説明

二重積分によって計算された測定に関連した絶対位置測定を使用することにより固体の移動を検出するための方法

本発明は、二重積分によって計算された測定に関連した絶対位置測定を使用して、固体の移動を検出するための方法に関するものであって、例えば、人体の移動の検出を意図している。本発明による方法においては、固体(2)の加速度を測定し、この測定の二重積分を行い、これにより、固体の第1並進移動に関する順次的な値を獲得し、さらに、特に回転といったような固体の少なくとも1つの第2自由度に関するの絶対位置測定を行う。本発明においては、回転測定を、並進移動測定へと変換し、並進移動測定を使用して第1並進移動を修正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物の移動をより詳細には固体の移動を、測定するための方法、言い換えれば『検出する』ための方法、に関するものである。すなわち、固体の移動を測定するための方法に関するものである。
【0002】
固体の移動には、並進移動と回転移動とが存在することを、思い起こされたい(つまり、単純な並進移動だけにも、また、単純な回転移動だけにも、限定されるものではない)。
【0003】
本発明は、特に、人体の移動の検出に適用される。
【0004】
したがって、本発明は、例えば、スポーツの分野や、医学の分野や、映画や、マルチメディアや、仮想現実、といったようなものに応用することができる。
【0005】
本発明においては、人の移動が速い場合であっても、信頼性高くかつ低コストでもって、移動を検出することができる。
【0006】
特許文献1を参照することができる。この特許文献1は、Dominique David 氏 および Yanis Caritu 氏を発明者として“Device for Rotational Motion Capture of a Solid”という題名で2003年4月2日付けで出願された特許文献2の国際公開である。
【0007】
本発明は、特許文献1に記載された技術を補完し得るものである。その場合、『姿勢制御システム』と称されるデバイスが使用され、このデバイスは、少なくとも1つの角度位置センサ(好ましくは、少なくとも1つの加速度計および少なくとも1つの磁力計)を備えている。本発明を使用すれば、とりわけ速い移動に関して、特許文献1の技術における性能を向上させることができる。
【背景技術】
【0008】
性能の差こそあれ、可動対象物の移動を決定することに関して、様々な技術が公知である。特に、二重積分方法が公知である。二重積分方法においては、1つまたは複数の加速度計によって実行された加速度測定を使用する。
【0009】
この二重積分方法は、『慣性システム』と称される位置決めシステムにおいて実施され、速い移動に対してさえ、より詳細には、素速い速度変化を伴う移動に対してさえ、良好な結果をもたらす。しかしながら、加速度計によって得られた信号の二重積分は、位置ドリフトの発生源となる。
【0010】
このドリフトを制限し得るよう、特に航空宇宙の分野においては、高性能の加速度計が使用されるようになってきている。しかしながら、うまくないことに、そのような高性能の加速度計のコストは、非常に高価なものである。
【0011】
また、移動を測定するものとして、絶対位置測定方法が公知である。この方法においては、1つまたは複数の加速度計と、1つまたは複数の磁力計と、を使用する。この方法は、ドリフトの方法を引き起こさない。しかしながら、この方法は、速度変化が遅いような対象物の移動の測定にしか、使用することができない。
【特許文献1】国際公開第03/085357号パンフレット
【特許文献2】PCT/FR03/01025
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の目的は、上述したような固体の移動を測定するための公知方法における様々な欠点を克服することである。すなわち、絶対位置測定方法と二重積分方法とにおける様々な欠点を克服することであり、これにより、位置ドリフトの発生源とならないような方法を提供するとともに、速度変動が高速であるような移動に関する研究を実施し得る方法を提供することである。
【0013】
本発明の特別の見地においては、絶対位置測定方法と二重積分方法およびを組み合わせ、これにより、絶対位置測定方法によって得られた測定を使用して二重積分方法によって得られた測定を修正する。その場合、絶対位置測定による測定は、移動を測定すべき対象物が速度を落とした際に、あるいはより詳細には、この固体の速度がゆっくり変動する際に、考慮される。
【0014】
より詳細には、本発明の主題は、固体の移動を測定するための方法であって、固体の少なくとも1つの第1並進移動(第1自由度)を測定し、固体の加速度の測定と、この行われた測定の二重積分と、を行い、これにより、第1並進移動に関する一連の値を獲得し、このような方法において、少なくとも1つの回転センサを使用して、固体の少なくとも1つの第2自由度の絶対位置測定を行い、その際、その第2自由度を、回転移動とし、この回転移動の測定を、並進移動の測定へと変換し、この並進移動測定を使用することにより、第1並進移動を修正する。
