説明

三次元地図表示方法、三次元地図表示プログラムおよび三次元地図表示装置

【課題】 ドライバーの視点に近い描画視点から描画される三次元地図において、交差点等を曲がる際の視野狭窄感を解消することができ、現在位置や通過予定地点を特定の直線上の固定位置に表示させることで、わかりやすさを向上させることができる三次元地図表示方法、三次元地図表示プログラムおよび三次元地図表示装置を提供する。
【解決手段】 経路上において現在位置Pから一定の描画距離n先までの経路情報を取得するとともに、描画視点Fを通過予定地点Qから現在位置Pの方向に描画距離n以上の一定距離rを隔てた位置に定め、かつ、描画視点Fを中心に張る画角の下限が現在位置Pに一致するように描画視点Fを上下に移動させて画像処理を行うことにより、現在位置Pおよび通過予定地点Qを画像表示手段5における縦方向の同一直線上の定点位置として表示するとともに、現在位置Pと描画視点Fとの間隔の変化に応じて俯角を変動させて三次元道路を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーナビゲーション等の地図表示技術に関し、特に、三次元的に表示する地図における視野狭窄感を解消するとともに、一見して多くのナビゲーション情報を取得するための三次元地図表示方法、三次元地図表示プログラムおよび三次元地図表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からカーナビゲーション装置では、現在位置周辺の経路情報を三次元地図で表示する三次元地図表示装置が知られている。この三次元地図表示装置は、予め定められた表示範囲内の道路地図情報を取得し、ドライバーの視点や上空からの視点等から道路や建物などを三次元的に描画するものである。このため、ドライバーの視点から描画した場合には、ドライバーが実際に見る景観に近い三次元地図が表示されるし、上空の視点から描画した場合には、遠方まで見渡すようないわゆる鳥瞰図が表示される。
【0003】
このような三次元地図の表示技術として、例えば、特開2004−219182号公報に記載のナビゲーション装置が提案されている(特許文献1)。このナビゲーション装置は、走行経路に沿って必要となるテクスチャデータのみを先行して読み出すことにより、各テクスチャデータのデータ量を大きくし、ドライバーの視点から見る光景と同様の三次元地図を表示するようになっている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−219182号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載された発明を含め、従来の三次元地図表示装置においては、三次元で表示される道路画像は、描画時点における車両の進行方向を中心に画角が設定されている。このため、車両がカーブや曲がり角を走行する場合、ドライバーの視線とは関係なく、曲がっている最中にその車両の向きに合わせて道路画像が目まぐるしく更新されることになる。換言すれば、車両が交差点に差し掛かっても、図5に示すように、車両が完全に曲がりきるまでは曲がった先の道路が表示されない。通常、ドライバーの視線は車両の動きに先立って前方に置かれており、特に交差点などではカーブの大きさを早めに知りたいところであるが、従来のカーナビゲーションでは、車両の進行方向を中心に描画されるため、交差点やカーブの表示が遅れてしまう。また、交差点内に入った後やカーブの走行中は視線とは異なる方向を描画してしまうため、ドライバーに視野狭窄感を与える要因となっている。
【0006】
また、通常の三次元表示では、現在位置から離れるほど小さく狭く描画されるため、曲率の大きいカーブやS字のように複雑なカーブを描画してもその道路形状を理解することは極めて難しい。一方、鳥瞰図による三次元表示が考えられるが、カーブの曲がり具合とは無関係に俯角が定められているので、必ずしも走行時に欲しい情報が一見して得られるとは限らない。
【0007】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、ドライバーの視点に近い描画視点から描画される三次元地図において、交差点やカーブ等を曲がる際の視野狭窄感を解消することができ、また、現在位置や通過予定地点を特定の直線上の固定位置に表示させることで、わかりやすさを向上させることができる三次元地図表示方法、三次元地図表示プログラムおよび三次元地図表示装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る三次元地図表示方法の特徴は、画像処理手段が現在位置から所定距離先にある通過予定地点までの経路情報を記憶手段から取得して三次元的に画像処理して画像表示手段に表示する三次元地図表示方法であって、目的地までの経路上において前記現在位置から一定の描画距離nだけ先までの経路情報を三次元表示を行う領域として取得するとともに、三次元画像を描く視点である描画視点を前記通過予定地点から前記現在位置の方向に前記描画距離n以上の一定距離rを隔てた位置に定め、かつ、前記描画視点を中心に張る画角の下限が前記現在位置に一致するように前記描画視点を上下に移動させて画像処理を行うことにより、前記現在位置および前記通過予定地点を前記画像表示手段における縦方向の同一直線上の定点位置として表示するとともに、前記現在位置と前記描画視点との間隔の変化に応じて俯角を変動させて三次元道路を表示する点にある。
【0009】
また、本発明に係る三次元地図表示プログラムの特徴は、コンピュータを、道路地図情報を記憶する記憶手段と、現在位置を検出する位置検出手段と、目的地までの経路情報を検索する経路検索手段と、前記現在位置から所定距離先の通過予定地点までの経路情報を前記記憶手段から取得して三次元画像処理する画像処理手段と、三次元化された道路画像を表示する画像表示手段として実行させるとともに、前記画像処理手段は、前記通過予定地点を取得する場合、目的地までの誘導経路上であって、かつ、前記現在位置から一定の描画距離nだけ先の位置を取得し、前記現在位置から前記通過予定地点までの道路を三次元画像処理することにより、常に、一定の描画距離n先までの誘導経路上の道路を表示するとともに、前記現在位置と前記通過予定地点とを前記画像表示手段における縦方向の特定の直線上に表示するようにコンピュータを実行させる点にある。
