説明

伸縮アーム

【課題】 プーリとベルトとを用いることなく、安定した動作を行うことが可能な伸縮アームを提供する。
【解決手段】 第1腕要素(20)が、第1回転中心(10)を中心として回転可能であり、第2回転中心(11)を画定する。第2腕要素(60)が、第2回転中心を中心として回転可能であり、第3回転中心(12)を画定する。第1平行リンク機構(21)で画定される相互に平行な一対の辺の一方が第1回転中心を中心として回転可能であり、他方が第2回転中心を中心として回転可能である。第2平行リンク機構(61)が画定する相互に平行な一対の辺の一方が第2回転中心を中心として回転可能であり、他方が第3回転中心を中心として回転可能である。関節機構(40)が、第1平行リンク機構の、第1回転中心を通過するリンクの姿勢を固定した状態で、第1腕要素が第1角度だけ回転したとき、第2腕要素を第1腕要素に対して、第1腕要素とは反対向きに、第1角度の2倍の角度だけ回転させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2本の腕要素が関節で連結された伸縮アームに関する。
【背景技術】
【0002】
図10に、下記の特許文献1に開示された伸縮アームの概略平面図を示す。第1の腕要素100の一方の端部(基部)が、基台に回転可能に取り付けられている。第1の腕要素100の基部に、プーリ101が回転可能に配置されている。
【0003】
第2の腕要素110の一方の端部(基部)に固定された回転軸111が、第1の腕要素100の他方の端部(先端)に、回転可能に取り付けられている。第2の腕要素110の他方の端部(先端)に、ウエハ保持台113に固定された回転軸112が、回転可能に取り付けられている。
【0004】
プーリ101と回転軸111との間に、ベルト103が架け渡されている。プーリ101の直径と回転軸111の直径とは等しい。第1の腕要素100の先端に、回転軸111と同軸状に支軸102が取り付けられている。支軸102と回転軸112との間に、ベルト114が架け渡されている。回転軸112の直径は、支軸102の直径の2倍である。このため、支軸102が回転したとき、回転軸112はその1/2倍の角度だけ回転する。ウエハ保持台113の上面にウエハ120が保持される。
【0005】
例えば、第1の腕要素100を時計回りに角度θだけ回転させると同時に、プーリ101を反時計回りに角度θだけ回転させる。このとき、プーリ101は、第1の腕要素100に対して反時計回りに2θだけ回転することになる。プーリ101の回転力が回転軸111に伝達され、第2の腕要素110が反時計周りに角度θだけ回転する(第1の腕要素100に対しては、反時計回りに2θだけ回転する)。このため、第1の腕要素100の基部と第2の腕要素110の先端とを結ぶ仮想直線の向きは変化せず、両者の間隔(長さ)のみが変動する。
【0006】
第2の腕要素110が第1の腕要素100に対して反時計回りに角度2θだけ回転し、回転軸112は支軸102の回転角度の1/2だけ回転するため、回転軸112は、時計回りに角度θだけ自転する。これに伴い、ウエハ保持台113は、回転軸112を中心として時計回りに角度θだけ回転する。このため、ウエハ保持台113は、第1の腕要素100の回転中心(プーリ101の中心)と、第2の腕要素110の先端(回転軸112の中心)とを結ぶ仮想直線に平行な方向に並進移動する。このように、ウエハ保持台113の向きを変えることなく、伸縮アームを伸縮させることができる。第1の腕要素100とプーリ101とを同一方向に同一角度だけ回転させると、伸縮アームはその形態を保ったまま回転する。
【0007】
プーリ101と第1の腕要素100とを、同一方向に同一角度だけ回転させると、伸縮アームは、その形状を保ったまま回転する。
【0008】
図11に、下記の特許文献2に開示された伸縮アームの概略平面図を示す。図11に示した例においては、プーリ101と111との間にベルト103を架け渡す代わりに、プーリ101と111とを、2本の平行リンク104A及び104Bで連結している。これにより、ベルト103を架け渡した場合と同等の動作を行うことができる。
【0009】
【特許文献1】特開2003−124300号公報
【特許文献2】特開2005−238381号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図10に示した例では、プーリ101の回転により、第2の腕要素110及びウエハ保持台113が移動するため、第1の腕要素100内に配置されたベルト103に大きな負荷が加わる。この負荷のために、ベルト103の伸び縮みや、プーリの空回り等が生じると、伸縮アームを所望の形態に変化させることができなくなる。プーリの空回りを防止するために、プーリの外周面とベルトの内周面に凹凸を付すると、摩擦によるごみが発生しやすくなる。