【0015】
本発明においては、第2自由度の測定を初期条件として使用することにより、二重積分によって、第1並進移動に関して先に得られた値に続くような値を得る。
【0016】
本発明においては、絶対位置測定と、固体に関する加速度測定とを、同時に行うことができる。したがって、絶対位置測定の各々は、固体に関する加速度測定と同時に行れる。
【0017】
好ましくは、回転移動から並進移動への変換に際しては、固体に関してのおよび/または移動に関しての運動モデルでありかつ回転移動と並進移動との間の関係を決定し得るような運動モデルを使用する。
【0018】
回転センサは、好ましくは、加速度計および磁力計の中から選択される(よって、第2自由度は、少なくとも1つの加速度計、および/または、少なくとも1つの磁力計、を使用して測定される)。
【0019】
本発明の特別の実施形態においては、第1並進移動は、回転センサとしても機能する並進移動センサを使用して、測定される。
【0020】
好ましくは、移動の遅さに関する基準を選択し(より詳細には、固体の速度変化の遅さに関する基準を選択し)、第2自由度の測定が基準に適合した場合には、第2自由度の測定を使用して、第1並進移動を修正する。
【0021】
移動の遅さに関する基準は、固体の加速度のノルムの関数が所定しきい値を下回ることとすることができる。
【0022】
固体の加速度ノルムの関数は、このノルムそのものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明は、添付図面を参照しつつ、本発明を何ら限定するものではなく単なる例示としての好ましい実施形態に関する以下の詳細な説明を読むことにより、明瞭となるであろう。
【0024】
本発明の一例においては、本発明は、固体に関する6個の自由度の値を測定することにより、対象物のより詳細には固体の位置を決定することを追求するものである。
【0025】
特許文献1に記載された姿勢制御デバイスは、固体の角度に関する3つの自由度を測定することができる。本発明は、慣性デバイスの性能を増強することにより、この公知デバイスを補完することができる。
【0026】
本発明の独創性は、提案している融合のタイプに存在する、すなわち、絶対位置測定センサを使用した技術と慣性センサを使用した技術との融合に存在する。
【0027】
絶対位置測定センサは、固体の角度位置に関する絶対位置の測定を提供する姿勢制御ユニットである。このような測定は、固体が静止している場合には、正確である。しかしながら、このような測定は、固体が加速を受けている場合には、誤差を有したものとなる。この誤差は、加速が大きいほど、大きなものとなる。
【0028】
慣性センサは、1つまたは複数の加速度計から構成され、このような加速度計の精度は、できるだけ良好なものとされる。可能であれば、互いに直交する3つの感度軸線をそれぞれが有した3つの加速度計を使用することができる、あるいは、互いに直交する3つの感度軸線を有した1つの加速度計を使用することができる。
【0029】
測定の方法は、以下のようなものである。
【0030】
固体の並進移動のデータを、1つまたは複数の加速度計によって提供された信号の二重積分によって計算し、回転移動のデータを、姿勢制御ユニットに基づいて計算する。
【0031】
姿勢制御ユニットは、対象をなす移動が速いかあるいは遅いかを決めることができる、したがって、例えば姿勢制御ユニット内に設けられた加速度計によって提供された測定の振幅の絶対値を評価することによって、提供された値が正確なものであるかあるいは誤ったものであるかを決めることができる。
【0032】
遅い移動フェーズにおいては、姿勢制御ユニットのデータを使用することにより、固体の移動が修正される。
【0033】
速い移動フェーズにおいては、加速度計(好ましくは、高精度の加速度計)の出力信号が、2回にわたって積分され、これにより、姿勢制御ユニットによって提供される結果と比較して、より正確な結果が提供される。
【0034】
この方法が、一般的にすべての移動に関する検出を行い得るものではないことに注意されたい。それでもなお、機械的に連結された剛直なセグメントからなるアセンブリであってさえ、この方法は、理想的には、人体の移動の検出を行い得るものであり、より一般的には、脊椎動物の身体の移動の検出を行い得るものである。場合によっては、この方法は、例えば弾道移動といったように、固体の移動の事前モデルが既知である場合に対しても、適用可能である。
【0035】
人体の場合には、身体の完全な姿勢は、骨セグメント上に配置された姿勢制御システムの接続により、測定される。この測定は、身体の移動速度が速い場合には、誤差を伴う。
【0036】
