説明

ロボット制御装置

【課題】ロボットと作業者が同時に作業できるようにすること。
【解決手段】ロボット制御装置1は、ロボットのツールの位置を算出する位置算出手段10,11と、他の演算処理部において算出されたロボットのツールの位置を取得する算出位置取得手段10,11と、算出したロボットの算出位置と取得したロボットの算出位置とが一致するか否かを判断する算出位置一致判断手段10,11と、双方の算出位置が一致しない場合に、切り替え部5,6によりサーボモータに対する電力の供給を遮断する電力遮断手段10,11と、双方の算出位置が一致する場合に、ロボットのツールの位置が、作業エリア内であるか否かを判断する位置判断手段10,11と、ロボットのツールの位置が作業エリア内である場合に、サーボ制御部によるロボットの駆動を所定速度以下に減速させる駆動制御手段10,11と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に産業用ロボットは、ロボット本体に多関節からなるアームが連結され、アームの先端にはツールが設けられて構成されている。ロボット本体にはサーボモータが取り付けられており、このサーボモータには位置検出器が取り付けられている。この位置検出器により検出されたツールの位置情報に基づいて、サーボ制御部によりツールの位置、アームの位置、アームの角度等が制御されている。
このような産業用ロボットを使用する際には、安全柵やライトカーテン等により、ロボットの動作エリアと作業者の作業エリアとを区別して作業者の安全を確保している。そして、作業者がロボットの動作エリアに進入した場合には、作業者の進入を検知してロボットを非常停止させる(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2004−122258号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、ロボットと作業者が共同で作業するようなロボットシステムの場合、例えば、作業者が加工の対象となるワークを治具に取り付ける作業と、ロボットが治具からワークを取り出す動作を並行して行う場合において、上述の特許文献1に記載の発明では、ロボットの動作エリア内に作業者がいることを検知してロボットが非常停止するため、ロボットシステムによる作業全体の稼働率が低下してしまうという問題があった。
【0004】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、ロボットと作業者が同時に作業できることを可能としたロボット制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、ロボット制御装置において、本体部に複数のアームが関節により連結されてなるアーム部が連結され、このアーム部の先端にツールが設けられたロボットを駆動させるサーボモータを前記ロボットに設けられた位置検出手段からの検出出力に応じて制御するサーボ制御部と、前記サーボモータに対する電力の供給と遮断とを切り替え可能な切り替え部と、作業者の作業エリアを指定する作業エリア指定手段と、所定の監視条件に応じて前記切り替え部を通じて前記サーボモータを停止させる監視部と、を備え、前記監視部は、二つの演算処理部と、前記サーボ制御部からの前記ロボットに対する制御情報を取得する制御情報取得手段と、前記制御情報取得手段により取得した制御情報を一方又は双方の演算処理部に送信する制御情報送信手段と、を有し、各演算処理部は、取得した制御情報から前記ロボットの所定部位の位置を算出する位置算出手段と、他の演算処理部における前記位置算出手段により算出された前記ロボットの所定部位の位置を取得する算出位置取得手段と、前記位置算出手段により算出したロボットの算出位置と前記算出位置取得手段により取得したロボットの算出位置とが一致するか否かを判断する算出位置一致判断手段と、前記算出位置一致判断手段により双方のロボットの算出位置が一致しないと判断された場合に、前記切り替え部により前記サーボモータに対する電力の供給を遮断する電力遮断手段と、前記算出位置一致判断手段によりロボットの算出位置が一致すると判断された場合に、前記位置算出手段により算出された前記ロボットの所定部位の位置が、前記作業エリア指定手段により指定された作業エリア内であるか否かを判断する位置判断手段と、前記位置判断手段により、前記ロボットの所定部位の位置が前記作業エリア内であると判断された場合に、前記サーボ制御部によるロボットの駆動を所定速度以下に減速させる駆動制御手段と、を有することを特徴とする。
ここで、制御情報とは、ロボットへの指令位置やサーボゲインに関する情報である。
また、ロボットの所定部位の位置とは、ロボットのツール位置、ロボットの各アーム位置、ロボットの各関節位置等のように、作業者の作業エリアに進入する可能性のあるロボットの部位の位置をいう。
また、所定速度以下とは、ロボットと作業者が同じエリア内で作業する際に、作業者にとって十分に安全を確保できるような規格で定められている安全速度以下であることをいう。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のロボット制御装置において、各演算処理部は、前記駆動制御手段によって前記サーボ制御部によるロボットの駆動を所定速度以下に減速させた後、所定時間内における前記ロボットの所定部位の変位量から前記ロボットの所定部位の駆動速度を算出する速度算出手段と、他の演算処理部における前記速度算出手段により算出された前記ロボットの所定部位の駆動速度を取得する算出速度取得手段と、前記速度算出手段により算出したロボットの算出速度と前記算出速度取得手段により取得したロボットの算出速度とが一致するか否かを判断する算出速度一致判断手段と、前記算出速度一致判断手段によりロボットの算出速度が一致すると判断された場合に、前記速度算出手段により算出された前記ロボットの所定部位の駆動速度が、所定速度以下であるか否かを判断する速度判断手段と、を備え、前記電力遮断手段は、前記算出速度一致判断手段により双方のロボットの算出速度が一致しないと判断された場合、又は、前記速度判断手段により前記ロボットの所定部位の駆動速度が前記所定速度を超えていると判断された場合に、前記切り替え部により前記サーボモータに対する電力の供給を遮断することを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のロボット制御装置において、前記監視部と前記サーボ制御部とを別個に構成したことを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3の何れか一項に記載のロボット制御装置において、前記所定速度を250mm/secとしたことを特徴とする。
