乗用型作業車
【課題】 乗用型作業車において右及び左のサイドクラッチを備え、右及び左の前輪と右及び左のサイドクラッチとを機械的に連係する場合、右及び左の操向限度が制限を受けないように構成する。
【解決手段】 右及び左の後輪2用の右及び左のサイドクラッチ27を右及び左の前輪1の後側で機体の右側及び左側に備え、右の前輪1と左のサイドクラッチ27とに亘って連係ロッド58を接続し、左の前輪1と右のサイドクラッチ27とに亘って連係ロッド58を接続する。右及び左の前輪1が右に操向操作されると、左の前輪1により連係ロッド58を介して右のサイドクラッチ27が遮断状態に操作され、右及び左の前輪1が左に操向操作されると、右の前輪1により連係ロッド58を介して左のサイドクラッチ27が遮断状態に操作されるように構成する。
【解決手段】 右及び左の後輪2用の右及び左のサイドクラッチ27を右及び左の前輪1の後側で機体の右側及び左側に備え、右の前輪1と左のサイドクラッチ27とに亘って連係ロッド58を接続し、左の前輪1と右のサイドクラッチ27とに亘って連係ロッド58を接続する。右及び左の前輪1が右に操向操作されると、左の前輪1により連係ロッド58を介して右のサイドクラッチ27が遮断状態に操作され、右及び左の前輪1が左に操向操作されると、右の前輪1により連係ロッド58を介して左のサイドクラッチ27が遮断状態に操作されるように構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は乗用型田植機や乗用型直播機、乗用型移植機、乗用型管理機等の乗用型作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
乗用型作業車において、右の後輪に伝達される動力を伝動及び遮断自在な右のサイドクラッチ、及び左の後輪に伝達される動力を伝動及び遮断自在な左のサイドクラッチを備えて、右及び左の前輪が右(左)に操向操作されると、右(左)のサイドクラッチが遮断状態に操作されるように構成したものがある。これにより、旋回時に旋回中心側の後輪が自由回転状態となることによって(旋回中心側のサイドクラッチの遮断状態)、旋回中心側の後輪によって作業地を荒らすことなく旋回が行える。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
乗用型作業車において、右及び左のサイドクラッチを備えた場合、右及び左の前輪を操向操作するピットマンアームと、右及び左のサイドクラッチとを機械的に連係するのではなく、右及び左の前輪と右及び左のサイドクラッチとを機械的に連係するように構成することが提案されている。
本発明は、乗用型作業車において右及び左のサイドクラッチを備え、右及び左の前輪と右及び左のサイドクラッチとを機械的に連係する場合、右及び左の操向限度が制限を受けないように構成することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
(構成)
本発明の第1特徴は、乗用型作業車において次のように構成することにある。
右の後輪に伝達される動力を伝動及び遮断自在な右のサイドクラッチを、右及び左の前輪の後側で機体の右側に備え、左の後輪に伝達される動力を伝動及び遮断自在な左のサイドクラッチを、右及び左の前輪の後側で機体の左側に備える。右の前輪と左のサイドクラッチとに亘って連係ロッドを接続し、左の前輪と右のサイドクラッチとに亘って連係ロッドを接続する。右及び左の前輪が右に操向操作されると左の前輪により連係ロッドを介して右のサイドクラッチが遮断状態に操作され、右及び左の前輪が左に操向操作されると右の前輪により連係ロッドを介して左のサイドクラッチが遮断状態に操作されるように構成する。
【0005】
(作用)
本発明の第1特徴によると、右及び左のサイドクラッチを備えた場合に、右のサイドクラッチを右及び左の前輪の後側で機体の右側に備え、左のサイドクラッチを右及び左の前輪の後側で機体の左側に備えており、右の前輪と左のサイドクラッチとに亘って連係ロッドを接続し、左の前輪と右のサイドクラッチとに亘って連係ロッドを接続している。従って、右及び左の前輪が右に操向操作されると、左の前輪により連係ロッドを介して右のサイドクラッチが遮断状態に操作され、右及び左の前輪が左に操向操作されると、右の前輪により連係ロッドを介して左のサイドクラッチが遮断状態に操作される。
【0006】
この場合、右の前輪から後方に連係ロッドを延出して右のサイドクラッチに接続し、左の前輪から後方に連係ロッドを延出して左のサイドクラッチに接続するように構成することが考えられる。しかしながら前述のように構成すると、右及び左の前輪を例えば右に大きく操向操作した際、右の前輪と右のサイドクラッチに亘って接続された連係ロッドに、右の前輪の後側が干渉することになるので、右及び左の操向限度が小さなものになる。
【0007】
本発明の第1特徴によると、右の前輪と左のサイドクラッチとに亘って連係ロッドを接続し、左の前輪と右のサイドクラッチとに亘って連係ロッドを接続しているので、右の前輪からの連係ロッドが機体の左右中央側に向いて機体の左右中央を通過し左のサイドクラッチに達している。左の前輪からの連係ロッドが機体の左右中央側に向いて機体の左右中央を通過し右のサイドクラッチに達している。このように本発明の第1特徴によると、右及び左の前輪からの連係ロッドが後方ではなく機体の左右中央側に向いているので、右及び左の前輪を大きく操向操作しても、右及び左の前輪の後側が連係ロッドに干渉するようなことは少ないので、右及び左の操向限度が制限されるような状態になり難い。
【0008】
(発明の効果)
本発明の第1特徴によると、乗用型作業車において右及び左のサイドクラッチを備えた場合、右の前輪と左のサイドクラッチとに亘って連係ロッドを接続し、左の前輪と右のサイドクラッチとに亘って連係ロッドを接続することにより、右及び左の前輪を大きく操向操作しても、右及び左の前輪の後側が連係ロッドに干渉するようなことが少なく、右及び左の操向限度が制限されるような状態になり難くすることができるようになって、乗用型作業車の操縦性能を向上させることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
[1]
図1及び図2に乗用型作業車の一例としての乗用型田植機が示されており、右及び左の前輪1、右及び左の後輪2で支持された機体の後部に施肥装置3が備えられて、油圧シリンダ4により昇降駆動されるリンク機構5に、4条植型式の苗植付装置6が連結されている。
【0010】
次に右及び左の前輪1、右及び左の後輪2の支持構造について説明する。
