説明

乗員検知センサ

【課題】電気的接続点にかかるセンサ本体の延在方向に関する圧縮力または引張力を低減させることができる乗員検知センサを提供することを目的とする。
【解決手段】乗員検知センサ1は、乗員の荷重を検知するセンサ本体部2の端子部分であるセンサ端子部23と、センサ端子部の所定一方方向に配置され、センサ端子部と電気的に接続される電線端子4とを備える。この乗員検知センサ1は、両者の電気的接続点6より所定一方方向の反対方向側でセンサ端子部23と結合されるセンサ端子結合部52と、電気的接続点6より所定方向側で電線端子4と結合される電線端子結合部51aとを有する支持部材5を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の座席に搭載される乗員検知センサにおいて、センサ本体部の端子部と信号電線の端子との接続部分に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の座席に搭載される乗員検知センサは、扁平に延在しているフィルム状センサと信号電線とを備え、フィルム状センサの端子部と信号電線の端子とを電気的に接続した電気的接続点を有する装置である。フィルム状センサの端子部と、信号電線の端子と、両端子の電気的接続点を含む本体接続部は、一般的に、ホルダーまたはハウジング等で被覆することにより被水等から保護されている。例えば、電気的接続点は、フィルム状センサの端子部と信号電線の端子とをかしめ等で圧着してあり、本体接続部は、ハウジング等で上下から挟み込む構造になっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、乗員検知センサは、例えば、自動車の座席において、表皮とクッションとの間に配置される。そして、座席に荷重が加わると、フィルム状センサが当該荷重を検知し、信号電線によって座席外部のECU(電子制御ユニット)等に検知信号が伝達される。このとき、座席が受ける荷重により、また乗員による座席上での行動により表皮及びクッションは座席下方に押圧される。これにより、フィルム状センサは撓み、本体接続部には引張力または圧縮力がかかることになる。
【特許文献1】特開2000−340058号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そして、従来の本体接続部の構造では、本体接続部に引張力または圧縮力がかかるとき、電気的接続点がフィルム状センサの延在方向(以下、「第一方向」とも称する)に関する引張力または圧縮力を受けてしまうことになる。また、従来の構造では、電気的接続点において、第一方向に対する垂直方向へのズレに対してはハウジング等により強い保護が為されていたが、第一方向へのズレに対してはハウジング等によっては十分に保護されていない。そのため、電気的接続点にかかる第一方向に関する引張力または圧縮力により、電気的接続点のかしめ等が外れてしまう問題があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、電気的接続点にかかるセンサ本体の延在方向に関する引張力または圧縮力を低減させることができる乗員検知センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の乗員検知センサは、自動車内の座席に印加される荷重を検知することで乗員の検知を行う乗員検知センサであって、センサ本体部と、電線端子と、支持部材とを備えることを特徴とする。ここで、センサ本体部は、座席内に配置されて前記荷重の有無を検知するセンサ回路部と、一端がセンサ回路部の所定位置で結合され少なくとも他端側が所定一方方向に延びるように形成されるセンサ中継部と、センサ中継部の他端に電気的に接続されるセンサ端子部と、を有する。電線端子は、信号電線の端部に固定され、センサ端子部の所定一方方向に配置され、センサ端子部と電気的に接続される。支持部材は、センサ端子部と電線端子との電気的接続点より所定一方方向の反対方向側でセンサ端子部と結合されるセンサ端子結合部と、電気的接続点より所定一方方向側で電線端子と結合される電線端子結合部を有する。
【0007】
