説明

レジストパターンの作製方法

【課題】少なくとも(a)基板上に光架橋性樹脂層を形成する工程、(b)光架橋性樹脂層の薄膜化処理を行う工程、(d)回路パターンの露光工程、(e)現像工程を含むレジストパターンの作製方法において、搬送工程や露光工程で光架橋性樹脂層表面に傷や異物の付着がなく、密着露光を行ってもフォトツールを汚染しないレジストパターンの作製方法を提供することである。また、光架橋性樹脂層に段差があっても、段差周囲で光の屈折による線太りや酸素による重合阻害を生じることのないレジストパターンの作製方法を提供することである。
【解決手段】(b)光架橋性樹脂層の薄膜化処理を行う工程の後に、(f)透明性フィルムと非感光性のアルカリ可溶性粘着層が積層したマスキングフィルムを光架橋性樹脂層上に貼り付ける工程を含み、(c)回路パターンの露光工程後に、(g)透明性フィルムを除去する工程を含むレジストパターンの作製方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細回路形成用エッチングレジスト又はソルダーレジスト等のレジストパターンの作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板やリードフレームの製造方法として、表面に導電層を設けた絶縁性基板あるいは導電性基板の回路部にエッチングレジスト層を設け、露出している非回路部の導電層をエッチング除去して導電パターンを形成するサブトラクティブ法がある。また、絶縁性基板の回路部にメッキ法で導電層を設けていくアディティブ法やセミアディティブ法がある。
【0003】
近年の電子機器の小型、多機能化に伴い、機器内部に使用されるプリント配線板やリードフレームも高密度化や導電パターンの微細化が進められており、サブトラクティブ法により、現在では導体幅が50〜80μm未満、導体間隙が50〜80μmの導電パターンが製造されている。また、さらなる高密度化、微細配線化が進み、導体幅あるいは導体間隙50μm未満の超微細な導電パターンが求められるようになってきている。それに伴って、導電パターンの精度やインピーダンスの要求も高くなっている。このような微細な導電パターンを形成するため、従来から、サブトラクティブ法に代わり、セミアディティブ法が検討されているが、製造工程が大幅に増加するという問題や電解メッキ銅の接着強度不足等の問題があった。そのため、サブトラクティブ法でプリント配線板やリードフレームを製造するのが主流となっている。
【0004】
サブトラクティブ法において、エッチングレジスト層は、感光性材料を用いた露光現像工程を有するフォトファブリケーション法、スクリーン印刷法、インクジェット法等によって形成される。この中でも、フォトファブリケーション法におけるネガ型のドライフィルムレジストと呼ばれるシート状の光架橋性樹脂層を用いた方法は、取り扱い性に優れ、テンティングによるスルーホールの保護が可能なことから好適に用いられている。
【0005】
光架橋性樹脂層を用いた方法では、基板上に光架橋性樹脂層を形成し、露光、現像工程を経てエッチングレジスト層が形成される。微細な導電パターンを形成するためには、微細なエッチングレジスト層を形成させることが必要不可欠である。このために、できる限りレジスト膜厚を薄くする必要がある。光架橋性樹脂層として一般的なドライフィルムレジストでは、例えば、10μm以下の膜厚にすると、ゴミを核とした気泡の混入や凹凸追従性の低下が原因となり、レジスト層の剥がれや断線が発生するという問題があり、微細なエッチングレジスト層を形成させることは困難であった。
【0006】
このような問題を解決すべく、あらかじめ基板上に厚い光架橋性樹脂層を形成し、次に、高濃度の無機アルカリ性化合物を含むアルカリ水溶液を用いて光架橋性樹脂層を薄膜化した後、回路パターンの露光、現像を行ってエッチングレジスト層を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
この方法によると、薄膜で微細なエッチングレジスト層を形成させることが可能であった。しかしながら、従来のドライフィルムレジストであれば、支持フィルムとして主にポリエステルフィルムが現像工程前まで光架橋性樹脂層を保護する状態で積層されているため、搬送工程や露光工程で傷や異物の付着といった問題が発生しにくかったが、上記方法においては、光架橋性樹脂層を薄膜化した後、その膜表面が剥き出しになっているため、傷や異物の付着、光架橋性樹脂層からの転写によるフォトツールの汚染の問題があった。
【0008】
この問題を解決するために、特許文献1では、光架橋性樹脂層を薄膜化処理した後、光架橋性樹脂層上に透明性フィルムを再積層する工程を含む導電パターンの作製方法が提案されている。しかしながら、透明性フィルムを熱圧着で貼り付けただけでは、透明性フィルムと光架橋性樹脂層との密着性が悪く、例えば、露光前にクリーニングローラーを通した場合など、透明性フィルムが剥がれてしまうという問題があった。
【0009】
また、特許文献1には、孔を有する回路基板の作製方法においても、微細なエッチングレジスト層を形成させるために、薄膜化処理を行う方法が提案されている。具体的には(a)孔を有する基板上に光架橋性樹脂層を形成する工程、(i)孔上及びその周囲部(以下、「ランド部」ともいう)の光架橋性樹脂層を硬化させる工程、(b′)アルカリ水溶液によって未硬化部の光架橋性樹脂層の薄膜化処理を行う工程、(c)回路パターンの露光工程、(d)現像工程、(e)エッチング工程をこの順に含むこと特徴とする導電パターンの作製方法が提案されている。この方法によれば、厚い光架橋性樹脂層を貼り付けた後、孔上及びその周囲部の光架橋性樹脂層をあらかじめ硬化することにより、ランド部では厚いエッチングレジスト層でテンティングすることができ、現像及びエッチング工程においてテント破れが起こりにくい。さらに、ランド部以外では、薄膜化処理した後に回路パターンの露光、現像、エッチングすることによって、微細な回路形成が可能になる。
