説明

レンズアレイとその製造方法、及びラインヘッド

【課題】ボイドのないレンズアレイを製造できる製造方法とレンズアレイ、及びこのレンズアレイを備えてなるラインヘッドを提供する。
【解決手段】板状の基部431の表面に、複数のマイクロレンズ433を備えたレンズアレイ430aの製造方法である。アレイ形成面361に第1凹部362、第2凹部364が形成されたアレイ製造用型360用い、アレイ製造用型360と基板435との間に光硬化性樹脂JSを配し、減圧下において、アレイ製造用型360で加圧して光硬化性樹脂を第1凹部及び第2凹部内に圧入する。その際、光硬化性樹脂JSをアレイ形成面361と基板435との間からはみ出させることなく、これらの間に挟持する。その後、光硬化性樹脂JSに光を照射して硬化させ、アレイ製造用型360から離型することでレンズアレイ430aを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズアレイとその製造方法、及びラインヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置としての電子写真式プリンターでは、潜像担持体である感光体の走査面に対して光を走査し、潜像を形成する光源として、ラインヘッドが用いられている。
このような光プリンターヘッドとしてのラインヘッドは、一般に、複数の発光素子群が設けられたヘッド基板と、これら発光素子群に対応したレンズからなるレンズアレイとを備えて形成されている。
【0003】
従来、このようなラインヘッドとなるLEDアレイにおけるマイクロレンズアレイの製造方法として、ガラス基板上に樹脂レンズを形成する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。この方法では、型とガラス基板との間に光硬化性樹脂を充填し、該光硬化性樹脂に光を照射して硬化させ、その後、前記型を剥離することにより、マイクロレンズアレイを製造している。
【0004】
ところが、前記の方法では、その成型時に光硬化性樹脂が収縮し、形状が変化して面精度が低下する。そこで、収縮率が小さい光硬化性樹脂を用いることにより、形状の変化を小さくして面精度の低下を抑制することが考えられる。しかし、収縮率が小さい光硬化性樹脂を用いると、光硬化性樹脂の離型性が低下するといった新たな課題を生じてしまう。離型性低下の防止としては、型に撥液処理(離型処理)を行うのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−276849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、撥液処理を行うと、型の表面(内面)が液状の光硬化性樹脂をはじいてしまい、レンズの形成領域となる凹部内においてその表面(内面)とこの凹部内に充填された光硬化性樹脂との間に気泡が入り込んでしまう。すると、形成されたレンズアレイは、そのレンズ部分にボイドが形成されてしまい、レンズとしての機能が著しく損なわれてしまう。
【0007】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、ボイドのない良好なレンズアレイを製造することのできるレンズアレイの製造方法と、この製造方法によって得られたレンズアレイ、及びこのレンズアレイを備えてなるラインヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のレンズアレイの製造方法は、板状の基部の表面に、複数のマイクロレンズを配列させた状態で備えてなるレンズアレイの製造方法であって、
アレイ形成面を有し、該アレイ形成面に前記レンズアレイにおける前記基部の外形に対応する第1凹部が形成され、かつ該第1凹部の底面に前記マイクロレンズに対応する複数の第2凹部が形成されてなるアレイ製造用型と、基板とを用意し、該アレイ製造用型の前記アレイ形成面と前記基板との間に、前記第1凹部の容積と第2凹部の容積との合計量より大きい体積の光硬化性樹脂を配する準備工程と、
準備した前記アレイ製造用型と前記基板と前記光硬化性樹脂との環境を減圧する減圧工程と、
前記の減圧環境下において、前記アレイ製造用型を前記基板側に相対的に加圧して該アレイ製造用型と基板との間を狭め、前記光硬化性樹脂を前記アレイ製造用型の前記第1凹部及び前記第2凹部内に圧入することにより、前記光硬化性樹脂の一部を前記第1凹部及び前記第2凹部内に充填するとともに、残部を前記アレイ製造用型のアレイ形成面と前記基板との間からはみ出させることなく、前記第1凹部の外側のアレイ形成面と基板との間に挟持する圧入工程と、
前記光硬化性樹脂を前記圧入工程の状態に保持したままで、該光硬化性樹脂に光を照射し、該光硬化性樹脂を硬化させて前記レンズアレイを形成する硬化工程と、
前記硬化工程で形成したレンズアレイを前記アレイ製造用型から離型する離型工程と、を含むことを特徴としている。
【0009】
このレンズアレイの製造方法によれば、減圧環境下において光硬化性樹脂をアレイ製造用型の第1凹部及び第2凹部内に圧入するので、特に第2凹部内に気泡が残留するのが抑制される。また、光硬化性樹脂を圧入工程の状態に保持したまま、すなわちアレイ製造用型を基板側に相対的に加圧した状態のままで光硬化性樹脂を硬化させるので、特に第2凹部内には気泡が入り込むことなく、したがってボイドが形成されることなく、マイクロレンズが形成される。
【0010】
また、圧入工程において、光硬化性樹脂の残部をアレイ製造用型のアレイ形成面と基板との間からはみ出させることなく、第1凹部の外側のアレイ形成面と基板との間に挟持するようにしたので、この圧入工程の状態に保持したままで硬化工程を行うことにより、ボイドの形成をより確実に防止することができる。