図1,2,3,5,9に示すように、機体の前部の下部にミッションケース7が、機体の前後方向に延出されるように配置され、ミッションケース7の前部の下部の右及び左横側部に、右及び左の車輪支持ケース8が連結されて右及び左方に延出されている(ミッションケース7に対して右及び左の車輪支持ケース8は昇降及びローリングしない)。右及び左の車輪支持ケース8の端部の縦軸芯P1周りに右及び左の支持ケース9が回転自在に支持されて、右及び左の支持ケース9に右及び左の前輪1が支持されており、右及び左の前輪1が右及び左の支持ケース9と一緒に縦軸芯P1周りに左右に操向自在に構成されている。
【0011】
図1及び図5に示すように、ミッションケース7の後端の右及び左横側部に、ボス部7cが右及び左横側に突出するように形成されて、右及び左の支持ケース10が、ボス部7cの左右方向の横軸芯P2周りに独立に上下揺動自在に支持されている。右及び左の支持ケース10がボス部7cから後方に延出されて、右及び左の支持ケース10の後部に右及び左の後輪2が支持されており、右及び左の後輪2は操向操作されない。
【0012】
図1及び図2に示すように、ミッションケース7から延出されたフレーム11に、油圧シリンダ4及びリンク機構5が連結されており、図1,2,5に示すように右及び左の支持ケース10とフレーム11とに亘って、バネ型式のサスペンション機構12が接続されている。これにより、右及び左の支持ケース10(後輪2)が各々独立に上下動する状態となっている。
【0013】
図5及び図11に示すように、ミッションケース7の後部の外面に、後方に開放された凹部状の支持部7dが備えられている。充分な弾性を備えた金属製の丸棒で平面視へ字状に折り曲げられた抵抗部材13が用意されており、抵抗部材13の中間部がミッションケース7の支持部7dに挿入され、板状の支持部材14によりがミッションケース7の支持部7dが塞がれて、支持部材14がボルト15によってミッションケース7に固定されている。抵抗部材13の右及び左の端部が、右及び左の支持ケース10に取り付けられている。
【0014】
図5及び図11に示す状態が支持部材14の支持状態で、抵抗部材13の中間部がミッションケース7の支持部7dに回転自在に支持された状態であり、右及び左の支持ケース10に高さの差が生じると、抵抗部材13の中間部が捩じられる状態となり、右及び左の支持ケース10に高さの差に対して抵抗部材13から抵抗が掛かる。ボルト15を外して支持部材14をミッションケース7の支持部7dから取り外すことにより(取外状態)、抵抗部材13の中間部をミッションケース7の支持部7dから取り外すことができる。
【0015】
[2]
次に右及び左の前輪1、右及び左の後輪2への伝動構造について説明する。
図5に示すように、ミッションケース7は右の分割部分7a及び左の分割部分7bの2分割構造となっており、右及び左の分割部分7a,7bの合わせ部が機体の前後方向に沿っている。図1及び図4に示すように、ミッションケース7の前部に支持フレーム16が連結されて、支持フレーム16にエンジン17が支持されている。左の分割部分7bの前部の上部に静油圧式無段変速装置18が連結されており、エンジン17の動力がベルト伝動機構19を介して静油圧式無段変速装置18に伝達されている。
【0016】
図9及び図10に示すように、ミッションケース7の前部の下部(右及び左の車輪支持ケース8)の位置にデフ機構20が配置されており、デフ機構20から右及び左の車輪支持ケース8に亘って伝動軸21が架設されている。ミッションケース7の内部において右の伝動軸21に円筒軸22が相対回転自在に外嵌されて、円筒軸22に伝動ギヤ23及びスプロケット24が固定され、円筒軸22がスプロケット24を介してデフ機構20のケース20aに連結されている。
これにより、ミッションケース7の前部の下部(デフ機構20を内装)、右及び左の車輪支持ケース8によって、車軸ケースが構成されることになり、4条植型式の苗植付装置6に対応するトレッドとなっている。
【0017】
以上の構造により、エンジン17の動力がベルト伝動機構19を介して静油圧式無段変速装置18に伝達され、ミッションケース7の副変速装置25(ギヤ変速式で高低2段に変速自在)から伝動ギヤ23、円筒軸22、デフ機構20、右及び左の伝動軸21を介して右及び左の前輪1に伝達される。円筒軸22の動力がスプロケット24、伝動チェーン26、右及び左のサイドクラッチ27(図5参照)、右及び左の支持ケース10に内装された伝動チェーン(図示せず)を介して、右及び左の後輪2に伝達される(この場合、右及び左の後輪2に対してデフ機構は備えられていない)。
【0018】
図9及び図10に示すように、キー構造によりシフト部材28が右の伝動軸21に一体回転及びスライド自在に外嵌され、シフト部材28を伝動ギヤ23の離間側に付勢するバネ29が備えられており、シフト部材28を伝動ギヤ23にスライド操作する操作軸30が備えられている。これにより、シフト部材28が伝動ギヤ23から離間していると、デフ機構20が作動状態となり、シフト部材28を伝動ギヤ23に咬合させると、デフ機構20のケース20aが右の伝動軸21に連結された状態となって、デフ機構20がデフロック状態となる。
【0019】
[3]
次にパワーステアリング機構33の取付構造について説明する。
図7及び図8に示すように、ミッションケース7の前部の上部の合わせ部において、右及び左の分割部分7a,7bに半円状でフランジ状の取付座7eが一体的に形成されており、右及び左の分割部分7a,7bの取付座7eにより、一つの円状でフランジ状の取付座7eが形成されている。
【0020】
図5,7,8に示すように、油圧型式のパワーステアリング機構33が用意され、パワーステアリング機構33に円状の取付部33cが備えられている。パワーステアリング機構33の取付部33cが、右及び左の分割部分7a,7bの取付座7eに嵌め込まれており、パワーステアリング機構33の取付部33cと右及び左の分割部分7a,7bの取付座7eとの間に、Oリング34が取り付けられている。
【0021】
この場合、図8に示すように右及び左の分割部分7a,7bを連結した状態において、右の分割部分7aの取付座7eに対して、左の分割部分7bの取付座7eが出ない(少し低い)状態となるように設定されている。これにより、パワーステアリング機構33の取付部33cが、右及び左の分割部分7a,7bの取付座7eに嵌め込まれた状態で、パワーステアリング機構33の取付部33cと左の分割部分7bの取付座7eとの間に、僅かに隙間ができる状態となっており、図5,7,8に示すようにパワーステアリング機構33の取付部33cが、ボルト35によって右の分割部分7aの取付座7eに連結されている。
