説明

不均一可変ベーン

【課題】可変ステータベーンにおいて、隣接ベーンから励起される振動応答を減少させる。
【解決手段】ガスタービンエンジン段の単一段における不均一な可変ステータベーン15は、ステータベーンの第1及び第2の部分の翼形部間に不均一性を有する不均一な翼形部を含む。可変ステータベーンは更に、可変ステータベーンの全てにおいて翼形部が内向きに延びて且つ全てが均等なサイズ及び形状にされた外側ボタンと、使用時に全て同一の内側ボタンとを含むことができる。第1及び第2の部分における翼形部は、公称翼形部位置を基準としてそれぞれ反時計方向及び時計方向に偏向させることができる。第1及び第2の部分における翼形部は、公称翼形部位置を基準としてそれぞれ反時計方向及び時計方向に傾斜させることができる。第1及び第2の部分における翼形部の外側端部は、公称翼形部位置を基準としてそれぞれ反時計方向及び時計方向にシフトさせることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機ガスタービンエンジンに関し、具体的には可変ステータベーンに関する。
【背景技術】
【0002】
可変ステータベーン(VSV)は通常、航空機ガスタービンエンジンの圧縮機及びファン、並びに一部のタービン設計において使用される。非回転すなわち固定ステータベーンは一般的に、ファン、圧縮機、及びタービンのロータブレードの下流側又は上流側に配置される。これらのベーンは、ロータから離れる接線方向の流れ成分を減少させ、これにより、流体の静圧を増加させ且つ流れ角度を下流側ロータに適したレベルに設定する。
【0003】
可変及び非可変ベーンにおける翼形部は、これらと関連した一連の固有振動数を有する。より具体的には、各翼形部は、空気ストリームにおいて通過する翼形部によってパルスとして感じられる伴流を発生させる。圧縮機のステータベーンの数と回転速度の組み合わせは、ロータブレードの固有振動数と一致することができる。圧縮機のステータベーンの伴流(パルス)の数と回転速度の組み合わせは、ロータブレードの固有振動数と一致することができる励振を発生させる。翼形部の固有振動数の大部分を設計エンジン運転範囲外に維持することが極めて望ましい。
【0004】
非均一なベーン間隔(NUVS)設計は、ロータブレードの誘起振動を減少させるために開発されてきた。NUVS設計は、エンジンケーシングの円周周りのベーン間隔を変えて、ロータブレード及びステータベーンの固有振動数の回避を可能にし、又はこれらの振動数でのロータブレードの共振応答の振幅を減少させるようにする。より具体的には、このような設計では、ステータベーンの数は、ステータベーン組立体の1つ又はそれ以上のセクターを変化させる。ステータベーンの間隔は、セクター毎に変えることができるが、各セクター内でのステータベーンは、互いに対して等間隔で維持され、及び/又は等しいピッチで設計される。ステータベーンのセクター間のベーン間隔又はピッチを変化させると、ベーン伴流の振動数が変化し、隣接ロータブレードにおいて誘起される振動応答を減少させることができる。
【0005】
典型的な運転サイクルにわたって軸流圧縮機によって広範囲の運転条件が生じることに起因して、圧縮機の流量及び回転速度も広範囲に変わる。このことは、ステータベーンに流入する絶対流れ角度の大きなシフトをもたらす。高損失又は流れ剥離を生じることなくベーンが流れ角度のこれらのシフトに対応可能にするために、可変式ステータベーンの円周方向列は、ベーンがその半径方向(又はほぼ半径方向の)軸線を中心として回転できるように構成される。
【0006】
