説明

乗用電動草刈機

【課題】小型化されたモータドライバを簡単な構成で効率的に冷却する乗用電動草刈機を提供する。
【解決手段】モアブレードを回転させるための草刈用モータ15と、草刈用モータ15の回転数を制御するモアモータドライバMDとを備え、バッテリー25の電力で回転するモアブレードで草を刈る電動ローンモア10であって、モアモータドライバMDを車体の前部に備えるドライバ収納部に備えるとともに、ドライバ収納部の前面部33の前面33Cに、外気を取り入れるためのスリット(空気取入部)33SLを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行用モータと、モアブレードと、そのモアブレードを駆動するモアブレード用モータと、走行用モータとモアブレード用モータに電力を供給するバッテリーとを備え、モアブレードの回転によって草刈を行う乗用電動草刈機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化防止の観点から、温室効果ガスを含む排気ガスを規制する動きが社会的潮流となってきた。この動きに対する対応は自動車産業において顕著であり、ハイブリッドカー、電気自動車など、いわゆるエコカーの開発が進められている。特に、近年、バッテリーを電源とした電気自動車の実用化に対する技術開発が活発化している。
【0003】
電気自動車では、搭載するバッテリーやモータの小型化に加えて、これらを制御する電子機器類の小型化も技術的課題となっている。しかし、電子機器類の小型化には、別の課題もある。すなわち、電子機器類の小型化は、その中に備える電子回路の集積化を必要とする。単位面積当たりの電子回路密度が高まると、電子回路の単位面積あたりの発熱量(回路を流れる電流)が増加し、発熱量の増加によって電子回路が正常に作動しなくなるという問題があった。したがって、電子機器類の小型化と電子機器類の冷却とは同時に解決しなくてはならない課題である。
【0004】
この2つの課題に対して、特許文献1では、インホイールモータのモータドライバに焦点をあてた技術的提案がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−172975号公報
【0006】
この文献では、モータドライバに備える電子回路を変更することによって上記技術的課題を克服することを目指したものである。すなわち、モータ駆動電圧を可変する電圧変更手段をモータドライバに備えるものである。詳しくは、電圧変更手段が、モータ駆動電圧をモータの低速回転域において低くし、高速回転域において高くし、低速回転時に不必要に過大な電流をモータドライバに流すことを防止し、モータドライバの発熱量を低減するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、このような技術開発は、作業車両の分野、特に、乗用の電動ローンモア(乗用電動草刈機)に焦点をあてたものではなく、この分野に固有の課題を考慮してなされていないのが現状である。すなわち、電動ローンモアなどの作業車両では、振動や衝撃が普通電気自動車に比べて大きく、振動や衝撃に弱い電子機器類を高度化、複雑化することは望ましくない。したがって、電子機器類を高度化、複雑化させることなく、これを小型化し、かつ、効率よく冷却することが必要である。そこで、この発明は、小型化されたモータドライバを簡単な構成で効率的に冷却する乗用電動草刈機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このため請求項1に記載の発明は、モアブレードを回転させるためのモアブレード用モータと、該モアブレード用モータの回転数を制御するモアモータドライバとを備え、バッテリーの電力で回転する前記モアブレードで草を刈る乗用電動草刈機であって、
前記モアモータドライバを車体の前部に備えるドライバ収納部に備えるとともに、該ドライバ収納部の前面に、外気を取り入れるための空気取入部を設けることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の乗用電動草刈機において、前記空気取入部に、飛散物の侵入を阻止するためのスクリーンを備えることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の乗用電動草刈機において、前記空気取入部の後方に隣接して、外気を取り入れることを補助するためのファンを備えることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の乗用電動草刈機において、左右一対のシャーシを備え、該シャーシの間に前記ドライバ収納部を備える乗用電動草刈機であって、
