説明

乗員検出システム

【課題】車両用の乗員検出システムが、車両の少なくとも1つの座席又は該座席の周囲の1つ以上の圧力検出ゾーンに設置された感圧材料を備えている。
【解決手段】各ゾーンの感圧材料16,20,24が、圧力が加えられたときにコントローラ32へと電気信号をもたらすように構成されている。コントローラ32が、前記電気信号にもとづいて乗員の存在、位置、及び分類のうちの少なくとも1つを判断する。感圧材料16,20,24は、該材料へと加わる圧力の大きさ又は種類にもとづく可変の抵抗及び可変の容量の少なくとも一方を有している。この可変の抵抗及び可変の容量の少なくとも一方が、前記電気信号の特性を変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くには、乗員分類システム及び乗員位置検出システムの分野に関する。より具体的には、本発明は、車両の座席用の抵抗及び容量検出システム及び検出方法に関する。
【0002】
関連の特許出願に対する相互参照
本出願は、2010年3月31日付の米国特許仮出願第61/319,621号からの優先権を主張し、この米国特許仮出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
現行の車両の重量にもとづく乗員分類システムにおける問題の1つは、脱荷重(offloading)が原因で乗員の重量の全体を捕らえることができない点にある。脱荷重は、乗員の重量の伝達について、別の経路が生じることである。例えば、脱荷重は、乗員が自身の足を座席の基部の近くに位置させることで、脚の重量が座席から取り除かれ、脚の重量が重量検出装置にではなく、車両の床へと直接伝達される場合に生じる。
【0004】
これらに限られるわけではないが、乗員がセンターコンソール及び車両のドアにもたれるときの頭部及び腕の脱荷重など、他にも多数の乗員の脱荷重の形態が存在する。乗員が前方へともたれかかる場合、頭部、腕、及び脚の重量全体が、重量センサを通って伝達されることがない。
【0005】
車両の製造者は、重量にもとづくシステムが、脱荷重を把握せず、したがって乗員の全重量を常には把握していないことに気が付いている。この不正確さが、乗員の分類のしきい値の考え方を決定するうえでの1つの入力である。
【0006】
ひずみゲージ、容量マット、ホール効果センサ、及び感圧材料などといったさまざまな技術を利用して人間の重量を測定する乗員分類システムが存在している。また、現行の設計は、乗員の重量及び位置の両方を把握してはいない。現行の乗員位置検出システムは、容量マットの技術を利用しているが、容量マットの技術は、いくつかの限界を抱えており、乗員分類システムとの単一システムとして使用されてはいない。さらに、現行の乗員分類の設計は、助手席だけにしか使用されていない。
【発明の概要】
【0007】
1つの典型的な実施形態は、車両用の乗員検出システムに関する。乗員検出システムが、車両の少なくとも1つの座席又は該座席の周囲の1つ以上の圧力検出ゾーンに設置された感圧材料を含んでいる。各ゾーンの感圧材料が、圧力が加えられたときにコントローラへと電気信号をもたらすように構成されている。コントローラが、前記電気信号にもとづいて乗員の存在、位置、及び分類のうちの少なくとも1つを判断する。感圧材料は、該材料へと加わる圧力の大きさ又は種類にもとづく可変の抵抗及び可変の容量の少なくとも一方を有している。この可変の抵抗及び可変の容量の少なくとも一方が、前記電気信号の特性を変化させる。
【0008】
別の典型的な実施形態は、車両用の乗員分類システムに関する。システムが、車両の少なくとも1つの座席又は該座席の周囲の1つ以上の圧力検出ゾーンに設置されたセンサのアレイを備えている。各センサが、圧力が加えられたときにコントローラへと電気信号をもたらすように構成された感圧材料を含んでいる。コントローラが、前記電気信号にもとづいて乗員の位置及び分類のうちの少なくとも1つを判断する。感圧材料は、該材料へと加わる圧力の大きさ又は種類にもとづく可変の抵抗及び可変の容量の少なくとも一方を有している。この可変の抵抗及び可変の容量の少なくとも一方が、前記電気信号の特性を変化させる。
【0009】
別の典型的な実施形態は、車両用の乗員検出システムに関する。システムは、車両の少なくとも1つの座席又は該座席の周囲の1つ以上の圧力検出ゾーンに設置されたセンサを含んでいる。センサが、圧力が加えられたときにコントローラへと電気信号をもたらすように構成された感圧材料を含んでいる。コントローラが、前記電気信号にもとづいて乗員の存在を判断する。感圧材料は、該材料へと加わる圧力の大きさ又は種類にもとづく可変の抵抗及び可変の容量の少なくとも一方を有している。この可変の抵抗及び可変の容量の少なくとも一方が、前記電気信号の特性を変化させる。
【0010】