一般に、可変ステータベーン(VSV)は、ケーシングを貫通する回転軸線を通るスピンドルを有し、これにより作動機構を使用してベーンを回転させることができるようになる。流路では、通常は、ベーンと共に回転するスピンドルの周りに材料の半径方向内側及び外側ボタンが存在する。ベーンの正圧側面と負圧側面との間に大きな圧力勾配が存在するので、漏洩流がこのギャップを越えて押しやられ、端壁において流体転回の減少及び高損失が生じる。この漏洩流はまた、隣接ロータブレードでの流れの不均一性(すなわち、伴流)を引き起こし、これによりこれらのブレードを励振させ、ロータブレードにおいて不利な振動を引き起こす可能性がある。従来のVSVボタンは通常、そのそれぞれの位置においてベーン間のピッチ方向間隔に等しいか又はそれよりも僅かに小さい直径を有する。
【0007】
関連ハードウェア及びケーシング設計は、ボタンに対してケーシングにおいて等角度に間隔を置いて配置された孔を含むので、既存のエンジン系統又は製品系列のVSVにNUVS設計を実施することは特に困難である。VSVの上側及び下側セット間において異なる間隔の異なるセクター間隔を組み込んだVSV用NUVS設計を改造で設置することはほぼ不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第7,743,497号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、半径方向内側ボタン間及び半径方向外側ボタン間、並びにケーシング周りのスピンドル間に等距離又は等角度の間隔を有するNUVSをVSVに提供することが極めて望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
複数の同一段可変ステータベーンは、不均一な同一段可変ステータベーンを含み、該ステータベーンは、複数の不均一な同一段可変ステータベーンの少なくとも第1及び第2の部分を備えた不均一な翼形部を有する。可変ステータベーンの各々は、回転軸線を含む。翼形部の各々は、回転軸線を中心として外側ボタンから内向きに延びる。翼形部の各々は、外側ボタンによって片持ち支持されて該外側ボタンから内向きに延びることができ、又は翼形部の各々は、間隔を置いて配置された外側及び内側ボタン間に配置することができる。外側スピンドルは、外側ボタンから外向きに延びており、外側及び内側ボタンの両方を備えた可変ステータベーンの実施形態では、内側スピンドルは、内側ボタンから内向きに延びる。不均一な同一段可変ステータベーンは、第1の部分の可変ステータベーンの翼形部と第2の部分の可変ステータベーンの翼形部との間に不均一性を有する。
【0011】
可変ステータベーンの全てにおける外側ボタンの全ては、均等なサイズ及び形状にすることができ、使用される場合に、可変ステータベーンの全てにおける内側ボタンの全ては、均等なサイズ及び形状にすることができる。
【0012】
不均一性は、複数の可変ステータベーンの第1の部分における翼形部が公称翼形部位置を基準として反時計方向に偏向されており、複数の可変ステータベーンの第2の部分における翼形部が公称翼形部位置を基準として時計方向に偏向されることを含むことができる。
【0013】
不均一性は、複数の可変ステータベーンの第1の部分における翼形部が公称翼形部位置を基準として反時計方向に傾斜されており、複数の可変ステータベーンの第2の部分における翼形部が公称翼形部位置を基準として時計方向に傾斜されることを含むことができる。第1及び第2の部分における翼形部は、翼形部それぞれの内側端部、及び各それぞれのベーンの回転軸線を基準として均等に位置付けられた内側端部の各々を中心として反時計方向及び時計方向に傾斜させることができる。
【0014】
翼形部は、複数の可変ステータベーンの第1の部分における翼形部の外側端部が公称翼形部位置を基準として反時計方向にシフトされ、且つ複数の可変ステータベーンの第2の部分における翼形部の外側端部が公称翼形部位置を基準として時計方向にシフトされたことを含む不均一性を備えて、翼形部の翼形部外側及び内側端部間に延びることができる。
【0015】
