説明

位相同期装置、方法、及び、光ディスク装置

【課題】高速引込みが可能なPLL回路を備えた位相同期装置を提供する。
【解決手段】PLL回路17が非同期状態になると、最大符号反転間隔計測器18は、PRML検出器16が出力する識別データ中の符号反転間隔の最大値を計測する。第1のチャネル周波数推定器19は、符号反転間隔の最大値に基づいて、チャネル周波数を推定し、推定チャネル周波数fdet_Tを出力する。PLL回路17は、中心周波数を、推定チャネル周波数fdet_Tに設定する。その後、sync間隔計測器20は、識別データからsync間隔を計測する。第2のチャネル周波数推定器21は、計測されたsync間隔に基づいてチャネル周波数を推定し、推定チャネル周波数fdet_Sを出力し、PLL回路17は、中心周波数を、推定チャネル周波数fdet_Sに設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相同期装置、方法、及び、光ディスク装置に関し、更に詳しくは、PLL回路が生成するクロック信号を、光ディスク媒体等から読み出した信号のチャネルクロックに同期させる位相同期装置、方法、及び、光ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大容量の情報記録メディアとして、音楽再生用のCD(Compact Disc)、映像再生用のDVD(Digital Versatile Disc)が普及している。また、最近では、HD(High Definition)映像を長時間記録可能な次世代光ディスクとして、HD DVD(High Definition Digital Versatile Disc)やBrD(Blue Ray Disc)が登場している。これら光ディスク記録媒体は、スパイラル状の記録トラックを有しており、音楽データや映像データなどのデジタル情報(ユーザデータ)は、その記録トラックに、微小記録マーク列として記録されている。
【0003】
光ディスク装置は、レーザ、光学素子、及び、ディスク面に対して垂直方向(フォーカス方向)と半径方向(トラック方向)とに稼動できる機構を搭載した光ヘッドを有している。再生時には、光ヘッドは、スピンドルモータによって回転制御された光ディスクの情報記録面に、集光したレーザ光を照射する。このとき、光ヘッドは、光ディスクからの反射光を検知し、集光ビームが記録マーク列を走査するように、フォーカス及びトラッキングアクチュエータを制御する。
【0004】
記録マーク列に照射された集光ビームの反射光は、明暗又は偏光により、フォトディテクタで電気信号として検出される。検出された再生信号は、PLL(Phase Locked Loop)回路によって同期クロックが抽出されると同時にパルス化される。その後、誤り訂正処理等を行って、音楽や映像情報が再生される。
【0005】
集光されたビームスポットは有限であり、スポット径が小さいほど高密度の記録・再生が可能であるため、このビームスポットを小さくするための光学的なアプローチが進められてきた。スポット径は、対物レンズのNA(Natural Aperture)に反比例し、レーザビーム波長λに比例する。従って、NAを大きくし、λを小さくすることでスポット径を小さくすることができる。しかし、NAを大きくすると焦点深度が浅くなり、ディスク面とレンズとの距離を狭める必要があることから限界がある。
【0006】
ところで、短波長レーザは、高出力発信の安定性、長寿命化が課題であるものの、CDでは赤外レーザー(λ=780nm)、DVDでは赤色レーザー(λ=650nm)、HD DVDなどの次世代DVDでは青色レーザー(λ=405nm)と、レーザビームの短波長化は徐々に進んでいる。波長が短くなることにより、集光ビーム径は小さくなってきたが、現在では、波長比以上に記録容量が増加している。これは、検出性能を上げるための技術が進歩してきたためである。
【0007】
高密度記録された情報を再生するための手法としては、PRML(Partial Response Maximum Likelihood)検出がある。この検出方式は、PR等化に最尤検出を組み合わせたもので、一種の誤り訂正を行いながらデータを検出する。最尤検出では、一般的にはビタビ復号が用いられる。PRMLでは、再生信号は、PR等化により時間方向に相関を持ち、再生信号をサンプリングしたデータ系列には、特定の状態遷移しか現れなくなる。限られた状態遷移と、ノイズを含む実際の再生信号のデータ系列とを比較し、最も確からしい状態遷移を選ぶことで、検出データの誤りを低減できる。特に、HD DVDは、最短マークの再生振幅が低下し、CDやDVDで用いられるしきい値検出では検出できないため、このようなPRML検出を前提としている。
【0008】
ここで、光ディスク装置におけるディスクの回転制御方式には、主に2種類の方式が存在する。一方の方式は、線速度を一定に保つCLV(Constant Linear Velocity)制御方式であり、他方の方式は、回転角速度を一定とするCAV(Constant Angular Velocity)制御方式である。CLV制御方式と、CAV制御方式とを比較すると、CLV制御は、内外周でスピンドル回転数が約2.4倍変化するため、ランダムアクセス時にスピンドル制御の待ち時間がかかり、これにより多くの電力が消費されるという問題がある。これに対し、CAV制御方式では、スピンドルを一定速度で回転させるため、回転数の待ち時間が0となってアクセス性が向上するため、CAV制御を採用する装置が増えてきている。しかし、CLV制御で記録されたディスクを、CAV制御する場合には、半径に比例して線速度が変化することになるため、ジャンプ直後のPPL回路の周波数引込みがネックとなる。
【0009】
光ディスク装置のPLL回路は、ディスク偏芯に対して十分に追従し、かつ、ノイズ等ではロックが外れないようにループゲインが低く抑えられている。従って、PLL回路のキャプチャレンジは狭くなっており、CAV時のロングシーク直後など周波数が大きく変化する場合には、周波数引込みができない。光ディスクやDVD−RAMなどのプリプットヘッダを有する光ディスクでは、数KBのセクタ単位にVFOが挿入されており、PLL回路の高速引込みが比較的容易に実現できる。しかし、DVD−RAM以外のDVDにはVFOが存在せず、また、HD DVDではVFOが64KB間隔でしか存在せず、再生信号の分解能が低いために、高速な引込みが困難となる。
【0010】
通常、光ディスクでは、記録データ中にsyncと呼ばれる特殊パタンが一定間隔で挿入されている。この特殊パタンは、一般にはエラー伝播防止やDSV(Digital Sum Value)制御などに用いられる。下記表1に示すように、syncパタンは、メディアごとに異なっているが、検出を容易にするために、syncパタンには、各メディアの変調符号規則で規定する最大符号反転間隔以上の長パタンが含まれている。表1中の数値は、チャネルクロック周期単位の長さを示している。一般に、sync間隔は、VFOの間隔よりも狭いが、パタン自体は2B程度の短いものであり、これをそのまま周波数引込みの動作に用いることはできない。
