説明

一軸破砕機の運転制御方法及び装置

【課題】一軸破砕機において、被破砕物の状況に応じてより大きな処理速度を得るようにロータ回転速度の制御を行う高効率運転の方法と装置を提供する。
【解決手段】本発明の一軸破砕機の運転制御方法は、多数の刃13を外周に取り付けて回転するロータ1に、例えば油圧シリンダ5で駆動されるプッシャ3で、被破砕物11を供給して破砕する一軸破砕機において、ロータ1の負荷についてあらかじめ決められた閾値で仕切られた領域におけるロータ1の速度の設定値をあらかじめ格納する工程と、ロータ1の負荷を推定する工程と、推定したロータ1の負荷が閾値で仕切られた領域のいずれに属するか判定する工程と、ロータ1の速度がロータの負荷に応じた前記設定値に一致するように同期電動機の速度を調整する工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転するロータに取り付けた回転刃と筐体に固定した固定刃の間に被破砕物を供給して破砕する一軸破砕機における、ロータの運転制御方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一軸破砕機は、廃棄物や生産残留物を細断・破砕して最終廃棄物を減容したり分別しやすくしたりするためなどに使用されている。被破砕物として、例えば、紙、木材、布、プラスチック、ゴム等の混合物や、これらに金属片等が混入した状態の廃棄物を対象とする。これらの被破砕物は、圧縮された塊状や、フレコンバック等に装荷された状態で搬入され、一軸破砕機に投入される。
【0003】
一軸破砕機は、被破砕物を収納するホッパー、ホッパーの底部に設けた開口に仕組まれたロータ、ロータに取り付けられた回転刃と筐体に固定された固定刃、被破砕物をロータに押し付けるプッシャ、ロータおよびプッシャを駆動する電気モータ、電力装置、制御装置等からなる。被破砕物は、プッシャによりロータに押し付けられ、回転刃と固定刃の間で切削、せん断されて細かく破砕される。
なお、プッシャを備えず、被破砕物の自重でロータに供給されるようにしたものもある。
【0004】
従来、一軸破砕機の制御は、取り扱う被破砕物について試運転をしてロータが過負荷にならないような条件を見出し、これに従って装置の運転条件を設定して運転するようにしてきた。そして、ロータの負荷が大きくなる場合は、プッシャによる被破砕物の押し付け速度を抑制し、回転刃と固定刃で形成される破砕部にその処理能力を超える量の被破砕物が供給されないよう制御していた。
【0005】
また、破砕処理能率を上げるため、例えば、プッシャの移動範囲を後退限と中間点の間および中間点と前進限の間の2つの領域に分けて、後退限から中間点までの間はプッシャを高速前進させ、中間点を通過してから前進限までの間はプッシャを低速で前進させるように、2段階式に切り替える制御などが採用されていた。なお、プッシャがない一軸破砕機では、過負荷にならないように、コンベヤ速度を調整するなど、破砕機への投入量を制限する工夫がなされていた。
【0006】
しかし、ロータの回転速度は一軸破砕機に投入される原料のうち最も負荷の掛かる破砕条件に合わせて低い速度に決める必要があるので、破砕しやすい原料を処理するときには機械の能力を十分発揮させることができず、全体的には効率の低い運転条件に設定せざるを得なかった。
【0007】
また、従来の制御方法による一軸破砕機の運転では、処理できない金属片等の異物がロータに供給されたり被破砕物の供給量が過剰になったりするとロータ負荷が過剰になり、破砕刃、動力系、駆動軸、筐体などに損傷を与えるおそれがあった。そのため、負荷量が一定の閾値を超えると、装置の保護のためにロータを停止し、逆転運転して異物を放出している。その後、停止−正転の順に運転して正常稼働状態に復帰する。
【0008】
この間は破砕作業が行われず、また正常復帰に掛かる時間も短くはないため、逆転運転の頻度が上がると作業効率が低下する。そこで、ロータ定格値の80%など、負荷量が適当な閾値を超えたときには、プッシャを一旦停止させたり一時的に後退させたりして、被破砕物の過剰供給を防止しながら破砕処理を継続し、ロータ負荷が減少した後に改めてプッシャを前進させる手順を用いる場合もある。
【0009】
図6は、従来の一軸破砕機の運転例について本願発明者等が測定したロータ駆動電流の変動状況を示すグラフである。グラフは、横軸に時間経過をとり縦軸に電流をとって、ロータを駆動する電動機の駆動電流の変化をプロットしている。
多数の破砕刃を外周に設けたロータとプッシャの間に被破砕物を挟み込んでプッシャを前進させると、一軸破砕機はロータに押し付けられた被破砕物を破砕する。ロータの駆動電流は破砕負荷に対応するので、ロータ電流値から負荷量を推測することができる。
【0010】
図6に示した運転例の初めの破砕作業では、プッシャを後退限位置から前進させると、ロータに押し付けられる被破砕物の量が増加していってロータ負荷が徐々に増大する。ロータ負荷の増大に伴いロータ電動機の電流値があらかじめ決めた上限閾値に達すると、プッシャを停止させて押し付け圧をゼロとし、ロータの負荷を解消させる。電流値が先の上限閾値より小さくなってからある時間待って、再びプッシャを前進させて、ロータの破砕刃による破砕作業を再開する。
【0011】
プッシャは、挟み込んだ被破砕物があらかた処理されて前進限に達した後に、後退限まで後退してホッパーからロータとプッシャの間に落下した被破砕物を挟み込んで、再びロータに向かって前進して破砕部に被破砕物を供給する。このように、被破砕物の挟み込み、ロータへの押し付け、破砕を繰り返して、ホッパー内の被破砕物を処理する。
【0012】
ロータ電動機の電流値またはプッシャ作動油圧で検出する負荷が、危険水準としてあらかじめ設定された上上限閾値(HH)に達したときは、ロータを停止し、逆転させて負荷を逃がした後に再度正転させる。
これらの動作は、いわゆるシーケンサ(PLC:プログラマブルロジックコントローラ)により自動的に行わせることができる。
【0013】
