説明

レーダ装置

【課題】簡単な構成で、固有拡散符号で処理を行っている間および共通拡散符号で処理を行っている間に車間距離等を検出することができるレーダ装置の提供。
【解決手段】固有拡散符号で拡散する第1変調部と、共通拡散符号で拡散する第2変調部と、第1変調部で拡散された信号をレーダ波として第1の期間に送信し、第2変調部で拡散された信号をレーダ波として第2の期間に送信する送信部と、共通拡散符号で拡散された信号を干渉信号として共通拡散符号で逆拡散する第1復調部と、受信部で受信された信号から干渉信号を除去する干渉信号除去部と、干渉信号が除去された信号を固有拡散符号で逆拡散する第2復調部と、共通拡散符号で拡散された信号を当該共通拡散符号で逆拡散する第3復調部と、自車両から他車両までの距離を検出する距離検出部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレーダ装置に関し、より詳しくは、干渉信号を除去することができるレーダ装置において、簡単な構成で信号処理を速やかに行って車間距離等を速やかに検出することができ、また、自車に固有の拡散符号を用いた処理を行っている期間よび全車共通の拡散符号を用いた処理を行っている期間の双方において、車間距離等を検出することができるレーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等の車両にレーダ装置を搭載することにより、自車両から障害物まので距離および方位を検出することが行われている。しかしながら、各車両がレーダ波を送信すると、各車両は、自己が送信した信号の反射波だけでなく、他車両が送信したレーダ波を干渉信号として受信することになる。また、各車両はレーダ波だけでなく、他車両と通信するための信号を送信することが多い。レーダ装置にとっては、通信信号は干渉信号である。これら干渉信号は、レーダ装置がレーダ波を受信する際のS/N比を低下させる。
【0003】
このような問題を解決するための従来技術として、例えば特許文献1に記載のレーダ装置がある。特許文献1に記載のレーダ装置は、各車両に搭載されているものとする。このレーダ装置は、送信側において、全車両共通の拡散符号を用いて自車両に固有の拡散符号の情報を拡散し、拡散した信号(通信用拡散信号)を送信する。また、当該レーダ装置は、自車両に固有の拡散符号を用いてレーダ波用の信号を拡散し、拡散した信号(レーダ用拡散信号)を送信する。通信用拡散信号とレーダ用拡散信号の送信はスイッチの切替えによって交互に行われる。
【0004】
このレーダ装置は、受信側において、受信信号を共通拡散符号を用いて逆拡散(復調)する。この逆拡散により、他車両に固有の拡散符号情報が取得される。取得された拡散符号情報に基づき、他車両に固有の拡散符合が生成される。レーダ装置は、受信した信号を、他車両に固有の拡散符号で逆拡散することにより、当該他車両から受信したレーダ波(干渉波)のレプリカ信号を生成する。レーダ装置は、受信信号からレプリカ信号を差し引くことにより、受信信号から干渉波を除去することができる。これにより、他車両から到来する干渉信号の影響を受けにくいレーダ装置が提供される。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のレーダ装置には、以下のような問題があった。
すなわち、このレーダ装置は、送信側において、全車両共通の拡散符号を用いて自車両に固有の拡散符号の情報を拡散するので、複雑な処理が必要であり、処理に多くの時間を要するという問題があった。また、このレーダ装置は、受信側において、受信信号を共通拡散符号を用いて逆拡散(復調)することにより、他車両に固有の拡散符号情報を取得する処理と、取得された拡散符号情報に基づき他車両に固有の拡散符合を生成する処理が必要であり、処理に多くの時間を要するという問題があった。信号の処理に多くの時間が必要になると、距離検出および方位検出に多くの時間が必要となるという問題があった。
【0006】
