説明

位置決めシステム

【課題】可動型ポジショナーのための位置決めシステムとして、機械的に複雑でなくてもポジショナーに高い位置決め精度を可能とし、フレキシブルにさまざまな用途に適するようなものを得ること。
【解決手段】
ポジショナーを位置決めする位置決めシステムが、ポジショナー(10)を駆動するモーター(18)と、測定装置とを備え、この測定装置は、モーター(18)を制御するためポジショナーの調整トラベルを直接測定する。このため牽引ワイヤ(32)がポジショナーと結合され、ドラム(36)に巻き取られる。ポジショナーの調整トラベルを測定するため、シャフトエンコーダー(42)を用いて、ドラム(36)の回転を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載する位置決めシステム(Stellvorrichtung)に関する。
【背景技術】
【0002】
このような位置決めシステムは、ポジショナー(Stellelement)を線形または回転型の調整トラベルの上に正確に位置決めするのに用いられる。この位置決めシステムはモーターを備え、このモーターは、操作エレメント(Stellglied)たとえば出力軸を駆動し、この出力軸は、さらに機械的リンク機構を介して、ポジショナーのポジションを調節する。1つの測定装置が実際のポジションを測定し、この実際のポジションは、ポジショナーを位置決めするためモーターを制御するのに用いられる。
【0003】
実際のポジションを測定するためには、モーターの軸または位置決めシステムの出力軸と結合されたシャフトエンコーダーを用いることが知られている。この場合シャフトエンコーダーは、モーター軸ないし出力軸の回転を、付加的または絶対的に測定する。モーター軸ないし出力軸の回転運動は、機械的リンク機構を介して、たとえばスピンドル、ギアユニットなどを介して、ポジショナーの線形または回転運動に変換されなければならない。このようなスピンドルやギアユニットには、遊びや機械的公差などがあるので、ポジショナーの実際のポジションは、モーター軸ないし出力軸の測定された実際のポジションに、正確には対応しない。位置決め精度の改善は、このような公差を減少させることによってのみ達成されるが、これには高度の機械的複雑さをともなう。
【0004】
このような公知の位置決めシステムは、例えば特許文献1に記載されている。そのモーターは1つのナットを駆動し、このナットがスピンドルを操作エレメントとして、線形に動かす。この操作エレメントの線形のポジションは、位置決めシステム内部で線形にスキャンされ、実際のポジション信号としてモーターを制御するのに用いられる。位置決めを行うポジショナーに、操作エレメントの運動を伝達する際、その公差や誤差は、捕捉できない。
また、例えば特許文献2に記載されている。それからは、油圧によって線形にシフト可能なピストンを持つ位置決めシステムが知られている。このピストンの実際のポジションは、ピストンに取り付けられた牽引ワイヤを持つ測定装置によって測定され、このケーブルはドラムに巻き取られる。ドラムの軸と結合されたシャフトエンコーダーが、ドラムの巻き取りポジションと、それにより牽引ワイヤの巻き取られた長さとを測定する。この場合も、操作エレメントとして用いられるピストンの実際のポジションを検出する。この操作エレメントと、この操作エレメントが作動するポジショナーとの間で、機械的リンク機構に誤差があってもそれを検出することはできない。
【0005】
【特許文献1】米国特許5053685号公報
【特許文献2】米国特許4121504号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、可動型ポジショナーのための位置決めシステムとして、機械的に複雑でなくてもポジショナーに高い位置決め精度を可能とし、フレキシブルにさまざまな用途に適するようなものを得ることである。
【0007】
本発明はこの課題を請求項1に記載の内容を持つ位置決めシステムによって解決する。
本発明の有利な実施形態を、従属請求項に記載した。
【0008】
本発明による位置決めシステムの場合、モーター制御のため、実際のポジションとして、位置決めシステムのポジションではなく、位置決めシステムに作動されるポジショナー自体の実際のポジションを測定する。このため、モーターにも、そのモーターによって駆動可能な操作エレメントにも依存しない測定装置を用いる。この測定装置は、ドラムに巻き取り可能な牽引ワイヤを備える。この場合そのドラムの回転ポジションは、シャフトエンコーダーによって捕捉することができる。牽引ワイヤの自由な末端は、位置決めシステムから引き出され、位置決めされるポジショナーとこの自由な末端とが、直接結合されている。これにより、とくに2つの重要な利点が得られる。モーターを制御するための実際値としてポジショナー自体のポジションを測定することにより、ポジショナーの位置決め精度が、機械的リンク機構における誤差や公差に依存しなくなる。この機械的リンク機構とは、モーターによって駆動可能な位置決めシステムのポジショナーと、位置決めされるポジショナーとの間にあるものである。したがってこの機械的リンク機構、たとえばギアユニット、スピンドルなどに、高度の精度要求を課す必要はなくなる。その結果として、この機械的リンク機構を安価に作ることができる。さらにはこの位置決めシステムを、さまざまに異なる用途のため、非常にフレキシブルに用いることができる。モーター、モーター制御系統、および測定装置は、コンパクトながら汎用型の位置決めシステムを形成することができる。この位置決めシステムは、モーターに駆動される操作エレメントと、測定装置の牽引ワイヤとを、位置決めされるポジショナーに対する機械的なインタフェースとして備える。用途のジオメトリー的条件に応じて、そしてまた位置決めされるポジショナーの形状に応じて、駆動される操作エレメントとポジショナーとの間の機械的リンク機構を形成することができる。この牽引ワイヤは柔軟であって、任意の方向に向けることができる。したがってこの測定装置が、位置決めシステムの配置や取り付けや、そして位置決めシステムと位置決めされるポジショナーとの間の機械的リンク機構に、何らかの制限を加えることはない。