【表1】

【0011】
大きな周波数変化に対して、PLL回路の引込み時間を短縮する技術としては、例えば特許文献1に記載された技術がある。図6は、特許文献1に記載されたPLL回路の構成を示している。再生RF信号は、データコンパレータ201によって2値化される。セクタマーク検出器202は、2値化された再生信号からVFO直前に配置される特殊パタン(セクタマーク)を検出する。セクタマークが検出されると、パルス発生器203は、セクタマーク直後に続くと予想されるVFO期間を示す予測ゲート信号を出力する。この予測ゲート信号により、VFO/VCOセレクタ204を切り替えて、VFO期間の2値信号を、周波数復調器205に入力する。周波数復調器205の出力は、VFO/VCOクランプ206を通過後、周波数誤差ホールド回路207により周波数誤差電圧がホールドされ、混合アンプ208で周波数が加算される。特許文献1では、VFOで検出した再生RF信号のチャネル周波数を、VCO発振周波数入力に換算することで、短期間で周波数引込み及び位相同期を実現している。
【0012】
従来技術の別の例としては、特許文献2及び3に記載された技術がある。特許文献2では、CLV制御の光ディスク装置について、ヘッド位置及びスピンドル回転数検出により、基準周波数を生成して、シーク時のアクセス時間の短縮を図っている。また、特許文献3では、中心周波数と掃引範囲とを決定し、周波数掃引によりPLL回路を引き込ませ、引込みを高速化している。
【特許文献1】特開平10−163861公報
【特許文献2】特開平8−293155公報
【特許文献3】特開平8−116254公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1では、PLLクロックの周波数が大きくずれている状態で、VFOの直前にあるセクタマーク等の特定マークを検出し、その直後に続くVFO期間を特定して、その部分をFM変調することでチャネル周波数を検出している。しかし、PRMLが必須となるような分解能が低下した再生信号に対して、かつ、位相同期していない状況下で、特定マークを精度よく検出することは困難である。また、CDや、DVD−RAMを除くDVDでは、VFO領域が存在しないため、特許文献1に記載の技術を適用することはできない。また、HD DVDでは、VFO領域の先頭にはセクタマーク等の特定のマークは存在しておらず、特定マークを用いてVFO領域を認識することができず、仮にVFO領域を特定できたとしても、VFO領域の出現頻度が低いことにより、高速引込みは困難である。
【0014】
特許文献2に記載の技術は、線速度を一定とするCLV制御が前提となっている。このため、特許文献2に記載の技術を、スピンドル回転数を一定とするCAV制御の光ディスク装置にそのまま適用することはできない。特許文献2には記載されていないが、ヘッド位置を位置検出器によって検出し、再生チャネル周波数を検出する方法も考えられる。しかし、この場合には、位置検出器の追加によって光ディスク装置全体のコストがアップし、また、歩留まりが低下するという問題がある。特許文献3に記載の技術では、掃引周波数範囲を限定しても、引込み時間がかかるという問題がある。また、ヘッド位置の推定ミスが発生した場合には、中心周波数及び掃引周波数範囲が、正しい周波数とは異なる値に設定される可能性もあり、その場合には、引込みに失敗する可能性がある。
【0015】
本発明は、上記従来技術の問題点を解消し、新たにセンサ等を追加することなく、PLLクロックを、チャネル周波数に同期させることができる位相同期装置、方法、及び、光ディスク装置を提供することを目的とする。
【0016】
また、本発明は、再生信号の分解能が低い場合でも、CAV動作時のロングシーク等で発生するチャネル周波数の大きな変化に対して、PLL回路の周波数引込みを高速化できる位相同期装置、方法、及び、光ディスク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、本発明の第1の視点の位相同期装置は、ラン長制限符号で変調された変調信号であって、前記ラン長制限符号規則の上限以上の所定のラン長を含む特殊パタンが周期的に埋め込まれた変調信号から、該変調信号に同期したクロック信号を生成するPLL回路と、前記変調信号を前記クロック信号に同期してパルス化し、パルス信号を生成するパルス信号生成手段と、前記PLL回路の同期が外れた状態における前記パルス信号の符号反転間隔を計測し、前記特殊パタンの埋め込み周期以上の期間内における前記符号反転間隔の最大値を最大符号反転間隔として出力する最大符号反転間隔計測手段と、前記最大符号反転間隔に基づいて第1のチャネル周波数を推定する第1チャネル周波数信号生成手段とを備え、前記PLL回路は、非同期状態になると、中心周波数が前記第1のチャネル周波数に設定されることを特徴とする。
【0018】
本発明の第1の視点の光ディスク装置は、同心円状又はスパイラル状のトラックが形成され、該トラック上にラン長制限符号で変調された変調信号であって、前記ラン長制限符号規則の上限以上の所定のラン長を含む特殊パタンが周期的に埋め込まれた変調信号が記録された光ディスク媒体を再生する光ディスク装置において、前記光ディスク媒体に記録された変調信号を読み出すピックアップ手段と、前記ピックアップ手段によって読み出された変調信号に同期したクロック信号を生成するPLL回路と、前記変調信号を前記クロック信号に同期してパルス化し、パルス信号を生成するパルス信号生成手段と、前記PLL回路の同期が外れた状態における前記パルス信号の符号反転間隔を計測し、前記特殊パタンの埋め込み周期以上の期間における前記符号反転間隔の最大値を、最大符号反転間隔として出力する最大符号反転間隔計測手段と、前記最大符号反転間隔に基づいて第1のチャネル周波数を推定する第1チャネル周波数信号生成手段とを備え、前記PLL回路は、非同期状態になると、中心周波数が前記第1のチャネル周波数に設定されることを特徴とする。
【0019】
本発明の第1の視点の位相同期方法は、PLL回路を用い、ラン長制限符号で変調された変調信号であって、前記ラン長制限符号規則の上限以上の所定のラン長を含む特殊パタンが周期的に埋め込まれた変調信号から、該変調信号に同期したクロック信号を生成する方法において、前記変調信号を前記クロック信号に同期してパルス化し、パルス信号を生成するステップと、前記PLL回路の同期が外れた状態における前記パルス信号の符号反転間隔を計測し、前記特殊パタンの埋め込み周期以上の期間内における前記符号反転間隔の最大値を計測するステップと、前記計測された符号反転間隔の最大値に基づいて第1のチャネル周波数を推定するステップと、前記PLL回路が非同期状態になると、前記PLL回路の中心周波数を前記第1のチャネル周波数に設定するステップとを有することを特徴とする。
