説明

レチクル処理システム

【課題】 方向を間違えて装着されたレチクル搬送容器11を自動的に修正する。
【解決手段】 レチクル搬送容器11と、レチクル搬送容器11を搬送する搬送手段(4、5)と、回路パターンを焼き付ける露光機と、複数のレチクル12を保管するレチクルストッカー2とを有するレチクル処理システムである。レチクルストッカー2から露光機1の焼き付け位置までの経路に、レチクル搬送容器11の向きを検出してレチクル搬送容器11を適切な向きに変更する向き変更手段81を備えた。向き変更手段81は、レチクル搬送容器11を回転させる回転駆動部82と、レチクルストッカー2から露光機1の焼き付け位置までの経路のいずれかに設けられレチクル搬送容器11の方向を検出する方向検出手段83と、方向検出手段83で検出した方向が180°ずれている場合に回転駆動部82を制御して正規の方向に修正する制御部84とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レチクルを収納したレチクル搬送容器を搬送手段でレチクルストッカーから露光機まで搬送して、露光機で上記レチクルを用いて基板上に回路パターンを焼き付けるレチクル処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子や液晶表示素子等の製造は、フォトリソグラフィ工程で行われる。この工程では、レチクル(フォトマスクを含む)に形成されたパターンの像を、露光機で半導体ウエハやガラスプレート等の基板上に投影転写する。
【0003】
このとき、基板上には感光剤が塗布されており、投影されたパターンが感光剤と反応して、その後の処理を経て回路が形成される。
【0004】
この工程において、レチクルは、塵埃等による汚染や接触等による損傷等を防ぐため、専用のレチクル搬送容器に収納して取り扱われる。
【0005】
このとき、形成する回路が複雑な場合は、基板上に多数の回路パターンを作り込む必要があるため、それに合わせて多数のレチクルが用意され、基板上に多数のパターンが重ね合わせて露光される。
【0006】
このフォトリソグラフィ工程で使用されるレチクル処理システムの一例を図2に示す。図中の1は基板上に回路パターンを投影・転写する露光機である。2は多数のレチクルが収納されて保管されたレチクルストッカーである。3はレチクルが収納されたレチクル搬送容器である。4は露光機1とレチクルストッカー2との間に設けられて、これらの間でレチクルをレチクル搬送容器3に収納した状態で搬送するための搬送レールである。5は搬送レール4に設けられてレチクル搬送容器3を直接把持して持ち運ぶための搬送機構部である。
【0007】
これらは、制御装置(図示せず)で制御されている。これにより、回路パターンに必要なレチクルが、レチクル搬送容器3に収納された状態で搬送レール4の搬送機構部5によって、レチクルストッカー2から露光機1へ搬送される。露光機1で不要になったレチクルは、搬送レール4の搬送機構部5によってレチクルストッカー2に戻される。
【0008】
以上の工程において使用されるレチクルは、塵埃等によって汚染されたり、接触等によって損傷したりすると正確な回路パターンができないため、レチクルを安全にかつ確実に支持するためにレチクル搬送容器3に収納されている。このレチクル搬送容器3は、基板上に露光される回路パターンとの関係でその向きが正確に規制された状態で搬送される。このレチクル搬送容器3の搬送、レチクルによる露光等の処理は、レチクル処理システムによって行われる。
【0009】
このレチクル処理システムの一例として特許文献1がある。特許文献1では、レチクルケース位置合わせ装置を設けて、レチクルケースの位置合わせを行って、露光処理が行われる。
【特許文献1】特開平10−163094号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、上述した従来のレチクル処理システムでは、外部から作業者がレチクル搬送容器3をシステム内に装着する際にレチクル搬送容器3の向きを間違えた場合は、レチクル搬送容器3をシステム内に装着できないようにしたり、位置合わせ装置を停止したりして対応している。即ち、通常は、レチクル搬送容器3に設けられたキネマティックピングルーブとシステム側の装置に設けられたキネマティックピンとで、レチクル搬送容器3を正しい向きに装着した場合のみシステム内に装着できるようにしている。また、仮にレチクル搬送容器3の向きを間違えてシステム内に装着された場合でも、上記位置合わせ装置で位置が合わないことでこの装置が停止するようにして、装置の停止後にレチクル搬送容器3の向きを入れ替える等の処理が行われる。
【0011】
しかし、これらの場合は、作業効率が悪いという問題がある。即ち、レチクル搬送容器3の向きを間違えた場合は、レチクル搬送容器3をシステム内に装着できないようにすると、作業者は、レチクル搬送容器3をシステム内に装着する際に、過度の注意を払う必要があり、作業効率が悪くなる。また、レチクル搬送容器3の向きを間違えた場合に、装置を停止してレチクル搬送容器3の向きを入れ替える作業を行うと、その間システムが停止するため、露光処理の作業効率が悪くなる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を解決するために、レチクル搬送容器の向きの間違いを許容して、その向きの間違いを自動的に修正するようにしたものである。即ち本発明は、レチクルを収納するレチクル搬送容器と、当該レチクル搬送容器を搬送する搬送手段と、上記レチクルを用いて半導体ウエハ上のレジストに回路パターンを焼き付ける露光機と、複数の上記レチクルを保管するレチクルストッカーとを少なくとも有し、上記レチクルストッカーから上記露光機の焼き付け位置までの経路の少なくとも1箇所に、上記レチクル搬送容器の向きを検出して当該レチクル搬送容器を適切な向きに変更する手段を備えたことを特徴とする。
【0013】
