説明

ロボットのダイレクトティーチ制御装置

【課題】作業者がロボットと直動外部軸との間で制御対象を簡単且つ迅速に切換えれるようにする。
【解決手段】マスターコントローラ16は、第1の閾値以上の大きさを持つ外力が第1の規定時間以内で消滅する信号波形を一定時間以内に2回にわたって判定すると、ロボット1及び直動外部軸11のうち現在の制御対象としている一方を制御対象外とすると共に現在の制御対象外としている他方を制御対象として切換え、第2の閾値以上の大きさを持つ外力が第2の規定時間以上にわたって継続する信号波形を判定すると、その第2の閾値以上の大きさを持つ外力が力学センサ10に付与されている期間において現在の制御対象に対してダイレクトティーチ制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットが直動外部軸上を移動可能に構成されてなる設備に設けられ、前記ロボット及び前記直動外部軸のうち択一的に切換えている現在の制御対象に対して外部から作業器具を介して前記ロボットの手先に外力が付与されることに応じてダイレクトティーチ制御を行うロボットのダイレクトティーチ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、安全性を確保することを目的として、作業者(教示者)がロボットに直接触れてダイレクトティーチを行うのではなく、作業者が作業器具(先端部に把持機能を有する指示棒など)をロボットに触れさせてダイレクトティーチを行う方法が主流になりつつある。ロボットが直動外部軸上を移動可能な構成において作業者がロボット及び直動外部軸を制御対象として択一的に切換えてダイレクトティーチを行う場合、従来は、作業者がペンダントのボタンを操作して制御対象を切換えていた。ところが、このように作業者がペンダントのボタンを操作して制御対象を切換える構成では、作業者がダイレクトティーチを行っているロボットや直動外部軸から一旦離れ、ペンダントの場所まで移動して制御対象を切換えることになり、作業性に劣るものであった。このような事情から、作業者から見ればダイレクトティーチを行っているロボットや直動外部軸から離れることなく、制御対象を簡単且つ迅速に切換えたいという要望がある。そこで、制御対象を自動的に切換える構成が供されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】実開平6−37904号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記した特許文献1に記載されているものでは、ロボットアームのジョイントの角度が所定値未満になった場合に限って制御対象をロボットから直動外部軸に自動的に切換える構成であり、実用性に劣るという問題がある。
【0004】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ロボットが直動外部軸上を移動可能な構成において作業者がロボット及び直動外部軸を制御対象として択一的に切換えてダイレクトティーチを行う場合に、作業者が制御対象を簡単且つ迅速に切換えることができ、実用性に優れたロボットのダイレクトティーチ制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載した発明によれば、外部から作業器具(先端部に把持機能を有する指示棒など)を介してロボットの手先に付与された外力を力学センサが検知すると、信号波形判定手段は、力学センサが検知した外力に対応する信号波形を入力して判定する。制御手段は、第1の閾値以上の大きさを持つ外力が第1の規定時間以内で消滅する信号波形を一定時間以内に2回以上にわたって信号波形判定手段が判定すると、ロボット及び直動外部軸を非可動状態に設定した上でロボット及び直動外部軸のうち現在の制御対象としている一方を制御対象外とすると共に現在の制御対象外としている他方を制御対象として切換え、切換えた後の新たな制御対象を可動状態に設定し、第1の閾値よりも小さい第2の閾値以上の大きさを持つ外力が第1の規定時間よりも長い第2の規定時間以上にわたって継続する信号波形を信号波形判定手段が判定すると、その第2の閾値以上の大きさを持つ外力が前記力学センサに付与されている期間において現在の制御対象に対してダイレクトティーチ制御を行う。
【0006】
これにより、第1の閾値以上の大きさを持つ第1の規定時間以内で消滅する外力を一定時間以内に2回以上にわたって作業器具を介してロボットの手先に付与することにより、ロボットと直動外部軸との間で制御対象を切換えることができ、第1の閾値よりも小さい第2の閾値以上の大きさを持つ第1の規定時間よりも長い第2の規定時間以上にわたって継続する外力を作業器具を介してロボットの手先に付与することにより、現在の制御対象に対してダイレクトティーチ制御を行うことができる。
