説明

並進翼の迎角制御手法

【課題】並進翼の迎角制御手法を提供する。
【解決手段】並進翼羽根1が長円軌道を並行して周回する流体流動制御装置を並進翼と呼ぶ。本発明による並進翼は、並進翼羽根1の両翼端に連結部付動力伝動輪4を連結して長円軌道とし、並進翼羽根1の迎角を周期的に制御しながらこれらの連結部付動力伝動輪4を連動して輪転させることによって流体の流動を制御する。並進翼羽根1はブレード部2とその両翼端に連結する翼端連結部3とから構成され、翼端連結部3には迎角を安定させる為の迎角支持部位3cが同一直線上ではない3ヶ所以上に設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、並進翼に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来一般に知られている流体流動制御装置としてプロペラまたはスクリューと呼ばれる回転翼がある。回転翼はブレードとブレードを回転軸に連結するハブとから構成され、ハブを回転中心としてブレードを回転させることによってブレードの運動エネルギーと流体の運動エネルギーとを相互変換する。回転翼の用途は広く、航空機・船舶などの推進装置、または送風機・ポンプなどの造流装置のように、ブレードの運動エネルギーを流体の運動エネルギーに変換する能動的な用途と、風車・水車などの発電装置のように、流体の運動エネルギーをブレードの運動エネルギーに変換する受動的な用途がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−61598号公報
【特許文献2】特開2001−280230号公報
【特許文献3】特許第4411821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回転翼の性能は、ブレードの形状、枚数、回転速度などによって決定される。これらの性能決定要因はブレードと流体とが効率よく運動エネルギーを相互変換するように最適化される。しかし、回転翼に求められる、軽量、小径、高強度などの設計要求はすべて運動エネルギーの変換効率を低下させる制約条件となる。回転翼はブレードの片翼端をハブに連結して回転するためブレードの翼端と翼根とでは回転速度が大きく異なる。また、回転翼のブレードには回転速度の二乗に比例する大きな遠心力が発生する。この回転翼の運動的特徴はブレードやハブの形状を複雑にさせ、運動エネルギーの変換効率を低下させる主な原因である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による流体流動制御装置はブレードの両翼端にローラーチェーン等の動力伝動輪を連結して長円軌道とし、ブレードの迎角を周期的に制御しながらこれらの動力伝動輪を連動して輪転させることによって流体の流動を制御する。
【0006】
ブレードが長円軌道を並行して周回する流体流動制御装置を並進翼と呼ぶ。
【発明の効果】
【0007】
並進翼はブレードが長円軌道を並行して周回するためブレードの周回速度は翼幅方向に一定である。したがって並進翼はブレードの翼型を翼幅方向に一定にすることができ、ブレードの全翼面で効率よく運動エネルギーの相互変換をすることができる。さらに並進翼はブレードを長尺にする、またはブレード数を増やして長円軌道を長くすることによってソリディティを最適な状態に保持したままで大型化することができる。
【0008】
本発明による並進翼はブレードの迎角を安定して制御できることを特長とする。ブレードの迎角を安定して制御することによってブレードと流体の運動エネルギーを効率的に相互変換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】並進翼羽根と動力伝動輪とを示す図である。
【図2】並進翼羽根と動力伝動輪の長円軌道と動力伝動輪の連結部との位置関係を示す図である。
【図3】並進翼の断面図である。
【図4】並進翼の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明による並進翼は、並進翼羽根1の両翼端にアタッチメント付ローラーチェーン等の連結部付動力伝動輪4を連結して長円軌道とし、並進翼羽根1の迎角を周期的に制御しながらこれらの連結部付動力伝動輪4を連動して輪転させることによって流体の流動を制御する。
【0011】
並進翼羽根1は、ブレード部2とブレード部2の両翼端に連結する翼端連結部3とから構成される。
【0012】
並進翼羽根1のブレード部2は、ブレードと流体の運動エネルギーを相互変換する役割を持つ。ブレード部2の翼型は、流体の流動方向8に対して長円軌道の並進部分6cの往路と復路とで迎角が反転するため、キャンバーがゼロとなる対称翼、または対称翼に近い翼型とする。
【0013】
並進翼羽根1の両翼端に連結する翼端連結部3は、連結部付動力伝動輪4とブレード部2とを連結する役割と、迎角を支持する役割とを持ち、それぞれの部位を、動力伝動輪連結部位3a、ブレード連結部位3b、迎角支持部位3cと呼ぶ。
