説明

ロボット及び生産システム

【課題】ワーク搬送路に沿って並ぶ複数の工程エリアに夫々設けられたロボットにより、ワークに対して複数の作業工程を順に実行するものにあって、全体の小型化を図る。
【解決手段】ワークWが搬送されるワーク搬送路13に沿って、ワークWに対する作業を順に行うロボット12を備える複数個の作業ステーション14〜17を配置して生産システム11を構築する。ロボット12を、直線移動レール18の下面側に自在に移動される移動体の下面部にベースを連結し、そのベースの下面に水平旋回アーム21を垂直軸J1を中心に旋回するように取付け、水平旋回アーム21の先端面に昇降体を上下動するように取付け、この昇降体の下面側に手首部を垂直軸を中心に同軸回転するように取付け、手首部にワークWを把持するための作業用ツールを取付けて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークに対する複数の作業工程を各工程エリアで順に実行する生産システムにおける前記各工程エリアに設置されるロボット、及び、そのロボットを用いた生産システムに関する。
【背景技術】
【0002】
工場設備において例えば自動車部品の生産(組立)を行うための、ロボットを用いた生産システムとして、従来より、例えば特許文献1に示されるシステムが考えられている。図6に示すように、この生産システムは、例えばワークWが載置されたパレット1を搬送する搬送コンベア2に沿って、部品Pを供給する部品供給部3aを有する複数(2個のみ図示)の作業ステーション3(工程エリア)を設け、各作業ステーション3に設置されているロボット4(水平多関節型ロボット)により、搬送コンベア2によって矢印A方向に搬送されるワークWに対する、部品Pの組付け等の複数の工程を順に行うようになっている。
【0003】
上記した水平多関節型ロボット4は、一般に、図7に示すような構成を備える。即ち、設備の設置面に固定的に設けられるベース5上には、第1アーム6の基端部が垂直軸J1を中心に回動(旋回)可能に連結され、第1アーム6の先端上面部に、第2アーム7の基端部が垂直軸J2を中心に回動(旋回)可能に連結されている。そして、この第2アーム7の先端部には、上下に延びるシャフト状をなす上下アーム8が、上下動及び同軸回転可能に設けられ、前記上下アーム8の先端(下端)のフランジ部9には、部品Pを把持するための図示しないハンド等の作業用ツールが着脱可能に取付けられる。
【0004】
このとき、図6に示すように、各作業ステーション3においては、例えばロボット4(ベース5)が図で右寄り部位に設けられ、作業ステーション3のうちロボット4の左側に、作業領域や部品配置部3aが設けられる。これにより、各ロボット4は、もっぱら、アーム6,7(作業用ツール)をベース5の左側に位置させながら作業を実行する。
【0005】
尚、図示はしないが、規模の比較的大きい(大形のラインの構築が可能な)工場等で採用される同様の生産システムとして、特許文献2に示されるような、無人搬送台車上に垂直多関節型のロボットを搭載して構成される移動ロボットを用いる生産システムも知られている。このシステムでは、工場の床上に、ワークが搬送される搬送コンベアに沿うように移動ロボットの走行路が設けられ、複数台の移動ロボットをその走行路に沿って自在に移動させながら、複数の工程エリアにおいて作業工程を行うようになっている。この構成によれば、ある工程エリアにおいて作業遅れ(ワークの滞留)が発生した場合でも、近くにいる他の移動ロボットをその工程の応援作業に割当てることが可能となる。
【特許文献1】特開2007−301656号公報
【特許文献2】特開2000−117590号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記したような生産システムにあっては、システム全体のコンパクト化(占有面積の縮小)が要望される。しかし、図6に示すシステム構成では、ロボット4同士の干渉を避けるために、各作業ステーション3(工程エリア)を、それら同士間に、ある程度の間隔をおいて配置することが必要となる事情があり、システム全体のコンパクト化には限度があった。また、上記した特許文献2のような移動ロボットを用いたシステムでは、設備が大がかりで、全体として大きなスペースが必要となる等、コンパクト化とは相反するものとなる。