【0009】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4の何れか一項に記載のロボット制御装置において、各演算処理部に対して処理の不良停止状態の発生を検出するウォッチドッグ回路が演算処理部ごとに設けられ、各演算処理部が、他の演算処理部の監視回路を通じて不良停止状態を検知すると、前記サーボ制御部によるロボットの駆動を停止させることを特徴とする。
ここで、不良停止状態とは、演算処理部が処理を実行すべき際に処理を行わなくなった状態をいう。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明では、位置算出手段は、制御情報取得手段により取得した制御情報からロボットの所定部位の位置を算出する。算出位置取得手段は、他の演算処理部における位置算出手段により算出されたロボットの所定部位の位置を取得する。
そして、算出位置一致判断手段は、位置算出手段により算出したロボットの算出位置と算出位置取得手段により取得したロボットの算出位置とが一致するか否かを判断する。
ここで、算出位置一致判断手段により双方のロボットの算出位置が一致しないと判断された場合には、電力遮断手段は、切り替え部によりサーボモータに対する電力の供給を遮断する。一方、算出位置一致判断手段によりロボットの算出位置が一致すると判断された場合には、位置判断手段は、位置算出手段により算出されたロボットの所定部位の位置が、作業エリア指定手段により指定された作業エリア内であるか否かを判断する。
そして、位置判断手段により、ロボットの所定部位の位置が作業エリア内であると判断された場合に、駆動制御手段は、サーボ制御部によるロボットの駆動を所定速度以下に減速させる。
【0011】
これにより、作業エリア内でロボットを駆動させることができるとともに、作業者もロボットの駆動に脅かされることなく作業をすることができるので、作業エリア内でロボットと作業者が同時に作業できる。よって、ロボットシステムによる作業全体の稼働率が低下してしまうという問題を解消することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明では、駆動制御手段によってサーボ制御部によるロボットの駆動を所定速度以下に減速させた後、速度算出手段は、所定時間内におけるロボットの所定部位の変位量からロボットの所定部位の駆動速度を算出する。そして、算出速度取得手段は、他の演算処理部における速度算出手段により算出されたロボットの所定部位の駆動速度を取得する。
算出速度一致判断手段は、速度算出手段により算出したロボットの算出速度と算出速度取得手段により取得したロボットの算出速度とが一致するか否かを判断する。ここで、算出速度一致判断手段により双方のロボットの算出速度が一致しないと判断された場合には、電力遮断手段は、切り替え部によりサーボモータに対する電力の供給を遮断する。
一方、算出速度一致判断手段によりロボットの算出速度が一致すると判断された場合には、速度判断手段は、速度算出手段により算出されたロボットの所定部位の駆動速度が、所定速度以下であるか否かを判断する。ここで、速度判断手段によりロボットの所定部位の駆動速度が所定速度を超えていると判断された場合には、電力遮断手段は、切り替え部によりサーボモータに対する電力の供給を遮断する。
【0013】
これにより、作業エリアに進入したロボットを減速させた後であっても、ロボットの駆動速度は監視され、所定速度を超えた場合にはサーボモータに対する電力の供給を遮断してロボットを停止させるので、作業者の作業エリア内においては、ロボットの駆動速度は所定速度以下に抑えられることとなる。よって、作業エリア内でロボットを駆動させることができるとともに、作業者もロボットの駆動に脅かされることなく作業をすることができるので、作業エリア内でロボットと作業者が同時に作業できる。よって、ロボットシステムによる作業全体の稼働率が低下してしまうという問題を解消することができる。また、ロボットの所定部位の位置に加え、駆動速度によってもロボットの駆動を制御することができるので、ロボットの駆動制御の精度向上を図ることができる。
【0014】
請求項3に記載の発明では、監視部とサーボ制御部とを別個に構成することにより、監視部及びサーボ制御部にかかる演算処理負担を減らすことができる。
【0015】
請求項4に記載の発明では、所定速度を250mm/secとすることで、規格に沿った安全速度までロボットを減速させることができる。
【0016】
請求項5に記載の発明では、各演算処理部ごとに設けられたウォッチドッグ回路が、演算処理部の不良停止状態の検知を行う。そして、いずれかの演算処理部が他の演算処理部を監視するウォッチドッグ回路を通じて不良停止状態の発生を検知すると、演算処理部はサーボ制御部によるロボットの駆動を停止させる。
これにより、いずれかの演算処理部が不良停止して、残り一方の演算処理部のみによるサーボモータの監視状態が回避され、二系統による監視状態でのみサーボモータを駆動させることができ、サーボモータの異常動作をより確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明に係るロボット制御装置の最良の形態について詳細に説明する。なお、本実施形態においては、スポット溶接ガンを備える溶接ロボットの制御装置を例に挙げて説明する。
【0018】
〔ロボット及びロボット制御装置の構成〕
<ロボット>
図1に示すように、ロボット制御装置1による対象となるロボット2は、ロボット2の本体部を構成し、土台となるベース21と、ロボット2のアーム部を構成し、複数の関節23で連結された複数のアーム22と、各関節23ごとに設けられた駆動源としてのサーボモータ24と、各サーボモータ24の軸角度をそれぞれ検出する位置検出手段としてのエンコーダ25と、を備えている。そして、連結されたアーム22の最先端部にはロボット2の用途に応じたツール26(例えば溶接ガンやハンド等)が装備されている。
各関節23は、アーム22の一端部を揺動可能として他端部を軸支する揺動関節と、アーム22自身をその長手方向を中心に回転可能に軸支する回転関節とのいずれかから構成される。つまり、本実施形態におけるロボット2はいわゆる多関節型ロボットに相当する。また、ロボット2は、各関節23により、その先端部のツール26を任意の位置に位置決めし、任意の姿勢を取らせることが可能となっている。
【0019】
<ロボット制御装置>
ロボット制御装置1は、ティーチング或いはプログラミングにより設定されたロボット2の教示動作データに従って、ロボット2の制御指令を出力する位置制御部3と、位置制御部3からの制御指令に従ってロボット2の各サーボモータ24の制御を行うサーボアンプ4と、電源から各サーボモータ24への電力の供給と遮断とを切り替え可能な切り替え部としてのマグネットスイッチ5,6と、ロボット2の制御情報を監視して所定条件に応じて各マグネットスイッチ5,6を通じてサーボモータ24を停止させる監視部7と、監視部7により異常検知が行われた場合にオペレータに異常発生を報知するための報知部8と、作業者の作業エリアを指定する作業エリア指定手段としての入力部9を備えている。ここで、位置制御部3、サーボアンプ4、監視部7は、それぞれ別個に構成されている。
