中空樹脂成形品およびその製造方法
【課題】 透過防止性のシートを確実に溶着して、透過防止性の優れた中空樹脂成形品を製造することが課題である。
【解決手段】熱可塑性合成樹脂製の中空樹脂成形品において、中空樹脂成形品1は、アッパーシェル部10とロアシェル部20とから構成される。アッパーシェル部10とロアシェル部20は、それぞれ射出成形により分割して別々に成形された内側樹脂層15、25と内側樹脂層の外面に接合された外側シート層16、26から構成され、外側シート層は、それぞれアッパーシェル部10とロアシェル部20の開口周縁部11、21の先端まで延設される。そして、アッパーシェル部とロアシェル部のそれぞれの開口周縁部が溶着されるとともに、アッパーシェル部とロアシェル部の開口周縁部の外側シート層16、26は、互いに溶着されている中空樹脂成形品とその製造方法である。
【解決手段】熱可塑性合成樹脂製の中空樹脂成形品において、中空樹脂成形品1は、アッパーシェル部10とロアシェル部20とから構成される。アッパーシェル部10とロアシェル部20は、それぞれ射出成形により分割して別々に成形された内側樹脂層15、25と内側樹脂層の外面に接合された外側シート層16、26から構成され、外側シート層は、それぞれアッパーシェル部10とロアシェル部20の開口周縁部11、21の先端まで延設される。そして、アッパーシェル部とロアシェル部のそれぞれの開口周縁部が溶着されるとともに、アッパーシェル部とロアシェル部の開口周縁部の外側シート層16、26は、互いに溶着されている中空樹脂成形品とその製造方法である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、別々に分割して射出形成されたアッパーシェル部とロアシェル部を合体させて溶着し形成された、熱可塑性合成樹脂製の中空樹脂成形品およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用燃料タンク等の大型の中空樹脂成形品は、中空体を成形することの容易性からブロー成形方法が多く用いられてきた。ブロー成形方法では、溶融した合成樹脂のパリソンを円筒状にして上から押出して、そのパリソンを金型で挟みパリソン中に空気を吹き込み、中空樹脂成形品を製造していた。
【0003】
しかし、この方法では、自動車用燃料タンクのような大型の中空樹脂成形品の場合は、パリソンの全体の重量が大きくなり、また、自動車用燃料タンクのような強度が必要な場合に、強度増加のため厚肉の中空樹脂成形品を製造するときにもパリソンの重量が増加して、溶融状のパリソンを成形機の上部から金型に入れるときに下方に垂れるため、上部の肉厚が下部の肉厚よりも薄くなる場合があった。
また、複雑な形状をした製品の場合は、パリソンを金型内で膨張させたときに、パリソンの膨張の割合が製品の部位によって異なる場合があり、製品の肉厚にバラツキが生じる場合があった。
【0004】
また、ブロー成形製の中空樹脂成形品は、中空樹脂成形品内にポンプやバルブ等の付属品を取付けることも困難であり、リブや梁等を設けることも難しく、さらに、パリソンの膨張の割合が製品の部位によって異なる場合があり、タンクの肉厚にバラツキが生じる。従って、肉厚管理、品質管理に多大な労力を要していた。
【0005】
そのため合成樹脂製中空体を上下に分割して、アッパーシェル部とロアシェル部をそれぞれ別に射出成形等により成形して、その後そのアッパーシェル部とロアシェル部の開口周縁部を融合して中空樹脂成形品を形成する方法もある(例えば、特許文献1参照。)。
このとき、中空樹脂成形品の内部に燃料等の透過性の液体を保持する場合には、ブロー成形においては、多層構成のパリソンを使用し、透過防止性の層を形成することができるが、射出成形においては、別途、透過防止性のシートを使用する必要がある。
【0006】
例えば、図16に示すように、透過防止性のシート116、126を中空樹脂成形品101の形状に合わせて予め賦形し、その透過防止性のシート116、126を射出成形金型内にセットして、中空樹脂成形品101を形成する合成樹脂層117、127を射出成形するものがある(例えば、特許文献2参照。)。しかし、特に、自動車用燃料タンク等の耐衝撃性の製品を製造する場合には、耐衝撃性の材料を使用する必要があり、このような材料は射出成形時の流動性が低い場合が多い。
このため、この場合には合成樹脂層117、127を射出成形するときに、射出された合成樹脂の射出成形の熱により、透過防止性のシート116、126に穴が開いたり、延伸されて極めて薄くなったり、皺がよったりして、充分な透過防止性を得ることができなかった。
【0007】
また、この射出成形時の射出圧力を低減するため射出圧縮成形により、透過防止性のシート116、126を金型に置いて、金型を開いた状態で合成樹脂を射出し、その後金型を圧縮する方法がある(例えば、特許文献3参照。)。
しかし、この場合は、圧縮するときにシート等のズレが生じたりして、充分な透過防止性を得ることができなかった。
【特許文献1】特開平11−34180号公報
【特許文献2】特開平10−157738号公報
【特許文献3】特開2006−160093号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このため、アッパータンクとロアタンクを別々に射出形成した場合に、透過防止性のシートを確実に融着して、透過防止性の優れた中空樹脂成形品を得ることとその製造方法が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための請求項1の本発明は、熱可塑性合成樹脂製の中空樹脂成形品において、
中空樹脂成形品は、アッパーシェル部とロアシェル部とから構成され、アッパーシェル部とロアシェル部は、それぞれ射出成形により分割して別々に成形された内側樹脂層と内側樹脂層の外面に接合された外側シート層から構成され、外側シート層は、それぞれアッパーシェル部とロアシェル部の開口周縁部の先端まで延設され、
アッパーシェル部とロアシェル部のそれぞれの開口周縁部が溶着されるとともに、アッパーシェル部とロアシェル部の開口周縁部の外側シート層は、互いに溶着されている中空樹脂成形品である。
【0010】
請求項1の本発明では、中空樹脂成形品は、アッパーシェル部とロアシェル部とから構成され、アッパーシェル部とロアシェル部は、それぞれ射出成形により分割して別々に成形された内側樹脂層と内側樹脂層の外面に接合された外側シート層から構成されている。
このため、アッパーシェル部とロアシェル部とを別々に射出成形で成形して、寸法精度の高い、強度の強いアッパーシェル部とロアシェル部の内側樹脂層を得ることができる。従って、中空樹脂成形品は、寸法精度の高い精密な、かつ強度の高い製品を得ることができる。また、アッパーシェル部とロアシェル部の内側樹脂層の内部に補強リブや内蔵部品等を取付けることが容易にできる。外側シート層に透過防止性シートを使用すると、強度が高く、透過防止性に優れた中空樹脂成形品を得ることができる。さらに、外側シート層により中空樹脂成形品の全体の強度が向上する。
【0011】
外側シート層は、それぞれアッパーシェル部とロアシェル部の開口周縁部の先端まで延設され、アッパーシェル部とロアシェル部のそれぞれの開口周縁部が溶着されるとともに、アッパーシェル部とロアシェル部の開口周縁部の外側シート層は、互いに溶着されている。
このため、アッパーシェル部とロアシェル部のそれぞれの開口周縁部は強固に一体的に溶着しており、アッパーシェル部とロアシェル部の接合部分の強度を大きくすることができ、特に、接合のための接着剤等が不要であるため、製造が容易である。
アッパーシェル部とロアシェル部の開口周縁部が相互に強く溶着されるとともに、溶着された接合界面の外側においても、外側シート層の相互の間から中空樹脂成形品内の液体等が透過することを防止できる。
【0012】
請求項2の本発明は、アッパーシェル部とロアシェル部のそれぞれの開口周縁部は、全周に亘りそれぞれ略直角に外側に張り出したフランジ部が形成され、開口周縁部の内面の接合界面が融着して、中空樹脂成形品の内部方向に滑らかに凸状部を形成した中空樹脂成形品である。
【0013】
請求項2の本発明では、アッパーシェル部とロアシェル部のそれぞれの開口周縁部は、全周に亘りそれぞれ略直角に外側に張り出したフランジ部が形成され、開口周縁部の内面の接合界面が融着して、中空樹脂成形品の内部方向に滑らかに凸状部を形成した。このため、このアッパーシェル部とロアシェル部のフランジ部を相互に圧着することにより、アッパーシェル部とロアシェル部の開口周縁を全周にわたり強固に密着して、融着することができる。
【0014】
また、凸状部により開口周縁部において溶着面積が広くなり、溶着強度が大きくなる。さらに、開口周縁部の接合界面の内側先端において、接合界面が融着しているので、ノッチ状の凹部を有しないため、中空樹脂成形品に衝撃が加わった場合でも、開口周縁部の接合界面に衝撃力が集中することが無く、中空樹脂成形品の耐衝撃強度を大きくすることができる。
【0015】
請求項3の本発明は、アッパーシェル部とロアシェル部の内側樹脂層は、高密度ポリエチレン(HDPE)で形成され、外側シート層は耐燃料透過性多層樹脂シートで形成され、アッパーシェル部とロアシェル部の内側樹脂層の外側は、フランジ部を含めて、それぞれ耐燃料透過性多層樹脂シートで被覆されるとともに、フランジ部の先端において、それぞれの該耐燃料透過性多層樹脂シートの耐燃料透過性を有する層が近接して融合されている中空樹脂成形品である。
【0016】
請求項3の本発明では、アッパーシェル部とロアシェル部の内側樹脂層は、高密度ポリエチレン(HDPE)で形成されているため、中空樹脂成形品の耐衝撃強度を大きくすることができる。
外側シート層は耐燃料透過性多層樹脂シートで形成され、アッパーシェル部とロアシェル部の内側樹脂層の外側は、フランジ部を含めて、それぞれ耐燃料透過性多層樹脂シートで被覆されているため、中空樹脂成形品の内部に燃料油を入れた場合には、燃料油の透過を防止することができる。多層シートであるため、耐燃料透過性の層のアッパーシェル部とロアシェル部の内側樹脂層に対向する面に高密度ポリエチレン(HDPE)と接着性の良い層を形成し、外側に耐摩耗性や耐衝撃性の層を形成することができ、中空樹脂成形品の強度を向上させることができる。
【0017】
フランジ部の先端において、それぞれの耐燃料透過性多層樹脂シートの耐燃料透過性を有する層が近接して融合されているため、フランジ部の先端において、耐燃料透過性多層樹脂シート層のなかのそれぞれの耐燃料透過性を有する層同士の間隔を最小限にすることができ、開口周縁部のフランジ部の先端からの燃料の透過を最小限にすることができる。
【0018】
請求項4の本発明は、中空樹脂成形品が自動車用燃料タンクであり、耐燃料透過性多層樹脂シートは、耐燃料透過性を有する層と、中空樹脂成形品の内側樹脂層と融着する耐燃料透過性を有する層の内側にある層と、耐燃料透過性を有する層の外側の層を有し、耐燃料透過性を有する層の内側にある層は、耐燃料透過性を有する層の外側の層よりも薄く形成されている中空樹脂成形品である。
【0019】