そこで、本発明による一方法においては、身体の移動が速いフェーズ(このフェーズは、一般に、身体が周期的な移動しか行えないことにより、短いものである)における二重積分を使用し、身体の移動に関する加速度が小さなものとなった際にはいつでも、修正モードを変更する。
【0037】
図1は、本発明による一方法を実施するためのデバイスを概略的に示している。
【0038】
このデバイスにより、固体2の移動を測定することができる。このデバイスは、以下の部材を備えている。
−1つまたは複数の加速度計4。
−1つまたは複数の加速度計6、および/または、1つまたは複数の磁力計8。
−本発明に基づき、加速度計4および/または加速度計6および/または磁力計8によって提供されたデータを格納して処理し得るとともに、処理結果を格納して処理し得るような、電子的手段10。
【0039】
加速度計4および/または加速度計6および/または磁力計8は、移動を測定すべき固体2に対して取り付けられる。電子的手段10は、固体2に対して取り付けることもまた取り付けないこともできる。
【0040】
したがって、電子的手段10は、加速度計4および/または加速度計6および/または磁力計8と協働することにより、本発明の実施を可能とする。
【0041】
特に、電子的手段10は、加速度計4と協働することによって二重積分方法を実施し得るとともに、加速度計6および/または磁力計8と協働することによって絶対位置測定方法を実施することができる。
【0042】
図1においては、符号12が、電子的手段10からの出力を示している。出力すなわち処理結果は、例えば結果表示用ディスプレイのためといったように、回収することができる。
【0043】
以下、本発明の様々な例について説明する。それら例においては、融合的な使用は、角度データおよび加速度データについて適用されている。
【0044】
第1の例は、恒久的に修正された二重積分に関するものである。
【0045】
各測定ポイントには、一連をなす複数のセンサが設置されている。これらセンサは、1〜3個の加速度計と、可能であれば、1〜3個の磁力計と、を備えている。
【0046】
各々が感度軸線を有した3つの加速度計を使用する場合、それら3つの加速度計は、有利には、それぞれ対応する感度軸線が互いに直角の三面体を形成するようにして、配置される。
【0047】
同じことは、各々が感度軸線を有した3つの磁力計を使用する場合にも、当てはまる。
【0048】
この第1の例においては、加速度データは、2度にわたって恒久的に積分される。したがって、このようにして得られた出力信号は、二重積分に起因する。しかしながら、この二重積分がドリフトを受けることが公知であり、ドリフトの振幅は、使用される加速度計の品質に依存する。
【0049】
本発明においては、この欠点を克服し得るよう、角度制御システム(1つまたは複数の加速度計、および、可能であれば、1つまたは複数の磁力計)からのデータを、恒久的にかつ並行して、獲得する。
【0050】
また、この角度データの品質インデックスについても、計算する。これは、静止時に測定された重力加速度gのノルム‖g‖に対しての、加速度ベクトルaのノルム‖a‖についての、関数である。すなわち、例えば、比‖a‖/‖g‖についての関数とすることができる。
【0051】
この品質インデックスは、移動の遅さに関しての基準として使用される。すなわち、より詳細には、この移動の速度変化の遅さに関しての基準として使用される。
【0052】
移動が十分に遅い場合、すなわち、この品質インデックスを所定しきい値と比較しこれにより品質インデックスがしきい値よりも小さいかどうかを決定することによって移動が十分に遅いと決定された場合、角度データを使用することにより、対象となっている固体の移動に起因する位置を計算することができる。
【0053】
そして、この位置は、その後の二重積分期間の開始位置として使用される。
【0054】
移動が実際に静的なままである場合には、測定から予想される精度によって決定された時間間隔の後に、修正を行う。その結果、二重積分に起因するドリフトの評価は、この時間間隔内において要求された精度と比較して、より小さいままに維持される。
【0055】
図2を参照して説明する第2の例は、いわゆる『可変レバアーム』方法に関するものである。
【0056】
図2は、適切な手段18を使用して互いに連結された2つの剛直部分14および16を示している。例えば、部分14は、アームとされ、部分16は、前方アームとされ、それらのジョイント18は、エルボーとされる。
【0057】
本発明においては、前方アーム16に、互いに距離をおいた状態で、2つのアセンブリ20,22が配置される。
【0058】
各アセンブリは、1〜3個の加速度計を備えており、測定ポイントを形成している。3つの加速度計を備えている場合、それら加速度計は、それらの感度軸線が互いに直角の三面体を形成するようにして、取り付けられる。2つの測定ポイント20および22の少なくとも一方は、さらに、3つの磁力計を備えており、これら磁力計の感度軸線は、有利には互いに直角とされたような、三面体を形成する。