【0010】
しかしながら、上記と同様に、薄膜化した後の光架橋性樹脂層はその表面が剥き出しになっているため、傷や異物の付着、フォトツールの汚染の問題がある。また、孔上及びその周囲部と薄膜化した部分との間に厚み差(段差)があるため、回路パターンの露光工程において、フォトツールを用いて密着露光すると、段差周囲で光の屈折が大きくなり、線太りによる解像不良が発生する場合があった。また、密着露光の際、真空吸引を行っても、段差周囲で空気が抜け切らず、酸素によるラジカル重合阻害が起こり、膜減りや解像度の悪化が起こることがあった。
【0011】
光架橋性樹脂層を薄膜化処理した後に、光架橋性樹脂層上に透明性フィルムを再積層しても、通常の透明性フィルムでは、光架橋性樹脂層の段差に完全に追従させることは極めて困難で、段差周囲において、上記と同様に、線太りによる解像不良や重合阻害による膜減りや解像度の悪化といった問題が発生する場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第2009/096438号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の課題は、少なくとも(a)基板上に光架橋性樹脂層を形成する工程、(b)光架橋性樹脂層の薄膜化処理を行う工程、(c)回路パターンの露光工程、(d)現像工程を含むレジストパターンの作製方法において、搬送工程や露光工程で光架橋性樹脂層表面に傷や異物の付着がなく、密着露光を行ってもフォトツールを汚染しないレジストパターンの作製方法を提供することである。また、光架橋性樹脂層に段差があっても、段差周囲で光の屈折による線太りや酸素による重合阻害を生じることのないレジストパターンの作製方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1)(a)基板上に光架橋性樹脂層を形成する工程、(b)光架橋性樹脂層の薄膜化処理を行う工程、(f)透明性フィルムと非感光性のアルカリ可溶性粘着層とが積層したマスキングフィルムを非感光性のアルカリ可溶性粘着層が光架橋性樹脂層上に接するように貼り付ける工程、(c)回路パターンの露光工程、(g)透明性フィルムを除去する工程、(d)現像工程、を含むレジストパターンの作製方法、
(2)(a)基板上に光架橋性樹脂層を形成する工程、(i)光架橋性樹脂層の一部を露光する工程、(b′)露光された領域以外の光架橋性樹脂層の薄膜化処理を行う工程、(f′)透明性フィルムと非感光性のアルカリ可溶性粘着層とが積層したマスキングフィルムを非感光性のアルカリ可溶性粘着層が光架橋性樹脂層に接するように貼り付ける工程、(c)回路パターンの露光工程、(g)透明性フィルムを除去する工程、(d)現像工程、を含むレジストパターンの作製方法、
を見出した。
【発明の効果】
【0015】
本発明のレジストパターンの作製方法においては、光架橋性樹脂層の薄膜化処理を行った後、透明性フィルムと非感光性のアルカリ可溶性粘着層が積層したマスキングフィルムを非感光性のアルカリ可溶性粘着層が光架橋性樹脂層に接するように貼り付ける。透明性フィルムに非感光性のアルカリ可溶性粘着層を積層したことで、従来問題となっていた薄膜化後の光架橋性樹脂層と透明性フィルムの密着性が格段に向上する。また、光架橋性樹脂層に段差がある場合でも、その段差に追従するように、マスキングフィルムのアルカリ可溶性粘着層が埋まることで、空気が排除されるため、酸素によるラジカル重合阻害が発生しない。また、段差に非感光性のアルカリ可溶性粘着層が追従することで、透明性フィルムは、基板に対してシワなく平坦に貼り付けられるため、従来問題となっていた段差周囲における光の屈折による線太り起因の解像不良が起こらない。さらに、マスキングフィルムの非感光性のアルカリ可溶性粘着層は、アルカリに可溶であるため、後の現像工程において、光架橋性樹脂層の未硬化部とともに完全に溶解除去されるので、非感光性のアルカリ可溶性粘着層は残存することがない。当然、薄膜化処理を行った後に、光架橋性樹脂層上にマスキングフィルムを貼り付けることによって、搬送工程や露光工程での傷や異物の付着が防止でき、密着露光の際のフォトツールへの汚染の問題も発生しない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】光架橋性樹脂層の薄膜化処理を行う工程を含むレジストパターンの作製方法の一例を示す断面工程図である。
【図2】本発明のレジストパターンの作製方法(1)の一例を示す断面工程図である。
【図3】本発明のレジストパターンの作製方法(2)の一例を示す断面工程図である。
【図4】本発明のレジストパターンの作製方法(2)の一例を示す断面工程図である。
【図5】本発明のレジストパターンの作製方法(2)の一例を示す断面工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のレジストパターンの作製方法について詳細に説明する。
【0018】
図1は、光架橋性樹脂層の薄膜化処理を行う工程を含むレジストパターンの作製方法の一例を示す断面工程図である。図1において、絶縁性基板5の片表面に導電層4を設けてなる基板2を使用している。工程(a)では、基板2の導電層4上に光架橋性樹脂層1を形成する。工程(b)では、光架橋性樹脂層の薄膜化処理を行う。工程(c)では、回路パターンに相当する部分の光架橋性樹脂層を露光し、硬化部3を形成する。工程(d)では、光架橋性樹脂層(未硬化部)1を現像により除去し、レジストパターンを得る。
【0019】