上述したように、センサ本体部は、センサ回路部、センサ中継部及びセンサ端子部を備えている。そして、センサ回路部の所定位置には、センサ中継部の一端が一体的に結合されている。なお、センサ回路部とセンサ中継部は一体成形されているものを含む。センサ中継部の少なくとも他端側においては、所定一方方向に延びるように形成され、その端部から所定一方方向にセンサ端子部が形成されている。センサ回路部の所定位置とセンサ中継部の一端、及びセンサ中継部の他端とセンサ端子部は電気的に接続されている。
【0008】
ここで、信号電線の端部に固定された電線端子は、センサ端子部の所定一方方向に配置され、センサ端子部と電気的に接続されている。センサ端子部と電線端子の電気的な接続は、少なくとも接触していればよく、かしめ等で結合していてもよい。また、センサ端子部の端面と電線端子の端面とが突き合わせによる接触でもよく、センサ端子部と電線端子は一部重なり合った状態の接触でもよい。
【0009】
そして、支持部材が、センサ端子部と電線端子との電気的接続点を所定方向(所定一方方向に関する方向)に跨ぐように設けられている。その支持部材は、電気的接続点より所定一方方向の反対方向側でセンサ端子部と結合され、且つ電気的接続点より所定一方方向側で電線端子と結合されている。つまり、センサ端子結合部及び電線端子結合部は、所定一方方向において、センサ端子結合部、電気的接続点、電線端子結合部の順に配置している。
【0010】
ここで、座席内に配置されたセンサ回路部に荷重が加えられた場合、センサ回路部及びセンサ中継部は変形する。この変形により、センサ中継部の他端、センサ端子部、電線端子、及び、信号電線の端部に所定一方方向に関する引張力または圧縮力(以下、「引張力等」と称する)が発生する。従来、センサ端子部と電線端子との電気的接続点には、センサ中継部の他端及び信号電線の端部に発生する引張力等と同等の力が作用していた。
【0011】
これに対して、本発明では、支持部材がその電気的接続点を所定方向(所定一方方向に関する方向)に跨ぐように配置され、電気的接続点から所定一方方向反対側にセンサ端子結合部、電気的接続点から所定一方方向側に電線端子結合部が設けられている。このため、センサ端子結合部から電線端子結合部までの間では、所定一方方向に関する引張力等に対し、センサ端子部と電気的接続点と電線端子とからなる本体接続部分と、支持部材とで受けることができる。すなわち、センサ端子部の他端及び信号電線の端部に発生する所定一方方向に関する引張力等は、本体接続部分と支持部材とに分散される。つまり、電気的接続点がセンサ端子結合部と電線端子結合部の間に位置するため、支持部材による力の分散により、電気的接続点には、センサ中継部の他端及び信号電線の端部に発生する引張力等よりも小さな力が作用することになる。従って、電気的接続点にかかる所定一方方向に関する力が、従来に比べて低減される。
【0012】
このように、本発明によれば、座席にかかる荷重により電気的接続点にかかる所定一方方向に関する力を低減させ、電気的接続点の分離を防ぐことができる。さらに、電気的接続点の固定が安定するため、乗員検知センサの故障原因のひとつである電気的接続点の断線及び接触不良等も防ぐことができる。
【0013】
ここで、支持部材の所定一方方向に関する引張強度は、センサ端子部及び電線端子の所定一方方向に関する引張強度よりも大きいことが好ましい。支持部材の所定一方方向に関する引張強度が大きいことにより、電気的接続点にかかる所定一方方向に関する力をさらに低減できる。
【0014】
ところで、所定一方方向の垂直方向において、支持部材と、センサ端子部及び電線端子との離間距離が大きい場合には、支持部材のセンサ端子結合部及び電線端子結合部の所定一方方向の垂直長さ(側面における高さ)が大きくなる。この場合、所定一方方向に関する引張力等が作用すると、センサ端子結合部及び電線端子結合部が曲げ変形する。この曲げ変形の影響により、支持部材が受けることができる引張力等が小さくなるおそれがある。言い換えると、電気的接続点にかかる力の低減幅が小さくなる。
【0015】
