説明

レーザー加工装置、及びレーザー加工方法

【課題】ウェハのレーザー加工時において、該ウェハの裏面に貼付されたフィルム越しにレーザー光を照射しても、ウェハの内部に安定した改質層が形成できるようにする。
【解決手段】金属膜の形成されたウェハ13の表面に対向する該ウェハ13の裏面に透明なエキスパンドテープ15を貼付し、該ウェハ13の表面を下向きにして液槽12の所定の位置へ搬送する。その後、液槽12に液体11を充填し、ウェハ13を液体11の液面で支持する。さらに、レーザーヘッド40及びコンデンスレンズ24を含むレーザー照射部を、制御部50の制御によってXYZθ方向へ駆動させ、ウェハ13に対してエキスパンドテープ15越しにレーザー光Pを照射して、該ウェハ13の内部又は表面の改質を行う。ウェハ13の内部又は表面の改質後に液槽12から液体11を排出し、改質層の形成されたウェハ13の領域で分割離間してチップを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー光を使用して半導体ウェハなどのワークを加工するレーザー加工装置及びレーザー加工方法に関するものであり、特に、ワークの裏面側からレーザー光を照射して該ワークの分割予定ラインに改質領域を形成してチップを生成するレーザー加工装置、及びレーザー加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、レーザー光を照射して半導体ウェハ(以下、ウェハ)内に改質層を形成し、その改質層を起点として該ウェハを破断してチップを生成する技術が広く知られている。例えば、特許文献1などにおいて、ウェハの表面にレーザー光を照射して該ウェハ内に改質層を形成し、形成された改質層に沿ってウェハをへき開して切断することによってチップを生成する技術が開示されている。
【0003】
一方、最近では、ウェハの表面が金属膜に覆われたデバイス、特に、ウェハの切断予定ラインに金属膜が形成されたデバイスが多く存在している。このような構成のデバイスの場合は、前記特許文献1に示されるようにウェハの表面からレーザー光を照射して、該ウェハの内部に改質層を形成しようとしても、表面の金属膜によってレーザー光が反射してしまうので、該ウェハの内部にレーザー光が到達しないという不具合が発生する。このような場合はウェハの表面からレーザー光を照射することができないため、ウェハの裏面側からレーザー光を照射しなければならない。ところが、ウェハの裏面側には、通常、後工程において該ウェハにエキスパンド(伸長)を行うためのエキスパンドテープが貼られているため、このエキスパンドテープを介してウェハにレーザー光を照射する必要がある。
【0004】
そこで、エキスパンドテープ越しにウェハにレーザーを照射して、切断の起点となる溶融処理領域をウェハ(基板)の内部に形成する方法が、例えば特許文献2などに開示されている。この技術では、エキスパンドテープの貼られたウェハの裏面を上側にし、該ウェハの表面を下側にしてステージ上に載せるため、ウェハの表面に微小で脆弱な凹凸構造を有する素子の場合は、ウェハの表面に僅かな固体物が接触すると、該ウェハの表面で脆弱な構造を持つ素子を破損させるおそれがある。従って、このような構造のウェハに対しては、ウェハの表面を裏側にしてステージ上に載せる方法を採用することはできない。
【0005】
また、ウェハに対してレーザー光を照射する場合には、ウェハ自体がレーザーパワーによる改質によって部分的に溶融状態になるため、そのレーザーパワーによってウェハが徐々に熱くなる傾向がある。特に、エキスパンドフィルム越し(エキスパンドテープ越し)にウェハにレーザー光を照射する場合は、該エキスパンドフィルムの透過率にも左右されるが、若干のレーザー光がエキスパンドフィルムにも吸収されるため、レーザー光が照射されたエキスパンドフィルムの部分も加熱して軟化するおそれもある。
【0006】
さらに、ウェハ自体がエキスパンドフィルム越しに照射されることに起因してエネルギー損失が発生するため、ウェハ内に確実な改質層領域を形成させるためには比較的強いレーザー光を照射する必要がある。ところが、このような強いレーザー光の照射によって局所的に発生した熱は、ウェハ表面の素子に影響を及ぼすため、素子の表面近傍に打ち込まれたドーパント(不純物)がさらに拡散してしまうので、素子の性能を劣化させる要因となる。そのため、ウェハの改質層で形成された熱が、該ウェハの表面に伝達しないようにすばやく熱を発散させる必要がある。
【0007】
ところが、このような局所的に発生した熱に対しては、ウェハの雰囲気を冷却したとし
ても、改質層からウェハの表面に伝わる局所熱を効率よく排出することはできない。また、ウェハの表面に微小かつ脆弱な素子が形成されている場合は、ウェハの表面をステージで支持することはできないが、仮に、ウェハの表面を冷凍チャックなどで支持したとしても、ウェハの表面とチャックとは面状態で接触しているのではなく、実質的な接触状態は点群の集まりによる点接触の状態である。そのため、ウェハの表面に伝達される熱を効率よく熱伝達によって排出し、且つ、レーザー加工処理中においても、ウェハの表面を一定温度に維持することは極めて難しい。
【0008】
さらに、レーザー加工によってウェハの内部に改質層を形成する場合は、その改質層は、エキスパンドフィルム(エキスパンドテープ)の貼り付けられているウェハの裏面側から遠い、ウェハの表面側に近い部分に集光させるように、レーザー光を照射する必要がある。この場合、ウェハの内部に改質層は形成されるが、一部の照射エネルギーはウェハを通り越して、ウェハを貫通してしまうレーザー光も存在する。そのような場合は、例えば、ウェハの表面に微小かつ脆弱な素子が形成されている場合はウェハの表面を支持することはできないが、仮に、ウェハの表面を何らかのチャックで支持したとしても、そのチャックの部分にも部分的にレーザー光が照射されてしまう。従って、そのレーザー光は、その支持体(チャック)の表面で反射・散乱して、ウェハ表面の他の部分にも照射してしまうことがある。このような場合は、ウェハの切断予定ラインとは異なる部分にレーザー焼けが生じてしまうので、ウェハ表面の他の部分を極度に劣化させるおそれがある。このようにしてレーザー光が反射して、ウェハの別の部分が反射光で照射されて改質する現象を近接効果というが、この近接効果によるウェハ表面の劣化の低減も考慮しなければならない。
【0009】
また、このような近接効果によるレーザー光の反射に起因する弊害は、ウェハの裏面側から上記フィルム越しにレーザー光を照射し、ウェハの表面付近に改質層を形成するプロセスだけではなく、ウェハの表面からレーザー光を照射する従来のプロセスであっても、ウェハを支持するステージと該ウェハの裏面との間でレーザー光が散乱して、該ウェハの一部にレーザー焼けが発生する。これによってウェハの裏面に欠け(破片)が生じ、ウェハの微細な破片がウェハの支持台(ステージ)上にごみとして残るおそれがある。また、ウェハを支持する支持台(ステージ)が、圧縮空気などで浮かせる構成のものであっても、ウェハ自身の撓みを考慮すると、ウェハを一様な平面状態に支持することが難しいため、ウェハに安定したレーザー加工を施すことは困難である。
【0010】
尚、関連技術として、デバイスの形成領域に触れることなくワークを保持し、該ワークの裏面側から分割予定ラインに沿ってレーザー光を照射して、チップを生成する技術が開示されている(例えば、特許文献3、4参照)。この技術によれば、デバイスが形成されているウェハの裏面を上側にして、該ウェハの裏面に粘着テープを貼付し、この粘着テープの表面側からレーザー光を照射して、ウェハの切断予定ラインを改質することにより、ウェハから容易にチップを生成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2002−192370号公報