前記シャーシが前端部にて前方に向かって上に傾斜するように形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の乗用電動草刈機において、運転席と、
前記シャーシを上方から覆うカウリングと、
該カウリングの一部として形成され、前記運転席に運転者が座ったときに足を置くステップとを備え、
該ステップの前端部が、前記シャーシに沿うようにして前方に向かって上に傾斜して形成されることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の乗用電動草刈機において、前記空気取入部がスリットであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、モアブレードを回転させるためのモアブレード用モータと、そのモアブレード用モータの回転数を制御するモアモータドライバとを備え、バッテリーの電力で回転するモアブレードで草を刈る乗用電動草刈機であって、モアモータドライバを車体の前部に備えるドライバ収納部に備えるとともに、そのドライバ収納部の前面に、外気を取り入れるための空気取入部を設けるので、乗用電動草刈機が走行することで、外気を空気取入部よりドライバ収納部に効果的に取り入れることができる。これによって、モアモータドライバを効率よく冷却することができる。したがって、モアモータドライバを小型化・集積化することによって増加する発熱を効果的に冷却することができる。よって、小型化されたモータドライバを簡単な構成で効率的に冷却する乗用電動草刈機を提供することができる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、空気取入部に、飛散物の侵入を阻止するためのスクリーンを備えるので、モアブレードによって刈り取った草が飛散し、空気取入部より侵入することを防止することができる。これによって、モアモータドライバに飛散物が付着しすることによって生じる動作の不具合を防止することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、空気取入部の後方に隣接して、外気を取り入れることを補助するためのファンを備えるので、モアモータドライバをいっそう効率的に冷却することができる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、左右一対のシャーシを備え、そのシャーシの間にドライバ収納部を備える乗用電動草刈機であって、シャーシが前端部にて前方に向かって上に傾斜するように形成されているので、ドライバ収納部を一対のシャーシ間に配置しながら、乗用電動草刈機の全長を短く抑えることができる。乗用電動草刈機の全長を短くすることで、ホイルベースを短くすることができ、小回りの旋回を可能にする。これによって、乗用電動草刈機の作業性を向上させることができる。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、運転席と、シャーシを上方から覆うカウリングと、そのカウリングの一部として形成され、運転席に運転者が座ったときに足を置くステップとを備え、そのステップの前端部が、シャーシに沿うようにして前方に向かって上に傾斜して形成されるので、ステップの前端部の上面が運転席側に傾斜して配置される。これによって、運転者は、ステップの前端部に快適に足を載せることができ、作業の快適性を向上させることができる。
【0019】
請求項6に記載の発明によれば、空気取入部がスリットであるので、外気を有効に取り入れながら、かつ、飛散物が空気取入部から侵入するのを効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の自走式乗用電動草刈機の一例としての、電動ローンモアの側面図である。
【図2】その平面図である。
【図3】図1の要部拡大図である。
【図4】図3のカウリングを取り除いた図である。
【図5】図4の正面図である。
【図6】図4の上面部を取り除いた図である。
【図7】モアモータドライバとそれを冷却するためのファンの斜視図である。