そこで、支持部材は、センサ端子結合部と電線端子結合部との間において、センサ端子部及び電線端子の少なくとも一方と重なり合うように接していることが好ましい。これにより、支持部材のセンサ端子結合部及び電線端子結合部の所定一方方向の垂直長さ(側面における高さ)が小さくなることにより、所定一方方向に関する引張力に対して、センサ端子結合部及び電線端子結合部の曲げ変形の影響が小さくなる。したがって、より確実に所定一方方向に関する力が分散され、電気的接続点にかかる力をさらに低減できる。また、支持部材とセンサ端子部、あるいは支持部材と電線端子との間において、余分な空間を省くことができ、小型化が可能となる。
【0016】
さらに、センサ端子結合部は、センサ端子部と接着していることが好ましい。またさらに、電線端子結合部は、電線端子部と接着していることが好ましい。すなわち、支持部材は、センサ端子結合部のみでセンサ端子部と接着していること、電線端子結合部のみで電線端子と接着していること、あるいは、両結合部で接着していることが好ましい。これにより、接着している結合部の結合力が増し、固定はさらに安定する。つまり、所定一方方向に対する垂直方向のズレに対しても保護が強くなる。なお、センサ端子結合部及び電線端子結合部に関しては、接着の他に、係合、嵌合等でもよい。例えば、孔とピンによる係合、凸部と凹部の嵌合及びかしめ等でもよい。また、接着には、接着剤による接着、溶着及び溶接等を含む。
【0017】
そして、センサ本体部は、座席のクッションとそのクッションの上面を被覆する座面表皮との間、もしくは、座席の上側クッションとその上側クッションの下側に配置される下側クッションとの間に介装されるものに適用できる。
【0018】
すなわち、センサ本体部は、座席の着座位置にあたる座面部の内部にあるクッションとそのクッションの上面を被覆する座面表皮との間に配置されるか、あるいは、座面部内部の上側クッションとその上側クッションの下側に配置される下側クッションとの間に配置される。これにより、座席への着座による荷重がセンサ回路部に伝わりやすく、荷重の有無の検知に誤りが生じにくくなる。これは、支持部材により電気的接続点にかかる力を分散できるため、荷重がより直接的にかかる位置に配置可能となるからである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の乗員検知センサによれば、電気的接続点にかかる所定一方方向に関する引張力等を低減でき、電気的接続点の分離、断線及び接触不良等を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の乗員検知センサの好適な実施形態について図面を参照して説明する。
【0021】
乗員検知センサ1について、図1〜図4を参照して説明する。図1は、乗員検知センサ1を自動車内の座席に配置した状態を示す図である。図2は、乗員検知センサ1の平面図である。また、図3及び図4は、センサ端子部23と電線端子4との接続部位である本体接続部位を示す。特に、図3は本体接続部位の平面図であり、図4は図3の側面図である。
【0022】
乗員検知センサ1は、自動車内の座席に着座した乗員等を検知するセンサである。例えば、乗員検知センサ1は、乗員が着座しているか、それとも、空席であるかを検知する。さらに、乗員検知センサ1は、大人、子供、及び、チャイルドシート等の乗員の種別を判別するために用いる。そして、乗員検知センサ1は、自動車内の座席の座面部7に印加される荷重を検知することで、乗員等の検知を行う。
【0023】
なお、乗員検知センサ1による乗員等の検知情報は、シートベルト警報装置における警報ランプを点灯するか否かの判定の際に用いられる。例えば、乗員が座席に着座していることが検知された場合、その座席でシートベルトが為されていなければ警報ランプを点灯させる。
【0024】
さらに、乗員検知センサによる乗員等の検知は、エアバッグ等の乗員保護装置を起動するか否かの判定にも用いられる。自動車が外部物体に衝突した場合であって、例えば、大人が座席に着座していると判定した場合には、乗員保護装置を起動させる。一方、子供が座席に着座していると判定した場合や空席の場合には、自動車が外部物体に衝突したとしても、乗員保護装置を起動させない。
【0025】