すなわち、第1凹部の容積と第2凹部の容積との合計量より大きい体積の光硬化性樹脂を配し、この光硬化性樹脂の、前記第1凹部及び前記第2凹部内に充填した残り(残部)を、第1凹部の外側のアレイ形成面と基板との間に挟持するようにしたので、この残部が存在することにより、第1凹部及び第2凹部内に充填された樹脂が少ないことでこれら凹部内に空隙が形成され、この空隙内に流入した気体に起因してボイドが形成されることが確実に防止される。また、この残部をアレイ形成面と基板との間からはみ出させないようにしたので、残部がはみ出ることによって第1凹部及び第2凹部内に充填された樹脂が減圧状態にある型の外側に引っ張られ、これら凹部内に空隙が形成されてしまうことも防止される。
【0011】
また、前記レンズアレイの製造方法において、前記準備工程では、前記アレイ製造用型として、前記アレイ形成面が撥液処理されているものを用意するのが好ましい。
このようにすれば、硬化工程において、形成したレンズアレイをアレイ製造用型から離型するのが容易になる。また、圧入工程において、撥液処理されたアレイ形成面の第2凹部の表面によって光硬化性樹脂がはじかれても、前述したように減圧環境下にあるため、この第2凹部内に気泡が入り込み、残留するのが防止される。
【0012】
また、前記レンズアレイの製造方法においては、前記アレイ製造用型として、前記マイクロレンズが複数列配列されてなるレンズアレイのマイクロレンズに対応して前記第2凹部が複数列配列された型を、用いてもよい。
このようにすれば、マイクロレンズが複数列配列されてなるレンズアレイを、ボイドがない良好な状態に製造することができる。
【0013】
また、前記レンズアレイの製造方法においては、前記光硬化性樹脂として、硬化前に対する硬化後の収縮率が3%以下であるものを用いるのが好ましい。
このようにすれば、形成するマイクロレンズの精度をより高めることができる。
【0014】
また、前記レンズアレイの製造方法においては、前記基板として透光性基板を用い、前記硬化工程では、前記透光性基板を介して前記光硬化性樹脂に光を照射し、該光硬化性樹脂を硬化させるのが好ましい。
このようにすれば、第1凹部及び第2凹部内に容易にかつ確実に光を照射することができ、したがって光硬化性樹脂をより良好に硬化させることができる。また、透光性基板を、そのままレンズアレイの支持基板として利用することもできる。
【0015】
本発明のレンズアレイは、板状の基部の表面に、複数のマイクロレンズを配列させた状態に形成してなるレンズアレイであって、
前記基部は、前記マイクロレンズを形成した表面側に位置する第1板部と、前記表面と反対の裏面側に位置する第2板部とを有してなり、
前記第2板部は、平面視した状態で前記第1板部の外側に拡がって形成されていることを特徴としている。
【0016】
このレンズアレイは、基部が、第1板部と、平面視した状態で該第1板部の外側に拡がって形成された第2板部とを有してなるので、前記のレンズアレイの製造方法によって形成することができる。すなわち、そのマイクロレンズが前記のアレイ製造用型の第2凹部によって形成され、第1板部が前記第1凹部によって形成され、第2板部が、第1凹部の外側のアレイ形成面と基板との間に挟持された部分によって形成されたものとなる。
したがって、このレンズアレイによれば、前述したようにボイドの形成が確実に防止されていることにより、ボイドがない良好なものとなる。
また、第1板部の外側に拡がって形成された第2板部を有しているので、例えばレンズアレイをラインヘッドに組み付ける際にこの第2板部を利用することにより、種々の手法や形態による組み付けを行うことが可能になり、さらにはハンドリングも容易になる。
【0017】
また、前記レンズアレイにおいては、前記第2板部の厚さが、前記第1板部の厚さより薄いのが好ましい。
このようにすれば、レンズアレイの薄厚化が可能になるとともに、光硬化性樹脂の使用量も少なくすることができる。
【0018】
また、前記レンズアレイにおいて、前記基部は、前記第2板部側が透光性基板に接合されているのが好ましい。
このようにすれば、透光性基板によってレンズアレイが補強されたものとなる。また、前記の製造方法において用いる基板として透明基板を用いることで、この透明基板上にレンズアレイを一体に形成することができ、したがって製造工程も簡略化される。
【0019】
本発明のラインヘッドは、前記のレンズアレイと、前記レンズアレイで結像される光を発光する発光素子が設けられたヘッド基板と、を備えてなることを特徴としている。
このラインヘッドによれば、ボイドがない良好なレンズアレイを備えてなるので、感光体の被走査面に高精度で潜像を形成することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】画像形成装置の概略構成図である。
【図2】画像形成装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】ラインヘッドの概略構成を示す斜視図である。
【図4】ラインヘッドを副走査方向に切断した断面図である。
【図5】レンズアレイの斜視図である。
【図6】レンズアレイの主走査方向の部分断面図である。
【図7】レンズアレイの成型装置の概略構成図である。
【図8】アレイ製造用型の概略構成を示す側断面図である。
【図9】(a)〜(c)はレンズアレイの製造工程説明図である。
【図10】(a)、(b)はレンズアレイの製造工程説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明を詳しく説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
まず、本発明に係るラインヘッドが備えられた画像形成装置の一例について、この画像形成装置の概略構成図である図1、及びこの画像形成装置の電気的構成を示すブロック図である図2を参照して説明する。
【0022】