【0010】
また、本発明において、前記画像処理手段は、前記通過予定地点から前記現在位置を経て結ぶ直線上に三次元画像を描く視点である描画視点を定めるとともに、前記通過予定地点から前記描画視点までの距離を被写界深度rとして前記描画距離n以上の一定値に設定することにより、前記通過予定地点を前記画像表示手段の定位置に表示するようにコンピュータを実行させることが好ましい。
【0011】
さらに、本発明において、前記画像処理手段は、前記描画視点を中心に張る画角の下限が現在位置に一致するように、前記描画視点を半径が被写界深度rとなる鉛直面内の円周軌道上で上下に移動させて俯角を決定することにより、前記現在位置を前記画像表示手段の下部に定位置として表示するとともに、前記現在位置から前記描画視点までの距離の変化に応じて俯角を変化させる鳥瞰図として表示するようにコンピュータを実行させることが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る三次元地図表示装置の特徴は、道路地図情報を記憶する記憶手段と、現在位置を検出する位置検出手段と、目的地までの経路情報を検索する経路検索手段と、前記現在位置から所定距離先の通過予定地点までの経路情報を前記記憶手段から取得して三次元画像処理する画像処理手段と、三次元化された道路画像を表示する画像表示手段とを有しており、前記画像処理手段は、前記通過予定地点を取得する場合、目的地までの経路上であって、かつ、前記現在位置から一定の描画距離nだけ先の位置を取得し、前記現在位置から前記通過予定地点までの道路を三次元画像処理することにより、常に、一定の描画距離n先までの経路上の道路を表示するとともに、前記現在位置と前記通過予定地点とを前記画像表示手段における縦方向の同一直線上に表示する点にある。
【0013】
また、本発明において、前記画像処理手段は、前記通過予定地点から前記現在位置を経て結ぶ直線上に三次元画像を描く視点である描画視点を定めるとともに、前記通過予定地点から前記描画視点までの距離を被写界深度rとして前記描画距離n以上の一定値に設定することにより、前記通過予定地点を前記画像表示手段の定位置に表示することが好ましい。
【0014】
さらに、本発明において、前記画像処理手段は、前記描画視点を中心に張る画角の下限が現在位置に一致するように、前記描画視点を半径が被写界深度rとなる鉛直面内の円周軌道上で上下に移動して俯角を決定することにより、前記現在位置を前記画像表示手段の下部に定位置として表示するとともに、前記現在位置から前記描画視点までの距離の変化に応じて俯角を変化させる鳥瞰図として表示することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ドライバーの視点に近い描画視点から描画される三次元地図において、交差点やカーブ等を曲がる際の視野狭窄感を解消することができ、現在位置や通過予定地点を特定の直線上の固定位置に表示させることで、必要な情報を見やすく、かつ把握しやすくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明に係る地図表示方法、地図表示プログラムおよび地図表示装置は、主として以下に示す2つの特徴を備えている。
(1)現在位置から目的地までの経路を距離に応じて近景、中景、遠景に相当する表示エリアを設け、各表示エリアに応じて必要な情報や道程を見やすく表示する地図表示機能
(2)三次元地図におけるカーブや曲がり角等での視野狭窄感を解消する三次元地図表示機能
そして、これら各機能を単独あるいは組み合わせて地図表示装置に搭載することにより、ユーザが見やすく、ナビゲーションとして利用価値の高い道路地図情報を提供するものである。
【0017】
以下、上記各表示機能を有する地図表示装置1の一実施形態について図面を用いて説明する。図1は、本実施形態における地図表示装置1の各構成部を示すブロック図である。なお、本実施形態はカーナビゲーション装置を例に説明するが、ユーザが携行する携帯型ナビゲーション装置等、様々なナビゲーション装置に適用できる。
【0018】
図1に示すように、本実施形態の地図表示装置1は、主として、現在位置Pを検出するための位置検出手段2と、目的地S等を入力するための入力手段3と、道路地図情報や各種のプログラムを記憶するための記憶手段4と、道路地図を表示するための画像表示手段5と、この画像表示手段5に表示する画像データを格納するための画像メモリ6と、これら各構成部を制御するとともに各種の演算処理を行う演算処理手段7とから構成されている。
【0019】
各構成手段についてより詳細に説明すると、位置検出手段2は、車両の現在位置Pを検出するものであり、車両の走行速度を検出する車速センサや車両の進行方向を検出する方位センサ、あるいはGPS(Global Positioning System)衛星から受信した緯度・経度情報に基づいて現在位置Pを特定するGPSセンサ等により構成されている。入力手段3は、プッシュボタンや表示画面上のタッチセンサ等により構成されており、目的地S等の入力や表示設定の変更等に使用される。
【0020】
記憶手段4は、DVD(Digital Versatile Disc)やハードディスク等から構成されており、道路情報の他、建物等の目標物情報や右左折指示等の交通情報を含む道路地図情報が記憶されている。また、本実施形態の地図表示装置1の表示処理を実行するための各種の表示プログラムが格納されている。
【0021】
画像表示手段5は、LCD(Liquid Crystal Display)等から構成されており、画像メモリ6に格納された画像データに基づいて道路地図や目標物等を表示する。画像メモリ6は、RAM(Random Access Memory)等により構成されており、演算処理手段7により適宜加工処理された画像データを格納する。演算処理手段7は、CPU(Central Processing Unit)等により構成されており、記憶手段4に格納されている各種の表示プログラムに基づいて各構成部を制御するとともに、各種のデータや設定情報を取得して、画像データを適宜加工処理するようになっている。
【0022】
