説明

上層反射防止膜形成用樹脂及び上層反射防止膜形成用組成物並びにレジストパターン形成方法

【課題】上層反射防止膜形成用樹脂及び上層反射防止膜形成用組成物並びにレジストパターン形成方法を提供する。
【解決手段】本上層反射防止膜形成用樹脂は、下式(1)及び下式(2)の繰り返し単位のうちの少なくとも一方を含み、且つアルカリ現像液に可溶である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上層反射防止膜形成用樹脂及び上層反射防止膜形成用組成物並びにレジストパターン形成方法に関する。更に詳しくは、本発明は、リソグラフィー(特に193nmリソグラフィー)において、定在波効果を十分に低減することができ、且つアルカリ現像液に対する溶解性に優れた上層反射防止膜形成用樹脂及び上層反射防止膜形成用組成物並びにレジストパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、集積回路素子の製造に代表される微細加工の分野においては、より高い集積度を得るために、リソグラフィーにおける加工サイズの微細化が進んでおり、最近ではArFエキシマレーザ(波長193nm)、Fエキシマレーザー(波長157nm)等を用いた200nm程度以下のレベルでの微細加工が可能なリソグラフィー技術が必要とされている。このようなエキシマレーザによる照射に適したレジストとして、酸解離性官能基を有する成分と、放射線の照射(以下、「露光」という。)により酸を発生する成分(以下、「酸発生剤」という。)と、による化学増幅効果を利用したレジスト(以下、「化学増幅型レジスト」という。)が数多く提案されている。この化学増幅型レジストとしては、例えば、カルボン酸のt−ブチルエステル基又はフェノールのt−ブチルカーボナート基を有する樹脂と酸発生剤とを含有するレジストが提案されている。このレジストは、露光により発生した酸の作用により、樹脂中に存在するt−ブチルエステル基或いはt−ブチルカーボナート基が解離して、樹脂がカルボキシル基或いはフェノール性水酸基からなる酸性基を有するようになり、その結果、フォトレジスト膜の露光領域がアルカリ現像液に易溶性となる現象を利用したものである。
このようなリソグラフィーにおいて、今後は更に微細なパターン形成が要求されており、特にArFエキシマレーザー(波長193nm)を用いた微細加工の検討が活発化している。
【0003】
しかしながら、リソグラフィプロセスに通常用いられる放射線は、単一波長であるため、入射放射線とフォトレジスト膜の上下界面で反射した放射線とがフォトレジスト膜内で互いに干渉し、その結果、「定在波効果」或いは「多重干渉効果」と呼ばれる現象、即ち露光量が一定であっても、フォトレジスト膜の厚さが変動すると、膜内における放射線相互の干渉によってフォトレジスト膜に対する実効的な露光量が変動してしまう現象が生じて、レジストパターンの形成に悪影響を及ぼす問題がある。例えば、レジストの組成や粘度、レジストの塗布条件等のわずかな違いにより塗布膜厚が変化したり、或いは基板に段差があるため塗布膜厚の差が生じたりする(凹部の方が凸部より厚くなる)と、それらの膜厚の差によって、フォトレジスト膜に対する実効的な露光量が変化し、パターン寸法が変動したり、レジストパターンの寸法精度が低下したりする。このような定在波効果に関する問題は特に基板反射率の大きいイオンインプランテーション工程において重要な課題となっており、課題の克服が求められている。
【0004】
定在波効果に関する問題を解決するために、これまでにフォトレジスト膜上に上層反射防止膜を形成してフォトレジスト膜表面での反射を抑え、膜内での多重干渉を低減する方法が提案されている。例えば、非特許文献1には、フォトレジスト膜上に、上層反射防止膜としてポリシロキサン、ポリエチルビニルエーテル、ポリビニルアルコール等を積層して、定在波効果を低減させることが記載されている。この場合、フォトレジスト膜表面における反射抑制効果は、主に反射防止膜の屈折率と膜厚とに依存し、理想的な上層反射防止膜の屈折率は√n(nはレジストの屈折率)であり、理想的な上層反射防止膜の膜厚は、λ/4m(λは放射線の波長、mは上層反射防止膜の屈折率)の奇数倍であるとされている。
【0005】
【非特許文献1】J.Eectrochem.Soc.,Vol.137,No.12,p.3900(1990)
【0006】
しかしながら、ポリシロキサン、ポリエチルビニルエーテル或いはポリビニルアルコールからなる上層反射防止膜では、レジストとの屈折率の差が小さいため、定在波効果を十分抑制できず、問題を解決するに至っていないのが現状である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記実情に鑑みてなされたものであり、リソグラフィー(特に193nmリソグラフィー)において、定在波効果を十分に低減することができ、且つアルカリ現像液に対する溶解性に優れた上層反射防止膜形成用樹脂及び上層反射防止膜形成用組成物並びにレジストパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するための手段は以下のとおりである。
[1]下記式(1)で表される繰り返し単位、及び下記式(2)で表される繰り返し単位のうちの少なくとも一方を含んでおり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定される重量平均分子量が1000〜100000であり、且つアルカリ現像液に可溶であることを特徴とする上層反射防止膜形成用樹脂。
【化1】

