説明

ロッカーアーム用カムフォロアおよびカムフォロア装置

【課題】潤滑油を軸受内部に容易に供給することができるロッカーアーム用カムフォロアを提供する。
【解決手段】本発明のカムフォロアは、外周面がカム4に接触する円筒形状であって、軸O方向に複数配列され、内径がそれぞれ等しい外輪11,12と、これら複数の外輪11,12を共通に軸支する支持軸6と、支持軸6および外輪11,12間の環状領域に配置される複数のころ14とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の可動弁機構に使用されるロッカーアーム用カムフォロアに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンのロッカーアームは、カムの回転運動を受けて揺動し、吸気弁および排気弁を開閉する。かかる動作中のフリクションロスを低減するため、ロッカーアームに、総ころ形式の転がり軸受を設け、ロッカーアームとカムとを転がり接触させる技術が従来、知られている。
【0003】
総ころ形式の転がり軸受は、高荷重用途で使用することができる一方で、ころ同士の接触による油膜切れや、ころのスキューを原因とする、ピーリング、スミアリング、表面起点型剥離が生じる。総ころ形式の転がり軸受の場合、計算上は大きな負荷容量を有するにもかかわらず、その大きな負荷容量を充分に活用することができなかった。
【0004】
そこで、転がり軸受の内部に潤滑油を滞り無く供給することを目的として、特開平9−217751号公報(特許文献1)に記載のごとき軸受が知られている。
【0005】
特許文献1に記載の軸受は、外輪の両端面に、スパイラル状の溝を形成したものである。あるいは、外輪端面に向き合う支持壁面にヘリンボーン状の溝を形成するものである。これらの溝は、外輪の回転に伴って潤滑油の流れを惹起して、外輪の内周面と、外輪を軸支する軸の外周面との間の環状領域に潤滑油を供給する。
【特許文献1】特開平9−217751号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来のような軸受にあっては、なおも以下に説明するような問題を生ずる。つまり、外輪の両端面から潤滑油を導入するため、径方向長さが小さく、かつ軸方向長さが大きい幅広の軸受の場合には、軸方向中央部まで潤滑油を供給することが困難になる。このため、軸受の潤滑不良が懸念される。
【0007】
本発明の目的は、上述の実情に鑑み、潤滑油を軸受内部に容易に供給することができるロッカーアーム用カムフォロアを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的のため本発明によるカムフォロアは、外周面がカムに接触する円筒形状であって、軸方向に複数配列され、内径がそれぞれ等しい外輪と、複数の外輪を共通に軸支する支持軸と、支持軸および外輪間の環状領域に配置される複数のころとを備える。
【0009】
かかる本発明によれば、軸方向に複数かつ同軸に配列された外輪を有することから、軸方向両端の他、これら外輪同士の隙間から潤滑油を流し込むことが可能となり、幅広な軸受であっても、軸方向中程から軸受の内部に潤滑油を容易に供給することができる。
【0010】
本発明は1実施形態に限定されるものではないが、好ましい実施形態として、外輪は、その端面に径方向外側端から径方向内側端まで延びる溝を有する。これにより、溝を経由して、軸受の内部に潤滑油を容易に供給することができる。
【0011】
好ましい実施形態として、ころの全長が複数の外輪の軸長の合計よりも長い。これにより、軸方向両端に位置する外輪が互いに離れるようそれぞれ軸受の軸方向外側へ片寄ったときに隣り合う外輪同士の間に隙間が生じる。したがって、外輪の径方向外側から、軸受の内部に十分な潤滑油を供給することが可能となり、カムフォロアの潤滑性能および耐久性能が向上する。
【0012】
好ましい実施形態として、外輪は、その端面の径方向外側端と内側端との間の領域に径方向外側端よりも軸方向に突出した部分を含む。これにより、互いに向かい合う外輪の端面のうち、一方の端面の突出した部分が他方の端面と接触しても、これら端面全体が密着することがなく、径方向外側に隙間が生じる。したがって、外輪の径方向外方から、この隙間に潤滑油を流し込むことが可能となる。
【0013】
好ましい実施形態として、突出した部分を含む外輪の端面は、軸線を含む平面における断面形状が円弧である。これにより、互いに向かい合う一方の外輪端面の径方向外側端と、他方の外輪端面の径方向外側端との間に、上述した隙間が生じる。