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、ワーク搬送路に沿って並ぶ複数の工程エリアに夫々設けられたロボットにより、ワークに対して複数の作業工程を順に実行するものにあって、システム全体の小型化を図ることができるロボット及び生産システムを提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明のロボットは、ワーク搬送路の片側に、ワークの搬送方向に沿って作業工程の順に並ぶと共に前記ワーク搬送路と交差する方向に延び作業領域や部品配置場所を有する複数の工程エリアを備え、前記ワークに対する複数の作業工程をそれら各工程エリアで順に実行する生産システムにおける、前記各工程エリアに設置され前記ワークに対する作業工程を実行するロボットであって、自らの設置される工程エリアに沿って前記ワーク搬送路と交差する方向に延びる直動軸と、この直動軸に沿って水平方向に直線移動されるベースと、基端部が前記ベースに垂直軸を中心に回動可能に連結され該ベースに対して水平方向に旋回される水平旋回アームと、この水平旋回アームの前記垂直軸とは反対側の端部である先端部に上下動可能に連結され該水平旋回アームに対して上下動される昇降体と、この昇降体に垂直軸を中心に同軸回転可能に設けられ作業用ツールが装着可能な手首部とを備えるところに特徴を有する(請求項1の発明)。
【0009】
また、本発明の生産システムは、ワーク搬送路の片側に、ワークの搬送方向に沿って作業工程の順に並ぶと共に前記ワーク搬送路と交差する方向に延び作業領域や部品配置場所を有する複数の工程エリアを備え、前記各工程エリアには請求項1記載のロボットが設けられており、それらロボットにより、前記ワーク搬送路を搬送されるワークに対して複数の作業工程を順に実行する生産システムであって、前記ロボットは、前記直動軸に沿って移動しながら、前記ワーク搬送路からワークを取得し、自らの工程エリアの作業領域において当該ワークに対する作業を行い、作業終了後のワークを前記ワーク搬送路に戻すことを繰返すように構成され、前記ワーク搬送路は、前記作業終了後のワークを次の工程エリアに向けて搬送するように構成されているところに特徴を有する(請求項2の発明)。
【0010】
本発明によれば、各工程エリアに設けられたロボットを、直動軸に沿って、ワーク搬送路側から自らの工程エリアの奥方までの間で、当該工程エリア内を自在に移動させながら、ワークに対する作業工程を実行させることができる。
【0011】
そして、ロボットの構成としては、水平多関節型ロボット(あるいは垂直多関節型ロボット)とは異なり、ベースと昇降体ひいては手首部との間に1本の水平旋回アームが設けられているだけで、2本のアームを回動(旋回)可能に連結したいわばひじに相当する関節が存在しないので、工程エリアにおける作業中に、2本のアームを連結した関節部分(ひじの部分)が、直動軸を挟んだ工程エリアの反対側に突き出すといったことがなくなる。従って、工程エリア同士間に、ロボット同士の干渉を防止するための安全確保用の空間を確保する必要がなくなり、工程エリアの配置間隔を狭くすることができ、ひいては全体をコンパクトに配置することができる。
【0012】
ところで、本発明の生産システムにおいては、工程エリアの配置間隔を狭くすることができることに伴い、前記各ロボットを、前記水平旋回アームの先端部を隣り合う工程エリア内まで侵入させて作業することが可能に構成すると共に、前記各工程エリアにおける作業工程の遅れの有無を監視する監視手段と、この監視手段により作業工程の遅れの発生が確認されたときに、その工程エリアに隣り合う工程エリアのロボットに、当該作業工程の遅れが発生した工程エリアに対する応援作業を実行させる応援制御手段とを設ける構成とすることができる(請求項3の発明)。
【0013】
これによれば、各ロボットの水平旋回アームを、その先端が隣り合う工程エリアに届くように配置することにより、隣の工程エリアに対する応援作業を行うことが可能となる。そして、監視手段により作業工程の遅れの発生が確認された工程エリアに対して、応援制御手段の制御によって、その工程エリアに隣り合う工程エリアのロボットによる応援作業が実行されるので、一部の工程エリアにおける作業工程の遅れに伴う不具合を防止し、全体としての作業効率の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を具体化した一実施例について、図1ないし図5を参照しながら説明する。まず、図1は、工場設備に設けられる本実施例に係る生産システム11(本実施例に係るロボット12を用いた例えば自動車用部品の生産システム)の全体構成を概略的に示している。ここで、この生産システム11は、前部(図で手前側)を左右方向に延びるワーク搬送路13を備えると共に、そのワーク搬送路13の片側である図で後部側に位置して、複数例えば4個の工程エリアたる第1〜第4の作業ステーション14〜17を備えて構成される。
【0015】
