ロボットハンドならびにその制御システム、制御方法および制御プログラム
【課題】物体がその載置箇所から安定に持ち上げられるようにハンドの動作を制御することができるシステム等を提供する。
【解決手段】ハンド1が有する第1種の指機構11〜13の動きにより物体がつままれた上で、この物体の一部を載置箇所に当接させたままで他の部分が持ち上げられる。さらに、手の平部10の位置および姿勢が制御されることにより、手の平部10と物体との当接箇所が広げられる。そして、複数の指機構11〜15の動きが制御されることにより当該複数の指機構11〜15により物体が握られる。
【解決手段】ハンド1が有する第1種の指機構11〜13の動きにより物体がつままれた上で、この物体の一部を載置箇所に当接させたままで他の部分が持ち上げられる。さらに、手の平部10の位置および姿勢が制御されることにより、手の平部10と物体との当接箇所が広げられる。そして、複数の指機構11〜15の動きが制御されることにより当該複数の指機構11〜15により物体が握られる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手の平および手の平から延設されている複数の指を備え、手の平の位置および姿勢の調節、ならびに、複数の指のそれぞれの動きにより物体の把持作業等を実行するロボットハンドに関する。
【背景技術】
【0002】
物体を把持した上で、この物体を持ち替えるまたは持ち方を変えるようにロボットハンドの動作を制御する手法が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−349491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ある場所に載置されている物体が複数の指機構によりつままれ、しっかりと握られていない状態でこの場所から持ち上げられた場合、複数の指機構により指機構の力が不十分であるために物体が落下する可能性がある。特に、複数の指機構によりつまみあげられた際の物体のバランスが偏向している場合には、物体の姿勢が変化してしまい、その後、当該物体を握る際に支障をきたす可能性がある。物体を確実につまみあげようとするために指機構の力を強めることが考えられるが、その分だけ指機構を駆動させるための駆動機構の重量化および大型化を招くことになるので好ましくない。
【0005】
そこで、本発明は、物体がその載置箇所から安定に持ち上げられるようにハンドの動作を制御することができるシステム等を提供することを解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための本発明の制御システムは、手の平部と、前記手の平部から延設されている複数の指機構とを備えているロボットハンドの制御システムであって、前記手の平部の位置および姿勢、ならびに、物体の位置および姿勢を認識する第1演算処理要素と、前記第1演算処理要素による認識結果に基づき、前記手の平部の位置および姿勢ならびに前記複数の指機構の動きを制御する第2演算処理要素とを備え、前記第2演算処理要素が前記複数の指機構のうち2本以上の第1種の指機構の動きを制御することにより、ある箇所に載置されている前記物体を前記第1種の指機構につまませ、前記手の平部の位置および姿勢ならびに前記第1種の指機構の動きのうち一部または全部を制御することにより、前記物体が前記第1種の指機構によりつままれた状態で、前記物体の一部が前記箇所に当接している一方、他の部分が前記箇所から浮くように前記物体の姿勢を変化させるとともに前記手の平部の一部を前記物体に当接させ、前記複数の指機構のうち前記第1種の指機構と区分されている第2種の指機構の動きを制御することにより、前記第2種の指機構に前記物体の前記面から浮いている部分をつかませ、前記手の平部の位置、姿勢または位置および姿勢を制御することにより、前記第2種の指機構により前記物体がつかまれている状態で前記手の平部と前記物体との当接箇所の面積を増加させ、かつ、前記第1種の指機構の動きを制御することにより、前記第2種の指機構に加えて前記第1種の指機構に前記物体を握らせることを特徴とする。
【0007】
本発明の制御システムによれば、第1種の指機構の動きにより物体がつままれた上で、この物体の一部を載置箇所に当接させたままで他の部分が持ち上げられる。この際、物体の全質量が第1種の指機構にかかるわけではないので、物体をつまみ上げる程度に第1種の指機構の力を強める必要がない。したがって、第1種の指機構の駆動機構の軽量化または小型化が図られうる。
【0008】
次に、手の平部の位置、姿勢または位置および姿勢が制御されることにより、手の平部と当該物体との当接箇所が広げられた上で、複数の指機構の動きが制御されることにより当該複数の指機構により物体が握られる。このため、物体が手の平部および複数の指機構のそれぞれに当接した状態でしっかりと握られる。そして、ハンドによりしっかりと握られた状態で物体がその載置箇所から安定に持ち上げられうる。
【0009】
なお、本発明の構成要素が情報を「認識する」とは、コンピュータのハードウェア資源(CPUなど)としての当該構成要素が、情報を記憶装置から読み出すこと、情報をデータベースから検索すること、情報を受信すること、センサから出力等された基礎情報に基づいて適宜演算処理を実行することにより情報を測定、算定、推定または予測すること、および、情報を記憶装置に保存すること等、情報を必要とする演算処理等のために情報を利用可能な状態に準備するあらゆる情報演算処理を意味する。
【0010】
第1発明の制御システムにおいて、前記第1演算処理要素が、前記物体における質量中心位置をはさんで質量密度が高い重量部分と、前記重量部分よりも質量密度が低い軽量部分との区分を認識し、前記第2演算処理要素が前記第1種の指機構の動きを制御することにより、前記箇所に載置されている前記物体の前記軽量部分を前記第1種の指機構につまませ、前記手の平部の位置および姿勢ならびに前記第1種の指機構の動きのうち一部または全部を制御することにより、前記物体の軽量部分が前記第1種の指機構によりつままれた状態で、前記物体が前記重量部分において前記箇所に当接している一方、前記軽量部分が前記箇所から浮くように前記物体の姿勢を変化させるとともに前記手の平部を部分的に前記物体に当接させてもよい(第2発明)。
【0011】
当該構成の制御システムによれば、物体の質量分布の偏向性に鑑みて、第1種の指機構につまませる場所が選定されるので、第1種の指機構にかかる負荷が軽減される。このため、第1種の指機構によりつままれた状態で変更された物体の姿勢が安定に維持されうる。したがって、これに続いて前記のようにハンドにより物体がしっかりと握られることにより物体がその載置箇所から安定に持ち上げられうる。
【0012】
第1または第2発明の制御システムにおいて、前記第2演算処理要素が、前記第2種の指機構の動きを制御することにより、前記第2種の指機構に前記物体の前記箇所から浮いている部分をつかませた後、前記第1種の指機構の動きを制御することにより、前記第2種の指機構により前記物体がつかまれている状態で前記第1種の指機構を前記物体から離した上で、前記手の平部の位置、姿勢または位置および姿勢を制御することにより、前記手の平部と前記物体との当接箇所の面積を増加させてもよい(第3発明)。
【0013】
当該構成の制御システムによれば、第1種の指機構が物体から離されることにより、第1種の指機構および物体のそれぞれがお互いに相手方の動き等に束縛されなくなるので、その分だけ手の平部の位置、姿勢または位置および姿勢が容易に変更されうる。これにより、ハンドに物体をしっかりと握らせる観点から、手の平部と物体との当接箇所を適当かつ十分に広げることができる。その結果、前記のようにハンドにより物体がしっかりと握られ、物体がその載置箇所から安定に持ち上げられうる。
【0014】
第3発明の制御システムにおいて、2本以上の前記第2種の指機構が存在し、前記第2演算処理要素が、一部の前記第2種の指機構の動きを制御することにより、前記一部の第2種の指機構に前記物体の前記箇所から浮いている部分をつかませた後、前記第1種の指機構の動きを制御することにより、前記一部の第2種の指機構により前記物体がつかまれている状態で前記第1種の指機構を前記物体から離した上で、残りの前記第2種の指機構の動きを制御することにより、前記一部の第2種の指機構に加えて前記残りの第2種の指機構に前記物体の前記箇所から浮いている部分をつかませてもよい(第4発明)。
【0015】
当該構成の制御システムによれば、第2種の指機構のうち一部のみにより物体がつかまれ、残りの第2種の指機構および物体のそれぞれがお互いに相手方の動き等に束縛されなくなるので、その分だけ手の平部の位置、姿勢または位置および姿勢が容易に変更されうる。これにより、ハンドに物体をしっかりと握らせる観点から、手の平部と物体との当接箇所を適当かつ十分に広げることができる。その結果、前記のようにハンドにより物体がしっかりと握られ、物体がその載置箇所から安定に持ち上げられうる。
【0016】
第1〜第4発明のうち1つの制御システムにおいて、前記複数の指機構に能動的な動きの自由度の高低差が存在し、当該自由度が高い指機構を前記第1種の指機構としてその動きを制御するとともに、当該自由度が低い指機構を前記第2種の指機構としてその動きを制御してもよい(第5発明)。
【0017】
当該構成の制御システムによれば、能動的な動きの自由度が比較的高い第1種の指機構が物体を「つかむ」という動作よりも器用さが必要な「つまむ」という動作に適していることに鑑みて、複数の指機構のそれぞれの動作がその機能または役割に応じて適当に制御されうる。
【0018】
当該構成は、ハンドの軽量化またはコンパクト化等のために一部の指機構に関係する構造または機構が簡略化されたことにより、当該一部の指機構の能動的な動きの自由度が他の指機構と比較して低く設計された場合に特に有意義である。
【0019】
第1〜第5発明のうち1つの制御システムにおいて、前記手の平部の縁の一部が手の平面に連続する丸みを帯びた形状に形成され、前記第2演算処理要素が、前記手の平部の位置および姿勢ならびに前記第1種の指機構の動きのうち一部または全部を制御することにより、前記手の平部の縁の丸みを帯びた形状に形成されている一部を前記物体に最初に当接させた後、前記手の平部の位置、姿勢または位置および姿勢を制御することにより、前記第2種の指機構により前記物体がつかまれている状態で前記手の平部の前記手の平面と前記物体との当接箇所の面積を増加させてもよい(第6発明)。
【0020】
当該構成の制御システムによれば、手の平部が丸みを帯びた部分において物体に最初に当接した際、この丸みを帯びた部分に連続している手の平面と物体との当接箇所を円滑に増加させることができる。これにより、ハンドに物体をしっかりと握らせる観点から、手の平部と物体との当接箇所を適当かつ十分に広げることができる。そして、前記のようにハンドにより物体がしっかりと握られ、物体がその載置箇所から安定に持ち上げられうる。
【0021】
本発明のロボットハンドは、手の平部と、前記手の平部から延設されている複数の指機構と、第1〜第6発明のうちいずれか1つの制御システムとを備えていることを特徴とする。
【0022】
本発明のロボットハンドの制御プログラムは、コンピュータを第1〜第6発明のうちいずれか1つの制御システムとして機能させることを特徴とする。
【0023】
本発明の制御方法は、手の平部と、前記手の平部から延設されている複数の指機構とを備えているロボットハンドの制御方法であって、前記手の平部の位置および姿勢、ならびに、物体の位置および姿勢を認識し、前記認識結果に基づき、前記複数の指機構のうち2本以上の第1種の指機構の動きを制御することにより、ある箇所に載置されている前記物体を前記第1種の指機構につまませ、前記手の平部の位置および姿勢ならびに前記第1種の指機構の動きのうち一部または全部を制御することにより、前記物体が前記第1種の指機構によりつままれた状態で、前記物体の一部が前記箇所に当接している一方、他の部分が前記箇所から浮くように前記物体の姿勢を変化させるとともに前記手の平部の一部を前記物体に当接させ、前記複数の指機構のうち前記第1種の指機構と区分されている第2種の指機構の動きを制御することにより、前記第2種の指機構に前記物体の前記面から浮いている部分をつかませ、前記手の平部の位置、姿勢または位置および姿勢を制御することにより、前記第2種の指機構により前記物体がつかまれている状態で前記手の平部と前記物体との当接箇所の面積を増加させ、かつ、前記第1種の指機構の動きを制御することにより、前記第2種の指機構に加えて前記第1種の指機構に前記物体を握らせることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態としてのハンドを有するロボットの構成説明図。
【図2】ハンドの構成説明図。
【図3】ハンドの構成説明図。
【図4】ハンドが有する第1指機構の構成説明図。
【図5】ハンドが有する第2指機構の構成説明図。
【図6】ハンドおよび駆動装置の構成説明図。
【図7】ハンドの作動に関する説明図。
【図8】ハンドの制御システムの構成説明図。
【図9】ハンドの動作の制御方法に関する説明図。
【図10】ハンドの動作による物体の把持動作の制御方法に関する説明図。
【図11】ハンドの動作による物体の把持動作の制御方法に関する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の一実施形態について図面を用いて説明する。
【0026】
まず、本発明の一実施形態としてのロボットハンドを構成要素とするロボットの構成について説明する。
【0027】
図1に示されているロボットRは脚式移動ロボットであり、人間と同様に、基体B0と、基体B0の上方に配置された頭部B1と、基体B0の上部に上部両側から延設された左右の腕体B2と、左右の腕体B2のそれぞれの先端に設けられているハンド1と、基体B0の下部から下方に延設された左右の脚体B4とを備えている。なお、ロボットRは脚式移動ロボットのみならず、ハンド1の位置および姿勢を変化させるための腕体B2に相当する機構を備えているあらゆる種類のロボットであってもよい。
【0028】
ロボットRはその動作を制御する制御装置2を備えている。制御装置2はロボットRの内部ネットワークを通じて接続された主制御ユニットおよび一または複数の副制御ユニットより構成される分散制御装置であってもよい。
【0029】
基体B0はヨー軸回りに相対的に回動しうるように上下に連結された上部および下部により構成されている。頭部B1は基体B0に対してヨー軸回りに回動する等、動くことができる。頭部B1には、ロボットRの前方を撮像範囲とするCCDカメラ、赤外線カメラ等、種々の周波数帯域における光を感知しうる左右一対の頭カメラC1が搭載されている。基体B0の下部には、ロボットRの前方下方に向けて発せられた近赤外レーザー光の物体による反射光を検知することによりこの物体の位置や方位等を測定するための腰カメラ(アクティブセンサ)C2が搭載されている。
【0030】
腕体B2は第1腕体リンクB22と、第2腕体リンクB24とを備えている。基体B0と第1腕体リンクB21とは肩関節機構(第1腕関節機構)B21を介して連結され、第1腕体リンクB22と第2腕体リンクB24とは肘関節機構(第2腕関節機構)B23を介して連結され、第2腕体リンクB24とハンド1とは手首関節機構(第3腕関節機構)B25を介して連結されている。肩関節機構B21はロール、ピッチおよびヨー軸回りの回動自由度を有し、肘関節機構B23はピッチ軸回りの回動自由度を有し、手首関節機構B25はロール、ピッチ、ヨー軸回りの回動自由度を有している。