【0014】
翼端連結部3の動力伝動輪連結部位3aは、翼端連結部3と連結部付動力伝動輪の連結部4aとを連結する役割を持つ。この動力伝動輪連結部位3aは、並進翼羽根1が翼幅方向に直動可能に連結されており、並進翼羽根1が長円軌道の回転部分6dを周回する際の翼幅方向の距離の変化に対応できるようになっている。また、この動力伝動輪連結部位3aは、並進翼羽根1が翼幅方向の軸周りに回転可能に連結されており、並進翼羽根1が長円軌道の回転部分6dを自転しながら周回できるようになっている。さらに、この動力伝動輪連結部位3aは、並進翼羽根1が長円軌道の回転部分6dで自転する際の自転姿勢を安定させる為に並進翼羽根1の両翼端で翼弦方向に前後して配置される。
【0015】
翼端連結部3のブレード連結部位3bは、翼端連結部3とブレード部2とを連結する役割を持つ。このブレード連結部位3bは、ブレード部2が翼厚方向の軸周りに回転可能に連結されており、並進翼羽根1が長円軌道の回転部分6dを周回する際の翼弦方向の距離の変化に対応できるようになっている。
【0016】
翼端連結部3の迎角支持部位3cは、並進翼羽根1の迎角を支持する役割を持つ。この迎角支持部位3cは、並進翼羽根1の迎角を安定させる為に同一直線上ではない3ヶ所以上に設けられる。
【0017】
上記の特徴を持つ並進翼羽根1の両翼端に連結部付動力伝動輪4を連結し、これらの連結部付動力伝動輪4を連動して輪転させることによって並進翼羽根1を連結部付動力伝動輪4の長円軌道に沿って並行して周回させる。
【0018】
並進翼羽根1の両翼端に設けられた迎角支持部位3cが連結部付動力伝動輪4の長円軌道に沿って配置された迎角案内部材5に支持されながら摺動または転動することによって並進翼羽根1の迎角が周期的に制御される。この迎角案内部材5は、並進翼羽根1の両翼端で偏心して配置されており、この偏心によって並進翼羽根1に迎角が与えられる。
【実施例】
【0019】
図1〜3に示された並進翼は、並進翼羽根1の両翼端に迎角支持部位3cが合計4ヶ所ある形態である。
【0020】
図4に示された並進翼は、並進翼羽根1の両翼端に迎角支持部位3cが合計3ヶ所ある形態である。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明による並進翼は、従来一般に知られている回転翼に代わって、推進装置、造流装置、発電装置として利用可能である。
【符号の説明】
【0022】
1 並進翼羽根
2 ブレード部
3 翼端連結部
3a 動力伝動輪連結部位
3b ブレード連結部位
3c 迎角支持部位
4 連結部付動力伝動輪
4a 連結部付動力伝動輪の連結部
4b 前方連結側の連結部付動力伝動輪の連結部の位置
4c 後方連結側の連結部付動力伝動輪の連結部の位置
5 迎角案内部材
6a 前方連結側の長円軌道
6b 後方連結側の長円軌道
6c 長円軌道の並進部分
6d 長円軌道の回転部分
7 並進翼羽根の周回方向
8 流体の流動方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
並進翼羽根と連結部付動力伝動輪とを具備し、前記並進翼羽根はブレード部と該ブレード部の両翼端に連結する翼端連結部とから構成され、前記ブレード部はブレードと流体の運動エネルギーを相互変換する役割を持ち、前記翼端連結部は動力伝動輪連結部位とブレード連結部位と迎角支持部位とを備え、前記動力伝動輪連結部位は翼端連結部と連結部付動力伝動輪の連結部とを連結する役割を持ち、該動力伝動輪連結部位は並進翼羽根が翼幅方向に直動可能に連結され、該動力伝動輪連結部位は並進翼羽根が翼幅方向の軸周りに回転可能に連結され、該動力伝動輪連結部位は並進翼羽根の両翼端で翼弦方向に前後して配置され、前記ブレード連結部位は翼端連結部とブレード部とを連結する役割を持ち、該ブレード連結部位はブレード部が翼厚方向の軸周りに回転可能に連結され、前記迎角支持部位は並進翼羽根の迎角を支持する役割を持ち、該迎角支持部位は同一直線上ではない3ヶ所以上に設けられ、前記連結部付動力伝動輪は並進翼羽根との連結部を備え、前記並進翼羽根の両翼端に前記連結部付動力伝動輪を連結し、該連結部付動力伝動輪を連動して輪転させることによって並進翼羽根を連結部付動力伝動輪の長円軌道に沿って並行して周回させ、該並進翼羽根の両翼端に設けられた迎角支持部位が連結部付動力伝動輪の長円軌道に沿って配置された迎角案内部材に支持されながら摺動または転動することによって並進翼羽根の迎角が周期的に制御されることを特徴とする流体流動制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−83223(P2013−83223A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224419(P2011−224419)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(711011179)
【Fターム(参考)】