説明

三次元構造物の形成方法、並びに当該形成方法を用いた液晶表示素子用スペーサの形成方法及び三次元構造物付き透明基板、並びに紫外線照射システム

【課題】 透明基板の所定の位置に三次元構造物を選択的に形成する方法を実現すると共に、所定の位置に選択的に三次元構造物が形成されている透明基板を実現する。
【解決手段】 遮光部20が形成された透明基板8に対して、ネガ型感光性樹脂7を塗布した後、透明基板8におけるネガ型感光性樹脂7を塗布した面と反対の面側より紫外線を照射する。これにより遮光部20によって紫外線が遮られない領域である透光領域9のネガ型感光性樹脂7は硬化する。そして、ビーズ12を透明基板8におけるネガ型感光性樹脂7を塗布した面に散布して、ネガ型感光性樹脂7を塗布した面側から紫外線を照射し、遮光部20で遮光される領域である遮光領域6上に存在する未硬化のネガ型感光性樹脂9を硬化させて、遮光領域6上に配置されたビーズ12のみ透明基板8に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元構造物が形成された透明基板および三次元構造物の形成方法に関するものであり、特に、透明基板に三次元構造物を形成する方法を用いた液晶表示装置の遮光領域に選択的にスペーサを形成する方法および当該形成方法に好適に使用できる紫外線照射システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示素子は、パーソナルコンピュータ、テレビ、電子手帳、携帯電話など、さまざまな電子機器に幅広く用いられている。一般的に液晶表示素子は、透明ガラス基板等から成る2枚の絶縁性基板を対向するように貼り合わせ、当該2枚の絶縁性基板の間隙に、液晶組成物から成る液晶層を配置し、前記絶縁性基板同士の周縁部を貼合わせるシール部材によって、液晶層を封止するように構成される。
【0003】
通常、2枚の絶縁性基板の一方には、薄型トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)などの液晶駆動素子が形成され、他方には、カラーフィルタ(CF)が形成される。上記の絶縁性基板の間隙(以後、「セルギャップ」と呼ぶ)、すなわち液晶層の厚みにむらがあると、液晶表示素子に表示むらが発生する。従って、セルギャップを、液晶層全体にわたって精度良く均一に保つ必要がある。
【0004】
通常、セルギャップは2〜5μm程度と狭く、該セルギャップを均一に保つために、たとえば、直径がほぼ均一のプラスチックビーズを絶縁性基板上に噴霧して、プラスチックビーズを絶縁性基板上に分散させることが行なわれる。すなわち、セルギャップを均一に保持するためのいわゆるスペーサとして、このプラスチックビーズを用いる方法がある。
【0005】
しかしながら、上記の方法では、プラスチックビーズはシール部材中でランダムに分散し、その分散を制御することは困難であるので、絶縁性基板上で局所的にプラスチックビーズの分布の濃淡が発生する。特に、光源からの光を透過して表示に使用される領域(以下「透光領域」と呼ぶ)に多数のスペーサが凝集すれば、液晶表示素子の使用時に、透光領域に形成されたスペーサが透明な場合には輝点として、またスペーサが黒色の場合には黒点として観測されることになり、光漏れなどに起因する表示むらが生じ、表示品位が低下するという問題がある。
【0006】
そこで、光を透過させない領域(以下「遮光領域」と呼ぶ)に選択的にスペーサを形成する方法が提案されている。遮光領域にスペーサを配置できれば、スペーサに起因した表示むらを抑制できるので表示品位の良い液晶表示素子を提供できる。
【0007】
上記のように選択的に遮光領域にスペーサを形成する方法としては、例えば特許文献1に、フォトリソグラフィを用いてフォトレジストからなるスペーサを遮光領域に形成する方法が挙げられる。しかしながら、上記の方法によると、スペーサを形成するときに、フォトレジストを安定的に塗布するために、必要以上にフォトレジストを塗布して、その結果、フォトレジストの塗布量が多くなり、コストが高くなるという問題があった。
【0008】
そこで、特許文献2には、硬化型樹脂組成物をインクジェット法によって、選択的に遮光領域上に吐出し、吐出した上記樹脂組成物を硬化させてスペーサを形成する方法が提案されている。
【0009】
また、特許文献3には、インクジェット法によって基板上に接着剤を塗布し、次いでビーズを散布して接着剤にビーズを付着させ、接着剤に付着しなかったビーズを基板上より除去することにより、スペーサを形成する方法が開示されている。
【0010】
上記のように、インクジェット法は所定領域にスペーサを形成するためのマスクを必要としないため、フォトリソグラフィによってスペーサを形成する場合に比べて安価にスペーサを形成できる。
【特許文献1】特開平6−175133号公報(1994年6月24日公開)
【特許文献2】特開2001−83525号公報(2001年3月30日公開)
【特許文献3】特開2001−83906号公報(2001年3月30日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献2の構成では、インクジェット法を用いて硬化型樹脂組成物などを基板の所定の位置(例えば、遮光領域)に吐出したとき、所定の位置より硬化型樹脂組成物などがはみ出してしまうという問題を生じる。
【0012】
通常、上記インクジェット法においては、樹脂(インク)を吐出するインクジェットヘッドのノズル部付近で樹脂の目詰まりを防止するため、ノズル径を細くすることができず、樹脂の吐出量(体積)を減らすことができない。そのため、吐出する樹脂の体積は概ね1pl以上になる。また、安定して吐出動作を確保するには4〜5pl以上の吐出量を必要とするのが現状である。
【0013】
しかしながら、上記の4〜5plなる樹脂の吐出量に比べ、通常、遮光領域は20〜30μm幅程度と狭いので、塗布された樹脂を上記遮光領域内に配置することは難しい。このため、遮光領域に隣接する透光領域に樹脂がはみ出る虞がある。これにより、上記樹脂を硬化して形成するスペーサは透光領域にはみ出て形成されることとなる。その結果、液晶表示素子の使用時に、光漏れなどに起因する表示むらが生じ、液晶表示素子の表示品位の劣化を発生してしまう。
【0014】
特許文献3に記載のインクジェット法によって基板上に接着剤を塗布する方法においても、類似した課題が発生する。すなわち、インクジェット法を用いて接着剤を基板上に塗布するとき、塗布すべき遮光領域の面積に比べて吐出量が多いため、接着剤の塗布領域が拡がり、透光領域にも接着剤が塗布されることとなる。
【0015】
このため、上記接着剤を吐出する工程の後に、ビーズを散布すれば、透光領域に塗布された接着剤上にもビーズが配置され、つまりビーズからなるスペーサが透光領域上に配置されることとなる。
【0016】
以上のように、インクジェット法は一般に微量の樹脂を吐出できるという特徴を有しているものの、例えば上記液晶表示素子用のスペーサを形成する用途では不十分であり、遮光領域に選択的にスペーサを形成することが難しいという問題を生じる。
【0017】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、透明基板の遮光領域のみに選択的に三次元構造物を形成する方法を実現すると共に、当該形成方法を用いた透明基板、および当該形成方法を用いて液晶表示素子用のスペーサを選択的に液晶表示素子用の透明基板の遮光領域にのみ選択的に形成する方法を実現することにある。また、上記形成方法に好適に使用できる紫外線を照射する装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明に係る三次元構造物の形成方法は、上記課題を解決するために、透明基板上に形成された遮光部に三次元構造物を形成する方法であって、ネガ型感光性樹脂を上記透明基板に塗布する塗布工程と、上記透明基板における、ネガ型感光性樹脂を塗布した面に背向する面側から、上記透明基板を介して紫外線を照射して、遮光部で遮光されていない領域に塗布されたネガ型感光性樹脂を硬化する第一の硬化工程と、上記透明基板における、ネガ型感光性樹脂を塗布した面に、ビーズを散布する散布工程と、上記透明基板における、ネガ型感光性樹脂を塗布した面側から、紫外線を照射して、上記第一の硬化工程で硬化されなかった領域のネガ型感光性樹脂を硬化させて、ビーズを透明基板に固定させる第二の硬化工程と、上記第二の硬化工程で透明基板に固定されなかったビーズを透明基板上から除去する除去工程とを有することを特徴としている。
