説明

中温性海洋細菌由来のエクソポリサッカリド(EPS)の硫酸化脱重合誘導体、その調製方法、及び組織再生におけるその使用

本発明は、深層熱水環境由来の各種の株の中温性海洋細菌によって分泌される、エクソポリサッカリド(EPS)と称される特定のタイプの天然ポリサッカリドから得られるポリサッカリド誘導体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、深層熱水環境由来の各種の株の中温性海洋細菌によって分泌される、エクソポリサッカリド(EPS)と称される特定のタイプの天然ポリサッカリドから得られるポリサッカリド誘導体に関する。
【0002】
とりわけ本発明は、エクソポリサッカリドのフリーラジカル脱重合及び硫酸化によって得ることができる低分子量の高度に硫酸化したポリサッカリド誘導体に関する。
【背景技術】
【0003】
細菌性エクソポリサッカリド誘導体ではない高度に硫酸化した低分子量ポリサッカリドはすでに既知である。それらは、特に治療用物質として有利な特性を有する。例えば、硫酸化ポリサッカリドであるヘパリンは、静脈血栓症の予防と治療において一般的に使用されている抗凝固性及び抗血栓性の試薬である。市販されているヘパリンは、ブタ腸内粘膜から現在抽出されている。しかしながら、動物起源のこれらのヘパリンの使用は、病原性試薬(例えばプリオン)の混在の危険を呈する。混在の危険を減少または回避するため、動物起源以外の起源から得られる新規なポリサッカリドの同定が、研究の特に要求される系列であると解される。
【0004】
細菌、とりわけ海洋細菌由来のポリサッカリドは、この必要性を満たすことが可能である。それ故、海洋細菌によって分泌されるポリサッカリド、またはエクソポリサッカリドの研究と開発は、特に新規な活性成分のデザイン、またはすでに存在する分子の類似体のデザインのため、この研究系列の範囲内に存在する。
【0005】
深層海洋の熱水環境から由来するサンプルのスクリーニングは、大気圧と環境温度で天然EPSを生産可能な各種の中温性細菌株の単離が可能である。
【0006】
少数の天然EPSは、既に特許出願及び文献の主題となっている:例えば、欧州特許EP 975 791は、Vibrio diabolicus株、天然EPS HE 800、並びに特にレトロウイルス剤、抗腫瘍剤、及び抗血栓剤を含む医薬としてのその使用を記載している。800000g/molの天然の状態のEPS HE 800は硫酸化されていない:それはおよそ30重量%のアミノ糖、32重量%の酸性モノサッカリド、1重量%の中性モノサッカリドからなる;そのタンパク質含量は1重量%に近い。欧州特許出願第1 293 695号は、骨の治癒を容易にするための物質としての天然形態のEPS HE 800の使用を記載している(Zanchetta等, Cacif Tissue Int., 2003, 72: 74-79)。
【0007】
GY 785と称され、細菌Alteromonas infernosによって生産される第二の天然EPSも、仏国特許第2 755 142号で同定され記載されている。天然EPS GY 785は、10g/mlの平均分子量を有するポリサッカリド鎖の異種集団からなる。天然EPS GY 785はわずかに硫酸化している(スルフェートの量は10重量%未満);それは57重量%の中性モノサッカリド(主にグルコースとガラクトース)、及び42重量%の酸性モノサッカリド(グルクロン酸とガラクツロン酸)からなる;それはいずれのアミノ糖、またはアセテート、ラクテート、ピルベート、及びスクシネート置換体をも含まない;そのタンパク質含量はおよそ4重量%である(Guezennec J., Ind. Microb. Biotech., 2002, 29: 204-208)。
【0008】
ST 716と称され、細菌Alteromonas macleodii亜種fijiensisによって生産される第三の天然EPSもまた、欧州特許EP 1171625で同定され記載されている(Rougeaux H.等, Carbohydr. Res., 1998, 312: 53-59)。天然EPS ST 716はわずかに硫酸化されている(スルフェートの量は約5重量%である);それは40重量%の中性モノサッカリドと、40重量%の酸性モノサッカリドからなる;そのタンパク質含量は2から4重量%である。
【0009】
他の新規な天然EPSも、文献で同定され記載されている;特にPseudoalteromonasによって生産されるEPS HYD 721(Rougeaux H.等, Carbohydr. Res., 1999, 315: 273-285及びRaguenes G.等, 1997)、EPS HYD 657(Cambon-Bonavita H.等, J. Applied Microbiol, 2002, 93: 310-315)、及びEPS MS 907(Raguenes G.等, Curr. Microbiol, 2003, 46: 448-52)が挙げられる。
【特許文献1】欧州特許EP 975 791
【特許文献2】欧州特許出願第1 293 695号
【非特許文献1】Zanchetta等, Cacif Tissue Int., 2003, 72: 74-79
【特許文献3】仏国特許第2 755 142号
【非特許文献2】Guezennec J., Ind. Microb. Biotech., 2002, 29: 204-208
【特許文献4】欧州特許EP 1171625
【非特許文献3】Rougeaux H.等, Carbohydr. Res., 1998, 312: 53-59
【非特許文献4】Rougeaux H.等, Carbohydr. Res., 1999, 315: 273-285
【非特許文献5】Raguenes G.等, 1997
【非特許文献6】Cambon-Bonavita H.等, J. Applied Microbiol, 2002, 93: 310-315
【非特許文献7】Raguenes G.等, Curr. Microbiol, 2003, 46: 448-52
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の主題は、深層熱水環境から得られる中温性細菌株によって分泌される天然EPSの処理から由来し、製薬学的または美容的な価値を有し、組織エンジニアリングにおいて価値を有する硫酸化ポリサッカリド誘導体である。本発明に係る深層熱水環境から得られる中温性海洋細菌によって分泌される天然エクソポリサッカリド(EPS)の硫酸化ポリサッカリド誘導体は、以下の工程を含む方法によって得ることができる:
−100g/mol以下の低分子量の脱重合誘導体を得るために、前記天然EPSのフリーラジカル脱重合からなる工程;
−その後、硫酸化ポリサッカリド誘導体の全重量に対して10から45重量%の間のスルフェート基置換の度合いを有する硫酸化ポリサッカリド誘導体を得るのに十分な量で少なくとも一つの硫酸化剤の添加を含む、任意に凍結乾燥した脱重合誘導体の硫酸化からなる工程であって、その後任意に透析される工程。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
第一の脱重合工程の間で、天然EPSは液体形態で使用でき、即ちそれは培養培地内に前記細菌によって分泌される。好ましくは前記培養培地は濃縮され、天然EPSを含み細菌破片を含まない上清のみが保存される。天然EPSは、当業者に既知のいずれかの適切な方法、特に膜限外濾過によって回収でき、次いで任意にそのまままたは付加塩の形態で凍結乾燥できる。
【0012】
天然EPSのフリーラジカル脱重合からなる工程は、好ましくは金属触媒の存在下で、天然EPSを含む反応混合物に酸化剤の溶液を添加することにより実施される。前記酸化剤は好ましくは、過酸化物、特に過酸化水素、及び過酸、特に過酢酸及び3−クロロ過安息香酸から選択される。前記添加は好ましくは、30分から10時間の間の期間連続的に攪拌しながら実施される。反応混合物は、フリーラジカル脱重合反応の継続時間を通じて約30から70℃の間の温度で、例えば水酸化ナトリウムのような塩基性化剤の連続的な添加により、6から8の間のpHで好ましくは維持される。
【0013】
本発明の特定の実施態様によれば、この工程では、天然EPSは、反応混合物の約2から10mg/mlの間の濃度で反応混合物中に存在する。
【0014】
本発明の好ましい実施態様によれば、酸化剤は、好ましくは0.1から0.5重量%の間、好ましくは0.1から0.2重量%のオーダーの濃度を有する過酸化水素(H)の溶液であり、V1/1000からV1/10ml/分、好ましくはV1/50からV1/500ml/分、より好ましくはV1/100ml/分のオーダーの流速で添加され、ここでV1は過酸化水素の溶液が添加される海洋エクソポリサッカリド(EPS)を含む反応媒体の容積である。
【0015】
脱重合工程の間で使用できる金属触媒は、特に特許出願FR 0 221 977に記載されているように、好ましくはCu++、Fe++、及びCr+++イオン、及びCr2−アニオンから選択される。特定の実施態様によれば、前記金属触媒は、約10−3Mから10−1Mの間の濃度、好ましくは約0.001から0.05Mの間の濃度で反応混合物中に存在する。
【0016】
本発明に係る上述のようなフリーラジカル脱重合反応は、単一の工程で、立体排除クロマトグラフィーによる分画化をせずに、良好な収率で、均一な低分子量ポリサッカリド誘導体を得ることを可能にする。用語「低分子量ポリサッカリド誘導体」は、100000g/mol以下、好ましくは5000から50000g/molの間、より好ましくは25000g/mol以下の分子量を有する誘導体を意味するように企図される。本発明の開示の範囲内で、用語「均一な誘導体」は、高速立体排除クロマトグラフィーにより、サイズに関して均一であるポリサッカリド鎖の優勢な集団を表す単一のメインピークを示す誘導体であって、5未満、好ましくは1.5から4の間、より好ましくは2以下の多分散指数(Mw/Mn;Mw=重量平均分子量;Mn=数量平均分子量)によって特徴づけされる誘導体を意味するように企図される。
【0017】
脱重合反応が終了した際、本発明の特定の実施態様によれば、前記反応は、その末端が非常に反応性である鎖を安定化するために、特に「ピーリング」反応による鎖の加水分解を避けるために、還元剤を使用して得られたポリサッカリド誘導体の還元からなる工程を含む。この目的のために使用できる還元剤の性質は必須ではない。それは特にホウ化水素ナトリウムであって良い。
【0018】
脱重合のために使用される金属触媒は、好ましくは事前に弱カチオン交換樹脂を被せたイオン交換クロマトグラフィーにより、またはEDTA(エチレンジアミン四酢酸)での処理により、脱重合反応の最後で除去でき、還元工程が実施される実施態様では、還元の最後で除去できる。
【0019】
本発明の方法の特定の実施態様によれば、硫酸化工程の前で、N−アセチル化へクソサミンを含み、フリーラジカル脱重合工程の最後で、及び/または還元工程の最後で得られたポリサッカリド誘導体のN−脱アセチル化からなる工程が実施される。このN−脱アセチル化工程は、Zou等(Carbohyd. Res., 1998, 309: 397-301)から採用されたプロトコールによって実施される。有利にはN−脱アセチル化工程は、ポリサッカリド誘導体を含む反応混合物に、ホウ化水素ナトリウム溶液を攪拌しながら添加することによって実施される。反応混合物の温度が約80℃に達した際に、塩基性化剤、好ましくは水酸化ナトリウムを反応媒体に添加する。塩基性媒体中のアミドの塩基性加水分解のメカニズム、好ましくは水酸化ナトリウムの存在下でのメカニズムは、以下の模式図に示される:
【化1】