請求項4の本発明では、中空樹脂成形品が自動車用燃料タンクであり、耐燃料透過性多層樹脂シートは、耐燃料透過性を有する層と、中空樹脂成形品の内側樹脂層と融着する耐燃料透過性を有する層の内側にある層と、耐燃料透過性を有する層の外側の層を有し、耐燃料透過性を有する層の内側にある層は、耐燃料透過性を有する層の外側の層よりも薄く形成されている。このため、アッパーシェル部とロアシェル部のフランジ部において、耐燃料透過性多層樹脂シート層のなかのそれぞれの耐燃料透過性を有する層同士の間隔を最小限にすることができ、開口周縁部からの燃料の透過を最小限にすることができる。
【0020】
請求項5の本発明は、アッパーシェル部とロアシェル部の内側樹脂層をそれぞれ別々に金型で射出成形し、内側樹脂層の外面に外側シート層を接合し、アッパーシェル部とロアシェル部の開口周縁部を合体して一体的に接合して形成する熱可塑性合成樹脂製の中空樹脂成形品の製造方法において、
アッパーシェル部とロアシェル部の射出成形された内側樹脂層をそれぞれ真空成形型に取付け、外側シート層を加熱し、内側樹脂層の外面に加熱された外側シート層を置き、真空成形型から吸引して外側シート層を内側樹脂層に融着するとともに、外側シート層は、内側樹脂層の開口周縁部の先端よりも延設され、アッパーシェル部とロアシェル部の開口周縁部の接合面と外側シート層の先端の延設された部分は、それぞれ加熱されて溶融された後、相互に接合され、圧接してアッパーシェル部とロアシェル部の開口周縁部を溶着した中空樹脂成形品の製造方法である。
【0021】
請求項5の本発明では、アッパーシェル部とロアシェル部の射出成形された内側樹脂層をそれぞれ真空成形型に取付け、外側シート層を加熱し、内側樹脂層の外面に加熱された外側シート層を置き、真空成形型から吸引して外側シート層を内側樹脂層に融着する。このため、外側シート層に穴を開けることなく、または破ることなく内側樹脂層の外面に外側シート層を融着することができ、寸法精度の高い、強度の大きな中空樹脂成形品を製造することができる。中空樹脂成形品に耐衝撃性の材料を使用し、外側シート層は透過防止性のシートを使用すれば、耐衝撃性と透過防止性のよい中空樹脂成形品を製造することができる。
【0022】
外側シート層は、内側樹脂層の開口周縁部の側端よりも延設され、アッパーシェル部とロアシェル部の開口周縁部の接合面と外側シート層の先端の延設された部分は、それぞれ加熱されて溶融された後、相互に接合され、圧接してアッパーシェル部とロアシェル部の開口周縁部を溶着した。このため、アッパーシェル部とロアシェル部のそれぞれの開口周縁部は強固に一体的に結合しており、アッパーシェル部とロアシェル部の接合部分の強度を大きくし、特に、接合のための接着剤等が不要であるため、製造が容易である。
アッパーシェル部とロアシェル部の開口周縁部が相互に強く溶着されるとともに、溶着された接合界面の外側においても、外側シート層の相互の間から中空樹脂成形品内の液体等が透過することを防止できる中空樹脂成形品を容易に製造することができる。
【0023】
請求項6の本発明は、アッパーシェル部とロアシェル部のそれぞれの開口周縁部に、全周に亘りそれぞれ外側に張り出したフランジ部を形成し、フランジ部を相互に圧接して、開口周縁部を融着するとともに、開口周縁部の内面の接合界面が融合し、中空樹脂成形品の内部方向に滑らかに凸状部を形成した中空樹脂成形品の製造方法である。
【0024】
請求項6の本発明では、アッパーシェル部とロアシェル部のそれぞれの開口周縁部に、全周に亘りそれぞれ外側に張り出したフランジ部を形成し、フランジ部を相互に圧接して、開口周縁部を溶着する。このため、このアッパーシェル部とロアシェル部のフランジ部を相互に圧着することができるとともに、アッパーシェル部とロアシェル部の開口周縁を全周にわたり強固に密着して、固着して融合させることができる。
【0025】
開口周縁部の内面の接合界面が融合し、中空樹脂成形品の内部方向に滑らかに凸状部を形成したため、凸状部により開口周縁部において溶着面積が広くなり、溶着強度が大きくなる。また、開口周縁部の接合界面の内側先端において、接合界面が融合し、ノッチ状の凹部を有しないため、中空樹脂成形品に衝撃が加わった場合でも、開口周縁部の接合界面に衝撃力が集中することが無く、中空樹脂成形品の耐衝撃強度が大きな中空樹脂成形品を製造することができる。
【0026】
請求項7の本発明は、アッパーシェル部とロアシェル部のそれぞれの開口周縁部は、全周に亘りそれぞれ外側に張り出したフランジ部が形成され、フランジ部の底面とアッパーシェル部とロアシェル部のそれぞれの開口周縁部の中空樹脂成形品の内面で構成される断面略L字形の部分をそれぞれ加熱して溶融した後、フランジ部を相互に接合し、圧縮し、溶着した中空樹脂成形品の製造方法である。
【0027】
請求項7の本発明では、アッパーシェル部とロアシェル部のそれぞれの開口周縁部は、全周に亘りそれぞれ外側に張り出したフランジ部が形成され、フランジ部の底面とアッパーシェル部とロアシェル部のそれぞれの開口周縁部の中空樹脂成形品の内面で構成される断面略L字形の部分をそれぞれ加熱して溶融した後、フランジ部を相互に接合し、圧縮し、溶着した。このため、開口周縁部の全周に亘り、内面と接合面を溶融して、広く融合面を確保することができ、内面と接合部分の合成樹脂の流動性を増加させ、開口周縁部の内面に、接合界面を融合させて、内部方向に滑らかに凸状部を形成することが容易になる。
【0028】
請求項8の本発明は、アッパーシェル部とロアシェル部の内側樹脂層は、それぞれの開口周縁部が全周に亘りそれぞれ外側に張り出したフランジ部を有するように、高密度ポリエチレン(HDPE)を使用し射出成形で成形し、外側シート層は耐燃料透過性多層樹脂シートで形成し、射出成形されたアッパーシェル部とロアシェル部の内側樹脂層の外側を、フランジ部を含めて、耐燃料透過性多層樹脂シートで被覆し一体的に接合し、その後、フランジ部を相互に接合し、圧縮し、フランジ部の先端において、耐燃料透過性多層樹脂シートの耐燃料透過性を有する層が近接して融合されるようにフランジ部を溶着する中空樹脂成形品の製造方法である。
【0029】
請求項8の本発明では、アッパーシェル部とロアシェル部の内側樹脂層は、それぞれの開口周縁部が全周に亘りそれぞれ外側に張り出したフランジ部を有するように、高密度ポリエチレン(HDPE)を使用し射出成形で成形した。このため、内側樹脂層の耐衝撃強度を大きくすることができるとともに、アッパーシェル部とロアシェル部のフランジ部を相互に押圧することにより、容易に開口周縁部を溶着することができる。
【0030】
外側シート層は耐燃料透過性多層樹脂シートで形成し、射出成形されたアッパーシェル部とロアシェル部の内側樹脂層の外側を、フランジ部を含めて、耐燃料透過性多層樹脂シートで被覆し一体的に接合し、その後、フランジ部を相互に接合し、圧縮した。このため、アッパーシェル部とロアシェル部の内側樹脂層の外側は、フランジ部を含めて、それぞれ耐燃料透過性多層樹脂シートで被覆されており、中空樹脂成形品の内部に燃料油を入れた場合には、燃料油の透過を防止することができる。多層シートであるため、耐燃料透過性の層のアッパーシェル部とロアシェル部の内側樹脂層に対向する面に高密度ポリエチレン(HDPE)と接着性の良い層を形成し、外側に耐摩耗性や耐衝撃性の層を形成することができる。
【0031】
フランジ部の先端において、耐燃料透過性多層樹脂シートの耐燃料透過性を有する層が近接して融合されるようにフランジ部の先端を溶着したため、フランジ部の先端において、耐燃料透過性多層樹脂シート層のなかのそれぞれの耐燃料透過性を有する層同士の間隔を最小限にすることができ、開口周縁部のフランジ部からの燃料の透過を最小限にすることができる。
【0032】
請求項9の本発明は、フランジ部の先端において、溶着されたアッパーシェル部とロアシェル部の外側シート層が、接合界面に対して平行に外側方向に延設され、または、フランジ部の先端から屈曲して延設されている中空樹脂成形品の製造方法である。
【0033】
請求項9の本発明では、フランジ部の先端において、溶着されたアッパーシェル部とロアシェル部の外側シート層が、接合界面に対して平行に延設されている場合は、フランジ部の外側シート層を幅広く融着することができ、フランジ部からの燃料の透過を最小限にすることができる。
また、フランジ部の先端において、溶着されたアッパーシェル部とロアシェル部の外側シート層が、接合界面に対して屈曲して延設されている場合は、フランジ部の外側シート層を幅広く溶着することができ、フランジ部の燃料の透過を最小限にすることができるとともに、フランジ部の外側の幅を狭くすることができ、中空樹脂成形品をコンパクトにすることができる。
【0034】
請求項10の本発明は、中空樹脂成形品が自動車用燃料タンクであり、耐燃料透過性多層樹脂シートは、耐燃料透過性を有する層と、中空樹脂成形品の内側樹脂層と融着する耐燃料透過性を有する層の内側の層と、耐燃料透過性を有する層の外側の層を有し、耐燃料透過性を有する層の内側の層は耐燃料透過性を有する層の外側の層よりも薄く形成されている中空樹脂成形品の製造方法である。
【0035】
請求項10の本発明では、中空樹脂成形品が自動車用燃料タンクであり、耐燃料透過性多層樹脂シートは、耐燃料透過性を有する層と、中空樹脂成形品の内側樹脂層と融着する耐燃料透過性を有する層の内側の層と、耐燃料透過性を有する層の外側の層を有し、耐燃料透過性を有する層の内側の層は耐燃料透過性を有する層の外側の層よりも薄く形成されている。このため、フランジ部において、耐燃料透過性多層樹脂シート層のなかのそれぞれの耐燃料透過性を有する層同士の間隔を最小限にすることができ、開口周縁部のフランジ部の先端からの燃料の透過を最小限にすることができる。
【発明の効果】
【0036】
外側シート層は、それぞれアッパーシェル部とロアシェル部の開口周縁部の先端まで延設され、アッパーシェル部とロアシェル部の開口周縁部の外側シート層は、互いに溶着されているため、アッパーシェル部とロアシェル部のそれぞれの開口周縁部は強固に一体的に溶着しており、アッパーシェル部とロアシェル部の接合部分の強度を大きくし、特に、接合のための接着剤等が不要であるため、製造が容易である。
アッパーシェル部とロアシェル部の開口周縁部が相互に強く融着されるとともに、外側シート層を使用し、融着された開口周縁部のフランジ部の先端においても、外側シート層が溶着されており、外側シート層の相互の間から中空樹脂成形品内の液体等が透過することを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
本発明の実施の形態である中空樹脂成形品について、自動車用の燃料タンク1を例にとり、図1〜図15に基づき説明する。本発明は、燃料タンク1以外にも、各種の中空樹脂成形品に使用することができる。
図1は、燃料タンク1の長手方向の断面図であり、図2は、燃料タンク1の内側樹脂層15の断面図である。
図3〜図8は、後述する、燃料タンク1の製造方法を示す図である。図9〜図11は、フランジ部12の部分断面図である。図12〜図15は、耐燃料透過性多層樹脂シート3の断面図である。
【0038】