【0031】
脚体B4は第1脚体リンクB42と、第2脚体リンクB44と、足部B5とを備えている。基体B0と第1脚体リンクB42とは股関節機構(第1脚関節機構)B41を介して連結され、第1脚体リンクB42と第2脚体リンクB44とは膝関節機構(第2脚関節機構)B43を介して連結され、第2脚体リンクB44と足部B5とは足関節機構(第3脚関節機構)B45を介して連結されている。
【0032】
股関節機構B41はロール、ピッチおよびロール軸回りの回動自由度を有し、膝関節機構B43はピッチ軸回りの回動自由度を有し、足関節機構B45はロールおよびピッチ軸回りの回動自由度を有している。股関節機構B41、膝関節機構B43および足関節機構B45は「脚関節機構群」を構成する。なお、脚関節機構群に含まれる各関節機構の並進および回転自由度は適宜変更されてもよい。また、股関節機構B41、膝関節機構B43および足関節機構B45のうち任意の1つの関節機構が省略された上で、残りの2つの関節機構の組み合わせにより脚関節機構群が構成されていてもよい。さらに、脚体B4が膝関節とは別の第2脚関節機構を有する場合、当該第2脚関節機構が含まれるように脚関節機構群が構成されてもよい。足部B5の底には着床時の衝撃緩和のため、特開2001−129774号公報に開示されているような弾性素材B52が設けられている。
【0033】
〔ハンドに関する説明〕
ここで、ハンド1の構成について説明する。
【0034】
ハンド1は、手の平部10と、手の平部10から延設されている5本の指機構11〜15とを備えている。手の平部10は、各指機構を連結支持するフレーム101を備え、手の平部10の表側が手の甲とされ裏側が手の平とされる。図3は、ハンド1の手の平側を示している。手の平部10は手の平部表皮部材102により被覆されている。第1指機構11、第2指機構12、第3指機構13、第4指機構14および第5指機構15のそれぞれは、人間の手の5本の指、すなわち、拇指、示指、中指、環指および小指のそれぞれに相当する。指機構11〜15のそれぞれは関節を露出させて指表皮部材(図示略)により被覆されている。
【0035】
〔第1指機構に関する説明〕
第1指機構11は、図2に模式的に示されているように手の平部10に固定されているリンク部材からCM1関節、CM2関節、MP関節およびIP関節を順に介して接続されている複数の指リンク部材を備えている。
【0036】
CM1関節およびCM2関節は回動自由度「2」の「手首中手関節機構」を構成する。CM1関節およびCM2関節は相互に直交または略直交する軸線回りに回動する。MP関節は回動自由度「1」の「拇指中手指節関節機構」を構成する。IP関節は回動自由度「1」の「拇指指節間関節機構」を構成する。CM2関節、MP関節およびIP関節は相互に平行または略平行な軸線回りに回動する。
【0037】
第1指機構11はCM2関節、MP関節およびIP関節の回動により屈伸運動し、たとえば、手の平部10の手の平側に向かって折れ曲がる等の動作が可能とされている。CM1関節は第1指機構11を手の平側に対向するように回動させる。
【0038】
〔第2〜第5指機構に関する説明〕
指機構11〜15のそれぞれは、図2に模式的に示されているように手の平部10に固定されているリンク部材からMP1関節、MP2関節、PIP関節およびDIP関節を順に介して接続されている複数の指リンク部材を備えている。
【0039】
MP1関節およびMP2関節は回動自由度「2」の「中手指節関節機構」を構成する。MP1関節およびMP2関節は相互に直交する軸線回りに回動する。PIP関節は回動自由度「1」の「近位指節間関節機構」を構成する。DIP関節は回動自由度「1」の「遠位指節間関節機構」を構成する。MP2関節、PIP関節およびDIP関節は相互に平行または略平行な軸線回りに回動する。
【0040】
指機構12〜15のそれぞれはMP2関節、PIP関節およびDIP関節の回動により屈伸運動し、たとえば、手の平部10の手の平側に向かって折れ曲がる等の動作が可能とされている。MP1関節は、指機構12〜15が相互に近接または離間するように指機構11〜15のそれぞれを揺動させ、人間にたとえると手を広げる等の動作が可能とされている。
【0041】
〔センサの説明〕
指機構11〜15のそれぞれは、図3および図4または図5に示されているように、6軸力センサS1を備えている。6軸力センサS1は、各指機構の指先部材に傾斜する姿勢で取付けられている。6軸力センサS1は、各指機構の指先部材に作用する6軸力、すなわち、互いに直交する3軸(x軸、y軸、z軸)方向の並進力と各軸回りのモーメントとを測定する。そして、6軸力センサS1から出力される6軸力の測定値に基づいて各指機構における力の強弱および向き等が制御される。
【0042】
手の平部10の手の平側における複数の箇所に、各箇所における荷重または圧力に応じた信号を出力する圧力センサS2が設けられている。同様に指機構11〜15のそれぞれの指腹側の複数個所に、各箇所における荷重または圧力に応じた信号を出力する圧力センサS2が設けられていてもよい。
【0043】
〔第1種の指機構(器用指)および第2種の指機構(力指)に関する説明〕
5つの指機構11〜15は能動的な動きの自由度の高低に応じて第1種の指機構と、第2種の指機構とに区分されている。第1指機構11、第2指機構12および第3指機構13は当該自由度が高い「第1種の指機構」に区分されている。第4指機構14および第5指機構15は第1種の指機構よりも当該自由度が低い「第2種の指機構」に区分されている。
【0044】
〔第1種の指機構の説明〕
〔第1指機構の構成〕
第1種の指機構に区分されている第1指機構11は、図4に示されているように、CM2関節の回動軸CM21(手首中手関節機構の第2の回動軸)を回動させる第1の従動流体圧シリンダ32(CM2)と、MP関節の回動軸MP1を回動させる第2の従動流体圧シリンダ32(MP)とを備えている。
【0045】
第1の従動流体圧シリンダ32(CM2)のシリンダ本体321(CM2)は、CM1関節の回動軸(手首中手関節の第2の回動軸)とされており、回動自在に前記手の平部10のフレーム101に支持されている。
【0046】
このように、第1の従動流体圧シリンダ32(CM2)のシリンダ本体321(CM2)をCM1関節回動軸として兼用することにより、第1の従動流体圧シリンダ32(CM2)とCM1関節の回動軸とを別々に設けた場合に比べてコンパクトとなる。しかも、CM1関節の回動に伴う第1の従動流体圧シリンダ32(CM2)の揺動は全くなく、その揺動スペースが不要となるので極めてコンパクトに構成することができる。
【0047】
第2の従動流体圧シリンダ32(MP)のシリンダ本体321(MP)は、CM2関節の回動軸CM21を介して第1の従動流体圧シリンダ32(CM2)に回動自在に連結されている。
【0048】
第2の従動流体圧シリンダ32(MP)のシリンダ本体321(MP)に流体を供給する配管324(MP)は、CM2関節の回動軸CM21の内部に収容されている。これにより、CM2関節の回動時に配管324(MP)が邪魔にならず、第1指機構11の屈伸動作を円滑に行うことができる。
【0049】
MP関節には連結部材IPL1を介してIP関節が連結されている。IP関節の回動軸IP1には、前記指先部材が回動自在に連結されている。連結部材IPL1は、その一端がMP関節の回動軸MP1に回動自在に連結され、他端がIP関節の回動軸IP1に連結されている。
【0050】
さらに、MP関節とIP関節との間には、リンク部材IPL2(リンク機構)が設けられている。リンク部材IPL2は、第2の従動流体圧シリンダ32(MP)のシリンダ本体321(MP)と指先部材の6軸力センサS1を支持する支持部材IPL3とを連結する。
【0051】
第1の従動流体圧シリンダ32(CM2)は、シリンダ本体321(CM2)内部に流体が供給されることによりピストン322(CM2)が摺動し、ピストンロッド323(CM2)が伸縮してCM2関節を回動させる。これにより、第2指機構12がCM2関節において屈伸する。
【0052】
第2の従動流体圧シリンダ32(MP)は、シリンダ本体321(MP)内部に流体が供給されることによりピストン322(MP)が摺動し、ピストンロッド323(MP)が伸縮してMP関節を回動させる。このとき、MP関節とIP関節とが、連結部材IPL1とリンク部材IPL2とにより連結されていることにより、第2の従動流体圧シリンダ32(MP)の動きによるMP関節の回動に追従してIP関節が回動する。
【0053】
IP関節は、第2の従動流体圧シリンダ32(MP)によるMP関節の回動に連動するように構成されているので、人間の指の動きに近い動作が得られるだけでなく、IP関節を駆動するためのシリンダ等が不要となり、第1指機構11を軽量に構成することができる。
【0054】
以上の構成により、第1指機構11は、第1の従動流体圧シリンダ32(CM2)および第2の従動流体圧シリンダ32(MP)のピストンロッド323(CM2),323(MP)を伸長させることによりを折り曲げ状態となり、ピストンロッド323(CM2),323(MP)を収縮させることにより延ばし状態となる。
【0055】
第1指機構11のCM1関節は、図3に示されているように、各指機構の配列方向に沿ってピストンロッド323(CM1)が伸縮する第3の従動流体圧シリンダ32(CM1)により回動される。第1指機構11は、第3の従動流体圧シリンダ32(CM1)のピストンロッド323(CM1)を伸長させることにより、手の平部10の手の平側に回動し、第3の従動流体圧シリンダ32(CM1)のピストンロッド323(CM1)を収縮させることにより第2指機構12に隣り合う方向に回動する。
【0056】
図4に示されているように、第1の従動流体圧シリンダ32(CM2)のシリンダ本体321(CM2)への流体の供給は、CM1関節の回動軸である第1の従動流体圧シリンダ32(CM2)のシリンダ本体321(CM2)の軸受け部101の内部に形成された流体路32(CM2)4を介して行われる。これにより、第1の従動流体圧シリンダ32(CM2)のシリンダ本体321(CM2)を円滑に回動させることができ、CM1関節の回動により第1指機構11が円滑に動かされうる。
【0057】
図3および図4に示されているように、CM1関節、CM2関節およびMP関節のそれぞれにはコイルばね(ねじりばね)CM12、CM22およびMP2のそれぞれが設けられている。MP関節およびCM2関節の各コイルばねMP2,CM22は、第1指機構11を延ばし方向に付勢する。CM1関節のコイルばねCM12は、第1の従動流体圧シリンダ32(CM2)のシリンダ本体321(CM2)の外周を包囲するようにして設けられ、第1指機構11を第2指機構12に隣り合う方向に回動する方向に付勢する。言い換えれば、各コイルばねCM12、CM22およびMP2の付勢方向は、3つの従動流体圧シリンダ32(CM1)、32(CM2)および32(MP)の各ピストンロッド323(CM1)、323(CM2)および323(MP)の収縮方向と同じ方向とされている。
【0058】
〔第2指機構の構成〕
第2指機構12は、図5に示されているようにMP2関節の回動軸MP21(中手指節関節の第1の回動軸)を回動させる第1の従動流体圧シリンダ32(MP2)と、PIP関節の回動軸PIP1を回動させる第2の従動流体圧シリンダ32(PIP)とを備えている。
【0059】
第1の従動流体圧シリンダ32(MP2)のシリンダ本体321(MP2)は、人間の中手骨に相当し、MP1関節の回動軸MP11(中手指節関節機構の第1の回動軸)により回動自在に前記手の平部10のフレーム101(図1参照)に支持されている。第2の従動流体圧シリンダ32(PIP)のシリンダ本体321(PIP)は、人間の基節骨に相当し、MP2関節の回動軸MP21を介して第1の従動流体圧シリンダ32(MP2)に回動自在に連結されている。
【0060】
第2の従動流体圧シリンダ32(PIP)のシリンダ本体321(PIP)に流体を供給する配管324(PIP)は、MP2関節の回動軸MP21の内部に収容されている。これにより、MP2関節の回動時に配管324(PIP)が邪魔にならず、第2指機構12の屈伸動作を円滑に行うことができる。
【0061】
また、第2の従動流体圧シリンダ32(PIP)のシリンダ本体321(PIP)を第2指機構12の長手方向に沿ってMP2関節とPIP関節との間に配設することにより、第2指機構12をコンパクトに構成することができる。
【0062】
PIP関節には、人間の中節骨に相当する連結部材DIPL1を介してDIP関節が連結されている。DIP関節の回動軸DIP1には、前記指先部材に連設された6軸力センサS1を支持する支持部材DIPL2が回動自在に連結されている。連結部材DIPL1は、その一端がPIP関節の回動軸PIP1に回動自在に連結され、他端がDIP関節の回動軸DIP1に連結されている。
【0063】
さらに、PIP関節とDIP関節との間には、リンク部材DIPL3(リンク機構)が設けられている。リンク部材DIPL2は、第2の従動流体圧シリンダ32(PIP)のシリンダ本体321(PIP)と指先部材の6軸力センサS1を支持する支持部材DIPL2とを連結する。
【0064】
第1の従動流体圧シリンダ32(MP2)は、シリンダ本体321(MP2)内部に流体が供給されることによりピストン322(MP2)が摺動し、ピストンロッド323(MP2)が伸縮してMP2関節を回動させる。これにより、第2指機構12がMP2関節を介して屈伸する。
【0065】
第2の従動流体圧シリンダ32(PIP)は、シリンダ本体321(PIP)内部に流体が供給されることによりピストン322(PIP)が摺動し、ピストンロッド323(PIP)が伸縮してPIP関節を回動させる。このとき、PIP関節とDIP関節とが、連結部材DIPL1とリンク部材DIPL3とにより連結されているので、第2の従動流体圧シリンダ32(PIP)によるPIP関節の回動に追従してDIP関節が回動する。
【0066】
DIP関節は、第2の従動流体圧シリンダ32(PIP)によるPIP関節の回動に連動するように構成されているので、人間の指の動きに近い動作が得られるだけでなく、DIP関節を駆動するためのシリンダ等が不要となり、第2指機構12を軽量に構成することができる。
【0067】
以上の構成により、第2指機構12は、第1の従動流体圧シリンダ32(MP2)および第2の従動流体圧シリンダ32(PIP)のピストンロッド323(MP2),323(PIP)を伸長させることにより折り曲げ状態となり、ピストンロッド323(MP2),323(PIP)を収縮させることにより延ばし状態となる。
【0068】
第2指機構12のMP1関節は、図3に示されているように、各指機構の配列方向に沿ってピストンロッド323(MP1)が伸縮する第3の従動流体圧シリンダ32(MP1)により回動される。第3の従動流体圧シリンダ32(MP1)は、ピストンロッド323(MP1)を伸長させることにより第2指機構12を第3指機構13に近接する方向に揺動させ、ピストンロッド323(MP1)を収縮させることにより第2指機構12を第3指機構13から離反する方向に揺動させる。
【0069】