【0007】
すなわち、外力を作業器具を介してロボットの手先に付与する態様を変えることで、制御対象を切換えるのか現在の制御対象に対してダイレクトティーチ制御を行うのかを自在に選択することができ、作業者がダイレクトティーチを行っているロボットや直動外部軸から一旦離れることなく、制御対象を簡単且つ迅速に切換えることができ、作業性を高めることができ、しかも、ロボットの姿勢に関係なく制御対象を切換えることができ、実用性を高めることができる。
【0008】
要するに、本発明は、作業者がロボットに直接触れてダイレクトティーチを行うのではなく、作業者が作業器具をロボットに触れさせてダイレクトティーチを行う方法では、作業者がダイレクトティーチを行うときに作業器具でロボットの手先を確実に(強固に)把持した場合には、力学センサから出力される信号波形は台形形状の波形になり、一方、作業者が作業器具でロボットの手先を叩いた場合には、力学センサから出力される信号波形は鋭角な頂上を持つ波形になり、しかも、付与された力の最大値を表す頂点は把持した場合よりも高くなり、このように作業者が作業器具でロボットの手先を把持した場合とロボットの手先を叩いた場合とでは力学センサから出力される信号波形に明確な差が発生するという点に着目し、制御対象を切換える動作と現在の制御対象に対してダイレクトティーチ制御を行う動作とを各々の信号波形に対応付け、力学センサから出力される信号波形が鋭角な頂上を持つ波形である場合には、制御対象を切換える動作を行い、一方、力学センサから出力される信号波形が台形形状の波形である場合には、現在の制御対象に対してダイレクトティーチ制御を行うことにより、制御対象を切換えるのか現在の制御対象に対してダイレクトティーチ制御を行うのかを自在に選択可能とするものである。
【0009】
請求項2に記載した発明によれば、信号波形判定手段は、力学センサから信号波形を入力した時点から当該信号波形の入力が継続している所定時間が経過した後に当該力学センサから入力している信号波形の判定を開始する。これにより、例えば作業者が意図に反して作業器具をロボットの手先に触れさせてしまった場合を、制御対象を切換えるのか現在の制御対象に対してダイレクトティーチ制御を行うのかを選択する判定から除外することができ、実用性をより一層高めることができる。特に作業器具が大型であり(全長が長く)、作業者が把持する基端部からロボットの手先に触れさせる先端部までの距離が長ければ、その分、所謂ぶれが大きくなり、作業者が意図に反して作業器具をロボットの手先に触れさせてしまう可能性が高くなり、その効果は大きいと言える。
【0010】
請求項3に記載した発明によれば、制御手段は、ロボットに対してダイレクトティーチ制御を行っているときに、ロボットの可動位置が予め設定されている当該ロボットのダイレクトティーチ制御における可動範囲の限界に達した旨をロボット可動判定手段が判定した時点において外力がロボットの手先に付与され続けている旨を力学センサが検知すると、直動外部軸の可動位置が予め設定されている当該直動外部軸のダイレクトティーチ制御における可動範囲の限界に達していない旨を直動外部軸可動判定手段が判定していることを条件として、ロボットを制御対象外とすると共に直動外部軸を制御対象として切換える。これにより、予め設定されているロボットのダイレクトティーチ制御における可動範囲を越えてロボットに対するダイレクトティーチ制御を行ってしまう事態を未然に回避することができ、しかも、作業者の操作を必要とすることなく制御対象をロボットから直動外部軸に自動的に切換えることができる。
【0011】
請求項4に記載した発明によれば、制御手段は、直動外部軸に対してダイレクトティーチ制御を行っているときに、直動外部軸の可動位置が予め設定されている当該直動外部軸のダイレクトティーチ制御における可動範囲の限界に達した旨を直動外部軸可動判定手段が判定した時点において外力がロボットの手先に付与され続けている旨を力学センサが検知すると、ロボットの可動位置が予め設定されている当該ロボットのダイレクトティーチ制御における可動範囲の限界に達していない旨をロボット可動判定手段が判定していることを条件として、直動外部軸を制御対象外とすると共にロボットを制御対象として切換える。