これにより、上記レチクル搬送容器が上記レチクルストッカーから上記露光機の焼き付け位置まで移動する間に、上記レチクル搬送容器を適切な向きに変更する手段によって、レチクル搬送容器の向きが検出され、適切な向きに修正される。
【0014】
上記レチクル搬送容器を適切な向きに変更する手段は、上記レチクル搬送容器を回転させる回転駆動部と、上記レチクルストッカーから上記露光機の焼き付け位置までの経路のいずれかに設けられ上記レチクル搬送容器の方向を検出する方向検出手段と、当該方向検出手段で検出した方向が正規の方向か否かを判断して方向が180°ずれている場合に上記回転駆動部を制御して正規の方向に回転させる制御部とを備えることが望ましい。
【0015】
これにより、上記制御部が、上記方向検出手段で検出した方向が180°ずれていると判断した場合、上記回転駆動部を制御して正規の方向に回転させる。
【0016】
上記方向検出手段は、上記レチクル搬送容器の方向を非接触で検出する無線タグを備えて構成することが望ましい。
【0017】
これにより、レチクル搬送容器の搬送途中で、搬送を停止させることなく非接触で、レチクル搬送容器の方向を検出する。上記方向検出手段で検出した方向が180°ずれていると判断した場合、上記制御部が、上記回転駆動部を制御して正規の方向に回転させる。
【0018】
また、上記方向検出手段は、上記レチクル搬送容器の方向を非接触で検出する光学センサを備えて構成してもよい。
【0019】
これにより、無線タグの場合と同様に、レチクル搬送容器の搬送途中で、搬送を停止させることなく非接触で、レチクル搬送容器の方向を検出する。上記方向検出手段で検出した方向が180°ずれていると判断した場合、上記制御部が、上記回転駆動部を制御して正規の方向に回転させる。
【0020】
上記レチクル搬送容器を適切な向きに変更する手段は、上記搬送手段内又は上記露光機内に備えることが望ましい。
【0021】
これにより、上記レチクル搬送容器が上記搬送手段内に取り込まれている間に又は上記露光機内に取り込まれている間に、レチクル搬送容器の方向が正しいか否かが判断されて、間違っているときは修正される。
【0022】
上記レチクル搬送容器の扉の外側表面には、露光機に位置決めして取り付けるためのキネマティックピングルーブを、180°方向を変えて二組設けることが望ましい。
【0023】
これにより、上記レチクル搬送容器をレチクルストッカーに装着するとき、レチクル搬送容器の方向が間違ってもそのまま装着することができ、レチクル搬送容器の方向について過度に注意を払う必要が無くなる。
【0024】
上記レチクル搬送容器のポッドの外側表面のうち、上記キネマティックピングルーブに対応した位置には、上記キネマティックピングルーブを受けて保持するための受け部を、上記二組のキネマティックピングルーブをいずれの方向からでも嵌合できるように配設することが望ましい。
【0025】
これにより、複数のレチクル搬送容器を、その方向について過度の注意を払わずに、積層することができる。
【発明の効果】
【0026】
上記レチクル搬送容器を適切な向きに変更する手段が、上記レチクル搬送容器が上記レチクルストッカーから上記露光機の焼き付け位置まで移動する間に、レチクル搬送容器の向きを検出して適切な向きに修正するため、レチクル搬送容器の向きが180°ずれている場合でもシステムが停止することなく自動的にその向きを正規の方向に修正して、処理工程での作業効率の向上を図ることができる。
【0027】
上記レチクル搬送容器を適切な向きに変更する手段の上記制御部が、上記方向検出手段で検出した方向が180°ずれていると判断した場合、上記回転駆動部を制御して正規の方向に回転させるため、システムが停止することなく上記レチクル搬送容器の向きを自動的に正規の方向に修正して、処理工程での作業効率の向上を図ることができる。
【0028】
上記方向検出手段が、上記レチクル搬送容器の方向を非接触で検出する無線タグ又は光学センサを備えて、レチクル搬送容器の搬送を停止させることなく非接触で、その方向を検出して、正規の方向に回転させるため、処理工程での作業効率の向上を図ることができる。
【0029】
上記レチクル搬送容器を適切な向きに変更する手段を、上記搬送手段内又は上記露光機内に備えて、レチクル搬送容器の方向が正しいか否かを判断して、間違っているときは修正するため、処理工程での作業効率の向上を図ることができる。
【0030】
上記レチクル搬送容器の扉の外側表面にキネマティックピングルーブを、180°方向を変えて二組設けて、レチクル搬送容器の方向が間違ってもそのまま装着することができるようにしたので、レチクル搬送容器の方向について過度に注意を払う必要が無くなり、作業の効率化を図ることができる。
【0031】
上記受け部を、上記二組のキネマティックピングルーブをいずれの方向からでも嵌合できるように配設して、複数のレチクル搬送容器を、その方向について過度の注意を払わずに、積層することができるようにしたので、レチクル搬送容器の積層作業時において作業の効率化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態を、添付図面を参照しながら説明する。図1は向き変更手段を示す機能ブロック図、図3は扉をその底面側から見た斜視図、図4は本実施形態に係るレチクル搬送容器をそのポッドと扉とを互いに分離した状態で示す斜視図、図5は本実施形態に係るレチクル搬送容器を示す側面断面図、図6は本実施形態に係るレチクル搬送容器の要部を示す断面図、図7はメンブレンフィルターを示す要部断面図、図8は無線タグを示す要部断面図である。
【0033】
レチクル搬送容器11は図4及び図5に示すように主に、レチクル12を収納するポッド13と、このポッド13を塞ぐ扉14と、ポッド13と扉14との間に設けられて内部を気密にシールするシール材15とから構成されている。
【0034】
ポッド13は、レチクル12を内部に収納する本体部17と、当該本体部17の外周に一体的に形成されて扉14に嵌合する周縁嵌合部18とから構成されている。
【0035】