【0020】
一時間の反応後、pH5が得られるまで酢酸を連続的に添加することにより、反応媒体を中和する。得られたポリサッカリド誘導体を膜限外濾過により回収でき、次いで任意に凍結乾燥できる。
【0021】
好ましい実施態様によれば、N−脱アセチル化工程は、Vibrio属の熱水中温性海洋細菌によって分泌される天然EPS、好ましくはHE 800の脱重合から由来するポリサッカリド誘導体に実施される。Vibrio属の前記細菌によって分泌される天然EPSは、N−アセチル化へクソサミンを含むことによって特徴付けされる。
【0022】
脱重合、及び/または還元、及び/またはN−脱アセチル化から由来するポリサッカリド誘導体は、必要であれば、当業者に周知のいずれかの適切な方法、例えば膜限外濾過によって回収することができ、次いで任意にそのままの形態で、またはピリジン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、水酸化テトラブチルアンモニウム、及び水酸化ナトリウムから選択されて良い弱塩基若しくは強塩基との付加塩の形態で凍結乾燥できる。この凍結乾燥された塩は、例えばDow Corning社によりDowex(登録商標)の名称で市販されているもののようなイオン交換樹脂カラムで、1から8mg/mlの間の濃度でポリサッカリド誘導体の水溶液を溶出することによって調製されて良い。前記溶出液は、pHが酸性を維持する、例えば5未満である範囲で回収され、次いでpHは上述のような所望の塩基で約6.5に後に調節される。塩の形態のポリサッカリド誘導体は、次いで限外濾過されて凍結乾燥される。
【0023】
おそらく付加塩の形態の凍結乾燥化ポリサッカリド誘導体は、好ましくは硫酸化工程の初めで無水溶媒中に溶解される;この溶媒は好ましくは、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、及び/またはホルムアミドから選択される。無水溶媒中に存在するポリサッカリド誘導体の量は、約1から10mg/mlの間、好ましくは1から5mg/mlの間であって良く、より好ましくはこの量は約2.5mg/mlである。無水溶媒中へのEPSの溶解は、好ましくは環境温度で1〜2時間攪拌し、次いで40から50℃の間の温度、好ましくは約45℃の温度で約2時間、分子ふるいを使用するアルゴン環境下で実施される。
【0024】
硫酸化工程の間で使用される化学的硫酸化剤は、凍結乾燥形態または溶液の形態で存在する脱重合化、及び/または還元化、および/またはN−脱アセチル化EPSに添加できる。
【0025】
硫酸化剤は好ましくは、硫酸ピリジン(遊離物またはポリマーへの結合物)、硫酸ジメチルホルムアミド、硫酸トリエチルアミン、及び硫酸トリメチルアミンの複合体から選択される。化学的硫酸化剤は、溶液中のポリサッカリドの重量の好ましくは約4から6倍、より好ましくは約5倍を占める重量でポリサッカリド誘導体の溶液に添加する。次いで化学的硫酸化反応は好ましくは、所望の硫酸化度合いに依存して約2から24時間の期間攪拌しながら実施される。所望の度合いの硫酸化に到達した際、以下のように反応媒体の冷却後、硫酸化反応は停止される:
−好ましくは反応体積の1/10に等しい割合で水を添加し、例えば水酸化ナトリウム(3M)のような塩基性化剤で反応媒体のpHを9に調節する;または
−好ましくは、塩化ナトリウム飽和アセトンまたはメタノールの存在下で沈降し、次いで水中に沈降物を溶解する。
【0026】
特定の実施態様によれば、硫酸化ポリサッカリド誘導体の溶液は、好ましくは透析されて、各種の塩が除去され、次いで凍結乾燥される。
【0027】
本発明の意味では、用語「硫酸化ポリサッカリド誘導体」は、化学的硫酸化処理に供せられているポリサッカリド誘導体を意味するように企図され、スルフェート基を含むものであり、この硫酸化処理の前にスルフェート基を有するか否かに関わらない。
【0028】
好ましくは、本発明に係る低分子量硫酸化ポリサッカリド誘導体は、100000g/mol以下、好ましくは5000から50000g/molの間の分子量を有し、5未満、好ましくは1.5から4の間の多分散指数を有し、10から45重量%の間、好ましくは20から40重量%の間のスルフェート基置換の度合いを有する。
【0029】
より好ましくは、本発明に係る低分子量硫酸化ポリサッカリド誘導体は、25000g/mol以下の分子量を有し、2未満の多分散指数を有し、10から45重量%の間、好ましくは20から40重量%の間のスルフェート基置換の度合いを有する。
【0030】
本発明の好ましい実施態様によれば、本発明に係る低分子量硫酸化ポリサッカリド誘導体は、好ましくはAlteromonasまたはVibrio属に属する熱水起源の中温性海洋細菌によって分泌される天然EPSの処理によって得られる。
【0031】
本発明の変形例によれば、Altermonas属の細菌は、GY 785、HYD 657、HYD 721、HYD 1545、HYD 1644、ST 716、及びMS 907株から選択される。
【0032】
本発明は、Alteromonas属の細菌によって分泌される天然EPSから得られる低分子量硫酸化ポリサッカリド誘導体に関し、前記天然EPSは、20から70重量%、好ましくは30から60重量%、より好ましくは38から57重量%の中性モノサッカリド含量を有する。
【0033】
本発明はまた、Alteromonas属の細菌によって分泌される天然EPSから得られる低分子量硫酸化ポリサッカリド誘導体に関し、前記天然EPSは、5から60重量%、好ましくは6から50重量%の間、より好ましくは8から42重量%の間の酸性モノサッカリドを有する。
【0034】
本発明はまた、Alteromonas属の細菌によって分泌される天然EPSから得られる低分子量硫酸化ポリサッカリドに関し、前記天然EPSは、そのオシド組成の0から1重量%のアミノ糖含量を有する。
【0035】
特定の実施態様によれば、本発明の低分子量硫酸化ポリサッカリド誘導体は、Alteromonas属の細菌によって分泌される天然EPSから得られ、前記天然EPSは以下のものを含むオシド組成を有する:
−20から70重量%、好ましくは30から60重量%、より好ましくは38から57重量%の中性モノサッカリド;
−5から60重量%、好ましくは6から50重量%、より好ましくは8から42重量%の酸性モノサッカリド;
−0から1重量%のアミノ糖。
【0036】
別の特定の実施態様によれば、本発明の低分子量硫酸化ポリサッカリドは、Vibrio属の細菌、好ましくはHE 800細菌株によって分泌される天然EPSから得られる。Vibrio属の細菌によって分泌される天然EPSは硫酸化されない。
【0037】
本発明は、Vibrio属の細菌によって分泌される天然EPSから得られる低分子量硫酸化ポリサッカリド誘導体に関し、前記天然EPSは、0から5重量%、好ましくは0から1重量%の中性モノサッカリド含量を有する。
【0038】
本発明は、Vibrio属の細菌によって分泌される天然EPSから得られる低分子量硫酸化ポリサッカリド誘導体に関し、前記天然EPSは、20から50重量%、好ましくは25から40重量%、より好ましくは30から32重量%の酸性モノサッカリド含量を有する。
【0039】
本発明は、Vibrio属の細菌によって分泌される天然EPSから得られる低分子量硫酸化ポリサッカリド誘導体に関し、前記天然EPSは、20から50重量%、好ましくは25から40重量%、より好ましくは30から35重量%のアミノ糖含量を有する。
【0040】
本発明は、Vibrio属の細菌によって分泌される天然EPSから得られる低分子量硫酸化ポリサッカリド誘導体に関し、前記天然EPSは、0から15重量%、好ましくは4から8重量%、より好ましくは5から6重量%のN−アセチル化基を有する。
【0041】
本発明の特定の実施態様によれば、本発明に係る低分子量硫酸化ポリサッカリド誘導体は、Vibrio属の細菌によって分泌される天然EPSから得られ、前記天然EPSは以下のものを含むオシド組成を有する:
−0から5重量%、好ましくは0から1重量%の中性モノサッカリド;