この乗員検知センサ1の概略について、図1を参照して説明する。乗員検知センサ1のセンサ本体部2は、PETフィルムまたはPENフィルムをベースとし、適宜回路が設けられたFPC(フレキシブルプリント配線板)からなる。センサ本体部2は、座面部7の内部に配置される。ここで、座席において主に乗員が着座するところである座面部7は、座面表皮7aと座部クッション7bとを備えている。座面表皮7aは座面部7の上部表面を形成し、座部クッション7bは座面表皮7aの下に配置される。つまり、詳細には、センサ本体部2は、座面部7の座面表皮7aと座部クッション7bとの間にあって、座部クッション7bの形状に沿って配置される。つまり、センサ本体部2は、座席の座面に印加される荷重の有無を検知する。
【0026】
そして、信号電線3は、電線端子4を介してセンサ本体部2に電気的に接続されている。この信号電線3は、シートベルトの装着の有無の判定を行うECU(図示せず)、あるいは乗員保護装置を起動するか否かの判定を行うECU(図示せず)に接続されている。つまり、信号電線3は、センサ本体部2が検知した信号をECUに伝送する。
【0027】
次に、乗員検知センサ1の詳細について、図2〜図4を参照して説明する。なお、以下、特に断らない限り、左右方向とは、図2〜図4の左右方向を意味する。乗員検知センサ1は、センサ本体部2と、信号電線3と、電線端子4と、支持部材5と、ハウジング10とを備えている。
【0028】
センサ本体部2は、センサ回路部21と、センサ中継部22と、センサ端子部23とを有する。
【0029】
センサ回路部21は、図2に示すように、蛸足形状等の周知の形状を採用し、そこにかかる荷重を検知する回路構成を成している。本実施例において、扁平な蛸足状に形成されたセンサ回路部21は、蛸足状の各端部に円形のスイッチと、そのスイッチと電気的に接続した回路とを有している。このスイッチの概略は、例えば、着座方向に一対の導電層を備える。そして、スイッチにかかる荷重により、その一対の導電層が接触し、電気的に接続される。それにより流れる電流を信号として、座面にかかる荷重を検知する(例えば特開2005−306353号公報参照)。
【0030】
センサ中継部22は、扁平な直線形状となっている。そして、センサ中継部22は、センサ回路部21の端部21a(本発明の所定位置に相当する)に一体的に結合されている。そして、センサ中継部22は、端部21aから図2の右側(本発明の所定一方方向に相当する)に延びるように形成されている。つまり、本実施例では、センサ中継部22は、一端から他端まで図2の右側に向け延在した直線形状となっている。ここで、センサ回路部21とセンサ中継部22は、電気的に接続されている。
【0031】
センサ端子部23は、図3及び図4に示すように、扁平形状をなしている。このセンサ端子部23の左右方向中央より左側のうち、図3の上下方向の略中央には、円形の貫通穴である係止穴23aを有している。さらに、センサ端子部23の右側端は、図3に示すように、二股形状でありそれぞれが平行になっている二股状部23bを有している。この二股状部23bは、センサ本体部2の電極端子である。そして、センサ端子部23は、その左端でセンサ中継部22の右端部と一体的に結合されている。つまり、センサ端子部23は、センサ中継部22の右端部から右側に延びるように形成されている。ここで、センサ中継部22とセンサ端子部23は、電気的に接続されている。また、センサ端子部23は、ハウジング10の内部に配置される。
【0032】
信号電線3は、図2に示すように、周知の電線及びワイヤーハーネスを用いる。すなわち、信号電線3は、導体を絶縁体で内包し、曲げ等に対して柔軟性を有している。信号電線3は、一端が後述する電線端子4の電線接部42と結合し、他端がECU(図示せず)と接続している。
【0033】
電線端子4は、二股状部23bの右側に2つそれぞれ設けられている。この電線端子4は、銀等の金属からなる。そして、電線端子4は、端子板状部41と、電線接部42とを備える。
【0034】
端子板状部41は、扁平の細長板状からなる板状本体部41aと、板状本体部41aの図4の左端側の上面に円筒状に突出したかしめ部41bと、板状本体部41aの右端側の下面に円柱状に突出した端子突起部41cとを有している。ここで、かしめ部41bは、端子突起部41cよりも左側に形成されている。そして、板状本体部41aの左側の一部が対応する二股状部23bに重ね合わさるように、端子板状部41が配置されている。さらに、かしめ部41bは、対応する二股状部23bの右端側にそれぞれ図4の上下方向に貫通させ、かしめ等で圧着して二股状部23bに電気的に接続させる。以下、端子板状部41と二股状部23aとの電気的に接続する部位を、電気的接続点6とする。すなわち、電気的接続点6は、かしめ部41bを含む部分である。