【0009】
1つの有利な実施形態では、モーターの軸が、ポジショナーを駆動するスピンドルと軸平行に配置される。モーターと測定装置を持つ位置決めシステムのハウジングは、この場合ポジショナーハウジングの横に、軸平行に取り付けられている。このポジショナーハウジングは、スピンドルとポジショナーを収容する。ポジショナーと結合された牽引ワイヤは、この場合ポジショナーハウジング内をスピンドルと平行に案内され、ポジショナーハウジングの正面から外に出て、180°方向変換され、位置決めシステムのハウジングに平行方向に入る。このハウジング内でケーブルは、シャフトエンコーダーと結合されたドラムに載る。この全体配置は、こうしてコンパクトな閉じたユニットを形成し、このユニットの長手方向寸法は、主としてポジショナーの調整トラベルの長さだけで決定される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
下記に図面に記載する実施例を用いて、本発明をさらに詳しく説明する。
図1〜3に示す位置決めシステムは、ハウジング16に収められたコンパクトなユニットを形成する。ここでは位置決めシステムの内部構造が見えるようにするため、図1はハウジング16の側面カバーを、図2ではこの側面カバーと、ハウジング16の末端正面17とを、それぞれ取り外したものを示す。
【0011】
ハウジング16では電動モーター18が、その軸19がハウジング16の長手方向に伸びる位置に配置されている。モーター18は減速ギアユニット20を駆動し、このユニットの出力軸22は操作エレメントとして、モーターの軸19に軸平行に、ハウジング16の末端正面17から突出している。
【0012】
さらにハウジング16の内部では、モーター18の正面と、ハウジング16の末端正面17との間に、ドラム36が配置されている。このドラムは、ハウジング16の側面とモーター18の軸とに垂直な軸を中心として回転可能な状態で取り付けられている。ドラム36は、ギアユニット20と、ハウジング16の側壁との間に位置する。このドラム36には牽引ワイヤ32の一方の末端が巻き上げられ、このケーブルは、出力軸22のそばで、末端正面17を通ってハウジング16から引き出されている。ドラム36と同軸にゼンマイ48が設けられ、このゼンマイはドラム36に、牽引ワイヤ32の巻き込み方向にプリロードをかけ、これにより牽引ワイヤ32に応力をかけている。
【0013】
ギアユニット20を省略した図3からわかるように、ドラム36はその正面の周縁に外歯40を備え、この外歯がシャフトエンコーダー42の歯と噛み合っている。シャフトエンコーダー42は、マルチターン・シャフトエンコーダーとして形成されている。すなわちシャフトエンコーダー42は、複数回の反転を介して、ドラム36の正確な角度ポジションを測定する。このようなマルチターン・シャフトエンコーダーは、公知の従来の技術に属する。図3には、減速ギアユニットをはさんで順次並ぶシャフトエンコーダー42の各段が見られる。
【0014】
シャフトエンコーダー42とその電子系統配線は印刷回路板44に配置され、この印刷回路板44は、ハウジング16内部で、その側壁に平行に密着して取り付けられている。この印刷回路板には、モーター18を制御する電子系統と、モーター18を整流するために用いられるセンサー38も設けられている。この電子系統におけるモーター18への電流供給は、ハウジング16において末端正面17と反対側の正面を通るケーブル46を経由して行われる。
【0015】
この位置決めシステムは、任意のポジショナーを位置決めするために用いることができる。それぞれの用途に適合された機械的リンク機構によって、出力軸22の回転は、ポジショナーの線形または回転運動に変換される。ハウジング16から引き出された牽引ワイヤ32に自由な末端は、このポジショナーと結合されている。この場合、牽引ワイヤ32は、位置決めシステムとポジショナーの構成に応じて、方向を変換することができる。この牽引ワイヤ32は、ポジショナー10の運動に遊びなしで従う。この運動は、牽引ワイヤ32によって、ドラム36の回転運動に遊びなしで変換される。なぜならばこの牽引ワイヤ32は、ゼンマイ48によって応力をかけられて保持されるからである。したがってシャフトエンコーダー42は、ポジショナー10の正確な実際のポジションを測定する。シャフトエンコーダー42が測定したこの実際のポジションに応じて、モーター18が制御される。その結果として、ポジショナーの正確な位置決めが、モーター18、ギアユニット20、出力軸22、および機械的リンク機構によって可能となる。その際、モーター18からポジショナーまでのこのパワートレーンに、機械的な遊びそのほかの誤差が生じても、ポジショナーの位置決め制御や位置決め精度に、影響をおよぼすことはない。