図5に示されているように、MP1関節、MP2関節およびPIP関節のそれぞれにはコイルばね(ねじりばね)MP12、MP22およびPIP2のそれぞれが設けられている。PIP関節およびMP2関節の各コイルばねPIP2,MP22は、第2指機構12を延ばし方向に付勢する。MP1関節のコイルばねMP12は、第2指機構12を第3指機構13から離反させる方向に付勢する。言い換えれば、各コイルばねMP12、MP22およびPIP2の付勢方向は、3つの従動流体圧シリンダ32(MP1)、32(MP2)および32(PIP)のピストンロッド323(MP1)、323(MP2)および323(PIP)の収縮方向と同じ方向とされている。
【0070】
以上、第1種の指機構とされる第2指機構12の構成を詳しく述べたが、第1種の指機構とされる第3指機構13の構成も第2指機構12と同じである。
【0071】
〔第2種の指機構の構成〕
第2種の指機構に区分されている第4指機構14および第5指機構15のそれぞれは、第2指機構12の上述した構成のうち、第3の従動流体圧シリンダ32(MP1)が省略されていることを除き、第2指機構12と同じ構成である。第4指機構14および第5指機構15は、第3の従動流体圧シリンダ32(MP1)が省略されているため、MP1関節が力動作に応じて自在に回動し、MP1関節のコイルばねMP12の付勢により所定位置に自然復帰するようになっている。すなわち、第2種の指機構はこの分だけ能動的な動きの自由度が第1種の指機構よりも低くなっている。
【0072】
〔駆動装置の構成〕
ハンド1の駆動機構の構成について説明する。駆動機構は、図6に示されている複数の駆動流体圧シリンダ(マスタシリンダ)31と、複数の従動流体圧シリンダ(スレーブシリンダ)32(i)(i=CM1,CM2,MP,MP1,MP2,PIP)とを構成要素としている(図3、図4および図5参照)。駆動流体圧シリンダ31は従動流体圧シリンダ32(i)のそれぞれに対応して合計13個設けられている。駆動流体圧シリンダ31とハンド1の従動流体圧シリンダ32(i)とは流体圧伝達管33(配管)を介して各別に接続される。流体圧伝達管33は流体圧力に応じて径または断面積が変化しうる程度の柔軟性を有している。
【0073】
複数の駆動流体圧シリンダ31のそれぞれはロボットRの適当な箇所(たとえば基体B0または腕体B2の内部空間)にユニットとしてあるいは分散して配置されている。
【0074】
駆動流体圧シリンダ31は、内部に流体を収容するシリンダ本体311と、シリンダ本体311の内部を摺動するピストン(マスタピストン)312と、ピストン312に連設された中空のピストンロッド313とを備えている。さらに、駆動流体圧シリンダ31は、ピストンロッド313の軸線に沿ってピストンロッド313内に挿入されるボールネジ314と、ピストンロッド313の内部に固設されてボールネジ314に螺合する螺合部材315と、ボールネジ314を回転駆動することにより螺合部材315を介してピストンロッド313を進退させるモータ30(回転駆動装置)と、モータ30の作動量を検出するためのエンコーダS3とを備えている。駆動流体圧シリンダ31には、シリンダ本体311の内部の流体圧力に応じた信号を出力する圧力センサS4が設けられている。
【0075】
モータ30は、回転伝達手段としてのプーリ301,303に掛けわたされたベルト302を介してボールネジ314を回転駆動する。これにより、モータ30の出力軸300とピストンロッド313との軸線が平行となり、モータ30をシリンダ本体311に隣設することができてコンパクトに形成される。
【0076】
この構成により、図7に模式的に示されているように、マスタピストン312が前進駆動されることにより、駆動流体圧シリンダ31から流体が流出し、配管33を介してそれに対応する従動流体圧シリンダ32(i)に流体が流入し、従動流体圧シリンダ32(i)のピストン(スレーブピストン)322(i)が前進することにより指機構11〜15のそれぞれが駆動される。これとは逆にマスタピストン312が後退駆動されることにより、駆動流体圧シリンダ31から流体が流入し、配管33を介してそれに対応する従動流体圧シリンダ32(i)から流体が流出し、従動流体圧シリンダ32(i)のピストン322(i)が後退することにより指機構11〜15のそれぞれが駆動される。
【0077】
[ハンドの動作制御]
制御装置2はコンピュータ(CPU、ROMおよびRAM等のメモリ、ならびに、A/D回路およびI/O回路等の回路により構成されている。)により構成されている。制御装置2によれば、CPUによりメモリから制御プログラムが適宜読み出され、読み出されたプログラムにしたがってハンド1の動作が制御される。
【0078】
制御装置2はロボットRに搭載されている複数のアクチュエータ4のそれぞれの動作を制御することにより、腕体B2の各関節機構における動き、および、脚体B4の各関節における動き等を制御する。制御装置2はマスタピストン312の位置を制御することにより指機構11〜15のそれぞれの動きまたは力を制御する。
【0079】
制御装置2は図9に示されているように第1演算処理要素21と、第2演算処理要素22とを備えている。
【0080】
第1演算処理要素21は、指機構11〜15のそれぞれの先端部に設けられている6軸力センサS1の出力信号に基づき、指機構11〜15のそれぞれの先端部における物体との当接位置、物体に与える圧力および圧力の方向を測定する。第1演算処理要素21は、手の平部10の手の平側における複数個所に配置されている複数の圧力センサS2のそれぞれの出力信号等に基づき、手の平部10における荷重中心の位置と、手の平部10にかかる荷重とを測定する。第1演算処理要素21は、エンコーダS3および流体圧力センサS4のそれぞれの出力信号に基づき、従動流体圧シリンダ32(i)のピストン322(i)の位置、さらには、指機構11〜15のそれぞれの各関節iにおける回動角度を測定する。
【0081】
第2演算処理要素22は、物体がハンド1によって把持されることにより複数の指機構11〜15および手の平部10のそれぞれに当接している状態において、手の平部10における荷重中心の測定位置が目標手の平領域PAに含まれるとともに、手の平部10にかかる荷重の測定値が目標荷重範囲に含まれるように、複数の指機構11〜15のそれぞれから物体にかける圧力を制御する。第2演算処理要素22は、指機構11〜15のそれぞれの各関節iにおける回動角度の測定結果に基づき、当該回動角度、ひいては、指機構11〜15のそれぞれの位置および姿勢を制御する。
【0082】
前記構成のロボットR、ハンド1および制御装置2の機能について説明する。
【0083】
[基本制御]
指機構11〜15のそれぞれの各関節における回動角度(スレーブ関節角度)θslvは、エンコーダS3および流体圧力センサS4のそれぞれの出力信号に基づき、第1演算処理要素21により関係式(1)〜(6)にしたがって測定される。
【0084】
説明のため、図7に示されているように、指機構11〜15のそれぞれを構成する指リンク部材の揺動軸の方向がZ方向として定義され、従動ピストン322(i)の進退方向がX方向として定義されている直交座標系を考える。
【0085】
回動角度(スレーブ関節角度)θslvは関係式(1)により表現される。
【0086】
θslv=φ+tan-1(h/Px)−θ0 (θ0>0),
φ=cos-1{(Px2+(L2)2+h2−(L1)2)/(2L(Px2+h2)1/2)}−θ0 ‥(1)
「h」はクランクオフセットであり、指リンク部材の揺動軸と、ロッド323(i)の後端揺動軸とのY方向の間隔である。「L1」はロッド323(i)の後端揺動軸と先端揺動軸との間隔(ロッド長)である。「L2」は指リンク部材の揺動軸と、ロッド323(i)の先端揺動軸との間隔(クランク長)である。クランクオフセットh、ロッド長L1およびクランク長L2の値はメモリに保存されている。
【0087】
「Px」はスレーブピストン322(i)の位置(スレーブピストン位置)Pxであり、関係式(2)により表現される。
【0088】
Px=P0−Strkslv ‥(2)
「P0」はスレーブピストン322(i)の基準位置である。
【0089】
「Strkslv」はスレーブピストン322(i)の基準位置p0からの変位量(スレーブストローク)であり、関係式(3)により表現される。
【0090】
Strkslv=Strkmst・(Smst/Sslv)−StrkOffsetmst+StrkExpslv ‥(3)
「Smst」はマスタピストン312の断面積である。「Sslv」はスレーブピストン322(i)の断面積である。「StrkOffsetmst」はマスタピストン312のオフセット(マスタストロークオフセット)である。断面積SmstおよびSslvまたはその比率(Smst/Sslv)、ならびに、マスタストロークオフセットStrkOffsetmstの値はメモリに保存されている。
【0091】
「Strkmst」はマスタピストン312の変位量(マスタストローク)であり、エンコーダS3の出力信号に応じたモータ30の回動位置MotPosmstに基づき、関係式(4)にしたがって算定されうる。
【0092】
Strkmst=MotPosmst・Rr ‥(4)
「Rr」はプーリ301,303およびベルト302により構成されている減速機構(図6参照)の減速比であり、メモリにあらかじめ保存されている。
【0093】
「StrkExpslv」は配管33の断面積変化または膨張もしくは収縮によるスレーブストローク変位量であり、スレーブピストン323(i)の断面積Sslvおよび配管膨張量Exppipに基づき、関係式(5)にしたがって算定されうる。
【0094】
SstrkExpslv=Exppip/Sslv ‥(5)
「Exppip」は配管膨張量(体積変化量)であり、流体圧力センサS4の出力信号に応じた測定流体圧Prsactに加えて、油圧目標値Prscmd、配管33の柔軟性の高低を表わす係数Kpipおよび配管33の長さLpipに基づき、関係式(6)にしたがって表現される。油圧目標値Prscmd、配管33の柔軟性の高低を表わす係数Kpipおよび配管33の長さLpipはメモリに保存されている。
【0095】
Exppip=(Prscmd−Prsact)・Kpip・Lpip ‥(6)
第1演算処理要素21により前記のように測定されたスレーブ関節角度θslvに加えて、後述するように6軸力センサS1および圧力センサS2のそれぞれの出力信号に基づき、第2演算処理要素22により指機構11〜15のそれぞれの動きまたは力が制御される。
【0096】
[応用制御]
第1演算処理要素21により、手の平部10の位置および姿勢、ならびに、ハンド1を用いた把持対象である物体の位置、姿勢、形状およびサイズ等、当該物体を把持するために必要な情報が認識される(図9/STEP002)。
【0097】
ロボットRの物体把持動作の制御のため、ロボット座標系のほか、手首座標系、ハンド座標系および物体座標系が定義される。「ロボット座標系」は、世界座標系におけるロボットRの位置および姿勢を定義するために定義される。「手首座標系」は、たとえば、手首関節機構B25の代表点を原点とし、かつ、手首関節機構B25の3つの回動軸を3つの直交軸として定義される。「ハンド座標系」は、たとえば、手の平部10の手の平面上の一点を原点とし、手の平面に平行な一対の直交軸をx軸およびy軸とし、かつ、手の平面に垂直な軸をz軸として定義される。「物体座標系」は、たとえば、物体の代表点を原点として定義される。ロボット座標系に対する手首座標系およびハンド座標系のそれぞれの位置および姿勢は、肩関節機構B21、肘関節機構B23および手首関節機構B25の屈曲角度等、ロボットRの動作により変動する因子、ならびに、メモリに保存されている第1腕体リンクB22および第2腕体リンクB22の長さ等、ロボットRのサイズを表わす一定の因子に基づき、順運動学計算法にしたがって算出されうる。
【0098】
手の平部10の位置および姿勢は腕体B2の各関節機構の屈曲角度を測定するためのロータリエンコーダ等、ロボットRの動作状態に応じたセンサからの出力信号に基づいて測定される。手の平部10の位置および姿勢はロボット座標系における座標値またはオイラー角によって認識される。ロータリエンコーダ等の動作状態センサの出力信号に基づき、ロボットRの腕体B2および脚体B4のそれぞれの位置および姿勢も認識されうる。
【0099】
頭カメラC1および腰カメラC2のうち一方または両方を通じて得られた画像解析により、固定座標系(ロボットRの動きとは無関係に固定されている座標系)における基体B0の位置および姿勢が認識される。
【0100】
エンコーダS3の出力信号に応じたモータ30の作動量に基づき、指機構11〜15のそれぞれの先端部の位置および姿勢が認識される。各指機構の先端部の位置は、エンコーダS3の出力信号に応じた各関節機構の屈曲角度、ハンド座標系において不変の各指機構の根元部の位置、および、各指機構の指節リンクの長さ等に基づき、順運動学計算法にしたがって、算出されたハンド座標系における位置および姿勢として定義される。
【0101】
物体の位置、姿勢、形状およびサイズは、頭カメラC1および腰カメラC2のうち一方または両方により撮像されたロボットRの周辺範囲の画像に基づいて認識される。物体の位置および姿勢はロボット座標系における座標値およびオイラー角によって認識される。ロボット座標系にける物体の位置および姿勢は、ロボットRの位置および姿勢(たとえば基体B0の位置および基本前額面の姿勢)が変化することにより変化するので、逐次認識または測定される。なお、認識対象となる情報の一部または全部がロボットRの外部にある端末装置から制御装置2に入力されることにより、当該入力情報が第1演算処理要素21により認識されてもよい。
【0102】
また、第1演算処理要素21により認識された物体の位置等に基づき、第2演算処理要素22によってアクチュエータ4の動作が制御されることにより、ハンド1により物体を把持するためのロボットRの予備的動作が制御される(図9/STEP004)。具体的には、必要に応じて脚体B4が動かされることによりロボットRの位置および姿勢が調節される。その上で、腕体B2が動かされることにより手の平部10が当該物体を把持するのに適当な位置および姿勢に調節される。
【0103】
さらに、第1演算処理要素21により認識された物体の位置および姿勢等に基づき、第2演算処理要素22により指機構11〜15のそれぞれの動きおよび必要に応じて腕体B2の動きが制御されることによって物体がハンド1により把持される。ここでは物体としてハンマーが例として採用される。なお、ハンド1の把持対象となる物体の種類はさまざまに変更されうる。
【0104】
具体的には、まず、第1指機構11の先端部が物体の一部(ハンマーの柄)の一方側に当接する一方、第2指機構12および第3指機構13のそれぞれの先端部が当該物体の一部の他方側に当接するように、第1種の指機構11〜13のそれぞれの動きが制御される(図9/STEP006)。これにより、図10(a)に示されているように当該物体が第1種の指機構11〜13によりつままれた状態になる。
【0105】
6軸力センサS1の出力に基づき、第1種の指機構11〜13のそれぞれの先端部が受ける荷重およびその方向が第1演算処理要素21により測定される。当該測定結果に基づき、第1種の指機構11〜13のそれぞれの物体をつまむ力の強弱および方向が制御されうる。
【0106】
また、物体の姿勢を変化させるように手の平部10の位置および姿勢、ならびに、第1種の指機構11〜13の動きのうち一部または全部が制御される(図9/STEP008)。
【0107】