これにより、予め設定されている直動外部軸のダイレクトティーチ制御における可動範囲を越えて直動外部軸に対するダイレクトティーチ制御を行ってしまう事態を未然に回避することができ、しかも、作業者の操作を必要とすることなく制御対象を直動外部軸からロボットに自動的に切換えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。図1において、ロボット1は、多関節型の垂直ロボットであり、第1のベース2と、第1のベース2に垂直方向(z軸方向)を回転中心軸として旋回可能に支持されている第2のベース3と、第2のベース3に水平方向(xy平面方向)を回転中心軸として旋回可能に支持されている第1のアーム4と、第1のアーム4に水平方向を回転中心軸として旋回可能に支持されている第2のアーム5と、第2のアーム5に水平方向を回転中心軸として旋回可能に支持されているに支持されている第3のアーム6と、第3のアーム6に水平方向を回転中心軸として旋回可能に支持されている第4のアーム7と、第4のアーム7に回転可能に支持されている手首8とを備えて構成されている。
【0013】
上記した第2のベース3、第1のアーム4、第2のアーム5、第3のアーム6、第4のアーム7及び手首8は、ロボット1におけるリンクとして機能し、各リンクは下段のリンクに対して回転関節により回転可能に連結されており、リンク同士を連結する回転関節には前段のリンク側に固定されているモータの回転を減速して次段のリンクに伝達する減速装置(図示せず)が設けられている。また、最先端のリンクである手首8にはフランジ(図示せず)が設けられ、そのフランジにはワークを把持するためのハンド9が取付けられている。また、手首8には外部から付与された外力を検知するための力学センサ10が取付けられている。
【0014】
上記したロボット1は直動外部軸11上を移動可能に搭載されている。直動外部軸11は、1本のx軸レール12と2本のy軸レール13及びy軸レール14とが組合わされて構成されている。x軸レール12の上面部12aにはロボット1を移動させるためのレール機構(図示せず)が形成されており、ロボット1はx軸レール12の上面部12aをx軸方向に移動可能に搭載されている。y軸レール13の上面部13a及びy軸レール14の上面部14aにはx軸レール12を移動させるためのレール機構(図示せず)が形成されており、x軸レール12はy軸レール13の上面部13a及びy軸レール14の上面部14aをy軸方向に移動可能に搭載されている。すなわち、ロボット1はxy平面の任意方向に直動外部軸11上を移動可能に搭載されている。
【0015】
さて、作業者は、ロボット1及び直動外部軸11のダイレクトティーチを行う。ロボット1のダイレクトティーチとはロボット1の直動外部軸11上での位置を固定させた状態でロボット1の姿勢を変化させるものであり、直動外部軸11のダイレクトティーチとはロボット1の姿勢を固定させた状態でロボット1の直動外部軸11上での位置を変化させるものである。作業者は、ロボット1及び直動外部軸11のダイレクトティーチを行う場合には、ロボット1の手先である手首8に直接触れてダイレクトティーチを行うのではなく、ロボット1から離れた位置において棒状の作業器具15(指示棒)を用い、作業器具15の基端側15aを把持すると共に先端側15bをロボット1の手首8に触れさせることで外力を作業器具15を介して手首8に付与し、ロボット1及び直動外部軸11のダイレクトティーチを行う。作業器具15の先端側15bはロボット1の手首8を確実に把持可能となるように円柱形状をなす手首8の曲面形状に対応して「S」字形状に成形されている。
【0016】
作業者が作業器具15の先端側15bをロボット1の手首8に触れさせることで外力を手首8に付与すると、上記した手首8に取付けられている力学センサ10は、その手首8に付与された外力を検知し、その検知した外力を表す外力検知信号をマスターコントローラ16に出力する。
【0017】
マスターコントローラ16は、信号波形判定部17(本発明でいう信号波形判定手段)と制御部18(本発明でいう制御手段、ロボット可動判定手段、直動外部軸可動判定手段)とを有しており、信号波形判定部17は、力学センサ10から外力検知信号を入力すると、その入力した外力検知信号の信号波形を判定し、その判定結果を制御部18に出力する。
【0018】
制御部18は、ロボット1の可動を制御する機能を有すると共に、ロボット1のx軸レール12上での移動を制御するx軸コントローラ19、x軸レール12のy軸レール13及びy軸レール14上での移動を制御するy軸コントローラ20、操作部及び表示部を有するティーチングペンダント21を接続している。制御部18は、ダイレクトティーチ制御モードとしてロボット1を制御対象としてダイレクトティーチ制御を行うロボット制御モードと直動外部軸11を制御対象としてダイレクトティーチ制御を行う直動外部軸制御モードとを択一的に設定して(切換えて)行う。