燃料タンク1は、分割して成形されたアッパーシェル部10とロアシェル部20から構成される。アッパーシェル部10とロアシェル部20は、それぞれ、射出成形で形成される内側樹脂層15、25と、内側樹脂層15、25の外側に形成される耐燃料透過性多層樹脂シート3から構成される外側シート層16、26の2層から形成される。
燃料タンク1の分割は2個ばかりでなく3個以上に分割することも可能である。
【0039】
アッパーシェル部10とロアシェル部20の内面には、複数の内側リブ17、27がそれぞれ、燃料タンク1の内部方向に向けて一体的に形成することができる。この内側リブ17、27により燃料タンク1の強度・剛性が増加する。また、シェルと一体成形した部品取体部8,9に燃料タンク1内に装着する燃料ポンプユニット4やバルブ6キャニスター、ホース等を取付けることができる。
【0040】
アッパーシェル部10には、パイプ取付孔2とポンプユニット点検孔5が形成されている。ポンプユニット点検孔5は、燃料タンク1内部に取付けた燃料ポンプユニット4の点検・修理をするための孔であり、パイプ取付孔2は、燃料注入用のパイプ(図示せず)を取付ける孔である。なお、アッパーシェル部10の上面には、燃料移送用ホース等の各種のホースを保持するホースクランプ(図示せず)を設けてもよい。
【0041】
アッパーシェル部10とロアシェル部20の開口の全周には、図1と図8に示すように、アッパーシェル部10の開口周縁部11とロアシェル部20の開口周縁部21が形成され、その開口周縁部11、21には、全周に亘りそれぞれ外面から略直角に外側に張り出したフランジ部12,22が形成されている。開口周縁部11、21とフランジ部12,22は、それぞれ相互に対向して溶着されている。
【0042】
フランジ部12,22は、図2、図5及び図6に示すように、アッパーシェル部10とロアシェル部20の内側樹脂層15、25とは断面略L字形に形成される。
アッパーシェル部10とロアシェル部20の内側樹脂層15の外面は、フランジ12、21の先端まで耐燃料透過性多層樹脂シート3が一体的に融着されて、上記の通り、外側シート層16、26を構成している。耐燃料透過性多層樹脂シート3については後述する。
【0043】
次に、中空樹脂成形品である燃料タンク1の製造方法について説明する。燃料タンク1は、上述のように、アッパーシェル部10とロアシェル部20をそれぞれ溶着して製造する。アッパーシェル部10とロアシェル部20のそれぞれの製造方法は同一であり、まずアッパーシェル部10の製造方法を説明し、ロアシェル部20の製造方法は説明を省略する。
【0044】
アッパーシェル部10は内側樹脂層15と外側シート層16から構成され、内側樹脂層15は、射出成形により成形される。射出成形後の形状を図2に示す。内側樹脂層15は、衝撃や磨耗に強い高密度ポリエチレン(HDPE)から形成することができる。内側樹脂層15の各部分には、空気を通過させるための小さな空気孔15aが多数形成されている。アッパーシェル部10の開口周縁部11を形成する部分にはフランジ部12が全周に亘り外方向に水平に延設されている。
【0045】
アッパーシェル部10とロアシェル部20とを別々に射出成形で成形するため、寸法精度の高い、強度の強いアッパーシェル部10とロアシェル部20の内側樹脂層15、25を得ることができる。従って、アッパーシェル部10とロアシェル部20が溶着された中空樹脂成形品である燃料タンク1は、寸法精度の高い精密な、かつ強度の高い製品とすることができる。また、アッパーシェル部10とロアシェル部20の内側樹脂層15、25に補強リブや部品取付部を一体成形することで、薄い板厚でも強度を高めたり内蔵部品等を取付けることが容易にできる。外側シート層16、26に透過防止性シートを使用すると、強度が高く、透過防止性に優れた燃料タンク1を得ることができる。
【0046】
次に、図3に示すように、内側樹脂層15を真空成形金型50にセットする。そして、外側シート層16を形成する耐燃料透過性多層樹脂シート3をヒーター31で加熱し、軟化させる。
その後、図4に示すように、耐燃料透過性多層樹脂シート3を内側樹脂層15の上へ移動させ内側樹脂層15に接触させる。さらに、図5に示すように、真空成形金型50の空気抜き孔51から空気を吸引する。このとき、真空成形金型50と内側樹脂層15には、空気孔15aが多数設けられており、耐燃料透過性多層樹脂シート3と内側樹脂層15は、密着する。耐燃料透過性多層樹脂シート3は、加熱により表面が溶融しているため、内側樹脂層15と耐燃料透過性多層樹脂シート3は融着して一体となり、外側シート層16となる。
【0047】
内側樹脂層15が射出成形された後に、耐燃料透過性多層樹脂シート3を加熱して、融着するため、耐燃料透過性多層樹脂シート3を射出成形金型にセットして、裏面側から射出成形する場合と比べて、耐燃料透過性多層樹脂シート3の破れや、強い伸びを防止することができ、燃料タンク1の耐燃料透過性が確保できる。また、耐燃料透過性多層樹脂シート3と内側樹脂層15を一緒に冷却する必要が無く、冷却時間を短くすることができ、生産効率が良い。
【0048】
つぎに、真空成形金型50から内側樹脂層15と外側シート層16を外す。このとき外側シート層16は、図6に示すように、内側樹脂層15のフランジ部12よりも先端側にはみ出て融着されている。このはみ出た外側シート層16をフランジ部12の先端から少し延設した状態で、切除する。このようにして、アッパーシェル部10を作成する。同様にロアシェル部20も作成する。
【0049】
次に、図7に示すように、アッパーシェル部10のフランジ部12を熱板30で加熱する。ロアシェル部20のフランジ部22も同様である。
アッパーシェル部10とロアシェル部20の開口周縁部11、21を全周に亘り加熱するため、開口周縁部11、21の対向する部分は、軟化することができる。
【0050】
次に、アッパーシェル部10とロアシェル部20の開口周縁部11、21のフランジ部12、22をそれぞれ押さえ治具で相互に押さえて溶着する。これにより、図8に示すように、アッパーシェル部10のフランジ部12は、溶着され、燃料タンク1を製造することができる。なお、このとき、溶着前に燃料タンク1の内部にポンプユニット等の必要な部品を組付ける。
【0051】
次に、アッパーシェル部10とロアシェル部20の開口周縁部11、21の溶着と外側シート層16、26の詳細な形状について、図9〜図12に基づき、詳細に説明する。
図9は、開口周縁部11、21の形状を示す第1の形態である。図9(a)は、アッパーシェル部10の外側シート層16が融着される前のフランジ部12の形状を示し、フランジ部12は、外方向に延設されている。図9(b)は、外側シート層16が融着されて、外側シート層16はフランジ部12よりも先端側に延設されて、フランジ外側シート層18を形成している。
【0052】
フランジ部12、22の底面とアッパーシェル部10とロアシェル部20のそれぞれの開口周縁部11、21の中空樹脂成形品の内面で構成される断面略L字形の部分をそれぞれ加熱することが好ましい。加熱して溶融した後、フランジ部12,22を相互に接合し、圧縮し、溶着した。このため、開口周縁部11、21の全周に亘り、内面と接合面を溶融して、広く融合面を確保することができ、内面と接合部分の合成樹脂の流動性を増加させ、開口周縁部11、21の内面の接合界面を融合させて、図9(c)、(d)に示すように、内部方向に滑らかに凸状部13を形成することが容易になる。
【0053】
アッパーシェル部10とロアシェル部20のフランジ部12、22とフランジ外側シート層18、28は、加熱されて溶着される。このとき、フランジ部12、22とその先端のフランジ外側シート層18、28は、押さえ治具で相互に押圧される。そして、フランジ部12、22とフランジ外側シート層18、28は、図9(c)に示すように、互いに密着することができる。
次に、図9(d)に示すように、フランジ外側シート層18、28をフランジ部12、22の先端が若干延設するように所定寸法に切断する。
【0054】
フランジ外側シート層18、28は互いに押しつぶされるように厚さが減少すると、図9(d)の矢印Aに示すように、フランジ外側シート層18,28の耐燃料透過性多層樹脂シート3の内部にある耐燃料透過性の層が互いに接近して、溶着される。従って、耐燃料透過性の層の間隔が狭くなり、この層の間から燃料が透過することを防止でき、フランジ部12、22の間とフランジ外側シート層18,28からの透過を最小限にすることができる。また、図9(d)の矢印Bに示すように、フランジ部12が長くなると燃料透過経路が長くなり、燃料透過防止効果を向上させることができる。
【0055】
なお、押さえ治具でフランジ部12、22を半溶融状態で上下に押さえ続けると、合成樹脂は、開口周縁部11、21の界面付近で燃料タンク1の内部方向に移動して、燃料タンク1の内部方向に滑らかに突出した山形の凸状部13が形成される。これは、開口周縁部11、21とフランジ部12、22の合成樹脂が、溶融状態で一体的に融合した後に、半溶融状態で燃料タンク1の内部方向に押し出されるため、界面部分にノッチ状の凹部を形成することなく、緩やかに裾野を引いたような山形の凸状部13を形成することができるためである。
【0056】
開口周縁部11、21の融合された内面は、山形の内部方向に滑らかな凸状部13を有するため、開口周縁部11,21において溶着面積が広くなり、溶着強度が大きくなる。また、開口周縁部11、21の接合面の内側先端である凸状部13において、ノッチ状の凹部を有しないため、燃料タンク1に衝撃が加わった場合でも、開口周縁部11,12の接合面に衝撃力が集中することが無く、燃料タンク1の耐衝撃強度を大きくすることができる。
【0057】
次に、図10は、開口周縁部11、21の形状を示す本発明の第2の実施の形態である。図10(a)は、フランジ部12、22と外側シート層16、26が溶着された形状をしめし、図10(b)は、外側シート層16、26が所定寸法に切断された後の形状を示す。第1の実施の形態とはフランジ部12、22の形状が異なり、フランジ部12、22は、断面が三角形である。この場合においても、図10(b)の矢印Cに示すように、フランジ部12が長くなると燃料透過経路が長くなり、燃料透過防止効果を向上させることができる。フランジ外側シート層18,28の寸法と形状は第1の実施の形態と同様である。
【0058】
次に、図11は、開口周縁部11、21の形状を示す本発明の第3の実施の形態である。図11(a)は、フランジ部12、22と外側シート層16、26が溶着された形状を示し、図11(b)は、フランジ外側シート層18,28が屈曲された形状を示す。第1の実施の形態とはフランジ外側シート層18,28の形状が異なり、フランジ外側シート層18,28は、フランジ部12、22の先端で下方に屈曲されている。この形態では、フランジ部12、22のフランジ外側シート層18,28を幅広く溶着することができ、フランジ部12,22の燃料の透過を最小限にすることができるとともに、屈曲されているため、フランジ部12,22の先端から外方向に突出したフランジ外側シート層18,28の突出部分の幅を狭くすることができ、燃料タンク1をコンパクトにすることができる。
【0059】
次に、外側シート層16、26を形成する耐燃料透過性多層樹脂シート3の構造について、図12〜図15に基づき説明する。