【0020】
本発明の第1の視点の位相同期装置、方法、及び、光ディスク装置では、パルス信号の符号反転間隔の最大値(最大符号反転間隔)を計測し、その最大符号反転間隔に基づいて再生チャネル周波数を推定し、PLL回路の中心周波数を、その推定したチャネル周波数(第1のチャネル周波数)に設定する。変調信号に埋め込まれた特殊パタンの周期以上の周期で最大符号反転間隔をPLLクロック単位で計測すると、それは、特殊パタンに含まれるラン長制限符号規則の上限以上のラン長に相当する。この最大符号反転間隔の計測値と、再生チャネル周波数とは、ほぼ比例する関係にあるため、再生チャネル周波数が未知な場合でも、この計測値から実際の再生チャネル周波数を推定することができる。本発明では、PLL回路が非同期になると、PLL回路の中心周波数を、このように推定した第1のチャネル周波数に設定することで、センサ等を用いて再生チャネル周波数を推定しなくても、クロック信号の周波数を、再生チャネル周波数に近付けることができ、PLL回路を高速に引き込むことができる。また、PLL回路の中心周波数を第1のチャネル周波数に設定し、その状態で最大符号反転間隔を計測し、第1のチャネル周波数を推定して、PLL回路の中心周波数を、その推定した第1のチャネル周波数に設定するという動作を繰り返すことによって、クロック信号の周波数と、実際の再生チャネル周波数との誤差を減少させ、精度を高めることができる。
【0021】
本発明の第1の視点の位相同期装置及び光ディスク装置は、前記PLL回路の中心周波数が前記第1のチャネル周波数に設定された状態における前記パルス信号から前記特殊パタンを検出し、該特殊パタンの出現間隔を計測する特殊パタン間隔計測手段と、前記特殊パタンの出現間隔に基づいて第2のチャネル周波数を推定する第2チャネル周波数信号生成手段とを更に備え、前記PLL回路の中心周波数が、前記特殊パタンの出現間隔に基づいて前記第2チャネル周波数信号生成手段が推定した第2のチャネル周波数に設定される構成を採用することが好ましい。また、本発明の第1の視点の位相同期方法は、前記PLL回路の中心周波数を前記第1のチャネル周波数に設定するステップに後続して、前記変調信号を前記クロック信号に同期してパルス化したパルス信号から前記特殊パタンを検出し、該特殊パタンの出現間隔を計測するステップと、前記特殊パタンの出現間隔に基づいて第2のチャネル周波数を推定するステップと、前記PLL回路の中心周波数を前記第2のチャネル周波数に設定するステップとを更に有することが好ましい。PLL回路の中心周波数を、最大符号反転間隔に基づいて推定した第1のチャネル周波数に設定し、再生チャネル周波数に近付けることで、パルス信号から、特殊パタンを検出することができる。特殊パタンの埋め込み周期は、最大符号反転間隔よりも長く、特殊パタンの出現間隔を用いてチャネル周波数を推定することで、最大符号反転間隔を用いたチャネル周波数の推定よりも、より正確にチャネル周波数を推定することができる。このように推定した第2のチャネル周波数を、PLL回路の中心周波数に設定することで、高精度に、クロック信号の周波数を、再生チャネル周波数に一致させることができる。
【0022】
本発明の第1の視点の位相同期装置及び光ディスク装置は、前記推定された第1及び第2のチャネル周波数を入力し、該第1及び第2のチャネル周波数の何れか一方を選択して前記PLL回路に出力するセレクタと、前記第1及び第2のチャネル周波数信号のうちの何れを選択するかを制御するシーケンス手段とを備えており、前記シーケンス手段は、前記PLL回路が非同期状態になると、前記セレクタに第1のチャネル周波数を選択させ、前記PLL回路の中心周波数を前記第1のチャネル周波数に設定させた後、前記セレクタに第2のチャネル周波数を選択させ、前記PLL回路の中心周波数を前記第2のチャネル周波数に設定させる構成を採用できる。このように、はじめ、セレクタから第1のチャネル周波数を出力し、PLL回路の中心周波数を第1のチャネル周波数に設定して周波数粗引込みを行い、その後、セレクタから第2のチャネル周波数を出力し、PLL回路の中心周波数を第2のチャネル周波数に設定して周波数高精度引込みを行うことで、クロック信号の周波数を、高精度に、再生チャネル周波数に一致させることができる。
【0023】
本発明の第2の視点の位相同期装置は、ラン長制限符号で変調された変調信号であって、前記ラン長制限符号規則の上限以上の所定のラン長を含む特殊パタンが周期的に埋め込まれた変調信号から、該変調信号に同期したクロック信号を生成するPLL回路と、前記変調信号を前記クロック信号に同期してパルス化し、パルス信号を生成するパルス信号生成手段と、前記PLL回路の同期が外れた状態における前記パルス信号から前記特殊パタンを検出し、該特殊パタンの出現間隔を計測する特殊パタン間隔計測手段と、前記特殊パタンの出現間隔に基づいてチャネル周波数を推定するチャネル周波数信号生成手段とを備え、前記PLL回路は、非同期状態になると、中心周波数が前記チャネル周波数に設定されることを特徴とする。
【0024】
本発明の第2の視点の光ディスク装置は、同心円状又はスパイラル状のトラックが形成され、該トラック上にラン長制限符号で変調された変調信号であって、前記ラン長制限符号規則の上限以上の所定のラン長を含む特殊パタンが周期的に埋め込まれた変調信号が記録された光ディスク媒体を再生する光ディスク装置において、前記光ディスク媒体に記録された変調信号を読み出すピックアップ手段と、前記ピックアップ手段によって読み出された変調信号に同期したクロック信号を生成するPLL回路と、前記変調信号を前記クロック信号に同期してパルス化し、パルス信号を生成するパルス信号生成手段と、前記PLL回路の同期が外れた状態における前記パルス信号から前記特殊パタンを検出し、該特殊パタンの出現間隔を計測する特殊パタン間隔計測手段と、前記特殊パタンの出現間隔に基づいてチャネル周波数を推定するチャネル周波数信号生成手段とを備え、前記PLL回路は、非同期状態になると、中心周波数が前記チャネル周波数に設定されることを特徴とする。
【0025】
本発明の第2の視点の位相同期方法は、PLL回路を用い、ラン長制限符号で変調された変調信号であって、前記ラン長制限符号規則の上限以上のラン長を含む特殊パタンが周期的に埋め込まれた変調信号から、該変調信号に同期したクロック信号を生成する方法において、前記変調信号を前記クロック信号に同期してパルス化し、パルス信号を生成するステップと、前記パルス信号から前記特殊パタンを検出し、該特殊パタンの出現間隔を計測するステップと、前記特殊パタンの出現間隔に基づいてチャネル周波数を推定するステップと、前記PLL回路が非同期状態になると、前記PLL回路の中心周波数を前記チャネル周波数に設定するステップとを有することを特徴とする。
【0026】
