説明

位相同期回路並びに記録再生装置および電子機器

【課題】位相同期回路において、ωn,ζを自由に変更可能でかつキャリブレーション可能にする。
【解決手段】ループフィルタ部106を抵抗素子162と容量素子164の直列回路で構成する。抵抗素子162は差動出力の第1ループフィルタ駆動部104_1(差動出力チャージポンプ回路DOCP)で駆動し、容量素子164はシングルエンド出力の第2ループフィルタ駆動部104_2(シングルエンドチャージポンプ回路SECP)で駆動する。発振部101は、ノードND101の電圧に基づき発振するようにする。発振部101の発振ゲインを補正するキャリブレーション部CALIB を設ける。抵抗回路や容量回路をスイッチングすることなく、ωn,ζを自由に変えられる。ループフィルタは、一方をシングルエンド、他方を差動で駆動すると、抵抗回路や容量回路の各両端に発生する電圧が独立になり、ωn,ζのキャリブレーションがし易くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえばテレビジョン装置や携帯電話などの受信用や送信用の通信装置や光ディスク装置などの記録再生装置を始めとする各種の電子機器に使用される位相同期(PLL:Phase Locked Loop) 回路と、この位相同期回路を具備した記録再生装置を始めとする各種の電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、各種の通信装置や送受信機、あるいは、光ディスク装置などの電子機器においては、スペクトラム精度の高い発振信号を生成したり、データ信号に周波数・位相ロックしたクロック信号を発生したりするために、位相同期(PLL:Phase Locked Loop) 回路が組み込まれることがある。携帯電話をはじめとする無線通信、様々なケーブルを通したシリアル通信、あるいはディスク媒体からのデジタル記録データ再生系(リードチャネル)などがその例である。
【0003】
図11は、位相同期回路を一般的に表わした回路ブロック図である。図示のように、位相同期回路100は、発振制御信号CN(ここでは発振制御電流Icnt )に基づき発振周波数fosciの出力発振信号Vout を生成する発振部101と、発振部101から出力された出力発振信号Vout の発振周波数fosciを1/αに分周して分周発振信号Vout1を取得する分周部102とを備える。この例では、発振部101を、電流制御発振回路(CCO:Current Controlled Oscillator )で構成する例で示しているが、電圧制御発振回路(VCO:Voltage Controlled Oscillator )を採用することもできる。
【0004】
位相同期回路100はさらに、位相比較部103と、チャージポンプ回路を利用した電流出力型のループフィルタ駆動部104と、ループフィルタ部106とを備えている。位相比較部103は、入力信号Vinと発振部101からの出力発振信号Vout もしくは分周部102からの分周発振信号Vout1の位相を比較し、比較結果である位相差を示す比較結果信号Compを出力する。チャージポンプ回路を利用したループフィルタ駆動部104を使用する位相同期回路をチャージポンプPLLと呼ぶことにする。
【0005】
ループフィルタ駆動部104は、位相比較部103から出力された比較結果信号Compに応じたパルス状のチャージポンプ電流Icpを入出力する。ループフィルタ部106は、少なくとも容量値Cの容量素子164(ループフィルタ容量)を備え、ループフィルタ駆動部104からのチャージポンプ電流Icpに基づく容量素子164の充電電圧Vcpを利用して発振部101の発振周波数fosciを制御するための発振制御信号CNを生成する。なお、本構成例では、ループフィルタ部106は、容量素子164の他に、抵抗値Rの抵抗素子162(ループフィルタ抵抗)も備えている。
【0006】
このような構成の位相同期回路100においては、入力信号Vinと発振部101からの出力発振信号Vout (もしくは分周部102による分周発振信号Vout1)が位相比較部103に入力され、その位相誤差を示す比較結果信号Compを元にして、チャージポンプPLLの手法によって発振部101を発振させ、入力信号Vinに位相ロックした出力発振信号Vout を得る。
【0007】
位相同期回路に求められる性能はジッタ性能およびロック時間が挙げられ、これらは位相同期回路の自然角周波数ωnおよびダンピングファクタζを適切な値に設定することで最適化される。チャージポンプPLLの解析には、線形化した閉ループ伝達関数が一般的に用いられ、ループフィルタ駆動部104の回路ゲイン(以下CP回路ゲインKcpと記す)、発振部101の入力信号−発振周波数変換ゲインKosci(発振ゲイン:本例ではVCO回路ゲインKvco )、抵抗素子162の抵抗値R、抵抗値容量素子164の容量値C、自然角周波数ωnおよびダンピングファクタζは、式(1−1)および式(1−2)のように表すことができる。
【0008】
【数1】

【0009】
一方、このような構成の位相同期回路100を使用する場合において、入力信号周波数やデータレートが変わる場合、ダンピングファクタζを一定に保ちながら自然角周波数ωnを入力周波数に応じて変えることが望ましい。たとえば、ディスク媒体からのデータ再生系ではディスクの内周から外周でデータレートが約2倍変化するため、自然角周波数ωnをそれに追従させることが望ましい。自然角周波数ωnを変えるためには、式(1−1)に従うと、CP回路ゲインKcp 、VCO回路ゲインKvco 、容量値Cを制御することになる。その一方で、同時にダンピングファクタζを一定に保つために、式(1−2)に従うと、容量値Cと抵抗値Rを変えなければならない。
【0010】
しかしながら、実際に位相同期回路100がIC(Integrated Circui;半導体集積回路)で製造されることを考えた場合、抵抗素子162に比べて容量素子164は一般に大きなチップ面積を要する。したがって、ICにおけるPLL回路を考えた場合、容量値Cの可変性のために多くの容量素子を設けることは非経済的である。そのため、容量値Cの可変性がないものとすると、自然角周波数ωnおよびダンピングファクタζの独立変数は抵抗値R1つになる。
【0011】
こうした事情を踏まえると、容量値Cは一定としながら、複数の抵抗素子162を設けてそれらをスイッチで切り替えることにより、抵抗値Rを様々な値に変えられるような構成を用いることが考えられる。しかしながら、複数の抵抗素子162を設けてそれらをスイッチで切り替える構成では、ループフィルタ部106の時定数C・Rを多段階に変化させる必要がある場合には、抵抗素子162とスイッチを多数配列しこれらを適宜スイッチング制御することになるため、その使用数が限定され微調整が困難になり、用途によってやはりIC化が困難になることが予想される。
【0012】
したがって、用途に左右されることなく、IC化に適したPLL回路の開発要望がある。このような要望に応え得る仕組みとして、たとえば特許文献1に記載の仕組みがある。
【0013】
【特許文献1】特開平10−84279号公報
【0014】
図11Aは、特許文献1に開示されている位相同期回路100である。特許文献1に記載の仕組みでは、ループフィルタを積分回路(特許文献1の図1では容量素子(コンデンサ15)のみ)にし、積分回路に発生する電圧を電流に変換する電圧電流変換回路(gm アンプ16)を設けている。さらに、積分回路を駆動するチャージポンプ(チャージポンプ回路13)とは別に2つ目のチャージポンプ(チャージポンプ回路14)と、この2つ目のチャージポンプからの電流と電圧電流変換回路からの電流を加算する加算部(加算器17)を設けている。このような構成にすることで、等価的には、CRのループフィルタと同じ回路を構成でき、IC化に適した位相同期回路が得られる。
【0015】
また、この特許文献1のような位相同期回路における自然角周波数ωnおよびダンピングファクタζは、積分回路を駆動する1つ目のチャージポンプの回路ゲイン(以下CPC回路ゲインKcpc と記す)、2つ目のチャージポンプの回路ゲイン(以下CPR回路ゲインKcpr と記す)、電圧電流変換回路のゲインGmを使って、式(2−1)および式(2−2)のように表すことができる。
【0016】
【数2】

【0017】
式(2)から分かるように、容量値Cや抵抗値Rを変更しなくても、2つのチャージポンプの回路ゲイン(CPC回路ゲインKcpc とCPR回路ゲインKcpr )および電圧電流変換回路のゲインGmを変化させることにより、自然角周波数ωnとダンピングファクタζをそれぞれ自由に変えることができるようになる。その結果、たとえば前述のダンピングファクタζを一定にしたまま自然角周波数ωnを変えることもできる。
【0018】
式(1)と式(2)の対比から分かるように、式(1)の抵抗値Rに相当するものがCPR回路ゲインKcpr /(Gm・CPC回路ゲインKcpc )であり、これらのゲインが容易に変えることができる。
【0019】
しかしながら、実際に位相同期回路がICで製造されると、チャージポンプ電流やゲインGmや入力信号−発振周波数変換ゲインKosciなど、自然角周波数ωnやダンピングファクタζを決めるパラメータが設計値からばらつくため、所望の値に自然角周波数ωnやダンピングファクタζを設定することが困難となる。さらに、通常、様々な場所で使われることを考えると、温度によっても各パラメータは変動するため、さらに自然角周波数ωnやダンピングファクタζは設定値からずれてしまうことになる。
【0020】
自然角周波数ωnが設定値から大きくずれてしまうと、出力発振信号Vout が入力信号Vinに位相ロックするまでの期間、すなわちアクイジション時間も設定値から変動するため、位相同期回路100Zを利用した全体システムの設計が難しくなり、さらに自然角周波数ωnが低くずれてしまった場合はジッタが増加してしまう。この問題を回避するためには、入力信号−発振周波数変換ゲインKosciの製造バラつきや温度特性を補償する技術が必要不可欠になる。
【0021】
このような要求に応え得る仕組みとして、非特許文献1,2に提案されている仕組みがある。
【0022】
【非特許文献1】Takashi Morie, Shiro Dosho,Kouji Okamoto,Yuji Yamada and Kazuaki Sogawa、“A-90dBc@10kHz Phase Noise Fractional-N Frequency Synthesizer with Accurate Loop Bandwidth Control Circuit”、2005 Symposium on VLSI Circuits Digest of Technical Papers、p52〜55
【非特許文献2】Takeo Yasuda, “HIGH-SPEED WIDE-LOCKING RANGE VCO WITH FREQUENCY CALIBRATION”,IEEE Int .Symp. On Circuits and Systems, May 28-31, 2000, pp.III45-III48.
【0023】
図11Bは、非特許文献1の仕組みを示す。非特許文献1の仕組みでは、チャージポンプ電流を一定にするための温度変化に依存しない高精度なバイアス回路を設けるとともに、電圧制御発振器(VCO)の入力側に、発振制御信号CNに対するゲインを調整するゲイン制御アンプを設けている。かつ、電圧制御発振器(VCO)のゲインを測定し、その結果に応じた補正値でゲイン制御アンプを制御することで、電圧制御発振器の入力にフィードバックする。
【0024】
非特許文献1の仕組みでは、PLLとしての動作前に各ゲインのキャリブレーションを行なう。先ず、電圧制御発振器VCOのゲインをキャリブレーションするため、図11B中に示される参照電圧Vrefsを与えVCOを発振させる。ここでVrefsは2Vと1Vの2点が用意されており、このそれぞれの電圧値での発振周波数をゲインコントローラGainCnt.でそれぞれカウントする。それらの周波数差そのものがVCOゲインであり、それをターゲットVCOゲイン値と大小比較する。この比較結果を電圧電流(VI)変換回路にフィードバックする。これをN回繰り返し、デジタル的にVI変換回路のゲインを変化させることでVCOゲインのキャリブレーションを行なう。また、ダミーフィルタ回路やダイオードを用いた温度依存補償を行なった情報を持つ電流をチャージポンプCP1のバイアス電流することで、フィルタと温度変動によるωnバラつきをキャリブレーションする。
【0025】
図11Cは、非特許文献2の仕組みを示す。図11C(1)は、その全体構成を示し、図11C(2)は、その全体構成中のVCOのディレイセル1段の構成を示す。非特許文献2の仕組みでは、コントロール電圧をクランプ回路CLPで上限と下限を決めクランプし、その上限と下限電圧内に発振周波数レンジをキャリブレーションしようというものである。Ref.Clock と分周器DIVIDE by D およびDIVIDE by Nで上限と下限の周波数にPLLがロックするようにセットし、そのロック周波数で発振するときの電圧をコンパレータCMPで大小比較する。そして、クランプ電圧内に上限および下限周波数を実現する電圧が入るように、図11C(2)中の電流源トランジスタに接続されたスイッチトランジスタをデジタル的に制御する。これにより、所望の電圧ダイナミックレンジ内で満たすべき発振周波数を実現できるようになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
しかしながら、非特許文献1に記載の仕組みでは、チャージポンプ電流を一定にするための温度変化に依存しない高精度なバイアス回路や、発振制御信号CNに対するゲインを電圧制御発振器の入力前で調整するゲイン制御アンプが新たに必要になってしまう。
【0027】
さらに、非特許文献1に記載の仕組みでは、それぞれの補正回路にも製造バラつきが存在し、このバラつきを考慮しても電圧制御発振器のゲインを補正可能にするように補正回路を設計しなければいけないため、補正回路の設計が非常に困難になってしまう。測定結果に基づきゲイン制御アンプのゲイン値を絶対的に調整する、つまりゲインの絶対値の管理を行なうようにしているが、デバイス特性や回路構成上、絶対値の管理では、バラつきを回避することは事実上不可能であるからである。
【0028】
さらに、ノイズ性能が問題となる。図11Bに示す構成では、VCOゲインのキャリブレーション情報がVIコンバータにフィードバックされている。つまりVCO回路以外のノイズ要素を含んでおり、低ノイズ設計が要求されてしまう。
【0029】
加えて、キャリブレーション方式も問題となる。図11Bに示す構成では、ループフィルタ抵抗バラつきのキャリブレーション機能は含まれていない。一般的に抵抗はプロセスバラつきにより±20%程度変動することもあり、(式1)から分かるようにダンピングファクタζが±20%変動することを意味している。たとえば、ループフィルタの容量値Cが−10%バラつき、抵抗値Rが−20%変動したと仮定すると、容量値Cのキャリブレーション情報がCP1にフィードバックされ、CP1のゲインが−10%される。つまり容量キャリブレーションによりダンピングファクタζのバラつきはさらに大きくなってしまうことがある。
【0030】
非特許文献2に記載の仕組みは、あくまで周波数レンジキャリブレーション技術であり、ゲインキャリブレーションにはなっていない。
【0031】