〔式(1)において、R〜Rは、それぞれ、水素原子、−OH、−COOH又は−SOHであり、且つR〜Rの全てが水素原子になることはない。〕
【化2】

〔式(2)において、R〜R14は、それぞれ、水素原子、−OH、−COOH又は−SOHであり、且つR〜R14の全てが水素原子になることはない。〕
[2]前記式(1)及び前記式(2)で表される繰り返し単位を除く、−OH、−COOH及び−SOHのうちの少なくとも1種を含有する繰り返し単位を含む前記[1]に記載の上層反射防止膜形成用樹脂。
[3]更に、下記式(3)〜(6)で表される繰り返し単位を少なくとも1種含む前記[1]に記載の上層反射防止膜形成用樹脂。
【化3】

〔式(3)において、R15は水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基又はトリフルオロメチル基を表し、Aは単結合、カルボニル基又はカルボニルオキシ基を表し、Bは単結合又はイミノ基を表し、Dは単結合又は炭素数1〜12の2価の有機基を表す。〕
【化4】

〔式(4)において、R16は水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基又はトリフルオロメチル基を表す。〕
【化5】

〔式(5)において、R17は水素原子、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のフッ素化アルキル基を表す。〕
【化6】

〔式(6)において、R18は水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基又はトリフルオロメチル基を表し、Pは単結合、カルボニル基又はカルボニルオキシ基を表し、Qは単結合又は炭素数1〜21の2価の有機基を表し、R19及びR20は、それぞれ、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のフッ素化アルキル基を表す。〕
[4]前記[1]乃至[3]のいずれかに記載の上層反射防止膜形成用樹脂と、溶剤と、を含むことを特徴とする上層反射防止膜形成用組成物。
[5](1)基板上にフォトレジスト膜を形成する工程と、(2)前記[4]に記載の上層反射防止膜形成用組成物を用いて、前記フォトレジスト膜上に上層反射防止膜を形成する工程と、(3)前記上層反射防止膜が形成された前記フォトレジスト膜の所用領域に放射線を照射し、露光する工程と、(4)現像して前記上層反射防止膜を除去する工程と、を備えることを特徴とするレジストパターン形成方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、リソグラフィー(特に193nmリソグラフィー)において、定在波効果を十分低減し、且つアルカリ現像液に対する溶解性に優れた上層反射防止膜を形成することが可能である。従って、本発明は、今後更に微細化が進行するとみられるLSIの製造に極めて好適に使用することができる。また、本発明は、特に193nmリソグラフィーにおけるイオンインプランテーション工程において、特に好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
[1]上層反射防止膜形成用樹脂
本発明の上層反射防止膜形成用樹脂は、下記式(1)で表される繰り返し単位〔以下、「繰り返し単位(1)」という。〕、及び下記式(2)で表される繰り返し単位〔以下、「繰り返し単位(2)」という。〕のうちの少なくとも一方を含んでおり、且つアルカリ現像液に可溶であることを特徴とする。
【0011】
【化7】

〔式(1)において、R〜Rは、それぞれ、水素原子、−OH、−COOH又は−SOHであり、且つR〜Rの全てが水素原子になることはない。〕
【0012】
【化8】

〔式(2)において、R〜R14は、それぞれ、水素原子、−OH、−COOH又は−SOHであり、且つR〜R14の全てが水素原子になることはない。〕
【0013】
本発明において、前記上層反射防止膜形成用樹脂に含まれる繰り返し単位(1)及び(2)は、それぞれ、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0014】
また、本発明の上層反射防止膜形成用樹脂には、アルカリ現像液溶解性を促進するために、前記繰り返し単位(1)及び(2)以外に、−OH、−COOH及び−SOHのうちの少なくとも1種を含有する繰り返し単位を含有させることができる。具体的な繰り返し単位としては、下記式(3)、(4)、(5)及び(6)で表される繰り返し単位〔以下、それぞれ、「繰り返し単位(3)」、「繰り返し単位(4)」、「繰り返し単位(5)」及び「繰り返し単位(6)」という。〕等を挙げることができる。本発明においては、これらの繰り返し単位(3)〜(6)のうち少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0015】
【化9】

〔式(3)において、R15は水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基又はトリフルオロメチル基を表し、Aは単結合、カルボニル基又はカルボニルオキシ基を表し、Bは単結合又はイミノ基を表し、Dは単結合又は炭素数1〜12の2価の有機基を表す。〕
【0016】
【化10】

〔式(4)において、R16は水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基又はトリフルオロメチル基を表す。〕
【0017】
【化11】

〔式(5)において、R17は水素原子、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のフッ素化アルキル基を表す。〕
【0018】
【化12】