−20から50重量%、好ましくは25から40重量%、より好ましくは30から32重量%の酸性モノサッカリド;
−20から50重量%、好ましくは25から40重量%、より好ましくは30から35重量%のアミノ糖;
−0から15重量%、好ましくは4から8重量%、より好ましくは5から6重量%のN−アセチル化基。
【0042】
本発明は、0から15重量%、好ましくは0から5重量%、より好ましくは0から1重量%のタンパク質含量を有する天然EPSから得られる低分子量硫酸化ポリサッカリド誘導体に関する。
【0043】
驚くべきことに且つ予期せぬことに、本発明者は、本発明に係る低分子量硫酸化ポリサッカリド誘導体が、結合組織のための創傷治癒剤として使用でき、特に線維芽細胞増殖を刺激し、線維芽細胞による炎症前サイトカインまたは可溶性メディエーターの分泌を阻害し、線維芽細胞によるマトリックスメタロプロテアーゼの分泌を阻害し、伝統的な補体系路を阻害し、筋線維芽細胞の損傷に対する線維芽細胞の増殖を刺激し、細胞の異種集団における他のサブ集団の損傷に対して間葉細胞となることを企図される骨髄細胞の増殖を選択的に刺激することが可能であることを示した。
【0044】
線維芽細胞は、置換組織の形成に関して損傷組織の機能性を回復するためその創傷治癒の工程で中枢の役割を有する。典型的に、創傷治癒工程は、線維芽細胞が時系列の順番に従って進行する再生工程を生ずる間の3の段階で生ずるが、その順番は正確であるが互いに関連はしていない。
【0045】
(1)第一の炎症及び血管創傷治癒段階は、大量の成長因子、サイトカイン、及びプロテアーゼの放出、並びに炎症細胞、線維芽細胞、及び血管細胞の病変レベルでの移動によって特徴づけされる。炎症細胞の流入、及びサイトカインの生産は、線維芽細胞によるセリンプロテアーゼまたはマトリックスメタロプロテアーゼのようなヒドロラーゼの生産を誘導する。通常一過性である炎症段階が制御不能に進行する際、慢性の炎症性病理が生ずることになる。
【0046】
(2)組織再構成段階(増殖段階または顆粒化組織)は、比較的組織化されておらず豊富に血管化している細胞外マトリックスで形成されている病変が存在する場合に生じている組織物質の欠損によって反映される。線維芽細胞は、成長因子の影響下で迅速に増殖する。これらの線維芽細胞は、グリコサミノグリカン(GAG)、フィブロネクチン、及びコラーゲンのような細胞外マトリックス成分によって再構成の顕著な働きを実施する。これらの線維芽細胞のあるものは、筋線維芽細胞の表現型を獲得し、特に平滑筋α−アクチンを発現する。瘢痕状の組織は、筋線維芽細胞の収縮能力により収縮する。
【0047】
(3)成熟段階では、大部分の筋線維が細胞がアポトーシスのため消失し、平滑筋α−アクチンをもはや発現しない線維芽細胞と置換される。この段階では、それらの活性により筋線維芽細胞の持続は、線維症タイプの病因を導く。この工程の最後で、密な線維性の瘢痕状の組織が形成され、次いでそれ自体リモデルできる。瘢痕状の組織の成熟は、特にマトリックス線維の配向の変更によって特徴付けられ、それは正常結合組織におけるようなより強い張度の線に沿ってそれ自体を配置する傾向にある。
【0048】
組織リモデリングは、細胞外マトリックスの合成とその分解の間の動的なバランスである。このバランスが平衡状態である場合、創傷治癒は正常である。しかしながら、このバランスが細胞外マトリックス合成に向けて非常に長い期間傾斜すると、線維症の展開を示す。このバランスが細胞外マトリックスの過度の分解に傾斜すると、炎症性病理が生ずる。
【0049】
本発明は、結合組織、特に真皮及び歯肉の結合組織に対する創傷治癒剤としての、本発明に係る低分子量硫酸化ポリサッカリド誘導体の使用に関する。
【0050】
本発明の低分子量硫酸化ポリサッカリド誘導体が線維芽細胞増殖活性化特性を有するという事実を考慮すると、それ故、線維芽細胞増殖を刺激できる薬剤、または創傷治癒活性を有する製薬組成物の調製のための再生薬剤としてのそれらの使用に対して特に有利であり、前記組成物は、結合組織、特に真皮及び歯肉の結合組織の再構成及びリモデリングを促進することが特に可能である。
【0051】
本発明者はまた、本発明に係る低分子量硫酸化ポリサッカリド誘導体が、特にインターロイキン1β(IL−1β)及び/またはTNF−α(腫瘍壊死因子)を含む、結合組織線維芽細胞による炎症前サイトカインまたは可溶性メディエーターの分泌を阻害できる薬剤として使用できることも示した。
【0052】
歯肉炎、慢性潰瘍、遅延した創傷治癒、または慢性関節リウマチのような特定の慢性炎症性疾患は、マトリックスマクロ分子の過度な非制御的分解を伴う。これらの疾患は、サイトカイン、特に炎症前サイトカインの有害な分泌、及び化学誘導物質アナフィラトキシンの有害な過剰生産をそれ自体引き起こす補体の持続的な活性化と非常にしばしば関連する。これらの炎症性疾患では、炎症前サイトカインの過度の生産は、特に細胞移動、細胞増殖を含む生理学的な細胞と組織の機能、並びにマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)のような特定のプロテアーゼの発現、分泌、及び活性化を破壊する。マトリックスタンパク質分解に関与するこれらのMMPの発現は、一般的に構成的であるというわけではなく、IL−1β及び/またはTNF−α及び/または成長因子のような炎症前サイトカインによって誘導される。
【0053】
本発明者は、本発明に係る低分子量硫酸化ポリサッカリド誘導体が、結合組織、特に真皮及び歯肉の結合組織の線維芽細胞によるメタロプロテアーゼからのマトリックスの分泌を阻害できる薬剤として使用できることを示した。特に、本発明に係る誘導体は、ゼラチナーゼA(MMP−2)及び/またはストロメリシン1(MMP−3)の分泌を阻害するのにとりわけ有効である。メタロプロテアーゼ分泌の阻害は、それらがIL−1βのような炎症前サイトカインの影響下にあるなしに関わらず、線維芽細胞で示されている。実際、特に歯周病及び慢性潰瘍を含む、真皮及び歯肉の結合組織に影響する炎症性疾患におけるマトリックスマクロ分子の非制御的な分解に関与しているであろうMMPの分泌を調節することは、とりわけ有利である。
【0054】
結合組織線維芽細胞、特に真皮及び歯肉の結合組織線維芽細胞による炎症前サイトカイン及びマトリックスメタロプロテイナーゼ分泌を調節することによって、本発明に係る硫酸化ポリサッカリド誘導体は、良好な抗炎症活性を示す。
【0055】
補体は、可溶性タンパク質または膜タンパク質の複合体セットとして規定される先天的免疫性(攻撃に対する自発的な活性化)の成分である。炎症応答が存在すると、これらのタンパク質は、生物学的活性を有するペプチドを生産する一連のタンパク質分解鎖反応において活性化される。迅速で局在的である補体活性化は、コントロールの各種の特に有効なメカニズムに供される。しかしながらこれらのコントロールメカニズムのあるものは、自己免疫疾患のような炎症性疾患で破壊されており、持続的な補体活性化を導く。驚くべき且つ予期せぬことに、本発明者は、伝統的な補体経路を阻害できる薬剤として、本発明の低分子量硫酸化ポリサッカリド誘導体の使用を示した。有利にことに、本発明の低分子量硫酸化ポリサッカリド誘導体は、補体が活性化された炎症性疾患、特に例えば天疱瘡といった自己免疫疾患を治療するための製薬組成物の調製のための抗炎症性薬剤として使用される。
【0056】
それらの抗炎症特性を考慮すると、結合組織、特に真皮及び歯肉の結合組織の炎症性疾患、例えば歯周病、慢性潰瘍、または遅延した創傷治癒を特に治療するための製薬組成物の調製のための抗炎症性薬剤として、本発明の低分子量硫酸化ポリサッカリド誘導体を使用することは有利である。
【0057】
多くの疾患は、自己免疫疾患だけでなく、新生物または感染性疾患でも、炎症工程の出現をもたらし得る。有利には、本発明の低分子量硫酸化ポリサッカリド誘導体は、真皮及び歯肉の結合組織に影響する炎症性疾患、特に自己免疫疾患、感染性疾患、または新生物疾患、例えばサルコーマを治療するための製薬組成物の調製のための抗炎症性薬剤として使用される。
【0058】
