説明

伝導性エミッション保護

1つの非限定的な実施例によれば、低伝導性エミッション基板は、対応する複数の導電層によって隔離された複数の薄い高絶縁耐力絶縁層を備えており、複数の導電層の1つが、複数の導電層の別の1つと短絡されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子装置用の多層基板に関し、より詳細には、電子装置用の低伝導性エミッション基板を形成することに関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチなどの電子部品は、ダイ上に形成可能であり、このダイは次いで、より大きな電子回路に含めるように基板上に受けることができる。例えば、図1は、ダイなどの電子部品12用の第1の従来技術の多層基板10を概略示している。基板は、単一の導電層14と、接地構造18上に形成された単一の絶縁層16(または「誘電体層」)とを備える。導電層14は、絶縁層16上に形成され、電子部品12を受ける。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
実効寄生キャパシタンス20が、絶縁層16を介して導電層14と接地構造18との間に生じ、接地構造18に対する、望ましくない電磁伝導性エミッションまたは実効寄生キャパシタンス20が生じる。また、望ましくない厚さの絶縁層16によって、電子部品12から接地構造18への熱伝達を効果的に促進するのが妨げられる。
【0004】
図2は、第2の従来技術の基板40を概略示しており、基板40は、複数の導電層44a〜44dによって隔離された複数の絶縁層42a〜42eを備える。第1の絶縁層42aは、381μm(15ミル)の厚さを有するが、この厚さもまた望ましくない厚さである。しかしながら、この基板40には依然として、上述した望ましくない電磁伝導性エミッションの問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施例の低伝導性エミッション基板は、対応する複数の導電層によって隔離された複数の薄い高絶縁耐力絶縁層を備えており、複数の導電層の1つが、複数の導電層の別の1つと短絡されている。
【0006】
低伝導性エミッション基板を製造する実施例の方法は、第1の絶縁層を形成し、第1の絶縁層上に第1の導電層を形成し、第1の導電層上に第2の絶縁層を形成し、第2の絶縁層上に第2の導電層を形成することを含む。方法はまた、第1の導電層を第2の導電層に電気的に接続することを含む。
【0007】
本発明のこれらと他の特徴は、下記の説明と図面から最もよく理解可能であり、以下は、図面の簡単な説明である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】電子部品用の第1の従来技術の多層基板の概略図。
【図2】電子部品用の第2の従来技術の多層基板の概略図。
【図3】電子部品用の第2の多層基板の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
上述したように、図1は、電子部品12用の第1の従来技術の多層基板10を概略示しており、多層基板10は、実効寄生キャパシタンス20と、電子部品12から接地構造18への低い熱伝達とを示す。寄生キャパシタンス20は、コンデンサとして有効に機能するが、実際のコンデンサには相当しないことを理解されたい。図2に示された基板40もまたこの望ましくない寄生キャパシタンスを示す。
【0010】
図3は、第2の多層基板22を概略示しており、多層基板22は、実効寄生キャパシタンス20に適応するように作動可能であり、また、電子部品12から接地構造18へ熱を伝達するように作動可能である。基板22は、対応する複数の導電層14a、14bによって隔離された複数の薄い高絶縁耐力絶縁層16a、16bを備える。「高絶縁耐力」という用語は、1ミル当たり500V(1μm当たり19.68V)を超える絶縁耐力のことを言う。一実施例では、「高絶縁耐力」とは、1ミル当たり少なくとも約15,876V(1μm当たり少なくとも6.25V)の絶縁耐力のことを言う。図3に示すように、基板22は、接地構造18と、接地構造18上に形成された第1の絶縁層16aと、第1の絶縁層16a上に形成された第1の導電層14aとを備える。接地構造18は、接地板などの接地接続に使用される任意の構造を含むことが可能である。
【0011】