特許文献1には、一軸破砕機におけるロータとプッシャについて、タイマーを適宜利用してプッシャの前進後退の繰り返しを行う制御、被破砕物がスタックしたときにロータを逆転させて被破砕物を押し付けることにより被破砕物の姿勢を変化させて破砕可能にする制御、ロータ用モータの電流値から負荷を検出し閾値と比較して判定した過負荷状態に適合する措置を執るための制御などが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2004−057996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従来の一軸破砕機では、ロータの回転速度が、扱う被破砕物のうちで破砕負荷が最も大きいものに合わせて低い速度に決められているため、負荷の軽いものを処理する場合には装置能力を十分活用せず、作業効率が低い水準に制限される。
また、ロータが異物を噛み込んだときには、ロータを一時停止し、逆転して噛み込みを解消し異物を放出してから、再度ロータを正転させる。しかしロータの負荷が小さい場合には逆転するまでもないため、この放出処理を行う時間は、被破砕物の破砕効率の点からは無駄な時間となる場合がある。
これらの理由から、従来方法ではロータの性能に対して総合的な効率が低く、破砕処理における一軸破砕機の平均負荷率は、例えば丸太を対象とする場合などは、動力に換算して30%から35%程度にしかならなかった。
【0016】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、一軸破砕機において、負荷の状態に応じた効率的な処理を行うようにロータを制御する運転方法と運転装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するため、破砕刃が外周に取り付けられ同期電動機により回転するロータに被破砕物を供給して破砕する一軸破砕機における、本発明の運転制御方法は、ロータの負荷についてあらかじめ決められた閾値で仕切られた領域におけるロータの速度の設定値をあらかじめ格納する工程と、ロータの負荷を推定する工程と、推定したロータの負荷が閾値で仕切られた領域のいずれに属するか判定する工程と、ロータの速度がロータの負荷が属する領域に応じた設定値に一致するように同期電動機の回転を調整する工程とを含む。
なお、一軸破砕機は押込装置(プッシャ)を備えて、プッシャにより被破砕物をロータに押し付けるようにしてもよい。
【0018】
上記閾値が下限閾値を持ち、ロータの速度の設定値はロータの負荷が下限閾値より小さい領域で下限閾値より大きい領域より大きい値に定められて、ロータの負荷がこの領域にあるときロータが増速されることが望ましい。また、上記閾値がさらに上限閾値と上上限閾値を持ち、ロータの速度の設定値はロータの負荷が上限閾値より大きい領域で上限閾値より小さい領域より小さくかつ0より大きい値を持ち、上上限閾値より大きい領域で0となるものとすることができる。
ロータの負荷が上限閾値を超えた場合には、ロータの速度を平常運転時の速度から所定の設定値まで一定の時間をかけて漸減させる制御を行い、ロータの負荷が上上限値を超えた場合には、急速にロータの速度を0にする制御を行うようにしてもよい。
【0019】
ロータの負荷が上記の上限閾値を超えた領域でロータの速度を設定値に向かって減速させる制御において、ロータの速度が設定値に達した後に設定値を0に変更する工程を含む形態や、ロータの負荷が所定の値まで減少した後に減速を中止してロータの速度を所定の値に維持する工程を含む形態としてもよい。
また、ロータの負荷の上昇率を算出する工程を備え、ロータの負荷の上昇率が所定の閾値を超えると設定値を0とし、即時ロータを停止する形態とすることもできる。この方法は、異物の噛み込みを的確に検出して処理するために有効である。
【0020】
ロータの速度が0になったことを検知する工程と、ロータの速度が0になった場合にタイマーに従ってあらかじめ設定された時間にわたりロータを逆回転するように同期電動機の速度を制御する工程とを含んでもよい。
さらに、ロータの速度を減速する際に同期電動機から回生電力を取得する工程を含み、ロータを減速調整するときに同期電動機を回生制動により減速させると省エネルギー効果が高い。
【0021】
また、上記課題を解決するため、破砕刃を外周に取り付けて回転するロータに被破砕物を供給して破砕する一軸破砕機における、本発明に係る運転制御装置は、周波数変換器に電気的に接続されロータを回転駆動する同期電動機と、ロータの負荷についてあらかじめ決められた閾値で仕切られた領域におけるロータの速度の設定値をあらかじめ格納する記憶装置と、ロータの負荷を検出する負荷検出装置と、検出されたロータの負荷が閾値で仕切られた領域のいずれに属するか判定する演算装置と、ロータの速度がロータの負荷に応じた設定値に一致するように周波数変換器を制御して同期電動機の速度を調整する制御装置とを含むことを特徴とする。なお、一軸破砕機はプッシャを備えて、プッシャにより被破砕物をロータに押し付けるようにしてもよい。
【0022】
特に、閾値が下限閾値を持ち、ロータの負荷が下限閾値より小さい領域にあるときロータが増速されることが望ましい。
さらに蓄電器またはキャパシタあるいは抵抗器などの回生電力吸収装置を備え、ロータの速度を減速調整するときに同期電動機を回生制動により減速させ、取得した回生電力を蓄電器またはキャパシタに蓄電したり抵抗器により消費したりすることが望ましい。
同期電動機は、永久磁石型同期電動機(PMモータ)であることが好ましい。ロータの回転軸を同期電動機の駆動軸に直結し、変速機等を介さずにロータを駆動する形態としてもよい。
【0023】
本発明の一軸破砕機の運転制御方法および運転制御装置によれば、ロータの負荷状況を監視し、負荷値があらかじめ設定された閾値を跨いで変化したときに、ロータ速度の設定値を切り替えて新しい設定値に適合するように同期電動機の速度を制御する。したがって、被破砕物の軟硬や供給量などの状況に応じてロータ速度を適切に調整し、効率的に被破砕物を破砕することができる。
【0024】