図1、図2において符号1は画像形成装置であり、この画像形成装置1は、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の4色のトナーを重ね合わせてカラー画像を形成するカラーモードと、ブラック(K)のトナーのみを用いてモノクロ画像を形成するモノクロモードとを、選択的に実行可能にしたものである。この画像形成装置1では、図2に示すようにホストコンピューターなどの外部装置から画像形成指令がCPUやメモリなどを有するメインコントローラーMCに与えられると、このメインコントローラーMCはエンジンコントローラーECに制御信号などを与えるとともに画像形成指令に対応するビデオデータVDをヘッドコントローラーHCに与える。また、このヘッドコントローラーHCは、メインコントローラーMCからのビデオデータVDとエンジンコントローラーECからの垂直同期信号Vsyncおよびパラメータ値とに基づき各色のラインヘッド29を制御する。これによって、エンジン部EGが所定の画像形成動作を実行し、複写紙、転写紙、用紙およびOHP用透明シートなどのシートに画像形成指令に対応する画像を形成する。
【0023】
図1に示すようにこの画像形成装置1が有するハウジング本体3内には、図2に示した電源回路基板、メインコントローラーMC、エンジンコントローラーECおよびヘッドコントローラーHCを内蔵する電装品ボックス5が設けられている。また、画像形成ユニット7、転写ベルトユニット8および給紙ユニット11もハウジング本体3内に配設されている。また、図1においてハウジング本体3内右側には、2次転写ユニット12、定着ユニット13、シート案内部材15が配設されている。なお、給紙ユニット11は、ハウジング本体3に対して着脱自在に構成されている。そして、該給紙ユニット11および転写ベルトユニット8については、それぞれ取り外して修理または交換を行うことが可能な構成になっている。
【0024】
画像形成ユニット7は、複数の異なる色の画像を形成する4個の画像形成ステーションY(イエロー用)、M(マゼンタ用)、C(シアン用)、K(ブラック用)を備えている。また、各画像形成ステーションY,M,C,Kには、それぞれの色のトナー像がその表面に形成される感光体ドラム21が設けられている。各感光体ドラム21は、それぞれ専用の駆動モータに接続されて回転方向D21の方向に所定速度で回転駆動されるようになっている。これにより、感光体ドラム21の表面が副走査方向に搬送されることとなる。また、感光体ドラム21の周囲には、回転方向に沿って帯電部23、ラインヘッド29、現像部25および感光体クリーナ27が配設されている。そして、これらの機能部により、帯電動作、潜像形成動作及びトナー現像動作が実行されるようになっている。
【0025】
したがって、カラーモード実行時には、全ての画像形成ステーションY,M,C,Kで形成されたトナー像が、転写ベルトユニット8を有する転写ベルト81で重ね合わされてカラー画像が形成されるとともに、モノクロモード実行時には、画像形成ステーションKで形成されたトナー像のみにより、モノクロ画像が形成されるようになっている。なお、図1において、画像形成ユニット7の各画像形成ステーションは構成が互いに同一のため、図示の便宜上一部の画像形成ステーションのみに符号をつけて、他の画像形成ステーションについては符号を省略している。
【0026】
帯電部23は、その表面が弾性ゴムで構成された帯電ローラーを備えている。この帯電ローラーは、帯電位置で感光体ドラム21の表面と当接し、この感光体ドラム21の回転動作に伴って従動回転するようになっている。また、この帯電ローラーは、帯電バイアス発生部(図示せず)に接続されており、帯電バイアス発生部からの帯電バイアスの給電を受け、帯電部23と感光体ドラム21とが当接する帯電位置で感光体ドラム21の表面を帯電させるようになっている。
【0027】
ラインヘッド29は、本発明のラインヘッドの一実施形態となるもので、感光体ドラム21の軸方向(図1の紙面に対して垂直な方向)に配列された複数の発光素子を備えたものであり、感光体ドラム21から離間配置されている。そして、これらの発光素子から、帯電部23により帯電された感光体ドラム21の表面に対して光を照射して該表面に潜像を形成する。なお、本例では、図2に示したように各色のラインヘッド29を制御するためにヘッドコントローラーHCが設けられ、メインコントローラーMCからのビデオデータVDと、エンジンコントローラーECからの信号とに基づいて、各ラインヘッド29を制御している。
【0028】
すなわち、本例では、画像形成指令に含まれる画像データがメインコントローラーMCの画像処理部51に入力される。そして、該画像データに対して種々の画像処理が施されて各色のビデオデータVDが作成されるとともに、該ビデオデータVDがメイン側通信モジュール52を介してヘッドコントローラーHCに与えられる。また、ヘッドコントローラーHCでは、ビデオデータVDはヘッド側通信モジュール53を介してヘッド制御モジュール54に与えられる。このヘッド制御モジュール54には、前記したように潜像形成に関連するパラメータ値を示す信号と垂直同期信号VsyncがエンジンコントローラーECから与えられている。そして、これらの信号およびビデオデータVDなどに基づいて、ヘッドコントローラーHCは各色のラインヘッド29に対して素子駆動を制御するための信号を作成し、各ラインヘッド29に出力する。こうすることで、各ラインヘッド29において発光素子の作動が適切に制御されて画像形成指令に対応する潜像が形成される。
【0029】
そして、本例においては、各画像形成ステーションY,M,C,Kの感光体ドラム21、帯電部23、現像部25および感光体クリーナ27が感光体カートリッジとしてユニット化されている。また、各感光体カートリッジには、該感光体カートリッジに関する情報を記憶するための不揮発性メモリがそれぞれ設けられている。そして、エンジンコントローラーECと各感光体カートリッジとの間で無線通信が行われる。こうすることで、各感光体カートリッジに関する情報がエンジンコントローラーECに伝達されるとともに、各メモリ内の情報が更新記憶されるようになっている。
