ワイヤハーネス用クリップおよびワイヤハーネス用クリップの車体取付方法
【課題】車体側ブラケットの適正な取付位置にワイヤハーネス用クリップを固定する。
【解決手段】バンド型ワイヤハーネス取付部または基板型ワイヤハーネス取付部と、バンド型ワイヤハーネス取付部のバンド締結部の外面または基板型ワイヤハーネス取付部の基板の中間部の表面に突設したコ型の樹脂クリップ本体と、樹脂クリップ本体の上下片に移動自在に組み付けるコ型のクリップ取付部と、樹脂クリップ本体の上下片に挟まれた中空部に組み付けられるＶ型金属クリップと、Ｖ型金属クリップの上下傾斜片の内面から逆Ｖ字方向に傾斜して突設した上下の挟持片を備え、ブラケットをＶ型金属クリップの上下傾斜片の間に差し込んでクリップ取付部を前進させると、クリップ取付部の上下壁でＶ型金属クリップの上下傾斜片を押し下げ、挟持片でブラケットの上下両面を挟持する構成としている。
【解決手段】バンド型ワイヤハーネス取付部または基板型ワイヤハーネス取付部と、バンド型ワイヤハーネス取付部のバンド締結部の外面または基板型ワイヤハーネス取付部の基板の中間部の表面に突設したコ型の樹脂クリップ本体と、樹脂クリップ本体の上下片に移動自在に組み付けるコ型のクリップ取付部と、樹脂クリップ本体の上下片に挟まれた中空部に組み付けられるＶ型金属クリップと、Ｖ型金属クリップの上下傾斜片の内面から逆Ｖ字方向に傾斜して突設した上下の挟持片を備え、ブラケットをＶ型金属クリップの上下傾斜片の間に差し込んでクリップ取付部を前進させると、クリップ取付部の上下壁でＶ型金属クリップの上下傾斜片を押し下げ、挟持片でブラケットの上下両面を挟持する構成としている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明はワイヤハーネス用クリップおよびワイヤハーネス用クリップの車体取付方法に関し、詳しくは、車体側のブラケットの適正位置にワイヤハーネス用クリップを取り付けるものである。
【背景技術】
【０００２】
車体側の金属製または樹脂製のブラケットに取り付けられるワイヤハーネス用クリップとして、図６に示すように、ブラケット６に挟着されるＣ型の樹脂クリップ３と、該樹脂クリップ３に連結されワイヤハーネス（図示せず）に取り付けられるワイヤハーネス取付部２とからなるクリップ１が提案されている［特開平７−９９７１９号公報（特許文献１）参照］。
【０００３】
前記樹脂クリップ３の内面には、該内面と同形状のＣ型の金属クリップ４が取り付けられ、該金属クリップ４の屈曲部４ｂを挟む上下片４ｃ、４ａには、爪５が金属クリップ４の中空部に向けて切り起こされている。よって、ブラケット６を金属クリップ４の上下片４ｃ、４ａ間に押し込むと前記爪５がブラケット６の上下両面を挟持して、クリップ１がブラケット６に固定される構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００４】
【特許文献１】特開平７−９９７１９号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
前記ワイヤハーネス用クリップ１は、ワイヤハーネスと他のブラケットとの取付位置やワイヤハーネス端末のコネクタ接続位置も考慮したブラケット６の適正位置に取り付けられる必要がある。しかし、前記構成のクリップ１では、一旦ブラケット６を金属クリップ４内に押し込むと、ブラケット６の上下両面が爪５に挟持されてクリップ１がブラケット６に固定されてしまうため、取付位置が適正でなかった場合に取付位置の変更が難しいという問題がある。
【０００６】
本発明は、車体側のブラケットの適正な取付位置にワイヤハーネス用クリップを一度の取付作業で確実に固定できることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
前記課題を解決するため、第１の発明は、バンドをワイヤハーネスに巻き付けて固定するバンド型ワイヤハーネス取付部またはワイヤハーネスに粘着テープで巻き付ける基板型ワイヤハーネス取付部と、
前記バンド型ワイヤハーネス取付部のバンド締結部の外面または前記基板型ワイヤハーネス取付部の基板の中間部の表面に突設したコ型の樹脂クリップ本体と、
前記樹脂クリップ本体の上下片に移動自在に組み付けるコ型のクリップ取付部と、
前記樹脂クリップ本体の上下片に挟まれた中空部に組み付けられるＶ型金属クリップと、
前記Ｖ型金属クリップの上下傾斜片の内面から逆Ｖ字方向に傾斜して突設した上下の挟持片を備え、
車体側の平板状のブラケットを前記Ｖ型金属クリップの上下傾斜片の間に差し込んだ状態で前記クリップ取付部を前記ブラケット側に前進させると、前記クリップ取付部の上下壁で前記Ｖ型金属クリップの上下傾斜片を押し下げ、該上下傾斜片から突設した前記挟持片で前記ブラケットの上下両面を挟持する構成としているワイヤハーネス用クリップを提供している。
【０００８】
前記のように、本発明のワイヤハーネス用クリップには、コ型の樹脂クリップ本体を設け、該樹脂クリップ本体の上下片に挟まれた中空部にＶ型金属クリップを組み付けると共に、該Ｖ型金属クリップの上下傾斜片の内面から逆Ｖ方向、即ち、Ｖ字の開方向と逆方向に傾斜した上下の挟持片を突設している。また、前記樹脂クリップ本体の上下片に移動可能に組み付けられるコ型のクリップ取付部を設け、該クリップ取付部をブラケット側に前進させることで、前記樹脂クリップ本体の中空部に組み付けた前記Ｖ型金属クリップの上下傾斜片を前記クリップ取付部が押し下げる構成としている。即ち、前記上下傾斜片を押し下げることによって前記上下傾斜片に突設した上下の挟持片の間隔を狭めてこれらの挟持力を高めている。
【０００９】
前記構成により、ワイヤハーネス用クリップを車体側のブラケットに取り付ける際に、まず、前記クリップ取付部を前進させることなく、前記樹脂クリップ本体の中空部に組み付けたＶ型金属クリップの上下傾斜片の間にブラケットを差し込むことで、ワイヤハーネス用クリップをブラケットに対して横移動可能な状態で仮保持することができる。よって、この段階で取付位置の最終調整を行うことができる。