【0011】
図11に示した例では、ベルと103に代えて、平行リンク機構が用いられているため、上述の問題は生じない。しかし、プーリ102と112とを連結するベルト114において、同様の問題が生じ得る。
【0012】
本発明の目的は、プーリとベルトとを用いることなく、安定した動作を行うことが可能な伸縮アームを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一観点によると、xyz直交座標系を定義したとき、z軸に平行な第1の回転中心(10)を中心として、xy面に平行な面内で回転可能に支持されるとともに、該第1の回転中心から離れた位置に第2の回転中心(11)を画定する第1の腕要素(20)と、前記第2の回転中心を中心として、前記第1の腕要素に対してxy面に平行な面内で回転可能に支持されるとともに、前記第1の回転中心から第2の回転中心までの距離と同じ距離だけ、前記第2の回転中心から離れた位置に第3の回転中心(12)を画定する第2の腕要素(60)と、xy面に平行な面内で形状を変化させる第1の平行リンク機構であって、相互に平行な一対の辺の一方が前記第1の回転中心を通過すると共に、該第1の回転中心を中心として回転可能であり、他方が前記第2の回転中心を通過すると共に、該第2の回転中心を中心として回転可能である前記第1の平行リンク機構(21)と、前記第1の平行リンク機構の、前記第1の回転中心を通過する辺に対応するリンクの姿勢を固定した状態で、前記第1の腕要素が前記第1の回転中心を中心として第1の角度だけ回転したとき、前記第1の平行リンク機構の変形に基づいて、前記第2の腕要素を前記第1の腕要素に対して、前記第2の回転中心を中心として、前記第1の腕要素とは反対向きに、前記第1の角度の2倍の角度だけ回転させる関節機構(40)と、前記第2の腕要素上の固定点が、前記第1の回転中心と前記第3の回転中心との双方に直交する直線と平行な直線に沿って移動するように、該固定点を案内する案内機構とを有する伸縮アームが提供される。
【発明の効果】
【0014】
プーリ及びベルトを用いず、平行リンク機構を用いて伸縮アームの形状を変化させているため、ベルトの伸びやスリップ等に起因する伸縮アームの形状の精度の低下を防止することができる。
【0015】
また、たとえばプーリ、ベルトがそれぞれスチール、ゴムを材料として形成されている場合、プーリ及びベルトの双方から発塵が生じる。更にゴムベルトからはガスも発生する。本願に係る伸縮アームは、これらの発塵、発ガスを防止することができる。このためたとえば真空中でも使用が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1に、第1の実施例による伸縮アームの概略平面図を示す。図1の紙面に垂直な方向をz軸とするxyz直交座標系を定義する。第1の実施例による伸縮アームは、第1の腕要素20、第2の腕要素60、保持部材80、及びガイド(ガイドレール)130を含んでいる。第1の腕要素20は、端部近傍(基部)に取り付けられた回転軸92を介して、取り付け部材に支持されており、回転軸92の中心を通るz軸に平行な第1の回転中心10を中心として、xy面内で回転可能である。取り付け部材については、図5を参照して後述する。第1の腕要素20は、第1の回転中心10から離れた位置(先端の近傍)に、z軸に平行な第2の回転中心11を画定する。
【0017】
第1の腕要素20内に、第1の平行リンク機構21が収容されている。第1の平行リンク機構21は、4本のリンク21A〜21Dを持ち、xy面内に平行な面内で変形する平行四辺形を画定する。一対のリンク21Aと21Bとが、相互に平行な一対の辺に対応し、他の一対のリンク21C及び21Dが、相互に平行な他の一対の辺に対応する。リンク21Aに対応する辺は、第1の回転中心10を通過する。リンク21Aは、第1の回転中心10を中心として第1の腕要素20に対して回転可能である。リンク21Bに対応する辺は、第2の回転中心11を通過する。リンク21Bは、第2の回転中心11を中心として第1の腕要素20に対して回転可能である。リンク21Aと第1の腕要素20との相対位置関係を保った状態で、第1の腕要素20を回転させることもできるし、第1の腕要素20が回転するときに、リンク21Aの姿勢を固定することもできる。これらの回転駆動機構については、図5を参照して後述する。
【0018】