【0014】
好ましい実施形態として、上述した外輪端面の断面円弧形状は、外輪端面の径方向内側端の軸方向位置が、外輪端面の径方向外側端の軸方向位置に等しく、これら径方向内側端と外側端との中央で軸方向に最も突出した形状である。
【0015】
好ましい実施形態として、外輪は、ころが転走する内周面にクラウニング部を有する。これにより、ころとの接触によって外輪の端部に不所望なエッジロードが作用することを回避することができる。
【0016】
好ましい実施形態として、外輪は、その外周面にクラウニング部を有する。これにより、カムとの接触によって外輪の端部に不所望なエッジロードが作用することを回避することができる。
【0017】
好ましい実施形態として、外輪、支持軸、およびころの全てが窒素富化層を有し、支持軸およびころの少なくとも一方の部材における窒素富化層のオーステナイト結晶粒が、粒度番号の10番を超えて微細化され、かつ、支持軸およびころの窒素富化層の少なくとも一方の残留オーステナイト量が11体積%以上25体積%以下であり、かつ、支持軸およびころの窒素富化層の少なくとも一方の窒素含有量が0.1質量%以上0.7質量%以下である。これにより、カムフォロアの長寿命化が可能で、かかる軸受の耐久性能を向上させることができる。
【0018】
また、本発明によるカムフォロア装置は、1対の脚部を有する揺動部材と、一対の脚部間に架設される支持軸と、支持軸に回転自在に支持され、外周面がカムに接触する円筒形状であって、軸方向に複数配列され、内径がそれぞれ等しい外輪と、支持軸および外輪間の環状領域に配置される複数のころとを備える。
【0019】
かかる本発明によれば、軸方向に複数かつ同軸に配列された外輪を有することから、軸方向両端の他、これら外輪同士の隙間から潤滑油を流し込むことが可能となり、幅広な軸受であっても、軸方向中程から軸受の内部に潤滑油を容易に供給することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、外周面がカムに接触する円筒形状であって、軸方向に複数配列され、内径がそれぞれ等しい外輪を備えることから、外輪同士の隙間から潤滑油を流し込むことが可能となり、幅広なカムフォロアであっても、軸方向中程から軸受の内部に潤滑油を容易に供給することができる。したがって、カムフォロアの潤滑性能および耐久性能が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明のカムフォロアを組み込んだ可動弁機構を示す正面図である。可動弁機構1は、自動車のエンジン部品であって、軸5に揺動可能に支持されたロッカーアーム2と、ロッカーアーム2の一端に配置され、ロッカーアーム2の揺動によってエンジン燃焼室の吸排気を行う弁3と、ロッカーアーム2の他端部7に配置される支持軸6と、支持軸6の外周に回転自在に軸支される外輪11,12と、カムシャフト(図示省略)に固定され偏心部4aを有するカム4とを備える。
【0023】
上記構成の可動弁機構1は、エンジンのクランクシャフト(図示省略)の回転がタイミングベルト(図示省略)を経由してカムシャフト(図示省略)に伝達され、カム4を回転させる。そして、カム4の偏心部4aが外輪11,12の外周面に当接したときに、ロッカーアーム2が軸5を中心として揺動して弁3を押し下げる。これにより、エンジンの吸排気を行う。このとき、外輪11,12はカム4の回転に伴って回転するので、外輪11,12とカム4との当接部分のフリクションロスを低減することが可能となる。ロッカーアーム2は、その端から突出する脚部7を含めて例えば軽金属製であり、可動弁機構1の軽量化と、燃料消費率の向上が図られている。
【0024】
図2は、本実施例のカムフォロアを径方向外側から見た状態を示す図である。ロッカーアーム2の端から突出して互いに向かい合う1対の脚部7の間の領域には、円筒形状の外輪11,12が軸方向に複数配列される。図2に示すように、外輪11,12の外径は互いに等しい。
【0025】
図3は、図2のカムフォロアをIII−IIIで切断し、矢印の方向からみた状態を示す横断面図である。軸受の軸方向内側にあって外輪12と向かい合う外輪11の内側端面15には、径方向外側端から径方向内側端まで延びる溝13が形成される。溝13は径方向に延び、周方向90度毎に4箇所設けられるが、周方向間隔および溝の本数は、実施例に限定されない。外輪11と向かい合う外輪12の内側端面15にも、同様の溝13を設ける。支持軸6および外輪11,12間の環状領域には複数のころ14を配設する。ころ14は、支持軸6の外周面および外輪11,12の内周面を転走する。