【0019】
この場合、制御部18は、ロボット制御モードを設定しているときには、作業者が作業器具15を介して手首8に外力を付与すると、その手首8に付与された外力が所定条件を満たしていることを条件として、ロボット1の直動外部軸11上での位置を固定させた状態で、その手首8に付与された外力に応じてロボット1の姿勢を変化させる。一方、制御部18は、直動外部軸制御モードを設定しているときには、作業者が作業器具15を介して手首8に外力を付与すると、その手首8に付与された外力が所定条件を満たしていることを条件として、ロボット1の姿勢を固定させた状態で、その手首8に付与された外力に応じてロボット1の直動外部軸11での位置を変化させる。また、制御部18は、作業者が作業器具15を介して手首8に付与させた外力が所定条件を満たしていることを条件として、上記したロボット制御モードと直動外部軸制御モードとを切換える。
【0020】
ロボット1は、自分の姿勢を検知し、その検知した自分の姿勢を表す姿勢検知信号をマスターコントローラ16に出力する。x軸コントローラ19は、ロボット1のx軸レール12上での位置座標を検知し、その検知した位置座標を表す位置座標検知信号をマスターコントローラ16に出力し、y軸コントローラ20は、x軸レール12のy軸レール13及びy軸レール14上での位置座標を検知し、その検知した位置座標を表す位置座標検知信号をマスターコントローラ16に出力する。
【0021】
制御部18は、例えば安全性を考慮して決定されたロボット1の可動範囲の限界及び直動外部軸11の可動範囲の限界を記憶しており、ロボット1から姿勢検知信号を入力すると、その入力した姿勢検知信号と当該記憶しているロボット1の可動範囲の限界とを比較することでロボット1の可動位置が可動範囲の限界に達したか否かを判定し、x軸コントローラ19から位置座標検知信号を入力したりy軸コントローラ20から位置座標検知信号を入力したりすると、それら入力した位置座標検知信号と当該記憶している直動外部軸11の可動範囲とを比較することで直動外部軸11の可動位置が可動範囲の限界に達したか否かを判定する。
【0022】
次に、上記した構成の作用について、図2ないし図5を参照して説明する。尚、制御部18は、ロボット1及び直動外部軸11に電源が投入された直後の初期状態ではロボット1を制御対象として設定する。作業者は、現在の制御対象を切換える場合には、作業器具15の先端部15bで手首8を叩き、一方、現在の制御対象に対してダイレクトティーチを行う場合には、作業器具15の先端部15bで手首8を把持する。
【0023】
マスターコントローラ16において、制御部18は、力学センサ10から力学検知信号を入力したか否かを判定し、外力がロボット1の手首8に付与されたか否かを判定している(ステップS1)。ここで、制御部18は、作業者が作業器具15の先端部15bで手首8を叩いたか或いは把持したことにより、力学センサ10から力学検知信号を入力した旨を判定し、外力がロボット1の手首8に付与された旨を判定すると(ステップS1にて「YES」)、計時を開始し(ステップS2)、ロボット1の手首8に付与された外力の大きさを判定する(ステップS3,S4)。
【0024】
制御部18は、ロボット1の手首8に付与された外力の大きさが第1の閾値以上である旨を判定すると(ステップS3にて「YES」)、そのロボット1の手首8に付与された第1の閾値以上の大きさを持つ外力が第1の規定時間以内で消滅したか否かを判定する(ステップS5)。ここで、制御部18は、ロボット1の手首8に付与された第1の閾値以上の大きさを持つ外力が第1の規定時間以内で消滅した旨を判定すると(ステップS5にて「YES」)、ダイレクトティーチ制御モード切換判定に移行する(ステップS6)。一方、制御部18は、ロボット1の手首8に付与された第1の閾値以上の大きさを持つ外力が第1の規定時間以内で消滅しなかった旨を判定すると(ステップS5にて「NO」)、ダイレクトティーチ制御モード切換判定に移行することなく計時を終了し(ステップS7)、一連の処理を終了する。
【0025】