以上の全体的説明及び以下の詳細な説明の両方が、あくまでも典型かつ説明のためのものにすぎず、特許請求の範囲に記載されるとおりの本発明を限定するものではないことを、理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明のこれらの特徴、態様、及び利点、並びに他の特徴、態様、及び利点が、以下の説明並びに下記に簡単に説明される図面に示されている添付の典型的な実施形態から、明らかになるであろう。
【図1】典型的な実施形態による車両及び乗員検出システムの概略図である。
【図2】典型的な実施形態による圧力検出システムの概略図である。
【図3】別の典型的な実施形態による圧力検出システムの概略図である。
【図4】典型的な実施形態によるセンサシートの上面図である。
【図5】典型的な実施形態によるセンサの断面図である。
【図6】典型的な実施形態によるセンサの理論的な抵抗特性のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
種々の典型的な実施形態によれば、乗員分類/位置検出システムが、脱荷重を把握又は特定することができる。システムが、現行の統計的な予測アルゴリズムへの依存を取り除き、乗員の真の重量のすべて又は大部分を捕捉することによって、乗員の重量をより正確に測定する。感圧材料を車両の複数の位置に配置して利用することによって、人間の重量をより正確に捕らえることができるとともに、座席における人間の位置を特定することができる。人間の重量及び位置を、運転者及び/又は乗客について特定することができる。そのような特定を、衝突安全の方策を決定するための車両におけるパラメータとして使用することができる。
【0013】
図1を参照すると、典型的な実施形態に従い、車両10が、車両10の座席14の乗員12とともに示されている。車両は、乗員12の重量及び位置を割り出すための乗員分類システムを備えている。乗員分類システムは、座席本体18に位置する感圧材料16と、背もたれ22に位置する感圧材料20と、ヘッドレスト26に位置する感圧材料24と、車両の床30に位置する感圧材料28とを含んでいる。他の典型的な実施形態においては、乗員分類システムが、アームレスト、センターコンソール、フロアマット、座席14上に置かれるマット、又は乗員が接触する可能性がある車両の他の領域に位置する感圧材料をさらに含んでもよい。感圧材料の各部分が、圧力検出ゾーンを構成することができる。感圧材料の各々の部分に加わる圧力の大きさにもとづいて、コントローラ32が、車両の乗員の重量及び位置を割り出すことができる。
【0014】
さらに図2を参照すると、乗員分類システム50が、典型的な実施形態によれば、物理的な圧力にもとづいてコントローラ32へと既知の電気的な応答をもたらす1つ以上の圧力検出ゾーンを含んでいる。圧力検出ゾーンを、車両の乗客及び運転者の両方のために組み込むことができる。一般的な座席本体ゾーン52及び/又は背もたれゾーン54の外側に、車両10の至るところに位置する他のゾーンが存在できる。圧力検出ゾーンとして、これらに限られるわけではないが、乗員の足に位置して脚の脱荷重を検出するゾーン56、センターコンソールに位置して腕及び頭部の脱荷重及び位置を検出するゾーン58、ドアのアームレストに位置して腕及び頭部の脱荷重及び位置を検出するゾーン60、並びにヘッドレストに位置して頭部の位置を割り出すゾーン62が挙げられる。
【0015】
各々のゾーンを、乗員の位置をより正確に把握するために、1つ以上の部分ゾーンへとさらに分割することができる。図示するように、床ゾーン56、座席本体ゾーン52、背もたれゾーン54、及びヘッドレストゾーン62の各々を、位置をより良好に検出するために9個の部分ゾーンへと分割することができる一方で、センターコンソールゾーン58を、乗客及び運転者のそれぞれのための2つの部分ゾーンへと分割することができる。他の典型的な実施形態によれば、各々のゾーンを、図示されている部分ゾーンの数よりも多数又は少数に分割することができる。
【0016】
車両10のコントローラ32が、運転席及び運転席の周囲に位置する検出ゾーンからの入力を使用し、運転者が眠っていないかどうか、医学的な緊急事態にないかどうか、安全でない座り方でないかどうか、などを判断することができる。コントローラ32は、助手席及び助手席の周囲に位置する検出ゾーンからの入力を使用し、乗客が安全でない座り方をしていないかどうか、エアバッグを展開してもよい充分な体重であるかどうか、などを判断する。コントローラ32は、入力を使用して運転者及び/又は乗客のサイズ/体重を割り出し、衝突の事象の場合に安全装置(例えば、運転席用エアバッグ、助手席用エアバッグ、サイドエアバッグ、シートベルト、など)を乗員に合わせて調整することができる。
【0017】
