説明

ローラの製造方法、成形材料の選別方法及び成形材料

【課題】平滑な弾性層を備えたローラを高い生産性で再現性及び歩留まりよく製造することのできるローラの製造方法、平滑な弾性層を形成することのできる成形材料、及び、このような成形材料を高い信頼性で選別する選別方法の提供。
【解決手段】0.01〜100sec−1の範囲から選択される複数の剪断速度(X)で前記成形材料のノーマルフォースを測定して得られる複数の第一種法線応力差(Y)の、剪断速度に対する一次近似式Y=aX+b(4.5<a<6.5、−120<b<200)を満足する成形材料を軸体の外周面で硬化するローラの製造方法、前記第一種法線応力差を求めて、一次近似式Y=aX+bを算出し、この一次近似式の変数aが4.5<a<6.5の範囲にあり、かつ、変数bが−120<b<200の範囲にある成形材料を選別する成形材料の選別方法、及び、前記一次近似式を満足する液状シリコーンゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ローラの製造方法、成形材料の選別方法及び成形材料に関し、さらに詳しくは、平坦な弾性層を備えたローラを高い生産性で再現性及び歩留まりよく製造することのできるローラの製造方法、平坦な弾性層を形成することのできる成形材料を高い信頼性で選別することのできる成形材料の選別方法、並びに、軸体の外周面に平坦な弾性層を形成することのできる成形材料に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザープリンタ、複写機、ビデオプリンタ、ファクシミリ、これらの複合機等には、電子写真方一次近似式を利用した各種の画像形成装置が採用されている。電子写真方一次近似式を利用した画像形成装置は、軸体とその外周面に形成された弾性層とを有する、例えば、クリーニングローラ、帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラ、加圧ローラ、紙送り搬送ローラ、定着ローラ等の各種ローラを備えている。
【0003】
これらの各種ローラの一例を挙げると、軸体を作製し、この軸体が装着された金型内に液状ゴム組成物を注入し、この液状ゴム組成物を加熱成形して、軸体の外周面に弾性層を形成することによって、製造される。特許文献1には、「導電性ローラの導電性弾性層の形成方法は,・・・例えば、中心にSUS製などの金属支持部材を設置した金型に、組成物を押出成形、プレス成形、射出成形、反応射出成形(RIM)、液状射出成形(LIM)、注型成形などの各種成形法により成形し、適切な温度および時間で加熱硬化させてシャフトのまわりに導電性弾性層を成形する。ここで、本発明における導電性ローラの製造方法としては、弾性層を形成するための導電性組成物が液状である場合、生産性、加工性の点で液状射出成形が好ましい」と記載されている。
【0004】
そして、ローラの弾性層を形成する成形材料は、ローラ及び弾性層等の要求特性等に応じて、液状ゴムの他に種々の添加剤が含有されている。このような添加剤として、例えば、分散剤、老化防止剤、酸化防止剤、充填材、顔料、着色剤、可塑剤等が挙げられる。成形材料の液状ゴムがシリコーンゴムである場合には、例えば、珪藻土、パーライト、マイカ、炭酸カルシウム、ガラスフレーク等の無機充填材が含有されることが多い。このような無機充填材は、合成して得られる合成品、天然物、他の物質の製造過程で副生する副生品、各種製品からの回収品等が用いられる。
【0005】
これらの添加剤を含有する成形材料を、前記のようにして、軸体の外周面で硬化すると、形成される弾性層の表面及び内部に粗大な凸部が形成されることがある。このような弾性層の表面に粗大な凸部が存在するローラを画像形成装置に装着すると、画像形成装置で形成される画像の品質を低下させる大きな原因となる。
【0006】
したがって、ローラの製造方法においては、通常、成形材料の各種物性測定による試験、ローラにおける弾性層の成形条件と同じ条件又は異なる条件で成形材料を薄層シート化し、得られた薄層シートに凸部が形成されるか否かを評価するテーブル試験、及び/又は、実際に数本のローラを試作して、弾性層に凸部が形成されるか否かを評価する予備試験等が、ローラの実製造に先立って行われる。弾性層に関するテーブル試験ではないが、樹脂成形材料に関して特定の条件で成形した試験片を試験する方法が例えば特許文献2等に記載されている。また、製造されたローラの表面層欠陥を検出する方法として、例えば、光学手段を用いた検出方法が知られている(例えば、特許文献3等参照。)。
【0007】
ところが、成形材料の各種物性は粗大な凸部の形成にほとんど影響しないことがわかってきており、また、テーブル試験及び予備試験の結果と実製造の結果とは必ずしも一致せず、テーブル試験及び予備試験を行っても、実製造における粗大な凸部の形成を高い信頼性で予測することはできなかった。すなわち、これらの試験を予め行い、粗大な凸部が形成されないと推定される条件等に設定しても、平坦な弾性層を備えたローラを再現性及び歩留りよく製造することができなかった。加えて、これらの物性測定及び試験は、ローラの製造工程が増すだけでなく、その測定及び試験に多大な労力と時間を要していた。
【0008】
一方、画像形成装置に採用される各種ローラにおいても、製造コストの低減が求められている。無機充填材として、例えば、副生品、回収品等を利用することができれば、ローラの製造コスト低減に大きく貢献することができる。ところが、これらの副生品及び回収品等を含有する成形材料を用いた場合に、形成される弾性層に粗大な凸部が形成されるか否かを前記物性特性及び前記試験等で予測することは、合成品等を含有する成形材料以上に、困難であった。
【0009】
【特許文献1】特開2004−271888号公報
【特許文献2】特開2002−173605号公報
【特許文献3】特開平7−239304号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この発明は、平坦な弾性層を備えたローラを高い生産性で再現性及び歩留まりよく製造することのできるローラの製造方法を提供することを、目的とする。
【0011】
また、この発明は、平坦な弾性層を形成することのできる成形材料を高い信頼性で選別することのできる成形材料の選別方法を提供することを、目的とする。
【0012】
さらに、この発明は、軸体の外周面に平坦な弾性層を形成することのできる成形材料を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するための手段として、
請求項1は、軸体の外周面で成形材料を硬化するローラの製造方法であって、前記成形材料は、0.01〜100sec−1の範囲から選択される複数の剪断速度(X)で前記成形材料のノーマルフォースを測定して得られる複数の第一種法線応力差(Y(Pa))の、前記剪断速度(X)に対する一次近似式Y=aX+bを満足することを特徴とするローラの製造方法であり、
ただし、前記一次近似式において、4.5<a<6.5及び−120<b<200
請求項2は、ローラの弾性層を形成する成形材料を選別する成形材料の選別方法であって、剪断速度0.01〜100sec−1の範囲から選択される複数の剪断速度(X)で、前記成形材料のノーマルフォースを測定し、前記剪断速度に対応する複数の第一種法線応力差(Y(Pa))を求め、得られた前記第一種法線応力差(Y(Pa))の、前記剪断速度(X)に対する一次近似式Y=aX+bを算出し、前記一次近似式における変数aが4.5<a<6.5の範囲にあり、かつ、変数bが−120<b<200の範囲にある成形材料を選別することを特徴とする成形材料の選別方法であり、
請求項3は、請求項1に記載の一次近似式を満足することを特徴とする液状シリコーンゴム組成物である。
【発明の効果】
【0014】
この発明に係るローラの製造方法は、第一種法線応力差の、前記剪断速度に対する前記一次近似式を満足する成形材料を軸体の外周面で硬化して弾性層を形成するから、表面に凸形状が形成されてしまうような粗粒を多く含む成形材料を使用することを事前に回避することができ、粗大な凸部の形成が大幅に抑制されて平坦な弾性層が形成される。特に、このような成形材料を用いて複数のローラを製造すると、平坦な弾性層が軸体の外周面に形成されたローラを、高い再現性で、かつ、歩留まりよく、製造することができる。また、第一種法線応力差は、十分な能力を有する測定装置を使用すれば、測定者の特殊な技能も熟練も必要ともせず、少量のサンプルで測定することができるから、その一次近似式による判断は、従来行われていた前記物性測定、前記予備試験及び前記テーブル試験等に比して、簡単かつ短時間で、行うことができる。したがって、この発明によれば、平坦な弾性層を備えたローラを高い生産性で再現性及び歩留まりよく製造することのできるローラの製造方法を提供することができる。
【0015】
また、この発明に係る成形材料の選別方法は、成形材料のノーマルフォースを測定することによって得られる第一種法線応力差の、剪断速度に対する一次近似式における変数a及びbが前記範囲内にあるか否かによって、平坦な弾性層が形成されるか粗大な凸部を有する弾性層が形成されるかを判別することができるから、第一種法線応力差の前記一次近似式における変数a及びbが前記範囲内にある成形材料を選択すれば、平坦な弾性層を備えたローラを高い生産性で再現性及び歩留まりよく製造することができる。したがって、この発明によれば、平坦な弾性層を形成することのできる成形材料を高い信頼性で選別することのできる成形材料の選別方法を提供することができる。