本体部17は、皿状に形成され、レチクル12を内部に完全に収納できる深さに設定されている。本体部17の中央部には、搬送用のセンターハンドリングフランジ20が設けられている。本体部17の周縁部には、水平に延びた板状のサイドハンドリングフランジ21が設けられている。センターハンドリングフランジ20が、搬送装置の腕部(図示せず)と結合して、レチクル搬送容器11やポッド13が持ち上げられる。また、サイドハンドリングフランジ21は、露光機内で扉14をポッド13から機械的に分離するときに補助支持手段として用いられる。さらに、本体部17の外側表面の周縁部には、後述するキネマティックピングルーブ61の受け部22が1辺に3カ所ずつ、対向する2辺に合計6カ所に設けられている。この6カ所の受け部22は、キネマティックピングルーブ61に対応した位置であって、二組のキネマティックピングルーブ61をいずれの方向からでも嵌合できるように配設されている。各受け部22は平面形状が半円形の板材で形成されている。平面半円形の各受け部22は、外側へ開口するように配設されている。平面半円形の各受け部22は、その先端側が基端側よりも互いに近づくように内側へ僅かに傾けて形成されている。これにより、下側のレチクル搬送容器11の受け部22に上側のレチクル搬送容器11のキネマティックピングルーブ61が容易に嵌合して、正確に位置決めされるため、複数のレチクル搬送容器11を簡単にかつ安定して積層することができるようになっている。
【0036】
本体部17の内側の四隅近傍にはレチクルリテーナー25が設けられている。このレチクルリテーナー25は、後述する扉14側のレチクルリテーナー45と対をなしてレチクル12を支持するための部材である。このレチクルリテーナー25は、図5及び図6に示すように、リテーナー受け部26と、リテーナー板部27とから構成されている。リテーナー受け部26は、リテーナー板部27を支持するための部材である。リテーナー受け部26は、本体部17の内側の四隅近傍に、本体部17と共に一体的に形成されている。具体的には、本体部17の隅部に形成された五角形の板材によって形成され、その1つの辺がレチクル12の上側角部12Aに当接して弾性的に支持する傾斜面部28を形成する辺となっている。リテーナー受け部26のうち傾斜面部28を形成する辺の一端には、リテーナー板部27の一端部が嵌合する一端側嵌合用切り欠き29が設けられている。リテーナー受け部26のうち傾斜面部28を形成する辺の他端には、リテーナー板部27の他端部が嵌合する他端側嵌合用切り欠き30が設けられている。さらに、傾斜面部28を形成する辺には凹部31が設けられている。この凹部31は、傾斜面部28の内側に設けられてレチクル12の上側角部12Aが当接したときに傾斜面部28の撓みを許容するための部位である。この凹部31により、リテーナー板部27に緩衝機能が持たされている。即ち、リテーナー板部27自身の持つ弾性と共に、凹部31によってリテーナー板部27が弾性的に撓むことで、外部から伝わる振動等を吸収して、レチクル12を弾性的に支持する緩衝機能が持たされている。凹部31の隙間は1mm程度以上あれば良い。
【0037】
リテーナー板部27は、レチクル12の上側角部12Aに当接して弾性的に支持する傾斜面部28を形成する部材である。リテーナー板部27は、弾性高分子材料で成形されている。具体的には、PEE(ポリエステルエラストマー)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)などの、発塵のない弾性材料を用いる。リテーナー板部27は、当接面板33と、一端嵌合部34と、他端嵌合部35とからなり、その側面形状を変則的なコ字状に形成されている。当接面板33は、リテーナー板部27をリテーナー受け部26に嵌合した状態で、傾斜面部28を構成するための部材である。当接面板33は、弾性を有する合成樹脂で成形されているため、それ自身が弾性的に変形すると共に、上記凹部31によって弾性的に撓んで、レチクル12の上側角部12Aに斜めから当接して弾性的に支持するようになっている。
【0038】
一端嵌合部34は、リテーナー受け部26の一端側嵌合用切り欠き29に嵌合して、リテーナー板部27をリテーナー受け部26に取り付けるための部分である。他端嵌合部35は、リテーナー受け部26の他端側嵌合用切り欠き30に嵌合して、リテーナー板部27をリテーナー受け部26に取り付けるための部分である。これにより、一端嵌合部34及び他端嵌合部35が一端側嵌合用切り欠き29及び他端側嵌合用切り欠き30に嵌合することで、リテーナー板部27がリテーナー受け部26に固定されている。
【0039】
本体部17の内側の四隅近傍には、上記レチクルリテーナー25と共にペリクルリテーナー37も設けられている。レチクル12には、ペリクルが設けられない場合と、下側面にペリクル46が設けられる場合と、上下両側面にペリクル46が設けられる場合がある。ペリクルリテーナー37は、レチクル12の上側面にペリクルが設けられる場合に機能する部材である。ペリクルリテーナー37は、レチクルリテーナー25と同じ構成を有している。即ち、ペリクルリテーナー37は、レチクルリテーナー25のリテーナー受け部26と同じ構成のリテーナー受け部38と、レチクルリテーナー25のリテーナー板部27と同じ構成のリテーナー板部39とから構成されている。リテーナー板部39の内側にはレチクルリテーナー25の凹部31と同じ構成の凹部(図示せず)が設けられている。
【0040】
ポッド13の周縁嵌合部18は、図4及び図5に示すように、本体部17の周縁から周囲に張り出すように皿状に形成されている。この皿状の周縁嵌合部18は、扉14の周囲を完全に収納できる深さに設定されている。周縁嵌合部18の対向する辺には、扉14を固定するための留め具41が設けられている。
【0041】