つぎに、本実施形態の特徴的な構成部である画像表示手段5および演算処理手段7について、より詳細な構成およびその作用について説明する。
【0023】
図2は、本実施形態における画像表示手段5を示す模式図であり、図3は、本実施形態において、車両が実際に走行する経路を示す模式的な地図である。
【0024】
図2に示すように、本実施形態の地図表示装置1における画像表示手段5は、下方から順に、三次元表示エリア51と、二次元固定縮尺表示エリア52と、二次元可変縮尺表示エリア53とから構成されている。そして、現在位置Pから目的地Sまでの全経路を現在位置Pからの適当な距離に応じて区分けして表示する。各表示エリアの境界では、道路の末端が一連に繋ぎ合わされており、現在位置Pから目的地Sまでの誘導経路Uが連続的に表示される。以下、本実施形態では、図3に示すように、現在位置Pから第1通過地点Qおよび第2通過地点Rを経て、目的地Sまでの誘導経路Uを表示する場合について説明する。
【0025】
三次元表示エリア51は、現在位置Pから50〜100m程度の比較的近距離にある第1通過地点Qまでの経路情報を表示するものであり、後述する三次元処理部72により生成される三次元地図を表示するエリアである。二次元固定縮尺表示エリア52は、前記第1通過地点Qから数km先の第2通過地点Rまでの経路情報を表示するものであり、後述する二次元固定縮尺処理部73により生成される二次元地図を表示するエリアである。また、二次元可変縮尺表示エリア53は、前記第2通過地点Rから目的地Sまでの経路情報を表示するものであり、後述する二次元可変縮尺処理部74により生成される二次元地図を表示するようになっている。
【0026】
本実施形態では、上述した3つの表示エリア51,52,53によって表示するようになっているが、これに限られるものではなく、いずれか2以上の表示エリアを組み合わせて各道路の末端を連続的に繋ぎ合わせる構成としてもよい。例えば、目的地Sが近距離の地点に設定された場合、三次元表示エリア51と、二次元固定縮尺表示エリア52または二次元可変縮尺表示エリア53のみの2つを組み合わせて表示してもよい。また、三次元地図が不要な場合には、二次元固定縮尺表示エリア52と二次元可変縮尺表示エリア53のみの2つを組み合わせて表示してもよい。なお、前記表示エリアを組み合わせる選択手段は、目的地Sまでの走行距離に基づいて自動的に設定・変更される構成にしてもよいし、入力手段3を使ってユーザが手動で設定するようにしてもよい。
【0027】
つづいて、図4は、本実施形態の地図表示装置1における演算処理手段7を示す機能ブロック図である。図4に示すように、本実施形態の演算処理手段7は、主として、経路探索部71と、三次元処理部72と、二次元固定縮尺処理部73と、二次元可変縮尺処理部74とを有している。
【0028】
経路探索部71は、位置検出手段2から車の現在位置Pを取得するとともに、入力手段3により設定された目的地Sを取得し、図3に示すような現在位置Pから目的地Sまでの誘導経路Uを算出するものである。なお、目的地Sが設定されていない場合には、図示しない目的地予測部により目的地Sを予測し自動的に設定するようにしてもよい。この目的地予測部は、例えばドライバーの走行頻度が高いルートを記憶しておいたり、あるいは一般的な統計から走行頻度の高いルートを記憶しておき、現在の走行ルートと照合することにより自動的に目的地Sを予測設定するようになっている。
【0029】
三次元処理部72は、算出された誘導経路Uのうち、現在位置Pから第1通過地点Qまでの道路地図情報を記憶手段4から取得し三次元地図を生成するものである。三次元処理部72は、現在位置Pおよび第1通過地点Qを画像表示手段5の特定の直線上、ここでは表示画面の左右中央線O上に乗せられるように画像処理する。このとき、第1通過地点Qは三次元表示エリア51の上端位置に配置されるように画像処理する。そして、上記機能(1)のみの場合、現在位置Pは、左右中央線O上を上下動するが、上記機能(2)をさらに発揮させることにより、現在位置Pは三次元表示エリア51の下端位置に配置するように画像処理される。
【0030】
また、本実施形態の三次元処理部72は、ドライバーをナビゲーションするために必要な情報およびドライバーの視界の表現範囲を絞り、建物や空等の景観に関する表示を削減あるいは省略する一方、道路に関する表示については、道路の高低、立体交差、立体分岐、車線などを正確に表現することでドライバーの視界に広がる現実の景観に近い描画を追求している。換言すれば、景観のリアルさを捨てる代わりに、道路に関するリアルさを追求した表示を行う。このため、建物等はワイヤフレームなどの非常に着目度の低い表現手法により表示して、チラッと見ただけでも走行道路を的確に認知できるようにしている。
【0031】
以下、三次元処理部72による誘導経路Uの具体的な描画処理方法について説明する。
(イ)注視点の設定
本実施形態の三次元処理では、描画する視界の中心(注視点)の位置が従来と異なる。つまり、従来の描画処理方法では、図5に示すように、注視点を車両の進行方向上に置いて画角を設定しているため、車両の向きの変化に連動して視界(画像)も変動する(「ヘッドアップ」ともいう)。このため、ドライバーの視界とは関係なく画像が変化する。
【0032】
一方、本実施形態では、ドライバーの視線が基本的に数十m先の走行道路上に置かれることに合わせ、図6に示すように、注視点を進行予定の経路上に置いている。つまり、現在位置Pから誘導経路Uに沿った一定の描画距離nだけ先の第1通過地点Qを注視点に定めて画角を設定している(「アイポイントアップ」ともいう)。したがって、本実施形態の画像であればドライバーの視界とも合致することが多くて見易くなるし、従来のように画面が目まぐるしく変化するのを抑え、視野狭窄感を抑制できる。特に、図5および図6に示すような交差点では、ドライバーは常に自動車の方向よりも曲がった先の道路を見ているため、見やすさの違いが歴然となる。
【0033】
以上のように描画する視界の中心点である注視点を常に誘導経路U上に設定しているため、常に、道路の第1通過地点Qを三次元表示エリア51の左右中央線O上に表示することができる。
【0034】
(ロ)描画視点の設定