【0016】
さらに、この発明に係る成形材料は、第一種法線応力差の、前記剪断速度に対する前記一次近似式を満足するから、前記したように、平坦な弾性層を備えたローラを高い生産性で再現性及び歩留まりよく製造することができる。したがって、この発明によれば、軸体の外周面に平坦な弾性層を形成することのできる成形材料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
この発明に係るローラの製造方法により製造されるローラは、図1に示されるように、軸体2と、軸体2の外周面に形成された表面が平坦な弾性層3とを備え、所望により、図2に示されるように、弾性層3の外周面に形成されたコート層4とを備え、例えば、図6に示される画像形成装置等に配設される。
【0018】
前記軸体2は、良好な導電特性を有していればよく、通常、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、真鍮等で構成された所謂「芯金」と称される軸体とされる。また、軸体2は、熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂等の絶縁性芯体にメッキを施して導電化した軸体であってもよく、さらには、熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂等に導電性付与剤としてカーボンブラック又は金属粉体等を配合した導電性樹脂で形成された軸体であってもよい。
【0019】
前記弾性層3は、前記軸体2の外周面に平坦に形成され、具体的には、その表面粗さRzが2〜15μmであるのが好ましい。弾性層3の表面粗さRzが2〜15μmであると、一般的に平均粉径(直径)が5〜6μmの現像剤を効率的に帯電搬送することができるという効果を奏する。弾性層3の表面粗さRzは、JIS B 0601―1984(十点平均粗さ)に準じ、先端半径2μmの測定プローブを備えた表面粗さ計(商品名:590A、株式会社東京精密製)に、弾性層3を備えたローラ1Aをセットし、測定長2.4mm、カットオフ波長0.8mm、カットオフ種別ガウシアンにより、少なくとも3点における表面粗さ測定し、これらの平均値を表面粗さRzとする。
【0020】
前記弾性層3は、前記表面粗さRzを満足するように、少なくともその外周面に粗大な凸部が形成されることが抑えられている。ここで、前記粗大な凸部は、例えば、弾性層の表面から突出した部分の高さが100μm以上、及び/又は、弾性層の表面から突出した部分の最大径が150μm以上の粒状隆起部であり、平坦な弾性層とは、少数例えば単位面積(1cm)当たり1個以下しか前記粗大な凸部が存在しない弾性層をいう。このような粗大な凸部が弾性層の外周面に少数しか存在しないと、画像形成装置に装着されても、画像形成装置で形成される画像の品質を低下させることなく、画像形成装置が有する本来の画像品質で画像を形成することができる。
【0021】
弾性層3は10〜90のJIS A硬度を有しているのが好ましい。弾性層3が10〜90のJIS A硬度を有していると、例えば、ローラ1Aを現像ローラとして使用したときに、現像剤規制部材のブレード及び像担持体間等の被当接体とのニップ幅を効率的に確保することができ、現像剤を効率的に帯電搬送して、現像効率を向上させることが容易になる。JIS A硬度は、JIS K6253に準拠して測定することができる。
【0022】
前記弾性層3は、図6に示される画像形成装置等の現像ローラ等として使用される場合には、10〜10Ωの電気抵抗値を有していることが好ましい。画像形成装置等のローラとして使用されるローラ1Aが10〜10Ωの電気抵抗値を有していると、被当接体に確実にかつ所望の電荷を帯電させることができる。例えば、現像ローラとして使用されるローラ1Aが10〜10Ωの電気抵抗値を有していると、現像剤を確実に担持することができ、さらに、担持した現像剤を像担持体に所望のように確実に付着させることができる。
【0023】
弾性層3の電気抵抗値は、弾性層3に含まれる導電性付与剤の含有量を調整することによって、前記範囲内にされることができ、その測定方法は、電気抵抗計(商品名:ULTRA HIGH RESISTANCE METER R8340A、株式会社アドバンテスト製)を用い、ローラ1Aを水平に置き、5mmの厚さ、30mmの幅、及び、ローラ1Aの弾性層3全体を載せることのできる長さを有する金メッキ製板を電極とし、500gの荷重をローラ1Aにおける軸体2の両端それぞれに支持させた状態にして、軸体2と電極との間にDC100Vを印加し、1秒後の電気抵抗計の値を読みとり、この値を電気抵抗値とする方法により、測定することができる。
【0024】
弾性層3の厚さは、1mm以上であるのが好ましく、5mm以上であるのがより好ましい。一方、弾性層3の厚さの上限は、弾性層3の外径精度を損なわない限り特に制限されないが、一般に、弾性層3の厚さを厚くしすぎると、弾性層3の作製コストが上昇するから、実用的な作製コストを考慮すると、弾性層3の厚さは、30mm以下であるのが好ましく、20mm以下であるのがより好ましい。
【0025】
コート層4は、例えば、後述する樹脂で、1〜100μmの厚さに形成される。前記弾性層3の外周面にコート層4を備えていると、その帯電特性等によって、より一層効率的に現像剤を帯電搬送することができるという効果を奏する。コート層4を形成する材料としては、特に制限するものではないが、図6に示される画像形成装置等にローラ1Bが使用される場合には、ローラ1Bは被当接体に当接又は圧接されるから、永久変形しにくい材料であるのが好ましく、例えば、アルキッド樹脂、フェノール変性・シリコーン変性等のアルキッド樹脂変性物、オイルフリーアルキッド樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミドイミド系樹脂及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0026】
この発明に係るローラの製造方法においては、まず、軸体2を準備する。軸体2は、例えば、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、真鍮若しくはこれらの合金等の金属、熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂等の樹脂、及び前記樹脂等に導電性付与剤としてカーボンブラック又は金属粉体等を配合した導電性樹脂等の材料を用いて、公知の方法により所望の形状に調製される。軸体2に導電性が要求される場合には、前記金属及び前記導電性樹脂の他に、前記樹脂等で形成した絶縁性芯体の表面に定法によりメッキを施すことにより、軸体2を形成することができる。前記材料の中でも、容易に導電性を付与することができる点で、金属であるのが好ましく、アルミニウム又はステンレス鋼であるのが特に好ましい。
【0027】
この発明に係る製造方法においては、後述する成形工程を行う前に、このようにして作製した軸体2にプライマーを塗布するプライマー塗布工程を行うこともできる。軸体2に塗布されるプライマーとしては、特に制限はなく、例えば、アルキッド樹脂、フェノール変性・シリコーン変性等のアルキッド樹脂変性物、オイルフリーアルキッド樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂及びこれらの混合物等が挙げられ、これらの中でもアミノ基及び/又は水酸基を有するプライマーが好ましい。また、これらの樹脂を硬化及び/又は加硫する架橋剤としては、例えば、イソシアネート化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物、過酸化物、フェノール化合物、ハイドロジェンシロキサン化合物等が挙げられる。プライマーは、所望により溶剤等に溶解され、定法、例えば、ディップ法、スプレー法等に従って、軸体の外周面に塗布される。プライマー層は、例えば、0.1〜10μmの厚さに形成される。
【0028】
また、この発明に係る製造方法においては、金型を準備する。弾性層成形工程に使用される金型は、軸体2を保持し、弾性層3よりもわずかに長い中空空間14、例えば、弾性層3の軸線長さに対して100%を超え103%程度以下の長さを有する中空空間14を有する金型であればよいが、中空空間14の内表面が鏡面構造とされた金型であるのが好ましく、このような特性を有する円筒状金型であるのが特に好ましい。具体的には、特に好ましい金型として、図4に示されるように、中空空間14を有する筒状中空体11と、筒状中空体11の一端部に装着され、液状ゴム組成物を注入可能なスプルー16を有する一端部駒12(以下、下端駒と称することがある。)と、前記筒状中空体11の他端部に装着され、液状ゴム組成物を排出可能なベント18を有する他端部駒13(以下、上端駒と称することがある。)とを備えた筒状金型10が挙げられる。なお、金型は、軸体2を装着したときに形成されるキャビティ20(図5参照)が所定の容積を有するように、中空空間14の径及び長さが決定される。
【0029】