本発明の第2の視点の位相同期装置、方法、及び、光ディスク装置では、パルス信号から特殊パタンを検出し、その検出間隔に基づいて再生チャネル周波数を推定し、PLL回路の中心周波数を、その推定したチャネル周波数に設定する。このように、パルス信号から再生チャネル周波数を推定し、PLL回路の中心周波数を、その推定したチャネル周波数に設定することで、センサ等を用いて再生チャネル周波数を推定しなくても、クロック信号の周波数を再生チャネル周波数に近付けることができ、PLL回路を高速に引き込むことができる。
【0027】
本発明の位相同期装置及び光ディスク装置では、前記パルス信号生成手段は、最尤検出により、前記変調信号から前記パルス信号を生成する最尤検出器を含む構成を採用できる。この場合、前記パルス信号生成手段は、前記変調信号をPR等化し、前記最尤検出器に入力する等化器を含む構成を採用できる。また、前記最尤検出器は、ビタビアルゴリズムに従って最尤検出を行う構成を採用することができる。本発明の位相同期装置及び光ディスク装置は、最尤検出が前提となるような高密度化された媒体の再生を行う装置に好適に使用できる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の第1の視点の位相同期装置及び方法は、パルス信号の符号反転間隔の最大値(最大符号反転間隔)を計測し、その最大符号反転間隔に基づいて再生チャネル周波数を推定する。このように推定した第1のチャネル周波数を、PLL回路の中心周波数に設定することで、センサ等を追加しなくても、クロック信号の周波数を、再生チャネル周波数に近付けることができ、PLL回路を高速に引き込むことができる。また、本発明の第1の視点の光ディスク装置は、PLL回路を高速に引き込むことができるため、CAV動作時のロングシーク等で、再生チャネル周波数に大きな変化が生じたときでも、すばやく位相同期状態を確立できる。
【0029】
本発明の第2の視点の位相同期装置、方法、及び、光ディスク装置では、パルス信号から特殊パタンを検出し、その検出間隔に基づいて再生チャネル周波数を推定し、PLL回路の中心周波数を、その推定したチャネル周波数に設定する。このようにすることで、センサ等を用いて再生チャネル周波数を推定しなくても、クロック信号の周波数を再生チャネル周波数に近付けることができ、PLL回路を高速に引き込むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態の光ディスク装置の構成を示している。光ディスク装置100は、光ヘッド12、サーボ機構13、RFアンプ14、A/D変換器15、PRML検出器16、PLL回路17、最大符号反転間隔計測器18、第1のチャネル周波数推定器19、sync間隔計測器20、第2のチャネル周波数推定器21、セレクタ22、及び、シーケンサ23を備える。ディスク媒体11の記録トラックには、ユーザデータがラン長制限規則に従って変調された微小マーク列として記録されている。ユーザデータには、ラン長制限符号の規則上で最も長いラン長以上のラン長を含む特殊パタン(syncパタン)が、周期的に埋め込まれていている。
【0031】
ディスク媒体11は、図示しないスピンドルモータにより、回転制御される。光ヘッド12は、レーザダイオード、光学素子、及び、対物レンズの駆動系を備えており、ディスク媒体11のグルーブトラック(記録トラック)に集光ビームを照射する。光ヘッド12は、ディスク媒体11との鉛直方向及び半径方向の位置ずれを、ディスク媒体11からの反射光に基づいて検出し、アクチュエータサーボ機構13により、対物レンズの駆動系を制御することで、ディスク面ぶれ、及び、ディスク偏芯に対して、集光スポットを記録トラックに正確に追従させる。
【0032】
光ヘッド12は、フォトディテクタにより、記録トラック内の微小マーク列で変調された反射光を検出する。フォトディテクタは、反射光の強弱に応じた微弱な受光信号をRFアンプ14に出力する。RFアンプ14は、微弱な受光信号を増幅して、再生RF信号として出力する。A/D変換器15は、再生RF信号をA/D変換し、デジタル化されたRF信号を、PRML検出器16を含むデータ検出系に入力する。
【0033】
PLL回路17は、デジタル化された再生RF信号から同期クロックを抽出し、A/D変換器15及びPRML検出器16の動作クロックを生成する。PLL回路17は、発振器の中心周波数が切り替え可能に構成されている。PLL回路17については、アナログ回路で構成することも可能であるが、発振器の中心周波数の切替え等が必要であるため、デジタル回路で構成することが望ましい。PRML検出器16は、再生RF信号をPR等化し、最尤検出によって、データ系列を識別する。PRML検出器16において、PR等化及び最尤検出を用いることにより、再生RF信号の分解能が低下した場合でも、エラー発生率を下げることができる。PRML検出器16で識別されたデータは、図示しないラン長制限符号の復調や誤り訂正処理を経て、音楽データや映像データとして再生される。
【0034】
最大符号反転間隔計測器18は、識別データ中の‘0’又は‘1’が連続する時間を、PLL回路17が生成するクロック信号単位で計測する。最大符号反転間隔計測器18は、sync間隔以上の期間にわたって‘0’又は‘1’の連続時間を計測し、そのうちで最大のものを、最大符号反転間隔Tmaxとして出力する。表1に示したように、syncパタンには、ラン長制限符号の最大ラン長以上のパタン(最大符号)が含まれており、最大符号反転間隔計測器18は、その最大符号の時間幅を、最大符号反転間隔Tmaxとして出力する。第1のチャネル周波数推定器19は、最大符号反転間隔計測器18が出力する最大符号反転間隔Tmaxに基づいて、推定チャネル周波数fdet_Tを算出する。
【0035】
sync間隔計測器20は、PRML検出器16が出力する識別データから、syncパタンの出現間隔(sync間隔Tinter)を計測する。DVDやHD DVDでは、表1に示したように、sync内では、sync外で計測される‘0’又は‘1’の連続数よりも長い連続数が計測されるため、sync間隔計測器20は、12〜15のPLLクロック周期のパルス長をsyncパタンとみなして、その間隔を計測すればよい。CDの場合には、sync内外で計測される ‘0’又は‘1’の連続数が相互に等しいため、syncパタンに一致するパタンを検出して、その間隔を計測すればよい。第2のチャネル周波数推定器21は、sync間隔計測器20が計測したsync間隔Tinterに基づいて、推定チャネル周波数fdet_Sを算出する。
【0036】
セレクタ22は、第1のチャネル周波数推定器19が算出した推定チャネル周波数fdet_T、及び、第2のチャネル周波数推定器21が算出した推定チャネル周波数fdet_Sを入力する。セレクタ22は、シーケンサ23から入力するセレクタ制御信号selに応じて、第1のチャネル周波数推定器19が算出した推定チャネル周波数fdet_T、又は、第2のチャネル周波数推定器21が算出した推定チャネル周波数fdet_Sを、推定チャネル周波数fdetとしてPLL回路17に入力する。