〔式(6)において、R18は水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基又はトリフルオロメチル基を表し、Pは単結合、カルボニル基又はカルボニルオキシ基を表し、Qは単結合又は炭素数1〜21の2価の有機基を表し、R19及びR20は、それぞれ、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のフッ素化アルキル基を表す。〕
【0019】
ここで、前記式(3)のDにおける炭素数1〜12の2価の有機基としては、例えば、メチレン基、1,2−エチレン基、1,2−プロピレン基、1,1−ジメチル−1,2−エチレン基、1,3−プロピレン基、1−メチル−1,3−プロピレン基、2−メチル−1,3−プロピレン基、1,4−ブチレン基、1−メチル−1,4−ブチレン基、2−メチル−1,4−ブチレン基、1,5−ペンチレン基、1,1−ジメチル−1,4−ブチレン基、2,2−ジメチル−1,4−ブチレン基、1,2−ジメチル−1,4−ブチレン基、1,6−ヘキシレン基、1,3−シクロペンチレン基、1,4−シクロヘキシレン基等が挙げられる。
【0020】
また、前記式(3)で表される繰り返し単位(3)を与える好ましい単量体としては、例えば、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、(メタ)アクリル酸1−スルホキシエチルエステル、4−ビニル−1−ベンゼンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等が挙げられる。
【0021】
更に、前記式(4)で表される繰り返し単位(4)を与える好ましい単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、α―トリフルオロメチルアクリル酸等が挙げられる。
【0022】
また、前記式(5)のR17における炭素数1〜12のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基等の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等のシクロアルキル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル基、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2−イル基、アダマンタン−1−イル基、アダマンタン−2−イル基等の脂環式炭化水素基等が挙げられる。
更に、前記R17における炭素数1〜12のフッ素化アルキル基としては、例えば、前記炭素数1〜12のアルキル基の水素原子の一部、若しくは全てをフッ素原子に置換した基を挙げることができる。
【0023】
前記式(6)のQにおける炭素数1〜12の2価の有機基としては、例えば、メチレン基、1,2−エチレン基、1,2−プロピレン基、1,1−ジメチル−1,2−エチレン基、1,3−プロピレン基、1−メチル−1,3−プロピレン基、2−メチル−1,3−プロピレン基、1,4−ブチレン基、1−メチル−1,4−ブチレン基、2−メチル−1,4−ブチレン基、1,5−ペンチレン基、1,1−ジメチル−1,4−ブチレン基、2,2−ジメチル−1,4−ブチレン基、1,2−ジメチル−1,4−ブチレン基、1,6−ヘキシレン基、1,3−シクロペンチレン基、1,4−シクロヘキシレン基等が挙げられる。
【0024】
また、前記式(6)のR19及びR20における炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等が挙げられる。
更に、前記R19及びR20における炭素数1〜4のフッ素化アルキル基としては、例えば、前記炭素数1〜4のアルキル基の水素原子の一部、若しくは全てをフッ素原子に置換した基を挙げることができる。
尚、R19及びR20は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0025】
また、前記式(6)で表される繰り返し単位(6)を与える好ましい単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸(1,1,1−トリフルオロ−2−トリフルオロメチル−2−ヒドロキシ−3−プロピル)エステル、(メタ)アクリル酸(1,1,1−トリフルオロ−2−トリフルオロメチル−2−ヒドロキシ−4−ブチル)エステル、(メタ)アクリル酸(1,1,1−トリフルオロ−2−トリフルオロメチル−2−ヒドロキシ−5−ペンチル)エステル、(メタ)アクリル酸(1,1,1−トリフルオロ−2−トリフルオロメチル−2−ヒドロキシ−4−ペンチル)エステル、(メタ)アクリル酸2−{[5−(1’,1’,1’−トリフルオロ−2’−トリフルオロメチル−2’−ヒドロキシ)プロピル]ビシクロ[2.2.1]ヘプチル}エステル、(メタ)アクリル酸3−{[8−(1’,1’,1’−トリフルオロ−2’−トリフルオロメチル−2’−ヒドロキシ)プロピル]テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデシル}エステル等が挙げられる。
【0026】
また、本発明の上層反射防止膜形成用樹脂は、前記繰り返し単位(1)〜(6)以外に、下記式(7−1)又は(7−2)で表される繰り返し単位〔以下、「繰り返し単位(7)」ともいう〕を含んでいてもよい。
【0027】
【化13】

