説明

ロータリーキルン炉

【課題】 傾斜角が変更可能な回転キルンと二次燃焼炉との連結部において、回転キルンの傾動を許容しながら密封状態を維持することができるロータリーキルン炉を提供する。
【解決手段】 ロータリーキルン炉は、傾斜角が変更可能な円筒状の回転キルン3と、その後段の二次燃焼炉17と、を備えている。二次燃焼炉17は、円形の開口17aと、この開口17aの周縁部に設けられ、開口17aと回転キルン3の外周面3dとの間隙を塞ぐように全周に亘って配列された複数のスプリングプレート33を有している。このスプリングプレート33の一端は、開口17aの周縁部に固定され、他端33cはスプリングプレート33自身の弾性力によって回転キルン3の外周面3dに押し当てられ摺動接触している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業廃棄物等を焼却するロータリーキルン炉に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、下記特許文献1に記載のロータリーキルン炉が知られている。このロータリーキルン炉は、回転キルン内における被処理物の滞留時間を調整するために、回転キルンの傾斜角が調整可能であるように構成されている。そして、回転キルンの下流側には排ガスダクトが連結されている。このようなロータリーキルン炉において、回転キルンの傾斜角を変更した場合には、回転キルンと排気ガスダクトとの連結部に間隙が生じることになり、この間隙から排気ガス漏れが起こる虞がある。この問題の対策として、特許文献1には、回転キルンと排気ガスダクトとの連結部に、回転キルンの傾動を許容しながら排気ガス漏れを生じさせないようなシール手段を設ける旨が記載されている。
【特許文献1】特開平11−141837号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1においては、上記シール手段についての具体的な内容について何ら示されていない。このため、このような回転キルンと下流側の装置との連結部において、回転キルンの傾動を許容しながら排ガス漏れを生じさせないようなシール手段が、いかなる構成によって達成されるかという課題は未解決である。
【0004】
そこで、本発明は、傾斜角が変更可能な回転キルンと二次燃焼炉との連結部において、回転キルンの傾動を許容しながら密封状態を維持することができるロータリーキルン炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るロータリーキルン炉は、回転軸線の傾斜角が変更可能に設けられ、上流側から導入された被処理物を回転しながら搬送し燃焼させる円筒状の回転キルンと、回転キルンの下流側に連結され、回転キルン内で発生する未燃焼ガスを燃焼させる二次燃焼炉と、を備えたロータリーキルン炉において、二次燃焼炉は、回転キルン内に内部を連通させる円形の開口と、開口の周縁部に一端が固定され、開口と回転キルンの外周面との間隙を塞ぐように周縁部の全周に亘って円周方向に配列された複数の板状部材を有し、板状部材の他端は、板状部材自身の弾性力によって回転キルンの外周面に押し当てられて摺動接触していることを特徴とする。
【0006】
このロータリーキルン炉は、回転軸線の傾斜角が変更可能な回転キルンを備えており、この回転キルンの下流側は二次燃焼炉に連結されている。二次燃焼炉の円形の開口の周縁部と回転キルンの外周面との間隙は、一端が開口の周縁部に固定されて周縁部の全周に亘って配列された複数の板状部材によって塞がれているので、回転キルン及び二次燃焼炉の炉内を密封状態とすることができる。そして、回転キルンの傾斜角が変更された場合にも、回転キルンの外周面に押し当てられた板状部材の他端が、回転キルンの外周面に摺動接触しながら弾性変形によって追従するので、回転キルン及び二次燃焼炉の炉内の密封状態を維持することができる。従って、回転キルンと二次燃焼炉との連結部において、回転キルンの傾動を許容しながら密封状態を維持することが可能となる。
【0007】
また、本発明のロータリーキルン炉は、回転キルンと、回転キルンの上流側に連結され被処理物を回転キルン内に投入する投入部と、回転キルンを回転可能に支持するキルン支持部と、回転キルンを回転させる駆動装置と、を支持すると共に、傾斜角が変更可能である土台を更に備えてもよい。この場合、土台の傾斜を変更することによって、投入部、キルン支持部、及び駆動装置との連結を維持したまま回転キルンの傾斜角を変更することができる。
【0008】
また、この場合、ロータリーキルン炉は、土台を、鉛直面内で回動可能にするように支持する回動支持部と、回動支持部よりも、回転キルンと二次燃焼炉との連結部から離れた位置において、土台を上下させる昇降手段を更に備えてもよい。このような構成によれば、昇降手段によって土台を上下させることにより、土台が鉛直面内で回動するので、その結果回転キルンの傾斜角を変更することができる。このとき、回転キルンの傾斜角を変更する場合の回転キルンの移動中心が、回転キルンと二次燃焼炉との連結部に近い位置となる。従って、回転キルンと二次燃焼炉との間の板状部材の変形を小さくすることができ、連結部の密封状態を良好に維持することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のロータリーキルン炉によれば、傾斜角が変更可能な回転キルンと二次燃焼炉との連結部において、回転キルンの傾動を許容しながら密封状態を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ本発明に係るロータリーキルン炉の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0011】
