説明

位置寸法測定装置

【課題】光学式の位置寸法測定装置によって、測定対象物体が光を透過および/または反射する物質により構成される場合であってもエッジを正確に検出する。
【解決手段】投光器100は、半導体レーザ130と、APC回路150と、コリメートレンズ160と、光量減衰フィルタ170とを含む。APC回路150は、モニタ用フォトダイオード140の受光量に基づいて、レーザ光出力が目標出力に維持されるようにレーザチップ135への供給電流をフィードバック制御する。光量減衰フィルタ170は、測定対象物体300からの反射光510に代表される外乱光が、モニタ用フォトダイオード140へ至る経路上に配置され、APC回路150によるフィードバック制御に悪影響を与えないように外乱光を減衰させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、位置寸法測定装置に関し、より特定的には、光学式の位置寸法測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
投光器からの出射光を物体が遮光する際の光量変化を受光器によって検出することによって、測定対象物体の位置・寸法を測定する光学式の測定装置が用いられている。このような光学式測定装置の測定精度を向上するために、特開平9−203613号公報(特許文献1)には、投光部からのレーザ光を偏光ビームスプリッタで受けて、偏光ビームスプリッタを透過する光を第1CCDで受光するとともに、偏光ビームスプリッタで反射された光を第2CCDで受光して、第1CCDの出力および第2CCDの出力の差動をとる差動器の出力に基づいて信号処理を行なう構成が開示されている。この構成により、屋外等の外乱光の強い場所でも、受光器への外乱光による誤動作を防止して正確に測定対象物体の寸法を測定できるようになる。
【特許文献1】特開平9−203613号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような光学式測定装置の投光器の光源としては、一般的に半導体レーザが用いられる。半導体レーザを光源として使用する場合には、レーザ光を発生するレーザチップおよびモニタ用受光素子(代表的にはフォトダイオード)を同一パッケージ内に内蔵して、モニタ用受光素子の受光量に応じたAPC(Automatic Power Control)機能を持たせる構成が一般的である。これにより、モニタ用受光素子の受光量に基づいてレーザチップへの供給電力(電流)をフィードバック制御することによって、温度変動等の外乱が生じても一定の光出力を得ることができる。
【0004】
しかしながら、APC機能を適用した光学式測定装置では、投光器へ入射された外乱光がモニタ受光素子で検知されることによって、光出力を低下させる方向のフィードバック制御が誤って実行されることにより、投光器からの出射光の強度が低下して測定に支障をきたす可能性がある。
【0005】
たとえば、測定対象物体が光を透過する物質により構成される場合には、測定対象物体による遮光量が小さいため、測定対象物体の存在部と非存在部との間での受光部での受光量の差が比較的小さくなる。このため、必然的に、測定対象物体のエッジ検出のための受光量のしきい値と、測定対象物体の非存在部での受光量との差が小さくなる。したがって、このような測定対象物体の測定時には、上述した投光器への外乱光の影響による出射光強度の低下によって、測定精度が低下するおそれがある。
【0006】
また、測定対象物体が光を反射する物質により構成される場合には、投光器からの出射光が測定対象物体によって反射された反射光が、投光器へ外乱光として入射されることにより、上述したAPC機能による投光器からの出射光の強度低下が発生し易くなる。
【0007】
特に、エッジ部を除いて金属膜が表面に形成された液晶材料用ガラス基板に代表される、光を透過および反射する性質の両方を有する測定対象物体の測定の際には、受光器への外乱光のみならず、投光器への外乱光の影響によっても、そのエッジ検出精度が低下して位置および/または寸法の測定精度が低下することが懸念される。
【0008】