このように、自然角周波数ωnとダンピングファクタζの変更自在性の観点では特許文献1の仕組みが比較的優れており、また、キャリブレーションの側面では非特許文献1の仕組みがあるが、ノイズ性能、回路規模、キャリブレーションの容易さ、設計・検証の手間などの面も考慮すれば、依然として難点があり、全てが解決されているという位相同期回路が存在しないのが実情である。自然角周波数ωnとダンピングファクタζの変更自在性、ノイズ性能、回路規模、キャリブレーションの容易さ、設計・検証の手間の何れかの観点でさらなる改善がされた新たな位相同期回路が求められている。新たな位相同期回路があれば、使用用途に合わせた位相同期回路の選択の幅が広がる。
【0032】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、従来技術とは異なる新たな回路構成の位相同期回路を提供し、これによって、使用用途に合わせた位相同期回路の選択の幅を広げることのできる仕組みを提供することを主目的とする。好ましくは、新たな回路構成においても、用途に関係なく、自然角周波数ωnとダンピングファクタζをそれぞれ自由に変更可能でかつこれらをキャリブレーション可能な仕組みを提供することを目的とする。
【0033】
また、好ましくは、ノイズ性能、回路規模、設計・検証の手間の面おいても改善が図られた仕組みを提供することを目的とする。さらに好ましくは、ループフィルタを構成する素子(特に抵抗素子)のバラつきや温度変化に対するキャリブレーションを可能にする仕組みを提供することを目的とする。また、さらに好ましくは、ノイズ性能、回路規模、キャリブレーションの容易さ、設計・検証の手間などの面でバランスのとれた仕組みを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0034】
本発明の仕組みにおいては、先ず、ループフィルタ部を、抵抗回路と容量回路の直列回路で構成する。容量回路の抵抗回路とは反対側の端子は基準点に接続されているものとする。そして、それらを、2つのパルス電流出力部で駆動する。特に、一方はシングルエンド出力にし、他方は差動出力にする。一方はシングルエンド出力にし、他方は差動出力にすると、抵抗回路や容量回路の各両端に発生する電圧を独立にすることができ、自然角周波数やダンピングファクタを独立に調整し易くなる。そして、さらに、発振部の発振ゲインを補正するキャリブレーション部を設ける。こうすることで、発振部の特性バラつきや温度変化に応じたキャリブレーションを実現できる。
【発明の効果】
【0035】
本発明の一形態によれば、特許文献1と同様に、抵抗回路や容量回路をスイッチングすることなく、自然角周波数とダンピングファクタをそれぞれ自由に変えることが可能な、新しい位相同期回路が実現される。加えて、発振部の発振ゲインを補正するキャリブレーション部を設けることで、発振部の特性バラつきや温度変化に応じたキャリブレーションを実現できる。ループフィルタの一方はシングルエンドで駆動し、他方は差動で駆動することで抵抗回路や容量回路の各両端に発生する電圧を独立にすることができ、自然角周波数とダンピングファクタのキャリブレーションがし易くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。各機能要素について実施形態やその変形例別に区別する際には、A,B,C,…などのように大文字の英語の参照子を付して記載し、特に区別しないで説明する際にはこの参照子を割愛して記載する。図面においても同様である。
【0037】
<記録再生装置の概要>
図1は、位相同期回路を具備した電子機器の一例である記録再生装置(光ディスク装置)の一実施形態を示すブロック図である。
【0038】
本実施形態の記録再生装置1は、光ディスクPD(Photo Disk)に付加情報を記録するあるいは光ディスクPDに記録されている情報を読み取るためのレーザ光源を具備した光ピックアップ14を備える。また、信号処理系として、サーボ系と、記録・再生系と、コントローラ系とを備えている。ここで、サーボ系として、記録再生装置1は、回転サーボ系とトラッキングサーボ系とフォーカスサーボ系とを有する。トラッキングサーボ系とフォーカスサーボ系とを纏めてピックアップサーボ系とも称する。
【0039】
光ディスクPDとしては、CD(コンパクトディスク)やCD−ROM(Read Only Memory)などのいわゆる再生専用の光ディスクのほか、たとえばCD−R(Recordable)のような追記型光ディスクや、CD−RW(Rewritable )のような書き換え可能型光ディスクであってもよい。さらには、CD系の光ディスクに限らず、MO(光磁気ディスク)であってもよいし、通常のDVD(Digital Video またはVersatile Disk)や、たとえば波長407nm程度の青色レーザを利用する次世代DVDといったDVD系の光ディスクであってもよい。また、現行のCDフォーマットを踏襲しながら、記録密度を現行フォーマットの約2倍とした、いわゆる2倍密度のCD(DDCD;DD=Double Density)やCD−RあるいはCD−RWであってもよい。
【0040】
記録再生装置1は、具体的には、回転サーボ系として、音楽などの再生すべき情報が記録された光ディスクPDを回転させるスピンドルモータ10と、スピンドルモータ10を駆動するモータドライバ12と、モータドライバ12を制御する回転制御部(回転サーボ系)の一例であるスピンドルモータ制御部30とを備える。
【0041】
スピンドルモータ制御部30は、図示を割愛するが、ラフサーボ回路、速度(スピード)サーボ回路、位相(フェーズ)サーボ回路、および各サーボ回路の各出力を切り替えて出力するセレクタを有する。
【0042】
ラフサーボ回路は、光ディスクPDの回転スピードを大まかに制御する。速度サーボ回路は、同期信号に基づき回転スピードをさらに高精度に合わせる。位相サーボ回路は、再生信号の位相と基準信号の位相を合わせる。セレクタは、ラフサーボ回路、速度サーボ回路、位相サーボ回路の各出力を切り替えてモータドライバ12に出力する。
【0043】
光ディスクPDは、チャッキング11によりスピンドルモータ10の回転軸10aに固定されるようになっている。スピンドルモータ10は、モータドライバ12とスピンドルモータ制御部30とによって線速度が一定になるように制御される。その線速度はモータドライバ12とスピンドルモータ制御部30によって段階的に変更が可能である。
【0044】
また、記録再生装置1は、トラッキングサーボ系およびフォーカスサーボ系として、光ピックアップ14の光ディスクPDに対する半径方向位置を制御するピックアップ制御部40を備える。図示を割愛するが、ピックアップ制御部40は、たとえば、光ディスクPDに記録されているサブコーディングを読み取るサブコーディング検出回路と、図示しないトラックエラー検出回路により検出されたトラックエラー信号やサブコーディング検出回路により検出されたアドレス情報に基づいて光ピックアップ14の対光ディスクPDに対する半径方向位置を制御するトラッキングサーボ回路とを備える。
【0045】
ピックアップ制御部40は、図示しないトラックアクチュエータやシークモータを制御することで、光ピックアップ14から発せられるレーザ光のレーザスポットを光ディスクPD上の目的の場所(データ記録位置やデータ再生位置)に位置するように制御する。
【0046】
光ピックアップ14は、図示しない公知の半導体レーザ、光学系、フォーカスアクチュエータ、トラックアクチュエータ、受光素子、およびポジションセンサなどを内蔵しており、光ディスクPDの記録面にレーザ光を照射し、また反射光を受光して電気信号に変換するように構成されている。光ピックアップ14の半導体レーザは、図示しないレーザドライバにより駆動されるようになされており、このレーザドライバの駆動によって、データ再生時には所定の再生パワーの光ビームを出射し、情報の記録時には所定の記録パワーの光ビームを出射する。
【0047】
また、この光ピックアップ14は、図示しないシークモータ(スライドモータ)によってスレッジ(半径)方向に移動可能に構成されている。これらのフォーカスアクチュエータ、トラックアクチュエータ、シークモータは、受光素子やポジションセンサから得られた信号に基づいてモータドライバ12とスピンドルモータ制御部30およびピックアップ制御部40によってレーザ光のレーザスポットを光ディスクPD上の目的の場所(データ記録位置やデータ再生位置)に位置するように制御される。
【0048】
また記録再生装置1は、記録・再生系として、光ピックアップ14を介して情報を記録する情報記録部および光ディスクPDに記録されている情報を再生する情報再生部の一例である記録・再生信号処理部50を備える。記録・再生信号処理部50の構成例については後述するが、少なくとも、位相同期回路の一例である位相同期部100を備えている。
【0049】
また、記録再生装置1は、コントローラ系として、コントローラ62と、インタフェース(IF(Interface ):接続)機能をなすインタフェース部64とを備える。コントローラ62は、マイクロプロセッサ(MPU:Microprocessing Unit)で構成されており、スピンドルモータ制御部30およびピックアップ制御部40を有するサーボ系や記録・再生信号処理部50の動作を制御する。インタフェース部64は、当該記録再生装置1を利用した各種の情報処理を行なう情報処理装置(ホスト装置)の一例であるパーソナルコンピュータ(以下パソコンと称する)3との間のインタフェース(接続)機能をなす。インタフェース部64には、ホストIFコントローラが設けられる。記録再生装置1とパソコン3により情報記録再生システム(光ディスクシステム)が構成される。
【0050】
このような構成の記録再生装置1においては、再生処理時には、光ディスクPDから光ピックアップ14で読み出された光信号は光ピックアップ14に内蔵の受光素子で電気信号に変換され、その電気信号が、スピンドルモータ10や光ピックアップ14の制御を行なうスピンドルモータ制御部30およびピックアップ制御部40を具備したサーボ系(制御系)と、データの記録・再生を行なう記録・再生信号処理部50とに送られる。
【0051】
スピンドルモータ制御部30およびピックアップ制御部40は、コントローラ62の制御の元で、この電気信号を元にしてスピンドルモータ10の回転数や、光ピックアップ14のフォーカシングおよびトラッキングを調整する。
【0052】
これとともに、記録・再生信号処理部50では、取得したアナログの電気信号をデジタルデータに変換し復号化を行ない、パソコン3などの記録再生装置1を利用する装置本体に渡す。パソコン3などでは、復号化されたデータに基づき、画像・音声データとして再生する。
【0053】
また、光ディスクPDへデータを記録する記録処理時には、スピンドルモータ制御部30およびピックアップ制御部40は、コントローラ62の制御の元で、一定速度で光ディスクPDを回転させる。これとともに、記録・再生信号処理部50では、再生とは逆に、データを符号化して光ピックアップ14に内蔵のレーザダイオードなどに供給することで、電気信号を光信号へ変換して、光ディスクPDに情報を記録する。
【0054】
<記録・信号処理部の概要>
図1Aは、記録・再生信号処理部50の一構成例を示す機能ブロック図である。図示のように、記録・再生信号処理部50は、RF増幅部52と、波形整形部53(波形等化器;Equalizer )と、AD変換部54(ADC;Analog to Digital Converter )を備える。RF増幅部52は、光ピックアップ14により読み取られた微小なRF(高周波)信号(以下再生RF信号ともいう)を所定レベルに増幅する。波形整形部53は、RF増幅部52から出力された再生RF信号を整形する。光ピックアップ14で読みだされる信号は様々な周波数を持ち、高域で振幅が減少するため、そのままでは符号間干渉を起こしデータを正確に再生することができない。これを補償するために、波形整形部53でRF増幅部52の出力信号の波形等化を行なう。AD変換部54は、波形整形部53から出力されたアナログの再生RF信号をデジタルデータに変換する。
【0055】
また、記録・再生信号処理部50は、クロック再生部55と、DSP(Digital Signal Processor)で構成されたデジタル信号処理部56と、記録電流制御部57と、書込みクロック生成部60を備える。
【0056】
クロック再生部55や書込みクロック生成部60は、位相同期回路から出力される信号に基づき信号処理を行なう信号処理部の一例である。
【0057】
クロック再生部55は、AD変換部54から出力されたデジタルデータ列に基づきクロック信号を再生する。クロック再生部55は、AD変換部54からのデジタルデータ(デジタルデータ列Din)にロックしてクロック信号を生成するデータリカバリ型の位相同期回路(PLL回路)を有する。この位相同期回路として、後述する位相同期部100が使用される。クロック再生部55は、再生したクロック信号をAD変換部54へADクロック(サンプリングクロック)CKadとして供給したり、その他の機能部に供給したりする。AD変換部54は、このADクロックCKadに基づいてアナログ信号をデジタルデータに変換する。
【0058】
デジタル信号処理部56は、AD変換部54から出力されたデジタルデータ列(再生RF信号に対応するもの)を復調し、デジタルオーディオデータやデジタル画像データなどを復号化するなどのデジタル信号処理をする。
【0059】
記録電流制御部57は、情報を光ディスクPDに記録するためのレーザ光の記録電流を制御(オンオフ)する。記録電流制御部57は、ライトストラテジ部58(Write Strategy)と駆動部59(Laser Diode Driver)を有する。ライトストラテジ部58は、光ディスクPDの材質と記録速度に応じて光出力パワーをマルチパルス変調する。駆動部59は、レーザ光源(光ピックアップ14内にある)から発せられるレーザ光の光出力(光強度、光出力パワー)を一定値に保持するためのAPC(Auto Power Control)制御回路を具備する。
【0060】
書込みクロック生成部60は、クリスタル発振器などから供給される基準クロックに基づいて光ディスクPDへの記録の際にデータを変調するための書込みクロックを生成する。この書込みクロック生成部60も、位相同期回路(PLL回路)を有し、この位相同期回路として、後述する位相同期部100が使用される。
【0061】
レーザ光源から出射された記録用光ビームは、光ピックアップ14内の図示しないコリメータレンズにより平行光に変換された後、図示しないビームスプリッタを透過して図示しない対物レンズにより集束され、スピンドルモータ10により回転駆動される光ディスクPDに照射される。このとき、記録用光ビームは、記録用の情報に応じて変調されているので、光ディスクPDの所定位置(情報記録エリア)には、情報に対応したピット列が形成され、これにより、光ディスクPDに情報が記録されることになる。このとき、本実施形態では、ライトストラテジ部58にて、ピット(記録マーク)の形状歪によるデータ誤りを抑えるようにしている。
【0062】
たとえば、光源として用いるレーザとしては、近年、半導体素子を利用した半導体レーザが、極めて小型で、かつ駆動電流に高速に応答するため、各種装置の光源として広く使用されるようになっている。また、記録や再生の媒体として用いる書換可能な光ディスクPDとしては、相変化光ディスクや光磁気ディスクなどが広く知られており、記録、再生、消去する際に照射されるレーザ光の出力が異なる。
【0063】