図12は、第1の形態の耐燃料透過性多層樹脂シート3の断面図である。
図12の耐燃料透過性多層樹脂シート3は、中央の層がエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)又はナイロンで形成された燃料透過を防止する耐燃料透過性を有する層(バリヤー層)3aと、そのバリヤー層3aの上下に変性ポリエチレンから形成される接着層3b、3cと、その接着層3b、3cの外面にポリエチレン(PE)から形成される耐燃料透過性を有する層の外側の層(外層)3d、耐燃料透過性を有する層の内側の層(外層)3eから構成される5層のシートである。バリヤー層3aにより燃料タンク1から燃料の透過を防止することができる。
【0060】
変性ポリエチレンから形成される接着層3b、3cは、バリヤー層3aと外層3d、3eの両方に対して接着性を有している。このため、バリヤー層3aと外層3d、3eを強固に接着することができる。
燃料タンク1の外側の外層3dは、衝撃や磨耗に強いポリエチレン(PE)から形成されているので、燃料タンク1の強度を増加させ、バリヤー層3aを保護することができる。内側樹脂層15、25と接合する外層3cは、内側樹脂層15、25がオレフィン系合成樹脂、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)で構成されている場合は、内側樹脂層15、25と融合して、強固に融着されることができる。
【0061】
フランジ部12、22の先端で、耐燃料透過性多層樹脂シート3で形成されるフランジ外側シート層18、28を互いに圧縮すると、外層3eが押圧されて薄くなり、フランジ外側シート層18、28のそれぞれのバリヤー層3a同士が接近して、バリヤー層3a同士の間隔が狭くなり、フランジ部12、22の先端のフランジ外側シート層18、28の間から燃料が透過することを最小限にすることができる。
【0062】
図13は、別の実施の形態の耐燃料透過性多層樹脂シート3の断面図である。
この実施の形態の耐燃料透過性多層樹脂シート3は、図12の形態の耐燃料透過性多層樹脂シート3とは、内側樹脂層15と融着する側の外層3eのみが異なり、他の部分は同様であるので、外層3eの説明を行い、他の部分の説明は省略する。
この実施の形態の外層3eは、材質は同じであるが、図12の形態の耐燃料透過性多層樹脂シート3の外層3eよりも薄く形成されている。これにより、耐燃料透過性多層樹脂シート3を薄くすることができ、シートの加熱時間を短縮することができるとともに、燃料タンク1の軽量化を図ることができる。
【0063】
図14は、さらに別の形態の耐燃料透過性多層樹脂シート3の断面図である。
この形態の耐燃料透過性多層樹脂シート3は、図12の形態の耐燃料透過性多層樹脂シート3とは、内側樹脂層15と融着する側の外層3eが省略されている点が異なり、他の部分は同様であるので、外層3eの説明を行い、他の部分の説明は省略する。
図13の実施の形態の外層3eは存在しないが、接着層3cは存在する。したがって、耐燃料透過性多層樹脂シート3を、外側シート層16として、内側樹脂層15に融着することができる。これにより、図13の実施の形態と同様に、耐燃料透過性多層樹脂シート3を薄くすることができ、シートの加熱時間を短縮することができるとともに、燃料タンク1の軽量化を図ることができる。
【0064】
図15は、さらに別の実施の形態の耐燃料透過性多層樹脂シート3の断面図である。
この実施の形態の耐燃料透過性多層樹脂シート3は、図13の実施の形態の耐燃料透過性多層樹脂シート3とは、バリヤー層3aの外側の外層3cは同じであるが、バリヤー層3aとバリヤー層3aを挟む接着層3b、3cが薄くフィルム状に形成された点が異なっている。したがって、耐燃料透過性多層樹脂シート3を、薄く形成することができ、図13、図14の実施の形態と同様に、シートの加熱時間を短縮することができるとともに、燃料タンク1の軽量化を図ることができる。しかしながら外層3dの厚さは同じであるため、バリヤー層3aを十分保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の実施の形態である燃料タンクの長手方向の断面図である。
【図2】本発明の実施の形態である燃料タンクの内側樹脂層の断面図である。
【図3】本発明の実施の形態である燃料タンクのアッパーシェル部の内側樹脂層を真空成形金型にセットし、耐燃料透過性多層樹脂シートを加熱する工程を示す断面模式図である。
【図4】本発明の実施の形態である燃料タンクのアッパーシェル部の内側樹脂層の上に耐燃料透過性多層樹脂シートを移動させる工程を示す断面模式図である。
【図5】本発明の実施の形態である燃料タンクのアッパーシェル部の内側樹脂層の上に耐燃料透過性多層樹脂シートを密着させる工程を示す断面模式図である。
【図6】本発明の実施の形態であるアッパーシェル部のフランジ外側シート層の先端を切除する工程を示す断面模式図である。
【図7】本発明の実施の形態であるアッパーシェル部のフランジ部を加熱する工程を示す断面模式図である。
【図8】本発明の実施の形態であるアッパーシェル部とロアシェル部のフランジ部を溶着した後の燃料タンクの幅方向の断面模式図である。
【図9】本発明の実施の形態であるアッパーシェル部とロアシェル部のフランジ部を溶着する工程を示す部分断面模式図である。
【図10】本発明の他の実施の形態であるアッパーシェル部とロアシェル部のフランジ部を溶着する工程を示す部分断面模式図である。
【図11】本発明の他の実施の形態であるアッパーシェル部とロアシェル部のフランジ部を溶着する工程を示す部分断面模式図である。
【図12】本発明の実施に使用する耐燃料透過性多層樹脂シートの断面図である。
【図13】本発明の実施に使用する他の耐燃料透過性多層樹脂シートの断面図である。
【図14】本発明の実施に使用する他の耐燃料透過性多層樹脂シートの断面図である。
【図15】本発明の実施に使用する他の耐燃料透過性多層樹脂シートの断面図である。
【図16】従来の燃料タンクの断面図である。
【符号の説明】
【0066】
1 燃料タンク
10 アッパーシェル部
11、21 開口周縁部
12、22 フランジ部
13 凸状部
15、25 内側樹脂層
16、26 外側シート層
18、28 フランジ外側シート層
20 ロアシェル部
30 熱板
【技術分野】
【0001】
本発明は、別々に分割して射出形成されたアッパーシェル部とロアシェル部を合体させて溶着し形成された、熱可塑性合成樹脂製の中空樹脂成形品およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用燃料タンク等の大型の中空樹脂成形品は、中空体を成形することの容易性からブロー成形方法が多く用いられてきた。ブロー成形方法では、溶融した合成樹脂のパリソンを円筒状にして上から押出して、そのパリソンを金型で挟みパリソン中に空気を吹き込み、中空樹脂成形品を製造していた。
【0003】
しかし、この方法では、自動車用燃料タンクのような大型の中空樹脂成形品の場合は、パリソンの全体の重量が大きくなり、また、自動車用燃料タンクのような強度が必要な場合に、強度増加のため厚肉の中空樹脂成形品を製造するときにもパリソンの重量が増加して、溶融状のパリソンを成形機の上部から金型に入れるときに下方に垂れるため、上部の肉厚が下部の肉厚よりも薄くなる場合があった。
また、複雑な形状をした製品の場合は、パリソンを金型内で膨張させたときに、パリソンの膨張の割合が製品の部位によって異なる場合があり、製品の肉厚にバラツキが生じる場合があった。
【0004】
また、ブロー成形製の中空樹脂成形品は、中空樹脂成形品内にポンプやバルブ等の付属品を取付けることも困難であり、リブや梁等を設けることも難しく、さらに、パリソンの膨張の割合が製品の部位によって異なる場合があり、タンクの肉厚にバラツキが生じる。従って、肉厚管理、品質管理に多大な労力を要していた。
【0005】
そのため合成樹脂製中空体を上下に分割して、アッパーシェル部とロアシェル部をそれぞれ別に射出成形等により成形して、その後そのアッパーシェル部とロアシェル部の開口周縁部を融合して中空樹脂成形品を形成する方法もある(例えば、特許文献1参照。)。
このとき、中空樹脂成形品の内部に燃料等の透過性の液体を保持する場合には、ブロー成形においては、多層構成のパリソンを使用し、透過防止性の層を形成することができるが、射出成形においては、別途、透過防止性のシートを使用する必要がある。
【0006】
例えば、図16に示すように、透過防止性のシート116、126を中空樹脂成形品101の形状に合わせて予め賦形し、その透過防止性のシート116、126を射出成形金型内にセットして、中空樹脂成形品101を形成する合成樹脂層117、127を射出成形するものがある(例えば、特許文献2参照。)。しかし、特に、自動車用燃料タンク等の耐衝撃性の製品を製造する場合には、耐衝撃性の材料を使用する必要があり、このような材料は射出成形時の流動性が低い場合が多い。
このため、この場合には合成樹脂層117、127を射出成形するときに、射出された合成樹脂の射出成形の熱により、透過防止性のシート116、126に穴が開いたり、延伸されて極めて薄くなったり、皺がよったりして、充分な透過防止性を得ることができなかった。
【0007】
また、この射出成形時の射出圧力を低減するため射出圧縮成形により、透過防止性のシート116、126を金型に置いて、金型を開いた状態で合成樹脂を射出し、その後金型を圧縮する方法がある(例えば、特許文献3参照。)。
しかし、この場合は、圧縮するときにシート等のズレが生じたりして、充分な透過防止性を得ることができなかった。
【特許文献1】特開平11−34180号公報
【特許文献2】特開平10−157738号公報
【特許文献3】特開2006−160093号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このため、アッパータンクとロアタンクを別々に射出形成した場合に、透過防止性のシートを確実に融着して、透過防止性の優れた中空樹脂成形品を得ることとその製造方法が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための請求項1の本発明は、熱可塑性合成樹脂製の中空樹脂成形品において、
中空樹脂成形品は、アッパーシェル部とロアシェル部とから構成され、アッパーシェル部とロアシェル部は、それぞれ射出成形により分割して別々に成形された内側樹脂層と内側樹脂層の外面に接合された外側シート層から構成され、外側シート層は、それぞれアッパーシェル部とロアシェル部の開口周縁部の先端まで延設され、
アッパーシェル部とロアシェル部のそれぞれの開口周縁部が溶着されるとともに、アッパーシェル部とロアシェル部の開口周縁部の外側シート層は、互いに溶着されている中空樹脂成形品である。
【0010】
請求項1の本発明では、中空樹脂成形品は、アッパーシェル部とロアシェル部とから構成され、アッパーシェル部とロアシェル部は、それぞれ射出成形により分割して別々に成形された内側樹脂層と内側樹脂層の外面に接合された外側シート層から構成されている。