いくつかの典型的な実施形態においては、コントローラ32が、乗員の体重をより正確に割り出すために、運転席及び/又は助手席並びに運転席及び/又は助手席の周囲に位置する検出ゾーンからの入力を使用することができる。例えば、乗客又は運転者のための各々のゾーンにおいて検出される重量を、コントローラ32が、乗員のより正確な重量又はサイズを計算するために、足し合わせることができる。
【0018】
他の典型的な実施形態においては、コントローラ32が、乗員の体重が正しく測定されているかどうかを判断し、或いは脱荷重が生じていないかどうかを判断するために、運転席及び/又は助手席並びに運転席及び/又は助手席の周囲に位置する検出ゾーンからの入力を使用することができる。例えば、体重が、座席本体ゾーン又は背もたれゾーンの代わりに、アームレスト、センターコンソール、ヘッドレスト、及び/又は床の各ゾーンへと加わっていないかどうかが判断される。コントローラ32は、脱荷重が生じていると判断される場合に、アームレスト、センターコンソール、ヘッドレスト、及び/又は床の各ゾーンに加わる圧力にもとづいて、体重を調節することができる。その代わりに、或いはこれに加えて、コントローラ32は、脱荷重が生じていると判断される場合に、座席本体ゾーン又は背もたれゾーンに加わる圧力の大きさ及び位置にもとづいて、体重を調節することができる。
【0019】
いくつかの典型的な実施形態によれば、この乗員検出システムを、従来からのシステムの測定を改善するために、従来からの乗員検出システムと並列に使用することができる。例えば、乗員検出システムを、表面にもとづく(例えば、A表面の)従来からのシステム又は構造にもとづく(例えば、フレームの)従来からのシステムと一緒に使用することができる。
【0020】
他の典型的な実施形態によれば、乗員検出システムを、能動及び/又は受動拘束システムを駆動するために使用することができる。乗員検出システムによって検出される圧力を、衝突の事象が生じている旨又は生じようとしている旨を、コントローラ32によって判断するために使用することができる。能動システムにおいては、乗員検出システムによって検出される圧力を、シートベルトプリテンショナを作動させるか否かを判断するために、コントローラ32によって使用することができる。受動システムにおいては、乗員検出システムによって検出される圧力を、エアバッグを展開するためにコントローラ32によって使用することができる。
【0021】
感圧材料が座席本体に使用され、シートベルト固定点よりも下方に位置する種々の典型的な実施形態においては、ベルト圧力センサを不要にすることができる。感圧材料が座席本体においてシートベルト固定点よりも上方に位置する他の典型的な実施形態においては、ベルト引き張りシステムを、記録された乗員の体重に対するベルトの張力の影響を打ち消すために使用することができる。
【0022】
図3を参照すると、乗員検出システム100が、典型的な実施形態によれば、物理的な圧力にもとづいてコントローラ32へと既知の電気的な応答をもたらす1つ以上の圧力検出ゾーンを含んでいる。圧力検出ゾーンを、車両の後部座席又は助手席のために組み込むことができる。一般的な座席本体ゾーン102及び/又は背もたれゾーン104の外側に、車両10の至るところに位置する他のゾーンが存在できる。圧力検出ゾーンとして、これらに限られるわけではないが、乗員の足に位置して脚の存在を検出するゾーン106、センターコンソールに位置して腕の存在を検出するゾーン108、ドアのアームレストに位置して腕の存在を検出するゾーン110、並びにヘッドレストに位置して頭部の存在を判断するゾーン112が挙げられる。
【0023】
図示のゾーンのうちの1つ以上が、乗員の位置又は分類よりもむしろ乗員の存在を検出するように構成された図2のゾーンよりも簡単な圧力検出シート(例えば、センサを1つだけ有しており、リード線を2本だけ有している、など)を有することができる。例えば、車両の後部座席が、座席位置に乗員が存在するか否かを検出するために、1つ以上のゾーンに感圧材料を有しているセンサを備えることができる。1つの典型的な実施形態においては、座席の圧力センサのいずれか1つが作動した場合に、コントローラ(例えば、コントローラ32)が、乗員の存在を検出できる。他の典型的な実施形態においては、乗員の検出が、シートの所定の数の圧力センサの作動にもとづくことができる。そのような情報を、コントローラが、乗客がシートベルトを装着しているか否かを運転者に警報するために、シートベルトセンサと組み合わせて使用することができる。警報が、乗員が検出されないシート位置については、もたらされない。いくつかの典型的な実施形態においては、運転者が、センサを作動させうるペット及び他の機材が関係する状況において通報を無視できるよう、警報を無効にすることが可能であってよい。
【0024】