【0059】
図2において矢印Rによって示しているような、前方アーム16の回転移動時には、2つのアセンブリ20および22は、異なる加速度を記録する。なぜなら、各アセンブリによって記録される加速度が、回転中心からの距離に依存するからである。すなわち、この例においては、エルボー18からの距離に依存するからである。
【0060】
加速度の差を使用することにより、重力の寄与を除去した後における加速度成分を評価することができる。
【0061】
その後、この測定の評価は、合計で6個のセンサ(3個の加速度計、および、3個の磁力計)を備えた2つのアセンブリの一方によって測定された際に、全体の加速度から差し引くことによって、回転角度の計算(特許文献1を参照)において使用される。これにより、速い移動に基づく擾乱の影響を受けないものとされた角度測定に対してアクセスすることができる。
【0062】
これらのすべての計算は、センサ20および22によって提供される信号を受け取る電子的処理手段24内において行れる。
【0063】
第3の例は、移動モデルの使用に関するものである。
【0064】
この第3の例は、いくつかの移動が、自由度の数に関して、非常に制限されているという事実に基づいている。例えば、人体の場合には、太腿は、歩いている時および走っている時には、回転の自由度は、実際に、1つでしかない。
【0065】
この場合、対象となっている移動は、単一のパラメータの単一の値によって、記述することができる。したがって、測定される加速度の最大値は、回転全体に関しての情報を与えることができる。
【0066】
上記考察は、そのような結果を決定する生理学的研究に基づいている。
【0067】
したがって、この第3の例において使用される本発明による方法は、以下のようなものである。
【0068】
まず最初に、開始位置を知る。これは、容易に確認可能である。なぜなら、停止位置に関するものであるからである、あるいは、回転移動または並進移動の戻り経路に関するものであるからである。加速度ベクトルのノルムの最大値は、後のフェーズにおいて、感度軸線どうしが互いに直交した三面体を形成している3つのセンサによって、測定される。この操作は、新たな特徴的ステップが認識され既知となるまで、継続される。
【0069】
このデータセットを使用することにより、移動全体を定量化するのに必要なパラメータを抽出する。このステップは、もはや、リアルタイムで行われない。なぜなら、(わずかな)タイムシフトを伴って、移動の全体に関する知識を必要とするからである。
【0070】
本発明のいくつかの他の例について以下説明する。
【0071】
まず最初に、慣性センサに基づいて移動の測定を行う技術においては、同じ欠陥を受けることを思い起こされたい。すなわち、様々な起源の雑音(特に、電子雑音および生理学的雑音)の二重積分によって測定ドリフトが引き起こされることを思い起こされたい。そのような雑音は、測定信号に対して追加される。
【0072】
本発明の一見地においては、この問題点は、特許文献1により公知のデバイスに基づく技術を使用して、解決される。すなわち、そのような技術を使用することにより、角度位置センサおよび磁界センサを使用して角度的な絶対位置測定を行うことができる。
【0073】
この技術の独創性は、以下の3つの動作モードの使用に存在する。
−1つまたは複数の加速度度計および/または1つまたは複数の磁力計を使用しての、角度的絶対位置の測定。
−振舞いモデルの使用(後述するような人体に関する例を参照されたい)。これにより、絶対位置として測定された角度を、空間内における可動固体(例えば、手)の実効的並進移動に対して、関連づけることができる。
−好ましくは高精度のものとされた加速度度計により得られた信号の二重積分に基づく移動の計算。
【0074】
これらの3つの動作モードを組み合わせて使用することにより、後述するように、さらに、集められたデータどうしを結合させるための適切な方法が提供される。
【0075】
この方法は、特許文献1に記載されているデータ結合方法に類似している。この場合の複雑さは、十分に速い移動が許容されており、重力に対して加速度成分が重ね合わされるという事実に起因している。この加速度成分は、3つの追加的な未知数(3つの軸に沿って)を追加する。しかしながら、高精度の加速度度計は、さらに、追加的なデータ項目をもたらす。
【0076】
アルゴリズムは、以下のとおりである。
(a)移動状態においては、以前のステップにおいて計算した状態(位置、速度、加速度)を使用する。
(b)これを使用することにより、センサ出力部分のところにおいて予想される測定値を決定する。
(c)従来の数学的最適化手法(例えば、勾配下降方法、あるいは、より最近の同様の方法)を使用して、移動の初期条件値を修正する。
(d)センサ出力部分において評価される値が実際の測定値に対して十分に近似するまで、ステップ(a)へと戻る。
【0077】