【0028】
上層反射防止膜形成用樹脂が、繰り返し単位(7)を含有する場合には、反射防止膜としての定在波効果を十分に低減させることができるため好ましい。
尚、前記上層反射防止膜形成用樹脂は、前記式(7−1)で表される繰り返し単位と前記式(7−2)で表される繰り返し単位の両方を含有していてもよい。
【0029】
本発明の上層反射防止膜形成用樹脂において、前記繰り返し単位(1)及び(2)の含有率の合計は特に限定されないが、この樹脂における全繰り返し単位を100モル%とした場合に、20〜80モル%であることが好ましく、より好ましくは、30〜70モル%、更に好ましくは40〜60モル%である。この含有割合が20〜80モル%である場合には、反射防止膜としての定在波効果を十分に低減させることができ、且つ波長193nmにおいて十分な透過率を有しており、良好なパターンを得ることができるとともに感度の増大を抑制することができる。
また、前記アルカリ現像液溶解性を促進する繰り返し単位(3)〜(6)の含有率の合計は特に限定されないが、この樹脂における全繰り返し単位を100モル%とした場合に、20〜80モル%であることが好ましく、より好ましくは、30〜70モル%、更に好ましくは40〜60モル%である。この含有割合が20〜80モル%である場合には、現像液に対する十分な溶解性を得ることができ、現像の際に溶け残りやスカムの発生を抑制することができる。
更に、前記繰り返し単位(7)の含有率は特に限定されないが、この樹脂における全繰り返し単位を100モル%とした場合に、10〜60モル%であることが好ましく、より好ましくは20〜50モル%、更に好ましくは30〜50モル%である。この含有割合が10〜60モル%である場合には、反射防止膜としての定在波効果を十分に低減させることができる。
【0030】
また、本発明における上層反射防止膜形成用樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により測定される重量平均分子量(以下、「Mw」という。)は、1000〜100000であり、好ましくは1500〜10000、より好ましくは2000〜7000である。このMwが1000未満である場合には、膜形成能が不十分である可能性があり、一方、100000を超える場合には、現像液に対する十分な溶解速度が得られず、溶け残りやスカムが発生する可能性がある。
【0031】
また、本発明における上層反射防止膜形成用樹脂は、例えば、その各繰り返し単位に対応する重合性不飽和単量体を、ヒドロパーオキシド類、ジアルキルパーオキシド類、ジアシルパーオキシド類、アゾ化合物等のラジカル重合開始剤を使用し、必要に応じて連鎖移動剤の存在下、適当な溶媒中で重合することにより製造することができる。
前記重合に使用される溶媒としては、例えば、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン等のアルカン類;シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン、ノルボルナン等のシクロアルカン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン等の芳香族炭化水素類;クロロブタン類、ブロモヘキサン類、ジクロロエタン類、ヘキサメチレンジブロミド、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、プロピオン酸メチル等の飽和カルボン酸エステル類;アセトン、2−ブタノン、4−メチル−2−ペンタノン、2−ヘプタノン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン類、ジエトキシエタン類等のエーテル類等を挙げることができる。これらの溶媒は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
また、前記重合における反応温度は、通常、40〜120℃、好ましくは50〜100℃であり、反応時間は、通常、1〜24時間、好ましくは3〜12時間である。
【0032】
[2]上層反射防止膜形成用組成物
本発明の上層反射防止膜形成用組成物は、上層反射防止膜形成用樹脂と、溶剤と、を含むことを特徴とする。
前記「上層反射防止膜形成用樹脂」については、前述の説明をそのまま適用することができる。尚、この上層反射防止膜形成用樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0033】
前記「溶剤」としては、上層反射防止膜形成用組成物をフォトレジスト膜上に塗布した際に、フォトレジスト膜とインターミキシングを起こすなどしてリソグラフィー性能を劣化させることが殆どないものが用いられる。
このような溶剤としては、例えば、一価アルコール類、多価アルコール類、多価アルコールのアルキルエーテル類、多価アルコールのアルキルエーテルアセテート類、エーテル類、環状エーテル類、高級炭化水素類、芳香族炭化水素類、ケトン類、エステル類、水等が挙げられる。
【0034】
前記一価アルコール類としては、炭素数4〜8の1価アルコールが好ましい。具体的には、例えば、2−メチル−1−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、3−メチル−2−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、2,4−ジメチル−3−ペンタノール等が挙げられる。
【0035】
前記多価アルコール類としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。
前記多価アルコールのアルキルエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。
前記多価アルコールのアルキルエーテルアセテート類としては、例えば、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。
【0036】
前記エーテル類としては、例えば、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ブチルメチルエーテル、ブチルエチルエーテル、ブチルプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、tert−ブチル−メチルエーテル、tert−ブチルエチルエーテル、tert−ブチルプロピルエーテル、ジ−tert−ブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ジイソアミルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、シクロヘキシルメチルエーテル、シクロペンチルエチルエーテル、シクロヘキシルエチルエーテル、シクロペンチルプロピルエーテル、シクロペンチル−2−プロピルエーテル、シクロヘキシルプロピルエーテル、シクロヘキシル−2−プロピルエーテル、シクロペンチルブチルエーテル、シクロペンチル−tert−ブチルエーテル、シクロヘキシルブチルエーテル、シクロヘキシル−tert−ブチルエーテル等が挙げられる。
前記環状エーテル類としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられる。
【0037】
前記高級炭化水素類としては、例えば、デカン、ドデカン、ウンデカン等が挙げられる。
前記芳香族炭化水素類としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。
前記ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、ジアセトンアルコール等が挙げられる。
前記エステル類としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル等が挙げられる。
【0038】
これらのなかでも、一価アルコール類、エーテル類、環状エーテル類、多価アルコールのアルキルエーテル類、多価アルコールのアルキルエーテルアセテート類、高級炭化水素類が好ましい。
尚、これらの溶剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0039】
また、本発明の上層反射防止膜形成用組成物には、塗布性、消泡性、レベリング性等を向上させる目的で、界面活性剤を更に配合してもよい。
前記界面活性剤としては、例えば、BM−1000、BM−1100(以上、BMケミー社製)、メガファックF142D、同F172、同F173、同F183〔以上、大日本インキ化学工業(株)製〕、フロラードFC−135、同FC170C、同FC−430、FC−431〔以上、住友スリーエム(株)製〕、サーフロンS−112、同S−113、同S−131、同S−141〔以上、旭硝子(株)製〕、SH−28PA、同−190、同―193、SZ−6032、SF8428〔以上、東レダウコーニングシリコーン(株)製〕、エマルゲンA−60、104P、306P〔以上、花王(株)製〕等の商品名で市販されているフッ素系界面活性剤を使用することができる。