【図8】前面部を説明するための、(a)は背面図、(b)はA矢視断面図、(c)は前面部に取り付けるスクリーンの正面図である。
【図9】モアモータドライバとファンの配置を説明するための要部拡大平面図である。
【図10】この発明の電動ローンモアの別の例の前面部の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ、この発明を実施するための最良の形態について詳述する。図1,2には、それぞれこの発明の乗用電動草刈機の一例としての、電動ローンモア10の平面図と左側面図を示す。電動ローンモア10は、その左右両側に備える一対のフレーム状のシャーシ11と、該シャーシ11の下方に、一対の前タイヤ(前輪)12と、一対の後タイヤ(後輪)13とを備える。また、前タイヤ12と後タイヤ13との間には、モアデッキ14を備える。モアデッキ14は略楕円状の縁のある皿型で、皿の底面を上にして備える。モアデッキ14の内側には、不図示のモアブレード(草刈刃)を、その長径方向に2つ並べて備える。このモアブレードの回転中心には、それぞれ草刈用モータ(モアブレード用モータ)15,15を取り付ける。なお、モアデッキ14は、その短径方向を(電動ローンモア10の直進方向より)やや右側に傾けて設けられる。すなわち、右側のモアブレードの回転中心は、左側のそれと比べて、直進方向やや後方となる。
【0022】
シャーシ11の上には、カウリング(本体カバー)20を被せる。カウリング20は、シャーシ11全体を覆うものであり、強化樹脂、軽量鋼板などで一体に形成される。後タイヤ13のやや前方でカウリング20上には、運転席21を設ける。運転席21の左右側方には、電動ローンモア10の走行操作をするための走行操作レバー22,22をそれぞれ備える。右の走行操作レバー22の外側には、モアデッキ14の地面からの高さを調節するためのモアデッキ調節レバー24を備える。運転席21の左右それぞれの下方には冷却口26A,26Aを、運転席21の前側の下方には、冷却口26Bを設ける。冷却口26A,26Bは、後述するバッテリー25を冷却するための空気を取り入れるためのものであり、カウリング20に形成された開口である。また、運転席21の後方には排気口27を2つ設ける。排気口27,27は、冷却口26A,26Bから取り入れられた空気が車体内を通過して排出されるためのものであり、カウリング20に形成された開口である。一方、運転席21の前方には、足置きのためのステップSTを備える。このステップSTはカウリング20として一体に形成される。
【0023】
なお、電動ローンモア10は、草刈りに加えて、走行も電動モータによってまかなうものであり、一対の後タイヤ13,13の内側にそれぞれ走行用モータ16を備え、この走行用モータ16によって後タイヤ13,13を駆動させる(なお、後タイヤ13,13のホイール内にそれぞれホイールモータを備えてもよい)。
【0024】
前述の2つの草刈用モータ15および2つの走行用モータ16は、好ましくは、ネオジウムなど希土類の磁石を用いると高性能となる。これら草刈用モータ15、走行用モータ16の電力は、同一のバッテリーから供給される。バッテリー25は、カウリング20内で、運転席21の下方で、かつ、シャーシ11後部に5つ平置きされる(バッテリー25は5つに限定されるものではない)。詳しくは、バッテリー25を、後タイヤ13,13のアクスル間で、かつ、シャーシ11の上に(電動ローンモア10の直進方向に対して)3つ並べて備え、それら3つのバッテリー25の前後に、これらと直角に1つずつ備える。また、別の1つのバッテリー25をシャーシ11の後部下方に備える。詳しくは、1つのバッテリー25を、後タイヤ13,13の後方で、かつ、シャーシ11の下方に、走行方向に対して直交する方向に備える。なお、このバッテリー25は、前述の5つのバッテリー25と同一の仕様とする。
【0025】
これら6つのバッテリー25は、後述するブラケットを介してシャーシ11にボルトで取り付けられる。なお、バッテリー25は3個を直列に接続して1セットとし、この例では、これを2セット備えている。したがって、バッテリー25の数は3個であってもよい。その場合には、シャーシ11の上に(電動ローンモア10の直進方向に対して)3つ並べるものとする。もちろん、この発明の乗用電動草刈機では、バッテリー25はこのような数の規制を受けるものではなく、あらゆる個数を配置することが可能である。
【0026】