【0026】
図4は、図2のカムフォロアをIV−IVで切断し、矢印の方向からみた状態を示す縦断面図である。2個の外輪11,12は内径および外径が互いに等しい。本実施例では、外輪11,12の軸長も互いに等しいが、軸長が異なっていてもよい。軸O方向に複数かつ同軸に配列された外輪11,12の外周面がカム4に接触する。この他にも、図には示さなかったが、3個以上の外輪を支持軸6の軸O方向に複数かつ同軸に配列し、これら外輪の外周面をカム4に接触させてもよい。内側端面15の径方向内側および径方向外側には、周方向に延びる面取りをそれぞれ設ける。これに対し、軸受の軸O方向外側にある反対側の外側端面16は、この外側端面16の径方向外側端16oと内側端16iとの間の領域に径方向外側端16oよりも軸方向に突出した部分16mを含む。具体的には、外側端面16は、軸線Oを含む平面における断面形状が円弧である。好ましくは、外輪11および外輪12の外側端面16の断面形状は、該端面の径方向内側端16iの軸方向位置が、該端面の径方向外側端16oの軸方向位置に等しく、これら径方向内側端16iと外側端16oとの中央16mで軸O方向に最も突出した形状である。
【0027】
ころ14の全長は、外輪11,12の軸長の2倍であり、これら外輪11,12の軸方向位置にまたがっている。あるいは、詳しくは後述するが、これら外輪11,12の軸長の合計よりも長くしてもよい。
【0028】
支持軸6は、ロッカーアーム2の端から突出して互いに向かい合う1対の脚部7,7の間に架設されている。外輪11,12およびころ14と向かい合う脚部7,7の平坦な壁面は、それぞれ軸O方向に対して直角である。好ましくは、一方の脚部7と外輪11との間に、側板17を介在させる。また、他方の脚部7と外輪12との間にも、側板17を同様に介在させる。これら2枚の側板17は中心孔17hを備えた平坦な円盤形状であり、支持軸6が中心孔17hを貫通する。側板17の外径は、外輪11,12の内径よりも大きく、かつ外輪11,12の外径よりも小さい。したがって、側板17は、カム4と接触することなく、ころ14および外輪11,12が軽金属製の脚部7に当接することを防止して、脚部7を摩耗から保護する。
【0029】
側板17と脚部7の壁面との間には、軸O方向に開いた隙間18が残されている。隙間18によって、外輪11,12は、軸Oを中心とする回転が許容され、ころ14の自転および軸Oを中心とする公転が許容される。また、これら外輪11,12、およびころ14は、若干の軸方向変位が許容される。したがって、外輪11の内側端面15と外輪12の内側端面15との間に隙間が生じる。
【0030】
また、外輪11,12の外側端面16は、その断面形状が軸O方向に突出した円弧であり、側板17の表面は平面であるため、外側端面16と側板17との間に隙間が生じる。特に、側板17の外径が、外輪11,12の中央16mの径よりも大きいため、外側端面16と側板17の径方向外側端との間に隙間が生じる。
【0031】
本実施例によれば、内径および外径が互いに等しく、外周面がカムに接触し、軸O方向に複数配列された円筒形状の外輪11および外輪12を備えることから、カムフォロアの軸方向両端の他、これら外輪11と外輪12との隙間から潤滑油を流し込むことが可能となり、軸長が長い幅広な軸受であっても、軸方向中程から軸受の内部に潤滑油を容易に供給することができる。
【0032】
また本実施例によれば、外側端面16に径方向外側端から径方向内側端まで延びる溝13を有することから、軸受の径方向外方から溝13を経由して軸受の内部に潤滑油を供給することが可能になる。したがって、隙間が閉じた状態であっても、軸受の軸方向中程において、外輪11,12の内周面と、支持軸6の外周面と、複数のころ14とを、十分に潤滑することができる。
【0033】
また本実施例によれば、外輪11および外輪12は、その外側端面16の径方向外側端16oと内側端16iとの間の領域に径方向外側端16iよりも軸O方向に突出した部分16mを含む。これにより、端面16が側板17に接触しても、端面16の径方向外側端16oと側板17との間に隙間が生じる。したがって、外輪の径方向外方から、この隙間に潤滑油を流し込むことが可能となる。
【0034】
