説明

レジストパターンの製造方法、及びこれから得られるレジストパターン

【課題】CD均一性及びマスクエラーファクターをさらに向上させることができるレジストパターンの製造方法を提供すること。
【解決手段】レジストパターンの製造方法であって、酸の作用によりアルカリ可溶となる樹脂(A)と酸発生剤(B)とを含有するレジスト組成物を、基体上に塗布してレジスト膜を得る工程と、レジスト膜を温度TPBでプリベーク(PB)する工程と、プリベークしたレジスト膜を露光する工程と、露光したレジスト膜を温度TPEBでポストエクスポージャーベーク(PEB)する工程と、ポストエクスポージャーベークしたレジスト膜をアルカリ現像液で現像してレジストパターンを得る工程とを含み、TPEB≦85℃且つ0℃<TPB−TPEB<25℃であることを特徴とする製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体の微細加工、液晶、サーマルヘッド等の回路基板の製造、さらにその他のフォトファブリケーション工程に用いられるレジストパターンを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の微細加工ではレジストパターンは、(1)レジスト組成物を基体上に塗布してレジスト膜を得る工程、(2)レジスト膜を温度TPBでプリベーク(PB)する工程、(3)プリベークしたレジスト膜を露光する工程、(4)露光したレジスト膜を温度TPEBでポストエクスポージャーベーク(PEB)する工程、及び(5)ポストエクスポージャーベークしたレジスト膜をアルカリ現像液で現像してレジストパターンを得る工程を含む方法で製造される。そして従来の製造方法では通常、前記プリベーク及びポストエクスポージャーベークは同じ温度で実施されている(例えば特許文献1の実施例)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−257078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体の微細加工において、高い解像度、良好なラインエッジラフネス、良好なCD均一性、良好なマスクエラーファクター及び広いフォーカスマージンでレジストパターンを製造することが求められている。本発明はこのような事情に着目してなされたものであって、要求される特性の中でもCD均一性及びマスクエラーファクターをさらに向上させることができるレジストパターンの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために本発明者らが鋭意検討した結果、従来同じであったプリベーク温度TPBとポストエクスポージャーベーク温度TPEBとを適切に調整すれば、優れたCD均一性及びマスクエラーファクターを実現できることを見出した。
【0006】
上記目的を達成し得た本発明のレジストパターンの製造方法とは、
酸の作用によりアルカリ可溶となる樹脂(A)と酸発生剤(B)とを含有するレジスト組成物を、基体上に塗布してレジスト膜を得る工程と、
レジスト膜を温度TPBでプリベーク(PB)する工程と、
プリベークしたレジスト膜を露光する工程と、
露光したレジスト膜を温度TPEBでポストエクスポージャーベーク(PEB)する工程と、
ポストエクスポージャーベークしたレジスト膜をアルカリ現像液で現像してレジストパターンを得る工程とを含み、
PEB≦85℃且つ0℃<TPB−TPEB<25℃である点に要旨を有する。
なお「酸の作用によりアルカリ可溶となる」とは、「酸との接触前ではアルカリ水溶液に不溶又は難溶であるが、酸との接触後にはアルカリ水溶液に可溶となる」ことを意味する。また以下では前記各工程を、順にそれぞれ「塗布工程1」、「プリベーク工程2」、「露光工程3」、「ポストエクスポージャーベーク工程4」及び「現像工程5」と略称することがある。
【0007】
樹脂(A)は、環状有機基を有する(メタ)アクリル系モノマーを2種以上共重合させた共重合体を含有することが好ましく、さらに、少なくとも、
(a1)酸の作用によりアルカリ可溶となり、且つC5-20脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル系モノマー、
(a2)ヒドロキシ基含有アダマンチル基を有する(メタ)アクリル系モノマー、及び
(a3)ラクトン環を有する(メタ)アクリル系モノマー
を重合させた共重合体を含有する
ことがより好ましい。
【0008】
以下では前記各モノマーを、順にそれぞれ「酸可溶化モノマー(a1)」、「ヒドロキシアダマンチル型モノマー(a2)」及び「ラクトン型モノマー(a3)」と略称することがある。なお本明細書において「(メタ)アクリル系モノマー」とは、「CH2=CH−CO−」又は「CH2=C(CH3)−CO−」の構造を有するモノマーを総称する。同様に「(メタ)アクリレート」及び「(メタ)アクリル酸」とは、それぞれ「アクリレート又はメタクリレート」及び「アクリル酸又はメタクリル酸」を総称する。
【0009】
酸可溶化モノマー(a1)は、式(a1−1)で表される化合物及び式(a1−2)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。なお以下では、式(a1−1)で表される化合物を「化合物(a1−1)」又は「モノマー(a1−1)」などと略称することがある。他の化学式で表される化合物も同様に略称することがある。また本明細書における化学式は立体異性も包含する。
【0010】
【化1】

【0011】
式(a1−1)及び式(a1−2)中、La1及びLa2は、それぞれ独立に、酸素原子(−O−)、カルボニル基(−CO−)、−N(Ra5)−、直鎖状又は分枝鎖状のC1-17アルカンジイル基、又はこれらの組合せを表し、Ra5は、水素原子、或いは直鎖状又は分枝鎖状のC1-6脂肪族炭化水素基を表す。Ra1及びRa3は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。Ra2及びRa4は、それぞれ独立に、直鎖状又は分枝鎖状のC1-8脂肪族炭化水素基、或いはC3-10脂環式炭化水素基を表す。m1は、0〜14の整数を表す。n1は、0〜10の整数を表す。但しm1又はn1が0であるとは、それぞれ、メチル基が存在しないことを意味する。
なお本明細書において「Cx-y」とは、炭素数がx以上y以下であることを意味する。
【0012】
酸可溶化モノマー(a1)は、2−メチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、2−エチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、2−イソプロピル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、及び1−エチル−1−シクロヘキシル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
【0013】
ヒドロキシアダマンチル型モノマー(a2)は、3−ヒドロキシ−1−アダマンチル(メタ)アクリレート及び3,5−ジヒドロキシ−1−アダマンチル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0014】
ラクトン型モノマー(a3)は、式(a3−1)で表される化合物及び式(a3−2)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0015】
【化2】

【0016】
式(a3−1)及び式(a3−2)中、La4及びLa5は、それぞれ独立に、酸素原子(−O−)、カルボニル基(−CO−)、−N(Ra18)−、直鎖状又は分枝鎖状のC1-17アルカンジイル基、又はこれらの組合せを表し、Ra18は、水素原子、或いは直鎖状又は分枝鎖状のC1-6脂肪族炭化水素基を表す。Ra12及びRa14は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。Ra13は、C1-4脂肪族炭化水素基を表し、p1は0〜5の整数を表す。Ra15は、カルボキシ基、シアノ基又はC1-4脂肪族炭化水素基を表し、q1は0〜3の整数を表す。但しp1又はq1が0であるとは、それぞれ、Ra13又はRa15が存在しないことを意味し、p1又はq1が2以上のとき、それぞれ、複数のRa13又はRa15は、互いに同一でも異なってもよい。
【0017】
好ましい酸発生剤(B)は、式(B1)で表されるスルホン酸塩である。
【0018】
【化3】