【特許文献2】特開2006−148175号公報
【特許文献3】特開2010−29927号公報
【特許文献4】特開2010−29930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述したように、前記特許文献1の技術の如く、ウェハの表面からレーザー光を照射する場合は、該ウェハの表面に金属膜が形成されているデバイスでは、レーザー光を適正に照射して該ウェハの内部に改質層を形成することができない。また、特許文献2の技術のように、ウェハの裏面に貼られた上記フィルム越しにレーザー光を照射する場合は、レーザー光のエネルギー損失、前記ウェハの局部加熱、該フィルムの加熱軟化、ウェハの加熱による不純物の再拡散、ウェハの撓み、及び近接効果などによって、ウェハに安定したレーザー加工を施して改質層を形成することができない。尚、特許文献3、4の技術においても、前記フィルム越しにウェハの裏面からレーザー光を照射しているので、特許文献2の技術と同様に、ウェハに安定した改質層を形成することができない。
【0013】
そこで、ウェハ(基板)のレーザー加工時において、該ウェハの水準(水平状態)を精度よく維持し、且つ、ウェハの表面温度を一定にすると共に、近接効果が無いようにすることにより、該ウェハの裏面に貼付された前記フィルム越しにレーザー光を照射しても、ウェハの内部又は表面に安定した改質層を形成することができるようにするために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、レーザー光によって基板をチップに分割するための基板改質を行うレーザー加工装置であって、液体の液面で支持された前記基板と、前記基板の裏面に貼付された透明なエキスパンドフィルムと、前記エキスパンドフィルムを介して前記基板に前記レーザー光を照射して該基板の内部又は表面の改質を行うレーザー光照射手段とを備えることを特徴とするレーザー加工装置を提供する。
【0015】
この構成によれば、基板(ウェハ)の裏面側にエキスパンドフィルム(エキスパンドテープ)を貼付して該基板の裏面側を上向きにし、該基板の表面側を下向きにして液体の液面で支持している。そして、レーザー光照射手段によってエキスパンドフィルム越しに基板にレーザー光を照射し、該基板の内部又は表面に改質層を形成している。これによって、基板を水平状態に維持したまま該基板にレーザー光を照射することができるので、基板に対して高精度に改質層を形成してチップを生成することができる。
【0016】
また、レーザー光は基板の内部または表面に集光されて基板が改質されるが、基板の表面が液体と接することによって、基板が空気に接する場合に比べて当該屈折率の差は小さくなる。例えば、シリコン基板の表面には、シリコン酸化膜が形成されるが、シリコン酸化膜の屈折率は1.45程度である。
【0017】
それに対して、空気の屈折率は1.0であるため、基板が通常の空気に接する場合、基板と空気の屈折率の違いや基板表面のラフネス形状によって散乱が起こり、基板表面付近で大きくレーザー光のエネルギーが損失する。その結果、前記表面付近で発熱して、素子の品質・性能を低下させる可能性がある。
【0018】
本発明では、基板表面に接する液体が例えば水であれば、その屈折率は1.3程度であるため、液体と基板表面との屈折率の差は大幅に小さくなる。また、表面のラフネス形状についても、該形状の周囲を液体がくまなく回り込んで当該形状を埋め込むため、基板表面のラフネス形状による散乱の影響を受けにくくする効果がある。
【0019】
結果的に、液体の表面で基板を支持すれば前記屈折率の差を小さくし、基板表面のラフネス形状による影響をなくしてレーザー光の散乱を大幅に低減するため、基板表面と液体の界面付近で生じるレーザー光のエネルギー損失を大幅に低下させる。その結果、基板表面での発熱を抑えて素子表面を保護するとともに、液体内に余分なレーザー光を効率よく導いて、そのエネルギーを液中にて効果的に減衰させることが可能になる。
【0020】
請求項2記載の発明は、レーザー光によって基板をチップに分割するための基板改質を行うレーザー加工装置であって、液体が充填された液槽と、前記液槽に充填された液体の液面で支持された前記基板と、前記基板の裏面に貼付された透明なエキスパンドフィルムと、前記エキスパンドフィルムに前記レーザー光を照射して前記基板の内部又は表面の改質を行うレーザー光照射手段とを備えることを特徴とするレーザー加工装置を提供する。
【0021】
この構成によれば、液槽には液体が充填されていて、エキスパンドフィルムを貼付した基板の裏面側を上向きし、該基板の表面側を下向きにして前記液体の液面で支持している。そして、レーザー光照射手段によってエキスパンドフィルム越しに基板にレーザー光を照射し、該基板の内部又は表面に改質層を形成している。これにより、基板の表面の脆弱な構造を破壊することなく、基板を液体の液面で支持することができ、且つ、自重で大きく撓む程度の大きい基板であっても、液槽に充填された液体の液面で該基板を水平状態に支持することができる。従って、水平状態の基板に対して適正にレーザー光を照射することができるので、該基板に対して高精度に改質層を形成して、チップを生成することが可能となる。
【0022】
請求項3記載の発明においては、前記レーザー光照射手段は、金属膜の形成された基板表面に対向する基板裏面を上側にして、該基板の裏面に貼付された前記エキスパンドフィルムの表面側に前記レーザー光を照射することを特徴とする請求項1又は2記載のレーザー加工装置を提供する。
【0023】
この構成によれば、金属膜が形成されている基板の表面側を下向きにして、液体の液面に基板を支持させている。そして、エキスパンドフィルムが貼付されている基板の裏面側を上側にして、レーザー光照射手段によってエキスパンドフィルム越しに基板にレーザー光を照射している。これによって、基板の表面の脆弱な構造を破壊することなく、液体の液面で基板を支持することができ、且つ、自重で大きく撓む程度の大きい基板であっても、液槽に充填された液体にて基板を水平状態に支持することができる。
【0024】
また、レーザー光の照射による基板の表面付近の過度な加熱は、液槽に充填された液体の液面に基板が接触することにより、基板全面が均一に液体に浸されるので、基板の熱を効率的に冷却して該基板の表面温度を一定に保持することができる。さらに、液体の熱容量は大きいため、基板を冷却している液体が急激に温度上昇することはなく、その結果、基板に対して安定した温度環境を維持することができる。
【0025】
請求項4記載の発明では、前記液槽は、前記レーザー光を透過して吸収する性質を有することを特徴とする請求項2又は3記載のレーザー加工装置を提供する。
【0026】
この構成によれば、液槽はレーザー光を透過して吸収するので、レーザー光の透過や乱反射による近接効果を防止することができる。
【0027】
請求項5記載の発明は、前記液体の屈折率が、前記基板の屈折率とほぼ同等であることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載のレーザー加工装置を提供する。
【0028】
この構成によれば、基板の屈折率と液体の屈折率を同等に近づけることで、さらに基板の屈折率と液体界面の屈折率との差が可及的になくなり、当該界面で生じる散乱等によるレーザー光のエネルギー損失が大幅に低下する。
【0029】
請求項6記載の発明は、前記レーザー光照射手段がパルス的にレーザー光を照射することを特徴とする請求項1,2,3又は4記載のレーザー加工装置を提供する。
【0030】
この構成によれば、レーザー光がパルス的に照射されるので、該レーザー光の照射により液体が大きく発熱するおそれがなく、液体の温度が極力安定かつ一様な温度分布を有するように調整できる。