ガスタービンエンジン組立体は、可変ベーン組立体を半径方向外向きに支持するガスタービンエンジンケーシングを含み、該可変ベーン組立体は、不均一な翼形部を有する少なくとも1つの円形列の不均一な同一段可変ステータベーンを含む。翼形部の各々は、可変ステータベーンの各々の回転軸線を中心とした間隔を置いた外側及び内側ボタン間に配置され、可変ステータベーンの各々は、外側ボタンから外向きに延びる外側スピンドルと、内側ボタンから内向きに延びる内側スピンドルとを含む。外側スピンドルは、ケーシングにおける外側開口に取り付けられた外側トラニオンを貫通して回転可能に配置される。複数の同一段可変ステータベーンの少なくとも第1及び第2の部分は、第1部分の可変ステータベーンの翼形部と第2の部分の可変ステータベーンの翼形部との間に不均一性を有する。可変ステータベーンの全てにおける外側ボタンの全ては均等なサイズ及び形状にされ、可変ステータベーンの全てにおける内側ボタンの全ては均等なサイズ及び形状にされ、外側開口は、ケーシングの周りに等角度に間隔を置いて配置することができる。
【0016】
ガスタービンエンジンケーシングは、均一な翼形部を有する均一な同一段可変ステータベーンを有する以前に製造されたガスタービンエンジン又はガスタービンエンジンの製品系列と同じか又は同じ設計を有することができる。
【0017】
ガスタービンエンジン組立体を製造するための方法は、不均一な同一段可変ステータベーンの少なくとも1つの円形列を含む可変ベーン組立体を半径方向外向きに支持するガスタービンエンジンケーシングを提供する。本方法は、不均一な同一段可変ステータベーンの単一段の上側及び下側セクターの第1のものにおいて反時計方向に偏向された翼形部と、不均一な同一段可変ステータベーンの単一段の上側及び下側セクターの第2のものにおいて時計方向に偏向された翼形部と、を準備するステップを含む。本方法は更に、可変ステータベーンの各々の回転軸線を中心とした間隔を置いた外側及び内側ボタンの間に配置される反時計方向及び時計方向に偏向された翼形部を備えてベーンを製造するステップと、外側ボタンから外向きに延びる外側スピンドル及び内側ボタンから内向きに延びる内側スピンドルを含む可変ステータベーンの各々を備えてベーンを製造するステップとを含む。本方法は更に、ケーシングにおける外側開口に取り付けられた外側トラニオンを貫通して回転可能に配置された外側スピンドルを組み付けるステップを含む。本方法は、均一な翼形部を有する均一な同一段可変ステータベーンを備えた以前に製造されたガスタービンエンジン又はガスタービンエンジンの製品系列と同じもの又は同じ設計を有するガスタービンエンジンケーシングを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】不均一なベーン間隔(NUVS)を備えた可変ステータベーンを有するガスタービンエンジンの高圧圧縮機の一部の断面図。
【図2】図1に示す高圧圧縮機における不均一なベーン間隔(NVUS)を備えた可変ステータベーンを有する高圧圧縮器段の概略図。
【図3】図2に示す可変ステータベーンの時計方向及び反時計方向に傾斜した翼形部の拡大概略図。
【図4】図3に示す時計方向に傾斜した翼形部の斜視図。
【図5】図3に示す反時計方向に傾斜した翼形部の斜視図。
【図6】図1に示す可変ステータベーンのトラニオンを受け入れるための外側トラニオン孔を備えたガスタービンエンジンスプリット圧縮機ケーシングの2つの半部分の斜視図。
【図7】円周方向に交互する時計方向及び反時計方向に傾斜した翼形部を有する、図3に示した可変ステータベーンの時計方向及び反時計方向に傾斜した翼形部の別の構成の拡大概略図。
【図8】片持ち状の時計方向に傾斜した翼形部を備えた可変ステータベーンの斜視図。
