説明

不純物濃度プロファイルの測定方法、その方法に用いられるウェーハ、および、その方法を用いる半導体装置の製造方法

【課題】半導体層の不純物濃度およびプロファイルを正確に制御することを可能とする不純物濃度プロファイルの測定方法、その方法に用いられるウェーハ、および、それを用いた半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】基板10と、前記基板10の主面上に設けられた半導体層12,17であって、前記主面上において互いに面積の異なる複数の第1領域17a,17bに形成された第1の部分と、前記主面上で前記第1領域17a,17bを取り囲む第2領域17cに形成され前記第1の部分とは異なる構造を有する第2の部分と、を有する半導体層12,17と、を有するウェーハを用いる。そして、前記半導体層のうちの複数の前記第1の部分の表面から深さ方向の不純物濃度プロファイルを測定し、前記第1の部分の面積に依存する前記不純物濃度プロファイルの変化を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、不純物濃度プロファイルの測定方法、その方法に用いられるウェーハ、および、その方法を用いる半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の開発や製造にあたり、不純物濃度を正確に測定することは、とても重要である。一例として、バイポーラトランジスタ(Bipolar junction transistor:BJT)は、低雑音であり高速動作が可能であることから、高周波信号の増幅器に用いられる。例えば、エピタキシャル成長によりベース層やエミッタ層を形成するBJTでは、ベース層を100nm以下に薄くすることにより最小雑音指数を下げることができ、ギガヘルツ領域の高速動作が可能である。
【0003】
npn型のBJTでは、p形ベース層に不純物として、例えば、ボロン(B)が添加される。ベース層におけるボロン濃度が高くなると、ベース抵抗が低くなり電流利得が低下する。一方、ボロン濃度が低くなると、ベース抵抗は高くなるが、電流利得が向上する。そして、ベース層のボロン濃度は、BJTの用途に応じて最適化される。
【0004】
さらに、ベース層として、シリコン(Si)にゲルマニウム(Ge)を添加したSiGeを用いることができる。そして、エミッタ側からコレクタ側へGe濃度を少しずつ増加させることにより、ベース層にコレクタからエミッタへ向かう電界を生じさせることができる。これにより、BJTの応答速度を向上させることができる。
【0005】
このように、BJTでは、ベース層に添加されるp形不純物の濃度を正確に制御することが求められる。そして、ベース層に発生する電界はGeの濃度傾斜に依存するため、Geの濃度プロファイルの制御が重要となる。しかしながら、微細加工されたBJTのベース領域において、p形不純物の濃度、さらにGeの濃度プロファイルを直接測定することは困難である。そこで、例えば、BJTのベース層の不純物濃度およびGeの濃度プロファイルの正確な制御を可能とする不純物濃度プロファイルの測定方法およびそれを用いた半導体装置の製造方法が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平08−136482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の実施形態は、半導体層の不純物濃度およびプロファイルの正確な制御を可能とする不純物濃度プロファイルの測定方法、その方法に用いられるウェーハ、および、それを用いた半導体装置の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態に係る不純物濃度プロファイル測定方法は、基板と、前記基板の主面上に設けられた半導体層であって、前記主面上において互いに面積の異なる複数の第1領域に形成された第1の部分と、前記主面上で前記第1領域を取り囲む第2領域に形成され前記第1の部分とは異なる構造を有する第2の部分と、を有する半導体層と、を有するウェーハを用いる。そして、前記半導体層のうちの複数の前記第1の部分の表面から深さ方向の不純物濃度プロファイルを測定し、前記第1の部分の面積に依存する前記不純物濃度プロファイルの変化を求める。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】一実施形態に係る半導体装置の断面を示す模式図である。