一般的には、記録時は光ディスクPDにピットと呼ばれる記録マークを作るために、レーザビームの出力を高くする(たとえば30mW以上)が、再生時は記録ピットを破壊することなく情報の読み出しを行なうことができるように、記録時よりも弱い出力(たとえば3mW)のレーザビームを光ディスクPDに照射するようにしている。近年の高密度、高転送レートの光ディスクPDにおいて、記録再生が可能なエラーレートを得るためには、これらのレーザビームの強度を十分に制御することが必要とされている。
【0064】
しかし、半導体レーザは駆動電流・光出力特性の温度特性変化が著しく、その光出力を所望の強度に設定するために、半導体レーザの光出力を一定に制御する回路、いわゆるAPC制御回路が必要となる。APC制御では、情報書込み時の光信号をモニタリングして得た帰還電流が所定のパワー基準電流となるような負帰還制御ループを構成することで、レーザ発光パワーが一定になるように制御する。
【0065】
ここで、近年の書込可能な光ディスクPDでは、その高密度化の優位性より記録マークの両端の変化を記録するマークエッジ記録が主流となっている。また、マークエッジ記録でのマークの形状歪によるデータ誤りを抑える技術として、ライトストラテジ部58においては、ディスクの材質と記録速度に応じてレーザ出力パワーをマルチパルス変調するライトストラテジ技術を採用する(たとえば特開2000−244054号公報参照)。
【0066】
<<位相同期部:比較例>>
図2は、比較例の回路構成を説明する図である。この比較例は、一般的なPLL構成にも用いることができるが、特許文献1の構成で自然角周波数ωnおよびダンピングファクタζをキャリブレーションするのに特化した技術である。ここでは、一般的なPLL構成にキャリブレーションする場合で示すが、PLL回路本体部分は特許文献1の構成にしてもよい。
【0067】
比較例の位相同期部100は、発振部101の発振ゲインKosciを補正するゲイン特性情報取得部107を有する。ゲイン特性情報取得部107は、2種類の目標周波数(判定基準周波数f1,f2)を使って、所定の規定信号Inと発振部101を各周波数で発振させるための補正分とを合成して発振制御電流Icnt として発振部101に供給しながら、実動状態の発振部101の入力信号−発振周波数変換ゲインKosciを規定する2種類の目標周波数の各発振制御信号の差の情報を測定することで、入力信号−発振周波数変換ゲインKosciのばらつきを補正するための制御電流Icpcnt (補正信号の一例)を示す情報を取得して所定の記憶媒体に記憶しておく。そして、実際の位相同期動作時には、記憶しておいた情報で示される制御電流Icpcnt を補正信号として使って、入力信号−発振周波数変換ゲインKosciのばらつきが相殺されるようにループフィルタ駆動部104を制御する。
【0068】
ループフィルタ駆動部104は、位相比較部103から出力された比較結果信号Compに応じた駆動電流(チャージポンプ電流Icpと称する)を入出力するチャージポンプ104CPと、チャージポンプ104CPにバイアス電流Icpbiasを供給する電流値可変型の電流源105CPとを備えている。電流値可変型の電流源105CPは、電流モードでチャージポンプ電流Icpを制御可能になっている。
【0069】
位相同期部100は、各部からの電流信号を加算して発振部101の周波数制御入力端子101inに供給する電流加算部108と、電流加算部108に所望とする出力発振信号Vout の発振周波数fcco に適合させた初期電流Iini を供給する規定電流源109を備えている。電流加算部108は、各部からの電流信号を加算することで、出力発振信号Vout の位相がデジタルデータ列Dinの位相に同期するように発振制御電流Icnt を生成する。
【0070】
希望とする周波数(=発振周波数fcco )が複数種類となる場合には、その希望とする周波数(=発振周波数fcco )の別に最適化させた初期電流Iini を設定する。このため、デジタルデータ列Dinのデータレート(周波数)が切り替わるごとに、規定電流源109の初期電流Iini を切り替える。このための仕組みとしては、図示を割愛するが、各周波数の別に、その周波数に適合した個別の初期電流Iini が設定されている周波数別の規定電流源109を用意しておき、デジタルデータ列Dinのデータレート(周波数)が切り替わるごとに、その周波数別の規定電流源109を、その周波数に適合したものに切り替える構成を採る。
【0071】
こうすることで、ゲイン特性情報取得部107によるゲイン補正処理に基づく周波数制御電流Iosciは、初期電流Iini (およびループフィルタ出力電流Ilp)下での実動状態の発振周波数fcco と希望とする周波数とのずれを補正できる分であればよいことになる。その結果、ある希望周波数に適合させた1つの初期電流Iini としておき、複数種類の希望周波数への対応をゲイン特性情報取得部107からの周波数制御電流Iosciで対応する場合よりも、ゲイン特性情報取得部107が対処すべき補正電流量(=周波数制御電流Iosci)を少なくすることができる。
【0072】
ゲイン特性情報取得部107は、発振部101から出力された出力発振信号Vout の発振周波数fcco を2種類の判定基準周波数f1,f2と比較する周波数比較部170と、周波数比較部170における第1の判定基準周波数f1との周波数比較結果fcompをNビットのデジタルデータD(f1)として保持する第1の周波数比較結果保持部172_1と、周波数比較部170における第2の判定基準周波数f2との周波数比較結果fcompをNビットのデジタルデータD(f2)として保持する第2の周波数比較結果保持部172_2と、周波数比較結果保持部172_1,172_2のそれぞれに保持された各Nビットの周波数比較結果fcompをアナログ信号に変換するDA変換部174_1,174_2を備える。
【0073】
周波数比較部170には、発振部101から出力発振信号Vout が信号入力端子170_1に供給され、また、判定基準周波数f1,f2をそれぞれ指定する情報が判定基準周波数設定端子170_2,170_3に供給され、周波数比較結果fcompを判定結果出力端子170_4から出力する。
【0074】
周波数比較部170は、目標周波数としての判定基準周波数f1、f2のそれぞれについて、発振部101から出力された出力発振信号Vout の発振周波数fcco と判定基準周波数f1,f2との大小を比較し、その周波数比較結果fcompを周波数比較結果保持部172_1,172_2に渡す。
【0075】
周波数比較結果保持部172_2には、判定基準周波数f1と判定基準周波数f2との差の周波数に対応したNビットのデジタルデータが保持される。判定基準周波数f1と判定基準周波数f2との差の周波数に対応した値であるから、この周波数比較結果保持部172_2が保持するNビットのデジタルデータは、発振部101の入力信号−発振周波数変換ゲインKosciを反映したものとなる。
【0076】
ゲイン特性情報取得部107は、入力端子175_1に取り込んだ第2のDA変換部174_2の出力電流信号Iout_2の経路を切り替える経路選択スイッチ175と、第1のDA変換部174_1の出力電流信号Iout_1 と経路選択スイッチ175の一方の出力端子175_2を介しての第2のDA変換部174_2の出力電流信号Iout_2 とを加算する電流加算部176Aと、経路選択スイッチ175の他方の出力端子175_3を介しての第2のDA変換部174_2の出力電流信号Iout_2 をK倍(後述するがKはカレントミラー比)に増幅する電流電流変換部177とを備えている。
【0077】
DA変換部174_1,174_2は、判定基準周波数f1,f2のそれぞれについて、周波数比較結果保持部172_1,172_2に記憶されているビット別の周波数比較結果に基づいて、ビット順に周波数制御信号の一例である出力電流信号Iout_1,Iout_2を順次生成していく。ビット順の途中段階では、発振周波数fcco を判定基準周波数f1,f2にさせることはできていないが、最終的に得られる出力電流信号Iout_1 ,Iout_2 では、ほぼ発振周波数fcco を判定基準周波数f1,f2に一致させる状態になっている。
【0078】
電流加算部176Aは、判定基準周波数f1についてのDA変換部174_1から出力される出力電流信号Iout_1 と判定基準周波数f2についてのDA変換部174_2から出力される出力電流信号Iout_2 とを加算して最終的な周波数制御電流Iosci(周波数制御信号)として発振制御信号生成部の一例である電流加算部108に供給する。
【0079】
周波数比較結果保持部172_1およびDA変換部174_1は、第1の目標周波数である判定基準周波数f1の系統であり、周波数比較部170および電流加算部176Aとともに、電流制御発振回路101Bから出力された出力発振信号Vout の発振周波数fcco が判定基準周波数f1(第1の目標周波数)となるようにするために必要となる規定信号Inとの差分である出力電流信号Iout_1 を判定基準周波数f1用の第1の周波数制御信号として取得する第1の周波数制御信号取得部を構成する。
【0080】
周波数比較結果保持部172_2およびDA変換部174_2は、第2の目標周波数である判定基準周波数f2の系統であり、周波数比較部170および電流加算部176Aとともに、発振部101から出力された出力発振信号Vout の発振周波数fcco が判定基準周波数f2(第2の目標周波数)となるようにするために必要となる規定信号Inを出力電流信号Iout_1 (第1の周波数制御信号)で補正した信号との差分である出力電流信号Iout_2 を判定基準周波数f2用の第2の周波数制御信号として取得する第2の周波数制御信号取得部を構成する。
【0081】
経路選択スイッチ175は、判定基準周波数f2についてのDA変換部174_2から出力された出力電流信号Iout_2を、補正情報取得時には電流加算部176Aに供給し、通常の位相同期動作時には駆動部104Zの一例であるループフィルタ駆動部104側に供給されるように切り替える。
【0082】
電流加算部176Aは、出力電流信号Iout_1 と出力電流信号Iout_2 との加算結果(Iout )を周波数制御電流Iosciとして電流加算部108に供給する。また、電流電流変換部177は、第2のDA変換部174_2の出力電流信号Iout_2 をK倍にした電流を制御電流Icpcnt として、電流値可変型の電流源105CPの制御入力端子105CPaに供給する。
【0083】
ここで、周波数比較部170は、出力発振信号Vout の発振周波数fcco と判定基準周波数f1,f2の大小を比較して、その周波数比較結果fcompをデジタルデータ0,1の何れかで出力する。たとえば、発振周波数fcco が判定基準周波数f1,f2よりも高ければ“1”を出力し、発振周波数fcco が判定基準周波数f1,f2よりも低ければ“0”を出力する。よって、周波数比較部170にて出力発振信号Vout の発振周波数fcco と判定基準周波数f1,f2の大小を比較するだけでは、比較結果としてはNビットのデジタルデータは得られない。
【0084】
しかしながら、出力発振信号Vout の発振周波数fcco が判定基準周波数f1,f2に近づくように周波数比較部170での周波数比較結果fcompを反映させた周波数制御電流Iosciを発振部101に供給して、再度(最終的にはN回)、同じようにして、周波数比較部170にて、出力発振信号Vout の発振周波数fcco と判定基準周波数f1,f2の大小を比較する周波数2分探索法を採用する。その結果、N回の繰返しの都度、比較結果の重付けが小さくなるものと考えることができる。
【0085】
そこで、周波数比較結果保持部172_1,172_2では、周波数比較部170におけるN回の比較処理に連動して、最初の周波数比較結果fcompをNビットの上位ビットに記憶し、次回以降は、順次下位ビットに記憶するようにする。つまり、周波数比較結果保持部172_1,172_2は、判定基準周波数f1,f2のそれぞれについて、周波数比較部170による周波数比較結果fcompを順次ビットの重付け順にビット別に記憶していく。
【0086】
これにより、周波数比較結果保持部172_1,172_2には、最終的に、Nビットのデジタルデータが記憶される。N回の探索によって、周波数比較結果保持部172_1,172_2には、出力発振信号Vout の発振周波数fcco を判定基準周波数f1,f2に順次近づけていくことのできる出力電流信号Iout_1,Iout_2を示すNビットのデジタルデータが順に保持されていくことになる。
【0087】
電流加算部108は、規定電流源109から供給される所望とする出力発振信号Vout の発振周波数fcco に適合させた初期電流Iini と、電圧電流変換部166から出力されたループフィルタ出力電流Ilpと、ゲイン特性情報取得部107の電流加算部176からの周波数制御電流Iosciとを加算して、発振部101の周波数制御入力端子101inに供給する発振制御電流Icnt とする。
【0088】
電流電流変換部177は、ゲイン特性情報取得部107における補正処理によって取得され周波数比較結果保持部172_2に保持されたデータに基づくDA変換部174_2から出力される出力電流信号Iout_2をK倍(Kの設定手法については後述する)することで電流源105CPに供給する制御電流Icpcnt を取得する信号変換部の一例である。
【0089】
このような構成の位相同期部100におけるキャリブレーションは次のようにする。まず、PLLとして動作する前に発振部101のゲインキャリブレーションを行なう。キャリブレーションを始めるときには位相比較部103およびループフィルタ駆動部104の動作を停止し、発振部101に初期電流または初期電圧を与え発振させる。このときの発振周波数を外部基準クロックを用いて計測し、周波数比較部170で判定基準周波数Aと比較する。その結果を周波数比較結果保持部172_1に上位ビットから記憶し、その記憶した値でDA変換部174_1を上位ビットから順に動作させ、その出力を発振部101の入力に加算または減算をする。これをN回繰り返して発振部101の発振周波数を判定基準周波数Aの周波数faに一致させる。次に周波数比較部170の判定基準周波数を変更し。前記と同様に判定基準周波数Bの周波数fbに一致させる。その後、経路選択スイッチ175により、DA変換部174_2の出力を発振部101の入力から電流電流変換部177側に切り替えK倍して電流源105CPのバイアス電流とする。
【0090】
このような仕組みを採ることで、発振部101の発振ゲインKosci(CCO回路ゲインKcco またはVCO回路ゲインKvco )がキャリブレーションされ、ループフィルタ部106の定数(抵抗値R、容量値C)が不変であるとすれば、PLLの自然角周波数ωnおよびダンピングファクタζを常に一定にすることができる。
【0091】
しかしながら、比較例では、以下のような課題が残る。1つ目の課題はノイズ性能である。発振部101の入力端子に関係する規定電流源109A(初期値バイアス回路)、DA変換部174、およびそれらの電流を加算する電流加算部108はアナログ回路であり、それぞれの回路内で発生したノイズが発振部101の入力端子で加算されているため、それらの回路に低ノイズ性能が要求される。ジッタ性能はPLL回路において最も重要な性能であり、PLL回路内の雑音量に依存する。したがって、これらの回路追加はPLL回路のジッタ性能を悪化させてしまう。また、特許文献1の構成と組み合わせたときには、Gm回路もその対象であり、さらに抵抗や電流2乗補正回路を用いた場合もジッタ性能を悪化させる要因となる。
【0092】