左後タイヤ13のフェンダーには、バッテリー25を充電する際にプラグを差し込むための給電口28を備える。給電口28は、カウリング20に蓋付の開口である。給電口28にはプラグを備え、ローンモア10の非作業時に、家庭用電源に接続した電気コードを差し込んで、バッテリー25を充電する。バッテリー25とプラグとの間にはACアダプタ、インバータ、充電装置などを適宜備える。
【0027】
バッテリー25の上には、不図示の制御部を備える。この制御部は、電動ローンモア10の走行用モータ16を制御する。制御部は、走行操作レバー22の傾動量(後述)に応じて走行用モータ16の回転方向および回転速度を制御する。制御部は、走行用モータ16の制御に加えて、草刈用モータ15の回転制御、さらにバッテリー25の微小な電圧の変動を補正する役割も担っている。なお、草刈用モータ15の回転は、走行用モータ16の回転数と連動するように制御される。すなわち、走行スピードを速めると、モアブレードの回転数も速まり、走行スピードを落とすと、モアブレードの回転数も遅くなる。
【0028】
前タイヤ12,12はそれぞれ、シャフトを介して前タイヤブラケット17に回転自在に取り付けられている。前タイヤ12,12には駆動モータは接続されておらず、それぞれが自由に回転するものとする。また、前タイヤブラケット17は、シャーシ11に対して回動自在に取り付けられている。2つの前タイヤブラケット17,17は、それぞれが自由に回動するものとする。
【0029】
走行操作レバー22は傾動自在に設けられ、運転者がこれを前に倒すと走行用モータ16が前進方向に回転する。一方、走行操作レバー22が後に倒されると走行用モータ16は後進方向に回転する。さらに、操作レバー22の傾動度合いによって走行用モータ16の回転速度が変化する。すなわち、操作レバー22を大きく前(後)に倒すと、走行用モータ16が前進(後進)方向により早く回転し、操作レバー22を小さく前(後)に倒すと、走行用モータ16が前進(後進)方向にゆっくりと回転する。運転席21の左右両側に備えられた操作レバー22,22は、右側の操作レバー22を操作すると、右側の後輪13のモータが回転し、左側の操作レバー22を操作すると左側の後輪13のモータが回転するようになっている。運転者は、左右の走行操作レバー22,22を前後に適宜操作することで、電動ローンモア10の直後進、左右折、旋回などを行うことができる。
【0030】
そして、右側の走行操作レバー22には、そのグリップ部に隣接して、モアデッキ14内の2つのモアブレードの回転をON、OFFするモアブレードスイッチ23を設ける。モアブレードスイッチ23は、リミット型のスイッチを用い、運転者が指で押下するとONとなり、再度押下するとOFFとなる。
【0031】
左側のシャーシ11の略中央部には、モアデッキ14を昇降させるためのデッキ支持アーム18の一端を回動自在に取り付ける。デッキ支持アーム18の他端は、ステー19a(図1の裏面側は19a´)を介してモアデッキ14に取り付けられている。なお、ステー19aはモアデッキ14の表面に溶接などで固設されている。また、デッキ支持アーム18は、ステー19aに対して回動自在に取り付けられている。なお、デッキ支持アーム18の回動中心は、シャーシ11との連結部である。このデッキ支持アーム18は、不図示のリンク機構を介して、モア調節レバー24に連結されている。一方、モアデッキ14の前側には、別のステー19b(図1の裏面側は19b´)が固設されている。このステー19bには、シャフトSの一端が回動自在に取り付けられている。シャフトSの他端は、不図示のステーを介してシャーシ11に回動自在に取り付けられている。
【0032】
図3〜6にはこの例の要部を示す。図3は、図1の一部拡大図、図4は、図3のカウリング20を取り除いたもの、図5は、図4の状態で、電動ローンモア10を正面から見た図、図6は、図4の上面部32を取り除いた図である。
【0033】
電動ローンモア10の車体の前端部FTには、草刈用モータ15,15の駆動をコントロールするための2つのモアモータドライバMD,MDを内装する。詳しくは、一対のシャーシ11,11の前端部(すなわち、電動ローンモア10の前端部FT)が前方(電動ローンモア10の前進方向)に向かって上方に傾斜して形成されており、この部分において、シャーシ11,11の間にドライバ収納部を備える。ドライバ収納部は、上面部32、前面部33、底部35、側部34にて構成される。なお、左右のモアモータドライバMD,MDはそれぞれ、左右の草刈用モータ15,15(すなわち、左右のモアブレード)に対応している。
