説明

三次元画像構築方法

【課題】ドリフトの影響を受けずに、連続的に取得した複数枚の断面像を重ね合わせて、正確で鮮明な試料の三次元画像を構築すること。
【解決手段】試料2の表面にデポジション膜DPを形成する工程と、一方向に向かってライン状に延びる補正用マークMをデポジション膜に形成する工程と、補正用マークを横切るようにエッチング加工して、デポジション膜及び試料の断面を露出させる工程と、露出したデポジション膜及び試料の断面像を取得する工程と、これら各工程を繰り返し行って、断面像を連続的に複数枚取得する工程と、補正用マークを基準にして複数枚の断面像を取得した順番に重ね合わせて基礎三次元画像を構築する工程と、を行う三次元画像構築方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料の断面像を取得した後、これら断面像を重ね合わせて三次元画像を構築する三次元画像構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス等の試料の内部構造を解析したり、立体的な観察を行ったりする手法の1つとして、集束イオンビーム(FIB)を利用したエッチング加工を繰り返しながら試料の断面像を複数枚取得した後、これら複数の断面像を重ね合わせて三次元画像を構築する方法が知られている。
この方法は、荷電粒子ビーム装置を利用したCut&Seeと呼ばれる手法で、試料の断面像を見ることができることに加え、試料の立体的な観察を様々な方向から行うことができるという、他の方法にはない利点を有している。具体的には、試料に対してFIBを照射してエッチング加工を行い、断面を露出させる。続いて、露出した断面をSEM観察して断面像を取得する。続いて、再度エッチング加工を行って、次の断面を露出させた後、SEM観察により2枚目の断面像を取得する。このように、エッチング加工とSEM観察とを繰り返して、複数枚の断面像を取得する。そして、最後に取得した複数枚の断面像を重ね合わせることで、三次元画像を構築する方法である。
【0003】
ところで、正確な三次元画像を構築するには、複数枚の断面像をそれぞれ位置ずれしないように重ね合わせることが必要である。しかしながら、実際の荷電粒子ビーム装置は、ドリフトが生じてしまうので、複数枚の断面像を取得した時点で各断面像が微妙に位置ずれしてしまう。そのため、正確で鮮明な三次元画像を構築することが難しかった。なお、ドリフトの原因としては、例えば、試料を載置するステージ等の温度変化による温度ドリフトや装置構成ユニットの機械的な揺れや、エッチング加工する際のFIBの照射精度や、SEM観察する際の電子ビーム(EB)の照射精度等がある。
【0004】
そこで、ドリフトの原因の1つとされるFIBの照射精度を向上する装置が知られている(特許文献1参照)。この装置によれば、ドリフトの影響を低減できるので、各断面像を重ね合わせる際の位置ずれをできるだけなくすことができる。
また、三次元画像を構築する際に、試料の断面画像を重ね合わせるのではなく、平面画像を重ね合わせることで三次元画像を構築する装置も知られている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2003−331775号公報
【特許文献2】特開平4−188553号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の方法では、以下の課題が残されている。
即ち、特許文献1に記載された装置によれば、ドリフトの原因の1つとされるFIBの照射精度を向上してドリフトを低減しているだけであり、僅かながらでも生じてしまうものである。なお、ドリフトそのものを完全になくすことは不可能である。
そのため、この方法でドリフトを低減させたとしても、できるだけ正確な三次元画像を構築するために、複数の断面像を重ね合わせる際に手動で微調整したり、何らかのパターンを有する試料である場合には、そのパターンが連続して繋がるように自動補正したりする等の作業を並行して行わざるを得なかった。
【0006】
ところが、この自動補正する方法は、近年のICやLSIのような微小なパターンでは断面の変化が大きく、パターンマッチングを利用して位置ずれを補正することは困難である。その結果、オペレータが1枚1枚手動で断面像の位置ずれ調整を行っているのが現状である。
【0007】