【0019】
式(B1)中、Q1及びQ2は、それぞれ独立に、フッ素原子又はC1-6ペルフルオロアルキル基を表す。Lb1は、単結合、酸素原子(−O−)、カルボニル基(−CO−)、直鎖状又は分枝鎖状のC1-17アルカンジイル基、或いは酸素原子、カルボニル基及びC1-17アルカンジイル基からなる群から選ばれる2種以上の組合せを表す。Yは、置換基を有していてもよいC3-36脂環式炭化水素基を表し、該脂環式炭化水素基に含まれるメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基で置換されていてもよい。Z+は、有機カチオンを表す。
【0020】
好ましいZ+は、アリールスルホニウムカチオンである。
【0021】
Yは、置換基を有していてもよいアダマンチル基又は置換基を有していてもよいオキソアダマンチル基であることが好ましい。
【0022】
好ましい酸発生剤(B)の含有量は、樹脂(A)100質量部に対して、1〜20質量部である。
【0023】
レジスト組成物は、さらに窒素含有塩基性化合物(C)を含んでいてもよい。好ましい窒素含有塩基性化合物(C)は、ジイソプロピルアニリンである。
【0024】
本発明は、前記製造方法により得られるレジストパターンも包含する。
【発明の効果】
【0025】
ポストエクスポージャーベーク温度TPEBを85℃以下に設定した上で、プリベーク温度TPBをポストエクスポージャーベーク温度TPEBよりも高くし、且つこれらの温度差を25℃未満に抑えることによって、優れたCD均一性及びマスクエラーファクターを実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の製造方法は、塗布工程1、プリベーク工程2、露光工程3、ポストエクスポージャーベーク工程4及び現像工程5を含む。以下、各工程を順に説明する。
【0027】
〈塗布工程1〉
レジスト組成物を塗布するにあたっては、予め、レジスト組成物の各成分を溶剤中で混合した後、ポアサイズが0.2μm以下程度のフィルタでろ過しておくことが望ましい。ろ過することで、レジスト組成物を塗布する際の均一性が向上する。
【0028】
レジスト組成物が塗布される基体としては、用途に応じて適宜設定でき、例えばセンサ、回路、トランジスタなどが形成されたシリコンウエハ、石英ウエハなどが挙げられる。
【0029】
基体上にレジスト組成物の塗膜を形成する方法は特に限定されず、スピンコート法などの通常の塗布方法を適宜採用できる。
【0030】
〈プリベーク工程2〉
プリベークによって、レジスト膜の機械的強度を高め、露光後のレジスト膜中の活性種(例えばH+)の拡散度合いを調整することができる。このプリベーク温度TPBについては後述する。
【0031】
〈露光工程3〉
プリベーク後のレジスト膜に、目的のパターンに対応するマスクを介して露光が行われる。露光機としては、例えば縮小投影型露光装置が用いられる。露光光源としては、KrFエキシマレーザ(波長248nm)、ArFエキシマレーザ(波長193nm)、F2レーザ(波長157nm)のような紫外域のレーザ光を放射するもの、固体レーザ光源(YAG又は半導体レーザ等)からのレーザ光を波長変換して遠紫外域または真空紫外域の高調波レーザ光を放射するもの等、種々のものを使用できる。露光量は、使用するレジスト組成物の成分の種類及び含有量に応じて適宜選択すればよい。
【0032】
〈ポストエクスポージャーベーク工程4〉
露光後のレジスト膜で活性種(例えばH+)の拡散及び活性種による反応を促進するために、ポストエクスポージャーベークが行われる。このポストエクスポージャーベーク温度TPEBについては後述する。
【0033】
〈現像工程5〉
現像は、現像装置を用いて、レジスト膜が設けられた基体を通常の現像液に接触することで行えばよい。現像液としては、例えばアルカリ水溶液(詳しくは、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドや(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウムヒドロキシド(通称コリン)の水溶液等)が用いられる。現像液には、必要に応じて界面活性剤を添加してもよい。現像液を振り切り、水洗し、次いで水を除去することによってレジストパターンを形成することが好ましい。
【0034】
前記各工程を含む本発明の製造方法は、プリベーク温度TPB及びポストエクスポージャーベーク温度TPEBを適正に制御することによって、CD均一性やマスクエラーファクターを向上させることを特徴とする。詳しくは、プリベーク温度TPBをポストエクスポージャーベーク温度TPEBよりも高めて露光前のレジスト膜の機械的強度を向上させること、及びポストエクスポージャーベーク温度TPEBを85℃以下に制限することによって、露光後に活性種の大幅な拡散を防ぐことによって、CD均一性等を向上させることができる。しかしプリベーク温度TPBを高めすぎると、活性種の拡散が制限されすぎて、却ってCD均一性等が低下する。そこでプリベーク温度TPBとポストエクスポージャーベーク温度TPEBとの差を25℃未満に設定した。
【0035】
本発明においてプリベーク温度TPBは、通常、70℃以上(好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上)、110℃未満(好ましくは105℃以下、より好ましくは100℃以下)、ポストエクスポージャーベーク温度TPEBは、通常、50℃以上(好ましくは70℃以上)、85℃以下(好ましくは80℃以下)、プリベーク温度TPBとポストエクスポージャーベーク温度TPEBとの差(但しTPB>TPEB)は、通常、0℃超(好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上)、25℃未満(好ましくは20℃以下)である。
【0036】
本発明の製造方法で使用するレジスト組成物としては、化学増幅ポジ型レジスト組成物が好ましい。特に酸の作用によりアルカリ可溶となる樹脂(A)と、酸発生剤(B)とを含有し、活性種としてH+を利用するレジスト組成物がより好ましい。
【0037】
活性種としてH+を利用する化学増幅ポジ型レジスト組成物は、通常、酸の作用によりアルカリ可溶となる樹脂(A)、酸発生剤(B)及び溶剤(D)、場合により窒素含有塩基性化合物(C)を含有する。これら成分は、それぞれ1種のみを使用してもよく、2種以上の混合物を使用してもよい。以下、各成分を順に説明する。
【0038】
〈酸の作用によりアルカリ可溶となる樹脂(A)〉
樹脂(A)は、通常、2,500以上(好ましくは3,000以上)、30,000以下(好ましくは15,000以下)の重量平均分子量を有する重合体である。これらの中でも、環状有機基を有する(メタ)アクリル系モノマーを2種以上共重合させた共重合体が好ましい。
【0039】
環状有機基を有する(メタ)アクリル系モノマーは、以下の2つのモノマーに分類できる。その1つは、飽和又は不飽和の単環又は多環の脂環式炭化水素基を有する非置換型モノマーである。もう1つは、飽和又は不飽和の単環又は多環の脂環式炭化水素基のメチレン基が酸素原子(−O−)やカルボニル基(−CO−)で置換されるか、又は水素原子がヒドロキシ基(−OH)、シアノ基(−CN)、カルボキシ基(−COOH)等で置換された置換型モノマーである。酸素原子、ヒドロキシ基又はラクトン構造などを有する置換型モノマーを共重合体に導入すれば、アルカリ現像液への溶解性が向上する。
【0040】
非置換型モノマーの単環の脂環式炭化水素基には、シクロアルキル基(例えばシクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基)やシクロアルケニル基(例えばシクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基、シクロオクテニル基)などが含まれる。非置換型モノマーの多環の脂環式炭化水素基には、縮合芳香族炭化水素基を水素化して得られる基(例えばヒドロナフチル基)、橋かけ環状炭化水素基(例えばアダマンチル基、ノルボルニル基)などが含まれる。橋かけ環状炭化水素基は、その内部に不飽和結合を有していてもよい(例えばノルボルネンイル基など)。さらに下記のような、橋かけ環(例えばノルボルナン環)と単環(例えばシクロヘプタン環やシクロヘキサン環)又は多環(例えばデカヒドロナフタレン環)とが縮合した形状の基、或いは橋かけ環同士が縮合した形状の基も、非置換型モノマーの環状有機基に含まれる。
【0041】
【化4】

【0042】
置換型モノマーの環状有機基には、その水素原子がヒドロキシ基で置換されたものや、メチレン基が酸素原子やカルボニル基で置換されたものなどが含まれる。水素原子がヒドロキシ基で置換された環状有機基としては、例えばヒドロキシシクロへキシル基、ヒドロキシアダマンチル基、ヒドロキシノルボルニル基などが挙げられ、メチレン基がカルボニル基で置換された環状有機基としては、オキソアダマンチル基などが挙げられる。メチレン基が酸素原子で置換された環状有機基(即ち環状エーテルの基)としては、例えばテトラヒドロフリル基などが挙げられる。2つの隣り合うメチレン基が酸素原子及びカルボニル基で置換された環状有機基としては、例えば、ラクトン環(例えばβ−プロピオラクトン環、γ−ブチロラクトン環、δ−バレロラクトン環など)の基、下記のようなラクトン環(例えばγ−ブチロラクトン)と他の環(例えばシクロヘキサン環、ノルボルナン環)とが縮合した基などが含まれる。
【0043】
【化5】

【0044】
樹脂(A)は、好ましくは、環状有機基が酸素原子等を有さない前記非置換型モノマーの1種以上と、酸素原子等を有する前記置換型モノマーの1種以上とを共重合させた共重合体を含有する。好ましい非置換型モノマーは、(a1)酸の作用によりアルカリ可溶となり、且つC5-20脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル系モノマーである。好ましい置換型モノマーは、(a2)ヒドロキシ基含有アダマンチル基を有する(メタ)アクリル系モノマー、及び(a3)ラクトン環を有する(メタ)アクリル系モノマーである。酸可溶化モノマー(a1)、ヒドロキシアダマンチル型モノマー(a2)及びラクトン型モノマー(a3)の全てを含む共重合体が、より好ましい。
【0045】
〈酸可溶化モノマー(a1)〉
酸可溶化モノマー(a1)のC5-20脂環式炭化水素基としては、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、イソボルニル基、1−ノルボルニル基、2−ノルボルニル基、及び下記の基などが挙げられ、これらの中でも2−アダマンチル基及びシクロへキシル基が好ましい。
【0046】
【化6】

【0047】
酸可溶化モノマー(a1)は、好ましくは結合位置が3級炭素原子(但し橋かけ環状炭化水素基の橋頭炭素原子を除く)である脂環式炭化水素基を有するモノマーであり、より好ましくは化合物(a1−1)又は化合物(a1−2)である。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0048】
【化7】

【0049】
a1及びLa2は、それぞれ独立に、酸素原子(−O−)、カルボニル基(−CO−)、−N(Ra5)−、直鎖状又は分枝鎖状のC1-17アルカンジイル基、又はこれらの組合せであり、Ra5は、水素原子或いは直鎖状又は分枝鎖状のC1-6脂肪族炭化水素基、好ましくは水素原子或いは直鎖状又は分枝鎖状のC1-3アルキル基、より好ましくは水素原子である。
【0050】
酸素原子やC1-17アルカンジイル基等が組み合わさった形状のLa1及びLa2は、その主鎖を構成する原子数が17個以内であることが好ましい。結合方向を示すためにアダマンチル基又はシクロへキシル基をAdとして表現すると、組合せ形状のLa1及びLa2としては、例えば
−O−C1-16アルカンジイル−Ad、−C1-16アルカンジイル−O−Ad、−Ck1アルカンジイル−O−Cj1アルカンジイル−Ad(式中、1≦k1、1≦j1、k1+j1≦16、以下同じ);
−CO−C1-16アルカンジイル−Ad、−C1-16アルカンジイル−CO−Ad、−Ck1アルカンジイル−CO−Cj1アルカンジイル−Ad;
−N(Ra5)−C1-16アルカンジイル−Ad、−C1-16アルカンジイル−N(Ra5)−Ad、−Ck1アルカンジイル−N(Ra5)−Cj1アルカンジイル−Ad;
−CO−O−Ad、−CO−O−C1-15アルカンジイル−Ad、−C1-15アルカンジイル−CO−O−Ad、−Ci1アルカンジイル−CO−O−Ch1アルカンジイル−Ad(式中、1≦i1、1≦h1、i1+h1≦15、以下同じ);
−O−CO−Ad、−O−CO−C1-15アルカンジイル−Ad、−C1-15アルカンジイル−O−CO−Ad、−Ci1アルカンジイル−O−CO−Ch1アルカンジイル−Ad;
−CO−O−C1-14アルカンジイル−O−Ad、−CO−O−C1-14アルカンジイル−CO−O−Ad;
などが挙げられる。
【0051】
好ましいLa1及びLa2は、−O−Ad、−O−(CH2g1−CO−O−Ad、−N(Ra7)−(CH2g1−CO−O−Adである(前記式中、g1は1〜7、より好ましくは1〜4、さらに好ましくは1である。Ra7は、水素原子、メチル基又はエチル基である。)。このようなLa1及びLa2であれば、化合物(a1−1)及び化合物(a1−2)は、アダマンチル基又はシクロへキシル基の3級炭素原子がカルボニルオキシ基(−CO−O−)の酸素原子と結合した構造のエステル、即ち3級アルコール残基を有するエステルに該当する。3級アルコール残基を有するエステルを構造単位として含む樹脂は、酸発生剤から発生した酸の触媒作用で容易に開裂して現像液(アルカリ水溶液)への溶解性が向上するため、好ましい。
【0052】
a1及びRa3は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基、好ましくはメチル基である。
a2及びRa4は、それぞれ独立に、直鎖状又は分枝鎖状の脂肪族炭化水素基、或いは脂環式炭化水素基、好ましくは直鎖状又は分枝鎖状の脂肪族炭化水素基である。Ra2及びRa4の脂肪族炭化水素基の炭素数は、好ましくは6以下であり、脂環式炭化水素基の炭素数は、好ましくは8以下、より好ましくは6以下である。好ましい直鎖状または分枝鎖状の脂肪族炭化水素基は、メチル基、エチル基、1−メチルエチル基(i−プロピル基)、1,1−ジメチルエチル基(t−ブチル基)、2,2−ジメチルエチル基、プロピル基、1−メチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、1−エチルプロピル基、ブチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1−プロピルブチル基、ペンチル基、1−メチルペンチル基、ヘキシル基、1,4−ジメチルヘキシル基、ヘプチル基、1−メチルヘプチル基、オクチル基である。好ましい脂環式炭化水素基は、シクロヘプチル基、メチルヘプチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロへキシル基、ノルボルニル基、メチルノルボルニル基である。
【0053】
m1は、0〜14の整数、好ましくは0〜3の整数、より好ましくは0又は1である。n1は、0〜10の整数、好ましくは0〜3の整数、より好ましくは0又は1である。
【0054】
アダマンタン環を有する酸可溶化モノマー(a1−1)としては、例えば以下のものが挙げられ、これらの中でも、2−メチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、2−エチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、及び2−イソプロピル−2−アダマンチル(メタ)アクリレートが好ましく、メタクリレート形態のものがより好ましい。
【0055】
【化8】