【0020】
(位置制御部)
位置制御部3は、ロボット2の動作制御を行うために各サーボモータ24に対する制御指令を生成するための各種の処理プログラム及び各種のデータが記憶されたメモリと、処理プログラムを実行するCPUと、サーボアンプ4との指令やデータの送受信を行うためのインターフェイスとを主に備えている。
【0021】
メモリには、ロボット2の各種の処理プログラムの他、設定されたロボットの教示動作データ、ロボット2に関する各種の制御情報(各部の寸法、重量、イナーシャ、エンコーダ25の出力コードと当該出力コードが示す関節角度(角度位置)との対応関係を示すテーブル、ロボットの各関節23における関節角度の上限値、下限値(許容動作位置)、各関節23の関節動作速度の上限値(許容速度)、各関節23のトルクの上限値(許容値)、指令位置、サーボゲイン等)が記憶されている。
【0022】
教示動作データは、ロボット2が所定の動作を実行するための制御指令であり、例えば、事前にロボット2に目的となる動作(ティーチング)を行わせ、当該動作軌跡の各点で関節角度のサンプリングを行い、その実行動作を再現するために演算により求められた移動軌跡のデータである。
位置制御部3のCPUは、ロボット2の制御の際には、教示動作データに基づいて、サーボアンプ4に対して各サーボモータ24の位置指令を所定の周期で順番に出力する。
なお、教示動作データは、ティーチングに限らず、記録メディアの読み出し装置、オペレータによる入力装置又は外部に対する通信手段によりロボット制御装置1の外部から取得される場合もある。
【0023】
また、メモリ内の各種の制御情報である各部の寸法、重量、イナーシャ、エンコーダ25の出力コードと当該出力コードが示す関節角度との対応関係を示すテーブル、ロボットの各関節23における関節角度の上限値、下限値、各関節23の関節動作速度の上限値、各関節23のトルクの上限値等のデータ、そして、ロボット2への指令位置やサーボゲイン等は、監視部7に出力される。その際、CPUは、各データについて所定のデータ単位ごとにCRCコード(Cyclic Redundancy Check)を生成し、これを添付して監視部7に送信する。
【0024】
(サーボアンプ)
サーボアンプ4は、ロボット2の各関節23のエンコーダ25から回転角度位置の検出信号を受信する受信回路と、各サーボモータ24に対する制御信号と帰還信号の送受信を行うモータ制御回路とを備えている。そして、サーボアンプ4は、位置制御部3から入力される指令位置と各エンコーダ25の検出信号と各サーボモータ24からの帰還信号とに基づいて、各サーボモータ24の位置、速度、トルクについてフィードバック制御を行う。なお、このサーボアンプ4と位置制御部3とが、サーボモータ24をエンコーダ25からの検出出力に応じて制御するサーボ制御部として機能する。
【0025】
(監視部)
図2は、監視部7の構成を示すブロック図である。監視部7は、後述する各種の処理を実行する二つの演算処理部としての第一及び第二のCPU10,11と、ロボット2の各エンコーダ25からロボット2の所定部位の位置情報を受信する位置情報受信手段としてのエンコーダデータ受信回路12と、サーボ制御部を構成する位置制御部3からロボット2への指令位置及びサーボゲインを含む制御情報を受信する制御情報取得手段としての制御情報受信回路13と、第一と第二のCPU10,11の演算処理の実行状態を個別に監視するウォッチドッグ回路17,18と、を備えている。
【0026】
(各CPUの機能)
各CPU10,11は、それぞれ内部メモリ15,16を有しており、各内部メモリ15,16は、CPU10,11がそれぞれ実行する処理プログラムを記憶すると共に各処理における作業領域として機能する。
また、第一のCPU10と第二のCPU11とは、それぞれのデータの送受信を行う通信手段であるバスにより互いに接続されている。
【0027】
第一のCPU10及び第二のCPU11は、制御情報受信回路13にて取得した制御情報からロボット2の所定部位の位置を算出する位置算出手段として機能する。ここで、ロボット2の所定部位の位置とは、ロボット2のツール26の位置、ロボット2の各アーム22の位置、ロボット2の各関節23の位置等のように、作業者の作業エリアA(図1及び図6参照)に進入する可能性のあるロボット2の部位の位置であり、本実施形態ではツール26の位置を所定部位とする。
【0028】
第一のCPU10及び第二のCPU11は、他のCPU10,11において算出されたロボット2のツール26の位置を取得する算出位置取得手段として機能する。
第一のCPU10及び第二のCPU11は、算出したロボットの算出位置と他のCPU10,11から取得したロボット2のツール26の算出位置とが一致するか否かを判断する算出位置一致判断手段として機能する。
第一のCPU10及び第二のCPU11は、ロボット2のツール26の算出位置が一致しないと判断した場合に、マグネットスイッチ5,6によりサーボモータ24に対する電力の供給を遮断する電力遮断手段として機能する。
【0029】
第一のCPU10及び第二のCPU11は、ロボット2の算出位置が一致すると判断された場合に、算出されたロボット2のツール26の位置が、作業者による入力部9からの入力により指定された作業エリア内であるか否かを判断する位置判断手段として機能する。
第一のCPU10及び第二のCPU11は、ロボット2のツール26の位置が作業エリア内であると判断された場合に、サーボ制御部によるロボット2の駆動を所定速度以下に減速させる駆動制御手段として機能する。ここで、所定速度とは、ロボット2と作業者が同じエリア内で作業する際に、作業者にとって十分に安全を確保できるような規格で定められている安全速度をいい、具体的には、250mm/secである。従って、第一のCPU10及び第二のCPU11は、250mm/secよりも低速となるようにロボット2の駆動を減速する。
【0030】
第一のCPU10及び第二のCPU11は、サーボ制御部によるロボット2の駆動を250mm/sec以下に減速させた後、所定時間内におけるロボット2のツール26の変位量から当該ツール26の駆動速度を算出する速度算出手段として機能する。
第一のCPU10及び第二のCPU11は、他のCPU10,11により算出されたロボット2のツール26の駆動速度を取得する算出速度取得手段として機能する。
第一のCPU10及び第二のCPU11は、算出したロボット2のツール26の算出速度と取得したロボット2のツール26の算出速度とが一致するか否かを判断する算出速度一致判断手段として機能する。