なお、Ｖ型金属クリップの上下傾斜片の間隔および該上下傾斜片の内面から突設した上下の挟持片の間隔としては、ブラケットを差し込むことができ、かつブラケットに対してクリップが横移動可能な状態で仮保持される程度の間隔が必要である。
【００１０】
前記取付位置の最終調整後、樹脂クリップ本体の上下片に前記クリップ取付部をブラケット側に前進させるだけで、Ｖ型金属クリップの上下傾斜片が前記クリップ取付部で押し下げられ、押し下げられた前記上下傾斜片の内面から突設した上下の挟持片で、ブラケットの上下両面を強固に挟持することができる。よって、前記最終調整したブラケットの適正な取付位置に、ワイヤハーネス用クリップを一度の取付作業で確実に固定することができる。
【００１１】
前記Ｖ型金属クリップの上下傾斜片の内面から逆Ｖ方向に傾斜して突設する上下の挟持片は、上下対向して設けてもよいが、上下互い違いに設けてもよい。例えば、下傾斜片のブラケット差し込み開口近傍の中央付近に１個の下挟持片を逆Ｖ方向に切り起こして形成し、上傾斜片のブラケット差し込み開口近傍で前記下挟持片を挟む左右両側に一対の上挟持片を逆Ｖ方向に切り起こして形成してもよい。前記上下の挟持片の形状は、先端が鋭角の三角形状とすることが好ましい。
【００１２】
前記クリップ取付部は前記上下壁と連結壁とからなり、上壁の先端両側よりストッパー片を突出させており、
前記樹脂クリップ本体は上記上下片と連結片とからなり、該連結片は前記クリップ取付部の上下壁を貫通させる開口を有すると共に、上片の内面にストッパー係止面を段状に設けており、該クリップ取付部の前進時に前記ストッパー片がストッパー係止面に係止して前進位置を固定する構成としていることが好ましい。
【００１３】
また、クリップ取付部の上下壁を連結壁の上下端より段差をつけて近接させることが好ましい。これにより、クリップ取付部を前進させたときに、前記近接させた上下壁でＶ型金属クリップの上下傾斜片を挟みこんでこれらを効果的に押し下げることができる。
前記クリップ取付部を前記樹脂クリップ本体に組み付けたとき、前記クリップ取付部の連結壁の上下端面が樹脂クリップ本体の上下片の外面と同一高さとなり、前記クリップ取付部の上下壁の外面が樹脂クリップ本体の上下片の内面と同一高さとなることが好ましい。
【００１４】
前記のように、クリップ取付部の上壁の先端両側からストッパー片を突出させると共に、樹脂クリップ本体の上片の内面には、クリップ取付部を前進させたときに前記ストッパー片を係止させるためのストッパー係止面を段状に設けて、クリップ取付部の前進位置を固定している。これにより、Ｖ型金属クリップの上下傾斜片を確実に押し下げ、該上下傾斜片の内面から突設した上下の挟持片でブラケットの上下両面を確実に挟持することができる。
【００１５】
前記樹脂クリップ本体の上片のうち、前記ストッパー係止面を設けた段状部の側面に、前進させる前のクリップ取付部のストッパー片を収容しておくストッパー片収容部を凹設しておくことが好ましい。前記ストッパー片収容部に収容されたストッパー片はクリップ取付部の前進によって前方へ引き出され前記ストッパー係止面に係止されることが好ましい。
【００１６】
また、前記のように、樹脂クリップ本体の連結片にはクリップ取付部の上下壁を貫通させる開口を設け、さらに、前記開口を樹脂クリップ本体の上下片まで延在させていることが好ましい。特に、前記上下片の開口の長さ方向の中間位置で、仕切り片を開口の幅方向に設け、クリップ取付部の前進完了時には連結壁の上下端面と上下壁との間の段差部を仕切り片に当接させるようにすることが好ましい。これにより、クリップ取付部の過度な前進を防止することができる。また、クリップ取付部の上下壁外面の所要位置に突条部を幅方向に設け、クリップ取付部の動きに応じて前記突条部が前記仕切り片から前方の開口内のみ移動可能としてクリップ取付部の動きを規制できるようにしてもよい。例えば、クリップ取付部を前進させる前の状態でも前記突条部が前記仕切り片に当接することによって、これ以上後方にクリップ取付部を移動させることができない。よって、クリップ取付部の後方への脱落や紛失等を防止できる。
【００１７】
また、前記樹脂クリップ本体の上下片のブラケット差し込み開口先端に対向方向に突出する係止突起を設け、樹脂クリップ本体の中空部に組み付けるＶ型金属クリップの上下傾斜壁の先端を前記係止突起に突き当てていることが好ましい。これにより、Ｖ型金属クリップのブラケット差し込み開口方向への脱落を防止することができる。
【００１８】
前記Ｖ型金属クリップは、鉄系やステンレス系、アルミニウム系の金属から形成されることが好ましく、特に、鉄系の金属から形成されることが好ましい。
また、前記樹脂クリップ本体と、前記バンド型または基板型ワイヤハーネス取付部とは樹脂で一体成形されていることが好ましい。
さらに、前記樹脂クリップ本体に組み付ける前記クリップ取付部も樹脂で形成されることが好ましい。
【００１９】
また、第２の発明として、前記第１の発明のワイヤハーネス用クリップをワイヤハーネスに取り付け、該ワイヤハーネスの車両配索時に、前記ブラケットを前記Ｖ型金属クリップの上下傾斜片の間に差し込んで仮保持し、
前記ワイヤハーネス用クリップの前記クリップ取付部をブラケット側へと前進させて、前記Ｖ型金属クリップの上下傾斜片を押し下げ、該上下傾斜片から突設した前記挟持片で前記ブラケットの上下両面を挟持して本固定するワイヤハーネス用クリップの車体取付方法を提供している。
【００２０】
前記仮保持状態では、前記ワイヤハーネス用クリップを前記ブラケットに対して横移動させて取付位置の最終調整を行い、最終取付位置で、前記ワイヤハーネス用クリップの前記クリップ取付部をブラケット側へと前進させることが好ましい。
【発明の効果】
【００２１】