【0056】
【化9】

【0057】
【化10】

【0058】
【化11】

【0059】
【化12】

【0060】
【化13】

【0061】
【化14】

【0062】
【化15】

【0063】
【化16】

【0064】
【化17】

【0065】
シクロヘキサン環を有する酸可溶化モノマー(a1−2)としては、例えば以下のものが挙げられ、これらの中でも1−エチル−1−シクロヘキシル(メタ)アクリレートが好ましく、1−エチル−1−シクロヘキシルメタクリレートがより好ましい。
【0066】
【化18】

【0067】
〈ヒドロキシアダマンチル型モノマー(a2)〉
ヒドロキシアダマンチル型モノマー(a2)は、ヒドロキシメチル基(−CH2OH)のようなヒドロキシ含有置換基をアダマンタン環上に有していてもよいが、ヒドロキシ基(−OH)そのものをアダマンタン環上に有することが好ましい。ヒドロキシ基の数は、1つでも、2つ以上でもよい。
【0068】
好ましいヒドロキシアダマンチル型モノマー(a2)は化合物(a2−1)であり、この1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0069】
【化19】

【0070】
式(a2−1)中、La3は、酸素原子(−O−)、カルボニル基(−CO−)、−N(Ra11)−、直鎖状又は分枝鎖状のC1-17アルカンジイル基、又はこれらの組合せを表し、Ra11は、水素原子、或いは直鎖状又は分枝鎖状のC1-6脂肪族炭化水素基を表す。Ra8は、水素原子又はメチル基を表す。Ra9及びRa10は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基又はヒドロキシ基を表す。o1は、0〜10の整数を表す。但しo1が0であるとは、メチル基が存在しないことを意味する。
【0071】
a3の説明はLa1及びLa2と同じである。Ra8の説明はRa1と同じである。好ましいRa9は水素原子である。好ましいRa10は、水素原子及びヒドロキシ基である。o1は、好ましくは0〜3の整数、より好ましくは0又は1である。
【0072】
ヒドロキシアダマンチル型モノマー(a2−1)としては、例えば以下のものが挙げられ、これらの中でも、3−ヒドロキシ−1−アダマンチル(メタ)アクリレート、3,5−ジヒドロキシ−1−アダマンチル(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリル酸1−(3,5−ジヒドロキシ−1−アダマンチルオキシカルボニル)メチルが好ましく;3−ヒドロキシ−1−アダマンチル(メタ)アクリレート及び3,5−ジヒドロキシ−1−アダマンチル(メタ)アクリレートがより好ましく;3−ヒドロキシ−1−アダマンチルメタクリレート及び3,5−ジヒドロキシ−1−アダマンチルメタクリレートがさらに好ましい。
【0073】
【化20】

【0074】
【化21】

【0075】
【化22】

【0076】
【化23】

【0077】
【化24】

【0078】
〈ラクトン型モノマー(a3)〉
ラクトン型モノマー(a3)が有するラクトン環は、例えばβ−プロピオラクトン環、γ−ブチロラクトン環、δ−バレロラクトン環のような単環でもよく、或いは単環状のラクトン環と他の環との縮合環でもよい。これらラクトン環の中で、γ−ブチロラクトン環、及びγ−ブチロラクトン環と他の環との縮合環が好ましい。
【0079】
好ましいラクトン型モノマー(a3)は、化合物(a3−1)、化合物(a3−2)、化合物(a3−3)であり、これらの1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0080】
【化25】

【0081】
式(a3−1)〜式(a3−3)中、La4〜La6は、それぞれ独立に、酸素原子(−O−)、カルボニル基(−CO−)、−N(Ra18)−、直鎖状又は分枝鎖状のC1-17アルカンジイル基、又はこれらの組合せを表し、Ra18は、水素原子、或いは直鎖状又は分枝鎖状のC1-6脂肪族炭化水素基を表す。Ra12、Ra14及びRa16は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。Ra13は、C1-4脂肪族炭化水素基を表し、p1は0〜5の整数を表す。Ra15及びRa17は、それぞれ独立にカルボキシ基、シアノ基又はC1-4脂肪族炭化水素基を表し、q1及びr1は、それぞれ独立に0〜3の整数を表す。但しp1、q1又はr1が0であるとは、それぞれ、Ra13、Ra15又はRa17が存在しないことを意味し、p1、q1又はr1が2以上のとき、それぞれ、複数のRa13、Ra15又はRa17は、互いに同一でも異なってもよい。
【0082】
a4、La5及びLa6の説明はLa1及びLa2と同じである。Ra12、Ra14及びRa16の説明はRa1と同じである。好ましいRa13はメチル基である。Ra15及びRa17として好ましいものは、カルボキシ基、シアノ基及びメチル基である。p1、q1又はr1は、それぞれ独立に、好ましくは0〜2、より好ましくは0又は1である。
【0083】
γ−ブチロラクトン環を有するラクトン型モノマー(a3−1)としては、例えば以下のものが挙げられる。
【0084】
【化26】

【0085】
【化27】

【0086】
γ−ブチロラクトン環とノルボルナン環との縮合環を有するラクトン型モノマー(a3−2)としては、例えば以下のものが挙げられる。
【0087】
【化28】

【0088】
【化29】

【0089】
【化30】

【0090】
【化31】

【0091】
γ−ブチロラクトン環とシクロヘキサン環との縮合環を有するラクトン型モノマー(a3−3)としては、例えば以下のものが挙げられる。
【0092】
【化32】

【0093】
【化33】

【0094】
【化34】

【0095】
【化35】

【0096】
上述のラクトン型モノマー(a3)の中でも、(メタ)アクリル酸(5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロ−2−オキソ−3−フリル、(メタ)アクリル酸2−(5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イルオキシ)−2−オキソエチルが好ましく、メタクリレート形態のものがより好ましい。
【0097】
〈その他のモノマー〉
樹脂(A)の共重合体は、その他のモノマーに由来する構造単位を有していてもよい。その他のモノマーとしては、例えば、式(a4−1)で表される無水マレイン酸、式(a4−2)で表される無水イタコン酸、又は式(a4−3)で表されるノルボルネンなどのような重合性の炭素−炭素二重結合を有する化合物などが挙げられる。重合性二重結合を有する化合物は、ラジカル重合によって共重合体に組み込むことができる。
【0098】
【化36】

【0099】
式(a4−3)中、Ra19及びRa20は、それぞれ独立に、水素原子、置換基(例えばヒドロキシ基)を有していてもよいC1-3脂肪族炭化水素基、シアノ基、カルボキシ基、又はアルコキシカルボニル基(−COORa21)を表す。但しRa19及びRa20の両方がカルボキシ基である場合、Ra19及びRa20が互いに結合して、カルボン酸無水物を形成してもよい。Ra21は、直鎖状又は分枝鎖状のC1-8脂肪族炭化水素基、或いはC4-36脂環式炭化水素基を表し;前記脂環式炭化水素基のメチレン基は酸素原子又はカルボキシ基で置換されていてもよい。
【0100】
a19及びRa20の置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、−COORa21などが挙げられる。Ra21としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、2−オキソ−オキソラン−3−イル基、2−オキソ−オキソラン−4−イル基などが挙げられる。
【0101】
ノルボルネン(a4−3)としては、例えば2−ノルボルネン、2−ヒドロキシ−5−ノルボルネン、5−ノルボルネン−2−カルボン酸、5−ノルボルネン−2−カルボン酸メチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸2−ヒドロキシ−1−エチル、5−ノルボルネン−2−メタノール、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物などが挙げられる。
【0102】
酸に不安定な基、例えばオキシ基(−O−)が3級炭素原子(但し橋かけ環状炭化水素基の橋頭炭素原子を除く)と結合したアルコキシカルボニル基−COORa21を有するノルボルネン(a4−3)(即ち3級アルコール残基を有するエステル)は、嵩高いノルボルネン環構造を有しているにもかかわらず酸で容易に開裂して、共重合体の可溶性を向上させることができる。酸に不安定な基を有するノルボルネン(a4−3)としては、例えば、5−ノルボルネン−2−カルボン酸−t−ブチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−シクロヘキシル−1−メチルエチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−メチルシクロヘキシル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸2−メチル−2−アダマンチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸2−エチル−2−アダマンチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−(4−メチルシクロヘキシル)−1−メチルエチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−1−メチルエチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−メチル−1−(4−オキソシクロヘキシル)エチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−(1−アダマンチル)−1−メチルエチルなどが挙げられる。
【0103】
〈酸発生剤(B)〉
レジスト組成物は、酸発生剤(B)(好ましくは光酸発生剤)を、樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは1質量部以上(好ましくは3質量部以上)、好ましくは20質量部以下(より好ましくは15質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下)の量で含有する。
【0104】
酸発生剤は、非イオン系(例えば有機ハロゲン化物、スルホン酸エステル、スルホン等)とイオン系とに分類され、イオン系が好ましい。イオン系酸発生剤は、無機アニオン(例えばBF4-、PF6-、AsF6-、SbF6-)を有するものと、有機アニオン(例えばスルホン酸アニオン、ビススルホニルアミンアニオン)を有するものとがあり、これらの中でもスルホン酸アニオンを有するものが好ましい。酸発生剤(B)は、好ましくは、式(B1)で表されるスルホン酸塩である。
【0105】
【化37】