また、上記特許文献2に記載された装置は、重ね合わせる画像の種類が異なるだけで、やはりドリフトの影響により正確な三次元画像を構築することが難しいものであった。特にこの場合の断面像は、平面画像が重なり合ったものであるので、ドリフトの影響を受けてこの断面像さえも正確に表示することができるものではなかった。
【0008】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、ドリフトの影響を受けずに、連続的に取得した複数枚の断面像を重ね合わせて、正確で鮮明な試料の三次元画像を構築することができる三次元画像構築方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記課題を解決するために以下の手段を提供する。
本発明に係る三次元画像構築方法は、試料の表面に集束イオンビームを照射すると共に原料ガスを供給して、表面を保護するデポジション膜を形成する保護工程と、前記集束イオンビームを利用して、一方向に向かってライン状に延びる補正用マークを前記デポジション膜に形成するマーク形成工程と、前記補正用マークを横切るように前記集束イオンビームを照射しながら前記デポジション膜及び前記試料をエッチング加工して、デポジション膜及び試料の断面を露出させる露出工程と、露出した前記デポジション膜及び前記試料の断面に荷電粒子ビームを照射すると共に、該照射によってデポジション膜及び試料から放出された二次荷電粒子に基づいて断面像を取得する取得工程と、前記露出工程及び前記取得工程を所定回数繰り返し行って、前記一方向に向かって前記断面像を連続的に複数枚取得する繰り返し工程と、前記マーク形成工程時に形成した補正用マークを構築するように、前記断面像に写り込んだ補正用マークを基準にして、前記複数枚の断面像を取得した順番に重ね合わせて基礎三次元画像を構築する構築工程と、を行うことを特徴とするものである。
【0010】
この発明に係る三次元画像構築方法においては、断面像を連続的に複数枚取得した後、これら複数枚の断面像を重ね合わせることで試料の三次元画像を構築することができる。
まず、試料の表面に集束イオンビーム(FIB)、又は、電子ビーム(EB)を照射すると共に、デポジション膜を形成するための原料ガスを供給して、試料の表面を保護するためのデポジション膜を形成する保護工程を行う。次いで、この保護膜として形成したデポジション膜を利用して補正用マークを形成するマーク形成工程を行う。この際、FIBを利用して、一方向に向かってライン状に延びるように補正用マークを形成する。
【0011】
次いで、ライン状に形成した補正用マークを横切るようにFIBを照射しながらデポジション膜及び試料をエッチング加工して、デポジション膜及び試料の断面をそれぞれ露出させる露出工程を行う。この際、補正用マークを横切るようにFIBを照射しているので、デポジション膜の断面に補正用マークの断面も露出した状態となっている。
次いで、露出したデポジション膜及び試料の断面に荷電粒子ビームを照射する。すると、この荷電粒子ビームの照射によって、デポジション膜及び試料の断面から二次荷電粒子が発生する。そして、この二次荷電粒子に基づいて、デポジション膜及び試料の断面像を取得する。この取得工程によって、1枚目の断面像を取得することができる。なお、この断面像には、補正用マークの断面も写り込んだ状態となっている。
【0012】
続いて、上述した露出工程及び取得工程を一方向に向かって所定回数繰り返し行う繰り返し工程を行う。これにより、デポジション膜及び試料の断面像を連続的に複数枚取得することができる。しかも、全ての断面像には、共通して補正用マークが写り込んだ状態となっている。
そして、複数枚の断面像を取得した後、各断面像を取得した順番に重ね合わせる構築工程を行う。この際、断面像に写り込んだ補正用マークを基準にして、隣接する断面像同士を順々に重ね合わせていく。つまり、マーク形成工程時に形成したライン状の補正用マークを構築するように複数枚の断面像を重ね合わせる。これにより、各断面像を取得した時に、各断面像がドリフトの影響を受けていたとしても、位置ずれを補正しながら断面像同士を重ね合わせることができる。
【0013】
その結果、正確で鮮明なデポジション膜及び試料の三次元画像、即ち、基礎三次元画像を構築することができる。従って、試料の立体的な観察や内部構造の解析を正確に行うことができる。また、従来のように、オペレータが断面像を1枚1枚手動で位置ずれ調整する必要がないので、画像処理を行うときのオペレータの負担を極力低減することができる。