【図2】一実施形態に係る半導体層の不純物濃度プロファイルである。
【図3】一実施形態に係るウェーハを示す模式図であり、(a)は、ウェーハ上の配置を示す平面図、(b)および(c)は、それぞれウェーハの部分断面である。
【図4】測定領域の面積が異なる2つの半導体層の不純物濃度プロファイルである。
【図5】測定領域の面積が異なる2つのGe濃度プロファイルである。
【図6】半導体層の不純物濃度を測定領域のサイズに対して示したグラフである。
【図7】エピタキシャル成長装置の断面を例示する模式図である。
【図8】不純物濃度の測定データの変化を例示するグラフである。
【図9】不純物濃度の測定データの別の変化を例示するグラフである。
【図10】一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態では、図面中の同一部分には同一番号を付してその詳しい説明は適宜省略し、異なる部分について適宜説明する。
【0011】
図1は、本実施形態に係る半導体装置100の断面の一部を例示する模式図である。半導体装置100は、例えば、p形ベース層5にSiGeを用いたBJTである。
図1に示すように、半導体装置100は、シリコン基板10の上に設けられたn形コレクタ層2と、n形コレクタ層2の上に積層されたp形ベース層5と、n形エミッタ層9とを備えている。
【0012】
p形ベース層5は、SiGeを含み、n形コレクタ層2の上に直接設けられている。p形ベース層5は、微細加工されたn形コレクタ層2の上に設けられる。例えば、n形コレクタ層の表面には、BJTのベース領域を画するSTI(Shallow Trench Isolation)3が設けられる。ベース領域の幅Wは、例えば、2GHz帯の低雑音増幅器用途では、通常1μm以下である。
【0013】
n形コレクタ層2の表面に設けられたSTI3の上には、引き出し配線層6が設けられている。STI3は、例えば、シリコン酸化膜(SiO)である。p形ベース層5と引き出し配線層6とは同時に形成されるが、例えば、n形シリコン層であるn形コレクタ層2に上に形成されるp形ベース層5は単結晶となるのに対し、STI3のSiO膜上に形成される引き出し配線層6は多結晶となり、p形ベース層5と引き出し配線層6との間の結晶構造が異なる。
【0014】
p形ベース層5および引き出し配線層6の表面にはSiO膜7が設けられ、n形エミッタ層9と引き出し配線層6との間を絶縁している。SiO膜7は、p形ベース層5の上に開口を有し、その開口を介してp形ベース層5とn形エミッタ層9とが接触している。
【0015】
図2は、半導体装置100のp形ベース層5におけるp形不純物BとGeのプロファイルとを例示している。縦軸にBおよびGeの濃度をそれぞれ示し、横軸にp形ベース層5の表面からの深さを示している。これらの濃度プロファイルは、2次イオン質量分析(Secondary Ion Mass Spectroscopy:SIMS)法を用いて測定されたものである。
【0016】
図2に示すように、p形不純物Bのプロファイルは、p形ベース層5の表面から約30nmの深さにピークを有し、そのピーク値は、約1×1020cm−3である。一方、Geの濃度プロファイルでは、10nmから40nmの深さにおいて、Ge濃度がp形ベース層の表面側からコレクタ側に向かって増加し、さらに、40nmから80nmの間に、Geを約11%含むSiGe層が設けられていることがわかる。
【0017】
次に、図3〜図6を参照して、本実施形態に係る不純物濃度プロファイルの測定方法を説明する。
【0018】
図3は、本実施形態に係るウェーハ20を例示する模式図であり、図3(a)は、ウェーハ20の主面上の配置を示す平面図、図3(b)および図3(c)は、それぞれウェーハの部分断面である。
【0019】