【0106】
式(B1)中、Q1及びQ2は、それぞれ独立に、フッ素原子又はC1-6ペルフルオロアルキル基を表す。C1-6ペルフルオロアルキル基としては、例えばペルフルオロメチル基、ペルフルオロエチル基、ペルフルオロ−n−プロピル基、ペルフルオロイソプロピル基、ペルフルオロ−n−ブチル基、ペルフルオロ−sec−ブチル基、ペルフルオロ−tert−ブチル基、ペルフルオロ−n−ペンチル基、ペルフルオロ−n−ヘキシル基などが挙げられる。これらの中で、ペルフルオロメチル基及びフッ素原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
【0107】
式(B1)中、Yは、置換基を有していてもよいC3-36脂環式炭化水素基を表し、該脂環式炭化水素基に含まれるメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基で置換されていてもよい。脂環式炭化水素基としては、樹脂(A)のモノマーで説明したものが例示でき、それらの中でも、置換基を有していてもよいアダマンチル基及び置換基を有していてもよいオキソアダマンチル基が好ましい。
【0108】
Yの置換基としては、例えばハロゲン原子、ヒドロキシ基、直鎖状又は分枝鎖状のC1-12脂肪族炭化水素基、C3-12脂環式炭化水素基、ヒドロキシ基含有C1-12脂肪族炭化水素基、C1-12アルコキシ基、C6-20芳香族炭化水素基、C7-21アラルキル基、C2-4アシル基、グリシドキシ基、或いは−(CH2m2−O−CO−Rb1基(式中、Rb1は、直鎖状又は分枝鎖状のC1-12脂肪族炭化水素基、C3-16脂環式炭化水素基、又はC6-20芳香族炭化水素基を表す。m2は、0〜4の整数を表す。但しm2が0であるとはメチレン基が存在しないことを意味する。)などが挙げられる。ハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。直鎖状又は分枝鎖状の脂肪族炭化水素基や脂環式炭化水素基としては、樹脂(A)で説明したものなどが例示できる。ヒドロキシ基含有脂肪族炭化水素基としては、例えばヒドロキシメチル基などが挙げられる。アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基などが挙げられる。芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、p−メチルフェニル基、p−tert−ブチルフェニル基、p−アダマンチルフェニル基などが挙げられる。アラルキル基としては、例えばベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、トリチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基などが挙げられる。アシル基としては、例えばアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基などが挙げられる。複数の置換基は互いに同一でも異なってもよい。
【0109】
脂環式炭化水素基としては、例えば式(W1)〜式(W24)で表されるものが挙げられる。これらの中でも式(W11)(アダマンタン環)、式(W14)(2−オキソアダマンタン環)、式(W15)(γ−ブチロラクトン環)及び式(W19)(γ−ブチロラクトン環とノルボルナン環との縮合環)が好ましく、式(W11)及び式(W14)がより好ましい。
【0110】
【化38】

【0111】
脂肪族炭化水素基を有する脂環式炭化水素基としては、例えば以下のものが挙げられる。
【0112】
【化39】

【0113】
芳香族炭化水素基を有する脂環式炭化水素基としては、例えば以下のものが挙げられる。
【0114】
【化40】

【0115】
−(CH2m2−O−CO−Rb1基を有する脂環式炭化水素基としては、例えば以下のものが挙げられる。
【0116】
【化41】

【0117】
ヒドロキシ基又はヒドロキシ基含有脂肪族炭化水素基を有する脂環式炭化水素基としては、例えば以下のものが挙げられる。
【0118】
【化42】

【0119】
式(B1)中、Lb1は、単結合、酸素原子(−O−)、カルボニル基(−CO−)、直鎖状又は分枝鎖状のC1-17アルカンジイル基(好ましくは直鎖状又は分枝鎖状のC1-4アルカンジイル基)、或いは酸素原子、カルボニル基及びC1-17アルカンジイル基からなる群から選ばれる2種以上の組合せである。
【0120】
b1のアルカンジイル基としては、メチレン基、エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ブタン−1,3−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基、ヘプタン−1,7−ジイル基、オクタン−1,8−ジイル基、ノナン−1,9−ジイル基、デカン−1,10−ジイル基、ウンデカン−1,11−ジイル基、ドデカン−1,12−ジイル基、トリデカン−1,13−ジイル基、テトラデカン−1,14−ジイル基、ペンタデカン−1,15−ジイル基、ヘキサデカン−1,16−ジイル基、ヘプタデカン−1,17−ジイル基などが挙げられる。
【0121】
b1のアルカンジイル基は、直鎖状又は分枝鎖状の脂肪族炭化水素基或いは脂環式炭化水素基(好ましくは直鎖状又は分枝鎖状のC1-4脂肪族炭化水素基)の側鎖を有していてもよい。アルカンジイル基の側鎖としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基などが挙げられる。
【0122】
b1は、酸素原子、カルボニル基及びC1-17アルカンジイル基からなる群から選ばれる2種以上の組合せでもよい。そのような組合せとしては、La1及びLa2で説明したものが挙げられる。
【0123】
b1は、好ましくは式(b1−1)〜式(b1−4)で示される連結部のいずれかである。なお式(b1−1)〜式(b1−4)では、結合の方向を示すためにYも記載している。
【0124】
【化43】

【0125】
式(b1−1)〜式(b1−4)中、Lb2は、単結合、或いは直鎖状又は分枝鎖状のC1-15アルカンジイル基を表す。Lb3は、単結合、直鎖状又は分枝鎖状のC1-15アルカンジイル基、又は直鎖状又は分枝鎖状のC1-15アルカンジイル基と酸素原子との組合せを表す。Lb4〜Lb7は、それぞれ独立に、直鎖状又は分枝鎖状のC1-15アルカンジイル基を表す。Lb2〜Lb7のアルカンジイル基の炭素数は、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜4、さらに好ましくは1又は2である。これらの中でも、連結部(b1−1)が好ましく、Lb2が単結合又はメチレン基である連結部(b1−1)がより好ましい。
【0126】
連結部(b1−1)を有するスルホン酸アニオンの中でも、式(b1−1−1)〜式(b1−1−9)で表されるものが好ましい。
【0127】
【化44】

【0128】
式(b1−1−1)〜式(b1−1−9)中、Q1、Q2及びLb2は、前記と同じである。Rb4及びRb5は、それぞれ独立にC1-4脂肪族炭化水素基(好ましくはメチル基)を表す。
【0129】
次に具体的なスルホン酸アニオンを例示する。まず、無置換の脂環式炭化水素基と連結部(b1−1)とを含むスルホン酸アニオン;又は置換基として脂肪族炭化水素基を有する脂環式炭化水素基と連結部(b1−1)とを含むスルホン酸アニオン;としては、例えば以下のものが挙げられる。
【0130】
【化45】

【0131】
【化46】

【0132】
【化47】

【0133】
置換基として−(CH2m2−O−CO−Rb1基を有する脂環式炭化水素基と連結部(b1−1)とを含むスルホン酸アニオンとしては、例えば以下のものが挙げられる。
【0134】
【化48】

【0135】
置換基として芳香族炭化水素基又はアラルキル基を有する脂環式炭化水素基と連結部(b1−1)とを含むスルホン酸アニオンとしては、例えば以下のものが挙げられる。
【0136】
【化49】

【0137】
置換基としてヒドロキシ基又はヒドロキシ基含有脂肪族炭化水素基を有する脂環式炭化水素基と連結部(b1−1)とを含むスルホン酸アニオンとしては、例えば以下のものが挙げられる。
【0138】
【化50】

【0139】
【化51】

【0140】
【化52】

【0141】
【化53】

【0142】
環状エーテルと連結部(b1−1)とを含むスルホン酸アニオンとしては、例えば以下のものが挙げられる。
【0143】
【化54】

【0144】
ラクトン環と連結部(b1−1)とを含むスルホン酸アニオンとしては、例えば以下のものが挙げられる。
【0145】
【化55】

【0146】
オキソ基を有する脂環式炭化水素基と連結部(b1−1)とを含むスルホン酸アニオンとしては、例えば以下のものが挙げられる。
【0147】
【化56】

【0148】
無置換の脂環式炭化水素基と連結部(b1−2)とを含むスルホン酸アニオン;又は置換基として脂肪族炭化水素基を有する脂環式炭化水素基と連結部(b1−2)とを含むスルホン酸アニオン;としては、例えば以下のものが挙げられる。
【0149】
【化57】

【0150】
【化58】

【0151】
【化59】

【0152】
置換基として−(CH2m2−O−CO−Rb1基を有する脂環式炭化水素基と連結部(b1−2)とを含むスルホン酸アニオンとしては、例えば以下のものが挙げられる。
【0153】
【化60】

【0154】
置換基としてヒドロキシ基又はヒドロキシ基含有脂肪族炭化水素基を有する脂環式炭化水素基と連結部(b1−2)とを含むスルホン酸アニオンとしては、例えば以下のものが挙げられる。
【0155】
【化61】

【0156】
ラクトン環と連結部(b1−2)とを含むスルホン酸アニオンとしては、例えば以下のものが挙げられる。
【0157】
【化62】

【0158】
オキソ基を有する脂環式炭化水素基と連結部(b1−2)とを含むスルホン酸アニオンとしては、例えば以下のものが挙げられる。
【0159】
【化63】

【0160】
置換基として芳香族炭化水素基を有する脂環式炭化水素基と連結部(b1−2)とを含むスルホン酸アニオンとしては、例えば以下のものが挙げられる。
【0161】
【化64】

【0162】
無置換の脂環式炭化水素基と連結部(b1−3)とを含むスルホン酸アニオン;又は置換基として脂肪族炭化水素基を有する脂環式炭化水素基と連結部(b1−3)とを含むスルホン酸アニオン;としては、例えば以下のものが挙げられる。
【0163】
【化65】

【0164】
置換基としてアルコキシ基を有する脂環式炭化水素基と連結部(b1−3)とを含むスルホン酸アニオンとしては、例えば以下のものが挙げられる。
【0165】
【化66】

【0166】
置換基としてヒドロキシ基又はヒドロキシ基含有脂肪族炭化水素基を有する脂環式炭化水素基と連結部(b1−3)とを含むスルホン酸アニオンとしては、例えば以下のものが挙げられる。
【0167】
【化67】