この発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、この発明の目的は、測定対象物体が光を透過および/または反射する物質により構成される場合であっても、測定対象物体のエッジを正確に検出することが可能な光学式の位置寸法測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明による位置寸法測定装置は、測定対象物体の存在領域の両側に配置される投光器および受光器を備える。投光器は、供給電力に応じて光出力を制御可能な光源素子と、光源素子の光出力を測定するための受光モニタ素子と、受光モニタ素子が測定した光出力に応じて光源への供給電力を制御する電力制御部と、筐体とを含む。筐体は、少なくとも光源素子および受光モニタを格納し、かつ、光源素子からの光を測定対象物体へ出射するための開口部を有するように構成される。受光器は、測定対象物体の存在領域を挟んで開口部と対向するように配置された受光検知素子を含む。そして、投光器は、測定対象物体からの光が前記受光モニタ素子へ至る経路上であって、かつ、前記光源素子から出射された光が前記受光モニタ素子へ至る経路上を除いた位置に配置された光量減衰フィルタをさらに含む。好ましくは、光量減衰フィルタは、上記位置のうちの、光源素子から出射された光が測定対象物体へ至る経路上に配置される。
【0010】
上記位置寸法測定装置によれば、測定対象物体からの反射光は、投光器の受光モニタ素子へ直接入射されることなく、光源素子から出射された後に光量減衰フィルタにより2回減衰された上で受光モニタ素子へ入射される。したがって、APCのために受光モニタ素子で検知される光源素子の光出力に対する、上記反射光の強度の割合が低下されるので、反射光に代表される投光器への外乱光の影響によって、投光器からの光出力が低下することを防止できる。この結果、測定対象物体が光を透過および/または反射する物質(代表的にはガラス)により構成される場合にも、測定対象物体のエッジを適切に検出することが可能となる。
【0011】
好ましくは、投光器は、光源素子および開口部の間に配置され、光源素子からの光を平行光へ変換するためのコリメートレンズをさらに含む。そして、光量減衰フィルタは、コリメートレンズおよび開口部の間に配置される。
【0012】
このような構成とすることにより、光量減衰フィルタによって光源素子からの投射光が屈折することを防止できるので、光量減衰フィルタの配置によって、投光器からの出射光の平行性が低下することによる検出精度の悪化を回避できる。
【0013】
さらに好ましくは、光量減衰フィルタは、上記開口部をカバーするように設けられる。
このような構成とすることにより、投光器の開口部の保護レンズを兼用して、部品点数を増加させることなく光量減衰フィルタを設けることができる。
【0014】
また好ましくは、位置寸法測定装置は、受光検知素子による検出結果に基づく信号処理を行なって、その処理結果を出力するための制御装置をさらに備える。そして、制御装置は、受光器と接続される一方で、投光器とは非接続とされる。特にこのような構成では、電力制御部は、光量減衰フィルタによる減衰率および受光検知素子で必要とされる受光量を考慮して予め設定された目標光出力と、受光モニタ素子が測定した光出力との偏差に従って供給電力を制御する。
【0015】
このような構成とすることにより、受光器での受光出力を電力制御部にフィードバックする必要なく実用上外乱光の影響を受けにくい計測が可能となるので、投光器および受光器の接続を不要として配置自由度を向上することができる。
【0016】
あるいは好ましくは、投光器は、単一素子として設けられた光源素子が相反する第1および第2の方向に光を出射するように構成された半導体レーザを含む。そして、投光器は、第1の方向へ出射された光を開口部へ向けて導き、かつ、第2の方向へ出射された光が前記受光モニタ素子により受光されるように構成される。
【0017】
このような構成とすることにより、測定対象物体からの反射光が光量減衰フィルタを通過して受光モニタ素子へ入射されるのに対して、光源素子から出射された光については、より確実に受光モニタ素子で直接検知することができる。したがって、反射光に代表される投光器への外乱光がAPCに与える影響により、投光器からの光出力が低下することをより確実に防止できる。
【0018】
さらに好ましくは、投光器は、光源素子および受光モニタ素子が一体的に内蔵された半導体レーザを含む。
【0019】
このような構成とすることにより、光源素子および受光モニタ素子が一体に内蔵された一般的な構成の半導体レーザを適用しても、測定対象物体からの反射光を受光モニタ素子へ入力しないようにするためのハーフミラー等の新たな部品や、半導体レーザ外への新たな受光モニタ素子といった新たな素子の配置を伴うことなく、反射光に代表される投光器への外乱光の影響によって投光器からの光出力が低下することを防止できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明による位置寸法測定装置によれば、測定対象物体が光を透過および/または反射する物質により構成される場合であっても、測定対象物体のエッジを正確に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお以下では図中の同一または相当部分には同一符号を付しその詳細な説明は原則的に繰返さない。