これにより、図10(b)に示されているように物体が第1種の指機構11〜13によりつままれた状態で、物体の一部(ハンマーの頭部)が載置箇所に当接している一方、他の部分(ハンマーの柄)が載置箇所から浮くように物体の姿勢が調節される。物体座標系の1つの軸回りに手首座標系が回動するように腕体B2が駆動されることにより物体の姿勢が変更される。
また、図10(c)に示されているように手の平部10の一部を物体に当接させられる。手の平部10において物体に最初に当接させられる部分は、断面視で手の平面に連続しており、対象物の多少の誤差または対象物の計測誤差があっても好適に接触を検出することができるように丸みを帯びた形状とされている(図10(c)参照)。
【0108】
さらに、第2種の指機構14〜15の一方の指機構である第5指機構15が曲げられて物体を巻き込むように、第5指機構15の動きが制御される(図9/STEP010)。これにより、図11(a)に示されているように第5指機構15に物体の載置箇所から浮いている部分(ハンマーの柄)をつかませる。
【0109】
さらに、第1種の指機構11〜13のそれぞれの先端部が物体から離れるように第1種の指機構11〜13の動きが制御される(図9/STEP012)。これにより、図11(b)に示されているように第5指機構15により物体がつかまれている状態で第1種の指機構11〜13が物体から離される。
【0110】
続いて、手の平部10と物体との当接箇所の面積を増加させるように手の平部10の位置、姿勢または位置および姿勢が制御される(図9/STEP014)。これにより、図11(c)に示されているように、手の平部10がその手の平面を物体に当接させるように、手の平座標系の1つの軸回りにまたは物体に最初に当接させた部分を支点として傾動される。
【0111】
また、第2種の指機構14〜15のうち他方の指機構である第4指機構14が曲げられて物体を巻き込むように、第4指機構14の動きが制御される(図9/STEP016)。これにより、図11(c)に示されているように第5指機構15に加えて第4指機構14により物体の載置箇所から浮いている部分(ハンマーの柄)をつかませる。なお、第4指機構14から物体にかけられる圧力が徐々に強められる一方、第5指機構15から物体にかけられる圧力が徐々に弱められるように、第4指機構14および第5指機構15のそれぞれの動作が制御されてもよい。
【0112】
そして、第1種の指機構11〜13のそれぞれが曲げられて物体を巻き込むように、第1指機構11、第2指機構12および第3指機構13のそれぞれの動きが制御される(図9/STEP018)。これにより、図11(d)に示されているように第2種の指機構14〜15に加えて第1種の指機構11〜13に物体を握らせる。
【0113】
なお、図11(d)に示されているようにハンド1により物体が握られている状態で、指機構11〜15の動きが制御されることにより、手の平部10にかかる荷重および荷重中心位置が微調整されてもよい。手の平部10にかかる荷重および荷重中心位置は、手の平部10の手の平側の複数箇所に配置されている荷重センサS2の出力信号に基づいて制御されうる。第1演算処理要素21により、手の平部10に配置されている複数の圧力センサS2の出力信号に基づき、手の平部10における荷重中心p0および手の平部10にかかる荷重f0が測定される。当該算定方法は特開2007−196372号公報に詳細に説明されているので、ここでは説明を省略する。
【0114】
前記機能を発揮するハンド1によれば、第1種の指機構11〜13の動きにより物体がつままれた上で、この物体の一部を載置箇所に当接させたままで他の部分が持ち上げられる(図9/STEP006〜STEP008、図10(a)(b)参照)。この際、物体の全質量が第1種の指機構11〜13にかかるわけではないので、物体をつまみ上げる程度に第1種の指機構11〜13の力を強める必要がない。したがって、第1種の指機構11〜13の駆動機構3の軽量化または小型化が図られうる。
【0115】
また、能動的な動きの自由度が比較的高い第1種の指機構11〜13が物体を「つかむ」という動作よりも器用さが必要な「つまむ」という動作に適していることに鑑みて、複数の指機構11〜15のそれぞれの動作がその機能または役割に応じて適当に制御されうる。当該構成は、ハンド1の軽量化またはコンパクト化等のために一部の指機構に関係する構造または機構が簡略化されたことにより、当該一部の指機構の能動的な動きの自由度が他の指機構と比較して低く設計された場合に特に有意義である。
【0116】
さらに、手の平部10の位置および姿勢が制御されることにより、手の平部10と物体との当接箇所が広げられる(図9/STEP014、図11(c)参照)。この際、第5指機構15により物体がつかまれている状態で第1種の指機構11〜13が物体から離されている(図9/STEP012、図11(b)参照)。また、第2種の指機構の1つである第4指機構14により物体はつかまれていない(図11(c)参照)。これにより、指機構11〜14のそれぞれと物体とがお互いに相手方の動き等に束縛されなくなるので、その分だけ手の平部20の位置、姿勢または位置および姿勢が容易に変更されうる。
【0117】
また、手の平部10の縁の一部であって物体に最初に当接する部分が手の平面に連続する丸みを帯びた形状に形成されている。このため、手の平部10が丸みを帯びた部分において物体に最初に当接した後、この丸みを帯びた部分に連続している手の平面と物体との当接箇所を円滑に増加させることができる(図9/STEP008、STEP014、図10(c)、図11(c)参照)。
【0118】
さらに、複数の指機構11〜15の動きが制御されることにより当該複数の指機構11〜15により物体が握られる(図9/STEP018)。このため、物体が手の平部10および複数の指機構11〜15のそれぞれに当接した状態でしっかりと握られる。そして、ハンド1によりしっかりと握られた状態で物体がその載置箇所から安定に持ち上げられうる。
【0119】
本発明の他の実施形態として次のようなハンド1による物体把持方法が実行されてもよい。
【0120】
まず、第1演算処理要素21が物体の重量部分および軽量部分を認識する。「重量部分」は物体の質量中心位置をはさんで質量密度が高い部分を意味する。物体がハンマーである場合にはその頭部(正確には頭部の根元付近を除く部分)が重量部分に該当する。「軽量部分」は重量部分よりも質量密度が低い部分を意味する。物体がハンマーである場合にはその柄(正確には柄および頭部の根元付近を含む部分)が軽量部分に該当する。
【0121】
たとえば、頭カメラC1を通じて得られた画像解析により物体が頭部および柄を有するハンマーであることがデータベースまたは記憶装置に保存されている複数種類の物体のテンプレートを用いたパターンマッチング等により認識される。ハンマーの頭部が重量部分に該当すること、および、ハンマーの柄が軽量部分に該当することはデータベースまたは記憶装置から検索等される。
【0122】
そして、第2演算処理要素22が第1演算処理要素21による当該認識結果に基づき、物体の軽量部分(たとえばハンマーの柄)を第1種の指機構11〜13につまませ、物体が重量部分(たとえばハンマーの頭部)において載置箇所(たとえばテーブル)に当接している一方、軽量部分が載置箇所から浮くように物体の姿勢を変化させる(図10(a)(b)参照)。たとえば、物体の重量部分として認識されるハンマーの頭部が、物体の軽量部分として認識されるハンマーの柄に直交する軸を有する柱状である場合、当該柱の中心軸が物体座標系のx軸として定義され、ハンマーの柄の長手方向に伸びる軸が物体座標系のy軸として定義される。
【0123】
当該構成の制御システムによれば、物体の質量分布の偏向性に鑑みて、第1種の指機構11〜13につまませる場所が選定されるので、第1種の指機構11〜13にかかる負荷が軽減される。このため、第1種の指機構11〜13によりつままれた状態で変更された物体の姿勢が安定に維持されうる。したがって、これに続いて前記のようにハンド1により物体がしっかりと握られることにより物体がその載置箇所から安定に持ち上げられうる。
【0124】
なお、つまみ動作用の第1種の指機構は最低2本あればよく、つかみ動作用の第2種の指機構は1本以上あればよいので、指機構の数は3、4または6等、3以上の任意の数に変更されてもよい。
【0125】
前記実施形態ではMP1関節(またはCM1関節)の能動的な回動自由度が差別化されることにより、第1種および第2種の指機構の間で能動的な動きの自由度が差別化された。そのほか、MP1関節(またはCM1関節)、MP2関節(またはCM2関節)、PIP関節(またはMP関節)およびDIP関節(またはIP関節)の任意の組み合わせにおける能動的な回動自由度が差別化されることにより、第1種および第2種の指機構の間で能動的な動きの自由度が差別化されてもよい(図2参照)。
【0126】
手の平部10の位置、姿勢または位置および姿勢を変化させる際(図9/STEP014、図11(b)(c)参照)、第1種の指機構11〜13のうち一部または全部が物体に当接したままであってもよい。また、第2種の指機構14〜15の全部により物体がつかまれている状態で、手の平部10の位置、姿勢または位置および姿勢を変化させてもよい。
【0127】
なお、ハンド1の各指機構は、たとえば特開2003−181787号公報に記載されているハンドと同様に、ワイヤおよびプーリ等を介して原動機(電動モータ)の力が伝達されることにより駆動されてもよい。この場合も、複数の指機構が第1種の指機構と第2種の指機構とが区分されてもよい。
【符号の説明】
【0128】
1‥ハンド、2‥制御装置、10‥手の平部、11‥第1指機構、12‥第2指機構、13‥第3指機構、14‥第4指機構、15‥第5指機構、21‥第1演算処理要素、22‥第2演算処理要素
【技術分野】
【0001】
本発明は、手の平および手の平から延設されている複数の指を備え、手の平の位置および姿勢の調節、ならびに、複数の指のそれぞれの動きにより物体の把持作業等を実行するロボットハンドに関する。
【背景技術】
【0002】
物体を把持した上で、この物体を持ち替えるまたは持ち方を変えるようにロボットハンドの動作を制御する手法が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−349491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ある場所に載置されている物体が複数の指機構によりつままれ、しっかりと握られていない状態でこの場所から持ち上げられた場合、複数の指機構により指機構の力が不十分であるために物体が落下する可能性がある。特に、複数の指機構によりつまみあげられた際の物体のバランスが偏向している場合には、物体の姿勢が変化してしまい、その後、当該物体を握る際に支障をきたす可能性がある。物体を確実につまみあげようとするために指機構の力を強めることが考えられるが、その分だけ指機構を駆動させるための駆動機構の重量化および大型化を招くことになるので好ましくない。
【0005】
そこで、本発明は、物体がその載置箇所から安定に持ち上げられるようにハンドの動作を制御することができるシステム等を提供することを解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための本発明の制御システムは、手の平部と、前記手の平部から延設されている複数の指機構とを備えているロボットハンドの制御システムであって、前記手の平部の位置および姿勢、ならびに、物体の位置および姿勢を認識する第1演算処理要素と、前記第1演算処理要素による認識結果に基づき、前記手の平部の位置および姿勢ならびに前記複数の指機構の動きを制御する第2演算処理要素とを備え、前記第2演算処理要素が前記複数の指機構のうち2本以上の第1種の指機構の動きを制御することにより、ある箇所に載置されている前記物体を前記第1種の指機構につまませ、前記手の平部の位置および姿勢ならびに前記第1種の指機構の動きのうち一部または全部を制御することにより、前記物体が前記第1種の指機構によりつままれた状態で、前記物体の一部が前記箇所に当接している一方、他の部分が前記箇所から浮くように前記物体の姿勢を変化させるとともに前記手の平部の一部を前記物体に当接させ、前記複数の指機構のうち前記第1種の指機構と区分されている第2種の指機構の動きを制御することにより、前記第2種の指機構に前記物体の前記面から浮いている部分をつかませ、前記手の平部の位置、姿勢または位置および姿勢を制御することにより、前記第2種の指機構により前記物体がつかまれている状態で前記手の平部と前記物体との当接箇所の面積を増加させ、かつ、前記第1種の指機構の動きを制御することにより、前記第2種の指機構に加えて前記第1種の指機構に前記物体を握らせることを特徴とする。
【0007】
本発明の制御システムによれば、第1種の指機構の動きにより物体がつままれた上で、この物体の一部を載置箇所に当接させたままで他の部分が持ち上げられる。この際、物体の全質量が第1種の指機構にかかるわけではないので、物体をつまみ上げる程度に第1種の指機構の力を強める必要がない。したがって、第1種の指機構の駆動機構の軽量化または小型化が図られうる。
【0008】
次に、手の平部の位置、姿勢または位置および姿勢が制御されることにより、手の平部と当該物体との当接箇所が広げられた上で、複数の指機構の動きが制御されることにより当該複数の指機構により物体が握られる。このため、物体が手の平部および複数の指機構のそれぞれに当接した状態でしっかりと握られる。そして、ハンドによりしっかりと握られた状態で物体がその載置箇所から安定に持ち上げられうる。
【0009】
なお、本発明の構成要素が情報を「認識する」とは、コンピュータのハードウェア資源(CPUなど)としての当該構成要素が、情報を記憶装置から読み出すこと、情報をデータベースから検索すること、情報を受信すること、センサから出力等された基礎情報に基づいて適宜演算処理を実行することにより情報を測定、算定、推定または予測すること、および、情報を記憶装置に保存すること等、情報を必要とする演算処理等のために情報を利用可能な状態に準備するあらゆる情報演算処理を意味する。
【0010】
第1発明の制御システムにおいて、前記第1演算処理要素が、前記物体における質量中心位置をはさんで質量密度が高い重量部分と、前記重量部分よりも質量密度が低い軽量部分との区分を認識し、前記第2演算処理要素が前記第1種の指機構の動きを制御することにより、前記箇所に載置されている前記物体の前記軽量部分を前記第1種の指機構につまませ、前記手の平部の位置および姿勢ならびに前記第1種の指機構の動きのうち一部または全部を制御することにより、前記物体の軽量部分が前記第1種の指機構によりつままれた状態で、前記物体が前記重量部分において前記箇所に当接している一方、前記軽量部分が前記箇所から浮くように前記物体の姿勢を変化させるとともに前記手の平部を部分的に前記物体に当接させてもよい(第2発明)。
【0011】
当該構成の制御システムによれば、物体の質量分布の偏向性に鑑みて、第1種の指機構につまませる場所が選定されるので、第1種の指機構にかかる負荷が軽減される。このため、第1種の指機構によりつままれた状態で変更された物体の姿勢が安定に維持されうる。したがって、これに続いて前記のようにハンドにより物体がしっかりと握られることにより物体がその載置箇所から安定に持ち上げられうる。
【0012】