2つ目はキャリブレーション方式である。この方式では発振ゲインKosci(CCO回路ゲインKcco やVCO回路ゲインKvco )のキャリブレーション情報をループフィルタ駆動部104の電流源105CPにバイアス電流としてフィードバックしている。つまり、発振ゲインKosciが大きく変動するとキャリブレーションされたCP回路ゲインKcpはその変動に反比例し、大きく変動することとなる。よって、ループフィルタ駆動部104の設計検証が困難になる。
【0093】
3つ目の課題は面積である。たとえば、当該比較例では、ゲイン特性情報取得部107内に2つのNビットDAC(DA変換部174_1,174_2)があり、これらで発振ゲインKosciのキャリブレーション精度およびキャリブレーション範囲が決定される。雑音・素子バラつきなどを考慮すると回路面積を小さくすることが困難となる。
【0094】
4つ目の課題は、設計・検証の手間である。PLL本体以外の構成要素にアナログ回路が内在しているため設計・検証の手間が掛かってしまう。
【0095】
そこで、回路構成のコンパクトさ、自然角周波数ωnとダンピングファクタζの変更自由度と一方を変更したときの他方を一定に維持する調整の容易さを実現し得るように、抵抗素子162への電流パス(以下RDパスと称する)と容量素子164への電流パス(以下CPパスと称する)の独立性を確保する仕組みがないかを考え、その構成に適応するキャリブレーション回路を備えた位相同期回路を考案した。次に、このような本実施形態の位相同期部100について説明する。
【0096】
<<位相同期部:基本構成>>
図3は、本実施形態の位相同期部100の基本構成を説明する図である。図4は、比較例の線形Gm回路を示す図である。本実施形態の位相同期部100Aは、発振部101、位相比較部103、チャージポンプ回路を利用したループフィルタ駆動部104、およびループフィルタ部106を備える点で、一般的な位相同期回路と基本構成を同じにする。発振部101、位相比較部103、ループフィルタ駆動部104、およびループフィルタ部106を纏めてPLL本体部と称する。
【0097】
本実施形態の位相同期部100Aは、PLL本体部に加えて、発振部101の周波数変換ゲイン特性の製造バラつきや温度特性を補正するキャリブレーション機能を持つゲイン特性情報取得部107を備える。ゲイン特性情報取得部107は、基準電位生成部220と、基準抵抗239を有するバイアス電流生成部230と、基準電圧生成部240と、判定処理部250を備える。
【0098】
位相同期部100Aはさらに、PLL本体部に対してゲイン特性情報取得部107の機能を働かせるための切替機構として、ループフィルタ部106と発振部101の間にスイッチ構成の電圧選択部210を有する。つまり、本実施形態の位相同期部100Aは、位相同期回路の基本構成であるPLL本体部に、ゲイン特性情報取得部107で示す部分を付加したものである。
【0099】
ゲイン特性情報取得部107と電圧選択部210で、キャリブレーション部CALIB が構成される。キャリブレーション部CALIB は、複数の所定の大きさの発振制御信号を使い、各発振制御信号の元での実際の発振周波数の差に基づき発振部101の実動の発振ゲインKoscic の情報を取得し、この実動の発振ゲインKoscic と目標の発振ゲインKoscit との差に基づき発振部101が発振動作するための動作電流(電源電流、発振バイアス電流)を補正する。
【0100】
補正の仕組みとしては、電圧モードでの補正も考えられるが、補正量を適宜変更することを考えると電流量を加算する仕組みの方が取り扱いが容易であるので、ここでは電流モードで補正する仕組みを採る。そのため、発振部101は、電流補正部(電流源部)と電流制御発振回路との組合せになる。電流モードで補正する仕組みを採る際には、耐ノイズ性を考慮した回路構成を採る。
【0101】
たとえば、比較例の線形Gm回路を図4に示す。この構成では、一般的にIbを流す電流源やVinn (反転入力),Vinp (非反転入力)などに外部のノイズを含む電圧(電流)がバイアスとして与えられているため、構成要素のトランジスタや自身のノイズ以外にもノイズを含み、そのノイズが、この線形Gm回路を伝播し、出力電流Iout に出力されてしまう。本実施形態では、後述する図8のように、Gm回路を構成しているトランジスタが出力するノイズ以外のバイアスノイズを含まないような回路構成を採る。
【0102】
ループフィルタ部106は、第1ループフィルタ回路部106_1と第2ループフィルタ回路部106_2の直列回路で構成されている。「ループフィルタ回路部」は、回路構成として抵抗素子や容量素子の単独のものやそれらの各素子の直列回路や並列回路で構成されたものを纏めて総称したものである。
【0103】
第1ループフィルタ回路部106_1は、抵抗要素と容量要素の内の抵抗要素の方が主体的となる抵抗回路にする。たとえば、本実施形態においては、第1ループフィルタ回路部106_1に抵抗素子162を使用する。この抵抗素子162は、バイアス電流生成部230の基準抵抗239と素子マッチングをとっておく。
【0104】
素子マッチングとは、少なくとも温度変化特性が揃ったものが使用されることを意味する。そのための仕組みとしては、基準抵抗239と抵抗素子162は同一チップ内に作成するのが最も簡便な方法である。もちろん、チップ外部に、温度特性の揃った抵抗素子を設けてもよい。たとえば、一方がカーボン抵抗で他方が金属被膜抵抗などのように、種類の異なる抵抗素子の組合せは温度変化特性が異なるので好ましくない。
【0105】
一方、第2ループフィルタ回路部106_2は、抵抗要素と容量要素の内の容量要素の方が主体的となる積分回路(容量回路)にする。たとえば、本実施形態においては、第2ループフィルタ回路部106_2に容量素子164を使用する。本実施形態の場合、抵抗素子162は、一端がループフィルタ駆動部104と発振部101との接続点(ノードND101)に接続され、他端が容量素子164の一端と接続されている。抵抗素子162と容量素子164の接続点をノードND102とも称する。容量素子164の他端は基準点(接地もしくは負電源:以下同様)に接続されている。容量素子164と抵抗素子162の接続態様を逆にしたときには、RDパスの電流を引き込めないという回路都合上の難点があるけれども、このような接続態様であればその問題はない。位相同期部100をIC(半導体集積回路)で構成する場合、抵抗素子162はIC内に作り込み、容量素子164は、そのICの外部で接続する構成を採るのがよい。
【0106】
本実施形態の位相同期部100Aのループフィルタ駆動部104は、第1ループフィルタ回路部106_1を駆動する第1ループフィルタ駆動部104_1と、第2ループフィルタ部106_2を駆動する第2ループフィルタ駆動部104_2を有する。第1ループフィルタ駆動部104_1と第2ループフィルタ駆動部104_2には、位相比較部103から比較出力として、アップ信号UPとダウン信号DOWN(纏めてアップ/ダウン信号UP/DOWN とも称する)が共通に供給される。アップ/ダウン信号UP/DOWN は、デジタルデータ列Dinおよび出力発振信号Vout の位相を比較し、比較結果である位相差を示す誤差信号(位相誤差情報)である。第1ループフィルタ駆動部104_1と第2ループフィルタ駆動部104_2は位相比較部103からのアップ/ダウン信号UP/DOWN を共通に使用するが、それらの動作は独立である。
【0107】
本実施形態の基本構成では、第1ループフィルタ駆動部104_1は第1ループフィルタ回路部106_1へ差動的に位相誤差情報に応じたパルス幅のパルス電流を出力する差動出力(Differential Output )構成のものであり、第2ループフィルタ駆動部104_2は第2ループフィルタ回路部106_2へ通常のように位相誤差情報に応じたパルス幅のパルス電流を出力するシングルエンド出力(Single End Output )構成のものである。すなわち、第1ループフィルタ駆動部104_1は差動パルス出力部の一例であり、第2ループフィルタ駆動部104_2はシングルエンドパルス出力部の一例である。これらパルス出力部の出力電流をそれぞれ可変とすることで、発振部101の発振周波数を可変にできる。
【0108】
第1ループフィルタ駆動部104_1は、位相比較部103からのアップ/ダウン信号UP/DOWN に基づき、位相誤差情報に応じた差動出力のパルス電流を出力する。一例として、第1ループフィルタ駆動部104_1は、その正相出力端(OUT+)が抵抗素子162と発振部101との接続点(ノードND101)に接続され、その逆相出力端(OUT-)が抵抗素子162と容量素子164の接続点に接続される。
【0109】
ここで、ゲイン特性情報取得部107を備えている本実施形態の位相同期部100Aにおいては、差動パルス出力回路の一例である第1ループフィルタ駆動部104_1は、位相比較部103からのアップ/ダウン信号UP/DOWN (位相誤差情報)とバイアス電流生成部230からのバイアス電流IbCP(本構成例ではバイアス電流IbCPR )に応じた差動出力のパルス電流を出力する。
【0110】
第2ループフィルタ駆動部104_2は、位相比較部103からのアップ/ダウン信号UP/DOWN に基づき、位相誤差情報に応じたシングルエンド出力のパルス電流を出力する。第2ループフィルタ駆動部104_2は、そのシングルエンド出力端(OUT )が抵抗素子162と容量素子164の接続点に接続される。
【0111】
つまり、この例では、第1ループフィルタ駆動部104_1の逆相出力端(OUT-)と第2ループフィルタ駆動部104_2の出力端が、抵抗素子162と容量素子164の接続点に共通に接続される。全体としては、第1ループフィルタ駆動部104_1の正相出力端(OUT+)であるノードND101の電圧に応じて発振部101の発振周波数が可変な構成となる。
【0112】
本実施形態では、第1ループフィルタ駆動部104A_1は、位相誤差情報に応じた差動出力のパルス電流を出力する差動出力チャージポンプ回路DOCPを有し、第2ループフィルタ駆動部104A_2は、位相誤差情報に応じたシングルエンド出力のパルス電流を出力するシングルエンドチャージポンプ回路SECPを有する。位相情報に応じたパルス電流を生成するパルス電流出力部の構成としてはチャージポンプ回路が簡易で好ましい。
【0113】
差動出力チャージポンプ回路DOCPは、抵抗素子162へ差動的にパルス電流を出力し、シングルエンドチャージポンプ回路SECPは容量素子164に通常のようにパルス電流を出力することになる。換言すると、抵抗素子162は、その両端に、差動出力チャージポンプ回路DOCPからの差動パルス電流が流れる。容量素子164には、シングルエンドチャージポンプ回路SECPからのシングルエンドパルス電流が流れる。
【0114】
なお、第1ループフィルタ駆動部104A_1は差動のパルス電流を出力する構成であればよいし、第2ループフィルタ駆動部104A_2はシングルエンドのパルス電流を出力する構成であればよく、必ずしもチャージポンプ回路構成のものである必要はない。たとえば、差動出力型やシングルエンド出力型の電流出力のDA変換回路(DAC;Digital to Analog Converter )を使用してもよい。この場合においても、ループフィルタ部106の抵抗回路(抵抗素子162)を駆動する側のループフィルタ部106はバイアス電流生成部230で生成されたバイアス電流IbCPR に応じた大きさのパルス電流を生成するような構成を採ればよい。
【0115】
ここで、差動出力チャージポンプ回路DOCPにおける正相出力端(OUT+)および逆相出力端(OUT-)におけるソース電流とシンク電流に差があると、その差分は容量素子164をチャージする電流にも使われる。本実施形態では、この差分がゼロとなるようにすることで、抵抗素子162による電圧生成と容量素子164による電圧生成を独立で行なうことができるようにする。この性質を利用することで、2つのパルス電流出力回路(ここではチャージポンプ回路)のゲインを変化させることにより、自然角周波数ωnとダンピングファクタζをそれぞれ自由に変えることを可能とし、かつ、その制御式を簡易にする。
【0116】
ループフィルタ部106と発振部101の間に介在する電圧選択部210は、その一方の入力端がノードND101(つまり第1ループフィルタ駆動部104_1の出力)に接続され、他方の入力端が基準電圧生成部240に接続され、出力端が発振部101に接続されている。
【0117】
ループフィルタ駆動部104の後段に設けられた発振部101としては、電圧制御発振回路101Aを使用することもできるし、電流制御発振回路101Bを使用することもできる。電圧制御発振回路101Aの場合は、ノードND101の電圧(Vr+Vc)を周波数制御入力端子101Ainに供給して発振動作する構成にすればよい。ここで、電圧Vrは抵抗素子162の両端電圧であり、Vcは容量素子164の両端電圧である。
【0118】
電流制御発振回路101Bの場合は、2つの電圧電流変換部166_1,166_2と電流加算部168を設ける。電圧電流変換ゲインGm1の電圧電流変換部166_1は、ノードND101の電圧(Vr+Vc)を発振制御電流Icnt_1 に変換する。電圧電流変換ゲインGm2の電圧電流変換部166_2は、ノードND102の電圧Vcを発振制御電流Icnt_2 に変換する。電流加算部168は、発振制御電流Icnt_1 ,Icnt_2 を合成して発振制御電流Icnt を生成して電流制御発振回路101Bの周波数制御入力端子101Binに供給する。
【0119】
電圧制御発振回路101Aや電流制御発振回路101Bの後段には、必要に応じて、出力された出力発振信号Vout の発振周波数fcco を1/αに分周して分周発振信号Vout1を取得する分周部102を設けてもよい。αは、分周比であって、正の整数、好ましくは2のべき乗で、かつ可変にする。
【0120】
本実施形態では、ループフィルタ駆動部104およびループフィルタ部106との接続関係を考慮すれば、電圧制御発振回路101Aにした方が回路構成がコンパクトになるし電圧電流変換ゲインGmの電圧電流変換部166(トランスコンダクタンス)が不要でその変換特性の影響を受けない点や耐ノイズ性が増すなどで有利である。
【0121】
ゲイン特性情報取得部107の各部は、次のようになっている。先ず、基準電位生成部220は、一定の基準電圧Vref を出力する定電圧源回路であり、たとえば、バンドギャップリファレンス(BGR)などのプロセスや温度依存性のない電圧源を有する。
【0122】
バイアス電流生成部230は、バイアス電流を作り出すバイアス電流源回路であり、基準電位生成部220から出力される基準電圧Vref と基準抵抗239に基づき、第1ループフィルタ駆動部104_1のバイアス電流IbCPや基準電圧生成部240のバイアス電流IbVrefを生成する。
【0123】
判定処理部250は、ゲイン特性情報取得部107の主要部である。この判定処理部250は、発振部101から出力された出力発振信号Vout に基づき発振制御信号(電圧もしくは電流)対周波数特性をキャリブレーションするために、基準電圧生成部240が2つのVCOコントロール電圧Vc1,Vc2を選択的に生成するための電圧切替制御信号EnVc1 ,EnVc2 を基準電圧生成部240に供給する。また、判定処理部250は、発振部101の出力クロックから発振制御信号対周波数特性Koscを測定し、それが所望の値になるように、発振部101を制御する。VCOコントロール電圧Vc1,Vc2は、キャリブレーション時に使用される補正処理用の発振制御信号(補正制御信号)である。基準電圧生成部240は、この補正処理用の発振制御信号(VCOコントロール電圧Vc1,Vc2)を生成する補正制御信号生成部の一例である。
【0124】