扉14は、ポッド13の周縁嵌合部18に嵌合することで、ポッド13を塞いで、シール材15を介して内部を気密にシールするための部材である。この扉14は、図4〜図6に示すように、ほぼ平坦状に形成され、その周縁にシール溝43が設けられている。シール材15は、このシール溝43に装着されて、ポッド13と扉14との間を気密にシールする。扉14の上側面には、その四隅の位置に扉側支持部材44が設けられている。この扉側支持部材44は、上記ポッド13側のレチクルリテーナー25と相まってレチクルを上下両側から支持するレチクルリテーナー45と、レチクル12の下側面に取り付けられたペリクル46を支持するペリクルリテーナー47と、これらを一体的に支持するベース板部48とから構成されている。レチクルリテーナー45の構成は、リテーナー受け部50が上述したポッド13側のレチクルリテーナー25のリテーナ−受け部27と、図6の紙面に垂直な方向にずれたミラー対象の構成になっている。即ち、レチクルリテーナー45は、リテーナー受け部50と、リテーナー板部51とから構成され、これらが上記レチクルリテーナー25のリテーナー受け部26及びリテーナー板部27と、鏡に映したときのように対象的な構成になっている。リテーナー板部51の内側の凹部52も、レチクルリテーナー25の凹部31と同様の機能を備えている。即ち、リテーナー板部51が凹部52によって弾性的に撓んで、レチクル12の下側角部12Bに斜めから当接して弾性的に支持するようになっている。
【0042】
上記構成のレチクルリテーナー45とレチクルリテーナー25とは互いにずれた位置に設けられ、互いに干渉しないで、レチクル12を支持するようになっている。このレチクルリテーナー25,45でレチクル12を挟み持って、規定位置で支持するようになっている。ポッド13を取り外した後も、レチクル12は、扉14のレチクルリテーナー45によって扉14から規定の距離だけ隔てた状態で支持されるようになっている。ペリクルリテーナー47のペリクル受け部56も、ポッド13側のペリクルリテーナー37のリテーナー受け部39と図6の紙面内横方向にずれたミラー対象の構成になっている。即ち、ペリクルリテーナー47は、ポッド13側のペリクルリテーナー37のリテーナー受け部38とミラー対象のリテーナー受け部55と、リテーナー板部39とミラー対象のリテーナー板部56とから構成されている。リテーナー板部56の内側にはペリクルリテーナー37の凹部と同じ構成の凹部(図示せず)が設けられている。
【0043】
扉14の裏面には、図3に示すように、2組のキネマティックピングルーブ61が設けられている。このキネマティックピングルーブ61は、露光機に位置決めして取り付けるための部材である。キネマティックピングルーブ61は、ほぼ二等辺三角形の頂点の位置に設けられた3つを一組として、180°向きを変えた状態で二組(61A,61B)、合計6本設けられている。これは、レチクル搬送容器11を装置内に装着するときに、作業者がレチクル搬送容器11の向きを180°間違えて装着した場合でも、そのまま装着できるようにするためである。
【0044】
ポッド13には、図7に示すように、メンブレンフィルター取り付け部62が形成されている。このメンブレンフィルター取り付け部62は、メンブレンフィルター63を確実に取り付けると共に、容易に着脱できるようにするための部分である。このメンブレンフィルター取り付け部62は、管ガイド65と、フィルター嵌合筒部66と、ストッパ67とから構成されている。
【0045】
管ガイド65は、メンブレンフィルター63を内部に収納して固定するための筒部である。この管ガイド65は、ポッド13の本体部17に一体的に設けられている。管ガイド65の外側は開口しており、メンブレンフィルター63が着脱できるようになっている。さらに、管ガイド65は、レチクル搬送容器11内の気体を置換するためのガス供給管(図示せず)と接続するための管ともなっている。管ガイド65の内側は、塞がれてフィルター嵌合筒部66が設けられている。このフィルター嵌合筒部66は、メンブレンフィルター63の嵌合筒部71が嵌合するための筒部である。フィルター嵌合筒部66は、管ガイド65内において、その内側底部から外側へ向けて延びた小径の筒部として構成されている。管ガイド65の内側面の中間位置には、ストッパ67が設けられている。このストッパ67は、管ガイド65内に装着されたメンブレンフィルター63を抜け落ちないように固定するための部材である。
【0046】
メンブレンフィルター63は、レチクル搬送容器11の内外で気体の出入りを許容するためのフィルターである。このメンブレンフィルター63は、塵埃等の通過を防止して気体のみのレチクル搬送容器11の内外側間での出入りを許容する。メンブレンフィルター63は、フィルター本体部70と、嵌合筒部71と、開口筒部72とから構成されている。
【0047】
フィルター本体部70は、肉厚円盤状に形成され、内部にフィルターが収納されている。フィルター本体部70の直径は上記ストッパ67に係止する大きさに設定されている。嵌合筒部71は、フィルター本体部70内とレチクル搬送容器11内とを連通するための部材である。嵌合筒部71は、メンブレンフィルター63が管ガイド65内に装着された状態で、フィルター嵌合筒部66に嵌合してフィルター本体部70内とレチクル搬送容器11内とを連通する。開口筒部72は、フィルターを介してレチクル搬送容器11内と外部とを連通するための筒部である。なお、フィルターとしては、0.1〜0.5μmのメッシュが充填されており、不活性ガスや乾燥空気中のダスト成分を除去する。
【0048】
扉14の外側表面には、図8に示すように、無線タグ74が設けられている。この無線タグ74は、覆い板75に覆われた状態で、扉14の外側表面に取り付けられている。覆い板75は無線タグ74を完全に覆った状態でその全周を溶着されて内部が密封されている。覆い板75には、無線タグ74を収納する凹部75Aが形成されている。無線タグ74はこの覆い板75の凹部75Aに収納された状態で、覆い板75が扉14の外側表面にその全周を溶着される。これにより、無線タグ74は覆い板75内に密封収納されている。これは、レチクル搬送容器11の搬送中等において、無線タグ74の脱落や機械的損傷を防止するためである。さらに、無線タグ自身による装置の汚染を防ぐためである。この無線タグ74は、コイル状のアンテナ(図示せず)と、ICチップ(図示せず)とを備え、外部からの電磁波が変化することでアンテナに誘導起電力を発生させ、この起電力の変化を利用してICチップに非接触状態で情報を書き込んだり記録した情報を読み出したりする素子である。この無線タグ74に、処理、保管等の際に必要な種々の管理情報を格納する。さらに、無線タグ74は、後述する方向検出手段としても機能するようになっている。なお、無線タグ74は、ポッド13側に設けてもよい。