【0035】
電線接部42は、直方体形状をなしている。この電線接部42は、長手方向が左右方向を向くように、かしめ部41bより右側で板状本体部41aの図4の上面に一体的に結合されている。この電線接部42は、対応する二股状部23bの右側に配置される。さらに、電線接部42は、信号電線3の左端部と圧着または溶着等で結合されており、信号電線3と電気的に接続している。つまり、信号電線3が電線接部42から右側へ延びるように配置されている。
【0036】
支持部材5は、樹脂等からなり、センサ本体部2及び電線端子4の左右方向の引張強度より大きな引張強度からなる。扁平の板状からなる支持部材本体部51と、支持部材突起部52とを備える。
【0037】
支持部材本体部51は、左右方向中央より右側に2つの係合穴51a(本発明の電線端子結合部に相当する)が形成されている。これら2つの係合穴51aは、断面円形状であって、支持部材本体部51のうち図4の上面側から下面側へ向かう止まり穴である。さらに、2つの係合穴51aは、それぞれの端子突起部41cに係合可能な形状となっている。
【0038】
支持部材突起部52(本発明のセンサ端子結合部に相当する)は、図4に示すように、支持部材本体部51の上面のうち、左右方向中央より左側であって、図3の上下方向の略中央に、図4の上側に向かって円柱状に突出している。この支持部材突起部52は、係止穴23aに係合可能な形状となっている。また、支持部材突起部52は、支持部材本体部51と一体的に結合されている。
【0039】
つまり、支持部材5は、左右方向において、電気的接続点6を跨ぐように配置されている。この跨ぐ方向は、センサ中継部22の右端部の延在方向(本発明の所定一方方向に相当する)及び信号電線3の左端部の延在方向と同じく、図3及び図4の左側から右側に向かう方向である。
【0040】
そして、支持部材突起部52は、係止穴23aに係合されている。また、支持部材本体部51の係合穴51aは、端子突起部41cに係合されている。すなわち、支持部材5は、電気的接続点6よりも左側でセンサ端子部23と結合されており、電気的接続点6よりも右側で電線端子4と結合されている。つまり、図2〜図4において、左側から、支持部材突起部52、電気的接続点6、支持部材本体部51の係合穴51aの順に配置される。このとき、端子板状部41と支持部材本体部51の間に隙間はなく、端子板状部41の下面は、支持部材本体部51に重なり合うように接している。
【0041】
ハウジング10は、センサ端子部23と電線端子4と支持部材5とを被覆するように、樹脂成形等で形成されている。このハウジング10は、透明もしくは半透明からなる。
【0042】
次に、本実施例において、図2〜図4において、電気的接続点6と、センサ中継部22の右端部と信号電線4の左端部に左右方向の引張力または圧縮力がかかる場合に、電気的接続点6に生じる力について説明する。
【0043】
センサ中継部22の少なくとも右端部は右側(本発明の所定一方方向に相当する)に延びるように形成されている。また、信号電線3の左端部は、電線端子4の電線接部42の右側に延びるように結合されている。
【0044】
ここで、センサ中継部22の右端部及び信号電線3の左端部に引張力が生じた場合を考える。つまり、センサ中継部22と信号電線3とが、離間する方向に力を受けた場合である。
【0045】
ここで、支持部材5は、電気的接続点6を左右方向に跨ぐように設置されている。支持部材5は、電気的接続点6よりも左側でセンサ端子部23と結合し、電気的接続点6よりも右側で電線端子4と結合している。これにより、支持部材突起部52と支持部材本体部51の係合穴51aとの間において、支持部材本体部51を介する第1の経路と、センサ端子部23、電気的接続点6、及び、電線端子4を介する第2の経路とが存在することになる。
【0046】
つまり、センサ中継部22の右端部及び信号電線3の左端部に引張力が生じた場合、当該引張力は、第1の経路と第2の経路とに分散される。すなわち、第1の経路を構成する部材にかかる引張力は、センサ中継部22の右端部及び信号電線3の左端部に生じる引張力よりも小さくなる。したがって、支持部材5の影響により、電気的接続点6が受ける力は分散され、低減する。