第一のCPU10及び第二のCPU11は、ロボット2の算出速度が一致すると判断された場合に、算出されたロボット2のツール26の駆動速度が、上述の安全速度(250mm/sec)以下であるか否かを判断する速度判断手段として機能する。
第一のCPU10及び第二のCPU11は、ロボット2の算出速度が一致しないと判断された場合、又は、ロボット2のツール26の駆動速度が安全速度(250mm/sec)を超えていると判断された場合に、マグネットスイッチ5,6によりサーボモータ24に対する電力の供給を遮断する電力遮断手段として機能する。
【0031】
(エンコーダデータ受信回路)
エンコーダデータ受信回路12は、第一のCPU10からの指令に従い、エンコーダ25に対する検出信号出力の要求コマンドと当該要求コマンドを一意に識別するためのシーケンス番号データとをエンコーダ25に送信する。このシーケンス番号は、周期的に行われる位置データの要求コマンド出力のたびに順次1ずつ加算されて付加されるので、各要求コマンドごとに重複するシーケンス番号が付加されないようになっている。
【0032】
一方、エンコーダ25は、シーケンス番号が付加された要求コマンドを受けると同じシーケンス番号を付加して検出したロボット2におけるツール26の現在の位置に関する現在位置情報の返信を行う。これにより、エンコーダデータ受信回路12では、現在位置情報に付加されたシーケンス番号を参照することで、いずれの要求コマンドに対する現在位置情報なのかを識別することができる。また、シーケンス番号の不一致により、エンコーダ25の異常を検知することが可能となっている。また、エンコーダデータ受信回路12は、エンコーダ25から受信した現在位置情報を第一のCPU10に送信する現在位置情報送信手段としても機能する。
【0033】
(制御情報受信回路)
制御情報受信回路13は、サーボアンプ4からのサーボモータ24への指令位置及びサーボゲインを、位置制御部3を介して受信し、受信した指令位置及びサーボゲインを第一のCPU10に送信する。すなわち、制御情報受信回路13は、制御情報送信手段としても機能する。
【0034】
(ウォッチドッグ回路)
ウォッチドッグ回路17は第一のCPU10を監視し、ウォッチドッグ回路18は第二のCPU11の監視を行う。
即ち、各ウォッチドッグ回路17,18は、ロボット2の制御実行時において、それぞれが監視対象とするCPU10,11に対して周期的にウォッチドッグ要求信号を出力し、これに対して各CPU10,11が所定期間内に応答信号を返信しないときには、監視対象であるCPU10,11が停止しているものとして、タイムアップ信号を監視対象ではないCPU10,11に出力する機能を有している。
【0035】
(報知部)
報知部8は、監視部7の処理において異常を検知したときに、その異常をオペレータに報知するための表示手段である。具体的には、異常発生を表示するモニタ、報知ランプ又は警報機等が報知部8として使用される。
報知部8は、各CPU10,11が、他のウォッチドッグ回路17,18を通じて不良停止状態を検知すると、当該他のCPU10,11が不良停止状態である旨をユーザに報知する。
報知部8は、第一のCPU10及び第二のCPU11により、受信した制御情報が異常であると判断された場合、又は、受信した制御情報と取得した制御情報とが一致するか否かを判断した際に制御情報が一致しないと判断された場合に、制御情報の受信エラーである旨をユーザに報知する報知手段として機能する。
【0036】
(入力部)
入力部9は、作業者が作業前に作業エリアの設定入力を行うためのものである。ここで入力された作業エリアに関するデータとロボット2のツール26の位置とを比較してツール26が作業エリアに進入したか否かを判断してロボット2の駆動制御を行う。例えば、図1に示すように、作業エリアAの設定は、ロボット2の近傍に立方体の空間を設定することにより行う。なお、作業エリアは、立方体に囲まれる空間に限られるものではなく、直方体や円柱、球等により設定することも可能である。
【0037】
〔制御情報の受信処理〕
図3は、監視部7の各CPU10,11が行うロボット制御における制御情報(主に指令位置、サーボゲイン)の受信処理を示したものである。
最初に、第一のCPU10は、制御情報受信回路13を介して位置制御部3のCPUに対して制御情報の要求を行い、その結果、位置制御部3から制御情報を受信する(ステップS101)。
【0038】
このとき、位置制御部3のCPUは制御情報について所定のデータ単位でCRCコードを付与して送信する。これに対して、第一のCPU10は受信した制御情報について位置制御部3と同じ条件でCRCコードを生成すると共に、位置制御部3で生成されたCRCコードと一致するか否かの判断を行う(ステップS102)。
このCRCコードは、生成する元となるデータが1ビットでも異なればコードも変化してしまう性質があるので、上記処理において送信前の制御情報が何らかの異常により送信後に異なる制御情報に変化し或いは破損したかを判断することができる。
【0039】
そして、第一のCPU10が、CRCコードが一致しない(CRCコード異常)と判断した場合(ステップS102:YES)、第一のCPU10は報知部8に対して制御情報の受信エラーを示す異常報知表示を行うように制御する(ステップS103)。異常報知後は第一及び第二のCPU10,11は他の処理を行わず、故障要因を排除して電源を再投入しない限り復旧しない状態となる。
一方、第一のCPU10が、CRCコードが一致した(CRCコード正常)と判断した場合(ステップS102:NO)、第一のCPU10は、内部メモリ15に受信した制御情報を格納し(ステップS104)、さらに、第二のCPU11に対して受信した制御情報とそのCRCコードを送信する(ステップS105)。
【0040】
第一のCPU10からの制御情報とCRCコードを受信すると、第二のCPU11は、受信した制御情報について位置制御部3と同じ条件でCRCコードを生成すると共に、受信した制御情報のCRCコードと一致するか否かの判断を行う(ステップS106)。
そして、第二のCPU11が、CRCコードが一致しない(CRCコード異常)と判断した場合(ステップS106:YES)、第二のCPU11は報知部8に対して制御情報の受信エラーを示す異常報知表示を行うように制御する(ステップS107)。このときも、異常報知後は第一及び第二のCPU10,11は他の処理を行わず、故障要因を排除して電源を再投入しない限り復旧しない状態となる。
一方、第二のCPU11が、CRCコードが一致した(CRCコード正常)と判断した場合(ステップS106:YES)、第二のCPU11は、内部メモリ16に受信した制御情報を格納する(ステップS108)。
【0041】
また、第一のCPU10は、制御情報を内部メモリ15に格納後、バスを介して第二のCPU11に送信した制御情報との相互比較を行い(ステップS109)、第二のCPU11は、制御情報を内部メモリ16に格納後、バスを介して第一のCPU11が保有する制御情報との相互比較を行う(ステップS110)。