尚、これらの界面活性剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0040】
また、これらの界面活性剤の配合量は、上層反射防止膜形成用樹脂100質量部に対して5質量部以下であることが好ましい。
【0041】
本発明における上層反射防止膜形成用組成物としては、前記上層反射防止膜形成用樹脂等を、前記溶剤中に、例えば、0.1〜15質量%(好ましくは0.1〜10質量%)の固形分濃度となるように溶解したのち、例えば、孔径20nm程度のフィルターでろ過して調製したものを用いることが好ましい。
【0042】
また、本発明の上層反射防止膜形成用組成物を用いて形成される膜の波長193nmにおける屈折率(n値)は、1.5以下であることが好ましく、より好ましくは1.25〜1.45であり、更に好ましくは1.25〜1.4である。この屈折率が1.5以下である場合、積層体中での光の反射が抑制され、低在波効果を低減できるため好ましい。
尚、この屈折率は、上層反射防止膜形成用組成物を直径8インチのシリコンウエハー上に塗膜した後、エリプソメーターで測定することができる。
【0043】
[3]レジストパターンの形成方法
本発明のレジストパターン形成方法は、
(1)基板上にフォトレジスト膜を形成する工程〔以下、「工程(1)」という〕と、
(2)上層反射防止膜形成用組成物を用いて、前記フォトレジスト膜上に上層反射防止膜を形成する工程〔以下、「工程(2)」という〕と、
(3)前記上層反射防止膜が形成された前記フォトレジスト膜の所用領域に放射線を照射し、露光する工程〔以下、「工程(3)」という〕と、
(4)現像して前記上層反射防止膜を除去する工程〔以下、「工程(4)」という〕と、を備えることを特徴とする。
【0044】
前記工程(1)では、基板上にフォトレジスト膜が形成される。
具体的には、得られるフォトレジスト膜が所定の膜厚となるようにレジスト組成物溶液を回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の適宜の塗布方法により基板上に塗布した後、予備焼成(以下、「プレベーク」という。)し、塗膜中の溶剤を揮発させることで、フォトレジスト膜が形成される。
【0045】
前記基板としては、例えば、シリコンウエハー、アルミニウムで被覆したウエハー等を用いることができる。尚、形成されるフォトレジスト膜の潜在能力を最大限に引き出すため、例えば、特公平6−12452号公報等に開示されているように、使用される基板上に、有機系或いは無機系の反射防止膜を予め形成しておいてもよい。
【0046】
前記レジスト組成物溶液は特に限定されるものではなく、フォトレジストの使用目的に応じて適宜選択することができる。具体的なレジスト組成物溶液としては、例えば、酸発生剤等を含有する化学増幅型のレジスト組成物等を、適当な溶媒中に、例えば0.1〜20質量%の固形分濃度となるように溶解したのち、例えば孔径30nm程度のフィルターでろ過して調製されたレジスト組成物溶液を使用することができる。尚、市販のレジスト溶液をそのまま使用することもできる。
また、前記レジスト組成物溶液は、ポジ型であってもよいし、ネガ型であってもよいが、ポジ型のレジスト組成物溶液であることが好ましい。化学増幅型のポジ型レジストにおいては、露光により酸発生剤から発生した酸の作用によって、重合体中の酸解離性有機基が解離して、例えば、カルボキシル基を生じ、その結果、レジストの露光部のアルカリ現像液に対する溶解性が高くなり、該露光部がアルカリ現像液によって溶解、除去され、ポジ型のレジストパターンが得られる。
【0047】
前記工程(2)では、上層反射防止膜形成用組成物を用いて、前記フォトレジスト膜上に上層反射防止膜が形成される。尚、上層反射防止膜形成用組成物については、前述の説明をそのまま適用することができる。
具体的には、得られる上層反射防止膜が所定の膜厚となるように上層反射防止膜形成用組成物を回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の適宜の塗布方法によりフォトレジスト膜上に塗布した後、焼成することにより、上層反射防止膜が形成される。
前記上層反射防止膜の厚さは、λ/4m(λは放射線の波長、mは上層反射防止膜の屈折率)の奇数倍に近いほど、フォトレジスト膜の上側界面における反射抑制効果が大きくなる。このため、上層反射防止膜の厚さをこの値に近づけることが好ましい。
尚、本発明においては、前記工程(1)におけるレジスト組成物溶液塗布後のプレベーク、及びこの工程(2)における上層膜形成組成物塗布後の焼成のいずれかの処理は、工程簡略化のため省略することができる。
【0048】
前記工程(3)では、上層反射防止膜が形成されたフォトレジスト膜の所用領域に放射線が照射され、露光が行われる。
前記放射線は、前記フォトレジスト膜を構成している成分や、フォトレジスト膜と上層反射防止膜との組み合わせに応じて適宜選択される。例えば、可視光線;g線、i線等の紫外線;エキシマレーザ等の遠紫外線;シンクロトロン放射線等のX線;電子線等の荷電粒子線の如き各種放射線を選択使用することができる。これらのなかでも、ArFエキシマレーザ(波長193nm)、KrFエキシマレーザ(波長248nm)が好ましく、特にArFエキシマレーザが好ましい。
また、フォトレジスト膜の解像度、パターン形状、現像性等を向上させるために、露光後に焼成(以下、「PEB」という。)を行なうことが好ましい。その焼成温度は、使用されるレジスト組成物等によって適宜調整されるが、通常、30〜200℃程度であり、好ましくは50〜150℃である。
【0049】
前記工程(4)では、現像により、上層反射防止膜の除去が行われる。
具体的には、フォトレジスト膜が現像液によって現像され、洗浄された後、所望のレジストパターンが形成されると共に、前記現像中或いは現像後の洗浄中に、前記上層反射防止膜は別途の剥離工程を経る必要なく、完全に除去される。
【0050】
前記現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8−ジアザビシクロ−[5,4,0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4,3,0]−5−ノナン等を溶解したアルカリ性水溶液を挙げることができる。
また、これらの現像液には、メタノール、エタノール等のアルコール類等の水溶性有機溶媒や界面活性剤等を適量添加することもできる。
尚、アルカリ性水溶液を用いて現像したのちは、一般に、水で洗浄して乾燥する。
【実施例】
【0051】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。但し、本発明は、これらの実施例に何ら制約されるものではない。
【0052】
[1]上層反射防止膜形成用樹脂の合成
以下、各重合体〔重合体(A−1)〜(A−8)及び重合体(B−1)〜(B−2)〕の合成例について説明する。尚、各合成例で得られた各重合体の物性評価は、次の要領で行った。
【0053】
(1)Mw
東ソー(株)製GPCカラム(G2000HXL:2本、G3000HXL:1本、G4000HXL:1本)を用い、流量1.0ミリリットル/分、溶出溶媒テトラヒドロフラン、カラム温度40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定した。
(2)共重合割合
H−NMR及び13C−NMRによる吸収スペクトルの各単量体の側鎖基に由来するピークの面積比により、各単量体の共重合割合を決定した。
【0054】
<合成例1>
攪拌機、温度計及び冷却管を備えたセパラブルフラスコに、テトラヒドロフラン(THF)30gを仕込み、15分間窒素ガスをバブリングしたのち、6−ビニル−2−ナフトール2.2888g、1−ビニルナフタレン8.2945g、α−トリフルオロメチルアクリル酸9.4167g、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸ジメチル)1.8577gを添加して、内温を45℃に昇温した。1時間後、内温を昇温して約70℃で還流させ8時間反応させたのち、25℃に冷却した。次いで、真空乾燥して溶剤を除去することにより、共重合体を得た。
この共重合体は、Mwが2.7×10であり、6−ビニル−2−ナフトール/1−ビニルナフタレン/α−トリフルオロメチルアクリル酸の共重合割合(モル%)が10/40/50であった。この共重合体を「重合体(A−1)」とする。
【化14】