【0047】
また、同様に、センサ中継部22の右端部及び信号電線3の左端部に圧縮力が生じる場合には、電気的接続点6が受ける力が、支持部材5の影響により、分散され、低減する。
【0048】
すなわち、本実施例の乗員検知センサ1では、センサ中継部22の右端部及び信号電線3の左端部に左右方向の力が生じた場合に、電気的接続点6にかかる力を低減できる。特に、支持部材5は、センサ本体部2及び電線端子4の引張強度よりも大きな引張強度の材料からなるため、電気的接続点6にかかる力を大きく低減できる。
【0049】
次に、この乗員検知センサ1が図1に示すように座席内に設置される場合に、電気的接続点6にかかる力について説明する。このとき、センサ中継部22は座部クッション7bに沿って一部湾曲している。ここで、図1の上方向を車両上方、下方向を車両下方とする。図1において、センサ中継部22が車両下方に湾曲し、その端部は車両下方に延在した状態になっている。すなわち、車両下方に向け、センサ中継部22の端部、ハウジング10、信号電線3の順に配置されている。
【0050】
ここで、座面部7に乗員が着座した場合、センサ回路部21は、着座によりかかる荷重を検知し、且つその荷重により車両下方に撓む。同時に、センサ中継部22の車両前方側も車両下方に撓み、ハウジング10は車両上方へ引張られる。一方、信号電線3は、車両に固定された状態である。従って、センサ中継部22の端部及び信号電線3には、車両上下方向の引張力が生じる。つまり、センサ端子部23が電線端子4に対して、車両上方に相対的に移動しようとする。本実施例では、この引張力が支持部材5によって分散され、電気的接続点6にかかる力は低減される。
【0051】
すなわち、図1の場合、車両上下方向の引張力または圧縮力は、車両上下方向に電気的接続点6を跨った支持部材5によって分散され、電気的接続点6にかかる車両上下方向の力は低減される。
【0052】
以上、説明したとおり、本実施例の乗員検知センサ1は、電気的接続点6にかかる車両上下方向の力を低減できる。これにより、電気的接続点6の分離、断線及び接触不良等を防ぐことが可能となる。
【0053】
また、乗員検知センサ1は、例えば図5及び図6に示すように設置することも可能である。図5及び図6は、乗員検知センサ1を自動車内の座席に配置した他の状態を示す図である。
【0054】
図5に示すように、センサ本体部2及びハウジング10を、座面表皮7aと座部クッション7bとの間に配置している。この場合、電気的接続点6にかかる車両前後方向の力は低減される。
【0055】
図6に示すように、座席内に第一クッション7c(本発明の上側クッションに相当する)及び第二クッション7d(本発明の下側クッションに相当する)を有している。第一クッション7cは、その中間部分の下面が上方に陥没した形状となっており、座面表皮7aの下に配置されている。第二クッション7dは、第一クッション7cの陥没部分の下方に配置されている。
【0056】
そして、センサ回路部21及びセンサ中継部22の一部は、第一クッション7cと第二クッション7dの間に配置される。ここで、図1と同様に、センサ中継部22の一部は、第二クッション7dに沿って配置されている。したがって、電気的接続点6にかかる上下方向の力は低減される。
【0057】
また、センサ中継部22のハウジング10側の端部が湾曲している場合においても、その湾曲面の接線方向の力に対して電気的接続点6が受ける力は低減される。
【0058】
本発明は、上記以外の形態についても同様の効果を得ることができる。例えば、本実施形態において、支持部材突起部52の形状は、楕円柱、三角柱及び四角柱等でもよい。この場合、係止穴23aは、支持部材突起部52の形状に合った形状とするとよい。同様に、端子突起部41cの形状も、楕円柱、三角柱及び四角柱等でもよい。この場合、支持部材本体部51の係合穴51aは、端子突起部41cに合った形状とするとよい。さらに、支持部材本体部51の係合穴51aと端子突起部41cとの凹凸を逆にしてもよい。この場合、支持部材本体部51に、端子突起部41cに相当する突起を形成し、電線端子4の板状本体部41aに、係合穴51aに相当する穴を形成する。
【0059】