図2は、本発明のレジストパターンの作製方法(1)の一例を示す断面工程図である。図2において、工程(a)で、絶縁性基板5の片表面に導電層4を設けてなる基板2の導電層4上に光架橋性樹脂層1を形成する。工程(b)では、光架橋性樹脂層1の薄膜化処理を行う。工程(f)では、光架橋性樹脂層上に透明性フィルム6と非感光性のアルカリ可溶性粘着層(以下、「粘着層」と略記する場合あり)7とが積層したマスキングフィルム8を貼り付ける。粘着層7が薄膜化後の光架橋性樹脂層と密着するため、クリーンローラー等に通した場合でも、透明性フィルム6が剥がれることはない。工程(c)では、マスキングフィルム8が積層されたままの状態で、回路パターンに相当する部分の光架橋性樹脂層を露光し、硬化部3を形成する。工程(g)では、透明性フィルム6を除去する。工程(d)では、残りの光架橋性樹脂層(未硬化部)1と粘着層7を現像により除去し、レジストパターンを得る。
【0020】
図3は、本発明のレジストパターンの作製方法(2)の一例を示す断面工程図である。図2において、工程(a)で、絶縁性基板5の片表面に導電層4を設けてなる基板2の導電層4上に光架橋性樹脂層1を形成する。工程(i)では、光架橋性樹脂層1の一部を露光して硬化させ、硬化部9を形成する。工程(b′)では、光架橋性樹脂層(未硬化部)1の薄膜化処理を行う。工程(f′)では、光架橋性樹脂層上に透明性フィルム6と粘着層7とが積層したマスキングフィルム8を貼り付ける。粘着層7が薄膜化後の光架橋性樹脂層1及び硬化部9とに密着するため、クリーンローラー等に通した場合でも、透明性フィルム6が剥がれることはない。また、透明性フィルム6が基板に対して、シワなく平坦に貼り付けられ、硬化部9と薄膜化後の光架橋性樹脂層との間の段差に粘着層7が追従することで、段差周囲における光漏れによる解像不良や酸素による重合阻害が起こらない。工程(c)では、マスキングフィルム8が積層されたままの状態で、回路パターンに相当する部分の光架橋性樹脂層を露光し、硬化部3を形成する。工程(g)では、透明性フィルム6を除去する。工程(d)では、残りの光架橋性樹脂層(未硬化部)1とアルカリ可溶性粘着層7を現像により除去し、レジストパターンを得る。
【0021】
図4〜5は、本発明のレジストパターンの作製方法(2)の一例を示す断面工程図である。基板2には孔10があり、表面及び孔内部に導電層4が設けられている。図4において、工程(a)で、孔10を塞ぐようにして、基板2の表面の導電層4上に光架橋性樹脂層1を形成する。工程(i)では、孔10上及びその周囲部の光架橋性樹脂層1を露光して硬化させ、硬化部9を形成する。工程(b′)では、光架橋性樹脂層(未硬化部)1の薄膜化処理を行う。工程(f′)では、光架橋性樹脂層上に透明性フィルム6と粘着層7とが積層したマスキングフィルム8を貼り付ける。工程(c)では、マスキングフィルム8が積層されたままの状態で、回路パターンに相当する部分の光架橋性樹脂層を露光し、硬化部3を形成する。工程(g)では、透明性フィルム6を除去する。工程(d)では、残りの光架橋性樹脂層(未硬化部)1と粘着層7を現像により除去し、レジストパターンを得る。
【0022】
光架橋性樹脂層の形成には、例えば、加熱したゴムロールを加圧して押し当てる熱圧着方式のラミネータ装置を用いることができる。加熱温度は100℃以上であることが好ましい。ラミネート前の基板に、アルカリ脱脂、酸洗等の前処理を施してもよい。
【0023】
本発明において、表面に導電層を設けた基板が好ましく用いられる。このような基板としては、プリント配線板又はリードフレーム用基板が挙げられる。プリント配線板としては、例えば、フレキシブル基板、リジッド基板が挙げられる。フレキシブル基板の絶縁性基板の厚さは5〜125μmで、その両面もしくは片面に1〜35μmの金属箔層が導電層として設けられており、可撓性が大きい。絶縁性基板の材料には、通常、ポリイミド、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンテレフタレート、液晶ポリマー等が用いられる。絶縁性基板上に金属箔層を有する材料は、接着剤で貼り合わせる接着法、金属箔上に絶縁性基板材料である樹脂の液を塗布するキャスト法、スパッタリングや蒸着法で絶縁性基板である樹脂フィルム上に形成した厚さ数nmの薄い導電層(シード層)の上に電解メッキで金属箔層を形成するスパッタ/メッキ法、熱プレスで貼り付けるラミネート法等のいかなる方法で製造したものを用いてもよい。金属箔層の金属としては、銅、アルミニウム、銀、ニッケル、クロム、あるいはそれらの合金等のいかなる金属を用いることができるが、銅が一般的である。
【0024】
リジッド基板としては、エポキシ樹脂又はフェノール樹脂等を浸漬させた紙基材又はガラス基材を重ねて絶縁性基板とし、その片面もしくは両面に金属箔を導電層として載置し、加熱及び加圧により積層して、金属箔層が設けられたものが挙げられる。また、内層配線パターン加工後、プリプレグ、金属箔等を積層して作製する多層用のシールド板、貫通孔や非貫通孔を有する多層板も挙げられる。厚みは60μm〜3.2mmであり、プリント基板としての最終使用形態により、その材質と厚みが選定される。金属箔層の材料としては、銅、アルミニウム、銀、金等が挙げられるが、銅が最も一般的である。
【0025】
孔を有し、表面及び孔内部に導電層が設けられている基板は、例えば、絶縁性基板表面に金属箔層を有する基板に対して、ドリルやレーザーによって孔を形成し、次に、無電解めっき、電解めっき等のめっき処理を施して、孔内部を含む表面にめっき金属層を形成することによって作製される。
【0026】
これらプリント基板の例は、「プリント回路技術便覧」((社)日本プリント回路工業会編、1987年刊行、(株)日刊工業新聞社刊)や「多層プリント回路ハンドブック」(J.A.スカーレット編、1992年刊行、(株)近代化学社刊)に記載されている。リードフレーム用基板としては、鉄ニッケル合金、銅系合金等の基板が挙げられる。
【0027】