【図9】片持ち状の反時計方向に傾斜した翼形部を備えた可変ステータベーンの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に示すのは、長手方向又は軸方向中心軸線12を中心として軸対称である例示的なターボファンガスタービンエンジンの高圧圧縮機10の一部分である。不均一なベーン間隔(NUVS)を有する可変ステータベーン15の第1及び第2の円形列11、13が圧縮機10内に配置され、これを用いて圧縮機10を通って下流方向Dに流れるガスが、回転可能ブレード16の第1及び第2の列17、18に流入する方向を最適化する。本明細書に開示した不均一なベーン間隔を有する可変ステータベーン15の例示的な実施形態は、高圧圧縮機用のものであるが、これらのVSVは、他の圧縮機セクション及びガスタービンエンジンのファン並びにタービンセクションにおいても使用することができる。圧縮機ケーシング61は、可変ステータベーン15を含む可変ステータベーン組立体56を半径方向外向きに支持する。本明細書に示した不均一な可変ステータベーン15は、不均一な翼形部31を有する。
【0020】
図1、図4、及び図5を参照すると、各可変ステータベーン組立体56は、複数の可変ステータベーン15を含む。各可変ステータベーン15は、回転軸線20を中心として枢動可能又は回転可能である。各可変ステータベーン15は、間隔を置いて配置された外側及び内側ボタン32、33間に配置された翼形部31を有する。翼形部31は、該翼形部のスパンSに沿って翼形部外側端部72から翼形部内側端部まで内向きに延びる。翼形部外側及び内側端部72、73は、それぞれ外側及び内側ボタン32、33上に取り付けられる。外側スピンドル34は、外側ボタン32から外向きに延び、内側スピンドル35は、内側ボタン33から内向きに延びる。外側及び内側スピンドル34、35は、外側及び内側トラニオン36、37内に回転可能に支持され、回転軸線20を中心として回転可能である。
【0021】
外側スピンドル34は、外側トラニオン36を貫通して回転可能に配置され、該外側トラニオン36は、ケーシング61の外側開口78に取り付けられる。本明細書に示される外側開口78は、軸方向中心軸線12を中心として一定半径でケーシング61の周りに等角度で円周方向に間隔を置いて配置される。内側スピンドル35は、内側トラニオン37を貫通して回転可能に配置され、該内側トラニオン37は、ケーシング61の半径方向内向きに間隔を置いて配置された内側リング81の内側開口79に取り付けられる。レバーアーム80が、外側スピンドル34から延びて、作動リング82にリンクされ、可変ステータベーン15を回転又は枢動させ且つ該可変ステータベーン15の流れ角度を設定するようにする。
【0022】
外側及び内側ボタン32、33は、それぞれケーシング61及び内側リング81における外側及び内側円形凹部内に回転可能に配置される。各翼形部31は、翼形部後縁TEの上流側Uに翼形部前縁LEと、正圧側面PS及び負圧側面SSとを有する。図4〜図5を参照すると、外側及び内側ボタン32、33の各々は、フラットスポット53を備えた実質的に円形の縁部52を有する。
【0023】
外側及び内側ボタン32、33の円形縁部52の各々は、その範囲内で各ボタンが回転軸線20を中心として回転する円周部22を形成する。円周部22は、回転軸線20からのボタン半径RBで回転軸線20を中心として境界付けられる。凹部58は、円周部22から切り抜かれ、又は円周部22内に凹設される。凹部58は、可変ステータベーン15の大きな転回角度(図示せず)に対応しながら、ボタンの区域Aを最大にするように設計される。
【0024】
ロータブレードの誘起される振動振幅を低減するために、可変ステータベーン組立体56の少なくとも1つは、不均一な可変ステータベーン組立体57である。不均一な可変ステータベーン組立体57は、可変ステータベーンの第1及び第2又は上側及び下側セクター62、64内に異なるベーンを含み、ロータブレード及びステータベーンの固有振動数の回避を可能にするか、又はこれらの振動数でのロータブレードの共振応答の振幅を低減させるようにする。上側及び下側セクター62、64における可変ステータベーン15間の不均一性により、ベーン伴流の振動数を変更して、隣接ロータブレードに誘起される振動応答が低減できるようになる。
【0025】