また、レーダ装置は、送信側において、通信用拡散信号の送信とレーダ用拡散信号の送信を交互に行うので、通信用拡散信号を送信している間はレーダとしての機能(距離検出、方位検出)を果たすことができないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−74830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたもので、干渉信号を除去することができるレーダ装置において、簡単な構成で信号処理を速やかに行って車間距離等を速やかに検出することができ、また、自車に固有の拡散符号を用いた処理を行っている期間および全車共通の拡散符号を用いた処理を行っている期間の双方において、車間距離等を検出することができるレーダ装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、
自車両から障害物までの距離を検出するレーダ装置であって、
信号源から出力された信号を自車両に固有の固有拡散符号で拡散する第1変調部と、
上記信号源から出力された信号を上記自車両と他車両に共通する共通拡散符号で拡散する第2変調部と、
上記第1変調部で拡散された信号をレーダ波として第1の期間に送信し、上記第2変調部で拡散された信号をレーダ波として上記第1の期間とは異なる第2の期間に送信する送信部と、
上記他車両から送信された信号、および上記送信部から送信された信号を受信する受信部と、
上記第1の期間に、上記受信部で受信された信号のうち上記共通拡散符号で拡散された信号を干渉信号として上記共通拡散符号で逆拡散する第1復調部と、
上記受信部で受信された信号から、上記第1復調部で逆拡散された上記干渉信号を除去する干渉信号除去部と、
前記第1の期間に、上記干渉信号除去部で上記干渉信号が除去された信号を上記固有拡散符号で逆拡散する第2復調部と、
上記第2の期間に、上記受信部で受信された信号のうち上記共通拡散符号で拡散された信号を当該共通拡散符号で逆拡散する第3復調部と、
前記第2復調部で逆拡散された信号の前記第1変調部で拡散された信号からの時間遅れ、および前記第3復調部で逆拡散された信号の前記第2変調部で拡散された信号からの時間遅れに基づき、上記自車両から上記障害物までの距離を検出する距離検出部とを備えた、レーダ装置である。
【0010】
第1の発明によれば、固有拡散符号で拡散された信号をレーダ波として第1の期間に送信し、共通拡散符号で拡散された信号をレーダ波として上記第1の期間とは異なる第2の期間に送信する。よって、第1の発明によれば、固有拡散符号を用いた処理を行っている期間および共通拡散符号を用いた処理を行っている期間の双方において、車間距離等を検出することができる。
また、第1の発明によれば、送信側において固有拡散符号情報を共通拡散符号で拡散するという複雑な信号処理を行わず、受信側において受信信号を共通拡散符号で逆拡散して他車両の固有拡散符号情報を取得し、取得した拡散符号情報に基づき他車両の固有拡散符合を生成する処理をしない。よって、第1の発明によれば、信号処理が簡単になり信号処理を早く行って車間距離等を速やかに検出することができる。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、さらに、
上記第2復調部で逆拡散された信号と上記第3復調部で逆拡散された信号を比較し、逆拡散されたこれら信号間の相違量が所定の相違量以上であるかどうかを判定する相違量判定部と、
上記相違量判定部で上記相違量が上記所定の相違量以上であると判定された場合には、上記第1の期間および上記第2の期間を変更する期間変更部とを備えている。
【0012】
第2の発明によれば、固有拡散符号で逆拡散された信号と共通拡散符号で逆拡散された信号を比較し、逆拡散されたこれら信号間の相違量が所定の第1相違量以上である場合には、第1の期間および第2の期間を変更する。所定の第1の相違量は、自車両と他車両が共通拡散符号で拡散された信号を同時期に送信し、自車両と他車両が固有拡散符号で拡散された信号を同時期に送信している可能性が高い量である。よって、第2の発明によれば、共通拡散符号で拡散された信号を自車両と他車両が同時期に送信しているかどうかを判断し、同時期に送信されている場合には、自車両と他車両の間で当該信号の送信期間をずらすことができる。これにより、第2の発明によれば、受信信号から干渉信号を確実に除去することができ、高い精度で車間距離等を検出することができる。
【0013】
第3の発明は、第2の発明において、