また、本実施形態では、図7に示すように、三次元処理部72の描画視点Fを、常に、第1通過地点Qから現在位置Pの方向に被写界深度rの距離だけ隔てた位置に定める。前記被写界深度rの長さは現在位置Pから第1通過地点Qを結ぶ線分長さ以上の大きさに設定される。例えば、図7(a)に示すように、現在位置Pから第1通過地点Qまでの誘導経路Uが直線道路の場合、描画視点Fは直線道路の延長線上に配置され、現在位置Pに最も近接する。また、図7(b)および図7(c)に示すように、誘導経路Uが曲がり角や曲線カーブを伴う場合、描画視点Fは直線PQの延長線上に配置され、複雑な曲線ほど現在位置Pから後方に離れて設定される。このため、直線道路のように単純な経路であれば描画視点Fを現在位置Pのすぐ真後ろに置いて描画しても理解できるが、S字カーブなどを伴う複雑な経路の場合には描画視点Fを現在位置Pから後方に少し離して配置し、遠くから望むように表示して誘導経路Uの全体像を把握し易くしている。
【0035】
以上の処理により、誘導経路Uが直線道路の場合には、ドライバーの視点からみた道路とほぼ同等の三次元地図が作成される。一方、誘導経路Uが複雑なほど描画視点Fが後方に設定されるため、ドライバーよりも後方に引いた視点からみた道路の三次元地図が作成される。
【0036】
また、描画視点Fを第1通過地点Qから一定距離である被写界深度rだけ後方位置に設定するため、常に、第1通過地点Qを表示画面において一定の高さに表示することができる。したがって、前述のように、描画視界の中心である注視点を一定の描画距離n先の経路上に設定し、かつ、描画視点Fを被写界深度rだけ後方位置に設定することにより、第1通過地点Qを図2に示すように常に、三次元表示エリア51における左右中央の上端位置に定点として表示することが可能となる。これにより、ドライバーの視界中の道路と、三次元表示エリア51内の道路画像とが多くの共通点を有するだけでなく、常に特定の場所に表示されるため、見やすいし様々な情報を把握しやすい。
【0037】
(ハ)鳥瞰図における俯角の設定
一方、上記処理により描画された三次元地図においては、図8に示すように、描画視点Fを中心に定められる上下方向の画角が現在位置Pを中心に設定されている。これは俯角が0°であることを意味しており、三次元画像がドライバーの視線の高さで形成される。このため、直線道路を理解するには問題ないが、複雑なカーブや曲がり角は奥行きが狭く描画されるために曲線形状等を把握するのが難しい。また、三次元表示エリア51において、描画視点Fは下端に、第1通過地点Qは上端にそれぞれ配置され、現在位置Pは道路の曲率の大小に応じて左右中央線O上を上下方向に移動する状態にある。これではカーブに応じて三次元画像の変動が大きすぎて好ましくないため、現在位置Pを下端若しくは下端近傍に固定するのが好ましい。
【0038】
そこで、本実施形態の三次元処理部72は、三次元画像を鳥瞰図的に描画するとともに、図9に示すように、その鳥瞰図を表示する上下方向の画角の下端位置に現在位置Pを配置するような俯角に設定する。つまり、鳥瞰図を表示するには描画視点Fを中心として高さ方向の画角を設定するが、その画角の下端線上に現在位置Pを配置するようにする。
【0039】
具体的には、第1通過地点Qを回転中心とし、半径が被写界深度rとなる鉛直面内の円周軌道上において描画視点Fを回転移動させ、画角の下端が現在位置Pに到達した時点の俯角を取得する。
【0040】
以上の描画処理により、現在位置Pと描画視点Fとの間隔の変化に応じて俯角が変動されるため、常に、現在位置Pは画像表示手段5の左右中央線Oの下端若しくは下端近傍に表示される。これにより、図7(a)に示した直線道路においては、図10に示すように、ドライバーの視点と同等若しくは若干高い位置から見た三次元地図が表示される。一方、図7(b)に示すようなL字状の道路では、図11に示すように、やや上方から見下ろした鳥瞰図としての三次元地図が表示される。また、図7(c)に示すようなより複雑な道路においては、さらに俯角が大きくなるため、図12に示すように、二次元地図に近い道路地図が表示されるようになっている。
【0041】
このように交差点やS字カーブ等のように複雑な道路ほど描画視点Fが上方に移動して二次元地図の良さを加味した鳥瞰図表示を行って近景の道路形状が確実に把握されやすい表示処理が施される。
【0042】
なお、被写界深度rが描画距離nと同じ値に設定されている場合、直線道路では俯角が0°となる。このため、本実施形態では、被写界深度rを描画距離nの約110%の値に設定している。これにより、直線道路においても若干の俯角が付与された鳥瞰図的な三次元地図が描画されるため、周囲の状況をより把握しやすくなるし、曲線道路を鳥瞰図で表示する場合との違和感が解消される。
【0043】
また、三次元表示エリア51を表示画面の1/2に設定している場合、描画視点Fを決定するための俯角は以下の数式(1)により算出される。
【数1】

ただし、θは直線QFと直線PFとがなす角度(∠QFP)である。
【0044】
なお、第1通過地点Qを規定するための描画距離nは適宜設定可能であり、例えば50〜100m程度に設定することにより、ドライバーが実際に見ている風景に近い三次元地図が生成される。また、被写界深度rとは、三次元地図を描画する際の表示可能範囲を設定するものであり、描画視点Fから描画対象における最も離れた地点までの距離で表される。
【0045】
つぎに、二次元固定縮尺処理部73について説明する。二次元固定縮尺処理部73は、誘導経路Uのうち、第1通過地点Qから第2通過地点Rまでの道路地図情報を記憶手段4から取得し、固定縮尺により二次元地図を生成するものである。その固定縮尺値は、予め固定された値でもよいし、ドライバーによって適宜設定されるようにしてもよい。
【0046】
また、二次元可変縮尺処理部74は、誘導経路Uのうち、第2通過地点Rから目的地Sまでの道路地図情報を記憶手段4から取得し、適宜変更される可変縮尺により二次元地図を生成するものである。その可変縮尺値は、目的地Sまでの距離によって定まり、目的地Sを二次元可変縮尺エリアの上端に定点として設定し、長距離であれば縮尺を小さくし、近距離に近づくと縮尺が大きくなるように設定されている。なお、第2通過地点Rも第1通過地点Qと同様、適宜設定可能であり、例えば5〜10km程度先の地点に設定することにより、時速60kmの自動車が5分〜10分程度走行する先までの経路を二次元の固定縮尺地図として表示する。