そのうちワーク搬送路13は、周知のように、コンベア機構13a(図4にのみ図示)を備えており、ワークW(ワークWを載置したパレット)を、図で左から右方向(矢印A方向)に搬送するようになっている。このとき、ワークW(パレット)は、ワーク搬送路13上の各作業ステーション14〜17の前の搬入位置で停止され、当該作業ステーション14〜17における作業終了後に、次の作業ステーション15〜17の搬入位置に順次送られるように構成されている。
【0016】
本実施例では、ワーク搬送路13の奥側に位置して、ワークWの搬送方向(左右方向)に沿って作業工程の順に並んで、4つの工程エリア、即ち図で左から順に、第1の作業ステーション14、第2の作業ステーション15、第3の作業ステーション16、第4のステーション17が設けられている。各作業ステーション14〜17は、前後方向にやや長く構成され、図で右寄り部位に位置して後述するロボット12が設けられると共に、図で左側に位置して、そのロボット12が作業を行う作業領域や、例えばワークWに対して組付けられる部品Pが供給される部品配置場所としての部品供給部14a〜17aが夫々設けられている。
【0017】
このとき、各作業ステーション14〜17は、相互間に狭い間隔をおいて並んで設けられており、後述するように、ロボット12のアームの先端が隣の作業ステーション14〜17に届く程度の距離に配置されている。また、詳しく図示はしないが、各作業ステーション14〜17には、前記部品供給部14a〜17a以外にも、ワークWに対する各種の加工を行う加工装置、ワークWに対する部品Pの組付けが正しく行われているか等の検査を行う検査装置、ワークWを所定の姿勢に保持するための治具などを必要に応じて設けることができる。
【0018】
これにて、通常の作業時においては、ワーク搬送路13の第1の作業ステーション14の前の搬入位置にワークWが搬入されると、第1の作業ステーション14において、該第1の作業ステーション14に設けられたロボット12によりワークWに対する部品Pの組付け等の1番目の作業工程が実行される。作業後のワークWは、ワーク搬送路13の搬出位置に置かれ、次の第2の作業ステーション15の搬入位置に送られる。そして、第2の作業ステーション15に設けられたロボット12によって、そのワークWに対する2番目の作業工程が実行され、作業後のワークWが、ワーク搬送路13を搬出位置から次の第3の作業ステーション16の搬入位置に送られる。
【0019】
さらに、第3の作業ステーション16に設けられたロボット12によって、そのワークWに対する3番目の作業工程が実行され、作業後のワークWが、ワーク搬送路13を搬出位置から次の第4の作業ステーション17の搬入位置に送られ、第4の作業ステーション17に設けられたロボット12によって、そのワークWに対する4番目の作業工程が実行される。このようにして、第1〜第4の作業ステーション14〜17において、各ロボット12によりワークWに対する各作業工程が順に実行され、全ての作業を終了したワークWがワーク搬送路13上を送られ排出位置に排出される。上記のような作業が、多数個のワークWに対し順に(並行して)繰返されるのである。
【0020】
さて、前記ロボット12について述べる。図2及び図3は、前記ロボット12の全体構成を概略的に(ケーブルベア等を省略して)示している。ここで、直動軸たる直線移動レール18には、その下面側に移動体18aが直線移動可能に支持されていると共に、その移動体18aを自在に移動させるための駆動機構が設けられている。詳しく図示はしないが、前記駆動機構は、直線移動レール18の一端部に配設されたモータ19や図示しないボールねじ機構などから構成されている。
【0021】
そして、図3に示すように、前記移動体18aの下面部にはベース20が連結され、前記ベース20の下面に水平方向に延びる水平旋回アーム21が、その一端部である基端側が垂直軸J1を中心に旋回可能に取付けられている。この水平旋回アーム21の前記垂直軸J1とは反対側の端部である先端部(先端面)に昇降体22が上下動可能に取付けられ、この昇降体22の下面側に手首部23が垂直軸J2を中心に同軸回転可能に取付けられている。また、手首部23には、ワークWを把持するためのチャック(ハンド)等の作業用ツール24(図5にのみ模式的に図示)が着脱可能に取付けられるようになっている。
【0022】
この場合、図示はしないが、前記水平旋回アーム21は、ベース20内に設けられたモータ及び回転伝達機構により水平方向に回転(旋回)され、前記昇降体22は、水平旋回アーム21に内蔵されたモータ及びラック−ピニオン機構によって水平旋回アーム21の先端にて上下移動され、前記手首部23は、昇降体22に内蔵されたモータによって同軸回転される。上記各ロボット12の動作(モータ19を含む各軸のモータ)、並びに作業用ツール24の動作は、夫々、ロボットコントローラ25(図4にのみ図示)により作業工程プログラム等に基づいて制御されるようになっている。