【0031】
請求項7記載の発明は、レーザー光によって基板をチップに分割するための基板改質を行うレーザー加工方法であって、液体の液面で前記基板を支持させる第1の工程と、前記液面に支持された前記基板に対してレーザー光を照射し、該基板の内部又は表面の改質を行う第2の工程とを含むことを特徴とするレーザー加工方法を提供する。
【0032】
この方法によれば、液体の液面で基板を支持させた後、該基板に対してレーザー光を照射してその基板の内部又は表面の改質を行っているので、大型の基板であっても該基板が自重で撓むこともなく、基板の水平状態を精度よく維持することができる。さらに、レーザー光の照射に伴って基板の表面に蓄積される熱量を液体へ効果的に排出することにより、基板の表面温度を一定に保つことができる。
【0033】
請求項8記載の発明は、レーザー光によって基板をチップに分割するための基板改質を行うレーザー加工方法であって、透明なエキスパンドフィルムが貼付された前記基板を液体の液面で支持させる第1の工程と、前記エキスパンドフィルムを介して、前記液面に支持された前記基板に対して前記レーザー光を照射し、該基板の内部又は表面の改質を行う第2の工程とを含むことを特徴とするレーザー加工方法を提供する。
【0034】
この方法によれば、透明なエキスパンドフィルムが貼付された基板を液体の液面で支持した後、該エキスパンドフィルムを介して、液体の液面で支持された基板に対してレーザー光を照射して基板の内部又は表面の改質を行っている。これによって、基板の表面が微小かつ脆弱な構造を有していても、該基板の表面が液体の液面で支持されているので、基板の表面を傷付けることなく、安定した支持状態でレーザー加工を行うことができる。
【0035】
また、エキスパンドフィルムと基板が自重で撓むことにより、レーザー光の照射面の水準がとれずに、ミスアライメントを起こすような現象を防止することもできる。
【0036】
請求項9記載の発明は、レーザー光によって基板をチップに分割するための基板改質を行うレーザー加工方法であって、金属膜の形成された基板表面に対向する基板裏面に対して透明なエキスパンドフィルムを貼付する第1の工程と、前記エキスパンドフィルムの貼付された前記基板を液槽へ搬送する第2の工程と、前記液槽に液体を充填し、前記エキスパンドフィルムの貼付された前記基板を、該液体の液面で支持する第3の工程と、前記液面で支持された前記基板に対して、前記エキスパンドフィルムを介して前記レーザー光を照射し、該基板の内部又は表面の改質を行う第4の工程と、前記基板の内部又は表面に対して改質層が形成された後、該基板を支持していた前記液体を前記液槽から排出する第5の工程と、前記液槽から前記液体が排出された後、前記エキスパンドフィルムが貼付された状態の前記基板を、該液槽から外部へ搬送する第6の工程と、前記エキスパンドフィルムが貼付された前記基板に対して、前記改質層の形成された領域で分割離間してチップを生成する第7の工程とを含むことを特徴とするレーザー加工方法を提供する。
【0037】
この方法によれば、基板の裏面にエキスパンドフィルムを貼付して該基板を液槽へ搬送した後、該液槽に液体を充填してエキスパンドフィルムの貼付された基板裏面を上側にして液体の液面で該基板を支持している。そして、液体の液面に支持された基板に対して、エキスパンドフィルムを介してレーザー光を照射し、基板の内部又は表面に対して改質を行っている。さらに、基板の内部又は表面に対して改質層が形成された後に、液槽から液体を排出し、該基板を液槽から外部へ搬送して、改質層の形成された基板の領域で分割離間してチップを生成している。
【0038】
請求項10記載の発明は、前記金属膜の形成された基板表面に対向する基板裏面を上側にして、該基板裏面に貼付された前記エキスパンドフィルムの表面側に前記レーザー光を照射することにより、前記基板の改質を行うことを特徴とする請求項9記載のレーザー加工方法を提供する。
【0039】
この方法によれば、金属膜が形成されている基板の表面側を下向きにして、液体の液面で基板を支持している。そして、エキスパンドフィルムが貼付されている基板の裏面側を上側にして、レーザー光照射手段によってエキスパンドフィルム越しに基板にレーザー光を照射している。これによって、基板の表面の脆弱な構造を破壊することなく、液体の液面で基板を支持することができ、且つ、自重で大きく撓む程度の大きい基板であっても、液槽に充填された液体の表面で基板を水平状態に支持することができる。
【0040】
また、レーザー光の照射による基板の表面付近の過度な加熱は、液槽に充填された液体の液面に基板が接触することにより、基板全面が均一に液体に浸されるので、基板の熱を効率的に冷却して該基板の表面温度を一定に保持することができる。さらに、液体の熱容量は大きいため、基板を冷却している液体が急激に温度上昇することがないので、基板に対して安定した温度環境を維持することができる。
【0041】
請求項11記載の発明は、前記液体の屈折率が前記基板の屈折率とほぼ同等であることを特徴とする請求項7、8、9又は10記載のレーザー加工方法を提供する。
【0042】
この方法によれば、該基板の屈折率と液体の屈折率を同等に近づけることで、さらに基板と液体界面の屈折率の差が可及的になくなり、当該界面で生じるレーザー光の散乱等によるエネルギー損失が大幅に低下する。
請求項12記載の発明は、前記レーザー光がパルス的に照射されることを特徴とする請求項7、8、9又は10記載のレーザー加工方法を提供する。
【0043】
この方法によれば、レーザー光がパルス的に照射されるので、レーザー光の照射により液体が大きく発熱するおそれがなく、液体の温度が極力安定かつ一様な温度分布を有するように調整することができる。
【発明の効果】
【0044】
請求項1記載の発明は、基板を液体の液面で支持してエキスパンドフィルム越しに基板にレーザー光を照射しているので、該基板を水平状態に維持したまま、基板に対して高精度な改質層を形成してチップを生成することができる。
【0045】
請求項2記載の発明は、液槽に充填された液体の表面で基板を水平状態に支持しているので、基板に撓みが生じることなくレーザー光を照射することができる。そのため、該基板に対して高精度に改質層を形成してチップを生成することが可能となる。
【0046】
請求項3記載の発明は、金属膜が形成された基板表面を下向きにして液体の液面で支持し、エキスパンドフィルムが貼付されている基板裏面側からレーザー光を照射しているので、請求項1又は2記載の発明の効果に加えて、基板表面の脆弱な構造を破壊することなく液体の液面で基板を支持することができ、且つ、自重で大きく撓む程度の大きい基板であっても、液槽に充填された液体の液面にて基板を水平状態に支持することができる。
【0047】
また、レーザー光の照射による基板の表面付近の過度な加熱は、液槽に充填された液体の液面に基板が接触することにより、基板全面が均一に液体に浸されるので、基板の熱を効率的に冷却して該基板の表面温度を一定に保持することができる。さらに、液体の熱容量は大きいため、基板を冷却している液体が急激に温度上昇することがないので、基板に対して安定した温度環境を維持することができる。
【0048】
請求項4記載の発明では、液槽はレーザー光を透過して吸収するので、請求項2又は3記載の発明の効果に加えて、レーザー光の透過や乱反射による近接効果を適正に防止することができる。
【0049】
請求項5記載の発明は、液体の界面で生じる散乱等によるエネルギー損失が大幅に低下するので、請求項1、2、3又は4記載の発明の効果に加えて、基板表面から液体中へ一部のレーザー光が抜ける際に、その界面付近でレーザー光のエネルギーが局部的に使用されることで、該基板表面が局部的に発熱することを無くすことができる。