病理的な線維症の展開は、組織再生の間で引き続くのと同様な経路が引き続くようである。しかしながら、組織再生工程の間で生ずる細胞機能の正常の制御は破壊される。特に、細胞成分におけるアンバランスは、組織分解を維持する炎症性細胞の非制御的な流入によって、及び/または線維症疾患を導く筋線維芽細胞のような細胞サブ集団の維持によって、それ自体反映できる。筋線維芽細胞が正常な創傷治癒工程の間で一過的に出現する一方で、この細胞サブ集団は、組織再生が病理的になる場合に維持される。
【0059】
本発明者は、本発明に係る硫酸化ポリサッカリド誘導体が、結合組織、特に真皮及び歯肉の結合組織における筋線維芽細胞の損傷に対する線維芽細胞の増殖を刺激できる薬剤として使用できることを示した。とりわけ、本発明に係る硫酸化ポリサッカリド誘導体は、二次元細胞培養物、または再構成化真皮及び歯肉結合組織における筋線維芽細胞の損失に対する線維芽細胞の増殖を刺激できる薬剤として使用できる。
【0060】
本発明に係る硫酸化ポリサッカリド誘導体の使用は、組織ホメオスタシスに関与する線維芽細胞の増殖を刺激できると同時に、筋線維芽細胞の維持を制御することもでき、二つの細胞現象は、組織再生の非病理的な工程の刺激から由来する。
【0061】
筋線維芽細胞のサブ集団の損失に対する線維芽細胞サブ集団を選択するその特性を考慮して、それ故、結合組織、特に真皮及び歯肉の結合組織の異常に発達した創傷治癒工程または線維症疾患を予防または治療することが特に可能である製薬組成物の調製のための抗線維症薬剤として、上述の低分子量硫酸化ポリサッカリド誘導体を使用することはとりわけ有利である。
【0062】
本発明に係る硫酸化ポリサッカリド誘導体が、異種集団内の特定の細胞サブ集団を選択するというこの特性は、間葉細胞となることが企図される骨髄細胞のサブ集団の獲得を促進するように利用されている。間葉細胞となることが企図される骨髄細胞は、それらがそれ自体を見出す組織に依存して、分化した間葉細胞、特に特別な形態学的特徴及び機能を有する線維芽細胞、軟骨細胞、骨芽細胞、脂肪細胞、及び筋細胞に発達することができる成熟幹細胞である。
【0063】
かくして本発明者は、本発明に係る低分子量硫酸化ポリサッカリド誘導体が、細胞の異種集団における他のサブ集団の損失に対して間葉細胞となることが企図される骨髄細胞の増殖を選択的に刺激することができることを示した。間葉細胞になることが企図される骨髄細胞が、培養物で取得して維持することが特に困難なので稀であるために、この選択的な増殖効果はとりわけ有利である。それ故、組織または細胞治療の観点で、間葉細胞となることが企図される骨髄細胞の取得及び維持が企図される細胞培養培地を補完することは有利である。
【0064】
かくして、本発明に係る硫酸化ポリサッカリド誘導体は、間葉細胞となることが企図される骨髄細胞の増殖による選択−増幅を可能にする。間葉細胞となることが企図されるこれらの骨髄細胞は、それらが移植される組織に依存して、線維芽細胞、軟骨細胞、骨芽細胞、脂肪細胞、及び筋細胞に分化することとができる限りで、ヒトにおける移植目的のための組織治療において使用できる多能性細胞のソースを表す。
【0065】
それ故これらの細胞は、組織及び細胞治療において有利であり、とりわけ第三の度合いの火傷を有する患者におけるような皮膚断片のサンプルの取得が不可能な場合、または成人における軟骨のような組織がもはや再生能力を有さない場合に有利である。
【0066】
本発明に係る低分子量硫酸化ポリサッカリド誘導体を含む製薬組成物または医薬のそれぞれは、製薬組成物に存在する、または硫酸化ポリサッカリド誘導体の投与の前、同時、または後といった別個に投与される別の製薬組成物に存在する一つ以上の増殖因子と組み合わせて使用できる。そのような増殖因子は、特にFGF(線維芽細胞増殖因子)、TGFβ、BMP(骨形態形成タンパク質)、及びCTGF(結合組織増殖因子)から選択される。
【0067】
線維芽細胞に対するそれらの特性を考慮すると、前述のような低分子量硫酸化ポリサッカリド誘導体は、創傷治癒活性及び/または抗線維症活性及び/または抗炎症性活性を有する製薬組成物の調製のために使用できる。
【0068】
本発明の製薬組成物または医薬は、適切な経路を介して投与されることが企図される。本発明の製薬組成物または医薬は好ましくは注射可能な形態で存在し、前記硫酸化ポリサッカリド誘導体は、5000から50000g/molの間、好ましくは25000g/mol以下の分子量を有し、1.5から5の間、好ましくは2以下の多分散指数を有し、10から45%の間、好ましくは20から40%の間のスルフェート基置換の度合いを有する。
【0069】
本発明は、いずれかの適切な賦形剤と組み合わせた、本発明に係る低分子量硫酸化ポリサッカリド誘導体を含むことを特徴とする、化粧品または皮膚科学組成物に関する。
【0070】
好ましくは、製薬、化粧品、または皮膚科学的組成物は局所的に投与でき、ゲル、クリーム、軟膏、エマルション、または溶液の形態で存在できる。
【0071】
それらは、例えば遅延放出サポート、遅延分配スポンジ、または外科用インプラントのような吸収性または非吸収性の医療器具の基体によってin situでも使用できる。
【0072】
本発明は、添付した図面を参考にして読まれる以下の実施例からより明白に理解されよう;これらの実施例は、本発明の主題の説明のためのみに与えられたものであり、それらはいずれの態様でも制限的なものを構成しない。
【実施例】
【0073】
実施例1:細菌天然EPSのオシド組成
方法:
Wiehelman K等(Anal. Biochem. 1988, 175: 231-237)に記載されたBCA(ビシンコニン酸)法によって、タンパク質含量を測定した。
【0074】
中性モノサッカリド含量を、Rimington(Biochem. J., 1931, 25: 1062-1071)によって修正されたTillmansとPhilippiの方法(Analyt. Chem., 1929, 28: 350)によって、中性モノサッカリド含量を測定した。
【0075】
m−ヒドロキシジフェニル−HSO法の変形(Filisetti-Cozzi及びCarpitta, Anal. Biochem., 1991, 197: 157-162)を使用し、スタンダードとしてグルクロン酸を使用して、ウロン酸(GlcA)を確立した。スルファーム酸カリウムを使用し、m−ヒドロキシジフェニルを除く全ての試薬を含むコントロールを実施することにより、中性ヘキソースから由来する影響を避けた。
【0076】
ガスクロマトグラフィーにより、中性モノサッカリドと酸性モノサッカリド含量を測定した。Kamerling等(Biochem. J., 1975, 151: 491-495)の方法に従い、Montreuil等(Glycoproteins In: Carbohydrate analysis, a practical approach, 1986, Chaplin M.F.及びKennedy J.F. (編), IRL Press, Oxford, 143-204)によって修正して、トリメチルシリル化誘導体の形態のグリコシド残基の分析を実施した。
【0077】
Elson及びMorgan(Biochem J., 1933, 27: 1824-1828)のものから修正したBelcher等(Analyst, 1954, 79: 201-208)の方法により、スタンダードとしてN−アセチルグルコサミンとグルコサミンを使用して、ヘキサミンとN−アセチルヘキサミン(GalNAcとGlcNAC)含量を測定する。
【0078】
硫黄の元素分析(S%)、及び以下の関係式:スルフェート基のパーセンテージ(%)=3.22×S%を適用することにより、全スルフェートの含量(遊離+天然EPSに結合したもの)を測定した。伝道度測定器に連結したDionex(登録商標)DX-500システムでのイオン交換クロマトグラフィーにより、製造者Dionexによって記載された方法に従って、遊離スルフェートの量を定量する。得られた結果により、全スルフェートの量(元素分析により得られる)−遊離スルフェートの量(イオン交換クロマトグラフィーにより得られる)に等しい、EPSに誘導体に実際に結合したスルフェートの量を計算することが可能である。
【0079】
【表1】