【0023】
このように構成された各ロボット12は、図1に示すように、各作業ステーション14〜17の右寄り部位に位置して、直動軸としての直線移動レール18が前記ワーク搬送路13と交差(この場合直交)する方向である前後方向を向いて設置される。本実施例では、前記直線移動レール18は、各作業ステーション14〜17の所定の高さ位置に、図示しない支柱などを介して下向きに架設され、もって、各ロボット12は直線移動レール18の下面側に吊下げられた状態のいわゆる吊り型ロボットとして構成されている。
【0024】
これにて、各作業ステーション14〜17においては、ロボット12(水平旋回アーム21)を直線移動レール18に沿って前後方向に移動させながら、ワーク搬送路13上の搬入位置に供給されたワークWを取得し、自らの作業領域においてそのワークWに対する部品Pの組付けなどの作業を行い、作業終了後のワークWをワーク搬送路13の搬出位置に戻す作業を繰返し実行する。このとき、本実施例では、上記のように、各作業ステーション14〜17相互間の配置間隔が狭く構成されていることにより、各作業ステーション14〜17のロボット12は、水平旋回アーム21を図で右隣の作業ステーション14〜17まで侵入させて作業(応援作業)を行うことができるようになっている。
【0025】
図4は、上記生産システム11における、制御関連部分の電気的構成を概略的に示している。前記各作業ステーション14〜17に設けられるロボット12は、夫々、ロボットコントローラ25により制御されるのであるが、本実施例では、それら4個のロボットコントローラ25並びに前記ワーク搬送路13のコンベア機構13aの動作を統括制御するための統括コントローラ26が設けられている。この統括コントローラ26は、コンピュータを主体として構成されている。
【0026】
さらに、前記ワーク搬送路13には、各作業ステーション14〜17の前の搬入位置に、ワークWがどの程度溜まっているかを夫々検出するための滞留検出センサ27が設けられている。この滞留検出センサ27の検出信号は、前記統括コントローラ26に入力されるようになっている。そして、統括コントローラ26は、他の作業ステーション14〜17と比較して著しく作業工程が遅れている(多数個のワークWが搬入位置に溜まっている)作業ステーション14〜17があった場合に、該当する作業ステーション14〜17の左隣のロボット12のロボットコントローラ25に対し、応援指令信号を出力するようになっている。
【0027】
これにて、いずれかの作業ステーション14〜17における作業の遅れが発生したときに、統括コントローラ26からの応援指令信号に基づいて、隣り合う作業ステーション14〜17のロボット12が、遅れが発生した作業ステーション14〜17に対する応援作業を実行するようになっている。従って、統括コントローラ26が応援制御手段として機能し、統括コントローラ26が前記滞留検出センサ27と共に監視手段として機能するのである。
【0028】
次に、上記構成の作用について述べる。上記した生産システム11にあって、通常の動作時においては、上記したように、ワーク搬送路13に沿ってワークWを搬送しながら、第1〜第4の作業ステーション14〜17において、各ロボット12によってワークWに対する部品Pの組付け等の作業工程が順に実行され、その作業工程が、多数個のワークWに対し順に繰返し実行される。
【0029】
このとき、本実施例では、4つの作業ステーション14〜17の配置間隔を、従来(図6)に比べて十分に小さいものとしている。ところが、従来の水平多関節型のロボット4等と異なり、ロボット12(水平旋回アーム21)同士が干渉することはないので、このように作業ステーション14〜17の配置間隔を狭くしても、安全性を確保することができる。その理由は、以下の通りである。
【0030】
即ち、図8に示すように、従来例で述べた水平多関節型のロボット4では、アーム(第2アーム7)の先端を、搬送コンベア2に平行な方向であるY軸に沿って直線移動させる動作を行う際に、ベース5からの距離に応じて、第1アーム6及び第2アーム7の位置が、図8に(a),(b),(c)で示すような状態に変化する。このとき、アーム先端をY軸方向に移動させてフランジ部9をベース5に近い位置に移動させるような場合に、図8(c)に示すように、第1アーム6との第2アーム7との関節部分(いわばひじの部分)が、作業している領域とは反対側(図6でベース5よりも右側)に突き出ることがある。このため、作業ステーション3同士間には、作業中のロボット4同士が当たらないような比較的大きな間隔を設ける必要が生ずるのである。
【0031】