【0030】
図1に示すように現像部25は、その表面にトナーが担持する現像ローラー251を有している。そして、現像ローラー251と電気的に接続された現像バイアス発生部(図示せず)から現像ローラー251に印加される現像バイアスにより、現像ローラー251と感光体ドラム21とが当接する現像位置において、帯電トナーが現像ローラー251から感光体ドラム21に移動する。これにより、ラインヘッド29によって形成された静電潜像が顕在化される。このように前記現像位置において顕在化されたトナー像は、感光体ドラム21の回転方向D21に搬送された後、後述する転写ベルト81と各感光体ドラム21とが当接する1次転写位置TR1において転写ベルト81に1次転写される。
【0031】
また、本例では、感光体ドラム21の回転方向D21の1次転写位置TR1の下流側でかつ帯電部23の上流側に、感光体ドラム21の表面に当接して感光体クリーナ27が設けられている。この感光体クリーナ27は、感光体ドラム21の表面に当接することにより、1次転写後に感光体ドラム21の表面に残留するトナーをクリーニング除去するようになっている。
【0032】
転写ベルトユニット8は、駆動ローラー82と、駆動ローラー82の左側に配設される従動ローラー83(ブレード対向ローラー)と、これらのローラーに張架され図示矢印D81の方向(搬送方向)へ循環駆動される転写ベルト81とを備えて構成されている。また、転写ベルトユニット8は、転写ベルト81の内側に、感光体カートリッジ装着時において各画像形成ステーションY,M,C,Kが有する感光体ドラム21各々に対して一対一で対向配置される、4個の1次転写ローラー85Y,85M,85C,85Kを備えている。これらの1次転写ローラー85は、それぞれ1次転写バイアス発生部(図示せず)と電気的に接続されている。
【0033】
そして、後述するようにカラーモード実行時には、図1に示すように全ての1次転写ローラー85Y,85M,85C,85Kを画像形成ステーションY,M,C,K側に位置決めすることで、転写ベルト81を画像形成ステーションY,M,C,Kそれぞれが有する感光体ドラム21に当接させて、各感光体ドラム21と転写ベルト81との間に1次転写位置TR1を形成する。そして、適当なタイミングで前記1次転写バイアス発生部から1次転写ローラー85に1次転写バイアスを印加することで、各感光体ドラム21の表面上に形成されたトナー像を、それぞれに対応する1次転写位置TR1において転写ベルト81表面に転写してカラー画像を形成する。
【0034】
一方、モノクロモード実行時には、4個の1次転写ローラー85のうち、カラー1次転写ローラー85Y,85M,85Cをそれぞれが対向する画像形成ステーションY,M,Cから離間させるとともに、モノクロ1次転写ローラー85Kのみを画像形成ステーションKに当接させることで、モノクロ画像形成ステーションKのみを転写ベルト81に当接させる。その結果、モノクロ1次転写ローラー85Kと画像形成ステーションKとの間にのみ1次転写位置TR1が形成される。そして、適当なタイミングで1次転写バイアス発生部からモノクロ1次転写ローラー85Kに1次転写バイアスを印加することで、感光体ドラム21の表面上に形成されたトナー像を、1次転写位置TR1において転写ベルト81表面に転写してモノクロ画像を形成する。
【0035】
さらに、転写ベルトユニット8は、モノクロ1次転写ローラー85Kの下流側でかつ駆動ローラー82の上流側に配設された下流ガイドローラー86を備えている。また、この下流ガイドローラー86は、モノクロ1次転写ローラー85Kが画像形成ステーションKの感光体ドラム21に当接して形成する1次転写位置TR1での1次転写ローラー85Kと感光体ドラム21との共通内接線上において、転写ベルト81に当接するように構成されている。
【0036】
駆動ローラー82は、転写ベルト81を図示矢印D81の方向に循環駆動するとともに、2次転写ローラー121のバックアップローラーを兼ねている。駆動ローラー82の周面には、厚さ3mm程度、体積抵抗率が1000kΩ・cm以下のゴム層が形成されており、金属製の軸を介して接地することにより、図示を省略する2次転写バイアス発生部から2次転写ローラー121を介して供給される2次転写バイアスの導電経路としている。このように駆動ローラー82に高摩擦かつ衝撃吸収性を有するゴム層を設けることにより、駆動ローラー82と2次転写ローラー121との当接部分(2次転写位置TR2)にシートが進入する際の衝撃が転写ベルト81に伝達しにくくなり、画質の劣化を防止することができる。
【0037】
給紙ユニット11は、シートを積層保持可能である給紙カセット77と、給紙カセット77からシートを一枚ずつ給紙するピックアップローラー79とを有する給紙部を備えている。ピックアップローラー79により給紙部から給紙されたシートは、レジストローラー対80において給紙タイミングが調整された後、シート案内部材15に沿って2次転写位置TR2に給紙されるようになっている。
【0038】
2次転写ローラー121は、転写ベルト81に対して接離可能に設けられ、2次転写ローラー駆動機構(図示せず)によって接離駆動されるようになっている。定着ユニット13は、ハロゲンヒーター等の発熱体を内蔵して回転自在な加熱ローラー131と、この加熱ローラー131を押圧付勢する加圧部132とを有している。そして、その表面に画像が2次転写されたシートは、シート案内部材15により、加熱ローラー131と加圧部132の加圧ベルト1323とで形成するニップ部に案内され、該ニップ部において所定の温度で画像が熱定着されるようになっている。
【0039】