ロータの負荷が下限閾値より小さい場合、すなわち被破砕物が破砕しやすい場合は、ロータの速度が平常運転時より大きくなるように制御することにより、破砕しやすい対象物に対して破砕機の性能を十分に発揮させて破砕物の処理量を増大させた効率のよい処理を行うことができる。
また、逆に、ロータの負荷が上限閾値より大きい場合、すなわち被破砕物が破砕しにくい、もしくは被破砕物が供給過多でロータに大きな負荷が掛かっている場合は、ロータの負荷が上上限閾値より大きくなって装置を停止させる事態に至らないように、ロータを減速させて負荷トルクを減少させることができる。
【0025】
ロータの速度を徐々に減速させ、負荷が軽減しないままロータ速度が例えば1rpmなど、あらかじめ規定された値まで低下した場合、もしくはロータの負荷が上上限閾値を超えた場合は、被破砕物を噛み込んだおそれがあるので、ロータを停止することが好ましい。ロータを停止した後、一定時間逆回転して、噛み込んだ被破砕物を放出したり被破砕物の姿勢を変えたりすることで負荷を解放し、再度正回転運転に復帰する。
【0026】
逆回転中は破砕物の破砕処理を行えないため、逆回転動作の頻度が高くなると破砕効率が著しく低下する。そのため、本発明の一軸破砕機の運転制御方法では、逆回転動作に移行しないように負荷トルクの上昇を抑えて過負荷の状態にならないようにしながら、高負荷の状態において可能な限り破砕を進める工程を設けることができる。過剰に供給された被破砕物を高負荷状態で処理することができれば、逆回転動作を行わずに平常運転に復帰できるため、作業効率に無駄がない。
【0027】
一方、ロータが金属片等の破砕不能の異物を噛み込んだ場合は、負荷の急激な上昇を検知してロータを即時停止し、ロータや駆動系あるいは筐体に損傷を与えるのを防ぐことができる。
また、従来は制動時の運動エネルギーは熱エネルギー等として無駄に消費されていたが、特に蓄電池やキャパシタにより蓄電する場合には、回生制動を行うことで、運動エネルギーを電気エネルギーに変換して回生電力吸収装置に回収できるため、省エネルギーに寄与し、動力あたりの処理効率を高めている。回生制動は急停止以外の減速制御の際にも有効であることは言うまでもない。
【0028】
また、回生電力吸収装置を備えた形態では、ロータの急停止に際して同期電動機から回生電力を取得して回生制動を行う。回生制動では、同期電動機を発電機として作動させ運動エネルギーを電気エネルギーに変換して回収することによりロータ回転を制動するため、機械式制動装置における摺動や接触部材の摩耗など、装置への物理的なダメージを防ぐことができる。
【0029】
本発明の一軸破砕機の運転制御装置は、VVVFインバータを利用して同期電動機をベクトル制御するようにすることができる。ロータの回転軸を同期電動機の駆動軸に変速機等を介さずに直結して直接駆動することで、減速機や伝達軸等が不要になるため、駆動系の慣性モーメントが小さくなり、容易で迅速な制御が可能になると共に、消費電力を節約することができる。また、慣性モーメントを小さくすることで、異物の噛み込み等の際にも装置に対する衝撃を緩和することができる。
【0030】
同期電動機として低速高トルク特性にすぐれ、高速回転時のモータ効率が高い永久磁石型同期電動機(PMモータ)を利用し、電動機の駆動軸にロータを直結することで、低エネルギー性と破砕力を同時に得ることができる。また、減速機を介して油圧動力を接続する従来の装置に比べて大幅に小型化できる。
PMモータとして、例えば表面永久磁石型同期電動機(SPMモータ)や埋込型永久磁石同期電動機(IPMモータ)などを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の1実施形態に係る一軸破砕機の運転制御方法および運転制御装置を適用した一軸破砕機の概要を示す断面図である。
【図2】本実施形態に係る制御装置のブロック線図である。
【図3】図2における制御装置の制御部をさらに詳しく表したブロック線図である。
【図4a】本実施形態に係る制御方法の手順例の一部を説明する流れ図である。
【図4b】本実施形態に係る制御方法の手順例における残りの部分を説明する流れ図である。
【図5】本実施形態に係る制御方法に従って制御した場合の負荷トルクと回転数の推移を表すグラフである。
【図6】従来の一軸破砕機押込装置の運転制御方法による制御結果例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係る一軸破砕機の運転制御方法及び運転制御装置の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。
【0033】
本実施形態に係る運転制御装置を適用する一軸破砕機は、図1に示すように、多数の刃(破砕刃)13を外周に取り付けて回転するロータ1と、破砕刃13と嵌合する固定刃2を備え、プッシャ3により、ロータ1の間に被破砕物11を噛み込んで、回転しているロータ1に押し付けることにより破砕する。
被破砕物11はロータ1やプッシャ3の上部に設けられたホッパー4に収納され、破砕された被破砕物11は排出口8を介して系外に排出される。
【0034】
図1に示した態様では、ロータ1は多角形の断面を有する筒体で、多角形の頂点位置に破砕刃13が設けられている。なお、ロータ1の断面形状は、多角形に限らず、円形や、円形に溝加工した形などであってもよい。ロータ1の回転軸は、図外の同期モータ、好ましくは永久磁石型同期モータ(PMモータ)の駆動軸に直結されており、これら同期モータにより直接回転駆動される。
PMモータ等の同期モータには、電源装置とVVVFインバータと制御装置が接続されている。電源装置は蓄電器(キャパシタ)を含んでいる。固定刃2は、回転する破砕刃13がすれすれに通過するための間隙を有するように形成され、ロータ1に押し付けられた被破断物12は、ロータ1の破砕刃13と固定刃2の間に発生するせん断力により破砕され、排出口8に落下する。