本明細書で開示される上側及び下側セクター62、64における可変ステータベーン15間の不均一性は、上側及び下側セクター62、64それぞれにおける可変ステータベーン15の翼形部31の異なる上側及び下側傾斜である。上側及び下側セクター62、64のうちの1つにおける翼形部31は、時計方向CWにおいて円周方向により傾斜され、上側及び下側セクター62、64のうちの別のものにおける翼形部31は、反時計方向CCWにおいて円周方向により傾斜される。翼形部31の全ては、一方又は他方の円周方向でより偏向された時計方向又は反時計方向の何れかで更に傾斜させることができる。各180度の2つのセクターが本明細書において例示されているが、より多くのセクターを使用してもよく、よってより多くの翼形部傾斜角度を使用してもよい。上側及び下側セクター62、64の各々では、可変ステータベーン15は、実質的に同一で均一であり、より具体的には、円周方向に均一に傾斜される。セクターの数に関する1つの実施形態は、図7に示すように、各セクターに1つのベーンだけを含み、隣接ベーンの各ペア28は、時計方向及び反時計方向の翼形部傾斜角度24、26として示した異なる2つの翼形部傾斜角度を有する。
【0026】
本明細書で例示された不均一な可変ステータベーン組立体57の1つの例示的な実施形態は、図3に示すように、それぞれ上側及び下側セクター62、64における可変ステータベーン15の翼形部31の異なる上側及び下側翼形部傾斜角83、84を含む。説明の目的で、上側及び下側セクター62、64における可変ステータベーン15の翼形部31は、図3に示すように、それぞれ上側及び下側翼形部傾斜角83、84において反時計方向及び時計方向CC、CCWに傾斜される。上側及び下側セクター62、64における翼形部31は、0度又は他の角度とすることができる公称翼形部傾斜角88を基準として反時計方向及び時計方向CC、CCWに傾斜される。例証として、傾斜角は、エンジン軸方向中心軸線12から外側ボタン32上の翼形部外側端部72まで半径方向外向きに延びるエンジン半径Rに沿って計測される、隣接翼形部31の翼形部外側端部72間の鋭角87の約17%とすることができる。
【0027】
図3〜図5を参照すると、翼形部31の上側及び下側翼形部傾斜角83、84は、上側及び下側セクター62、64それぞれにおける翼形部31の上側及び下側重なり軸線85、86により示される上側及び下側重なり軸線によって定めることができる。直線の重なり軸線は、ベーンのそれぞれ外側及び内側ボタン32、33に位置する傾斜のない公称翼形部30並びに反時計方向及び時計方向にシフト又は傾斜した翼形部45、47(図3〜図5)の翼形部外側及び内側端部72、73における翼形部断面重心(CG)を接続した線として説明することができる。傾斜は、翼形部の31の内側端部73を中心とした翼形部31の回転であり、エンジン軸方向中心軸線12から測定されたエンジン半径Rから重なり軸線を発散させるようにする。
【0028】
弓形又はアーチ形重なり軸線は、各翼形部の幾つかの半径方向セクションの重心によって定めるか、又は、翼弦中点の重なりによるなどの、何らかの他の従来の方法で定めることができる。重なり軸線はまた、ブレードの翼形部分の横断面の重心軌道を表すものとして定められ、直線又は非直線とすることができる。
【0029】
上側及び下側セクター62、64における可変ステータベーン15間の不均一性を提供する別の手段が図4及び図5に示されている。この手段は、図4及び図5でそれぞれ示すように、点線で示した公称翼形部位置66から異なるセクターの実線で示した反時計方向及び時計方向位置まで翼形部外側端部72をシフトさせることを含む。公称翼形部31は、図4及び図5において反対の点線で示されており、反時計方向及び時計方向にシフト又は傾斜した翼形部45、47は、図4及び図5それぞれにおいて示されている。反時計方向及び時計方向にシフト又は傾斜した翼形部45、47の内側端部73は、公称翼形部31の内側端部73と同じ状態のままである。反時計方向及び時計方向に偏向した翼形部45、47は、不均一性に関するより上位概念である。本明細書に示される公称翼形部位置66は、反時計方向に偏向した翼形部45と時計方向に偏向した翼形部47との間にある。