【0049】
上記レチクル搬送容器11を用いて半導体ウエハ等の基板上に回路パターンを焼き付けるレチクル処理システムは、次のように構成されている。このレチクル処理システムの全体構成は、図2に示した従来のレチクル処理システムと共通する部分があるため、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明を省略する。レチクル処理システムは主に、レチクル12を収納する上記レチクル搬送容器11と、レチクル搬送容器11を搬送する搬送手段(4、5)と、上記レチクル12を用いて半導体ウエハ(図示せず)上のレジストに回路パターンを焼き付ける露光機1と、複数の上記レチクル12を保管するレチクルストッカー2と、レチクル搬送容器を適切な向きに変更する向き変更手段81(図1参照)とから構成されている。
【0050】
搬送手段(4、5)は、レチクル搬送容器11のセンターハンドリングフランジ20に結合して、レチクル搬送容器11を回路パターンの焼き付けのためにレチクルストッカー2から露光機1へ搬送すると共に、回路パターンの焼き付けが終了した後のレチクル搬送容器11をレチクルストッカー2の元の位置へ搬送するための手段である。搬送手段(4、5)は、種々の構成が可能であるが、ここでは搬送レール4と、搬送機構部5とから構成されている。搬送手段としては、レールを用いたもの以外に、ベルトコンベアや自走式の装置を用いたもの等でもよい。
【0051】
搬送機構部5には、レチクル搬送容器11のセンターハンドリングフランジ20に結合する腕部(図示せず)が設けられている。これにより、搬送機構部5の腕部がセンターハンドリングフランジ20に結合してレチクル搬送容器11を持ち上げる。腕部には後述する向き変更手段81の回転駆動部82が設けられている。
【0052】
向き変更手段81は、レチクル搬送容器11を適切な向きになるように修正するための手段である。即ち、レチクル搬送容器11の向きが正しいか否かを検出して、正しい場合はそのままで、間違っている場合は適切な向きに変更するための手段である。この向き変更手段81は、レチクルストッカー2から露光機1の焼き付け位置までの経路の少なくとも1箇所に設けられる。これは、レチクルストッカー2から露光機1の焼き付け位置まで搬送されるレチクル12を、焼き付け位置に装着される前に正しい向きに修正するためである。レチクルストッカー2から露光機1の焼き付け位置までの間で、レチクル12を正しい向きに修正できれば、特に問題が生じることもないため、レチクルストッカー2から露光機1の焼き付け位置までの経路の少なくとも1箇所に設ければよい。向き変更手段81を複数箇所に設けて、レチクル搬送容器11の向きを複数箇所でチェックするようにしてもよい。例えば、搬送手段(4、5)や、露光機1内の搬入口から焼き付け位置までの経路に設けることができる。露光機1内にも、搬入口からレチクル搬送容器11を取り込んで、途中でレチクル搬送容器11からレチクル12のポッド13と扉14とを外して、レチクル12を焼き付け位置まで搬送する搬送機構が設けられている。このため、露光機1内の搬送機構部分に向き変更手段81を設けてもよいが、本実施形態では、搬送手段(4、5)に設けた場合を例に説明する。
【0053】
向き変更手段81は図1に示すように主に、回転駆動部82と、方向検出手段83と、制御部84とを備えて構成されている。
【0054】
回転駆動部82は、レチクル搬送容器11を回転させるための手段である。この回転駆動部82は、搬送機構部5の腕部に一体的に設けられて、この腕部を回転駆動するようになっている。回転駆動部82は、回転可能に支持された腕部に取り付けられたギア(図示せず)、このギアに噛み合って腕部を回転させる駆動モータ(図示せず)等で構成されている。これにより、腕部がレチクル搬送容器11のセンターハンドリングフランジ20に結合した状態で、回転駆動部82が腕部を回転駆動することによってレチクル搬送容器11の向きを修正するようになっている。
【0055】
方向検出手段83は、レチクル搬送容器11の方向を検出するための手段である。この方向検出手段83は、レチクル搬送容器11がレチクルストッカー2から露光機1の焼き付け位置まで搬送される間にレチクル搬送容器11の方向を検出できればよいため、レチクルストッカー2から露光機1の焼き付け位置までの経路のいずれかの位置であって、他の装置の邪魔にならない位置に設ける。
【0056】
方向検出手段83には、レチクル搬送容器11の方向を検出できる種々の手段が含まれる。電気的手段、光学的手段、機械的手段等が含まれる。電気的手段としては上述した無線タグ74を用いている。この無線タグ74の読み取り機(図示せず)は、搬送レール4に沿った位置で、搬送されるレチクル搬送容器11の無線タグ74に対向して設けられている。即ち、レチクル搬送容器11が、正しい方向に設置されて搬送されるときに、無線タグ74と反応し合って情報のやり取りができる位置に設けられている。読み取り機は、電波到達距離が数十センチ程度の微弱電波発信機86及び反射波の微弱電波受信機87を有し、これらが無線タグ74のアンテナと対向する位置に設けられている。この微弱電波発信機86及び微弱電波受信機87とアンテナとの間隔は、電波到達距離に合わせて数十センチ程度に設定する。さらに、微弱電波発信機86及び微弱電波受信機87とアンテナとの間には、レチクル搬送容器11の向きが変わると反射波の強度が変わる特性を持たせる。即ち、レチクル搬送容器11が正しい向きのときと180°異なった向きのときとで、アンテナからの反射波の強度が変わるように設定する。この場合、微弱電波発信機86及び微弱電波受信機87とアンテナとの位置関係で、上記特性を持たせるようにしてもよい。向きが180°回転すると電磁波の吸収率が変わる吸収材を取り付けて、上記特性を持たせるようにしてもよい。アンテナに指向性を持たせて、反射波の反射方向が、レチクル搬送容器11が正しい向きのときだけ微弱電波受信機87に向けて反射するようにしてもよい。また、微弱電波受信機87は、レチクル搬送容器11の向きを検出する機能と共に、無線タグ74内に記録された管理情報等を読み取る読み取り装置としても機能するようになっている。