【0047】
以下、二次元固定縮尺処理部73および二次元可変縮尺処理部74による誘導経路Uの具体的な描画方法について説明する。まず、二次元固定縮尺処理部73による固定縮尺をc、二次元可変縮尺処理部74による可変縮尺をt、二次元固定縮尺表示エリア52および二次元可変縮尺表示エリア53の表示画面上における縦方向長さの合計をLとすると、以下の数式(2)が成立する。
【数2】

この数式(2)をtについて整理すると、以下の数式(3)が導出される。
【数3】

ただし、「XQR」は、第1通過地点Qと第2通過地点Rとの間のX座標の差を示すものとする。XRS,YQR,YRSについても同様。
したがって、二次元可変縮尺処理部74は、上記数式(3)の解のうち、t>0となるtを可変縮尺として取得する。
【0048】
可変縮尺tが決定すると、第1通過地点Qから目的地SまでのベクトルQSは、以下の数式(4)により求められる。
【数4】

この数式(4)により、第1通過地点Qから目的地Sまでのベクトルの傾きがわかるため、この傾きが画像表示手段5において垂直方向上方となるような回転成分を持ったアフィン行列を作成することで回転行列を算出する。
【0049】
そして、二次元固定縮尺処理部73は、第1通過地点Qから目的地Sまでのベクトルに上記回転行列を適用した上で、第1通過地点Qから第2通過地点Rまでの誘導経路Uを固定縮尺cにより描画する。同様にして、二次元可変縮尺処理部74は、第1通過地点Qから目的地Sまでのベクトルに上記回転行列を適用した上で、第2通過地点Rから目的地Sまでの誘導経路Uを可変縮尺tにより描画する。これにより、図2に示すように、第1通過地点Qが常に左右方向の中心線上であって、かつ、二次元固定縮尺表示エリア52の下端に位置するとともに、目的地Sが常に左右方向の中心線上であって、かつ、二次元可変縮尺表示エリア53の上端に位置するように描画される。
【0050】
また、本実施形態では、描画された第1通過地点Qから第2通過地点Rまでの誘導経路Uと、第2通過地点Rから目的地Sまでの誘導経路Uとは、実際の道路の形状を考慮して第2通過地点Rにおいて滑らかに連結されるようになっている。具体的には、それぞれの誘導経路Uの第2通過地点Rにおける接線を算出し、この接線が一致するように接続する。一方、第1通過地点Qから第2通過地点Rまでの誘導経路Uと、現在位置Pから第1通過地点Qまでの誘導経路Uとは、第1通過地点Qにおいて、実際の道路の形状を考慮することなく単に連結されるようになっている。
【0051】
以上のように連続的に結合された現在位置Pから目的地Sまでの誘導経路Uを表す道路地図は、画像データとして画像メモリ6に格納される。上記三つの表示エリアを組み合わせて表示する場合、現在位置P、第一通過地点Qおよび目的地Sが常に、特定の同一直線上に配置される。本実施形態では各点が常に表示画面の中央線上に配置される。また、三次元表示エリア51と二次元固定縮尺表示エリア52との境界線は地平線として表示される。以上のような画像表示よってドライバーは最終目的地Sまでの距離感、経路の複雑性、近景、中景、遠景等の状況を容易に把握できる。
【0052】
なお、本実施形態では、3つの表示エリアを組み合わせて一つの表示画面を構成しているが、いずれか2つの表示エリアを抽出して組み合わせてもよい。例えば、目的地Sが中距離地点に存在する場合には、三次元表示エリア51と二次元固定縮尺表示エリア52の2つの表示エリアのみで表示してもよい。もちろん、目的地Sが極めて遠方に存在する場合などには表示画面に目的地Sが表示されないケースもあり得る。三次元表示エリア51と二次元固定縮尺表示エリア52とを組み合わせて表示する場合、第2通過地点Rは設定されず、二次元固定縮尺処理部73が、第1通過地点Qから目的地Sまでのベクトルを真上方向に回転させた後、第1通過地点Qから目的地Sまでの誘導経路Uを固定縮尺cにより描画する。そして、三次元処理部72により描画された現在位置Pから第1通過地点Qまでの三次元地図と第1通過地点Qを境界として連続的に結合される。このとき、現在位置P、第1通過地点Qおよび目的地Sが表示画面の中央線上に表示される。
【0053】
また、三次元表示エリア51と二次元可変縮尺表示エリア53の2つの表示エリアのみで表示する場合、第2通過地点Rは設定されず、二次元可変縮尺処理部74が、第1通過地点Qから目的地Sまでのベクトルを真上方向に回転させた後、第1通過地点Qから目的地Sまでの誘導経路Uを可変縮尺tにより描画する。そして、三次元処理部72により描画された現在位置Pから第1通過地点Qまでの三次元地図と第1通過地点Qを境界として連続的に結合される。このとき、現在位置P、第1通過地点Qおよび目的地Sが表示画面の中央線上に表示される。
【0054】
さらに、二次元固定縮尺表示エリア52と二次元可変縮尺表示エリア53の2つの表示エリアのみで表示する場合、第1通過地点Qを設定しない場合と、現在位置Pを設定しない場合とが考えられる。まず、第1通過地点Qを設定しない場合、二次元固定縮尺処理部73が、現在位置Pから第2通過地点Rまでの誘導経路Uを固定縮尺cで描画する。そして、二次元可変縮尺処理部74により描画された第2通過地点Rから目的地Sまでの二次元地図と連続的に結合される。このとき、現在位置Pおよび目的地Sが同一の左右中央線O上に表示される。
【0055】
一方、現在位置Pを設定しない場合、二次元固定縮尺処理部73および二次元可変縮尺処理部74は、本実施形態と同様に、第1通過地点Qから目的地Sまでの誘導経路Uを描画する。そして、現在位置Pから第1通過地点Qまでの誘導経路Uは、ドライバーが実際に見ている光景で補うようになっている。このとき、例えば、車両のフロントガラスを有機EL(ElectroLuminescence)ディスプレイとして構成したものを画像表示手段5として使用し、この有機ELディスプレイに第1通過地点Qから目的地Sまでの誘導経路Uを半透過状態で表示することが考えられる。この構成により、ドライバーが実際に見ている誘導経路Uと連続するように描画地図が表示されるため、ドライバーは両者が連続的に結合された状態をイメージし易くなる。
【0056】