【0034】
上面部32は、矩形の鉄板を山折り、谷折りに屈曲させて3パートを構成する。3パートは、それぞれ、前部32A、後部32B、そして、前端部32Cとなる。前端部32Cには貫通孔を形成し、ボルトB1にて前面部33に固設する。後部32Bには、貫通孔を形成し、ボルトB2にてデッキ板31に固設する。なお、デッキ板31は左部、中央部、右部の3つのパートがボルトによって連結されて構成されている。デッキ板31は、シャーシ11,11の間に渡しかけられてボルトB5によってシャーシ11,11と固定される。なお、上面部32の前部32Aは、シャーシ11の形状に沿うように、(後部32Bに対して)斜め前方(電動ローンモア10の前進方向)に向かって屈曲して形成されている。
【0035】
前面部33は、鉄製で、縦断面視にて、2段階に折れ曲げて、天面33A、中間面33B、前面33Cにて構成される。前面部33は、(電動ローンモア10の)幅方向に沿うように形成され、前面33Cには、後述するスリット(空気取入部)が形成されている。前面部33は、幅方向の両側に取付部33D,33Dを一体に備える。取付部33Dには貫通孔を形成し、ボルトB3にてシャーシ11の前端の上面に固設する。また、前面33Cには貫通孔を形成し、ボルトB4にて底部35の前端の取付フラップ(後述)に固設する。この前面部33は、タイヤブラケット17,17を回転自在に支持するフロントポール28,28の間に備えられる。フロントポール28は、鉄製の円筒で、側面には、シャーシ11の前端を固設する。また、側面の上部には、固定ピンを突設し、カウリング20の先端を回動自在に掛け止める。
【0036】
底部35は、矩形の鉄板を中央部にて湾曲させるとともに、前端を折り曲げて取り付け代としての取付フラップ35Aを形成し、また、後端を折り曲げて取り付け代としての取付フラップ35Bを形成する。取付フラップ35Aには貫通孔を設け、ボルトB4を介して前面部33に取り付ける。一方、取付フラップ35Bには貫通孔を設け、ボルトB5を介して、シャーシ11の底面に取り付ける。
【0037】
なお、側部34は、鉄板で形成され、上面部32と底部35との間に設けられている。
【0038】
モアモータドライバMDは、底板35上に載置されるとともに、両側を、固定板37,37によって固定されている。モアモータドライバMDは、水平面から電動ローンモア10の前進方向の斜め上方に向けて所定の角度αをもって傾斜して備えられる(すなわち、モアモータドライバMDを載置する部分の底部35が水平面から角度αだけ斜め上方に向けて傾斜して形成される。この角度αは、シャーシ11が前端部FTにて前方に向かって上に傾斜する角度とほぼ同じである)。モアモータドライバMDの前面には、これを冷却するためのファンFがボルトにて取り付けられる(図7)。
【0039】
なお、カウリング20に一体に形成されたステップSTは、運転席21の運転者が座ったときに足を置くためのものである(ステップSTは、運転者が電動ローンモア10に乗車、降車する際に足を掛けるためのものでもある)。カウリング20は、シャーシ11,11を上から覆うように設けられるものであり、ステップSTは、電動ローンモア10の前側部分に設けられる。このため、シャーシ11が電動ローンモア10の前端部FTにて前方に向かって上(斜め前方)に傾斜するのに沿うようにして、ステップSTの前端部ST1を前方に向かって上(斜め前方)に傾斜するように形成される。すなわち、ステップSTの前端部ST1の表面は、運転席21側に向かって傾いて形成されているので、運転者が運転席21に座ったとき、ステップSTの前端部ST1に快適に足を載せることができる。
【0040】
図8には、前面部33の詳細を示す。前面33Cには、外気を取り入れるためのスリット(空気取入部)33SLを左右に3つずつ備える。そして、前面33Cの背面側には、スリット33SLを覆うようにスクリーンSCを取り付ける。スクリーンSCは、スリット33SLから空気を取り入れる際に、刈った草や塵などの侵入を防ぐためのものであり、枠部SCFとその内側に設けられる網SCSからなる。枠部SCFには貫通孔SCHを設ける一方、前面部33の前面33Cには長孔33Hを形成し、両者をボルトBTにて着脱自在に固設する。
【0041】