前述したように、本発明のワイヤハーネス用クリップでは、コ型の樹脂クリップ本体を設け、該樹脂クリップ本体の上下片に挟まれた中空部にＶ型金属クリップを組み付けると共に、該Ｖ型金属クリップの上下傾斜片の内面から逆Ｖ方向に傾斜した上下の挟持片を突設している。また、前記樹脂クリップ本体の上下片に移動可能に組み付けられるクリップ取付部を設け、該クリップ取付部を前進させることで、前記樹脂クリップ本体の中空部に組み付けた前記Ｖ型金属クリップの上下傾斜片を前記クリップ取付部が押し下げ、該上下傾斜片に突設した上下の挟持片の間隔を狭めてこれらの挟持力を高めている。
【００２２】
よって、ワイヤハーネス用クリップにワイヤハーネスを取り付け、該ワイヤハーネスを車両に配索する際に、前記クリップ取付部を前進させることなく、前記樹脂クリップ中空部に組み付けたＶ型金属クリップの上下傾斜片の間にブラケットを差し込むことで、ワイヤハーネス用クリップをブラケットに対して横移動可能な状態で仮保持することができる。よって、この段階で取付位置の最終調整を行うことができる。
【００２３】
前記取付位置の最終調整後、前記クリップ取付部をブラケット側に前進させるだけで、Ｖ型金属クリップの上下傾斜片が前記クリップ取付部で押し下げられ、押し下げられた上下傾斜片から突設した上下の挟持片で、ブラケットの上下両面を強固に挟持することができる。よって、前記最終調整したブラケットの適正な取付位置に、ワイヤハーネス用クリップを一度の取付作業で確実に本固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【００２４】
【図１】本実施形態のワイヤハーネス用クリップを示し、（Ａ）は概略斜視図、（Ｂ）はクリップ部の分解斜視図である。
【図２】ワイヤハーネスに取り付けたワイヤハーネス用クリップをブラケットに取り付ける直前の状態を示す概略斜視図である。
【図３】ブラケットをＶ型金属クリップの上下傾斜片の間に押し込んで仮保持した状態を示し、（Ａ）は概略側面図、（Ｂ）は樹脂クリップ本体の上片内面側を示す概略平面図である。
【図４】ワイヤハーネス用クリップをブラケットに本固定した状態を示し、（Ａ）は概略側面図、（Ｂ）は樹脂クリップ本体の上片内面側を示す概略平面図である。
【図５】本発明のワイヤハーネス用クリップの別の例を示す概略斜視図である。
【図６】従来例を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【００２５】
以下、本発明のワイヤハーネス用クリップの実施形態を図面を参照して説明する。
図１乃至図４に実施形態を示す。
実施形態のワイヤハーネス用クリップ１０は、図２に示すように、ワイヤハーネスＷ／Ｈの外周に巻き付けて固定するバンド型ワイヤハーネス取付部１１と、車体側の金属製または樹脂製の平板状のブラケット３０に取り付けるクリップ部１５とから構成している。
バンド型ワイヤハーネス取付部１１は、ワイヤハーネスＷ／Ｈの外周に巻き付けるバンド１２と、該バンド１２を締結固定するバンド締結部１３とから構成し、バンド１２をバンド締結部１３の一側面の下辺近傍位置から突設している。バンド締結部１３には、ワイヤハーネスＷ／Ｈに巻き付けたバンド１２をバンド締結部１３の他側面から一側面へと貫通させて係止するバンド係止穴１４を設け、該バンド係止穴１４の内面に設けた係止爪（図示せず）をバンド１２表面の鋸歯状の被係止溝１２ａに係止させることにより、バンド１２でワイヤハーネスＷ／Ｈを締め付け固定する構成としている。
【００２６】
一方、クリップ部１５は、図１に示すように、コ型の樹脂クリップ本体１６と、樹脂クリップ本体１６の上下片１６ａ、１６ｃに挟まれた中空部に組み付ける上下挟持片２１ａ、２１ｂを備えたＶ型金属クリップ２０（鉄系金属製）と、樹脂クリップ本体１６の上下片１６ａ、１６ｃに移動自在に組み付けるコ型のクリップ取付部２３とから構成している。
コ型の樹脂クリップ本体１６はバンド締結部１３の上面に突設した下片１６ｃと、上片１６ａと、上下片１６ａ、１６ｃを連結する連結片１６ｂとからなり、本実施形態では樹脂クリップ本体１６とバンド型ワイヤハーネス取付部１１とを樹脂で一体成形している。
【００２７】
樹脂クリップ本体１６の中空部に組み付けるＶ型金属クリップ２０は、上傾斜片２０ａと下傾斜片２０ｂとから構成し、上下の傾斜片２０ａ、２０ｂの内面から逆Ｖ方向、即ち、Ｖ字の開方向と逆方向に傾斜して突設する上下の挟持片２１ａ、２１ｂを突設している。本実施形態では、上下の挟持片２１ａ、２１ｂを先端が鋭角の三角形状とし、下傾斜片２０ｂのブラケット差し込み開口２２近傍の中央付近に１個の下挟持片２１ｂを逆Ｖ方向に切り起こして形成し、上傾斜片２０ａのブラケット差し込み開口２２近傍で前記下挟持片２１ｂを挟む左右両側に一対の上挟持片２１ａを逆Ｖ方向に切り起こして形成している。Ｖ型金属クリップ２０は樹脂クリップ本体１６の中空部に側方より組み付ける。
なお、本実施形態では、樹脂クリップ本体１６の上下片１６ａ、１６ｃのブラケット差し込み開口先端に対向方向に突出する係止突起１９を設け、樹脂クリップ本体１６の中空部に組み付けるＶ型金属クリップ２０の上下傾斜片２０ａ、２０ｂの先端を前記係止突起１９に突き当てている。また、Ｖ型金属クリップ２０の上下傾斜片２０ａ、２０ｂの間隔および該上下傾斜片２０ａ、２０ｂの内面から突設した上下の挟持片２１ａ、２１ｂの間隔は、ブラケット３０を差し込むことができ、かつブラケット３０に対してクリップ１０が横移動可能な状態で仮保持される程度の間隔としている。
【００２８】
クリップ取付部２３も樹脂製とし、上壁２３ａと、下壁２３ｃと、上下壁２３ａ、２３ｃを連結する連結壁２３ｂとから構成している。クリップ取付部２３は、連結壁２３ｂの上下端面２３ｂ−１、２３ｂ−２より上下壁２３ａ、２３ｃを段差２３ｄをつけて近接させて突出した形状としており、上壁２３ａの先端両側からストッパー片２４を突出させている。
