説明

位置検出装置

【課題】位置検出性能の低下を防ぎ、安定した位置検出性能を得られる、複数の位置検出方式を備える位置検出装置を提供する。
【解決手段】第1の位置検出方式における送信導体の選択位置情報を第2の位置検出方式における信号受信のための導体選択に利用することで、第1の位置検出方式における送信導体と第2の位置検出方式における受信導体との間の空間的距離を可能な限り離間させる。更には、第1の位置検出方式における送信導体に供給される送信信号と第2の位置検出方式における送信導体に供給される送信信号との間に周波数インターリーブの関係を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の位置検出方式が組み合わされた位置検出装置に適用して好適な技術に関する。より詳細には、例えば、指示体としての位置指示器(ペン)が指示する位置を検出する電磁方式の位置検出方式と、指示体としての例えば指が指示する位置を検出する静電方式の位置検出方式が組み合わされた位置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置の表示エリアに、指示体による指示位置を検出するための位置検出装置を重ね合わせたタッチパネル装置がある。指示体としての指やペンで表示画面に触れることで、コンピュータ等の操作を行なう入力装置であり、指やペンが触れた画面上の位置を検出して、コンピュータに指示を与えるものである。このタッチパネルは、PDA(Personal Digital Assistant)や銀行のATM(Automated Teller Machine)、駅の券売機等で広く利用されている。
【0003】
このタッチパネルに採用される位置検出方式には、様々なものがある。例えば、指示体によってタッチパネルに印加される圧力の変化で位置検出を行う抵抗膜方式やセンサ導体間の静電容量の変化で位置検出を行う静電容量方式等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−020992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
指示体としてのペン及び指のそれぞれを同時に検出するために複数の位置検出方式を組み合わせた位置検出装置がある。
【0006】
一つの筐体の中に、例えば、電磁方式による指示体位置検出部と静電方式による指示体位置検出部を収めた場合、電磁方式による指示体位置検出部が位置指示器としてのペンの内部に搭載された共振回路を共振させるために所定の周波数を有する交番磁界が発生する。この交番磁界は、静電方式の位置検出部にとってはノイズとして影響を与えることがあり、静電方式による位置検出性能の低下をもたらすことがある。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、複数の位置検出方式を備えた位置検出装置において、それぞれの位置検出方式が同時に動作している際の送信信号による干渉を抑制することで、ペンあるいは指などの指示体が指示する位置の検出性能の低下を防ぎ、安定した位置検出性能を得ることができる位置検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の位置検出装置は、第1の位置検出方式における送信導体の選択位置情報を第2の位置検出方式における信号受信のための導体選択に利用することで、第1の位置検出方式における送信導体と第2の位置検出方式における受信導体との間の空間的距離を可能な限り離間させる。更には、第1の位置検出方式における送信導体に供給される送信信号と第2の位置検出方式における送信導体に供給される送信信号との間に周波数インターリーブの関係を備える。なお、前者において、受信導体の選択位置情報に基づいて送信導体の選択制御を行うこともできる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数の位置検出方式が組み合わされ、かつ互いが同時的に動作する位置検出装置において、一方の位置検出装置が使用するセンサ導体への送信信号が他方の位置検出装置にてノイズとして受信されて悪影響を与えることを効果的に抑制することができ、これによって位置検出性能の低下を防ぎ、安定した位置検出性能を得ることができる位置検出装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態の例を示す位置検出装置の全体斜視図である。
【図2】本発明の第一の実施形態の概要を示すブロック図である。
【図3】位置指示器の回路図である。
【図4】電磁方式位置検出部のブロック図である。
【図5】静電方式位置検出部のブロック図である。
【図6】本発明の第一実施形態における、送信導体と受信導体との間の導体選択関係を示す図である。