この一端部駒12のスプルー16は、図4に示されるように、その形状が、原料入口側から中空空間14側に向かって広がった円錐台状等の、その軸線に直交する断面形状が中空空間14に向って徐々に拡大する円形又は楕円形等に形成されている。スプルー16における開き角は、通常の場合1〜10度であるのが好ましく、2〜8度であるのがより好ましく、3〜6度であるのが特に好ましい。スプルー16の開き角とは、スプルー16の中心を通る一端部駒12の断面図において、スプルー16の両側面を表す直線の交わる角度をいう。また、スプルー16の原料入口側(最も径が小さい部分)の直径は1〜10mmであるのが好ましく、2〜5mmであるのが特に好ましい。スプルー16をこのような形状にすることにより、液状ゴム組成物はスプルー16から中空空間14内に静かに、かつ滑らかに流入し、液状ゴム組成物内に気泡が発生することを防止することができる。前記他端部駒13のベント18の形状は、図4に示されるように、原料流出側から中空空間14側に向かって広がった円錐台状等の、その軸線に直交する断面形状が中空空間14に向って徐々に拡大する円形又は楕円形等に形成されている。ベント18の形状は、前記スプルー16の形状と基本的に同様である。ベント18は、液溜り部19に接続している。この液溜り部19は、過剰な液状ゴム組成物が中空空間14から流出した場合に、一時貯蔵する凹部である。
【0030】
この発明に係る製造方法においては、成形材料を準備する。成形材料は、液状ゴム組成物であるのが、液体射出成形によって弾性層3を容易に形成することができる点で、特に好ましい。そして、弾性層3を形成するために用いられる成形材料は、0.01〜100sec−1の範囲から選択される複数の剪断速度(X)で前記成形材料のノーマルフォースを測定して得られる複数の第一種法線応力差(Y(Pa))の、前記剪断速度(X)に対する一次近似式Y=aX+bを満足する。
【0031】
ここで、前記一次近似式Y=aX+bにおいて、Yは第一種法線応力差(Pa)を示し、Xは剪断速度「dγ/dt」(1/s)を示し、10-2≦X≦10、4.5<a<6.5、−120<b<200である。
【0032】
前記一次近似式Y=aX+bにおいて、Yは前記測定条件で成形材料のノーマルフォースを測定して得られる第一種法線応力差であり、この第一種法線応力差は、成形材料に剪断変形を加えて流動方向に法線応力(張力)が発生するときに、発生した流動方向の法線応力と速度勾配方向の法線応力との差であり、成形材料の粘弾性を示す物理量である。前記一次近似式Y=aX+bにおいて、Xは、成形材料が受ける応力の時間を示し、具体的には、前記測定における剪断速度である。Xは、前記一次近似式が比較的高い直線性を有する範囲0.01〜100である。
【0033】
本願発明の発明者は、後述する実施例及び比較例に示したように、実際に種々の成形材料を調製し、各成形材料を硬化して成る弾性層と各成形材料の前記一次近似式とを対比したところ、成形材料の一次近似式における変数a及び変数bによって、この成形材料を硬化して成る弾性層に粗大な粒子が形成されるか否かを区別しうることを見出し、そして、成形材料の一次近似式における変数aを4.5超6.5未満に調整し、かつ、変数bを−120超200未満に調整すれば、この成形材料を硬化して成る弾性層に粗大な粒子が形成されることを効果的に抑制することができることを見出した。したがって、この発明において、前記一次近似式Y=aX+bにおける変数aは4.5超6.5未満であり、変数bは−120超200未満である。前記変数aが6.5超、及び/又は、変数bが200超であると、形成される弾性層3に複数の粗大な凸部が形成されることがあり、また、粗大な凸部の形成を再現性よく抑制することできなくなる。すなわち、成形材料の一次近似式における前記変数a及び変数bそれぞれが前記範囲内にあると、この成形材料を用いて、平坦な弾性層を備えたローラを高い生産性で再現性及び歩留まりよく製造することができる。その理由は詳細には明らかではないが、前記変数a及び変数bそれぞれが前記範囲内にあると、第一種法線応力差に応じて、成形材料の高分子成分である液状ゴムが無機充填材等の粒子状成分よりも法線方向に対する移動量(膨張量)が大きくなって、たとえ、粒子状成分の粒子径が大きくても、また、その形状が不均一であっても、粒子状成分を成形材料の内部に押し込むことができ、その結果、形成される弾性層3の表面には、粒子状成分が存在する割合が低下して、平坦な弾性層3が形成されるのではないかと、推定している。また、別の理由として、成形材料に含まれる各種分子の絡み合いの状態が悪化することにあるのではないかと、想定している。
【0034】
この発明において、前記変数aが4.5未満、及び/又は、変数bが−120未満であっても、平坦な弾性層を備えたローラを製造することはできるが、変数aを4.5未満、及び/又は、変数bを−120未満にするには、成形材料の調製工程が多工程にわたり、かえって生産コストが増大するという問題が生じることがある。したがって、この発明においては、生産コスト等を考慮して、変数a及び変数bの下限値をそれぞれ4.5及び−120に設定した。ただし、多少の生産コスト増大を許容することができるのであれば、変数a及び変数bは4.5及び−120以下であってもよい。
【0035】
前記一次近似式において、変数aは、4.8以上6.2以下であるのが好ましく、特に、5.0以上6.0以下であるのが好ましく、変数bは、−80以上160以下であるのが好ましく、特に、−40以上120以下であるのが好ましい。前記一次近似式における変数a及び変数bそれぞれがこれらの範囲内にあると、平坦な弾性層を備えたローラを高い生産性でより一層高い再現性及び歩留まりよく製造することができる。
【0036】
前記一次近似式を算出するには、まず、複数の剪断速度における第一種法線応力差を求める。第一種法線応力差は、粘度・粘弾性測定装置、例えば、商品名「レオストレスRS600」(サーモエレクトロン株式会社製)、測定センサー(例えば、C35/4° コーン・プレート、コーンの直径35mm)、所望により温度コントロールシステム等を用いて、測定モードを「定常流粘度測定モード」に設定して、成形材料を回転させて、測定される。具体的には、温度23℃、0.01〜100sec−1の範囲から選択される第1の剪断速度Xにおいて前記測定センサーで測定される成形材料のトルク(成形材料の回転方向にかかる力)が安定値に達するまで第1の剪断速度でトルク値が測定され続ける。測定されたトルク値が一定値に達した後に、成形材料における第1のノーマルフォースFn(回転に対して垂直にかかる力)が前記測定センサーで測定される。このようにして、第1の剪断速度Xにおける第1のノーマルフォースFnが測定される。次いで、同様にして、温度23℃、0.01〜100sec−1の範囲から選択される第2の剪断速度Xにおいて、測定されたトルク値が一定値に達した後に、第2のノーマルフォースFnが測定される。この操作を複数回例えばn回行い、剪断速度XとノーマルフォースFnとの組(X,Fn)を複数組、例えば、n組測定する。このようにして測定された剪断速度XとノーマルフォースFnとの各組(X,Fn)それぞれから、剪断速度Xにおける第一種法線応力差N1を、式 N1=2×Fn/πR (Rは測定センサーにおけるコーン・プレートのコーン半径) から算出する。このようにして、剪断速度Xと第一種法線応力差N1との組(X,N1)が複数例えばn組算出される。この方法は、複数の剪断速度Xにおける複数のノーマルフォースFnを連続して測定した後に、複数の第一種法線応力差N1を算出しているが、各剪断速度XにおけるノーマルフォースFnが測定されるたびに前記式から第一種法線応力差N1を算出してもよい。
【0037】
このとき、剪断速度は、前記範囲0.01〜100sec−1から複数の値が選択され、選択される剪断速度の数nは少なくとも2であればよく、より正確な一次近似式を得るには3以上であるのが好ましい。複数の剪断速度が選択される範囲は、0.01〜100sec−1の範囲であればよいが、得られる一次近似式の直線性が高くなり、一次近似式における変数a及び変数bの正確な値が得られる点で、例えば、5〜80sec−1の範囲であるのが好ましい。
【0038】
このようにして得られた、剪断速度Xに対する第一種法線応力差N1の一次近似式Y=aX+bを算出する。一次近似式Y=aX+bは、複数例えばn組の剪断速度Xと第一種法線応力差N1との組(X,N1)を考慮して、通常の手法、例えば、最小二乗法等により、容易に算出される。このようにして、一次近似式Y=aX+bが算出される。そして、この一次近似式における変数a及び変数bのいずれもが前記範囲内にあるか否かを確認し、変数a及び変数bが共に前記範囲内にある場合には、弾性層3を形成するための成形材料として選択する。
【0039】
前記一次近似式を満足し得る成形材料として、例えば、液状シリコーンゴムと無機充填材とを含有する液状シリコーンゴム組成物が挙げられる。液状シリコーンゴム組成物に含有される液状シリコーンゴムは、例えば、シリコーンゴム若しくはシリコーン変性ゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム(エチレンプロピレンジエンゴムを含む。)、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、天然ゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム等の液状ゴムが挙げられる。これらのゴムは、付加硬化型であるのが、加熱成形時の寸法精度に優れる点で、好ましい。
【0040】