第1または第2発明の制御システムにおいて、前記第2演算処理要素が、前記第2種の指機構の動きを制御することにより、前記第2種の指機構に前記物体の前記箇所から浮いている部分をつかませた後、前記第1種の指機構の動きを制御することにより、前記第2種の指機構により前記物体がつかまれている状態で前記第1種の指機構を前記物体から離した上で、前記手の平部の位置、姿勢または位置および姿勢を制御することにより、前記手の平部と前記物体との当接箇所の面積を増加させてもよい(第3発明)。
【0013】
当該構成の制御システムによれば、第1種の指機構が物体から離されることにより、第1種の指機構および物体のそれぞれがお互いに相手方の動き等に束縛されなくなるので、その分だけ手の平部の位置、姿勢または位置および姿勢が容易に変更されうる。これにより、ハンドに物体をしっかりと握らせる観点から、手の平部と物体との当接箇所を適当かつ十分に広げることができる。その結果、前記のようにハンドにより物体がしっかりと握られ、物体がその載置箇所から安定に持ち上げられうる。
【0014】
第3発明の制御システムにおいて、2本以上の前記第2種の指機構が存在し、前記第2演算処理要素が、一部の前記第2種の指機構の動きを制御することにより、前記一部の第2種の指機構に前記物体の前記箇所から浮いている部分をつかませた後、前記第1種の指機構の動きを制御することにより、前記一部の第2種の指機構により前記物体がつかまれている状態で前記第1種の指機構を前記物体から離した上で、残りの前記第2種の指機構の動きを制御することにより、前記一部の第2種の指機構に加えて前記残りの第2種の指機構に前記物体の前記箇所から浮いている部分をつかませてもよい(第4発明)。
【0015】
当該構成の制御システムによれば、第2種の指機構のうち一部のみにより物体がつかまれ、残りの第2種の指機構および物体のそれぞれがお互いに相手方の動き等に束縛されなくなるので、その分だけ手の平部の位置、姿勢または位置および姿勢が容易に変更されうる。これにより、ハンドに物体をしっかりと握らせる観点から、手の平部と物体との当接箇所を適当かつ十分に広げることができる。その結果、前記のようにハンドにより物体がしっかりと握られ、物体がその載置箇所から安定に持ち上げられうる。
【0016】
第1〜第4発明のうち1つの制御システムにおいて、前記複数の指機構に能動的な動きの自由度の高低差が存在し、当該自由度が高い指機構を前記第1種の指機構としてその動きを制御するとともに、当該自由度が低い指機構を前記第2種の指機構としてその動きを制御してもよい(第5発明)。
【0017】
当該構成の制御システムによれば、能動的な動きの自由度が比較的高い第1種の指機構が物体を「つかむ」という動作よりも器用さが必要な「つまむ」という動作に適していることに鑑みて、複数の指機構のそれぞれの動作がその機能または役割に応じて適当に制御されうる。
【0018】
当該構成は、ハンドの軽量化またはコンパクト化等のために一部の指機構に関係する構造または機構が簡略化されたことにより、当該一部の指機構の能動的な動きの自由度が他の指機構と比較して低く設計された場合に特に有意義である。
【0019】
第1〜第5発明のうち1つの制御システムにおいて、前記手の平部の縁の一部が手の平面に連続する丸みを帯びた形状に形成され、前記第2演算処理要素が、前記手の平部の位置および姿勢ならびに前記第1種の指機構の動きのうち一部または全部を制御することにより、前記手の平部の縁の丸みを帯びた形状に形成されている一部を前記物体に最初に当接させた後、前記手の平部の位置、姿勢または位置および姿勢を制御することにより、前記第2種の指機構により前記物体がつかまれている状態で前記手の平部の前記手の平面と前記物体との当接箇所の面積を増加させてもよい(第6発明)。
【0020】
当該構成の制御システムによれば、手の平部が丸みを帯びた部分において物体に最初に当接した際、この丸みを帯びた部分に連続している手の平面と物体との当接箇所を円滑に増加させることができる。これにより、ハンドに物体をしっかりと握らせる観点から、手の平部と物体との当接箇所を適当かつ十分に広げることができる。そして、前記のようにハンドにより物体がしっかりと握られ、物体がその載置箇所から安定に持ち上げられうる。
【0021】
本発明のロボットハンドは、手の平部と、前記手の平部から延設されている複数の指機構と、第1〜第6発明のうちいずれか1つの制御システムとを備えていることを特徴とする。
【0022】
本発明のロボットハンドの制御プログラムは、コンピュータを第1〜第6発明のうちいずれか1つの制御システムとして機能させることを特徴とする。
【0023】
本発明の制御方法は、手の平部と、前記手の平部から延設されている複数の指機構とを備えているロボットハンドの制御方法であって、前記手の平部の位置および姿勢、ならびに、物体の位置および姿勢を認識し、前記認識結果に基づき、前記複数の指機構のうち2本以上の第1種の指機構の動きを制御することにより、ある箇所に載置されている前記物体を前記第1種の指機構につまませ、前記手の平部の位置および姿勢ならびに前記第1種の指機構の動きのうち一部または全部を制御することにより、前記物体が前記第1種の指機構によりつままれた状態で、前記物体の一部が前記箇所に当接している一方、他の部分が前記箇所から浮くように前記物体の姿勢を変化させるとともに前記手の平部の一部を前記物体に当接させ、前記複数の指機構のうち前記第1種の指機構と区分されている第2種の指機構の動きを制御することにより、前記第2種の指機構に前記物体の前記面から浮いている部分をつかませ、前記手の平部の位置、姿勢または位置および姿勢を制御することにより、前記第2種の指機構により前記物体がつかまれている状態で前記手の平部と前記物体との当接箇所の面積を増加させ、かつ、前記第1種の指機構の動きを制御することにより、前記第2種の指機構に加えて前記第1種の指機構に前記物体を握らせることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態としてのハンドを有するロボットの構成説明図。
【図2】ハンドの構成説明図。
【図3】ハンドの構成説明図。
【図4】ハンドが有する第1指機構の構成説明図。
【図5】ハンドが有する第2指機構の構成説明図。
【図6】ハンドおよび駆動装置の構成説明図。
【図7】ハンドの作動に関する説明図。
【図8】ハンドの制御システムの構成説明図。
【図9】ハンドの動作の制御方法に関する説明図。
【図10】ハンドの動作による物体の把持動作の制御方法に関する説明図。
【図11】ハンドの動作による物体の把持動作の制御方法に関する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の一実施形態について図面を用いて説明する。
【0026】
まず、本発明の一実施形態としてのロボットハンドを構成要素とするロボットの構成について説明する。
【0027】
図1に示されているロボットRは脚式移動ロボットであり、人間と同様に、基体B0と、基体B0の上方に配置された頭部B1と、基体B0の上部に上部両側から延設された左右の腕体B2と、左右の腕体B2のそれぞれの先端に設けられているハンド1と、基体B0の下部から下方に延設された左右の脚体B4とを備えている。なお、ロボットRは脚式移動ロボットのみならず、ハンド1の位置および姿勢を変化させるための腕体B2に相当する機構を備えているあらゆる種類のロボットであってもよい。
【0028】
ロボットRはその動作を制御する制御装置2を備えている。制御装置2はロボットRの内部ネットワークを通じて接続された主制御ユニットおよび一または複数の副制御ユニットより構成される分散制御装置であってもよい。
【0029】
基体B0はヨー軸回りに相対的に回動しうるように上下に連結された上部および下部により構成されている。頭部B1は基体B0に対してヨー軸回りに回動する等、動くことができる。頭部B1には、ロボットRの前方を撮像範囲とするCCDカメラ、赤外線カメラ等、種々の周波数帯域における光を感知しうる左右一対の頭カメラC1が搭載されている。基体B0の下部には、ロボットRの前方下方に向けて発せられた近赤外レーザー光の物体による反射光を検知することによりこの物体の位置や方位等を測定するための腰カメラ(アクティブセンサ)C2が搭載されている。
【0030】
腕体B2は第1腕体リンクB22と、第2腕体リンクB24とを備えている。基体B0と第1腕体リンクB21とは肩関節機構(第1腕関節機構)B21を介して連結され、第1腕体リンクB22と第2腕体リンクB24とは肘関節機構(第2腕関節機構)B23を介して連結され、第2腕体リンクB24とハンド1とは手首関節機構(第3腕関節機構)B25を介して連結されている。肩関節機構B21はロール、ピッチおよびヨー軸回りの回動自由度を有し、肘関節機構B23はピッチ軸回りの回動自由度を有し、手首関節機構B25はロール、ピッチ、ヨー軸回りの回動自由度を有している。
【0031】
脚体B4は第1脚体リンクB42と、第2脚体リンクB44と、足部B5とを備えている。基体B0と第1脚体リンクB42とは股関節機構(第1脚関節機構)B41を介して連結され、第1脚体リンクB42と第2脚体リンクB44とは膝関節機構(第2脚関節機構)B43を介して連結され、第2脚体リンクB44と足部B5とは足関節機構(第3脚関節機構)B45を介して連結されている。
【0032】
股関節機構B41はロール、ピッチおよびロール軸回りの回動自由度を有し、膝関節機構B43はピッチ軸回りの回動自由度を有し、足関節機構B45はロールおよびピッチ軸回りの回動自由度を有している。股関節機構B41、膝関節機構B43および足関節機構B45は「脚関節機構群」を構成する。なお、脚関節機構群に含まれる各関節機構の並進および回転自由度は適宜変更されてもよい。また、股関節機構B41、膝関節機構B43および足関節機構B45のうち任意の1つの関節機構が省略された上で、残りの2つの関節機構の組み合わせにより脚関節機構群が構成されていてもよい。さらに、脚体B4が膝関節とは別の第2脚関節機構を有する場合、当該第2脚関節機構が含まれるように脚関節機構群が構成されてもよい。足部B5の底には着床時の衝撃緩和のため、特開2001−129774号公報に開示されているような弾性素材B52が設けられている。
【0033】
〔ハンドに関する説明〕
ここで、ハンド1の構成について説明する。
【0034】
ハンド1は、手の平部10と、手の平部10から延設されている5本の指機構11〜15とを備えている。手の平部10は、各指機構を連結支持するフレーム101を備え、手の平部10の表側が手の甲とされ裏側が手の平とされる。図3は、ハンド1の手の平側を示している。手の平部10は手の平部表皮部材102により被覆されている。第1指機構11、第2指機構12、第3指機構13、第4指機構14および第5指機構15のそれぞれは、人間の手の5本の指、すなわち、拇指、示指、中指、環指および小指のそれぞれに相当する。指機構11〜15のそれぞれは関節を露出させて指表皮部材(図示略)により被覆されている。
【0035】
〔第1指機構に関する説明〕
第1指機構11は、図2に模式的に示されているように手の平部10に固定されているリンク部材からCM1関節、CM2関節、MP関節およびIP関節を順に介して接続されている複数の指リンク部材を備えている。
【0036】
CM1関節およびCM2関節は回動自由度「2」の「手首中手関節機構」を構成する。CM1関節およびCM2関節は相互に直交または略直交する軸線回りに回動する。MP関節は回動自由度「1」の「拇指中手指節関節機構」を構成する。IP関節は回動自由度「1」の「拇指指節間関節機構」を構成する。CM2関節、MP関節およびIP関節は相互に平行または略平行な軸線回りに回動する。
【0037】
第1指機構11はCM2関節、MP関節およびIP関節の回動により屈伸運動し、たとえば、手の平部10の手の平側に向かって折れ曲がる等の動作が可能とされている。CM1関節は第1指機構11を手の平側に対向するように回動させる。
【0038】
〔第2〜第5指機構に関する説明〕
指機構11〜15のそれぞれは、図2に模式的に示されているように手の平部10に固定されているリンク部材からMP1関節、MP2関節、PIP関節およびDIP関節を順に介して接続されている複数の指リンク部材を備えている。
【0039】
MP1関節およびMP2関節は回動自由度「2」の「中手指節関節機構」を構成する。MP1関節およびMP2関節は相互に直交する軸線回りに回動する。PIP関節は回動自由度「1」の「近位指節間関節機構」を構成する。DIP関節は回動自由度「1」の「遠位指節間関節機構」を構成する。MP2関節、PIP関節およびDIP関節は相互に平行または略平行な軸線回りに回動する。
【0040】
指機構12〜15のそれぞれはMP2関節、PIP関節およびDIP関節の回動により屈伸運動し、たとえば、手の平部10の手の平側に向かって折れ曲がる等の動作が可能とされている。MP1関節は、指機構12〜15が相互に近接または離間するように指機構11〜15のそれぞれを揺動させ、人間にたとえると手を広げる等の動作が可能とされている。
【0041】
〔センサの説明〕
指機構11〜15のそれぞれは、図3および図4または図5に示されているように、6軸力センサS1を備えている。6軸力センサS1は、各指機構の指先部材に傾斜する姿勢で取付けられている。6軸力センサS1は、各指機構の指先部材に作用する6軸力、すなわち、互いに直交する3軸(x軸、y軸、z軸)方向の並進力と各軸回りのモーメントとを測定する。そして、6軸力センサS1から出力される6軸力の測定値に基づいて各指機構における力の強弱および向き等が制御される。
【0042】
手の平部10の手の平側における複数の箇所に、各箇所における荷重または圧力に応じた信号を出力する圧力センサS2が設けられている。同様に指機構11〜15のそれぞれの指腹側の複数個所に、各箇所における荷重または圧力に応じた信号を出力する圧力センサS2が設けられていてもよい。
【0043】
〔第1種の指機構(器用指)および第2種の指機構(力指)に関する説明〕
5つの指機構11〜15は能動的な動きの自由度の高低に応じて第1種の指機構と、第2種の指機構とに区分されている。第1指機構11、第2指機構12および第3指機構13は当該自由度が高い「第1種の指機構」に区分されている。第4指機構14および第5指機構15は第1種の指機構よりも当該自由度が低い「第2種の指機構」に区分されている。
【0044】
〔第1種の指機構の説明〕
〔第1指機構の構成〕
第1種の指機構に区分されている第1指機構11は、図4に示されているように、CM2関節の回動軸CM21(手首中手関節機構の第2の回動軸)を回動させる第1の従動流体圧シリンダ32(CM2)と、MP関節の回動軸MP1を回動させる第2の従動流体圧シリンダ32(MP)とを備えている。
【0045】
第1の従動流体圧シリンダ32(CM2)のシリンダ本体321(CM2)は、CM1関節の回動軸(手首中手関節の第2の回動軸)とされており、回動自在に前記手の平部10のフレーム101に支持されている。
【0046】
このように、第1の従動流体圧シリンダ32(CM2)のシリンダ本体321(CM2)をCM1関節回動軸として兼用することにより、第1の従動流体圧シリンダ32(CM2)とCM1関節の回動軸とを別々に設けた場合に比べてコンパクトとなる。しかも、CM1関節の回動に伴う第1の従動流体圧シリンダ32(CM2)の揺動は全くなく、その揺動スペースが不要となるので極めてコンパクトに構成することができる。
【0047】
第2の従動流体圧シリンダ32(MP)のシリンダ本体321(MP)は、CM2関節の回動軸CM21を介して第1の従動流体圧シリンダ32(CM2)に回動自在に連結されている。
【0048】