以上、説明したように、ドライバーをナビゲーションする場合に最低限必要な情報として、誘導経路Uを示す道路地図のみを表示するようにしてもよい。これにより、ドライバーは、第1通過地点Q以降の誘導経路Uがワインディングロードであるとか、ほぼ直線である等の道程情報を容易に理解することができる。一方、本実施形態では、二次元固定縮尺処理部73が、記憶手段4に記憶されている道路地図情報から走行中の目印になる情報をも抽出し、誘導経路Uに組み込んで簡易な表現によって表示するようになっている。例えば、図2に示すように、第1通過地点Qから第2通過地点Rまでの誘導経路Uに交差する道路情報や信号機の設置情報等を抽出し、その交差道路の一部や信号機マークを合わせて描画する。この場合、交差点情報としては詳細な道路幅等は無視し、十字路か丁字路かわかる程度に髭のように表示するだけで、ドライバーの理解には十分である。
【0057】
また、本実施形態では、二次元固定縮尺処理部73および二次元可変縮尺処理部74は、誘導経路Uが市街地を通っているのか、山間部を通っているのか等の道路種別を示すエリアマークを表示するようになっている。例えば、図2に示すように、市街地を通る誘導経路Uの背景には碁盤目状のエリアマークを描画したり、山間部を通る誘導経路Uの背景には鋸歯状のエリアマークを描画するようにしてもよい。また、市街地は赤色、山間部は緑色というように、色分けするようにしてもよい。これによって経路途中の景観を容易に認識することができ、予めイメージを持って運転することができるため、所定エリアを通過した際に頭の中で描いた地図情報と照合して間違っていないことを確認できれば安心して走行できるし、間違っていれば早めに気づく助けにもなる。
【0058】
さらに、二次元固定縮尺処理部73および二次元可変縮尺処理部74は、目的地Sまでの走行距離の長さに応じて誘導経路Uを示すラインの太さを変えるようにしてもよい。例えば、5km間隔で誘導経路Uの太さを徐々に細く描き、5km走行して目的地Sが近づけば各ラインの太さが太くなるように変更すれば、目的地Sまでの距離感を視覚を通じて感覚的に把握できる。
【0059】
つぎに、本実施形態の地図表示プログラムにより実行される地図表示装置1の作用および本実施形態の地図表示方法について、図13のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0060】
まず、ドライバーが本実施形態の地図表示装置1を利用する場合、演算処理手段7により記憶手段4に格納されている地図表示プログラムを起動する(ステップS1)。これにより、画像表示手段5に図示しないメニュー画面が表示されるので、ドライバーは入力手段3を用いて所望の目的地Sを入力する(ステップS2)。このとき、上述した各表示エリアの組み合わせや第1通過地点Qの位置、固定縮尺c等の各種の設定を行うようにしてもよい。つづいて、演算処理手段7は、位置検出手段2がGPS信号に基づいて検出した車両の現在位置Pを取得する(ステップS3)。本実施形態では、位置検出手段2が所定時間毎に車両の位置を検出しているため、その周期に合わせて演算処理手段7によって車両が移動したかどうか判定される(ステップS4)。
【0061】
ステップS4において、車両が移動していないものと演算処理手段7によって判定されると(ステップS4:NO)、後述するステップS14へと進み、車両の移動が検出されるまで、同じ道路地図を画像表示手段5に表示する。一方、演算処理手段7が車両の移動を認識すると(ステップS4:YES)、ステップS5へと進み、経路探索部71が、ステップS2で入力された目的地Sと、ステップS3で検出された現在位置Pとを取得し、この現在位置Pから目的地Sまでの誘導経路Uを探索する(ステップS5)。
【0062】
つづいて、三次元処理部72は、第1通過地点Qを定める描画距離nを読み出し、前記誘導経路Uにおいて、現在位置Pから第1通過地点Qまでの道路地図情報を記憶手段4から取得する(ステップS6)。この道路地図情報に基づいて、三次元処理部72は、現在位置Pが画角の下端に位置するような描画視点Fの俯角を算出し、この俯角を適用した上で、第1通過地点Qから現在位置P方向に被写界深度rだけ離れた位置を描画視点Fとして取得する(ステップS7)。なお、本ステップS7は、上記機能(1)および(2)を合わせて地図を表示するときに行われる処理であり、上記機能(1)のみで本地図表示装置1を利用する場合、本ステップS7の処理は行われず、ステップS8へと進む。
【0063】
三次元処理部72は、取得した描画視点Fと道路地図情報に基づいて、現在位置Pから第1通過地点Qまでの範囲における三次元地図を描画する(ステップS8)。このとき、図2に示すように、現在位置Pおよび第1通過地点Qを左右中央線上に配置するとともに、前記第1通過地点Qを三次元表示エリア51の上端に固定するように表示処理し、三次元地図を描画する。さらに、上記機能(2)を発揮させた場合には、現在位置Pを三次元表示エリア51の下端に固定するように表示処理する。
【0064】
つづいて、二次元固定縮尺処理部73および二次元可変縮尺処理部74は、ステップS5で探索された誘導経路Uに基づいて、第1通過地点Qから目的地Sまでの道路地図情報を記憶手段4から取得する(ステップS9)。そして、上述した計算式により可変縮尺tおよび回転行列を算出する(ステップS10)。
【0065】
可変縮尺tおよび回転行列が算出されると、二次元固定縮尺処理部73は、誘導経路Uのうち、第1通過地点Qから第2通過地点Rまでの道路地図情報を記憶手段4から取得し、固定縮尺cにより二次元地図を描画する(ステップS11)。このとき、二次元固定縮尺処理部73は、取得した道路地図情報から誘導経路Uに交差する道路情報や信号機の設置情報等を抽出し、その交差道路の簡易表示や信号機マークを合わせて描画する。また、二次元固定縮尺処理部73は、取得した道路地図情報から誘導経路U上に存在する市街地や山間部に関する情報を抽出し、当該エリアマークを組み込んで描画するようにしてもよい。さらに、距離が遠くなるにつれて誘導経路Uのラインの太さを細くする処理を加えてもよい。
【0066】
つづいて、二次元可変縮尺処理部74は、誘導経路Uのうち、第2通過地点Rから目的地Sまでの道路地図情報を記憶手段4から取得し、可変縮尺tにより二次元地図を描画する(ステップS12)。このとき、二次元可変縮尺処理部74は、二次元固定縮尺処理部73と同様に、誘導経路Uに加えてエリアマークを描画するようにしてもよいし、さらに、目的地Sまでの距離に応じて誘導経路Uのラインの太さを適当間隔で細く描画してもよい。