【0042】
そして、第一のCPU10は、自己の制御情報と第二のCPU11の制御情報とが一致するか否かを判断し(ステップS111)、第一のCPU10が一致すると判断した場合(ステップS111:YES)、これをもって本処理を終了する。一方、第一のCPU10が一致しないと判断した場合(ステップS111:NO)、第一のCPU10は、報知部8に対して制御情報の受信エラーを示す異常報知表示を行うように制御する(ステップS113)。このときも、異常報知後は第一及び第二のCPU10,11は他の処理を行わず、故障要因を排除して電源を再投入しない限り復旧しない状態となる。
【0043】
また、同様にして、第二のCPU11は、自己の制御情報と第一のCPU10の制御情報とが一致するか否かを判断し(ステップS112)、第二のCPU11が一致すると判断した場合(ステップS112:YES)、これをもって本処理を終了する。一方、第二のCPU11が一致しないと判断した場合(ステップS112:NO)、第二のCPU11は、報知部8に対して制御情報の受信エラーを示す異常報知表示を行うように制御する(ステップS114)。このときも、異常報知後は第一及び第二のCPU10,11は他の処理を行わず、故障要因を排除して電源を再投入しない限り復旧しない状態となる。
【0044】
〔ロボットの現在位置情報の受信処理〕
図4は、監視部7の各CPU10,11が行うロボット2のツール26の現在位置情報の受信処理を示したものである。
【0045】
最初に、第一のCPU10は、エンコーダデータ受信回路12を介してエンコーダ25に対して現在の検出角度位置を示す現在位置情報の要求コマンドを送信する。このとき、要求コマンドは、当該コマンドを一意に識別するためのシーケンス番号データを付加されてエンコーダ25に送信される。その結果、エンコーダデータ受信回路12から現在位置情報を受信する(ステップS201)。
【0046】
このとき、エンコーダ25は制御情報について所定のデータ単位でCRCコードを付与して送信する。これに対して、第一のCPU10は受信した現在位置情報についてエンコーダ25と同じ条件でCRCコードを生成すると共に、エンコーダ25で生成されたCRCコードと一致するか否かの判断を行う(ステップS202)。
このCRCコードは、生成する元となるデータが1ビットでも異なればコードも変化してしまう性質があるので、上記処理において送信前の制御情報が何らかの異常により送信後に異なる制御情報に変化し或いは破損したかを判断することができる。
【0047】
そして、第一のCPU10が、CRCコードが一致しない(CRCコード異常)と判断した場合(ステップS202:YES)、第一のCPU10はマグネットスイッチ5に切替信号を出力し、全てのサーボモータ24への通電を遮断して、ロボット2を停止させる(ステップS203)。一方、第一のCPU10が、CRCコードが一致した(CRCコード正常)と判断した場合(ステップS202:NO)、第一のCPU10は、第二のCPU11に対して受信した現在位置情報とそのCRCコードを送信する(ステップS204)。
【0048】
そして、第一のCPU10からの現在位置情報とCRCコードを受信すると、第二のCPU11は、受信した現在位置情報についてエンコーダ25と同じ条件でCRCコードを生成すると共に、当該生成したCRCコードと受信したCRCコードとが一致するか否かの判断を行う(ステップS205)。
そして、第二のCPU11が、CRCコードが一致しない(CRCコード異常)と判断した場合(ステップS205:YES)、第二のCPU11はマグネットスイッチ6に切替信号を出力し、全てのサーボモータ24への通電を遮断して、ロボット2を停止させる(ステップS206)。
【0049】
一方、第一のCPU10は、現在位置情報を第二のCPU11に送信後、上述したステップS104の処理(図3)で位置制御部3から受信して内部メモリ15に格納した制御情報に含まれるエンコーダ25の出力コードと当該出力コードが示す検出角度位置との対応関係を示すテーブルを参照して、エンコーダ25の位置データを関節角度(角度位置)に変換すると共に内部メモリ15に記憶する(ステップS207)。
また、第二のCPU11も、現在位置情報のCRCコードに異常がない場合に、上述したステップS108の処理(図3)で内部メモリ16に格納した制御情報中のエンコーダ25の出力コードと関節角度との対応テーブルから、エンコーダ25の位置データを関節角度に変換すると共に内部メモリ16に記憶する(ステップS208)。
【0050】
そして、第一のCPU10は、関節角度の算出後、バスを介して、第二のCPU11が算出した関節角度との相互比較を行い(ステップS209)、第一のCPU10で求めた関節角度と第二のCPU11で求めた関節角度とが一致するか否かを判断する(ステップS210)。
そして、第一のCPU10が、相互の関節角度が一致しないと判断した場合(ステップS210:NO)、第一のCPU10は、マグネットスイッチ5に切替信号を出力し、全てのサーボモータ24への通電を遮断して、ロボット2を停止させる(ステップS211)。
また、第一のCPU10が、相互の関節角度が一致すると判断した場合(ステップS210:YES)、第一のCPU10は、位置監視処理(ステップS212)、CPUの相互監視処理(ステップS213)を行った後に、本処理を終了する。
【0051】
一方、第二のCPU11は、関節角度の算出後、バスを介して、第一のCPU10が算出した関節角度との相互比較を行い(ステップS214)、第二のCPU11で求めた関節角度と第一のCPU10で求めた関節角度とが一致するか否かを判断する(ステップS215)。
そして、第二のCPU11が、相互の関節角度が一致しないと判断した場合(ステップS215:NO)、第二のCPU11は、マグネットスイッチ6に切替信号を出力し、全てのサーボモータ24への通電を遮断して、ロボット2を停止させる(ステップS216)。
また、第二のCPU11が、相互の関節角度が一致すると判断した場合(ステップS215:YES)、第二のCPU11は、位置監視処理(ステップS217)、CPUの相互監視処理(ステップS218)を行った後に、本処理を終了する。
【0052】
〔監視部におけるツールの位置及び駆動速度の監視処理〕
図5は、監視部7の各CPU10,11が行うロボット2の位置及び駆動速度の監視処理を示したものである。
最初に、第一のCPU10は、位置制御部3から受信した制御情報におけるロボット2への指令位置、サーボゲインからロボット2のツール26の現在位置を算出する(ステップS301)。また、第二のCPU11も、位置制御部3から受信した制御情報におけるロボット2への指令位置、サーボゲインからロボット2のツール26の現在位置を算出する(ステップS302)。
【0053】