図2及び3を参照すると、コントローラが、力を検出している検出素子の数だけでなく、各々の素子が検出している力の大きさも合計することを含むアルゴリズムを使用して、センサから値を読み取ることができる。コントローラは、力を検出した各々の検出素子の正確な位置を含むアルゴリズムを使用して、センサから値を読み取ることができる。より単純な乗員検出システムにおいては、センサの配置が、分類システムのセンサ配置の簡略化版であってよい。コントローラは、検出素子のいずれか又はただ1つの検出素子からの読み取りを検出することができる。
【0025】
他の典型的な実施形態においては、コントローラが、力の値を出力電圧又は電流の比例変化へと変換するために標準的なゼロ点及び感度値を使用して、座席の構造の内部かつシートベルト固定点よりも下方に位置するセンサから値を読み取ることができる。座席の構造の内部かつシートベルト固定点よりも上方に位置するセンサは、ベルト引き張りシステムの追加を必要とするかもしれない。座席の構造に位置するセンサを使用して座席へと加わる重量の総量を把握するために、圧縮及び引張の両方の力を測定することができる。乗員の位置ゆえに、座席の後部に圧縮が生じ、座席の前部に引っ張りが生じる状況が存在する。力を合計することで、座席に加わる真の重量のより正確な測定がもたらされる。両方の方向の力を測定できる能力は、センサの構成を大幅に複雑にする可能性がある。1つの典型的な実施形態においては、直接的な力の経路に位置するただ1つの検出素子に、あらかじめ荷重を加えておくことができる。すなわち、座席が空であるときに、センサに力が加わっている。圧縮方向の動きが、追加の力として検出され、引っ張り方向の動きは、あらかじめの荷重の減少として検出される。他のさまざまな典型的な実施形態において、表面に基づくセンサと座席又は車両の構造の内部に位置するセンサとの任意の組み合わせを、使用できることに注意すべきである。
【0026】
図4及び5を参照すると、センサシート100(例えば、図2及び3に示したゾーンのいずれかに配置される)が、通常は、1つ以上のセンサ110を含んでいる。センサ110は、センサ110へと電気信号を送信/センサ110から電気信号を受信するように構成されたコントローラ又は測定装置(例えば、コントローラ32)へと、入力及び出力導体111、112によって電気的に接続されている。
【0027】
図6に示されるように、センサ110は、通常は、担体材料のシート113、114と、導体111、112と、電極115、116と、感圧材料117とを、おおむね対称的な層状の関係(例えば、担体シート、導体、及び電極が、感圧材料の各側に配置されている)に構成して備えている。さらに詳しく後述されるとおり、担体シート113、114、導体111、112、電極115、116、及び感圧材料117を、センサ110の導電性又は電気特性が動的な衝撃の事象の際に予想される力に応じて変化するように、選択的に構成することができる。
【0028】
第1及び第2の担体シート113、114を、例えば、それぞれのゾーンの表面のカバー材料又は基材となるように構成することができる。各々の担体シート113、114を、半剛体のシート材料から製作することができる。例えば、各々の担体シート113、114は、約50ミクロンの厚さを有するポリエチレンテレフタレート(PET)シートであってよい。他の典型的な実施形態によれば、担体シート113、114を、他の材料(例えば、ポリカーボネート、ポリアミド、他の押し出しプラスチック材料、革、他のプラスチック、布地、木材、1枚のシートにおける複数の材料、各シートについて異なる材料、など)から製作することができ、或いは担体シート113、114が、他の厚さ(例えば、約25ミクロン〜250ミクロンの間、1枚のシートにおいて変化する厚さ、別々のシートの別々の厚さ、など)を有することができる。
【0029】
導体111、112の各々が、センサ110のうちの1つとコントローラ又は測定装置との間で電気信号を導くように構成される。導体は、銀(Ag)などの導電性材料から製作される。導体111、112を、二次元又は三次元のインクジェット又はスクリーン印刷などの印刷プロセス、蒸着、或いはエッチング、写真製版、又は切削などの従来からのプリント回路技術によって、担体シート113、114へと組み合わせ、成膜し、或いは適用することができる。入力導体111を、例えば、第1の担体シート113の内表面に組み合わせることができ、出力導体112を、例えば、第2の担体シート114の内表面に組み合わせることができる。導体111、112は、約25ミクロン未満の仕上がり厚さを有する。他の典型的な実施形態によれば、導体111、112を、他の材料(例えば、銅(Cu)又は他の導電性材料、これらの組み合わせ、など)から製作することができ、互いに異なる材料から製作することができ、異なる仕上がり厚さ(例えば、約25ミクロン超又は約25ミクロン未満、各々の導体において変化する厚さ、異なる厚さ、又は異なる導体、など)を有することができ、或いは他の方法によって設けることができる。