尚、水平多関節型ロボット4に代えて、垂直多関節型ロボットを用いた場合でも、2本のアームが回動(旋回)軸を介して連結されている同様の構造を備えることから、ロボットの関節部分(ひじの部分)が作業領域とは反対側に突き出す事情は、同じである。
【0032】
これに対し、本実施例のロボット12では、水平旋回アーム21の先端(手首部23ひいては作業用ツール24)の先端を、直線移動レール18の延びる方向(X軸)に直交するY軸に沿って(ワーク搬送路13に平行な)左右方向に直線移動させる動作を行う際には、図5に模式的に示すように、直線移動レール18からの距離に応じて、水平旋回アーム21の位置が、図5(a),(b),(c)で示すような状態に変化する。つまり、水平旋回アーム21の基端側(軸J1)の位置を直線移動レール18に沿って(X軸方向に)変化させながら、水平旋回アーム21を旋回させることによって、アーム先端のY軸に沿うような直線移動が行われる。
【0033】
図8と比較すれば明らかなように、従来例で述べた水平多関節型ロボット4を用いた場合では、2本のアーム6,7を連結した関節部分(ひじの部分)が、作業ステーション3とは反対側に突き出る虞があった。ところが、本実施例のロボット12では、水平旋回アーム21の一端側に垂直軸J1が位置されそれとは反対の端部側に昇降体22ひいては手首部23が位置されているので、ベース20と昇降体22ひいては手首部23との間に1本の水平旋回アーム21が設けられているだけで、アームの関節部分(ひじの部分)が、直線移動レール18を挟んだ作業ステーション14〜17の反対側に突き出すといったことはないのである。
【0034】
従って、本実施例では、隣り合う作業ステーション14〜17間に、ロボット4同士の干渉防止のための空間を確保する必要がなく、作業ステーション14〜17を配置する間隔を狭くすることができるので、生産システム11全体の小型化(コンパクト化)を図ることができるものである。尚、本実施例では、ロボット12をいわゆる吊下げ型としたことにより、直線移動レール18の真下の領域も作業可能な領域として有効に利用することができる。
【0035】
ところで、本実施例の生産システム11においては、作業ステーション14〜17同士間の配置間隔を狭くすることができたことに伴い、各ロボット12の水平旋回アーム21が隣り合う作業ステーション14〜17に届くように構成され、ひいては応援作業が可能となった。
【0036】
具体的には、ワーク搬送路13の各作業ステーション14〜17前の搬入位置には、作業を行うべきワークWが前の工程(作業ステーション14〜17)側から順次供給されてくる。この場合、当該作業ステーション14〜17において作業遅れが発生すると、ワークWがその搬入位置に溜まるようになるので、ワークWの滞留を監視する滞留検出センサ27の検出に基づき、統括コントローラ26にて、作業工程の遅れ(他の作業ステーション14〜17とのアンバランス)を判断することができるのである。
【0037】
統括コントローラ26は、滞留検出センサ27の検出に基づき、ある作業ステーション14〜17に作業の遅れが発生したと判断すると、当該作業ステーション14〜17に隣り合う(この場合図1で左隣に位置する)作業ステーション14〜17のロボット12のロボットコントローラ25に対し、遅れの発生した作業ステーション14〜17に対する応援作業を行う指令を出力する。
【0038】
これにより、隣の作業ステーション14〜17のロボット12による応援が可能となり、遅れが発生した作業ステーション14〜17の作業の遅れを取戻す(全体のバランスをとる)ようにして、全体としての作業効率の向上を図ることができる。尚、この応援作業が実行される際には、1つの作業領域(作業ステーション14〜17)で2台のロボット12による作業が行われるケースが考えられるが、その場合には、ロボット12同士の干渉防止が図られることは勿論である。
【0039】
このように本実施例のロボット12及び生産システム11によれば、ワーク搬送路13に沿って並ぶ複数の作業ステーション14〜17に夫々設けられたロボット12により、ワークWに対して複数の作業工程を順に実行するものにあって、生産システム11全体の小型化を図ることができるという優れた効果を得ることができる。また、特に本実施例によれば、作業遅れの発生した作業ステーション14〜17に対する、隣の作業ステーション14〜17のロボット12による応援が可能となり、遅れに伴う不具合を防止し、全体としての作業効率の向上を図ることができるものである。
【0040】