図3(a)に示すウェーハ20は、半導体装置100の製作に用いられるエピタキシャルウェーハであり、ウェーハ20の主面には、素子領域21と、TEG(Test Element Group)領域23が設けられている。
【0020】
素子領域21には、例えば、n形コレクタ層2と、p形ベース層5と、n形エミッタ層9を備えるBJTが設けられる。一方、TEG領域23には、複数のテストパターンが形成される。そして、不純物濃度プロファイルの測定領域を設けることもできる。
【0021】
図3(b)および図3(c)は、それぞれTEG領域23に設けられた測定領域の断面を模式的に示している。例えば、シリコン基板10の表面に半導体層12が形成され、半導体層12の表面には、STI14が設けられる。そして、半導体層12およびSTI14の上に半導体層17が設けられている。半導体層12は、n形コレクタ層2と同時に形成されるエピタキシャル層であり、STI14は、素子領域21に設けられるSTI3と同時に形成される。半導体層17は、p形ベース層5および引き出し配線層6と同時に形成されるエピタキシャル層である。
【0022】
図3(b)に示す不純物濃度プロファイルの測定領域17aは、例えば、一辺の幅がWの正方形とすることができる。そして、第1の領域である測定領域17aの周りを囲んだ第2の領域17cが形成されている。そして、測定領域17aに形成された第1の部分と領域17cに形成された第2の部分とは、それぞれ半導体層17の一部であり互いに構造が異なる。
【0023】
すなわち、半導体層17のうちで測定領域17aに形成された第1の部分は、図1に示すp形ベース層5に該当し、測定領域17aを囲む領域17cに形成された第2の部分は、引き出し配線層6に該当する。そして、測定領域17aの幅Wを、不純物濃度プロファイルが測定可能なサイズとすることにより、素子領域21に形成されるBJTのp形ベース層5の不純物濃度プロファイルをモニターすることができる。
【0024】
さらに、図3(c)に示すように、本実施形態に係る不純物濃度プロファイルの測定方法では、測定領域17aとは面積の異なる測定領域17bを、別のTEG領域23に設けることができる。例えば、測定領域17bは、一辺の幅がWの正方形とし、W<Wとなるように設ける。
【0025】
不純物濃度プロファイルの測定には、例えば、SIMS法を用いる。SIMS法は、半導体層の表面から深さ方向の不純物プロファイルを、比較的簡便に測定することができる。SIMS法による測定には、例えば、一辺が100μm以上の方形の測定領域を用いる。そして、微細なBJTのベース領域において、直接SIMS測定することは困難である。そこで、測定領域17aの幅Wおよび測定領域17bの幅Wを、例えば、100μm以上とすることにより、SIMS法を用いたp形ベース層5の不純物濃度プロファイルをモニターすることができる。
【0026】
また、上記の例に限らず、半導体装置の製作用ウェーハとは別のテスト用ウェーハを用いることにより、p形ベース層5の不純物濃度プロファイルをモニターすることもできる。例えば、複数のウェーハを同時に処理することが可能なエピタキシャル成長装置であれば、半導体装置100の製作用ウェーハおよびテスト用ウェーハの両方に同時に半導体層を成長することができる。
【0027】
そして、TEG領域23もしくはテスト用ウェーハに、面積の異なる少なくとも2以上の測定領域を設けることにより、測定領域(すなわち、半導体層17の第1の部分)の面積に依存する不純物濃度プロファイルの変化をモニターすることができる。さらに、3以上の面積の異なる領域を設けることにより、不純物濃度プロファイルの測定領域の面積に依存する変化が直線的でない場合にも精度良くモニターすることができる。
【0028】
以下、測定領域17aもしくはテスト用ウェーハを用いて測定されたBおよびGeの濃度プロファイルについて説明するが、便宜上、p形ベース層5のBおよびGeの濃度プロファイルと称する。
【0029】
図4は、p形ベース層5のp形不純物Bの濃度プロファイルの測定例AおよびBを示している。図2と同じように、横軸にp形ベース層5の表面からの深さ、縦軸にBの濃度を示している。測定例Aは、p形ベース層5と同じエピタキシャル層を基板の全面に均一に形成した測定用ウェーハを用いて測定した濃度プロファイルである。一方、測定例Bは、一辺が200μmの測定領域において測定した濃度プロファイルである。