【0080】
実施例2:天然EPS HE 800に基づく本発明に係る誘導体の調製
(1)HE 800 DRは、低分子量ポリサッカリド誘導体に対応する;
(2)HE 800 DRSは、低分子量硫酸化ポリサッカリド誘導体に対応する;
(3)HE 800 DRNSは、低分子量N−脱アセチル化及び硫酸化ポリサッカリド誘導体に対応する。
【0081】
本発明に係る低分子量硫酸化ポリサッカリド誘導体は、以下のように得られる:
(i)DRSシリーズについては、フリーラジカル脱重合(DR)からなる第一の工程及び硫酸化工程を適用する;並びに
(ii)DRNSシリーズについては、フリーラジカル脱重合(DR)からなる第一の工程、引き続きN−脱アセチル化工程(N)及び硫酸化工程(S)を適用する。
【0082】
2.1.天然EPSのフリーラジカル脱重合
熱水起源のHE 800の海洋細菌から得られる500mgのEPSを、EP 975 791に記載された方法に従って生産し、凍結乾燥する。天然EPSを100mlの水に一晩ゆっくりと再水和し、被覆したガラスリアクターに導入する。16mg/mlで酢酸銅の溶液の形態で、金属触媒を反応媒体に添加する。媒体の温度を60℃とする。反応を通じて磁性攪拌を維持する。10Nの濃縮水酸化ナトリウムで7.5から8の間のpHに反応媒体を供する。反応媒体のpHをモニターし、水酸化ナトリウム溶液の添加を通じて調節する。
【0083】
次いで、蠕動性のポンプを使用して1ml/分の流速で、リアクターに過酸化水素(H)を添加する。過酸化水素は濃縮溶液から必要に応じて調製する。
【0084】
還元:
1gのポリサッカリド誘導体当たり1gのホウ化水素ナトリウムを少量の水中に溶解し、次いで直接リアクターに添加する。反応は、環境温度で2から20時間の期間攪拌しながら実施する。10Nの酢酸に添加によりそれを停止する。銅による黒っぽい沈降物が反応の間で形成される。
【0085】
触媒の除去:
還元反応の間で形成された沈降物を除去するため、3μmのガラスマイクロ繊維からなるフィルターを備えたブフナー漏斗を通じて、前記ポリサッカリド誘導体を含む溶液を濾過する。次いで、0.4meq/mlの容積を有するChelex(登録商標)樹脂に前記ポリサッカリド誘導体を含む溶液を通過させることにより、残余の銅を除去する。4〜5ml/分の流速で、事前に不動態化した200mlの樹脂のカラム(25×400mm)を通じて、前記ポリサッカリド誘導体を含む溶液を濾過する。排出液では、前記ポリサッカリド誘導体を含む溶液は酸性のpH10を有する。
【0086】
透析濾過、限外濾過と凍結乾燥による濃縮
1000g/molのPall膜を備えたPellicon 2限外濾過システム(Millipore)を通じて、前記ポリサッカリド誘導体を含む溶液を限外濾過する。溶液の伝導度(4〜5mS)を限外濾過を通じて測定する。濾液が100μS未満の安定値に達した際に、溶液を中性pHに戻す。次いで濃縮して凍結乾燥する(CIRP凍結乾燥器)。一度凍結乾燥されたら、得られたポリサッカリド誘導体を特徴付けする。
【0087】
2.2.N−脱アセチル化
原理:N−及びO−スルフェート基の観点でオシド単位を同時に置換する目的で、ポリサッカリドHE 800 DRをN−脱アセチル化する。HE800誘導体のN−脱アセチル化の工程を、大量の製品に対して実施する。
【0088】
方法:
259mgのEPS HE 800 DRを10mlの水中に溶解し、磁性攪拌を備えた丸底フラスコに配置する。263mgのNaBHを1.25mlの水中に溶解し、次いでEPS HE 800 DRの溶液に添加する。混合物の温度が80℃に達した際に、1.25mlの10N NaOHを添加する。溶液の最終濃度は、12.5mlの全体積について、水酸化ナトリウムに対して1Nであり、NaBHに対して2%である。
【0089】
1時間の反応の後、発泡が停止するまで10N酢酸で溶液を中和する。添加した体積は1.5mlであり、pHは5である。次いで溶液を1000g/molの膜を通じて限外濾過し、次いで凍結乾燥する。167mgのN−脱アセチル化EPS HE 800 DR(HE 800 DRN)を得て、収率は65%である。
【0090】
2.3.EPS HE 800 DRまたはHE 800 DRNの硫酸化
塩の形態のポリサッカリドの調製
50mgのEPSを20mlのHOに溶解する。前記ポリサッカリド誘導体を、Dowex樹脂カラムでの溶出によりH+形態に配置する。溶出は水で実施し、pHが酸性、好ましくは5未満を維持する限り、溶出物を回収する。所望の塩基(ピリジン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、水酸化ナトリウム)で、pHを迅速に6.5に調節する。次いで塩の形態のポリサッカリド誘導体を凍結乾燥する。
【0091】
ポリサッカリドの硫酸化
環境温度で2時間、次いで45℃の温度で2時間、穏やかに攪拌しながら(250rpm)で100mlの無水DMF中に、塩の形態のポリサッカリド誘導体を溶解する。
【0092】
溶解が完成したら、2.5g、即ちポリサッカリドの量の5倍のピリジン−SO錯体を反応媒体に添加する。次いで混合物を温度を、攪拌しながら2時間45℃に維持する。pH9を得るために、40mlの水と水酸化ナトリウムを添加することにより、反応を終了する。次いで、3500Daのカットオフ閾値を有する透析バッグで、反応混合物を水中で透析する。
【0093】
透析度、硫酸化EPSを含む溶液を2.7μm及び0.7μmのフィルターで濾過し、1000g/molの膜で限外濾過し、次いで透析乾燥する。
【0094】
2.4.各種の誘導体:(1)HE 800 DR;(2)HE 800 DRS、及び(3)HE 800 DRNSの特徴づけ
得られた各種のEPS HE 800誘導体の分子量(ピークの極大値で測定したクロマトグラフィーによる分子量;Mw:重量平均分子量;Mn:数量平均分子量)及び多分散度(I=Mw/Mn)を、Superdex(登録商標)200カラムまたはSuperdex(登録商標)Peptideカラム(AMERSHAM)を使用して、0.1ml/分の流速で0.1M水性酢酸アンモニウムで、Biotechシステムでの高速立体排除クロマトグラフィー(HPSEC)により測定した。以下のポリサッカリドスタンダードでカラムを平衡化した:プルラン:758000−5900g/mol(Polymer Laboratories, Interchim)、市販されていないスタンダードポリサッカリド:4000;3000;及び1500g/mol;メレジトース:522g/mol(FLUKE)、スクロース:342g/mol;グルコース:180g/mol(SIGMA)。この結果をAramis(登録商標)ソフトウェア(Varian, France)を使用して分析する。
【0095】
Rimington(Biotech. J., 1931, 25: 1062-1071)によって変更したTillmans及びPhilippi(Analyt. Chem., 1929, 28, 350-)の方法によって、中性モノサッカリド含量を測定した。
【0096】
m−ヒドロキシジフェニル−HSO法(Filisetti-Cozzi及びCarpitta, Anal. Biochem., 1991, 197: 157-162)の変更を使用して、スタンダードとしてグルクロン酸を使用して、、ウロン酸(GlcA)含量を確立した。スルファーム酸カリウムを使用して、m−ヒドロキシジフェニルを除く全ての試薬を含むコントロールを実施することにより、中性ヘキソースから得られる影響を避けた。
【0097】
Elson及びMorgan(Biochem J., 1933, 27: 1824-1828)のものを適応したBelcher等(Analyst, 1954, 79: 201-208)の方法により、スタンダードとしてN−アセチルグルコサミンとグルコサミンを使用して、へクソアミン及びN−アセチルへクソサミン(GalNAc及びGlcNAc)含量を測定する。
【0098】
硫黄の元素分析(S%)、及び以下の関係式:スルフェート基のパーセンテージ(%)=3.22×S%を適用することにより、全スルフェートの含量(遊離+結合)を測定した。
【0099】
伝道度測定器に連結したDionex(登録商標)DX-500システムでのイオン交換クロマトグラフィーにより、製造者Dionexによって記載された方法に従って、遊離スルフェートの量を定量する。得られた結果により、全スルフェートの量(元素分析により得られる)−遊離スルフェートの量(イオン交換クロマトグラフィーにより得られる)に等しい、EPSに誘導体に実際に結合したスルフェートの量を計算することが可能である。
【0100】
4cm−1の分解能を有するVector 22で、フーリエ変換赤外線スペクトル測定(FT−IR)を実施した。KBrペレット(2mgのポリサッカリドを200mgの無水KBrと混合する)を使用して、前記ポリサッカリドの赤外線スペクトルを測定し、全ての赤外線スペクトルを4000から400cm−1の間で記録した。
【0101】
2.5.結果
【表2】