第2の腕要素60は、その一方の端部近傍(基部)において、第2の回転中心11を中心として、第1の腕要素20に対して回転可能に支持されている。さらに、第2の腕要素60は、第2の回転中心11から離れた端部(先端)に、z軸に平行な第3の回転中心12を画定する。第2の回転中心11から第3の回転中心12までの距離は、第1の回転中心10から第2の回転中心11までの距離と等しい。
【0019】
第2の腕要素60内に、第2の平行リンク機構61が収容されている。第2の平行リンク機構61は、4本のリンク61A〜61Dを持ち、xy面内に平行な面内で変形する平行四辺形を画定する。一対のリンク61Aと61Bとが、相互に平行な一対の辺に対応し、他の一対のリンク61C及び61Dが、相互に平行な他の一対の辺に対応する。リンク61Aに対応する辺は、第2の回転中心11を通過すると共に、第2の回転中心11を中心として回転可能であり、リンク61Bに対応する辺は、第3の回転中心12を通過すると共に、第3の回転中心12を中心として回転可能である。
【0020】
第1の腕要素20と第2の腕要素60との連結部分に、関節機構40が設置されている。関節機構40は、第1の平行リンク機構21を構成するリンク21Bと、第2の平行リンク機構を構成するリンク61Aとの相対位置関係を固定する。このため、第1の平行リンク機構20を構成する基部側のリンク21Aの長手方向を固定(例えば、y軸に平行に)すると、第2の平行リンク機構60の先端側のリンク61Bの長手方向も固定される(例えば、y軸に平行になる)。
【0021】
取り付け部材90上面に、たとえばy軸に平行な溝部を備えるガイド130が設置されている。ガイド130の溝は、第1の回転中心10と第3の回転中心12とを結ぶ直線に沿って形成される。図6を参照して後述するように、第2の腕要素60の下部には、ガイド130の溝部に整合する被案内部が設置されており、被案内部をガイド130の溝部に沿って移動させることで、第1の腕要素20と第2の腕要素60の動作の正確性を高めることができる。
【0022】
保持部材80は、第3の回転中心12を中心として回転可能に、第2の腕要素60に支持されている。さらに、保持部材80は、支軸62を介して、第2のリンク機構61の先端側のリンク61Bに固定されている。このため、保持部材80は、リンク61Bの回転に連動する。保持部材80に、処理対象物、例えば半導体ウエハ等が保持される。
【0023】
図2に、関節機構40の平面図を示す。関節機構40は、第3の平行リンク機構41、第4の平行リンク機構42、第1の拘束機構50、及び第2の拘束機構57を含む。
【0024】
第3の平行リンク機構41は、第1の平行リンク機構21と、共有リンク21B、リンク21Cの一部、及びリンク21Dの一部を共有する。これらのリンクと、リンク41Aにより、第3の平行リンク機構41が構成される。リンク41Aは、第1の平行リンク機構の一対のリンク21C及び21Dに連結されている。第3の平行リンク機構41は、これら4本のリンクにより、xy面に平行な平行四辺形を画定している。
【0025】
第4の平行リンク機構42は、共有リンク21Bに関して、第3の平行リンク機構41とは反対側に配置されており、第1の平行リンク機構21と、共有リンク21Bの一部を共有する。第4の平行リンク機構42は、さらに、リンク42B、42C、42Dを含む。これら4本のリンクにより、xy面に平行な平行四辺形を画定している。リンク42Bは、共有リンク21Bに対応する辺と平行な辺を画定し、リンク42C及び42Dの各々は、共有リンク21Bとリンク42Bとを連結する。
【0026】
第3の平行リンク機構41の、共有リンク21Bに隣り合うリンク21C、21Dに対応する辺の長さが、第4の平行リンク機構42の、共有リンク21Bに隣り合うリンク42C、42Dに対応する辺の長さと等しい。
【0027】
第1の拘束機構50は、分岐部50Aと、一対のローラ50B、50Cで構成される。分岐部50Aは、第3の平行リンク機構41のリンク41Aから分岐して、共有リンク21Bと交差し、さらに第4の平行リンク機構42のリンク42Bと交差する。xy面内において、リンク42Bと分岐部50Aとは直交する。ローラ50B及び50Cは、第4の平行リンク機構42のリンク42Bに取り付けられており、リンク42Bと分岐部50Aとの交差箇所において、分岐部50Aを挟むように配置されている。ローラ50B及び50Cは、リンク42Bに対して、分岐部50Aの、共有リンク21Bの長手方向に関する位置を拘束し、長手方向に直交する方向への移動を許容する。これにより、共有リンク21Bの長手方向に関し、第4の平行リンク機構42のリンク42Bに対して、第3の平行リンク機構41のリンク41Aの位置が拘束される。
【0028】