【0168】
オキソ基を有する脂環式炭化水素基と連結部(b1−3)とを含むスルホン酸アニオンとしては、例えば以下のものが挙げられる。
【0169】
【化68】

【0170】
置換基として脂肪族炭化水素基を有する脂環式炭化水素基と連結部(b1−4)とを含むスルホン酸アニオンとしては、例えば以下のものが挙げられる。
【0171】
【化69】

【0172】
置換基としてアルコキシ基を有する脂環式炭化水素基と連結部(b1−4)とを含むスルホン酸アニオンとしては、例えば以下のものが挙げられる。
【0173】
【化70】

【0174】
置換基としてヒドロキシ基又はヒドロキシ基含有脂肪族炭化水素基を有する脂環式炭化水素基と連結部(b1−4)とを含むスルホン酸アニオンとしては、例えば以下のものが挙げられる。
【0175】
【化71】

【0176】
オキソ基を有する脂環式炭化水素基と連結部(b1−4)とを含むスルホン酸アニオンとしては、例えば以下のものが挙げられる。
【0177】
【化72】

【0178】
上述のもののなかでも、連結部(b1−1)を有する以下のスルホン酸アニオンが好ましい。
【0179】
【化73】

【0180】
次に酸発生剤(B)に含まれるカチオンについて説明する。酸発生剤のカチオンとしては、オニウムカチオン、例えばスルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ベンゾチアゾリウムカチオン、ホスホニウムカチオンなどが挙げられる。これらの中でも、スルホニウムカチオン及びヨードニウムカチオンが好ましく、アリールスルホニウムカチオンがより好ましい。
【0181】
式(B1)中のZ+は、好ましくは式(b2−1)〜式(b2−4)で表されるカチオンのいずれかである。
【0182】
【化74】

【0183】
式(b2−1)中、Rb6〜Rb8は、それぞれ独立に、直鎖状又は分枝鎖状のC1-30脂肪族炭化水素基、C3-30脂環式炭化水素基、或いはC6-20芳香族炭化水素基を表す。前記脂肪族炭化水素基および芳香族炭化水素基は、ヒドロキシ基、或いは直鎖状又は分枝鎖状のC1-12アルコキシ基などで置換されていてもよい。また前記芳香族炭化水素基は、直鎖状又は分枝鎖状のC1-12脂肪族炭化水素基、或いはC4-36脂環式炭化水素基で置換されていてもよい。
【0184】
式(b2−2)中、Rb9及びRb10は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、直鎖状又は分枝鎖状のC1-12脂肪族炭化水素基、或いは直鎖状又は分枝鎖状のC1-12アルコキシ基を表し、o2及びp2は、それぞれ独立に0又は1を表す。但しo2又はp2が0であるとは、それぞれの置換基が存在しないことを意味する。
【0185】
式(b2−3)中、Rb11及びRb12は、それぞれ独立に、直鎖状又は分枝鎖状C1-12脂肪族炭化水素基、C3-36(好ましくはC4-12)脂環式炭化水素基を表す。Rb13は、水素原子、直鎖状又は分枝鎖状C1-12脂肪族炭化水素基、C4-36脂環式炭化水素基、或いはC6-20芳香族炭化水素基を表し、好ましくは水素原子である。Rb14は、直鎖状又は分枝鎖状のC1-12脂肪族炭化水素基、C3-12脂環式炭化水素基、或いはC6-20芳香族炭化水素基を表す。但しRb13及びRb14の芳香族炭化水素基は、直鎖状又は分枝鎖状のC1-12脂肪族炭化水素基、C3-12脂環式炭化水素基、ヒドロキシ基、或いは直鎖状又は分枝鎖状のC1-12アルコキシ基などで置換されていてもよい。またRb11とRb12と、及びRb13とRb14とは、互いに結合して3員環〜12員環(好ましくは3員環〜6員環)を形成していてもよく、これらの環のメチレン基は、酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)、カルボニル基(−CO−)で置換されていてもよい。
【0186】
式(b2−4)中、Rb15〜Rb20は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、直鎖状又は分枝鎖状のC1-12脂肪族炭化水素基、直鎖状又は分枝鎖状のC1-12アルコキシ基を表す。Lb7は、硫黄原子又は酸素原子を表す。q2〜v2は、それぞれ独立に、0〜2の整数を表し、w2は0又は1を表す。但しq2〜w2のいずれかが0であるとは、それぞれの置換基が存在しないことを意味し、q2〜v2のいずれかが2であるとき、それぞれ、複数のRb15〜Rb20のいずれかは互いに同一でも異なってもよい。
【0187】
次に式(b2−1)〜式(b2−4)に含まれる置換基を説明する。脂肪族炭化水素基および芳香族炭化水素基としては、上述したものなどを例示できる。好ましい脂肪族炭化水素基は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘプチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基である。好ましい芳香族炭化水素基は、フェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−t−ブチルフェニル基、4−シクロへキシルフェニル基、4−メトキシフェニル基、ビフェニリル基である。アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブチトキシ基、tert−ブチトキシ基、n−ペントキシ基、n−ヘキトキシ基、ヘプトキシ基、オクトキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基などが挙げられる。Rb11及びRb12が形成する環としては、例えばチオラン−1−イウム環(テトラヒドロチオフェニウム環)、チアン−1−イウム環、1,4−オキサチアン−4−イウム環などが挙げられる。Rb13及びRb14が形成する環としては、例えばオキソシクロヘプタン環、オキソシクロヘキサン環、オキソノルボルナン環、オキソアダマンタン環などが挙げられる。
【0188】
カチオン(b2−1)〜カチオン(b2−4)の中でも、カチオン(b2−1)が好ましく、式(b2−1−1)で表されるものがより好ましく、トリフェニルスルホニウムカチオン(式(b2−1−1)中、x2=y2=z2=0)がさらに好ましい。
【0189】
【化75】

【0190】
式(b2−1−1)中、Rb21〜Rb23は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、直鎖状又は分枝鎖状のC1-12肪族炭化水素基、或いは直鎖状又は分枝鎖状のC1-12アルコキシ基を表す。x2〜z2は、それぞれ独立に0又は1を表す。但しx2〜z2のいずれかが0であるとは、それぞれの置換基が存在しないことを意味する。
【0191】
さらに式(b2−1−1)中のRb21〜Rb23は、それぞれ独立に、C4-36脂環式炭化水素基であってもよい。好ましい脂環式炭化水素基はアダマンチル基及びイソボルニル基である。また脂環式炭化水素基の水素原子は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、直鎖状又は分枝鎖状のC1-12脂肪族炭化水素基、直鎖状又は分枝鎖状のC1-12アルコキシ基、C6-12アリール基、C7-12アラルキル基、グリシドキシ基、或いはC2-4アシル基で置換されていてもよい。
【0192】
次に酸発生剤(B)に含まれる具体的なカチオンを例示する。まずカチオン(b2−1−1)の具体例としては、以下のものが挙げられる。
【0193】
【化76】

【0194】
カチオン(b2−2)の具体例としては、以下のものが挙げられる。
【0195】
【化77】

【0196】
カチオン(b2−3)の具体例としては、以下のものが挙げられる。
【0197】
【化78】

【0198】
【化79】

【0199】
カチオン(b2−4)の具体例としては、以下のものが挙げられる。
【0200】
【化80】

【0201】
【化81】

【0202】
【化82】

【0203】
【化83】

【0204】
酸発生剤(B1)は、上述のスルホン酸アニオン及び有機カチオンの組合せである。上述のアニオンとカチオンとは任意に組み合わせることができるが、アニオン(b1−1−1)〜アニオン(b1−1−9)のいずれかとカチオン(b2−1−1)との組合せ、並びにアニオン(b1−1−3)〜(b1−1−5)のいずれかとカチオン(b2−3)との組合せが好ましい。
【0205】
好ましい酸発生剤(B1)は、式(B1−1)〜式(B1−16)で表されるものであり、これらの中でもトリフェニルスルホニウムカチオンを含む酸発生剤(B1−1)、(B1−2)、(B1−6)、(B1−11)、(B1−12)、(B1−13)及び(B1−14)がより好ましい。
【0206】
【化84】

【0207】
【化85】

【0208】
【化86】

【0209】
【化87】

【0210】
酸発生剤(B1)は、例えば下記式のように、スルホン酸塩(b3−1)のカチオンMa+を、塩(b3−2)のカチオンZ+で交換することによって製造できる(下記式中、Ma+は、Li+、Na+、K+又はAg+を表し、An-は、F-、Cl-、Br-、I-、BF4-、AsF6-、SbF6-、PF6-又はClO4-を表す。)。
【0211】
【化88】

【0212】
カチオン交換反応は、通常、アセトニトリル、水、メタノール、クロロホルム、塩化メチレン等の不活性溶媒中で、0〜150℃程度(好ましくは0〜100℃程度)の温度範囲で行うことができる。塩(b3−2)の使用量は、塩(b3−1)1モルに対して、通常、0.5〜2モル程度である。得られた酸発生剤(B1)は、水洗・再結晶などによって精製できる。
【0213】
カチオン交換反応の出発原料であるスルホン酸塩(b3−1)は、様々な反応経路で製造できる。例えば連結部(b1−1)を有するスルホン酸塩(b3−1−1)は、下記式のように、カルボキシ基を有するスルホン酸塩(b4−1)とアルコール(b4−2)とのエステル化反応によって製造できる(下記式中の記号は前記と同じである。)。
【0214】
【化89】

【0215】
またスルホン酸塩(b3−1−1)は、下記式に示されるように、カルボキシ基を有するスルホニルフルオリド(b4−3)とアルコール(b4−2)とのエステル化反応後に、得られたスルホニルフルオリドをMbOHで加水分解することによっても製造できる(下記式中、Mbは、Li、Na、Kなどのアルカリ金属を表し、好ましくはLi又はNaである。他の記号は前記と同じである。)。
【0216】
【化90】