【0014】
また、本発明に係る三次元画像構築方法は、上記本発明の三次元画像構築方法において、前記構築工程後、前記基礎三次元画像から前記デポジション膜の三次元画像を除去して、前記試料の三次元画像だけを抽出する抽出工程を行うことを特徴とするものである。
【0015】
この発明に係る三次元画像構築方法においては、基礎三次元画像からデポジション膜の三次元画像を除去して、試料の三次元画像だけを抽出するので、より正確に試料の立体的観察や内部構造の解析を行うことができる。
【0016】
また、本発明に係る三次元画像構築方法は、上記本発明の三次元画像構築方法において、前記露出工程の際、前記集束イオンビームを照射する前に、前記補正用マークを基準として照射位置を補正することを特徴とするものである。
【0017】
この発明に係る三次元画像構築方法においては、FIBを照射してデポジション膜及び
試料の断面を露出させる露出工程の際に、補正用マークを基準としてFIBの照射位置を補正する。つまり、FIBのドリフト補正を行った後、エッチング加工を行う。これにより、FIBの照射位置誤差に伴うドリフトを極力低減できるので、後に行う構築工程の際に画像処理の負担を減少することができる。よって、構築工程を効率良く行うことができる。また、複数枚の断面像をより正確に重ね合わせることができる。
【0018】
また、本発明に係る三次元画像構築方法は、上記本発明のいずれかの三次元画像構築方法において、前記取得工程の際、前記荷電粒子ビームを照射する前に、前記補正用マークを基準として照射位置を補正することを特徴とするものである。
【0019】
この発明に係る三次元画像構築方法においては、荷電粒子ビームを照射してデポジション膜及び試料の断面像を取得する取得工程の際に、補正用マークを基準として荷電粒子ビームの照射位置を補正する。つまり、荷電粒子ビームのドリフト補正を行った後、断面像の取得を行う。これにより、荷電粒子ビームの照射位置誤差に伴うドリフトを極力低減できるので、後に行う構築工程の際に画像処理の負担を減少することができる。よって、構築工程を効率良く行うことができる。また、複数枚の断面像をより正確に重ね合わせることができる。
【0020】
また、本発明に係る三次元画像構築方法は、上記本発明のいずれかの三次元画像構築方法において、前記マーク形成工程の際、前記集束イオンビームの照射により前記デポジション膜をエッチング加工することで前記補正用マークを形成することを特徴とするものである。
【0021】
この発明に係る三次元画像構築方法においては、デポジション膜をエッチング加工して補正用マークを形成するので、該補正用マークが剥がれて取れてしまうといった不具合がなく、指標としての信頼性を向上することができる。
【0022】
また、本発明に係る三次元画像構築方法は、上記本発明のいずれかの三次元画像構築方法において、前記マーク形成工程の際、前記集束イオンビームの照射と同時に前記原料ガスを供給して、前記デポジション膜上にさらにデポジション膜を堆積させることで前記補正用マークを形成することを特徴とするものである。
【0023】
この発明に係る三次元画像構築方法においては、デポジション膜上にさらにデポジション膜を堆積させて補正用マークを形成するので、エッチング加工で補正用マークを形成する場合と異なり、エッチング加工時に試料の意図しない箇所を万が一にも加工してしまう恐れがない。
【0024】
また、本発明に係る三次元画像構築方法は、上記本発明のいずれかの三次元画像構築方法において、前記マーク形成工程の際、前記補正用マークを並行に複数本形成することを特徴とするものである。
【0025】
この発明に係る三次元画像構築方法においては、各断面像を取得した際に、補正用マークの断面が複数露出する。よって、構築工程を行う際に、位置ずれ補正を複数の補正用マークを基準として行えるので、さらに正確な試料の三次元画像を構築することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る三次元画像構築方法によれば、ドリフトの影響を受けずに、正確で綺麗な断面像を重ね合わせた試料の三次元画像を構築することができ、試料の立体的な観察や内部構造の解析を正確に行うことができる。また、画像処理を行うときのオペレータの負担を極力軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明に係る三次元画像構築方法の一実施形態を、図1から図9を参照して説明する。また本実施形態では、集束イオンビーム(FIB)及び電子ビーム(EB)の2種類の荷電粒子ビームをそれぞれ照射することができる、FIB−SEM複合タイプの荷電粒子ビーム装置を例に挙げて説明する。