【0057】
なお、無線タグ74は情報管理のためだけに用い、無線タグ74と別に電磁波を反射するアンテナのみをレチクル搬送容器11のポッド13又は扉14に設けてもよい。このアンテナに上述のように指向性を持たせたり、アンテナの位置を調整したり、吸収材を設けたりして、アンテナからの反射波の違いをレチクル搬送容器11の向きと対応させるようにしてもよい。
【0058】
無線タグ74やアンテナを複数設けて、複数の反射波の受信位置からレチクル搬送容器11の向きを検出してもよい。アンテナの取り付け位置を非対称にすることで、レチクル搬送容器11の向きが変わったときに複数の反射波の受信位置がずれることからレチクル搬送容器11の向きを検出するようにしてもよい。
【0059】
また、磁石や磁気テープ等を用いてもよい。レチクル搬送容器11の特定位置に磁石や磁気テープ等を埋め込んで、その磁石からの静磁場強度を、磁石や磁気テープ等の位置に対応して設けたホール素子などで検出し、その検出位置の違いからレチクル搬送容器11の向きを検出するようにしてもよい。磁石や磁気テープ等は複数設けてもよい。この場合、複数の磁石をその位置をずらして埋め込むことで、レチクル搬送容器11の向きが変われば検出位置が変わり、その検出位置の違いからレチクル搬送容器11の向きを検出することができる。
【0060】
また、光学的手段で方向を検出する態様もある。この場合は、光学センサでレチクル搬送容器11の有無を検出する。このとき、ポッド13又は扉14のうちレチクル搬送容器11の向きが逆になったときの検査光の照射位置に凹みや穴を設ける。これにより、レチクル搬送容器11が通過するときに、光学センサがレチクル搬送容器11の存在を検出すると、レチクル搬送容器11の向きが正常であると判断する。レチクル搬送容器11の向きが逆の場合は、光学センサと凹み等とが整合し、検査光が凹み等に入って光学センサが反応せず、レチクル搬送容器11の存在を検出することができない。これにより、レチクル搬送容器11が通過するときに、レチクル搬送容器11の存在を検出すれば、その向きが正常であると判断し、レチクル搬送容器11の存在を検出しなければ、その向きが逆であると判断することができる。なお、上記凹み等の代わりに、凸部等を設けてもよい。この場合は、上記凸部等がある場合に反応して設定された状態(レチクル搬送容器11の向きが正常な状態)を検出する。この凹みとしてインフォパッドに形成されている凹みを用いても良い。
【0061】
これ以外に、機械的にレチクル搬送容器11の方向を検出するようにしてもよい。例えば、ポッド13や扉14のうち、周囲の邪魔にならないところに突起を設けて、搬送装置側に設けられた受け部が、レチクル搬送容器11の通過の際に上記突起と接触したか否かでレチクル搬送容器11の方向を検出するようにしてもよい。
【0062】
制御部84は、方向検出手段83で検出した方向が正規の方向か否かを判断して方向が180°ずれている場合に回転駆動部82を制御して正規の方向に回転させる。制御部84としては、レチクル処理システム全体を制御する制御装置の一部として組み込まれる場合と、独立の装置として設けられる場合がある。
【0063】
以上のように構成されたレチクル処理システムは、次のようにして使用される。なお、ここでは、半導体ウエハ上に回路パターンを焼き付けるときの処理を例に説明する。
【0064】
まず、レチクル12がレチクル搬送容器11内に収納される。このとき、レチクル12は、扉14のレチクルリテーナー45に載置され、ポッド13が取り付けられて留め具41で固定される。これにより、レチクル12が扉14側のレチクルリテーナー45とポッド13側のレチクルリテーナー25とで挟まれて支持される。具体的には、レチクルリテーナー45のリテーナー板部51にレチクル12の下側角部12Bが、レチクルリテーナー25のリテーナー板部27にレチクル12の上側角部12Aが、それぞれ斜めから当接して支持される。このとき、リテーナー板部51,27の内側には凹部52,31があり、リテーナー板部51,27の撓みを許容しているため、レチクル12は弾性的に支持される。これにより、レチクル12は、その表面に傷をつけることなく、全ての自由度が抑えられてレチクル搬送容器11内に固定される。
【0065】
レチクル12にペリクル46が設けられている場合は、このペリクル46が、上記レチクル12と同様の作用により、ペリクルリテーナー47によって固定される。
【0066】
このようにして、レチクル12がレチクル搬送容器11内に1枚ずつ収納され、このレクチル搬送容器11は作業者によってレチクルストッカー2内に必要な数量だけ上積みして装着される。このとき、レチクル搬送容器11はすべて設定された方向に合わせて収納するのが望ましいが、方向が違っている場合でも、二組のキネマティックピングルーブ61によって問題なく装着される。
【0067】
その後のレチクル搬送容器11の搬送等はすべて機械的に行われる。即ち、レチクルストッカー2からレチクル搬送容器11を取り出して収納し、搬送クレーンで搬送レール上を移動し、露光機1にレチクル搬送容器11内のレチクル12をセットするまでの操作が全て機械的に行われる(SMIF:Standard Mechanical Interface)。
【0068】
搬送レール4の搬送機構部5の腕部がレチクルストッカー2内のレチクル搬送容器11のセンターハンドリングフランジ20に結合して、レチクル搬送容器11を持ち上げる。そして、搬送レール4で露光機1まで移動される。
【0069】