この液状シリコーンゴム組成物に含有される無機充填材は、例えば、珪藻土、パーライト、マイカ、炭酸カルシウム、ガラスフレーク、及び、中空フィラー等が挙げられるが、中でも珪藻土、パーライト及び発泡パーライトの粉砕物が好ましい。この発明において、無機充填材は、合成して得られる合成品、天然物、他の物質の製造過程で副生する副生品、各種製品からの回収品等を特に制限されずに使用することができる。この発明の目的をよく達成することができると共にローラの製造コストを低減することができる点で、無機充填材は、不均一な形状、粒子径等が混入している天然物、副生品、回収品等を用いるのがよい。天然物、副産品、回収品として、例えば、商品名「ロカヘルプ4209」(パーライト、三菱金属工業株式会社製)、商品名「オプライトW−3005S」(珪藻土、北秋珪藻土株式会社製)、商品名「ラヂオライトF」(珪藻土、昭和化学工業株式会社製)、商品名「クリスタライトVX−S」(石英粉、株式会社龍森製)等が挙げられる。特に、この発明によれば、無機充填材の形状、粒子径等が不均一であっても、この無機充填材を含有する成形材料が前記一次近似式を満足すると、予想に反して、弾性層3に凸部が形成されることを抑制することができ、その外周面が平坦になるうえ、複数のローラを製造しても、高い再現性で、かつ、歩留まりよく、平坦な弾性層を形成することができる。
【0041】
この発明の目的を所望のように達成することができると共にローラの製造コストを大幅に低減することができる点で、無機充填材は、前記商品名「ロカヘルプ」、前記商品名「オプライト」等の副生品又は回収品であるのが特に好ましい。
【0042】
液状ゴム組成物は、ローラの用途等に応じて、導電性付与剤を含有する液状導電性ゴム組成物とされてもよい。導電性付与剤としては、例えば、導電性粉末、イオン導電性物質等が挙げられる。導電性粉末としては、より具体的には、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等の導電性カーボンの他に、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、MT等のゴム用カーボン類、また酸化チタン、酸化亜鉛、ニッケル、銅、銀、ゲルマニウム等の金属、又は、金属酸化物、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン等の導電性ポリマー等が挙げられ、イオン導電性物質としては、より具体的には、例えば、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸カルシウム、塩化リチウム等の無機イオン性導電物質等が挙げられる。導電性付与剤は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて、所望の電気抵抗値を示すように、適宜の含有量で添加される。
【0043】
液状ゴム組成物は、ゴム又はゴム及び導電性付与剤に加えて、通常、ゴム組成物に含有される各種添加剤を含有していてもよく、各種添加剤としては、例えば、加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、加硫遅延剤、分散剤、発泡剤、老化防止剤、酸化防止剤、充填材、顔料、着色剤、加工助剤、軟化剤、可塑剤、乳化剤、硬化剤、耐熱性向上剤、難燃性向上剤、受酸剤、熱伝導性向上剤、離型剤、溶剤等が挙げられる。これらの各種添加剤は、通常用いられる添加剤であってもよく、用途に応じて特別に用いられる添加剤であってもよい。
【0044】
液状導電性ゴム組成物は、特に、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物であるのが、表面が平坦な弾性層3を容易に成形することができる点で、好ましい。液状導電性ゴム組成物は、例えば、(A)一分子中にケイ素原子と結合するアルケニル基を少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサンと、(B)一分子中にケイ素原子と結合する水素原子を少なくとも2個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、(C)平均粒径が1〜30μmで、嵩密度が0.1〜0.5g/cmである無機質充填材(無機充填材とも称する。)と、(D)導電性付与剤と、(E)付加反応触媒とを含有する付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物が挙げられる。
【0045】
前記(A)オルガノポリシロキサンとしては、平均組成式(1)RSiO(4−a)/2で示される化合物が好適である。ここで、Rは、互いに同一又は異種の炭素原子数1〜10、好ましくは炭素原子数1〜8の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、aは1.5〜2.8、好ましくは1.8〜2.5、より好ましくは1.95〜2.02の範囲の正数である。
【0046】
前記Rは、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、β−フェニルプロピル基等のアラルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基、並びに、これらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子又はシアノ基等で置換したクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基及びシアノエチル基等が挙げられる。
【0047】
は、そのうちの少なくとも2個は、炭素原子数2〜8、好ましくは炭素原子数2〜6のアルケニル基、特にビニル基であるのが好ましく、また、その90%以上がメチル基であるのが好ましい。前記アルケニル基の含有量は、オルガノポリシロキサン中1.0×10−6〜5.0×10−3mol/g、特に5.0×10−6〜1.0×10−3mol/gであることが好ましい。アルケニル基の量が1.0×10−6mol/gより少ないと、架橋が不十分でゲル状になることがあり、一方、5.0×10−3mol/gを超えると、圧縮永久ひずみが低下することがあるだけでなく、架橋後のゴムが脆くなることがある。前記アルケニル基は、分子鎖末端のケイ素原子に結合していても、分子鎖内のケイ素原子に結合していても、また、両者のケイ素原子に結合していてもよい。
【0048】
前記オルガノポリシロキサン(A)は、基本的には、ジオルガノシロキサン単位を繰り返し単位とする主鎖に、トリオルガノシロキシ基が結合した分子鎖両末端を有する直鎖状構造を有するが、部分的に分岐状構造又は環状構造等となっていてもよい。
【0049】
オルガノポリシロキサン(A)の重合度については、室温(25℃)で液状(例えば、25℃での粘度が100〜1,000,000mPa・s、好ましくは200〜100,000mPa・s程度)であればよく、平均重合度が100〜800であるのが好ましく、150〜600であるのが特に好ましい。平均重合度が100未満であると、架橋後のゴム弾性が不十分となることがあり、一方、800を超えると、オルガノポリシロキサン(A)が生ゴム状になり、圧縮永久ひずみが低下することがある。
【0050】
前記(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、平均組成式(2)RSiO(4−b−c)/2で示され、一分子中に少なくとも2個、好ましくは3個以上(通常、3〜200個)、より好ましくは3〜100個の、ケイ素原子に結合した水素原子を有するものが好適に用いられる。このオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、その分子中に存在するケイ素原子に結合した水素原子が前記(A)オルガノポリシロキサンのケイ素原子に結合したアルケニル基とヒドロシリル付加反応して、架橋する硬化剤(架橋剤)として作用する。
【0051】
前記平均組成式(2)において、前記Rは炭素原子数1〜10の置換又は非置換の一価炭化水素基である。また、bは0.7〜2.1、cは0.001〜1.0で、かつb+cは0.8〜3.0を満足する正数である。前記Rは、前記前記Rと同様であるが、脂肪族不飽和基を有しないものが好ましい。また、bは好ましくは0.8〜2.0、cは好ましくは0.01〜1.0、b+cは好ましくは1.0〜2.5を満足する正数であり、このオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、直鎖状、環状、分岐状又は三次元網目状のいずれの構造であってもよい。前記(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、一分子中のケイ素原子の数(又は重合度)が2〜300個、特に4〜150個程度の室温(25℃)で液状であるのが好ましい。なお、水素原子が結合するケイ素原子は、分子鎖末端、分子鎖内のいずれにあってもよく、両方にあってものであってもよい。
【0052】
前記ケイ素原子に結合した水素原子(Si−H)の含有量は、オルガノハイドロジェンポリシロキサン中0.001〜0.017mol/g、特に0.002〜0.015mol/gとすることが好ましい。前記水素原子の含有量が0.001mol/g未満であると、架橋が不十分でゲル状になることがあり、一方、0.017mol/gを超えると、架橋密度が高くなりすぎて、架橋後のゴムが脆くなることがある。
【0053】