第2の従動流体圧シリンダ32(MP)のシリンダ本体321(MP)に流体を供給する配管324(MP)は、CM2関節の回動軸CM21の内部に収容されている。これにより、CM2関節の回動時に配管324(MP)が邪魔にならず、第1指機構11の屈伸動作を円滑に行うことができる。
【0049】
MP関節には連結部材IPL1を介してIP関節が連結されている。IP関節の回動軸IP1には、前記指先部材が回動自在に連結されている。連結部材IPL1は、その一端がMP関節の回動軸MP1に回動自在に連結され、他端がIP関節の回動軸IP1に連結されている。
【0050】
さらに、MP関節とIP関節との間には、リンク部材IPL2(リンク機構)が設けられている。リンク部材IPL2は、第2の従動流体圧シリンダ32(MP)のシリンダ本体321(MP)と指先部材の6軸力センサS1を支持する支持部材IPL3とを連結する。
【0051】
第1の従動流体圧シリンダ32(CM2)は、シリンダ本体321(CM2)内部に流体が供給されることによりピストン322(CM2)が摺動し、ピストンロッド323(CM2)が伸縮してCM2関節を回動させる。これにより、第2指機構12がCM2関節において屈伸する。
【0052】
第2の従動流体圧シリンダ32(MP)は、シリンダ本体321(MP)内部に流体が供給されることによりピストン322(MP)が摺動し、ピストンロッド323(MP)が伸縮してMP関節を回動させる。このとき、MP関節とIP関節とが、連結部材IPL1とリンク部材IPL2とにより連結されていることにより、第2の従動流体圧シリンダ32(MP)の動きによるMP関節の回動に追従してIP関節が回動する。
【0053】
IP関節は、第2の従動流体圧シリンダ32(MP)によるMP関節の回動に連動するように構成されているので、人間の指の動きに近い動作が得られるだけでなく、IP関節を駆動するためのシリンダ等が不要となり、第1指機構11を軽量に構成することができる。
【0054】
以上の構成により、第1指機構11は、第1の従動流体圧シリンダ32(CM2)および第2の従動流体圧シリンダ32(MP)のピストンロッド323(CM2),323(MP)を伸長させることによりを折り曲げ状態となり、ピストンロッド323(CM2),323(MP)を収縮させることにより延ばし状態となる。
【0055】
第1指機構11のCM1関節は、図3に示されているように、各指機構の配列方向に沿ってピストンロッド323(CM1)が伸縮する第3の従動流体圧シリンダ32(CM1)により回動される。第1指機構11は、第3の従動流体圧シリンダ32(CM1)のピストンロッド323(CM1)を伸長させることにより、手の平部10の手の平側に回動し、第3の従動流体圧シリンダ32(CM1)のピストンロッド323(CM1)を収縮させることにより第2指機構12に隣り合う方向に回動する。
【0056】
図4に示されているように、第1の従動流体圧シリンダ32(CM2)のシリンダ本体321(CM2)への流体の供給は、CM1関節の回動軸である第1の従動流体圧シリンダ32(CM2)のシリンダ本体321(CM2)の軸受け部101の内部に形成された流体路32(CM2)4を介して行われる。これにより、第1の従動流体圧シリンダ32(CM2)のシリンダ本体321(CM2)を円滑に回動させることができ、CM1関節の回動により第1指機構11が円滑に動かされうる。
【0057】
図3および図4に示されているように、CM1関節、CM2関節およびMP関節のそれぞれにはコイルばね(ねじりばね)CM12、CM22およびMP2のそれぞれが設けられている。MP関節およびCM2関節の各コイルばねMP2,CM22は、第1指機構11を延ばし方向に付勢する。CM1関節のコイルばねCM12は、第1の従動流体圧シリンダ32(CM2)のシリンダ本体321(CM2)の外周を包囲するようにして設けられ、第1指機構11を第2指機構12に隣り合う方向に回動する方向に付勢する。言い換えれば、各コイルばねCM12、CM22およびMP2の付勢方向は、3つの従動流体圧シリンダ32(CM1)、32(CM2)および32(MP)の各ピストンロッド323(CM1)、323(CM2)および323(MP)の収縮方向と同じ方向とされている。
【0058】
〔第2指機構の構成〕
第2指機構12は、図5に示されているようにMP2関節の回動軸MP21(中手指節関節の第1の回動軸)を回動させる第1の従動流体圧シリンダ32(MP2)と、PIP関節の回動軸PIP1を回動させる第2の従動流体圧シリンダ32(PIP)とを備えている。
【0059】
第1の従動流体圧シリンダ32(MP2)のシリンダ本体321(MP2)は、人間の中手骨に相当し、MP1関節の回動軸MP11(中手指節関節機構の第1の回動軸)により回動自在に前記手の平部10のフレーム101(図1参照)に支持されている。第2の従動流体圧シリンダ32(PIP)のシリンダ本体321(PIP)は、人間の基節骨に相当し、MP2関節の回動軸MP21を介して第1の従動流体圧シリンダ32(MP2)に回動自在に連結されている。
【0060】
第2の従動流体圧シリンダ32(PIP)のシリンダ本体321(PIP)に流体を供給する配管324(PIP)は、MP2関節の回動軸MP21の内部に収容されている。これにより、MP2関節の回動時に配管324(PIP)が邪魔にならず、第2指機構12の屈伸動作を円滑に行うことができる。
【0061】
また、第2の従動流体圧シリンダ32(PIP)のシリンダ本体321(PIP)を第2指機構12の長手方向に沿ってMP2関節とPIP関節との間に配設することにより、第2指機構12をコンパクトに構成することができる。
【0062】
PIP関節には、人間の中節骨に相当する連結部材DIPL1を介してDIP関節が連結されている。DIP関節の回動軸DIP1には、前記指先部材に連設された6軸力センサS1を支持する支持部材DIPL2が回動自在に連結されている。連結部材DIPL1は、その一端がPIP関節の回動軸PIP1に回動自在に連結され、他端がDIP関節の回動軸DIP1に連結されている。
【0063】
さらに、PIP関節とDIP関節との間には、リンク部材DIPL3(リンク機構)が設けられている。リンク部材DIPL2は、第2の従動流体圧シリンダ32(PIP)のシリンダ本体321(PIP)と指先部材の6軸力センサS1を支持する支持部材DIPL2とを連結する。
【0064】
第1の従動流体圧シリンダ32(MP2)は、シリンダ本体321(MP2)内部に流体が供給されることによりピストン322(MP2)が摺動し、ピストンロッド323(MP2)が伸縮してMP2関節を回動させる。これにより、第2指機構12がMP2関節を介して屈伸する。
【0065】
第2の従動流体圧シリンダ32(PIP)は、シリンダ本体321(PIP)内部に流体が供給されることによりピストン322(PIP)が摺動し、ピストンロッド323(PIP)が伸縮してPIP関節を回動させる。このとき、PIP関節とDIP関節とが、連結部材DIPL1とリンク部材DIPL3とにより連結されているので、第2の従動流体圧シリンダ32(PIP)によるPIP関節の回動に追従してDIP関節が回動する。
【0066】
DIP関節は、第2の従動流体圧シリンダ32(PIP)によるPIP関節の回動に連動するように構成されているので、人間の指の動きに近い動作が得られるだけでなく、DIP関節を駆動するためのシリンダ等が不要となり、第2指機構12を軽量に構成することができる。
【0067】
以上の構成により、第2指機構12は、第1の従動流体圧シリンダ32(MP2)および第2の従動流体圧シリンダ32(PIP)のピストンロッド323(MP2),323(PIP)を伸長させることにより折り曲げ状態となり、ピストンロッド323(MP2),323(PIP)を収縮させることにより延ばし状態となる。
【0068】
第2指機構12のMP1関節は、図3に示されているように、各指機構の配列方向に沿ってピストンロッド323(MP1)が伸縮する第3の従動流体圧シリンダ32(MP1)により回動される。第3の従動流体圧シリンダ32(MP1)は、ピストンロッド323(MP1)を伸長させることにより第2指機構12を第3指機構13に近接する方向に揺動させ、ピストンロッド323(MP1)を収縮させることにより第2指機構12を第3指機構13から離反する方向に揺動させる。
【0069】
図5に示されているように、MP1関節、MP2関節およびPIP関節のそれぞれにはコイルばね(ねじりばね)MP12、MP22およびPIP2のそれぞれが設けられている。PIP関節およびMP2関節の各コイルばねPIP2,MP22は、第2指機構12を延ばし方向に付勢する。MP1関節のコイルばねMP12は、第2指機構12を第3指機構13から離反させる方向に付勢する。言い換えれば、各コイルばねMP12、MP22およびPIP2の付勢方向は、3つの従動流体圧シリンダ32(MP1)、32(MP2)および32(PIP)のピストンロッド323(MP1)、323(MP2)および323(PIP)の収縮方向と同じ方向とされている。
【0070】
以上、第1種の指機構とされる第2指機構12の構成を詳しく述べたが、第1種の指機構とされる第3指機構13の構成も第2指機構12と同じである。
【0071】
〔第2種の指機構の構成〕
第2種の指機構に区分されている第4指機構14および第5指機構15のそれぞれは、第2指機構12の上述した構成のうち、第3の従動流体圧シリンダ32(MP1)が省略されていることを除き、第2指機構12と同じ構成である。第4指機構14および第5指機構15は、第3の従動流体圧シリンダ32(MP1)が省略されているため、MP1関節が力動作に応じて自在に回動し、MP1関節のコイルばねMP12の付勢により所定位置に自然復帰するようになっている。すなわち、第2種の指機構はこの分だけ能動的な動きの自由度が第1種の指機構よりも低くなっている。
【0072】
〔駆動装置の構成〕
ハンド1の駆動機構の構成について説明する。駆動機構は、図6に示されている複数の駆動流体圧シリンダ(マスタシリンダ)31と、複数の従動流体圧シリンダ(スレーブシリンダ)32(i)(i=CM1,CM2,MP,MP1,MP2,PIP)とを構成要素としている(図3、図4および図5参照)。駆動流体圧シリンダ31は従動流体圧シリンダ32(i)のそれぞれに対応して合計13個設けられている。駆動流体圧シリンダ31とハンド1の従動流体圧シリンダ32(i)とは流体圧伝達管33(配管)を介して各別に接続される。流体圧伝達管33は流体圧力に応じて径または断面積が変化しうる程度の柔軟性を有している。
【0073】
複数の駆動流体圧シリンダ31のそれぞれはロボットRの適当な箇所(たとえば基体B0または腕体B2の内部空間)にユニットとしてあるいは分散して配置されている。
【0074】
駆動流体圧シリンダ31は、内部に流体を収容するシリンダ本体311と、シリンダ本体311の内部を摺動するピストン(マスタピストン)312と、ピストン312に連設された中空のピストンロッド313とを備えている。さらに、駆動流体圧シリンダ31は、ピストンロッド313の軸線に沿ってピストンロッド313内に挿入されるボールネジ314と、ピストンロッド313の内部に固設されてボールネジ314に螺合する螺合部材315と、ボールネジ314を回転駆動することにより螺合部材315を介してピストンロッド313を進退させるモータ30(回転駆動装置)と、モータ30の作動量を検出するためのエンコーダS3とを備えている。駆動流体圧シリンダ31には、シリンダ本体311の内部の流体圧力に応じた信号を出力する圧力センサS4が設けられている。
【0075】
モータ30は、回転伝達手段としてのプーリ301,303に掛けわたされたベルト302を介してボールネジ314を回転駆動する。これにより、モータ30の出力軸300とピストンロッド313との軸線が平行となり、モータ30をシリンダ本体311に隣設することができてコンパクトに形成される。
【0076】
この構成により、図7に模式的に示されているように、マスタピストン312が前進駆動されることにより、駆動流体圧シリンダ31から流体が流出し、配管33を介してそれに対応する従動流体圧シリンダ32(i)に流体が流入し、従動流体圧シリンダ32(i)のピストン(スレーブピストン)322(i)が前進することにより指機構11〜15のそれぞれが駆動される。これとは逆にマスタピストン312が後退駆動されることにより、駆動流体圧シリンダ31から流体が流入し、配管33を介してそれに対応する従動流体圧シリンダ32(i)から流体が流出し、従動流体圧シリンダ32(i)のピストン322(i)が後退することにより指機構11〜15のそれぞれが駆動される。
【0077】
[ハンドの動作制御]
制御装置2はコンピュータ(CPU、ROMおよびRAM等のメモリ、ならびに、A/D回路およびI/O回路等の回路により構成されている。)により構成されている。制御装置2によれば、CPUによりメモリから制御プログラムが適宜読み出され、読み出されたプログラムにしたがってハンド1の動作が制御される。
【0078】
制御装置2はロボットRに搭載されている複数のアクチュエータ4のそれぞれの動作を制御することにより、腕体B2の各関節機構における動き、および、脚体B4の各関節における動き等を制御する。制御装置2はマスタピストン312の位置を制御することにより指機構11〜15のそれぞれの動きまたは力を制御する。
【0079】
制御装置2は図9に示されているように第1演算処理要素21と、第2演算処理要素22とを備えている。
【0080】
第1演算処理要素21は、指機構11〜15のそれぞれの先端部に設けられている6軸力センサS1の出力信号に基づき、指機構11〜15のそれぞれの先端部における物体との当接位置、物体に与える圧力および圧力の方向を測定する。第1演算処理要素21は、手の平部10の手の平側における複数個所に配置されている複数の圧力センサS2のそれぞれの出力信号等に基づき、手の平部10における荷重中心の位置と、手の平部10にかかる荷重とを測定する。第1演算処理要素21は、エンコーダS3および流体圧力センサS4のそれぞれの出力信号に基づき、従動流体圧シリンダ32(i)のピストン322(i)の位置、さらには、指機構11〜15のそれぞれの各関節iにおける回動角度を測定する。
【0081】
第2演算処理要素22は、物体がハンド1によって把持されることにより複数の指機構11〜15および手の平部10のそれぞれに当接している状態において、手の平部10における荷重中心の測定位置が目標手の平領域PAに含まれるとともに、手の平部10にかかる荷重の測定値が目標荷重範囲に含まれるように、複数の指機構11〜15のそれぞれから物体にかける圧力を制御する。第2演算処理要素22は、指機構11〜15のそれぞれの各関節iにおける回動角度の測定結果に基づき、当該回動角度、ひいては、指機構11〜15のそれぞれの位置および姿勢を制御する。
【0082】
前記構成のロボットR、ハンド1および制御装置2の機能について説明する。
【0083】
[基本制御]
指機構11〜15のそれぞれの各関節における回動角度(スレーブ関節角度)θslvは、エンコーダS3および流体圧力センサS4のそれぞれの出力信号に基づき、第1演算処理要素21により関係式(1)〜(6)にしたがって測定される。
【0084】
説明のため、図7に示されているように、指機構11〜15のそれぞれを構成する指リンク部材の揺動軸の方向がZ方向として定義され、従動ピストン322(i)の進退方向がX方向として定義されている直交座標系を考える。
【0085】