【0037】
図2は、PLL回路17の構成を示している。PLL回路17は、位相比較器71、ループフィルタ(LPF)72、加算器73、数値制御発振器(NCO:Numerical Controlled Oscillator)74、及び、セレクタ75を備える。位相比較器71は、デジタル化されたRF信号を入力し、これと、1時点前のRF信号とを用いて、位相差情報を生成する。ループフィルタ72は、位相比較器71が出力する位相差情報を入力し、位相差情報が所望のループ特性となるようにフィルタリングして、制御用周波数情報を生成する。
【0038】
セレクタ75は、セレクタ22(図1)が出力する推定チャネル周波数fdetと、セレクタ75自身の出力とを入力する。セレクタ75は、シーケンサ23から入力するタイミング制御信号testがアクティブとなると、推定チャネル周波数fdetを、加算器73に出力する。それ以外の期間では、セレクタ75の出力は一定の値に維持される。加算器73は、ループフィルタ72が出力する制御用周波数情報と、セレクタ75の出力とを加算してNCO74に入力し、NCO74の発振周波数を制御する。NCO74の出力は、PLLクロックとして、A/D変換器15やPRML検出器16の動作クロックとなる。
【0039】
図1に戻り、シーケンサ23は、ハードウェア(回路)で実現され、或いは、CPUとソフトウェアとで実現される。シーケンサ23は、PLL回路17の同期状態を監視する。シーケンサ23は、例えば、PRML検出器16が出力する識別データを用いて同期状態を監視する。同期状態の基準としては、例えばsync間隔がメディアに固有の値となっているか否かを用いることができる。また、PLL回路17自体、例えば位相比較器71の遷移状態などで、同期外れを検出し、この信号をシーケンサ23に入力する構成でもよい。シーケンサ23は、同期外れを検出すると、周波数引込み動作を開始する。或いは、図示しない外部のCPUからシーク等の同期が外れる動作の直後に、周波数引込みトリガ信号を入力して、引込み動作を開始してもよい。
【0040】
周波数引込み開始時には、シーケンサ23は、セレクタ22に、第1のチャネル周波数推定器19の出力を選択する旨の選択信号selを入力し、最大符号反転間隔計測器18及び第1のチャネル周波数推定器19を用い最大符号反転間隔Tmaxに基づいて推定したチャネル周波数fdet_Tを、PLL回路17に入力する。周波数引込み開始の状態では、PRML検出器16は、PLL回路17の発振周波数がRF信号のチャネル周波数に一致しない状態で、識別データを生成する。この識別データから、最大符号反転間隔Tmaxを計測すると、例えばDVDでは、sync内で14T(Tはチャネルクロック)の時間幅が最大符号反転期間として計測されるべきところ、PLLクロック周波数がチャネル周波数に一致していないことにより、それよりも長い又は短い時間幅が、最大符号反転間隔Tmaxとして計測される。チャネル周波数推定器19は、PLLクロック周波数がチャネル周波数に同期している場合の最大符号反転間隔をTsync1、計測時のPLL回路17の発振周波数をfpllとして、Tmaxより推定されるチャネル周波数fdet_Tを、下記式(1)によって算出する。
det_T=(Tsync1/Tmax)×fpll (1)
算出されたチャネル周波数fdet_Tには誤差が含まれるため、チャネル周波数の算出を複数回行って、平均化してもよい。
【0041】
第1のチャネル周波数推定器19が算出したチャネル周波数fdet_Tは、セレクタ22を介して、推定チャネル周波数fdetとしてPLL回路17に入力される。シーケンサ23は、所定のタイミングで、PLL回路17に入力するタイミング制御信号testをアクティブにする。タイミング制御信号testがアクティブになると、セレクタ75は、第1のチャネル周波数推定器19の出力fdet_tを選択し、NCO74に、ループフィルタ72の出力と第1のチャネル周波数推定器19の出力fdet_Tとを加算した値が入力される。これにより、NCO74の発振周波数の中心周波数が、第1のチャネル周波数推定器19が算出した周波数fdet_Tにプリセットされる。このような、最大符号反転間隔Tmaxを用いて推定した周波数fdet_TをPLL回路17の中心周波数としてプリセットする操作を複数回繰り返すことで、PLLクロック周波数fpllを、RF信号のチャネル周波数に近付けることができる。
【0042】
最大符号反転間隔Tmaxを用いた引込みについて詳述する。PRML検出器16に用いられるビタビ復号器は、PRクラスと最小ラン長の制約とを基に最尤検出を行う。このとき、PLL同期が確立していることが前提であるが、非同期の状態でも、相応のパルス化は可能である。しかし、ビタビ復号器の動作クロック、つまりPLLクロック周波数がRF信号チャネル周波数よりも低い場合には、最小ランの検出を誤る確率が高くなる。この場合に、PRML検出器16が出力する識別データの最大符号反転間隔を計測すると、sync前後の短パタンを読み誤り、平均化したとしても、本来よりも長い間隔が算出される。逆に、PLL回路17の出力クロック周波数がRF信号のチャネル周波数よりも高い場合には、PLL回路17がロックしているとすれば最小ラン長規則で除外できるような波形変動を短パタンとして識別し、本来よりも短いラン長が検出される可能性がある。この関係を図3に示す。
【0043】
図3におけるPLLクロック周波数fpllと、最大符号反転間隔の計測値Tmaxとの関係を関数gで定義すると、
max=g(fpll) (2)
と表すことができる。図3を参照すると、最大符号反転間隔の計測値Tmaxと、PLLクロック周波数fpllとは、ほぼ比例関係にあり、第1のチャネル周波数推定器19は、これらの値から、式(1)を用いて、チャネル周波数を推定する。式(1)及び式(2)から、推定されたチャネル周波数fdet_TとPLL回路17の出力クロック周波数fpllとの関係を求めると、
det_T=(Tsync1/g(fpll))×fpll=h(fpll) (3)
と表すことができる。式(3)をグラフ化すると、図4に示すグラフが得られる。
【0044】
図4に示すグラフにおいて、PLLクロック周波数fpllのとり得る値の全域で推定チャネル周波数fdet_TがRF信号のチャネル周波数にほぼ一致していれば、1回の最大符号反転間隔の計測により、ほぼ確実にPLLクロック周波数fpllをRF信号のチャネル周波数に合わせこむことができる。しかし、実際には、特にPLLクロック周波数fpllが低いほど、計測された最大符号反転間隔の誤差が大きく、推定チャネルクロック周波数がRF信号のチャネル周波数から大きくずれる。
【0045】