【0217】
スルホン酸塩(b4−1)又はスルホニルフルオリド(b4−3)の使用量は、アルコール(b4−2)1モルに対して、通常0.2〜3モル程度、好ましくは0.5〜2モル程度である。
【0218】
エステル化反応は、通常、ジクロロエタン、トルエン、エチルベンゼン、モノクロロベンゼン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性溶媒中で撹拌しながら、20〜200℃程度(好ましくは50〜150℃程度)の温度範囲で行えばよい。
【0219】
エステル化反応では、酸触媒を使用してもよい。酸触媒としては、p−トルエンスルホン酸などの有機酸、及び硫酸等の無機酸が挙げられる。酸触媒は過剰に使用してもよいが、カルボキシ基を有する化合物(カルボン酸)1モルに対して、通常、0.001〜5モル程度である。
【0220】
反応時間を短縮するために、ディーンスターク装置などを用いて脱水しながらエステル化反応を行ってもよい。さらにエステル化反応に脱水剤を添加してもよい。脱水剤としては、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド;1−アルキル−2−ハロピリジニウム塩;1,1’−カルボニルジイミダゾール;ビス(2−オキソ−3−オキサゾリジニル)ホスフィン酸塩化物;1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩;ジ−2−ピリジル炭酸塩;ジ−2−ピリジルチオノ炭酸塩;4−(ジメチルアミノ)ピリジン存在下での6−メチル−2−ニトロ安息香酸無水物;などが挙げられる。脱水剤を過剰に使用してもよいが、その量は、カルボン酸1モルに対して通常0.5〜5モル程度、好ましくは1〜3モル程度である。
【0221】
連結部(b1−2)を有するスルホン酸塩は、連結部(b1−1)を有するスルホン酸塩(b3−1−1)と同様にして製造できる。
【0222】
連結部(b1−3)を有するスルホン酸塩(b3−1−3)は、例えば下記式のように、ヒドロキシ基を有するスルホン酸塩(b4−4)と、カルボン酸(b4−5)又は酸ハライド(b4−6)とのエステル化反応によって製造できる(下記式中、X1は、ハロゲンを表す。他の記号は前記と同じである。)。
【0223】
【化91】

【0224】
またスルホン酸塩(b3−1−3)は、下記式に示されるように、ヒドロキシ基を有するスルホニルフルオリド(b4−7)と、カルボン酸(b4−5)又は酸ハライド(b4−6)とのエステル化反応後に、得られたスルホニルフルオリドをMbOHで加水分解することによっても製造できる(下記式中の記号は前記と同じである。)。
【0225】
【化92】

【0226】
スルホン酸塩(b4−4)又はスルホニルフルオリド(b4−7)の使用量は、カルボン酸(b4−5)又は酸ハライド(b4−6)1モルに対して、通常0.5〜3モル程度、好ましくは1〜2モル程度である。その他の反応条件は、上述のエステル化反応のものと同様である。但し酸ハライド(b4−6)を用いるエステル化反応では、脱酸剤を使用してもよい。脱酸剤としては、トリエチルアミン、ピリジン等の有機塩基、又は水酸化ナトリウム、炭酸カリウム等の無機塩基が挙げられる。脱酸剤は過剰に使用してもよいが、その量は、酸ハライド(b4−6)1モルに対して、通常0.001〜5モル程度、好ましくは1〜3モル程度である。
【0227】
酸ハライド(b4−6)は、カルボン酸(b4−5)と、塩化チオニル、臭化チオニル、三塩化リン、五塩化リン、三臭化リン等とを反応させることによって合成できる。酸ハライドの合成反応は、通常、ジクロロエタン、トルエン、エチルベンゼン、モノクロロベンゼン、N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性溶媒中で撹拌しながら、20〜200℃程度(好ましくは50〜150℃程度)の温度範囲で行うことができる。この酸ハライドの合成反応では、アミン化合物を触媒として使用してもよい。
【0228】
連結部(b1−4)を有するスルホン酸塩(b3−1−4)は、例えば下記式のように、ヒドロキシ基を有するスルホン酸塩(b4−8)と、アルコール(b4−9)又は脱離基X2を有する化合物(b4−10)とのエーテル化反応によって製造できる(下記式中、X2は、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メシルオキシ基、トシルオキシ基又はトリフルオロメタンスルホニルオキシ基を表す。他の記号は前記と同じである。)。
【0229】
【化93】

【0230】
またスルホン酸塩(b3−1−4)は、下記式に示されるように、ヒドロキシ基を有するスルホニルフルオリド(b4−11)と、アルコール(b4−9)又は脱離基含有化合物(b4−10)とのエーテル化反応後に、得られたスルホニルフルオリドをMbOHで加水分解することによっても製造できる(下記式中の記号は前記と同じである。)。
【0231】
【化94】

【0232】
スルホン酸塩(b4−8)又はスルホニルフルオリド(b4−11)の使用量は、アルコール(b4−9)又は脱離基含有化合物(b4−10)1モルに対して、通常0.5〜3モル程度、好ましくは1〜2モル程度である。
【0233】
エーテル化反応は、通常、ジクロロエタン、トルエン、エチルベンゼン、モノクロロベンゼン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性溶媒中で撹拌しながら、20〜200℃程度(好ましくは50〜150℃程度)の温度範囲で行えばよい。
【0234】
エーテル化反応では、酸触媒を使用してもよい。酸触媒としては、p−トルエンスルホン酸などの有機酸、及び硫酸等の無機酸が挙げられる。酸触媒は過剰に使用してもよいが、アルコール(b4−9)又は脱離基含有化合物(b4−10)1モルに対して、通常、0.001〜5モル程度である。
【0235】
反応時間を短縮するために、ディーンスターク装置などを用いて脱水しながらエーテル化反応を行ってもよい。さらにエーテル化反応に脱水剤を添加してもよい。脱水剤としては、例えば、1,1’−カルボニルジイミダゾール、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド等などが挙げられる。脱水剤を過剰に使用してもよいが、その量は、アルコール(b4−9)又は脱離基含有化合物(b4−10)1モルに対して、通常0.5〜5モル程度、好ましくは1〜3モル程度である。
【0236】
脱離基含有化合物(b4−10)を用いるエーテル化反応では、脱酸剤を使用してもよい。脱酸剤として、トリエチルアミン、ピリジン等の有機塩基、又は水酸化ナトリウム、炭酸カリウム等の無機塩基が挙げられる。脱酸剤は過剰に使用してもよいが、その量は、脱離基含有化合物(b4−10)1モルに対して、通常0.001〜5モル程度、好ましくは1〜3モル程度である。
【0237】
脱離基含有化合物(b4−10)は、アルコール(b4−9)と、塩化チオニル、臭化チオニル、三塩化リン、五塩化リン、三臭化リン、メシルクロリド、トシルクロリド、トリフルオロメタンスルホン酸無水物等とを反応させることによって合成できる。前記合成反応は、通常、ジクロロエタン、トルエン、エチルベンゼン、モノクロロベンゼン、N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性溶媒中で撹拌しながら、−70〜200℃程度(好ましくは−50〜150℃程度)の温度範囲で行うことができる。前記合成反応では、脱酸剤を用いてもよい。脱酸剤としては、トリエチルアミン、ピリジン等の有機塩基あるいは水酸化ナトリウム、炭酸カリウム等の無機塩基が挙げられる。前記合成反応において脱酸剤を過剰に使用してもよいが、その量は、通常、アルコール(b4−9)1モルに対して、通常0.001〜5モル程度で、好ましくは1〜3モル程度である。
【0238】
〈窒素含有塩基性化合物(C)〉
本発明で使用するレジスト組成物に、クエンチャーとして窒素含有塩基性化合物(C)を添加してもよい。例えば、露光後の引き置きに伴う酸失活によって生ずるレジスト膜の性能劣化を、窒素含有塩基性化合物(C)を使用することで抑制できる。窒素含有塩基性化合物(C)を使用する場合、その量は、樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上(より好ましくは0.05質量部以上、さらに好ましくは0.1質量部以上)、好ましくは5質量部以下(より好ましくは3質量部以下、さらに好ましくは2質量部以下)である。
【0239】
窒素含有塩基性化合物(C)には、アミン及びアンモニウムヒドロキシドが含まれる。アミンは、脂肪族アミンでも、芳香族アミンでもよい。脂肪族アミンは、1級アミン〜3級アミンのいずれも使用できる。芳香族アミンは、アニリンのような芳香族環にアミノ基が結合したものや、ピリジンのような複素芳香族アミンのいずれでもよい。好ましい窒素含有塩基性化合物(C)は、式(C1)で表される芳香族アミン、特に式(C1−1)で表されるアニリンである。
【0240】
【化95】

【0241】
式(C1)中、Arc1は、C6-20芳香族炭化水素基を表す。Rc1及びRc2は、それぞれ独立に、水素原子、直鎖状又は分枝鎖状のC1-6脂肪族炭化水素基、C5-10脂環式炭化水素基、或いはC6-20芳香族炭化水素基を表す。但し脂肪族炭化水素基および芳香族炭化水素基は、ヒドロキシ基、アミノ基、或いは直鎖状又は分枝鎖状のC1-6アルコキシ基で置換されていてもよい。さらに脂肪族炭化水素基はC6-20芳香族炭化水素基で置換されていてもよく、芳香族炭化水素基は直鎖状又は分枝鎖状のC1-6脂肪族炭化水素基、C5-10脂環式炭化水素基で置換されていてもよい。またアルコキシ基は、ヒドロキシ基、アミノ基或いは直鎖状又は分枝鎖状のC1-6アルコキシ基で置換されていてもよく、アミノ基は、C1-4脂肪族炭化水素基で置換されていてもよい。
【0242】
式(C1−1)中、Rc1及びRc2は、前記と同じである。Rc3は、直鎖状又は分枝鎖状のC1-6脂肪族炭化水素基、C5-10脂環式炭化水素基、直鎖状又は分枝鎖状のC1-6アルコキシ基、或いはC6-20芳香族炭化水素基を表す。但し脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、芳香族炭化水素基は、式(C1)で説明した置換基を有していてもよい。m3は0〜3の整数を表す。但しm3が0であるとは、Rc3が存在しないことを意味し、m3が2以上のとき、複数のRc3は、互いに同一でも異なってもよい。
【0243】
芳香族アミン(C1)としては、例えば1−ナフチルアミン及び2−ナフチルアミンなどが挙げられる。アニリン(C1−1)としては、例えばアニリン、ジイソプロピルアニリン、2−,3−又は4−メチルアニリン、4−ニトロアニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、ジフェニルアミンなどが挙げられる。これらの中でもジイソプロピルアニリン(特に2,6−ジイソプロピルアニリン)が好ましい。
【0244】
別の好ましい窒素含有塩基性化合物(C)は、式(C2)で表される4級アンモニウムヒドロキシドである。
【0245】
【化96】