加圧部132は、2つのローラー1321,1322と、これらに張架される加圧ベルト1323とで構成されている。そして、2つのローラー1321,1322により張られた加圧ベルト1323を加熱ローラー131の周面に押し付けることで、加熱ローラー131と加圧ベルト1323とで形成するニップ部が広くとれるように構成されている。また、こうして定着処理を受けたシートは、ハウジング本体3の上面部に設けられた排紙トレイ4に搬送されるようになっている。
【0040】
また、この装置1では、ブレード対向ローラー83に対向してクリーナ部71が配設されている。クリーナ部71は、クリーナブレード711と廃トナーボックス713とを有している。クリーナブレード711は、その先端部が転写ベルト81を介してブレード対向ローラー83に当接することで、2次転写後に転写ベルト81に残留するトナーや紙粉等の異物を除去するようになっている。そして、このように除去された異物は、廃トナーボックス713に回収されるようになっている。また、クリーナブレード711及び廃トナーボックス713は、ブレード対向ローラー83と一体的に構成されている。したがって、次に説明するようにブレード対向ローラー83が移動する場合は、ブレード対向ローラー83と一緒にクリーナブレード711及び廃トナーボックス713も移動することになる。
【0041】
次に、本発明に係るラインヘッド29を、図面に基づいて詳しく説明する。図3は、本発明に係るラインヘッド29の概略斜視図であり、図4は、ラインヘッド29を副走査方向YYに切断した断面図である。図3に示すようにラインヘッド29は、主走査方向XXに配列された発光素子群410を備えている。発光素子群410は、複数の発光素子411を備えている。これらの発光素子411から、図4に示すように、帯電部23により帯電された感光体2Yの被走査面である表面200に対して光が照射され、表面200に静電潜像が形成されるようになっている。
【0042】
図3においてラインヘッド29は、主走査方向XXを長手方向である第1の方向XXとするケース420を備えるとともに、このケース420の両端に、位置決めピン421とねじ挿入孔422とを設けている。この位置決めピン421を、図示しない感光体カバーに穿設された位置決め孔に嵌め込むことにより、ラインヘッド29は図4に示した感光体2Yに対して位置決めされている。感光体カバーは、感光体2Yを覆うとともに感光体2Yに対して位置決めされている。また、ねじ挿入孔422を介して固定ねじを感光体カバーのねじ孔(図示せず)にねじ込んで固定することによっても、ラインヘッド29は感光体2Yに対して位置決め固定されている。
【0043】
図3および図4においてケース420は、感光体2Yの表面200に対向する位置に、マイクロレンズ(結像レンズ)が配列された2つのレンズアレイ430a,430bを重なるように保持するとともに、その内部に、レンズアレイ430a,430bに近い順番で、遮光部材440およびヘッド基板450を備えている。
ヘッド基板450は透明なガラス基板である。このヘッド基板450の裏面452(ヘッド基板450が有する2つの面のうち遮光部材440に対向する表面451とは逆側の面)には、複数の発光素子群410が設けられている。複数の発光素子群410は、ヘッド基板450の裏面452に、図3に示すように主走査方向XXおよび副走査方向YYに互いに所定間隔あけて、2次元的に複数列配列され配置されたもので、前記レンズアレイ430a,430bで結像される光を発光する複数の発光素子から構成されている。すなわち、発光素子群410は、図3中の円で囲んだ部分に示すように、複数の発光素子411を2次元的に配列することで構成されている。
【0044】
本実施形態では、発光素子として有機EL素子を用いている。つまり、本実施形態では、ヘッド基板450の裏面452に有機EL素子を発光素子411として配置している。そして、複数の発光素子411のそれぞれから感光体2Yの方向に射出される光は、ヘッド基板450を介して遮光部材440に向かうようになっている。なお、発光素子としてはLEDであってもよい。その場合、基板はガラス基板でなくてもよく、LEDをヘッド基板450の表面451に設けることができる。
【0045】
図3および図4において、遮光部材440は、複数の発光素子群410に対して一対一で対応する複数の導光孔4410を備えている。
発光素子群410に属する発光素子411から射出された光は、発光素子群410に一対一で対応する導光孔4410によって、一対のレンズアレイ430a,430bに導かれる。そして、導光孔4410を通過した光は、二点鎖線で示すように、レンズアレイ430a,430bにより、感光体2Yの表面200にスポットとして結像されるようになっている。
【0046】
図4に示すように裏蓋470が、固定器具460によって、ヘッド基板450を介してケース420に押圧されている。固定器具460は、裏蓋470をケース420側に押圧する弾性力を有するとともに、この弾性力で裏蓋470を押圧することにより、ケース420の内部から光が漏れないようにするとともに、ケース420の外部から光が侵入しないように密閉している。なお、固定器具460は、図3に示すケース420の主走査方向XXに複数箇所設けられている。また、発光素子群410は、封止部材480によって覆われている。
【0047】
図5に、本発明にかかるレンズアレイ430aの斜視図を示す。また、図6に、このレンズアレイ430aの主走査方向XXにおける部分断面図を示す。なお、レンズアレイ430bの構成はレンズアレイ430aの構成と同一である。
図6に示すようにレンズアレイ430aは、板状の基部431と該基部431の表面に形成されたレンズ層432とを備えてなるもので、これら基部431及びレンズ層432は、光硬化性樹脂によって一体に形成されたものである。なお、本発明にかかるレンズアレイとしては、図6中二点鎖線で示したように、前記基部431の裏面側(レンズ層432と反対の側)がガラス基板(透光性基板)435に一体的に接合されていてもよく、したがって、このガラス基板435を含んでこれの上に前記基部431及びレンズ層432が形成されてなるものであってもよい。