【0019】
上記の構成によれば、遮光部を備えた透明基板に、ネガ型感光性樹脂を塗布する。
【0020】
ここで、ネガ型感光性樹脂とは、ある特定の波長を有する光によって硬化する樹脂を意味する。また、説明のため便宜上、透明基板における、ネガ型感光性樹脂が塗布された面を上面、透明基板の上面に反対の面を下面という。
【0021】
次いで、透明基板の下面側から、紫外線を照射する。これにより、遮光部をマスクとして遮光される領域(以下、遮光領域という)に存在するネガ型感光性樹脂に紫外線が照射されず、遮光部によって遮光されていない領域(以下、透光領域という)に存在するネガ型感光性樹脂に紫外線が照射されることになる。よって、透光領域に存在するネガ型感光性樹脂のみ硬化することができる。すなわち、遮光領域に存在するネガ型感光性樹脂は、紫外線が照射されず、塗布したときと同じ状態を維持することができる。
【0022】
次いで、透明基板の上面側からビーズを散布して、続いて、透明基板の上面側から紫外線を照射する。
【0023】
これにより、遮光領域に存在するネガ型感光性樹脂が硬化する。また、遮光領域に存在するネガ型感光性樹脂は硬化するときに、ネガ型感光性樹脂と接触するビーズを透明基板に固定して硬化する。従って、ネガ型感光性樹脂は、透明基板にビーズを固定する接着剤として作用する。このとき、透光領域のネガ型感光性樹脂は、透明基板の下面からの紫外線の照射により、硬化しているので、透光領域に散布された三次元構造物は固定されない。つまり、透明基板の遮光領域にのみビーズが固定されることになる。
【0024】
そして、固定されなかったビーズを除去すれば、遮光領域に選択的にビーズを配置することとなる。
【0025】
上記の構成によれば、ネガ型感光性樹脂が遮光領域からはみ出し、透光領域にも塗布されたとしても、ビーズを散布する前に、透光領域に塗布されたネガ型感光性樹脂を先に硬化することができるので、透光領域にビーズが固定することがない。従って、遮光領域のみ選択的にビーズを配置できる。従って、遮光領域にのみビーズからなる三次元構造物が形成することができる。つまり、選択的に遮光領域に三次元構造物を形成する形成方法を提供することができる。
【0026】
本発明に係る三次元構造物の形成方法では、透明基板上に形成された遮光部に三次元構造物を形成する方法であって、ポジ型感光性樹脂を上記透明基板に塗布する塗布工程と、上記透明基板における、ポジ型感光性樹脂を塗布した面に背向する面側から、上記透明基板を介して紫外線を照射して、遮光部で遮光されていない領域に塗布したポジ型感光性樹脂を可溶化する可溶化工程と、上記可溶化工程で可溶化されたポジ型感光性樹脂を溶剤によって除去する除去工程と、上記除去工程で除去されなかったポジ型感光性樹脂を焼成する工程とを有することを特徴としている。
【0027】
上記の構成によれば、遮光部を備えた透明基板に、ポジ型感光性樹脂を塗布する。
【0028】
なお、ここで、ポジ型感光性樹脂とは、ある特定の波長を有する光によって可溶化する樹脂を意味する。また、説明のため便宜上、透明基板における、ポジ型感光性樹脂が塗布された面を上面、透明基板の上面に反対の面を下面という。
【0029】
次いで、透明基板の下面側から紫外線を照射する。これにより、遮光領域に存在するポジ型感光性樹脂に紫外線が照射されず、透光領域に存在するポジ型感光性樹脂にのみ紫外線が照射されることになる。よって、透光領域に存在するポジ型感光性樹脂のみ可溶化することができる。すなわち、遮光領域に存在するポジ型感光性樹脂は、紫外線が照射されず、塗布したときと同じ状態を維持することができる。
【0030】
そして、可溶化されたポジ型感光性樹脂を溶剤によって除去することにより、ポジ型感光性樹脂を遮光領域に選択的に残留させることができる。すなわち、透明基板における遮光領域にのみポジ型感光性樹脂からなる三次元構造物を形成することが可能となる。従って、ポジ型感光性樹脂が遮光領域からはみ出して透光領域まで塗布されても、遮光領域にのみ選択的に三次元構造物を配置できるという効果を奏する。
【0031】
また、遮光領域のポジ型感光性樹脂を焼成することにより、さらにポジ型感光性樹脂を透明基板に密着固定することができる。さらにポジ型感光性樹脂を硬化することができる。また、焼成することによりポジ型感光性樹脂を収縮することができる。これにより、焼成するときの温度および時間等の条件を変更することにより、ポジ型感光性樹脂の収縮状態を制御できる。つまり、形成される三次元構造物を所望の高さに制御することができる。
【0032】
また、上記の構成によれば、ポジ型感光性樹脂を透明基板にパターニングして三次元構造物を形成しながらも、リソグラフィに使用される高額な露光装置を用いることなく簡便にパターニングが可能となり、低コストで三次元構造物を形成することが可能となる。
【0033】
本発明に係る三次元構造物の形成方法では、上記塗布工程は、インクジェット法を用いることが好ましい。
【0034】
上記の構成によれば、インクジェット法を用いてネガ型感光性樹脂またはポジ型感光性樹脂の微小な液滴を吐出するので、スピンコート法など基板全面に樹脂を塗布する方法と異なり、所定の位置にネガ型感光性樹脂またはポジ型感光性樹脂を塗布できる。従って、ネガ型感光性樹脂またはポジ型感光性樹脂を無駄にせず、製造コストを削減できる。さらに、所定の位置に、ネガ型感光性樹脂またはポジ型感光性樹脂を容易に塗布できるので、安定的に三次元構造物を形成することができる。
【0035】
本発明に係る三次元構造物の形成方法では、上記塗布工程は、インクジェット法を用いて、ポジ型感光性樹脂の中心部分が遮光部で遮光されている領域に配置されるように、上記ポジ型感光性樹脂を吐出することを含むことが好ましい。
【0036】
上記の構成によれば、インクジェット法を用いて、ポジ型感光性樹脂を吐出するときに、ポジ型感光性樹脂の中心部分が遮光領域に配置されるように、ポジ型感光性樹脂を吐出する。これにより、ポジ型感光性樹脂の遮光領域よりはみ出した部分を除去しても、ポジ型感光性樹脂の吐出量を同一にする限り、遮光領域に形成される三次元構造物の高さを等しくすることができる。従って、所定の高さを有する三次元構造物を再現性良く形成することが可能となる。なお、「ポジ型感光性樹脂の中心部分」とは、ポジ型感光性樹脂を透明基板に吐出したときに、透明基板におけるポジ型感光性樹脂の形成面から、ポジ型感光性樹脂の一番高く盛り上がっている部分をいう。
【0037】
本発明に係る液晶表示素子用スペーサの形成方法は、上記の三次元構造物の形成方法を用いて、遮光部が形成された透明基板上に、液晶層の厚さを制御するための三次元構造物であるスペーサを形成することを特徴としている。
【0038】
上記の構成によれば、液晶層の厚さを制御するための三次元構造物であるスペーサを、透明基板に形成された遮光部で遮光されている遮光領域に選択的に形成することが可能となる。従って、透光領域では、スペーサが形成されないので、液晶表示素子において、スペーサに起因する表示むらを防止することができる。
【0039】
本発明に係る液晶表示素子用スペーサの形成方法では、上記遮光部は液晶駆動素子の金属配線であることが好ましい。
【0040】
上記の構成によれば、上記三次元構造物の形成方法を用いて、上記透明基板上に形成された液晶駆動素子の金属配線を遮光部として、三次元構造物であるスペーサを形成することができる。したがって、三次元構造物を形成するために、新たな遮光領域を必要とせず、液晶表示素子の透光領域を大きく確保することができる。つまり、透光領域の開口率を大きくすることができるので、液晶表示素子において高精度の表示が可能となる。
【0041】
本発明に係る透明基板では、遮光部と、三次元構造物とを備え、上記遮光部で遮光されている遮光領域にネガ型感光性樹脂が塗布されており、上記ネガ型感光性樹脂を介して遮光領域にのみ三次元構造物が形成されていることを特徴としている。
【0042】
上記の構成によれば、三次元構造物は透明基板の遮光領域にのみ形成されている。つまり、透光領域には三次元構造物が形成されていないので、例えば、上記透明基板を、液晶表示素子用のスペーサが形成された透明基板として提供することができる。