また、支持部材突起部52と係止穴23aとの結合は、接着あるいは容着等で行ってもよい。さらに、支持部材本体部51の係合穴51aと端子突起部41cとの結合は、接着あるいは溶着等で行ってもよい。
【0060】
本実施形態における、乗員検知センサ1の座席内への設置は、センサ回路部21の裏面に貼られた両面テープにより、センサ回路部21と座部クッション7bもしくは第二クッション7dとを接着させてもよい。また、センサ回路部21の裏面と座部クッション7bもしくは第二クッション7dとを樹脂等で溶着させてもよい。
【0061】
以上、記述したように、本発明の乗員検知センサは、電気的接続点にかかる所定一方方向に関する力を低減できる。これにより、乗員検知センサの故障原因でもある電気的接続点の分離、断線及び接触不良等を防ぐことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】乗員検知センサを自動車内の座席に配置した状態を示す図である。
【図2】乗員検知センサの平面図である。
【図3】本体接続部位の平面図である。
【図4】図3の側面図である。
【図5】乗員検知センサを自動車内の座席に配置した他の状態を示す図である。
【図6】乗員検知センサを自動車内の座席に配置した他の状態を示す図である。
【符号の説明】
【0063】
1:乗員検知センサ、
2:センサ本体部、
21:センサ回路部、21a:端部、22:センサ中継部、
23:センサ端子部、23a:係止穴、23b:二股状部、
3:信号電線、
4:電線端子、41:端子板状部、41a:板状本体部、41b:かしめ部、41c:端子突起部、42:電線接部
5:支持部材、51:支持部材本体部、51a:係合穴、52:支持部材突起部、
6:電気的接続点、
7:座面部、7a:座面表皮、7b:座部クッション、
7c:第一クッション、7d:第二クッション、
10:ハウジング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車内の座席に印加される荷重を検知することで乗員の検知を行う乗員検知センサであって、
前記座席内に配置されて前記荷重の有無を検知するセンサ回路部と、一端が前記センサ回路部の所定位置で結合され少なくとも他端側が所定一方方向に延びるように形成されるセンサ中継部と、前記センサ中継部の前記他端に電気的に接続されるセンサ端子部と、を有するセンサ本体部と、
信号電線の端部に固定され、前記センサ端子部の前記所定一方方向に配置され、前記センサ端子部と電気的に接続される電線端子と、
前記センサ端子部と前記電線端子との電気的接続点より前記所定一方方向の反対方向側で前記センサ端子部と結合されるセンサ端子結合部と、前記電気的接続点より前記所定一方方向側で前記電線端子と結合される電線端子結合部と、を有する支持部材と、
を備えることを特徴とする乗員検知センサ。
【請求項2】
前記支持部材の前記所定一方方向に関する引張強度は、前記センサ端子部及び前記電線端子の前記所定一方方向に関する引張強度よりも大きい請求項1記載の乗員検知センサ。
【請求項3】
前記支持部材は、前記センサ端子結合部と前記電線端子結合部との間において、前記センサ端子部及び前記電線端子の少なくとも一方と重なり合うように接している請求項1又は2記載の乗員検知センサ。
【請求項4】
前記センサ端子結合部は、前記センサ端子部と接着している請求項1〜3のいずれかに記載の乗員検知センサ。
【請求項5】
前記電線端子結合部は、前記電線端子と接着している請求項1〜4のいずれかに記載の乗員検知センサ。
【請求項6】
前記センサ回路部は、前記座席のクッションと前記クッションの上面を被覆する座面表皮との間、もしくは、前記座席の上側クッションと前記上側クッションの下側に配置される下側クッションとの間に介装される請求項1〜5のいずれかに記載の乗員検知センサ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−51592(P2008−51592A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−226603(P2006−226603)
【出願日】平成18年8月23日(2006.8.23)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】