【0022】
図1は、本発明の実施の形態による位置寸法測定装置の全体構成および配置例を示す斜視図である。
【0023】
図1を参照して、測定対象物体300の位置および/または寸法を測定するための位置寸法測定装置10は、搬送されてきた測定対象物体300が存在することとなる領域の両側に配置される、投光器100および受光器200を備える。
【0024】
投光器100は、電源ケーブル105を介して図示しない電源に接続されている。また受光器200は、ケーブル205により図示しないコントローラと接続されている。
【0025】
図2に示すように、投光器100の筐体120には、出射光を測定対象物体300へ向けて投射するための開口部110が設けられる。開口部110には、後程詳細に説明する光量減衰フィルタ170が設けられる。
【0026】
再び図1を参照して、投光器100からの出射光は、受光器200に設けられた開口部210へ入射される。後ほど詳細に説明するように、受光器200の開口部210には受光検知素子が配列されている。位置寸法測定装置10は、投光器100からの投射光が測定対象物体300によって遮光される際の光量の変化を受光検知素子によって検知することにより、測定対象物体300の存在を検出できる。すなわち、開口部210に、複数の受光検知素子を適宜規則的に配列することによって、測定対象物体300の位置および/または寸法を測定することが可能となる。
【0027】
図3には、本発明の実施の形態による位置寸法測定装置10の構成を示すブロック図が示される。
【0028】
図3を参照して、投光器100は、筐体120内に格納された、半導体レーザ130と、APC回路150と、コリメートレンズ160と、開口部110に設けられた光量減衰フィルタ170とを含む。投光器100は、電源ケーブル105によって電源400と接続されて、動作電力を供給される。
【0029】
受光器200は、筐体220内に格納された、受光検知素子250および処理回路260を含む。受光検知素子250は、測定対象物体300の存在領域を挟んで投光器側の開口部110と対向するように設けられた筐体220の開口部210に対応して配置される。受光検知素子としては、代表的にはCCDイメージセンサが適用される。CCDイメージセンサは、一次元あるいは二次元に配列して配置され、各CCDイメージセンサは、受光量に応じた電気信号(代表的には電圧)を出力する。
【0030】
処理回路260は、各CCDイメージセンサからの出力信号を処理して、ケーブル205によって接続されたコントローラ450へ対して信号処理結果を送出する。
【0031】
たとえば、コントローラ450は、図4に示されるように構成され、受光器200の位置微調整や測定条件設定に関する指示を入力するための操作部452と、処理回路260によって処理されたCCDイメージセンサからの出力結果に対応する情報を示す表示部454が示される。たとえば、表示部454には、測定対象物体300のエッジ位置を示す情報が数値化されて表示される。
【0032】
受光器200は、コントローラ450を介して電源410と接続される。また、コントローラ450をコンピュータ端末490と接続して、処理回路260による信号処理結果に基づく測定結果を、端末画面に表示させる構成としてもよい。
【0033】
再び図3を参照して、半導体レーザ130は、レーザチップ135およびモニタ用フォトダイオード140を含む。レーザチップ135は本発明での「光源素子」に対応し、フォトダイオード140は本発明での「受光モニタ素子」に対応する。
【0034】
図5にも示されるように、半導体レーザ130としては、レーザチップ135と、フォトダイオード140とが一体的に内蔵された一般的な構成を適用することができる。レーザチップ135から出力されたレーザ光は、相反する2方向に出射される。すなわち、レーザ光は、ガラスウインドウ137を通して半導体レーザ130の外部に出射されるとともに、その反対方向にも出射されてフォトダイオード140へも入射される。すなわち、フォトダイオード140は、レーザチップ135から出力されるレーザ光の光出力を検出するために配置されている。図3にも示されるように、ガラスウインドウ137から出射された光は、投光器100内で開口部110へ導かれて、開口部110から出射される。
【0035】