【0043】
本発明に係る透明基板では、遮光部と、ポジ型感光性樹脂からなる三次元構造物とを備え、上記三次元構造物は、上記遮光部で遮光されている遮光領域に、ポジ型感光性樹脂の中心部分が配置されることによって形成されていることを特徴としている。
【0044】
上記の構成によれば、ポジ型感光性樹脂は、吐出されたときに遮光領域にポジ型感光性樹脂の中心部分が配置されるようにして、遮光領域に形成されている。したがって、形成された三次元構造物の高さは、複数の三次元構造物が形成されているとしても、互いに等しくなる。したがって、例えば、上記透明基板を、高さが等しいスペーサが固定された液晶表示素子用の基板として提供することができる。
【0045】
本発明に係る紫外線照射システムでは、被処理基板に紫外線を照射する紫外線照射装置と、上記紫外線を反射させて上記被処理基板に照射する反射装置と、上記紫外線照射装置と上記反射装置との間に被処理基板を搬送する搬送手段とを備え、上記反射装置を、被処理基板に紫外線を照射する状態と、被処理基板に紫外線を照射しない状態とに切り替える切替手段をさらに備えていることを特徴としている。
【0046】
上記の構成によれば、被処理基板に紫外線を照射する紫外線照射装置と、上記紫外線を反射させて上記被処理基板に照射する反射装置と、上記紫外線照射装置と上記反射装置との間に被処理基板を搬送する搬送手段とを備えている。これにより、例えば、紫外線照射装置から照射された紫外線と、当該紫外線の反射装置によって反射されて照射された紫外線とによって、被処理基板のある面と被処理基板のある面に背向する面との両面に紫外線を照射することも可能となる。しかも、搬送できるので、所定の位置に紫外線を照射しやすくなる。したがって、紫外線照射装置を透明基板の両面側に配置する必要がなく、さらに、安価で、省スペースを実現した紫外線照射システムを実現できることとなる。
【0047】
また、上記の構成によれば、上記反射装置を、被処理基板に紫外線を照射する状態と、被処理基板に紫外線を照射しない状態とに切り替える切替手段を備えている。これにより、所望とする場合にのみ、被処理基板の両面側から紫外線を照射できる。
【0048】
本発明に係る紫外線照射システムでは、上記切替手段は、上記反射装置を回転させることによって上記両状態を切り替えるようになっていることが好ましい。
【0049】
上記の構成によれば、切替手段によって、反射装置を回転させて、上記両状態(つまり被処理基板に紫外線を照射する状態と、被処理基板に紫外線を照射しない状態)、を切り替えることができるので、所望とする場合にのみ、反射装置によって反射光を被処理基板に照射することができる。
【0050】
本発明に係る紫外線照射システムでは、上記切替手段は、上記反射装置を遮光する遮光部材を備えていることが好ましい。
【0051】
上記の構成によれば、切替手段は、反射装置を遮光する遮光部材を備えているので、所望とする場合にのみ、反射装置によって反射光を被処理基板に照射することができる。
【0052】
本発明に係る紫外線照射システムでは、上記切替手段は、上記反射装置を、紫外線を照射する位置と紫外線を照射しない位置とに移動させるようになっていることが好ましい。
【0053】
上記の構成によれば、反射装置を、紫外線を照射する位置と紫外線を照射しない位置とに移動させることによって、所望とする場合にのみ、反射装置によって反射光を被処理基板に照射することができる。
【発明の効果】
【0054】
本発明に係る三次元構造物の形成方法は、以上のように、ネガ型感光性樹脂を上記透明基板に塗布する塗布工程と、上記透明基板における、ネガ型感光性樹脂を塗布した面に背向する面側から、上記透明基板を介して紫外線を照射して、遮光部で遮光されていない領域に塗布されたネガ型感光性樹脂を硬化する第一の硬化工程と、上記透明基板における、ネガ型感光性樹脂を塗布した面に、ビーズを散布する散布工程と、上記透明基板における、ネガ型感光性樹脂を塗布した面側から、紫外線を照射して、上記第一の硬化工程で硬化されなかった領域のネガ型感光性樹脂を硬化させて、ビーズを透明基板に固定させる第二の硬化工程と、上記第二の硬化工程で透明基板に固定されなかったビーズを透明基板上から除去する除去工程とを有する構成である。
【0055】
また、本発明に係る三次元構造物の形成方法は、以上のように、ポジ型感光性樹脂を上記透明基板に塗布する塗布工程と、上記透明基板における、ポジ型感光性樹脂を塗布した面に背向する面側から、上記透明基板を介して紫外線を照射して、遮光部で遮光されていない領域に塗布したポジ型感光性樹脂を可溶化する可溶化工程と、上記可溶化工程で可溶化されたポジ型感光性樹脂を溶剤によって除去する除去工程と、上記除去工程で除去されなかったポジ型感光性樹脂を焼成する工程とを有する構成である。
【0056】
本発明に係る液晶表示素子用スペーサの形成方法は、以上のように、上記の三次元構造物の形成方法を用いて、遮光部が形成された透明基板上に、液晶層の厚さを制御するための三次元構造物であるスペーサを形成する構成である。
【0057】
これにより、液晶層の厚さを制御するための三次元構造物であるスペーサを、透明基板に形成された遮光部で遮光されている遮光領域に選択的に形成することが可能となる。従って、透光領域では、スペーサが形成されないので、液晶表示素子において、スペーサに起因する表示むらを防止することができる。
【0058】
それゆえ、遮光部で遮光されていない領域(透光領域)に、ネガ型感光性樹脂またはポジ型感光性樹脂が塗布されたとしても、上記領域には三次元構造物が形成されない。つまり遮光部で遮光されている領域のみ選択的に三次元構造物を形成することができるという効果を奏する。
【0059】
本発明に係る透明基板は、以上のように、遮光部で遮光されている遮光領域にネガ型感光性樹脂が塗布されており、上記ネガ型感光性樹脂を介して遮光領域にのみ三次元構造物が形成されている構成である。
【0060】
また、本発明に係る透明基板は、以上のように、三次元構造物が、上記遮光部で遮光されている遮光領域に、ポジ型感光性樹脂の中心部分が配置されることによって形成されている構成である。
【0061】
それゆえ、透光領域には三次元構造物が形成されていないので、例えば、上記透明基板を、液晶表示素子用のスペーサが形成された透明基板として提供することができるという効果を奏する。
【0062】
また、本発明に係る紫外線照射システムは、以上のように、反射装置を、被処理基板に紫外線を照射する状態と、被処理基板に紫外線を照射しない状態とに切り替える切替手段をさらに備えている構成である。
【0063】
それゆえ、紫外線照射装置からの紫外線を反射装置により反射して、反射した紫外線を被処理基板の所定の場所に容易に照射することができる。したがって、透明基板に三次元構造物を形成するときに好適に使用することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0064】
〔実施の形態1〕
本発明の一実施形態について図1ないし図4に基づいて説明すると以下の通りである。
【0065】
図3は、液晶駆動素子である薄型トランジスタ(TFT)が形成された透明基板(TFT基板)の一絵素分の概略構成を示す平面図ある。図中、各部材に付している参照番号のうち、1はドレイン電極、2は絵素電極、3はゲート配線、4はソース配線、5はコンデンサ配線、8は透明基板、12はビーズ、および19はTFTを示している。
【0066】
TFT基板23の一絵素分の構成として、透明基板8にTFT19が一つ配置され、TFT19のドレイン電極1に絵素電極2が接続されている。そして、TFT19、ドレイン電極1、および絵素電極2の周囲をゲート配線3と、ソース配線4とが囲むように形成されている。また、絵素電極2を横断するように、コンデンサ容量を調整するためのコンデンサ配線5が配置されている。
【0067】
ここで、ゲート配線3、ソース配線4、およびコンデンサ配線5は、金属等の導電性材料からなる配線(金属配線)である。つまり上記金属配線は光を遮る遮光部となっている。
【0068】