クリップ取付部２３を組み付ける樹脂クリップ本体１６の連結片１６ｂには、クリップ取付部２３の上下壁２３ａ、２３ｃを貫通させる開口１７を設けている。該開口１７は樹脂クリップ本体１６の上下片１６ａ、１６ｃまで延在させ、上下片１６ａ、１６ｃの開口１７の長さ方向の中間位置で、仕切り片１８を開口１７の幅方向に設けている。クリップ取付部２３の前進完了時には連結壁２３ｂの段差部２３ｄを仕切り片１８に当接させるようにしている。これによりクリップ取付部２３の過度な前進を防止している。また、クリップ取付部２３の上下壁２３ａ、２３ｃの外面の所要位置に突条部２５を幅方向に設け、クリップ取付部２３の動きに応じて突条部２５が仕切り片１８から前方の開口１７ａ内のみ移動可能としてクリップ取付部２３の動きを規制している。例えば、クリップ取付部２３を前進させる前の状態でも突条部２５が仕切り片１８に当接することによって、これ以上後方にクリップ取付部２３を移動させることができず、クリップ取付部２３の後方への脱落や紛失等を防止できる。
【００２９】
なお、本実施形態では、クリップ取付部２３を樹脂クリップ本体１６に組み付けたとき、クリップ取付部２３の連結壁２３ｂの上下端面（２３ｂ−１、２３ｂ−２）が樹脂クリップ本体１６の上下片１６ａ、１６ｃの外面（１６ａ−１、１６ｃ−１）と同一高さとなり、クリップ取付部２３の上下壁２３ａ、２３ｃの外面（２３ａ−１、２３ｃ−１）が樹脂クリップ本体１６の上下片１６ａ、１６ｃの内面（１６ａ−２、１６ｃ−２）と同一高さとなるようにしている。
【００３０】
また、樹脂クリップ本体１６の上片１６ａの内面には、クリップ取付部２３を前進させたときにストッパー片２４を係止させるためのストッパー係止面１６ｄを段状に設けて、クリップ取付部２３の前進位置を固定している。
また、前記ストッパー係止面１６ｄを設けた段状部１６ｅの側面には、図３（Ｂ）、図４（Ｂ）に示すように、前進させる前のクリップ取付部２３のストッパー片２４を収容しておくストッパー片収容部１６ｆを凹設している。前記ストッパー片収容部１６ｆに収容されたストッパー片２４はクリップ取付部２３の前進によって前方へ引き出され、前記ストッパー係止面１６ｄに係止されるようにしている。
【００３１】
以下、本実施形態のワイヤハーネス用クリップ１０のブラケット３０への取付方法について説明する。
まず、ワイヤハーネスＷ／Ｈの外周にワイヤハーネス用クリップ１０のバンド１２を巻き付けて固定する。ワイヤハーネスＷ／Ｈの車両配索時には、クリップ取付部２３を前進させることなく樹脂クリップ本体１６の中空部に組み付けたＶ型金属クリップ２０の上下傾斜片２０ａ、２０ｂの間にブラケット３０を差し込む。これにより、ワイヤハーネス用クリップ１０をブラケット３０に対して横移動可能な状態で仮保持することができ、この段階で取付位置の最終調整を行うことができる［図３（Ａ）］。
【００３２】
前記取付位置の最終調整後、クリップ取付部２３をブラケット３０側に前進させるだけで、Ｖ型金属クリップ２０の上下傾斜片２０ａ、２０ｂがクリップ取付部２３で押し下げられ、押し下げられた上下傾斜片２０ａ、２０ｂの内面から突設した上下の挟持片２１ａ、２１ｂで、ブラケット３０の上下両面を強固に挟持することができる［図４（Ａ）］。よって、前記最終調整したブラケット３０の適正な取付位置に、ワイヤハーネス用クリップ１０を一度の取付作業で確実に本固定することができる。
【００３３】
なお、本発明のワイヤハーネス用クリップは、本実施形態のようにバンド１２をワイヤハーネスＷ／Ｈに巻き付けて固定するバンド型ワイヤハーネス取付部１１を備えたワイヤハーネス用クリップ１０に限定されるものでなく、図５に示すような、ワイヤハーネスＷ／Ｈに粘着テープＴで巻き付ける基板型ワイヤハーネス取付部１１０を備え、この中間部の表面に樹脂クリップ本体１６０を突設したワイヤハーネス用クリップ１００であってもよい。
【符号の説明】
【００３４】
１０、１００ ワイヤハーネス用クリップ
１１ バンド型ワイヤハーネス取付部
１２ バンド
１３ バンド締結部
１６ 樹脂クリップ本体
１６ａ 上片
１６ｂ 連結片
１６ｃ 下片
１６ｄ ストッパー係止面
１７ 開口
２０ Ｖ型金属クリップ
２０ａ 上傾斜片
２０ｂ 下傾斜片
２１ａ 上挟持片
２１ｂ 下挟持片
２３ クリップ取付部
２３ａ 上壁
２３ｂ 連結壁
２３ｃ 下壁
２３ｄ 段差
２４ ストッパー片
１１０ 基板型ワイヤハーネス取付部
【技術分野】
【０００１】
本発明はワイヤハーネス用クリップおよびワイヤハーネス用クリップの車体取付方法に関し、詳しくは、車体側のブラケットの適正位置にワイヤハーネス用クリップを取り付けるものである。
【背景技術】
【０００２】
車体側の金属製または樹脂製のブラケットに取り付けられるワイヤハーネス用クリップとして、図６に示すように、ブラケット６に挟着されるＣ型の樹脂クリップ３と、該樹脂クリップ３に連結されワイヤハーネス（図示せず）に取り付けられるワイヤハーネス取付部２とからなるクリップ１が提案されている［特開平７−９９７１９号公報（特許文献１）参照］。
【０００３】
前記樹脂クリップ３の内面には、該内面と同形状のＣ型の金属クリップ４が取り付けられ、該金属クリップ４の屈曲部４ｂを挟む上下片４ｃ、４ａには、爪５が金属クリップ４の中空部に向けて切り起こされている。よって、ブラケット６を金属クリップ４の上下片４ｃ、４ａ間に押し込むと前記爪５がブラケット６の上下両面を挟持して、クリップ１がブラケット６に固定される構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００４】
【特許文献１】特開平７−９９７１９号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
前記ワイヤハーネス用クリップ１は、ワイヤハーネスと他のブラケットとの取付位置やワイヤハーネス端末のコネクタ接続位置も考慮したブラケット６の適正位置に取り付けられる必要がある。しかし、前記構成のクリップ１では、一旦ブラケット６を金属クリップ４内に押し込むと、ブラケット６の上下両面が爪５に挟持されてクリップ１がブラケット６に固定されてしまうため、取付位置が適正でなかった場合に取付位置の変更が難しいという問題がある。
【０００６】
本発明は、車体側のブラケットの適正な取付位置にワイヤハーネス用クリップを一度の取付作業で確実に固定できることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