そして、第一のCPU10は、ツール26の現在位置を算出した後、バスを介して、第二のCPU11で算出したツール26の現在位置との相互比較を行い(ステップS303)、第一のCPU10で算出したツール26の現在位置と第二のCPU11で算出したツール26の現在位置とが一致するか否かの判断を行う(ステップS304)。
同様に、第二のCPU11は、ツール26の現在位置を算出した後、バスを介して、第一のCPU10が算出したツール26の現在位置との相互比較を行い(ステップS305)、第二のCPU11で算出したツール26の現在位置と第一のCPU10で算出したツール26の現在位置とが一致するか否かの判断を行う(ステップS306)。
【0054】
そして、第一のCPU10が、相互に算出されたツール26の位置が一致しないと判断した場合(ステップS304:NO)、第一のCPU10は、マグネットスイッチ5に切替信号を出力し、全てのサーボモータ24への通電を遮断して、ロボット2を停止させる(ステップS307)。
同様に、第二のCPU11が、相互に算出されたツール26の位置が一致しないと判断した場合(ステップS306:NO)、第二のCPU11は、マグネットスイッチ6に切替信号を出力し、全てのサーボモータ24への通電を遮断して、ロボット2を停止させる(ステップS308)。
【0055】
一方、第一のCPU10が、相互に算出されたツール26の位置が一致したと判断した場合(ステップS304:YES)、第一のCPU10は、第一のCPU10により算出されたツール26の位置が作業者により入力部9を介して設定入力された作業エリアA内であるか否かを判断する(ステップS309)。ここで、図6に示すように、本実施形態は、作業者により指定された作業エリアAとロボット2のツール26の動作エリアRが重複する場合を前提としているため、作業エリアA内にロボット2のアーム部の先端に設けられたツール26が存在するか否かでロボット2の駆動速度が制御される。
【0056】
ステップS309において、第一のCPU10が、ツール26の位置が作業エリア内にはないと判断した場合(ステップS309:NO)、第一のCPU10は、本処理を終了させる。一方、第一のCPU10が、ツール26の位置が作業エリア内にあると判断した場合(ステップS309:YES)、第一のCPU10は、位置制御部3にロボット2の駆動速度を減速させる旨の信号を送信する(ステップS310)。
【0057】
同様に、第二のCPU11が、相互に算出されたツール26の位置が一致したと判断した場合(ステップS306:YES)、第二のCPU11は、第二のCPU11により算出されたツール26の位置が作業者により入力部9を介して設定入力された作業エリアA内であるか否かを判断する(ステップS311)。ここで、第二のCPU11が、ツール26の位置が作業エリア内にはないと判断した場合(ステップS311:NO)、第二のCPU11は、本処理を終了させる。一方、第二のCPU11が、ツール26の位置が作業エリア内にあると判断した場合(ステップS311:YES)、第二のCPU11は、位置制御部3にロボット2の駆動速度を減速させる旨の信号を送信する(ステップS312)。
【0058】
そして、ステップS310において、第一のCPU10が、位置制御部3にロボット2の駆動速度を減速させる旨の信号を送信すると、位置制御部3は、サーボアンプ4によりロボット2の駆動速度を減速させる。ロボット2の減速後においても、第一のCPU10は、所定時間内におけるロボット2のツール26の変位量からロボット2のツール26の駆動速度を算出する(ステップS313)。
【0059】
同様に、ステップS312において、第二のCPU11が、位置制御部3にロボット2の駆動速度を減速させる旨の信号を送信すると、位置制御部3は、サーボアンプ4によりロボット2の駆動速度を減速させる。ロボット2の減速後においても、第二のCPU11は、所定時間内におけるロボット2のツール26の変位量からロボット2のツール26の駆動速度を算出する(ステップS314)。
【0060】
そして、第一のCPU10は、ツール26の駆動速度を算出した後、バスを介して、第二のCPU11で算出したツール26の駆動速度との相互比較を行い(ステップS315)、第一のCPU10で算出したツール26の駆動速度と第二のCPU11で算出したツール26の駆動速度とが一致するか否かの判断を行う(ステップS316)。
【0061】
同様に、第二のCPU11は、ツール26の駆動速度を算出した後、バスを介して、第一のCPU10が算出したツール26の駆動速度との相互比較を行い(ステップS317)、第二のCPU11で算出したツール26の駆動速度と第一のCPU10で算出したツール26の駆動速度とが一致するか否かの判断を行う(ステップS318)。
【0062】
そして、第一のCPU10が、相互に算出されたツール26の駆動速度が一致しないと判断した場合(ステップS316:NO)、第一のCPU10は、マグネットスイッチ5に切替信号を出力し、全てのサーボモータ24への通電を遮断して、ロボット2を停止させる(ステップS319)。
【0063】
同様に、第二のCPU11が、相互に算出されたツール26の駆動速度が一致しないと判断した場合(ステップS318:NO)、第二のCPU11は、マグネットスイッチ6に切替信号を出力し、全てのサーボモータ24への通電を遮断して、ロボット2を停止させる(ステップS320)。
【0064】
一方、第一のCPU10が、相互に算出されたツール26の駆動速度が一致したと判断した場合(ステップS316:YES)、第一のCPU10は、第一のCPU10により算出されたツール26の駆動速度が250mm/sec以下であるか否かを判断する(ステップS321)。ここで、第一のCPU10が、ツール26の駆動速度が250mm/sec以下であると判断した場合(ステップS321:YES)、第一のCPU10は、本処理を終了させる。一方、第一のCPU10が、ツール26の駆動速度が250mm/sec以下ではないと判断した場合(ステップS321:NO)、第一のCPU10は、マグネットスイッチ5に切替信号を出力し、全てのサーボモータ24への通電を遮断して、ロボット2を停止させる(ステップS322)。
【0065】
同様に、第二のCPU11が、相互に算出されたツール26の駆動速度が一致したと判断した場合(ステップS318:YES)、第二のCPU11は、第二のCPU11により算出されたツール26の駆動速度が250mm/sec以下であるか否かを判断する(ステップS323)。ここで、第二のCPU11が、ツール26の駆動速度が250mm/sec以下であると判断した場合(ステップS323:YES)、第二のCPU11は、本処理を終了させる。一方、第二のCPU11が、ツール26の駆動速度が250mm/sec以下ではないと判断した場合(ステップS323:NO)、第二のCPU11は、マグネットスイッチ6に切替信号を出力し、全てのサーボモータ24への通電を遮断して、ロボット2を停止させる(ステップS324)。