なお、図5に示すような一般的な構造の半導体レーザ130では、外部からガラスウインドウ137に入射された外乱光についても、フォトダイオード140によって検知される。すなわち、フォトダイオード140は、外乱光の影響が大きいと、レーザチップ135からのレーザ光の光出力を実際よりも過大に検出する可能性がある。
【0036】
再び図3を参照して、APC回路150は、フォトダイオード140によって検出された光出力に基づいて、レーザチップ135への供給電力(代表的には、供給電流)を制御する。APC回路150は、本発明での「電力制御部」に対応する。たとえば、APC回路150は図6のように構成される。
【0037】
図6を参照して、APC回路150は、コントローラ152と、駆動トランジスタ155とを含む。駆動トランジスタ155は、コントローラ152からの駆動出力に応じて、レーザチップ135への供給電流を制御する。レーザチップ135からの光出力は、供給された電流(順電流)に応じて可変であり、代表的には図7に示される特性を有する。
【0038】
図7を参照して、レーザチップ135が出射するレーザ光は、順電流Iの増加に応じて、光出力が大きくなる特性を示す。ここで、順電流Iがしきい値電流(発振開始電流)Ith以下である領域20では、比較的に弱い自然発光のまま電流増加に応じて光出力が増加する一方で、順電流Iがしきい値電流Ithを超えた領域30では、レーザ発振の開始により、電流に対する光出力の増加が大きくなる。
【0039】
再び図6を参照して、コントローラ152は、基準電圧Vrefに対するフォトダイオード140の出力電圧Vdetの偏差に応じて、駆動トランジスタ155の駆動出力を生成する。基準電圧Vrefは、レーザチップ135がレーザ光の光出力目標値を発光したときのフォトダイオード140の出力電圧に対応させて設定される。
【0040】
すなわち、コントローラ152は、フォトダイオード140により検出された光出力が光出力目標値より低い場合には、レーザチップ135への供給する電流を増加させるように駆動トランジスタ155の駆動信号を変化させる。一方、フォトダイオード140により検出された光出力が光出力目標値より高い場合には、レーザチップ135への供給電流を減少させるように、駆動トランジスタ155の駆動信号は変化される。この結果、APC回路150によって、レーザチップ135からのレーザ光の光出力を、光出力目標値に合致した一定値に維持するフィードバック制御が実現される。たとえば、このようなフィードバック制御により、温度変動に対してレーザ光を一定に維持することが可能となる。
【0041】
再び図3を参照して、APC回路150は、さらに、レーザ光を出射中であることを示す発光ダイオード(LED)122および、半導体レーザ130の劣化を示すLED124の点灯を制御する。たとえば、APC回路150は、フォトダイオード140によって検知される光出力が所定値以上となったときに、LED122を点灯させる。一方、APC回路150は、所定量以上の電流をレーザチップ135に供給しても、フォトダイオード140によって検知される光出力が劣化判定用の基準値に達しないときに、LED124を点灯させる。
【0042】
半導体レーザ130から出力されたレーザ光500は、コリメートレンズ160によって平行光に変換されて、開口部110から出射される。開口部110には、開口部110を覆うように設けられた光量減衰フィルタ170が設けられる。光量減衰フィルタ170には、代表的には吸収型のND(Neutral Density)フィルタを用いることができるが、開口部110から投光器100の内部に入力される光を減衰させるものであれば、原理上あらゆる種類のフィルタを適用できる。
【0043】
投光器100から出射されたレーザ光500は、測定対象物体300の存在領域では、測定対象物体300によって遮光されて受光器200に入力される。一方、測定対象物体300の非存在領域では、投光器100からの投射光は、測定対象物体300によって遮光されることなくそのまま受光器200へ入射される。上述のように、受光器200へ入射されたレーザ光500は、受光検知素子250(CCDイメージセンサ)により、受光量が検知される。
【0044】
測定対象物体300が、光を透過する性質を有さない、あるいは透過性の低い物質で構成されている場合には、測定対象物体300の存在領域および非存在領域にそれぞれ対応するCCDイメージセンサ250の出力が大きく異なることとなる。したがって、この場合には、測定対象物体300のエッジ検出は比較的容易である。
【0045】
これに対して、測定対象物体300が光を透過する物質で構成される場合には、図8に示されるように、そのエッジ部の検知が相対的に困難となる。