【0048】
前記基部431は、図5に示すように前記レンズ層432を形成した表面側に位置する矩形板状の第1板部431aと、前記表面と反対の裏面側に位置する矩形板状の第2板部431bとを有したものである。第2板部431bは、平面視した状態で第1板部431aより一回り大きく、したがってその外側に略相似状に拡がって形成されている。また、この第2板部431bは、図6に示すようにその厚さが第1板部431aの厚さより十分に薄く、例えば第1板部431aの厚さの(1/2)〜(1/10)程度になっている。なお、この第2板部431bについては、その平面視形状が必ずしも矩形状になることなく、例えば略楕円形状や略長円形状などになっていてもよい。
【0049】
レンズ層432は、図5に示すように、第1板部431aの表面に、その長辺方向に沿って多数(複数)のマイクロレンズ433が配列させられた形成されたものである。また、本実施形態では、このようなマイクロレンズ433の列が複数列(図5では3列)設けられている。
なお、このような構成からなるレンズアレイ430a、430bについては、図3、図4に示したケース420に対して、第1板部431aより外側に拡がって形成された第2板部431bを利用して取り付け固定してもよく、また、図6中の二点鎖線で示したガラス基板435が一体化されている場合には、このガラス基板435を利用して取り付け固定してもよい。
【0050】
そして、レンズアレイ430a,430bは、それぞれのレンズ層432における対応したマイクロレンズ433が互いに対をなし、図4中一点鎖線で示すように共通の光軸を有するように、ケース420に取り付け固定されている。また、これら一対のマイクロレンズ433は、図3に示した複数の発光素子群410に一対一で対向して配置されている。これにより、各発光素子411から射出された光は、図4中二点鎖線で示すように、マイクロレンズ433によって感光体2Yの表面200上に結像するようになっている。
【0051】
次に、レンズアレイ430a,430bの製造方法に基づき、本発明に係る製造方法の一実施形態を説明する。
まず、本実施形態で用いられるレンズアレイの成型装置について説明する。図7は、レンズアレイの成型装置の概略構成図である。レンズアレイの成型装置900は、密閉容器902と、この密閉容器902に配管(図示せず)を介して接続されたロータリーポンプなどの真空ポンプ(図示せず)とを備えたもので、真空ポンプによって密閉容器902内が排気され、密閉容器902内が所望の減圧度(真空度)に減圧されるように構成されたものである。
【0052】
密閉容器902の上部には保持孔(図示せず)が形成されており、この保持孔には、軸状の上プレス可動部保持部901が摺動可能かつ気密に内挿されている。上プレス可動部保持部901には、密閉容器902内に位置する下端部に、上プレス可動部903が取り付けられている。上プレス可動部903の下部には型保持部904が儲けられ、型保持部904の下部にはアレイ製造用型360が備えられている。
【0053】
上プレス可動部保持部901は、図示しない昇降装置によって上下に移動(摺動)するようになっており、これによってアレイ製造用型360は、上プレス可動部903、型保持部904とともに上下動するようになっている。なお、上プレス可動部保持部901と前記保持孔との間には、Oリングなどのシール部材(図示せず)が儲けられており、これによって上プレス可動部保持部901は、前述したように保持孔に対して気密に摺動するようになっている。密閉容器902の下部には、下プレス台906が設けられており、この下プレス台906には、例えば石英ガラスなどの光を透過する透光性部材905が保持されている。透光性部材905の下方には、紫外線(光)を照射する紫外線照射ランプ907が設けられている。
【0054】
前記アレイ製造用型360は、その側断面図である図8に示すように略直方体状のもので、その上面側が、図7に示した型保持部904に着脱可能に保持されるようになっており、その底面が、前記レンズアレイ430a(430b)を形成するためのアレイ形成面361となっているものである。
【0055】
アレイ形成面361には、その開口形状を矩形とする第1凹部362が形成されており、この第1凹部362には、その底面363に多数(複数)の第2凹部364が形成されている。第1凹部362は、図5に示した第1板部431aの外径である矩形に対応した開口形状を有したもので、その深さが、第1板部431aの厚さに対応して形成されたものである。第2凹部364は、図5に示したレンズ層432を構成する個々のマイクロレンズ433にそれぞれ対応して形成されたもので、複数列配列されて形成されたものである。
【0056】
このようなレンズアレイの成型装置900及びアレイ製造用型360を用いてレンズアレイ430a(430b)を製造するには、まず、図8に示したアレイ製造用型360を用意するとともに、このアレイ製造用型360のアレイ形成面361、すなわち第1凹部362の内面及び第2凹部364の内面を含むアレイ製造用型360の底面全体を、撥液処理する。撥液水処理としては、特に限定されることなく、従来の一般的な手法(例えば離型処理)が用いられる。
【0057】
そして、図9(a)に示すようにこのアレイ製造用型360をレンズアレイの成型装置900の型保持部904に固定し、密閉容器902内にセットする。また、下プレス台906の透光性部材905上に、ガラス基板(透光性基板)435を載置する。ガラス基板435については、図6に示したようにこれを基部431に一体に接合してレンズアレイとする場合には、親液処理を行ってもよく、また、表面処理を行うことなく用いてもよい。一方、図5に示したようにレンズアレイ430aに一体的に設けない場合には、アレイ形成面361と同様に、撥液処理を行っておくのが好ましい。
【0058】