【0102】
【表3】

【0103】
【表4】

【0104】
図1は、N−脱アセチル化反応の前(HE 800 DR)及び後(HE 800 DRN)のポリサッカリド誘導体の赤外線スペクトルを示す。図2のFT−IRスペクトルを、Brucker Vector 22分光光度計(4cm−1の分解能)で記録した。2mgのEPS HE 800誘導体を、N−脱アセチル化工程の間で200mgのKBrで処理した。N−脱アセチル化工程の前後の前記誘導体の赤外線スペクトルの分析は、1550cm−1の周波数で、N−アセチル化基の吸収バンドの特徴の損失を示す(図1)。
【0105】
図2は、非硫酸化HE 800ポリサッカリド誘導体(HE 800 DR)と、N−脱アセチル化及び硫酸化HE 800ポリサッカリド誘導体(HE 800 DRNS)の赤外線(IR)スペクトルを示す。スルフェートエステル(1250,820,600cm−1)の存在に対応するバンドの出現が、ポリサッカリド誘導体HE 800 DRNSについて観察される。
【0106】
実施例3:天然EPS GY 785に基づく本発明に係る誘導体の調製
(1)GY 785 DRは、脱重合工程の後に得られる低分子量ポリサッカリド誘導体に対応する;
(2)GY 785 DRSは、脱重合工程、引き続き硫酸化工程の後に得られる低分子量ポリサッカリド誘導体に対応する。
【0107】
1)フリーラジカル脱重合及びホウ化水素ナトリウムでの還元
前述の工程において上記得られた400mgの硫酸化EPS GY 785を95mlの水に溶解した。溶解後、36mgの酢酸銅一水和物(10−3M)を含む2mlの触媒溶液を添加した。次いでリアクターの温度を60℃にもたらし、1Mの水酸化ナトリウムの添加によりpHを7.5に調節する。過酸加水の0.115%(v/v)溶液を1ml/分の流速で添加し、1M水酸化ナトリウムの添加によりpHを約7.5に調節した。1時間後反応を停止した。
【0108】
ホウ化水素ナトリウム(10mlの水中に溶解した270mgのNaBH)のリアクターに対する添加により、脱重合の最後で還元を実施する。環境温度で2時間の攪拌で、還元を実施する。10N酢酸の添加により還元を停止し、酢酸は所定のオフである水素ガスの形態で残余する過剰なNaBHを除去することが可能である。次いで、ガラスミクロ繊維(3μmの孔度)から形成されたフィルターを備えたブフナー漏斗を通じて、溶液を濾過した。濾過溶液をCHELEX(登録商標)20カラム(BIORAD)で溶出して、残余の銅を除去した。次いで、脱コンタミ化溶液をカセット(1000Daのカットオフ閾値)を通じて限外濾過し、次いで凍結乾燥した。
【0109】
2)EPS GY 785の化学的硫酸化
特許FR 2 755 142の実施例1に記載された方法により、熱水起源のAlteromonas infernusの海洋細菌によって生産された500mgのEPS GY 785凍結乾燥物を、環境温度で2時間、次いで45℃の温度で2時間穏やかに攪拌(250rpm)しながら、100mlの無水DMFに溶解した。
【0110】
溶解が完了した際に、Fluka社により参照名84737で市販されている2.5gのピリジン−SO錯体(即ちGY785ポリサッカリドの重量の5倍)を反応媒体に添加した。次いで混合物の温度を45℃にもたらして攪拌しながら2時間維持した。反応混合物をビーカーに移した。次いで、40mlの水の添加により反応を停止し、3Mの水酸化ナトリウムでpH9とした。次いで、生水(一晩出しっぱなしの水)に対して、12000から16000Daの間のカットオフ閾値を有する透析バッグで反応混合物を透析し、次いでMilli-Q水に対して24時間3回透析した。
【0111】
透析後、硫酸化EPS GY 785を含む溶液を凍結し、凍結乾燥した。
【0112】
EPS DR及びEPS DRS誘導体の特徴づけを、実施例1で上述した方法によって測定し、以下の表に要約する:
【表5】

【0113】
【表6】

【0114】
【表7】

【0115】
実施例4:天然EPS HYD 721に基づく本発明に係る誘導体の調製
(1)HYD 721 DRは、脱重合工程の後に得られる低分子量ポリサッカリド誘導体に対応する;
(2)HYD 721 DRSは、本発明に係る化学的硫酸化によって硫酸化された低分子量ポリサッカリド誘導体に対応する。
【0116】
硫酸化HYD 721ポリサッカリド誘導体は、実施例2に記載された方法を実施することによって得られる。しかしながら、天然EPS HYD 721はN−アセチル化へクソサミンを含まないため、前記硫酸化誘導体を調製する方法は、N−脱アセチル化工程を含まない。
【0117】
【表8】

【0118】
【表9】

【0119】
実施例5:真皮及び歯肉の線維芽細胞の増殖に対する本発明に係る誘導体の効果
増殖アッセイで使用される硫酸化ポリサッカリド誘導体は、実施例2及び3のプロトコールに従って調製され特徴づけされた。
【0120】
5.1.二次元培養物における細胞
100U/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、2μg/mlのフンギゾンを含み、10%の胎児ウシ血清(FCS)を補ったダルベッコMEM Glutamax I培養培地において、ウェル当たり10000細胞の密度で二つの培養皿に細胞を接種する。
【0121】
12時間接着させて広げた後、各種の濃度の低分子量硫酸化ポリサッカリド誘導体:(i)EPS GY 785(GY 785 DRS)または(ii)EPS HE 800(HE 800 DRNS)HE 800を補ってもなくても良い培養培地で置換する。次いで2、4、7、及び10日の培養の後、細胞をカウントする。コントロールは、本発明に係る誘導体の不存在下での細胞培養物に対応する(*)。
【0122】
二次元培養物における真皮の線維芽細胞の増殖に対するGY 785 DRS誘導体の効果:
【表10】