上述したように、実効寄生キャパシタンス20が、第1の絶縁層16aを介して第1の導電層14aと接地構造18との間に生じる。実効寄生キャパシタンス20に対処するために、第1の導電層14a上に第2の絶縁層16bが形成され、第2の絶縁層16b上に第2の導電層14bが形成される。導電層14a、14bは、第2の絶縁層16bを介して第2の導電層14bと第1の導電層14aとの間に第2の実効寄生キャパシタンス26を形成するように、接続24を介して電気的に接続される。第2の寄生キャパシタンス26は、実効寄生キャパシタンス20の効果を打ち消し、接地構造18への電磁放出を低減することで伝導性エミッション保護を行う。一実施例では、基板22は、基板10が示す伝導性エミッションの1000分の1より低いレベルに伝導性エミッションを低減するように作動可能である。従って基板22は、低伝導性エミッション基板として説明可能である。
【0012】
電子部品12は、第2の導電層14b上に受けられる。一実施例では、電子部品12は、ダイ上に形成可能なMOSFET、JFETまたはBJTスイッチに相当する。層14a、16aは、これらが電子部品12と接地構造18との間に提供する絶縁効果による「ファラデー遮蔽」を形成する。
【0013】
絶縁層16a、16bは、絶縁材料の薄層を形成するようにレーザがパルス発生されるパルスレーザ堆積法を用いて形成可能であり、あるいは、Eビーム堆積法(レーザビームの代わりに電子ビームが使用される)を用いて形成可能である。一実施例では、絶縁層16a、16bは、381μm(15ミル)より実質的に小さい厚さを有する。一実施例では、絶縁層16a、16bは、1μm(0.04ミル)の厚さを有する。一実施例では、絶縁層16a、16bは、0.05〜5.00μm(0.0019〜0.196ミル)の厚さを有する。絶縁層16a、16b用のいくつかの実施例の堆積材料としては、炭化ケイ素(「SiC」)、窒化ケイ素(「Si3N4」)、二酸化ケイ素(「SiO2」)、窒化アルミニウム(「AlN」)、酸化アルミニウムまたはアルミナ(「Al2O3」)、および二酸化ハフニウムまたはハフニア(「HfO2」)が挙げられる。層16a、16bを形成可能なレーザの1つは、青色波半導体によって生成される。層16a、16bの厚さを低減することで、電子部品12から接地構造18へ効果的に熱を伝達するように基板22の熱伝導率を改善可能である。
【0014】
導電層14a、14bもまたパルスレーザ堆積法、Eビーム堆積法、または化学蒸気法を用いて形成可能である。導電層14a、14b用のいくつかの実施例の堆積材料としては、銅、アルミニウム、ニッケル、および金が挙げられる。薄い導電層14a、14bの形成によっても、電子部品12と接地板18との間の熱伝導率の改善が促進可能である。上述したレーザ堆積法によって、柱状構造として堆積された材料層が生じる。
【0015】
以下に示す式1は、キャパシタンスを計算するのに使用可能である。
【0016】
C=εr・ε0・A/d 式1
但し、Aは、導電層の表面積であり、
dは、導電層の間の距離であり、
εrは、与えられた材料の誘電率であり、
ε0は、空気の標準誘電率である。
【0017】
式1に示されるように、導電層14a、14bの間の距離を小さくすると、多層基板22の実効寄生キャパシタンス20が望ましくないことに増加してしまう。しかしながら、導電層14a、14bを接続24を介して電気的に接続することで、実効寄生キャパシタンス20を低減可能である。
【0018】
本発明の好ましい実施例を開示したが、当業者ならば、特定の変更が特許請求の範囲に含まれるであろうことを理解するであろう。それゆえ、添付の特許請求の範囲の真の範囲および内容を決定するには添付の特許請求の範囲を検討する必要がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対応する複数の導電層によって隔離された複数の薄い高絶縁耐力絶縁層を備える低伝導性エミッション基板であって、複数の導電層の1つが、複数の導電層の別の1つと短絡されていることを特徴とする低伝導性エミッション基板。
【請求項2】
複数の絶縁層の少なくとも1つが、レーザ堆積法を用いて形成されることを特徴とする請求項1記載の基板。
【請求項3】
複数の絶縁層の少なくとも1つが、Eビーム堆積法を用いて形成されることを特徴とする請求項1記載の基板。
【請求項4】