光架橋性樹脂層とは露光部が硬化して現像液に不溶化する樹脂層であり、回路形成用として、ネガ型のドライフィルムレジストが一般的に使用されている。市販のドライフィルムレジストは、少なくとも光架橋性樹脂層を有していて、ポリエステル等の支持層フィルム上に光架橋性樹脂層を設け、場合によってはポリエチレン等の保護フィルムで光架橋性樹脂上を挟んだ三層構成となっているものが多い。本発明において、光架橋性樹脂層として使用できる市販のドライフィルムレジストとしては、例えば、サンフォート(登録商標)シリーズ(旭化成イーマテリアルズ社製)、フォテック(登録商標)シリーズ(日立化成工業社製)、リストン(登録商標)シリーズ(デュポンMRCドライフィルム社製)、ALPHO(登録商標)シリーズ(ニチゴー・モートン社製)等を挙げることができる。
【0028】
光架橋性樹脂層は、(A)カルボキシル基を含有するポリマー、(B)分子内に少なくとも1個の重合可能なエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物、(C)光重合開始剤を含有してなり、さらに、溶剤、その他添加剤を含有してもよい。それらの配合比率は、感度、解像度、硬化度、テンティング性等の要求される性質のバランスによって決定される。光架橋性樹脂層の組成物の例は「フォトポリマーハンドブック」(フォトポリマー懇話会編、1989年刊行、(株)工業調査会刊)や「フォトポリマー・テクノロジー」(山本亜夫、永松元太郎編、1988年刊行、(株)日刊工業新聞社刊)等に記載されており、所望の光架橋性樹脂組成物を使用することができる。
【0029】
光架橋性樹脂層の厚みは、15〜100μmであることが好ましく、20〜50μmであることがより好ましい。この厚みが15μm未満では、ゴミを核とした気泡の混入や凹凸追従性不良によって、レジスト剥がれや断線が発生する場合がある。一方、100μmを超えると、光架橋性樹脂層の製造コストが高くなるだけでなく、製造した光架橋性樹脂層のエッジフュージョンが顕著で保存性が悪くなる場合がある。
【0030】
工程(b)及び(b′)において、光架橋性樹脂層の薄膜化処理を行う。薄膜化処理には、アルカリ水溶液を好適に使用することができる。アルカリ水溶液としては、リチウム、ナトリウム又はカリウムの炭酸塩又は重炭酸塩等のアルカリ金属炭酸塩、カリウム、ナトリウムのリン酸塩等のアルカリ金属リン酸塩、リチウム、ナトリウム又はカリウムの水酸化物等のアルカリ金属水酸化物、カリウム、ナトリウムのケイ酸塩等のアルカリ金属ケイ酸塩から選ばれる無機アルカリ性化合物、エタノールアミン類、エチレンジアミン、プロパンジアミン類、トリエチレンテトラミン、モルホリン等の有機アルカリ性化合物等のうち少なくともいずれか1種を含む。このうち特に好ましい化合物としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。アルカリ性化合物の含有量は5〜20質量部が好ましく、さらに好ましくは10〜15質量部である。5質量部未満では、薄膜化処理でムラができやすくなる傾向があり、20質量部を超えると、アルカリ性化合物の析出や分離等が起こりやすくなって、液の経時安定性や作業性が劣る場合がある。溶液のpHは9〜12の範囲とすることが好ましい。また、アルカリ水溶液には、界面活性剤、消泡剤、溶剤等を適宜添加することができる。
【0031】
アルカリ水溶液で薄膜化処理を行った後、水によって十分に基板を洗浄する必要がある。水洗処理の方法として、ディップ方式、パドル方式、スプレー方式等があり、均一性の点からスプレー方式が最も適している。また、光架橋性樹脂層表面を水洗した後、水滴を除去することもできる。水洗水としては、工業用水、水道水、イオン交換水、蒸留水等が挙げられる。樹脂層表面の水滴の除去方法としては、エアーナイフ、吸液性ロール、温風乾燥等が挙げられるが、物理的な接触がなく、除去効率がよいことから、エアーナイフが特に好ましい。
【0032】
光架橋性樹脂層上に支持層フィルムが設けられている場合には、剥がしてから薄膜化処理を実施する。薄膜化処理とは、光架橋性樹脂層の厚みを略均一に薄くする処理のことであり、詳しくは、薄膜化処理を施す前の厚みの0.05〜0.9倍の厚みまで薄くすることをいう。
【0033】
薄膜化処理の方法として、ディップ方式、パドル方式、スプレー方式、ブラッシング、スクレーピング等があり、スプレー方式が光架橋性樹脂層の溶解速度の点からは最も適している。スプレー方式の場合、処理条件(温度、時間、スプレー圧)は、使用する光架橋性樹脂層の溶解速度に合わせて適宜調整される。具体的には、処理温度は10〜50℃が好ましく、より好ましくは15〜40℃、さらに好ましくは15〜35℃である。また、スプレー圧は0.01〜0.5MPaとするのが好ましく、さらに好ましくは0.02〜0.3MPaである。
【0034】
工程(f)及び(f′)において、透明性フィルムと粘着層とが積層したマスキングフィルムを光架橋性樹脂層上に貼り付ける。光架橋性樹脂層に含まれる単量体やオリゴマー等の低分子量成分によるが、薄膜化処理後の光架橋性樹脂層のタック性は、処理前に比べ低減されることが多い。本発明においては、薄膜化処理後の光架橋性樹脂層が低タック性であっても、粘着層が光架橋性樹脂層表面と密着するため、透明性フィルムが容易に剥がれることはない。また、透明性フィルムがあることによって、搬送工程や露光工程での傷や異物の混入による欠陥が非常に少なくなる。
【0035】
マスキングフィルムは、透明性フィルムと粘着層とからなる。透明性フィルムは、現像直前に粘着層から剥離される。透明性フィルムは、短波長可視光線やそれに近い近紫外線の透過率が高いフィルムであればいずれのフィルムでも使用できる。例えば、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリカーボネートフィルム等が挙げられるが、ポリエステルフィルムが好ましい。ポリエステルとは、芳香族ジカルボン酸又は脂肪族ジカルボン酸とジオールを主たる構成成分とする単量体との重縮合体である。