【0022】
図7に示すように、ミッションケース7の内部に潤滑油が入れられており、右の分割部分7aの前部の下部に取付座7fが一体的に形成されて、右の分割部分7aの取付座7fにオイルフィルター36が取り付けられている。これにより図1,3,4に示すように、ミッションケース7の前部の下部の外面で支持フレーム16の下方に、オイルフィルター36が位置している。
【0023】
図4及び図5に示すように、右の分割部分7aの前部の上部に油圧ポンプ37が連結されており、油圧シリンダ4に作動油を給排操作する制御弁38が、左の分割部分7bの後部の上部に連結されている。これにより、ミッションケース7の潤滑油が作動油としてオイルフィルター36から配管39を介して、静油圧式無段変速装置18のチャージポンプ(図示せず)に供給されるのであり、ミッションケース7の潤滑油が作動油としてオイルフィルター36から配管40を介して、油圧ポンプ37に供給されている。油圧ポンプ37の作動油が配管41を介してパワーステアリング機構33に供給され、配管42を介して制御弁38に供給されており、制御弁38の作動油が配管43を介してミッションケース7に戻されている。
【0024】
[4]
次に右及び左の前輪1の操向操作の構造について説明する。
図4に示すように、上方に配置された操縦ハンドル44とパワーステアリング機構33の入力軸33aとが、ステアリング軸45及びユニバーサルジョイント46を介して接続されている。図4,7,8に示すように、ミッションケース7において右及び左の分割部分7a,7bの前部の下部にケース部7gが一体的に形成されており、パワーステアリング機構33の出力軸33bに、ジョイント47を介してステアリング軸48が接続され、ステアリング軸48がミッションケース7の内部の前部を通ってケース部7gに挿入されている。ミッションケース7とケース部7gとの間において、ステアリング軸48にベアリング49及びオイルシール50が外嵌されており、オイルシール50によってミッションケース7の潤滑油がケース部7gに入り込まないように構成されている。
【0025】
図7及び図8に示すように、ケース部7gの内部において、ステアリング軸48の下端部にピニオンギヤ48aが備えられている。ラックギヤ51が機体の左右方向にスライド自在にケース部7gに支持され、機体の左右方向に沿って配置されてケース部7gから右及び左に突出しており、図5及図6(イ)に示すようにラックギヤ51が右及び左の前輪1の車軸の前側に位置している。ケース部7gの内部においてピニオンギヤ48aとラックギヤ51とが咬合しており、ラックギヤ51をピニオンギヤ48aに押圧する押圧部材52及びバネ53が備えられている。ピニオンギヤ48a及びラックギヤ51、押圧部材52に潤滑用のグリスが塗布されている。
【0026】
図5に示すように、右及び左の支持ケース9にナックルアーム54が固定されており、ラックギヤ51と右及び左のナックルアーム54とに亘って、右及び左のタイロッド55が接続されている。図3,5,8に示すように、ラックギヤ51の右及び左の端部とケース部7gとに亘って、ゴム製のジャバラ状で伸縮自在なカバー56が取り付けられて、ケース部7gから右及び左に突出したラックギヤ51に、水や土等が付着するのを防止している。
【0027】
図6(イ)に示すように、操縦ハンドル44及びラックギヤ51が直進位置に位置している状態において、ラックギヤ51(機体の左右方向)に対して右及び左のタイロッド55が斜め前方向きとなっている。図8に示すように、操縦ハンドル44を右(左)に操作していきラックギヤ51が右(左)にスライドしていくと、ラックギヤ51の右及び左の端部にカバー56を取り付ける為のリング状の取付部材57が、ケース部7gの左(右)の端部に接当して、これ以上に右及び左の前輪1を右(左)に操向操作できない状態となる(右(左)の操向限度となる)。図6(ロ)に示すように、ラックギヤ51が左(右)の操向限度に位置している状態において、左(旋回中心側)のタイロッド55がラックギヤ51(機体の左右方向)に対して斜め後方向きになっている。
【0028】
[5]
次に右及び左のサイドクラッチ27の操作構造について説明する。
図5に示すように、ミッションケース7の後部の右及び左部に、右及び左のサイドクラッチ27が備えられている。右(左)のサイドクラッチ27を伝動状態に操作すると、右(左)の後輪2に動力が伝達され、右(左)のサイドクラッチ27を遮断状態に操作すると、右(左)の後輪2への動力が遮断されて右(左)の後輪2が自由回転状態となる。
【0029】
図5に示すように右及び左のナックルアーム54に操作ピン54aが備えられている。右のナックルアーム54の操作ピン54aと、左のサイドクラッチ27の操作アーム27aとに亘って、右の連係ロッド58が接続されている(右の連係ロッド58の一端が左のサイドクラッチ27の操作アーム27aに接続されて、右の連係ロッド58の他端に備えられた長孔58aに、右のナックルアーム54の操作ピン54aが挿入されている)。左の支ナックルアーム54の操作ピン54aと、右のサイドクラッチ27の操作アーム27aとに亘って、左の連係ロッド58が接続されている(左の連係ロッド58の一端が右のサイドクラッチ27の操作アーム27aに接続され、左の連係ロッド58の他端に備えられた長孔58aに、左のナックルアーム54の操作ピン54aが挿入されている)。
【0030】
これにより図5及び図6(イ)に示すように、右のナックルアーム54から、右の連係ロッド58が機体の左右中央側に向いてミッションケース7の下側を通過し左のサイドクラッチ27に達している。左のナックルアーム54から、左の連係ロッド58が機体の左右中央側に向いてミッションケース7の下側を通過し右のサイドクラッチ27に達している。
【0031】
図5及び図6(イ)に示す状態は、操縦ハンドル44及びラックギヤ51が直進位置に位置している状態であり、右及び左のサイドクラッチ27が伝動状態に操作されて、右及び左の後輪2に動力が伝達されている。右及び左の前輪1を直進位置から右及び左の設定角度の間で操向操作しても、右及び左の連係ロッド58の長孔58aの融通作用によって右及び左の連係ロッド58は操作されず、右及び左のサイドクラッチ27は伝動状態に維持されている。この場合、右及び左の連係ロッド58が機体の左右中央側に向いてミッションケース7の下側を通過し、右及び左のサイドクラッチ27に達している状態なので、右及び左の前輪1を右に操向操作しても、右の前輪1の後側が右の連係ロッド58に干渉するようなことはなく、操縦ハンドル44を左に操向操作しても、左の前輪1の後側が左の連係ロッド58に干渉するようなことはない。