【0028】
始めに、この荷電粒子ビーム装置について説明する。
この荷電粒子ビーム装置1は、図1に示すように、試料2が載置される試料台3と、該試料台3を変位させるステージ4と、試料2に対してFIB及びEBを照射する照射機構5と、FIB及びEBの照射によって発生した二次荷電粒子Eを検出する二次荷電粒子検出器6と、FIBが照射される試料2の表面付近にデポジション膜DPを形成する原料ガスGを供給するガス銃7と、検出された二次荷電粒子Eに基づいて、試料2の画像データを生成する制御部8と、生成された画像データを試料像として表示する表示部9とを備えている。
【0029】
上記試料2は、真空試料室10内に収納されており、該真空試料室10内でFIB及びEBの照射や原料ガスGの供給等が行われるようになっている。また、本実施形態の試料2は、図2に示すように、両面に開口が開いたスルーホール2a内に金属材料2bが充填されたコンタクトホール2cが形成されている半導体デバイスである場合を例に挙げて説明する。
上記ステージ4は、制御部8の指示にしたがって作動するようになっており、例えば、試料台3を5軸で変位させることができるようになっている。即ち、図1に示すように、試料台3を水平面に平行で且つ互いに直交するX軸及びY軸と、これらX軸及びY軸に対して直交するZ軸とに沿ってそれぞれ移動させたり、試料台3をZ軸回りにローテーションさせたり、試料台3をX軸(又はY軸)回りにチルトさせたりすることができるようになっている。このように試料台3を5軸に変位させることで、試料2をあらゆる姿勢に変位させた状態で、FIB及びEBを照射できるようになっている。
【0030】
上記照射機構5は、試料2に対してFIBを照射するFIB鏡筒15と、EBを照射するSEM鏡筒16とから構成されている。FIB鏡筒15は、イオン発生源15a及びイオン光学系15bを有しており、イオン発生源15aで発生したイオンCをイオン光学系15bで細く絞ってFIBにした後、試料2に向けて照射するようになっている。また、SEM鏡筒16は、電子発生源16a及び電子光学系16bを有しており、電子発生源16aで発生した電子Dを電子光学系16bで細く絞って電子ビームEBとした後、照射するようになっている。
【0031】
制御部8は、上記各構成品を総合的に制御していると共に、二次荷電粒子検出器6で検出された二次荷電粒子Eを輝度信号に変換して試料像(SEM画像)を生成している。そして、生成した試料像をメモリ部8aに記憶して取得すると共に、表示部9に表示させている。これにより、オペレータは、生成された試料像を確認できるようになっている。また、制御部8には、オペレータが入力可能な入力部8bが接続されており、該入力部8bによって入力された信号に基づいて各構成品を制御することもできるようになっている。つまり、オペレータは、ステージ4を作動させて試料台3及び試料2を変位させたり、FIBやEBの照射タイミング、原料ガスGの供給タイミング等をコントロールしたりすることができるようになっている。また、制御部8に試料像の取得等を自動的に行わせることもできるようになっている。
【0032】
次に、このように構成された荷電粒子ビーム装置1を利用して、試料2の三次元画像を構築する三次元画像構築方法について説明する。
この三次元画像構築方法は、保護工程、マーク形成工程、露出工程、取得工程、繰り返し工程、構築工程、抽出工程を順次行って、断面像(試料像)Xを連続的に複数枚取得した後、これら複数枚の断面像Xを重ね合わせることで試料2の三次元画像を構築する方法である。これら各工程について、以下に詳細に説明する。なお本実施形態では、試料2全体の三次元画像を構築するのではなく、コンタクトホール2cが形成されている領域の断面像Xを取得して、三次元画像を構築する場合を説明する。
【0033】