この搬送工程で、レチクル搬送容器11の方向が修正される。即ち、方向検出手段83の微弱電波発信機86から微弱な電磁波を無線タグ74に発信させる。これにより、無線タグ74が反射波を発信し、この反射波を微弱電波受信機87で検出し、その信号パワーに基づいて、制御部84がレチクル搬送容器11の方向が正規の方向か否かを判断する。方向が180°ずれている場合には、回転駆動部82が制御されて搬送機構部5の腕部が回転され、レチクル搬送容器11が正規の方向に修正される。
【0070】
レチクル搬送容器11が露光機1まで搬送されると、レチクル搬送容器11は露光機1内の所定位置に位置決めされた後、露光機1のキネマティックピン(図示せず)がキネマティックピングルーブ61に連結される。次いで、レチクル搬送容器11の留め具41が機械的に外れてサイドハンドリングフランジ21が開閉装置の腕部(図示せず)で掴まれてポッド13が扉14から分離される。次いで、扉14が下降させられてレチクル12が露光機1内部に導入される。その後、レチクル12は露光機1の自動露光ステージ(図示せず)に移され、すでに装着されている半導体ウエハ上に正確に位置決めされた状態で設置され、露光作業が自動的に行われる。
【0071】
露光が終了すると、再びレチクル12はレチクル搬送容器11の扉14に戻され、この扉14を上昇させてポッド13と合わせられ、留め具41で固定される。このとき、レチクル12は、その上側角部12A及び下側角部12Bが、レチクルリテーナー25、45で挟まれて、上述のように、その表面に傷をつけることなく、全ての自由度が抑えられてレチクル搬送容器11内に固定される。次いで、キネマティックピンとキネマティックピングルーブ61を分離し、再び搬送機構部5で搬送レール4を移動してレチクルストッカー2に戻される。
【0072】
以上の処理工程においては、無線タグ74に記録された情報に基づいて工程制御される。レチクル搬送容器11の扉14の無線タグ74には、レチクル12の種類や作業履歴等の種々の情報が記録されており、読み取り装置が無線タグ74の情報を非接触で読み取って、露光機1内での制御等をその情報に基づいて行う。露光作業の終了後は、必要に応じて書き込み装置(図示せず)で無線タグ74に、レチクル12やレチクル搬送容器11の履歴、作業履歴等を書き込む。これにより、露光作業や管理等をスムーズに行う。
【0073】
このとき、無線タグ74は覆い板75によって密閉収納されているため、無線タグ74の脱落や機械的損傷をなくすことができる上に、無線タグ74自身による装置の汚染も防ぐことができる。
【0074】
また、レチクル搬送容器11を圧力の変動する環境に置いた場合、例えば飛行機による輸送等のように、上空の比較的気圧の低い環境と、地上の比較的気圧の高い環境に置いた場合、レチクル搬送容器11の内圧が外圧よりも低くなることがある。この場合、ポッド13と扉14とを分離するのが難しくなるが、メンブレンフィルター63がレチクル搬送容器11の内外で気体の出入りを許容するため、レチクル搬送容器11の内圧が外圧よりも低くなるのを防止する。これにより、ポッド13と扉14とを分離するのが容易になる。
【0075】
また、レチクル搬送容器11内の気体を置換する場合は、メンブレンフィルター取り付け部62の管ガイド65にガス供給管を差し込んで接続して、管ガイド65に不活性ガスや乾燥空気などを送る。
【0076】
以上のように、向き変更手段81が、レチクル搬送容器11がレチクルストッカー2から露光機1の焼き付け位置まで移動する間に、レチクル搬送容器11の向きを検出して、適切な向きに修正する。即ち、方向検出手段83での検出結果より、その方向が180°ずれている場合には、制御部84によって制御された回転駆動部82が正規の方向に回転させる。
【0077】
この結果、レチクル搬送容器11の向きが180°ずれている場合でもレチクル処理システムを停止することなく、レチクル搬送容器11の向きを自動的に正規の方向に修正するため、処理工程での作業効率の向上を図ることができる。
【0078】
キネマティックピングルーブ61を180°ずらして二組設けたので、レチクル搬送容器11が、その方向を間違えて装着された場合でも、レクチルは常に正しい方向で露光機に装着されるために問題なく装着することができる。
【0079】
また、ポッド13の本体部17には、キネマティックピングルーブ61に合わせて受け部22を6カ所に設けたので、レチクル搬送容器11の方向を気にせずに、複数のレチクル搬送容器11を積み上げることができる。この受けは少なくとも4個の受けが対称にキネマティックピングルーブと嵌合すれば良く、必ずしも6ヶ所必要なわけではない。
【0080】
また、レチクル12等がレチクルリテーナー25等によって、傷つくことなく、安全に且つ確実に支持され、レチクル12等をより慎重に取り扱うことができるようになる。
【0081】
また、無線タグ74に種々の情報を記録して管理するため、その情報に基づいて作業効率を向上させることができる。このとき、無線タグ74は覆い板75によって密閉収納されているため、無線タグ74の脱落や機械的損傷をなくすことができる上に、無線タグ74自身による装置の汚染も防ぐことができる。
【0082】
さらに、メンブレンフィルター63によってレチクル搬送容器11の内外での気体の出入りを許容するため、レチクル搬送容器11の内圧が外圧よりも低くなるのを防止して、ポッド13と扉14とを容易に分離することができるようになる。また、レチクル搬送容器11内の気体の置換を容易にすることができる。
【0083】
なお、上記実施形態では、メンブレンフィルター63をポッド13側に1つ設けたが、扉14側に設けてもよい。メンブレンフィルター63の設置個数も、1つに限らず、2以上でもよい。ポッド13又は扉14のいずれか一方又は両方に、1又は複数のメンブレンフィルター63を設けることができる。この場合、他の邪魔にならない位置に設ける。
【0084】