上記期間変更部は、上記相違量判定部において、上記信号間の相違量が上記所定の相違量未満であると判定されるまで、上記第1の期間および第2の期間の変更を繰り返すことを特徴とする。
【0014】
第3の発明によれば、相違量判定部において信号間の相違量が所定の相違量未満であると判定されるまで、第1の期間および第2の期間の変更が繰り返される。よって、第3の発明によれば、より一層高い精度で車間距離等を検出することができる。
【0015】
第4の発明は、第2または第3の発明において、
上記信号間の相違量は、周波数を横軸、信号強度を縦軸として表される信号スペクトル分布において、スパイク状に突出するピーク信号の本数の違いであることを特徴とする。
【0016】
第4の発明によれば、ピーク信号の本数の違いは、自車両と他車両が共通拡散符号で拡散された信号を同時期に送信しているか否か、および自車両と他車両が固有拡散符号で拡散された信号を同時期に送信しているか否かを反映する。よって、第4の発明によれば、高い精度で車間距離等を検出することができる。
【0017】
第5の発明は、第2または第3の発明において、
上記信号間の相違量は、時間を横軸、信号強度を縦軸として表される復調信号時間波形において、スパイク状に突出するピーク信号の本数の違いであることを特徴とする。
【0018】
第5の発明によれば、ピーク信号の本数の違いは、自車両と他車両が共通拡散符号で拡散された信号を同時期に送信しているか否か、および自車両と他車両が固有拡散符号で拡散された信号を同時期に送信しているか否かを反映する。よって、第5の発明によれば、高い精度で車間距離等を検出することができる。
【0019】
第6の発明は、第2乃至第5いずれか1つの発明において、
上記期間変更部に設定されている変更量は、車両毎に固有の量であることを特徴とする。
【0020】
第6の発明によれば、期間変更部に設定されている変更量は、車両毎に固有の量であるので、各車両は車両毎に異なる量で第1の期間および第2の期間を変更する。よって、各車両が同じ量の変更を行ってしまうことがない。よって、第6の発明によれば、高い精度で車間距離等を検出することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、干渉信号を除去することができるレーダ装置において、簡単な構成で信号処理を早く行って車間距離等を速やかに検出することができ、また、自車に固有の拡散符号を用いた処理を行っている間および全車共通の拡散符号を用いた処理を行っている間の双方において、車間距離等を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1実施形態に係るレーダ装置の構成を示すブロック図
【図2】第1実施形態における信号(フレーム)の送信期間を示す図
【図3】図1に示されるレーダ装置の動作を信号スペクトル分布の変化で示す図
【図4】図1に示されるレーダ装置の動作を示すフローチャート
【図5】第2実施形態に係るレーダ装置の構成を示すブロック図
【図6】図5に示されるレーダ装置の動作を信号スペクトル分布の変化で示す図であり、自車両および他車両が各自の固有拡散符号で信号を拡散した場合を示す図
【図7】図5に示されるレーダ装置の動作を信号スペクトル分布の変化で示す図であり、自車両が自己の固有拡散符号で信号を拡散し、他車両が共通拡散符号で信号を拡散した場合を示す図
【図8】図5に示されるレーダ装置の動作を信号スペクトル分布の変化で示す図であり、自車両および他車両が共通拡散符号で信号を拡散した場合を示す図
【図9】図5に示されるレーダ装置の動作を信号スペクトル分布の変化で示す図であり、自車両が共通拡散符号で信号を拡散し、他車両が自己の固有拡散符号で信号を拡散した場合を示す図
【図10】図5に示されるレーダ装置の動作を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1は、第1実施形態に係るレーダ装置の構成を示すブロック図である。図2は、第1実施形態における信号(フレーム)の送信期間を示す図である。図3は、図1に示されるレーダ装置の動作を信号スペクトル分布の変化で示す図である。図4は、図1に示されるレーダ装置の動作を示すフローチャートである。
【0024】