このため、アッパーシェル部とロアシェル部とを別々に射出成形で成形して、寸法精度の高い、強度の強いアッパーシェル部とロアシェル部の内側樹脂層を得ることができる。従って、中空樹脂成形品は、寸法精度の高い精密な、かつ強度の高い製品を得ることができる。また、アッパーシェル部とロアシェル部の内側樹脂層の内部に補強リブや内蔵部品等を取付けることが容易にできる。外側シート層に透過防止性シートを使用すると、強度が高く、透過防止性に優れた中空樹脂成形品を得ることができる。さらに、外側シート層により中空樹脂成形品の全体の強度が向上する。
【0011】
外側シート層は、それぞれアッパーシェル部とロアシェル部の開口周縁部の先端まで延設され、アッパーシェル部とロアシェル部のそれぞれの開口周縁部が溶着されるとともに、アッパーシェル部とロアシェル部の開口周縁部の外側シート層は、互いに溶着されている。
このため、アッパーシェル部とロアシェル部のそれぞれの開口周縁部は強固に一体的に溶着しており、アッパーシェル部とロアシェル部の接合部分の強度を大きくすることができ、特に、接合のための接着剤等が不要であるため、製造が容易である。
アッパーシェル部とロアシェル部の開口周縁部が相互に強く溶着されるとともに、溶着された接合界面の外側においても、外側シート層の相互の間から中空樹脂成形品内の液体等が透過することを防止できる。
【0012】
請求項2の本発明は、アッパーシェル部とロアシェル部のそれぞれの開口周縁部は、全周に亘りそれぞれ略直角に外側に張り出したフランジ部が形成され、開口周縁部の内面の接合界面が融着して、中空樹脂成形品の内部方向に滑らかに凸状部を形成した中空樹脂成形品である。
【0013】
請求項2の本発明では、アッパーシェル部とロアシェル部のそれぞれの開口周縁部は、全周に亘りそれぞれ略直角に外側に張り出したフランジ部が形成され、開口周縁部の内面の接合界面が融着して、中空樹脂成形品の内部方向に滑らかに凸状部を形成した。このため、このアッパーシェル部とロアシェル部のフランジ部を相互に圧着することにより、アッパーシェル部とロアシェル部の開口周縁を全周にわたり強固に密着して、融着することができる。
【0014】
また、凸状部により開口周縁部において溶着面積が広くなり、溶着強度が大きくなる。さらに、開口周縁部の接合界面の内側先端において、接合界面が融着しているので、ノッチ状の凹部を有しないため、中空樹脂成形品に衝撃が加わった場合でも、開口周縁部の接合界面に衝撃力が集中することが無く、中空樹脂成形品の耐衝撃強度を大きくすることができる。
【0015】
請求項3の本発明は、アッパーシェル部とロアシェル部の内側樹脂層は、高密度ポリエチレン(HDPE)で形成され、外側シート層は耐燃料透過性多層樹脂シートで形成され、アッパーシェル部とロアシェル部の内側樹脂層の外側は、フランジ部を含めて、それぞれ耐燃料透過性多層樹脂シートで被覆されるとともに、フランジ部の先端において、それぞれの該耐燃料透過性多層樹脂シートの耐燃料透過性を有する層が近接して融合されている中空樹脂成形品である。
【0016】
請求項3の本発明では、アッパーシェル部とロアシェル部の内側樹脂層は、高密度ポリエチレン(HDPE)で形成されているため、中空樹脂成形品の耐衝撃強度を大きくすることができる。
外側シート層は耐燃料透過性多層樹脂シートで形成され、アッパーシェル部とロアシェル部の内側樹脂層の外側は、フランジ部を含めて、それぞれ耐燃料透過性多層樹脂シートで被覆されているため、中空樹脂成形品の内部に燃料油を入れた場合には、燃料油の透過を防止することができる。多層シートであるため、耐燃料透過性の層のアッパーシェル部とロアシェル部の内側樹脂層に対向する面に高密度ポリエチレン(HDPE)と接着性の良い層を形成し、外側に耐摩耗性や耐衝撃性の層を形成することができ、中空樹脂成形品の強度を向上させることができる。
【0017】
フランジ部の先端において、それぞれの耐燃料透過性多層樹脂シートの耐燃料透過性を有する層が近接して融合されているため、フランジ部の先端において、耐燃料透過性多層樹脂シート層のなかのそれぞれの耐燃料透過性を有する層同士の間隔を最小限にすることができ、開口周縁部のフランジ部の先端からの燃料の透過を最小限にすることができる。
【0018】
請求項4の本発明は、中空樹脂成形品が自動車用燃料タンクであり、耐燃料透過性多層樹脂シートは、耐燃料透過性を有する層と、中空樹脂成形品の内側樹脂層と融着する耐燃料透過性を有する層の内側にある層と、耐燃料透過性を有する層の外側の層を有し、耐燃料透過性を有する層の内側にある層は、耐燃料透過性を有する層の外側の層よりも薄く形成されている中空樹脂成形品である。
【0019】
請求項4の本発明では、中空樹脂成形品が自動車用燃料タンクであり、耐燃料透過性多層樹脂シートは、耐燃料透過性を有する層と、中空樹脂成形品の内側樹脂層と融着する耐燃料透過性を有する層の内側にある層と、耐燃料透過性を有する層の外側の層を有し、耐燃料透過性を有する層の内側にある層は、耐燃料透過性を有する層の外側の層よりも薄く形成されている。このため、アッパーシェル部とロアシェル部のフランジ部において、耐燃料透過性多層樹脂シート層のなかのそれぞれの耐燃料透過性を有する層同士の間隔を最小限にすることができ、開口周縁部からの燃料の透過を最小限にすることができる。
【0020】
請求項5の本発明は、アッパーシェル部とロアシェル部の内側樹脂層をそれぞれ別々に金型で射出成形し、内側樹脂層の外面に外側シート層を接合し、アッパーシェル部とロアシェル部の開口周縁部を合体して一体的に接合して形成する熱可塑性合成樹脂製の中空樹脂成形品の製造方法において、
アッパーシェル部とロアシェル部の射出成形された内側樹脂層をそれぞれ真空成形型に取付け、外側シート層を加熱し、内側樹脂層の外面に加熱された外側シート層を置き、真空成形型から吸引して外側シート層を内側樹脂層に融着するとともに、外側シート層は、内側樹脂層の開口周縁部の先端よりも延設され、アッパーシェル部とロアシェル部の開口周縁部の接合面と外側シート層の先端の延設された部分は、それぞれ加熱されて溶融された後、相互に接合され、圧接してアッパーシェル部とロアシェル部の開口周縁部を溶着した中空樹脂成形品の製造方法である。
【0021】
請求項5の本発明では、アッパーシェル部とロアシェル部の射出成形された内側樹脂層をそれぞれ真空成形型に取付け、外側シート層を加熱し、内側樹脂層の外面に加熱された外側シート層を置き、真空成形型から吸引して外側シート層を内側樹脂層に融着する。このため、外側シート層に穴を開けることなく、または破ることなく内側樹脂層の外面に外側シート層を融着することができ、寸法精度の高い、強度の大きな中空樹脂成形品を製造することができる。中空樹脂成形品に耐衝撃性の材料を使用し、外側シート層は透過防止性のシートを使用すれば、耐衝撃性と透過防止性のよい中空樹脂成形品を製造することができる。
【0022】
外側シート層は、内側樹脂層の開口周縁部の側端よりも延設され、アッパーシェル部とロアシェル部の開口周縁部の接合面と外側シート層の先端の延設された部分は、それぞれ加熱されて溶融された後、相互に接合され、圧接してアッパーシェル部とロアシェル部の開口周縁部を溶着した。このため、アッパーシェル部とロアシェル部のそれぞれの開口周縁部は強固に一体的に結合しており、アッパーシェル部とロアシェル部の接合部分の強度を大きくし、特に、接合のための接着剤等が不要であるため、製造が容易である。
アッパーシェル部とロアシェル部の開口周縁部が相互に強く溶着されるとともに、溶着された接合界面の外側においても、外側シート層の相互の間から中空樹脂成形品内の液体等が透過することを防止できる中空樹脂成形品を容易に製造することができる。
【0023】
請求項6の本発明は、アッパーシェル部とロアシェル部のそれぞれの開口周縁部に、全周に亘りそれぞれ外側に張り出したフランジ部を形成し、フランジ部を相互に圧接して、開口周縁部を融着するとともに、開口周縁部の内面の接合界面が融合し、中空樹脂成形品の内部方向に滑らかに凸状部を形成した中空樹脂成形品の製造方法である。
【0024】
請求項6の本発明では、アッパーシェル部とロアシェル部のそれぞれの開口周縁部に、全周に亘りそれぞれ外側に張り出したフランジ部を形成し、フランジ部を相互に圧接して、開口周縁部を溶着する。このため、このアッパーシェル部とロアシェル部のフランジ部を相互に圧着することができるとともに、アッパーシェル部とロアシェル部の開口周縁を全周にわたり強固に密着して、固着して融合させることができる。
【0025】
開口周縁部の内面の接合界面が融合し、中空樹脂成形品の内部方向に滑らかに凸状部を形成したため、凸状部により開口周縁部において溶着面積が広くなり、溶着強度が大きくなる。また、開口周縁部の接合界面の内側先端において、接合界面が融合し、ノッチ状の凹部を有しないため、中空樹脂成形品に衝撃が加わった場合でも、開口周縁部の接合界面に衝撃力が集中することが無く、中空樹脂成形品の耐衝撃強度が大きな中空樹脂成形品を製造することができる。
【0026】
請求項7の本発明は、アッパーシェル部とロアシェル部のそれぞれの開口周縁部は、全周に亘りそれぞれ外側に張り出したフランジ部が形成され、フランジ部の底面とアッパーシェル部とロアシェル部のそれぞれの開口周縁部の中空樹脂成形品の内面で構成される断面略L字形の部分をそれぞれ加熱して溶融した後、フランジ部を相互に接合し、圧縮し、溶着した中空樹脂成形品の製造方法である。
【0027】
請求項7の本発明では、アッパーシェル部とロアシェル部のそれぞれの開口周縁部は、全周に亘りそれぞれ外側に張り出したフランジ部が形成され、フランジ部の底面とアッパーシェル部とロアシェル部のそれぞれの開口周縁部の中空樹脂成形品の内面で構成される断面略L字形の部分をそれぞれ加熱して溶融した後、フランジ部を相互に接合し、圧縮し、溶着した。このため、開口周縁部の全周に亘り、内面と接合面を溶融して、広く融合面を確保することができ、内面と接合部分の合成樹脂の流動性を増加させ、開口周縁部の内面に、接合界面を融合させて、内部方向に滑らかに凸状部を形成することが容易になる。
【0028】
請求項8の本発明は、アッパーシェル部とロアシェル部の内側樹脂層は、それぞれの開口周縁部が全周に亘りそれぞれ外側に張り出したフランジ部を有するように、高密度ポリエチレン(HDPE)を使用し射出成形で成形し、外側シート層は耐燃料透過性多層樹脂シートで形成し、射出成形されたアッパーシェル部とロアシェル部の内側樹脂層の外側を、フランジ部を含めて、耐燃料透過性多層樹脂シートで被覆し一体的に接合し、その後、フランジ部を相互に接合し、圧縮し、フランジ部の先端において、耐燃料透過性多層樹脂シートの耐燃料透過性を有する層が近接して融合されるようにフランジ部を溶着する中空樹脂成形品の製造方法である。
【0029】
請求項8の本発明では、アッパーシェル部とロアシェル部の内側樹脂層は、それぞれの開口周縁部が全周に亘りそれぞれ外側に張り出したフランジ部を有するように、高密度ポリエチレン(HDPE)を使用し射出成形で成形した。このため、内側樹脂層の耐衝撃強度を大きくすることができるとともに、アッパーシェル部とロアシェル部のフランジ部を相互に押圧することにより、容易に開口周縁部を溶着することができる。
【0030】