また、ゲート配線3、ソース配線4、およびコンデンサ配線5の上に、ネガ型感光性樹脂を介して、ビーズ12が固定されている。つまり、遮光部に球状のビーズ12が固定されている。ここで、ビーズ12は、液晶表示素子を製造したとき、TFT基板23と図示しない他の基板との間隙(セルギャップ)、すなわちTFT基板23と他の基板とによって挟持される液晶層の厚みを調整するスペーサ(三次元構造物)として使用される。また、ビーズ12はシリカ、アルミナ、合成樹脂等からなる粒子である。なお、ビーズ12の材質および形状は、スペーサとしての機械的強度を有しておれば、特に限定されるものではなく、円柱状であってもよい。また、その色等も特に限定されるものではない。また、ネガ型感光性樹脂とは、特有の波長を有する光によって硬化する樹脂を意味し、含有する樹脂等の組成については後に詳述する。
【0069】
また、上記TFT基板23には、TFT19等を保護するための保護膜や、液晶分子を一定方向に配向するための配向膜なども形成されているが、ここでは説明の便宜上、図3への表示を省略している。
【0070】
上記の構成によれば、スペーサであるビーズ12は遮光領域(金属配線)にのみ固定されている。したがって、透光領域、つまり液晶表示素子の画素領域にスペーサが存在しないため、スペーサに起因する、画素領域での表示むらを防止することができるという効果を奏する。また、透光領域での開口率を、大きく維持できるので、光を通しやすく高精度の表示が可能となる。
【0071】
なお、以下に示す実施の形態で、上記図3に示す、液晶表示素子を構成するTFT基板23において、上記の配線(例えばゲート配線3、ソース配線4およびコンデンサ配線5等)を遮光部とし、遮光部上に三次元構造物であるスペーサを形成する方法について、図1(a)〜図1(e)、および図2を参照しながら説明する。
【0072】
図1(a)〜図1(e)は、本発明の一実施形態に係る三次元構造物の形成方法の工程図である。図2は本発明の一実施形態に係る三次元構造物の形成方法を説明する断面図であり、紫外線の照射方向を示している。図中、各部材に付している参照番号のうち、6は遮光領域、7はネガ型感光性樹脂、8は透明基板、9は透光領域、10は紫外線、11は紫外線硬化済み樹脂、12はビーズ、および20は遮光部を示している。なお、ここで、遮光部20は、TFT基板23におけるゲート配線3、ソース配線4およびコンデンサ配線5を総称している。
【0073】
本実施形態の三次元構造物(スペーサ)の形成方法は、塗布工程、第一の硬化工程、散布工程、第二の硬化工程、および除去工程を含んでいる。
【0074】
(塗布工程)
図1(a)は、透明基板の遮光領域と透光領域との構成を示した平面図および断面図であり、透明基板上に遮光部が形成された状態を示している。
【0075】
図1(a)に示すように、透明基板8上に形成された遮光部20に、インクジェット法を用いて、インクジェットヘッドのノズルから、紫外線によって硬化する樹脂成分を含有する樹脂(以下、ネガ型感光性樹脂という)7を吐出する。すなわち、ネガ型感光性樹脂7によって、遮光部20を被覆して、遮光部20上にネガ型感光性樹脂7からなる薄膜を形成する。このとき、吐出されたネガ型感光性樹脂7は遮光部20のみを被覆することが望ましいが、遮光部20からはみ出ていても良い。
【0076】
しかし、遮光部20からはみ出したネガ型感光性樹脂7は残留するため(後で詳述する)、ネガ型感光性樹脂7の吐出量を低減することが望ましい。従って、ネガ型感光性樹脂7の吐出方法として、微量な樹脂量を安定して吐出可能なインクジェット法を採用した。なお、微量の樹脂を吐出可能であれば、インクジェット法に限定されるものではなく、ディスペンサ等を用いることができる。
【0077】
通常、インクジェット法によるインク吐出方式は、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)に代表される圧電体を用い、該圧電体の歪みによりインク室の体積を変化させ、力学的な作用によってインクをノズルから吐出させるピエゾ方式が挙げられる。また、ノズル内に配置したヒータを通電過熱することによって、瞬間的に気泡を発生させ、その圧力によってインクを吐出させる熱変換方式が挙げられる。なお、微小量の樹脂を吐出できるものであればよく、特に吐出方式は限定されない。本実施形態では、インクジェット法の原理を用いて、インクの代わりにネガ型感光性樹脂7を吐出する。
【0078】
また、ネガ型感光性樹脂7を吐出するためのインクジェットヘッドの駆動周波数も特に限定されないが、1kHzから100kHz、好ましくは10kHzから30kHzに指定すれば、良好にネガ型感光性樹脂7を吐出することが可能である。
【0079】
また、ネガ型感光性樹脂7の吐出量は、1pl程度に設定すると、ノズル径を狭めなければならず、ノズルがネガ型感光性樹脂7によって詰まってしまい、ネガ型感光性樹脂7が不吐出となる危険性が高まるので、4pl〜5pl程度以上に設定することが望ましい。
【0080】
また、インクジェットヘッドのノズルから透明基板までの距離は、500μm程度に設定することが望ましい。上記距離が長くなれば、着弾位置の精度が低下する傾向にある。また、上記距離が短くなればノズルと透明基板8とが接触する危険性が高くなる。
【0081】
また、ネガ型感光性樹脂7の吐出速度は、ノズルよりネガ型感光性樹脂7が吐出された時点で5〜10m/secに設定すればよい。上記吐出速度が遅ければ、空気抵抗の影響が強くなり、透明基板8にネガ型感光性樹脂7が着弾する着弾精度が低下する傾向がある。また、上記吐出速度を早くすれば、透明基板8にネガ型感光性樹脂7が着弾した際に跳ね返りが生じ、所望の領域外にネガ型感光性樹脂7が飛散する問題が発生する。
【0082】
以上のように、駆動周波数、インクジェットヘッドのノズルから透明基板8までの距離、樹脂吐出速度は、概ね上記に記載した条件に設定すれば好適に樹脂吐出が可能となるが、上記条件は特に本発明を限定するものではなく、適宜所望の条件を考慮して設定して構わない。
【0083】
また、透明基板8としては、ガラス基板が使用される。なお、透明基板として使用に耐えられる程度の、光を透過させる透明性、機械的強度、耐熱性等を有するならば、ガラス基板に限定されるものではなく、プラスチック基板等を使用することができる。
【0084】
また、遮光部20は、光を透過しない、つまり光を遮り、また機械的強度、および耐熱性を有するものを使用することができる。また、本実施の形態では、上述した通り、遮光部20は、TFT基板23におけるゲート配線3、ソース配線4およびコンデンサ配線5を総称している。
【0085】
また、ネガ型感光性樹脂7は、紫外線硬化性を有する樹脂を含んでいる。本実施の形態では、ネガ型感光性樹脂7において、紫外線を照射した領域のみ選択的に反応が進む必要があり、ラジカル重合タイプの紫外線硬化性の樹脂を選択すればよい。
【0086】
ラジカル重合タイプの紫外線硬化性の樹脂は、例えば、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、エステルアクリレートなどの光重合性を有するオリゴマーなどを主成分とし、光重合開始剤などが添加された樹脂を使用できる。
【0087】
また、ネガ型感光性樹脂7は、ガラス基板8の表面に薄膜状に微量に残留することが望ましく、大量の溶媒で希釈した樹脂を用いることが望ましい。
【0088】
ここで、樹脂を希釈するための溶媒は特に限定されない。しかしながら、インクジェット法では、インクジェットヘッドのノズル面において溶媒が蒸発すると不吐出の原因となりうる。また、溶媒と、紫外線硬化性の樹脂との組成が変動する問題も発生する。従って、樹脂中の溶媒の蒸発を防止するため、インクジェットヘッドが動作する温度(例えば室温)での蒸気圧が低い有機溶媒を選定することが望ましい。例えば、カルビトール、ブチルカルビトール、メチルカルビトール、カルビトールアセタート、ブチルカルビトールアセタートなどを使用することが望ましい。あるいは、インクジェット法によって正常に吐出できる樹脂の粘度範囲に納まるように、比較的粘度の高いジエチレングリコールを混合しても良い。
【0089】
なお、ネガ型感光性樹脂7の粘度は、例えば2〜50cP、望ましくは5〜30cP程度に調整すべきである。粘度が高ければインクジェットヘッドよりネガ型感光性樹脂7を吐出することができなくなる。一方、ネガ型感光性樹脂7の粘度が低ければ、吐出したときにネガ型感光性樹脂7が飛散し、微小な飛沫が複数噴出され、所望の位置以外に樹脂7が着弾することになり、所望とする位置にネガ型感光性樹脂7を吐出することが困難となる。