また、制御部18は、ロボット1の手首8に付与された外力の大きさが第1の閾値以上ではないが第2の閾値(第1の閾値よりも小さい)以上である旨を判定すると(ステップS4にて「YES」)、そのロボット1の手首8に外力が付与された第2の閾値以上の大きさを持つ外力が第2の規定時間以上にわたって継続したか否かを判定する(ステップS8)。ここで、制御部18は、ロボット1の手首8に付与された第2の閾値以上の大きさを持つ外力が第2の規定時間以上にわたって継続した旨を判定すると(ステップS8にて「YES」)、ダイレクトティーチ制御に移行する(ステップS9)。一方、制御部18は、ロボット1の手首8に付与された第2の閾値以上の大きさを持つ外力が第2の規定時間以上にわたって継続しなかった旨を判定すると(ステップS8にて「NO」)、ダイレクトティーチ制御に移行することなく計時を終了し(ステップS7)、一連の処理を終了する。
【0026】
尚、制御部18は、ロボット1の手首8に付与された外力の大きさが第2の閾値以上でない旨を判定すると(ステップS4にて「NO」)、ダイレクトティーチ制御モード切換判定及びダイレクトティーチ制御のいずれにも移行することなく計時を終了し(ステップS7)、一連の処理を終了する。
【0027】
さて、制御部18は、ダイレクトティーチ制御モード切換判定に移行すると、力学センサ10から力学検知信号を入力したか否かを再度判定し、外力がロボット1の手首8に付与されたか否かを再度判定すると共に(ステップS11)、最初に外力がロボット1の手首8に付与された直後から一定時間が経過したか否かを判定する(ステップS12)。ここで、制御部18は、最初に外力がロボット1の手首8に付与された直後から一定時間が経過する前に、作業者が作業器具15の先端部15bで手首8を叩いたか或いは把持したことにより、力学センサ10から力学検知信号を入力した旨を再度判定し、外力がロボットの手首8に付与された旨を再度判定すると(ステップS11にて「YES」)、そのロボット1の手首8に付与された外力の大きさが第1の閾値以上であるか否かを再度判定する(ステップS13)。
【0028】
ここで、制御部18は、ロボット1の手首8に付与された外力の大きさが第1の閾値以上である旨を再度判定すると(ステップS13にて「YES」)、そのロボット1の手首8に付与された第1の閾値以上の大きさを持つ外力が第1の規定時間以内で消滅したか否かを再度判定する(ステップS14)。そして、制御部18は、そのロボット1の手首8に付与された第1の閾値以上の大きさを持つ外力が第1の規定時間以内で消滅した旨を再度判定すると(ステップS14にて「YES」)、ロボット1及び直動外部軸11を非可動状態に設定し(ステップS15)、ロボット1及び直動外部軸11のうち現在の制御対象としている一方を制御対象外とすると共に現在の制御対象外としている他方を制御対象として切換える(ステップS16)。そして、制御部18は、切換えた新たな制御対象を可動状態に設定し(ステップS17)、ダイレクトティーチ制御モード切換判定を終了してリターンする。
【0029】
尚、制御部18は、力学センサ10から力学検知信号を入力した旨を再度判定する前に、最初に外力がロボット1の手首8に付与された直後から一定時間が経過した旨を判定したり(ステップS12にて「YES」)、ロボット1の手首8に付与された外力の大きさが第1の閾値以上でない旨を判定したり(ステップS13にて「NO」)、ロボット1の手首8に付与された第1の閾値以上の大きさを持つ外力が第1の規定時間以内で消滅しなかった旨を判定したりすると(ステップS14にて「NO」)、制御対象を切換えることなく、ダイレクトティーチ制御モード切換判定を終了してリターンする。
【0030】
すなわち、作業者が作業器具15の先端部15bで手首8を第1の閾値以上の大きさの力で一定時間以内に2回叩いた場合には、信号波形判定部17は、力学センサ10からの外力検知信号を図5(a)示す信号波形により入力し、その入力した外力検知信号を信号処理することにより、図5(b)示す信号波形を生成することになるので、制御部18は、信号波形判定部17が生成した信号波形を認識することにより、ダイレクトティーチ制御モード切換判定に移行してロボット1と直動外部軸11との間で制御対象を択一的に切換える。
【0031】
また、制御部18は、ダイレクトティーチ制御に移行すると、現在のダイレクトティーチ制御モードがロボット制御モード及び直動外部軸制御モードのいずれであるかを判定する(ステップS21)。制御部18は、現在のダイレクトティーチ制御モードがロボット制御モードである旨を判定すると、外力の付与が継続している限りにおいてロボット1の可動位置が予め記憶している可動範囲の限界に達したか否かを判定する(ステップS22,S23)。ここで、制御部18は、ロボット1の可動位置が予め記憶している可動範囲の限界に達することなく、外力の付与が完了した旨を判定すると(ステップS22にて「NO」)、ダイレクトティーチ制御を終了してリターンする。
