説明

レーザアニール処理装置およびレーザアニール処理方法

【課題】半導体膜のパルスレーザ光を照射してアニールする際に、適正なパルスエネルギー密度を高くすることなく該パルスエネルギー密度のマージンを大きくすることを可能にする。
【解決手段】パルスレーザ光を出力するレーザ光源と、パルスレーザ光を整形して処理対象の半導体膜に導く光学系と、パルスレーザ光が照射される前記半導体膜を設置するステージとを有し、前記半導体膜に照射される前記パルスレーザ光が、パルスエネルギー密度で最大高さの10%から最大高さに至るまでの立ち上がり時間が35n秒以下、最大高さから最大高さの10%に至るまでの立ち下がり時間が80n秒以上であるものとすることで、結晶化などに適したパルスエネルギー密度を格別に大きくすることなく、そのマージン量を大きくして、良質なアニール処理をスループットを低下させることなく行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体膜にパルスレーザ光を照射してレーザアニールを行うレーザアニール処理装置およびレーザアニール処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイや有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイの画素スイッチや駆動回路に用いられる薄膜トランジスタでは、低温プロセスの製造方法の一環として、レーザ光を用いたレーザアニールが行われている。この方法は、基板上に成膜された非単結晶半導体膜にレーザ光を照射して、局部的に加熱溶融した後、または溶融することなく加熱した後、その冷却過程で半導体薄膜を多結晶あるいは単結晶に結晶化するものである。結晶化した半導体薄膜はキャリアの移動度が高くなるため薄膜トランジスタを高性能化できる。また、結晶半導体薄膜にレーザアニール処理を行うことで改質を行うこともできる。
上記レーザ光の照射においては、パルスレーザ光を矩形状やライン状に整形し、該パルスレーザ光を走査しつつオーバーラップ照射して半導体をアニールする方法が提案されている(例えば特許文献1)。
上記レーザ光の照射では、半導体膜全体で均質な処理が行われる必要があり、照射されるパルスレーザ光が安定したパルスエネルギー密度を有するように、レーザ出力を所定範囲内に調整する制御や可変減衰器によってパルスエネルギーを所定範囲に調整する制御が一般に行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−5537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、パルスレーザ光が照射されて結晶化されたる半導体膜では、粒径の大きな結晶粒が均一に存在していることによって半導体素子として優れた特性が得られる。このため、レーザアニールに際し照射されるパルスレーザ光は、エネルギー密度の過不足がなく該エネルギー密度が結晶化に適した範囲内にあることが必要である。
このようにレーザアニールに際しては結晶化に適した範囲内となるように、レーザ出力が制御されることになるが、従来のパルスレーザ光では、その適正範囲、すなわちマージンが小さくて制御のための装置負担が大きく、また、出力変動によって結晶性にバラツキが生じやすくなるという問題がある。
従来のパルスレーザ光は、図6に示すように、立ち上がり、立ち下がりともに急峻なパルス波形を有しており、本発明者らは、これをブロードなパルス波形にすることによって、結晶化に適したエネルギー密度自身が高くなり、かつその範囲が比較的大きくなることを見出している。
しかし、結晶化に適したエネルギー密度が高くなるということは、出力パルスエネルギーに変わりがなければ、パルスレーザ光の照射面積を小さくしてパルスエネルギー密度を高くしなければならないことを意味している。パルスレーザ光の照射面積を小さくすると、半導体膜一面を処理するためのパルス照射回数が必然的に多くなり、スループットが低下する。
【0005】
本発明は、上記事情を背景としてなされたものであり、スループットの低下をできるだけ抑えつつ結晶化等に適したエネルギー密度の範囲、すなわち適正マージンを大きくすることができるレーザアニール処理装置および処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明のレーザアニール処理装置のうち、第1の本発明は、パルスレーザ光を出力するレーザ光源と、前記パルスレーザ光を整形して処理対象の半導体膜に導く光学系と、前記パルスレーザ光が照射される前記半導体膜を設置するステージとを有し、前記半導体膜に照射される前記パルスレーザ光が、パルスエネルギー密度で最大高さの10%から該最大高さに至るまでの立ち上がり時間が35n秒以下、前記最大高さから該最大高さの10%に至るまでの立ち下がり時間が80n秒以上であることを特徴とする。