【0123】
二次元培養物における歯肉の線維芽細胞の増殖に対するGY 785 DRS誘導体の効果:
【表11】

【0124】
二次元培養物における真皮の線維芽細胞の増殖に対するHE 800 DRNSの効果:
【表12】

【0125】
本発明に係る硫酸化ポリサッカリド誘導体は、二次元培養物における真皮及び歯肉の線維芽細胞の増殖を刺激することができる。
【0126】
5.2.再構成化または格子状組織(図3)
再構成化または格子状結合組織は、中和の後、重合して線維芽細胞を含むゲルを形成する酸可溶性I型コラーゲンからなる。コラーゲン線維の重合のより好適な制御を有するため、格子の調製は冷蔵条件下で実施される。
【0127】
前記細胞の影響下でのこの格子は、特にその収縮によって顕著である数多くの再整列を受け、それは第一の2週間の培養の間で観察される。このタイプのモデルは、皿での単純な培養よりも生理学的環境に近い細胞外環境内での細胞の挙動を研究することが可能である。
【0128】
図3は、本発明に係る低分子量硫酸化ポリサッカリド誘導体GY 785 DRSが、10μg/mlの濃度で、再構成化結合組織における線維芽細胞の増殖を刺激することが可能であることを明らかにする。
【0129】
実施例6:線維芽細胞サブ集団の選択に対する本発明に係る誘導体の効果の表示
【0130】
二次元培養物における増殖アッセイのために、100U/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、2μg/mlのフンギゾンを含み、10%胎児ウシ血清(FCS)を補ったダルベッコMEM Glutamax I培養培地に、ウェル当たり10000細胞の密度で、細胞を培養皿に蒔く。
【0131】
12時間細胞を接着させて広げた後、EPS GY 785(GY 785 DRS)から得られる各種の濃度の硫酸化誘導体を補ってもなくても良い培養培地で置換する。次いで、2、4、7、及び10日間の培養後、培養物をアルコールで固定し、これらの細胞培養物に対して以下のように免疫検定を実施する。
【0132】
固定した細胞を70%エタノールで再浸透性化し(20分)、次いでPBSで再水和する(10分)。内因性ペルオキシダーゼを、メタノール(30%)、H(0.3%)溶液でブロックする。この工程に引き続き、PBSですすぎ(2分)、次いでPBS/1%スキムミルク溶液で非特異的な抗原部位をブロックする(1時間)。次いで、ヒトα−アクチンに対して向けられた一次抗体(マウスIgG)でインキュベートし(1/30;50分)、次いでPBSですすぐ(3×10分)。次いでビオチン化抗マウスIgG抗体(1/200)で60分暗所で細胞をインキュベートし、PBSですすぎ(3×10分)、次いでペルオキシダーゼ接合ストレプタビジンでインキュベートする。
【0133】
すすぎ(PBS3×10分)の後、3,3’−ジアミノベンジジンでのペルオキシダーゼ活性の視覚化を、0.1%のHを含むトリス/HClバッファー(100mM,pH7.2−7.4)において実施する。ペルオキシダーゼ活性は、ポジティブ細胞の細胞質におけるα−アクチンミクロ線維に対応する褐色線維状物質を明らかにする。使用された製品は、DAKOImmuno-detectionの名称でDAKO社により由来する。
【0134】
図4は、本発明に係る低分子量硫酸化ポリサッカリド誘導体GY 785 DRSが、筋線維芽細胞の損失に対する線維芽細胞の増殖を刺激できることを示す。写真a,c,及びeは、10μg/mlの硫酸化誘導体を補った培養物に対応し、そこでは優勢な集団が筋線維芽細胞の損失に対する線維芽細胞から形成される。写真b,d,及びfは、硫酸化誘導体を含まないコントロール培養物に対応し、そこでは数多くの筋線維芽細胞が視覚可能である。
【0135】
本発明に係る誘導体で処理されていないコントロール培養物は、大量の筋線維芽細胞(α−アクチンポジティブ)を含む一方で、α−アクチンを発現しない線維芽細胞は、処理された培養物において優勢な細胞タイプを形成する。
【0136】
実施例7:マトリックスプロテアーゼの分泌に対する本発明に係る誘導体の効果
7.1.プロトコール
ウェル当たり40000細胞の密度で、細胞を培養皿に蒔き、100U/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、2μg/mlのフンギゾンを含み、胎児ウシ血清(FCS)を補ったダルベッコMEM Glutamax I培養培地でコンフルエンスにする。
【0137】
コンフルエンスでは、いずれのFCSをも含まず、硫酸化誘導体の存在下または不存在下で、100U/mlの最終濃度でIL−1βを補ってもなくても良い培地で、培養培地を交換する。
【0138】
ザイモグラフィーまたはウエスタンブロットにより、線維芽細胞によるMMP分泌を研究するために、48時間後に培養培地をサンプリングする。4重で実施された各実験条件について、2のウェルをエタノールで固定し、他の2をトリプシン処理して、細胞を引き剥がしてそれらをカウントする。
【0139】
メタロプロテイナーゼ分泌を、ザイモグラフィーにより検出して定量する。それは、還元条件下で実施されたSDS−PAGE電気泳動に基づく特に高感度な方法である。MMP−2基質であるゼラチンを、アクリルアミドで共重合する。移動の後、Triton X-100の溶液での洗浄によりSDSを除去し、MMP−2活性の解像を可能にする。次いでゲルをインキュベーションバッファー(0.1Mトリス/HCl、pH7.4、30mM CaCl、0.001%NaN、0.0015%Brij、0.1μM ZnCl)において37℃でインキュベートする。
【0140】
染色(クマシーブルー(0.5%)、酢酸(10%)、イソプロパノール(30%))、次いで脱染(酢酸(10%)、メタノール(40%)、蒸留水(50%))の後、MMP−2メタロプロテイナーゼ活性を表すバンドは脱染で出現する。グレーの影とこれらのバンドの表面領域をイメージアナライザーで定量し、[(グレーの影×表面領域)/細胞数]の比により、ゼラチン溶解活性の定量、及びコントロール培養物とエクソポリサッカリドを含む培養物の間の比較が可能である。
【0141】
7.2.培養物中の線維芽細胞によるMMP−2の分泌に対するHE 800 DRNSの効果、ザイモグラフィーにより得られた結果(図5)
図5のグラフは、IL−1βの存在下または不存在下で、低分子量硫酸化ポリサッカリド誘導体の存在下で線維芽細胞を培養すると、MMP−2分泌が阻害されることを示す。
【0142】
7.3.培養物中の線維芽細胞によるストロメリシン1(MMP−3)の分泌に対するHE 800 DRNSの効果、ウエスタンブロッティングにより得られた結果(図6)
図6は、HE 800 DRNSの添加が、線維芽細胞によるMMP−3の分泌を穏やかに減少することを示し、この分泌はベースライン(写真a)か、または炎症性サイトカインIL−1βによって誘導される(写真b)。写真(a)は、血清を含まない培地(レーン1)及び10μg/mlのEPS誘導体を含む血清を含まない培地(レーン2)における48時間インキュベーションされたコンフルエントな線維芽細胞を示す;写真(b)は、100U/mlのIL−1βを含む血清を含まない培地(レーン1)及び10μg/mlのEPS誘導体と100U/mlのIL−1βを含む血清を含まない培地(レーン2)における48時間インキュベーションされたコンフルエントな線維芽細胞を示す。
1:コントロール=非処理培養物
2:100U/mlのHE 800 DRNSで処理された培養物。
【0143】
結論として、本発明に係る硫酸化ポリサッカリド誘導体は、二次元培養物における線維芽細胞により、マトリックスプロテアーゼ、ゼラチナーゼA(MMP−2)、及びストロメリシン(MMP−3)の分泌を阻害することが可能である。
【0144】
実施例8:補体に対する本発明に係る誘導体の効果
8.1.原理
補体は、伝統的な経路、代替的な経路、及びマンノース結合レクチン(MBL)経路の3の異なる種類の活性化経路によって活性化でき、各種のメカニズムを解して、C3及びC5を活性化できるC3/C5コンベルターゼという同一の基質を有する酵素の形成を生ずる。活性化反応は、カスケードとして生ずる:一つの成分は、次の成分の活性化を誘導する酵素活性を獲得する等。
【0145】
補体の最終活性化が3の経路で共通である限りにおいて、伝統的な経路のみがこの実施例で研究される。抗原−抗体複合体、またはIgGまたはIgMを含む免疫複合体とC1複合体が相互作用する場合に、伝統的な経路が生ずる。伝統的な経路を研究するために使用される系は、ウサギ抗体被覆ヒツジ赤血球細胞からなる免疫複合体による補体活性化に基づく。ヒト血清の存在下で、異物として赤血球細胞を認識したウサギ抗体は、伝統的な経路の活性化を主として誘導する。この活性化は、C3コンベルターゼの形成を導き、それは次いで代替的な経路の活性化を誘導する。これらの二つの経路の活性化は、赤血球細胞の表面で膜攻撃複合体の形成を生ずる。この複合体は、赤血球細胞の破壊と、ヘモグロビンの放出を誘導する。補体システムの活性化は、414nmでの分光学的吸収を測定することによって、放出されるヘモグロビンの量をアッセイすることにより測定される。アクチベーター(ヒツジ赤血球細胞)もまた、細胞溶解の間で放出されるヘモグロビンにより活性化のリビーラーとして使用される。ヒト赤血球の希釈物は、細胞の50%が溶解するように、所定量の血液細胞について調節される。
【0146】
抗体被覆赤血球細胞を、各種の硫酸化ポリサッカリド誘導体の不存在下(コントロール)及び存在下でインキュベートする。溶解される赤血球細胞の数の減少と、伝統的な補体経路の活性化に対する硫酸化ポリサッカリド誘導体の阻害効果を反映して、放出されるヘモグロビンの量は減少する(414nmでの吸収の減少)。
【0147】
350μlの正常ヒト血清(NHS)(VBS2+バッファーで1/100に希釈)を、硫酸化ポリサッカリド誘導体の存在下または不存在下で、450μlのVBS2+と200μlのウサギ抗体とインキュベートする。37℃で45分のおよその反応時間の後、氷冷NaCl(0.15M)の溶液を添加し、細胞を240rpmで10分間遠心分離する。上清の吸収を414nmで測定する。
【0148】
化kh数の量のEPS誘導体GY 785 DRS及びHE 800 DRNSの存在下での補体阻害(伝統的な経路)のパーセンテージ
【表13】

【0149】
本発明に係る低分子量硫酸化ポリサッカリド誘導体は、伝統的な補体経路を阻害することができる。
【0150】
実施例9:間葉細胞となることを企図した骨髄細胞の増殖に対する本発明に係る誘導体の効果
9.1.プロトコール
粉砕した骨髄物質から間質細胞を得て、この粉砕物質を遠心分離して細胞ペレットを回収する。10%ウマ血清、10%胎児ウシ血清、200nM L−グルタミン(4ml)、100×MEMビタミン(Gibco brl)(4ml)、7.5%Na2HCO3(4ml)、50×必須アミノ酸とL−グルタミン(Gibco brl)(4ml)、100×ピルビン酸ナトリウム(4ml)、100×非必須アミノ酸(Gibco brl)(1.6ml)を含む、全体を1×McCoy培地(Gibco brl)で希釈した500mlの培地からなる培養培地に細胞を再懸濁する。
【0151】
24時間の培養後、皿の底部に接着した細胞のみを維持する。
【0152】
ヒト歯肉及び真皮の線維芽細胞の培養物に対する増殖アッセイで記載したものと同じ条件下で、増殖アッセイを実施する。2,4,7,及び10日間の培養後に、細胞カウントを実施する。特定の表現系のマーカーに対して向けられた免疫検定(α−アクチンプロトコールを参照)は、マクロファージに特徴的なマーカーであるCD68を発現しないことを示し、これらの細胞の大部分が白血球マーカーであるCD45を発現することを示したが、他方でそれらは間葉細胞に特徴的な細胞骨格タンパク質であるビメンチンを発現することを示した。更に、これらの細胞のあるものは、刺激なしでI型コラーゲンとIII型コラーゲンを発現でき、これらは培養物中の間葉細胞で特徴的である。
【0153】
9.2.結果
間葉細胞となることが企図される骨髄細胞の増殖に対するGY 785 DRSの効果
【表14】