第2の拘束機構57は、第1の部材57Aと第2の部材57Bとを含む。第1の部材57Aは、支軸55から、その半径方向に伸びる。支軸55は、第2の腕要素60に固定されており、第2の回転中心11に沿って軸方向に延在する。第2の部材57Bは、第1の部材57Aの先端から、第2の回転中心11と平行な方向に延在して、第4の平行リンク機構42のリンク42Bに連結されている。この連結部において、第2の部材57Bは、第2の回転中心11に平行な第4の回転中心13を中心として、リンク42Bに対して回転可能である。第4の回転中心13は、第4の平行リンク機構42のリンク42Bに対応する辺と直交する。さらに、第4の回転中心13と第2の回転中心11とを結ぶ直線が、第4の平行リンク機構42の一対のリンク42C、42Dに対応する辺と平行である。
【0029】
第2の回転中心11と第4の回転中心13とを結ぶ直線を、第2の回転中心11側に延長した直線上に、図1に示した第3の回転中心12が位置するように、第2の腕要素60が、支軸55に取り付けられている。このため、第2の回転中心11と第3の回転中心12とを結ぶ仮想直線が、第4の平行リンク機構42の、共有リンク21Bに隣り合うリンク42C、42Dで画定される辺と平行になる。
【0030】
図3に、第3の平行リンク機構41、第4の平行リンク機構42、及び第2の拘束機構57を模式的に示す。
【0031】
リンク41A、21C、21D、及び共有リンク21Bにより、第3の平行リンク機構41の平行四辺形が画定される。リンク42B、42C、42D、及び共有リンク21Bの一部により、第4の平行リンク機構42の平行四辺形が画定される。第2の拘束機構57に対応する直線が、第2の回転中心11と第4の回転中心13とを接続している。
【0032】
第3の平行リンク機構41の、共有リンク21Bに隣り合うリンク21Cと、第4の平行リンク機構42の、共有リンク21Bに隣り合うリンク42Cとが、共有リンク21Bの長さ方向に関して同一の向きに、同じ角度だけ傾くように、図2に示した第1の拘束機構50により、第3の平行リンク機構41と第4の平行リンク機構42との形状が定まる。すなわち、図3において、角度θ1とθ2とが等しい。
【0033】
第4の平行リンク機構42のリンク42Cに対応する辺と、第2の拘束機構57に対応する直線とが常に平行であるため、共有リンク21Bに対応する辺と、第2の拘束機構57に対応する直線とのなす角θ3は、角θ2と等しい。角θ1は、第1の回転中心10と第2の回転中心11とを結ぶ直線(第1の腕要素20の長手方向)と、共有リンク21Bの長手方向とのなす角に等しい。角θ3は、第2の回転中心11と第3の回転中心12とを結ぶ直線(第2の腕要素60の長手方向)と、共有リンク21Bの長手方向とのなす角に等しい。
【0034】
図1において、第1の平行リンク機構21の基部側のリンク21Aの向きを、y軸方向に固定した状態で、第1の腕要素20を第1の回転中心10を中心として反時計回りに回転させると、図3に示した角度θ1が小さくなる。同時に、角度θ3も同じ大きさだけ小さくなる。このため、第1の腕要素20が第1の回転中心10を中心として第1の角度だけ回転したとき、第2の腕要素60は、第2の回転中心11を中心として、共有リンク21Bに対して、第1の角度だけ反対向きに回転する。すなわち、第2の腕要素60は、第1の腕要素20に対して、第1の角度の2倍の角度だけ反対向きに回転する。
【0035】
第1の回転中心10から第2の回転中心11までの距離と、第2の回転中心11から第3の回転中心12までの距離とが等しいため、第1の回転中心10と第3の回転中心12とを結ぶ直線は、常にy軸に平行になる。すなわち、第1の腕要素20と第2の腕要素60とで構成される伸縮アームは、回転することなく、その長さのみが変化する。
【0036】
このとき、図1に示した第2の平行リンク機構61の先端側のリンク61Bの長手方向は、常にy軸に平行になる。このため、伸縮アームを伸縮させても、保持部材80の姿勢は変化しない。
【0037】
図4に、図2の一点鎖線L4−L4における断面図を示す。第1の腕要素20及び第2の腕要素60内に空洞が形成されている。第1の腕要素20の上面の、第2の回転中心11に対応する位置に、開口が形成されている。第2の腕要素60の底面から下方に向かって支軸55が伸びる。支軸55は、第1の腕要素20の上面に形成された開口内を通って、第1の腕要素20内に挿入されている。支軸55は、軸受けにより、第1の腕要素20に対して、第2の回転中心11を中心として回転可能に支持されている。支軸55内に、軸方向に貫通する貫通孔が形成されており、第1の腕要素20内の空洞と、第2の腕要素60内の空洞とが、この貫通孔を通して相互に繋がっている。
【0038】