【0032】
次に右及び左の前輪1を左の設定角度を超えて左の操向限度側に操向操作すると、図6(ロ)に示すように右のナックルアーム54の操作ピン54aにより右の連係ロッド58が引き操作されて、左のサイドクラッチ27が遮断状態に操作される。この場合、左の連係ロッド58の長孔58aの融通作用によって、右のサイドクラッチ27は伝動状態に維持されており、右及び左の前輪1を左の操向限度に操向操作しても、左の前輪1の後側が左の連係ロッド58に干渉するようなことはない。
【0033】
右及び左の前輪1を右の設定角度を超えて右の操向限度側に操向操作すると、左のナックルアーム54の操作ピン54aにより左の連係ロッド58が引き操作されて、右のサイドクラッチ27が遮断状態に操作される。この場合、右の連係ロッド58の長孔58aの融通作用によって、左のサイドクラッチ27は伝動状態に維持されており、右及び左の前輪1を右の操向限度に操向操作しても、右の前輪1の後側が右の連係ロッド58に干渉するようなことはない。
【0034】
[発明の実施の第1別形態]
前述の[発明の実施の形態]に記載の乗用型田植機は、4条植型式の苗植付装置6に対応したものである。
この乗用型田植機を5条植型式の苗植付装置6に対応したものに変更する場合には、図12及び図13に示すように、ミッションケース7と右及び左の車輪支持ケース8との間にリング状の中間ケース31を入れ込み、ボルト32によって右(左)の車輪支持ケース8及び中間ケース31をミッションケース7に連結するのであり、右及び左の伝動軸21を長いものに変更する。右及び左の後輪2において、図5に示す車軸2aを長いものに変更し、右及び左のタイロッド55、右及び左の連係ロッド58を長いものに変更する。以上のようにして、5条植型式の苗植付装置6に対応するトレッドとする。
【0035】
前述の[発明の実施の形態]では、ミッションケース7が車軸ケースの一部を構成しているが、デフ機構20を内装するデフケースをミッションケース7とは別に構成して、車軸ケースを構成してもよい。又、一種類の横幅を備えた中間ケース31ではなく、横幅の異なる複数種類の中間ケース31を用意して使用するように構成してもよい。
【0036】
[発明の実施の第2別形態]
前述の[発明の実施の形態]及び[発明の実施の第1別形態]において、ケース部7gを右及び左の分割部分7a,7bの前部の下部ではなく、右又は左の分割部分7a,7bの横側部に備えて、ステアリング軸48をミッションケース7の内部ではなく外部を通して、ケース部7gに挿入するように構成してもよい。
ケース部7gをミッションケース7に一体的に形成するのではなく、ケース部7gをミッションケース7とは別体に構成し、ボルトによってミッションケース7に連結するように構成してもよい。
【0037】
[発明の実施の第3別形態]
前述の[発明の実施の形態]及び[発明の実施の第1別形態]、[発明の実施の第2別形態]において、次のように構成してもよい。
ピニオンギヤ48a及びラックギヤ51を右及び左の前輪1の車軸に対して後側に配置し、右及び左の支持ケース9にナックルアーム54を後向きに固定してもよい。このように構成すると、操縦ハンドル44及びラックギヤ51が直進位置に位置している状態において、ラックギヤ51(機体の左右方向)に対して右及び左のタイロッド55が斜め後方向きとなり、ラックギヤ51が右(左)の操向限度に位置している状態において、旋回中心とは反対側の左(右)のタイロッド55がラックギヤ51(機体の左右方向)に対して斜め前方向きになる。ラックギヤ51に代えて、全油圧型式のパワーステアリングのピストンロッドやピットマンアームを使用してもよい。
【0038】
図5に示す構造において、右及び左の連係ロッド58を、右及び左のナックルアーム54の前部(タイロッド55が接続される部分)に接続するように構成してもよい。このように構成すると、右及び左の前輪1を右及び左の設定角度を超えて右及び左の操向限度側に操向操作すると、左(右)の連係ロッド58が押し操作されて、右(左)のサイドクラッチ27が遮断状態に操作される。
【0039】
[発明の実施の第4別形態]
前述の[発明の実施の形態]及び[発明の実施の第1別形態]〜[発明の実施の第3別形態]において、次のように構成してもよい。
ミッションケース7を、右及び左の分割部分7a,7bにもう一つの分割部分を加えて3分割構造に構成し、3つの分割部分のうちの2つの分割部分の合わせ部に、取付座7eを形成するように構成してもよい。
【0040】
[発明の実施の第5別形態]
前述の[発明の実施の形態]及び[発明の実施の第1別形態]〜[発明の実施の第4別形態]において、次のように構成してもよい。
右及び左の後輪2において、右及び左の支持ケース10を廃止して右及び左の前輪1と同様な車軸ケースを備え、車軸ケースに右及び左の後輪2を支持させるように構成してもよい。このように構成した場合、前述の[発明の実施の第1別形態]に記載のように、車軸ケースを構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】乗用型田植機の全体側面図
【図2】乗用型田植機の全体平面図
【図3】乗用型田植機の全体正面図
【図4】エンジン、静油圧式無段変速装置及びミッションケースの付近の側面図
【図5】右及び左の前輪、右及び左の後輪、ミッションケース等を示す平面図
【図6】操縦ハンドル及びラックギヤを直進位置及び左の操向限度に操作した状態を示す概略平面図
【図7】ミッションケースの前部の付近の縦断側面図
【図8】ケース部、ピニオンギヤ及びラックギヤの付近の縦断正面図
【図9】ミッションケース、右及び左の車輪支持ケースの付近の正面図
【図10】ミッションケースの前部の付近の横断平面図
【図11】ミッションケースの後部の抵抗部材の付近の縦断側面図
【図12】発明の実施の第1別形態のミッションケース、右及び左の車輪支持ケースの付近の正面図
【図13】発明の実施の第1別形態のミッションケースの前部の付近の横断平面図
【符号の説明】
【0042】
1 前輪
2 後輪
27 サイドクラッチ
58 連係ロッド
【技術分野】
【0001】
本発明は乗用型田植機や乗用型直播機、乗用型移植機、乗用型管理機等の乗用型作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
乗用型作業車において、右の後輪に伝達される動力を伝動及び遮断自在な右のサイドクラッチ、及び左の後輪に伝達される動力を伝動及び遮断自在な左のサイドクラッチを備えて、右及び左の前輪が右(左)に操向操作されると、右(左)のサイドクラッチが遮断状態に操作されるように構成したものがある。これにより、旋回時に旋回中心側の後輪が自由回転状態となることによって(旋回中心側のサイドクラッチの遮断状態)、旋回中心側の後輪によって作業地を荒らすことなく旋回が行える。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