【0036】
ポリエステルフィルムを構成するポリエステルには、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族カルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等の脂肪族カルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸を用いることができ、ジオール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環族ジオールを用いることができる。
【0037】
透明性フィルムとしては、ポリエステルフィルムの中でも、特に、テレフタル酸とエチレングリコールの脱水重合により作られるポリエチレンテレフタレートを主成分とするフィルムを用いることが好ましい。ポリエチレンテレフタレートフィルムは、耐溶剤性、機械的強度があり、ラミネート適性、剥離適性に優れている。また、光学用フィルムとして、透過率、屈折率も優れ、経済的にも有利なことから利用しやすい。
【0038】
また、透明性フィルムは、そのヘイズ値Hが10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、1.5%以下であることがさらに好ましい。ヘイズ値Hとは濁度を表す値であり、光源により照射され、試料中を透過した光の全透過率Tと試料中で拡散され散乱した光の透過率Dより、H(%)=(D/T)×100として求められる。これは、JIS−K−7105により規定されており、市販のヘイズメーター(例えば、商品名:NDH−500、日本電色工業社製)により容易に測定可能である。ヘイズ値が10%を超えると、透過性が低くなり、光硬化を阻害することがある。ヘイズ値が10%以下の透明性フィルムとしては、例えば、テイジン(登録商標)テトロン(登録商標)フィルム(帝人デュポンフィルム社製)、及びマイラー(登録商標)(帝人デュポンフィルム社製)、メリネックス(登録商標)(帝人デュポンフィルム社製)、ダイアホイル(登録商標)(三菱樹脂社製)、ルミラー(登録商標)(東レフィルム加工社製)等が挙げられる。
【0039】
透明性フィルムの厚みは、10〜25μmであることが好ましく、12〜25μmであることがより好ましい。25μmを超えると、解像度が低下することや、経済的に不利となることがある。一方、10μm未満では、機械的強度が不足し、剥離時に破れが発生しやすくなることがある。
【0040】
粘着層は、短波長可視光線やそれに近い近紫外線に対して感光性がなく、アルカリ水溶液に可溶で、透明性フィルムと薄膜化後の光架橋性樹脂層の中間層として貼り付けられるものであればいずれでもよい。また、現像直前に透明性フィルムと剥離される必要がある。透明性フィルムを剥離した後、光架橋性樹脂層上に粘着層が残存するため、後の工程(d)で完全に溶解するものである必要がある。
【0041】
粘着層としては、アルカリ水溶液に可溶な重合体を含有していればよく、例えば、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、アミド系樹脂、アミドエポキシ系樹脂、アルキド系樹脂、フェノール系樹脂の有機高分子が挙げられる。このうち、エチレン性不飽和二重結合を有した単量体(重合性単量体)を重合(ラジカル重合等)して得られたものであることが好ましい。また、アルカリ水溶液による現像性を考慮すると、アクリル系樹脂又はメタクリル系樹脂が好ましい。これらのアルカリ水溶液に可溶な重合体は、単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。このようなエチレン性不飽和二重結合を有した単量体としては、例えば、スチレン;ビニルトルエン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−エトキシスチレン、p−クロロスチレン、p−ブロモスチレン等のスチレン誘導体;ジアセトンアクリルアミド等のアクリルアミド;アクリロニトリル;ビニル−n−ブチルエーテル等のビニルアルコールのエステル類;(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、α−ブロモ(メタ)アクリル酸、α−クロル(メタ)アクリル酸、β−フリル(メタ)アクリル酸、β−スチリル(メタ)アクリル酸等の(メタ)アクリル酸モノエステル;マレイン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノイソプロピル等のマレイン酸系単量体;フマル酸、ケイ皮酸、α−シアノケイ皮酸、イタコン酸、クロトン酸、プロピオール酸等が挙げられる。
【0042】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、下記一般式(I):
CH=C(R)―COOR (I)
[式(I)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは炭素数1〜12のアルキル基を示す。]
で示される化合物及びこれらの化合物のアルキル基に水酸基、エポキシ基、ハロゲン原子等が置換した化合物等が挙げられる。
【0043】
粘着層は、アルカリ水溶液による現像性を考慮すると、カルボキシル基を含有していることが好ましい。従って、カルボキシル基を有する重合性単量体とその他の重合性単量体をラジカル重合させる。カルボキシル基を有する重合性単量体としては、(メタ)アクリル酸、ビニル安息香酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸、アクリル酸二量体等を挙げることができる。このうち、(メタ)アクリル酸が最も好ましい。また、(メタ)アクリル酸の含量は、アルカリ水溶液に可溶な重合体において、モノマー組成比で20質量%以上含まれていることが好ましい。