【0030】
上側セクター62における可変ステータベーン15の全ては同一とすることができ、下側セクター64における可変ステータベーン15の全ては、2組の可変ステータベーン15間の差違は、反時計方向に偏向された翼形部45と時計方向に偏向された翼形部47である。
【0031】
以上のように、翼形部のシフト又は傾斜、或いは上側及び下側セクター62、64における可変ステータベーン15間の他の不均一性は、外側及び内側ボタン32、33、外側スピンドル及び内側スピンドル34、35、外側及び内側トラニオン36、37、及び図6に示したケーシング61の外側開口78の配置サイズ又は形状を変えることなく提供することができる。翼形部のスパンSは、可変ステータベーン15の外側及び内側ボタン間の半径方向距離を定め、これもまた全て同一とすることができる。従って、異なるセクター(2つ又はそれ以上)における可変ステータベーン15間の不均一性は、既存のケース及びエンジンにおいて最小変更で容易に設計及び製造することができる。
【0032】
図8及び図9に示すのは、外側ボタン32から片持ち支持され且つ該外側ボタン32から半径方向内向き又は下向きに延びる片持ち状翼形部90を有し、内側ボタンを有していない可変ステータベーン15である。各片持ち状翼形部90は、翼形部のスパンSに沿って翼形部外側端部72から翼形部内側端部73まで延び、該内側端部73は自由端部である。翼形部外側端部72は、外側ボタン32上に取り付けられる。外側スピンドル34は、外側ボタン32から外向きに延びる。外側スピンドル34は、外側トラニオン36において回転可能に支持され、回転軸線20を中心として回転可能である。
【0033】
片持ち状翼形部90は、上側及び下側セクター62、64それぞれにおける翼形部31の上側及び下側重なり軸線85、86で示された上側及び下側重なり軸線によって定めることができる。直線重なり軸線は、傾斜のない公称片持ち状翼形部90並びに反時計方向及び時計方向にシフト又は傾斜した片持ち状翼形部92、94(図8〜9)の翼形部外側及び内側端部72、73に位置する翼形部断面の重心(CGS)を接続する線として説明することができる。傾斜は、内側端部73を中心として傾斜のない片持ち状翼形部90の回転であり、重なり軸線をエンジン軸方向中心軸線12から測定されるエンジン半径Rから発散させるようにする。
【0034】
本明細書では本発明の好ましく例示的な実施形態であると考えられるものについて説明してきたが、当業者であれば、本明細書の教示から本発明の他の修正が明らかになる筈であり、従って、全てのこのような修正は、本発明の技術思想及び技術的内に属するものとして特許請求の範囲において保護されることが望まれる。従って、本特許により保護されることを望むものは,特許請求の範囲に記載し且つ特定した発明である。
【符号の説明】
【0035】
10 ガスタービンエンジン組立体/ガスタービンエンジン高圧圧縮機
11 第1の列
12 中心軸線
13 円形列/第2の列
15 ステータ弁
16 回転可能ブレード
17 第1の列
18 第2の列
20 回転軸線
22 円周部
24 時計方向の傾斜角
26 反時計方向の傾斜角
28 ペア
30 傾斜のない公称翼形部
31 不均一な翼形部/均一な翼形部
32 外側ボタン
33 内側ボタン
34 外側スピンドル
35 内側スピンドル
36 外側トラニオン
37 内側トラニオン
42 外側円形凹部
43 内側円形凹部
45 反時計方向に偏向された翼形部/反時計方向にシフト又は傾斜した翼形部
47 時計方向に偏向された翼形部/時計方向にシフト又は傾斜した翼形部
52 円形縁部
53 平坦スポット
56 ベーン組立体/ステータベーン組立体
57 不均一な可変ステータベーン組立体
58 凹部
61 エンジンケーシング/圧縮機ケーシング
62 第1の部分/上側セクター