なお、効率、据付スペース、コストなどの問題が軽視できれば、同期モータの駆動軸とロータ1の回転軸の間に、Vベルト、Vプーリ、減速機、ギヤカップリングなどの伝達装置を介装させてもよいことは言うまでもない。
【0035】
プッシャ3は、油圧シリンダ5のシリンダロッド6に固定され、シリンダロッド6の往復動に従って前進限と後退限の間を前進後退運動する。プッシャ3は、後退時にロータ1との間に被破砕物11を挟んで、前進と共に、挟み込んだ被破砕物11をロータ1に押し付ける。図中の参照番号3'6'は、それぞれ前進限位置にあるときのプッシャとシリンダロッドを示す。
通常は、押し付け圧力が大きい方が、破砕刃13でかじり取られた部分に新しい被破砕物11をスムーズに補充するので、破砕量が増大する。しかし、ロータ1の表面に被破砕物11を押し付ける力が強すぎれば、ロータ1の回転抵抗が増大してエネルギー損失になるので、より高い破砕効率を得るために適当な押し付け圧を選択して制御する。
【0036】
プッシャ3の前進後退は油圧シリンダ5への作動油の流れ方向により決まり、プッシャ3の移動速度は作動油の流量により決まる。作動油は、図外の電動機により回転駆動される図外の油圧ポンプによって供給される。
なお、プッシャ3は、電動モータで駆動するシリンダを利用することもできる。また、電動モータにより回動するアームを用いて、回動するアームに押し出し部を固定することで形成されるプッシャであってもよい。
さらに、プッシャを用いず、被破砕物が自重でロータに供給されるようにしてもよい。
【0037】
本実施例の運転制御装置は、PMモータ等の同期モータに印加する電力を調整しロータ1の回転速度やトルクを制御して破砕効率を向上させる。図2は本実施形態の一軸破砕機に係る制御系のブロック線図、図3は制御系を構成する制御部の構成を詳しく表したブロック線図である。
本実施形態に係る制御装置は、ロータ負荷に基づいた回転速度を持つようにロータ1の制御を行うことにより、破砕の効率化を図っている。図2および図3には、一軸破砕機の制御装置として組み込まれているシーケンサ(PLC:プログラマブルロジックコントローラ)21の一部の機能を使ってロータ速度の制御を実行することが示されている。
【0038】
駆動部23は、破砕部24に駆動トルクを供給する、PMモータなど同期モータ26を用いた駆動装置を備え、モータ制御部22は、シーケンサ21から供給される指令に従って駆動部23の同期モータの回転速度を制御する。
破砕部24は、同期モータに直結されたロータ1と油圧ポンプや電動機で駆動されるプッシャ3を備え、ロータ1の外周で回転する破砕刃13と筐体に固定された固定刃2で被破砕物を破砕する装置である。破砕部24では、ホッパー4に補填された被破砕物11の一部の被破砕物12をプッシャ3でロータ1に押圧して破砕し、適宜の大きさの破砕物として排出口8を介して系外に排出する。
【0039】
モータ制御部22は、図3に一般例として示すように、パワー部31と制御部32で構成される。
パワー部31は、商用の交流電源を直流電源に変換するコンバータ33と、さらに直流を任意の周波数と電圧に変換することにより必要とする周波数の交流電圧を発生するインバータ34で構成され、駆動部23を構成する同期モータ26に3相電流を供給して回転速度を制御する。インバータ34から供給される電流は電流検出器(CT)35で測定され、制御部32に伝送される。
【0040】
同期モータ26の駆動軸の反負荷側軸端に、回転を検出するレゾルバ27が取り付けられている。レゾルバ27により回転子磁極の位置を検出して、その位置に合わせた固定子巻線に駆動電流を流すことによって適宜なトルクを発生させている。
パワー部31には、キャパシタ、抵抗器、二次電池などで構成される回生電力吸収回路を付属させることができる。
【0041】
制御部32は、速度制御部36、電流制御部37、レゾルバ制御部38、シーケンス制御部39から構成される。
制御部32は、シーケンサ(PLC)21から与えられる速度基準信号に基づいて、インバータ34をPWM制御して、同期モータ26に適宜な3相電流を流して、速度制御する。
【0042】
レゾルバ制御部38は、レゾルバ27から速度信号および回転子位置信号を受け取って、モータの速度を速度制御部36に伝達し、回転子位置を電流制御部37に伝達する。また、これらの信号はシーケンサ21にも伝送される。
速度制御部36は、シーケンサ21から与えられる速度基準信号に基づいて、目標速度と現在の速度の差を求め、この差を減少させるような電流指令信号を電流制御部37に送る。なお、電流指令は、シーケンサ21からあらかじめ与えられた電流制限基準に適合するように算定される。
【0043】
電流制御部37は、電流検出器(CT)35で測定する駆動電流を入力させて、回転子磁極の位置に合う固定子巻線における駆動電流が電流指令に適合するようにするPWM制御信号を形成してインバータ34に伝送する。
なお、同期モータ26の出力トルクは、駆動電流に基づいて推定することができる。
レゾルバ制御部38、速度制御部36、電流制御部37などの作動は、制御部32内に組み込まれたシーケンス制御部39により支配され適切に調整される。シーケンサ21から出力される速度指令は、制御部32のシーケンス制御部39に与えられ、シーケンス制御部39が他の制御部を支配して、同期モータ26の速度を与えられた速度指令に合うように調整する。
【0044】
このように、モータ制御部22には、駆動部23から速度信号がフィードバックされている。シーケンサ21が速度指令信号により指令すると、指令された回転速度と、駆動部23からフィードバックされる速度信号との偏差に基づいてモータ駆動用のインバータ34を制御して、同期モータ26に供給する電気の電圧、周波数、位相を調節し、必要なモータ速度に対応するモータ駆動電流を駆動部23の同期モータ26に供給する。
【0045】
モータ負荷は、電流変換器(CT)35の出力に基づいて算定する。電流変換器35はパワー部31から出力されるモータ駆動電流を測定し、A/D変換してデジタル化した測定信号を電流制御部37に入力する。電流制御部37は記憶装置を付属し、記憶装置にはモータ駆動電流とロータ負荷の関数関係が記録されている。電流制御部37の演算装置は、記憶された関数関係を使用し、モータ駆動電流に基づいてロータ負荷を算出する。算出されたロータ負荷は、シーケンサ21に伝送される。