尚、上記実施例では、ロボット12を、直線移動レール18の下面側を移動するいわゆる吊り下げ型として構成したが、直線移動レール(直動軸)を床上に設け、その上面部をベース(ひいては水平旋回アーム)が移動するロボットとして構成しても良く、この構成でも、上記一実施例と同様の作用・効果を得ることができる。また、上記実施例では説明しなかったが、ワーク搬送路13の手前側や、作業ステーション14〜17を囲む位置等に、必要に応じて安全柵を設けても良く、安全性を高めることができる。
【0041】
その他、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、例えば作業ステーション(工程エリア)の配置(個数)や作業工程の内容、各作業ステーションにおける作業遅れの検出方法、ロボットの機械的構成等の具体的な構成についても、様々な変形が可能であるなど、本発明は要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施例を示すもので、生産システムの全体構成を概略的に示す平面図
【図2】ロボットの斜視図
【図3】ロボットの側面図
【図4】生産システムの制御関連部分の電気的構成を概略的に示すブロック図
【図5】ロボットのアームの動作の様子を示す平面図
【図6】従来例を示すもので、図1相当図
【図7】水平多関節型ロボットの側面図
【図8】水平多関節型ロボットにおける図5相当図
【符号の説明】
【0043】
図面中、11は生産システム、12はロボット、13はワーク搬送路、14,15,16,17は作業ステーション(工程エリア)、14a,15a、16a,17aは部品供給部(部品配置場所)、18は直線移動レール(直動軸)、20はベース、21は水平旋回アーム、22は昇降体、23は手首部、24は作業用ツール、25はロボットコントローラ、26は統括コンピュータ(監視手段、応援手段)、27は滞留検出センサ(監視手段)、Wはワークを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワーク搬送路の片側に、ワークの搬送方向に沿って作業工程の順に並ぶと共に前記ワーク搬送路と交差する方向に延び作業領域や部品配置場所を有する複数の工程エリアを備え、前記ワークに対する複数の作業工程をそれら各工程エリアで順に実行する生産システムにおける、前記各工程エリアに設置され前記ワークに対する作業工程を実行するロボットであって、
自らの設置される工程エリアに沿って前記ワーク搬送路と交差する方向に延びる直動軸と、この直動軸に沿って水平方向に直線移動されるベースと、基端部が前記ベースに垂直軸を中心に回動可能に連結され該ベースに対して水平方向に旋回される水平旋回アームと、この水平旋回アームの前記垂直軸とは反対側の端部である先端部に上下動可能に連結され該水平旋回アームに対して上下動される昇降体と、この昇降体に垂直軸を中心に同軸回転可能に設けられ作業用ツールが装着可能な手首部とを備えることを特徴とするロボット。
【請求項2】
ワーク搬送路の片側に、ワークの搬送方向に沿って作業工程の順に並ぶと共に前記ワーク搬送路と交差する方向に延び作業領域や部品配置場所を有する複数の工程エリアを備え、前記各工程エリアには請求項1記載のロボットが設けられており、それらロボットにより、前記ワーク搬送路を搬送されるワークに対して複数の作業工程を順に実行する生産システムであって、
前記ロボットは、前記直動軸に沿って移動しながら、前記ワーク搬送路からワークを取得し、自らの工程エリアの作業領域において当該ワークに対する作業を行い、作業終了後のワークを前記ワーク搬送路に戻すことを繰返すように構成され、
前記ワーク搬送路は、前記作業終了後のワークを次の工程エリアに向けて搬送するように構成されていることを特徴とする生産システム。
【請求項3】
前記各ロボットは、前記水平旋回アームの先端部を隣り合う工程エリア内まで侵入させて作業することが可能に構成されると共に、
前記各工程エリアにおける作業工程の遅れの有無を監視する監視手段と、
この監視手段により作業工程の遅れの発生が確認されたときに、その工程エリアに隣り合う工程エリアのロボットに、当該作業工程の遅れが発生した工程エリアに対する応援作業を実行させる応援制御手段とを備えることを特徴とする請求項2記載の生産システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−248198(P2009−248198A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−94896(P2008−94896)
【出願日】平成20年4月1日(2008.4.1)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ケーブルベア
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】