この(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、(CHHSiO1/2単位とSiO4/2単位とから成る共重合体、及び、(CHHSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C)SiO3/2単位とから成る共重合体等が挙げられる。
【0054】
(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、(A)オルガノポリシロキサン100質量部に対して0.1〜30質量部であるのが好ましく、0.3〜20質量部であるのが特に好ましい。前記配合量が0.1質量部未満であると、架橋が不十分でゲル状になり、ゴム状の硬化物を与えることができないことがあり、一方、30質量部を越えると、硬化物の強度と耐圧縮永久ひずみが著しく低下することがある。また、(A)オルガノポリシロキサンのアルケニル基に対するケイ素原子に結合した水素原子のモル比は、0.3〜5.0であるのが好ましく、0.5〜2.5であるのが特に好ましい。
【0055】
前記(C)無機質充填材は、低圧縮永久ひずみで体積抵抗率が経時で安定し、かつ十分なローラ耐久性を得るのに重要な成分である。無機質充填材は、前記無機質填材の中でも、平均粒径が1〜30μm、好ましくは2〜20μm、嵩密度が0.1〜0.5g/cm、好ましくは0.15〜0.45g/cmである無機充填材を用いる。平均粒径が1μmより小さいと経時で電気抵抗率が変化することがあり、一方、30μmより大きいと弾性層3の耐久性が低下することがある。また、嵩密度が0.1g/cmより小さいと圧縮永久ひずみが悪化すると共に経時での電気抵抗率が変化することがあり、一方、0.5μmより大きいと弾性層3の強度が不十分で耐久性が低下することがある。なお、平均粒径は、例えば、レーザー光回折法等による粒度分布測定装置を用いて、重量平均値(又はメジアン径)等として求めることができ、嵩密度は、JIS K 6223の見かけ比重の測定方法に基づいて求めることができる。
【0056】
無機質充填材の配合量は、(A)オルガノポリシロキサン100質量部に対して5〜100質量部であるのが好ましく、10〜80質量部であるのが特に好ましい。前記配合量が5質量部未満であると、十分なローラ耐久性が発現しないことがあり、一方、100質量部を越えると、圧縮永久ひずみが低下すると共に、均一に配合することが困難になることがある。
【0057】
また、無機質充填材(C)は、シラン系カップリング剤又はその部分加水分解物、アルキルアルコキシシラン又はその部分加水分解物、有機シラザン類、チタネート系カップリング剤、オルガノポリシロキサンオイル、加水分解性官能基含有オルガノポリシロキサン等により表面処理されてもよい。これらの表面処理は、無機質充填材自体を予め処理しても、又はオイルと無機質充填材との混合時に処理を行ってもよい。
【0058】
無機質充填材(C)の混合方法は、常温でプラネタリーミキサー又はニーダー等の機器を用いて、前記(A)オルガノポリシロキサン及び前記(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサンと混合してもよいし、又は、100〜200℃の高温で混合してもよい。
【0059】
なお、前記無機質充填材(C)以外にも、例えば、石英粉、球状シリカ、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、酸化チタン、アルミナ、水酸化アルミニウム等の無機粉体を、低圧縮永久ひずみ、経時で安定した体積抵抗率、ローラ耐久性を損なわない範囲で添加してもよい。特に圧縮永久ひずみ及び体積抵抗率の経時変化に影響が大きいヒュームドシリカ及び沈降性シリカは、前記(A)オルガノポリシロキサン100質量部に対して、8質量部以下、特に0〜5質量部を配合するのが好ましい。
【0060】
前記(D)導電性付与剤については既に説明した通りである。前記(D)導電性付与剤の配合量は、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物の硬化物が、10kΩ・m以下、好ましくは0.1〜10kΩ・m、特に好ましくは1Ω・m〜5kΩ・m以下の体積抵抗率を有する量である。具体的には、導電性付与剤の配合量は、前記(A)オルガノポリシロキサン100質量部に対して、0.5〜50質量部であるのが好ましく、特に1〜20質量部であるのが好ましい。配合量が0.5質量部未満であると、所望の導電性を得ることができないことがあり、一方、50質量部を超えると、圧縮永久ひずみが低下することがある。
【0061】
前記(E)付加反応触媒としては、白金黒、塩化第二白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒等が挙げられる。なお、この付加反応触媒の配合量は触媒量とすることができ、例えば、白金族金属量として、前記(A)オルガノポリシロキサン及び(E)オルガノハイドロジェンポリシロキサンの合計質量に対して、0.5〜1,000ppmであるのが好ましく、1〜500ppm程度であるのが特に好ましい。
【0062】
この付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物は、前記成分に加えて、低分子シロキサンエステル、シラノール、例えば、ジフェニルシランジオール等の分散剤、酸化鉄、酸化セリウム、オクチル酸鉄等の耐熱性向上剤、接着性及び成形加工性を向上させる各種カーボンファンクショナルシラン、難燃性を付与させるハロゲン化合物、各種反応制御剤等を本発明の目的を損なわない範囲で含有してもよい。
【0063】
前記液状ゴム組成物は、二本ローラ、三本ローラ、ローラミル、バンバリーミキサ、ドウミキサ(ニーダー)等のゴム混練り機等を用いて、ゴム及び導電性付与剤、所望により添加された各種添加剤等が均一に混合されるまで、例えば、数分から数時間、好ましくは5分〜1時間、常温又は加熱下で混練して、得られる。特に、液状ゴム組成物が前記付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物である場合には、前記オルガノポリシロキサン(A)、前記無機質充填材(C)及び前記(D)導電性付与剤を前記ゴム混練り機等を用いて予め均一に混合しておくのがよい。これらの成分を予め均一に混合しておくと、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物としたときに前記一次近似式を比較的容易に満足することができる。このときの混合時間は、使用するゴム混練り機等に応じて適宜調整されるが、混合時間があまりに長いと生産性を犠牲にすることがあるから、例えば、数分から1時間未満、好ましくは5分〜50分間である。混合温度は特に限定されず、常温又は加熱下とされる。
【0064】
前記液状ゴム組成物は、後述する金型に容易にかつ均質に注入することができる点で、例えば、25℃において、5〜500Pa・sの粘度を有しているのがよく、10〜200Pa・sの粘度を有しているのが特によい。前記液状ゴム組成物の粘度は、通常、それらに含まれる各成分の種類及び/又は配合量によって、調整することができる。必要により、溶剤等により、粘度を調整することもできる。
【0065】
この発明に係る製造方法においては、次いで、図5に示されるように、作製した軸体2と準備した金型10とを組み立てる。すなわち、図5に示されるように、円筒状中空体11の下側に下端駒12、その上側に上端駒13を配置し、軸体2を円筒状中空体11に通して、軸体2の両端部を下端駒12の保持穴15と上端駒13の保持穴17とで挟持するようにして、金型10を組み立てる。言うまでもないが、軸体2は、中空空間14の軸線に一致するように配置される。
【0066】
この発明に係る製造方法においては、次いで、組み立てた金型10のキャビティ20に、前記特性を有する成形材料を、注入する。成形材料をキャビティ20内に注入する方法は、定法であれば何れの方法も採用することができ、例えば、射出成形機による注入、注型機による注入等が挙げられる。
【0067】
この発明に係る製造方法においては、次いで、キャビティ20に注入された成形材料を金型10ごと加熱して、弾性層3を成形する。加熱条件は、成形材料が硬化可能な条件であればよく、例えば、加熱温度は100〜300℃に設定することができ、加熱時間は10秒から1時間に設定することができる。
【0068】
この発明に係る製造方法においては、圧縮永久ひずみを低下させる目的等で、前記加熱後に、さらに、120〜250℃の加熱温度で、30分から70時間程度の2次加硫を行うこともできる。
【0069】
このようにして、平坦な弾性層3が軸体2の外周面に形成される。
【0070】
この発明に係る製造方法においては、所望により、形成された弾性層3の外周面に、コート層4を形成することもできる。コート層4を形成する場合には、弾性層3の外周面に紫外線処理及び/又はプライマーを塗布してから、コート層4を形成することが好ましい。弾性層3の外周面に紫外線処理及び/又はプライマーを塗布することにより、弾性層3の外周面とコート層4との密着性を向上させることができる。紫外線処理及び/又はプライマーの塗布は、それぞれ単独で実施してもよいが、両方を組み合わせて実施することがより好ましい。コート層4は、後述する材料を所望により溶剤等に溶解し、定法、例えば、スプレーコーティング、ディッピング、インモールドコート法等によって、弾性層3の外周面に塗布され、後述する材料を硬化及び/又は加硫して、形成される。また、コート層4は、予め円筒状に成形されたシュリンクチューブ内に弾性層3を挿入して、シュリンクチューブを加熱収縮させることによって、形成することもできる。コート層4は、後述する材料を所望により溶剤等に溶解し、定法、例えば、ディップ法、スプレー法等に従って、弾性層3の外周面に塗布され、前記材料を硬化及び/又は加硫して、形成される。