第1実施形態に係るレーダ装置1は、自車両から障害物までの距離を検出するレーダ装置である。レーダ装置1は、全車両に搭載されているものとする。
【0025】
レーダ装置1は、送信側において、第1変調部2と、第2変調部3と、送信部4とを備え、受信側において、受信部5と、第1復調部6と、干渉信号除去部7と、第2復調部8と、第3復調部9と、距離検出部10とを備えている。
【0026】
また、レーダ装置1は、送信側において、信号源11と、固有拡散符号生成部12と、共通拡散符号生成部13と、スイッチ14とを備え、受信側において、共通拡散符号生成部15と、遅延部16と、スイッチ17,18とを備えている。
【0027】
信号源11は、高周波(搬送波)を発生する高周波発振器であり、レーダ波を生成するための信号をフレーム化し、フレーム化した信号(搬送波)を第1変調部2および第2変調部3に出力する。
【0028】
第1変調部2は、信号源11から出力された信号(フレーム)を自車両に固有の固有拡散符号で拡散する。拡散は、例えばBPSK変調により行われる。
【0029】
固有拡散符号生成部12は、自車両に固有の拡散符号を生成する。固有拡散符号生成部12は、生成した固有拡散符号を第1変調部2に出力する。
【0030】
第2変調部3は、信号源11から出力された信号(フレーム)を自車両と他車両に共通する共通拡散符号で拡散する。拡散は、例えばBPSK変調により行われる。
【0031】
共通拡散符号生成部13は、自車両と他車両を含む全車両に共通の拡散符号を生成する。共通拡散符号生成部13は、生成した共通拡散符号を第2変調部3に出力する。
【0032】
送信部4は、図2に示されるように、第1変調部2で拡散された信号(フレーム)22をレーダ波として第1の期間T1に送信し、第2変調部3で拡散された信号をレーダ波として第1の期間とは異なる第2の期間T2に送信する。
【0033】
スイッチ14は、第1変調部2で拡散された信号の送信と、第2変調部3で拡散された信号の送信を切替える。つまり、スイッチ14は、第1の期間T1と第2の期間T2を切替える。第1の期間T1と第2の期間T2は、図2に示されるように、交互に設けられる。
【0034】
受信部5は、他車両から送信された信号、および送信部4から送信された信号を受信する。
【0035】
第1復調部6は、第1の期間T1に、受信部5で受信された信号のうち共通拡散符号で拡散された信号を干渉信号として共通拡散符号で逆拡散する。共通拡散符号で拡散された信号が他車両から送信された信号である場合、第1復調部6は、当該信号を干渉信号として共通拡散符号で逆拡散する。
【0036】
共通拡散符号生成部15は、自車両と他車両を含む全車両に共通の拡散符号を生成する。共通拡散符号生成部15は、生成した共通拡散符号を第1復調部6に出力する。共通拡散符号生成部15と共通拡散符号生成部13は、同じ拡散符号を生成する。
【0037】
遅延部16は、入力した受信信号を第1復調部6で復調に要する時間だけ遅延させ、遅延させた信号を干渉信号除去部7に出力する。
【0038】
干渉信号除去部7は、受信部5で受信された信号から、第1復調部6で逆拡散された干渉信号を除去する。具体的には、干渉信号除去部7は、遅延部16から入力した受信信号から、第1復調部6で逆拡散された信号(干渉信号)を差し引きすることで、干渉信号の除去を行う。なお、共通拡散符号で拡散された信号以外の干渉信号(他の干渉信号)は除去されない。
【0039】
第2復調部8は、第1の期間T1に、干渉信号除去部7で干渉信号が除去された受信信号を自車両の固有拡散符号で逆拡散する。第2復調部8は、例えば、公知の整合フィルタ(マッチドフィルタ)で構成することができる。
【0040】
第3復調部9は、第2の期間T2に、受信部5で受信された信号のうち、共通拡散符号で拡散された信号を当該共通拡散符号で逆拡散する。第3復調部9は、例えば、公知の整合フィルタ(マッチドフィルタ)で構成することができる。
【0041】
スイッチ17は、受信部5で受信された信号の出力先の割り振りを行う。具体的には、送信側のスイッチ14の切替えにより送信部4から第1変調部2からの信号が送信されている間(第1の期間T1)は、スイッチ17は受信部5の受信信号を遅延部16および第1復調部6に出力する。一方、送信側のスイッチ14の切替えにより送信部4から第2変調部3からの信号が送信されている間(第2の期間T2)は、スイッチ17は受信部5の受信信号を第3復調部9に出力する。