まず、図1に示すように、ステージ4によって試料2をXY方向に適宜移動させながら試料2の表面にFIBを照射すると共に、原料ガスGを供給して試料2の表面を保護するためのデポジション膜DPを形成する保護工程を行う。この際、図3に示すように、試料2の表面全体ではなく、コンタクトホール2cが形成されている領域を少なくとも覆うようにデポジション膜DPを形成する。
続いて、以降の工程で断面像Xを取得する際の視野を確保するための粗加工を行う。つまり、観察開始位置にFIBを照射してエッチング加工(深堀加工)を行い、図4に示すようにV字状の溝部20を形成する。
【0034】
次いで、保護膜として形成したデポジション膜DPを利用して補正用マークMを形成するマーク形成工程を行う。この際、ステージ4によって試料2を一方向に向かって移動させながらFIBを照射して、デポジション膜DPをライン状にエッチング加工する。これにより、図5に示すように、一方向に向かってライン状に延びるように補正用マークMを形成することができる。
【0035】
補正用マークMを形成した後、断面像Xの取得を開始する。最初に、オペレータは、図6に示すように断面像Xの幅(1ライン加工幅)Wや、取得する断面像Xの枚数を、入力部8bを介して制御部8に入力する。制御部8は、この入力条件に基づいて以降の工程を自動的に行って、所定枚数の断面像Xの取得を行う。
まず、ライン状に形成した補正用マークMを横切るように、ステージ4によって試料台3を移動させながらFIBを照射してエッチング加工を行い、デポジション膜DP及び試料2の断面をそれぞれ露出させる露出工程を行う。この際、デポジション膜DP及び試料2の断面が補正用マークMに直交する面となるように、試料台3を移動させながらFIBを照射してエッチング加工を行う。特に、この工程では補正用マークMを横切るようにFIBを照射しているので、図7に示すように、デポジション膜DPの断面に補正用マークMの断面も露出した状態となっている。
【0036】
次いで、図6に示すように、露出したデポジション膜DP及び試料2の断面にEBを照射する。すると、このEBの照射によって、デポジション膜DP及び試料2の断面から二次荷電粒子Eが発生する。二次荷電粒子検出器6は、この二次荷電粒子Eを検出すると共に、制御部8に出力する。制御部8は、送られてきた二次荷電粒子Eから図8に示すように、断面像Xを生成した後、該断面像Xをメモリ部8aに記憶させると共に、表示部9に表示させる。この取得工程によって、1枚目の断面像Xを取得することができる。なお、この断面像Xには、補正用マークMの断面も写り込んだ状態となっている。また、オペレータは、表示部9によってこの断面像Xを確認することができる。
【0037】
続いて、制御部8は、上述した露出工程及び取得工程を一方向に向かって予め設定した所定回数繰り返し行う繰り返し工程を行う。これにより、デポジション膜DP及び試料2の断面像Xを連続的に複数枚取得することができる。しかも、全ての断面像Xには、共通して補正用マークMが写り込んだ状態となっている。
そして、複数枚の断面像Xの取得が終了した後、オペレータはメモリ部8aに記憶されている各断面像Xを取得した順番に重ね合わせる構築工程を制御部8に行わせる。或いは、オペレータ自身が、この構築工程を行う。この際、断面像Xに写り込んだ補正用マークMを基準にして、図8に示すように、隣接する断面像X同士を順々に重ね合わせていく。つまり、マーク形成工程時に形成したライン状の補正用マークMを構築するように複数枚の断面像Xを重ね合わせる。これにより、各断面像Xを取得したときに、各断面像Xがドリフトの影響を受けていたとしても、位置ずれを補正しながら断面像X同士を重ね合わせることができる。
【0038】
その結果、図9に示すように、正確で鮮明なデポジション膜DP及び試料2の三次元画像、即ち、基礎三次元画像を構築することができる。そして最後に、基礎三次元画像から、デポジション膜DPの三次元画像を除去して、試料2の三次元画像を抽出する抽出工程を行う。これにより、ドリフトの影響を受けずに、正確で綺麗な試料2の三次元画像を構築することができる。従って、オペレータは、コンタクトホール2cが形成された試料2の立体的な観察や、内部構造の解析を正確に行うことができる。また、画像処理を行うときのオペレータの負担を極力軽減することができる。
更に本実施形態では、デポジション膜DPをエッチング加工して補正用マークMを形成しているので、該補正用マークMが剥がれて取れてしまうといった不具合がなく、指標としての信頼性を向上することができる。