【図7】本発明の第二の実施形態におけるそれぞれの送信信号の波形図である。
【図8】本発明の第二の実施形態におけるそれぞれの送信信号の周波数スペクトラムの配置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、図1〜図8を参照して説明する。
【0012】
[第一実施形態]
図1は、本発明の第一の実施形態の例を示す位置検出装置の全体斜視図である。位置検出装置101は、第1の位置指示器としてのペン102と第2の位置指示器としての指105のそれぞれが指示する位置を検出するための位置検出領域104を備えており、ペン102、指105の操作に対応した位置情報が例えばパソコン等の装置に供給される。また、位置検出領域104には、後述するガラス、アクリル板等の透明の保護カバーが配置されており、その下方には周知のLCDディスプレイなどの表示部が配置されている。LCDディスプレイはパソコン等の装置から供給された信号を表示する。
【0013】
従って、ペン102を位置検出領域104上で操作することで、LCDディスプレイ上に描画することができる。同様に、指105の操作によって、例えば、LCDディスプレイに表示された画像に対して拡大・縮小、あるいは回転などの処理を施すことができる。
【0014】
図2は、位置検出装置101の内部構成の概略を示すためのブロック図である。保護カバー202は位置検出領域104を物理的に保護すると共に、下方に配置されたLCDディスプレイ203による表示を透過させるために、ガラス、アクリル板等の透明の材料で構成される。保護カバー202の下方には、静電センサ204が配置される。静電センサ204は、ITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウム錫)膜等、複数の透明電極が第1の方向及び第1の方向と交差する第2の方向にそれぞれ配置されてグリッド構造のセンサを構成し、位置検出領域104上において、指105が指示する位置を検出する。静電センサ204は静電信号処理部205に接続され、静電センサ204を構成する複数の透明電極の交点に形成されるコンデンサの容量変化を検出することで指105の指示位置を検出する。なお、静電センサ204と静電信号処理部205は静電方式位置検出部206を構成する。
【0015】
静電センサ204の下方には、LCDディスプレイ203が配置され、パソコン等の装置から供給されたビデオ信号212を表示する。LCDディスプレイ203の下方には電磁誘導コイルセンサ207が配置される。電磁誘導コイルセンサ207は複数のループコイルで構成されている。各ループコイルは、静電センサ204の電極配置構造と同様に、第1の方向及び第1の方向と交差する第2の方向にそれぞれ配置されてグリッド構造のセンサを構成する。電磁誘導コイルセンサ207は電磁信号処理部208に接続されており、位置指示器としてのペン102との間で公知の電磁誘導結合を行うことでペン102が位置検出領域104上で指示した位置を検出することができる。なお、電磁誘導コイルセンサ207と電磁信号処理部208は電磁方式位置検出部209を構成する。電磁信号処理部208は、電磁誘導コイルセンサ207を構成する各ループコイルに順次所定時間だけ送信信号、すなわち所定の周波数を有する交流信号を流した後ループコイルを切り替えて受信コイルとして機能させてペン102にて発生した誘導磁界を受信する。すなわち、ループコイル近傍に、図示しない共振回路を内蔵する位置指示器としてのペン102が存在すれば、ループコイルから送信される交番磁界がペン102内の共振回路に相互電磁誘導に基づく電流を発生させる。この電流に基づき、共振回路を構成するコイルから誘導磁界が発生する。誘導磁界はループコイルに供給する交流信号を絶っても、所定時間まで発生し続ける。この誘導磁界を信号受信状態にあるループコイルで検出することで位置指示器としてのペン102の位置を検出する。
【0016】
電磁方式位置検出部209は、ペン102との相互電磁誘導作用によってペン102の位置を検出するため、ペン102と電磁誘導コイルセンサ207との距離が多少離れていても、ペン102が指示する位置を検出できる。しかし、静電方式位置検出部206では位置指示器としての指105が電極に近接することに起因するコンデンサの容量変化を検出するので、指105との距離ができるだけ近い方が望ましい。このため、保護カバー202直下に静電センサ204を配置し、更にその下方にLCDディスプレイ203を介して電磁誘導コイルセンサ207を配置している。
【0017】