外側シート層は耐燃料透過性多層樹脂シートで形成し、射出成形されたアッパーシェル部とロアシェル部の内側樹脂層の外側を、フランジ部を含めて、耐燃料透過性多層樹脂シートで被覆し一体的に接合し、その後、フランジ部を相互に接合し、圧縮した。このため、アッパーシェル部とロアシェル部の内側樹脂層の外側は、フランジ部を含めて、それぞれ耐燃料透過性多層樹脂シートで被覆されており、中空樹脂成形品の内部に燃料油を入れた場合には、燃料油の透過を防止することができる。多層シートであるため、耐燃料透過性の層のアッパーシェル部とロアシェル部の内側樹脂層に対向する面に高密度ポリエチレン(HDPE)と接着性の良い層を形成し、外側に耐摩耗性や耐衝撃性の層を形成することができる。
【0031】
フランジ部の先端において、耐燃料透過性多層樹脂シートの耐燃料透過性を有する層が近接して融合されるようにフランジ部の先端を溶着したため、フランジ部の先端において、耐燃料透過性多層樹脂シート層のなかのそれぞれの耐燃料透過性を有する層同士の間隔を最小限にすることができ、開口周縁部のフランジ部からの燃料の透過を最小限にすることができる。
【0032】
請求項9の本発明は、フランジ部の先端において、溶着されたアッパーシェル部とロアシェル部の外側シート層が、接合界面に対して平行に外側方向に延設され、または、フランジ部の先端から屈曲して延設されている中空樹脂成形品の製造方法である。
【0033】
請求項9の本発明では、フランジ部の先端において、溶着されたアッパーシェル部とロアシェル部の外側シート層が、接合界面に対して平行に延設されている場合は、フランジ部の外側シート層を幅広く融着することができ、フランジ部からの燃料の透過を最小限にすることができる。
また、フランジ部の先端において、溶着されたアッパーシェル部とロアシェル部の外側シート層が、接合界面に対して屈曲して延設されている場合は、フランジ部の外側シート層を幅広く溶着することができ、フランジ部の燃料の透過を最小限にすることができるとともに、フランジ部の外側の幅を狭くすることができ、中空樹脂成形品をコンパクトにすることができる。
【0034】
請求項10の本発明は、中空樹脂成形品が自動車用燃料タンクであり、耐燃料透過性多層樹脂シートは、耐燃料透過性を有する層と、中空樹脂成形品の内側樹脂層と融着する耐燃料透過性を有する層の内側の層と、耐燃料透過性を有する層の外側の層を有し、耐燃料透過性を有する層の内側の層は耐燃料透過性を有する層の外側の層よりも薄く形成されている中空樹脂成形品の製造方法である。
【0035】
請求項10の本発明では、中空樹脂成形品が自動車用燃料タンクであり、耐燃料透過性多層樹脂シートは、耐燃料透過性を有する層と、中空樹脂成形品の内側樹脂層と融着する耐燃料透過性を有する層の内側の層と、耐燃料透過性を有する層の外側の層を有し、耐燃料透過性を有する層の内側の層は耐燃料透過性を有する層の外側の層よりも薄く形成されている。このため、フランジ部において、耐燃料透過性多層樹脂シート層のなかのそれぞれの耐燃料透過性を有する層同士の間隔を最小限にすることができ、開口周縁部のフランジ部の先端からの燃料の透過を最小限にすることができる。
【発明の効果】
【0036】
外側シート層は、それぞれアッパーシェル部とロアシェル部の開口周縁部の先端まで延設され、アッパーシェル部とロアシェル部の開口周縁部の外側シート層は、互いに溶着されているため、アッパーシェル部とロアシェル部のそれぞれの開口周縁部は強固に一体的に溶着しており、アッパーシェル部とロアシェル部の接合部分の強度を大きくし、特に、接合のための接着剤等が不要であるため、製造が容易である。
アッパーシェル部とロアシェル部の開口周縁部が相互に強く融着されるとともに、外側シート層を使用し、融着された開口周縁部のフランジ部の先端においても、外側シート層が溶着されており、外側シート層の相互の間から中空樹脂成形品内の液体等が透過することを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
本発明の実施の形態である中空樹脂成形品について、自動車用の燃料タンク1を例にとり、図1〜図15に基づき説明する。本発明は、燃料タンク1以外にも、各種の中空樹脂成形品に使用することができる。
図1は、燃料タンク1の長手方向の断面図であり、図2は、燃料タンク1の内側樹脂層15の断面図である。
図3〜図8は、後述する、燃料タンク1の製造方法を示す図である。図9〜図11は、フランジ部12の部分断面図である。図12〜図15は、耐燃料透過性多層樹脂シート3の断面図である。
【0038】
燃料タンク1は、分割して成形されたアッパーシェル部10とロアシェル部20から構成される。アッパーシェル部10とロアシェル部20は、それぞれ、射出成形で形成される内側樹脂層15、25と、内側樹脂層15、25の外側に形成される耐燃料透過性多層樹脂シート3から構成される外側シート層16、26の2層から形成される。
燃料タンク1の分割は2個ばかりでなく3個以上に分割することも可能である。
【0039】
アッパーシェル部10とロアシェル部20の内面には、複数の内側リブ17、27がそれぞれ、燃料タンク1の内部方向に向けて一体的に形成することができる。この内側リブ17、27により燃料タンク1の強度・剛性が増加する。また、シェルと一体成形した部品取体部8,9に燃料タンク1内に装着する燃料ポンプユニット4やバルブ6キャニスター、ホース等を取付けることができる。
【0040】
アッパーシェル部10には、パイプ取付孔2とポンプユニット点検孔5が形成されている。ポンプユニット点検孔5は、燃料タンク1内部に取付けた燃料ポンプユニット4の点検・修理をするための孔であり、パイプ取付孔2は、燃料注入用のパイプ(図示せず)を取付ける孔である。なお、アッパーシェル部10の上面には、燃料移送用ホース等の各種のホースを保持するホースクランプ(図示せず)を設けてもよい。
【0041】
アッパーシェル部10とロアシェル部20の開口の全周には、図1と図8に示すように、アッパーシェル部10の開口周縁部11とロアシェル部20の開口周縁部21が形成され、その開口周縁部11、21には、全周に亘りそれぞれ外面から略直角に外側に張り出したフランジ部12,22が形成されている。開口周縁部11、21とフランジ部12,22は、それぞれ相互に対向して溶着されている。
【0042】
フランジ部12,22は、図2、図5及び図6に示すように、アッパーシェル部10とロアシェル部20の内側樹脂層15、25とは断面略L字形に形成される。
アッパーシェル部10とロアシェル部20の内側樹脂層15の外面は、フランジ12、21の先端まで耐燃料透過性多層樹脂シート3が一体的に融着されて、上記の通り、外側シート層16、26を構成している。耐燃料透過性多層樹脂シート3については後述する。
【0043】
次に、中空樹脂成形品である燃料タンク1の製造方法について説明する。燃料タンク1は、上述のように、アッパーシェル部10とロアシェル部20をそれぞれ溶着して製造する。アッパーシェル部10とロアシェル部20のそれぞれの製造方法は同一であり、まずアッパーシェル部10の製造方法を説明し、ロアシェル部20の製造方法は説明を省略する。
【0044】
アッパーシェル部10は内側樹脂層15と外側シート層16から構成され、内側樹脂層15は、射出成形により成形される。射出成形後の形状を図2に示す。内側樹脂層15は、衝撃や磨耗に強い高密度ポリエチレン(HDPE)から形成することができる。内側樹脂層15の各部分には、空気を通過させるための小さな空気孔15aが多数形成されている。アッパーシェル部10の開口周縁部11を形成する部分にはフランジ部12が全周に亘り外方向に水平に延設されている。
【0045】
アッパーシェル部10とロアシェル部20とを別々に射出成形で成形するため、寸法精度の高い、強度の強いアッパーシェル部10とロアシェル部20の内側樹脂層15、25を得ることができる。従って、アッパーシェル部10とロアシェル部20が溶着された中空樹脂成形品である燃料タンク1は、寸法精度の高い精密な、かつ強度の高い製品とすることができる。また、アッパーシェル部10とロアシェル部20の内側樹脂層15、25に補強リブや部品取付部を一体成形することで、薄い板厚でも強度を高めたり内蔵部品等を取付けることが容易にできる。外側シート層16、26に透過防止性シートを使用すると、強度が高く、透過防止性に優れた燃料タンク1を得ることができる。
【0046】
次に、図3に示すように、内側樹脂層15を真空成形金型50にセットする。そして、外側シート層16を形成する耐燃料透過性多層樹脂シート3をヒーター31で加熱し、軟化させる。
その後、図4に示すように、耐燃料透過性多層樹脂シート3を内側樹脂層15の上へ移動させ内側樹脂層15に接触させる。さらに、図5に示すように、真空成形金型50の空気抜き孔51から空気を吸引する。このとき、真空成形金型50と内側樹脂層15には、空気孔15aが多数設けられており、耐燃料透過性多層樹脂シート3と内側樹脂層15は、密着する。耐燃料透過性多層樹脂シート3は、加熱により表面が溶融しているため、内側樹脂層15と耐燃料透過性多層樹脂シート3は融着して一体となり、外側シート層16となる。
【0047】
内側樹脂層15が射出成形された後に、耐燃料透過性多層樹脂シート3を加熱して、融着するため、耐燃料透過性多層樹脂シート3を射出成形金型にセットして、裏面側から射出成形する場合と比べて、耐燃料透過性多層樹脂シート3の破れや、強い伸びを防止することができ、燃料タンク1の耐燃料透過性が確保できる。また、耐燃料透過性多層樹脂シート3と内側樹脂層15を一緒に冷却する必要が無く、冷却時間を短くすることができ、生産効率が良い。
【0048】
つぎに、真空成形金型50から内側樹脂層15と外側シート層16を外す。このとき外側シート層16は、図6に示すように、内側樹脂層15のフランジ部12よりも先端側にはみ出て融着されている。このはみ出た外側シート層16をフランジ部12の先端から少し延設した状態で、切除する。このようにして、アッパーシェル部10を作成する。同様にロアシェル部20も作成する。
【0049】
次に、図7に示すように、アッパーシェル部10のフランジ部12を熱板30で加熱する。ロアシェル部20のフランジ部22も同様である。
アッパーシェル部10とロアシェル部20の開口周縁部11、21を全周に亘り加熱するため、開口周縁部11、21の対向する部分は、軟化することができる。
【0050】
次に、アッパーシェル部10とロアシェル部20の開口周縁部11、21のフランジ部12、22をそれぞれ押さえ治具で相互に押さえて溶着する。これにより、図8に示すように、アッパーシェル部10のフランジ部12は、溶着され、燃料タンク1を製造することができる。なお、このとき、溶着前に燃料タンク1の内部にポンプユニット等の必要な部品を組付ける。
【0051】
次に、アッパーシェル部10とロアシェル部20の開口周縁部11、21の溶着と外側シート層16、26の詳細な形状について、図9〜図12に基づき、詳細に説明する。
図9は、開口周縁部11、21の形状を示す第1の形態である。図9(a)は、アッパーシェル部10の外側シート層16が融着される前のフランジ部12の形状を示し、フランジ部12は、外方向に延設されている。図9(b)は、外側シート層16が融着されて、外側シート層16はフランジ部12よりも先端側に延設されて、フランジ外側シート層18を形成している。