【0030】
電極115、116の各々は、感圧材料117への電気信号又は感圧材料117からの電気信号を効率的に導くように構成される。電極115、116は、炭素(C)などの導電性材料から製作される。電極115、116を、二次元又は三次元のインクジェット又はスクリーン印刷などの印刷プロセス、蒸着、或いはエッチング、写真製版、又は切削などの従来からのプリント回路技術によって、導体111、112及び/又は担体シート113、114へとそれぞれ組み合わせ、成膜し、或いは適用することができる。電極115、116は、約25ミクロン未満の仕上がり厚さを有することができる。他の典型的な実施形態によれば、電極115、116を、他の材料から製作することができ、互いに異なる材料から製作することができ、異なる仕上がり厚さ(例えば、約25ミクロン以上、各々の電極において変化する厚さ、他の電極とは異なる厚さ、など)を有することができ、別の方法によって設けることができ、或いは別の順序(例えば、電極のうちの1つを感圧材料117へと適用することができる)で設けることができる。
【0031】
感圧材料117は、感圧材料117に作用する力又は圧力に応答して抵抗又は導電性/電気特性が変化するように構成されている。より詳しくは、感圧材料117は、力又は圧力が存在しないときには実質的に絶縁体として振る舞い、より大きな力又は圧力が存在するにつれて抵抗が減少する。小さな力と大きな力との間で、感圧材料117は、予測可能な様相で力又は圧力に応答し、力の増加につれて抵抗を減少させる。これらの特性が、本明細書に記載のようなセンサ110の抵抗−力の特性を示している図6のグラフ600に示されている。図6は、さらに詳しく後述される。
【0032】
感圧材料117は、例えば、カーボンナノチューブ導電ポリマーであってよい。感圧材料117は、二次元又は三次元のインクジェット又はスクリーン印刷などの印刷プロセス、蒸着、或いはエッチング、写真製版、又は切削などの従来からのプリント回路技術によって、電極115、116の一方へと適用される。グラフェンの粒子サイズなど、より小さな粒子サイズを有する感圧材料117が使用されるにつれ、感圧材料117を、蒸着などの従来からのプリント回路技術によって適用することも可能である。
【0033】
他の典型的な実施形態によれば、感圧材料が、ファウラー−ノルドハイム(Fowler−Nordheim)トンネリングを利用する抵抗変化性の感圧材料である量子トンネル性複合材料(QTC)である。QTCは、英国Brompton−on−SwaleのPeratech社(www.peratech.com)によって商業的に製造されている材料である。センサ110におけるQTC材料は、圧力又は力が加わっていないときは、導電粒子がおそらくは導通するには離れすぎているため、絶縁体として機能することができるが、圧力(又は、力)が加えられるにつれて、導電粒子が他の導電粒子に近付き、電子が絶縁体層を通過できるようになって、センサ110の抵抗が変化する。このようにして、センサ110におけるQTCの抵抗は、センサ110に作用する力又は圧力の関数である。
【0034】
担体シート113、114は、担体シート113、114へと導体111、112、電極115、116、及び感圧材料117を配置した後で、センサシート100を形成すべく一体に組み合わせられる。担体シート113を、例えば導体111、112、電極115、116、及び感圧材料117が適切に整列するように積層することができる。積層プロセスは、例えば、熱及び圧力を使用する従来からのプロセスであってよい。接着剤を使用してもよい。センサシート100及び/又はセンサ110の全体としての厚さは、約120ミクロンであってよい。他の典型的な実施形態によれば、担体シート113、114を、例えば、他のやり方(例えば、熱又は圧力を用いない積層)で一体に組み合わせることができる。さらに、センサシート100及び/又はセンサ110が、別の全体としての厚さ(例えば、約70ミクロン以上)を有してもよい。
【0035】
次に、図6を参照すると、センサ110の抵抗−力の特性のグラフ600が示されている。センサ110の抵抗がY軸に示されており、センサ110に作用する力がX軸に示されている。比較的小さな力(例えば、約1Nを下回る点610)において、センサ110は、比較的高い抵抗性(例えば、約300キロオーム以上)を呈し、実質的に絶縁体として振る舞う。比較的大きな力(例えば、約3Nを上回る点620)においては、センサ110は、比較的低い抵抗性(例えば、約1キロオーム以下)を呈し、実質的に導体として振る舞う。約1Nと3Nとの間においては、センサ110は、力が大きくなるにつれて予測可能な様相で減少する約3キロオームと1キロオームとの間の中間的な抵抗の水準を呈する。
【0036】