連結軸22が、支軸55に形成された貫通孔に挿入されており、その両端が、それぞれ第1の腕要素20内の空洞、及び第2の腕要素60内の空洞まで挿入されている。連結軸22は、軸受けにより、支軸55に対して、第2の回転中心11を中心として回転可能に支持されている。
【0039】
第1の腕要素20内に配置された共有リンク21Bが、連結軸22の端部に固定され、第2の腕要素60内に配置されたリンク61Aが、連結軸22の他端に固定されている。このため、共有リンク21Bが第2の回転中心11を中心として回転すると、第2の腕要素60内のリンク61Aも、第2の回転中心11を中心として、共有リンク21Bと同じ方向に、同じ角度だけ回転する。
【0040】
共有リンク21Bに、第1の平行リンク機構20を構成するリンク21C、21D、及び第4の平行リンク機構42を構成するリンク42C、42Dが連結している。これらのリンク21C、21D、42C、42Dの各々は、共有リンク21Bに対して、第2の回転中心11と平行な回転中心を中心として回転可能に支持されている。リンク42C及び42Dは、それぞれリンク21C及び21Dの取り付け位置よりもやや内側に取り付けられている。
【0041】
リンク42C、42Dは、リンク21C、21Dと、共有リンク21Bを挟んで反対側に配置される。
【0042】
第1の拘束機構50の分岐部50Aが、リンク41Aの中央から紙面右方向に伸びる。
【0043】
第2の腕要素60内に配置された第2の平行リンク機構61のリンク61C及び61Dが、それぞれリンク61Aの両端に連結されている。リンク61C及びリンク61Dの各々は、リンク61Aに対して、第2の回転中心11に平行な回転中心を中心として回転可能に支持されている。
【0044】
図5に、図1の一点鎖線L5−L5における断面図を示す。基台95に、回転用モータ96が設置されている。回転用モータ96の回転軸97が、基台95の上面に設けられた開口を通って、基台95の上方まで引き出されている。回転軸97は、軸受けにより、基台95に対して、第1の回転中心10を中心として回転可能に支持されている。回転軸97の先端に、取り付け部材90が固定的に取り付けられている。
【0045】
取り付け部材90は、第1の腕要素20の端部において、第1の腕要素20の底面下方から上面上方まで、第1の腕要素20の周囲をめぐるように延在している。第1の腕要素20の上面の、回転中心10に対応する位置に開口が形成されている。取り付け部材90の、たとえば円筒形状に形成された一部が、この開口内に挿入されている。円筒形状部分の中心線と第1の回転中心10とは一致する。取り付け部材90の円筒形状部分は、第1の回転中心10を回転軸として第1の腕要素20上面の開口内で回転可能である。
【0046】
取り付け部材90の円筒形状部分の、第1の腕要素20内の端部に、第1の平行リンク機構21のリンク21Aが固定的に取り付けられている。リンク21Aの両端に、それぞれリンク21C及びリンク21Dが連結している。リンク21C及びリンク21Dの各々は、リンク21Aに対して、第1の回転中心10に平行な回転中心を中心として回転可能に支持されている。
【0047】
第1の腕要素20の上面上方の取り付け部材90上面に、一方向(本図においては紙面垂直方向)に長い溝部を有するガイド130が固定的に取り付けられている。第1の腕部材20の第1の回転中心10と第2の腕部材60の第3の回転中心12とは、ともにガイド130の溝部の長さ方向にのびる中心線と交わる。
【0048】
取り付け部材90のうち、第1の腕要素20と基台95との間に配置される部分には中空部が形成されている。中空部内に、伸縮用モータ91が固定的に設置されている。伸縮用モータ91の回転軸92は、軸受けにより、取り付け部材90に対して、第1の回転中心10を中心として回転可能に支持されている。回転軸92の先端が、第1の腕要素20の底面に固定的に取り付けられている。
【0049】
回転用モータ96を停止させておくと、リンク21Aの姿勢が固定される。この状態で、伸縮用モータ91を動作させると、第1の腕要素20が第1の回転中心10を中心として回転する。リンク21Aの姿勢が固定されているため、図1に示した第1の回転中心10と第3の回転中心12とを結ぶ直線は回転することなく、第1の回転中心10と第3の回転中心12と間隔のみが変動する。すなわち、第1の腕要素20と第2の腕要素60とからなる伸縮アームが伸縮する。
【0050】
このとき、第2の平行リンク機構61の先端側のリンク61Bが回転しないため、保持部材80の姿勢が保たれる。
【0051】