【0042】
スイッチ18は、距離検出部10へ出力する信号の割り振りを行う。具体的には、送信側のスイッチ14の切替えにより送信部4から第1変調部2からの信号が送信されている間(第1の期間T1)は、スイッチ18は第2復調部8で逆拡散された信号を距離検出部10に出力する。一方、送信側のスイッチ14の切替えにより送信部4から第2変調部3からの信号が送信されている間(第2の期間T2)は、スイッチ18は第3復調部9で逆拡散された信号を距離検出部10に出力する。スイッチ14,17,18は、互いに同期して動作する。
【0043】
距離検出部10は、第1の期間T1においては、第2復調部8で逆拡散された信号の第1変調部2で拡散された信号からの時間遅れに基づき、自車両から障害物までの距離を検出する。また、距離検出部10は、第2の期間T2においては、第3復調部9で逆拡散された信号の第2変調部3で拡散された信号からの時間遅れに基づき、自車両から障害物までの距離を検出する。なお、レーダ装置1においては、方位検出部(図示せず)を別途設ける。
【0044】
次に、レーダ装置1の動作について、図3、4を参照しつつ説明する。
まず、第1変調部2が、信号源11から出力された信号(図3(A)参照)を自車両の固有拡散符号で拡散することを開始する(図4のステップS1)。拡散された信号(図3(B)参照)は、レーダ波として、スイッチ14を介して送信部4から送信される(ステップS2)。次いで、受信部5は、自車両に到来した信号(図3の(F)参照)を受信する(ステップS3)。自車両に到来する信号には、例えば、ステップS1で送信された信号が他車両等の障害物で反射されて到来した反射波、他車両が送信したレーダ波(干渉波、図3(D)参照)、および通信用信号等の他の干渉波(図3(E)参照)が含まれる。
【0045】
次いで、遅延部16が受信部5で受信された受信信号を遅延させる(ステップS4)。また、第1復調部6が、受信信号のうち共通拡散符号で拡散された信号を共通拡散符号で逆拡散する。共通拡散符号で拡散された信号が他車両から送信された信号である場合、当該信号は干渉信号として共通拡散符号で逆拡散される(図3(G)参照、ステップS5)。次いで、干渉信号除去部7は、ステップS4で遅延された受信信号から、ステップS5で逆拡散された干渉信号を差し引きする。これにより、受信信号から、他車両が送信したレーダ波(干渉信号)が除去される(図3(H)参照、ステップS6)。
【0046】
次いで、第2復調部8は、干渉信号が除去された受信信号に含まれる自車両のレーダ波(反射波)を自車両に固有の固有拡散符号で逆拡散する(図3(I)参照、ステップS7)。これにより、自車両が送信したレーダ波が検出される。次いで、距離検出部10は、ステップS7で検出された自車両のレーダ波の、ステップS2で送信されたレーダ波からの時間遅れに基づいて、自車両と障害物との距離等を検出する(ステップS8)。ステップS8で距離等が検出されると、第1変調部2における拡散が停止する(ステップS9)。
【0047】
次いで、第2変調部3が、信号源11から出力された信号を共通拡散符号で拡散することを開始する(ステップS10)。拡散された信号は、レーダ波として、スイッチ14を介して送信部4から送信される(ステップS11)。次いで、受信部5は、自車両に到来した信号を受信する(ステップS12)。自車両に到来する信号には、例えば、ステップS1で送信された信号が他車両等の障害物で反射されて到来した反射波、他車両が送信したレーダ波(干渉波)、および通信信号等の他の干渉波が含まれる。
【0048】
次いで、第3復調部9が、受信信号のうち共通拡散符号で拡散された信号を共通拡散符号で逆拡散する。共通拡散符号で拡散された信号が自車両が送信した信号である場合、当該信号が共通拡散符号で逆拡散される(ステップS13)。これにより、自車両が送信したレーダ波が検出される。次いで、距離検出部10は、ステップS13で検出された自車両のレーダ波の、ステップS11で送信されたレーダ波からの時間遅れに基づいて、自車両と障害物との距離等を検出する(ステップS14)。ステップS14で距離等が検出されると、第2変調部3における拡散が停止する(ステップS15)。ステップS15の処理が終わると、ステップS1に戻る。以上が、レーダ装置1の動作である。