なお、スリット33SLは略鉛直方向に延びる前面33Cに形成され、ファンFが外気を取り入れやすいように設けられる。また、ファンFが外気を効率的に取り込むことができるように、両者は近接して配置される。
【0042】
図9において、符号MDIは、バッテリー25からモアモータドライバMDへの電源入力端子、符号MDOは、モアモータドライバMDから草刈用モータ15へ電源出力端子、符号MDSは、コントローラからの入力信号端子である。
【0043】
なお、ファンFは、走行操作レバー22に備えるモアブレードスイッチ23をONとすると回転を開始し、モアブレードスイッチをOFFとすると回転を停止するように構成されている。
【0044】
このように構成された電動ローンモア10で芝刈りをするときは、運転者は、走行操作レバー22に備えるモアブレードスイッチ23をONにする。すると、2つの草刈用モータ15が回転し、その駆動力で2つのモアブレードが回転する。モアブレードスイッチ23をONにすることで、モアモータドライバMDのファンFも回転し、外気をスリット33SLより取り込んでモアモータドライバMDに送風する。そして、走行操作レバー22を適宜操作して、電動ローンモア10を走行させる。電動ローンモア10を走行させることで、いっそう外気を取り込むことができ、モアモータドライバMDをいっそう効果的に冷却することができる。
【0045】
一方、芝刈りを開始することで、モアブレードで刈った細かい芝(飛散物)が空中に巻き上げられ、その一部がモアブレードの前方にあるスリット33SLにまで達する。スリット33SLはファンFの動作によって、前面部33の内側より吸引されているので、細かい芝や空中に浮遊する塵(飛散物)をスリット33SLに寄せ付けやすい。スリット33SLに到達した細かい芝や塵は、スクリーンSCによってドライバ収納部内への侵入が阻止される。
【0046】
芝刈りを終了するときは、走行操作レバー22に備えるモアブレードスイッチ23をOFFにする。これに連動して、ファンFの回転が停止して、モアモータドライバMDへの送風が停止する。
【0047】
なお、上述の例では、シャーシ11が前端部FTにて前方に向かって上に角度αだけ傾斜して設けられ、これに沿うように、モアモータドライバMDを載置する部分の底部35も水平面から角度αだけ斜め上方に向けて傾斜して形成されたが、この発明はこれに限定されるものではなく、シャーシ11の前端部FTを水平に形成してもよい。そして、これに合わせて、モアモータドライバMDを載置する部分の底部35も水平に形成し、モアモータドライバMDを水平に備えるようにしてもよい。
【0048】
また、上述の例では、スリット33SLの後方にファンFを配置して、モアモータドライバMDへの外気の取り込みを補助するようにしたが、この発明はこれに限定されるものではない。スリット33SLが電動ローンモア10の最前面に設けられていることから、電動ローンモア10が走行することで、外気を好適に取り込むことができるので、ファンFを設けず、スリット33SLから取り込まれる外気によって、モアモータドライバMDを冷却するようにしてもよい。
【0049】
さらに、上述の例では、スリット33SLの背面側にスクリーンSCを設け、スリット33SLより取り込まれる外気に含まれる粉塵や刈り取った草などが入り込むことを防止したが、この発明はこれに限定されるものではなく、スクリーンを設けなくてもよい。また、スリットの上下方向の開口幅を適宜狭くすることで、粉塵などの進入を低減するように設計してもよい。
【0050】
また、上述の例では、モアブレードスイッチ23を右側の走行操作レバー22にのみ備え、モアブレードスイッチ23をON・OFFすることで、2つのモアブレードを同時にON・OFFさせるように構成したが、この発明はこれに限定されるものではなく、モアブレードスイッチ23を左右両方の走行操作レバー22,22に備え、右側の走行操作レバー22のモアブレードスイッチ23を右側のモアブレードのON・OFF用とするとともに、左側の走行操作レバー22のモアブレードスイッチ23を左側のモアブレードのON・OFF用とするように構成してもよい。この場合、右側の走行操作レバー22に備えるモアブレードスイッチ23をON・OFFすると、右側の草刈用モータ15の回転を司るモアモータドライバMDのファンFが回転し、左側の走行操作レバー22に備えるモアブレードスイッチ23をON・OFFすると、左側の草刈用モータ15の回転を司るモアモータドライバMDのファンFが回転するように構成する。
【0051】