図1に示すように、ロータリーキルン炉1は、水平設置面Zに設置された横型回転式のロータリーキルン炉であって、回転軸線Aを傾斜させて設置された直径約5mの円筒状の回転キルン3を備えている。この回転キルン3は、ベース5上に固定された2つのキルン支持部7に回転可能に支持されると共に、ベース5上の駆動装置9を駆動源として回転する。この回転キルン3の内壁は、耐火材で内張りされており、回転キルン3の上流側端部3aは、ベース5上に固定されたフロントウォール11で塞がれている。このフロントウォール11には、回転キルン3の上流側端部3aに連結されて産業廃棄物等の被処理物を回転キルン3内に投入する投入部15が設けられている。
【0012】
この回転キルン3の下流側端部3bには、上下方向に延び、内壁が耐火材で内張された筒状の二次燃焼炉17が連結されている。二次燃焼炉17の側壁には円形の開口17aが形成されており、この円形開口17aを通じて二次燃焼炉17の炉内が回転キルン3の炉内に連通されている。この二次燃焼炉9は、水平設置面Zに固定されており、回転キルン3内で発生した一酸化炭素等の未燃焼ガスを燃焼させる機能を有している。
【0013】
このような構成に基づき、被処理物が投入部15を通じて、回転軸線Aを中心に回転する回転キルン3に導入されると、被処理物は、回転キルン3の下り勾配と回転とによって、矢印Y方向に搬送される。そして、この被処理物は、搬送されながら、二次燃焼炉17内及びフロントウォール11に設けられたバーナー(図示しない)によって燃焼する。そして、回転キルン3の下流側端部3bに達した被処理物は、下流側端部3bから二次燃焼炉17の下方に落下して、後段の処理へ送られる。また、この被処理物の燃焼の際に回転キルン3内で発生した未燃焼ガスは、二次燃焼室17内を上昇しながらバーナー(図示しない)によって燃焼し、後段の処理へ送られる。このように未燃焼ガスを完全燃焼させることで、未燃焼ガスに由来する有害ガスの外部への排出が抑制される。
【0014】
このようなロータリーキルン炉1において良好な焼却処理を行うためには、回転キルン3内での被処理物の滞留時間、層厚、及び回転キルン3の回転数といった要素を、被処理物の性状に応じて最適に調整する必要がある。特に、被処理物の滞留時間を調整するために、ロータリーキルン炉1では、回転キルン3の回転軸線Aの傾斜角度を変更可能になるように構成されている。
【0015】
具体的には、ベース5は、二次燃焼炉17に近い位置に設けられたヒンジ部21で回動可能に支持されると共に、ヒンジ部21よりも二次燃焼炉17から離れた4箇所の位置に設けられた支持部23a,23b,23c,23dによって上下動可能に支持されている。そして、支持部23cの近傍には、油圧ジャッキ(昇降手段)25が設けられ、この位置においてベース5を上下させる駆動源となっている。このような構成に基づき、油圧ジャッキ25を伸縮させると、油圧ジャッキ25に対応するベース5の位置が水平設置面Zに対して上下する。この上下動によって、ベース5は全体として、ヒンジ部21を中心とし鉛直面内において矢印B方向に回動する。そして、このベース5に支持されている回転キルン3の傾斜角度も、ベース5の回動に追従して変化する。このようにして、回転キルン3の回転軸線Aの傾斜角度を変更することができるので、被処理物の回転キルン3内での滞留時間を調整することができる。
【0016】
また、回転キルン3と一緒に、投入部15、キルン支持部7、及び駆動装置9、及びフロントウォール11も、ベース5に支持されているので、これらの各要素は、ベース5が回動しても互いの位置関係を変えない。従って、ベース5を回動させることによって、これらの各要素の互いの連結を維持させたまま回転キルン3の傾斜角を変更することができる。
【0017】
これに対し、二次焼却炉17は、ベース5に支持されておらず、水平設置面Zに固定されているので、回転キルン3の傾斜角を変更した場合には、回転キルン3と二次焼却炉17と間の位置関係が変化する。従って、回転キルン3と二次焼却炉17との間に間隙が生じることで内部から排ガスが漏れたり、逆に外部からの不要な空気が流入したりすることを適切に抑制する必要がある。そこで、このロータリーキルン炉1においては、次に説明するような連結部29の構造によって、回転キルン3と二次焼却炉17とが連結されている。
【0018】
図1〜図3に示すように、連結部29において、回転キルン3の下流側端部3bは、この二次燃焼炉17の円形開口17aに挿通されて、二次燃焼炉17の内部にわずかに突出している。円形開口17aは、回転キルン3の外径よりもやや大径に設けられており、回転キルン3の外周面3dと、二次燃焼炉17の円形開口17aとの間には、回転キルン3の傾斜角の変更を許容するための間隙sが形成される。
【0019】