【0044】
粘着層に用いることができるアルカリ水溶液に可溶な重合体は、単独で、もしくは2種類以上を組み合わせて用いることができる。2種類以上を組み合わせて用いる場合のアルカリ水溶液に可溶な重合体の組み合わせとしては、例えば、異なる共重合成分を有する2種類以上のアルカリ水溶液に可溶な重合体の組み合わせ、異なる質量平均分子量を有する2種類以上のアルカリ水溶液に可溶な重合体の組み合わせ、異なる分散度(質量平均分子量/数平均分子量)を有する2種類以上のアルカリ水溶液に可溶な重合体の組み合わせが挙げられる。
【0045】
粘着層に用いることができるアルカリ水溶液に可溶な重合体の質量平均分子量は、10,000〜200,000であることが好ましく、10,000〜150,000であることがより好ましい。質量平均分子量が10,000未満では、可とう性に劣り、粘着層の被膜を形成するのが困難になる場合があり、一方、200,000を超えると、アルカリ水溶液に対する現像性が悪化する傾向がある。
【0046】
粘着層に用いることができるアルカリ水溶液に可溶な重合体の酸価は、50〜300mgKOH/gであることが好ましく、100〜250mgKOH/gであることがより好ましい。酸価が50mgKOH/g未満では、現像時間が長くなる傾向があり、一方、300mgKOH/gを超えると、薄膜化後の光架橋性樹脂表面に対して貼り付きが悪くなる場合がある。
【0047】
粘着層には、必要に応じて、前述のアルカリ水溶液に可溶な重合体以外の成分として、膜物性をコントロールするため、フタル酸ジブチル、ポリエチレングリコール、p−トルエンスルホンアミド等の可塑剤を添加することができる。これらの可塑剤を添加することで、アルカリ水溶液に可溶な上記重合体のガラス転移温度以下でも柔軟性が得られ、粘着性や可とう性の点でも可塑剤の使用は有用である。このような成分は単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0048】
粘着層は、必要に応じて、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−ブタノール、n−ヘキサノール等のアルコール類;アセトン、2−ブタノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸−n−アミル、硫酸メチル、プロピオン酸エチル、フタル酸ジメチル、安息香酸エチル等のエステル類、トルエン、キシレン、ベンゼン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール等のエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の溶剤又はこれらの混合溶剤に溶解して均一な溶液とすることができる。
【0049】
粘着層の厚みは、乾燥後の厚みで0.5〜10μmであることが好ましく、1〜5μmであることがより好ましい。ただし、本発明において、光架橋性樹脂層に段差がある場合、粘着層がその段差に追従するためには、形成された段差よりも厚い膜厚が必要になる。
【0050】
工程(f)において、薄膜化後の光架橋性樹脂層上にマスキングフィルムを貼り付ける方法としては、光架橋性樹脂層とマスキングフィルムとの間に隙間を生じさせることなく、空気や異物をかむことなく、波打ちなく、略均一に光架橋性樹脂層上にマスキングフィルムを積層できることができれば、いずれの方法でもよい。例えば、ゴムロールを加圧して押し当てる圧着方式のラミネータ装置を用いることができる。この際、ゴムロールは粘着層のガラス転移温度以上に加熱することが好ましく、また、基板とマスキングフィルムの間から光架橋性樹脂層がはみ出して流れ出ないように、圧力や搬送速度等を調節する必要がある。
【0051】
工程(f′)において、薄膜化後、段差のある光架橋性樹脂層上にマスキングフィルムを貼り付ける場合、大気圧下において、水平搬送式のゴムロール製のホットロールラミネータを使用すると、段差周囲に微小な気泡の混入が顕著に見られる。特に、搬送方向後方において、混入しやすい。そこで、このような段差周囲に混入する微小な気泡を排除するために、減圧雰囲気下でラミネートすることが好ましい。また、真空ラミネータを使用する場合、マスキングフィルムを加熱して、柔軟性を付与した状態で貼り付けることが好ましい。
【0052】
真空ラミネートの減圧条件は10〜30000Paが好ましく、10〜10000Paがより好ましく、さらに好ましくは10〜1000Paである。真空度が10Pa未満では、減圧時間が長くなりすぎるため好ましくない。一方、真空度が30000Paを超えると、減圧の効果が小さく、段差周囲の微小な気泡が抜け切らない場合がある。ラミネートロールの硬度は60〜100度が好ましく、70〜100度がさらに好ましい。ロール硬度60度未満では、微小な気泡の混入抑制効果が小さく、100度を超えるとロールの製造自体が困難である。ホットロールの加熱温度は、粘着層のガラス転移温度以上に加熱することが好ましい。ロール硬度は、JIS規格(K−6253A)に基づいて、デュロメーターGS−719G(テクロック社製)を用いて測定した値である。
【0053】
ラミネータ装置は、一対のゴム製のホットロールを備えた一段式ラミネータ、二対以上のホットロールを備えた多段式ラミネータのどちらも使用できる。多段式ラミネータの場合、ゴム製のホットロールと金属製のホットロールの対を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
工程(c)では、回路パターンの露光を行う。回路パターンの露光方法としては、キセノンランプ、高圧水銀灯、低圧水銀灯、超高圧水銀灯、UV蛍光灯を光源とした反射画像露光、フォトツールを用いた片面あるいは両面密着露光方式、プロキシミティ方式、プロジェクション方式やレーザー走査露光方式等が挙げられるが、キセノンランプ、高圧水銀灯、低圧水銀灯、超高圧水銀灯、UV蛍光灯を光源とし、フォトツールを用いた片面、両面密着露光が好適に用いられる。