基準電圧生成部240は、バイアス電流生成部230からのバイアス電流IbVrefを参照電流に使用して、判定処理部250からの2つの電圧切替制御信号EnVc1 ,EnVc2 に基づき、バイアス電流生成部230で生成される第2のバイアス電流に応じた発振基準電圧となるゲインキャリブレーションに必要な2つのVCOコントロール電圧Vc1,Vc2を選択的に生成する。そして、生成したVCOコントロール電圧Vc1,Vc2を、電圧選択部210の他方の入力端に印加する。
【0125】
<チャージポンプ部>
図5は、差動出力チャージポンプ回路DOCPとシングルエンドチャージポンプ回路SECPの構成例を説明する図である。シングルエンド出力がノードND102に接続されたシングルエンドチャージポンプ回路SECPは、図5(1)に示すように、一定のソース電流を発生する正電源側に設けられたソース電流源120と、一定のシンク電流を発生する基準点側に設けられたシンク電流源122と、2つの制御スイッチ124,125を有する。シングルエンドチャージポンプ回路SECPは、アップ/ダウン信号UP/DOWN に応じたパルス幅のパルス電流Iout+を出力端(OUT )に入出力する。ソース電流源120のソース電流量I_120とシンク電流源122のシンク電流量I_122は同量にする。
【0126】
制御スイッチ124はソース電流源120とシングルエンド出力端(OUT )との間に接続され、制御スイッチ125はシンク電流源122とシングルエンド出力端(OUT )との間に接続されている。制御スイッチ124には、位相比較部103からのアップ信号UPが供給され、制御スイッチ125には、位相比較部103からのダウン信号DOWNが供給される。
【0127】
アップ信号UPとダウン信号DOWNは、位相比較部103が検知した位相誤差情報を表わすものであり、通常はアップ信号UPとダウン信号DOWNの双方がアクティブとなることはない。アップ信号UPがアクティブなときには制御スイッチ124がオンし、ソース電流源120からのソース電流が負荷である容量素子164に供給される。一組の各電流源120,122はソース動作を行なう。一方、ダウン信号DOWNがアクティブなときには制御スイッチ125がオンし、負荷である容量素子164からシンク電流がシンク電流源122に流れ込む。一組の各電流源120,122はシンク動作を行なう。つまり、シングルエンドチャージポンプ回路SECPは、位相比較部103が検知した位相誤差情報に応じたパルス状の駆動電流(チャージポンプ電流と称する)を容量素子164に入出力する。容量素子164(ノードND102)には、シングルエンドチャージポンプ回路SECPによる制御により、容量素子164の両端に電圧Vcが発生する。この電圧Vcは、アップ信号UPやダウン信号DOWNのアクティブ期間幅Δtを制御することで調整される。
【0128】
一方、差動出力が抵抗素子162の両端(ノードND101とノードND102)に接続された差動出力チャージポンプ回路DOCPの動作は、差動出力である点を除いては、シングルエンドチャージポンプ回路SECPと同一であり、アップ/ダウン信号UP/DOWN に応じて各制御スイッチ134〜137をオン/オフし、それに応じた差動電流を出力するというものである。したがって、このような差動型のチャージポンプ回路は、シングルエンドチャージポンプ回路SECPに対して、スイッチング素子の追加のみにより容易に構成することが可能である。
【0129】
具体的には、差動出力チャージポンプ回路DOCPは、図5(2)に示すように、一定のソース電流を発生する正電源側に設けられたソース電流源130と、一定のシンク電流を発生する基準点側に設けられたシンク電流源132と、4つの制御スイッチ134,135,136,137を有する。差動出力チャージポンプ回路DOCPは、アップ/ダウン信号UP/DOWN に応じたパルス幅のパルス電流Iout+を正相出力端(OUT+)に入出力し、パルス電流Iout-を逆相出力端(OUT-)に入出力する。ソース電流源130のソース電流量I_130とシンク電流源122のシンク電流量I_132は同量にする。
【0130】
制御スイッチ134はソース電流源120と正相出力端(OUT+)との間に接続され、制御スイッチ135はシンク電流源132と正相出力端(OUT+)との間に接続されている。制御スイッチ136はソース電流源120と逆相出力端(OUT-)との間に接続され、制御スイッチ137はシンク電流源132と逆相出力端(OUT-)との間に接続されている。制御スイッチ134,137には、位相比較部103からのアップ信号UPが供給され、制御スイッチ135,136には、位相比較部103からのダウン信号DOWNが供給される。
【0131】
前述のように、アップ信号UPとダウン信号DOWNは、位相比較部103が検知した位相誤差情報を表わすものであり、通常はアップ信号UPとダウン信号DOWNの双方がアクティブとなることはない。アップ信号UPがアクティブなときには、制御スイッチ134がオンしソース電流源130からのソース電流が負荷である抵抗素子162に供給されるとともに、制御スイッチ137がオンし、負荷である抵抗素子162からシンク電流がシンク電流源132に流れ込む。このときに抵抗素子162に流れる電流の向きはノードND101からノードND102の方向である。一方、ダウン信号DOWNがアクティブなときには、制御スイッチ136がオンしソース電流源130からのソース電流が負荷である抵抗素子162に供給されるとともに、制御スイッチ135がオンし、負荷である抵抗素子162からシンク電流がシンク電流源132に流れ込む。このときに抵抗素子162に流れる電流の向きはノードND102からノードND101の方向である。
【0132】
つまり、差動出力チャージポンプ回路DOCPは、位相比較部103が検知した位相誤差情報に応じたパルス状の駆動電流(チャージポンプ電流)を抵抗素子162に入出力する。このとき、ソース電流源130のソース電流量I_130とシンク電流源132のシンク電流量I_132が同量であれば、アップ信号UPがアクティブなときやダウン信号DOWNがアクティブなときの何れも、そのパルス幅に関わらず、電流が全て抵抗素子162のみで消費され、容量素子164をチャージする電流に使われることはない。ソース電流量I_130=シンク電流量I_132=I_R、アップ信号UPやダウン信号DOWNのアクティブ期間幅Δt、抵抗素子162の抵抗値R_162とすると、抵抗素子162の両端電圧VrはI_R×Δt×R_162となる。アップ信号UPやダウン信号DOWNのアクティブ期間幅Δtを制御することで、抵抗素子162の両端電圧Vrが調整される。アップ信号UPとダウン信号DOWNの何れかアクティブかで抵抗素子162に流れる電流の向きが逆になるので、差動出力チャージポンプ回路DOCPのみで位相が一定になるように発振部101を制御し得る電圧Vrが抵抗素子162に発生する。
【0133】
抵抗素子162の両端の電圧Vrは、ノードND102の電圧Vcと加算されてループフィルタ電圧Vloopとして発振部101に供給される。電圧Vrおよび電圧Vcはともに位相誤差情報を示すアップ/ダウン信号UP/DOWN に基づき制御されるものであるから、最終的には、位相誤差情報がゼロとなるように発振部101の出力周波数が制御されることになる。位相同期回路としての基本的動作は一般的なものと変りがない。
【0134】
<位相同期部のループ特性;本実施形態>
ここで、本実施形態の位相同期部100Aのループ特性についてさらに詳しく解析する。位相同期部100の動作の解析には、いわゆるチャージポンプPLLの解析として一般的な、線形化した閉ループ伝達関数を用いることができる。
【0135】
本実施形態の位相同期部100Aの場合、発振部101の入力−発振周波数変換ゲインKosci、抵抗値R(=抵抗素子162の抵抗値R_162)、容量値C(=容量素子164の容量値C_164)、CPR回路ゲインKcpr 、CPC回路ゲインKcpc とすると、その自然角周波数ωnおよびダンピングファクタζは、式(3−1)および式(3−2)のように表すことができる。因みに、CPR回路ゲインKcpr は、差動出力チャージポンプ回路DOCPで構成された第1ループフィルタ駆動部104_1の回路ゲインであり、CPC回路ゲインKcpc は、シングルエンドチャージポンプ回路SECPで構成された第2ループフィルタ駆動部104_2の回路ゲインである。
【0136】
【数3】

【0137】
ここで、たとえば、位相同期部100Aを記録再生装置1に適用する場合において、式(3−1)に基づき自然角周波数ωnを、次世代DVD、通常のDVD、CDの3種類の光ディスクPDの規格で決められている値に設定するには、位相同期部100AをICとしたときには、抵抗値Rや容量値Cは固定値であるため、チャージポンプ電流Icpや分周部102での分周比αあるいは入力−発振周波数変換ゲインKosciを調整しなければならない。
【0138】
本実施形態の場合、式(3)から分かるように、CPC回路ゲインKcpc とCPR回路ゲインKcpr を変えることにより、容量値Cと抵抗値Rは一定のままでも自然角周波数ωnとダンピングファクタζをそれぞれ自由に変えることができる。自然角周波数ωnとダンピングファクタζをそれぞれ自由に変えることが可能な高性能なPLL回路が実現できるようになる。本実施形態の基本構成では、抵抗素子162の駆動を差動出力チャージポンプ回路DOCPにより行なうことで、2つのチャージポンプ回路のゲインKcpc ,Kcpr を変化させて、自然角周波数ωnとダンピングファクタζを自由に調整可能とする際に、その制御式が簡易になっている。
【0139】
シングルエンドパルス出力回路(シングルエンドチャージポンプ回路SECP)と差動パルス出力回路(差動出力チャージポンプ回路DOCP)を併用することにより、抵抗回路や積分回路(容量回路)をスイッチングすることなく、自然角周波数ωnとダンピングファクタζをそれぞれ自由に変えることが可能な、高性能PLL回路を実現できる。
【0140】
また、本実施形態の位相同期部100Aの構成においては、特開平10−084279号公報に記載の構成とは異なり、2つのチャージポンプ回路DOCP,SECPの出力の加算は、電流ではなく電圧で行なわれループフィルタ電圧Vloopが得られる。したがって、発振部101の入力は必ず電圧であり、先にも述べたが、発振部101としては、電流制御発振回路101Bではなく、電圧制御発振回路101Aにすることが好ましい。
【0141】
その結果、電圧制御発振回路101Aとしては、回路構成がコンパクトになるし電圧電流変換ゲインGmの電圧電流変換部(トランスコンダクタンス)が不要でその変換特性の影響を受けない。たとえば、リング発振器を使用すれば、電圧−発振周波数がほぼ線形であることが利用でき、Gm回路や電流2乗回路のような電流電圧変換のためのアナログ回路の追加を必要としない。これらの回路を必要としないため、その雑音は位相同期部100Aに加わらず、精度の高い位相同期回路出力が得られる。雑音だけでなく、それらの追加アナログ回路の設計手間やチップ面積も不要である。
【0142】
<電流バイアス部>
図6は、バイアス電流生成部230の構成例を説明する図である。バイアス電流生成部230は、オペアンプ(OpAmp)などで構成された差動増幅部232と、電流ミラー部234と、基準抵抗部238を備える。差動増幅部232の反転入力端(−)には基準電位生成部220からの基準電圧Vref が供給される。基準抵抗部238は、抵抗値Rref の基準抵抗239を有する。
【0143】
電流ミラー部234は、差動増幅部232の出力段の図示しないトランジスタとカレントミラー接続された3つのpチャネル型の電流源トランジスタ235,236,237を有する。電流源トランジスタ235,236,237のゲートは共通に差動増幅部232の出力と接続され、ソースは正電源側に接続されている。電流源トランジスタ235のドレインは、差動増幅部232の非反転入力端(+)に接続されるとともに、基準電位(接地)との間に基準抵抗239が配置されている。
【0144】
バイアス電流生成部230は、基準電位生成部220からの基準電圧Vref を参照電圧とし、差動増幅部232のバーチャルショートを利用して基準抵抗239の上端を基準電圧Vref とすることで、Vref /Rref で決定される参照電流Iref を作成する。そして、この参照電流Iref を、カレントミラー接続された電流源トランジスタ236により第1ループフィルタ駆動部104_1で必要な大きさの電流値にミラーリングして、バイアス電流IbCPとする。同様に、参照電流Iref を、カレントミラー接続された電流源トランジスタ237により基準電圧生成部240で必要な大きさの電流値にミラーリングして、バイアス電流IbVrefとする。バイアス電流IbCPR は、抵抗回路(抵抗素子162)を駆動するためのバイアス電流であり、バイアス電流IbVrefは発振ゲイン補正処理用のバイアス電流である。
【0145】
<基準電圧生成部>
図7は、基準電圧生成部240の構成例を説明する図である。図7(1)に示す第1例の基準電圧生成部240_1は、ゲインキャリブレーションに必要な2つのVCOコントロール電圧Vc1,Vc2を固定した電圧値に設定する構成のものである。これに対して、図7(2)に示す第2例の基準電圧生成部240_2は、ゲインキャリブレーションに必要な2つのVCOコントロール電圧Vc1,Vc2の電圧値を所定量シフト可能な構成のものである。
【0146】
第1例の基準電圧生成部240_1は、2つの抵抗素子242,243の直列回路と2つの切替スイッチ246,247を有する。抵抗素子242,243は、バイアス電流生成部230の基準抵抗239と素子マッチングをとっておく。ここでも、素子マッチングとは、少なくとも温度変化特性が揃ったものが使用されることを意味する。そのための仕組みとしては、基準抵抗239と抵抗素子242,243は同一チップ内に作成するのが最も簡便な方法である。もちろん、チップ外部に、温度特性の揃った抵抗素子を設けてもよい。たとえば、一方がカーボン抵抗で他方が金属被膜抵抗などのように種類の異なる抵抗素子の組合せは温度変化特性が異なるので好ましくない。
【0147】
抵抗素子242の一端は、バイアス電流生成部230の電流源トランジスタ237のドレインに接続されてバイアス電流IbVrefが供給されるとともに、切替スイッチ246を介して電圧出力端Vctl に接続される。抵抗素子242の他端と抵抗素子243の一端の接続点は切替スイッチ247を介して電圧出力端Vctl に接続される。抵抗素子243の他端は基準電位(接地)に接続される。
【0148】
第1例の基準電圧生成部240_1は、バイアス電流生成部230の基準抵抗部238と素子マッチングをとった抵抗素子242,243にバイアス電流生成部230で作成したバイアス電流IbVrefを流すことでVCOコントロール電圧Vc1,Vc2を作り出す。抵抗素子242の抵抗値をR_242、抵抗素子243の抵抗値をR_243とする。VCOコントロール電圧Vc1は抵抗素子242と抵抗素子243の接続点の電位でありIbVref×R_243となる。VCOコントロール電圧Vc2は抵抗素子242とバイアス電流生成部230の接続点の電位であり、IbVref×(R_242+R_243)となる。各抵抗素子239,242,243の素子マッチングにより、抵抗素子239,242,243の絶対値がプロセスもしくは温度で変動したとしても、抵抗素子242,243の抵抗値の比が一定である限り正確なVCOコントロール電圧Vc1,Vc2を生成できる。
【0149】