PLLクロック周波数fpllが、RF信号チャネル周波数に近い場合には、推定チャネル周波数fdet_TがRF信号チャネル周波数にほぼ一致する。この関係から、下記式(4)に示すように、イテレーションによって、PLLクロック周波数fpllを、RF信号チャネル周波数にほぼ一致させることができる。
pll(n+1)=Tsync1/Tmax(n)×fpll(n) (4)
ただしnは、イテレーションのサイクル数を示す。
引込み動作開始時(n=0)では、PLLクロック周波数の初期値fpll(0)における最大符号反転間隔Tmax(0)を計測し、推定チャネル周波数fdet_T(0)を算出して、これを次回のPLLクロック周波数fpll(1)とする。続いて、PLLクロック周波数fpll(1)における最大符号反転間隔Tmax(1)を計測し、推定チャネル周波数fdet_T(1)を算出して、これを次回のPLLクロック周波数fpll(2)とする。このような動作を繰り返すことで、図4に示すように、PLLクロック周波数fpllを、RF信号チャネル周波数に収束させることができる。
【0046】
シーケンサ23は、第1のチャネル周波数推定器19が算出した周波数fdet_TをPLL回路17の中心周波数としてプリセットする操作を所定回数繰り返し、PLL回路17の出力周波数をRF信号チャネル周波数に近付けると、選択信号selを切り替え、sync間隔計測器20及び第2のチャネル周波数推定器21を用いsync間隔に基づいて推定したチャネル周波数を、PLL回路17に入力する。この状態では、PLL回路17の出力周波数は、RF信号のチャネル周波数に近づいており、PRML検出器16は、動作クロックがRF信号のチャネル周波数にある程度一致した状態で、識別データを生成するため、この識別データから、syncパタンを検出することが可能である。
【0047】
sync間隔計測器20は、例えば、syncパタン検出器によって、PRML検出器16が出力する識別データからsyncパタンを検出し、その検出間隔をカウンタで計測して、PLLクロック単位でsync間隔Tinterを計測する。例えばDVDでは、1488T(表1)の時間幅がsync間隔Tinterとして計測されるべきところ、PLLクロック周波数が完全にチャネル周波数に一致していないことにより、それよりも長い又は短い時間幅が、sync間隔Tinterとして計測される。第2のチャネル周波数推定器21は、ディスク媒体11におけるsync間隔をTsync2、計測時のPLL回路17の発振周波数をfpllとして、sync間隔計測器20が計測したsync間隔Tinterより推定されるチャネル周波数fdet_Sを、下記式(5)によって算出する。
det_S=Tsync2/Tinter×fpll (5)
【0048】
第2のチャネル周波数推定器21が算出したチャネル周波数fdet_Sは、セレクタ22を介して、推定チャネル周波数fdetとしてPLL回路17に入力される。シーケンサ23は、所定のタイミングで、PLL回路17に入力するタイミング制御信号testをアクティブにする。タイミング制御信号testがアクティブになると、PLL回路17内のセレクタ75は、第2のチャネル周波数推定器21の出力fdet_Sを選択し、NCO74に、ループフィルタ72の出力と第2のチャネル周波数推定器21の出力fdet_Sとを加算した値を入力する。これにより、NCO74の発振周波数の中心周波数が、第2のチャネル周波数推定器21が算出した周波数fdet_Sにプリセットされる。この動作により、PLLクロック周波数とRF信号チャネル周波数との差が、PLL回路17のキャプチャレンジ以下となれば、通常の位相引込み動作により、位相同期が完了する。
【0049】
図5は、位相引込みの様子をタイミングチャートで示している。時刻t1で、外周側のトラックで位相同期した状態から内周側のトラックにシークすると、RF信号が途切れ(a)、PLL回路17の同期が外れる(b)。このときRF信号チャネル周波数は、シークの前後で周波数が変化する(c)。シーケンサ23は、PLL回路17の同期が外れていることを検出し、セレクタ制御信号selを切り替えて(e)、最大符号反転間隔を用いた引込み(周波数粗引込み)を開始させる。時刻t2でシークが終了し、PRML検出器16によってRF信号が識別データ列に変換されると、最大符号反転間隔計測器18は、最大符号反転期間Tmax(0)を計測し、第1のチャネル周波数推定器19は、計測された最大符号反転期間Tmax(0)に基づいて推定チャネル周波数fdet_T(0)を算出する。
【0050】
時刻t3で、シーケンサ23がタイミング制御信号testをアクティブ(f)にすると、PLL回路17は、PLLクロック周波数fpllの中心周波数を、推定チャネル周波数fdet_T(0)に設定する(d)。時刻t4で、シーケンサ23が再びタイミング制御信号test(f)をアクティブとすると、PLL回路17は、PLLクロック周波数fpllの中心周波数を、第1のチャネル周波数推定器19が算出した推定チャネル周波数fdet_T(1)に設定する。シーケンサ23は、時刻t4でテスト信号をアクティブとした後に、選択制御信号selを反転し(e)、sync間隔を用いた引込み(周波数高精度引込み)を開始させる。
【0051】
PRML検出器16は、中心周波数fdet_T(1)のPLLクロックで動作し、識別データを出力する。sync間隔計測器20は、この識別データから、sync間隔を計測し、第2のチャネル周波数推定器21は、計測されたsync間隔に基づいて、推定チャネル周波数fdet_Sを算出する。時刻t5で、シーケンサ23がタイミング制御信号test(f)をアクティブとすると、PLL回路17は、PLLクロック周波数fpllの中心周波数を、第2のチャネル周波数推定器21が算出した推定チャネル周波数fdet_Sに設定する(d)。その後、PLL回路17が、通常の引込み動作を行うことにより、時刻t6で位相同期が確立する。
【0052】
syncは、出現頻度が比較的高いために、広い周波数範囲でチャネル周波数を算出することが可能であるものの、syncパタンに含まれる長マークは高々数十チャネルクロックの長さしかないため、これのみを用いて高い精度で周波数を算出することは難しい。一方、sync間隔は、長マークの50〜100倍の長さがあり、このsync間隔から周波数を算出することにより、高精度の周波数情報を生成することができる。しかしながら、PLL回路17の発振周波数のずれがRF信号チャネル周波数に対して±20%程度の範囲を超える場合には、識別データからsyncパタンを正しく検出することができず、sync間隔を用いて位相引込みを行うことができない。
【0053】
本実施形態では、引込み開始時には、PLLクロックが位相同期していない状態の識別データの最大符号反転間隔を用いて粗調整を行って、PLLクロック周波数をRF信号チャネル周波数に近づけ、その後、PLLクロックがRF信号チャネル周波数に近い状態の識別データからsync間隔を計測して精密調整を行い、PLLクロックを位相同期させる。このように、最大符号反転間隔を用いた粗調整と、sync間隔を用いた精密調整との2段階によって周波数引込みを行うことで、PRML検出が前提となる低分解能の再生信号に対しても、より高速に周波数引込みを完了させることができる。