【0050】
請求項6記載の発明は、液体の温度が極力安定し、かつ一様な温度分布になるように調整できるので、請求項1、2、3又は4記載の発明の効果に加えて、照射回数を重ねて徐々に熱を帯びて基板に温度差が生ずる恐れがある場合でも、基板の形状が温度差によって変形することを抑制することができる。
【0051】
請求項7記載の発明は、液体の液面で基板を支持して該基板にレーザー光を照射しているので、大きな基板であっても該基板が自重で撓むこともなく、水平状態を精度よく維持することができる。さらに、レーザー光の照射に伴って、基板の表面に蓄積される熱量を液体へ効果的に排出することにより、基板の表面温度を一定に保つことができる。
【0052】
請求項8記載の発明は、透明なエキスパンドフィルムを貼付した基板を液体の液面で支持して、該エキスパンドフィルム越しにレーザー光を照射しているので、基板の表面が微小かつ脆弱な構造を有していても、該基板の表面を傷付けることなく、安定した支持状態でレーザー加工を行うことができる。また、エキスパンドフィルムと基板が自重で撓むことにより、レーザー光の照射面の水準がとれずに、ミスアライメントを起こすような現象を防止することもできる。
【0053】
請求項9記載の発明は、基板を液槽の液面に浮かせながら一連のレーザー加工工程を行うことにより、レーザー光による基板の改質からチップ処理化までを流れ作業で行うことができるので、基板の表面を傷付けることなく安定した状態でレーザー加工を行うことが可能となる。
【0054】
請求項10記載の発明は、金属膜が形成されている基板の表面側を下向きにして液体の液面で支持し、エキスパンドフィルムが貼付されている基板の裏面側を上側にしてエキスパンドフィルム越しに基板にレーザー光を照射しているので、請求項9記載の発明の効果に加えて、基板の表面の脆弱な構造を破壊することなく、液体の液面で基板を支持することができ、且つ、自重で大きく撓む程度の大きい基板であっても、液槽に充填された液体の表面にて基板を水平状態に支持することができる。
【0055】
また、レーザー光の照射による基板の表面付近の過度な加熱は、液槽に充填された液体の液面に基板が接触することにより、基板全面が均一に液体に浸されるので、基板の熱を効率的に冷却して該基板の表面温度を一定に保持することができる。さらに、液体の熱容量は大きいため、基板を冷却している液体が急激に温度上昇することはないので、基板に対して安定した温度環境を維持することができる。
【0056】
請求項11記載の発明は、液体の界面で生じる散乱等によるレーザー光のエネルギー損失を大幅に低下させることができるので、請求項7、8、9又は10記載の発明の効果に加えて、基板表面から液体へ一部のレーザー光が抜ける際に、その界面付近でレーザー光のエネルギーが局部的に使用されて、該表面が局部的に発熱することを無くすことができる。
【0057】
請求項12記載の発明は、液体に温度が極力安定かつ一様な温度分布になるように調整できるので、請求項7、8、9又は10記載の発明の効果に加えて、照射回数を重ねて徐々に熱を帯びて基板に温度差が生ずる恐れがある場合でも、基板の形状が温度差によって変形することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明に適用されるレーザー加工装置の構成図。
【図2】図1に示す駆動手段の細部を示す概念図。
【図3】図2に示す駆動手段の平面図。
【図4】本発明のレーザー加工装置によるレーザー加工工程の流れを示す工程図。
【図5】エキスパンド装置によるウェハのチップ化処理を示す工程図。
【発明を実施するための形態】
【0059】
本発明は、ウェハのレーザー加工時において、該ウェハの水準(水平状態)を精度よく維持し、且つ、ウェハの表面温度を一定にすると共に、近接効果が無いようにすることにより、該ウェハの裏面に貼付されたエキスパンドフィルム越しにレーザー光を照射しても、ウェハの内部に安定した改質層を形成することができるようにするという目的を達成するために、レーザー光によって基板をチップに分割するための基板改質を行うレーザー加工装置であって、液体の液面で支持された前記基板と、前記基板の裏面に貼付された透明なエキスパンドフィルムと、前記エキスパンドフィルムを介して前記基板に前記レーザー光を照射して該基板の内部又は表面に改質を行うレーザー光照射手段とを備えるレーザー加工装置を構成したことによって実現した。以下、本発明に係るレーザー加工装置の好適な実施例を図1乃至図5に従って詳細に説明する。
【実施例1】
【0060】
先ず、本発明に適用されるレーザー加工装置の構成について説明する。図1は、本発明に適用されるレーザー加工装置の構成図である。図1に示すように、レーザー加工装置1は、主として、ウェハ載置部10、レーザー光学部20と観察光学部30とからなるレーザーヘッド40及び制御部50などによって構成されている。
【0061】
ウェハ載置部10は、液体11を貯えた液槽12と、裏面を上側にして表面側を液体11の液面で支持したウェハ13と、該ウェハ13の裏面とダイシングフレーム14、14の表面とに一体的に貼り付けられたエキスパンドフィルム(ダイシングテープ)15とによって構成されている。このような構成において、ウェハ13は液体11の液面に浮いているため、液槽12を動かすと液体11が波打ってウェハ13の水平状態が不安定になるため、液槽12を含めたウェハ載置部10は固定化されている。従って、レーザーヘッド40やコンデンスレンズ(集光レンズ)24などの光学系を有するレーザー光照射部が移動する構成となっている。
【0062】
本実施例では、前記液槽12に充填された液体11の屈折率は、ウェハ13の屈折率とほぼ同等に調整でき、又 前記レーザー光の照射手段はレーザー光をパルス的に照射するものを採択できる。
【0063】
尚、別の実施例では、液槽12において、液槽12を動かすと液体11が波打って、水平状態が不安定になることに対しては、液槽12の液体11を非常に薄くし(例えば液体11の厚みを1mm以下にするなど)、そこへウェハ13を載置してウェハ13の周囲と液槽12とで封止するようにしても良い。ウェハ13のずれはウェハ13の周囲で固定すれば、液槽12を移動してもウェハ13が横方向にずれることはない。
【0064】
また、液体11を薄くする場合、液体11と液槽12表面である固体との間に働く界面張力の影響で、液体11自体はあまり波打たなくなる。例えば、液槽12表面を荒らしておくと、液槽12表面に対する液体11の濡れ性、すなわち界面張力は上昇し、液槽12の液体11は液槽12表面にへばりつくようになる。こうした状態で液槽12を移動しても、液体11は固体である液槽12に伴って移動し、液面が大きくふれることはない。よって、液槽12を動かす加速度の大きさにもよるが、液槽12を急激に移動させないのであれば、液体11の波打ちを抑制しつつ液槽12自体を移動させることも可能である。
【0065】
また、ウェハ13は少しでも液体11が存在すれば、液体11は気体と違って非圧縮性の流体であるため、液体11の液面全面において均一に静水圧が作用する。よって、大きいサイズのウェハ13であっても、ウェハ13面内を一様な応力でウェハ13を支持することが可能となる。
【0066】
また、液体11の温度は可能な限りウェハ13の温度と同じか、せいぜい室温程度に保持しておくことが望ましい。ウェハ13内部にレーザー光を照射するが、レーザー光照射は、パルス的に照射できるため、ウェハ13が大きく発熱する虞はないが、照射回数を重ねると徐々に熱を帯び、前記液面の温度に関し温度差が生ずる場合、ウェハ13の形状が温度差によって変形することが考えられる。こうしたことを防ぐために、前記液面の温度分布についてはあまり温度勾配を形成することなく、安定かつ一様な温度分布になるように液体11の温度を調整するのが良い。