第2例の基準電圧生成部240_2は、第1例の基準電圧生成部240_1をベースにして、抵抗素子243と基準電位との間にダイオード接続されたnチャネル型のトランジスタ244を有する。第2例の基準電圧生成部240_2は、VCOコントロール電圧Vc1,Vc2をトランジスタ244のゲート・ソース間電圧Vgsだけシフトした値を実現できる。たとえば発振部101が後述する図8のような電圧制御発振回路101Aである場合、周波数制御電圧Vctl が供給される周波数制御入力端子101Ainに接続されるトランジスタの閾値電圧Vthがプロセスや温度の変化で変動するとき、その閾値電圧Vthの変動に合わせて、VCOコントロール電圧Vc1,Vc2をシフトできるため、より精度の高いKvco キャリブレーションが可能となる。
【0150】
<電圧制御発振回路:第1例>
図8は、位相同期部100で使用する電圧制御発振回路101Aの第1例を示す図である。図8(A)に示すように、第1例の電圧制御発振回路101A_1は、周波数制御入力端子101in(101Ain)と出力端子101Aout との間に、所定数(本例では4段で示す)のディレイセル201(ディレイステージとも称される)を具備するリング発振器コア回路部200を備え、また、全てのディレイセル201で共通に使用されるNch電流源部206N(GmBank:電流補正部)を備えている。Nch電流源部206Nは、ビット別に電流値が重付けされたnチャネル型の電流源トランジスタ207Nと制御スイッチ208を有する。
【0151】
Nch電流源部206Nは、リング発振器コア回路部200の各ディレイセル201が発振動作するための発振電源電流(発振バイアス電流)を供給する。Nch電流源部206Nは、入力される発振制御信号Vctl に応じて、発振電源電流の総和を変化させることが可能である。リング発振器コア回路部200は発振電源電流の大きさに応じた周波数で発振する電流制御発振回路である。
【0152】
Nch電流源部206Nの発振制御信号Vctl が供給される入力端側にたとえば電流電圧変換用の抵抗素子209を追加することで、この抵抗素子209と電圧制御発振回路101A_1を合わせて便宜的に電流制御発振回路101Bとして使うことも可能である。このことを考えた場合、ループフィルタ部106と発振部101との間のインタフェースは電圧電流変換部166を介在させない構成の方が全体として繋がりがよいことが理解される。
【0153】
電圧制御発振回路101Aは、全体として差動リング発振器を構成するように、接続としては負帰還となる。動作時は、内部RCによる位相ずれで正帰還となる。たとえば、各ディレイセル201は縦続配置され、さらに最終段のディレイセル201_4の出力信号を、初段のディレイセル201_1の入力に戻す。
【0154】
本例では、1段目のディレイセル201_1の非反転出力+を2段目のディレイセル201_2の反転入力−に接続し、かつ1段目のディレイセル201_1の反転出力−を2段目のディレイセル201_2の非反転入力+に接続する。また、2段目のディレイセル201_2の非反転出力+を3段目のディレイセル201_3の反転入力−に接続し、かつ2段目のディレイセル201_2の反転出力−を3段目のディレイセル201_3の非反転入力+に接続する。
【0155】
これに対して、3段目のディレイセル201_3の非反転出力+は4段目のディレイセル201_4の非反転入力+に接続し、かつ3段目のディレイセル201_3の反転出力−は4段目のディレイセル201_4の反転入力−に接続する。このため、全体として正帰還を構成するように、4段目のディレイセル201_4の非反転出力+は1段目のディレイセル201_1の反転入力−に接続し、かつ4段目のディレイセル201_4の反転出力−は1段目のディレイセル201_1の非反転入力+に接続する。
【0156】
発振部101の2つの出力端子101out (4段目のディレイセル201の非反転出力+および反転出力−)のうち何れか一方が、電圧制御発振回路101Aの出力端子101Aout として使用される。
【0157】
図8(B)に示すように、各ディレイセル201は、2つのトランジスタ202,204(ここでは電界効果トランジスタ)を使用した差動回路で構成されている。具体的には、一方のトランジスタ202のゲートGを非反転入力(Vin+)とし、そのドレインDを抵抗素子203を介して正電源Vddに接続し、そのドレインDを反転出力(Vout− )とする。また、他方のトランジスタ204のゲートGを反転入力(Vin−)とし、そのドレインDを抵抗素子205を介して正電源Vddに接続し、そのドレインDを非反転出力(Vout+ )とする。また、各トランジスタ202,204のソースSを共通にして、電流値可変型のNch電流源部206Nを介して基準電位(本例では接地電位GND )に接続する。
【0158】
電流値可変型のNch電流源部206Nは、制御入力端子206CN(周波数制御入力端子101Ain)に供給される発振制御信号CNをカレントミラー形式(カレントミラー比は1:1でよい)で受けてトランジスタ202,204にバイアス電流を供給するようになっている。
【0159】
Nch電流源部206Nは、ビット別に対応するN本のシンク電流源となる電流源トランジスタ207Nと、電流源トランジスタ207Nの出力を選択的に合成するための制御スイッチ208を有する。電流源トランジスタ207Nは、アップUp用とダウンDn用に各1個が、ビット別に設けられる。これに対応して、制御スイッチ208も、アップUp用とダウンDn用に各1個が、ビット別に設けられる。制御スイッチ208Upはアップコントロール信号 UpCtl<*>でオン/オフ制御され、制御スイッチ208Dnはダウンコントロール信号 DnCtl<*>でオン/オフ制御される。<*>はビット位置を示し、これらアップコントロール信号 UpCtl<*>とダウンコントロール信号 DnCtl<*>は判定処理部250から供給される。
【0160】
ビット別のアップUp用とダウンDn用の各電流源トランジスタ207NUp,207Dnの電流量はビットの重みに応じた同量に設定される。全ビットの各制御スイッチ208Up,208Dnの全てをオンさせたときの電流量Iに対して、全ビットのアップ側の制御スイッチ208Upのみを全てオンしたときや、全ビットのダウン側の制御スイッチ208Dnのみを全てオンしたときの電流量がそれぞれI/2となるようにしてある。
【0161】
判定処理部250は、後述する電圧制御発振回路101Aのゲインキャリブレーションの処理開始時には先ず全ビットのダウン側の制御スイッチ208Dnのみを全てオンにしてリング発振器コア回路部200にI/2が供給されるようにする。判定処理部250は、2つのVCOコントロール電圧Vc1,Vc2のそれぞれにおける実際の発振周波数(実動周波数)の差から実動時の入力信号−発振周波数変換ゲイン特性(VCO回路ゲインKvcoc)を特定し、目標の入力信号−発振周波数変換ゲイン特性(VCO回路ゲインKvcot)との差を補正するように、実動発振ゲインKosccの目標発振ゲインKosctに対する大小に応じたNビット目についての制御スイッチ208Up,208Dnのオン/オフ制御を行なう。これを、Nビット目についてのゲイン判定・補正処理と称する。Nビット目についてのゲイン判定・補正処理後のスイッチ状態で、引き続き同様のゲイン判定・補正処理をN−1ビット目→…→1ビット目とNビット分繰り返す。これにより、電圧制御発振回路101AのVCO回路ゲインKvco がキャリブレーションされる。この点については後で詳しく説明する。
【0162】
<電圧制御発振回路:第2例>
図9〜図9Cは、位相同期部100で使用する電圧制御発振回路101Aの第2例を説明する図である。ここで、図9は、第2例の電圧制御発振回路101A_2の回路構成図である。図9Aおよび図9Bは、第2例の電圧制御発振回路101A_2の動作を説明する図である。図9Cは、第2例の電圧制御発振回路101Aへの適用に好適な電流補正部(GmBank)の構成例を示す図である。
【0163】
第2例の電圧制御発振回路101A_2は、基本的に、シングルエンド型と差動型の双方の長所を併せ持つリングVCO回路として形成される。第2例の電圧制御発振回路101A_2、発振コア部と制御用電流源660を主構成要素として有している。発振コア部は、偶数個(図9の例では2個)の第1および第2の3段インバータリング610,620、複数の3段インバータリング610,620の対応するノード間に接続され、インバータリング同士を結合して一定の位相関係を与える第1、第2、および第3のインバータ対630,640,650を有する。第1および第2の3段インバータリング610,620が主ループを形成し、インバータ対630,640,650がインバータ(対)群(副ループを形成する)が形成される。
【0164】
第1の3段インバータリング610は、3つのインバータ611,612,613(反転回路)をリング状(環状)に縦続接続して形成されている。インバータ611の出力端子とインバータ612の入力端子が接続され、その接続点によりノードND611が形成されている。このノードND611を含むインバータ611の出力端子とインバータ612の入力端子との接続経路をラインL611とする。インバータ612の出力端子とインバータ613の入力端子が接続され、その接続点によりノードND612が形成されている。このノードND612を含むインバータ612の出力端子とインバータ613の入力端子との接続経路をラインL612とする。インバータ613の出力端子とインバータ611の入力端子が接続され、その接続点によりノードND613が形成されている。このノードND613を含むインバータ613の出力端子とインバータ611の入力端子との接続経路をラインL613とする。
【0165】
第2の3段インバータリング620は、3つのインバータ621,622,623(反転回路)をリング状(環状)に縦続接続して形成されている。インバータ621の出力端子とインバータ622の入力端子が接続され、その接続点によりノードND621が形成されている。このノードND621を含むインバータ621の出力端子とインバータ622の入力端子との接続経路をラインL621とする。インバータ622の出力端子とインバータ623の入力端子が接続され、その接続点によりノードND622が形成されている。このノードND622を含むインバータ622の出力端子とインバータ623の入力端子との接続経路をラインL622とする。インバータ623の出力端子とインバータ621の入力端子が接続され、その接続点によりノードND623が形成されている。このノードND623を含むインバータ623の出力端子とインバータ621の入力端子との接続経路をラインL623とする。
【0166】
第1のインバータ対630は、2つのインバータ631,632を有する。インバータ631の入力端子が第1の3段インバータリング610のノードND611に接続され、出力端子が第2の3段インバータリング620のノードND622に接続されている。このインバータ631を含むノードND611とND622との接続経路をラインL631とする。インバータ632の入力端子が第2の3段インバータリング620のノードND622に接続され、出力端子が第1の3段インバータリング610のノードND611に接続されている。このインバータ632を含むノードND622とND611との接続経路をラインL632とする。
【0167】
第2のインバータ対640は、2つのインバータ641,642を有する。インバータ641の入力端子が第1の3段インバータリング610のノードND613に接続され、出力端子が第2の3段インバータリング620のノードND621に接続されている。このインバータ641を含むノードND613とND621との接続経路をラインL641とする。インバータ642の入力端子が第2の3段インバータリング620のノードND621に接続され、出力端子が第1の3段インバータリング610のノードND613に接続されている。このインバータ642を含むノードND621とND613との接続経路をラインL642とする。
【0168】
第3のインバータ対650は、2つのインバータ651,652を有する。インバータ651の入力端子が第1の3段インバータリング610のノードND612に接続され、出力端子が第2の3段インバータリング620のノードND623に接続されている。このインバータ651を含むノードND612とND623との接続経路をラインL651とする。インバータ652の入力端子が第2の3段インバータリング620のノードND623に接続され、出力端子が第1の3段インバータリング610のノードND613に接続されている。このインバータ652を含むノードND623とND612との接続経路をラインL652とする。
【0169】
このように、各インバータ対630,640,650は、複数の3段インバータリング610,620を結び合わせ一定の位相関係を与えるカップリングインバータ(ラッチ)として機能する。
【0170】
電圧制御発振回路101A_2の基本単位となるインバータ611〜613、621〜623、631,632、641,642、651,652は、たとえばPMOS(pチャネル型のMOSトランジスタ)とNMOS(nチャネル型のMOSトランジスタ)を直列接続した一般的なCMOSインバータにより構成される。各インバータ611〜613、621〜623、631,632、641,642、651,652のNMOSのソース(すなわち負側の電源入力端子)が、共通のノードND661に接続される。あるいはPMOSのソース(正側の電源入力端子)が、共通のノードND662に接続される。
【0171】
図9(2)に示すように、各インバータには、上側電流源660UPと下側電流源660DNを具備し、電源電流を供給する制御用電流源660が接続されている。CMOSインバータの上側に配置されるPMOSには、上側電流源660UPから発振電源電流が供給され、下側に配置されるNMOSには下側電流源660DNから発振電源電流が供給される。上側電流源660UPおよび下側電流源660DNは、共通ノードND161,ND162を介して各インバータに供給される電源電流の総和を一定に保つ。上側電流源660UPや下側電流源660DNは、入力される制御信号VCNT に応じて、この電源電流の総和を変化させることが可能である。
【0172】
上側電流源660UPや下側電流源660DNは、たとえば図9(3),(4)に示すように、制御信号VCNT に応じて、ノードND661から基準電位Vssあるいは電源電位VddからノードND662へ流れる電流を変化させる。下側電流源660DNのみを使う際には電流源の吸込みノードND661は発振コアのインバータ611〜613、621〜623、631,632、641,642、651,652の全てのN側ソースと短絡する。発振コアのインバータのP側ソースは電源電位Vddに短絡する。逆に、上側電流源660UPのみを使う際には電流源の注入ノードND662は発振コアのインバータ611〜613、621〜623、631,632、641,642、651,652の全てのP側ソースと短絡する。発振コアのインバータのN側ソースはグラウンドに短絡する。
【0173】
第2例の電圧制御発振回路101A_2では、制御信号VCNT に応じて下側電流源660DNや上側電流源660UPの電流を変化させることにより、発振回路の周波数を制御する。図9(3)に示すように、下側電流源660DNは、Nch電流源661であり、NMOSトランジスタNT661により構成可能である。この場合、NMOSトランジスタNT661のドレインがノードND661に接続され、ソースが基準電位Vssに接続され、ゲートが制御信号VCNT の供給ラインに接続される。図9(3)に示すように、上側電流源660UPは、Pch電流源662であり、PMOSトランジスタPT662により構成可能である。この場合、PMOSトランジスタPT161のドレインがノードND662に接続され、ソースが電源電位Vddに接続され、ゲートが制御信号VCNT の供給ラインに接続される。