静電信号処理部205から出力される指示位置データと、電磁信号処理部208から出力される指示位置データは、それぞれ出力信号生成部210に入力される。出力信号生成部210では二つの指示位置データを所定の伝送フォーマットに変換して、出力信号211として、図示しないパソコンなどの外部接続装置に出力する。なお、パソコン側では、受信したそれぞれの指示位置データを分離し、例えばアプリケーションソフトウェアに組み入れて利用する。一例として描画ソフトの場合では、2本の指105を使ってドラッグすると、表示中の画面を拡大或は縮小する指令として認識し、この操作によって所定の画面サイズが設定される。所定のサイズに設定された画面上でペン102を操作することで描画を行うことができる。この例では、指示体としての指105の操作による位置データが画面拡大・縮小のための指令として用いられ、ペン形状のペン102の操作による位置データが描画のための指令として用いられる。
【0018】
静電センサ204と電磁誘導コイルセンサ207の間に配置されたLCDディスプレイ203は、パソコンなどの外部接続装置から供給されたビデオ信号212を受信し、所定の表示を行う。
【0019】
[電磁方式位置検出部209]
図3及び図4を参照して、電磁方式位置検出部209の機能と動作を説明する。図3は、ペン102が備える共振回路の構成を示す。コイルL302、コンデンサC303及び半固定コンデンサC304はそれぞれ並列接続されており、周知の共振回路を構成する。共振回路は、図4に示す電磁誘導コイルセンサ207を構成するループコイル408(408a〜408d)からの交番磁界の受信に対応して共振し、ループコイル408からの交番磁界の送信が停止したことに対応して共振回路の共振周波数に基づく交番磁界を発生し、電磁誘導コイルセンサ207を構成するループコイル408に交番磁界を供給する。なお、上述したように、ペン102からの交番磁界を受信する際にはループコイル408はペン102からの信号を受信するための受信コイルとして機能するように切り替えられる。
【0020】
コンデンサC305とペン102の側面に設けられた押しボタン306の操作に連動する押しボタンスイッチ307とは直列接続され、コイルL302、コンデンサC303及び半固定コンデンサC304のそれぞれとは並列接続される。従って、押しボタンスイッチ307をオン・オフ制御すると、共振回路を構成するコンデンサの合成容量が変化することとなり、その結果、押しボタンスイッチ307の状態に応じて共振回路の共振周波数が変化する。位置検出装置101の側ではこの共振周波数の変化を識別することでペン先309にて指示した位置のみならず、押しボタン306の操作状態を把握することができる。
【0021】
図4は、電磁方式位置検出部209のブロック図である。
発振回路402は前述のペン102の共振回路の共振周波数にほぼ等しい周波数の正弦波交流信号あるいは方形波信号を発生し、電流ドライバ403及び同期検波器404に供給する。電流ドライバ403は、発振回路402にて発振された所定の周波数の信号を電流増幅して、送受信切替回路405へ供給する。
【0022】
送受信切替回路405は、電流ドライバ403の出力端子と、受信アンプ406の入力端子のいずれかを、コイル選択回路407に選択的に接続する。コイル選択回路407は、電磁誘導コイルセンサ207を構成する複数のループコイル408a、408b、408c及び408dの内の一つを選択して送受信切替回路405に接続する。
【0023】
送受信切替回路405を介してコイル選択回路407と電流ドライバ403とが接続されている場合には、電流ドライバ403から供給される信号は、コイル選択回路407によるコイル選択制御に基づいて順次選択されたループコイル408a、408b、408c及び408dの各コイルに供給される。送受信切替回路405を介してコイル選択回路407と受信アンプ406とが接続されている場合には、コイル選択回路407によるコイル選択制御に基づいてループコイル408a、408b、408c及び408dの各ループコイルにて受信された信号が、受信アンプ406に入力される。なお、送受信切替回路405及びコイル選択回路407は、後述する第一制御部409から供給される制御信号によって選択制御される。
【0024】
略長方形状のループコイル408a、408b、408c及び408dは、同一平面上に互いに平行に並べられている。このループコイル408a、408b、408c及び408dの一方の端子はコイル選択回路407に接続され、もう一方の端子は接地されている。コイル選択回路407によって選択された一のループコイルが送受信切替回路405を介して電流ドライバ403の出力端子に接続されている場合には、電流ドライバ403から供給される信号によって、コイル選択回路407によって選択された一のループコイルから交番磁界が発生する。従って、ペン102が交番磁界を発生しているループコイルの近くにあるときは、ペン102内部の共振回路に誘導起電力が発生することになる。
【0025】