続いて、このガラス基板435上に、光硬化性樹脂JSを配する。この光硬化性樹脂JSとしては、本実施形態では紫外線照射硬化型のものが用いられ、特に、硬化前に対する硬化後の収縮率が、3%以下であるものが好適に用いられる。また、この光硬化性樹脂JSとしては、前記第1凹部362の容積と第2凹部364の容積との合計量より大きい体積(量)を、ガラス基板435上に配する。その際、アレイ製造用型360の第1凹部362の開口形状に近い状態で、かつこの開口の直下に位置するようにして、光硬化性樹脂JSをガラス基板435上に配する(準備工程)。
【0059】
そして、このように密閉容器902内においてアレイ製造用型361と、ガラス基板435とを用意し、さらにこのガラス基板435上に所定量の光硬化性樹脂JSを配したら、これらの環境である密閉容器902内を、真空ポンプによって所望の減圧度(真空度)にまで減圧(真空引き)する(減圧工程)。すると、密閉容器902内は十分に減圧されることで、アレイ製造用型361の第1凹部362内や第2凹部364内に存在していた空気等の気体(気泡)が排出され、また、ガラス基板435と光硬化性樹脂JSとの間や光硬化性樹脂JS内に存在していた空気等の気体(気泡)も排出される。
【0060】
次いで、図10(a)に示したように真空ポンプによって密閉容器902内を減圧しつつ、上プレス可動部保持部901を下降し、図9(b)、図10(b)に示すようにアレイ製造用型360をガラス基板435側に相対的に加圧する。これにより、アレイ製造用型360とガラス基板435との間を狭め、光硬化性樹脂JSをアレイ製造用型360の第1凹部362及び第2凹部364内に圧入する(圧入工程)。
【0061】
このようにして圧入すると、前述したように光硬化性樹脂JSの体積量を、第1凹部362の容積と第2凹部364の容積との合計量より大きくしているので、図10(b)に示すように光硬化性樹脂JSはその全量が第1凹部362及び第2凹部364内に充填されることなく、その一部(過半部)のみが第1凹部362及び第2凹部364内に充填され、残部は第1凹部362の外側のアレイ形成面361とガラス基板435との間に挟持される。その際、上プレス可動部保持部901の下降によるアレイ製造用型360の加圧力を調整することにより、光硬化性樹脂JSが、アレイ形成面361とガラス基板435との間からはみ出さないようにする。
【0062】
これは、例えば図10(b)中二点鎖線で示すように、光硬化性樹脂JSがアレイ形成面361とガラス基板435との間からはみ出てしまうと、第1凹部362及び第2凹部364内に充填された光硬化性樹脂JSが減圧状態にあるアレイ製造用型360の外側に引っ張られ、これら凹部362、364内に空隙が形成されてしまうおそれがあるからである。すなわち、このように空隙が形成されると、得られるレンズアレイにボイドが形成され、所望のレンズ特性が得られなくなってしまうからである。
【0063】
なお、光硬化性樹脂JSの体積量を第1凹部362の容積と第2凹部364の容積との合計量より大きくし、この光硬化性樹脂JSの一部(残部)を第1凹部362の外側のアレイ形成面361とガラス基板435との間に挟持させるようにしたので、第1凹部362及び第2凹部364内に充填された樹脂が少ないことでこれら凹部362、364内に空隙が形成されるといったことが防止されている。
【0064】
次いで、図9(b)、図10(b)に示したように、アレイ製造用型360による加圧状態のもとで、つまり圧入工程の状態に保持したままで、光硬化性樹脂JSに対して紫外線照射ランプ907から光を照射し、該光硬化性樹脂JSを硬化させる(硬化工程)。紫外線照射ランプ907から光(紫外線)を照射すると、透光性部材905、ガラス基板435を透過して光(紫外線)が光硬化性樹脂JSに照射され、これによって光硬化性樹脂JSは硬化し、レンズアレイ430a(430b)が形成される。
【0065】
その後、図9(c)に示すように上プレス可動部保持部901を上昇させ、アレイ製造用型360による加圧を解除する。すると、アレイ製造用型360のアレイ形成面361には撥液処理を施しているので、形成されたレンズアレイ430a(430b)はアレイ製造用型360から容易に離型し、透光性部材905上に残る。したがって、真空ポンプを止めて密閉容器902内を大気圧に戻し、レンズアレイ430a(430b)を取り出すことにより、図5、図6に示した構造のレンズアレイ430a(430b)を得ることができる。
【0066】
なお、製造するレンズアレイ430a(430b)を、図6に示したように基部431にガラス基板435を一体に接合したものとする場合には、前述したようにガラス基板435に撥液処理を施していないことから、このガラス基板435が一体に設けられた状態で製造される。一方、図5に示したようにレンズアレイ430a(430b)に一体的に設けない場合には、ガラス基板435に撥液処理を施していることから、このガラス基板435が基部431の底面から容易に剥離し、したがってガラス基板435のない状態に製造される。
【0067】
このような製造方法にあっては、減圧環境下において光硬化性樹脂JSをアレイ製造用型360の第1凹部362及び第2凹部364内に圧入するので、特に第2凹部364内に気泡が残留するのを抑制することができる。また、光硬化性樹脂JSを圧入工程の状態に保持したままで光硬化性樹脂JSを硬化させるので、特に第2凹部364内に気泡が入り込むことがなく、したがってボイドを形成することなく、マイクロレンズ433を形成することができる。
【0068】
また、圧入工程において、光硬化性樹脂JSの残部をアレイ製造用型360のアレイ形成面361とガラス基板435との間からはみ出させることなく、第1凹部362の外側のアレイ形成面361とガラス基板435との間に挟持するようにしたので、この圧入工程の状態に保持したままで硬化工程を行うことにより、前述したようにボイドの形成をより確実に防止することができる。
【0069】