乗用型作業車において、右及び左のサイドクラッチを備えた場合、右及び左の前輪を操向操作するピットマンアームと、右及び左のサイドクラッチとを機械的に連係するのではなく、右及び左の前輪と右及び左のサイドクラッチとを機械的に連係するように構成することが提案されている。
本発明は、乗用型作業車において右及び左のサイドクラッチを備え、右及び左の前輪と右及び左のサイドクラッチとを機械的に連係する場合、右及び左の操向限度が制限を受けないように構成することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
(構成)
本発明の第1特徴は、乗用型作業車において次のように構成することにある。
右の後輪に伝達される動力を伝動及び遮断自在な右のサイドクラッチを、右及び左の前輪の後側で機体の右側に備え、左の後輪に伝達される動力を伝動及び遮断自在な左のサイドクラッチを、右及び左の前輪の後側で機体の左側に備える。右の前輪と左のサイドクラッチとに亘って連係ロッドを接続し、左の前輪と右のサイドクラッチとに亘って連係ロッドを接続する。右及び左の前輪が右に操向操作されると左の前輪により連係ロッドを介して右のサイドクラッチが遮断状態に操作され、右及び左の前輪が左に操向操作されると右の前輪により連係ロッドを介して左のサイドクラッチが遮断状態に操作されるように構成する。
【0005】
(作用)
本発明の第1特徴によると、右及び左のサイドクラッチを備えた場合に、右のサイドクラッチを右及び左の前輪の後側で機体の右側に備え、左のサイドクラッチを右及び左の前輪の後側で機体の左側に備えており、右の前輪と左のサイドクラッチとに亘って連係ロッドを接続し、左の前輪と右のサイドクラッチとに亘って連係ロッドを接続している。従って、右及び左の前輪が右に操向操作されると、左の前輪により連係ロッドを介して右のサイドクラッチが遮断状態に操作され、右及び左の前輪が左に操向操作されると、右の前輪により連係ロッドを介して左のサイドクラッチが遮断状態に操作される。
【0006】
この場合、右の前輪から後方に連係ロッドを延出して右のサイドクラッチに接続し、左の前輪から後方に連係ロッドを延出して左のサイドクラッチに接続するように構成することが考えられる。しかしながら前述のように構成すると、右及び左の前輪を例えば右に大きく操向操作した際、右の前輪と右のサイドクラッチに亘って接続された連係ロッドに、右の前輪の後側が干渉することになるので、右及び左の操向限度が小さなものになる。
【0007】
本発明の第1特徴によると、右の前輪と左のサイドクラッチとに亘って連係ロッドを接続し、左の前輪と右のサイドクラッチとに亘って連係ロッドを接続しているので、右の前輪からの連係ロッドが機体の左右中央側に向いて機体の左右中央を通過し左のサイドクラッチに達している。左の前輪からの連係ロッドが機体の左右中央側に向いて機体の左右中央を通過し右のサイドクラッチに達している。このように本発明の第1特徴によると、右及び左の前輪からの連係ロッドが後方ではなく機体の左右中央側に向いているので、右及び左の前輪を大きく操向操作しても、右及び左の前輪の後側が連係ロッドに干渉するようなことは少ないので、右及び左の操向限度が制限されるような状態になり難い。
【0008】
(発明の効果)
本発明の第1特徴によると、乗用型作業車において右及び左のサイドクラッチを備えた場合、右の前輪と左のサイドクラッチとに亘って連係ロッドを接続し、左の前輪と右のサイドクラッチとに亘って連係ロッドを接続することにより、右及び左の前輪を大きく操向操作しても、右及び左の前輪の後側が連係ロッドに干渉するようなことが少なく、右及び左の操向限度が制限されるような状態になり難くすることができるようになって、乗用型作業車の操縦性能を向上させることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
[1]
図1及び図2に乗用型作業車の一例としての乗用型田植機が示されており、右及び左の前輪1、右及び左の後輪2で支持された機体の後部に施肥装置3が備えられて、油圧シリンダ4により昇降駆動されるリンク機構5に、4条植型式の苗植付装置6が連結されている。
【0010】
次に右及び左の前輪1、右及び左の後輪2の支持構造について説明する。
図1,2,3,5,9に示すように、機体の前部の下部にミッションケース7が、機体の前後方向に延出されるように配置され、ミッションケース7の前部の下部の右及び左横側部に、右及び左の車輪支持ケース8が連結されて右及び左方に延出されている(ミッションケース7に対して右及び左の車輪支持ケース8は昇降及びローリングしない)。右及び左の車輪支持ケース8の端部の縦軸芯P1周りに右及び左の支持ケース9が回転自在に支持されて、右及び左の支持ケース9に右及び左の前輪1が支持されており、右及び左の前輪1が右及び左の支持ケース9と一緒に縦軸芯P1周りに左右に操向自在に構成されている。
【0011】
図1及び図5に示すように、ミッションケース7の後端の右及び左横側部に、ボス部7cが右及び左横側に突出するように形成されて、右及び左の支持ケース10が、ボス部7cの左右方向の横軸芯P2周りに独立に上下揺動自在に支持されている。右及び左の支持ケース10がボス部7cから後方に延出されて、右及び左の支持ケース10の後部に右及び左の後輪2が支持されており、右及び左の後輪2は操向操作されない。
【0012】
図1及び図2に示すように、ミッションケース7から延出されたフレーム11に、油圧シリンダ4及びリンク機構5が連結されており、図1,2,5に示すように右及び左の支持ケース10とフレーム11とに亘って、バネ型式のサスペンション機構12が接続されている。これにより、右及び左の支持ケース10(後輪2)が各々独立に上下動する状態となっている。
【0013】
図5及び図11に示すように、ミッションケース7の後部の外面に、後方に開放された凹部状の支持部7dが備えられている。充分な弾性を備えた金属製の丸棒で平面視へ字状に折り曲げられた抵抗部材13が用意されており、抵抗部材13の中間部がミッションケース7の支持部7dに挿入され、板状の支持部材14によりがミッションケース7の支持部7dが塞がれて、支持部材14がボルト15によってミッションケース7に固定されている。抵抗部材13の右及び左の端部が、右及び左の支持ケース10に取り付けられている。