【0046】
図8を参照して、横軸は位置座標を示し、縦軸は各位置におけるCCDイメージセンサの出力、すなわち受光量を示している。
【0047】
測定対象物体300が光を透過する物質である場合には、測定対象物体300の非存在領域および存在領域の両方において、CCDイメージセンサによって検知される受光量にそれほど差が生じなくなる。
【0048】
一方、測定対象物体300のエッジ305では、投光器からの出射光500が屈折により散乱することによって、対応位置に配置されたCCDイメージセンサでの受光量が、周囲と比較して相対的に低下する。したがって、エッジ部における受光量の低下レベルに合わせてしきい値Vthを設定し、各CCDセンサの出力(受光量)とこのしきい値Vthとを比較することにより、測定対象物体300のエッジ検出が行なわれる。このエッジ検出結果、具体的には、配列されたCCDイメージセンサのうちのいずれのCCDイメージセンサによってエッジが検出されたかに基づいて、測定対象物体300の位置および/または寸法が検出される。
【0049】
しきい値Vthのレベルは、測定対象物体300の材質、エッジ形状等によっても変化するが、周囲の非エッジ部位での受光量を100%とすると、Vth=70〜75%程度に設定するケースも存在する。また、一般的に、CCDイメージセンサでの受光量分布には雑音誤差(ホワイトノイズ)が5〜10%存在する。このため、測定対象物体300がガラス等の光を透過する性質の物体で構成されることによってしきい値レベルが比較的高くなる測定条件では、エッジ検出の困難性が増加する。
【0050】
また、測定対象物体300が光を反射する物質で構成される場合には、投光器100から出射されたレーザ光500が測定対象物体300によって反射されて、反射されたレーザ光(以下、単に反射光)510が、投光器100へ向かうこととなる。特に、液晶材料用のガラス基板では、非エッジ部には金属膜310が被膜されているため、反射光510のレベルが高くなる。
【0051】
再び図3を参照して、測定対象物体300からの反射光510は、開口部110から投光器100の内部へ向けて入射されると、コリメートレンズ160を通って、半導体レーザ130へ向けて入射される。さらに、反射光510は、図5に示した半導体レーザ130のガラスウインドウ137から入力されて、フォトダイオード140へ到達する。このような現象が発生すると、フォトダイオード140が検知する受光量が、レーザチップ135からのレーザ光の光出力よりも上昇してしまうため、APC回路150によるフィードバック制御によって、レーザチップ135からのレーザ光出力が光出力目標値よりも低下する可能性がある。
【0052】
このようなレーザ光出力の低下が発生すると、図8に示した受光量分布において、各CCDイメージセンサでの受光量が全体的に低下することとなるため、非エッジ部位における受光量がしきい値Vthレベルと重なってしまい、エッジ検出が正常に実行できなくなる可能性がある。一例として、図8におけるVth=75%であり、雑音レベルが5%であるケースを考えると、投光器100からの光出力が20%変動することにより、エッジ検出に異常が生じることとなる。
【0053】
すなわち、測定対象物体300が光を透過する場合には、エッジ検出が相対的に困難となることから、投光器100に対する外乱光がAPC回路150でのフィードバック制御に与える悪影響に起因してエッジ検出精度誤差が発生する可能性がある。特に、測定対象物体300が光を反射する場合には、投光器100への外乱光のレベルが大きくなるので、この問題点がさらに発生しやすくなる。
【0054】
そこで、本実施の形態による光学式位置寸法測定装置では、開口部110に光量減衰フィルタ170を設けて、投光器100の外部から入射される外乱光を減衰させる構成を採用する。
【0055】
これにより、反射光510は、レーザチップ135から出力された後フォトダイオード140へ到達するまでに、投光器100から出射される際、および、測定対象物体300により反射されて投光器100へ入力される際の合計2回、光量減衰フィルタ170を通過することとなる。したがって、光量減衰フィルタ170による減衰率を1/αとすると、フォトダイオード140において、反射光510の強度は、レーザチップ135から直接到達するレーザ光と比較して1/α2倍となる。
【0056】
したがって、投光器100に入射される外乱光、特に測定対象物体300による反射光510が、APC回路150のフィードバック制御に与える影響を抑制して、レーザチップ135からのレーザ光、すなわち、投光器100からの出射光の光出力の低下によって、測定精度が悪化することを防止できる。これにより、測定対象物体が光を透過および/または反射する物質(代表的にはガラス)により構成される場合にも、測定対象物体のエッジを適切に検出することが可能となる。