【0090】
なお、ネガ型感光性樹脂7は、後述する「散布工程」で散布するビーズ12(三次元構造物であるスペーサとして作用する)を透明基板8に固定するために用いられる。つまり、ビーズ12の厚さを一定とすると、このネガ型感光性樹脂7の厚さは、形成するスペーサの高さ(厚さ)に影響を与えることになる。よって、そのネガ型感光性樹脂7が大量に遮光部20に塗布されると、樹脂膜自体の厚さが厚くなり、スペーサの高さ(厚さ)がより高くなる。また、使用する樹脂量が多くなり、遮光部20よりはみ出しやすくなり、無駄が多くなる。従って、ネガ型感光性樹脂7の厚さは薄いほうが良く、例えば0.1μm以下程度が望ましい。また、0.1μm以下程度の厚さで、ビーズ12は十分にネガ型感光性樹脂7を介して遮光部20に固定される。なお、ビーズ12を遮光部20に固定する工程については、後で詳述する。
【0091】
そして、ネガ型感光性樹脂7を透明基板8上にごく微量だけ残留させるには、ネガ型感光性樹脂7として、大量の溶媒に希釈(例えば90%以上の希釈率)した樹脂を採用し、吐出した樹脂を乾燥させて溶媒を蒸発すればよい。これにより、基板上にネガ型感光性樹脂7を薄膜状に薄く残留することが可能となる。
【0092】
そして以上のような条件を設定して、微量のネガ型感光性樹脂7を吐出し、希釈した溶媒を乾燥することによって、図1(a)に示すように、遮光部20上にネガ型感光性樹脂7を薄膜状に残留させる。すなわち、ネガ型感光性樹脂7を透明基板8上に塗布できる。
【0093】
なお、ここでは、遮光部20の幅(W)方向の両側の透光領域9にも塗布したネガ型感光性樹脂7がはみ出して塗布された状態を示している。ただし、ネガ型感光性樹脂7がはみ出している部分は遮光部20の両側である必要は無く、片側であっても構わない。透光領域9に塗布したネガ型感光性樹脂7がはみ出た場合に本願発明は好適に用いられる。
【0094】
なお、説明のため、以下では、透明基板8における、ネガ型感光性樹脂7を塗布する面を上面(または表面)、上面に背向する面を下面(または裏面)という。また、透明基板8おける、ネガ型感光性樹脂7を塗布する面側を上側(または表側)、上面に背向する面側を下側(または裏側)という。
【0095】
(第一の硬化工程)
次に、図1(b)に示すように、上記ネガ型感光性樹脂7を塗布した透明基板8の裏面より、紫外線10を照射する。詳しくは、図2に示すように、紫外線10を透明基板8の裏面より照射すると、遮光領域6では紫外線10が遮光部20によって遮光され、透光領域9のみ紫外線10が透過することになる。従って、遮光部20からはみ出たネガ型感光性樹脂7のみが選択的に硬化し、硬化樹脂11となる。
【0096】
なお、図3では紫外線10は平行光として透明基板8面に垂直に入射するように示しているが、透明基板8面に対して斜めの成分の光を有していても、極度に斜め成分の光が多くない限り問題とならない。つまり、透明基板8に対して垂直方向から傾斜して斜め方向に進行する紫外線によって、遮光部20上に塗布されたネガ型感光性樹脂7の端部が硬化しても、十分に後述するビーズ12を付着することができる。例えば、遮光部20の幅(W)が20μm程度であるとき、遮光領部20上のネガ型感光性樹脂7の端部が5μm以下程度硬化しても構わない。
【0097】
また、透明基板8を透過した紫外線10は、反射によって再度透明基板8に入射しないように留意して、紫外線照射システムの構成を決定すると良い。本実施の形態に適した紫外線照射システムについては別途説明する。
【0098】
なお、紫外線10の波長は、透明基板8がガラス製である場合、概ね300nm〜400nm程度であることが望ましい。より好ましくは350nm〜400nmである。例えば300nm以下程度の紫外線10は、ガラスなどを材質とする透明基板8に対する透過率が低く、透明基板8上のネガ型感光性樹脂7に十分に紫外線10を照射することが難しくなる。また、400nm程度以上の長波長(可視光)では、ネガ型感光性樹脂7の硬化処理速度が遅くなる。なお、透明基板8の材質がガラスではなく他の材質である場合、波長特性がガラスと異なることにより、紫外線10の波長を適宜決定すればよい。
【0099】
(散布工程)
図1(c)に示すように、第一の硬化工程が終了した後に、ビーズ12を透明基板8の上面に散布する。すなわち、遮光領域6および透光領域9の区別なく、ビーズ12を散布する。これにより、ビーズ12を透明基板8の表面にランダムに配置する。
【0100】
なお、ビーズ12の散布は、通常用いられる散布方式により散布すれば良く、例えば、窒素や空気を用いて散布する乾式の散布装置を用いれば良い。
【0101】
また、ビーズ12は本実施の形態においてはスペーサとして使用される。ビーズ12は球形状または円筒形状のシリカ、アルミナ、合成樹脂等を使用することができる。
【0102】
また、ビーズ12のサイズは特に限定されないが、液晶表示素子に使用される液晶層の厚みに直接関わるので、所望の液晶層の厚みに対応させて、ビーズ12のサイズ(直径)を決定することが望ましい。そこで、例えば直径が3.5μmの球形状のビーズを使用することができる。
【0103】
なお、ビーズ12は、次の「第二の硬化工程」で、遮光領域6に存在するビーズ12直下のネガ型感光性樹脂7に紫外線10を照射するために、紫外線10を透過できる透明のビーズであることが望ましい。あるいは、後述するように、照射された紫外線10が乱反射を繰り返してビーズ12直下へと到達するように、白色のビーズであっても良い。
【0104】
(第二の硬化工程)
図1(d)に示すように、ビーズ12を散布した工程の後に、ビーズ12を散布した透明基板8の上側より紫外線10を照射し、遮光領域6に存在した未硬化のネガ型感光性樹脂7を硬化する。
【0105】
この時、ビーズ12が透明であれば紫外線10がビーズ12を透過して、ビーズ12直下のネガ型感光性樹脂7を硬化することができる。また、ビーズ12が白色であっても、遮光部20が金属配線など反射率の高い材料によって形成されており、かつ透明基板8面に対して斜めに入射する紫外線成分があれば、金属配線の反射や、ビーズ12での乱反射によって、ビーズ12直下のネガ型感光性樹脂7を硬化できる。
【0106】
ただしこの場合、ビーズ12の影となるためにビーズ12の直下では紫外線10の照射量が低下するので、ネガ型感光性樹脂7が所望の通りに硬化するように十分な照射強度および照射時間を設定する必要がある。
【0107】
そして、上記の紫外線10照射によって、遮光領域6上の未硬化のネガ型感光性樹脂7が硬化して、その上に配置されたビーズ12を透明基板8に固定することができる。
【0108】
一方、透光領域9に存在するネガ型感光性樹脂7は、「第一の照射工程」によって既に硬化されていることにより、透明基板8の透光領域9に散布されたビーズ12は、透明基板8の透光領域9において固定されることはない。
【0109】
(除去工程)
図1(e)に示すように、透光領域9に散布され、「第二の硬化工程」にて透明基板8に固定されなかったビーズ12を除去することに32よって、所望とする、透明基板8の遮光領域6すなわち遮光部20上にのみ選択的に配置されたビーズ12、つまりスペーサを形成することができる。
【0110】
なお、付着しなかったビーズ12を除去する方法は特に限定されないが、ガスの吸引口などを近づけて、ビーズ12を吸い取っても良いし、透明基板8を傾ける、あるいは裏返して除去しても良い。例えば2枚の透明基板を貼り合わせて形成する液晶表示素子用透明基板であれば、貼り合わせるために上記透明基板を傾けるタイミングに併せて、ビーズ12の除去工程を行っても良い。
【0111】
以上に示した工程により、透明基板8上に形成された遮光部20に選択的に三次元構造物であるビーズ12を形成することが可能となる。
【0112】
すなわち、上記の工程を用いて、TFT基板23の遮光部20であるゲート配線3、ソース配線4、およびコンデンサ配線5の上にビーズ12を形成することが可能となる。つまり、選択的に遮光領域6にビーズ12、すなわち三次元構造物であるスペーサを形成することが可能となる。なお。コンデンサ配線5は透光領域である絵素電極2を横断するように配置しているので、ネガ型感光性樹脂7を塗布しないことが望ましい。これにより、スペーサであるビーズ12が形成されることを防止でき、スペーサに起因する表示むらを防止することができる。