【0049】
レーダ装置1によれば、固有拡散符号で拡散された信号をレーダ波として第1の期間T1に送信し、共通拡散符号で拡散された信号をレーダ波として第1の期間T1とは異なる第2の期間T2に送信する。よって、レーダ装置1によれば、固有拡散符号を用いた処理を行っている期間T1および共通拡散符号を用いた処理を行っている期間T2の双方において、車間距離等を検出することができる。
また、レーダ装置1によれば、送信側において固有拡散符号情報を共通拡散符号で拡散するという複雑な信号処理を行わず、受信側において受信信号を共通拡散符号で逆拡散して他車両の固有拡散符号情報を取得する処理、および取得した拡散符号情報に基づき他車両の固有拡散符合を生成する処理を行わない。よって、レーダ装置1によれば、信号処理が従来と比べて簡単になり信号処理を速やかに行って車間距離等を速やかに検出することができる。
【0050】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図5は、第2実施形態に係るレーダ装置の構成を示すブロック図である。図6は、図5に示されるレーダ装置の動作を信号スペクトル分布の変化で示す図であり、自車両および他車両が各自の固有拡散符号で信号を拡散した場合を示す図である。図7は、図5に示されるレーダ装置の動作をスペクトル分布の変化で示す図であり、自車両が自己の固有拡散符号で信号を拡散し、他車両が共通拡散符号で信号を拡散した場合を示す図である(図3と同じ)。図8は、図5に示されるレーダ装置の動作を信号スペクトル分布の変化で示す図であり、自車両および他車両が共通拡散符号で信号を拡散した場合を示す図である。図9は、図5に示されるレーダ装置の動作を信号スペクトル分布の変化で示す図であり、自車両が共通拡散符号で信号を拡散し、他車両が自己の固有拡散符号で信号を拡散した場合を示す図である。図10は、図5に示されるレーダ装置の動作を示すフローチャートである。なお、第1実施形態と同様の構成については、同一の参照符号を付して、その説明を省略する。
【0051】
図5に示されるように、第2実施形態に係るレーダ装置19は、第1実施形態の構成に加えて、受信側において、さらに、相違量判定部20と、期間変更部21とを備えている。
【0052】
相違量判定部20は、第2復調部8で逆拡散された信号と第3復調部9で逆拡散された信号を比較し、逆拡散されたこれら信号間の相違量が所定の相違量以上であるかどうかを判定する。
【0053】
逆拡散された信号間の相違量は、特に限定されるものではないが、例えば、周波数を横軸、信号強度を縦軸として表される信号スペクトル分布において、スパイク状に突出するピーク信号の本数の違いとすることができる。ピーク信号が複数本存在する場合、各ピーク信号は互いに離れて位置する場合もあれば、互いに近接して位置する場合もある。なお、逆拡散された信号間の相違量は、時間を横軸、信号強度を縦軸として表される復調信号時間波形(復調後の波形)において、スパイク状に突出するピーク信号の本数の違いとすることもできる。
【0054】
期間変更部21は、相違量判定部20で相違量が所定の相違量以上であると判定された場合には、第1の期間T1および第2の期間T2を変更する。
また、期間変更部21は、相違量判定部20において、逆拡散された信号間の相違量が所定の相違量未満であると判定されるまで、第1の期間T1および第2の期間T2の変更を繰り返す。
【0055】
期間変更部21に設定されている変更量は、好ましくは、車両毎に固有の量とされる。
【0056】
次に、レーダ装置19の動作について、図6乃至10を参照しつつ説明する。なお、第1実施形態と同様の動作については、同一の参照符号を付して、その説明を省略する。
【0057】
ステップS7において、第2復調部8は、受信信号に含まれる自車両のレーダ波(反射波)を自車両に固有の固有拡散符号で逆拡散する(図6(I)、図7(I)参照)。また、ステップS13において、第3復調部9は、受信信号に含まれる自車両のレーダ波を共通拡散符号で逆拡散する(図8(G)、図9(G)参照)。
【0058】