【0067】
演算処理手段7は、ステップS8で生成された三次元地図と、ステップS11で生成された固定縮尺二次元地図と、ステップS12で生成された可変縮尺二次元地図とを連結することにより、現在位置Pから目的地Sまでの道路地図を取得し、画像データとして画像メモリ6に格納する(ステップS13)。このとき、三次元地図および固定縮尺二次元地図においては、第1通過地点Qが左右中央線O上に描画されているため、誘導経路Uが連続して繋がるようになっている。ただし、実際の道路の形状は考慮していない。一方、固定縮尺二次元地図および可変縮尺二次元地図を連結する際には、実際の道路形状を考慮して第2通過地点Rにおいて滑らかに連結するように接線を一致させる画像処理を施している。
【0068】
画像表示手段5は、画像メモリ6内に格納された画像データに基づいて現在位置Pから目的地Sまでの道路地図を表示する(ステップS14)。本実施形態では、三次元表示エリア51に現在位置Pから第1通過地点Qまでの三次元地図が表示され、二次元固定縮尺表示エリア52に第1通過地点Qから第2通過地点Rまでの二次元地図が表示され、二次元可変縮尺表示エリア53に第2通過地点Rから目的地Sまでの二次元地図が表示される。これにより、図2に示すように、現在位置P、第1通過地点Qおよび目的地Sが、画像表示手段5の左右方向における中心線上に配置された誘導経路Uが描画される。そして、上記機能(1)のみの場合、第1通過地点Qおよび目的地Sが、常に中心線上の定点に固定された状態で表示され、上記機能(2)を組み合わせた場合には、さらに、現在位置Pが中心線上の定点に固定された状態で表示される。一方、第2通過地点Rは二次元固定縮尺表示エリア52と二次元可変縮尺表示エリア53との境界線上で高さを変えずに道路の形状に従って左右に移動して表示される。
【0069】
演算処理手段7は、図示しない計時手段を有しており、地図表示プログラムが実行されている間は、常に、所定時間が経過したか否かを判別している(ステップS15)。そして、所定時間が経過していないときは(ステップS15:NO)、所定時間が経過するまで待機する。一方、所定時間が経過したことを判別すると(ステップS15:YES)、ステップS3へと戻り、再び位置検出手段2から車両の現在位置Pを取得する。なお、画像表示手段5に表示される道路地図は、前記所定時間を短時間に設定するほど車両の移動に合わせて円滑に更新される。
【0070】
そして、演算処理手段7は、新たに取得した現在位置Pと前回の現在位置Pとを比較して、車両が移動したかどうか判定する(ステップS4)。この結果、車両が移動していないと判定されると(ステップS4:NO)、ステップS14へと進み、車両の移動が検出されるまで同じ道路地図を表示する。一方、車両の移動が検出されると(ステップS4:YES)、上述したステップS5〜ステップS14の処理が繰り返し行われ、新たな現在位置Pから目的地Sまでの誘導経路Uの道路地図を表示するようになっている。これにより、画像表示手段5においては、車両の移動に合わせてリアルタイムで道路地図が更新される。
【0071】
以上のような本実施形態の地図表示装置1によれば、
1.現在位置P、第1通過地点Q、および目的地Sを特定の直線上に表示するため位置関係が明確となり必要な情報が探しやすい。ドライバーはその直線上に沿って必要な情報を探せばよいし、従来のように頭の中で描く経路イメージをその都度大きく変更するような事態を回避できる。
2.また、現在位置P、第1通過地点Q、および目的地Sを特定の位置に固定表示されるため、より把握しやすくなる。
3.ナビゲーションに必要な誘導経路Uや道順、道程を見易く表示し、ナビゲーションに不要と思われる情報を極力省略または排除しているため、効率的で確実にナビゲーションすることができる。
4.第1通過地点Qから第2通過地点Rまでの中距離経路を固定縮尺cで描画するため、ドライバーは距離感をつかみやすく、数分〜十数分後の経路をイメージしやすい。
5.第2通過地点Rから目的地Sまでの遠距離経路を可変縮尺tで描画するため、目的地Sが遠くても、その目的地Sまでの誘導経路Uを表示することができ、経路の全行程を理解することができる。
6.第1通過地点Qから目的地Sまでの誘導経路Uの背景には、市街地や山間部などの地域的な特色を示すエリアマークを表示するため、食事やトイレ、休憩のタイミング等の簡単なドライブ計画を走行しながらでも立案できる助けとなる。
7.第1通過地点Qから第2通過地点Rまでの誘導経路Uには、交差する道路の一部や信号機マーク等を簡易的に表示するため、頭の中で数キロ先の景観がイメージしやすくなり、実際の景観ともイメージを合致しやすくなり、経路を確認しながら安心して運転できる等の効果を奏する。
8.交差点やS字カーブ等のように複雑な道路ほど、描画視点Fが上方に移動して二次元の良さを加味した鳥瞰図表示を行うため、近景の道路形状を確実に把握することができ、ドライバーの視野狭窄感を解消することができる。
9.現在位置Pと描画視点Fとの距離の変化に応じて描画視点Fが自動的に移動するため、ドライバーは、表示を切り換えるための操作を一切する必要がない。
【0072】
なお、本発明に係る地図表示装置1は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜変更することができる。
【0073】
例えば、上述した実施形態では、本発明に係る地図表示装置1をカーナビゲーション装置に適用した例について説明したが、これに限られるものではなく、携帯電話等の携帯端末に実装される歩行者用のナビゲーション装置に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明に係る地図表示装置の一実施形態を示すブロック図である。
【図2】本実施形態の画像表示手段を示す模式図である。
【図3】本実施形態において、車両が実際に走行する経路を示す模式図である。
【図4】本実施形態の演算処理手段を示すブロック図である。
【図5】従来の地図表示装置における画角の設定方法を説明する模式図である。
【図6】本実施形態における画角の設定方法を説明する模式図である。