【0113】
また、上記の構成によると、遮光領域6外、すなわち透光領域9まで、ネガ型感光性樹脂7がはみ出しても、はみ出たネガ型感光性樹脂7部分にビーズ12が固定されることは無く、ビーズ12に起因する液晶表示素子の光漏れを防止することができる。従ってビーズ12に起因する表示ムラを防止できるので、表示品位の良い液晶表示素子を提供できる。
【0114】
また、上記の構成によれば、遮光領域6と透光領域9とで選択的にネガ型感光性樹脂7を硬化できるので、使用するインクジェットヘッドの精度が低く、基板への樹脂の塗布位置がずれた場合でも対処しやすい。従って、特別なインクジェットヘッドは必要ではなく、汎用のインクジェットヘッドを使用できるという効果を奏する。
【0115】
また、インクジェット法では、微小量の樹脂を吐出できるので、遮光領域6における所望の位置にネガ型感光性樹脂7吐出することができる。つまり、遮光領域6における所望の位置にスペーサを形成することができる。したがって、遮光領域6に均等にスペーサを配置できる。
【0116】
なお、上述の説明では、透明基板8に形成された遮光部20の上にポジ型感光性樹脂7を塗布してビーズ12を固定して三次元構造物を形成する場合について説明したが、これに限るものではない。透明基板8における遮光部20が形成された面と反対の面に、ポジ型感光性樹脂7を塗布してビーズ12を固定しても良い。この場合も遮光部20は紫外線10を遮光するマスクとして作用するため、選択的に遮光部20によって遮光される遮光領域にビーズ12を固定することができる。従って、遮光部20が透明基板8に形成されている限り、遮光領域が存在し、選択的にビーズ12を固定することが可能となる。
【0117】
これにより、例えば、透明基板8上に形成された遮光部20の上に、液晶表示素子で使用される保護膜等が形成されているとしても、保護膜等の上からビーズ12を選択的に遮光領域6に固定することができる。つまり、三次元構造物であるスペーサを選択的に遮光領域6に形成することができる。
【0118】
また、本実施の形態では、TFT基板23にスペーサを形成した場合について説明したが、本実施の形態の三次元構造物の形成方法によれば、カラーフィルタ(CF)が形成された基板(CF基板)に、三次元構造物(つまりスペーサ)を形成することも可能である。この場合、CF基板に形成されたブラックマトリック等によって遮光される遮光領域に、三次元構造物を形成すれば良い。
【0119】
次に、本実施の形態に好適に用いられる紫外線照射システムについて説明する。
【0120】
図4(a)、および図4(b)は、該紫外線照射システムの要部構成を示す断面図である。図4(a)、および図4(b)に示すように、紫外線照射システムは、透明基板8を搬送するコロ13(基板搬送手段)と、透明基板8の下面から紫外線を照射するための円筒状の紫外線照射ランプ(紫外線照射装置)14と、紫外線を反射するための反射装置15と、紫外線の反射を抑えた黒色の遮光カバー16と、透明基板8に効率よく紫外線を入射させるための第二の反射ミラー21とから構成されている。
【0121】
紫外線照射システムには、透明基板8を挟んで、下側にはコロ13、紫外線照射ランプ14、および第二の反射ミラー21が配置され、上側には、反射装置15および遮光カバー16が配置されている。
【0122】
次に、各部材について説明する。
【0123】
コロ13は、透明基板8を搬送するための車輪であり、複数個、回転可能に設けられており、透明基板8をコロ13の上に載せることによって、所定の方向に透明基板8を搬送することができる。なお、図中、矢印はコロ13の回転方向を示している。
【0124】
また、紫外線照射ランプ14は、搬送されてきた透明基板8の下面から紫外線を照射するものであり、コロ13同士の間に設けられている。
【0125】
また、反射装置15は、光を反射させる反射面15aを有している。反射装置15は、透明基板8を介して紫外線照射ランプ14と対向して配置されている。そして反射装置15は、図示しない切替手段によって、透明基板8に対して、反射面15aが対向するように平行な状態から垂直な状態に90度回転できるように設けられている。そして、また、調整手段によって、反射装置15を回転させることにより、反射面15aに入射した紫外線を反射して、反射した紫外線を所定の方向に照射することができる。
【0126】
また、遮光カバー16は、紫外線照射ランプ14から紫外線が照射され、遮光カバー16に達したときに、紫外線の反射を抑えるように、黒色に着色されている。そして、遮光カバー16は反射装置15の周囲を取り囲むように設けられており、紫外線が乱反射することを防止することができる。従って、乱反射された紫外線が透明基板8における所望の位置と異なる位置に入射することを防止できる。
【0127】
また、第二の反射ミラー21は、透明基板8に効率よく紫外線を入射させるためのものであり、紫外線照射ランプ14の周囲を取り囲むように設けられている。
【0128】
図4(a)は、反射面15aを、透明基板8に対して略垂直になるように設定している断面図である。図4(a)に示すように、反射面15aは透明基板8に対して垂直であるので、紫外線照射ランプ14から透明基板8に照射された紫外線は、透明基板8を透過した後、反射面15aに到達せず、遮光カバー16に到達する。または、紫外線が反射面15a到達して反射しても、透明基板8には入射せず、遮光カバー16に進入することになる。すなわち、透明基板8を透過した紫外線は遮光カバー16に進入することになる。遮光カバー16では、紫外線がさらに反射しないため、透明基板8を透過した紫外線が再び透明基板8の表面に入射することを抑制できる。
【0129】
従って、上記の構成によれば、上述した「第一の硬化工程」において、透光領域9に塗布されたネガ型感光性樹脂7を選択的に硬化させる工程を有効に行うことが可能となる。
【0130】
次に、図4(b)は反射面15aを、透明基板8の処理される面(紫外線が照射される面)に対向して略平行になるように設定している断面図である。図4(b)に示すように、反射面15aを透明基板8の紫外線が照射される面と対向するように略平行、あるいは微小角度傾斜させれば、紫外線照射ランプ14から透明基板8を透過して透明基板8の上方に出射する紫外線を、反射面15aにより反射させて、再び透明基板8へと紫外線を入射することができる。
【0131】
このとき、紫外線照射ランプ14から透明基板8を透過して透明基板8の上方に出射する紫外線は、透明基板8の紫外線が照射される面に対して、傾斜した成分の光も有している。よって、反射面15aが上記透明基板8に対して対向するように平行に配置されていても、反射面15aで紫外線が反射するときに、反射面15aに入射する紫外線の入射方向と反射方向とが異なることになる。したがって、透明基板8を透過した紫外線を再度透明基板8の所望の位置(例えば遮光領域)に入射させることも可能になる。また、上記反射装置15の反射面15aを透明基板8に対して意図的に微小角度傾斜させても良い。また、上記反射装置15の反射面15aを透明基板8に対して平行状態から微小角度の傾斜状態まで、傾斜角度を変更しつつ紫外線照射の処理を行っても良い。これにより、遮光部上のネガ型感光性樹脂に対して紫外線を集光することが可能となり、ネガ型感光性樹脂を硬化させることが可能となる。
【0132】
従って、上記の構成によれば、上述した「第二の硬化工程」において、遮光領域6に塗布されたネガ型感光性樹脂7を選択的に硬化させる工程を有効に行うことが可能となる。
【0133】
また、上記の構成により、本紫外線照射システムでは、基板の裏面からの照射と、表面からの照射を、切り替えることが可能となり、円筒状の紫外線照射ランプ14の形状に応じて、透明基板8の透光領域9および遮光領域6に対して紫外線照射処理を行うことが可能となる。
【0134】
そして、コロ13(搬送手段)を用いて、透明基板8を移動することにより、透明基板8の全面に紫外線照射処理を行うことができる。
【0135】
なお、上記紫外線照射システムでは反射装置15が回転する機能を有する場合を示したが、反射装置15は、紫外線照射ランプ14を光源とする紫外線に対する反射の様態が変化できるものであれば良い。
【0136】