【0014】
図5及び図11に示す状態が支持部材14の支持状態で、抵抗部材13の中間部がミッションケース7の支持部7dに回転自在に支持された状態であり、右及び左の支持ケース10に高さの差が生じると、抵抗部材13の中間部が捩じられる状態となり、右及び左の支持ケース10に高さの差に対して抵抗部材13から抵抗が掛かる。ボルト15を外して支持部材14をミッションケース7の支持部7dから取り外すことにより(取外状態)、抵抗部材13の中間部をミッションケース7の支持部7dから取り外すことができる。
【0015】
[2]
次に右及び左の前輪1、右及び左の後輪2への伝動構造について説明する。
図5に示すように、ミッションケース7は右の分割部分7a及び左の分割部分7bの2分割構造となっており、右及び左の分割部分7a,7bの合わせ部が機体の前後方向に沿っている。図1及び図4に示すように、ミッションケース7の前部に支持フレーム16が連結されて、支持フレーム16にエンジン17が支持されている。左の分割部分7bの前部の上部に静油圧式無段変速装置18が連結されており、エンジン17の動力がベルト伝動機構19を介して静油圧式無段変速装置18に伝達されている。
【0016】
図9及び図10に示すように、ミッションケース7の前部の下部(右及び左の車輪支持ケース8)の位置にデフ機構20が配置されており、デフ機構20から右及び左の車輪支持ケース8に亘って伝動軸21が架設されている。ミッションケース7の内部において右の伝動軸21に円筒軸22が相対回転自在に外嵌されて、円筒軸22に伝動ギヤ23及びスプロケット24が固定され、円筒軸22がスプロケット24を介してデフ機構20のケース20aに連結されている。
これにより、ミッションケース7の前部の下部(デフ機構20を内装)、右及び左の車輪支持ケース8によって、車軸ケースが構成されることになり、4条植型式の苗植付装置6に対応するトレッドとなっている。
【0017】
以上の構造により、エンジン17の動力がベルト伝動機構19を介して静油圧式無段変速装置18に伝達され、ミッションケース7の副変速装置25(ギヤ変速式で高低2段に変速自在)から伝動ギヤ23、円筒軸22、デフ機構20、右及び左の伝動軸21を介して右及び左の前輪1に伝達される。円筒軸22の動力がスプロケット24、伝動チェーン26、右及び左のサイドクラッチ27(図5参照)、右及び左の支持ケース10に内装された伝動チェーン(図示せず)を介して、右及び左の後輪2に伝達される(この場合、右及び左の後輪2に対してデフ機構は備えられていない)。
【0018】
図9及び図10に示すように、キー構造によりシフト部材28が右の伝動軸21に一体回転及びスライド自在に外嵌され、シフト部材28を伝動ギヤ23の離間側に付勢するバネ29が備えられており、シフト部材28を伝動ギヤ23にスライド操作する操作軸30が備えられている。これにより、シフト部材28が伝動ギヤ23から離間していると、デフ機構20が作動状態となり、シフト部材28を伝動ギヤ23に咬合させると、デフ機構20のケース20aが右の伝動軸21に連結された状態となって、デフ機構20がデフロック状態となる。
【0019】
[3]
次にパワーステアリング機構33の取付構造について説明する。
図7及び図8に示すように、ミッションケース7の前部の上部の合わせ部において、右及び左の分割部分7a,7bに半円状でフランジ状の取付座7eが一体的に形成されており、右及び左の分割部分7a,7bの取付座7eにより、一つの円状でフランジ状の取付座7eが形成されている。
【0020】
図5,7,8に示すように、油圧型式のパワーステアリング機構33が用意され、パワーステアリング機構33に円状の取付部33cが備えられている。パワーステアリング機構33の取付部33cが、右及び左の分割部分7a,7bの取付座7eに嵌め込まれており、パワーステアリング機構33の取付部33cと右及び左の分割部分7a,7bの取付座7eとの間に、Oリング34が取り付けられている。
【0021】
この場合、図8に示すように右及び左の分割部分7a,7bを連結した状態において、右の分割部分7aの取付座7eに対して、左の分割部分7bの取付座7eが出ない(少し低い)状態となるように設定されている。これにより、パワーステアリング機構33の取付部33cが、右及び左の分割部分7a,7bの取付座7eに嵌め込まれた状態で、パワーステアリング機構33の取付部33cと左の分割部分7bの取付座7eとの間に、僅かに隙間ができる状態となっており、図5,7,8に示すようにパワーステアリング機構33の取付部33cが、ボルト35によって右の分割部分7aの取付座7eに連結されている。
【0022】
図7に示すように、ミッションケース7の内部に潤滑油が入れられており、右の分割部分7aの前部の下部に取付座7fが一体的に形成されて、右の分割部分7aの取付座7fにオイルフィルター36が取り付けられている。これにより図1,3,4に示すように、ミッションケース7の前部の下部の外面で支持フレーム16の下方に、オイルフィルター36が位置している。
【0023】
図4及び図5に示すように、右の分割部分7aの前部の上部に油圧ポンプ37が連結されており、油圧シリンダ4に作動油を給排操作する制御弁38が、左の分割部分7bの後部の上部に連結されている。これにより、ミッションケース7の潤滑油が作動油としてオイルフィルター36から配管39を介して、静油圧式無段変速装置18のチャージポンプ(図示せず)に供給されるのであり、ミッションケース7の潤滑油が作動油としてオイルフィルター36から配管40を介して、油圧ポンプ37に供給されている。油圧ポンプ37の作動油が配管41を介してパワーステアリング機構33に供給され、配管42を介して制御弁38に供給されており、制御弁38の作動油が配管43を介してミッションケース7に戻されている。
【0024】
[4]
次に右及び左の前輪1の操向操作の構造について説明する。
図4に示すように、上方に配置された操縦ハンドル44とパワーステアリング機構33の入力軸33aとが、ステアリング軸45及びユニバーサルジョイント46を介して接続されている。図4,7,8に示すように、ミッションケース7において右及び左の分割部分7a,7bの前部の下部にケース部7gが一体的に形成されており、パワーステアリング機構33の出力軸33bに、ジョイント47を介してステアリング軸48が接続され、ステアリング軸48がミッションケース7の内部の前部を通ってケース部7gに挿入されている。ミッションケース7とケース部7gとの間において、ステアリング軸48にベアリング49及びオイルシール50が外嵌されており、オイルシール50によってミッションケース7の潤滑油がケース部7gに入り込まないように構成されている。