【0030】
測定例Aの濃度プロファイルに比べて測定例Bの濃度プロファイルが低濃度となっている。すなわち、基板全面の広い面積に成長されたp形ベース層5に比べて、一辺が200μmの限られた領域に形成されるp形ベース層5の方がB濃度が低下することを示している。
【0031】
図5は、p形ベース層5におけるGeの濃度プロファイルの測定例AおよびBを示している。横軸はp形ベース層5の表面からの深さ、縦軸はGeの濃度を示している。図4と同じように、測定例Aは、基板の全面に形成したエピタキシャル層の濃度プロファイルであり、測定例Bは、一辺が200μmの測定領域において測定した濃度プロファイルである。
【0032】
図5に示す測定例AおよびBでは、p形ベース層5の表面側から深さ方向に増加するGeの濃度プロファイルの傾きが相違することがわかる。すなわち、基板全面の広い面積に成長されたp形ベース層5に比べて、一辺が200μmの限られた領域に形成されるp形ベース層5では、Ge濃度の傾きが急になることを示している。そして、図5に示す測定例Aと測定例Bとの間のわずかな傾きの差であっても、p形ベース層5に生じる電界強度を変化させBJTの応答速度に影響を与えることがある。
【0033】
上記のように、図4および図5に示す測定例では、基板全面の広い面積に形成されたp形ベース層5と、幅200μmの限られた面積の領域に形成されたp形ベース層5と、の間において、不純物濃度プロファイルが変化することがわかる。
【0034】
図6は、p形ベース層5のBのピーク濃度を測定領域のサイズに対して示したグラフである。同図に示すように、p形ベース層5のB濃度は、測定領域(すなわち、半導体層17の第1の部分)の一辺の幅Wが狭くなるほど低下することがわかる。そして、同図中にプロットした点を結ぶ曲線をW=0の近傍まで外挿すると、素子領域21に形成されるBJTのp形ベース層5のB濃度を推定することができる。
【0035】
例えば、図6に示すグラフでは、実際のBJTにおけるBのピーク濃度は2〜3×1019cm−3と推定される。これに対し、測定領域の幅Wが1000μm以上となるような広い測定領域でモニターされるBのピーク濃度は、約1×1020cm−3であり、大きな差がある。
【0036】
このように、p形ベース層5が形成される領域の面積に依存してB濃度が変化する現象は、エピタキシャル成長における所謂ローディング効果であり、p形ベース層5と、その周りに形成される領域と、の間におけるBの取り込み量の差に起因するものと考えられる。
【0037】
p形ベース層5は、n形コレクタ層2の上に形成される単結晶層である。一方、その周りに形成される引き出し配線層6は、STI3の上に形成される多結晶層である。そして、多結晶層に取り込まれるBの量は、単結晶層に取り込まれるBの量よりも多いと考えられる。このため、供給律速の化学反応に支配されるエピタキシャル成長では、p形ベース層5の面積に依存してp形ベース層5に取り込まれるBの量が変化し、上記のローディング効果が生じているものと考えられる。そして、前述したGeの濃度プロファイルにおけるGe濃度の傾斜の変化についても、同様にローディング効果として解釈することができる。
【0038】
上記の通り、本実施形態に係る不純物濃度プロファイルの測定方法を用いることにより、測定領域(すなわち、半導体層17の第1の部分)の面積に依存するローディング効果を測定することができる。そして、測定されたローディング効果を踏まえたエピタキシャル成長の管理が可能となり、例えば、半導体装置100の製造歩留りを向上させることができる。
【0039】
次に、図7〜図10を参照して、本実施形態に係る不純物濃度プロファイルの測定方法を用いた半導体装置100の製造方法について説明する。
【0040】
図7は、本実施形態に係るエピタキシャル成長装置200を例示する模式断面図である。エピタキシャル成長装置200は、例えば、減圧型CVD(Chemical Vapor Deposition)装置であり、反応室31の内部に、成長基板30を載置するサセプタ32と、原料ガスを供給するシャワーヘッド33と、を備えている。