回動角度(スレーブ関節角度)θslvは関係式(1)により表現される。
【0086】
θslv=φ+tan-1(h/Px)−θ0 (θ0>0),
φ=cos-1{(Px2+(L2)2+h2−(L1)2)/(2L(Px2+h2)1/2)}−θ0 ‥(1)
「h」はクランクオフセットであり、指リンク部材の揺動軸と、ロッド323(i)の後端揺動軸とのY方向の間隔である。「L1」はロッド323(i)の後端揺動軸と先端揺動軸との間隔(ロッド長)である。「L2」は指リンク部材の揺動軸と、ロッド323(i)の先端揺動軸との間隔(クランク長)である。クランクオフセットh、ロッド長L1およびクランク長L2の値はメモリに保存されている。
【0087】
「Px」はスレーブピストン322(i)の位置(スレーブピストン位置)Pxであり、関係式(2)により表現される。
【0088】
Px=P0−Strkslv ‥(2)
「P0」はスレーブピストン322(i)の基準位置である。
【0089】
「Strkslv」はスレーブピストン322(i)の基準位置p0からの変位量(スレーブストローク)であり、関係式(3)により表現される。
【0090】
Strkslv=Strkmst・(Smst/Sslv)−StrkOffsetmst+StrkExpslv ‥(3)
「Smst」はマスタピストン312の断面積である。「Sslv」はスレーブピストン322(i)の断面積である。「StrkOffsetmst」はマスタピストン312のオフセット(マスタストロークオフセット)である。断面積SmstおよびSslvまたはその比率(Smst/Sslv)、ならびに、マスタストロークオフセットStrkOffsetmstの値はメモリに保存されている。
【0091】
「Strkmst」はマスタピストン312の変位量(マスタストローク)であり、エンコーダS3の出力信号に応じたモータ30の回動位置MotPosmstに基づき、関係式(4)にしたがって算定されうる。
【0092】
Strkmst=MotPosmst・Rr ‥(4)
「Rr」はプーリ301,303およびベルト302により構成されている減速機構(図6参照)の減速比であり、メモリにあらかじめ保存されている。
【0093】
「StrkExpslv」は配管33の断面積変化または膨張もしくは収縮によるスレーブストローク変位量であり、スレーブピストン323(i)の断面積Sslvおよび配管膨張量Exppipに基づき、関係式(5)にしたがって算定されうる。
【0094】
SstrkExpslv=Exppip/Sslv ‥(5)
「Exppip」は配管膨張量(体積変化量)であり、流体圧力センサS4の出力信号に応じた測定流体圧Prsactに加えて、油圧目標値Prscmd、配管33の柔軟性の高低を表わす係数Kpipおよび配管33の長さLpipに基づき、関係式(6)にしたがって表現される。油圧目標値Prscmd、配管33の柔軟性の高低を表わす係数Kpipおよび配管33の長さLpipはメモリに保存されている。
【0095】
Exppip=(Prscmd−Prsact)・Kpip・Lpip ‥(6)
第1演算処理要素21により前記のように測定されたスレーブ関節角度θslvに加えて、後述するように6軸力センサS1および圧力センサS2のそれぞれの出力信号に基づき、第2演算処理要素22により指機構11〜15のそれぞれの動きまたは力が制御される。
【0096】
[応用制御]
第1演算処理要素21により、手の平部10の位置および姿勢、ならびに、ハンド1を用いた把持対象である物体の位置、姿勢、形状およびサイズ等、当該物体を把持するために必要な情報が認識される(図9/STEP002)。
【0097】
ロボットRの物体把持動作の制御のため、ロボット座標系のほか、手首座標系、ハンド座標系および物体座標系が定義される。「ロボット座標系」は、世界座標系におけるロボットRの位置および姿勢を定義するために定義される。「手首座標系」は、たとえば、手首関節機構B25の代表点を原点とし、かつ、手首関節機構B25の3つの回動軸を3つの直交軸として定義される。「ハンド座標系」は、たとえば、手の平部10の手の平面上の一点を原点とし、手の平面に平行な一対の直交軸をx軸およびy軸とし、かつ、手の平面に垂直な軸をz軸として定義される。「物体座標系」は、たとえば、物体の代表点を原点として定義される。ロボット座標系に対する手首座標系およびハンド座標系のそれぞれの位置および姿勢は、肩関節機構B21、肘関節機構B23および手首関節機構B25の屈曲角度等、ロボットRの動作により変動する因子、ならびに、メモリに保存されている第1腕体リンクB22および第2腕体リンクB22の長さ等、ロボットRのサイズを表わす一定の因子に基づき、順運動学計算法にしたがって算出されうる。
【0098】
手の平部10の位置および姿勢は腕体B2の各関節機構の屈曲角度を測定するためのロータリエンコーダ等、ロボットRの動作状態に応じたセンサからの出力信号に基づいて測定される。手の平部10の位置および姿勢はロボット座標系における座標値またはオイラー角によって認識される。ロータリエンコーダ等の動作状態センサの出力信号に基づき、ロボットRの腕体B2および脚体B4のそれぞれの位置および姿勢も認識されうる。
【0099】
頭カメラC1および腰カメラC2のうち一方または両方を通じて得られた画像解析により、固定座標系(ロボットRの動きとは無関係に固定されている座標系)における基体B0の位置および姿勢が認識される。
【0100】
エンコーダS3の出力信号に応じたモータ30の作動量に基づき、指機構11〜15のそれぞれの先端部の位置および姿勢が認識される。各指機構の先端部の位置は、エンコーダS3の出力信号に応じた各関節機構の屈曲角度、ハンド座標系において不変の各指機構の根元部の位置、および、各指機構の指節リンクの長さ等に基づき、順運動学計算法にしたがって、算出されたハンド座標系における位置および姿勢として定義される。
【0101】
物体の位置、姿勢、形状およびサイズは、頭カメラC1および腰カメラC2のうち一方または両方により撮像されたロボットRの周辺範囲の画像に基づいて認識される。物体の位置および姿勢はロボット座標系における座標値およびオイラー角によって認識される。ロボット座標系にける物体の位置および姿勢は、ロボットRの位置および姿勢(たとえば基体B0の位置および基本前額面の姿勢)が変化することにより変化するので、逐次認識または測定される。なお、認識対象となる情報の一部または全部がロボットRの外部にある端末装置から制御装置2に入力されることにより、当該入力情報が第1演算処理要素21により認識されてもよい。
【0102】
また、第1演算処理要素21により認識された物体の位置等に基づき、第2演算処理要素22によってアクチュエータ4の動作が制御されることにより、ハンド1により物体を把持するためのロボットRの予備的動作が制御される(図9/STEP004)。具体的には、必要に応じて脚体B4が動かされることによりロボットRの位置および姿勢が調節される。その上で、腕体B2が動かされることにより手の平部10が当該物体を把持するのに適当な位置および姿勢に調節される。
【0103】
さらに、第1演算処理要素21により認識された物体の位置および姿勢等に基づき、第2演算処理要素22により指機構11〜15のそれぞれの動きおよび必要に応じて腕体B2の動きが制御されることによって物体がハンド1により把持される。ここでは物体としてハンマーが例として採用される。なお、ハンド1の把持対象となる物体の種類はさまざまに変更されうる。
【0104】
具体的には、まず、第1指機構11の先端部が物体の一部(ハンマーの柄)の一方側に当接する一方、第2指機構12および第3指機構13のそれぞれの先端部が当該物体の一部の他方側に当接するように、第1種の指機構11〜13のそれぞれの動きが制御される(図9/STEP006)。これにより、図10(a)に示されているように当該物体が第1種の指機構11〜13によりつままれた状態になる。
【0105】
6軸力センサS1の出力に基づき、第1種の指機構11〜13のそれぞれの先端部が受ける荷重およびその方向が第1演算処理要素21により測定される。当該測定結果に基づき、第1種の指機構11〜13のそれぞれの物体をつまむ力の強弱および方向が制御されうる。
【0106】
また、物体の姿勢を変化させるように手の平部10の位置および姿勢、ならびに、第1種の指機構11〜13の動きのうち一部または全部が制御される(図9/STEP008)。
【0107】
これにより、図10(b)に示されているように物体が第1種の指機構11〜13によりつままれた状態で、物体の一部(ハンマーの頭部)が載置箇所に当接している一方、他の部分(ハンマーの柄)が載置箇所から浮くように物体の姿勢が調節される。物体座標系の1つの軸回りに手首座標系が回動するように腕体B2が駆動されることにより物体の姿勢が変更される。
また、図10(c)に示されているように手の平部10の一部を物体に当接させられる。手の平部10において物体に最初に当接させられる部分は、断面視で手の平面に連続しており、対象物の多少の誤差または対象物の計測誤差があっても好適に接触を検出することができるように丸みを帯びた形状とされている(図10(c)参照)。
【0108】
さらに、第2種の指機構14〜15の一方の指機構である第5指機構15が曲げられて物体を巻き込むように、第5指機構15の動きが制御される(図9/STEP010)。これにより、図11(a)に示されているように第5指機構15に物体の載置箇所から浮いている部分(ハンマーの柄)をつかませる。
【0109】
さらに、第1種の指機構11〜13のそれぞれの先端部が物体から離れるように第1種の指機構11〜13の動きが制御される(図9/STEP012)。これにより、図11(b)に示されているように第5指機構15により物体がつかまれている状態で第1種の指機構11〜13が物体から離される。
【0110】
続いて、手の平部10と物体との当接箇所の面積を増加させるように手の平部10の位置、姿勢または位置および姿勢が制御される(図9/STEP014)。これにより、図11(c)に示されているように、手の平部10がその手の平面を物体に当接させるように、手の平座標系の1つの軸回りにまたは物体に最初に当接させた部分を支点として傾動される。
【0111】
また、第2種の指機構14〜15のうち他方の指機構である第4指機構14が曲げられて物体を巻き込むように、第4指機構14の動きが制御される(図9/STEP016)。これにより、図11(c)に示されているように第5指機構15に加えて第4指機構14により物体の載置箇所から浮いている部分(ハンマーの柄)をつかませる。なお、第4指機構14から物体にかけられる圧力が徐々に強められる一方、第5指機構15から物体にかけられる圧力が徐々に弱められるように、第4指機構14および第5指機構15のそれぞれの動作が制御されてもよい。
【0112】
そして、第1種の指機構11〜13のそれぞれが曲げられて物体を巻き込むように、第1指機構11、第2指機構12および第3指機構13のそれぞれの動きが制御される(図9/STEP018)。これにより、図11(d)に示されているように第2種の指機構14〜15に加えて第1種の指機構11〜13に物体を握らせる。
【0113】
なお、図11(d)に示されているようにハンド1により物体が握られている状態で、指機構11〜15の動きが制御されることにより、手の平部10にかかる荷重および荷重中心位置が微調整されてもよい。手の平部10にかかる荷重および荷重中心位置は、手の平部10の手の平側の複数箇所に配置されている荷重センサS2の出力信号に基づいて制御されうる。第1演算処理要素21により、手の平部10に配置されている複数の圧力センサS2の出力信号に基づき、手の平部10における荷重中心p0および手の平部10にかかる荷重f0が測定される。当該算定方法は特開2007−196372号公報に詳細に説明されているので、ここでは説明を省略する。
【0114】
前記機能を発揮するハンド1によれば、第1種の指機構11〜13の動きにより物体がつままれた上で、この物体の一部を載置箇所に当接させたままで他の部分が持ち上げられる(図9/STEP006〜STEP008、図10(a)(b)参照)。この際、物体の全質量が第1種の指機構11〜13にかかるわけではないので、物体をつまみ上げる程度に第1種の指機構11〜13の力を強める必要がない。したがって、第1種の指機構11〜13の駆動機構3の軽量化または小型化が図られうる。
【0115】
また、能動的な動きの自由度が比較的高い第1種の指機構11〜13が物体を「つかむ」という動作よりも器用さが必要な「つまむ」という動作に適していることに鑑みて、複数の指機構11〜15のそれぞれの動作がその機能または役割に応じて適当に制御されうる。当該構成は、ハンド1の軽量化またはコンパクト化等のために一部の指機構に関係する構造または機構が簡略化されたことにより、当該一部の指機構の能動的な動きの自由度が他の指機構と比較して低く設計された場合に特に有意義である。
【0116】
さらに、手の平部10の位置および姿勢が制御されることにより、手の平部10と物体との当接箇所が広げられる(図9/STEP014、図11(c)参照)。この際、第5指機構15により物体がつかまれている状態で第1種の指機構11〜13が物体から離されている(図9/STEP012、図11(b)参照)。また、第2種の指機構の1つである第4指機構14により物体はつかまれていない(図11(c)参照)。これにより、指機構11〜14のそれぞれと物体とがお互いに相手方の動き等に束縛されなくなるので、その分だけ手の平部20の位置、姿勢または位置および姿勢が容易に変更されうる。
【0117】
また、手の平部10の縁の一部であって物体に最初に当接する部分が手の平面に連続する丸みを帯びた形状に形成されている。このため、手の平部10が丸みを帯びた部分において物体に最初に当接した後、この丸みを帯びた部分に連続している手の平面と物体との当接箇所を円滑に増加させることができる(図9/STEP008、STEP014、図10(c)、図11(c)参照)。
【0118】
さらに、複数の指機構11〜15の動きが制御されることにより当該複数の指機構11〜15により物体が握られる(図9/STEP018)。このため、物体が手の平部10および複数の指機構11〜15のそれぞれに当接した状態でしっかりと握られる。そして、ハンド1によりしっかりと握られた状態で物体がその載置箇所から安定に持ち上げられうる。
【0119】
本発明の他の実施形態として次のようなハンド1による物体把持方法が実行されてもよい。
【0120】
まず、第1演算処理要素21が物体の重量部分および軽量部分を認識する。「重量部分」は物体の質量中心位置をはさんで質量密度が高い部分を意味する。物体がハンマーである場合にはその頭部(正確には頭部の根元付近を除く部分)が重量部分に該当する。「軽量部分」は重量部分よりも質量密度が低い部分を意味する。物体がハンマーである場合にはその柄(正確には柄および頭部の根元付近を含む部分)が軽量部分に該当する。
【0121】
たとえば、頭カメラC1を通じて得られた画像解析により物体が頭部および柄を有するハンマーであることがデータベースまたは記憶装置に保存されている複数種類の物体のテンプレートを用いたパターンマッチング等により認識される。ハンマーの頭部が重量部分に該当すること、および、ハンマーの柄が軽量部分に該当することはデータベースまたは記憶装置から検索等される。
【0122】