【0025】
図7及び図8に示すように、ケース部7gの内部において、ステアリング軸48の下端部にピニオンギヤ48aが備えられている。ラックギヤ51が機体の左右方向にスライド自在にケース部7gに支持され、機体の左右方向に沿って配置されてケース部7gから右及び左に突出しており、図5及図6(イ)に示すようにラックギヤ51が右及び左の前輪1の車軸の前側に位置している。ケース部7gの内部においてピニオンギヤ48aとラックギヤ51とが咬合しており、ラックギヤ51をピニオンギヤ48aに押圧する押圧部材52及びバネ53が備えられている。ピニオンギヤ48a及びラックギヤ51、押圧部材52に潤滑用のグリスが塗布されている。
【0026】
図5に示すように、右及び左の支持ケース9にナックルアーム54が固定されており、ラックギヤ51と右及び左のナックルアーム54とに亘って、右及び左のタイロッド55が接続されている。図3,5,8に示すように、ラックギヤ51の右及び左の端部とケース部7gとに亘って、ゴム製のジャバラ状で伸縮自在なカバー56が取り付けられて、ケース部7gから右及び左に突出したラックギヤ51に、水や土等が付着するのを防止している。
【0027】
図6(イ)に示すように、操縦ハンドル44及びラックギヤ51が直進位置に位置している状態において、ラックギヤ51(機体の左右方向)に対して右及び左のタイロッド55が斜め前方向きとなっている。図8に示すように、操縦ハンドル44を右(左)に操作していきラックギヤ51が右(左)にスライドしていくと、ラックギヤ51の右及び左の端部にカバー56を取り付ける為のリング状の取付部材57が、ケース部7gの左(右)の端部に接当して、これ以上に右及び左の前輪1を右(左)に操向操作できない状態となる(右(左)の操向限度となる)。図6(ロ)に示すように、ラックギヤ51が左(右)の操向限度に位置している状態において、左(旋回中心側)のタイロッド55がラックギヤ51(機体の左右方向)に対して斜め後方向きになっている。
【0028】
[5]
次に右及び左のサイドクラッチ27の操作構造について説明する。
図5に示すように、ミッションケース7の後部の右及び左部に、右及び左のサイドクラッチ27が備えられている。右(左)のサイドクラッチ27を伝動状態に操作すると、右(左)の後輪2に動力が伝達され、右(左)のサイドクラッチ27を遮断状態に操作すると、右(左)の後輪2への動力が遮断されて右(左)の後輪2が自由回転状態となる。
【0029】
図5に示すように右及び左のナックルアーム54に操作ピン54aが備えられている。右のナックルアーム54の操作ピン54aと、左のサイドクラッチ27の操作アーム27aとに亘って、右の連係ロッド58が接続されている(右の連係ロッド58の一端が左のサイドクラッチ27の操作アーム27aに接続されて、右の連係ロッド58の他端に備えられた長孔58aに、右のナックルアーム54の操作ピン54aが挿入されている)。左の支ナックルアーム54の操作ピン54aと、右のサイドクラッチ27の操作アーム27aとに亘って、左の連係ロッド58が接続されている(左の連係ロッド58の一端が右のサイドクラッチ27の操作アーム27aに接続され、左の連係ロッド58の他端に備えられた長孔58aに、左のナックルアーム54の操作ピン54aが挿入されている)。
【0030】
これにより図5及び図6(イ)に示すように、右のナックルアーム54から、右の連係ロッド58が機体の左右中央側に向いてミッションケース7の下側を通過し左のサイドクラッチ27に達している。左のナックルアーム54から、左の連係ロッド58が機体の左右中央側に向いてミッションケース7の下側を通過し右のサイドクラッチ27に達している。
【0031】
図5及び図6(イ)に示す状態は、操縦ハンドル44及びラックギヤ51が直進位置に位置している状態であり、右及び左のサイドクラッチ27が伝動状態に操作されて、右及び左の後輪2に動力が伝達されている。右及び左の前輪1を直進位置から右及び左の設定角度の間で操向操作しても、右及び左の連係ロッド58の長孔58aの融通作用によって右及び左の連係ロッド58は操作されず、右及び左のサイドクラッチ27は伝動状態に維持されている。この場合、右及び左の連係ロッド58が機体の左右中央側に向いてミッションケース7の下側を通過し、右及び左のサイドクラッチ27に達している状態なので、右及び左の前輪1を右に操向操作しても、右の前輪1の後側が右の連係ロッド58に干渉するようなことはなく、操縦ハンドル44を左に操向操作しても、左の前輪1の後側が左の連係ロッド58に干渉するようなことはない。
【0032】
次に右及び左の前輪1を左の設定角度を超えて左の操向限度側に操向操作すると、図6(ロ)に示すように右のナックルアーム54の操作ピン54aにより右の連係ロッド58が引き操作されて、左のサイドクラッチ27が遮断状態に操作される。この場合、左の連係ロッド58の長孔58aの融通作用によって、右のサイドクラッチ27は伝動状態に維持されており、右及び左の前輪1を左の操向限度に操向操作しても、左の前輪1の後側が左の連係ロッド58に干渉するようなことはない。
【0033】
右及び左の前輪1を右の設定角度を超えて右の操向限度側に操向操作すると、左のナックルアーム54の操作ピン54aにより左の連係ロッド58が引き操作されて、右のサイドクラッチ27が遮断状態に操作される。この場合、右の連係ロッド58の長孔58aの融通作用によって、左のサイドクラッチ27は伝動状態に維持されており、右及び左の前輪1を右の操向限度に操向操作しても、右の前輪1の後側が右の連係ロッド58に干渉するようなことはない。
【0034】
[発明の実施の第1別形態]
前述の[発明の実施の形態]に記載の乗用型田植機は、4条植型式の苗植付装置6に対応したものである。
この乗用型田植機を5条植型式の苗植付装置6に対応したものに変更する場合には、図12及び図13に示すように、ミッションケース7と右及び左の車輪支持ケース8との間にリング状の中間ケース31を入れ込み、ボルト32によって右(左)の車輪支持ケース8及び中間ケース31をミッションケース7に連結するのであり、右及び左の伝動軸21を長いものに変更する。右及び左の後輪2において、図5に示す車軸2aを長いものに変更し、右及び左のタイロッド55、右及び左の連係ロッド58を長いものに変更する。以上のようにして、5条植型式の苗植付装置6に対応するトレッドとする。
【0035】
前述の[発明の実施の形態]では、ミッションケース7が車軸ケースの一部を構成しているが、デフ機構20を内装するデフケースをミッションケース7とは別に構成して、車軸ケースを構成してもよい。又、一種類の横幅を備えた中間ケース31ではなく、横幅の異なる複数種類の中間ケース31を用意して使用するように構成してもよい。