【0041】
成長基板30は、サセプタ32の内部に配置されたヒータ34により加熱され、成長温度に保持される。そして、サセプタ32に対向する位置に設けられたシャワーヘッド33から、半導体層の原料ガスであるモノシラン(SiH)およびゲルマン(GeH)、さらにp形不純物のドーピングガス(B)が供給され、成長基板30の表面に半導体層をエピタキシャル成長させる。
【0042】
SiHおよびGeH、Bは、ガス配管35〜37を介してシャワーヘッド33に供給され、サセプタ32に対向する面に設けられた複数のピンホールから成長基板30に向けて放出される。一方、反応室31の内部は、排気ポート39を介して図示しない真空排気系に接続されており、圧力を一定に保つことができる。
【0043】
上記のエピタキシャル成長装置200では、例えば、成長温度、および、原料ガスの供給量、反応室内の圧力を成長条件として設定し、所定の半導体層を成長することができる。半導体装置100のウェーハ20を製作する場合には、これらの条件を半導体装置100の仕様に適合させ、各半導体層のエピタキシャル成長を行う。そして、後述するように、エピタキシャル成長した半導体層、例えば、p形ベース層5の検査結果をフィードバックして各成長条件を修正し、ベース層のB濃度およびGe濃度の傾斜を所望の範囲に維持することができる。
【0044】
図8は、p形ベース層5のB濃度の測定データの変化を例示するグラフである。図6と同じように、横軸に測定領域の幅W、縦軸にp形ベース層5に添加されたBのピーク濃度を示している。
【0045】
図8に示すように、例えば、エピタキシャル成長装置200の初期特性C、すなわち、測定領域の幅Wに依存するB濃度のローディング効果が、エピタキシャル成長を繰り返すにつれて変化し、同図中に示すDもしくはEの状態に平行移動する場合がある。このようなローディング効果の変化であれば、1つの幅Wの測定領域において、もしくは、基板の全面にp形ベース層5が形成されたテストウェーハを用いてB濃度を検査していれば、BJTのp形ベース層5におけるB濃度の変化を検出することができる。そして、例えば、ドーピングガスであるBの供給量を制御することにより、初期の状態Cに戻すことができる。ローディング効果を考慮しない多くの場合において、このような変化を前提としたエピタキシャル成長装置の管理が行われている。
【0046】
しかしながら、図8に示すようなB濃度の変化が常に起こる訳ではない。例えば、図9は、測定領域の幅Wに依存するB濃度の別の変化を例示するグラフである。図9に示すように、幅Wに対するB濃度の傾斜が変化し、初期特性CからGまたはFの状態に変化することがある。このようなローディング効果の変化に対して、1つの幅Wの測定領域、もしくは、基板全面にp形ベース層5が形成されたテストウェーハを用いたB濃度の検査では、BJTのp形ベース層5の濃度変化を検出することが難しい。
【0047】
例えば、幅Wが1000μm以上の測定領域、もしくは、基板全面にp形ベース層5が形成されたテストウェーハを用いて、p形ベース層5のB濃度をモニターしている場合、エピタキシャル成長装置200の特性がCからFへ変化すると、BJTのp形ベース層5のB濃度は変化していないのも関わらず、モニターされたB濃度には変化が生じる。一方、CからGの状態に変化している場合には、BJTのp形ベース層5においてB濃度が変化しているのも関わらず、モニターされたB濃度には変化が生じない。
【0048】
したがって、図9に示すようなエピタキシャル成長装置200のローディング効果の変化が生じた場合、1つ幅Wの測定領域、もしくは、基板全面にp形ベース層5が形成されたテストウェーハを用いたB濃度のモニター方法では、BJTのp形ベース層5のB濃度を制御することができず、半導体装置100の製造歩留りを低下させることになる。
【0049】
これに対し、本実施形態に係る不純物濃度プロファイルの測定方法では、面積の異なる複数の測定領域(すなわち、半導体層17の第1の部分)におけるB濃度をモニターし、その面積に依存するB濃度の変化、すなわち、ローディング効果を監視することができる。したがって、本実施形態に係る測定方法を半導体装置100の製造工程に導入することにより、製造歩留りを向上させることができる。