【0054】
本実施形態の光ディスク装置100では、上記のように、PLL回路17を高速に引き込むことができるため、CLV記録されたディスクをCAVにてランダム再生する際に、ロングシークが発生した場合でも、再生時のスループットを向上できる。また、新たにセンサ等を追加する必要がないため、コストを増加させることなく高速引込みを実現できる。
【0055】
なお、上記実施形態では、最大符号反転間隔に基づく粗調整を行った後に、sync間隔に基づく精密調整を行う例について示したが、精密調整については、行わなくてもよい場合がある。例えば、PLL回路17のループゲインを十分に高くとることができ、粗調整後のPLLクロック周波数で位相同期が可能な場合には、精密調整を行う必要はない。また、粗調整のみで、PLLクロック周波数を十分にRF信号チャネル周波数に近付けることができる場合にも、精密調整を省くことができる。これとは逆に、識別データからsyncパタンが検出可能であるときには、sync間隔に基づく精密調整のみで、PLLクロック周波数を、再生RF信号チャネル周波数に同期させてもよい。
【0056】
上記実施形態では、PLL回路17の位相同期が外れた場合、未知のRF信号チャネル周波数に対して、位相同期が外れる直前のPLLクロック周波数からスタートして、PLLクロック周波数をRF信号チャネル周波数に近づけていく例について示したが、これには限定されない。例えば、引込み開始時には、PLL回路17をあらかじめ定めた初期周波数で発振させて粗調整を開始し、PLLクロック周波数を、その初期周波数から、RFチャネル周波数に近づけていく構成とすることもできる。この場合、図5に示したように、PLLクロック周波数がRF信号チャネル周波数よりも高い場合の方が推定チャネル周波数の誤差が小さくなるため、初期周波数には、高めの周波数を設定することが好ましい。
【0057】
PRML検出器16は、入力するチャネル特性が、特定のPRクラスにほぼ一致している場合には、PR等化を行わずにビタビ復号器で識別データを生成する構成とすることができる。また、最尤検出は、ビタビ復号には限定されず、他のアルゴリズムを用いることもできる。再生RF信号の分解能が十分に高い場合には、PRML検出器16に代えて、しきい値検出を用いたパルス化回路によって識別データを生成してもよい。
【0058】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明の位相同期装置、方法、及び、光ディスク装置は、上記実施形態例にのみ限定されるものではなく、上記実施形態の構成から種々の修正及び変更を施したものも、本発明の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、CDやDVD等の光ディスク装置に利用可能であり、特に高密度記録された光ディスク装置のCAV再生に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の一実施形態の光ディスク装置の構成を示すブロック図。
【図2】PLL回路の構成を示すブロック図。
【図3】PLLクロック周波数と、計測された最大符号反転間隔との関係を示すグラフ。
【図4】PLLクロック周波数と、推定チャネル周波数との関係を示すグラフ。
【図5】位相同期時の動作の様子を示すタイミング図。
【図6】従来のPLL回路の構成を示すブロック図。
【符号の説明】
【0061】
11 ディスク媒体
12 光ヘッド
13 サーボ機構
14 RFアンプ
15 A/D変換器
16 PRML検出器
17 PLL回路
18 最大符号反転間隔計測器
19、21 チャネル周波数推定器
20 sync間隔計測器
22、75 セレクタ
23 シーケンサ
71 位相比較器
72 ループフィルタ
73 加算器
74 数値制御発振器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラン長制限符号で変調された変調信号であって、前記ラン長制限符号規則の上限以上の所定のラン長を含む特殊パタンが周期的に埋め込まれた変調信号から、該変調信号に同期したクロック信号を生成するPLL回路と、
前記変調信号を前記クロック信号に同期してパルス化し、パルス信号を生成するパルス信号生成手段と、
前記PLL回路の同期が外れた状態における前記パルス信号の符号反転間隔を計測し、前記特殊パタンの埋め込み周期以上の期間内における前記符号反転間隔の最大値を最大符号反転間隔として出力する最大符号反転間隔計測手段と、
前記最大符号反転間隔に基づいて第1のチャネル周波数を推定する第1チャネル周波数信号生成手段とを備え、
前記PLL回路は、非同期状態になると、中心周波数が前記第1のチャネル周波数に設定されることを特徴とする位相同期装置。
【請求項2】
前記PLL回路の中心周波数が前記第1のチャネル周波数に設定された状態における前記パルス信号から前記特殊パタンを検出し、該特殊パタンの出現間隔を計測する特殊パタン間隔計測手段と、
前記特殊パタンの出現間隔に基づいて第2のチャネル周波数を推定する第2チャネル周波数信号生成手段とを更に備え、
前記PLL回路の中心周波数が、前記特殊パタンの出現間隔に基づいて前記第2チャネル周波数信号生成手段が推定した第2のチャネル周波数に設定される、請求項1に記載の位相同期装置。
【請求項3】
前記推定された第1及び第2のチャネル周波数の何れか一方を選択して前記PLL回路に出力するセレクタと、
前記第1及び第2のチャネル周波数信号のうちの何れを選択するかを制御するシーケンス手段とを備えており、
前記シーケンス手段は、前記PLL回路が非同期状態になると、前記セレクタに第1のチャネル周波数を選択させ、前記PLL回路の中心周波数を前記第1のチャネル周波数に設定させた後、前記セレクタに第2のチャネル周波数を選択させ、前記PLL回路の中心周波数を前記第2のチャネル周波数に設定させる、請求項2に記載の位相同期装置。
【請求項4】
ラン長制限符号で変調された変調信号であって、前記ラン長制限符号規則の上限以上の所定のラン長を含む特殊パタンが周期的に埋め込まれた変調信号から、該変調信号に同期したクロック信号を生成するPLL回路と、
前記変調信号を前記クロック信号に同期してパルス化し、パルス信号を生成するパルス信号生成手段と、
前記PLL回路の同期が外れた状態における前記パルス信号から前記特殊パタンを検出し、該特殊パタンの出現間隔を計測する特殊パタン間隔計測手段と、
前記特殊パタンの出現間隔に基づいてチャネル周波数を推定するチャネル周波数信号生成手段とを備え、
前記PLL回路は、非同期状態になると、中心周波数が前記チャネル周波数に設定されることを特徴とする位相同期装置。