64 第2の部分/下側セクター
66 翼形部位置
72 外側端部
73 内側端部
78 外側開口
79 内側開口
80 レバーアーム
81 内側リング
82 作動リング
83 上側翼形部傾斜角
84 下側翼形部傾斜角
85 上側重なり軸線
86 下側重なり軸線
87 鋭角
88 公称翼形部傾斜角
90 片持ち状翼形部
92 反時計方向にシフト又は傾斜した片持ち状翼形部
94 時計方向にシフト又は傾斜した片持ち状翼形部
A 区域
D 下流側
S スパン
U 上流側
R エンジン半径/エンジン半径
RB ボタン半径
LE 前縁
TE 後縁
PS 正圧側面
SS 負圧側面
CW 時計回り方向
CCW 反時計回り方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の同一段可変ステータベーン(15)であって、
不均一な翼形部(31)を有する不均一な同一段可変ステータベーン(15)と、
前記複数の不均一な同一段可変ステータベーンの少なくとも第1及び第2の部分(62、64)と、
を備え、前記可変ステータベーン(15)の各々が回転軸線(20)を有し、前記翼形部(31)の各々が前記回転軸線(20)を中心とした外側ボタン(32)から内向きに延びており、前記第1の部分(62)の可変ステータベーン(15)の翼形部(31)と前記第2の部分(64)の可変ステータベーン(15)の翼形部(31)との間に不均一性を有する、複数の同一段可変ステータベーン(15)。
【請求項2】
前記可変ステータベーン(15)の全てにおける前記外側ボタン(32)の全てが、均等なサイズ及び形状にされている、請求項1記載の複数の同一段可変ステータベーン(15)。
【請求項3】
前記不均一性は、前記複数の可変ステータベーン(15)の第1の部分(62)における前記翼形部(31)が公称翼形部位置(66)を基準として反時計方向に偏向されており、前記複数の可変ステータベーン(15)の前記第2の部分(64)における前記翼形部(31)が前記公称翼形部位置(66)を基準として時計方向に偏向されていることを含む、請求項1記載の複数の同一段可変ステータベーン(15)。
【請求項4】
前記不均一性は、前記複数の可変ステータベーン(15)の第1の部分(62)における前記翼形部(31)が公称翼形部位置(66)を基準として反時計方向に傾斜されており、前記複数の可変ステータベーン(15)の前記第2の部分(64)における前記翼形部(31)が前記公称翼形部位置(66)を基準として時計方向に傾斜されていることを含む、請求項1記載の複数の同一段可変ステータベーン(15)。
【請求項5】
前記第1及び第2の部分(62、64)における前記翼形部(31)が、それぞれ前記翼形部(31)の内側端部(73)を中心として反時計方向及び時計方向に傾斜されており、前記内側端部(73)の各々が、各それぞれのベーン(15)の回転軸線(20)を基準として均等に位置付けられている、請求項4記載の複数の同一段可変ステータベーン(15)。
【請求項6】
前記翼形部(31)がその翼形部外側及び内側端部(72、73)間で延びており、前記不均一性は、前記複数の可変ステータベーン(15)の第1の部分(62)における前記翼形部(31)の外側端部(72)が公称翼形部位置(66)を基準として反時計方向にシフトされており、前記複数の可変ステータベーン(15)の第2の部分(64)における前記翼形部(31)の外側端部(72)が前記公称翼形部位置(66)を基準として時計方向にシフトされていることを含む、請求項1記載の複数の同一段可変ステータベーン(15)。
【請求項7】
前記翼形部(31)の各々が前記外側ボタン(32)と間隔を置いて配置された内側ボタン(33)との間に配置され、前記内側ボタン部(33)から内向きに延びる内側スピンドル(35)を更に含む、請求項1記載の複数の同一段可変ステータベーン(15)。
【請求項8】
ガスタービンエンジン組立体(10)であって、