本発明の一例は、6個の自由度を有した人体の移動の検出に関して、以下に与えられる。
【0078】
この例は、図3に概略的に示されている。ここでは、腕に限定されているけれども、身体全体に対して一般化することができる。
【0079】
図3においては、符号26は、肩を示しており、符号28は、上腕を示しており、符号30は、肘を示しており、符号32は、前腕を示しており、符号34は、手を示している。
【0080】
手の初期位置が、符号36によって示されており、手の最終位置が、符号38によって示されている。
【0081】
手の移動は、振幅Dにわたって鉛直方向に並進移動を行っているとともに、肘を回転中心として角度αにわたって回転移動している。可能であれば、肩を回転中心として、他の回転移動を行っている。
【0082】
Dを直接的に測定することに代えて、角度αを測定することができる。前腕の長さrが既知であれば、並進移動の振幅Dを決定することができる。
【0083】
本発明によるこの技術は、絶対的位置測定のみに基づいているという利点を有している。したがって、一切のドリフトを、回避することができる。
【0084】
この技術においては、角度αの測定に際し、特に、1つまたは複数の加速度度計(図示されていないものの、前腕に対して取り付けられている)を使用していることに、注意されたい。それは、それらセンサが重力を測定すること、したがって、鉛直方向に対してのそれぞれの角度位置を知り得ること、を仮定している。
【0085】
速い移動の場合には、加速度計は、さらに、移動に起因する加速度を測定する。このことは、角度測定に誤差が生じることを意味している。
【0086】
この問題点を部分的に解決し得るよう、特許文献1により公知の技術を使用することができる。
【0087】
その場合、角度の計算に際し、磁力計の使用によって、加速度計の寄与を低減させる。しかしながら、この技術は、部分的にしか有効ではなく、その有効性は、移動のタイプに依存する。
【0088】
本発明において提案する技術は、以前の技術を補完し得るとともに、対象をなす移動のタイプに制限されるものではない。
【0089】
この技術について、後述する。
【0090】
速い移動が検出されるとすぐに(その場合、必要なことは、加速度ベクトルのノルムを計算することだけである)、
−速いフェーズの開始時点における可動固体(例においては、前腕)の状態を初期位置として二重積分方法によってセンサの移動を計算し、
−同時に、磁力計のデータを結合させることによって、すべてのドリフトを修正し、
−移動が速度を落とすとすぐに、絶対位置測定モードを再開する。
【0091】
このようにして、積分フェーズ時に発生し得るようなすべてのドリフトを、除去することができる。
【0092】
磁力計データの結合に際しては、二重積分と関連させつつ、速い移動に関しての磁力計だけを使用した評価を使用する。この最後の技術は、上述した(角度の計算に際し、磁力計の使用によって、加速度計の寄与を低減させる)。
【0093】
第1に、二重積分方法は、理論的には完全な移動を提供するけれども、ドリフトを受けてしまう。
【0094】
第2に、磁力計は、部分的な評価しか提供しないけれども(地球磁界軸のまわりの回転以外について)、ドリフトを受けない。
【0095】
1つの可能な結合においては、二重積分方法に基づいて移動を評価し、評価された磁気測定を推定し、後者と実際の磁気測定との間の差を使用して、勾配下降タイプの技術に基づいて、評価された移動を修正する。
【0096】
加えて、二重積分方法と絶対位置測定方法との間において、結合アルゴリズムを使用することができる。その際、移動の加速時および減速時には、加速度計による絶対位置の測定の寄与を漸次的に低減させつつ二重積分の影響を漸次的に増大させることにより、不連続的にかつ漸次的に、互いに変更させる。
【0097】
それを行うため(漸次的な低減と増大とを行うため)、以下のような手順を行うことができる。
【0098】
移動体の状態(位置、速度、加速度)は、最後の既知の状態に基づいて、また、高精度加速度計の二重積分に基づいて、評価される。これらを使用することにより、角度的な絶対位置測定のためのシステム(姿勢制御システム)に関する磁気的なおよび加速度的なデータが評価される。これらの評価と実際の測定の間の相違度合いを計算する。評価された移動は、勾配下降タイプの方法を適用することによって修正される。
【0099】
考慮した修正は、パラメータに反映される。修正が大きいほど、移動は、より遅い。基準は、例えば、gのノルムに対しての加速度ベクトルのの比である。この比に関しては、上述したとおりである。
【0100】
したがって、非常に遅い移動は、二重積分に基づくデータを使用せず、一方、非常に速い移動の場合には、排他的に二重積分に基づくデータを使用する。
【0101】
本発明は、特許文献1に記載されたすべての利点を有している。
−低コストで実施することができる。
−例えば磁界発生源やカメラといったようないかなる外部機器も必要としない。