【0032】
一方、制御部18は、ロボット1の可動位置が予め記憶している可動範囲の限界に達した以降でも外力の付与が継続している旨を判定すると(ステップS23にて「YES」)、直動外部軸11の可動位置が予め記憶している可動範囲の限界に達しているか否かを判定する(ステップS24)。そして、制御部18は、直動外部軸11の可動位置が予め記憶している可動範囲の限界に達していない旨を判定すると(ステップS24にて「NO」)、ロボット1及び直動外部軸11を非可動状態に設定し(ステップS25)、現在の制御対象であるロボット1を制御対象外とすると共に現在の制御対象外である直動外部軸11を制御対象として切換え(ステップS26)、切換えた新たな制御対象である直動外部軸11を可動状態に設定し(ステップS27)、ステップS21に戻って上記した処理を繰返して行う。
【0033】
これに対して、制御部18は、現在のダイレクトティーチ制御モードが直動外部軸制御モードである旨を判定すると、外力の付与が継続している限りにおいて直動外部軸11の可動位置が予め記憶している可動範囲の限界に達したか否かを判定する(ステップS28,S29)。ここで、制御部18は、直動外部軸11の可動位置が予め記憶している可動範囲の限界に達することなく、外力の付与が完了した旨を判定すると(ステップS28にて「NO」)、ダイレクトティーチ制御を終了してリターンする。
【0034】
一方、制御部18は、直動外部軸11の可動位置が予め記憶している可動範囲の限界に達した以降でも外力の付与が継続している旨を判定すると(ステップS29にて「YES」)、ロボット1の可動位置が予め記憶している可動範囲の限界に達しているか否かを判定する(ステップS30)。そして、制御部18は、ロボット1の可動位置が予め記憶している可動範囲の限界に達していない旨を判定すると(ステップS30にて「NO」)、ロボット1及び直動外部軸11を非可動状態に設定し(ステップS25)、現在の制御対象である直動外部軸11を制御対象外とすると共に現在の制御対象外であるロボット1を制御対象として切換え(ステップS26)、切換えた新たな制御対象であるロボット1を可動状態に設定し(ステップS27)、ステップS21に戻って上記した処理を繰返して行う。
【0035】
すなわち、作業者が作業器具15の先端部15bで手首8を第1の閾値以上の大きさの力で把持した場合には、信号波形判定部17は、力学センサ10からの外力検知信号を図5(c)に示す信号波形により入力し、その入力した外力検知信号を信号処理することにより、図5(d)に示す信号波形を生成することになるので、制御部18は、信号波形判定部17が生成した信号波形を認識することにより、ダイレクトティーチ制御に移行してダイレクトティーチ制御を行う。尚、上記した図5では、「F1」が第1の閾値であり、「F2(<F1)」が第2の閾値である。また、「T1」が第1の規定時間であり、例えば数10ミリ〜数100ミリ秒である。「T2(>T1)」が第2の規定時間であり、例えば数100ミリ〜数秒である。
【0036】
以上に説明したように本実施形態によれば、第1の閾値以上の大きさを持つ外力が第1の規定時間以内で消滅する信号波形を一定時間以内に2回にわたって判定すると、ロボット1及び直動外部軸11のうち現在の制御対象としている一方を制御対象外とすると共に現在の制御対象外としている他方を制御対象として切換え、第2の閾値以上の大きさを持つ外力が第2の規定時間以上にわたって継続する信号波形を判定すると、その第2の閾値以上の大きさを持つ外力が力学センサ10に付与されている期間において現在の制御対象に対してダイレクトティーチ制御を行うように構成したので、外力を作業器具15を介してロボット1の手先に付与する態様を変えることで、制御対象を切換えるのか現在の制御対象に対してダイレクトティーチ制御を行うのかを自在に選択することができる。これにより、作業者がダイレクトティーチを行っているロボット1や直動外部軸11から一旦離れることなく、制御対象を簡単且つ迅速に切換えることができ、作業性を高めることができ、しかも、ロボット1の姿勢に関係なく制御対象を切換えることができ、実用性を高めることができる。
【0037】
また、ロボット1に対してダイレクトティーチ制御を行っているときに、ロボット1の可動位置が予め設定されている当該ロボット1のダイレクトティーチ制御における可動範囲の限界に達した時点で外力がロボット1の手先に付与され続けていると、直動外部軸11の可動位置が予め設定されている当該直動外部軸11のダイレクトティーチ制御における可動範囲の限界に達していなければ、ロボット1を制御対象外とすると共に直動外部軸11を制御対象として切換えるように構成したので、予め設定されている可動範囲を越えてロボット1に対するダイレクトティーチ制御を行ってしまう事態を未然に回避することができ、しかも、作業者の操作を必要とすることなく制御対象をロボット1から直動外部軸11に自動的に切換えることができる。