【0174】
なお、上側電流源660UPと下側電流源660DNの双方を使用することは必須ではない。上側電流源660UPのみを使用する場合は、発振コア部の各インバータのn側ソースノードは基準電位(接地)に接続する。下側電流源660UPのみを使用する場合は、発振コア部の各インバータのp側ソースノードは電源電位Vddに接続する。
【0175】
図9Aおよび図9Bでは、発振コア部に着目して示しており、簡便のため、インバータを矢印付の線で表している。図9B(1),(2),(3)は、図9Aを分解して示しており、図9B(1),(2)が3段インバータリングを、図9B(3)がカップリングラッチ(インバータ対)を示している。
【0176】
この例では、3段インバータリング610,620を正三角形の各辺L611,L612,L613、L621,L622,L623、その3段インバータリング610,620のノードND611,ND612,ND613、ND621,ND622,ND623を正三角形の各頂点とみなして、それらを図9Aに示すように、等回転角で円周上に配置したときに、対角に来るノード同士をそれぞれインバータ対630,640,650で接続するというものである。このようにして互いに接続関係の無かった3段インバータリング610,620はインバータ(対)群で互いに関連付けられる。この図はまた各ノードの位相関係を示している。すなわち、この図はこの発振回路が互いに360/6=60度だけ位相がずれた6つの信号を出力することを表す。これは互いに60度位相のずれた3つの差動信号を出力するということもできる。
【0177】
ここで、第2例の電圧制御発振回路101A_2の動作特性に関して述べる。図9A、図9Bで示されるように、第2例の電圧制御発振回路101A_2は、複数の3段インバータリングとそれらを結び合わせるカップリングインバータ(ラッチ)により形成される。よく知られているように、3段インバータリングは非常に高速な発振器となる。したがって、第2例の電圧制御発振回路101A_2は高速で発振することができる。また、カップリングインバータ(ラッチ)により2つの3段インバータリングは独立に発振するのではなく、互いに同期する。このことにより、等間隔に分布した6相が得られる。これはまた、差動信号を3種類得られるということである。さらに、発振コア部が全て電源とグランドに対して対称な構造を持つインバータで構成されるために、発振波形の対称性がよく、位相ノイズ・ジッタ特性も良好となる。また、電流源制御であるために、電源耐性にも優れ、周波数可変範囲も広い。
【0178】
このように、第2例の電圧制御発振回路101A_2は、偶数個(図9の例では2個)の第1および第2の3段インバータリング610,620、複数の3段インバータリング610,620の対応するノード間に接続され、インバータリング同士を結合して一定の位相関係を与える第1〜第3のインバータ対630,640,650、および制御用電流源660を主構成要素として有していることから、電源電圧感度が小さく、周波数可変範囲が広く、ジッタ・位相ノイズ性能に優れ、等間隔の複数位相を持った差動信号を生成する高速なリング発振回路やそれを用いた位相同期回路を実現することが可能である。
【0179】
ここで、第2例の電圧制御発振回路101A_2においては、発振周波数を制御する機能要素として、下側電流源660DN(Nch電流源661)や上側電流源660UP(Pch電流源662)を備えており、発振制御信号Vctl に応じて上側電流源660UPや下側電流源660DNの電流を変化させることにより発振コア部の周波数を制御することができる。下側電流源660DN(Nch電流源661)や上側電流源660UP(Pch電流源662)に、第1例で説明したのと同様に、GmBank構成の電流補正部を適用することが可能であり、後述するωn,ζのキャリブレーション処理がそのまま適用できる。
【0180】
たとえば、下側電流源660DN(Nch電流源661)に関しては、図9C(1)に示すように、第1例の電圧制御発振回路101A_1と同様のNch電流源部206Nを適用すればよい。一方、上側電流源660UP(Pch電流源662)に関しては、図9C(2)に示すように、Nch電流源部206Nの電流源トランジスタ207NをpMOSの電流源トランジスタ207Pに変更したPch電流源部206Pを適用すればよい。
【0181】
なお、電圧制御発振回路101Aの例として2つを説明したが、これらに限定されるものではない。たとえば、特開2007−274431号公報に記載の発振回路(低ジッタリングVCOと称する)において、発振リング回路部分はそのままに、それに接続される電流源回路(同公報の図4の電流源回路CS1)を、第1例の電圧制御発振回路101A_1で使用したNch電流源部206Nに置き換えた構成にしてもよい。このような構成においても、Nch電流源部206Nを使用するので、後述するωn,ζのキャリブレーション処理がそのまま適用できる。
【0182】
また、非特許文献2のFigure5に記載のような構成において、その電流補正部に関して(後述する図11C(2)を参照)、Nch電流源部206Nを適用することも可能である。このような構成においても、Nch電流源部206Nを使用するので、後述するωn,ζのキャリブレーション処理がそのまま適用できる。
【0183】
<判定処理部>
図10は、判定処理部250の構成例を説明する図である。図10Aは、判定処理部250における処理手順を説明する模式図である。判定処理部250は、シーケンス制御部252と、バッファ部254と、カウンタ部256と、比較部258と、電流源制御部260を備える。
【0184】
シーケンス制御部252は、キャリブレーションのシーケンスを制御する。たとえば、シーケンス制御部252は、基準電圧生成部240が2つのVCOコントロール電圧Vc1,Vc2を選択的に生成するための電圧切替制御信号EnVc1 ,EnVc2 を基準電圧生成部240に供給する。さらにシーケンス制御部252は、バッファ部254、カウンタ部256、比較部258、電流源制御部260を制御する。たとえば、シーケンス制御部252は、基準参照クロックCKref で決定される期間Tref の情報をバッファ部254に通知する。、シーケンス制御部252は、カウンタ部256がアップカウント動作をするかダウンカウント動作をするかを指示するカウントモード信号UP/DN をカウンタ部256に供給する。シーケンス制御部252は、後述するターゲットカウント値ΔEtの情報を比較部258に通知する。シーケンス制御部252は、比較部258の比較結果に基づいてダウンコントロール信号 DnCtl<*>やアップコントロール信号 UpCtl<*>をビット別に制御するように指示する。
【0185】
バッファ部254は、発振部101で生成される発振周波数fosciの出力発振信号Vout を取り込む時間を決定するイネーブル機能付きのバッファ回路である。カウンタ部256は、出力発振信号Vout をシーケンス制御部252で指定された期間Tref についてカウントするためのアップダウンカウンタである。比較部258は、カウンタ部256によるカウント値ΔEcと、目標とする発振周波数差Δfと対応するターゲットカウント値ΔEtを比較する。
【0186】
電流源制御部260は、比較部258の比較結果に基づいて、アップコントロール信号 UpCtl<*>をNch電流源部206Nのアップ用の制御スイッチ208Upに供給し、ダウンコントロール信号 DnCtl<*>をNch電流源部206Nのダウン用の制御スイッチ208Dnに供給する。
【0187】
<自然角周波数ωnのキャリブレーション動作>
次に、自然角周波数ωnのキャリブレーションに関して説明する。最初に、PLL動作させる前に、発振部101(ここでは電圧制御発振回路101A)のVCOゲインKvco のキャリブレーションを行なう。
【0188】
このとき、判定処理部250は、2つの発振制御信号(VCOコントロール電圧Vc1,Vc2)を使って、各VCOコントロール電圧Vc1,Vc2の元での実際の発振周波数の差に基づき、電圧制御発振回路101Aの入力信号−発振周波数変換ゲイン特性(発振ゲイン:VCO回路ゲインKvcoc)を取得し、このVCO回路ゲインKvcocと目標のVCO回路ゲインKvcotとの差に基づき電圧制御発振回路101Aが発振動作するための動作電流を補正する。以下では、最初にVCOコントロール電圧Vc2について測定し、次にVCOコントロール電圧Vc1について測定するものとして説明する。その順序は逆でもよい。
【0189】
図3中の基準電圧生成部240および判定処理部250を使用し、電圧選択部210が基準電圧生成部240側に接続した状態とする(S100)。
【0190】
判定処理部250の電流源制御部260は、全ビットのアップコントロール信号 UpCtl<*>をインアクティブ、全ビットのダウンコントロール信号 DnCtl<*>をアクティブにする(S102)。これにより、Nch電流源部206N(GmBank)の各ビットの電流値関係を図10A(1)に示すように表現したとき、図10A(2)に示すように、Nch電流源部206Nは、アップ側の制御スイッチ208Upを全ビットオフ、ダウン側の制御スイッチ208Dnを全ビットオン状態にセットする。
【0191】
次に判定処理部250は、電圧切替制御信号EnVc1 をインアクティブ、電圧切替制御信号EnVc2 をアクティブにして、基準電圧生成部240からVCOコントロール電圧Vc2がNch電流源部206Nに供給されるようにする(S104)。
【0192】
カウンタ部256は、この状態での電圧制御発振回路101Aから出力される出力発振信号Vout のパルスエッジを基準参照クロックCKref 決定される期間Tref の間カウントアップし(S106)、そのカウントアップ値を保持する(S108)。
【0193】
次に、判定処理部250は、電圧切替制御信号EnVc1 をアクティブ、電圧切替制御信号EnVc2 をインアクティブにして、基準電圧生成部240からVCOコントロール電圧Vc1がNch電流源部206Nに供給されるようにする(S112)。
【0194】
カウンタ部256は、この状態での電圧制御発振回路101Aから出力される出力発振信号Vout のパルスエッジを、今度は先ほど保持したカウントアップ値から期間Tref の間カウントダウンし(S116)、そのカウント値を保持する(S118)。
【0195】
このカウンタ部256が保持している結果は、VCOコントロール電圧Vc1、Vc2の電位差を電圧制御発振回路101Aに与えたときのパルスエッジ数の差(エッジ数差)である。パルスエッジ数の差は発振周波数差を表しており、現設定状態でのVCO回路ゲインKvcocそのものを示している。
【0196】
現設定状態でのVCO回路ゲインKvcoは、式(4)にように表せる。ここで、Eupはカウントアップ時のVCO出力パルスエッジ数、Ednはカウントダウン時のVCO出力パルスエッジ数、ΔEcはVCO出力パルスエッジ数Eup,Ednの差(、ΔVcは基準電圧生成部240が生成するVCOコントロール電圧Vc1,Vc2の差電圧である。
【0197】
【数4】

【0198】
比較部258は、式(4)に従ってVCO回路ゲインKvcocを求める(S120)。そして、比較部258は、このVCO回路ゲインKvcocをターゲットのVCO回路ゲインKvcotと比較する。このとき、実際の回路で得られる情報はVCO出力パルスエッジの差ΔEcであるため、比較のためVCO回路ゲインKvcotからエッジ数の差のターゲットカウント値ΔEtを求める必要がある。そのターゲットカウント値ΔEtは式(5)にように表せる。
【0199】
【数5】

【0200】
比較部258は、ΔEcとΔEtを比較してその比較結果を電流源制御部260に通知する(S122)。電流源制御部260は、ΔEc>ΔEtであればダウンコントロール信号 DnCtl<*>のNビット目(MSB)をインアクティブにし(S122−YES,S124)、ΔEc≦ΔEtであればアップコントロール信号 UpCtl<*>のNビット目(MSB)をアクティブにする(S122−NO,S126)。
【0201】
次に、判定処理部250は、Nビット目のダウンコントロール信号 DnCtl<*>とアップコントロール信号 UpCtl<*>をこの状態に維持したままで、ステップS104に戻る(S128−NO)。そして、同様のシーケンスで、VCOコントロール電圧Vc1、Vc2におけるエッジ数差ΔEcを求めて、ターゲットカウント値ΔEtと比較し、同様の判定方法でダウンコントロール信号 DnCtl<*>やアップコントロール信号 UpCtl<*>のN−1ビット目を制御する。同様のシーケンスをN回(ビット数分)繰り返すことで、VCO回路ゲインKvco がキャリブレーションされる(S128−YES)。
【0202】
たとえば、Nビット目についての1stStepでは、図10A(2)に示す状態でΔEcを測定し、ΔEtと比較して、Ec>Etの場合は図10A(3−1)に示すように、またEc≦Etの場合は図10A(3−2)に示すように、Nビット目(MSB)を制御する。そして、次ステップ(N−1ビット目についての2ndStep)では、図10A(3−1)もしくは図10A(3−2)のような状態のままで、再度ΔEcとΔEtの大小関係を比較するなどの処理を実施する。この大小関係によってN−1ビット目をコントロールし、これをLSBまで繰り返す、という処理を実施するのがキャリブレーションのシーケンスになる。
【0203】
ディスク媒体からのデジタル記録データ再生系PLLでは、ディスク回転を制御するサーボ機構の偏芯によるデータレートの変化には追従する必要があるが、ディスク媒体に内在するメディアノイズによるデータレートの変化には追従させたくないという理由から、一般的に自然角周波数ωnを下げる必要がある。このため、CPC回路ゲインKcpc やVCO回路ゲインKvco をできるだけ小さくして対応するが限度がある。また容量素子164の容量値Cを大きくすることでも対応できるが、大きなチップ面積を占有してしまうため、本実施形態では容量素子164をチップ外に実装することで、自然角周波数ωnを所望の値まで下げる。つまり、容量値Cは外部から変更可能、もしくは値が管理されたものを用いることができる。容量素子164を原因とする自然角周波数ωnのバラつきは発生しない。
【0204】
よって、自然角周波数ωnを最もバラつかせる要因であるVCO回路ゲインKvco をキャリブレーションすることで自然角周波数ωnのバラつきを抑えることができる。ここで、本例のキャリブレーション処理では、CPC回路ゲインKcpc についてはキャリブレーションを実施していないが、容量素子164の容量値Cに関しては、回路(実際には半導体チップ)の外付け素子として値を管理できること前提とする。この場合、VCO回路ゲインKvco のバラつきはCPC回路ゲインKcpc のバラつきと比較して数10倍程度であるため、PLLの定数ωn・ζのバラつきはVCO回路ゲインKvco が支配的であると考えることができる。よって、VCO回路ゲインKvco をキャリブレーションすることで設計値に近づけることができるようになる。
【0205】
<ダンピングファクタζのキャリブレーション動作>
次に、ダンピングファクタζのキャリブレーションに関して説明する。図3に示した位相同期部100Aでのダンピングファクタζのバラつきの最大要因は抵抗素子162の抵抗値Rである。
【0206】