例えば、透明基板8の紫外線が照射される面に平行に反射面15aが形成された反射装置15を、上記紫外線照射ランプ14からの紫外線が到達しない位置まで移動する機能を付加し、実質的に下方より出射する紫外線を反射させない構成としても良い。言い換えれば、反射装置15を、紫外線を照射する位置と紫外線を照射しない位置とに移動できればよい。つまり、反射装置15から反射された紫外線が透明基板8に照射されないように、透明基板8と反射装置15とを相対的に移動させるものであればよい。
【0137】
あるいは、透明基板8の紫外線が照射される面に平行に反射面15aが形成された反射装置15の反射面15aに開閉機能を有する黒色のシャッター(切替手段)を付加し、シャッターを開閉することによって、紫外線を照射する状態と紫外線を照射しない状態とに切り替えられる構成としても良い。
【0138】
また、図4(a)および図4(b)では、透明基板8であるガラス基板単体をコロ13によって搬送する形態について説明しているが、紫外線が透過する透明の材質で形成された基板ホルダーに透明基板8を載置して搬送しても良い。
【0139】
また、本実施の形態の構成によれば、基板面の片側にのみ紫外線照射ランプを配置しながらも、透明基板8の両面から紫外線を照射できる。
【0140】
また、上記の構成によれば、反射装置15を回転する機能を有するなど、紫外線照射ランプ14からの紫外線の反射する状態と反射しない状態とに切り替えることができるので、所望とする場合にのみ、透明基板8の両面側から紫外線を照射できる。
【0141】
〔実施の形態2〕
以下、図面を参照しながら本発明の他の実施の形態を説明する。ただし、実施の形態1と重複する内容については説明を省略する。
【0142】
図5(a)〜図5(e)は、本発明の他の実施形態に係る三次元構造物の形成方法の工程図である。図中、各部材に付している参照番号のうち、17はポジ型感光性樹脂、および18は可溶化樹脂を示している。なお、実施の形態1と同様の効果を示す部材には、同じ番号を付け、その説明を省略する。
【0143】
本実施形態の三次元構造物の形成方法は、塗布工程、可溶化工程、除去工程、および焼成工程を含んでいる。
【0144】
(塗布工程)
図5(a)に示すように、透明基板8上に形成された遮光部20に、紫外線によって可溶化する樹脂を含有するポジ型感光性樹脂17を遮光部20上にインクジェット法によって吐出する。すると、遮光部20上において、吐出されたポジ型感光性樹脂17は液滴として存在する。このとき、ポジ型感光性樹脂17の液滴の有する表面エネルギーが最小となるような液滴形状が形成される。そして、ポジ型感光性樹脂17に含まれる溶媒を蒸発させることによって、遮光領域6における遮光部20上にポジ型感光性樹脂17が固定される。なお、ポジ型感光性樹脂17は遮光部20からはみ出ていても構わない。
【0145】
また、ポジ型感光性樹脂17の吐出方法は実施の形態1と同様であり、その説明は省略する。
【0146】
ポジ型感光性樹脂17として、ポジ型のフォトレジストを含有する樹脂を用いる。ポジ型のフォトレジストの種類は特に限定されず、一般的に使用されるノボラック樹脂をベースレジンとしたポジレジストなどから適宜選定すればよい。また、インクジェット法によって微少量のポジ型感光性樹脂17を吐出する場合には、インクジェットのノズル径に応じて、有機溶媒を混合して所定の粘度に調整すればよい。
【0147】
溶媒の種類などは実施の形態1と同様であるが、本実施の形態においてはポジ型感光性樹脂17を三次元構造物であるスペーサとするため、溶媒によるポジ型感光性樹脂17の希釈率は比較的低く設定されることが望ましい。例えば、上記希釈率は20〜80%程度でよく、残留して三次元構造物となるスペーサに対して所望とする体積や、インクジェットの吐出体積を勘案して決定すればよい。
【0148】
なお、上記溶媒を蒸発するには、通常の加熱処理を行えばよい。例えば、通常のポジ型のフォトレジストを使用するならば、80〜100℃程度の温度で10分程度以上の加熱を行うのが一般的であり、ポジ型感光性樹脂17の樹脂成分や溶媒の蒸発状態に応じて適宜設定すれば良い。
【0149】
(可溶化工程)
次に、図5(b)に示すように、ポジ型感光性樹脂17を塗布した透明基板8の裏面より、紫外線10を照射する。この時遮光領域6(遮光部20)では紫外線10が遮光されるので、透光領域9にはみ出たポジ型感光性樹脂17のみが選択的に露光されることとなる。これにより、ポジ型感光性樹脂17は薬剤に対して可溶性となる。ここでは可溶性となったポジ型感光性樹脂17のことを可溶化樹脂18と称する。
【0150】
なお、紫外線10は平行光のみ斜め成分の光も含んでいるので、紫外線10が回り込み、遮光部20上のポジ型感光性樹脂17の端部付近も露光されうるが、塗布されたポジ型感光性樹脂17の最も透明基板からの高さが高い部分に上記の露光範囲が及ばなければ良い。
【0151】
(除去工程)
図5(c)に示すように、上記の可溶化工程が終了した後に、ポジ型感光性樹脂17の樹脂成分であるポジレジストに対応する現像液によって薬液処理を行い現像する。すなわち、可溶化樹脂18を透光領域9から除去する。
【0152】
一般的にはポジレジストの現像液としては強アルカリ性の薬液が使用されており、ポジ型感光性樹脂17の樹脂成分であるポジレジストに併せて適宜ポジレジスト現像用の薬液を選択する。これにより、遮光部20上にのみポジ型感光性樹脂17を残留できる。つまり遮光領域6にポジ型感光性樹脂17を残留できる。
【0153】
(焼成工程)
図5(d)に示すように、ポジ型感光性樹脂17と透明基板8との密着性を向上するために、ポジ型感光性樹脂17をさらに加熱処理して焼成する。そして、焼成されたポジ型感光性樹脂17は焼成ポジ型感光性樹脂22となる。なお、焼成するための温度は、上記塗布工程の溶媒を蒸発させるために設定した温度よりも20℃程度以上高い温度を設定すると良い。
【0154】
以上の工程によって、図5(d)のように三次元構造物であるスペーサを透明基板8の遮光領域6に選択的に形成できる。
【0155】
また、上記焼成工程において、加熱温度や加熱時間を変更することによってポジ型感光性樹脂17の収縮量を調整することができる。したがって、所望の高さに揃えるべきスペーサの高さを、加熱温度や加熱時間によっても制御可能となる。例えば、遮光領域6にのみポジ型感光性樹脂17を形成した工程、すなわち、図5(c)の状態で、ポジ型感光性樹脂17の高さを測定し、所望とする収縮量を見積もり、それに対応した焼成条件にて焼成を行うならば、スペーサの高さを所望とする高さに制御することが容易となる。またさらにその後に、形成したスペーサの高さが所望の高さよりも高い場合は、追加焼成することによって所望の高さへと調整することも可能である。すなわち、高さをモニターしてその結果をフィードバックできる、高さ精度の良いスペーサ形成方法を提供できる。
【0156】
また本手法は液晶表示素子の製造時において、スペーサ高さの仕様が異なる液晶表示素子の製造を容易にする。すなわち、スペーサの高さが変更になった場合、焼成条件によってスペーサの高さを調整できるので、ポジ型感光性樹脂17の吐出量や、ポジ型感光性樹脂17に含まれる樹脂成分の種類を変更してスペーサの高さを調整することを必ずしも必要としない。従って特に少量多品種の液晶表示素子を製造する工程において、それぞれの品種に応じて頻繁に樹脂吐出等の条件設定を変更する必要が無くなるので、簡便なスペーサ形成方法を提供できる。
【0157】
なお、ポジ型感光性樹脂17が透明基板8に十分固定されているとき、かつ高さを調整することが不要のとき、上記焼成工程を省略することができる。
【0158】
また、本実施の形態では、塗布工程で、ポジ型感光性樹脂17を吐出するときに、ポジ型感光性樹脂17の中心部分が遮光領域6に配置されるように、ポジ型感光性樹脂17を吐出することが好ましい。これにより、除去工程で、ポジ型感光性樹脂17の一部を除去しても、除去されてないポジ型感光性樹脂17の高さは変わらない。したがって、吐出量を一定にする限り、高さが均一なポジ型感光性樹脂17からなるスペーサを遮光領域6に形成することが可能となる。
【0159】