ステップS16において、相違量判定部20は、第2復調部8で逆拡散された信号と第3復調部9で逆拡散された信号を比較し、逆拡散されたこれら信号間の相違量が所定の相違量以上であるかどうかを判定する。自車両および他車両が各自の固有拡散符号で信号を拡散した場合、図6(I)に示されるように、第2復調部8で逆拡散された信号は、信号スペクトル分布において、スパイク状に突出する1本のピーク信号として現れる。また、自車両および他車両が共通拡散符号で信号を拡散した場合、図8(G1)に示されるように、第3復調部9で逆拡散された信号は、信号スペクトル分布において、スパイク状に突出する2本のピーク信号として現れる。図6(I)と図8(G1)を比較するとわかるように、逆拡散されたこれら信号は、スパイク状に突出するピーク信号の本数が相違している。この場合、相違量判定部20は、逆拡散された信号間の相違量が所定の相違量以上であると判定する。この場合、図8(G1)(G2)に示されるように、他車両から送信された干渉信号(共通拡散符号で拡散された信号)を除去することができない。これは、自車両と他車両間で第2の期間T2がほぼ一致しているからである。
【0059】
ステップS17において、期間変更部21は、相違量判定部20で相違量が所定の相違量以上であると判定された場合には、第1の期間T1および第2の期間T2を変更し、ステップS1に戻る。期間変更部21は、相違量判定部20において、逆拡散された信号間の相違量が所定の相違量未満であると判定されるまで、第1の期間T1および第2の期間T2の変更(ステップS17)を繰り返す。図7(I)と図9(G)を比較するとわかるように、逆拡散されたこれら信号は、スパイク状に突出するピーク信号の本数が同じである。この場合、相違量判定部20は、逆拡散された信号間の相違量が所定の相違量未満であると判定する。この場合、図7(I)に示されるように、他車両から送信された干渉信号(共通拡散符号で拡散された信号)を確実に除去することができる。これは、自車両と他車両間で第2の期間T2がずれたからである。スイッチ14,17,18、固有拡散符号生成部12、および共通拡散符号生成部13,15は、第1の期間T1および第2の期間T2が変更されると、変更後の第1の期間T1および変更後の第2の期間T2に従って動作する。以上が、レーダ装置19の動作である。
【0060】
レーダ装置19によれば、固有拡散符号で逆拡散された信号と共通拡散符号で逆拡散された信号を比較し、逆拡散されたこれら信号間の相違量が所定の相違量以上である場合には、第1の期間T1および第2の期間T2を変更する。所定の相違量は、自車両と他車両が共通拡散符号で拡散された信号を同時期に送信し、自車両と他車両が各自の固有拡散符号で拡散された信号を同時期に送信している可能性が高い場合の相違量である。よって、レーダ装置19によれば、共通拡散符号で拡散された信号を自車両と他車両が同時期に送信しているかどうかを判断し、同時期に送信されていると判定された場合には、自車両と他車両の間で当該信号の送信期間をずらすことができる。これにより、レーダ装置19によれば、受信信号から干渉信号を確実に除去することができ、高い精度で車間距離等を検出することができる。
【0061】
また、相違量判定部20において信号間の相違量が所定の相違量未満であると判定されるまで、第1の期間および第2の期間の変更が繰り返される。よって、レーダ装置19によれば、確実に高い精度で車間距離等を検出することができる。
【0062】
また、レーダ装置19によれば、ピーク信号の本数の違いは、自車両と他車両が共通拡散符号で拡散された信号を同時期に送信しているか否か、および自車両と他車両が固有拡散符号で拡散された信号を同時期に送信しているか否かを反映する。よって、レーダ装置19によれば、高い精度で車間距離等を検出することができる。
【0063】
また、レーダ装置19によれば、期間変更部21に設定されている変更量は、車両毎に固有の量である(つまり、車両毎に異なる)ので、各車両は車両毎に異なる量で第1の期間T1および第2の期間T2を変更する。具体的には、例えば、第1の期間T1および第2の期間T2に送る信号(フレーム)の次の信号を送信するまでの時間を自車両と他車両間で相違させ、或いは、第1の期間T1に送る信号(フレーム)と第2の期間T2に送る信号(フレーム)の単位時間当たりの送信回数比率の変更量を自車両と他車両間で相違させる。これにより、第1の期間T1および第2の期間T2について、各車両が同じ量の変更を行ってしまうことがない。よって、レーダ装置19によれば、高い精度で車間距離等を検出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、干渉信号を除去することができるレーダ装置等において利用可能である。