【0050】
次に、図10を参照して、本実施形態に係る半導体装置100の製造方法を説明する。同図は、半導体装置100の製造過程におけるエピタキシャル成長装置200の管理フローを例示している。
【0051】
エピタキシャル成長工程(S01)では、例えば、p形シリコン基板10の上にn形コレクタ層2が成長され、さらに、STI3が形成されたn形コレクタ層2の上にp形ベース層5が成長される。
【0052】
そして、エピタキシャル成長装置200におけるローディング効果の初期状態Cが、予め把握されている。例えば、既存のエピタキシャル成長装置のローディング効果に合わせて、エピタキシャル成長装置200の初期状態Cを設定することができる。これにより、各エピタキシャル層の成長条件の設定が容易となる。具体的には、本実施形態に係る不純物濃度プロファイルの測定方法を用いてエピタキシャル層の評価を行い、その結果に基づいて、成長時の反応室31の圧力やサセプタ32の温度を調整し、既存の成長装置のローディング効果と同じ初期状態Cを実現する成長条件を決定する。
【0053】
次に、原料ガスの供給量を調整してエピタキシャル層の成長速度を制御し、ドーピングガスの流量を調整してエピタキシャル層の不純物濃度を設定する。
このような手順を経てエピタキシャル成長装置200の成長条件が決定され、半導体装置100の製造を開始することができる。
【0054】
エピタキシャル成長されたウェーハは、成長後の検査を受ける(S02)。
例えば、半導体装置100の製作に用いられるウェーハ20は、表面状態、結晶欠陥の有無などが検査される。同時に、例えば、テスト用ウェーハを用いてp形ベース層5の不純物濃度を測定する。不純物濃度の測定には、例えば、C−V(容量−電圧)測定法などを用いることができる。
【0055】
そして、p形ベース層5の不純物濃度が管理範囲を逸脱するような結果が生じた場合には、エピタキシャル成長装置200を異常と判定し(N)、本実施形態に係る不純物濃度プロファイルの測定法を用いて不純物濃度の測定を行う(S09)。この際、前述したように、TEG領域に幅Wの異なる複数の測定領域が設けられたウェーハ20を用いることができる。また、複数の幅Wの異なる測定領域を設けたテストウェーハを用いても良い。これにより、エピタキシャル成長装置200のローディング効果を把握し、その結果、初期状態Cから変化していれば、例えば、反応室31の圧力やサセプタ32の温度を調整し、初期状態Cに戻す成長条件を決定する。
【0056】
さらに、ウェーハプロセス(S03)の処理を行った後の特性検査1(S04)の結果に基づいて、不純物濃度プロファイル測定(S09)を実施しても良い。
ウェーハプロセス(S03)では、TEG領域に所定のパターンが設けられ、その後の検査(S04)において種々の特性を測定することができる。例えば、p形ベース層5の抵抗を測定することができる。そして、p形ベース層5の抵抗値が所定の管理範囲を逸脱した場合にエピタキシャル成長装置200を異常と判定し(N)、不純物濃度プロファイルの測定を行うことができる(S09)。
【0057】
チップ化工程(S06)および組立試験工程(S07)の後に実施される半導体装置100の特性検査2(S08)の結果に基づいて、不純物濃度プロファイル測定(S09)を実施することもできる。
【0058】
特性検査2(S08)では、半導体装置100の種々の特性が検査される。そして、エピタキシャル層の不純物濃度、もしくは、結晶組成に関係する特性について、管理範囲を設定し、エピタキシャル成長装置200の状態をモニターすることも可能である。例えば、BJTの周波数応答特性を監視することにより、p形ベース層5におけるGe濃度の傾斜の変化をモニターすることができる。そして、周波数応答特性が管理範囲を逸脱した場合にエピタキシャル成長装置200を異常と判定し(N)、Ge濃度のプロファイルを測定を行い、そのローディング効果に基づいて成長条件の調整を実施することができる。
【0059】