シーケンサ21は、ロータ1の負荷に基づいてロータの回転速度や逆転運転の要否を規定して、モータ制御部22に速度指令信号や正転逆転指令信号を伝送する。
【0046】
本実施形態の一軸破砕機に係る制御系では、シーケンサ21の記憶装置に、ロータ1の負荷とロータの回転速度設定値との対応関係が数式や対応表やグラフなどの形で記録されている。このような対応関係の設定及び記憶は、通常のシーケンサに標準的に付属する機能を利用して実施させることができる。
この対応関係は、オペレータが設定盤を介して、適宜、試験結果や過去の経験などに基づいて、現状に対してより適したパラメータを設定あるいは選択して最適化することができる。また、制御シーケンスや制御論理に係る情報も、書き替え可能な記憶装置に格納されている。これらに係るパラメータも設定盤を介して設定及び書替えができる。
【0047】
なお、モータ制御部22に含まれるシーケンス制御部39にも、記憶装置、演算装置、操作盤などが付属し、一定の演算や判定を実行することができる。このため、ロータ1の制御に必要とされる機能を両者に分配することができる。
必要な機能の内、どの部分を同期モータに付帯するシーケンス制御部39に分配し、どの部分を外部のシーケンサ21に分配するかは、装置の仕様や達成しようとする機能などに伴い、任意に選択決定することができる。
【0048】
なお、パワー部31が回生キャパシタを備えて、指令された回転速度が同期モータの実際の回転速度より小さい場合、モータの回転エネルギーの過剰な部分を電気エネルギーに変換して回生キャパシタに回収することで、同期モータを回生制動することが好ましい。なお、回生キャパシタに代えて、二次電池を利用することもできる。
また、シーケンサ21からの正転逆転指令があった場合は、それに応じて同期モータに印加する電流の位相を調整してモータの回転方向を切り替える。
【0049】
駆動部23は、PMモータなどの同期モータと、同期モータの回転数を検出するレゾルバなどのセンサとで構成される。モータ制御部22から供給されるモータ駆動電流により同期モータが回転し、破砕部24にロータ1を回転させる駆動トルクを供給する。同期モータの回転数はセンサによりモニタリングされ、モータ制御部22にフィードバックされる。なお、回転センサによる速度信号のフィードバックの代わりに、同期モータに供給された電流の大きさと位相から同期モータの回転速度やトルクを推定するようにしてもよい。
【0050】
ロータ1の負荷は、ロータ1を駆動する同期モータの電流から推定することができる。そこで、モータ制御部22から供給される電動機電流を検出する電流変換器と電流に基づいて同期モータの負荷を算定する演算装置により、モータ制御部22で制御されるロータ1の負荷を検出して、シーケンサ21に伝送する。
シーケンサ21では、記憶装置に格納されているロータ1の負荷とロータの速度設定値との対応関係を示す対応表等を用いて、ロータ1の負荷に基づいて指定すべきロータ速度や逆転運転の要否を算出し、モータ制御部22に伝送する。
【0051】
図4aおよび図4bは、本実施形態に係る制御方法の手順例を説明する流れ図である。
図4aおよび図4bに記載の通り、ホッパー4に被破砕物がないときは、初めに被破砕物11をホッパー4に受け入れる(S01)。その後、ロータ1を始動し、破砕刃13を回転させる(S02)。このとき、プッシャ3は後退限位置にあって、プッシャ3の前面とロータ1の間には被破砕物11が挟まっている。
【0052】
ここで、後退限位置にあったプッシャ3の運転を開始する(S03)。プッシャ3の前進速度や、前進・後退の切り替えは、被破砕物11の状況等に応じてあらかじめ決められたパターンに従って制御される。また、ロータ1の負荷に対応してあらかじめ記憶装置に格納されている関数に基づいてプッシャ3に関するパターンを変更することもできる。
【0053】
ロータ1の回転速度があらかじめ定められた平常時運転の速度に達したら(S04)、ロータ負荷の監視を行う。なお、ロータ1の負荷トルクは、同期モータの電流値に基づいて算出することができる。
ロータ1の負荷トルクが、シーケンサ21の記憶装置に保存された下限閾値より小さい状態が一定時間継続した場合(S05)、ロータ1の性能に対して被破砕物の量が少ない、あるいは、被破砕物が破砕しやすい材質である、などの理由で処理能力に余裕があると考えられるため、平常時の定速運転より回転数を上げて破砕効率を向上させる余地があると判定される。
【0054】
そこで、ロータ速度をあらかじめ決められたより高速な設定速度まで増速する(S06)。その後もロータ1の負荷トルクを監視し続けて、負荷トルクが下限閾値より小さい間はロータ1を高速に保持し、負荷トルクが下限閾値に達したら平常時の定速運転に戻す(S07)。
なお、ロータ速度を増速する場合は、あらかじめ定められた回転速度を上限として所定の増速率で、あるいは所定の速度刻みで増速するようにしてもよい。
【0055】
一方、ロータ1の負荷トルクが下限閾値より大きい場合(S05)は、負荷トルクが上限閾値より小さければ(S08)、負荷トルクが上限閾値と下限閾値の間にあって適正な運転が継続していることになる。このとき、操作者が終了指示を出すと(S09)装置の作動を終了する。終了しないで継続して作動させる場合(S09)は、再び、ステップS05に戻って、負荷トルクを監視し、負荷トルクに従って適正なロータ速度を選択する手順を実行する。
【0056】
また、ロータ1の負荷トルクが下限閾値より大きい場合(S05)に、負荷トルクが上限閾値より大きい場合(S08)は、図4bの流れ図に表される通り、さらに、負荷トルクを上上限閾値と比較する。
そして、負荷トルクが上上限閾値より小さい場合(S10)、すなわち、被破砕物の量が多いか、被破砕物が破砕しにくい材質であるため、ロータ1に過剰な負荷が掛かっているが、危険な水準には達していない場合には、平常時の定速運転のままで何度も再処理するため、電流値が過剰に大きくなり、電源効率が低下する。