【0038】
さらに、これとは反対に、直動外部軸11に対してダイレクトティーチ制御を行っているときに、直動外部軸11の可動位置が予め設定されている当該直動外部軸11のダイレクトティーチ制御における可動範囲の限界に達した時点で外力がロボット1の手先に付与され続けていると、ロボット1の可動位置が予め設定されている当該ロボット1のダイレクトティーチ制御における可動範囲の限界に達していなければ、直動外部軸11を制御対象外とすると共にロボット1を制御対象として切換えるように構成したので、予め設定されている可動範囲を越えて直動外部軸11に対するダイレクトティーチ制御を行ってしまう事態を未然に回避することができ、しかも、作業者の操作を必要とすることなく制御対象を直動外部軸11からロボット1に自動的に切換えることができる。
【0039】
本発明は、上記した実施形態にのみ限定されるものではなく、以下のように変形または拡張することができる。
外力がロボット1の手首8に付与された旨を判定した直後にロボット1の手首8に付与された外力の大きさを判定するようにしたが、外力がロボット1の手首8に付与された旨を判定してから外力の付与が継続している所定時間が経過した後にロボット1の手首8に付与されている外力の大きさを判定するようにしても良い。このように構成すれば、例えば作業者が意図に反して作業器具15をロボット1の手先に触れさせてしまった場合を、制御対象を切換えるのか現在の制御対象に対してダイレクトティーチ制御を行うのかを選択する判定から除外することができ、実用性をより一層高めることができる。
【0040】
第1の閾値以上の大きさを持つ外力が第1の規定時間以内で消滅する信号波形を一定時間以内に2回にわたって判定した場合に制御対象を切換えるようにしたが、第1の閾値以上の大きさを持つ外力が第1の規定時間以内で消滅する信号波形を一定時間以内に3回以上にわたって判定した場合に制御対象を切換えるようにしても良い。この第1の閾値以上の大きさを持つ外力が第1の規定時間以内で消滅する信号波形を判定する回数は作業者が制御対象を切換えたいという意思を反映するものであり、判定する回数を多くすれば、制御対象を切換える精度は向上するが、作業者のスキルや制御対象を切換える頻度や作業者に与えられている作業時間などを考慮して判定する回数を設定すれば良い。
【0041】
直動外部軸11が1本のx軸レール12と2本のy軸レール13及びy軸レール14とが組合わされて構成されている場合を説明したが、直動外部軸11が1本の軸レールから構成されていても良い。また、ロボット1は他の形態でも良いし、作業器具は他の形状でも良い。
【0042】
制御対象を切換える直前に制御対象を切換える旨を作業者に通知したり、制御対象を切換えた直後に制御対象を切換えた旨を作業者に通知したりしても良い。
複数の作業者が交替してダイレクトティーチを行うような態様において、第1の閾値、第2の閾値、第1の規定時間、第2の規定時間が複数の作業者で同じ値であっても良いし、複数の作業者毎に異なる値であっても良い。すなわち、例えば作業者毎の固有値をマスターコントローラ16に予め記憶しておき、作業者が作業する前に自身を識別する作業者コード(作業者ID)をマスターコントローラ16に読取らせて自身の固有値を読出し、その読出した値を用いて上記した処理を行うことにより、作業者が自身に固有の値を用いて制御対象を切換えるのか現在の制御対象に対してダイレクトティーチ制御を行うのかを自在に選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施形態を概略的に示す図
【図2】フローチャート(その1)
【図3】フローチャート(その2)
【図4】フローチャート(その3)
【図5】信号波形を示す図
【符号の説明】
【0044】
図面中、1はロボット、11は直動外部軸、17は信号波形判定部(信号波形判定手段)、18は制御部(制御手段、ロボット可動判定手段、直動外部軸可動判定手段)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットが直動外部軸上を移動可能に構成されてなる設備に設けられ、前記ロボット及び前記直動外部軸のうち択一的に切換えている現在の制御対象に対して外部から作業器具を介して前記ロボットの手先に外力が付与されることに応じてダイレクトティーチ制御を行う制御手段を備えたロボットのダイレクトティーチ制御装置において、