不均一な翼形部(31)を有する不均一な同一段可変ステータベーン(15)の少なくとも1つの円形列(13)を含む可変ベーン組立体(56)を半径方向外向きに支持するガスタービンエンジンケーシング(61)を備え、
前記可変ステータベーン(15)の各々が回転軸線(20)を有し、前記翼形部(31)の各々が前記回転軸線(20)を中心とした外側ボタン(32)から内向きに延びており、前記可変ステータベーン(15)の各々が、前記外側ボタン(32)から外向きに延びた外側スピンドル(34)を含み、該外側スピンドル(34)が、ケーシング(61)における外側開口(78)内に取り付けられた外側トラニオン(36)を貫通して回転可能に配置され、
前記ガスタービンエンジン組立体(10)が更に、
前記複数の同一段可変ステータベーン(15)の少なくとも第1及び第2の部分(62、64)を備え、
前記第1の部分(62)の可変ステータベーン(15)の翼形部(31)と前記第2の部分(64)の可変ステータベーン(15)の翼形部(31)との間に不均一性がある、ガスタービンエンジン組立体(10)。
【請求項9】
前記ガスタービンエンジンケーシング(61)が、均一な翼形部(31)を有する均一な同一段可変ステータベーン(15)を備えた以前に製造されたガスタービンエンジン又はガスタービンエンジン製品系列と同一であるか、又は同じ設計を有する、請求項8記載のガスタービンエンジン組立体(10)。
【請求項10】
前記翼形部(31)の各々が前記外側ボタン(32)と間隔を置いて配置された内側ボタン(33)との間に配置され、前記内側ボタン部(33)から内向きに延びる内側スピンドル(35)を更に含む、請求項8に記載のガスタービンエンジン組立体(10)。
【請求項11】
前記可変ステータベーン(15)の全てにおける前記外側ボタン(32)の全てが均等なサイズ及び形状にされており、前記可変ステータベーン(15)の全てにおける前記内側ボタン(33)の全てが均等なサイズ及び形状にされており、前記外側開口(78)が前記ケーシング(61)の周りに等角度に間隔を置いて配置される、請求項10記載のガスタービンエンジン組立体(10)。
【請求項12】
不均一な同一段可変ステータベーン(15)の少なくとも1つの円形列(13)を含む可変ベーン組立体(56)を半径方向外向きに支持するガスタービンエンジンケーシング(61)を備えたガスタービンエンジン組立体(10)を製造するための方法であって、
不均一な同一段可変ステータベーン(15)の単一段の上側及び下側セクター(62、64)の第1のものにおいて反時計方向に偏向された翼形部(45)と、不均一な同一段可変ステータベーン(15)の単一段の上側及び下側セクター(62、64)の第2のものにおいて時計方向に偏向された翼形部(47)とを準備するステップと、
前記可変ステータベーン(15)の各々の回転軸線(20)を中心とした間隔を置いた外側及び内側ボタン(32、34)の間に配置される前記反時計方向及び前記時計方向に偏向された翼形部(45、47)を備えた前記ベーン(15)を製造するステップと、
前記外側ボタン(32)から外向きに延びる外側スピンドル(34)及び前記内側ボタン(33)から内向きに延びる内側スピンドル(35)を有する前記可変ステータベーン(15)の各々を備えた前記ベーン(15)を製造するステップと、
ケーシング(61)における外側開口(78)に取り付けられた外側トラニオン(36)を貫通して回転可能に配置される前記外側スピンドル(34)を組み付けるステップと、
を含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−83252(P2013−83252A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−220934(P2012−220934)
【出願日】平成24年10月3日(2012.10.3)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】