【0057】
そこで、電流値をいたずらに増加させずにトルク出力を増大させるため、あらかじめ定められた減速目標値までロータを減速させるロータ減速運転を指令する速度指令信号をモータ制御部22に供給する(S11)。なお、この場合のロータ1の減速は、あらかじめ設定された一定時間をかけ、もしくはあらかじめ定められた減速率で徐々に減速を行うようにすることが好ましい(S12)。
ロータ1の減速中に負荷トルクが下限閾値以下に減少しなかった場合(S13)、かつ、負荷トルクが上上限閾値まで増加しない場合(S14)、負荷が適当な状態にあるのでそのまま減速を続けて、ロータ回転数が減速目標値に達したら(S15)、ロータ1の回転およびプッシャの前進を停止する(S16)。
【0058】
なお、ロータ1の回転停止工程(S16)では、始めに固定子電流を制限することにより所定のトルクに制限してトルクリミット状態にし、トルクリミット状態を極く短い時間だけ維持した後に電流を遮断してロータ1の回転を停止させている。トルクリミットを取り込むことにより負荷の異常が解消すれば、負荷トルクは上上限閾値より低下して、ロータ1を停止しなくても被破砕物の処理が可能になる場合があるので、破砕処理を継続することにより効率を低下させずに作業を行うことができる。
【0059】
一方、図4b中のステップS12において、ロータ1の減速により負荷トルクが減少して下限閾値より小さくなった場合(S13)、減速処理により過負荷が解消されたと判断することができるので、減速を中止して、図4a中のステップS04に示す定速運転に復帰する。
これに対して、負荷トルクが下限閾値より大きい場合は(S13)、さらに増大して上上限閾値を超えたら(S14)、ステップS16に進んで、ロータを停止し、プッシャの前進を中止する。
【0060】
また、図4a中のステップS08において、ロータ1の負荷トルクが上限閾値を超えた上、さらに図4b中のステップS10において負荷トルクが上上限閾値を超えた場合、ロータ1が破砕できない異物を噛み込んだおそれがあるので、破砕刃、ロータ、駆動装置あるいは筐体等への損傷を防ぐためにロータおよびプッシャを停止する(S16)。
なお、図示しないが、ロータ1の負荷トルクの上昇率を合わせて監視しており、負荷トルクが上上限閾値を超えなくても、負荷トルクの上昇率が一定の値を超えた場合は、金属片等の異物を噛み込んだと考えられるので、ロータ1の回転停止およびプッシャ3の前進停止を行うようにしてもよい。
【0061】
ロータ1の負荷トルクが過大になってロータ1およびプッシャ3の駆動を停止した場合(S16)、あらかじめ定められた一定時間もしくは一定の回転回数だけロータ1を逆回転させる(S17)。この逆回転動作により、噛み込んだ異物を放出したり、被破砕物の姿勢を変えさせたりして負荷を解放することができる。その後、ロータ1を停止し(S18)、図4a中のステップS02に戻って運転を再開する。
【0062】
なお、図示しないが、ロータ1の負荷トルクが上限閾値や上上限閾値を超えてロータを停止する動作が一定時間内に一定回数を超えた場合、装置に何らかの保全作業を要する不測の異常(過負荷)が生じたと考えられるため、装置を全停止させるようにした工程を備えることが好ましい。
【0063】
ロータ1の減速および停止に当たっては、回生制動により同期モータを減速する。回生制動により得られた電力は、モータ制御部22のパワー部31に含まれるキャパシタあるいは二次電池に蓄電し、後のロータ回転駆動に使用する。回生制動を行うことで、省エネルギー効果のほか、ロータ1の回転エネルギーを電磁抵抗により吸収するため、装置本体の同期モータやロータなどへの物理的な衝撃や損耗、制動による発熱を防ぐことができる。したがって、回生制動により獲得した電力を回生抵抗で熱エネルギーとして放出する場合にも、一定の効果があることになる。
【0064】
次に、本実施形態の一軸破砕機の運転制御方法について、被破砕物の性状に応じた運転パターンの代表例を説明する。
【0065】
(1) 運転パターン1:低負荷時増速動作
ロータ1は、正回転時に被破砕物を破砕するが、破砕し易い物を破砕しているときには負荷トルクが小さい。そこで、負荷トルクが設定した下限閾値より低い状態が一定時間継続した場合に、回転数を平常運転の値(例えば100rpm)より大きな所定の値(例えば150rpm)に増速して破砕処理量を増大させるようにする。こうして、破砕し易い物を処理する場合にも、破砕機の性能を十分に発揮させて、処理効率を向上させることができる。
【0066】
すなわち、例えば、正転平常運転時(S04)に負荷トルクが下限閾値より低いことが検知されたら(S05)、ロータ1を2秒間で増速して高速運転し(S06)、高速運転を継続する間に負荷トルクが下限閾値より上昇したら(S07)、2秒間で減速して平常運転に戻す(S04)。
【0067】
(2) 運転パターン2:過負荷抑制動作
ロータ1が被破砕物を破砕する間に、破砕が難しい厚手の原料などを噛み込んだときに、回転数を下げて過負荷にならないようにすることが好ましい。そこで、負荷トルクが設定した上限閾値より高くなった場合に、回転数を徐々に下げて負荷トルクを抑制する。低速運転により負荷が解放されたら平常運転に復し、負荷が解放されず回転数が所定の値(例えば1rpm)まで低減した場合は、逆転動作をさせて負荷の解放を図る。しかし、さらに所定の時間内に所定の回数以上逆転動作を繰り返す場合は、作業員による対応が必要となるような異常な過負荷である可能性があるので、装置を停止させることが好ましい。
【0068】
すなわち、例えば、正転平常運転時(S04)に負荷トルクが上限閾値より大きく(S08)上上限閾値より小さいことが検知されたら(S10)、ロータ1を減速運転する(S11、S12)。これにより、負荷トルクが下限閾値より小さくなれば(S13)、平常運転(S04)に戻るが、下限閾値より大きく(S13)上上限閾値にまでは達しない状態であれば(S14)、回転数が所定の目標値(例えば1rpm)に達するまで(S15)ロータ1を減速させて(S12)、負荷トルクを低下させる。