【0057】
なお、光量減衰フィルタ170については、原理上、測定対象物体300からの光がフォトダイオード140へ至る経路上であって、かつ、レーザチップ135から出射された光がフォトダイオード140へ至る経路上を除いた位置のいずれかに配置されればよい。より具体的には、レーザチップ135から出射された光が測定対象物体300へ至る経路上であって、かつ、測定対象物体300からの光(反射光)がフォトダイオード140へ至る経路上となる位置のいずれかに配置されればよい。
【0058】
ただし、光量減衰フィルタ170を、コリメートレンズ160よりも開口部110側に、すなわち半導体レーザ130およびコリメートレンズ160の間を避けて配置することにより、光量減衰フィルタ170の通過時にレーザ光の屈折が生じて、投光器100からの出射光の平行性が低下することを防止できる。
【0059】
また、通常、開口部110には投光器100の内部素子を保護するための保護カバーが設けられるため、当該保護カバーに代えて、開口部110を覆うように光量減衰フィルタ170を配置してもよい。このようにすると、保護カバーの機能を兼用させて、部品点数を増加させることなく光量減衰フィルタ170を設けることができる。このときに、光量減衰フィルタ170は、開口部110に嵌め込むように配置してもよく、または、筐体120の内側あるいは外側から取り付けてもよい。
【0060】
なお、光量減衰フィルタ170の配置に伴って、半導体レーザ130から出力されたレーザ光も、(1/α)倍に減衰された上で投光器100から出射される。このため、投光器100側では、測定対象物体300の測定に必要な光量を確保するために、図5に示したAPC回路によるフィードバック制御における基準電圧Vrefを、光量減衰フィルタ170を非配置時と比較してα倍の光量に対応した電圧に変更すればよい。
【0061】
このようにすれば、受光器200側での受光結果に基づいたフィードバック系を構成することなく、投光器100からの出射光の光出力レベルを適切に設定できる。すなわち、図3に示したように、投光器100および受光器200を電気的に接続することなく、位置寸法測定装置10を構成することができる。測定対象物体300の搬送装置を挟んで投光器100および受光器200を配置する用途、特に測定対象物体が大型である用途において、投光器100および受光器200の間の電気的接続を不要とすることは、配置自由度確保の面からニーズが高い。
【0062】
また、図9に比較例として示すように、光量減衰フィルタ170を非配置とした投光器では、開口部110には通常の保護用レンズ170♯(光量減衰効果なし)が配置される。このため、比較例の投光器においては、本実施の形態と同様に外乱光の悪影響を抑制するためには、ハーフミラー190を配置することによって、半導体レーザ130からのレーザ光500は透過する一方で、外部からの反射光510については半導体レーザ130(フォトダイオード140)へ入射されないように、反射する構成とすることも可能である(第1の比較例)。
【0063】
あるいは、ハーフミラー190の配置に代えて、半導体レーザ130の外部に、モニタ用のフォトダイオード140♯を別個設けるとともに、反射光510がフォトダイオード140♯に入射されないようにする構造を設ける構成とすることも可能である(第2の比較例)。この場合には、APC回路150は、フォトダイオード140♯の受光量に基づいてフィードバック制御を実行することとなる。
【0064】
言い換えれば、本実施の形態による光学式の位置寸法測定装置によれば、レーザチップ135およびフォトダイオード140が内蔵された一般的な半導体レーザ(図5)を適用しても、図9に示された、ハーフミラー190やモニタ用フォトダイオード140♯等の新たな素子・部品を配置することなく、上述した効果を発揮することが可能である。
【0065】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施の形態による位置寸法測定装置の全体構成および配置例を示す斜視図である。
【図2】図1に示した投光器を正面(光出射側)から見た図である。
【図3】本発明の実施の形態による位置寸法測定装置の構成を説明するブロック図である。
【図4】図3に示したコントローラの外観図である。
【図5】一般的な半導体レーザの構成を示す図である。
【図6】図3に示したAPC回路の概略構成を説明するブロック図である。