そして、第2演算処理要素22が第1演算処理要素21による当該認識結果に基づき、物体の軽量部分(たとえばハンマーの柄)を第1種の指機構11〜13につまませ、物体が重量部分(たとえばハンマーの頭部)において載置箇所(たとえばテーブル)に当接している一方、軽量部分が載置箇所から浮くように物体の姿勢を変化させる(図10(a)(b)参照)。たとえば、物体の重量部分として認識されるハンマーの頭部が、物体の軽量部分として認識されるハンマーの柄に直交する軸を有する柱状である場合、当該柱の中心軸が物体座標系のx軸として定義され、ハンマーの柄の長手方向に伸びる軸が物体座標系のy軸として定義される。
【0123】
当該構成の制御システムによれば、物体の質量分布の偏向性に鑑みて、第1種の指機構11〜13につまませる場所が選定されるので、第1種の指機構11〜13にかかる負荷が軽減される。このため、第1種の指機構11〜13によりつままれた状態で変更された物体の姿勢が安定に維持されうる。したがって、これに続いて前記のようにハンド1により物体がしっかりと握られることにより物体がその載置箇所から安定に持ち上げられうる。
【0124】
なお、つまみ動作用の第1種の指機構は最低2本あればよく、つかみ動作用の第2種の指機構は1本以上あればよいので、指機構の数は3、4または6等、3以上の任意の数に変更されてもよい。
【0125】
前記実施形態ではMP1関節(またはCM1関節)の能動的な回動自由度が差別化されることにより、第1種および第2種の指機構の間で能動的な動きの自由度が差別化された。そのほか、MP1関節(またはCM1関節)、MP2関節(またはCM2関節)、PIP関節(またはMP関節)およびDIP関節(またはIP関節)の任意の組み合わせにおける能動的な回動自由度が差別化されることにより、第1種および第2種の指機構の間で能動的な動きの自由度が差別化されてもよい(図2参照)。
【0126】
手の平部10の位置、姿勢または位置および姿勢を変化させる際(図9/STEP014、図11(b)(c)参照)、第1種の指機構11〜13のうち一部または全部が物体に当接したままであってもよい。また、第2種の指機構14〜15の全部により物体がつかまれている状態で、手の平部10の位置、姿勢または位置および姿勢を変化させてもよい。
【0127】
なお、ハンド1の各指機構は、たとえば特開2003−181787号公報に記載されているハンドと同様に、ワイヤおよびプーリ等を介して原動機(電動モータ)の力が伝達されることにより駆動されてもよい。この場合も、複数の指機構が第1種の指機構と第2種の指機構とが区分されてもよい。
【符号の説明】
【0128】
1‥ハンド、2‥制御装置、10‥手の平部、11‥第1指機構、12‥第2指機構、13‥第3指機構、14‥第4指機構、15‥第5指機構、21‥第1演算処理要素、22‥第2演算処理要素
【特許請求の範囲】
【請求項1】
手の平部と、前記手の平部から延設されている複数の指機構とを備えているロボットハンドの制御システムであって、
前記手の平部の位置および姿勢、ならびに、物体の位置および姿勢を認識する第1演算処理要素と、
前記第1演算処理要素による認識結果に基づき、前記手の平部の位置および姿勢ならびに前記複数の指機構の動きを制御する第2演算処理要素とを備え、
前記第2演算処理要素が、前記複数の指機構のうち2本以上の第1種の指機構の動きを制御することにより、ある箇所に載置されている前記物体を前記第1種の指機構につまませ、
前記手の平部の位置および姿勢ならびに前記第1種の指機構の動きのうち一部または全部を制御することにより、前記物体が前記第1種の指機構によりつままれた状態で、前記物体の一部が前記箇所に当接している一方、他の部分が前記箇所から浮くように前記物体の姿勢を変化させるとともに前記手の平部の一部を前記物体に当接させ、
前記複数の指機構のうち前記第1種の指機構と区分されている第2種の指機構の動きを制御することにより、前記第2種の指機構に前記物体の前記面から浮いている部分をつかませ、
前記手の平部の位置、姿勢または位置および姿勢を制御することにより、前記第2種の指機構により前記物体がつかまれている状態で前記手の平部と前記物体との当接箇所の面積を増加させ、かつ、
前記第1種の指機構の動きを制御することにより、前記第2種の指機構に加えて前記第1種の指機構に前記物体を握らせることを特徴とする制御システム。
【請求項2】
請求項1記載の制御システムにおいて、
前記第1演算処理要素が、前記物体における質量中心位置をはさんで質量密度が高い重量部分と、前記重量部分よりも質量密度が低い軽量部分との区分を認識し、
前記第2演算処理要素が前記第1種の指機構の動きを制御することにより、前記箇所に載置されている前記物体の前記軽量部分を前記第1種の指機構につまませ、
前記手の平部の位置および姿勢ならびに前記第1種の指機構の動きのうち一部または全部を制御することにより、前記物体の軽量部分が前記第1種の指機構によりつままれた状態で、前記物体が前記重量部分において前記箇所に当接している一方、前記軽量部分が前記箇所から浮くように前記物体の姿勢を変化させるとともに前記手の平部を部分的に前記物体に当接させることを特徴とする制御システム。
【請求項3】
請求項1または2記載の制御システムにおいて、
前記第2演算処理要素が、前記第2種の指機構の動きを制御することにより、前記第2種の指機構に前記物体の前記箇所から浮いている部分をつかませた後、前記第1種の指機構の動きを制御することにより、前記第2種の指機構により前記物体がつかまれている状態で前記第1種の指機構を前記物体から離した上で、前記手の平部の位置、姿勢または位置および姿勢を制御することにより、前記手の平部と前記物体との当接箇所の面積を増加させることを特徴とする制御システム。
【請求項4】
請求項3記載の制御システムにおいて、
2本以上の前記第2種の指機構が存在し、
前記第2演算処理要素が、一部の前記第2種の指機構の動きを制御することにより、前記一部の第2種の指機構に前記物体の前記箇所から浮いている部分をつかませた後、前記第1種の指機構の動きを制御することにより、前記一部の第2種の指機構により前記物体がつかまれている状態で前記第1種の指機構を前記物体から離した上で、残りの前記第2種の指機構の動きを制御することにより、前記一部の第2種の指機構に加えて前記残りの第2種の指機構に前記物体の前記箇所から浮いている部分をつかませることを特徴とする制御システム。
【請求項5】
請求項1〜4のうち1つに記載の制御システムにおいて、
前記複数の指機構に能動的な動きの自由度の高低差が存在し、当該自由度が高い指機構を前記第1種の指機構としてその動きを制御するとともに、当該自由度が低い指機構を前記第2種の指機構としてその動きを制御することを特徴とする制御システム。
【請求項6】
請求項1〜5のうち1つに記載の制御システムにおいて、
前記手の平部の縁の一部が手の平面に連続する丸みを帯びた形状に形成され、
前記第2演算処理要素が、前記手の平部の位置および姿勢ならびに前記第1種の指機構の動きのうち一部または全部を制御することにより、前記手の平部の縁の丸みを帯びた形状に形成されている一部を前記物体に最初に当接させた後、前記手の平部の位置、姿勢または位置および姿勢を制御することにより、前記第2種の指機構により前記物体がつかまれている状態で前記手の平部の前記手の平面と前記物体との当接箇所の面積を増加させることを特徴とする制御システム。
【請求項7】
手の平部と、前記手の平部から延設されている複数の指機構と、請求項1〜6のうちいずれか1つに記載の制御システムとを備えていることを特徴とするロボットハンド。
【請求項8】
コンピュータを請求項1〜6のうちいずれか1つに記載の制御システムとして機能させることを特徴とするロボットハンドの制御プログラム。
【請求項9】
手の平部と、前記手の平部から延設されている複数の指機構とを備えているロボットハンドの制御方法であって、
前記手の平部の位置および姿勢、ならびに、物体の位置および姿勢を認識し、
前記認識結果に基づき、前記複数の指機構のうち2本以上の第1種の指機構の動きを制御することにより、ある箇所に載置されている前記物体を前記第1種の指機構につまませ、
前記手の平部の位置および姿勢ならびに前記第1種の指機構の動きのうち一部または全部を制御することにより、前記物体が前記第1種の指機構によりつままれた状態で、前記物体の一部が前記箇所に当接している一方、他の部分が前記箇所から浮くように前記物体の姿勢を変化させるとともに前記手の平部の一部を前記物体に当接させ、
前記複数の指機構のうち前記第1種の指機構と区分されている第2種の指機構の動きを制御することにより、前記第2種の指機構に前記物体の前記面から浮いている部分をつかませ、
前記手の平部の位置、姿勢または位置および姿勢を制御することにより、前記第2種の指機構により前記物体がつかまれている状態で前記手の平部と前記物体との当接箇所の面積を増加させ、かつ、
前記第1種の指機構の動きを制御することにより、前記第2種の指機構に加えて前記第1種の指機構に前記物体を握らせることを特徴とする制御方法。
【請求項1】
手の平部と、前記手の平部から延設されている複数の指機構とを備えているロボットハンドの制御システムであって、
前記手の平部の位置および姿勢、ならびに、物体の位置および姿勢を認識する第1演算処理要素と、
前記第1演算処理要素による認識結果に基づき、前記手の平部の位置および姿勢ならびに前記複数の指機構の動きを制御する第2演算処理要素とを備え、
前記第2演算処理要素が、前記複数の指機構のうち2本以上の第1種の指機構の動きを制御することにより、ある箇所に載置されている前記物体を前記第1種の指機構につまませ、
前記手の平部の位置および姿勢ならびに前記第1種の指機構の動きのうち一部または全部を制御することにより、前記物体が前記第1種の指機構によりつままれた状態で、前記物体の一部が前記箇所に当接している一方、他の部分が前記箇所から浮くように前記物体の姿勢を変化させるとともに前記手の平部の一部を前記物体に当接させ、
前記複数の指機構のうち前記第1種の指機構と区分されている第2種の指機構の動きを制御することにより、前記第2種の指機構に前記物体の前記面から浮いている部分をつかませ、
前記手の平部の位置、姿勢または位置および姿勢を制御することにより、前記第2種の指機構により前記物体がつかまれている状態で前記手の平部と前記物体との当接箇所の面積を増加させ、かつ、
前記第1種の指機構の動きを制御することにより、前記第2種の指機構に加えて前記第1種の指機構に前記物体を握らせることを特徴とする制御システム。
【請求項2】
請求項1記載の制御システムにおいて、
前記第1演算処理要素が、前記物体における質量中心位置をはさんで質量密度が高い重量部分と、前記重量部分よりも質量密度が低い軽量部分との区分を認識し、
前記第2演算処理要素が前記第1種の指機構の動きを制御することにより、前記箇所に載置されている前記物体の前記軽量部分を前記第1種の指機構につまませ、
前記手の平部の位置および姿勢ならびに前記第1種の指機構の動きのうち一部または全部を制御することにより、前記物体の軽量部分が前記第1種の指機構によりつままれた状態で、前記物体が前記重量部分において前記箇所に当接している一方、前記軽量部分が前記箇所から浮くように前記物体の姿勢を変化させるとともに前記手の平部を部分的に前記物体に当接させることを特徴とする制御システム。
【請求項3】
請求項1または2記載の制御システムにおいて、
前記第2演算処理要素が、前記第2種の指機構の動きを制御することにより、前記第2種の指機構に前記物体の前記箇所から浮いている部分をつかませた後、前記第1種の指機構の動きを制御することにより、前記第2種の指機構により前記物体がつかまれている状態で前記第1種の指機構を前記物体から離した上で、前記手の平部の位置、姿勢または位置および姿勢を制御することにより、前記手の平部と前記物体との当接箇所の面積を増加させることを特徴とする制御システム。
【請求項4】
請求項3記載の制御システムにおいて、
2本以上の前記第2種の指機構が存在し、
前記第2演算処理要素が、一部の前記第2種の指機構の動きを制御することにより、前記一部の第2種の指機構に前記物体の前記箇所から浮いている部分をつかませた後、前記第1種の指機構の動きを制御することにより、前記一部の第2種の指機構により前記物体がつかまれている状態で前記第1種の指機構を前記物体から離した上で、残りの前記第2種の指機構の動きを制御することにより、前記一部の第2種の指機構に加えて前記残りの第2種の指機構に前記物体の前記箇所から浮いている部分をつかませることを特徴とする制御システム。
【請求項5】
請求項1〜4のうち1つに記載の制御システムにおいて、
前記複数の指機構に能動的な動きの自由度の高低差が存在し、当該自由度が高い指機構を前記第1種の指機構としてその動きを制御するとともに、当該自由度が低い指機構を前記第2種の指機構としてその動きを制御することを特徴とする制御システム。
【請求項6】
請求項1〜5のうち1つに記載の制御システムにおいて、
前記手の平部の縁の一部が手の平面に連続する丸みを帯びた形状に形成され、
前記第2演算処理要素が、前記手の平部の位置および姿勢ならびに前記第1種の指機構の動きのうち一部または全部を制御することにより、前記手の平部の縁の丸みを帯びた形状に形成されている一部を前記物体に最初に当接させた後、前記手の平部の位置、姿勢または位置および姿勢を制御することにより、前記第2種の指機構により前記物体がつかまれている状態で前記手の平部の前記手の平面と前記物体との当接箇所の面積を増加させることを特徴とする制御システム。
【請求項7】
手の平部と、前記手の平部から延設されている複数の指機構と、請求項1〜6のうちいずれか1つに記載の制御システムとを備えていることを特徴とするロボットハンド。
【請求項8】
コンピュータを請求項1〜6のうちいずれか1つに記載の制御システムとして機能させることを特徴とするロボットハンドの制御プログラム。
【請求項9】
手の平部と、前記手の平部から延設されている複数の指機構とを備えているロボットハンドの制御方法であって、
前記手の平部の位置および姿勢、ならびに、物体の位置および姿勢を認識し、
前記認識結果に基づき、前記複数の指機構のうち2本以上の第1種の指機構の動きを制御することにより、ある箇所に載置されている前記物体を前記第1種の指機構につまませ、
前記手の平部の位置および姿勢ならびに前記第1種の指機構の動きのうち一部または全部を制御することにより、前記物体が前記第1種の指機構によりつままれた状態で、前記物体の一部が前記箇所に当接している一方、他の部分が前記箇所から浮くように前記物体の姿勢を変化させるとともに前記手の平部の一部を前記物体に当接させ、
前記複数の指機構のうち前記第1種の指機構と区分されている第2種の指機構の動きを制御することにより、前記第2種の指機構に前記物体の前記面から浮いている部分をつかませ、
前記手の平部の位置、姿勢または位置および姿勢を制御することにより、前記第2種の指機構により前記物体がつかまれている状態で前記手の平部と前記物体との当接箇所の面積を増加させ、かつ、
前記第1種の指機構の動きを制御することにより、前記第2種の指機構に加えて前記第1種の指機構に前記物体を握らせることを特徴とする制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−264545(P2010−264545A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−117777(P2009−117777)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]