【0069】
また、負荷トルクが減少しないままロータ回転数が減速目標値まで達した場合(S15)、または負荷トルクが上上限閾値に達した場合には(S14)、異常な過負荷と判断して、装置を一旦停止させ(S16)、約2秒後に、ロータ1を逆転方向に約3秒間で加速させ所定の回転速度例えば100rpmで約2秒間逆転運転させた後(S17)、約3秒間で減速させて約2秒間停止し(S18)、さらに正転方向に約2秒間加速して(S02)平常時の回転数に戻す(S04)。
【0070】
(3) 運転パターン3:過負荷時動作
ロータ1が鉄片などの異物を噛み込んだときには、ロータ1を急停止して異物を解放してから正常運転に戻るようにし、この動作を繰り返す場合は異物の解放に失敗したものとして装置を停止させることが好ましい。
【0071】
そこで、例えば、正転平常運転時(S04)に負荷トルクが上限閾値より大きくなり(S08)、さらに上上限閾値より大きいことが検知されたら(S10)、ロータ1とプッシャ3を停止し(S16)、約2秒後に、ロータ1を逆転方向に例えば3秒間で加速させ所定の回転速度で例えば2秒間逆転運転させた後(S17)、約3秒間で減速させて約2秒間停止させ(S18)、さらに正転方向に約3秒間加速して(S02)平常時の回転数に戻す(S04)。
なお、上記動作を一定時間内に一定回数以上繰り返す場合は、異物の噛み込みなど、異常な過負荷が発生したと判断して、装置を全停止させることが好ましい。
【0072】
(4) 運転パターン4:異物検知時動作
ロータ1が鉄片などの異物を噛み込んだときには、負荷トルクが一定上昇率以上の増加を見せるので、負荷トルクの上昇率に基づいて異物を検知し、ロータ1を急減速、あるいは出力トルクを0にしたフリーランとするようにしてもよい。
また、このとき、ロータ1を逆転して、噛み込んだ異物を解放させることができた場合は、再び平常の正転運動に戻すことができる。
【0073】
なお、上記において、負荷トルクの下限閾値、上限閾値、上上限閾値、負荷トルクの各閾値で仕切られた領域ごとのロータの速度設定値、増速時間、減速時間などは、運転のためのパラメータであり、適宜に最適値を選択し、変更して利用することができる。
【0074】
図5は、本手順例に従って制御した場合の負荷トルクと回転数の推移例を表すグラフである。本手順例では、各パラメータを以下の通りとした。
下限閾値(TL) 100%(基準)
上限閾値(TH) 200%
上上限閾値(THH) 250%
定速運転回転数 100rpm
増速運転回転数 150rpm
逆回転時間 2秒間
なお、増速運転時の加速率、減速運転時の減速率、正転逆転切り替え時の待機時間等、他のパラメータについても適切な値を設定している。
【0075】
図5では、制御開始後、負荷トルクが100%より小さい状態が一定時間継続したため、回転数を2秒間で150rpmまで増速している(時刻a)。その後、負荷トルクが100%を超えたため、2秒間減速し回転数100rpmの定速運転に復帰している(時刻b〜c)。
続いて、負荷トルクが上限閾値である200%を超えたため(時刻d)、一定の減速率で回転数を低下させている。ここでは、100rpmから1rpmまで約4秒かけて減速させるようにしている。減速中に負荷トルクが下限閾値より小さくなったため、減速運転を中止し(時刻e)、定速運転に戻っている(時刻f)。
【0076】
数秒後、再び負荷トルクが上限閾値を超えたため回転数を低下させたが(時刻g)、さらに上上限閾値250%を超えたため、ロータを停止している(時刻h)。ここでは、フリーランにより瞬時停止させる。さらに続いて、2秒の待機時間の後、3秒間で逆回転の100rpmまで加速して2秒間逆回転運転を行って異物を解放した後、3秒間でロータを停止している(時刻i〜j)。
【0077】
その後、2秒の待機時間の後、再びロータを正転させ、3秒間加速して100rpmの定速運転に復帰している(時刻k〜l)。
被破砕物の処理が完了したら、プッシャ3を後退させ、ロータ1を停止して運転を終了する。
ロータ1の減速時には、回生制動を行い、回生キャパシタあるいは二次電池を利用し回収エネルギーを蓄積して活用することができる。
【0078】
本実施例の処理手順や、各種閾値や回転数や継続時間などのパラメータは一例として示したものであり、対象とする被破砕物の種類や状態、処理量に応じて適宜選択することができる。また、例えば、増速運転の際の下限閾値を2段階以上設定し負荷の軽減度合いに応じてロータ速度を変更したり、プッシャの前進・後退動作に応じて異なる制御パターンを設定しプッシャと協調して制御を行ったりするなど、制御方式は本実施例の限りでない。
【0079】
本実施態様による破砕操作では、ロータ負荷に応じて適切なロータ速度を選択するように制御するので、被破砕物の状態に応じて効率的に破砕処理を行うことができる。
特に、容易に破砕できる被破砕異物に対してはロータ回転速度を増速して破砕能率を向上させる。
また、負荷が高くなった場合に回転数を低下させてトルクを増大させる制御を行うため、一時停止操作による無駄時間が減少すると共に、トルク増大のために電流量をいたずらに増やす必要がなくなる。
また、異物の噛み込みや過負荷時など、ロータを停止もしくは減速させる時に、同期電動機を回生制動して運動エネルギーを電気エネルギーに変換し、キャパシタあるいは蓄電器に蓄電して再利用するので、停止の際のエネルギー損失を減少させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明に係る一軸破砕機のロータの運転制御方法及び運転制御装置は、廃プラスチック、古紙類、廃木材、剪定枝、布類、その他の廃棄物の細破砕を行うときに、負荷状況に応じてロータ回転速度の制御を行うことにより高効率な破砕運転をすることができる。
【符号の説明】
【0081】
1 ロータ
2 固定刃
3,3' プッシャ
4 ホッパー
5 プッシャ用油圧シリンダ
6,6' シリンダロッド