−丈夫なアルゴリズムを使用して実施することができる。
【0102】
加えて、本発明は、速い動作に対してさえ、信頼性の高い測定を行うことができる。
【0103】
また、本発明は、1°以下という角度精度を有した姿勢制御システムを使用して、および、少なくとも10ビット(有利には、14〜16ビット)を有した加速度計を使用して、実施することができる。
【0104】
『遅い移動』に関する上記基準が、達成することが要望されている移動精度に関連するものであることを、明記しておく。本発明の1つの目的は、固体の加速度ノルムが、gのノルム‖g‖の10分の1(ほとんどの場合、1m/s である)未満である限りにおいて、重力加速度から固体の加速度を分離することである。移動は、遅いものとして考慮され、本方法は、許容可能な範囲内において正確である。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明による方法の一例を実施するためのデバイスを概略的に示す図である。
【図2】本発明における一例を示す図である。
【図3】本発明における一例を示す図である。
【符号の説明】
【0106】
2 固体
6 回転センサ、加速度計
8 回転センサ、磁力計
16 固体
32 固体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体(2,16,32)の移動を測定するための方法であって、
前記固体の少なくとも1つの第1並進移動を測定し、
前記固体の加速度の測定と、この行われた測定の二重積分と、を行い、これにより、前記第1並進移動に関する一連の値を獲得し、
このような方法において、
少なくとも1つの回転センサ(6,8)を使用して、前記固体の少なくとも1つの第2自由度の絶対位置測定を行い、その際、その第2自由度を、回転移動とし、
この回転移動の測定を、並進移動の測定へと変換し、
この並進移動測定を使用することにより、前記第1並進移動を修正することを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、
前記第2自由度の前記測定を初期条件として使用することにより、二重積分によって、前記第1並進移動に関して先に得られた値に続くような値を得ることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の方法において、
前記絶対位置測定を、前記固体(2,16,32)に関する前記加速度測定と同時に行うことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法において、
前記回転移動から前記並進移動への前記変換に際しては、前記固体に関してのおよび/または前記移動に関しての運動モデルでありかつ前記回転移動と前記並進移動との間の関係を決定し得るような運動モデルを使用することを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法において、
前記回転センサを、加速度計(6)および磁力計(8)の中から選択することを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法において、
回転センサとしても機能する並進移動センサを使用して、前記第1並進移動を測定することを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法において、
移動の遅さに関する基準を選択し、
前記第2自由度の前記測定が前記基準に適合した場合には、前記第2自由度の前記測定を使用して、前記第1並進移動を修正することを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7記載の方法において、
前記移動の遅さに関する前記基準を、前記固体(2,16,32)の前記加速度のノルムの関数が所定しきい値を下回ることとすることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項8記載の方法において、
前記固体(2,16,32)の前記加速度ノルムの前記関数を、このノルムそのものとすることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−515637(P2007−515637A)
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−544530(P2006−544530)
【出願日】平成16年12月20日(2004.12.20)
【国際出願番号】PCT/FR2004/050729
【国際公開番号】WO2005/064271
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(590000514)コミツサリア タ レネルジー アトミーク (429)
【Fターム(参考)】