【0039】
なお、上記実施形態において、FIBを照射する前に、補正用マークMを基準として照射位置を補正しても構わない。つまり、FIBを照射してデポジション膜DP及び試料2の断面を露出させる露出工程の際に、FIBのドリフト補正を行った後にエッチング加工を行う。こうすることで、FIBの照射位置誤差に伴うドリフトを極力低減できるので、後に行う構築工程の際に画像処理の負担を減少することができる。よって、構築工程を効率良く行うことができる。また、複数枚の断面像Xをより正確に重ね合わせることができる。
【0040】
また、FIBの照射時だけではなく、EBを照射する際にも補正用マークMを基準として照射位置を補正しても構わない。つまり、EBを照射してデポジション膜DP及び試料2の断面像Xを取得する取得工程の際に、EBのドリフト補正を行った後に断面像Xの取得を行う。こうすることで、EBの照射位置誤差に伴うドリフトをも極力低減することができる。
【0041】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0042】
例えば、上記実施形態では、デポジション膜DPをエッチング加工することで、補正用マークMを形成したが、この場合に限られることはない。例えば、マーク形成工程の際に、FIBの照射と同時に原料ガスGを供給して、図10に示すように、デポジション膜DP上にさらにデポジション膜DPを堆積させることで補正用マークMを形成しても構わない。この場合であっても、同様の作用効果を奏することができる。それに加え、エッチング加工で補正用マークMを形成する場合とは異なり、エッチング加工時に試料2の意図しない箇所を万が一にも加工してしまう恐れがない。
【0043】
また、上記実施形態では、補正用マークMを1本形成したが、1本に限られるものではなく、並行に複数本形成しても構わない。この場合には、各断面像Xを取得した際に、補正用マークMの断面が複数露出することになる。よって、構築工程を行う際に、位置ずれ補正を複数の補正用マークMを基準として行えるので、さらに正確な試料2の三次元画像を構築することができる。
【0044】
また、上記実施形態では、FIB鏡筒15及びSEM鏡筒16を有するFIB-SEM複合タイプの荷電粒子ビーム装置1を利用したが、本発明に係る三次元画像構築方法は、この荷電粒子ビーム装置1に限定されるものではない。例えば、SEM鏡筒16の代わりにFIB鏡筒15を採用したFIB-FIB複合タイプの荷電粒子ビーム装置でも構わない。この場合には、断面像Xを取得する際に、EBではなくFIBを照射することで、断面像X(試料像)をSIM像として取得することができる。この場合であっても同様の作用効果を奏することができる。つまり、断面像Xを取得する際には、FIBやEB等、荷電粒子ビームを照射できる構成であれば構わない。
【0045】
また、上述した複合タイプではなく、FIB鏡筒15を1つだけ備えたFIBシングルタイプの荷電粒子ビーム装置でも構わない。この場合には、ステージ4を傾斜して試料2に対するFIBの入射角度を可変できるように設計して、エッチング加工時及び断面像X取得時にFIBの照射角度が変わるようにしておく。また、FIBの条件を、エッチング加工時と断面像X取得時とで切り替わるように設計しておく。こうすることで、FIB鏡筒15が1つだけの場合であっても、試料2の三次元画像を構築することができる。また、エッチング加工時、断面像観察時の条件をレシピ化することで、自動で三次元画像の構築を行わせることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係る三次元画像構築方法を行うために使用する荷電粒子ビーム装置の一実施形態を示す構成図である。
【図2】三次元画像構築を行う試料の斜視図である。
【図3】図2に示す試料の三次元画像を構築する際の一工程を説明するための図であって、試料の表面にデポジション膜を形成した状態を示す図である。
【図4】図3に示す状態から、試料をV字状に粗加工して、試料及びデポジション膜の断面を露出させた状態である。
【図5】図4に示す状態から、デポジション膜上に補正用マークを形成した状態である。
【図6】図5に示す状態から、エッチング加工と断面像の取得とを一方向に向かって繰り返し行って、複数枚の断面像を連続的に取得している状態を示す図である。