【0052】
フランジ部12、22の底面とアッパーシェル部10とロアシェル部20のそれぞれの開口周縁部11、21の中空樹脂成形品の内面で構成される断面略L字形の部分をそれぞれ加熱することが好ましい。加熱して溶融した後、フランジ部12,22を相互に接合し、圧縮し、溶着した。このため、開口周縁部11、21の全周に亘り、内面と接合面を溶融して、広く融合面を確保することができ、内面と接合部分の合成樹脂の流動性を増加させ、開口周縁部11、21の内面の接合界面を融合させて、図9(c)、(d)に示すように、内部方向に滑らかに凸状部13を形成することが容易になる。
【0053】
アッパーシェル部10とロアシェル部20のフランジ部12、22とフランジ外側シート層18、28は、加熱されて溶着される。このとき、フランジ部12、22とその先端のフランジ外側シート層18、28は、押さえ治具で相互に押圧される。そして、フランジ部12、22とフランジ外側シート層18、28は、図9(c)に示すように、互いに密着することができる。
次に、図9(d)に示すように、フランジ外側シート層18、28をフランジ部12、22の先端が若干延設するように所定寸法に切断する。
【0054】
フランジ外側シート層18、28は互いに押しつぶされるように厚さが減少すると、図9(d)の矢印Aに示すように、フランジ外側シート層18,28の耐燃料透過性多層樹脂シート3の内部にある耐燃料透過性の層が互いに接近して、溶着される。従って、耐燃料透過性の層の間隔が狭くなり、この層の間から燃料が透過することを防止でき、フランジ部12、22の間とフランジ外側シート層18,28からの透過を最小限にすることができる。また、図9(d)の矢印Bに示すように、フランジ部12が長くなると燃料透過経路が長くなり、燃料透過防止効果を向上させることができる。
【0055】
なお、押さえ治具でフランジ部12、22を半溶融状態で上下に押さえ続けると、合成樹脂は、開口周縁部11、21の界面付近で燃料タンク1の内部方向に移動して、燃料タンク1の内部方向に滑らかに突出した山形の凸状部13が形成される。これは、開口周縁部11、21とフランジ部12、22の合成樹脂が、溶融状態で一体的に融合した後に、半溶融状態で燃料タンク1の内部方向に押し出されるため、界面部分にノッチ状の凹部を形成することなく、緩やかに裾野を引いたような山形の凸状部13を形成することができるためである。
【0056】
開口周縁部11、21の融合された内面は、山形の内部方向に滑らかな凸状部13を有するため、開口周縁部11,21において溶着面積が広くなり、溶着強度が大きくなる。また、開口周縁部11、21の接合面の内側先端である凸状部13において、ノッチ状の凹部を有しないため、燃料タンク1に衝撃が加わった場合でも、開口周縁部11,12の接合面に衝撃力が集中することが無く、燃料タンク1の耐衝撃強度を大きくすることができる。
【0057】
次に、図10は、開口周縁部11、21の形状を示す本発明の第2の実施の形態である。図10(a)は、フランジ部12、22と外側シート層16、26が溶着された形状をしめし、図10(b)は、外側シート層16、26が所定寸法に切断された後の形状を示す。第1の実施の形態とはフランジ部12、22の形状が異なり、フランジ部12、22は、断面が三角形である。この場合においても、図10(b)の矢印Cに示すように、フランジ部12が長くなると燃料透過経路が長くなり、燃料透過防止効果を向上させることができる。フランジ外側シート層18,28の寸法と形状は第1の実施の形態と同様である。
【0058】
次に、図11は、開口周縁部11、21の形状を示す本発明の第3の実施の形態である。図11(a)は、フランジ部12、22と外側シート層16、26が溶着された形状を示し、図11(b)は、フランジ外側シート層18,28が屈曲された形状を示す。第1の実施の形態とはフランジ外側シート層18,28の形状が異なり、フランジ外側シート層18,28は、フランジ部12、22の先端で下方に屈曲されている。この形態では、フランジ部12、22のフランジ外側シート層18,28を幅広く溶着することができ、フランジ部12,22の燃料の透過を最小限にすることができるとともに、屈曲されているため、フランジ部12,22の先端から外方向に突出したフランジ外側シート層18,28の突出部分の幅を狭くすることができ、燃料タンク1をコンパクトにすることができる。
【0059】
次に、外側シート層16、26を形成する耐燃料透過性多層樹脂シート3の構造について、図12〜図15に基づき説明する。
図12は、第1の形態の耐燃料透過性多層樹脂シート3の断面図である。
図12の耐燃料透過性多層樹脂シート3は、中央の層がエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)又はナイロンで形成された燃料透過を防止する耐燃料透過性を有する層(バリヤー層)3aと、そのバリヤー層3aの上下に変性ポリエチレンから形成される接着層3b、3cと、その接着層3b、3cの外面にポリエチレン(PE)から形成される耐燃料透過性を有する層の外側の層(外層)3d、耐燃料透過性を有する層の内側の層(外層)3eから構成される5層のシートである。バリヤー層3aにより燃料タンク1から燃料の透過を防止することができる。
【0060】
変性ポリエチレンから形成される接着層3b、3cは、バリヤー層3aと外層3d、3eの両方に対して接着性を有している。このため、バリヤー層3aと外層3d、3eを強固に接着することができる。
燃料タンク1の外側の外層3dは、衝撃や磨耗に強いポリエチレン(PE)から形成されているので、燃料タンク1の強度を増加させ、バリヤー層3aを保護することができる。内側樹脂層15、25と接合する外層3cは、内側樹脂層15、25がオレフィン系合成樹脂、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)で構成されている場合は、内側樹脂層15、25と融合して、強固に融着されることができる。
【0061】
フランジ部12、22の先端で、耐燃料透過性多層樹脂シート3で形成されるフランジ外側シート層18、28を互いに圧縮すると、外層3eが押圧されて薄くなり、フランジ外側シート層18、28のそれぞれのバリヤー層3a同士が接近して、バリヤー層3a同士の間隔が狭くなり、フランジ部12、22の先端のフランジ外側シート層18、28の間から燃料が透過することを最小限にすることができる。
【0062】
図13は、別の実施の形態の耐燃料透過性多層樹脂シート3の断面図である。
この実施の形態の耐燃料透過性多層樹脂シート3は、図12の形態の耐燃料透過性多層樹脂シート3とは、内側樹脂層15と融着する側の外層3eのみが異なり、他の部分は同様であるので、外層3eの説明を行い、他の部分の説明は省略する。
この実施の形態の外層3eは、材質は同じであるが、図12の形態の耐燃料透過性多層樹脂シート3の外層3eよりも薄く形成されている。これにより、耐燃料透過性多層樹脂シート3を薄くすることができ、シートの加熱時間を短縮することができるとともに、燃料タンク1の軽量化を図ることができる。
【0063】
図14は、さらに別の形態の耐燃料透過性多層樹脂シート3の断面図である。
この形態の耐燃料透過性多層樹脂シート3は、図12の形態の耐燃料透過性多層樹脂シート3とは、内側樹脂層15と融着する側の外層3eが省略されている点が異なり、他の部分は同様であるので、外層3eの説明を行い、他の部分の説明は省略する。
図13の実施の形態の外層3eは存在しないが、接着層3cは存在する。したがって、耐燃料透過性多層樹脂シート3を、外側シート層16として、内側樹脂層15に融着することができる。これにより、図13の実施の形態と同様に、耐燃料透過性多層樹脂シート3を薄くすることができ、シートの加熱時間を短縮することができるとともに、燃料タンク1の軽量化を図ることができる。
【0064】
図15は、さらに別の実施の形態の耐燃料透過性多層樹脂シート3の断面図である。
この実施の形態の耐燃料透過性多層樹脂シート3は、図13の実施の形態の耐燃料透過性多層樹脂シート3とは、バリヤー層3aの外側の外層3cは同じであるが、バリヤー層3aとバリヤー層3aを挟む接着層3b、3cが薄くフィルム状に形成された点が異なっている。したがって、耐燃料透過性多層樹脂シート3を、薄く形成することができ、図13、図14の実施の形態と同様に、シートの加熱時間を短縮することができるとともに、燃料タンク1の軽量化を図ることができる。しかしながら外層3dの厚さは同じであるため、バリヤー層3aを十分保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の実施の形態である燃料タンクの長手方向の断面図である。
【図2】本発明の実施の形態である燃料タンクの内側樹脂層の断面図である。
【図3】本発明の実施の形態である燃料タンクのアッパーシェル部の内側樹脂層を真空成形金型にセットし、耐燃料透過性多層樹脂シートを加熱する工程を示す断面模式図である。
【図4】本発明の実施の形態である燃料タンクのアッパーシェル部の内側樹脂層の上に耐燃料透過性多層樹脂シートを移動させる工程を示す断面模式図である。
【図5】本発明の実施の形態である燃料タンクのアッパーシェル部の内側樹脂層の上に耐燃料透過性多層樹脂シートを密着させる工程を示す断面模式図である。
【図6】本発明の実施の形態であるアッパーシェル部のフランジ外側シート層の先端を切除する工程を示す断面模式図である。
【図7】本発明の実施の形態であるアッパーシェル部のフランジ部を加熱する工程を示す断面模式図である。
【図8】本発明の実施の形態であるアッパーシェル部とロアシェル部のフランジ部を溶着した後の燃料タンクの幅方向の断面模式図である。
【図9】本発明の実施の形態であるアッパーシェル部とロアシェル部のフランジ部を溶着する工程を示す部分断面模式図である。
【図10】本発明の他の実施の形態であるアッパーシェル部とロアシェル部のフランジ部を溶着する工程を示す部分断面模式図である。
【図11】本発明の他の実施の形態であるアッパーシェル部とロアシェル部のフランジ部を溶着する工程を示す部分断面模式図である。
【図12】本発明の実施に使用する耐燃料透過性多層樹脂シートの断面図である。
【図13】本発明の実施に使用する他の耐燃料透過性多層樹脂シートの断面図である。
【図14】本発明の実施に使用する他の耐燃料透過性多層樹脂シートの断面図である。
【図15】本発明の実施に使用する他の耐燃料透過性多層樹脂シートの断面図である。
【図16】従来の燃料タンクの断面図である。
【符号の説明】
【0066】
1 燃料タンク
10 アッパーシェル部
11、21 開口周縁部
12、22 フランジ部
13 凸状部
15、25 内側樹脂層
16、26 外側シート層
18、28 フランジ外側シート層
20 ロアシェル部
30 熱板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性合成樹脂製の中空樹脂成形品において、