センサ110の導電性又は電気特性(すなわち、抵抗−力の特性曲線600)を、材料をさまざまに選択し、さらには担体シート113、114、導体111、112、電極115、116、及び感圧材料117をさまざまな構成にて設けることによって、設定することが可能である。例えば、上述のように、センサ110の導電層(すなわち、導体111、112、電極115、116、及び感圧材料117)を、センサ110の導電性又は電気特性を変更するために、さまざまな材料及び/又はさまざまな厚さなど、さまざまなやり方にて構成することができる。センサ110の特性を調節するために、材料の種類を使用することも可能である。例えば、導電性又は電気特性を左右するために、特定のQTC材料(例えば、ポリマー、導体ブレンド、など)を選択することができる。
【0037】
担体シート113、114も、センサ110の導電性又は電気特性を変更するために、さまざまなやり方で構成することができる。例えば、担体シート113、114の相対的な位置を、調節することが可能である。図5を参照すると、担体シート113、114を、センサ110の近傍の領域において離間させ、感圧材料117と電極115との間にすき間(図示のとおり)を設けることができる。すき間を設けることで、感圧材料に力が作用する前に、担体シート113、114に該当の距離の変形を生じさせるために充分な力を作用させなければならない。したがって、図6のグラフを参照すると、センサ110の抵抗−力の特性を、担体シート113、114のばね定数に対応する特定のサイズ(例えば、35ミクロン)のすき間を設けることによって、所望の力のオフセット(すなわち、数ニュートン)だけ右側へとずらすことができる。すき間を、例えば、担体シート113、114を結合させるために使用される接着剤によってもたらすことができる。別の典型的な実施形態によれば、センサ110に、すき間と反対の効果を有するように、例えば物理的な荷重を外部からもたらすなど、あらかじめ荷重を加え、センサ110の抵抗−力の特性を実質的に左方へとずらすことができる。
【0038】
また、センサ110の導電性又は電気特性を、担体シート113、114に使用される材料によって変更することもできる。より剛的な第1の担体シート又は外側の担体シート113を、より厚い材料又は別の材料を使用するなどによって、もたらすことができる。より剛的な外側シート113を使用することで、より剛的でない材料と比べて、同様の距離の変形を生じさせるために外側の担体シート113により大きな力を作用させなければならない。結果として、図6のグラフを参照すると、センサ110の抵抗−力の特性が、右方へと(ずらされるのではなくて)延長又は拡張され、より大きな荷重において、力の増加が抵抗のより大きな変化につながり、コントローラ又は測定装置によるより正確な検出が可能になる。また、内側のシート114を、安定な基盤をもたらすように構成することができ、内側のシート114は、外側のシート113よりも低い、同じ、又は高い剛性を有することができる。
【0039】
センサ110を圧縮荷重に応答するものとして説明したが、センサ110は、担体シート113、114及び感圧材料117の変形を生じさせる曲げ荷重にも応答する。したがって、簡単かつ/又は確実な較正のために、圧力センサ110は、圧縮荷重の測定が所望される場合には、おおむね平坦な構成に維持される。他の典型的な実施形態によれば、センサ110を、ねじり荷重の測定が所望される用途において利用することができる。
【0040】
各要素について、特定の形状が図面に記載されているが、各要素は、当該要素によって実行されるべき機能を促進する他の任意の形状であってよい。例えば、感圧材料が、矩形であるとして示されているが、他の典型的な実施形態においては、その構造が、他の形状の感圧材料を定めることができる。さらに、乗員分類システムについて、特定の形態が図1〜3に示されているが、他の典型的な実施形態によれば、システムが、他の形態であってよく、或いは感圧材料を他の位置に備えることができる。
【0041】
本明細書の開示の目的において、用語「組み合わせ」は、2つの構成要素(電気的、機械的、又は磁気的な)を互いに直接的又は間接的に結び付けることを意味する。そのような結び付けは、静的な性質であっても、実質的に可動であってもよい。そのような結び付けを、互いにただ1つの単一の物体として一体的に定められる2つの(電気的又は機械的な)構成要素及び任意の追加の中間部材によって達成することができ、もしくは互いに取り付けられる2つの構成要素或いは2つの構成要素及び任意の追加の部材によって達成することができる。そのような結び付けは、恒久的な性質であってよく、或いは取り外し可能又は解放可能な性質であってよい。
【0042】