【符号の説明】
【0065】
1,19 レーダ装置
2 第1変調部
3 第2変調部
4 送信部
5 受信部
6 第1復調部
7 干渉信号除去部
8 第2復調部
9 第3復調部
10 距離検出部
11 信号源
12 固有拡散符号生成部
13,15 共通拡散符号生成部
14,17,18 スイッチ
16 遅延部
20 相違量判定部
21 期間変更部
T1 第1の期間
T2 第2の期間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両から障害物までの距離を検出するレーダ装置であって、
信号源から出力された信号を自車両に固有の固有拡散符号で拡散する第1変調部と、
前記信号源から出力された信号を前記自車両と他車両に共通する共通拡散符号で拡散する第2変調部と、
前記第1変調部で拡散された信号をレーダ波として第1の期間に送信し、前記第2変調部で拡散された信号をレーダ波として前記第1の期間とは異なる第2の期間に送信する送信部と、
前記他車両から送信された信号、および前記送信部から送信された信号を受信する受信部と、
前記第1の期間に、前記受信部で受信された信号のうち前記共通拡散符号で拡散された信号を干渉信号として前記共通拡散符号で逆拡散する第1復調部と、
前記受信部で受信された信号から、前記第1復調部で逆拡散された前記干渉信号を除去する干渉信号除去部と、
前記第1の期間に、前記干渉信号除去部で前記干渉信号が除去された信号を前記固有拡散符号で逆拡散する第2復調部と、
前記第2の期間に、前記受信部で受信された信号のうち前記共通拡散符号で拡散された信号を当該共通拡散符号で逆拡散する第3復調部と、
前記第2復調部で逆拡散された信号の前記第1変調部で拡散された信号からの時間遅れ、および前記第3復調部で逆拡散された信号の前記第2変調部で拡散された信号からの時間遅れに基づき、前記自車両から前記障害物までの距離を検出する距離検出部とを備えた、レーダ装置。
【請求項2】
前記第2復調部で逆拡散された信号と前記第3復調部で逆拡散された信号を比較し、逆拡散されたこれら信号間の相違量が所定の相違量以上であるかどうかを判定する相違量判定部と、
前記相違量判定部で前記相違量が前記第1相違量以上であると判定された場合には、前記第1の期間および前記第2の期間を変更する期間変更部とをさらに備えた、請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項3】
前記期間変更部は、前記相違量判定部において、前記信号間の相違量が前記第1相違量と未満であると判定されるまで、前記第1の期間および第2の期間の変更を繰り返すことを特徴とする請求項2に記載のレーダ装置。
【請求項4】
前記信号間の相違量は、周波数を横軸、信号強度を縦軸として表される信号スペクトル分布において、スパイク状に突出するピーク信号の本数の違いであることを特徴とする請求項2または3に記載のレーダ装置。
【請求項5】
前記信号間の相違量は、時間を横軸、信号強度を縦軸として表される復調信号時間波形において、スパイク状に突出するピーク信号の本数の違いであることを特徴とする請求項2または3に記載のレーダ装置。
【請求項6】
前記期間変更部に設定されている変更量は、車両毎に固有の量であることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載のレーダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−243330(P2010−243330A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−92152(P2009−92152)
【出願日】平成21年4月6日(2009.4.6)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】