上記の通り、半導体装置100の製造過程において、本実施形態に係る不純物濃度プロファイルの測定方法を実行することができる。そして、エピタキシャル成長装置200のローディング効果の管理を実行することにより、p形ベース層5におけるp形不純物Bの濃度およびGe濃度の傾きを正確に制御することが可能となり、製造歩留りを向上させることができる。
【0060】
本実施形態では、ベース層にSiGeを含むBJTを例に説明したが、エピタキシャル層を備える他の半導体装置に適用できることは言うまでもない。また、測定領域の形状は正方形に限定されるものではなく、例えば、その領域の最小幅Wが、SIMS法を用いて測定できる幅以上であれば、いかなる形状であっても良い。また、上記の実施形態で説明した不純物濃度プロファイルには、例えば、化合物半導体を構成する元素のプロファイルも含まれる。
【0061】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0062】
2・・・n形コレクタ層、 3、14・・・STI、 5・・・p形ベース層、 6・・・引き出し配線層、 7・・・SiO膜、 9・・・n形エミッタ層、 10・・・シリコン基板、 12、17・・・半導体層、 17a、17b・・・測定領域(第1の領域)、 17c・・・第2の領域、 20・・・ウェーハ、 21・・・素子領域、 23・・・TEG領域、 30・・・成長基板、 31・・・反応室、 32・・・サセプタ、 33・・・シャワーヘッド、 34・・・ヒータ、 35〜37・・・ガス配管、 39・・・排気ポート、 100・・・半導体装置、 200・・・エピタキシャル成長装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の主面上に設けられた半導体層であって、前記主面上において互いに面積の異なる複数の第1領域に形成された第1の部分と、前記主面上で前記第1領域を取り囲む第2領域に形成され前記第1の部分とは異なる構造を有する第2の部分と、を有する半導体層と、
を有するウェーハを用いた不純物濃度プロファイル測定方法であって、
前記半導体層のうちの複数の前記第1の部分の表面から深さ方向の不純物濃度プロファイルを測定し、前記第1の部分の面積に依存する前記不純物濃度プロファイルの変化を求めることを特徴とする不純物濃度プロファイル測定方法。
【請求項2】
前記不純物濃度プロファイルを、2次イオン質量分析法を用いて測定することを特徴とする請求項1記載の不純物濃度プロファイル測定方法。
【請求項3】
基板と、
前記基板の主面上に設けられた半導体層であって、前記主面上において互いに異なる面積を有する複数の第1領域に形成された第1の部分と、前記主面上で前記第1領域を取り囲む第2領域に形成され前記第1の部分とは異なる構造を有する第2の部分と、を有する半導体層と、
を備え、
前記第1領域において、前記半導体層の不純物濃度ポロファイルの測定が可能であることを特徴とするウェーハ。
【請求項4】
少なくとも3以上の互いに異なる面積を有する前記第1領域に前記半導体層の前記第1の部分がそれぞれ設けられたことを特徴とする請求項3記載のウェーハ。
【請求項5】
基板と、
前記基板の主面上に設けられた半導体層であって、前記主面上において互いに面積の異なる複数の第1領域に形成された第1の部分と、前記主面上で前記第1領域を取り囲む第2領域に形成され前記第1の部分とは異なる構造を有する第2の部分と、を有する半導体層と、
を有するウェーハを用いた半導体装置の製造方法であって、
前記半導体層のうちの複数の前記第1の部分の表面から深さ方向の不純物濃度プロファイルを測定し、前記第1の部分の面積に依存する前記不純物濃度プロファイルの変化に基づいて、前記半導体層の成長条件を決定することを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−119612(P2012−119612A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270218(P2010−270218)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】