本明細書において使用されるとき、用語「ほぼ」、「約」、「実質的に」、及び同様の用語は、本発明の主題に係る技術の当業者による共有かつ一般的に認められた使用に調和した幅広い意味を有することが意図されている。本明細書を検討する当業者は、これらの用語が、説明及び請求される特定の特徴について、それらの特徴の範囲を提示される数値範囲に厳格に限定することなく説明することを可能にする意図であることを、理解すべきである。したがって、これらの用語は、説明及び請求される主題の非実質的又は重要でない修正又は変更が、添付の特許請求の範囲に記載されるとおりの本発明の技術的範囲に包含されると考えられる旨を示していると、解釈されなければならない。
【0043】
用語「典型的な」が、本明細書において種々の実施形態を説明するために使用されるとき、そのような実施形態が考えられる例、代表例、及び/又は考えられる実施形態の例示であることを示す意図である(そのような用語が、必ずしもそのような実施形態が非凡又は最高の例であると示唆しているわけではない)ことに、注意すべきである。
【0044】
用語「組み合わせ」及び「接続」などは、本明細書において使用されるとき、2つの部材を互いに直接的又は間接的に結び付けることを意味する。そのような結び付けは、静的(例えば、恒久的)であっても、可動(例えば、着脱可能又は解放可能)であってもよい。そのような結び付けを、ただ1つの単一の物体として一体的に形成される2つの部材或いは2つの部材及び任意の追加の中間部材によって達成することができ、もしくは互いに取り付けられる2つの部材或いは2つの部材及び任意の追加の中間部材によって達成することができる。
【0045】
本明細書において、要素の位置についての言及(例えば、「上」、「下」、「上方」、「下方」、など)は、単に図面における種々の要素の向きを説明して使用されているにすぎない。種々の要素の向きが、他の典型的な実施形態において異なってよく、そのような変種が、本明細書の開示に包含されるものであることに、注意すべきである。
【0046】
種々の典型的な実施形態において示したとおりの乗員検出システムの構成及び配置が、あくまでも例示にすぎないことに注意することが重要である。本明細書においては、いくつかの実施形態だけを詳しく説明したが、本明細書の開示を検討した当業者であれば、本明細書に記載の主題の新規な教示及び利点から実質的に外れることなく多数の変更(例えば、種々の構成要素のサイズ、寸法、構造、形状、及び割合、パラメータの値、取り付けの構成、材料の使用、色、向き、などの変更)が可能であることを、容易に理解できるであろう。例えば、一体的に形成されるものとして示されている要素を、複数の部分又は要素で構成することができ、要素の位置を逆にし、或いは他のやり方で変更でき、個別の要素の性質又は数或いは位置を、変更又は変化させることができる。任意のプロセス又は方法の各段階の順序又は並びを、別の実施形態によれば変更でき、或いは並べ替えることができる。種々の典型的な実施形態の設計、動作条件、及び構成について、他の置き換え、修正、変更、及び省略も、本発明の実施形態の技術的範囲から離れることなく行うことが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用の乗員検出システムであって、
感圧材料を、車両の少なくとも1つの座席又は該座席の周囲の1つ以上の圧力検出ゾーンに設置し、
各ゾーンの感圧材料が、圧力が加えられたときにコントローラへと電気信号を供給するように構成され、
前記コントローラが、前記電気信号にもとづいて乗員の存在、位置、及び分類のうちの少なくとも1つを判断し、
前記感圧材料が、該材料へと加わる圧力の大きさ又は種類にもとづく可変の抵抗及び可変の容量の少なくとも一方を有し、
該可変の抵抗及び可変の容量の少なくとも一方が、前記電気信号の特性を変化させる、システム。
【請求項2】
前記感圧材料が、量子トンネル性複合材料、カーボンナノチューブ導電ポリマー、及びグラフェンのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記1つ以上の圧力検出ゾーンが、座席本体、背もたれ、ヘッドレスト、ドアのアームレスト、センターコンソール又は中央のアームレスト、並びに床のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記コントローラが、シートベルトの使用の情報に関して運転者に情報を提供するために、車両の表示装置又は表示器へと電気信号をもたらす、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記コントローラが、各々の圧力検出ゾーンにおける圧力の大きさ及び重量の脱荷重を含む圧力の位置にもとづいて、乗員の重量を割り出す、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記コントローラが、運転席用エアバッグの使用、助手席用エアバッグの使用、サイドエアバッグの使用、及びシートベルトの張力のうちの少なくとも1つを、割り出された乗員の存在、位置、及び分類のうちの少なくとも1つにもとづいて制御する、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