【0007】
第2の本発明のレーザアニール処理装置は、前記第1の本発明において、前記立ち上がり時間が30n秒以下、前記立ち下がり時間が85n秒以上であることを特徴とする。
【0008】
第3の本発明のレーザアニール処理装置は、前記第1または第2の本発明において、前記レーザ光源から出力されたパルスレーザ光を、前記立ち上がり時間と前記立ち下がり時間を有するパルス波形に整形する波形整形部を有することを特徴とする。
【0009】
第4の本発明のレーザアニール処理装置は、前記第3の本発明において、前記波形整形部は、前記レーザ光源から出力されたパルスレーザ光を複数のビームに分割するビーム分割手段と、分割された各ビームを遅延させる遅延手段と、分割された各ビームを合成するビーム合成手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
第5の本発明のレーザアニール処理装置は、前記第1〜第4の本発明のいずれかにおいて、複数のレーザ光源を有し、各レーザ光から出力されるパルスレーザ光を重ね合わせて前記半導体膜に照射するパルスレーザ光を得ることを特徴とする。
【0011】
第6の本発明のレーザアニール処理装置は、前記第1〜第5の本発明のいずれかにおいて、前記パルスレーザ光が照射される半導体膜が、非単結晶シリコンであることを特徴とする。
【0012】
第7の本発明のレーザアニール処理装置は、前記第1〜第6の本発明のいずれかにおいて、前記パルスレーザ光がエキシマレーザであることを特徴とする。
【0013】
また、本発明のレーザアニール処理方法は、パルス波形においてパルスエネルギー密度で最大高さの10%から最大高さに至るまでの立ち上がり時間が35n秒以下、前記最大高さから最大高さの10%に至るまでの立ち下がり時間が80n秒以上であるパルスレーザ光を得て、該パルスレーザ光を半導体膜に照射しつつ相対的に走査して該半導体膜の表面処理を行うことを特徴とする。
【0014】
すなわち、本発明によれば、立ち上がり時間、立ち下がり時間を適切に定めたパルスレーザ光が半導体膜に照射されることで、マージンの大きな適正なパルスエネルギー密度で良好なアニール処理をおこなうことができる。また、結晶化などに適したパルスエネルギー密度も比較的小さく抑えることができ、照射面積をできるだけ大きくして良好なスループットで処理を行うことを可能にする。
【0015】
なお、立ち上がり時間が35n秒を越えると、結晶化などに適したパルスエネルギー密度が大きくなり、パルスレーザ光の照射面積を小さくする必要が生じる。このため、立ち上がり時間は35n秒以下とする。同様の理由で30n秒以下が望ましい。
また、立ち下がり時間は80n秒未満であると、結晶化などに適したパルスエネルギー密度におけるマージンが小さくなり、装置負担が大きくなったり、均一な結晶も得られにくくなったりする。このため、立ち下がり時間は80n秒以上とする。同様の理由で立ち下がり時間は85n秒以上が望ましい。
なお、本発明で立ち上がり時間は、パルス波形における最大高さの10%から最大高さに至るまでの時間と定義する。また、本発明で立ち下がり時間は、パルス波形における最大高さから最大高さの10%に至るまでの時間と定義する。
【0016】
上記立ち上がり時間および立ち下がり時間を有するパルス波形は、レーザ光源から出力するパルスレーザ光が有するものであってもよいが、波形整形部によってパルス波形を整形するものであってもよい。これにより特殊なレーザ光源を用いることなく所望のパルス波形が得られる。波形整形部としては、例えば、遅延手段を用いたものが挙げられる。遅延手段を利用するものでは、レーザ光源から出力されたパルスレーザ光を複数のビームに分割するビーム分割手段と、分割された各ビームを遅延させる遅延手段と、分割された各ビームを合成するビーム合成手段とを備えるものによって波形整形部を構成することができる。遅延手段における遅延量の設定によってパルス波形を適宜の形にすることができる。遅延手段は、光路長の調整によって遅延量を変更することができる。
例えば、上記ビーム分割手段で分割されたレーザを、夫々光路長の異なる光学系に導く。分割して遅延させたビームを再び単一の光路上に導くことにより、パルス時間幅を伸長させ、パルス波形を調整できる。特に分割時の強度比の調整と、分割後の夫々の光路長の設定によりパルス時間波形を適宜変更することができる。
【0017】