【0067】
尚、ダイシングフレーム14、14は、液槽12の縁部に精度よく所定の位置に、位置決めされて固定されている。または、液槽12の縁部ではなく別の箇所に固定されていてもよいが、ダイシングフレーム14、14は、液体11に浮かせることなく固定するのがよい。これにより、ウェハ13のXY方向は、固定されたダイシングフレーム14、14を基に、ダイシングフィルム14,14を介してウェハ13の位置が決まる。
【0068】
また、前記液面の多少の上下動において、ウェハ13も追従して上下動することもあるが、これはダイシングフレーム14、14が固定されており、ダイシングフレーム14、14とウェハ13をつなぐエキスパンドフィルム15がダンパーの働きをして、上下動や揺れを抑えるように働く。
【0069】
また、液面の水位が多少異なる場合においても、固定されたダイシングフレーム14、14を基準として、ウェハ13面との間にある微小な高低差に対して、エキスパンドフィルム15が追従して位置決めされる。このことにより、安定してXY方向を位置決めするとともに上下方向であるZ方向に対して、レーザー照射するウェハ13面を液面に追従しながら静置させることが可能となる。
【0070】
尚、液槽12の中に充填された液体11の液面は、ダイシングフレーム14、14まで浮かせてしまうと、基準となる面をとれなくなり、安定したレーザー加工を行うことはできない。よって、固定されたダイシングフレーム14、14と、液体11の液面で支持されたウェハ13と、前記ダイシングフレーム14、14とウェハ12とをつなぐフレキシブルなエキスパンドフィルム15の構成が重要になる。
【0071】
すなわち、制御部50からの制御信号によって、レーザーヘッド40やコンデンスレンズ24などを含む光学系のレーザー光照射部が、XYZθ方向へ精密に移動するように構成されている。これによって、コンデンスレンズ24からウェハ13へ照射されるレーザー光PがXYZθ方向へ精密に移動するので、ウェハ13の改質予定ラインに沿ってレーザー光Pを走査させることができる。尚、ウェハ13を液体11の液面で支持することにより、該ウェハ13が自重によって撓むことを防止することができる。特に、大型のウェハ13の場合は自重による撓み防止効果が一層顕著となる。
【0072】
また、ウェハ13の裏面側には、へき開してチップ化されたウェハ13をエキスパンド(伸長)するための透明なエキスパンドテープ15が貼付されている。すなわち、ウェハ13は、一方の面(裏面)側に粘着材を有するエキスパンドテープ15が貼付され、このエキスパンドテープ15を介してダイシングフレーム14と一体化された状態で裏面が上側に向けられ、該ウェハ13の表面側が液槽12に貯えられた液体11の液面に浮上する状態で載置されている。従って、ウェハ13の裏面の上部に位置するレーザー光照射部のコンデンスレンズ24から照射されたレーザー光Pは、透明なエキスパンドテープ15を透過することによってウェハ13の内部に改質層を形成する。
【0073】
また、レーザー光学部20は、レーザー発振器21、コリメートレンズ22、ハーフミラー23、コンデンスレンズ(集光レンズ)24、及びレーザー光Pをウェハ13に対して平行に微小移動させる駆動手段25などによって構成されている。従って、レーザー発振器21で発振されたレーザー光線L(図2参照)は、コリメートレンズ22、ハーフミラー23、コンデンスレンズ24などの光学系を経て、レーザー光Pとしてウェハ13の内部に集光される。このとき、レーザー光Pの集光点のZ方向位置は、後述するZ微動手段27(図2参照)によるコンデンスレンズ24のZ方向微動によって調整される。
【0074】
なお、レーザー光Pの条件としては、光源が半導体レーザー励起Nd:イットリウム、アルミニウム、ガーネットを用いた固体レーザーであるYAGレーザー、波長が1064nm、レーザー光スポット断面積が3.14×10-8cm2、発振形態がQスイッチパルス、繰り返し周波数が100kHz、パルス幅が30ns、出力パワーが20μJ/パルス、レーザー光品質がTEM00(シングルモード)、及び偏光特性が直線偏光である。また、コンデンスレンズ24の条件は、倍率が50倍、分解能や焦点深度や像の明るさを表わすN.A.(Numerical Aperture:開口数)が0.55、レーザー光波長に対する透過率が60パーセントである。
【0075】
尚、別の実施例では、液槽12において、該液槽12を動かすと液体11が波打って、水平状態が不安定になるが、これに対しては、液槽12の液体11を非常に薄くし(例えば液体11の厚みを1mm以下にするなど)、そこへウェハ13を載置しウェハ13の周囲と液槽12とで封止するようにしても良い。ウェハ13のずれは、ウェハ13周囲で固定すれば、液槽12を移動しても、ウェハ13が横方向にずれることはない。
【0076】
また、液体11を薄くする場合、液体11と液槽12表面である個体の間に働く界面張力の影響で、あまり液体11自体は波打たなくなる。例えば、液槽12表面を荒らしておくと、液槽12表面に対する液体11の濡れ性、すなわち界面張力は上昇し、液槽12内の液体11は、液槽12表面にへばりつくようになる。こうした状態で液槽12を移動しても、液体11は固体である液槽12に伴って移動し、液体11の液面が大きくふれることはない。よって、液槽12を動かす加速度にもよるが、急激に移動させないのであれば、液槽12自体を移動することも可能である。
【0077】
また、ウェハ13は少しでも液体が存在すれば、液体11は気体と違って非圧縮性の流体であるため、その液面全面において均一に静水圧が作用し、大きいサイズのウェハ13であっても、ウェハ13面内を一様な応力でウェハ13を支持することが可能となる。
【0078】
また、液体11の温度は、できる限りウェハ13の温度と同じか、せいぜい室温程度に保持しておくことが望ましい。ウェハ13内部にレーザー光を照射するが、レーザー光照射は、パルス的に照射することにより、ウェハ13が大きく発熱するおそれはないが、照射回数を重ねると徐々に熱を帯び、前記液面の温度分布において温度差が発生する場合、ウェハ13の形状が温度差によって変形することが考えられる。こうしたことを防ぐために、あまり温度勾配を形成することなく、安定かつ一様な温度分布になるように液体11の温度を調整するのが良い。
【0079】
観察光学部30は、観察用光源31、コリメートレンズ32、ハーフミラー33、コンデンスレンズ(集光レンズ)34、観察手段としてのCCDカメラ35、画像処理部38、及びテレビモニタ36などによって構成されている。
【0080】
この観察光学部30では、観察用光源31から出射された照明光がコリメートレンズ32、ハーフミラー33、コンデンスレンズ24などの光学系を経てウェハ13の表面に照射される。そして、このウェハ13の表面からの反射光は、コンデンスレンズ24、ハーフミラー23及び33、コンデンスレンズ34を経由して、観察手段としてのCCDカメラ35に入射し、ウェハ13の表面画像が撮像される。
【0081】
そして、撮像された撮像データは画像処理部38に入力され、ウェハ13のアライメントに用いられると共に、制御部50を経由してテレビモニタ36に写し出される。ここで、制御部50は、CPU、メモリ、及び入出力回路部等からなり、レーザー加工装置1の各部動作の制御を行う。
【0082】
尚、レーザー加工装置1は、図示しないフレームウェハ搬送機構、操作板及び表示灯等を構成している。ここで、フレームウェハ搬送機構は、詳細は後述するが、エキスパンドテープ15に貼付されたウェハ13とダイシングフレーム14とを一体的に上下移動させて、液槽12の所定の場所へ位置決めして搬送を行う。
【0083】