第一制御部409からの制御信号によって制御された送受信切替回路405を介して、コイル選択回路407によって順次選択された一のループコイルが受信アンプ406と接続されると、各ループコイルはペン102の共振回路にて発生する交番磁界を受信することができる状態となる。ループコイル408がペン102の共振回路にて発生する交番磁界を受信すると、ループコイル408には微弱な交流信号が発生する。受信アンプ406は、この電流を電圧に変換し及び増幅して同期検波器404の入力端子に供給する。
【0026】
すなわち、電磁方式位置検出部209は、送受信切替回路405を介してコイル選択回路407と電流ドライバ403とが接続されている場合にはペン102への信号送信状態にある。一方、送受信切替回路405を介してコイル選択回路407と受信アンプ406とが接続されている場合にはペン102からの信号受信状態にある。
【0027】
なお、ペン102が交番磁界を発生しているループコイルの近傍に位置していない場合には、ペン102内部の共振回路には位置指示のために十分な誘導起電力は発生しない。
【0028】
電磁誘導コイルセンサ207を構成するループコイル408a、408b、408c及び408dを第1の方向に互いに平行に配置するとともに、更に、同様な構成の電磁誘導コイルセンサ207を第1の方向とは交差する第2の方向にも配置することでペン102が位置検出領域104上で指示する二次元位置、すなわちX座標およびY座標を求めることができる。
【0029】
A/D変換器411は、同期検波器404からのアナログ信号をデジタル信号に変換する。
【0030】
同期検波器404は周知であり、アナログ乗算器を含み、発振回路402からの信号と受信信号とを乗算した信号を出力する。同期検波器404は、発振回路402からの信号と受信信号との周波数が一致している場合には、大きな信号レベルを出力し、斯かる信号と受信信号の周波数が異なるとその出力信号レベルは低下する。なお、周波数の変化はペン102の共振回路の共振周波数の変化によってもたらされる。つまり、押しボタンスイッチ307によってコンデンサC305が共振回路に組み込まれることによって共振回路を構成するコンデンサの合成容量が変化し、これに応じて、同期検波器404から得られる信号のレベルが変化する。
【0031】
同期検波器404から得られる信号のレベルに基づいて、ペン102にて発生した交流磁界の周波数変化を検出でき、この周波数変化からペン形状のペン102に備えられた押しボタン306の操作状態を検出することができる。
【0032】
[静電方式位置検出部206]
図5は静電方式位置検出部206のブロック図である。図5を参照して静電方式位置検出部206の機能と動作を説明する。第二制御部503は、送信導体504を所定のシーケンスで選択するための送信導体選択信号を送信導体選択回路502に供給する。従って、発振回路501にて生成された所定の周波数を有する交流信号は、送信導体選択回路502を介して静電センサ204を構成する送信導体504に順次印加される。受信導体選択回路505もまた、第二制御部503からの受信導体選択信号に基づいて制御される。これによって、静電センサ204を構成する受信導体506は所定の受信導体選択シーケンスに従って順次選択され、A/D変換器508に接続される。A/D変換器508は、受信導体選択回路505を介して選択された受信導体506からの信号をデジタルデータに変換する。この例では、第二制御部503は、送信導体選択回路502を制御することで交流信号を供給する送信導体504を決定し、及び受信導体選択回路505とA/D変換器508を介して、受信導体506からの信号を受信し、位置検出領域104上の指105の存在の有無あるいは指示位置情報を求め出力信号生成部210に供給する。
【0033】
以上述べたように、例えば電磁誘導方式による指示体位置検出方式と、静電方式による指示体位置検出方式など、複数の位置検出方式が組み合わされ、かつ互いが同時的に動作する位置検出装置においては、一方の位置検出装置が使用するセンサ導体への送信信号が他方の位置検出装置にノイズとして悪影響を与えることがある。この実施例においては、電磁誘導方式による電磁方式位置検出部209が備える発振回路402からの信号が電磁誘導コイルセンサ207を構成する各ループコイル408を介して放出された信号が静電方式による静電方式位置検出部206が備える静電センサ204を構成する受信導体506にて受信されることで悪影響を与える恐れがある。また、静電方式による静電方式位置検出部206が備える発振回路501で生成された送信信号が静電センサ204を構成する送信導体504を介して放出された信号が電磁誘導方式による電磁方式位置検出部209が備える電磁誘導コイルセンサ207を構成するループコイル408が受信コイルとしての機能する状態にあるときには、同様にして、ノイズとして受信される恐れがある。