また、本実施の形態によれば、三次元構成物が形成された透明基板および他の基板によって液晶表示素子を形成したときに、三次元構造物における他の基板と接する部分は、他の基板に平行な略平面となる。従って、液晶表示素子の製造時に、三次元構造物に他の基板が配置され押し当てられたとしても、三次元構造物には、押し当てられた方向のみにしか負荷を受けることがない。つまり、他の方向(例えば基板と平行な方向)に作用する負荷を受けることがない。よって、三次元構造物が上記他の方向に変形することを防止できる。つまり、セルギャップを均一に保つことが可能となる。
【0160】
また、本実施の形態によれば、インクジェット法で吐出されたポジ型感光性樹脂の数だけスペーサが形成されることになる。つまり、形成するスペーサの数を任意に制御可能であるので、液晶表示素子の各絵素に対して決まった数のスペーサを形成でき、液晶表示素子の遮光領域に均等にスペーサを配置できる。
【0161】
また、本実施の形態によれば、透明基板8の表面状態などを変化させることにより、或いは表面エネルギーの異なる樹脂を用いることにより、ポジ型感光性樹脂17と透明基板8との濡れ性を変化させることができる。これにより、透明基板8上に形成された三次元構造物の高さを変えることなく、三次元構造物における透明基板8と接する面の面積(底面積)を変化させることができる。或いは、三次元構造物の底面積を変えることなく、三次元構造物の高さを変化させることができる。したがって、三次元構造物の弾性率を変化させることができる。さらに、三次元構造物の大きさを変えることなく、作製する三次元構造物の密度を変化させることによって、三次元構造物全体としての弾性率を変化させることができる。したがって、三次元構造物にかかる外部からの応力に対応して、三次元構造物の弾性率を制御することができる。
【0162】
また、上記三次元構造物は、三次元構成物の最も高い部分から透明基板8に向かって、徐々に三次元構造物の占める領域が増加する。したがって、三次元構造物の弾性率、すなわち応力に対する変形量が変化する。したがって、変形量の変化に伴い外部からの応力を変化させることが可能になる。さらに、形成された三次元構造物を球体の一部として近似した場合、三次元構造物の弾性率を、近似される球体のサイズによって制御できる。
【0163】
また、フォトリソグラフィを用いた従来のスペーサ形成方法のように基板全面にポジ型感光性樹脂を塗布する必要がないので少量のポジ型感光性樹脂17にて三次元構造物であるスペーサを形成でき、材料コストを削減することができる。
【0164】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0165】
本発明によると、透明基板の遮光領域に選択的に三次元構造物を形成できるので、液晶表示素子のスペーサを形成するときに好適に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0166】
【図1】本発明の一実施形態に係る三次元構造物の形成方法の工程図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る三次元構造物の形成方法を説明する断面図である。
【図3】本発明に一実施形態に係る液晶表示素子を構成する透明基板の一絵素分の概略構成を示す平面図ある。
【図4】本発明の一実施形態に係る紫外線照射システムの概略構成を示す断面図であり、(a)は、反射装置の反射面が透明基板に対して略垂直な状態を示し、(b)は反射装置の反射面が透明基板に対して略平行な状態を示す。
【図5】本発明の他の実施形態に係る三次元構造物の形成方法の工程図である。
【符号の説明】
【0167】
1 ドレイン電極
2 絵素電極
3 ゲート配線(金属配線)
4 ソース配線(金属配線)
5 コンデンサ配線(金属配線)
6 遮光領域
7 ネガ型感光性樹脂
8 透明基板
9 透光領域
10 紫外線
11 硬化樹脂
12 ビーズ(三次元構造物)
13 コロ(搬送手段)
14 紫外線照射ランプ(紫外線照射装置)
15 反射装置
15a 反射面
16 遮光カバー
17 ポジ型感光性樹脂
18 可溶化樹脂
19 薄型トランジスタ(TFT)
20 遮光部
21 反射ミラー
22 焼成ポジ型感光性樹脂(三次元構造物)
23 TFT基板
W 遮光部の幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板上に形成された遮光部に三次元構造物を形成する方法であって、
ネガ型感光性樹脂を上記透明基板に塗布する塗布工程と、
上記透明基板における、ネガ型感光性樹脂を塗布した面に背向する面側から、上記透明基板を介して紫外線を照射して、遮光部で遮光されていない領域に塗布されたネガ型感光性樹脂を硬化する第一の硬化工程と、
上記透明基板における、ネガ型感光性樹脂を塗布した面に、ビーズを散布する散布工程と、
上記透明基板における、ネガ型感光性樹脂を塗布した面側から、紫外線を照射して、上記第一の硬化工程で硬化されなかった領域のネガ型感光性樹脂を硬化させて、ビーズを透明基板に固定させる第二の硬化工程と、
上記第二の硬化工程で透明基板に固定されなかったビーズを透明基板上から除去する除去工程とを有することを特徴とする三次元構造物の形成方法。
【請求項2】
透明基板上に形成された遮光部に三次元構造物を形成する方法であって、
ポジ型感光性樹脂を上記透明基板に塗布する塗布工程と、
上記透明基板における、ポジ型感光性樹脂を塗布した面に背向する面側から、上記透明基板を介して紫外線を照射して、遮光部で遮光されていない領域に形成したポジ型感光性樹脂を可溶化する可溶化工程と、
上記可溶化工程で可溶化されたポジ型感光性樹脂を溶剤によって除去する除去工程と、
上記除去工程で除去されなかったポジ型感光性樹脂を焼成する工程とを有することを特徴とする三次元構造物の形成方法。
【請求項3】
上記塗布工程は、インクジェット法を用いることを特徴とする請求項1または2記載の三次元構造物の形成方法。
【請求項4】
上記塗布工程は、インクジェット法を用いて、ポジ型感光性樹脂の中心部分が遮光部で遮光されている領域に配置されるように、上記ポジ型感光性樹脂を吐出することを含む請求項2記載の三次元構造物の形成方法。
【請求項5】
液晶表示素子用スペーサを形成する方法であって、
請求項1ないし4の何れか1項に記載の形成方法を用いて、遮光部が形成された透明基板上に、液晶層の厚さを制御するための三次元構造物であるスペーサを形成することを特徴とする液晶表示素子用スペーサの形成方法。
【請求項6】
上記遮光部は液晶駆動素子の金属配線であることを特徴とする請求項5記載の液晶表示素子用スペーサの形成方法。
【請求項7】
遮光部と、三次元構造物とを備え、
上記遮光部で遮光されている遮光領域にネガ型感光性樹脂が塗布されており、上記ネガ型感光性樹脂を介して遮光領域にのみ三次元構造物が形成されていることを特徴とする透明基板。
【請求項8】
遮光部と、ポジ型感光性樹脂からなる三次元構造物とを備え、
上記三次元構造物は、上記遮光部で遮光されている遮光領域に、ポジ型感光性樹脂の中心部分が配置されることによって形成されていることを特徴とする透明基板。
【請求項9】
被処理基板に紫外線を照射する紫外線照射装置と、
上記紫外線を反射させて上記被処理基板に照射する反射装置と、
上記紫外線照射装置と上記反射装置との間に被処理基板を搬送する搬送手段とを備え、
上記反射装置を、被処理基板に紫外線を照射する状態と、被処理基板に紫外線を照射しない状態とに切り替える切替手段をさらに備えていることを特徴とする紫外線照射システム。
【請求項10】
上記切替手段は、上記反射装置を回転させることによって上記両状態を切り替えるようになっていることを特徴とする請求項9記載の紫外線照射システム。
【請求項11】
上記切替手段は、上記反射装置を遮光する遮光部材を備えていることを特徴とする請求項9記載の紫外線照射システム。
【請求項12】
上記切替手段は、上記反射装置を、紫外線を照射する位置と紫外線を照射しない位置とに移動させるようになっていることを特徴とする請求項9記載の紫外線照射システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−323110(P2006−323110A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−146038(P2005−146038)
【出願日】平成17年5月18日(2005.5.18)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】