前記課題を解決するため、第１の発明は、バンドをワイヤハーネスに巻き付けて固定するバンド型ワイヤハーネス取付部またはワイヤハーネスに粘着テープで巻き付ける基板型ワイヤハーネス取付部と、
前記バンド型ワイヤハーネス取付部のバンド締結部の外面または前記基板型ワイヤハーネス取付部の基板の中間部の表面に突設したコ型の樹脂クリップ本体と、
前記樹脂クリップ本体の上下片に移動自在に組み付けるコ型のクリップ取付部と、
前記樹脂クリップ本体の上下片に挟まれた中空部に組み付けられるＶ型金属クリップと、
前記Ｖ型金属クリップの上下傾斜片の内面から逆Ｖ字方向に傾斜して突設した上下の挟持片を備え、
車体側の平板状のブラケットを前記Ｖ型金属クリップの上下傾斜片の間に差し込んだ状態で前記クリップ取付部を前記ブラケット側に前進させると、前記クリップ取付部の上下壁で前記Ｖ型金属クリップの上下傾斜片を押し下げ、該上下傾斜片から突設した前記挟持片で前記ブラケットの上下両面を挟持する構成としているワイヤハーネス用クリップを提供している。
【０００８】
前記のように、本発明のワイヤハーネス用クリップには、コ型の樹脂クリップ本体を設け、該樹脂クリップ本体の上下片に挟まれた中空部にＶ型金属クリップを組み付けると共に、該Ｖ型金属クリップの上下傾斜片の内面から逆Ｖ方向、即ち、Ｖ字の開方向と逆方向に傾斜した上下の挟持片を突設している。また、前記樹脂クリップ本体の上下片に移動可能に組み付けられるコ型のクリップ取付部を設け、該クリップ取付部をブラケット側に前進させることで、前記樹脂クリップ本体の中空部に組み付けた前記Ｖ型金属クリップの上下傾斜片を前記クリップ取付部が押し下げる構成としている。即ち、前記上下傾斜片を押し下げることによって前記上下傾斜片に突設した上下の挟持片の間隔を狭めてこれらの挟持力を高めている。
【０００９】
前記構成により、ワイヤハーネス用クリップを車体側のブラケットに取り付ける際に、まず、前記クリップ取付部を前進させることなく、前記樹脂クリップ本体の中空部に組み付けたＶ型金属クリップの上下傾斜片の間にブラケットを差し込むことで、ワイヤハーネス用クリップをブラケットに対して横移動可能な状態で仮保持することができる。よって、この段階で取付位置の最終調整を行うことができる。
なお、Ｖ型金属クリップの上下傾斜片の間隔および該上下傾斜片の内面から突設した上下の挟持片の間隔としては、ブラケットを差し込むことができ、かつブラケットに対してクリップが横移動可能な状態で仮保持される程度の間隔が必要である。
【００１０】
前記取付位置の最終調整後、樹脂クリップ本体の上下片に前記クリップ取付部をブラケット側に前進させるだけで、Ｖ型金属クリップの上下傾斜片が前記クリップ取付部で押し下げられ、押し下げられた前記上下傾斜片の内面から突設した上下の挟持片で、ブラケットの上下両面を強固に挟持することができる。よって、前記最終調整したブラケットの適正な取付位置に、ワイヤハーネス用クリップを一度の取付作業で確実に固定することができる。
【００１１】
前記Ｖ型金属クリップの上下傾斜片の内面から逆Ｖ方向に傾斜して突設する上下の挟持片は、上下対向して設けてもよいが、上下互い違いに設けてもよい。例えば、下傾斜片のブラケット差し込み開口近傍の中央付近に１個の下挟持片を逆Ｖ方向に切り起こして形成し、上傾斜片のブラケット差し込み開口近傍で前記下挟持片を挟む左右両側に一対の上挟持片を逆Ｖ方向に切り起こして形成してもよい。前記上下の挟持片の形状は、先端が鋭角の三角形状とすることが好ましい。
【００１２】
前記クリップ取付部は前記上下壁と連結壁とからなり、上壁の先端両側よりストッパー片を突出させており、
前記樹脂クリップ本体は上記上下片と連結片とからなり、該連結片は前記クリップ取付部の上下壁を貫通させる開口を有すると共に、上片の内面にストッパー係止面を段状に設けており、該クリップ取付部の前進時に前記ストッパー片がストッパー係止面に係止して前進位置を固定する構成としていることが好ましい。
【００１３】
また、クリップ取付部の上下壁を連結壁の上下端より段差をつけて近接させることが好ましい。これにより、クリップ取付部を前進させたときに、前記近接させた上下壁でＶ型金属クリップの上下傾斜片を挟みこんでこれらを効果的に押し下げることができる。
前記クリップ取付部を前記樹脂クリップ本体に組み付けたとき、前記クリップ取付部の連結壁の上下端面が樹脂クリップ本体の上下片の外面と同一高さとなり、前記クリップ取付部の上下壁の外面が樹脂クリップ本体の上下片の内面と同一高さとなることが好ましい。
【００１４】
前記のように、クリップ取付部の上壁の先端両側からストッパー片を突出させると共に、樹脂クリップ本体の上片の内面には、クリップ取付部を前進させたときに前記ストッパー片を係止させるためのストッパー係止面を段状に設けて、クリップ取付部の前進位置を固定している。これにより、Ｖ型金属クリップの上下傾斜片を確実に押し下げ、該上下傾斜片の内面から突設した上下の挟持片でブラケットの上下両面を確実に挟持することができる。
【００１５】
前記樹脂クリップ本体の上片のうち、前記ストッパー係止面を設けた段状部の側面に、前進させる前のクリップ取付部のストッパー片を収容しておくストッパー片収容部を凹設しておくことが好ましい。前記ストッパー片収容部に収容されたストッパー片はクリップ取付部の前進によって前方へ引き出され前記ストッパー係止面に係止されることが好ましい。
【００１６】
また、前記のように、樹脂クリップ本体の連結片にはクリップ取付部の上下壁を貫通させる開口を設け、さらに、前記開口を樹脂クリップ本体の上下片まで延在させていることが好ましい。特に、前記上下片の開口の長さ方向の中間位置で、仕切り片を開口の幅方向に設け、クリップ取付部の前進完了時には連結壁の上下端面と上下壁との間の段差部を仕切り片に当接させるようにすることが好ましい。これにより、クリップ取付部の過度な前進を防止することができる。また、クリップ取付部の上下壁外面の所要位置に突条部を幅方向に設け、クリップ取付部の動きに応じて前記突条部が前記仕切り片から前方の開口内のみ移動可能としてクリップ取付部の動きを規制できるようにしてもよい。例えば、クリップ取付部を前進させる前の状態でも前記突条部が前記仕切り片に当接することによって、これ以上後方にクリップ取付部を移動させることができない。よって、クリップ取付部の後方への脱落や紛失等を防止できる。