【0246】
式(C2)中、Rc4〜Rc6は、それぞれ独立に、水素原子、直鎖状又は分枝鎖状のC1-6脂肪族炭化水素基、C5-10脂環式炭化水素基、或いはC6-20芳香族炭化水素基を表す。Rc7は、直鎖状又は分枝鎖状のC1-6脂肪族炭化水素基、或いはC5-10脂環式炭化水素基を表す。但し脂肪族炭化水素基および芳香族炭化水素基は、式(C1)で説明した置換基を有していてもよい。
【0247】
4級アンモニウムヒドロキシド(C2)としては、例えばテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトライソプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラヘキシルアンモニウムヒドロキシド(例えばテトラ−n−ヘキシルアンモニウムヒドロキシド)、テトラオクチルアンモニウムヒドロキシド(例えばテトラ−n−オクチルアンモニウムヒドロキシド)、フェニルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、3−(トリフルオロメチル)フェニルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、コリンなどが挙げられる。これらの中でも、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラヘキシルアンモニウムヒドロキシド、テトラオクチルアンモニウムヒドロキシド、フェニルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、3−トリフルオロメチル−フェニルトリメチルアンモニウムヒドロキシドが好ましい。
【0248】
その他の窒素含有塩基性化合物(C)としては、式(C3)〜式(C11)で表される化合物が挙げられる。
【0249】
【化97】

【0250】
式(C3)中のRc8は、直鎖状又は分枝鎖状のC1-6脂肪族炭化水素基、或いはC5-10脂環式炭化水素基を表し、Rc9及びRc10は、水素原子、直鎖状又は分枝鎖状のC1-6脂肪族炭化水素基、或いはC5-10脂環式炭化水素基を表す。式(C4)〜式(C8)中の窒素原子と結合するRc11〜Rc14、Rc16〜Rc19及びRc22は、それぞれ独立に、水素原子、直鎖状又は分枝鎖状のC1-6脂肪族炭化水素基、C5-10脂環式炭化水素基、或いはC6-20芳香族炭化水素基を表す。式(C6)中のRc15は、直鎖状又は分枝鎖状のC1-6脂肪族炭化水素基、C3-6脂環式炭化水素基、或いはC2-6アルカノイル基を表し、n3は0〜8の整数を表す。但しn3が0であるとは、Rc15が存在しないことを意味し、n3が2以上のとき、複数のRc15は、互いに同一でも異なってもよい。式(C8)中の芳香族炭素と結合するRc23は、水素原子、直鎖状又は分枝鎖状のC1-6脂肪族炭化水素基、C5-10脂環式炭化水素基、直鎖状又は分枝鎖状のC1-6アルコキシ基、或いはC6-20芳香族炭化水素基を表す。式(C7)及び式(C9)〜式(C11)中の芳香族炭素と結合するRc20、Rc21及びRc24〜Rc28は、それぞれ独立に、直鎖状又は分枝鎖状のC1-6脂肪族炭化水素基、C5-10脂環式炭化水素基、直鎖状又は分枝鎖状のC1-6アルコキシ基、或いはC6-20芳香族炭化水素基を表し、o3〜u3は、それぞれ独立に0〜3の整数を表す。但しo3〜u3のいずれかが0であるとは、それぞれの置換基が存在しないことを意味し、o3〜u3のいずれかが2以上であるとき、それぞれ、複数のRc20〜Rc28のいずれかは互いに同一でも異なってもよい。式(C7)及び式(C10)のLc1及びLc2は、それぞれ独立に、C2-6アルキレン基、カルボニル基(−CO−)、−N(Rc29)−、チオ基(−S−)、ジチオ基(−S−S−)、又はこれらの組合せを表し、Rc29は、水素原子、或いは直鎖状又は分枝鎖状のC1-6脂肪族炭化水素基を表す。また式(C3)〜式(C11)中の脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、芳香族炭化水素基は、式(C1)で説明した置換基を有していてもよい。
【0251】
化合物(C3)としては、例えば、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミン、メチルジブチルアミン、メチルジペンチルアミン、メチルジヘキシルアミン、メチルジシクロヘキシルアミン、メチルジヘプチルアミン、メチルジオクチルアミン、メチルジノニルアミン、メチルジデシルアミン、エチルジブチルアミン、エチルジペンチルアミン、エチルジヘキシルアミン、エチルジヘプチルアミン、エチルジオクチルアミン、エチルジノニルアミン、エチルジデシルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、トリス〔2−(2−メトキシエトキシ)エチル〕アミン、トリイソプロパノールアミンエチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、4,4’−ジアミノ−1,2−ジフェニルエタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチルジフェニルメタンなどが挙げられる。
【0252】
化合物(C4)としては、例えばピペラジンなどが挙げられる。化合物(C5)としては、例えばモルホリンなどが挙げられる。化合物(C6)としては、例えばピペリジン、及び特開平11−52575号公報に記載されているピペリジン骨格を有するヒンダードアミン化合物などが挙げられる。化合物(C7)としては、例えば2,2’−メチレンビスアニリンなどが挙げられる。
【0253】
化合物(C8)としては、例えば、イミダゾール、4−メチルイミダゾールなどが挙げられる。化合物(C9)としては、例えば、ピリジン、4−メチルピリジンなどが挙げられる。化合物(C10)としては、例えば、1,2−ジ(2−ピリジル)エタン、1,2−ジ(4−ピリジル)エタン、1,3−ジ(4−ピリジル)プロパン、1,2−ジ(4−ピリジルオキシ)エタン、ジ(2−ピリジル)ケトン、4,4’−ジピリジルスルフィド、4,4’−ジピリジルジスルフィド、2,2’−ジピリジルアミン、2,2’−ジピコリルアミンなどが挙げられる。化合物(C11)としては、例えばビピリジンなどが挙げられる。
【0254】
〈溶剤(D)〉
溶剤(D)としては、例えば、エチルセロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートのようなグリコールエーテルエステル類;乳酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル及びピルビン酸エチルのようなエステル類;アセトン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン及びシクロヘキサノンのようなケトン類;γ−ブチロラクトンのような環状エステル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルなどを挙げることができる。
【0255】
溶剤(D)の含有量は、レジスト組成物全体に対して、通常、50質量%以上(好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上)、99質量%以下(好ましくは97質量%以下)である。
【0256】
〈その他の任意成分(E)〉
レジスト組成物は、必要に応じて、その他の任意成分(E)を含有していてもよい。任意成分(E)に特に限定は無く、該分野で公知の添加剤、例えば増感剤、溶解抑止剤、界面活性剤、安定剤、染料などを利用できる。
【実施例】
【0257】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、上記・下記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0258】
以下において、含有量ないし使用量を表す%及び部は、特記がないかぎり質量基準である。
【0259】
重量平均分子量(以下「Mw」と略称する)は、ポリスチレンを標準品として用いるゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(東ソー株式会社製:HLC−8120GPC型、カラム:「TSKgel Multipore HXL−M」3本、溶離液:テトラヒドロフラン)により求めた値である。詳しい条件を以下に列挙する。
カラム:「TSKgel Multipore HXL−M」3本+guardcolumn(東ソー社製)
溶離液:テトラヒドロフラン
流量:1.0mL/min
検出器:RI検出器
カラム温度:40℃
注入量:100μl
分子量標準:標準ポリスチレン(東ソー社製)
【0260】
化合物の構造はNMR(日本電子製GX−270型又はEX−270型)、質量分析(LCはAgilent製1100型、MASSはAgilent製LC/MSD型又はLC/MSD TOF型)で確認した。
【0261】
1.樹脂(A)の合成
下記モノマーを用いて樹脂(A1)〜樹脂(A4)を合成した。表1に、樹脂(A1)〜樹脂(A4)のモノマーのモル比及びMwをまとめて示す。
【0262】
【化98】

【0263】
【表1】

【0264】
(1)樹脂(A1)の合成
モノマー(a1−1−1)、モノマー(a1−2−1)、モノマー(a2−1−1)、モノマー(a3−2−1)をモル比40:10:20:30で仕込み、全モノマー量の1.0質量倍のジオキサンを加えて溶液とした。そこに開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル及びアゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を全モノマー量に対してそれぞれ1mol%及び3mol%で添加し、73℃で約5時間加熱した。その後、反応液を大量のメタノールに注いで沈殿させる操作を3回行って精製し、Mwが7120の共重合体を収率75%で得た。この共重合体は、各モノマーに対応する構造単位を有するものであり、これを樹脂(A1)とする。
【0265】
(2)樹脂(A2)の合成
モノマー(a1−1−1)、モノマー(a1−2−1)、モノマー(a2−1−2)、モノマー(a3−2−1)をモル比40:10:10:40で仕込み、75℃で加熱し、沈殿に大量のメタノールと水の混合溶媒を用いたこと以外は樹脂(A1)の合成と同様にして、Mwが6810の共重合体を収率62%で得た。この共重合体は、各モノマーに対応する構造単位を有するものであり、これを樹脂(A2)とする。
【0266】
(3)樹脂(A3)の合成
モノマー(a1−1−1)、モノマー(a1−2−1)、モノマー(a2−1−1)、モノマー(a3−2−1)をモル比55:10:20:15で仕込んだこと以外は樹脂(A1)の合成と同様にして、Mwが6780の共重合体を収率70%で得た。この共重合体は、各モノマーに対応する構造単位を有するものであり、これを樹脂(A3)とする。
【0267】
(4)樹脂(A4)の合成
モノマー(a1−1−2)、モノマー(a2−1−1)、モノマー(a3−1−1)をモル比50:25:25で仕込み、全モノマー量の1.5質量倍のジオキサンを加えて溶液とし、77℃で加熱し、沈殿に大量のメタノールと水の混合溶媒を用いたこと以外は樹脂(A1)の合成と同様にして、Mwが8112の共重合体を収率55%で得た。この共重合体は、各モノマーに対応する構造単位を有するものであり、これを樹脂(A4)とする。
【0268】
2.酸発生剤(B1−2)の合成
ジフルオロ(フルオロスルホニル)酢酸メチルエステル100部、イオン交換水150部に、氷浴下、30%水酸化ナトリウム水溶液230部を滴下した。100℃で3時間還流し、冷却後、濃塩酸88部で中和した。得られた溶液を濃縮することによりジフルオロスルホ酢酸ナトリウム塩164.4部を得た(無機塩含有、純度62.7%)。得られたジフルオロスルホ酢酸ナトリウム塩1.9部(純度62.7%)、N,N−ジメチルホルムアミド9.5部に、1,1’−カルボニルジイミダゾール1.0部を添加し2時間撹拌した。この溶液を、3−ヒドロキシ−1−アダマンチルメタノール1.1部、N,N−ジメチルホルムアミド5.5部に、水素化ナトリウム0.2部を添加し、2時間撹拌した溶液に添加した。15時間撹拌後、生成したジフルオロスルホ酢酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチルメチルエステルナトリウム塩をそのまま次の反応に用いた。
【0269】
得られたジフルオロスルホ酢酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチルメチルエステルナトリウム塩の溶液に、クロロホルム17.2部、14.8%トリフェニルスルホニウムクロライド水溶液2.9部を添加した。15時間撹拌後、分液し、水層をクロロホルム6.5部で抽出した。有機層を合せてイオン交換水で洗浄し、得られた有機層を濃縮した。濃縮液にtert−ブチルメチルエーテル5.0部を添加し、撹拌後に濾過することによって白色固体としてトリフェニルスルホニウム1−((3−ヒドロキシ−1−アダマンチル)メトキシカルボニル)ジフルオロメタンスルホナート(B1−2)0.2部を得た。
【0270】
【化99】