【請求項5】
前記パルス信号生成手段は、最尤検出により、前記変調信号から前記パルス信号を生成する最尤検出器を含む、請求項1〜4の何れか一に記載の位相同期装置。
【請求項6】
前記パルス信号生成手段は、前記変調信号をPR等化し、前記最尤検出器に入力する等化器を含む、請求項5に記載の位相同期装置。
【請求項7】
前記最尤検出器は、ビタビアルゴリズムに従って最尤検出を行う、請求項5又は6に記載の位相同期装置。
【請求項8】
同心円状又はスパイラル状のトラックが形成され、該トラック上にラン長制限符号で変調された変調信号であって、前記ラン長制限符号規則の上限以上の所定のラン長を含む特殊パタンが周期的に埋め込まれた変調信号が記録された光ディスク媒体を再生する光ディスク装置において、
前記光ディスク媒体に記録された変調信号を読み出すピックアップ手段と、
前記ピックアップ手段によって読み出された変調信号に同期したクロック信号を生成するPLL回路と、
前記変調信号を前記クロック信号に同期してパルス化し、パルス信号を生成するパルス信号生成手段と、
前記PLL回路の同期が外れた状態における前記パルス信号の符号反転間隔を計測し、前記特殊パタンの埋め込み周期以上の期間における前記符号反転間隔の最大値を、最大符号反転間隔として出力する最大符号反転間隔計測手段と、
前記最大符号反転間隔に基づいて第1のチャネル周波数を推定する第1チャネル周波数信号生成手段とを備え、
前記PLL回路は、非同期状態になると、中心周波数が前記第1のチャネル周波数に設定されることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項9】
前記PLL回路の中心周波数が前記第1のチャネル周波数に設定された状態における前記パルス信号から前記特殊パタンを検出し、該特殊パタンの出現間隔を計測する特殊パタン間隔計測手段と、
前記特殊パタンの出現間隔に基づいて第2のチャネル周波数を推定する第2チャネル周波数信号生成手段とを更に備え、
前記PLL回路の中心周波数が、前記特殊パタンの出現間隔に基づいて前記第2チャネル周波数信号生成手段が推定した第2のチャネル周波数に設定される、請求項8に記載の光ディスク装置。
【請求項10】
前記推定された第1及び第2のチャネル周波数の何れか一方を選択して前記PLL回路に出力するセレクタと、
前記第1及び第2のチャネル周波数信号のうちの何れを選択するかを制御するシーケンス手段とを備えており、
前記シーケンス手段は、前記PLL回路が非同期状態になると、前記セレクタに第1のチャネル周波数を選択させ、前記PLL回路の中心周波数を前記第1のチャネル周波数に設定させた後、前記セレクタに第2のチャネル周波数を選択させ、前記PLL回路の中心周波数を前記第2のチャネル周波数に設定させる、請求項9に記載の光ディスク装置。
【請求項11】
同心円状又はスパイラル状のトラックが形成され、該トラック上にラン長制限符号で変調された変調信号であって、前記ラン長制限符号規則の上限以上の所定のラン長を含む特殊パタンが周期的に埋め込まれた変調信号が記録された光ディスク媒体を再生する光ディスク装置において、
前記光ディスク媒体に記録された変調信号を読み出すピックアップ手段と、
前記ピックアップ手段によって読み出された変調信号に同期したクロック信号を生成するPLL回路と、
前記変調信号を前記クロック信号に同期してパルス化し、パルス信号を生成するパルス信号生成手段と、
前記PLL回路の同期が外れた状態における前記パルス信号から前記特殊パタンを検出し、該特殊パタンの出現間隔を計測する特殊パタン間隔計測手段と、
前記特殊パタンの出現間隔に基づいてチャネル周波数を推定するチャネル周波数信号生成手段とを備え、
前記PLL回路は、非同期状態になると、中心周波数が前記チャネル周波数に設定されることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項12】
前記パルス信号生成手段は、最尤検出により、前記変調信号から前記パルス信号を生成する最尤検出器を含む、請求項8〜11の何れか一に記載の光ディスク装置。
【請求項13】
前記パルス信号生成手段は、前記変調信号をPR等化し、前記最尤検出器に入力する等化器を含む、請求項12に記載の光ディスク装置。
【請求項14】
前記最尤検出器は、ビタビアルゴリズムに従って最尤検出を行う、請求項12又は13に記載の光ディスク装置。
【請求項15】
PLL回路を用い、ラン長制限符号で変調された変調信号であって、前記ラン長制限符号規則の上限以上の所定のラン長を含む特殊パタンが周期的に埋め込まれた変調信号から、該変調信号に同期したクロック信号を生成する方法において、
前記変調信号を前記クロック信号に同期してパルス化し、パルス信号を生成するステップと、
前記PLL回路の同期が外れた状態における前記パルス信号の符号反転間隔を計測し、前記特殊パタンの埋め込み周期以上の期間内における前記符号反転間隔の最大値を計測するステップと、
前記計測された符号反転間隔の最大値に基づいて第1のチャネル周波数を推定するステップと、
前記PLL回路が非同期状態になると、前記PLL回路の中心周波数を前記第1のチャネル周波数に設定するステップとを有することを特徴とする位相同期方法。
【請求項16】
前記PLL回路の中心周波数を前記第1のチャネル周波数に設定するステップに後続して、前記変調信号を前記クロック信号に同期してパルス化したパルス信号から前記特殊パタンを検出し、該特殊パタンの出現間隔を計測するステップと、
前記特殊パタンの出現間隔に基づいて第2のチャネル周波数を推定するステップと、
前記PLL回路の中心周波数を前記第2のチャネル周波数に設定するステップとを更に有する、請求項15に記載の位相同期方法。
【請求項17】
PLL回路を用い、ラン長制限符号で変調された変調信号であって、前記ラン長制限符号規則の上限以上の所定のラン長を含む特殊パタンが周期的に埋め込まれた変調信号から、該変調信号に同期したクロック信号を生成する方法において、
前記変調信号を前記クロック信号に同期してパルス化し、パルス信号を生成するステップと、
前記PLL回路の同期が外れた状態における前記パルス信号から前記特殊パタンを検出し、該特殊パタンの出現間隔を計測するステップと、
前記特殊パタンの出現間隔に基づいてチャネル周波数を推定するステップと、
前記PLL回路が非同期状態になると、前記PLL回路の中心周波数を前記チャネル周波数に設定するステップとを有することを特徴とする位相同期方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−95156(P2007−95156A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−282260(P2005−282260)
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】