また、上記立ち上がり時間および立ち下がり時間を有するパルス波形は、複数のレーザ光源から出力されたパルスレーザ光を重ね合わせることで得ることもできる。該波形は、予め複数のパルスレーザ光を合成して1つのパルスレーザ光として半導体膜に照射するものであってよく、また、複数のパルスレーザ光を半導体膜に照射することで、結果的に所望のパルス波形となるエネルギー密度で照射されるものであってもよい。複数のパルスレーザ光を重ね合わせる際に、パルス出力の位相を調整したり、遅延手段を介在させたりすることで所望のパルス波形が得られるようにしてもよい。
【0018】
本発明は、非晶質のシリコン膜の結晶化に好適に利用することができるが、本発明としては材料の種別、目的が特定のものに限定されるものではない。例えば、結晶質の半導体膜にパルスレーザ光を照射して改質を行うものであってもよい。パルスレーザ光としては、高出力のエキシマレーザ光を好適に使用することができるが、本発明としてはこれに限定されるものではない。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明によれば、パルスレーザ光を出力するレーザ光源と、前記パルスレーザ光を整形して処理対象の半導体膜に導く光学系と、前記パルスレーザ光が照射される前記半導体膜を設置するステージとを有し、前記半導体膜に照射される前記パルスレーザ光が、パルスエネルギー密度で最大高さの10%から該最大高さに至るまでの立ち上がり時間が35n秒以下、前記最大高さから該最大高さの10%に至るまでの立ち下がり時間が80n秒以上であるので、結晶化などに適したパルスエネルギー密度を格別に大きくすることなく結晶化などに適正なマージン量を大きく確保することができ、バラツキのないアニール処理を装置負担を増大させることなく、またスループットを低下させることなく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態のレーザアニール処理装置を示す概略図である。
【図2】同じく、波形整形部を示す概略図である。
【図3】本発明の実施例に用いたパルスレーザ光の各パルス波形を示す図である。
【図4】同じく、パルス立ち上がり時間と、パルスエネルギー密度のマージンとの関係を示す図である。
【図5】同じく、実施例におけるパルスレーザ光照射後のシリコン薄膜の表面結晶を示す図面代用写真である。
【図6】従来のレーザアニール処理装置に用いられているパルスレーザ光のパルス波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の一実施形態を説明する。
図1は、本発明のレーザアニール処理装置1の概略を示す図である。
レーザアニール処理装置1は、処理室2を備えており、該処理室2内にX−Y方向に移動可能な走査装置3を備え、その上部に基台4を備えている。基台4上には、ステージとして基板配置台5が設けられている。アニール処理時には、該基板配置台5上に半導体膜として非晶質のシリコン膜100などが設置される。シリコン膜100は、図示しない基板上に50nm厚で形成されている。該形成は常法により行うことができ、本発明としては半導体膜の形成方法が特に限定されるものではない。
なお、走査装置3は、図示しないモータなどによって駆動される。また、処理室2には、外部からパルスレーザ光を導入する導入窓6が設けられている。
【0022】
処理室2の外部には、パルスレーザ光源10が設置されている。該パルスレーザ光源10は、エキシマレーザ発振器で構成されており、波長308nm、繰り返し発振周波数300Hz、パルス立ち上がり時間<5n秒、パルス立ち下がり時間約45n秒のパルスレーザ光を出力可能になっており、該パルスレーザ光源10では、フィードバック制御によってパルスレーザ光の出力を所定範囲内に維持するように制御される。
【0023】
該パルスレーザ光源10においてパルス発振されて出力されるパルスレーザ光15は、必要に応じて減衰器11でエネルギー密度が調整され、レンズ、反射ミラー、ホモジナイザーなどによって構成される光学系12でビーム整形や偏向がなされ、処理室2に設けた導入窓を通して処理室2内の非晶質シリコン膜100に照射される。照射の際の照射面形状は特に限定されないが、前記光学系12によって、例えばスポット状、円形状、角形状、長尺状などに整形される。
【0024】
また、光学系12には、波形整形部13が含まれている。該波形整形部13の概略を図2に基づいて説明する。
波形整形部13には、光路上に、ハーフミラーからなるビームスプリッタ130が配置されており、一部のビーム15aは90度反射され、残部のビーム15bは透過するように分割される。すなわち、ビームスプリッタ130は、本発明のビーム分割手段に相当する。また、ビームスプリッタ130の反射方向には入射角が45度になるように全反射ミラー131が配置され、該全反射ミラー131の反射方向に入射角が45度になるように全反射ミラー132が配置され、全反射ミラー132の反射方向に入射角が45度になるように全反射ミラー133が配置され、全反射ミラー133の反射方向に入射角が45度になるように全反射ミラー134が配置されている。