該中空樹脂成形品は、アッパーシェル部とロアシェル部とから構成され、上記アッパーシェル部とロアシェル部は、それぞれ射出成形により分割して別々に成形された内側樹脂層と該内側樹脂層の外面に接合された外側シート層から構成され、該外側シート層は、それぞれ上記アッパーシェル部とロアシェル部の開口周縁部の先端まで延設され、
上記アッパーシェル部とロアシェル部のそれぞれの開口周縁部が溶着されるとともに、上記アッパーシェル部とロアシェル部の開口周縁部の上記外側シート層は、互いに溶着されていることを特徴とする中空樹脂成形品。
【請求項2】
上記アッパーシェル部とロアシェル部のそれぞれの開口周縁部は、全周に亘りそれぞれ外側に張り出したフランジ部が形成され、上記開口周縁部の内面の接合界面が融着して上記中空樹脂成形品の内部方向に滑らかに凸状部を形成した請求項1に記載の中空樹脂成形品。
【請求項3】
上記アッパーシェル部とロアシェル部の内側樹脂層は、高密度ポリエチレン(HDPE)で形成され、上記外側シート層は耐燃料透過性多層樹脂シートで形成され、上記アッパーシェル部とロアシェル部の内側樹脂層の外側は、上記フランジ部を含めて、それぞれ上記耐燃料透過性多層樹脂シートで被覆されるとともに、上記フランジ部の先端において、それぞれの該耐燃料透過性多層樹脂シートの耐燃料透過性を有する層が近接して融合されている請求項2に記載の中空樹脂成形品。
【請求項4】
上記中空樹脂成形品が自動車用燃料タンクであり、上記耐燃料透過性多層樹脂シートは、耐燃料透過性を有する層と、上記中空樹脂成形品の上記内側樹脂層と融着する該耐燃料透過性を有する層の内側にある層と、上記耐燃料透過性を有する層の外側の層を有し、上記耐燃料透過性を有する層の内側にある層は、上記耐燃料透過性を有する層の外側の層よりも薄く形成されている請求項3に記載の中空樹脂成形品。
【請求項5】
アッパーシェル部とロアシェル部の内側樹脂層をそれぞれ別々に射出成形し、上記内側樹脂層の外面に外側シート層を接合し、上記アッパーシェル部とロアシェル部の開口周縁部を合体して一体的に接合して形成する熱可塑性合成樹脂製の中空樹脂成形品の製造方法において、
上記アッパーシェル部とロアシェル部の射出成形された内側樹脂層をそれぞれ真空成形型に取付け、上記外側シート層を加熱し、上記内側樹脂層の外面に加熱された上記外側シート層を置き、上記真空成形型から吸引して上記外側シート層を上記内側樹脂層に融着するとともに、上記外側シート層は、上記内側樹脂層の開口周縁部の先端よりも延設され、
上記アッパーシェル部とロアシェル部の上記開口周縁部の接合面と上記外側シート層の先端の延設された部分は、それぞれ加熱されて溶融された後、相互に接合され、圧接して上記アッパーシェル部とロアシェル部の上記開口周縁部を溶着したことを特徴とする中空樹脂成形品の製造方法。
【請求項6】
上記アッパーシェル部とロアシェル部のそれぞれの上記開口周縁部に、全周に亘りそれぞれ外側に張り出したフランジ部を形成し、該フランジ部を相互に圧接して、上記開口周縁部を溶着するとともに、上記開口周縁部の内面の接合界面が融合して、上記中空樹脂成形品の内部方向に滑らかに凸状部を形成した請求項5に記載の中空樹脂成形品の製造方法。
【請求項7】
上記アッパーシェル部とロアシェル部のそれぞれの上記開口周縁部は、全周に亘りそれぞれ外側に張り出した上記フランジ部が形成され、上記フランジ部の底面と上記アッパーシェル部とロアシェル部のそれぞれの上記開口周縁部の上記中空樹脂成形品の内面で構成される断面略L字形の部分をそれぞれ加熱して溶融した後、上記フランジ部を相互に接合し、圧縮し、溶着した請求項6に記載の中空樹脂成形品の製造方法。
【請求項8】
上記アッパーシェル部とロアシェル部の内側樹脂層は、それぞれの上記開口周縁部が全周に亘りそれぞれ外側に張り出したフランジ部を有するように、高密度ポリエチレン(HDPE)を使用し射出成形で成形し、上記外側シート層は耐燃料透過性多層樹脂シートで形成し、射出成形された上記アッパーシェル部とロアシェル部の内側樹脂層の外側を上記フランジ部を含めて、上記耐燃料透過性多層樹脂シートで被覆し一体的に接合し、その後、上記フランジ部を相互に接合し、圧縮し、上記フランジ部の先端において、上記耐燃料透過性多層樹脂シートの耐燃料透過性を有する層が近接して融合されるように上記フランジ部を溶着する請求項6又は請求項7に記載の中空樹脂成形品の製造方法。
【請求項9】
上記フランジ部の先端において、溶着された上記アッパーシェル部とロアシェル部の上記外側シート層が、接合界面に対して平行に外側方向に延設され、または、上記フランジ部の先端から屈曲して延設されている請求項6乃至請求項8のいずれかに記載の中空樹脂成形品の製造方法。
【請求項10】
上記中空樹脂成形品が自動車用燃料タンクであり、上記耐燃料透過性多層樹脂シートは、耐燃料透過性を有する層と、上記中空樹脂成形品の上記内側樹脂層と融着する上記耐燃料透過性を有する層の内側の層と、上記耐燃料透過性を有する層の外側の層を有し、上記耐燃料透過性を有する層の内側の層は上記耐燃料透過性を有する層の外側の層よりも薄く形成されている請求項8又は請求項9に記載の中空樹脂成形品の製造方法。
【請求項1】
熱可塑性合成樹脂製の中空樹脂成形品において、
該中空樹脂成形品は、アッパーシェル部とロアシェル部とから構成され、上記アッパーシェル部とロアシェル部は、それぞれ射出成形により分割して別々に成形された内側樹脂層と該内側樹脂層の外面に接合された外側シート層から構成され、該外側シート層は、それぞれ上記アッパーシェル部とロアシェル部の開口周縁部の先端まで延設され、
上記アッパーシェル部とロアシェル部のそれぞれの開口周縁部が溶着されるとともに、上記アッパーシェル部とロアシェル部の開口周縁部の上記外側シート層は、互いに溶着されていることを特徴とする中空樹脂成形品。
【請求項2】
上記アッパーシェル部とロアシェル部のそれぞれの開口周縁部は、全周に亘りそれぞれ外側に張り出したフランジ部が形成され、上記開口周縁部の内面の接合界面が融着して上記中空樹脂成形品の内部方向に滑らかに凸状部を形成した請求項1に記載の中空樹脂成形品。
【請求項3】
上記アッパーシェル部とロアシェル部の内側樹脂層は、高密度ポリエチレン(HDPE)で形成され、上記外側シート層は耐燃料透過性多層樹脂シートで形成され、上記アッパーシェル部とロアシェル部の内側樹脂層の外側は、上記フランジ部を含めて、それぞれ上記耐燃料透過性多層樹脂シートで被覆されるとともに、上記フランジ部の先端において、それぞれの該耐燃料透過性多層樹脂シートの耐燃料透過性を有する層が近接して融合されている請求項2に記載の中空樹脂成形品。
【請求項4】
上記中空樹脂成形品が自動車用燃料タンクであり、上記耐燃料透過性多層樹脂シートは、耐燃料透過性を有する層と、上記中空樹脂成形品の上記内側樹脂層と融着する該耐燃料透過性を有する層の内側にある層と、上記耐燃料透過性を有する層の外側の層を有し、上記耐燃料透過性を有する層の内側にある層は、上記耐燃料透過性を有する層の外側の層よりも薄く形成されている請求項3に記載の中空樹脂成形品。
【請求項5】
アッパーシェル部とロアシェル部の内側樹脂層をそれぞれ別々に射出成形し、上記内側樹脂層の外面に外側シート層を接合し、上記アッパーシェル部とロアシェル部の開口周縁部を合体して一体的に接合して形成する熱可塑性合成樹脂製の中空樹脂成形品の製造方法において、
上記アッパーシェル部とロアシェル部の射出成形された内側樹脂層をそれぞれ真空成形型に取付け、上記外側シート層を加熱し、上記内側樹脂層の外面に加熱された上記外側シート層を置き、上記真空成形型から吸引して上記外側シート層を上記内側樹脂層に融着するとともに、上記外側シート層は、上記内側樹脂層の開口周縁部の先端よりも延設され、
上記アッパーシェル部とロアシェル部の上記開口周縁部の接合面と上記外側シート層の先端の延設された部分は、それぞれ加熱されて溶融された後、相互に接合され、圧接して上記アッパーシェル部とロアシェル部の上記開口周縁部を溶着したことを特徴とする中空樹脂成形品の製造方法。
【請求項6】
上記アッパーシェル部とロアシェル部のそれぞれの上記開口周縁部に、全周に亘りそれぞれ外側に張り出したフランジ部を形成し、該フランジ部を相互に圧接して、上記開口周縁部を溶着するとともに、上記開口周縁部の内面の接合界面が融合して、上記中空樹脂成形品の内部方向に滑らかに凸状部を形成した請求項5に記載の中空樹脂成形品の製造方法。
【請求項7】
上記アッパーシェル部とロアシェル部のそれぞれの上記開口周縁部は、全周に亘りそれぞれ外側に張り出した上記フランジ部が形成され、上記フランジ部の底面と上記アッパーシェル部とロアシェル部のそれぞれの上記開口周縁部の上記中空樹脂成形品の内面で構成される断面略L字形の部分をそれぞれ加熱して溶融した後、上記フランジ部を相互に接合し、圧縮し、溶着した請求項6に記載の中空樹脂成形品の製造方法。
【請求項8】
上記アッパーシェル部とロアシェル部の内側樹脂層は、それぞれの上記開口周縁部が全周に亘りそれぞれ外側に張り出したフランジ部を有するように、高密度ポリエチレン(HDPE)を使用し射出成形で成形し、上記外側シート層は耐燃料透過性多層樹脂シートで形成し、射出成形された上記アッパーシェル部とロアシェル部の内側樹脂層の外側を上記フランジ部を含めて、上記耐燃料透過性多層樹脂シートで被覆し一体的に接合し、その後、上記フランジ部を相互に接合し、圧縮し、上記フランジ部の先端において、上記耐燃料透過性多層樹脂シートの耐燃料透過性を有する層が近接して融合されるように上記フランジ部を溶着する請求項6又は請求項7に記載の中空樹脂成形品の製造方法。
【請求項9】
上記フランジ部の先端において、溶着された上記アッパーシェル部とロアシェル部の上記外側シート層が、接合界面に対して平行に外側方向に延設され、または、上記フランジ部の先端から屈曲して延設されている請求項6乃至請求項8のいずれかに記載の中空樹脂成形品の製造方法。
【請求項10】
上記中空樹脂成形品が自動車用燃料タンクであり、上記耐燃料透過性多層樹脂シートは、耐燃料透過性を有する層と、上記中空樹脂成形品の上記内側樹脂層と融着する上記耐燃料透過性を有する層の内側の層と、上記耐燃料透過性を有する層の外側の層を有し、上記耐燃料透過性を有する層の内側の層は上記耐燃料透過性を有する層の外側の層よりも薄く形成されている請求項8又は請求項9に記載の中空樹脂成形品の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2008−155588(P2008−155588A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−350001(P2006−350001)
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(502148037)株式会社エフティエス (34)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(502148037)株式会社エフティエス (34)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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