伸縮用モータ91を停止させた状態で、回転用モータ96のみを動作させると、第1の腕要素20、第2の腕要素60、及び保持部材80からなる伸縮アームは、その形状を保ったまま、第1の回転中心10を中心として、回転する。なお、回転用モータ96の回転軸97は、第1の回転中心10と一致させる必要はない。回転軸97を、第1の回転中心10からずれた位置において、取り付け部材90に取り付けると、伸縮アームは、第1の回転中心10からずれた回転軸97を中心として、形状を保ったまま回転する。
【0052】
図6に、図1の一点鎖線L6−L6における断面図を示す。第2の腕要素60の上面に開口が形成されている。この開口を、第2の腕要素60の内側から外側まで、支軸62が貫通している。支軸62は、第2の腕要素60に対して、第3の回転中心12を中心として回転可能に支持されている。第2の腕要素60内の支軸62の先端に、リンク61Bが固定的に取り付けられている。支軸62の外側の先端に、保持部材80が固定的に取り付けられている。
【0053】
リンク61Bの両端に、それぞれリンク61C及びリンク61Dが連結している。リンク61C及びリンク61Dの各々は、第2の腕要素60に対して、第3の回転中心12を中心として回転可能に支持されている。
【0054】
第2の腕要素60の底面上の、たとえば第3の回転中心12が通る位置に、被案内部131が固定的に設置されている。被案内部131は、図5に示したガイド130の溝部内を移動可能であるように、溝部の断面形状と整合する形状に形成されている。
【0055】
図7〜図9を用いて第2の実施例による伸縮アームについて説明する。
【0056】
図7は、第2の実施例による伸縮アームの概略平面図である。
【0057】
第1の実施例においては、第1の回転中心10と第3の回転中心12の双方に直交する直線に沿ってガイド130を設けたが、第2の実施例においては、ガイド130が、当該直線に平行な直線に沿い、第1の腕要素20上面の他の位置を通って形成される。
【0058】
また、リンク132が、リンク21Cとリンク21Dとの間に、リンク21Aと平行に形成される。リンク132は、第1の回転中心10と平行な回転中心を中心として回転可能に、リンク21C及び21Dに、その両端近傍を支持されている。このためリンク132は、リンク21Aと常に平行を保つ。
【0059】
図8に、図7の一点鎖線L8−L8における断面図を示す。基台95に、回転用モータ96が設置されている。回転用モータ96の回転軸97が、基台95の上面に設けられた開口を通って、基台95の上方まで引き出されている。回転軸97は、軸受けにより、基台95に対して、第1の回転中心10を中心として回転可能に支持されている。回転軸97の先端に、中空の取り付け部材90が固定的に取り付けられている。
【0060】
第1の腕要素20の底面の、第1の回転中心10に対応する位置に、開口が形成されている。連結軸25が、この開口内に挿入されている。連結軸25の、第1の腕要素20内の端部に、第1の平行リンク機構21のリンク21Aが固定的に取り付けられている。リンク21Aの両端に、それぞれリンク21C及びリンク21Dが連結している。リンク21C及びリンク21Dの各々は、リンク21Aに対して、第1の回転中心10に平行な回転中心を中心として回転可能に支持されている。
【0061】
連結軸25の、他方の端部(第1の腕要素20の外側の端部)は、取り付け部材90の上面に固定的に取り付けられている。連結軸25に、軸方向に貫通する貫通孔が形成されている。さらに、取り付け部材90の上面の、連結軸25の取り付け部分に開口が形成されている。この開口、及び連結軸25の貫通孔を介して、取り付け部材90内の空洞が、第1の腕要素20内の空洞に繋がっている。
【0062】
取り付け部材90内に伸縮用モータ91が設置されている。伸縮用モータ91の回転軸92が、取り付け部材90の上面に設けられた開口、及び連結軸25内の貫通孔を通って、第1の腕要素20内まで挿入されている。回転軸92は、軸受けにより、取り付け部材90に対して、第1の回転中心10を中心として回転可能に支持されている。回転軸92の先端が、第1の腕要素20の上側の内面に固定的に取り付けられている。
【0063】
回転用モータ96を停止させておくと、リンク21Aの姿勢が固定される。この状態で、伸縮用モータ91を動作させると、第1の腕要素20が第1の回転中心10を中心として回転する。リンク21Aの姿勢が固定されているため、図7に示した第1の回転中心10と第3の回転中心12とを結ぶ直線は回転することなく、第1の回転中心10と第3の回転中心12と間隔のみが変動する。すなわち、第1の腕要素20と第2の腕要素60とからなる伸縮アームが伸縮する。
【0064】
このとき、第2の平行リンク機構61の先端側のリンク61Bが回転しないため、保持部材80の姿勢が保たれる。
【0065】
