前記配置手段によって配置されたセルを通過するかどうかを検出する検出手段を備え、
前記消去手段は、
前記検出手段によって前記信号線が前記セルを通過することが検出された場合、前記一部の信号線を消去することを特徴とする付記2に記載のレイアウト設計装置。
【0062】
(付記4)端子に接続されていない固定信号線が形成されているセルをLSIチップ上に配置するように、当該セルに関する情報を入力するセル情報入力手段と、
前記LSIチップの任意の配線層に信号線を配線するように、当該信号線に関する情報を入力する信号線情報入力手段と、
前記セル情報入力手段によって入力されたセルに関する情報に含まれている固定信号線に関する情報と、前記信号線情報入力手段によって入力された信号線に関する情報とを接続する接続手段と、
を備えることを特徴とするレイアウト設計装置。
【0063】
(付記5)端子に接続されていない信号線分が形成されているセルをLSIチップ上に配置する配置工程と、
前記LSIチップの任意の配線層に信号線を配線する配線工程と、
前記配置工程によって配置されたセルの信号線分と、前記配線工程によって配線された信号線とを接続する接続工程と、
を含んだことを特徴とするレイアウト設計方法。
【0064】
(付記6)さらに、前記配線工程によって配線された信号線のうち、前記配置工程によって配置されたセルを通過する一部の信号線を消去する消去工程を含み、
前記接続工程は、
前記配置工程によって配置されたセルの信号線分と、前記配線工程によって配線された信号線のうち、前記消去工程によって消去された一部の信号線以外の残余の信号線とを接続することを特徴とする付記5に記載のレイアウト設計方法。
【0065】
(付記7)前記配線工程によって配線された信号線が、前記配置工程によって配置されたセルを通過するかどうかを検出する検出工程を含み、
前記消去工程は、
前記検出工程によって前記信号線が前記セルを通過することが検出された場合、前記一部の信号線を消去することを特徴とする付記6に記載のレイアウト設計方法。
【0066】
(付記8)端子に接続されていない固定信号線が形成されているセルをLSIチップ上に配置するように、当該セルに関する情報を入力するセル情報入力工程と、
前記LSIチップの任意の配線層に信号線を配線するように、当該信号線に関する情報を入力する信号線情報入力工程と、
前記セル情報入力工程によって入力されたセルに関する情報に含まれている固定信号線に関する情報と、前記信号線情報入力工程によって入力された信号線に関する情報とを接続する接続工程と、
を含んだことを特徴とするレイアウト設計方法。
【0067】
(付記9)端子に接続されていない信号線分が形成されているセルをLSIチップ上に配置させる配置工程と、
前記LSIチップの任意の配線層に信号線を配線させる配線工程と、
前記配置工程によって配置されたセルの信号線分と、前記配線工程によって配線された信号線とを接続させる接続工程と、
をコンピュータに実行させることを特徴とするレイアウト設計プログラム。
【0068】
(付記10)さらに、前記配線工程によって配線された信号線のうち、前記配置工程によって配置されたセルを通過する一部の信号線を消去させる消去工程を含み、
前記接続工程は、
前記配置工程によって配置されたセルの信号線分と、前記配線工程によって配線された信号線のうち、前記消去工程によって消去された一部の信号線以外の残余の信号線とを接続させることを特徴とする付記9に記載のレイアウト設計プログラム。
【0069】
(付記11)前記配線工程によって配線された信号線が、前記配置工程によって配置されたセルを通過するかどうかを検出させる検出工程を含み、
前記消去工程は、
前記検出工程によって前記信号線が前記セルを通過することが検出された場合、前記一部の信号線を消去させることを特徴とする付記10に記載のレイアウト設計プログラム。
【0070】
(付記12)端子に接続されていない固定信号線が形成されているセルをLSIチップ上に配置するように、当該セルに関する情報を入力させるセル情報入力工程と、
前記LSIチップの任意の配線層に信号線を配線するように、当該信号線に関する情報を入力させる信号線情報入力工程と、
前記セル情報入力工程によって入力されたセルに関する情報に含まれている固定信号線に関する情報と、前記信号線情報入力工程によって入力された信号線に関する情報とを接続させる接続工程と、
をコンピュータに実行させることを特徴とするレイアウト設計プログラム。
【0071】
(付記13)付記9〜12のいずれか一つに記載のレイアウト設計プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【産業上の利用可能性】
【0072】
以上のように、本発明にかかるレイアウト設計装置、レイアウト設計方法、レイアウト設計プログラム、および記録媒体は、システムLSIのレイアウト設計に有用であり、特に、ストラクチャードASICに適している。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】この発明の実施の形態にかかるレイアウト設計装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態にかかるレイアウト設計装置の機能的構成を示すブロック図である。