【００１７】
また、前記樹脂クリップ本体の上下片のブラケット差し込み開口先端に対向方向に突出する係止突起を設け、樹脂クリップ本体の中空部に組み付けるＶ型金属クリップの上下傾斜壁の先端を前記係止突起に突き当てていることが好ましい。これにより、Ｖ型金属クリップのブラケット差し込み開口方向への脱落を防止することができる。
【００１８】
前記Ｖ型金属クリップは、鉄系やステンレス系、アルミニウム系の金属から形成されることが好ましく、特に、鉄系の金属から形成されることが好ましい。
また、前記樹脂クリップ本体と、前記バンド型または基板型ワイヤハーネス取付部とは樹脂で一体成形されていることが好ましい。
さらに、前記樹脂クリップ本体に組み付ける前記クリップ取付部も樹脂で形成されることが好ましい。
【００１９】
また、第２の発明として、前記第１の発明のワイヤハーネス用クリップをワイヤハーネスに取り付け、該ワイヤハーネスの車両配索時に、前記ブラケットを前記Ｖ型金属クリップの上下傾斜片の間に差し込んで仮保持し、
前記ワイヤハーネス用クリップの前記クリップ取付部をブラケット側へと前進させて、前記Ｖ型金属クリップの上下傾斜片を押し下げ、該上下傾斜片から突設した前記挟持片で前記ブラケットの上下両面を挟持して本固定するワイヤハーネス用クリップの車体取付方法を提供している。
【００２０】
前記仮保持状態では、前記ワイヤハーネス用クリップを前記ブラケットに対して横移動させて取付位置の最終調整を行い、最終取付位置で、前記ワイヤハーネス用クリップの前記クリップ取付部をブラケット側へと前進させることが好ましい。
【発明の効果】
【００２１】
前述したように、本発明のワイヤハーネス用クリップでは、コ型の樹脂クリップ本体を設け、該樹脂クリップ本体の上下片に挟まれた中空部にＶ型金属クリップを組み付けると共に、該Ｖ型金属クリップの上下傾斜片の内面から逆Ｖ方向に傾斜した上下の挟持片を突設している。また、前記樹脂クリップ本体の上下片に移動可能に組み付けられるクリップ取付部を設け、該クリップ取付部を前進させることで、前記樹脂クリップ本体の中空部に組み付けた前記Ｖ型金属クリップの上下傾斜片を前記クリップ取付部が押し下げ、該上下傾斜片に突設した上下の挟持片の間隔を狭めてこれらの挟持力を高めている。
【００２２】
よって、ワイヤハーネス用クリップにワイヤハーネスを取り付け、該ワイヤハーネスを車両に配索する際に、前記クリップ取付部を前進させることなく、前記樹脂クリップ中空部に組み付けたＶ型金属クリップの上下傾斜片の間にブラケットを差し込むことで、ワイヤハーネス用クリップをブラケットに対して横移動可能な状態で仮保持することができる。よって、この段階で取付位置の最終調整を行うことができる。
【００２３】
前記取付位置の最終調整後、前記クリップ取付部をブラケット側に前進させるだけで、Ｖ型金属クリップの上下傾斜片が前記クリップ取付部で押し下げられ、押し下げられた上下傾斜片から突設した上下の挟持片で、ブラケットの上下両面を強固に挟持することができる。よって、前記最終調整したブラケットの適正な取付位置に、ワイヤハーネス用クリップを一度の取付作業で確実に本固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【００２４】
【図１】本実施形態のワイヤハーネス用クリップを示し、（Ａ）は概略斜視図、（Ｂ）はクリップ部の分解斜視図である。
【図２】ワイヤハーネスに取り付けたワイヤハーネス用クリップをブラケットに取り付ける直前の状態を示す概略斜視図である。
【図３】ブラケットをＶ型金属クリップの上下傾斜片の間に押し込んで仮保持した状態を示し、（Ａ）は概略側面図、（Ｂ）は樹脂クリップ本体の上片内面側を示す概略平面図である。
【図４】ワイヤハーネス用クリップをブラケットに本固定した状態を示し、（Ａ）は概略側面図、（Ｂ）は樹脂クリップ本体の上片内面側を示す概略平面図である。
【図５】本発明のワイヤハーネス用クリップの別の例を示す概略斜視図である。
【図６】従来例を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【００２５】
以下、本発明のワイヤハーネス用クリップの実施形態を図面を参照して説明する。
図１乃至図４に実施形態を示す。
実施形態のワイヤハーネス用クリップ１０は、図２に示すように、ワイヤハーネスＷ／Ｈの外周に巻き付けて固定するバンド型ワイヤハーネス取付部１１と、車体側の金属製または樹脂製の平板状のブラケット３０に取り付けるクリップ部１５とから構成している。
バンド型ワイヤハーネス取付部１１は、ワイヤハーネスＷ／Ｈの外周に巻き付けるバンド１２と、該バンド１２を締結固定するバンド締結部１３とから構成し、バンド１２をバンド締結部１３の一側面の下辺近傍位置から突設している。バンド締結部１３には、ワイヤハーネスＷ／Ｈに巻き付けたバンド１２をバンド締結部１３の他側面から一側面へと貫通させて係止するバンド係止穴１４を設け、該バンド係止穴１４の内面に設けた係止爪（図示せず）をバンド１２表面の鋸歯状の被係止溝１２ａに係止させることにより、バンド１２でワイヤハーネスＷ／Ｈを締め付け固定する構成としている。
【００２６】
一方、クリップ部１５は、図１に示すように、コ型の樹脂クリップ本体１６と、樹脂クリップ本体１６の上下片１６ａ、１６ｃに挟まれた中空部に組み付ける上下挟持片２１ａ、２１ｂを備えたＶ型金属クリップ２０（鉄系金属製）と、樹脂クリップ本体１６の上下片１６ａ、１６ｃに移動自在に組み付けるコ型のクリップ取付部２３とから構成している。