外部から作業器具を介して前記ロボットの手先に付与された外力を検知する力学センサと、
前記力学センサが検知した外力に対応する信号波形を入力して判定する信号波形判定手段とを備え、
前記制御手段は、第1の閾値以上の大きさを持つ外力が第1の規定時間以内で消滅する信号波形を一定時間以内に2回以上にわたって前記信号波形判定手段が判定した場合に、前記ロボット及び前記直動外部軸を非可動状態に設定した上で前記ロボット及び前記直動外部軸のうち現在の制御対象としている一方を制御対象外とすると共に現在の制御対象外としている他方を制御対象として切換え、切換えた後の新たな制御対象を可動状態に設定し、前記第1の閾値よりも小さい第2の閾値以上の大きさを持つ外力が前記第1の規定時間よりも長い第2の規定時間以上にわたって継続する信号波形を前記信号波形判定手段が判定した場合に、その第2の閾値以上の大きさを持つ外力が前記力学センサに付与されている期間において現在の制御対象に対してダイレクトティーチ制御を行うことを特徴とするロボットのダイレクトティーチ制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載したロボットのダイレクトティーチ制御装置において、
前記信号波形判定手段は、前記力学センサから信号波形を入力した時点から当該信号波形の入力が継続している所定時間が経過した後に当該力学センサから入力している信号波形の判定を開始することを特徴とするロボットのダイレクトティーチ制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載したロボットのダイレクトティーチ制御装置において、
前記ロボットの可動位置が予め設定されている当該ロボットのダイレクトティーチ制御における可動範囲の限界に達したか否かを判定するロボット可動判定手段と、
前記直動外部軸の可動位置が予め設定されている当該直動外部軸のダイレクトティーチ制御における可動範囲の限界に達した否かを判定する直動外部軸可動判定手段とを備え、
前記制御手段は、前記ロボットに対してダイレクトティーチ制御を行っているときに、前記ロボットの可動位置が予め設定されている当該ロボットのダイレクトティーチ制御における可動範囲の限界に達した旨を前記ロボット可動判定手段が判定した時点において外力が前記ロボットの手先に付与され続けている旨を前記力学センサが検知した場合に、前記直動外部軸の可動位置が予め設定されている当該直動外部軸のダイレクトティーチ制御における可動範囲の限界に達していない旨を前記直動外部軸可動判定手段が判定していることを条件として、前記ロボットを制御対象外とすると共に前記直動外部軸を制御対象として切換えることを特徴とするロボットのダイレクトティーチ制御装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載したロボットのダイレクトティーチ制御装置において、
前記直動外部軸の可動位置が予め設定されている当該直動外部軸のダイレクトティーチ制御における可動範囲の限界に達した否かを判定する直動外部軸可動判定手段と、
前記ロボットの可動位置が予め設定されている当該ロボットのダイレクトティーチ制御における可動範囲の限界に達したか否かを判定するロボット可動判定手段と
を備え、
前記制御手段は、前記直動外部軸に対してダイレクトティーチ制御を行っているときに、前記直動外部軸の可動位置が予め設定されている当該直動外部軸のダイレクトティーチ制御における可動範囲の限界に達した旨を前記直動外部軸可動判定手段が判定した時点において外力が前記ロボットの手先に付与され続けている旨を前記力学センサが検知した場合に、前記ロボットの可動位置が予め設定されている当該ロボットのダイレクトティーチ制御における可動範囲の限界に達していない旨を前記ロボット可動判定手段が判定していることを条件として、前記直動外部軸を制御対象外とすると共に前記ロボットを制御対象として切換えることを特徴とするロボットのダイレクトティーチ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−297853(P2009−297853A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−156540(P2008−156540)
【出願日】平成20年6月16日(2008.6.16)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】