図5は、本発明の変形実施例を示す断面図である。この変形実施例の基本構成は、上述した図1〜図4に示す実施例と共通するため、共通する基本構成については同一符号を付して説明を省略する。そして、異なる構成について以下に説明する。
【0035】
この変形実施例では、ころ14の全長は、外輪11,12の軸長の2倍よりも長い。つまり、これら外輪11,12の軸長の合計よりも長い。これにより、外輪11と外輪12との間に隙間19が生じるようにする。
【0036】
また、この変形実施例では、各外輪11,12の内側端面15および外側端面16が、平坦である。そして、内側端面15の径方向内側端には面取り15iを形成し、外側端には面取り15oを形成する。同様に、外側端面16の径方向内側端には面取り16iを形成し、外側端には面取り16oを形成する。これら面取り15i,15o,16i,16oは全周方向に亘って延びている。
【0037】
図6は、図5に示すカムフォロアが、軸O方向の一方側に片寄った場合を示す断面図である。外輪11,12およびころ14の端面が図6の左側へ片寄ると、図6の右側に位置する外輪12と側板17との間に隙間20が生じる。この場合には、径方向外方から軸受の軸方向端部の隙間20を経由して軸受の内部に潤滑油を流し込むことができる。
【0038】
この変形実施例によれば、ころ14の全長は、外輪11,12の軸長の合計よりも長いことから、外輪11と外輪12との間にある軸方向中程の隙間19を大きくすることが可能になり、カムフォロアの内部に潤滑油を容易に供給することができる。
【0039】
この変形実施例では、ころ14の全長は、外輪11の軸長と外輪12の軸長との合計よりも長いため、外輪11,12の内径面ところ14の転動面との接触長さが従来よりも短くなってしまう。そこで、外輪11および外輪12に浸炭窒化の熱処理を施し、支持軸6およびころ14に浸炭窒化および低温2次焼き入れの熱処理を施す。そして、これら外輪11,12、支持軸6、およびころ14の表層部に窒素富化層を形成する。支持軸6およびころ14の少なくとも一方の部材における窒素富化層は、そのオーステナイト結晶粒が、粒度番号の10番を超えて微細化される。さらに、この窒素富化層の残留オーステナイト量が11体積%以上25体積%以下である。さらに、この窒素富化層の窒素含有量が0.1質量%以上0.7質量%以下である。
【0040】
この変形実施例のカムフォロアと従来からある総ころ形式のカムフォロアとにつき、外輪回転型寿命試験機を用いて比較試験を行った。試験条件は、外力を与えながら回転する駆動ロールに試験体になる外輪が接触するようにカムフォロアを設置し、外輪に3000[N]の外力を与えながら、外輪を毎分7000回転させ、100℃のエンジンオイルで毎分20[ml]で外輪を潤滑した。
【0041】
比較品1の形状は、ころKの軸長および外輪Gの軸長が等しい図9の断面図に示すものである。外輪Gは1個の円筒形状であり、軸O方向に分割されていない。他の部分の形状は、図5に示す発明品と同様である。また比較品2の形状は、図5に示す発明品とすべて同様である。
【0042】
比較品1および比較品2には、表1に示すように、外輪と、ころと、支持軸とに標準熱処理を施した。具体的には、RXガス雰囲気中で、加熱温度840℃、保持時間20分で加熱後、焼入れを行い、次に180℃で90分間焼戻しを行う標準熱処理を施した。
【0043】
発明品には、表1に示すように、外輪に浸炭窒化の熱処理を施し、ころおよび支持軸に、以下に述べる熱処理を施した。具体的には、RXガスとアンモニアガスとの混合ガス雰囲気中で、浸炭窒化処理温度850℃、保持時間150分で加熱後、850℃から一次焼入れを行い、次に浸炭窒化処理温度よりも低い800℃で20分間加熱して二次焼入れを行い、180℃で90分間焼戻しを行う浸炭窒化+低温二次の熱処理を施した。
【0044】
なお発明品の外輪には、RXガスとアンモニアガスとの混合ガス雰囲気中で、加熱温度850℃、保持時間150分で加熱後、850℃から焼入れを行い、次に180℃で90分間焼戻しを行う浸炭窒化の熱処理を施した。
【0045】
【表1】

【0046】
表2は、上述した標準熱処理と、浸炭窒化の熱処理と、浸炭窒化+低温二次の熱処理による組成を示す。浸炭窒化+低温二次の熱処理によれば、オーステナイト結晶粒度(JIS G0551)は12番であり、粒度番号の10番を超えている。また、残留オーステナイト量(%)は体積比で21%であり、11体積%以上25体積%以下である。また、窒素含有量(%)は質量比で0.30%であり、0.1質量%以上0.7質量%以下である。