伸縮用モータ91を停止させた状態で、回転用モータ96のみを動作させると、第1の腕要素20、第2の腕要素60、及び保持部材80からなる伸縮アームは、その形状を保ったまま、第1の回転中心10を中心として、回転する。なお、回転用モータ96の回転軸97は、第1の回転中心10と一致させる必要はない。回転軸97を、第1の回転中心10からずれた位置において、中間部材90に取り付けると、伸縮アームは、第1の回転中心10からずれた回転軸97を中心として、形状を保ったまま回転する。
【0066】
図9に、図7の一点鎖線L9−L9における断面図を示す。本図は、リンク132の長手方向の中央部(リンク21A、リンク21Cの一部、リンク21Dの一部、及びリンク132で画定される平行四辺形のリンク132に対応する辺の中点)の断面を含む断面図である。
【0067】
リンク132上方の第1の腕要素20上面に開口が形成されている。この開口を通って、第1の腕要素20の外部から内部に連結軸133が挿入されている。連結軸133の、第1の腕要素20の外部にある端部に、ガイド130が固定されている。連結軸133の、第1の腕要素20の内部にある端部は、リンク132に固定されている。このためガイド130とリンク132の長手方向とは常に平行を保つ。第2の腕要素60の底面には、ガイド130の溝部に整合する被案内部131が形成されている。
【0068】
第2の実施例のその他の構成は、第1の実施例と同様である。
【0069】
第1及び第2の実施例では、プーリとベルトが用いられていないため、ベルトの伸びやスリップに起因する動作精度の低下を防止することができる。
【0070】
また、ガイド130と被案内部131とを用いることで、第1の腕要素20と第2の腕要素60の動作の精密性を高めることができる。
【0071】
実施例において、図2に示した第4の平行リンク機構42の一対のリンク42C及び42Dの一方を省略することも、原理的には可能である。例えば、リンク42Dを省略した場合、第2の拘束部材57がリンク42Dの機能を補完することになる。すなわち、第2の拘束機構57、共有リンク21B、リンク42C、及びリンク42Bが、第4の平行リンク機構42を構成すると考えることができる。
【0072】
同様に、第1の平行リンク機構21の一対のリンク21C及び21Dの一方を省略してもよい。このとき、第1の腕要素20を構成する剛性体が、第1の平行リンク機構21の一つのリンクとして機能する。また、同様に、第2の平行リンク機構61の一対のリンク61C及び61Dの一方を省略してもよい。このとき、第2の腕要素20を形成する剛性体が、第2の平行リンク機構21の一つのリンクとして機能する。
【0073】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】第1の実施例による伸縮アームの概略平面図である。
【図2】伸縮アームの関節部に設置された関節機構の平面図である。
【図3】関節機構を模式的に表した線図である。
【図4】関節部分の断面図である。
【図5】第1の回転中心を含む断面図である。
【図6】第3の回転中心を含む断面図である。
【図7】第2の実施例による伸縮アームの概略平面図である。
【図8】第1の回転中心を含む断面図である。
【図9】ガイドの断面を含む断面図である。
【図10】従来の伸縮アームの概略平面図である。
【図11】従来の伸縮アームの概略平面図である。
【符号の説明】
【0075】
10 第1の回転中心
11 第2の回転中心
12 第3の回転中心
13 第4の回転中心
20 第1の腕要素
21 第1の平行リンク機構
21A、21C、21D リンク
21B 共有リンク
22 連結軸
25 連結軸
40 関節機構
41 第3の平行リンク機構
41A リンク
42 第4の平行リンク機構
42B〜42D リンク
50 第1の拘束機構
50A 分岐部
50B、50C ローラ
55 支軸
57 第2の拘束機構
60 第2の腕要素
61 第2の平行リンク機構
61A〜61D リンク
62 支軸
80 保持部材
90 取り付け部材
91 伸縮用モータ
92 回転軸
95 基台
96 回転用モータ
97 回転軸
130 ガイド
131 被案内部
132 リンク
133 連結軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
xyz直交座標系を定義したとき、z軸に平行な第1の回転中心(10)を中心として、xy面に平行な面内で回転可能に支持されるとともに、該第1の回転中心から離れた位置に第2の回転中心(11)を画定する第1の腕要素(20)と、
前記第2の回転中心を中心として、前記第1の腕要素に対してxy面に平行な面内で回転可能に支持されるとともに、前記第1の回転中心から第2の回転中心までの距離と同じ距離だけ、前記第2の回転中心から離れた位置に第3の回転中心(12)を画定する第2の腕要素(60)と、