式(3)から分かるように、自然角周波数ωnとダンピングファクタζの独立変数は抵抗値RとCPR回路ゲインKcpr である。抵抗値Rのバラつき分をCPR回路ゲインKcpr で相殺する、換言すると抵抗値Rのバラつきに対してCPR回路ゲインKcpr が反比例することで、自然角周波数ωnを変化させることなくダンピングファクタζをキャリブレーションすることができる。
【0207】
図3に示した位相同期部100Aにおいて、ループフィルタ部106の抵抗素子162とバイアス電流生成部230の基準抵抗239の素子マッチングをとっておく。一般的にチップ内に抵抗素子を作った場合、個々の抵抗値の絶対値バラつきは±20%程度となるが、2つの抵抗素子の相対バラつきは非常に小さい。つまり、抵抗値Rが変動すると、基準抵抗239の抵抗値Rref も同様に変動する。
【0208】
図6に示すバイアス電流生成部230において、この抵抗値Rrefを用いて作成したVref /Rref で決まる参照電流Iref を電流ミラー部234の電流源トランジスタ236でミラーリングして、第1ループフィルタ駆動部104_1のバイアス電流IbCPR とすることで、CPR回路ゲインKcpr は常に基準抵抗239の抵抗値Rref のバラつきに反比例した値となる。
【0209】
つまり、CPR回路ゲインKcpr は抵抗素子162(ループフィルタ抵抗)の抵抗値Rのバラつきにも反比例した値となり、ダンピングファクタζがキャリブレーションされる。
【0210】
以上のことから、本実施形態の位相同期部100Aは、自然角周波数ωnおよびダンピングファクタζのキャリブレーションが可能となる。
【0211】
シングル出力と差動出力の2つのループフィルタ駆動部104と、複数の電流源回路(電流源トランジスタ207N)を持つNch電流源部206Nからの発振電源電流(発振バイアス電流)の元で動作する電流制御発振回路であるリング発振器コア回路部200の組合せで構成された電圧制御発振回路101Aを擁するPLL本体部としていることが、ωn,ζのキャリブレーションに有効に機能する。
【0212】
さらに、そのような電圧制御発振回路101Aの出力発振信号Vout (出力クロック)から制御信号対周波数特性Kosci(VCO回路ゲインKvcoc)を測定し所望のVCO回路ゲインKvcotになるようにNch電流源部206Nを制御するロジック回路(判定処理部250)と、基準電位生成部220が生成する一定電圧(基準電圧Vref )と基準抵抗239から生成されたバイアス電流IbCPR を抵抗素子162を駆動する第1ループフィルタ駆動部104_1に与えるバイアス電流生成部230を備えたゲイン特性情報取得部107としていることも、ωn,ζのキャリブレーションに有効に機能する。
【0213】
以上説明したことは、電圧制御発振回路101Aを電流制御発振回路101Bに変更した場合(たとえば電流電圧変換用の抵抗素子209を追加した構成)でも言えることは容易に理解されるであろう。
【0214】
図3に示したPLL本体部とゲイン特性情報取得部107を備えたキャリブレーション方式を用いることで、発振ゲインKosciは自己キャリブレーションを行なうため、比較例のように、チャージポンプCPなどの発振部101以外の構成回路にキャリブレーション情報をフィードバックする必要はない。つまり、設計の切り分けができ、発振部101自体はもちろん、それ以外の構成回路設計検証も容易になる。
【0215】
またCPR回路ゲインKcpr のキャリブレーションはフルデジタル回路で実現され、キャリブレーション情報もデジタル信号であるため、ジッタ性能を悪化させないだけでなく、小チップ面積化も達成できる。さらに図3に示したPLL本体部の構成を用いることで、自然角周波数ωnを変化させずにダンピングファクタζをキャリブレーションすることが可能となる。プロセス・温度変化による自然角周波数ωnおよびダンピングファクタζの変動をキャリブレーション可能な高性能PLLが小面積で実現可能となる。
【0216】
ノイズ性能、回路規模、キャリブレーションの容易さ、設計・検証の手間などの面でバランスのとれた構成を実現できた。
【0217】
以上、本発明について実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は前記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で前記実施形態に多様な変更または改良を加えることができ、そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0218】
また、前記の実施形態は、クレーム(請求項)にかかる発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組合せの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。前述した実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜の組合せにより種々の発明を抽出できる。実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、効果が得られる限りにおいて、この幾つかの構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【0219】
たとえば、前記実施形態では、光ディスク装置などの記録再生装置への適用例で説明したが、記録再生装置としては光ディスク装置に限らず、たとえば、ハードディスク駆動装置などもあり、ハードディスク駆動装置もクロックリカバリ回路や書込みクロック生成回路を使用することがある。このクロックリカバリ回路や書込みクロック生成回路に前記実施形態の位相同期部100を適用可能である。
【0220】
光ディスク装置やハードディスク駆動装置に限らず、デジタルVTR、デジタルVCRなどの他の記録再生装置において、記録媒体から読み取られた再生信号の位相情報に基づいて再生クロックを生成するクロックリカバリ回路などにも同様に適用可能である。
【0221】
さらに、記録再生装置に限らず、たとえば、ツイストペアメタルケーブルやファイバケーブルを媒体とするシリアル通信やチップ間伝送での入出力インタフェースなど、受信信号列のタイミングを再生する技術や、その他の電子機器にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0222】
【図1】記録再生装置の一実施形態を示すブロック図である。
【図1A】記録・再生信号処理部の一構成例を示す機能ブロック図である。
【図2】比較例の回路構成を説明する図である。
【図3】本実施形態の位相同期部の基本構成を説明する図である。
【図4】比較例の線形Gm回路を示す図である。
【図5】チャージポンプ回路の構成例を説明する図である。
【図6】電流バイアス部の構成例を説明する図である。
【図7】基準電圧生成部の構成例を説明する図である。
【図8】第1例の電圧制御発振回路を示す図である。
【図9】第2例の電圧制御発振回路を示す図である。
【図9A】第2例の電圧制御発振回路の動作を説明する図(その1)である。
【図9B】第2例の電圧制御発振回路の動作を説明する図(その2)である。
【図9C】第2例の電圧制御発振回路への適用に好適な電流補正部(GmBank)の構成例を示す図である。
【図10】判定処理部の構成例を説明する図である。
【図10A】判定処理部における処理手順を説明する模式図である。
【図11】位相同期回路を一般的に表わした回路ブロック図である。
【図11A】特許文献1に開示されている位相同期回路である。
【図11B】非特許文献1の仕組みを示す図である。
【図11C】非特許文献2の仕組みを示す図である。
【符号の説明】
【0223】
1…記録再生装置、100…位相同期部(位相同期回路)、101…発振部、103…位相比較部、104…ループフィルタ駆動部、104_1…第1ループフィルタ駆動部、104_2…第2ループフィルタ駆動部、106…ループフィルタ部、106_1…第1ループフィルタ回路部、106_2…第2ループフィルタ回路部、107…ゲイン特性情報取得部、162…抵抗素子、164…容量素子、200…リング発振器コア回路部、210…電圧選択部、220…基準電位生成部、230…バイアス電流生成部、234…電流ミラー部、239…基準抵抗、240…基準電圧生成部、244…トランジスタ、250…判定処理部、252…シーケンス制御部、254…バッファ部、256…カウンタ部、258…比較部、260…電流源制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号の位相情報を検出する位相検出部と、
抵抗回路と容量回路との直列回路を有し、前記容量回路の前記抵抗回路とは反対側の端子が基準点に接続されたループフィルタ部と
前記位相検出部から出力される位相情報に応じた差動のパルス電流を、正相出力端と逆相出力端から、前記抵抗回路と容量回路の一方に供給する第1のパルス電流出力部と、
前記位相検出部から出力される位相情報に応じたシングルエンドのパルス電流を、シングル出力端から、前記抵抗回路と容量回路の他方に供給する第2のパルス電流出力部と、
前記第1のパルス電流出力部の前記正相出力端および前記逆相出力端からの差動のパルス電流に基づき前記抵抗回路と容量回路の一方の両端に発生する電圧と、前記第2のパルス電流出力部のシングル出力端からのパルス電流に基づき前記抵抗回路と容量回路の他方の両端に発生する電圧との合成成分に応じて発振周波数が可変な発振部と、
所定の大きさの補正処理用の発振制御信号を使って、当該発振制御信号の元での実際の発振周波数の差に基づき、前記発振部の入力信号対発振周波数特性を示す実動の発振ゲインの情報を取得し、この実動の発振ゲインと目標の発振ゲインとの差に基づき前記発振部の発振動作を補正するキャリブレーション部と
を有する位相同期回路。
【請求項2】
前記キャリブレーション部は、
所定の大きさの基準電圧を生成する基準電位生成部と、
基準の大きさの抵抗値を有する基準抵抗を具備し、前記基準電位生成部で生成された基準電圧と前記基準抵抗に基づく所定の大きさの基準電流を生成し、当該基準電流をミラーリングして前記発振ゲインの補正処理用のバイアス電流を生成する電流バイアス部と、
前記電流バイアス部で生成された前記補正処理用のバイアス電流に基づき前記補正処理用の発振制御信号を生成する補正制御信号生成部と
を有する
請求項1に記載の位相同期回路。
【請求項3】
前記補正制御信号生成部は、前記補正処理用のバイアス電流が流れる抵抗素子および前記発振部に備えられるトランジスタと温度特性のマッチングをとるトランジスタの直列回路を有し、
前記基準抵抗と前記補正処理用のバイアス電流が流れる抵抗素子は、温度変化特性が揃ったものが使用されている
請求項2に記載の位相同期回路。
【請求項4】
前記キャリブレーション部は、
所定の大きさの基準電圧を生成する基準電位生成部と、
基準の大きさの抵抗値を有する基準抵抗を具備し、前記基準電位生成部で生成された基準電圧と前記基準抵抗に基づく所定の大きさの基準電流を生成し、当該基準電流をミラーリングして前記抵抗回路を駆動するためのバイアス電流を生成する電流バイアス部と、
を有し、
前記基準抵抗と前記抵抗回路は、温度変化特性が揃ったものが使用されており、
前記第1のパルス電流出力部および前記第2のパルス電流出力部の内の前記抵抗回路を駆動する側は、前記電流バイアス部で生成された前記抵抗回路を駆動するためのバイアス電流に応じた大きさのパルス電流を生成する
請求項1〜3の内の何れか一項に記載の位相同期回路。
【請求項5】
記録媒体から読み取られた再生信号の位相情報に基づいて再生クロックを生成するクロック再生部および基準クロックに基づいて前記記録媒体への情報の記録時にデータを変調するための書込みクロックを生成する書込みクロック生成部の少なくとも一方を備え、
前記クロック再生部や前記書込みクロック生成部は位相同期回路を有し、
前記位相同期回路は、
入力信号の位相情報を検出する位相検出部と、
抵抗回路と容量回路の直列回路を有し、前記容量回路の前記抵抗回路とは反対側の端子が基準点に接続されたループフィルタ部と
前記位相検出部から出力される位相情報に応じた差動のパルス電流を、正相出力端と逆相出力端から、前記抵抗回路と容量回路の一方に供給する第1のパルス電流出力部と、
前記位相検出部から出力される位相情報に応じたシングルエンドのパルス電流を、シングル出力端から、前記抵抗回路と容量回路の他方に供給する第2のパルス電流出力部と、
前記第1のパルス電流出力部の前記正相出力端および前記逆相出力端からの差動のパルス電流に基づき前記抵抗回路と容量回路の一方の両端に発生する電圧と、前記第2のパルス電流出力部のシングル出力端からのパルス電流に基づき前記抵抗回路と容量回路の他方の両端に発生する電圧との合成成分に応じて発振周波数が可変な発振部と、
所定の大きさの補正処理用の発振制御信号を使って、当該発振制御信号の元での実際の発振周波数の差に基づき、前記発振部の入力信号対発振周波数特性を示す実動の発振ゲインの情報を取得し、この実動の発振ゲインと目標の発振ゲインとの差に基づき前記発振部の発振動作を補正するキャリブレーション部と
を有する記録再生装置。
【請求項6】
位相同期回路と、
前記位相同期回路から出力される信号に基づき信号処理を行なう信号処理部と
を備え、
前記位相同期回路は、
入力信号の位相情報を検出する位相検出部と、
抵抗回路と容量回路の直列回路を有し、前記容量回路の前記抵抗回路とは反対側の端子が基準点に接続されたループフィルタ部と
前記位相検出部から出力される位相情報に応じた差動のパルス電流を、正相出力端と逆相出力端から、前記抵抗回路と容量回路の一方に供給する第1のパルス電流出力部と、
前記位相検出部から出力される位相情報に応じたシングルエンドのパルス電流を、シングル出力端から、前記抵抗回路と容量回路の他方に供給する第2のパルス電流出力部と、
前記第1のパルス電流出力部の前記正相出力端および前記逆相出力端からの差動のパルス電流に基づき前記抵抗回路と容量回路の一方の両端に発生する電圧と、前記第2のパルス電流出力部のシングル出力端からのパルス電流に基づき前記抵抗回路と容量回路の他方の両端に発生する電圧との合成成分に応じて発振周波数が可変な発振部と、
所定の大きさの補正処理用の発振制御信号を使って、当該発振制御信号の元での実際の発振周波数の差に基づき、前記発振部の入力信号対発振周波数特性を示す実動の発振ゲインの情報を取得し、この実動の発振ゲインと目標の発振ゲインとの差に基づき前記発振部の発振動作を補正するキャリブレーション部と
を有する電子機器。

【図1】
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【図1A】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10】
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【図10A】
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【図11】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【公開番号】特開2010−35098(P2010−35098A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−197475(P2008−197475)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】