【0034】
次に、本発明の第一の実施形態について述べる。図6は、電磁誘導コイルセンサ207と静電センサ204との空間的配置関係を示す。それぞれのループコイル408がY軸方向に延伸するとともに、X軸方向に並列的に配置された電磁誘導コイルセンサ207と、それぞれの受信導体506がY軸方向に延伸するとともに、X軸方向に並列的に配置された静電センサ204が、図示せずもLCDディスプレイ203を介して、重畳されて配置される。なお、この実施例では、ループコイル408は、交番磁界をペン102に送信するための機能を果たす状態にある。また、図6では、電磁誘導コイルセンサ207を構成する基板の一方の面にループコイル408が配置されているが、基板の他面にも、図示されたループコイル408とは直交する配置関係を有するループコイル408が配置されており、この構成によりペン102によって指示される位置を2次元的(X/Y座標)に検出できるように構成されている。同様にして、静電センサ204に関しても、基板の一面に受信導体506が配置されているとともに、基板の他面には、前記受信導体506とは直交する配置関係を有する送信導体504が配置されており、受信導体506と協働して指示体としての指105が指示する位置を二次元的(X/Y座標)に検出できるように構成されている。すなわち、電磁誘導コイルセンサ207を構成する交番磁界送信の機能を果たすループコイル408と静電センサ204を構成する受信導体506は、その延伸方向及び並列的配置方向が空間的に同一となるように配置されている。なお、図6に示す実施例では、延伸方向とはY方向であり、並列配置方向とはX方向を意味する。
【0035】
本発明の第一の実施形態においては、図4に示す電磁方式位置検出部209を構成するコイル選択回路407を介して特定のループコイル408から交番磁界をペン102に送信する際には、斯かる選択されたコイル位置の情報を第一制御部409から図5に示す静電方式位置検出部206を構成する第二制御部503に供給する。第二制御部503では交番磁界送信用ループコイルの選択情報を取得し、この選択情報に関連させて指示体としての指105の指示位置を求めるための受信導体506の選択位置を制御する。図6に示す実施例においては、交番磁界を送信する状態にあるループコイル408および受信導体506がX軸方向、すなわち図6において、左側から右側に順次選択されるものとし、交番磁界を送信するためのループコイル408として最左端にあるループコイル408が選択されていたとすると、第2制御503部は第一制御部409から供給された送信用ループコイルの選択情報に基づいて静電センサ204上の略中央に配置された受信導体506を選択するように受信導体選択回路505を制御する。交番磁界を送信するためにX軸方向に沿ってループコイル408が順次選択されることに対応して、受信導体506も同様にしてX軸方向に沿って同一の方向に順次選択されることで、選択されたループコイル408と受信導体506との間に常に所定の距離が確保されることとなる。なお、送信導体の選択位置情報に基づいて受信導体の選択制御を行うことを説明したが、受信導体の選択位置情報に基づいて送信導体の選択制御を行うこともできる。また、図6図において、ループコイル408および受信導体506はX軸方向に沿って左側から右側に順次選択されるとともに、最右端に配置されたループコイル408および受信導体506がそれぞれ選択された場合には、次には最左端に配置されたループコイル408および受信導体506が選択されるものとする。しかしながら、この実施例に限定されるものではない。交番磁界を送信するためのループコイル408の選択位置と受信導体506の選択位置との間に所定の距離が確保されるようにそれぞれの選択位置が制御されれば良い。すなわち、ループコイル408は順次近傍に配置されたループコイルを選択するアプローチのみならず、所定のシーケンスに基づいてランダムにループコイルを選択するアプローチを採用することもできる。この場合には、受信導体506の選択位置は、ループコイル408の選択位置に関連づけられて制御される。更には、電磁誘導コイルセンサ207および静電センサ204のそれぞれは、その基板の一面とその他面に互いに直交配置にあるループコイルおよび導体がそれぞれ配置されている。本発明では、電磁誘導コイルセンサ207を構成する交番磁界送信用のループコイル408に対し、この配置方向と同様の配置方向にある静電センサ204を構成する受信導体506が技術的課題を解決するための対象となる。従って、電磁誘導コイルセンサ207の一面に配置されたループコイル408とこの他面に配置されたループコイル408を選択的に交番磁界送信用のループコイルとして機能させる場合には、このループコイルの選択動作に対応させて、このループコイルと同様な配置関係を備える面に配置された静電センサ204を構成する受信導体506が対象とされる。