各々の圧力検出ゾーンが、前記感圧材料を有する複数の圧力センサを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記電気信号を受け取って該信号を前記コントローラへともたらすように構成された1対の電極をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
車両用の乗員分類システムであって、
車両の少なくとも1つの座席又は該座席の周囲の1つ以上の圧力検出ゾーンに設置されたセンサのアレイを備え、
各センサが、圧力が加えられたときにコントローラへと電気信号をもたらすように構成された感圧材料を含み、
前記コントローラが、前記電気信号にもとづいて乗員の位置及び分類のうちの少なくとも1つを判断し、
前記感圧材料は、該材料へと加わる圧力の大きさ又は種類にもとづく可変の抵抗及び可変の容量の少なくとも一方を有し、
該可変の抵抗及び可変の容量の少なくとも一方が、前記電気信号の特性を変化させる、システム。
【請求項10】
前記感圧材料が、量子トンネル性複合材料、カーボンナノチューブ導電ポリマー、及びグラフェンのうちの少なくとも1つを含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記1つ以上の圧力検出ゾーンが、座席本体、背もたれ、ヘッドレスト、ドアのアームレスト、センターコンソール又は中央のアームレスト、並びに床のうちの少なくとも1つを含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
前記コントローラが、各々の圧力検出ゾーンにおける圧力の大きさ及び重量の脱荷重を含む圧力の位置にもとづいて、乗員の重量を割り出す、請求項9に記載のシステム。
【請求項13】
前記コントローラが、運転席用エアバッグの使用、助手席用エアバッグの使用、サイドエアバッグの使用、及びシートベルトの張力のうちの少なくとも1つを、割り出された乗員の位置及び分類のうちの少なくとも1つにもとづいて制御する、請求項9に記載のシステム。
【請求項14】
前記電気信号を受け取って該信号を前記コントローラへともたらすように構成された1対の電極をさらに備える、請求項9に記載のシステム。
【請求項15】
車両用の乗員検出システムであって、
車両の少なくとも1つの座席又は該座席の周囲の1つ以上の圧力検出ゾーンに設置されたセンサを備え、
該センサが、圧力が加えられたときにコントローラへと電気信号をもたらすように構成された感圧材料を含み、
前記コントローラが、前記電気信号にもとづいて乗員の存在を判断し、
前記感圧材料は、該材料へと加わる圧力の大きさ又は種類にもとづく可変の抵抗及び可変の容量の少なくとも一方を有し、
該可変の抵抗及び可変の容量の少なくとも一方が、前記電気信号の特性を変化させる、システム。
【請求項16】
前記感圧材料が、量子トンネル性複合材料、カーボンナノチューブ導電ポリマー、及びグラフェンのうちの少なくとも1つを含む、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記1つ以上の圧力検出ゾーンが、座席本体、背もたれ、ヘッドレスト、ドアのアームレスト、センターコンソール又は中央のアームレスト、並びに床のうちの少なくとも1つを含む、請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
前記コントローラが、シートベルトの使用の情報に関して運転者に情報を提供するために、車両の表示装置又は表示器へと電気信号をもたらす、請求項15に記載のシステム。
【請求項19】
前記コントローラが、運転席用エアバッグの使用、助手席用エアバッグの使用、サイドエアバッグの使用、及びシートベルトの張力のうちの少なくとも1つを、割り出された乗員の存在にもとづいて制御する、請求項15に記載のシステム。
【請求項20】
前記電気信号を受け取って該信号を前記コントローラへともたらすように構成された1対の電極をさらに備える、請求項15に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−213342(P2011−213342A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−74861(P2011−74861)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(506166778)ティーケー ホールディングス,インコーポレーテッド (34)
【Fターム(参考)】