このとき、操作板には、ウェハ載置部10の各部を操作するスイッチ類や表示装置が取り付けられている。また、表示灯は、レーザー加工装置1の稼動中、稼動終了時、及び非常停止時などの稼動状況などをタイムリーに表示する。
【0084】
図2は、図1に示す駆動手段25の細部を示す概念図である。図2に示すように、駆動手段25は、コンデンスレンズ24を保持するレンズフレーム26、該レンズフレーム26の上面に取り付けられて該レンズフレーム26を図のZ方向に微小移動させるZ微動手段27、該Z微動手段27を保持する保持フレーム28、及び該保持フレーム28をウェハ13と平行に微小移動させるリニア微動手段であるPZ1、PZ2などによって構成されている。尚、ウェハ13は液槽12に貯えられた液体11の液面で支持されている。これによって、コンデンスレンズ24などの光学系を含むレーザー照射部がウェハ13上をスキャンして該ウェハ13の内面を改質する。
【0085】
また、図2に示すZ微動手段27には、電圧印加によって伸縮する圧電素子(図示せず)が用いられている。この圧電素子の伸縮によってコンデンスレンズ24がZ方向に微小送りされて、レーザー光Pの集光点のZ方向位置が精密に位置決めされるようになっている。
【0086】
図2に示す保持フレーム28は、図示しない4本のピアノ線からなる2対の平行バネで支持され、XY方向には移動自在であって、Z方向の移動は拘束されている。なお、保持フレーム28の支持方法は、上記の方法に限定されることなく、例えば、複数のボールによって保持フレーム28の上下を挟み込み、Z方向の移動を拘束すると共にXY方向に移動自在に支持するようにしてもよい。
【0087】
また、図2に示すリニア微動手段PZ1、PZ2には、Z微動手段27と同じく圧電素子(図示せず)が用いられており、一端がレーザーヘッド40(図1参照)のケース本体に固定され、他端は保持フレーム28の側面に当接している。
【0088】
図3は、図2に示す駆動手段25の平面図である。図3に示すように、リニア微動手段PZ1、PZ2はX方向に2個配置されており、それぞれの一端がレーザーヘッド40(図1参照)のケース本体に固定され、他端が保持フレーム28の側面に当接している。したがって、リニア微動手段PZ1、PZ2への印加電圧を制御することによってコンデンスレンズ24をX方向に往復微動送りすることができ、レーザー光P(図2参照)をX方向に往復微動送りさせたり振動させたりすることができる。
【0089】
なお、リニア微動手段PZ1、PZ2のうちの何れか一方に圧電素子を用い、他方をバネ材などの弾性部材にしてもよい。また、図3に示すように、リニア微動手段PZ1、PZ2を2個にするのではなく、円周上に3個以上のリニア微動手段を配置するようにしてもよい。この場合は、円周上の均等な位置にリニア微動手段を配置することが望ましい。
【0090】
上述のような構成により、図1及び図2に示すように、レーザー発振器21からレーザー光線Lが出射され、このレーザー光線Lはコリメートレンズ22、ハーフミラー23、コンデンスレンズ24等の光学系を経由してウェハ13の内部にレーザー光Pとして照射される。このとき、照射されるレーザー光Pの集光点のZ方向位置は、制御部50からの制御信号(XYZθ信号)による光学系(レーザー光照射部)のZ方向位置調整、及びZ微動手段27によるコンデンスレンズ24の位置制御によって、ウェハ13の内部の所定位置に正確に設定される。
【0091】
この状態で制御部50からの制御信号(XYZθ信号)がウェハ13のダイシング方向であるX方向に加工送りされると共に、レーザーヘッド40に設けられたリニア微動手段PZ1、PZ2によってコンデンスレンズ24が往復微小移動される。そして、レーザー光Pがウェハ13と平行にX方向、又は任意のXY方向に振動され、レーザー光Pの集光点がウェハ13の内部で微小振動しながら改質領域を形成してゆく。これによって、ウェハ13の切断予定ラインに沿って、該ウェハ13の内部に多光子吸収による改質領域が1ライン形成される。
【0092】
尚、必要に応じて、Z微動手段27によるZ方向の振動を加えてもよい。また、レーザー光Pを加工方向であるX方向にゆっくり往復微動送りさせながら光学系(レーザー光照射部)をX方向に送ることにより、レーザー光Pをミシン目のように行きつ戻りつの状態で繰返し照射するようにしてもよい。このようにして切断予定ラインに沿って改質領域が1ライン形成されると、順次、レーザー光Pが移動して、次のラインも同様に改質領域が形成される。
【0093】
ここで、ウェハ13の裏面とダイシングフレーム14の表面とに一体的に貼付されるエキスパンドテープ15などのエキスパンド用の透明フィルムは、ポリオレフィンシートなどを使用することができる。また、ウェハ13を浮かせる液体11としては、カーギル製の標準屈折液などを使用することができる。このカーギル製の標準屈折液の屈折率は、僅かに揮発性のある無色のプロロカーボン系液体である「シリーズAAA」の1.300〜1.395から、沃化エチレン系の揮発性液体である「シリーズM」の1.705〜1.800まで数種類のものがあり、ウェハ13の表面の材料に応じて屈折率差をできる限り小さくする液体11を使用することが望ましい。すなわち、ウェハ13の屈折率と液体11の屈折率とが差がなく略同等であれば、レーザー光Pはそのまま液体11の界面で反射することなく液体11内に導入される。
【0094】
参考までに、カーギル製の標準屈折液の参考資料としては次のようなものがある。HYPERLINK "http://www.moritex.co.jp/products/func/list#refraction.php?c#code=5-2-1-1" http://www.moritex.co.jp/products/func/list#refraction.php?c#code=5-2-1-1
HYPERLINK "http://www.kyoto-kem.com/ja/products/stdsol/ref#sol.html" http://www.kyoto-kem.com/ja/products/stdsol/ref#sol.html。
【0095】
また、ウェハ13を支持する液体11は、できる限りレーザー光Pを吸収する液体11を使用することが望ましい。例えば、水であれば赤外域の光を特に吸収する性質を持ち、赤外光であれば3300cm-1又は1520cm-1付近に吸収帯を持つ。このように、レーザー光Pの使用される波長域によって、そのレーザー光Pを吸収するような液体11を使用すると、ウェハ13への余分な反射はなくなるので、反射光によるレーザー焼けは起こり難くなる。
【0096】
次に、ウェハ13をレーザー加工する一連の工程について説明する。図4は、本発明のレーザー加工装置によるレーザー加工工程の流れを示す工程図である。先ず、図4(a)において、ウェハ13の裏面とダイシングフレーム14、14の表面とに一体的に貼付されたエキスパンドテープ(ダイシングテープ)15の表面を、フレームウェハ搬送機構61の吸着手段61a、61b、61cによって吸着し、図1に示すウェハ載置部10における液槽12の所定位置へ搬送する。このとき、ウェハ13の裏面とダイシングフレーム14、14の表面は、共に吸着手段61a、61b、61cによって真空吸着されて水平状態(水準)が保たれている。
【0097】
次に、図4(b)において、ウェハ13とダイシングフレーム14、14が吸着手段61a、61b、61cによって真空吸着されて、液槽12の所定位置へ載置された状態で、液体注入口12aから液槽12の内部へ液体11を注入する。
【0098】
次に、図4(c)において、液槽12の内部へ液体11が一杯に充填された後、フレームウェハ搬送機構61にエアーを入れて吸着手段61a、61b、61cを開放状態にし、フレームウェハ搬送機構61をエキスパンドテープ15の表面から取り除く。