【0036】
[第二実施形態:周波数インターリーブ]
図7は、電磁方式位置検出部209が備えるループコイル408に供給される信号(EMR駆動信号と称する)と、静電方式位置検出部206が備える送信導体504に供給される信号(静電駆動信号と称する)とを示す。図7(a)において、図4に示す発振回路402では、ペン102の共振回路の共振周波数にほぼ等しい周波数(500KHz)の正弦波交流信号が生成される。この実施例では、ループコイル408は、便宜上4つのループコイル408a、408b、408c、408dを備えており、第一制御部409からの指示による所定のシーケンスにて制御されるコイル選択回路407によって、それぞれのコイルは64μSの期間選択状態とされる。また、256μSを1サイクルとして各コイルの選択動作が繰り返される。コイル選択回路407によって選択された64μSの期間は、第一制御部409からの指示によって切替制御を行う送受信切替回路405によって、各コイルを28μSの信号送信期間と、4μSの切替移行期間と、32μSの信号受信期間で構成される時間間隔でコイルの切替制御が行われる。従って、28μSの信号送信期間においては、発振回路402によって生成された500KHzの正弦波信号がコイルに供給される。図7(b)において、図5に示す発振回路501にて生成された250KHzの正弦波信号は送信導体選択回路502を介して送信導体504を構成するそれぞれの導体に供給される。送信導体選択回路502は、第二制御部503からの制御信号による所定の送信導体選択シーケンスによって発振回路501によって生成された正弦波信号を所望の送信導体504に供給する。この実施例では、送信導体504を構成するそれぞれの導体が128μS毎に順次選択される。また、送信導体504を構成する全ての導体が選択されると、斯かる送信導体選択シーケンスが再度適用されることで送信導体504の送信導体選択処理が繰り返される。図7(b)に示す場合においても、発振回路501によって生成された正弦波信号は、送信導体選択回路502を介して送信導体504を構成する各導体に128μSの期間供給されることとなる。すなわち、各送信導体504には発振回路501によって生成された正弦波信号が断続的に供給される。
【0037】
図8は、図7(a)、(b)に示すそれぞれの送信信号(EMR駆動信号、静電駆動信号)の周波数スペクトラムを示す。図7(a)に示す500KHzの断続的信号に関しては、500KHzのメインローブを中心としてその周辺にサイドローブが発生する。また、図7(b)に示す250KHzの断続的信号に関しても、250KHzのメインローブを中心としてその周辺にサイドローブが発生する。更には、図7(a)に示す送信信号と図7(b)に示す送信信号との間には周波数インターリーブの関係、すなわち、図7(a)に示す送信信号が有する周波数スペクトラムに対して、図7(b)に示す送信信号が有する周波数スペクトラムが間挿される関係を備える。また、図4に示す発振回路402と図5に示す発振回路501は、それぞれ第一制御部409及び第二制御部503によって、互いの周波数が周波数インターリーブの関係を維持するように、少なくとも一方の周波数を他方の周波数に関連づけて制御する。図7(a)に示す送信信号と図7(b)に示す送信信号との間に周波数インターリーブの関係が存在することにより、電磁方式位置検出部209及び静電方式位置検出部206におけるそれぞれの受信信号の抽出処理において、他方の検出部からの信号干渉をノイズ除去フィルタを用いて適切に排除することができる。なお、送信導体に供給される信号としては正弦波信号に限るものではなく、方形波信号、パルス信号なども適用できることは言うまでもない。
【0038】
なお、図3で説明したように、押しボタンスイッチ307の状態に応じて共振回路の共振周波数は変化する。本発明では、押しボタンスイッチ307の状態によって変化する共振回路の共振周波数の偏差が図8に示すEMR駆動信号のスペクトラムに対応するように規定される。すなわち、図7に示すように、EMR駆動信号は、28μSの送信期間と4μSの切替移行期間を備えているため、1/(28μS+4μS)、すなわち31.25KHzの周波数間隔で配置された周波数成分を備える。従って、押しボタンスイッチ307の状態によって変化する共振回路の共振周波数の偏差が31.25KHzの周波数の整数倍となるように図3に示すコンデンサC305の容量値を設定することで、図7(b)に示す静電駆動信号との周波数インターリーブの関係が押しボタンスイッチ307の状態に関わらず維持される。
【符号の説明】
【0039】