コ型の樹脂クリップ本体１６はバンド締結部１３の上面に突設した下片１６ｃと、上片１６ａと、上下片１６ａ、１６ｃを連結する連結片１６ｂとからなり、本実施形態では樹脂クリップ本体１６とバンド型ワイヤハーネス取付部１１とを樹脂で一体成形している。
【００２７】
樹脂クリップ本体１６の中空部に組み付けるＶ型金属クリップ２０は、上傾斜片２０ａと下傾斜片２０ｂとから構成し、上下の傾斜片２０ａ、２０ｂの内面から逆Ｖ方向、即ち、Ｖ字の開方向と逆方向に傾斜して突設する上下の挟持片２１ａ、２１ｂを突設している。本実施形態では、上下の挟持片２１ａ、２１ｂを先端が鋭角の三角形状とし、下傾斜片２０ｂのブラケット差し込み開口２２近傍の中央付近に１個の下挟持片２１ｂを逆Ｖ方向に切り起こして形成し、上傾斜片２０ａのブラケット差し込み開口２２近傍で前記下挟持片２１ｂを挟む左右両側に一対の上挟持片２１ａを逆Ｖ方向に切り起こして形成している。Ｖ型金属クリップ２０は樹脂クリップ本体１６の中空部に側方より組み付ける。
なお、本実施形態では、樹脂クリップ本体１６の上下片１６ａ、１６ｃのブラケット差し込み開口先端に対向方向に突出する係止突起１９を設け、樹脂クリップ本体１６の中空部に組み付けるＶ型金属クリップ２０の上下傾斜片２０ａ、２０ｂの先端を前記係止突起１９に突き当てている。また、Ｖ型金属クリップ２０の上下傾斜片２０ａ、２０ｂの間隔および該上下傾斜片２０ａ、２０ｂの内面から突設した上下の挟持片２１ａ、２１ｂの間隔は、ブラケット３０を差し込むことができ、かつブラケット３０に対してクリップ１０が横移動可能な状態で仮保持される程度の間隔としている。
【００２８】
クリップ取付部２３も樹脂製とし、上壁２３ａと、下壁２３ｃと、上下壁２３ａ、２３ｃを連結する連結壁２３ｂとから構成している。クリップ取付部２３は、連結壁２３ｂの上下端面２３ｂ−１、２３ｂ−２より上下壁２３ａ、２３ｃを段差２３ｄをつけて近接させて突出した形状としており、上壁２３ａの先端両側からストッパー片２４を突出させている。
クリップ取付部２３を組み付ける樹脂クリップ本体１６の連結片１６ｂには、クリップ取付部２３の上下壁２３ａ、２３ｃを貫通させる開口１７を設けている。該開口１７は樹脂クリップ本体１６の上下片１６ａ、１６ｃまで延在させ、上下片１６ａ、１６ｃの開口１７の長さ方向の中間位置で、仕切り片１８を開口１７の幅方向に設けている。クリップ取付部２３の前進完了時には連結壁２３ｂの段差部２３ｄを仕切り片１８に当接させるようにしている。これによりクリップ取付部２３の過度な前進を防止している。また、クリップ取付部２３の上下壁２３ａ、２３ｃの外面の所要位置に突条部２５を幅方向に設け、クリップ取付部２３の動きに応じて突条部２５が仕切り片１８から前方の開口１７ａ内のみ移動可能としてクリップ取付部２３の動きを規制している。例えば、クリップ取付部２３を前進させる前の状態でも突条部２５が仕切り片１８に当接することによって、これ以上後方にクリップ取付部２３を移動させることができず、クリップ取付部２３の後方への脱落や紛失等を防止できる。
【００２９】
なお、本実施形態では、クリップ取付部２３を樹脂クリップ本体１６に組み付けたとき、クリップ取付部２３の連結壁２３ｂの上下端面（２３ｂ−１、２３ｂ−２）が樹脂クリップ本体１６の上下片１６ａ、１６ｃの外面（１６ａ−１、１６ｃ−１）と同一高さとなり、クリップ取付部２３の上下壁２３ａ、２３ｃの外面（２３ａ−１、２３ｃ−１）が樹脂クリップ本体１６の上下片１６ａ、１６ｃの内面（１６ａ−２、１６ｃ−２）と同一高さとなるようにしている。
【００３０】
また、樹脂クリップ本体１６の上片１６ａの内面には、クリップ取付部２３を前進させたときにストッパー片２４を係止させるためのストッパー係止面１６ｄを段状に設けて、クリップ取付部２３の前進位置を固定している。
また、前記ストッパー係止面１６ｄを設けた段状部１６ｅの側面には、図３（Ｂ）、図４（Ｂ）に示すように、前進させる前のクリップ取付部２３のストッパー片２４を収容しておくストッパー片収容部１６ｆを凹設している。前記ストッパー片収容部１６ｆに収容されたストッパー片２４はクリップ取付部２３の前進によって前方へ引き出され、前記ストッパー係止面１６ｄに係止されるようにしている。
【００３１】
以下、本実施形態のワイヤハーネス用クリップ１０のブラケット３０への取付方法について説明する。
まず、ワイヤハーネスＷ／Ｈの外周にワイヤハーネス用クリップ１０のバンド１２を巻き付けて固定する。ワイヤハーネスＷ／Ｈの車両配索時には、クリップ取付部２３を前進させることなく樹脂クリップ本体１６の中空部に組み付けたＶ型金属クリップ２０の上下傾斜片２０ａ、２０ｂの間にブラケット３０を差し込む。これにより、ワイヤハーネス用クリップ１０をブラケット３０に対して横移動可能な状態で仮保持することができ、この段階で取付位置の最終調整を行うことができる［図３（Ａ）］。
【００３２】
前記取付位置の最終調整後、クリップ取付部２３をブラケット３０側に前進させるだけで、Ｖ型金属クリップ２０の上下傾斜片２０ａ、２０ｂがクリップ取付部２３で押し下げられ、押し下げられた上下傾斜片２０ａ、２０ｂの内面から突設した上下の挟持片２１ａ、２１ｂで、ブラケット３０の上下両面を強固に挟持することができる［図４（Ａ）］。よって、前記最終調整したブラケット３０の適正な取付位置に、ワイヤハーネス用クリップ１０を一度の取付作業で確実に本固定することができる。
【００３３】
なお、本発明のワイヤハーネス用クリップは、本実施形態のようにバンド１２をワイヤハーネスＷ／Ｈに巻き付けて固定するバンド型ワイヤハーネス取付部１１を備えたワイヤハーネス用クリップ１０に限定されるものでなく、図５に示すような、ワイヤハーネスＷ／Ｈに粘着テープＴで巻き付ける基板型ワイヤハーネス取付部１１０を備え、この中間部の表面に樹脂クリップ本体１６０を突設したワイヤハーネス用クリップ１００であってもよい。
【符号の説明】
【００３４】
１０、１００ ワイヤハーネス用クリップ
１１ バンド型ワイヤハーネス取付部
１２ バンド
１３ バンド締結部
１６ 樹脂クリップ本体
１６ａ 上片