加えて、図10に示すように、前面部133に、スリットに代えて、空気取入部としての開口Oを形成してもよい。この例では、開口Oの形状を矩形としているが、これに限定されるものではなく、正円や楕円であってもよいし、どのような形状であってもよい。そして、前面部133の背面側に、開口Oを覆うようにスクリーンSC´を取り付ける。なお、符号133A、133B、133Cはそれぞれ、天面、中間面、前面である。また、符号133Hは長孔、符号133Dは取付部である。スクリーンSC´は、枠部SC´Fと網SC´Sで構成され、枠部SC´Fに形成された貫通孔と前面133Cに形成された長孔133Hとを合わせて、ボルトを通してスクリーンSC´を前面部133に取り付ける。前面部133は、取付部133Dを介してボルトにてシャーシ11に取り付ける。
【0052】
さらに、モアモータドライバMDは、水平面に沿って配置されなくてもよい。この場合、シャーシの前端部も前方(電動ローンモア10の前進方向)に向かって上方に傾斜して形成せずに水平に設け、ドライバ収納部を一対のシャーシの間に水平に設ける。このようにすることで、ドライバ収納部を構成する前面部に形成される空気取入部と、モアモータドライバMDの前面(および/またはモアモータドライバの前面に設けるファン)とが平行に対峙して配置されることになり、外気をより無駄なく取り入れることができ、モアモータドライバMDを効率的に冷却することができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
この発明の乗用電動草刈機は、芝刈りに限定されるものではなく、草を刈るためのあらゆる作業に適用しうる。また、走行駆動部はモータに限定されるものではなく、エンジンであってもよい。
【符号の説明】
【0054】
10 電動ローンモア(乗用電動草刈機)
11 シャーシ
14 モアデッキ
15 草刈用モータ(モアブレード用モータ)
16 走行用モータ
20 カウリング
21 運転席
25 バッテリー
32 上面部(ドライバ収納部)
33 前面部(ドライバ収納部)
33SL スリット(空気取入部)
34 側部(ドライバ収納部)
35 底部(ドライバ収納部)
F ファン
FT (電動ローンモア10の)前端部
MD モアモータドライバ
SC スクリーン
ST ステップ
ST1 (ステップSTの)前端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モアブレードを回転させるためのモアブレード用モータと、該モアブレード用モータの回転数を制御するモアモータドライバとを備え、バッテリーの電力で回転する前記モアブレードで草を刈る乗用電動草刈機であって、
前記モアモータドライバを車体の前部に備えるドライバ収納部に備えるとともに、該ドライバ収納部の前面に、外気を取り入れるための空気取入部を設けることを特徴とする、乗用電動草刈機。
【請求項2】
前記空気取入部に、飛散物の侵入を阻止するためのスクリーンを備えることを特徴とする、請求項1に記載の乗用電動草刈機。
【請求項3】
前記空気取入部の後方に隣接して、外気を取り入れることを補助するためのファンを備えることを特徴とする、請求項1または2に記載の乗用電動草刈機。
【請求項4】
左右一対のシャーシを備え、該シャーシの間に前記ドライバ収納部を備える乗用電動草刈機であって、
前記シャーシが前端部にて前方に向かって上に傾斜するように形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の乗用電動草刈機。
【請求項5】
運転席と、
前記シャーシを上方から覆うカウリングと、
該カウリングの一部として形成され、前記運転席に運転者が座ったときに足を置くステップとを備え、
該ステップの前端部が、前記シャーシに沿うようにして前方に向かって上に傾斜して形成されることを特徴とする、請求項4に記載の乗用電動草刈機。
【請求項6】
前記空気取入部がスリットであることを特徴とする、請求項1に記載の乗用電動草刈機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−182729(P2011−182729A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−52855(P2010−52855)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】