【図3】LSIチップに関するLSIチップデータの一部を示す概略斜視図である。
【図4】LSIチップの任意の格子に配置されたセルに関するセルデータ400を示す概略斜視図である。
【図5】この発明の実施の形態にかかるチャネルの形成処理を示す説明図である。
【図6】探索された配線経路の一例を示す説明図である。
【図7】この発明の実施の形態にかかるグローバル配線処理を示す説明図である。
【図8】この発明の実施の形態にかかる配線消去処理を示す説明図である。
【図9】この発明の実施の形態にかかる接続処理を示す説明図である。
【図10】この発明の実施の形態にかかるレイアウト設計処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0074】
200 レイアウト設計装置
202 配置部
205 配線部
206 消去部
207 接続部
208 検出部
400 セルデータ
402 固定信号線分データ
501 チャネルデータ
700 グローバル配線データ
710 一部のグローバル配線データ
701,702 残余のグローバル配線データ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子に接続されていない信号線分が形成されているセルをLSIチップ上に配置する配置手段と、
前記LSIチップの任意の配線層に信号線を配線する配線手段と、
前記配置手段によって配置されたセルの信号線分と、前記配線手段によって配線された信号線とを接続する接続手段と、
を備えることを特徴とするレイアウト設計装置。
【請求項2】
さらに、前記配線手段によって配線された信号線のうち、前記配置手段によって配置されたセルを通過する一部の信号線を消去する消去手段を備え、
前記接続手段は、
前記配置手段によって配置されたセルの信号線分と、前記配線手段によって配線された信号線のうち、前記消去手段によって消去された一部の信号線以外の残余の信号線とを接続することを特徴とする請求項1に記載のレイアウト設計装置。
【請求項3】
前記配線手段によって配線された信号線が、前記配置手段によって配置されたセルを通過するかどうかを検出する検出手段を備え、
前記消去手段は、
前記検出手段によって前記信号線が前記セルを通過することが検出された場合、前記一部の信号線を消去することを特徴とする請求項2に記載のレイアウト設計装置。
【請求項4】
端子に接続されていない信号線分が形成されているセルをLSIチップ上に配置する配置工程と、
前記LSIチップの任意の配線層に信号線を配線する配線工程と、
前記配置工程によって配置されたセルの信号線分と、前記配線工程によって配線された信号線とを接続する接続工程と、
を含んだことを特徴とするレイアウト設計方法。
【請求項5】
さらに、前記配線工程によって配線された信号線のうち、前記配置工程によって配置されたセルを通過する一部の信号線を消去する消去工程を含み、
前記接続工程は、
前記配置工程によって配置されたセルの信号線分と、前記配線工程によって配線された信号線のうち、前記消去工程によって消去された一部の信号線以外の残余の信号線とを接続することを特徴とする請求項4に記載のレイアウト設計方法。
【請求項6】
前記配線工程によって配線された信号線が、前記配置工程によって配置されたセルを通過するかどうかを検出する検出工程を含み、
前記消去工程は、
前記検出工程によって前記信号線が前記セルを通過することが検出された場合、前記一部の信号線を消去することを特徴とする請求項5に記載のレイアウト設計方法。
【請求項7】
端子に接続されていない信号線分が形成されているセルをLSIチップ上に配置させる配置工程と、
前記LSIチップの任意の配線層に信号線を配線させる配線工程と、
前記配置工程によって配置されたセルの信号線分と、前記配線工程によって配線された信号線とを接続させる接続工程と、
をコンピュータに実行させることを特徴とするレイアウト設計プログラム。
【請求項8】
さらに、前記配線工程によって配線された信号線のうち、前記配置工程によって配置されたセルを通過する一部の信号線を消去させる消去工程を含み、
前記接続工程は、
前記配置工程によって配置されたセルの信号線分と、前記配線工程によって配線された信号線のうち、前記消去工程によって消去された一部の信号線以外の残余の信号線とを接続させることを特徴とする請求項7に記載のレイアウト設計プログラム。
【請求項9】
前記配線工程によって配線された信号線が、前記配置工程によって配置されたセルを通過するかどうかを検出させる検出工程を含み、
前記消去工程は、
前記検出工程によって前記信号線が前記セルを通過することが検出された場合、前記一部の信号線を消去させることを特徴とする請求項8に記載のレイアウト設計プログラム。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれか一つに記載のレイアウト設計プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−5018(P2006−5018A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−177478(P2004−177478)
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】