この間隙sを塞いで回転キルン3及び二次燃焼炉17の炉内の密封状態を維持するため、円形開口17aの周縁部には、取付部31を介して複数のスプリングプレート(板状部材)33が取り付けられている。図3及び図4に示すように、スプリングプレート33は、長さ約50cm、幅約20cm、厚さ約0.8mm程度のサイズを有すると共に、弾性変形可能な矩形の板状部材であり、SS400等の圧延鋼材からなる。
【0020】
このようなスプリングプレート33が、隣接するスプリングプレート33に重なりながら円形開口17aの全周に亘って配列されている。この各スプリングプレート33は、ボルト穴33aが形成された基端33b側において取付部31にボルト止めされ、各スプリングプレート33の遊端33cは、スプリングプレート33自身の曲げ方向の弾性力により、回転キルン3の外周面3dに摺動接触するように押し当てられている。そして、各スプリングプレート33は、それぞれの回転キルン3の外周面3dとの位置関係に応じて、回転キルン3の外周面3dに対向する側を凸にして反るように弾性変形している。このような構成により、回転キルン3aと円形開口17との間の間隙sがスプリングプレート33によって塞がれることになり、連結部29における密封状態が達成される。従って、連結部29における炉内の排ガスの漏れや、外部から炉内への空気の流入が抑えられる。
【0021】
また、このような連結部29において、回転キルン3の傾斜角度が変更された場合には、回転キルン3と円形開口17aとの位置関係も変化することになる。この場合、図5の二点鎖線で示すように、各スプリングプレート33は、回転キルン3の動きに追従するように、回転キルン3の外周面3dに遊端33bを摺動接触させながら弾性変形する。従って、回転キルン3の傾斜角度変更後も、その変更に追従して各スプリングプレート33で回転キルン3と二次燃焼炉17との間隙sが塞がれた密封状態が維持される。
【0022】
以上のように、このような連結部29の構造によれば、傾斜角度を変更することができる回転キルン3を備えたロータリーキルン炉1において、回転キルン3の傾動を許容しながら、回転キルン3と二次燃焼炉17との連結部29の密封状態を維持することができる。
【0023】
また、ベース5の回動中心となるヒンジ部21が、油圧ジャッキ25よりも連結部29に近い位置に設けられているので、回転キルン3の傾動の際、連結部29での回転キルン3の移動を小さくすることができる。従って、回転キルン3の傾斜角変更の際のスプリングプレート33の変形を小さくすることができ、連結部29における密封状態が良好に維持される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係るロータリーキルン炉の一実施形態を示す断面図である。
【図2】連結部を示す斜視図である。
【図3】連結部を拡大して示す斜視図である。
【図4】スプリングプレートを示す斜視図である。
【図5】連結部を示す断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1…ロータリーキルン炉、3…回転キルン、3d…外周面、5…ベース(土台)、7…キルン支持部、9…駆動装置、15…投入部、17…二次燃焼炉、17a…円形開口、21…ヒンジ部(回動支持部)、25…油圧ジャッキ(昇降手段)、33…スプリングプレート(板状部材)、33b…基端(一端)、33c…遊端(他端)、A…回転軸線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸線の傾斜角が変更可能に設けられ、上流側から導入された被処理物を回転しながら搬送し燃焼させる円筒状の回転キルンと、
前記回転キルンの下流側に連結され、前記回転キルン内で発生する未燃焼ガスを燃焼させる二次燃焼炉と、を備えたロータリーキルン炉において、
前記二次燃焼炉は、
前記回転キルン内に内部を連通させる円形の開口と、
前記開口の周縁部に一端が固定され、前記開口と前記回転キルンの外周面との間隙を塞ぐように前記周縁部の全周に亘って円周方向に配列された複数の板状部材を有し、
前記板状部材の他端は、前記板状部材自身の弾性力によって前記回転キルンの前記外周面に押し当てられて摺動接触していることを特徴とするロータリーキルン炉。
【請求項2】
前記回転キルンと、前記回転キルンの前記上流側に連結され前記被処理物を前記回転キルン内に投入する投入部と、前記回転キルンを回転可能に支持するキルン支持部と、前記回転キルンを回転させる駆動装置と、を支持すると共に、傾斜角が変更可能である土台を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載のロータリーキルン炉。
【請求項3】
前記土台を、鉛直面内で回動可能にするように支持する回動支持部と、
前記回動支持部よりも、前記回転キルンと前記二次燃焼炉との連結部から離れた位置において、前記土台を上下させる昇降手段を更に備えたことを特徴とする請求項2に記載のロータリーキルン炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−71518(P2007−71518A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−262463(P2005−262463)
【出願日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】