【0055】
<合成例2>
攪拌機、温度計及び冷却管を備えたセパラブルフラスコに、メタノール30gを仕込み、15分間窒素ガスをバブリングしたのち、6−ビニル−2−ナフトール1.4913g、2−ビニルナフタレン9.4576g、メタクリル酸9.0500g、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸ジメチル)2.4209gを添加して、内温を45℃に昇温した。1時間後、内温を昇温して約70℃で還流させ8時間反応させたのち、25℃に冷却した。次いで、真空乾燥して溶剤を除去することにより、共重合体を得た。
この共重合体は、Mwが19.5×10であり、6−ビニル−2−ナフトール/2−ビニルナフタレン/メタクリル酸の共重合割合(モル%)が5/35/60であった。この共重合体を「重合体(A−2)」とする。
【化15】

【0056】
<合成例3>
攪拌機、温度計及び冷却管を備えたセパラブルフラスコに、メチルイソブチルケトン(以下、「MIBK」という。)30gを仕込み、15分間窒素ガスをバブリングしたのち、2−ビニルナフタレン8.1297g、6−ビニル−2−ナフトール4.4866g、α−トリフルオロメチルアクリル酸7.3837g、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸ジメチル)4.5521gを添加して、内温を45℃に昇温した。1時間後、内温を昇温して90℃で8時間反応させたのち、25℃に冷却した。次いで、真空乾燥して溶剤を除去することにより、共重合体を得た。
この共重合体は、Mwが3.1×10であり、2−ビニルナフタレン/6−ビニル−2−ナフトール/α−トリフルオロメチルアクリル酸の共重合割合(モル%)が40/20/40であった。この共重合体を「重合体(A−3)」とする。
【化16】

【0057】
<合成例4>
攪拌機、温度計及び冷却管を備えたセパラブルフラスコに、MIBK30gを仕込み、15分間窒素ガスをバブリングしたのち、6−ビニル−2−ナフトール8.9514g、α−トリフルオロメチルアクリル酸11.0486g、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸ジメチル)4.541gを添加して、内温を45℃に昇温した。1時間後、内温を昇温して90℃で8時間反応させたのち、25℃に冷却した。次いで、真空乾燥して溶剤を除去することにより、共重合体を得た。
この共重合体は、Mwが2.6×10であり、6−ビニル−2−ナフトール/α−トリフルオロメチルアクリル酸の共重合割合(モル%)が40/60であった。この共重合体を「重合体(A−4)」とする。
【化17】

【0058】
<合成例5>
攪拌機、温度計及び冷却管を備えたセパラブルフラスコに、メチルエチルケトン50gを仕込み、15分間窒素ガスをバブリングしたのち、6−ビニル−2−ナフトール4.7373g、α−トリフルオロメチルアクリル酸3.8981g、無水マレイン酸1.3300g2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸ジメチル)1.3646gを添加して、内温を45℃に昇温した。1時間後、内温を昇温して70℃で8時間反応させたのち、25℃に冷却した。次いで、1%シュウ酸水溶液3gをゆっくりと滴下し、内温を70℃に昇温して2時間反応させた。その後反応液を水50gで3回洗浄し、真空乾燥して溶剤を除去することにより、共重合体を得た。
この共重合体は、Mwが3.5×10であり、6−ビニル−2−ナフトール/α−トリフルオロメチルアクリル酸/マレイン酸の共重合割合(モル%)が40/40/20であった。この共重合体を「重合体(A−5)」とする。
【化18】