【図7】エッチング加工によって露出したデポジション膜及び試料の断面を示す図である。
【図8】補正用マークを基準として、断面像を重ね合わせている状態を示す図である。
【図9】(a)は断面像を重ね合わせて構築した三次元画像を試料の上方から見た図であり、(b)は(a)のA−A線に沿った断面斜視図である。
【図10】補正用マークの変形例を示した図である。
【符号の説明】
【0047】
E 二次荷電粒子
G 原料ガス
M 補正用マーク
X 断面像
DP デポジション膜
EB 電子ビーム(荷電粒子ビーム)
FIB 集束イオンビーム(荷電粒子ビーム)
2 試料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の表面に集束イオンビームを照射すると共に原料ガスを供給して、表面を保護するデポジション膜を形成する保護工程と、
前記集束イオンビームを利用して、一方向に向かってライン状に延びる補正用マークを前記デポジション膜に形成するマーク形成工程と、
前記補正用マークを横切るように前記集束イオンビームを照射しながら前記デポジション膜及び前記試料をエッチング加工して、デポジション膜及び試料の断面を露出させる露出工程と、
露出した前記デポジション膜及び前記試料の断面に荷電粒子ビームを照射すると共に、該照射によってデポジション膜及び試料から放出された二次荷電粒子に基づいて断面像を取得する取得工程と、
前記露出工程及び前記取得工程を所定回数繰り返し行って、前記一方向に向かって前記断面像を連続的に複数枚取得する繰り返し工程と、
前記マーク形成工程時に形成した補正用マークを構築するように、前記断面像に写り込んだ補正用マークを基準にして、前記複数枚の断面像を取得した順番に重ね合わせて基礎三次元画像を構築する構築工程と、を行うことを特徴とする三次元画像構築方法。
【請求項2】
請求項1に記載の三次元画像構築方法において、
前記構築工程後、前記基礎三次元画像から前記デポジション膜の三次元画像を除去して、前記試料の三次元画像だけを抽出する抽出工程を行うことを特徴とする三次元画像構築方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の三次元画像構築方法において、
前記露出工程の際、前記集束イオンビームを照射する前に、前記補正用マークを基準として照射位置を補正することを特徴とする三次元画像構築方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の三次元画像構築方法において、
前記取得工程の際、前記荷電粒子ビームを照射する前に、前記補正用マークを基準として照射位置を補正することを特徴とする三次元画像構築方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の三次元画像構築方法において、
前記マーク形成工程の際、前記集束イオンビームの照射により前記デポジション膜をエッチング加工することで前記補正用マークを形成することを特徴とする三次元画像構築方法。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1項に記載の三次元画像構築方法において、
前記マーク形成工程の際、前記集束イオンビームの照射と同時に前記原料ガスを供給して、前記デポジション膜上にさらにデポジション膜を堆積させることで前記補正用マークを形成することを特徴とする三次元画像構築方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の三次元画像構築方法において、
前記マーク形成工程の際、前記補正用マークを並行に複数本形成することを特徴とする三次元画像構築方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−270073(P2008−270073A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−114001(P2007−114001)
【出願日】平成19年4月24日(2007.4.24)
【出願人】(503460323)エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社 (330)
【Fターム(参考)】