【0055】
工程(g)では、マスキングフィルムのうち透明性フィルムを除去し、工程(d)では、光架橋性樹脂層(未硬化部)と粘着層を現像液で除去して、レジストパターンを形成する。現像方法としては、使用する光架橋性樹脂層と粘着層に見合った現像液を用い、基板の上下方向から基板表面に向かってスプレーを噴射して、エッチングレジストパターンとして不要な部分を除去し、回路パターンに相当するレジストパターンを形成する。一般的には、0.3〜2質量%の炭酸ナトリウム水溶液が使用される。
【0056】
工程(i)では、露光によって光架橋性樹脂層の一部を硬化させ、段差となる領域を形成する。例えば、孔を有し、表面及び孔内部に導電層が設けられている基板の場合、孔上及びその周囲部の光架橋性樹脂層を硬化することにより、ランド部にテンティング強度を有する厚いエッチングレジスト層を形成させることができる。露光方式としては、キセノンランプ、高圧水銀灯、低圧水銀灯、超高圧水銀灯、UV蛍光灯を光源とした反射画像露光、フォトツールを用いた片面あるいは両面密着露光方式、プロキシミティ方式、プロジェクション方式やレーザー走査露光方式等が挙げられる。
【実施例】
【0057】
以下、実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0058】
<非感光性のアルカリ可溶性粘着層溶液の調液>
表1〜表4に示す各成分を混合し、非感光性のアルカリ可溶性粘着層溶液A〜Dを調液した。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
【表3】

【0062】
【表4】

【0063】
(実施例1〜4)
<マスキングフィルムの作製>
ポリエステルフィルムからなる透明性の支持層フィルム(膜厚16μm)上に、スリットダイコーターを用いて、上記非感光性のアルカリ可溶性粘着層溶液A〜Dを塗布し、乾燥させた後、ポリエチレンフィルムからなる保護フィルム(膜厚30μm)を貼り合わせて、膜厚10μmの非感光性のアルカリ可溶性粘着層を有するマスキングフィルムA〜Dを作製した。
【0064】
<工程(a)>
ガラス基材エポキシ樹脂銅張積層板(面積250mm×340mm、銅箔厚み12μm、基材厚み0.4mm、商品名:FR−4、三菱ガス化学社製)上に耐熱シリコンゴムライニング表面処理されたラミネートロールを備えたドライフィルム用ラミネータを用いて、保護フィルムを剥がしながら、ロール温度100℃、エアー圧力0.30MPa、ラミネート速度0.50m/minにて、ドライフィルムレジスト(商品名:サンフォート(登録商標)AQ5038、厚み50μm、旭化成イーマテリアルズ社製)をラミネートした。
【0065】
<工程(b)>
支持層フィルムを剥離した後、水平搬送方式の連続処理装置を用いて、ドライフィルムレジストの薄膜化処理を行った。液温25℃、スプレー圧0.05MPaの条件下で、平均膜厚25μmになるように、10%の炭酸ナトリウム溶液を用いて薄膜化処理を行い、十分な水洗処理、冷風乾燥により薄膜化された光架橋性樹脂層を得た。
【0066】
<工程(f)>
工程(a)と同じラミネータを用いて、保護フィルムを剥がしながら、ロール温度100℃、エアー圧力0.30MPa、ラミネート速度1.50m/minにて、マスキングフィルムA〜Dをラミネートした。いずれの場合にも、薄膜化後の光架橋性樹脂層とマスキングフィルムの間に微小な気泡の混入は見られず、波打ちなく、平坦に光架橋性樹脂層上にマスキングフィルムを積層することができた。また、露光前にマスキングフィルムの上から微粘着性のクリーンローラー(登録商標)(商品名:RY−501Z、レヨーン工業社製)を用いてクリーニング処理を行ったが、透明性フィルムの剥離は全く見られなかった。
【0067】
<工程(c)>
ライン/スペース=25/25μmのパターンが描画されたフォトツールを用い、出力3kwの超高圧水銀灯(商品名:URM−300、ウシオライティング社製)を光源に備えた真空密着露光装置で密着露光を行った。
【0068】
<工程(g)及び(d)>
マスキングフィルムのうち透明性フィルムのみを剥離した後、1質量%の炭酸ナトリウム水溶液(液温度30℃、スプレー圧0.15MPa)を用いて現像処理を行い、光架橋性樹脂層(未硬化部)と粘着層を除去し、レジストパターンを形成した。得られたレジストパターンを光学顕微鏡で観察した結果、ライン/スペース=25/25μmのパターンにおいて、線細りや断線あるいは線太りやショート等の欠陥は見られなかった。
【0069】
(実施例5〜8)
<マスキングフィルムの作製>
ポリエステルフィルムからなる透明性の支持層フィルム(膜厚16μm)上に、スリットダイコーターを用いて、上記非感光性のアルカリ可溶性粘着層溶液A〜Dを塗布し、乾燥させた後、ポリエチレンフィルムからなる保護フィルム(膜厚30μm)を貼り合わせて、膜厚30μmの非感光性のアルカリ可溶性粘着層を有するマスキングフィルムAA〜ADを作製した。
【0070】
<工程(a)>
ガラス基材エポキシ樹脂銅張積層板(面積250mm×340mm、銅箔厚み12μm、基材厚み0.4mm、商品名:FR−4、三菱ガス化学社製)に、ドリルを用いて直径0.5mm及び2.0mmの貫通孔を100穴ずつ形成した後、貫通孔内部と銅箔上に25μm厚のめっき銅層を形成した孔あり銅張積層板を作製した。次に、この銅張積層板上に、耐熱シリコンゴムライニング表面処理されたラミネートロールを備えたドライフィルム用ラミネータを用いて、保護フィルムを剥がしながら、ロール温度100℃、エアー圧力0.30MPa、ラミネート速度0.50m/minにて、ドライフィルムレジスト(商品名:サンフォート(登録商標)AQ5038、厚み50μm、旭化成イーマテリアルズ社製)をラミネートした。