【図7】半導体レーザの一般的な出力特性を示す図である。
【図8】光透過性の測定対象物体を測定する際におけるCCDイメージセンサからの出力分布を説明する概念図である。
【図9】比較例として示される投光器の構成を説明するブロック図である。
【符号の説明】
【0067】
10 位置寸法測定装置、100 投光器、105 電源ケーブル、110 開口部、120 筐体、130 半導体レーザ、135 レーザチップ、137 ガラスウインドウ、140,140♯ モニタ用フォトダイオード、150 APC回路、152 コントローラ、155 駆動トランジスタ、160 コリメートレンズ、170 光量減衰フィルタ、170♯ 保護用レンズ、190 ハーフミラー、200 受光器、205 ケーブル、210 開口部、220 筐体、250 受光検知素子(CCDイメージセンサ)、260 処理回路、300 測定対象物体、305 エッジ、310 金属膜、400,410 電源、450 コントローラ、452 操作部、454 表示部、490 コンピュータ端末、500 レーザ光(出射光)、510 反射光、I 順電流(レーザチップ供給電流)、Vdet 検出電圧(フォトダイオード)、Vref 基準電圧(光出力目標)、Vth しきい値(エッジ検出)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物体の存在領域の両側に配置される投光器および受光器を備え、
前記投光器は、
供給電力に応じて光出力を制御可能な光源素子と、
前記光源素子の光出力を測定するための受光モニタ素子と、
前記受光モニタ素子が測定した光出力に応じて前記光源への供給電力を制御する電力制御部と、
少なくとも前記光源素子および前記受光モニタを格納し、かつ、前記光源素子からの光を前記測定対象物体へ出射するための開口部を有する筐体とを含み、
前記受光器は、
前記測定対象物体の存在領域を挟んで前記開口部と対向するように配置された受光検知素子を含み、
前記投光器は、
前記測定対象物体からの光が前記受光モニタ素子へ至る経路上であって、かつ、前記光源素子から出射された光が前記受光モニタ素子へ至る経路上を除いた位置に配置された光量減衰フィルタをさらに含む、位置寸法測定装置。
【請求項2】
前記光量減衰フィルタは、前記位置のうちの、前記光源素子から出射された光が前記測定対象物体へ至る経路上に配置される、請求項1記載の位置寸法測定装置。
【請求項3】
前記投光器は、
前記光源素子および前記開口部の間に配置され、前記光源素子からの光を平行光へ変換するためのコリメートレンズをさらに含み、
前記光量減衰フィルタは、前記コリメートレンズおよび前記開口部の間に配置される、請求項1記載の位置寸法測定装置。
【請求項4】
前記光量減衰フィルタは、前記開口部をカバーするように設けられる、請求項3記載の位置寸法測定装置。
【請求項5】
前記受光検知素子による検出結果に基づく信号処理を行なって、その処理結果を出力するための制御装置をさらに備え、
前記制御装置は、前記受光器と接続される一方で、前記投光器とは非接続とされる、請求項1記載の位置寸法測定装置。
【請求項6】
前記電力制御部は、前記光量減衰フィルタによる減衰率および前記受光検知素子で必要とされる受光量を考慮して予め設定された目標光出力と、前記受光モニタ素子が測定した光出力との偏差に従って前記供給電力を制御する、請求項5記載の位置寸法測定装置。
【請求項7】
前記投光器は、単一素子として設けられた前記光源素子が相反する第1および第2の方向に光を出射するように構成された半導体レーザを含み、
前記投光器は、前記第1の方向へ出射された光を前記開口部へ向けて導き、かつ、前記第2の方向へ出射された光が前記受光モニタ素子により受光されるように構成される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の位置寸法測定装置。
【請求項8】
前記投光器は、前記光源素子および前記受光モニタ素子が一体的に内蔵された半導体レーザを含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の位置寸法測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−275505(P2008−275505A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−120940(P2007−120940)
【出願日】平成19年5月1日(2007.5.1)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】