【0099】
次に、図4(d)において、ウェハ13が液体11の液面にて支持された状態で、レーザー加工部62をXY方向へ移動させながら、レーザー光Pをエキスパンドテープ15越しにウェハ13の裏面に照射してレーザー加工を行う。すなわち、レーザー光PがXY方向へ移動することによって、ウェハ13の内部のXY方向にレーザー改質層が形成される。このとき、ウェハ13は液体11の液面で支持して水平状態が保たれているので、ウェハ13の内部には高精度且つ均一に改質層が形成される。
【0100】
次に、図4(e)において、フレームウェハ搬送機構61を液槽12の上の所定位置へ移動させ、該フレームウェハ搬送機構61の吸着手段61a、61b、61cによってエキスパンドテープ15を吸着した状態で、ウェハ13とダイシングフレーム14、14とを支持する。このとき、液槽12に充填されていた液体11を液体排出口12bより排出する。
【0101】
次に、図4(f)において、液体11による表面張力が働かなくなるので、ウェハ13の表面を乾燥させたのち、フレームウェハ搬送機構61によってウェハ13とダイシングフレーム14、14とを持ち上げて所定の位置へ搬送する。
【0102】
上述のようにしてレーザー加工装置によってダイシング処理(改質処理)されたウェハ13は、外的応力が印加されることによってチップに分割される。このチップ化処理は、例えば、以下に述べるエキスパンド装置によって行われる。
【0103】
次に、ウェハ13をレーザー加工した後にチップに分割するチップ化処理について説明する。図5は、エキスパンド装置によるウェハのチップ化処理を示す工程図である。すなわち、レーザー加工装置によってレーザダイシング(改質)されたウェハ13は、図5(a)に示すように、表面を上側にして剥離テーブル71の上に載置される。言い換えると、ウェハ13の裏面に貼付されたエキスパンドテープ15が、剥離テーブル71の上に載置される状態となる。尚、ダイシングフレーム14、14は、図示しないフレーム固定機構によって所定位置に固定されている。
【0104】
このようにして、ウェハ13が剥離テーブル71の上に載置され、ダイシングフレーム14、14が固定されると、図5(b)に示すように、剥離テーブル71の周部を囲むように配置されたリング72が、図示しない昇降機構により押し上げられて上昇する。これにより、ウェハ13の裏面側に貼付されたエキスパンドテープ15が、放射状にエキスパンド(伸張)される。
【0105】
そして、このエキスパンドテープ15がエキスパンドされることにより、ウェハ13に外的応力が印加され、図5(b)に示すように、改質層を起点としてウェハ13が分割される。このとき、ウェハ13の改質層は、ストリートに沿って形成されているので、ウェハ13はストリートに沿って分割される。すなわち、ストリートは個々のチップの間に設定されているので、ウェハ13は個々のチップに分割されることになる。このようにしてレーザダイシングされたウェハ13は、外的応力を印加することにより個々のチップに分割された状態となる。
【0106】
なお、上記実施の形態では、ダイシングフレーム14、14にマウントされたウェハ13をウェハテーブル(図示せず)で吸着保持して、レーザダイシングする構成としているが、ウェハ13をダイシングフレーム14、14にマウントせず、直接ウェハテーブルで保持して、レーザダイシングすることもできる。また、ダイシングフレーム14、14にはマウントせず、ウェハ13の裏面にレーザー光を透過可能なテープ(ダイシングテープ)のみ貼着してレーザダイシングする構成とすることもできる。
【0107】
以上説明したように、本発明のレーザー加工装置は、基板をチップに分割するための基板改質を行うレーザー加工装置であって、基本的には、液体を充填して基板全体を支える液槽と、該液槽に充填された液体の液面によって支持された基板と、展延性を有する弾性力を持ち、基板を保持するように該基板の裏面に貼付された透明なエキスパンドフィルムと、透明なエキスパンドフィルムを介して基板にレーザー光を照射して該基板の内部又は表面の改質を行うレーザー光照射手段とを備えた構成となっている。
【0108】
このような構成のレーザー加工装置によれば、基板の表面の脆弱な構造を破壊することなく基板を支持することができ、且つ、自重で大きく撓む程度の大きいワークであっても、液槽に充填された液体表面で基板を水平状態に支持することができる。また、レーザー光の照射による基板の表面付近の過度な加熱は、液槽に充填された液体の液面にウェハが接触することにより、基板全面が均一に液体に浸されるので、基板の熱を効率的に冷却して該基板の表面温度を一定に保持することができる。さらに、液体の熱容量は大きいため、ウェハを冷却している液体が急激に温度上昇することはないので、ウェハに対して安定した温度環境を維持することができる。
【0109】
また、基板にレーザー光を照射したときに一部のレーザー光が基板から透過してしまう現象については、液体の屈折率は空気などよりも高く、例えば、水の屈折率は1.3程度である。従って、基板の表面がシリコン酸化膜などの酸化膜で構成されている場合は、レーザー光を空気中に放出するのに比べて、基板と液体の方が屈折率の差を小さくすることができる。また、液体の液面は、基板表面の凹凸部分にも入り込むことができる。
【0110】
結果的に、液体の表面で基板を支持すれば前記屈折率の差を小さくし、基板表面のラフネス形状による影響をなくして、レーザー光の散乱を大幅に低減するため、基板表面と液体の界面付近で生じるレーザー光のエネルギー損失を大幅に低下させる。その結果、基板表面での発熱を抑えて素子表面を保護するとともに、液体内に余分なレーザー光を効率よく導いて、そのエネルギーを効果的に減衰させることが可能になる。
【0111】
このような現象によって、基板と液体の液面の屈折率差が小さくなり、また、基板表面のラフネス形状については、該形状の周囲を液体がくまなく回り込んで当該形状を埋め込む。このため、基板表面のラフネス形状による散乱の影響を受けにくくする。即ち、基板から一部が透過したレーザー光は液体の内部に入り込みやすく、且つレーザー光の散乱も小さくなる。さらに、液槽でレーザー光の透過および反射を低減するようにすることで、散乱や反射したレーザー光による基板面のレーザー焼けを抑えることが可能となる。
【0112】
液槽でレーザー光の透過および反射を低減することとしては、例えば、単純な方法では、液槽の内面を黒く着色することにより、液槽内面からのレーザー光の反射を防ぐことが可能となる。また、液槽内面に使用するレーザー光の波長λに対応した反射防止膜(例えばλ/4の膜厚)をコーティングしてもよい。
【0113】
さらには、液体の内部に入ったレーザー光は、使用するレーザー光の波長に対し吸収帯を有する分子を内在した適切な液体を選ぶことによってレーザー光を吸収して減衰させることもできる。尚、どのような種類の液体を使用するかについては、使用するレーザー光の波長によって変わるため、使用するレーザー光に応じて適宜吸収性の良い液体を使用することが望ましい。
【0114】
このような効果により、基板(ワーク)から漏れ出た一部のレーザー光が散乱する現象や、レーザー光が反射することによって基板表面の他の部分が焼けて劣化するなどの近接効果による弊害を防止することができる。
【0115】
また、本発明のレーザー加工方法は、基板の裏面に貼付されたエキスパンドフィルム越しにレーザー光を照射して、基板の内部に改質層を形成するレーザー加工方法であり、大型のワーク(基板)であっても基板が自重で撓むこともなく、基板の水平状態(水準)を精度よく簡易な方法で維持することができる。さらに、レーザー光の照射に伴って、基板の表面に蓄積される熱量を液体へ効果的に排出することにより、基板の表面温度を一定に保つことができる。