【0036】
[発明の実施の第2別形態]
前述の[発明の実施の形態]及び[発明の実施の第1別形態]において、ケース部7gを右及び左の分割部分7a,7bの前部の下部ではなく、右又は左の分割部分7a,7bの横側部に備えて、ステアリング軸48をミッションケース7の内部ではなく外部を通して、ケース部7gに挿入するように構成してもよい。
ケース部7gをミッションケース7に一体的に形成するのではなく、ケース部7gをミッションケース7とは別体に構成し、ボルトによってミッションケース7に連結するように構成してもよい。
【0037】
[発明の実施の第3別形態]
前述の[発明の実施の形態]及び[発明の実施の第1別形態]、[発明の実施の第2別形態]において、次のように構成してもよい。
ピニオンギヤ48a及びラックギヤ51を右及び左の前輪1の車軸に対して後側に配置し、右及び左の支持ケース9にナックルアーム54を後向きに固定してもよい。このように構成すると、操縦ハンドル44及びラックギヤ51が直進位置に位置している状態において、ラックギヤ51(機体の左右方向)に対して右及び左のタイロッド55が斜め後方向きとなり、ラックギヤ51が右(左)の操向限度に位置している状態において、旋回中心とは反対側の左(右)のタイロッド55がラックギヤ51(機体の左右方向)に対して斜め前方向きになる。ラックギヤ51に代えて、全油圧型式のパワーステアリングのピストンロッドやピットマンアームを使用してもよい。
【0038】
図5に示す構造において、右及び左の連係ロッド58を、右及び左のナックルアーム54の前部(タイロッド55が接続される部分)に接続するように構成してもよい。このように構成すると、右及び左の前輪1を右及び左の設定角度を超えて右及び左の操向限度側に操向操作すると、左(右)の連係ロッド58が押し操作されて、右(左)のサイドクラッチ27が遮断状態に操作される。
【0039】
[発明の実施の第4別形態]
前述の[発明の実施の形態]及び[発明の実施の第1別形態]〜[発明の実施の第3別形態]において、次のように構成してもよい。
ミッションケース7を、右及び左の分割部分7a,7bにもう一つの分割部分を加えて3分割構造に構成し、3つの分割部分のうちの2つの分割部分の合わせ部に、取付座7eを形成するように構成してもよい。
【0040】
[発明の実施の第5別形態]
前述の[発明の実施の形態]及び[発明の実施の第1別形態]〜[発明の実施の第4別形態]において、次のように構成してもよい。
右及び左の後輪2において、右及び左の支持ケース10を廃止して右及び左の前輪1と同様な車軸ケースを備え、車軸ケースに右及び左の後輪2を支持させるように構成してもよい。このように構成した場合、前述の[発明の実施の第1別形態]に記載のように、車軸ケースを構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】乗用型田植機の全体側面図
【図2】乗用型田植機の全体平面図
【図3】乗用型田植機の全体正面図
【図4】エンジン、静油圧式無段変速装置及びミッションケースの付近の側面図
【図5】右及び左の前輪、右及び左の後輪、ミッションケース等を示す平面図
【図6】操縦ハンドル及びラックギヤを直進位置及び左の操向限度に操作した状態を示す概略平面図
【図7】ミッションケースの前部の付近の縦断側面図
【図8】ケース部、ピニオンギヤ及びラックギヤの付近の縦断正面図
【図9】ミッションケース、右及び左の車輪支持ケースの付近の正面図
【図10】ミッションケースの前部の付近の横断平面図
【図11】ミッションケースの後部の抵抗部材の付近の縦断側面図
【図12】発明の実施の第1別形態のミッションケース、右及び左の車輪支持ケースの付近の正面図
【図13】発明の実施の第1別形態のミッションケースの前部の付近の横断平面図
【符号の説明】
【0042】
1 前輪
2 後輪
27 サイドクラッチ
58 連係ロッド
【特許請求の範囲】
【請求項1】
右の後輪に伝達される動力を伝動及び遮断自在な右のサイドクラッチを、右及び左の前輪の後側で機体の右側に備え、左の後輪に伝達される動力を伝動及び遮断自在な左のサイドクラッチを、右及び左の前輪の後側で機体の左側に備えると共に、
右の前輪と前記左のサイドクラッチとに亘って連係ロッドを接続し、左の前輪と前記右のサイドクラッチとに亘って連係ロッドを接続して、
右及び左の前輪が右に操向操作されると、左の前輪により前記連係ロッドを介して前記右のサイドクラッチが遮断状態に操作され、右及び左の前輪が左に操向操作されると、右の前輪により前記連係ロッドを介して前記左のサイドクラッチが遮断状態に操作されるように構成してある乗用型作業車。
【請求項1】
右の後輪に伝達される動力を伝動及び遮断自在な右のサイドクラッチを、右及び左の前輪の後側で機体の右側に備え、左の後輪に伝達される動力を伝動及び遮断自在な左のサイドクラッチを、右及び左の前輪の後側で機体の左側に備えると共に、
右の前輪と前記左のサイドクラッチとに亘って連係ロッドを接続し、左の前輪と前記右のサイドクラッチとに亘って連係ロッドを接続して、
右及び左の前輪が右に操向操作されると、左の前輪により前記連係ロッドを介して前記右のサイドクラッチが遮断状態に操作され、右及び左の前輪が左に操向操作されると、右の前輪により前記連係ロッドを介して前記左のサイドクラッチが遮断状態に操作されるように構成してある乗用型作業車。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−224963(P2006−224963A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−84691(P2006−84691)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【分割の表示】特願2002−180002(P2002−180002)の分割
【原出願日】平成14年6月20日(2002.6.20)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【分割の表示】特願2002−180002(P2002−180002)の分割
【原出願日】平成14年6月20日(2002.6.20)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
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