101…位置検出装置、102…位置指示器、104…位置検出領域、105…指、202…保護カバー、203…LCDディスプレイ、204…静電センサ、205…静電信号処理部、206…静電方式位置検出部、207…電磁誘導コイルセンサ、208…電磁信号処理部、209…電磁方式位置検出部、210…出力信号生成部、211…出力信号、212…ビデオ信号、L302…コイル、C303…コンデンサ、C304…半固定コンデンサ、C305…コンデンサ、307…押しボタンスイッチ、309…ペン先、402…発振回路、403…電流ドライバ、404…同期検波器、405…送受信切替回路、406…受信アンプ、407…コイル選択回路、408…ループコイル、409…第一制御部、411…A/D変換器、502…送信導体選択回路、503…第二制御部、504…送信導体、505…受信導体選択回路、506…受信導体、508…A/D変換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に配置された複数の導体と前記第1の方向に対して交差する方向に配置された複数の導体から成る第1のセンサと、前記第1のセンサに接続され前記第1の方向に配置された複数の導体を所定の送信導体選択シーケンスに基づいて選択するための第1の導体選択回路と、前記第1の導体選択回路を介して前記複数の導体に信号を供給するための発振回路を備えることで第1の指示体が指示する位置を前記第1のセンサによって検出する第1の位置検出回路と、
前記第1の方向と同じ方向に配置された複数の導体と、前記第1の方向と同じ方向に配置された複数の導体に対して交差する方向に配置された複数の導体から成り前記第1のセンサに重畳配置された第2のセンサと、前記第2のセンサに接続され前記第1の方向と同じ方向に配置された複数の導体を所定の受信導体選択シーケンスに基づいて選択するための第2の導体選択回路を備えることで第2の指示体が指示する位置を前記第2のセンサによって検出する第2の位置検出回路と、
前記第1の導体選択回路による送信導体選択位置と前記第2の導体選択回路による受信導体選択位置とが所定の空間的距離関係を保持するように導体選択制御を行う制御回路を備えることを特徴とする位置検出装置。
【請求項2】
前記第1の方向に配置された複数の導体はループコイルにて構成されるとともに、前記第1の導体選択回路によって選択されたループコイルに対し発振器からの所定周波数の信号の供給と前記第1の導体選択回路によって選択されたループコイルによる信号受信を時分割的に切り替えるための送受信切替回路を備えることで前記ループコイルにて前記第1の指示体が指示する位置を検出するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項3】
前記第1の位置検出回路は、送受信切替回路を介して前記ループコイルから放出された信号が前記指示体が備える共振回路にて受信されるとともに、該共振回路から放出される信号を前記ループコイルにて受信することで前記指示体が指示する位置を電磁的に検出するようにしたことを特徴とする請求項2に記載の位置検出装置。
【請求項4】
前記第2のセンサを構成する他方の方向に配置された複数の導体を所定の送信導体選択シーケンスに基づいて選択するための第3の導体選択回路と、前記第3の導体選択回路を介して前記複数の導体に信号を供給するための第2の発振回路を備えることで第2の指示体が指示する位置を前記第2のセンサに生じる静電容量の変化によって検出するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項5】
前記第1の導体選択回路による送信導体選択位置に基づいて前記第2の導体選択回路による受信導体選択位置が所定の空間的距離関係を保持するように導体選択制御されることを特徴とする請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項6】
前記第1の導体選択回路を介して第1のセンサに供給される送信信号と前記第3の導体選択回路を介して第2のセンサに供給される送信信号は周波数インターリーブの関係を備えていることを特徴とする請求項4に記載の位置検出装置。
【請求項7】
前記第1の導体選択回路を介して第1のセンサに供給される送信信号の周波数と前記第3の導体選択回路を介して第2のセンサに供給される送信信号の周波数とが所定の周波数関係を維持するための制御回路を備えることを特徴とする請求項6に記載の位置検出装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−185680(P2011−185680A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−49743(P2010−49743)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(000139403)株式会社ワコム (118)
【Fターム(参考)】