【0116】
また、レーザー光の照射により、基板の表面側から抜けていくレーザー光が反射され、再度、基板の表面に照射されるような近接効果が生じないようにし、基板の表面にレーザー光を反射する材料が使用されている。さらに、基板の表面が微小かつ脆弱な構造を有していて、表面を下側にして支持できない基板であっても、基板の表面が液体の液面で支持されているので、基板の表面を傷付けることなく、安定した支持状態でレーザー加工を行うことができる。また、エキスパンドフィルムと基板が自重で撓むことにより、レーザー光の照射面の水準がとれずに、ミスアライメントを起こすような現象を防止することもできる。
【0117】
上記実施例によると、前記液体の屈折が基板の屈折率とほぼ同等であるので、液体であっても、基板の屈折率と液体の屈折率を同等に近づけることで、さらに基板と液体界面の屈折率差がなくなり、その界面で生じる散乱等によるエネルギー損失が大幅に低下する。従って、表面から液体中へ一部のレーザー光が抜ける際に、その界面付近でレーザー光のエネルギーが局部的に使用されて、該基板の表面が局部的に発熱することを無くすことができる。
【0118】
又、レーザー光の照射手段がパルス的にレーザー光を照射する場合、液体界面が大きく発熱するおそれがなく、液体の温度が極力安定かつ一様な温度分布になるように調整できる。その結果、照射回数を重ねて徐々に熱を帯びて液面に温度差が生ずる恐れがある場合でも、基板の形状が温度差によって変形することを抑制できる。即ち、レーザー光をパルス的、即ち、断続的又は強弱を付けて不連続的に照射することで、過剰な温度勾配は発生せず、熱応力によるウェハの割れを軽減して品質性能の向上を図ることができる。
【0119】
以上、本発明に係るレーザー加工装置及びレーザー加工方方について具体的な実施例に基づいて詳細に説明したが、本発明は、上記の実施例の内容に限定されるものではなく、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明のレーザー加工装置は、基板に対して高精度に改質層を形成してチップを生成することができるので、各種の半導体製造装置などに有効に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0121】
1 レーザー加工装置
10 ウェハ載置部
11 液体
12 液槽
12a 液体注入口
12b 液体排出口
13 ウェハ(基板)
14 ダイシングフレーム
15 エキスパンドテープ(ダイシングテープ)
20 レーザー光学部
21 レーザー発振器
22、32 コリメートレンズ
23、33 ハーフミラー
24、34 コンデンスレンズ(集光レンズ)
25 駆動手段
26 レンズフレーム
27 Z微動手段
28 保持フレーム
30 観察光学部
31 観察用光源
35 CCDカメラ
36 テレビモニタ
38 画像処理部
40 レーザーヘッド
50 制御部
61 フレームウェハ搬送機構
61a、61b、61c 吸着手段
62 レーザー加工部
71 剥離テープ
72 リング
L レーザー光線
P レーザー光
PZ1、PZ2 リニア微動手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光によって基板をチップに分割するための基板改質を行うレーザー加工装置であって、
液体の液面で支持された前記基板と、
前記基板の裏面に貼付された透明なエキスパンドフィルムと、
前記エキスパンドフィルムを介して、前記基板に前記レーザー光を照射して該基板の内部又は表面の改質を行うレーザー光照射手段と
を備えることを特徴とするレーザー加工装置。
【請求項2】
レーザー光によって基板をチップに分割するための基板改質を行うレーザー加工装置であって、
液体が充填された液槽と、
前記液槽に充填された液体の液面で支持された前記基板と、
前記基板の裏面に貼付された透明なエキスパンドフィルムと、
前記エキスパンドフィルムに前記レーザー光を照射して前記基板の内部又は表面の改質を行うレーザー光照射手段と
を備えることを特徴とするレーザー加工装置。
【請求項3】
前記レーザー光照射手段は、金属膜の形成された基板表面に対向する基板裏面を上側にして、該基板裏面に貼付された前記エキスパンドフィルムの表面側に前記レーザー光を照射することを特徴とする請求項1又は2記載のレーザー加工装置。
【請求項4】
前記液槽は、前記レーザー光を透過して吸収する性質を有することを特徴とする請求項2又は3記載のレーザー加工装置。
【請求項5】
前記液体の屈折率は、前記基板の屈折率とほぼ同等であることを特徴とする請求項1,2,3又は4記載のレーザー加工装置。
【請求項6】
前記レーザー光照射手段は、パルス的にレーザー光を照射することを特徴とする請求項1,2,3又は4記載のレーザー加工装置。
【請求項7】
レーザー光によって基板をチップに分割するための基板改質を行うレーザー加工方法であって、
液体の液面で前記基板を支持させる第1の工程と、
前記液面に支持された前記基板に対してレーザー光を照射し、該基板の内部又は表面の改質を行う第2の工程と
を含むことを特徴とするレーザー加工方法。
【請求項8】
レーザー光によって基板をチップに分割するための基板改質を行うレーザー加工方法であって、
透明なエキスパンドフィルムが貼付された前記基板を液体の液面で支持させる第1の工程と、
前記エキスパンドフィルムを介して、前記液面に支持された前記基板に対して前記レーザー光を照射し、該基板の内部又は表面の改質を行う第2の工程と
を含むことを特徴とするレーザー加工方法。
【請求項9】
レーザー光によって基板をチップに分割するための基板改質を行うレーザー加工方法であって、
金属膜の形成された基板表面に対向する基板裏面に対して透明なエキスパンドフィルムを貼付する第1の工程と、
前記エキスパンドフィルムの貼付された前記基板を液槽へ搬送する第2の工程と、
前記液槽に液体を充填し、前記エキスパンドフィルムの貼付された前記基板を、該液体の液面で支持する第3の工程と、
前記液面で支持された前記基板に対して、前記エキスパンドフィルムを介して前記レーザー光を照射し、該基板の内部又は表面の改質を行う第4の工程と、
前記基板の内部又は表面に対して改質層が形成された後、該基板を支持していた前記液体を前記液槽から排出する第5の工程と、
前記液槽から前記液体が排出された後、前記エキスパンドフィルムが貼付された状態の前記基板を、該液槽から外部へ搬送する第6の工程と、
前記エキスパンドフィルムが貼付された前記基板に対して、前記改質層の形成された領域で分割離間してチップを生成する第7の工程と
を含むことを特徴とするレーザー加工方法。
【請求項10】
前記金属膜の形成された基板表面に対向する基板裏面を上側にして、該基板裏面に貼付された前記エキスパンドフィルムの表面側に前記レーザー光を照射することにより、前記基板の改質を行うことを特徴とする請求項9記載のレーザー加工方法。
【請求項11】
前記液体の屈折率は、前記基板の屈折率とほぼ同等であることを特徴とする請求項7,8,9又は10記載のレーザー加工方法。
【請求項12】
前記レーザー光は、パルス的に照射されること特徴とする請求項7,8,9又は10記載のレーザー加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−164974(P2012−164974A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−5904(P2012−5904)
【出願日】平成24年1月16日(2012.1.16)
【出願人】(000151494)株式会社東京精密 (592)
【Fターム(参考)】