【0071】
この発明に係るローラの製造方法においては、前記一次近似式を満足する成形材料を用いるから、平坦な弾性層が軸体の外周面に形成されたローラを、高い再現性で、かつ、歩留まりよく、製造することができる。
【0072】
この発明においては、前記したように、前記一次近似式を満足する成形材料を用いると、平坦な弾性層が高い再現性で、かつ、歩留まりよく、形成される。したがって、ローラを製造する前に、弾性層を形成する成形材料について、前記のようして、剪断速度0.01〜100sec−1の範囲から選択される複数の剪断速度Xと、複数の第一種法線応力差N1との組(X,N1)を算出し、第一種法線応力差(Y(Pa))の、剪断速度(X)に対する一次近似式Y=aX+bを算出し、前記一次近似式における変数aが4.5<a<6.5の範囲にあり、かつ、変数bが−120<b<200の範囲にある成形材料を弾性層を形成するための成形材料として選択し、前記一次近似式における変数a及び変数bが前記範囲にない成形材料を選択しなければ、従来行われていた前記物性測定、前記予備試験及び前記テーブル試験等を実施しなくても、平坦な弾性層を備えたローラを高い生産性で再現性及び歩留まりよく製造することができる。
【0073】
すなわち、この発明に係る成形材料の選別方法は、剪断速度0.01〜100sec−1の範囲から選択される複数の剪断速度(X)で、成形材料のノーマルフォースを測定し、剪断速度に対応する複数の第一種法線応力差(Y(Pa))を求め、得られた第一種法線応力差の、剪断速度に対する一次近似式Y=aX+bを算出し、この一次近似式における変数aが4.5<a<6.5の範囲にあり、かつ、変数bが−120<b<200の範囲にある成形材料をローラの弾性層を形成するための成形材料として選別することを特徴とする。
【0074】
この発明に係る成形材料の選別方法において、成形材料における、第一種法線応力差及び一次近似式等は前記した通りであり、一次近似式の算出方法も前記した通りである。
【0075】
この発明に係る成形材料の選別方法においては、前記のようにして算出した一次近似式における変数a及び変数bそれぞれが前記範囲内にあるか否かを確認する。そして、変数a及び変数bがいずれも前記範囲内にある成形材料は、ローラにおける平坦な弾性層を形成する成形材料として好適に選択され、一方、変数a及び変数bの少なくとも一方が前記範囲内にない成形材料は、ローラにおける平坦な弾性層を形成する成形材料として選択されることはない。このように、この発明に係る成形材料の選別方法によれば、成形材料の一次近似式における変数a及び変数bが前記範囲にあるか否かによって、平坦な弾性層を形成する成形材料としての的確性を高い信頼性で判断することができる。
【0076】
したがって、この発明に係る成形材料の選別方法によれば、前記のように、従来行われていた前記物性測定、前記予備試験及び前記テーブル試験等に比して、平坦な弾性層を形成することのできる成形材料としての的確性を簡単かつ短時間で判別することができるから、ローラの生産性を大きく犠牲にすることなく、所望の弾性層を形成することのできる成形材料を選別することができる。
【0077】
次に、この発明に係るローラの製造方法により製造されるローラを備えた画像形成装置(以下、この発明に係る画像形成装置と称することがある。)の一例を、図6を参照して、説明する。この発明に係る画像形成装置30は、図6に示されるように、静電潜像が形成される回転可能な像担持体31例えば感光体と、像担持体31に当接若しくは圧接して又は所定の間隔を置いて設けられ、像担持体31を帯電させる帯電手段32例えば帯電ローラと、像担持体31の上方に設けられ、像担持体31に静電潜像を形成する露光手段33と、像担持体31に当接若しくは圧接して又は所定の間隔を置いて設けられ、像担持体31に一定の層厚で現像剤42を供給し、静電潜像を現像する現像手段40と、像担持体31の下方に圧接するように設けられ、現像された静電潜像を像担持体31から記録紙36上に転写する転写手段34例えば転写ローラと、記録紙36の搬送方向の下流に設けられ、記録紙36に転写された現像剤42(静電潜像)を定着させる定着手段35例えば定着器と、記録紙36に転写されず像担持体31に残留した現像剤42及び/又は像担持体31に付着したゴミ等を除去するクリーニング手段37とを備えている。すなわち、像担持体31は、その回転方向において、上流側から順に、クリーニング手段37、帯電手段32、露光手段33、現像手段40及び転写手段34によって、各作用を受ける。この画像形成装置30は、像担持体31の表面に残留している静電潜像を除去する除電手段(図示しない。)を、クリーニング手段37と帯電手段32との間又は転写手段34とクリーニング手段37との間に、備えていてもよい。
【0078】
画像形成装置30における前記現像手段40は、従来の画像形成装置に備えられた現像手段と基本的に同様に形成され、同様に配置されている。例えば、前記現像手段40は、図6に示されるように、像担持体31に対向する位置に開口部を有し、現像剤42を収納する現像剤収納部41と、現像剤収納部41内に設けられ、現像剤42を均一に攪拌する攪拌機43と、現像剤収納部41の開口部に、像担持体31に当接若しくは圧接して又は所定の間隔を置いて設けられ、像担持体31に現像剤42を一定の層厚で現像剤42を供給する回転可能な現像剤担持体44と、現像剤担持体44の上方に設けられ、現像剤担持体44に当接して現像剤42の層厚を規制すると共に、摩擦帯電により現像剤42を帯電させる現像剤規制部材45とを備えている。具体的には、現像剤規制部材45は、ブレード46が所定の圧力で現像剤担持体44の表面に当接するように、ブレード46が湾曲されて、現像手段40の開口部に、配置されている。前記現像剤収納部41に収納される現像剤42、すなわち、この発明に係る画像形成装置30に使用される現像剤42としては、摩擦により帯電可能で、記録紙36に定着可能な一成分系の現像剤であれば、乾式現像剤であっても湿式現像剤であってもよく、また、非磁性現像剤であっても磁性現像剤であってもよい。
【0079】
この発明に係る画像形成装置30は、帯電手段32の帯電ローラ、現像手段40の現像ローラ、転写手段34の転写ローラ、定着手段35の定着ローラ、クリーニング手段のクリーニングローラ(図示しない。)、加圧ローラ(図示しない。)、紙送り搬送ローラ(図示しない。)等の各種ローラを備え、これら各種ローラのうち少なくとも1つのローラとしてこの発明に係るローラの製造方法によって製造されたローラ1が装着されている。好ましくは、帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラ及び定着ローラのうち少なくとも1つのローラとしてこの発明に係るローラの製造方法によって製造されたローラ1が装着されている。
【0080】
この発明に係る画像形成装置30は、次にように作用する。まず、像担持体31が、図6の矢印に示されるように、時計方向に回転しつつ、クリーニング手段37により、その表面の現像剤42及び/又はゴミ等が除去された後、帯電手段32により、一様に帯電される。次いで、露光手段33により画像が露光され、像担持体31の表面に静電潜像が形成される。
【0081】
一方、現像手段40において、攪拌機43により均一に混合された現像剤42が、現像剤担持体44に供給され、現像剤担持体44が図6に示される矢印方向に回転することにより、現像剤担持体44の表面に付着した現像剤42が、現像剤担持体44と現像剤担持体44に当接した現像剤規制部材45のブレード46との間を通過する。このとき、現像剤42は、所望の層厚に規制されると共に、現像剤42を所望のように帯電させることができる。つまり、現像剤42が、現像剤担持体44と現像剤規制部材45のブレード46との間を通過することによって、現像剤担持体44の表面上における現像剤42の層厚が規制されると共に、現像剤規制部材45のブレード46と現像剤担持体44及び/又は現像剤42との摩擦帯電等により、現像剤担持体44上の現像剤42が所望のように帯電される。
【0082】
次いで、このようにして現像手段40から所望の層厚及び帯電量を有する現像剤42が像担持体31に供給され、像担持体31に形成された静電潜像が現像されて、この静電潜像が現像剤像として可視化される。このようにして、現像手段40は、像担持体31に所望の層厚及び帯電量を有する現像剤42を供給し、静電潜像を現像することができる。次いで、像担持体31上に現像された現像剤像は、図示しない搬送手段により、像担持体31と転写手段34との間に搬送される記録紙36上に、像担持体31及び/又は転写手段34によって転写される。次いで、現像剤像が転写された記録紙36は、図示しない搬送手段により定着手段35に搬送され、定着手段35により加熱及び/又は加圧されて、転写された現像剤像が永久画像として記録紙36に定着される。このようにして、記録紙36に画像を形成することができる。
【0083】