全反射ミラー134の反射方向には、前記ビームスプリッタ130の裏面側が位置しており、入射角45度でビームが照射される。
【0025】
ビームスプリッタ130で90度反射されたビーム15aは、全反射ミラー131、132、133、134で順次90度ずつ反射されることで遅延したビーム15cとなってビームスプリッタ130の裏面側に至り、一部が90度反射されてビーム15bに遅延した形で重ね合わされ、残りのビームはビームスプリッタ130を透過して前記全反射、ビームスプリッタ130での分割が繰り返される。ビーム15b側で重ね合わされたビームは、遅延したビームが重ね合わされることでパルス波形の整形がなされ、立ち上がりが急峻で、立ち下がりは緩やかなパルス波形となり、パルスレーザ光150として光路上を進行する。具体的には、パルスレーザ光150は、パルスエネルギー密度で最大高さの10%から該最大高さに至るまでの立ち上がり時間が35n秒以下、前記最大高さから該最大高さの10%に至るまでの立ち下がり時間が80n秒以上のパルス波形とされる。なお、各全反射ミラーの位置を変えて光路長を調整することでビームの遅延量を変えることができ、これによって重ね合わされたパルスレーザ光のパルス波形を任意に変更することができる。また、分割されたパルスレーザ光の強度を個別に調整するようにしてもよい。
【0026】
パルスレーザ光150は、導入窓6を通して処理室2内に導入され、基板配置台5上のシリコン膜100に照射される。この際に基板配置台5は、走査装置3によって基台4とともに移動され、パルスレーザ光150がシリコン膜100上で相対的に走査されつつ照射されることになる。
この際のパルスレーザ光150は、結晶化に適したエネルギー密度が得られるように、レーザ光源10の出力、減衰器11の減衰率、パルスレーザ光の照射断面積が設定されており、非晶質のシリコン膜100を均一に結晶化する。
なお、パルスレーザ光150の一部を取り出し、照射面と同等とされる位置でパルスエネルギー密度を測定することができる。該測定結果に基づいて、前記パルスレーザ光源10や減衰器11を調整して、パルスレーザ光150のパルスエネルギー密度を適正値に調整することができる。
該パルスレーザ光150が照射されて結晶化されたシリコン膜100は、結晶粒は比較的大きくて結晶粒径が揃った結晶性に優れたものとなる。なお、この際に適正なパルスエネルギー密度のマージンは大きく、装置負担を軽減できるとともに、レーザ出力が変動した際にもアニール処理の均一性を確保することができる。また、結晶化などに適したエネルギー密度も比較的低く設定でき、パルスレーザ光の照射断面積を大きくしてスループットを上げることができる。
【実施例1】
【0027】
以下に、本発明の実施例および比較例を説明する。
図1、2に示すレーザアニール処理装置1を用い、波形整形部13の遅延量を調整して、立ち上がり、立ち下がり時間の異なるパルス波形を有するパルスレーザ光を得た。なお、この実施例では、パルスレーザ光の照射面形状は、465nm、幅0.4mmのラインビーム形状を有するものとした。
図3は、各パルスレーザ光におけるパルス波形を示すものであり、図中には立ち上がり時間、立ち下がり時間を具体的に示している。なお、図では、立ち下がり時間をパルス減衰時間として表記している。
【0028】
上記パルス波形を有するパルスレーザ光について、パルスエネルギー密度を変更して非晶質のシリコン膜100に照射して結晶性の評価を行った。なお、パルスエネルギー密度の変更は、主として減衰器11における減衰率の調整によって行った。
該結晶性の評価は、結晶化されたシリコン膜の表面を電子顕微鏡によって確認し、大きな結晶粒で形成され、かつ粒径の揃ったものを良質なものと判断した。なお、結晶粒は例えば200nm以上を良好なものとした。
各パルス波形について、結晶粒の大きさ、均一性の点でそれぞれ最適な結晶化パルスエネルギー密度を求めた。また、立ち上がり時間51n秒以外のパルスレーザ光では、結晶化に適したパルスエネルギー密度の上下限を求めた。
各パルス波形のパルスレーザ光を用いた照射結果を図4に示した。パルス立ち上がり時間が短くなるにつれて最適化パルスエネルギー密度が次第に減少し、35n秒以下では急激に最適化パルスエネルギー密度が低下することが分かる。したがって、立ち上がり時間は35n秒以下とする必要がある。また、立ち上がり時間は30n秒以下でより顕著に最適化パルスエネルギー密度が低下する。