１６ｂ 連結片
１６ｃ 下片
１６ｄ ストッパー係止面
１７ 開口
２０ Ｖ型金属クリップ
２０ａ 上傾斜片
２０ｂ 下傾斜片
２１ａ 上挟持片
２１ｂ 下挟持片
２３ クリップ取付部
２３ａ 上壁
２３ｂ 連結壁
２３ｃ 下壁
２３ｄ 段差
２４ ストッパー片
１１０ 基板型ワイヤハーネス取付部
【特許請求の範囲】
【請求項１】
バンドをワイヤハーネスに巻き付けて固定するバンド型ワイヤハーネス取付部またはワイヤハーネスに粘着テープで巻き付ける基板型ワイヤハーネス取付部と、
前記バンド型ワイヤハーネス取付部のバンド締結部の外面または前記基板型ワイヤハーネス取付部の基板の中間部の表面に突設したコ型の樹脂クリップ本体と、
前記樹脂クリップ本体の上下片に移動自在に組み付けるコ型のクリップ取付部と、
前記樹脂クリップ本体の上下片に挟まれた中空部に組み付けられるＶ型金属クリップと、
前記Ｖ型金属クリップの上下傾斜片の内面から逆Ｖ字方向に傾斜して突設した上下の挟持片を備え、
車体側の平板状のブラケットを前記Ｖ型金属クリップの上下傾斜片の間に差し込んだ状態で前記クリップ取付部を前記ブラケット側に前進させると、前記クリップ取付部の上下壁で前記Ｖ型金属クリップの上下傾斜片を押し下げ、該上下傾斜片から突設した前記挟持片で前記ブラケットの上下両面を挟持する構成としているワイヤハーネス用クリップ。
【請求項２】
前記クリップ取付部は前記上下壁と連結壁とからなり、上壁の先端両側よりストッパー片を突出させており、
前記樹脂クリップ本体は前記上下片と連結片とからなり、該連結片は前記クリップ取付部の上下壁を貫通させる開口を有すると共に、上片の内面にストッパー係止面を段状に設けており、該クリップ取付部の前進時に前記ストッパー片がストッパー係止面に係止して前進位置を固定する構成としている請求項１に記載のワイヤハーネス用クリップ。
【請求項３】
請求項１または請求項２に記載のワイヤハーネス用クリップをワイヤハーネスに取り付け、該ワイヤハーネスの車両配索時に、前記ブラケットを前記Ｖ型金属クリップの上下傾斜片の間に差し込んで仮保持し、
前記ワイヤハーネス用クリップの前記クリップ取付部をブラケット側へと前進させて、前記Ｖ型金属クリップの上下傾斜片を押し下げ、該上下傾斜片から突設した前記挟持片で前記ブラケットの上下両面を挟持して本固定するワイヤハーネス用クリップの車体取付方法。
【請求項４】
前記仮保持状態で前記ワイヤハーネス用クリップを前記ブラケットに対して横移動させて取付位置の最終調整を行い、最終取付位置で、前記ワイヤハーネス用クリップの前記クリップ取付部をブラケット側へと前進させている請求項３に記載のワイヤハーネス用クリップの車体取付方法。
【請求項１】
バンドをワイヤハーネスに巻き付けて固定するバンド型ワイヤハーネス取付部またはワイヤハーネスに粘着テープで巻き付ける基板型ワイヤハーネス取付部と、
前記バンド型ワイヤハーネス取付部のバンド締結部の外面または前記基板型ワイヤハーネス取付部の基板の中間部の表面に突設したコ型の樹脂クリップ本体と、
前記樹脂クリップ本体の上下片に移動自在に組み付けるコ型のクリップ取付部と、
前記樹脂クリップ本体の上下片に挟まれた中空部に組み付けられるＶ型金属クリップと、
前記Ｖ型金属クリップの上下傾斜片の内面から逆Ｖ字方向に傾斜して突設した上下の挟持片を備え、
車体側の平板状のブラケットを前記Ｖ型金属クリップの上下傾斜片の間に差し込んだ状態で前記クリップ取付部を前記ブラケット側に前進させると、前記クリップ取付部の上下壁で前記Ｖ型金属クリップの上下傾斜片を押し下げ、該上下傾斜片から突設した前記挟持片で前記ブラケットの上下両面を挟持する構成としているワイヤハーネス用クリップ。
【請求項２】
前記クリップ取付部は前記上下壁と連結壁とからなり、上壁の先端両側よりストッパー片を突出させており、
前記樹脂クリップ本体は前記上下片と連結片とからなり、該連結片は前記クリップ取付部の上下壁を貫通させる開口を有すると共に、上片の内面にストッパー係止面を段状に設けており、該クリップ取付部の前進時に前記ストッパー片がストッパー係止面に係止して前進位置を固定する構成としている請求項１に記載のワイヤハーネス用クリップ。
【請求項３】
請求項１または請求項２に記載のワイヤハーネス用クリップをワイヤハーネスに取り付け、該ワイヤハーネスの車両配索時に、前記ブラケットを前記Ｖ型金属クリップの上下傾斜片の間に差し込んで仮保持し、
前記ワイヤハーネス用クリップの前記クリップ取付部をブラケット側へと前進させて、前記Ｖ型金属クリップの上下傾斜片を押し下げ、該上下傾斜片から突設した前記挟持片で前記ブラケットの上下両面を挟持して本固定するワイヤハーネス用クリップの車体取付方法。
【請求項４】
前記仮保持状態で前記ワイヤハーネス用クリップを前記ブラケットに対して横移動させて取付位置の最終調整を行い、最終取付位置で、前記ワイヤハーネス用クリップの前記クリップ取付部をブラケット側へと前進させている請求項３に記載のワイヤハーネス用クリップの車体取付方法。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【公開番号】特開２０１２−５５０７３（Ｐ２０１２−５５０７３Ａ）
【公開日】平成２４年３月１５日（２０１２．３．１５）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２０１０−１９４９６８（Ｐ２０１０−１９４９６８）
【出願日】平成２２年８月３１日（２０１０．８．３１）
【出願人】（０００１８３４０６）住友電装株式会社 (6,135)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２４年３月１５日（２０１２．３．１５）
【国際特許分類】
【出願日】平成２２年８月３１日（２０１０．８．３１）
【出願人】（０００１８３４０６）住友電装株式会社 (6,135)
【Ｆターム（参考）】
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