xy面に平行な面内で形状を変化させる第1の平行リンク機構であって、相互に平行な一対の辺の一方が前記第1の回転中心を通過すると共に、該第1の回転中心を中心として回転可能であり、他方が前記第2の回転中心を通過すると共に、該第2の回転中心を中心として回転可能である前記第1の平行リンク機構(21)と、
前記第1の平行リンク機構の、前記第1の回転中心を通過する辺に対応するリンクの姿勢を固定した状態で、前記第1の腕要素が前記第1の回転中心を中心として第1の角度だけ回転したとき、前記第1の平行リンク機構の変形に基づいて、前記第2の腕要素を前記第1の腕要素に対して、前記第2の回転中心を中心として、前記第1の腕要素とは反対向きに、前記第1の角度の2倍の角度だけ回転させる関節機構(40)と、
前記第2の腕要素上の固定点が、前記第1の回転中心と前記第3の回転中心との双方に直交する直線と平行な直線に沿って移動するように、該固定点を案内する案内機構と
を有する伸縮アーム。
【請求項2】
さらに、
xy面内に平行な面内で形状を変化させる第2の平行リンク機構であって、相互に平行な一対の辺の一方が前記第2の回転中心を通過すると共に、該第2の回転中心を中心として回転可能であり、他方が前記第3の回転中心を通過すると共に、該第3の回転中心を中心として回転可能である第2の平行リンク機構(61)と、
前記第3の回転中心を中心として、前記第2の腕要素に対してxy面に平行な面内で回転可能に支持され、かつ、該第3の回転中心を通過する辺に対応するリンクに対して、前記第2の平行リンク機構の相対位置が固定されている保持部材(80)と
を有し、
前記関節機構は、前記第1の平行リンク機構の、前記第2の回転中心を通過する辺に対応するリンクと、前記第2の平行リンク機構の、前記第2の回転中心を通過する辺に対応するリンクとの相対位置関係を固定する請求項1に記載の伸縮アーム。
【請求項3】
前記関節機構が、
前記第1の平行リンク機構の、前記第2の回転中心を通過する辺に対応するリンクである共有リンク、及び該共有リンクに隣り合う2つのリンクの各々の一部を、該第1の平行リンク機構と共有する第3の平行リンク機構(41)と、
前記共有リンクの少なくとも一部を、前記第1の平行リンク機構と共有し、前記第3の平行リンク機構とは反対側に配置された第4の平行リンク機構であって、該共有リンクに隣り合うリンクに対応する辺が、該第3の平行リンク機構の、該共有リンクに隣り合うリンクに対応する辺の長さと等しい前記第4の平行リンク機構(42)と、
前記共有リンクで画定される辺の長さ方向に関して、前記第3の平行リンク機構の、該共有リンクに隣り合うリンクに対応する辺と、第4の平行リンク機構の、該共有リンクに隣り合うリンクに対応する辺とが同一の向きに、同じ角度だけ傾くように、第3の平行リンク機構と第4の平行リンク機構との形状を拘束する第1の拘束機構(50)と、
前記第2の回転中心において、前記第2の回転中心と第3の回転中心とを結ぶ仮想直線が、前記第4の平行リンク機構の、前記共有リンクに隣り合うリンクで画定される辺と平行になるように、前記第2の腕要素の姿勢を拘束する第2の拘束機構(57)と
を含む請求項1または2に記載の伸縮アーム。
【請求項4】
前記第1の拘束機構(50)は、
前記第3の平行リンク機構(41)に含まれるリンクのうち前記共有リンクと対向するリンクから分岐して、該共有リンク、及び前記第4の平行リンク機構(42)に含まれるリンクのうち該共有リンクと対向するリンクと交差する分岐部と、
前記第4の平行リンク機構(42)に含まれるリンクのうち該共有リンクと対向するリンクに設けられ、該リンクに対して、前記分岐部の、前記共有リンクの長手方向に関する位置を拘束し、長手方向に直交する方向への移動を許容する拘束器と
を含む請求項3に記載の伸縮アーム。
【請求項5】
前記案内機構は、
前記第1の腕要素の、前記第2の腕要素に対向する面の上方に形成されたガイドレールと、
前記第2の腕要素の、前記第1の腕要素に対向する面上に形成され、前記ガイドレールに沿って移動可能な移動部材と
を含む請求項1乃至4のいずれか1項に記載の伸縮アーム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2009−136952(P2009−136952A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−314121(P2007−314121)
【出願日】平成19年12月5日(2007.12.5)
【出願人】(598062365)
【Fターム(参考)】