【0029】
図5は、パルス立ち上がり時間22n秒、パルス立ち下がり時間87n秒のパルス波形を有するパルスレーザ光を非晶質シリコン膜に照射して結晶化したシリコン膜の表面を観察した電子顕微鏡写真を示すものである。この写真からは、結晶化に適したパルスエネルギー密度範囲は330〜370mJ/cmであって、最適なパルスエネルギー密度が340mJ/cmであることが分かる。結晶化に適したパルスエネルギー密度よりも低いパルスエネルギー密度でパルスレーザ光を照射すると得られた結晶は、結晶粒径は小さくなっている。また、結晶化に適したパルスエネルギー密度よりも高いパルスエネルギー密度でパルスレーザ光を照射すると、得られた結晶は結晶粒径のバラツキが大きくなり、さらにはエネルギー密度の上昇に伴って結晶粒が小さくなっている。
【0030】
しかし、立ち上がり時間7n秒のパルスレーザ光では、結晶化に適したパルスエネルギー密度は低下するものの、適正な範囲となるマージン量が急激に小さくなっている。これは、立ち下がり時間が78n秒で、80n秒を下回っているためである。
したがって、立ち上がり時間、立ち下がり時間ともに本発明の条件を満たすことが必要である。
【0031】
以上、本発明について上記実施形態および実施例に基づいて説明を行ったが、本発明は上記説明の内容に限定されるものではなく、当然に、本発明を逸脱しない限りは適宜の変更が可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 レーザアニール処理装置
2 処理室
3 走査装置
5 基板配置台
6 導入窓
10 レーザ光源
11 減衰器
12 光学系
13 波形整形部
15 パルスレーザ光
100 シリコン膜
150 パルスレーザ光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルスレーザ光を出力するレーザ光源と、前記パルスレーザ光を整形して処理対象の半導体膜に導く光学系と、前記パルスレーザ光が照射される前記半導体膜を設置するステージとを有し、前記半導体膜に照射される前記パルスレーザ光が、パルスエネルギー密度で最大高さの10%から該最大高さに至るまでの立ち上がり時間が35n秒以下、前記最大高さから該最大高さの10%に至るまでの立ち下がり時間が80n秒以上であることを特徴とするレーザアニール処理装置。
【請求項2】
前記立ち上がり時間が30n秒以下、前記立ち下がり時間が85n秒以上であることを特徴とする請求項1記載のレーザアニール処理装置。
【請求項3】
前記レーザ光源から出力されたパルスレーザ光を、前記立ち上がり時間と前記立ち下がり時間を有するパルス波形に整形する波形整形部を有することを特徴とする請求項1または2に記載のレーザアニール処理装置。
【請求項4】
前記波形整形部は、前記レーザ光源から出力されたパルスレーザ光を複数のビームに分割するビーム分割手段と、分割された各ビームを遅延させる遅延手段と、分割された各ビームを合成するビーム合成手段とを備えることを特徴とする請求項3に記載のレーザアニール処理装置。
【請求項5】
複数のレーザ光源を有し、各レーザ光から出力されるパルスレーザ光を重ね合わせて前記半導体膜に照射するパルスレーザ光を得ることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のレーザアニール処理装置。
【請求項6】
前記パルスレーザ光が照射される半導体膜が、非単結晶シリコンであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のレーザアニール処理装置。
【請求項7】
前記パルスレーザ光がエキシマレーザであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のレーザアニール処理装置。
【請求項8】
パルス波形においてパルスエネルギー密度で最大高さの10%から最大高さに至るまでの立ち上がり時間が35n秒以下、前記最大高さから最大高さの10%に至るまでの立ち下がり時間が80n秒以上であるパルスレーザ光を得て、該パルスレーザ光を半導体膜に照射しつつ相対的に走査して該半導体膜の表面処理を行うことを特徴とするレーザアニール処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−15445(P2012−15445A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−152988(P2010−152988)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【Fターム(参考)】