この発明に係る画像形成装置30は、帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラ、定着ローラ、クリーニングローラ(図示しない。)、加圧ローラ(図示しない。)、紙送り搬送ローラ(図示しない。)等の各種ローラのうち少なくとも1つのローラとしてこの発明に係るローラの製造方法によって製造されたローラ1が装着されているので、この発明に係るローラの製造方法によって製造されたローラ1が装着されたローラは、被当接体に対して均一に作用することができ、高品質の画像を形成することに十分に貢献することができる。
【0084】
この発明に係る画像形成装置30において、像担持体31、帯電手段32、露光手段33、転写手段34、定着手段35及びクリーニング手段37は、図6に示される配置の他に、従来の画像形成装置に備えられる像担持体、帯電手段、露光手段、転写手段、定着手段及びクリーニング手段とそれぞれ同様に形成され、同様に配置されてもよい。
【0085】
また、画像形成装置30は、電子写真方式の画像形成装置とされているが、この発明において、画像形成装置は、電子写真方式には限定されず、例えば、静電方式の画像形成装置であってもよい。また、画像形成装置30は、現像手段40に単色の現像剤42のみを収容するモノクロ画像形成装置とされているが、この発明において、画像形成装置は、モノクロ画像形成装置に限定されず、カラー画像形成装置であってもよい。カラー画像形成装置としては、例えば、像担持体上に担持された現像剤像を中間転写体に順次一次転写を繰り返す4サイクル型カラー画像形成装置、各色毎の現像手段を備えた複数の像担持体を中間転写体や転写搬送ベルト上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置等が挙げられる。画像形成装置30は、例えば、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置とされる。
【0086】
また、画像形成装置30において、現像剤42は、一成分系の現像剤が有利に用いられるが、トナーと、鉄、ニッケル等のキャリアとを含む二成分系の現像剤も使用することができる。二成分系の現像剤は、通常、10〜25μC/g程度の帯電特性を有している。
【実施例】
【0087】
(実施例1)
まず、図4に示される金型、及び、軸体2を準備した。すなわち、図4に示される円筒状中空体11、下端駒12及び上端駒13からなり、直径(外径)35mm、(内径)20.7mm、長さ240mmの中空空間14を有する金型10を作製した。下端駒12及び上端駒13はそれぞれ25mmの肉厚を有し、その内側中心部に直径7.5mmの保持穴15及び17が形成されている。また、下端駒12は、その中心軸から8.25mmの位置に中心軸を持つ円錐台形のスプルー16が形成されており、このスプルー16は、原料入口側の直径が2.5mm、中空空間14側の直径が3.0mmとされている。上端駒13は、図4に示されるように、その中心軸から8.25mmの位置に中心軸を持つ円錐台形のベント18及びその上部に液溜り部19が設けてあり、液溜り部19の深さは20mm、ベント18は長さ5mm、液溜り部19側の開口径が2.5mm、中空空間14側の開口径が3.0mmとされている。スプルー16とベント18はそれぞれ8個ずつ円周方向に均等に配置されている。なお、円筒状中空体11の内表面を定法に従い鏡面処理した。
【0088】
次いで、無電解ニッケルメッキ処理が施された軸体2(SUM22製、直径7.5mm、長さ281.5mm)をトルエンで洗浄し、その表面にシリコーン系プライマー(商品名「プライマーNo.16」、信越化学工業株式会社製)を塗布した。プライマー処理した軸体を、ギヤオーブンを用いて、150℃の温度にて10分焼成処理した後、常温にて30分以上冷却し、軸体2の表面にプライマー層を形成した。
【0089】
次いで、前記金型10に離型剤(ダイキン工業株式会社製 商品名「ダイフリー」)を塗布して、下端駒12の保持穴15と上端駒13の保持穴17とで作製した軸体2を中空空間14の中央に保持して、金型10を組み立てた。
【0090】
一方、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物1を以下のようにして調整した。すなわち、両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン(A)(重合度300)100質量部、BET比表面積が110m/gである疎水化処理されたヒュームドシリカ(日本アエロジル株式会社製、R−972)1質量部、平均粒径6μm、嵩密度が0.25g/cmであるパーライト(C)(商品名「ロカヘルプ4209」、三菱金属工業株式会社製)20質量部、及び、アセチレンブラック(D)(デンカブラックHS−100、電気化学工業株式会社製)5質量部をプラネタリーミキサーに入れ、30分撹拌した後、3本ロールに1回通した。これを再度プラネタリーミキサーに戻し、架橋剤として、両末端及び側鎖にSi−H基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(B)(重合度17、Si−H量0.0060mol/g)2.1質量部、反応制御剤として、エチニルシクロヘキサノール0.1質量部、及び、白金触媒(E)(Pt濃度1%)0.1部を添加し、15分撹拌して混練した。
【0091】
この付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物1における第一種法線応力差を前記方法に従って算出し、複数の剪断速度Xに対する第一種法線応力差N1の一次近似式を求めた。このようにして得られた付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物1の一次近似式は、Y=5.78X+41.1(R=0.938)であり、図3の直線1及びプロット(黒三角形)で示されている。
【0092】
また、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物1の粘度(23℃)、圧縮永久歪(180℃、22時間)をそれぞれJIS K6301に記載の方法に準拠して、測定した結果を表1に示す。
【0093】
次いで、前記金型10の内表面に離型剤(ダイキン工業株式会社製 商品名「ダイフリー」)を塗布して、下端駒12の保持穴15と上端駒13の保持穴17とで作製した軸体2を中空空間14の中央に保持した後、金型10を組み立て、下端駒12のスプルー16から、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物1を、ベント18から液溜り部19に流出し始めるまで、キャビティ14に注入した。次いで、金型10の外部から、150℃に加熱して、同温度で10分間保持し、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物1を加熱成形した。加熱成形後、金型10を放冷して成形品を金型10から取り出し、スプルー16及びベント18の部分のゴムが付着している部分を切断除去して、弾性層3を備えたローラ1aを100本製造した。
【0094】
(実施例2)
前記パーライト(C)(商品名「ロカヘルプ4209」)の製造ロットが異なるパーライト(C’)(商品名「ロカヘルプ4209」)を用いた以外は、実施例1と同様にして、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物2を調整した。この付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物2における前記一次近似式を実施例1と同様にして求めたところ、Y=5.74X+20.2(R=0.886)であり、図3の直線2及びプロット(黒丸)で示されている。また、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物2の粘度(23℃)、圧縮永久歪をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。この付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物2を用いて、実施例1と同様にして、ローラ1bを100本製造した。
【0095】
(実施例3)
前記パーライト(C)(商品名「ロカヘルプ4209」)に代えて珪藻土(商品名「オプライトW−3005S」、北秋珪藻土株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物3を調整した。この付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物3における前記一次近似式を実施例1と同様にして求めたところ、Y=6.1X+150.1(R=0.936)であり、図3の直線5で示されている。また、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物2の粘度(23℃)、圧縮永久歪をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。この付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物3を用いて、実施例1と同様にして、ローラ1cを100本製造した。
【0096】
(比較例1)