【0154】
間葉細胞となることが企図される骨髄細胞の増殖は、EPS GY 785 DRSの存在下で穏やかに刺激される。
【図面の簡単な説明】
【0155】
【図1】図1は、N−脱アセチル化反応の前(HE 800 DR)及び後(HE 800 DRN)のフリーラジカル脱重合を受けているポリサッカリド誘導体HE 800の赤外線スペクトルを表すグラフである。
【図2】図2は、フリーラジカル脱重合を受けているHE 800誘導体(誘導体HE 800 DR)、またはN−脱アセチル化及び硫酸化HE 800誘導体(HE 800 DRNS)の赤外線スペクトルを表すグラフである。
【図3】図3は、再構成真皮における線維芽細胞の増殖に対する、本発明に係るフリーラジカル脱重合して硫酸化したGY785誘導体の効果を示すグラフである。
【図4】図4は、a,b,c,d,e,及びfの一連の6枚の写真である。この画像は、筋線維芽細胞サブ集団の特徴であるα−アクチンフィラメントの、真皮線維芽細胞培養物における免疫検定試験に関する。
【図5】図5は、ザイモグラフィーによって得られた結果を反映するグラフであり、培養物中の線維芽細胞によるMMP−2の分泌に対するHE 800 DRNSの効果を示す:図5は、MMP−2の分泌が阻害されることを示す。
【図6】図6は、a及びbの一連の2枚の写真である。それらは、マトリックスプロテアーゼであるストロメリシン(MMP−3)の分泌に対する本発明に係る誘導体の効果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
深層熱水環境から得られる海洋中温性細菌株によって分泌される海洋天然エクソポリサッカリド(EPS)の低分子量硫酸化ポリサッカリド誘導体であって、
−100000g/mol以下の低分子量の脱重合誘導体を得るために、前記天然EPSのフリーラジカル脱重合からなる工程;
−その後、硫酸化ポリサッカリド誘導体の全重量に対して10から45重量%の間のスルフェート基置換の度合いを有する硫酸化ポリサッカリド誘導体を得るのに十分な量で少なくとも一つの硫酸化剤の添加を含む、任意に凍結乾燥した脱重合誘導体の硫酸化からなる工程であって、その後任意に透析される工程
を含む方法によって得ることが可能である低分子量硫酸化ポリサッカリド誘導体。
【請求項2】
前記方法が、フリーラジカル脱重合工程に引き続き還元工程を含むことを特徴とする、請求項1に記載の低分子量硫酸化ポリサッカリド誘導体。
【請求項3】
前記方法が、脱重合工程の最後、及び/または還元工程の最後で得られるポリサッカリド誘導体のN−脱アセチル化からなる工程をも含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の低分子量硫酸化ポリサッカリド誘導体。
【請求項4】
前記方法が、脱重合の後、及び/または還元の後、及び/またはN−アセチル化の後、及び/または硫酸化の前後で、ポリサッカリド誘導体の凍結乾燥からなる少なくとも一つの工程をも含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の低分子量硫酸化ポリサッカリド誘導体。
【請求項5】
前記第一のフリーラジカル脱重合工程が、好ましくはCu++、Fe++、及びCr+++イオン、並びにCr2−アニオンから選択される金属触媒の存在下で、好ましくは過酸化物及び過酸から選択される酸化剤の溶液の添加によって実施されることを特徴とする、請求項1に記載の低分子量硫酸化ポリサッカリド誘導体。
【請求項6】
前記酸化剤が、好ましくは0.1から0.5重量%の間の濃度を有する過酸化水素の溶液であり、V1/1000からV1/10ml/分、好ましくはV1/50からV1/500ml/分の間の流速で添加され、ここでV1は過酸化水素の溶液が添加される深層熱水環境から得られる中温性海洋細菌によって分泌される海洋エクソポリサッカリド(EPS)を含む反応媒体の容積であることを特徴とする、請求項5に記載の低分子量硫酸化ポリサッカリド誘導体。
【請求項7】
前記硫酸化工程のために使用される硫酸化剤が、硫酸ピリジン、硫酸トリエチルアミン、硫酸ジメチルホルムアミド、硫酸トリメチルアミンの錯体から選択されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の低分子量硫酸化ポリサッカリド誘導体。
【請求項8】
前記硫酸化工程を実施するために、化学的硫酸化剤が溶液中の前記ポリサッカリド誘導体の重量の4から6倍を占める重量で添加され、純粋形態または溶媒、好ましくは無水溶媒中の溶液の形態である脱重合化EPSに添加されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の低分子量硫酸化ポリサッカリド誘導体。
【請求項9】
100000g/mol以下、好ましくは5000から50000g/molの間の分子量、5未満、好ましくは1.5から4の間の多分散指数、及び10から45重量%の間、好ましくは20から40重量%の間のスルフェート基置換の度合いを有することを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の低分子量硫酸化ポリサッカリド誘導体。
【請求項10】
25000g/mol以下の分子量、2未満の多分散指数、及び10から45重量%、好ましくは20から40重量%の間のスルフェート基置換の度合いを有することを特徴とする、請求項9に記載の低分子量硫酸化ポリサッカリド誘導体。
【請求項11】
前記深層熱水環境から得られる中温性海洋細菌が、Alteromonas属またはVibrio属に属することを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の低分子量硫酸化ポリサッカリド誘導体。
【請求項12】
前記Alteromonas属の細菌がGY785株であることを特徴とする、請求項11に記載の低分子量硫酸化ポリサッカリド誘導体。
【請求項13】
前記Alteromonas属の細菌が、HYD 657、HYD 708、HYD 721、HYD 1545、HYD 1644、ST 716、及びMS 907から選択されることを特徴とする、請求項11に記載の低分子量硫酸化ポリサッカリド誘導体。
【請求項14】
前記Vibrio属の細菌がHE800株の細菌であることを特徴とする、請求項11に記載の硫酸化ポリサッカリド誘導体。
【請求項15】
前記Alteromonas属の細菌によって分泌される前記天然エクソポリサッカリド(EPS)が、
−20から70重量%、好ましくは30から60重量%、より好ましくは38から57重量%の中性モノサッカリド;
−5から60重量%、好ましくは6から50重量%、より好ましくは8から42重量%の酸性モノサッカリド;及び
−0から1重量%のアミノ糖
を含むオシド組成を有することを特徴とする、請求項11から13のいずれか一項に記載の低分子量硫酸化ポリサッカリド誘導体。
【請求項16】
前記Vibrio属の細菌によって分泌される前記海洋エクソポリサッカリド(EPS)が、
−0から5重量%、好ましくは0から1重量%の中性モノサッカリド;
−20から50重量%、好ましくは25から40重量%、より好ましくは30から32重量%の酸性モノサッカリド;
−20から50重量%、好ましくは25から40重量%、より好ましくは30から35重量%のアミノ糖;及び
−0から15重量%、好ましくは4から8重量%、より好ましくは5から6重量%のN−アセチル化基
を含むオシド組成を有することを特徴とする、請求項11または14に記載の低分子量硫酸化ポリサッカリド誘導体。
【請求項17】
前記天然EPSが、0から15重量%、好ましくは0から5重量%、より好ましくは0から1重量%のタンパク質含量を有することを特徴とする、請求項1から16のいずれか一項に記載の低分子量硫酸化ポリサッカリド誘導体。
【請求項18】
結合組織、特に真皮及び歯肉の結合組織のための創傷治癒剤としての、請求項1から17のいずれか一項に記載の低分子量硫酸化ポリサッカリド誘導体の使用。
【請求項19】
前記創傷治癒剤が、二次元培養物、または再構成化結合組織、特に真皮及び歯肉の結合組織における線維芽細胞の増殖を刺激することが可能な薬剤である、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
結合組織、特に真皮及び歯肉の結合組織の再構成化及びリモデリングを特に促進することが可能である、創傷治癒活性を有する製薬組成物の調製のための、請求項1から17のいずれか一項に記載の低分子量硫酸化ポリサッカリド誘導体の使用。
【請求項21】
前記創傷治癒剤が、結合組織、特に真皮及び歯肉の結合組織の線維芽細胞による炎症前サイトカインの分泌の阻害、特にインターロイキン1β及び/またはTNF−αの分泌の阻害が可能である薬剤である、請求項18に記載の使用。
【請求項22】
前記創傷治癒剤が、結合組織、特に真皮及び歯肉の結合組織の線維芽細胞によるマトリックスメタロプロテアーゼの分泌の阻害、特にゼラチナーゼA(MMP−2)及びストロメリシン1(MMP−3)の分泌の阻害が可能である薬剤である、請求項18に記載の使用。
【請求項23】
前記創傷治癒剤が、伝統的な補体経路の阻害が可能である薬剤である、請求項18に記載の使用。
【請求項24】
前記薬剤が、結合組織、特に真皮及び歯肉の結合組織に影響する、感染性、新生物性、または自己免疫疾患のような炎症性疾患の治療のための製薬組成物の調製のために使用される、請求項18から23のいずれか一項に記載の使用。
【請求項25】
前記創傷治癒剤が、筋線維芽細胞の損傷に対する線維芽細胞の増殖の刺激が可能である薬剤である、請求項18に記載の使用。
【請求項26】
前記薬剤が、結合組織、特に真皮及び歯肉の結合組織の過栄養性創傷治癒工程または線維症疾患の予防または治療が特に可能である製薬組成物の調製のために使用される、請求項25に記載の使用。
【請求項27】
特に組織または細胞治療における、細胞の異種集団中の他のサブ集団の損失に対して、間葉細胞となることが企図される骨髄細胞の増殖を選択的に刺激可能な薬剤としての、請求項1から17のいずれか一項に記載の誘導体の使用。
【請求項28】
請求項1から17のいずれか一項に記載の低分子量硫酸化ポリサッカリド誘導体を含む製薬組成物または医薬。
【請求項29】
特にFGF(線維芽細胞増殖因子)、TGFβ、BMP(骨形態形成タンパク質)、またはCTGF(結合組織増殖因子)である、前記製薬組成物中に存在する、または別個の製薬組成物中に存在する一つ以上の増殖因子と組み合わせて使用されることを特徴とする、請求項28に記載の組成物または医薬。
【請求項30】
前記低分子量硫酸化ポリサッカリド誘導体が、5000から50000g/molの間、好ましくは25000g/mol以下の分子量、1.5から5の間、好ましくは2以下の多分散指数、及び10から45重量%の間、好ましくは20から40重量%の間のスルフェート基置換の度合いを有する、注射可能な形態で存在することを特徴とする、請求項28または29に記載の製薬組成物または医薬。
【請求項31】
いずれかの適切な賦形剤と組み合わせた、請求項1から17のいずれか一項に記載の低分子量硫酸化ポリサッカリド誘導体を含むことを特徴とする化粧品または皮膚科学的組成物。
【請求項32】
ゲル、クリーム、軟膏、エマルション、または溶液の形態で存在することを特徴とする、請求項28、29、または31に記載の組成物。
【請求項33】
特に遅延放出サポート、遅延分配スポンジ、または外科用インプラントを含む吸収性または非吸収性医療器具の基体によってin situにおける、請求項28、29、31、または32に記載の組成物の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−502763(P2008−502763A)
【公表日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−515984(P2007−515984)
【出願日】平成17年6月6日(2005.6.6)
【国際出願番号】PCT/FR2005/001379
【国際公開番号】WO2006/003290
【国際公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(506413247)
【出願人】(506413856)ユニヴェルシテ・ルネ・デカルト・パリ・サンク (6)
【Fターム(参考)】