【0047】
【表2】

【0048】
比較試験の結果は、表1に示すように、比較品1の寿命比を1とすると、比較品2の寿命比が1.2であり、発明品の寿命比が4.3であった。
【0049】
比較品2が比較品1よりも寿命が長いのは、ころと外輪の接触長さ減少による軸受の負荷容量が低下しているにもかかわらず、軸受内に潤滑油が供給されているためと考えられる。
【0050】
この試験結果によれば、発明品の寿命比が4.3であり、優れた耐久性能を有することがわかる。これは、発明品には、図5に示す隙間19から潤滑油が十分に供給されるためと、浸炭窒化+低温二次の熱処理によるためと考えられる。
【0051】
図7は、本発明の変形実施例を示す断面図である。この変形実施例の基本構成は、上述した図1〜図4に示す実施例と共通するため、共通する基本構成については同一符号を付して説明を省略する。そして、異なる構成について以下に説明する。
【0052】
この変形実施例では外輪12の外側端面16の径方向外側端16oと内側端16iとの中央16mが、径方向外側端16oよりも軸O方向に突出している。また、外輪11の内側端面15の径方向外側端15oと内側端15iとの中央15mが、径方向外側端15oよりも軸O方向に突出している。外輪11の両端面も同様に、径方向外側端と内側端との間の領域に径方向外側端よりも軸方向に突出した部分を含む。
【0053】
これら外輪11,12の外側端面16に形成された突出部分につき付言すると、外側端面16は、外側端16oと内側端16iとのちょうど中間にある中央16mが軸方向に突出している場合の他、中央16mを含む中央部が径方向外側端16oより突出していればよい。なお図7に示すように中央部が最も突出している他、図には示さないが中央部を含む外側端16oと内側端16iとの間の領域が径方向外側端16oよりも軸方向に突出する部分を含んでしていればよい。端面16の好ましい形状として、外径端16oから最も突出した部分16mまでは内径側に向かうにつれて、軸方向突出量が徐々に大きくなり、最も突出した部分16mから内径端16iまでは内径側に向かうにつれて、軸方向突出量が徐々に小さくなる。
【0054】
この突出部分は、周方向全周で等しく突出して、周方向360°で連なる稜線を形成してもよい他、周方向で断続的に突出して、周方向に連なる稜線を形成しないものであってもよい。また、この突出部分は、外側端16oと内側端16iとの間の領域であれば、いずれの径方向位置にあってもよく、中央部に限定されない。内側端面15についても同様である。
【0055】
好ましくは、図7に示すように、両端面15,16の断面形状が、円弧である。より好ましくは、外側端面16の断面形状は、径方向内側端16iの軸方向位置が、径方向外側端16oの軸方向位置に等しく、これら径方向内側端16iと外側端16oとの中央16mで軸方向に最も突出した形状である。内側端面15についても同様である。
【0056】
これにより、外輪端面16の径方向外側端16oと、外輪端面16が向き合う脚部7または側板17との間に、隙間20が生じる。また、隣り合う外輪11と外輪12との間に隙間19が生じる。
【0057】
この変形実施例によれば、潤滑油の粘性によって外輪端面16が側板17と密着することを防止して、径方向外方から隙間19,20に潤滑油を流し込むことが可能となる。したがって、カムフォロアの潤滑性能および耐久性能が向上する。
【0058】
図8は、本発明の変形実施例を示す断面図である。この変形実施例の基本構成は、上述した図1〜図7に示す実施例と共通するため、共通する基本構成については説明を省略する。そして、異なる構成について以下に説明する。
【0059】
この変形実施例では、ころ14との線接触で不所望なエッジロードが作用することを回避するため、外輪11,12の内径面がクラウニング部21を有する。この変形実施例では、外輪11,12の内周面がクラウニング部21を有することから、外輪11,12の軸方向中央部の内径が、外輪11,12の両端部の内径よりもわずかに小さくなる。これにより、外輪11,12の両端部がころ14と接触し難くなり、外輪11,12のエッジロードを緩和することが可能になる。したがって、カムフォロアの耐久性能が益々向上する。
【0060】