複数の絶縁層の少なくとも1つが、炭化ケイ素、窒化ケイ素、二酸化ケイ素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、アルミナ、二酸化ハフニウム、およびハフニアから成る群より選択される少なくとも1つの材料を含むことを特徴とする請求項2記載の基板。
【請求項5】
複数の導電層の少なくとも1つが、レーザ堆積法を用いて形成されることを特徴とする請求項2記載の基板。
【請求項6】
複数の導電層の少なくとも1つが、銅、アルミニウム、ニッケル、および金から成る群より選択される少なくとも1つの材料を含むことを特徴とする請求項5記載の基板。
【請求項7】
複数の導電層の1つに結合されたダイをさらに備えることを特徴とする請求項1記載の基板。
【請求項8】
ダイはスイッチに相当することを特徴とする請求項7記載の基板。
【請求項9】
複数の導電層および複数の絶縁層は、熱を伝達するように作動可能であることを特徴とする請求項6記載の基板。
【請求項10】
複数の絶縁層の1つおよび複数の導電層の1つが一緒にファラデー遮蔽を形成することを特徴とする請求項1記載の基板。
【請求項11】
381μmより小さい厚さを有する第1の絶縁層と、
第1の絶縁層上に形成された第1の導電層と、
第1の導電層上に形成され、381μmより小さい厚さを有する第2の絶縁層と、
第2の絶縁層上に形成されており、電子部品を受けるように作動可能である第2の導電層と、
第1の導電層と第2の導電層との間の電気的接続と、
を備えることを特徴とする低伝導性エミッション基板。
【請求項12】
第1の絶縁層および第2の絶縁層は、レーザ堆積方およびEビーム堆積法の少なくとも一方を用いて形成されることを特徴とする請求項11記載の基板。
【請求項13】
ダイが第2の導電層に結合されており、第1の導電層、第1の絶縁層、第2の導電層、および第2の導電層が熱を伝達するように作動可能であることを特徴とする請求項11記載の基板。
【請求項14】
第1の絶縁層を形成し、
第1の絶縁層上に第1の導電層を形成し、
第1の導電層上に第2の絶縁層を形成し、
第2の絶縁層上に第2の導電層を形成し、
第1の導電層を第2の導電層に電気的に接続する、
ことを含むことを特徴とする、低伝導性エミッション基板を製造する方法。
【請求項15】
第1の絶縁層および第2の絶縁層のそれぞれは、381μmより小さい厚さを有することを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項16】
第1の導電層および第2の導電層のそれぞれは、レーザ堆積法またはEビーム堆積法の少なくとも一方で形成されることを特徴とする請求項15記載の方法。
【請求項17】
電子部品を第2の絶縁層に適用することをさらに含んでおり、第1の絶縁層は、接地構造上に形成されることを特徴とする請求項14記載の方法。
【請求項18】
電子部品は、スイッチを含むことを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項19】
第1の絶縁層または第2の絶縁層の少なくとも一方が、炭化ケイ素、窒化ケイ素、二酸化ケイ素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、アルミナ、二酸化ハフニウム、およびハフニアから成る群より選択される少なくとも1つの材料を含むことを特徴とする請求項14記載の方法。
【請求項20】
第1の導電層または第2の導電層の少なくとも一方が、銅、アルミニウム、ニッケル、および金から成る群より選択される少なくとも1つの材料を含むことを特徴とする請求項14記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−503333(P2012−503333A)
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−527857(P2011−527857)
【出願日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際出願番号】PCT/US2009/053671
【国際公開番号】WO2010/033325
【国際公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(590005449)ユナイテッド テクノロジーズ コーポレイション (581)
【氏名又は名称原語表記】UNITED TECHNOLOGIES CORPORATION
【Fターム(参考)】