上記の処理を0.1secや0.01sec等の短時間で行い、ロボット2の駆動時には本処理が繰り返される。
【0066】
〔監視部におけるCPUの相互監視処理〕
サーボモータ制御の監視処理において、ロボットの位置監視処理が終了すると、最後にCPUの相互監視処理が実行される。
かかる処理では、第一のCPU10が、第二のCPU11の監視を行っているウォッチドッグ回路18にアクセスし、第二のCPU11の停止状態を示すエラー信号を出力しているかを判断する。その結果、ウォッチドッグ回路18がエラー信号を出力している場合に、第一のCPU10は、マグネットスイッチ5に切替信号を出力し、ロボット2を停止させる。また、ウォッチドッグ回路18がタイムアップ信号を出力していない場合には、第一のCPU10はCPUの相互監視処理を終了する。
【0067】
一方、第二のCPU11が、第一のCPU10の監視を行っているウォッチドッグ回路17にアクセスし、第一のCPU10の停止状態を示すエラー信号を出力しているかを判断する。その結果、ウォッチドッグ回路17がエラー信号を出力している場合に、第二のCPU11は、マグネットスイッチ6に切替信号を出力し、ロボット2を停止させる。また、ウォッチドッグ回路17がタイムアップ信号を出力していない場合には、第二のCPU11はCPUの相互監視処理を終了する。
【0068】
〔ロボット制御装置の全体的な動作〕
上記構成により、ロボット制御装置1の位置制御部3は、教示動作データに基づく動作を行うように制御指令を順番に出力し、サーボアンプ4を介してロボット2の各関節23のサーボモータ24の動作制御を行う。このとき、サーボアンプ4では、各関節23のエンコーダ25からの検出信号に基づいてフィードバック制御が実行される。
【0069】
一方、監視部7は、ロボット2の動作開始前に、ロボット制御における各種の制御情報を位置制御部3から取得し、ロボット2の動作制御の際には、所定のサンプリング間隔で、各エンコーダ25から現在位置情報(関節角度)の受信を行う。そして、データ受信の異常の発生、関節角度、動作速度、トルクの異常の発生、各CPU10,11の異常の発生の監視がロボット2の動作中においてサンプリング間隔で繰り返し実行される。
【0070】
〔実施形態の効果〕
以上のように、ロボット制御装置1では、作業エリア内でロボット2を駆動させることができるとともに、作業者もロボット2の駆動に脅かされることなく作業をすることができるので、作業エリア内でロボット2と作業者が同時に共存して作業できる。また、作業エリアA以外においてはロボット2は高速で動作するため、ロボット2の作業を停止することがなく、よって、ロボットシステムによる作業全体の稼働率が低下してしまうという問題を解消することができる。
【0071】
また、作業エリアに進入したロボット2を減速させた後であっても、ロボット2の駆動速度は監視され、安全速度である250mm/secを超えた場合にはサーボモータ24に対する電力の供給を遮断してロボット2を停止させるので、作業者の作業エリア内においては、ロボット2の駆動速度は250mm/sec以下に抑えられることとなる。また、所定速度を250mm/secとすることで、規格に沿った安全速度までロボットを減速させることができる。
よって、作業エリア内でロボット2を駆動させることができるとともに、作業者もロボット2の駆動に脅かされることなく作業をすることができるので、作業エリア内でロボット2と作業者が同時に作業できる。よって、ロボットシステムによる作業全体の稼働率が低下してしまうという問題を解消することができる。また、ロボット2のツール26の位置に加え、駆動速度によってもロボット2の駆動を制御することができるので、ロボット2の駆動制御の精度向上を図ることができる。
【0072】
また、二つのCPU10,11を設けることにより、ロボット2のツール26の現在位置を受信した段階で異常がある場合には、処理を進めることなく即座に異常をユーザに報知し、さらに、各CPU10,11が互いのロボット2の現在位置情報を相互に比較して異常の有無を判断しているので、位置制御部3及びサーボアンプ4の異常を迅速かつ的確に検出することができ、監視部7の信頼性を向上させることができる。
また、二つのCPU10,11により互いに受信したロボット2のツール26の現在位置の異常の有無を判断しているので、監視部7の信頼性を向上させることができる。
【0073】
また、位置制御部3とサーボアンプ4と監視部7を別個に構成することにより、ロボット2の制御と監視を並列処理することができるため、各部の処理の負荷を軽減することができるとともに、一つの処理回路で処理する場合に比べて各部の処理を高速化することができる。
【0074】
また、CPU10,11ごとに設けられたウォッチドッグ回路17,18により、いずれかのCPU10,11が不良停止して、残り一方のCPU10,11のみによるサーボモータ24の監視状態が回避され、二系統による監視状態でのみサーボモータ24を駆動させることができ、サーボモータ24の異常動作をより確実に防止することができる。
また、サーボ制御が正常に動作していることを確認するだけでなく、サーボアンプ4に含まれる診断回路や診断ソフトウェアを安価に実現することができる。
また、サーボアンプ4の監視だけでなく、エンコーダ25をも含めた監視になるため、装置全体の信頼性を向上させることができる。
【0075】
〔その他〕
上記構成では、図1において、サーボモータ24及びエンコーダ25が一組しか図示されていないが、これらは各関節23ごとに設けられている。従って、監視部7は、図3〜図5に示す全ての処理を、タイミングをずらして各サーボモータ24ごとに実行していることはいうまでもない。
また、上記構成では、監視部7の第二のCPU11が各エンコーダ25からの現在位置情報を第一のCPU10を介して受信する構成となっているが、第二のCPU11が第一のCPU10を介することなくエンコーダ25から直接受信する構成としても良い。その場合、第二のCPU11もエンコーダ25からの現在位置情報に対してCRCコードによる確認処理を実行することが望ましい。
【0076】
また、制御対象となるロボット2は回動、回転関節のみを有するものに限られず、例えば直動式の関節を有するロボットを制御対象としても良い。その場合、関節角度ではなく、現在位置情報から直進方向の移動量を求め、これを監視する構成とすることが望ましい。
また、上記実施形態のようなロボット2に限らず、NC(数値制御)による工作機械の制御についても適用可能である。
また、ロボット2の現在位置の監視に限らず、位置制御部3からの指令位置に対しても監視を実施し、ロボット2の駆動速度を減速させることも可能である。
また、ツール26の位置を監視する場合に限らず、アーム、関節についても同様に位置を監視することができる。