【0059】
<合成例6>
攪拌機、温度計及び冷却管を備えたセパラブルフラスコに、MIBK30gを仕込み、15分間窒素ガスをバブリングしたのち、6−ビニル−2−ナフトール7.8742g、α−トリフルオロメチルアクリル酸8.0992g、4,4,5,5,6,6,7,7,7−ノナフルオロ−2−ヒドロキシヘプチルアクリレートを4.0266g、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸ジメチル)3.9946gを添加して、内温を45℃に昇温した。1時間後、内温を昇温して90℃で8時間反応させたのち、25℃に冷却した。次いで、真空乾燥して溶剤を除去することにより、共重合体を得た。
この共重合体は、Mwが3.3×10であり、6−ビニル−2−ナフトール/α−トリフルオロメチルアクリル酸/4,4,5,5,6,6,7,7,7−ノナフルオロ−2−ヒドロキシヘプチルアクリレートの共重合割合(モル%)が40/50/10であった。この共重合体を「重合体(A−6)」とする。
【化19】

【0060】
<合成例7>
攪拌機、温度計及び冷却管を備えたセパラブルフラスコに、MIBK30gを仕込み、15分間窒素ガスをバブリングしたのち、2−ビニルナフタレン2.6936g、6−ビニル−2−ナフトール4.4597g、α−トリフルオロメチルアクリル酸8.0992g、4,4,4−トリフルオロ−3−ヒドロキシ−1−メチル−3−トリフルオロメチルブチルメタクリレートを12.8467g、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸ジメチル)3.0165gを添加して、内温を45℃に昇温した。1時間後、内温を昇温して90℃で8時間反応させたのち、25℃に冷却した。次いで、真空乾燥して溶剤を除去することにより、共重合体を得た。
この共重合体は、Mwが2.9×10であり、2−ビニルナフタレン/6−ビニル−2−ナフトール/4,4,4−トリフルオロ−3−ヒドロキシ−1−メチル−3−トリフルオロメチルブチルメタクリレートの共重合割合(モル%)が20/30/50であった。この共重合体を「重合体(A−7)」とする。
【化20】

【0061】
<合成例8>
攪拌機、温度計及び冷却管を備えたセパラブルフラスコに、MIBK30gを仕込み、15分間窒素ガスをバブリングしたのち、6−ビニル−2−ナフトール10.6017g、α−トリフルオロメチルアクリル酸6.9790g、スルホエチルメタクリレートを2.4193g、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸ジメチル)4.3026gを添加して、内温を45℃に昇温した。1時間後、内温を昇温して90℃で8時間反応させたのち、25℃に冷却した。次いで、真空乾燥して溶剤を除去することにより、共重合体を得た。
この共重合体は、Mwが3.1×10であり、6−ビニル−2−ナフトール/α−トリフルオロメチルアクリル酸/スルホエチルメタクリレートの共重合割合(モル%)が50/40/10であった。この共重合体を「重合体(A−8)」とする。
【化21】

【0062】
<合成例9>
攪拌機、温度計及び冷却管を備えたセパラブルフラスコに、メタノール60g、イソプロピルアルコール10g部を仕込み、15分間窒素ガスをバブリングしたのち、3−(パーフルオロ−n−ブチル)−2−ヒドロキシプロピルアクリレート17.4092g、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸2.5908g、2,2’−アゾビス〔N―(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミド〕ハイドレート2.1588gを添加して、内温を45℃に昇温した。1時間後、内温を60℃に昇温して、さらに8時間反応させたのち、25℃に冷却した。次いで、真空乾燥して溶剤を除去することにより、共重合体を得た。
この共重合体は、Mwが4.5×10であり、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸/3−(パーフルオロ−n−ブチル)−2−ヒドロキシプロピルアクリレートの共重合割合(モル%)が20/80であった。この共重合体を「重合体(B−1)」とする。
【化22】

【0063】
<合成例10>
攪拌機、温度計及び冷却管を備えたセパラブルフラスコに、メタノール60g、イソプロピルアルコール10gを仕込み、15分間窒素ガスをバブリングしたのち、3−(パーフルオロ−n−ヘキシル)−2−ヒドロキシプロピルアクリレート18.5591g、ビニルスルホン酸1.4409g、2,2’−アゾビス〔N―(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミド〕ハイドレート2.3014gを添加して、内温を45℃に昇温した。1時間後、内温を60℃に昇温して、さらに8時間反応させたのち、25℃に冷却した。次いで、真空乾燥して溶剤を除去することにより、共重合体を得た。
この共重合体は、Mwが3.9×10であり、ビニルスルホン酸/3−(パーフルオロ−n−ヘキシル)−2−ヒドロキシプロピルアクリレートの共重合割合(モル%)が20/80であった。この共重合体を「重合体(B−2)」とする。
【化23】

【0064】
[2]上層反射防止膜形成用組成物の調製
<実施例1〜8>
表1に示す各重合体100質量部に、4−メチル−2−ペンタノールを加えて、固形分濃度1質量%としたのち、孔径0.2μmのメンブランフィルターでろ過して、実施例1〜8の各上層反射防止膜形成用組成物を得た。
<比較例1、2>
表1に示す各重合体100質量部に、1−ブタノールを加えて、固形分濃度1質量%としたのち、孔径0.2μmのメンブランフィルターでろ過して、比較例1〜2の各上層反射防止膜形成用組成物を得た。
【0065】
【表1】