また、このようにして得られた本実施形態のレンズアレイ430a(430b)は、前述したようにボイドの形成が確実に防止されているので、ボイドがない良好なものとなる。また、第1板部431aの外側に拡がって形成された第2板部431bを有しているので、例えばこのレンズアレイ430a(430b)を前記ラインヘッド29のケース420に組み付ける際、この第2板部431bを利用することで容易に組み付けることができる。さらに、この第2板部431bを利用することにより、ハンドリングも容易になる。
【0070】
また、このようにボイドがない良好なレンズアレイ430a(430b)を備えたラインヘッド29にあっては、感光体の被走査面に高精度で潜像を形成することが可能になる。
【0071】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、前記実施形態ではレンズアレイにおけるマイクロレンズ433の列を複数列配列させるように、第2凹部364を複数列配列したアレイ製造用型360を用いたが、マイクロレンズ433の列を1列とするように、第2凹部364を1列のみ配列したアレイ製造用型360を用いてレンズアレイを製造してもよい。
【0072】
また、前記実施形態では、本発明のラインヘッドをカラー画像形成装置に適用しているが、適用対象はこれに限定されるものでなく、いわゆる単色画像を形成するモノクロ画像形成装置に対しても適用可能である。さらに、乾式のトナーだけでなく、トナー粒子を不揮発性液体キャリアに分散させた体トナーを用いた画像形成装置に対しても適用可能である。
【符号の説明】
【0073】
29…ラインヘッド、360…アレイ製造用型、361…アレイ形成面、362…第1凹部、363…底面、364…第2凹部、410…発光素子群、430a,430b…レンズアレイ、431…基部、431a…第1板部、431b…第2板部、432…レンズ層、433…マイクロレンズ、435…ガラス基板(基板、透光性基板)、450…ヘッド基板、902…密閉容器、907…紫外線照射ランプ、JS…光硬化性樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の基部の表面に、複数のマイクロレンズを配列させた状態で備えてなるレンズアレイの製造方法であって、
アレイ形成面を有し、該アレイ形成面に前記レンズアレイにおける前記基部の外形に対応する第1凹部が形成され、かつ該第1凹部の底面に前記マイクロレンズに対応する複数の第2凹部が形成されてなるアレイ製造用型と、基板とを用意し、該アレイ製造用型の前記アレイ形成面と前記基板との間に、前記第1凹部の容積と第2凹部の容積との合計量より大きい体積の光硬化性樹脂を配する準備工程と、
準備した前記アレイ製造用型と前記基板と前記光硬化性樹脂との環境を減圧する減圧工程と、
前記の減圧環境下において、前記アレイ製造用型を前記基板側に相対的に加圧して該アレイ製造用型と基板との間を狭め、前記光硬化性樹脂を前記アレイ製造用型の前記第1凹部及び前記第2凹部内に圧入することにより、前記光硬化性樹脂の一部を前記第1凹部及び前記第2凹部内に充填するとともに、残部を前記アレイ製造用型のアレイ形成面と前記基板との間からはみ出させることなく、前記第1凹部の外側のアレイ形成面と基板との間に挟持する圧入工程と、
前記光硬化性樹脂を前記圧入工程の状態に保持したままで、該光硬化性樹脂に光を照射し、該光硬化性樹脂を硬化させて前記レンズアレイを形成する硬化工程と、
前記硬化工程で形成したレンズアレイを前記アレイ製造用型から離型する離型工程と、を含むことを特徴とするレンズアレイの製造方法。
【請求項2】
前記準備工程では、前記アレイ製造用型として、前記アレイ形成面が撥液処理されているものを用意することを特徴とする請求項1記載のレンズアレイの製造方法。
【請求項3】
前記アレイ製造用型として、前記マイクロレンズが複数列配列されてなるレンズアレイのマイクロレンズに対応して前記第2凹部が複数列配列された型を、用いることを特徴とする請求項1又は2に記載のレンズアレイの製造方法。
【請求項4】
前記光硬化性樹脂として、硬化前に対する硬化後の収縮率が3%以下であるものを用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のレンズアレイの製造方法。
【請求項5】
前記基板として透光性基板を用い、前記硬化工程では、前記透光性基板を介して前記光硬化性樹脂に光を照射し、該光硬化性樹脂を硬化させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のレンズアレイの製造方法。
【請求項6】
板状の基部の表面に、複数のマイクロレンズを配列させた状態に形成してなるレンズアレイであって、
前記基部は、前記マイクロレンズを形成した表面側に位置する第1板部と、前記表面と反対の裏面側に位置する第2板部とを有してなり、
前記第2板部は、平面視した状態で前記第1板部の外側に拡がって形成されていることを特徴とするレンズアレイ。
【請求項7】
前記第2板部の厚さが、前記第1板部の厚さより薄いことを特徴とする請求項6記載のレンズアレイ。
【請求項8】
前記基部は、前記第2板部側が透光性基板に接合されていることを特徴とする請求項6又は7に記載のレンズアレイ。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか一項に記載のレンズアレイと、
前記レンズアレイで結像される光を発光する発光素子が設けられたヘッド基板と、を備えてなることを特徴とするラインヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−243548(P2010−243548A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−88726(P2009−88726)
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】