【0071】
<工程(i)>
光架橋性樹脂層を薄膜化する前に、各孔に対して、ランド幅を100μmとしたランドパターンのみが描画されたフォトツールを用い、出力3kwの超高圧水銀灯(商品名:URM−300、ウシオライティング社製)を光源に備えた真空密着露光装置で密着露光を行った。
【0072】
<工程(b′)>
ランド部の光架橋性樹脂層を硬化後、支持層フィルムを剥離し、水平搬送方式の連続処理装置を用いて、ドライフィルムレジストの薄膜化処理を行った。液温25℃、スプレー圧0.05MPaの条件下で、ランド部以外の光架橋性樹脂層(未硬化部)の平均膜厚が25μmになるように、10%の炭酸ナトリウム溶液を用いて薄膜化処理を行い、十分な水洗処理、冷風乾燥により薄膜化された光架橋性樹脂層を得た。
【0073】
<工程(f′)>
プレス式真空ラミネータ(商品名:MV−302、エムシーケー社製)を用いて、ランド周囲に段差のある基板上に、ロール温度100℃、エアー圧力0.30MPa、ラミネート速度1.00m/min、真空度1000Paにて、保護フィルムを剥がしながらマスキングフィルムAA〜ADをラミネートした。減圧下でラミネーションすることにより、マスキングフィルムの粘着層がランド部の周囲にある段差に追従し、微小な気泡の混入は見られなかった。さらに、段差に粘着層が追従することで、基板に対して波打ちなく、平坦に、光架橋性樹脂層上にマスキングフィルムを形成させることができた。また、露光前にマスキングフィルムの上から微粘着性のクリーンローラー(登録商標)(商品名:RY−501Z、レヨーン工業社製)を用いてクリーニング処理を行ったが、透明性フィルムの剥離は全く見られなかった。
【0074】
薄膜化処理後、実施例1〜4と同様に、工程(c)、工程(g)、工程(d)を経て、レジストパターンを形成した。ランド部にテンティングされた光架橋性樹脂層を観察したところ、孔全てにおいて、光架橋性樹脂層に破れや剥離は見られなかった。得られたレジストパターンを光学顕微鏡で観察した結果、ライン/スペース=25/25μmのパターンにおいて、線細りや断線あるいは線太りやショート等の欠陥は見られなかった。また、ランド部の周囲にある段差においても、光漏れ等の光の屈折による線太り起因の解像不良は見られなかった。
【0075】
(比較例1)
マスキングフィルムAをポリエステルフィルムからなる透明性の支持層フィルム(膜厚16μm)のみとした以外は、実施例1と全く同じ方法で、レジストパターンの作製を行った。薄膜化後の光架橋性樹脂層と上記透明性フィルムの間に微小な気泡の混入は見られず、波打ちなく、平坦に光架橋性樹脂層上に透明性フィルムを積層できることができた。しかしながら、露光前に透明性フィルムの上から微粘着性のクリーンローラー(登録商標)(商品名:RY−501Z、レヨーン工業社製)を用いてクリーニング処理を行ったところ、透明性フィルムに剥離が発生した。これにより、薄膜化後の光架橋性樹脂層は、その表面が剥き出しになり、傷や異物の付着、密着露光におけるフォトツールの汚染の可能性があり、無欠陥のないレジストパターンを作製することが極めて困難だった。
【0076】
(比較例2)
マスキングフィルムAAをポリエステルフィルムからなる透明性の支持層フィルム(膜厚16μm)のみとした以外は、実施例5と全く同じ方法で、レジストパターンの作製を行った。透明性フィルムのみでは、減圧雰囲気下でのラミネートを行っても、ランド周囲に段差があるため、その高低差を埋めることができず、気泡の混入が顕著に見られた。これにより、酸素による重合阻害が発生し、大きい気泡があった場合には、レジストの断線も確認された。また、100℃に加熱したロールで加熱圧着するために、段差周囲において、薄膜化後の光架橋性樹脂層が凹型に陥没し、その部分で顕著な光漏れによる解像不良が発生していた。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、サブトラクティブ法を用いた微細な導電パターンの作製に広く利用され、実施例で説明したプリント配線板のほか、リードフレームの製造方法にも利用することができる。
【符号の説明】
【0078】
1 光架橋性樹脂層(未硬化部)
2 基板
3 光架橋性樹脂層の硬化部
4 導電層
5 絶縁性基板
6 透明性フィルム
7 非感光性のアルカリ可溶性粘着層
8 マスキングフィルム
9 工程(i)で露光された光架橋性樹脂層の硬化部
10 孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)基板上に光架橋性樹脂層を形成する工程、(b)光架橋性樹脂層の薄膜化処理を行う工程、(f)透明性フィルムと非感光性のアルカリ可溶性粘着層とが積層したマスキングフィルムを非感光性のアルカリ可溶性粘着層が光架橋性樹脂層に接するように貼り付ける工程、(c)回路パターンの露光工程、(g)透明性フィルムを除去する工程、(d)現像工程、を含むレジストパターンの作製方法。
【請求項2】
(a)基板上に光架橋性樹脂層を形成する工程、(i)光架橋性樹脂層の一部を露光する工程、(b′)露光された領域以外の光架橋性樹脂層の薄膜化処理を行う工程、(f′)透明性フィルムと非感光性のアルカリ可溶性粘着層とが積層したマスキングフィルムを非感光性のアルカリ可溶性粘着層が光架橋性樹脂層に接するように貼り付ける工程、(c)回路パターンの露光工程、(g)透明性フィルムを除去する工程、(d)現像工程、を含むレジストパターンの作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−42633(P2012−42633A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182706(P2010−182706)
【出願日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】