【0066】
[3]屈折率の測定
実施例及び比較例における各上層反射防止膜形成用組成物を用いて形成される膜の屈折率(波長193nm)を下記のように測定した。その結果を表1に併記する。
<屈折率の測定方法>
直径8インチのシリコンウエハー上に、形成される反射防止膜の膜厚が26〜33nmの範囲となるように上層反射防止膜形成用組成物を回転塗布した。その後、J.A.Woollam Co.,Inc.製エリプソメーター「VUV−VASE」を使用して膜の屈折率を測定した。
【0067】
[4]性能評価
実施例及び比較例における各上層反射防止膜形成用組成物について、レジストパターンを形成して反射防止膜としての性能評価を行った。その評価結果を表1に併記する。
【0068】
(1)レジストパターンの形成
直径8インチのシリコンウエハー上に、ArFエキシマレーザ用化学増幅型ポジ型レジスト〔JSR(株)製、商品名「ARX1682J」〕を回転塗布したのち、110℃のホットプレート上で60秒間プレベークして、厚さ0.19μmのフォトレジスト膜を形成した。
その後、該フォトレジスト膜上に、形成される反射防止膜の膜厚が26〜33nmの範囲となるように、実施例及び比較例の各上層反射防止膜形成用組成物を回転塗布した。次いで、(株)ニコン製スキャナー「NSRS306C」(波長193nm)を使用して、所定時間露光を行い、露光後直ちに、115℃のホットプレート上で60秒間露光後ベークを行った。その後、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの2.38質量%水溶液を用いて、25℃で1分間現像し、水洗し、乾燥して、レジストパターンを形成した。
【0069】
(2)上層反射防止膜の性能評価
<現像性>
上層反射防止膜或いはフォトレジスト膜の残渣によるスカムや現像残りの程度を走査型電子顕微鏡で調べ、スカムや現像残りが認められない場合を、現像性が良好とした。
【0070】
<パターン形状>
160nm−1L/1Sパターンにおけるレジストの断面形状を走査型電子顕微鏡で観察し、図1に示す断面形状(a)〜(f)のうち、形状(b)、(c)及び(d)の場合を良好とした。
【0071】
<定在波効果>
直径8インチのシリコンウエハー上に、膜厚が0.18〜0.24μmの範囲で0.01μmずつ異なるようにフォトレジスト膜を形成したのち、前述したようにして上層反射防止膜を形成した。次いで、前記縮小投影露光機を用いて、各ウエハーに対して露光量を変えて露光を行った。その後、前述したように露光後ベーク及び現像を行って、レジストパターンを形成した。
次いで、フォトレジスト膜厚が0.19umのウエハーを走査型電子顕微鏡で観察し、マスクが160nm−1L/1Sで160nm−1L/1Sのパターンが得られる露光量を測定した。その後、得られた露光量にて、それぞれの膜厚におけるウエハーの観察を行い、マスクが160nm−1L/1Sにおけるパターンの寸法を測定した。そして、求めたパターン寸法の最大値をEmax、最小値をEminとし、下式のS値(膜厚変化に伴う寸法変動)を定在波効果の指標とし、そのS値が35より小さい場合に、定在波効果が良好とした。
S=(Emax−Emin
【0072】
[5]実施例の効果
表1から明らかなように、本実施例1〜8の各上層反射防止膜形成用組成物を用いた場合には、定在波効果を十分に低減させることができることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】パターンの断面形状を説明する模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される繰り返し単位、及び下記式(2)で表される繰り返し単位のうちの少なくとも一方を含んでおり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定される重量平均分子量が1000〜100000であり、且つアルカリ現像液に可溶であることを特徴とする上層反射防止膜形成用樹脂。
【化1】

〔式(1)において、R〜Rは、それぞれ、水素原子、−OH、−COOH又は−SOHであり、且つR〜Rの全てが水素原子になることはない。〕
【化2】

〔式(2)において、R〜R14は、それぞれ、水素原子、−OH、−COOH又は−SOHであり、且つR〜R14の全てが水素原子になることはない。〕
【請求項2】
前記式(1)及び前記式(2)で表される繰り返し単位を除く、−OH、−COOH及び−SOHのうちの少なくとも1種を含有する繰り返し単位を含む請求項1に記載の上層反射防止膜形成用樹脂。
【請求項3】
更に、下記式(3)〜(6)で表される繰り返し単位を少なくとも1種含む請求項1に記載の上層反射防止膜形成用樹脂。
【化3】

〔式(3)において、R15は水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基又はトリフルオロメチル基を表し、Aは単結合、カルボニル基又はカルボニルオキシ基を表し、Bは単結合又はイミノ基を表し、Dは単結合又は炭素数1〜12の2価の有機基を表す。〕
【化4】

〔式(4)において、R16は水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基又はトリフルオロメチル基を表す。〕
【化5】

〔式(5)において、R17は水素原子、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のフッ素化アルキル基を表す。〕
【化6】

〔式(6)において、R18は水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基又はトリフルオロメチル基を表し、Pは単結合、カルボニル基又はカルボニルオキシ基を表し、Qは単結合又は炭素数1〜21の2価の有機基を表し、R19及びR20は、それぞれ、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のフッ素化アルキル基を表す。〕
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の上層反射防止膜形成用樹脂と、溶剤と、を含むことを特徴とする上層反射防止膜形成用組成物。
【請求項5】
(1)基板上にフォトレジスト膜を形成する工程と、
(2)請求項4に記載の上層反射防止膜形成用組成物を用いて、前記フォトレジスト膜上に上層反射防止膜を形成する工程と、
(3)前記上層反射防止膜が形成された前記フォトレジスト膜の所用領域に放射線を照射し、露光する工程と、
(4)現像して前記上層反射防止膜を除去する工程と、を備えることを特徴とするレジストパターン形成方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−239646(P2008−239646A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−77689(P2007−77689)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】