前記ジメチルポリシロキサン(A)、前記パーライト(C)、及び、前記アセチレンブラック(D)をプラネタリーミキサーに入れて30分撹拌した後に、3本ロールに通さなかった以外は、実施例1と同様にして、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物4を調整した。この付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物3における前記一次近似式を実施例1と同様にして求めたところ、Y=6.58X+200(R=0.840)であり、図3の直線(破線)3及びプロット(黒四角形)で示されている。また、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物4の粘度(23℃)、圧縮永久歪をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。この付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物4を用いて、実施例1と同様にして、ローラ1dを100本製造した。
【0097】
(比較例2)
前記ジメチルポリシロキサン(A)、前記パーライト(C)、及び、前記アセチレンブラック(D)をプラネタリーミキサーに入れて60分攪拌した以外は、実施例1と同様にして、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物5を調整した。この付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物5における前記一次近似式を実施例1と同様にして求めたところ、Y=4.43X−122(R=0.817)であり、図3の直線(破線)4及びプロット(黒菱形)で示されている。また、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物5の粘度、圧縮永久歪をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。この付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物5を用いて、実施例1と同様にして、ローラ1eを100本製造した。
【0098】
(比較例3)
前記パーライト(C)(商品名「ロカヘルプ4209」)の製造ロットが実施例1及び実施例2と異なるパーライト(C’’)(商品名「ロカヘルプ4209」)を用いた以外は、実施例1と同様にして、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物6を調整した。この付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物6における前記一次近似式を実施例1と同様にして求めたところ、Y=3.58X+39.1(R=0.901)であり、図3の直線(破線)6で示されている。また、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物6の粘度(23℃)、圧縮永久歪をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。この付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物6を用いて、実施例1と同様にして、ローラ1fを100本製造した。
【0099】
前記付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物1〜6を用いて、以下の方法によりテーブルテストを行い、前記各実験例で製造した100本のローラのうち1本目〜6本目に製造した6本のローラを用いて予備試験を行った。これらの試験において目視で確認された粗大な凸部(高さ100μm以上、及び/又は、最大径150μm以上の粒状隆起部)の合計数を表1に示した。
【0100】
・予備試験
選択した6本の各ローラの表面を目視にて観察することによって凸部の数を数えた。
・テーブルテスト
前記付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物1〜6を、FX4200紙(ゼロックス社製)の上に適量置いた後、即座に5cm×10cm×0.5mm厚の枠を前記組成物の上に置いた。次いで、この組成物を、ドクターブレード等の均一な厚さが得られるヘラ等で所定の大きさにシーティングして、80℃×1時間の条件下で加熱硬化させた。このようにして硬化したシート中の凸部の個数を目視にて観察することによって凸部の数を数えた。
【0101】
また、実施例及び比較例における歩留り(検査総数100本に対する、弾性層に前記粗大な凸部が認められたローラの合計数の割合(%))を算出し、その結果を表1に示した。
【0102】
【表1】

【0103】
比較例2は、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物5における前記一次近似式の変数a及び変数bが共にその下限値近傍の値であるから、テーブルテスト、予備試験及び歩留りの結果は比較的良いが、攪拌時間を2倍にしているので、生産性が低下すると共に、工程付加が増えコストアップにつながるという問題を有していた。
【0104】
表1に示されるように、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物1〜6の粘度、圧縮永久歪はほとんど差がないにもかかわらず、歩留りが大きく異なった。また、テーブルテストと予備試験との結果が歩留りの結果に一致しないこともわかった。このように、従来行われていた前記物性測定、前記予備試験及び前記テーブル試験等では、これらの結果と実製造の結果とは必ずしも一致せず、前記物性測定、前記予備試験及び前記テーブル試験等の結果から製造条件等を調整しても、平坦な弾性層を備えたローラを高い生産性で再現性及び歩留まりよくローラを製造することはできなかったが、一次近似式における変数a及び変数bが所定の範囲にある成形材料を用いた実施例1〜3によれば、いずれも、平坦な弾性層を備えたローラを高い生産性で再現性及び歩留まりよくローラを製造することができた。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】図1は、ローラの一例を示す斜視図である。
【図2】図2は、ローラの別の一例を示す斜視図である。
【図3】図3は、この発明における成形材料の剪断速度と第一種法線応力差との関係を示すグラフである。
【図4】図4は、この発明に係る製造方法に好適に用いられる金型を組み立てた状態を示す断面図である。
【図5】図5は、この発明に係る製造方法に好適に用いられる金型に軸体を装着したときの状態を示す断面図である。
【図6】図6は、この発明に係る画像形成装置の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0106】
1A、1B ローラ
2 軸体
3 研磨レス弾性層
4 コート層
10 金型
11 円筒状中空体
12 下端駒
13 上端駒
14 中空空間
15、17 保持穴
16 スプルー
18 ベント
18d 開口
19 液溜り部
20 キャビティ
30 画像形成装置
31 像担持体
32 帯電手段
33 露光手段
34 転写手段
35 定着手段
36 転写紙
37 クリーニング手段
40 現像手段
41 現像剤収納部
42 現像剤
43 攪拌機
44 現像剤担持体
45 現像剤規制部材
46 ブレード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体の外周面で成形材料を硬化するローラの製造方法であって、
前記成形材料は、0.01〜100sec−1の範囲から選択される複数の剪断速度(X)で前記成形材料のノーマルフォースを測定して得られる複数の第一種法線応力差(Y(Pa))の、前記剪断速度(X)に対する一次近似式Y=aX+bを満足することを特徴とするローラの製造方法。
ただし、前記一次近似式において、4.5<a<6.5及び−120<b<200
【請求項2】
ローラの弾性層を形成する成形材料を選別する成形材料の選別方法であって、
剪断速度0.01〜100sec−1の範囲から選択される複数の剪断速度(X)で、前記成形材料のノーマルフォースを測定し、前記剪断速度に対応する複数の第一種法線応力差(Y(Pa))を求め、
得られた前記第一種法線応力差(Y(Pa))の、前記剪断速度(X)に対する一次近似式Y=aX+bを算出し、
前記一次近似式における変数aが4.5<a<6.5の範囲にあり、かつ、変数bが−120<b<200の範囲にある成形材料を選別することを特徴とする成形材料の選別方法。
【請求項3】
請求項1に記載の一次近似式を満足することを特徴とする液状シリコーンゴム組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−97691(P2009−97691A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−272214(P2007−272214)
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【復代理人】
【識別番号】100118809
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 育男
【Fターム(参考)】