【図7】本実施形態における描画視点の設定方法を説明する模式図である。
【図8】本実施形態における描画視点および画角の状態を示す模式図である。
【図9】本実施形態において、俯角を設定したときの描画視点および画角を示す模式図である。
【図10】本実施形態における三次元表示エリアで直線道路を表示した模式図である。
【図11】本実施形態における三次元表示エリアでL字状道路を表示した模式図である。
【図12】本実施形態における三次元表示エリアで複雑な道路を表示した模式図である。
【図13】本実施形態の地図表示装置の動作を説明するフローチャート図である。
【符号の説明】
【0075】
1 地図表示装置
2 位置検出手段
3 入力手段
4 記憶手段
5 画像表示手段
6 画像メモリ
7 演算処理手段
51 三次元表示エリア
52 二次元固定縮尺表示エリア
53 二次元可変縮尺表示エリア
71 経路探索部
72 三次元処理部
73 二次元固定縮尺処理部
74 二次元可変縮尺処理部
F 描画視点
O 左右中央線
P 現在位置
Q 第1通過地点
R 第2通過地点
S 目的地
U 誘導経路
n 描画距離
r 被写界深度
c 固定縮尺
t 可変縮尺


【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像処理手段が現在位置から所定距離先にある通過予定地点までの経路情報を記憶手段から取得して三次元的に画像処理して画像表示手段に表示する三次元地図表示方法であって、
目的地までの経路上において前記現在位置から一定の描画距離nだけ先までの経路情報を三次元表示を行う領域として取得するとともに、三次元画像を描く視点である描画視点を前記通過予定地点から前記現在位置の方向に前記描画距離n以上の一定距離rを隔てた位置に定め、かつ、前記描画視点を中心に張る画角の下限が前記現在位置に一致するように前記描画視点を上下に移動させて画像処理を行うことにより、
前記現在位置および前記通過予定地点を前記画像表示手段における縦方向の同一直線上の定点位置として表示するとともに、前記現在位置と前記描画視点との間隔の変化に応じて俯角を変動させて三次元道路を表示することを特徴とする三次元地図表示方法。
【請求項2】
コンピュータを、
道路地図情報を記憶する記憶手段と、
現在位置を検出する位置検出手段と、
目的地までの経路情報を検索する経路検索手段と、
前記現在位置から所定距離先の通過予定地点までの経路情報を前記記憶手段から取得して三次元画像処理する画像処理手段と、
三次元化された道路画像を表示する画像表示手段として実行させるとともに、
前記画像処理手段は、前記通過予定地点を取得する場合、目的地までの誘導経路上であって、かつ、前記現在位置から一定の描画距離nだけ先の位置を取得し、前記現在位置から前記通過予定地点までの道路を三次元画像処理することにより、常に、一定の描画距離n先までの誘導経路上の道路を表示するとともに、前記現在位置と前記通過予定地点とを前記画像表示手段における縦方向の特定の直線上に表示するようにコンピュータを実行させることを特徴とする三次元地図表示プログラム。
【請求項3】
請求項2において、前記画像処理手段は、前記通過予定地点から前記現在位置を経て結ぶ直線上に三次元画像を描く視点である描画視点を定めるとともに、前記通過予定地点から前記描画視点までの距離を被写界深度rとして前記描画距離n以上の一定値に設定することにより、前記通過予定地点を前記画像表示手段の定位置に表示するようにコンピュータを実行させることを特徴とする三次元地図表示プログラム。
【請求項4】
請求項3において、前記画像処理手段は、前記描画視点を中心に張る画角の下限が現在位置に一致するように、前記描画視点を半径が被写界深度rとなる鉛直面内の円周軌道上で上下に移動させて俯角を決定することにより、前記現在位置を前記画像表示手段の下部に定位置として表示するとともに、前記現在位置から前記描画視点までの距離の変化に応じて俯角を変化させる鳥瞰図として表示するようにコンピュータを実行させることを特徴とする三次元地図表示プログラム。
【請求項5】
道路地図情報を記憶する記憶手段と、
現在位置を検出する位置検出手段と、
目的地までの経路情報を検索する経路検索手段と、
前記現在位置から所定距離先の通過予定地点までの経路情報を前記記憶手段から取得して三次元画像処理する画像処理手段と、
三次元化された道路画像を表示する画像表示手段
とを有しており、
前記画像処理手段は、前記通過予定地点を取得する場合、目的地までの経路上であって、かつ、前記現在位置から一定の描画距離nだけ先の位置を取得し、前記現在位置から前記通過予定地点までの道路を三次元画像処理することにより、常に、一定の描画距離n先までの経路上の道路を表示するとともに、前記現在位置と前記通過予定地点とを前記画像表示手段における縦方向の同一直線上に表示することを特徴とする三次元地図表示装置。
【請求項6】
請求項5において、前記画像処理手段は、前記通過予定地点から前記現在位置を経て結ぶ直線上に三次元画像を描く視点である描画視点を定めるとともに、前記通過予定地点から前記描画視点までの距離を被写界深度rとして前記描画距離n以上の一定値に設定することにより、前記通過予定地点を前記画像表示手段の定位置に表示することを特徴とする三次元地図表示装置。
【請求項7】
請求項6において、前記画像処理手段は、前記描画視点を中心に張る画角の下限が現在位置に一致するように、前記描画視点を半径が被写界深度rとなる鉛直面内の円周軌道上で上下に移動して俯角を決定することにより、前記現在位置を前記画像表示手段の下部に定位置として表示するとともに、前記現在位置から前記描画視点までの距離の変化に応じて俯角を変化させる鳥瞰図として表示することを特徴とする三次元地図表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−244217(P2006−244217A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−60292(P2005−60292)
【出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【出願人】(399063552)株式会社シーズ・ラボ (5)
【Fターム(参考)】