また、二つのCPU10,11により相互に算出されたツール26の位置や駆動速度が一致するか否かを比較しているが、必ずしも一致する場合に限らず、その位置差、速度差が一定の許容範囲内であれば、一致するものとして処理することも可能である。
また、マグネットスイッチ5,6を切ることで異常を通知することができるようにしたが、位置制御部3に対して異常を通知するようにしてもよい。
また、上記構成では、各演算処理を二つのCPU10,11により行っていたが、CPUの数は三つ以上であってもよい。これにより、ロボット2の位置監視のレベルを向上させることができる。
また、ロボット2の台数も1台に限らず、複数のロボットが作業エリアに進入する場合においても同様に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】ロボット及びロボット制御装置の全体構成図。
【図2】図1における監視部の構成を示すブロック図。
【図3】監視部の各CPUが行うロボットの制御情報の受信処理のフローチャート。
【図4】監視部の各CPUが行うロボットのツールの位置情報の受信処理のフローチャート。
【図5】監視部の各CPUが行うロボットの位置及び駆動速度の監視処理のフローチャート。
【図6】作業エリアとロボットの動作エリアとの関係を示す図。
【符号の説明】
【0078】
1 ロボット制御装置
2 ロボット
3 位置制御部(サーボ制御部)
4 サーボアンプ(サーボ制御部)
5 マグネットスイッチ(切り替え部)
6 マグネットスイッチ(切り替え部)
7 監視部
9 入力部(作業エリア指定手段)
10 第一のCPU(演算処理部、位置算出手段、算出位置取得手段、算出位置一致判断手段、電力遮断手段、位置判断手段、駆動制御手段、速度算出手段、算出速度取得手段、算出速度一致判断手段、速度判断手段)
11 第二のCPU(演算処理部、位置算出手段、算出位置取得手段、算出位置一致判断手段、電力遮断手段、位置判断手段、駆動制御手段、速度算出手段、算出速度取得手段、算出速度一致判断手段、速度判断手段)
13 制御情報受信回路(制御情報取得手段、制御情報送信手段)
17 ウォッチドッグ回路
18 ウォッチドッグ回路
24 サーボモータ
25 エンコーダ(位置検出手段)
26 ツール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部に複数のアームが関節により連結されてなるアーム部が連結され、このアーム部の先端にツールが設けられたロボットを駆動させるサーボモータを前記ロボットに設けられた位置検出手段からの検出出力に応じて制御するサーボ制御部と、
前記サーボモータに対する電力の供給と遮断とを切り替え可能な切り替え部と、
作業者の作業エリアを指定する作業エリア指定手段と、
所定の監視条件に応じて前記切り替え部を通じて前記サーボモータを停止させる監視部と、を備え、
前記監視部は、二つの演算処理部と、前記サーボ制御部からの前記ロボットに対する制御情報を取得する制御情報取得手段と、前記制御情報取得手段により取得した制御情報を一方又は双方の演算処理部に送信する制御情報送信手段と、を有し、
各演算処理部は、
取得した制御情報から前記ロボットの所定部位の位置を算出する位置算出手段と、
他の演算処理部における前記位置算出手段により算出された前記ロボットの所定部位の位置を取得する算出位置取得手段と、
前記位置算出手段により算出したロボットの算出位置と前記算出位置取得手段により取得したロボットの算出位置とが一致するか否かを判断する算出位置一致判断手段と、
前記算出位置一致判断手段により双方のロボットの算出位置が一致しないと判断された場合に、前記切り替え部により前記サーボモータに対する電力の供給を遮断する電力遮断手段と、
前記算出位置一致判断手段によりロボットの算出位置が一致すると判断された場合に、前記位置算出手段により算出された前記ロボットの所定部位の位置が、前記作業エリア指定手段により指定された作業エリア内であるか否かを判断する位置判断手段と、
前記位置判断手段により、前記ロボットの所定部位の位置が前記作業エリア内であると判断された場合に、前記サーボ制御部によるロボットの駆動を所定速度以下に減速させる駆動制御手段と、
を有することを特徴とするロボット制御装置。
【請求項2】
各演算処理部は、
前記駆動制御手段によって前記サーボ制御部によるロボットの駆動を所定速度以下に減速させた後、所定時間内における前記ロボットの所定部位の変位量から前記ロボットの所定部位の駆動速度を算出する速度算出手段と、
他の演算処理部における前記速度算出手段により算出された前記ロボットの所定部位の駆動速度を取得する算出速度取得手段と、
前記速度算出手段により算出したロボットの算出速度と前記算出速度取得手段により取得したロボットの算出速度とが一致するか否かを判断する算出速度一致判断手段と、
前記算出速度一致判断手段によりロボットの算出速度が一致すると判断された場合に、前記速度算出手段により算出された前記ロボットの所定部位の駆動速度が、所定速度以下であるか否かを判断する速度判断手段と、を備え、
前記電力遮断手段は、前記算出速度一致判断手段により双方のロボットの算出速度が一致しないと判断された場合、又は、前記速度判断手段により前記ロボットの所定部位の駆動速度が前記所定速度を超えていると判断された場合に、前記切り替え部により前記サーボモータに対する電力の供給を遮断することを特徴とする請求項1に記載のロボット制御装置。
【請求項3】
前記監視部と前記サーボ制御部とを別個に構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載のロボット制御装置。
【請求項4】
前記所定速度を250mm/secとしたことを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載のロボット制御装置。
【請求項5】
各演算処理部に対して処理の不良停止状態の発生を検出するウォッチドッグ回路が演算処理部ごとに設けられ、
各演算処理部が、他の演算処理部の監視回路を通じて不良停止状態を検知すると、前記サーボ制御部によるロボットの駆動を停止させることを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載のロボット制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−283448(P2007−283448A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−114505(P2006−114505)
【出願日】平成18年4月18日(2006.4.18)
【出願人】(000005197)株式会社不二越 (625)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】