【0271】
3.実施例、比較例および参考例
表2に記載の各成分を混合して溶解し、さらに孔径0.2μmのフッ素樹脂製フィルターで濾過して、液状のレジスト組成物を調製した。
【0272】
【表2】

【0273】
シリコンウェハに、有機反射防止膜用組成物(ARC−29;日産化学(株)製)を塗布して、205℃、60秒の条件でベークすることによって、厚さ780Åの有機反射防止膜を形成した。次いで、前記の有機反射防止膜の上に、上記のレジスト組成物を乾燥後の膜厚が85nmとなるようにスピンコートした。レジスト組成物を塗布したシリコンウェハをダイレクトホットプレート上にて、表2に記載の温度(TPB)で60秒間プリベークし、レジスト膜を形成した。レジスト膜が形成されたシリコンウェハに、ArFエキシマステッパー(FPA5000−AS3;(株)キヤノン製、NA=0.75、σ=0.85、6%HTM)で、コンタクトホールパターン(ホールピッチ210nm/ホール径30〜134nm)を形成するためのマスクを用いて、露光量を段階的に変化させて露光した。
【0274】
露光後、前記シリコンウェハを、ホットプレート上にて、表2に記載の温度(TPEB)で60秒間ポストエキスポジャーベーク処理した。次いでこのシリコンウェハを、2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で60秒間のパドル現像を行った。
【0275】
シリコンウェハに形成された現像後のコンタクトホールパターンを走査型電子顕微鏡で観察し、以下の条件で解像度、CD均一性及びマスクエラーファクターを評価した。これらの結果を表3に示す。なお各評価において、ホール径130nmのマスクで形成したパターンのホール径が110nmとなる露光量を実効感度とした。
【0276】
(1)解像度
実効感度において、ホール径100nmのマスクで形成したパターンが解像しているものを基準(△と表記)とし、100nmよりも小さいホール径のマスクで形成したパターンが解像している場合を○、ホール径100nmのマスクで形成したパターンが解像していない場合を×とした。
【0277】
(2)CD均一性(CDU)
実効感度において、ホール径130nmのマスクで形成したパターンのホール径を、一つのホールにつき24回測定し、その平均値を一つのホールの平均ホール径とした。同一ウェハ内の、ホール径130nmのマスクで形成したパターンの平均ホール径を400箇所測定したものを母集団として標準偏差を求め、標準偏差が2.00nm以上2.40nm以下を基準(△と表記)とし、標準偏差が2.00nm未満の場合CDUが良好(○)と、標準偏差が2.40nmより大きい場合CDUが悪い(×)と判断した。
【0278】
(3)マスクエラーファクター(MEF)
ホール径がそれぞれ134nm、132nm、130nm、128nm、126nmのマスクを用い、これらマスクホール径を横軸に、実効感度でこれらマスクを用いて形成したパターンのホール径を縦軸にプロットして、その直線の傾きをMEFとして算出した。傾きが4.5以上5.0以下を基準(△と表記)とし、傾きが4.5未満のものを良好(○)と、5.0より大きいものを悪い(×)と判断した。
【0279】
【表3】

【0280】
PEB≦85℃且つ0℃<TPB−TPEB<25℃である実施例1〜5では、いずれも優れたCDU及びMEFが実現できた。これに対してTPEB>85℃且つ0≧TPB−TPEBである比較例並びに参考例2及び3、またTPB−TPEB≧25℃である参考例1及び4は、CDU及びMEFが劣っている。
【産業上の利用可能性】
【0281】
本発明の製造方法は優れたCDU及びMEFを実現でき、半導体の微細加工、液晶、サーマルヘッド等の回路基板の製造、さらにその他のフォトファブリケーション工程などで用いられるレジストパターンを製造するために有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レジストパターンの製造方法であって、
酸の作用によりアルカリ可溶となる樹脂(A)と酸発生剤(B)とを含有するレジスト組成物を、基体上に塗布してレジスト膜を得る工程と、
レジスト膜を温度TPBでプリベーク(PB)する工程と、
プリベークしたレジスト膜を露光する工程と、
露光したレジスト膜を温度TPEBでポストエクスポージャーベーク(PEB)する工程と、
ポストエクスポージャーベークしたレジスト膜をアルカリ現像液で現像してレジストパターンを得る工程とを含み、
PEB≦85℃且つ0℃<TPB−TPEB<25℃であることを特徴とする製造方法。
【請求項2】
樹脂(A)が、環状有機基を有する(メタ)アクリル系モノマーを2種以上共重合させた共重合体を含有する請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
樹脂(A)が、少なくとも、
(a1)酸の作用によりアルカリ可溶となり、且つC5-20脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル系モノマー、
(a2)ヒドロキシ基含有アダマンチル基を有する(メタ)アクリル系モノマー、及び
(a3)ラクトン環を有する(メタ)アクリル系モノマー
を重合させた共重合体を含有する請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
酸の作用によりアルカリ可溶となり、且つC5-20脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル系モノマー(a1)が、式(a1−1)で表される化合物及び式(a1−2)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項3に記載の製造方法。
【化1】

[式(a1−1)及び式(a1−2)中、La1及びLa2は、それぞれ独立に、酸素原子(−O−)、カルボニル基(−CO−)、−N(Ra5)−、直鎖状又は分枝鎖状のC1-17アルカンジイル基、又はこれらの組合せを表し、Ra5は、水素原子、或いは直鎖状又は分枝鎖状のC1-6脂肪族炭化水素基を表す。Ra1及びRa3は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。Ra2及びRa4は、それぞれ独立に、直鎖状又は分枝鎖状のC1-8脂肪族炭化水素基、或いはC3-10脂環式炭化水素基を表す。m1は、0〜14の整数を表す。n1は、0〜10の整数を表す。但しm1又はn1が0であるとは、それぞれ、メチル基が存在しないことを意味する。]
【請求項5】
酸の作用によりアルカリ可溶となり、且つC5-20脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル系モノマー(a1)が、2−メチル−2−アダマンチルアクリレート、2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート、2−エチル−2−アダマンチルアクリレート、2−エチル−2−アダマンチルメタクリレート、2−イソプロピル−2−アダマンチルアクリレート、2−イソプロピル−2−アダマンチルメタクリレート、1−エチル−1−シクロヘキシルアクリレート、及び1−エチル−1−シクロヘキシルメタクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
ヒドロキシ基含有アダマンチル基を有する(メタ)アクリル系モノマー(a2)が、3−ヒドロキシ−1−アダマンチルアクリレート、3−ヒドロキシ−1−アダマンチルメタクリレート、3,5−ジヒドロキシ−1−アダマンチルアクリレート、及び3,5−ジヒドロキシ−1−アダマンチルメタクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項3〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
ラクトン環を有する(メタ)アクリル系モノマー(a3)が、式(a3−1)で表される化合物及び式(a3−2)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項3〜6のいずれかに記載の製造方法。
【化2】

[式(a3−1)及び式(a3−2)中、La4及びLa5は、それぞれ独立に、酸素原子(−O−)、カルボニル基(−CO−)、−N(Ra18)−、直鎖状又は分枝鎖状のC1-17アルカンジイル基、又はこれらの組合せを表し、Ra18は、水素原子、或いは直鎖状又は分枝鎖状のC1-6脂肪族炭化水素基を表す。Ra12及びRa14は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。Ra13は、C1-4脂肪族炭化水素基を表し、p1は0〜5の整数を表す。Ra15は、カルボキシ基、シアノ基又はC1-4脂肪族炭化水素基を表し、q1は0〜3の整数を表す。但しp1又はq1が0であるとは、それぞれ、Ra13又はRa15が存在しないことを意味し、p1又はq1が2以上のとき、それぞれ、複数のRa13又はRa15は、互いに同一でも異なってもよい。]
【請求項8】
酸発生剤(B)が、式(B1)で表されるスルホン酸塩である請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
【化3】

[式(B1)中、Q1及びQ2は、それぞれ独立に、フッ素原子又はC1-6ペルフルオロアルキル基を表す。Lb1は、単結合、酸素原子(−O−)、カルボニル基(−CO−)、直鎖状又は分枝鎖状のC1-17アルカンジイル基、或いは酸素原子、カルボニル基及びC1-17アルカンジイル基からなる群から選ばれる2種以上の組合せを表す。Yは、置換基を有していてもよいC3-36脂環式炭化水素基を表し、該脂環式炭化水素基に含まれるメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基で置換されていてもよい。Z+は、有機カチオンを表す。]
【請求項9】
+が、アリールスルホニウムカチオンである請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
Yが、置換基を有していてもよいアダマンチル基又は置換基を有していてもよいオキソアダマンチル基である請求項8又は9に記載の製造方法。
【請求項11】
酸発生剤(B)の含有量が、樹脂(A)100質量部に対して、1〜20質量部である請求項1〜10のいずれかに記載の製造方法。
【請求項12】
レジスト組成物が、さらに窒素含有塩基性化合物(C)を含む請求項1〜11のいずれかに記載の製造方法。
【請求項13】
窒素含有塩基性化合物(C)が、ジイソプロピルアニリンである請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載の製造方法により得られるレジストパターン。

【公開番号】特開2011−7965(P2011−7965A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−150361(P2009−150361)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】