また図8に示す変形実施例では、カム4との線接触で不所望なエッジロードが作用することを回避するため、外輪11,12の外周面がクラウニング部22を有する。この変形実施例では、外輪11,12の外周面がクラウニング部22を有することから、外輪11,12の軸方向中央部の外径が、外輪11,12の両端部の外径よりもわずかに大きくなる。これにより、外輪11,12の両端部がカム4と接触し難くなり、外輪11,12のエッジロードを緩和することが可能になる。したがって、カムフォロアの耐久性能が益々向上する。
【0061】
以上、図面を参照して本発明の実施形態を説明したが、本発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、本発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の1実施例になるカムフォロアを組み込んだ可動弁機構を示す正面図である。
【図2】カムフォロアを径方向外方からみた状態を示す図である。
【図3】図2のカムフォロアの横断面図である。
【図4】同カムフォロアの縦断面図である。
【図5】本発明の変形実施例を示す断面図である。
【図6】図5に示す実施例の外輪が軸方向に片寄った状態を示す図である。
【図7】本発明の変形実施例を示す断面図である。
【図8】本発明の変形実施例を示す断面図である。
【図9】従来からある比較品を示す断面図である。
【符号の説明】
【0063】
1 可動弁機構、2 ロッカーアーム、3 弁、4 カム、4a 偏心部、5 軸、6 支持軸、7 脚部 11,12 外輪、13 溝、14 ころ、15 内側端面、16 外側端面、17 側板、18,19,20 隙間、21,22 クラウニング部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面がカムに接触する円筒形状であって、軸方向に複数配列され、内径がそれぞれ等しい外輪と、
前記複数の外輪を共通に軸支する支持軸と、
前記支持軸および前記外輪間の環状領域に配置される複数のころとを備える、ロッカーアーム用カムフォロア。
【請求項2】
前記外輪は、該外輪の端面に径方向外側端から径方向内側端まで延びる溝を有する、請求項1に記載のロッカーアーム用カムフォロア。
【請求項3】
前記ころは、全長が前記複数の外輪の軸長の合計よりも長い、請求項1または2に記載のロッカーアーム用カムフォロア。
【請求項4】
前記外輪は、該外輪の端面の径方向外側端と内側端との間の領域に前記径方向外側端よりも軸方向に突出した部分を含む、請求項1〜3のいずれかに記載のロッカーアーム用カムフォロア。
【請求項5】
前記外輪の端面は、軸線を含む平面における断面形状が円弧である、請求項4に記載のロッカーアーム用カムフォロア。
【請求項6】
前記外輪の端面の断面形状は、該端面の径方向内側端の軸方向位置が、該端面の径方向外側端の軸方向位置に等しく、これら径方向内側端と外側端との中央で軸方向に最も突出した形状である、請求項5に記載のロッカーアーム用カムフォロア。
【請求項7】
前記外輪は、前記ころが転走する内周面にクラウニング部を有する、請求項1〜6のいずれかに記載のロッカーアーム用カムフォロア。
【請求項8】
前記外輪は、前記外周面にクラウニング部を有する、請求項1〜7のいずれかに記載のロッカーアーム用カムフォロア。
【請求項9】
前記外輪、前記支持軸、および前記ころの全てが窒素富化層を有し、
支持軸およびころの少なくとも一方の部材における前記窒素富化層のオーステナイト結晶粒が、粒度番号の10番を超えて微細化され、かつ、前記部材における前記窒素富化層の残留オーステナイト量が11体積%以上25体積%以下であり、かつ、前記部材における前記窒素富化層の窒素含有量が0.1質量%以上0.7質量%以下である、請求項1〜8のいずれかに記載のロッカーアーム用カムフォロア。
【請求項10】
1対の脚部を有する揺動部材と、
前記一対の脚部間に架設される支持軸と、
前記支持軸に回転自在に支持され、外周面がカムに接触する円筒形状であって、軸方向に複数配列され、内径がそれぞれ等しい外輪と、
前記支持軸および前記外輪間の環状領域に配置される複数のころとを備える、カムフォロア装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−293392(P2009−293392A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−144790(P2008−144790)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】