また、上記実施形態では、無線タグ74を扉14の外側表面の1カ所に設けたが、必要に応じて2以上設けてもよい。設ける場所も、扉14に限らずポッド13でもよい。両方でもよい。要求される機能、読み取り装置及び書き込み装置との関係で、ポッド13側に設けたりすることもある。また、無線タグ74に記録する情報としても、作業履歴等に限らず、種々の情報を記録することができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の実施形態に係るレチクル搬送容器の向き変更手段を示す機能ブロック図である。
【図2】フォトリソグラフィ工程で使用される装置の一例を示す概略構成図である。
【図3】本発明の実施形態に係る扉をその底面側から見た斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係るレチクル搬送容器をそのポッドと扉とを互いに分離した状態で示す斜視図である。
【図5】本発明の実施形態に係るレチクル搬送容器を示す側面断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係るレチクル搬送容器の要部を示す断面図である。
【図7】本発明の実施形態に係るメンブレンフィルターを示す要部断面図である。
【図8】本発明の実施形態に係る無線タグを示す要部断面図である。
【符号の説明】
【0086】
11:レチクル搬送容器、12:レチクル、12A:上側角部、12B:下側角部、13:ポッド、14:扉15:シール材、17:本体部、18:周縁嵌合部、
20:センターハンドリングフランジ、21:サイドハンドリングフランジ、22:受け部、25:レチクルリテーナー、26:リテーナー受け部、27:リテーナー板部、28:傾斜面部、29:一端側嵌合用切り欠き、30:他端側嵌合用切り欠き、31:凹部、33:当接面板、34:一端嵌合板、35:他端嵌合板、37:ペリクルリテーナー、38:リテーナー受け部、39:リテーナー板部、46:ペリクル、41:留め具、43:シール溝、44:扉側支持部材、45:レチクルリテーナー、47:ペリクルリテーナー、48:ベース板部、50:リテーナー受け部、51:リテーナー板部、52:凹部、55:リテーナー受け部、56:リテーナー板部、61:キネマティックピングルーブ、62:メンブレンフィルター取り付け部、63:メンブレンフィルター、65:管ガイド、66:フィルター嵌合筒部、67:ストッパ、70:フィルター本体部、71:嵌合筒部、72:開口筒部、74:無線タグ、75:覆い板、75A:凹部、81:向き変更手段、82:回転駆動部、83:方向検出手段、84:制御部、86微弱電波発信機、87:微弱電波受信機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レチクルを収納するレチクル搬送容器と、当該レチクル搬送容器を搬送する搬送手段と、上記レチクルを用いて半導体ウエハ上のレジストに回路パターンを焼き付ける露光機と、複数の上記レチクルを保管するレチクルストッカーとを少なくとも有し、
上記レチクルストッカーから上記露光機の焼き付け位置までの経路の少なくとも1箇所に、上記レチクル搬送容器の向きを検出して当該レチクル搬送容器を適切な向きに変更する手段を備えたことを特徴とするレチクル処理システム。
【請求項2】
請求項1に記載のレチクル処理システムにおいて、
上記レチクル搬送容器を適切な向きに変更する手段が、
上記レチクル搬送容器を回転させる回転駆動部と、
上記レチクルストッカーから上記露光機の焼き付け位置までの経路のいずれかに設けられ上記レチクル搬送容器の方向を検出する方向検出手段と、
当該方向検出手段で検出した方向が正規の方向か否かを判断して方向が180°ずれている場合に上記回転駆動部を制御して正規の方向に回転させる制御部と
を備えたことを特徴とするレチクル処理システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のレチクル処理システムにおいて、
上記方向検出手段が、上記レチクル搬送容器の方向を非接触で検出する無線タグを備えて構成されたことを特徴とするレチクル処理システム。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のレチクル処理システムにおいて、
上記方向検出手段が、上記レチクル搬送容器の方向を非接触で検出する光学センサを備えて構成されたことを特徴とするレチクル処理システム。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載のレチクル処理システムにおいて、
上記レチクル搬送容器を適切な向きに変更する手段を上記搬送手段内に備えたことを特徴とするレチクル処理システム。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載のレチクル処理システムにおいて、
上記レチクル搬送容器を適切な向きに変更する手段を上記露光機内に備えたことを特徴とするレチクル処理システム。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載のレチクル処理システムにおいて、
上記レチクル搬送容器の扉の外側表面に形成されて、上記露光機に位置決めして取り付けるためのキネマティックピングルーブを、180°方向を変えて二組設けたことを特徴とするレチクル処理システム。
【請求項8】
請求項7に記載のレチクル処理システムにおいて、
上記レチクル搬送容器のポッドの外側表面のうち、上記キネマティックピングルーブに対応した位置に、上記キネマティックピングルーブを受けて保持するための受け部を、上記二組のキネマティックピングルーブをいずれの方向からでも嵌合できるように配設したことを特徴とするレチクル処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−173276(P2006−173276A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−361901(P2004−361901)
【出願日】平成16年12月14日(2004.12.14)
【出願人】(000140890)ミライアル株式会社 (74)
【Fターム(参考)】