7 傾斜板
8 排出口
9 支持ローラ
10 ガイドローラ
11 原料(被破砕物)
13 破砕刃
21 シーケンサ(PLC)
22 モータ制御部
23 駆動部
24 破砕部
26 同期モータ
27 レゾルバ
31 パワー部
32 制御部
33 コンバータ
34 インバータ
35 電流検出器(CT)
36 速度制御部
37 電流制御部
38 レゾルバ制御部
39 シーケンス制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
破砕刃が外周に取り付けられ同期電動機により回転するロータに被破砕物を供給して破砕する一軸破砕機において、
前記ロータの負荷についてあらかじめ決めた閾値で仕切られた領域におけるロータの速度の設定値をあらかじめ格納する工程と、
前記ロータの負荷を推定する工程と、
前記推定したロータの負荷が前記閾値で仕切られた領域のいずれに属するか判定する工程と、
前記ロータの速度が前記ロータの負荷に応じた前記設定値に一致するように前記同期電動機の回転を調整する工程とを含む、
一軸破砕機の運転制御方法。
【請求項2】
前記閾値が下限閾値を持ち、前記速度の設定値は前記ロータの負荷が該下限閾値より小さい領域で該下限閾値より大きい領域に比して大きい値になることを特徴とする、請求項1記載の一軸破砕機の運転制御方法。
【請求項3】
前記閾値が上限閾値と上上限閾値を持ち、前記速度の設定値は該ロータの負荷が該上限閾値より大きい領域で該上限閾値より小さい領域より小さくかつ0より大きい値を持ち、前記上上限閾値より大きい領域で0となることを特徴とする、請求項2記載の一軸破砕機の運転制御方法。
【請求項4】
前記ロータの負荷が前記上限閾値を超えた領域で前記ロータの速度が該領域の前記設定値に達したら、該ロータの速度の設定値を0に変更して前記ロータの速度を漸減させることを特徴とする請求項3記載の一軸破砕機の運転制御方法。
【請求項5】
前記ロータの負荷が前記上限閾値を超えた領域で前記ロータの速度が該領域の前記設定値に向かって漸減する間に、前記ロータの負荷が所定の値より減少したら前記ロータの速度の漸減を中止して該ロータの速度を所定の値に維持する工程を含むことを特徴とする請求項3または4に記載の一軸破砕機の運転制御方法。
【請求項6】
前記推定したロータの負荷の上昇率を算出する工程を備え、前記算出した上昇率が所定の閾値を超えると前記ロータの速度設定値を0として該ロータの回転を停止させることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の一軸破砕機の運転制御方法。
【請求項7】
前記ロータの速度が0になったことを検知する工程と、該ロータの速度が0になった場合にあらかじめ設定された時間にわたり該ロータを逆回転するように前記同期電動機を調整する工程とを含む請求項1から6のいずれか1項に記載の一軸破砕機の運転制御方法。
【請求項8】
前記ロータの速度に対応するように前記同期電動機から回生電力を取得して蓄電する工程を含み、該ロータの速度を減速調整するときに該同期電動機を回生制動して減速させることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の一軸破砕機の運転制御方法。
【請求項9】
前記一軸破砕機が押込装置(プッシャ)を備えて、該押込装置により前記ロータに前記被破砕物を供給して押圧することを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の一軸破砕機の運転制御方法。
【請求項10】
破砕刃を外周に取り付けて回転するロータに被破砕物を供給して破砕する一軸破砕機において、
周波数変換器に電気的に接続され、前記ロータを回転駆動する同期電動機と、
前記ロータの負荷についてあらかじめ決められた閾値で仕切られた領域における前記ロータの速度の設定値をあらかじめ格納する記憶装置と、
前記ロータの負荷を検出する負荷検出装置と、
前記検出されたロータの負荷が前記閾値で仕切られた領域のいずれに属するか判定する演算装置と、
前記ロータの速度が前記ロータの負荷に応じた前記設定値に一致するように前記周波数変換器を制御して前記同期電動機の速度を調整する制御装置とを含む、
一軸破砕機の運転制御装置。
【請求項11】
さらに回生電力吸収装置を備え、前記ロータの速度を減速調整するときに前記同期電動機を回生制動して減速させ、取得した回生電力を該回生電力吸収装置に蓄電することを特徴とする請求項10記載の一軸破砕機の運転制御装置。
【請求項12】
前記同期電動機が、永久磁石型同期電動機(PMモータ)であることを特徴とする請求項10または11に記載の一軸破砕機の運転制御装置。
【請求項13】
前記同期電動機の駆動軸と前記ロータの回転軸が直結されていることを特徴とする請求項10から12のいずれか1項に記載の一軸破砕機の運転制御装置。
【請求項14】
前記一軸破砕機が押込装置(プッシャ)を備えて、該押込装置により前記ロータに前記被破砕物を供給して押圧することを特徴とする請求項10から13のいずれか1項に記載の一軸破砕機の運転制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−245365(P2011−245365A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−118424(P2010−118424)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成21年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「新エネルギー技術研究開発/バイオマスエネルギー等高効率転換技術開発(転換要素技術開発)/木質系バイオマスの破砕・粉砕・前処理技術の研究開発」共同研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(503245465)株式会社アーステクニカ (54)
【Fターム(参考)】