【0016】
図4および5は、図1〜3に記載する位置決めシステムの1つの実施例を示す。図4の実施例は閉じた形であり、図5では、構造が見えるようにハウジング部分を省略している。
この位置決めシステムはポジショナー10を作動し、このポジショナーは、本発明の範囲外である任意の機能を満足する。ポジショナー10は、線形に動くことができる状態でポジショナーハウジング12の中を案内され、このポジショナーハウジングは、直方体を長く伸ばした形であって、たとえばアルミニウム形材によって形成される。ポジショナーハウジング12内で軸方向に、スピンドル14が回転可能な状態で取り付けられ、このスピンドルの上を、ポジショナー10が、スピンドルナットを用いて動くことができる。カバーテープ15が、ポジショナーハウジング12を、ポジショナー10の軌道領域で、シールしながら密閉する。
【0017】
ポジショナーハウジング12の長手側壁に、位置決めシステムのハウジング16が取り付けられる。ポジショナーハウジング12の末端正面は、ハウジング16の末端正面17と並んで、1つの面を形成する。
操作エレメントとして、末端正面17を越えて、ハウジング16から引き出されている出力軸22の末端には、歯付きのベルトプーリー24が取り付けられている。このプーリーが、エンドレスなコッグドベルト26を介して、もう1つの歯付きベルトプーリー28を駆動する。後者のプーリーは、ポジショナーハウジング12の正面から引き出されているスピンドル14の末端に、回転を固定されて取り付けられている。したがってモーター18は、ギアユニット20およびコッグドベルト26を介して、スピンドル14を回転駆動する。これにより、ナットによってスピンドル14に取り付けられているポジショナー10は、線形にシフトされる。末端キャップ30が、ベルトプーリー24および28と、コッグドベルト26とを覆い、そしてポジショナーハウジング12とハウジング16の正面を閉じる。
【0018】
ポジショナーハウジング12の中では、ポジショナー10に牽引ワイヤ32の自由な末端が固定されている。牽引ワイヤ32は、ポジショナーハウジング12の中をスピンドル14と平行に延び、ポジショナーハウジング12の正面のベルトプーリー28より上で、ポジショナーハウジング12を出る。ポジショナーハウジング12とハウジング16の正面にはガイドシュー34が設けられ、このガイドシューの外周には案内溝が設けられている。ポジショナーハウジング12を出る牽引ワイヤ32は、ガイドシュー34のこの案内溝を通り、そしてガイドシュー34によって方向変換される。その結果として牽引ワイヤ32は、スピンドル14および出力軸22と軸平行方向に、合計180°方向変換されて、ハウジング16の末端正面17に入る。このガイドシュー34と、このガイドシューの上を通る牽引ワイヤ32もまた、末端キャップ30によってカバーされる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】ハウジングを一部開いた位置決めシステムの透視図である。
【図2】上記よりさらにハウジングの一部を取り外した位置決めシステムである。
【図3】位置決めシステムの測定装置の部分図である。
【図4】位置決めシステムの1つの実施例である。
【図5】図4の実施例と同じものであるが、ハウジングを開いている。
【符号の説明】
【0020】
10 ポジショナー
12 ポジショナーハウジング
14 スピンドル
15 カバーテープ
16 ハウジング
17 末端正面
18 モーター
19 軸
20 ギアユニット
22 出力軸
24 ベルトプーリー
26 コッグドベルト
28 ベルトプーリー
30 末端キャップ
32 牽引ワイヤ
34 ガイドシュー
36 ドラム
38 センサー
40 外歯
42 シャフトエンコーダー
44 印刷回路板
46 ケーブル
48 ゼンマイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置決めシステムであって、モーター(18)と操作エレメント(22)を備え、この操作エレメントはモーター(18)によって駆動可能であり、この操作エレメントによってポジショナー(10)を位置決めすることができ、またこのシステムは、モーター(18)を制御するため実際のポジションを測定する測定装置を備える、上記の位置決めシステムにおいて、この測定装置が、牽引ワイヤ(32)と、牽引ワイヤ(32)の一方の末端を巻き取ることができるドラム(36)と、ドラム(36)と結合されたシャフトエンコーダー(42)とを備え、その際、牽引ワイヤ(32)の他方の末端が、位置決めシステムから引き出され、ポジショナー(10)と結合可能であることを特徴とする、上記の位置決めシステム。
【請求項2】
シャフトエンコーダー(42)がマルチターン・シャフトエンコーダーであることを特徴とする、請求項1に記載の位置決めシステム。
【請求項3】
モーター(18)、モーターのギアユニット(20)、および測定装置が、1つの共通のハウジング(16)に収められていることを特徴とする、請求項1または2に記載の位置決めシステム。
【請求項4】
シャフトエンコーダー(42)と、モーター(18)を制御する電子系統とが、ハウジング(16)内で、1つの共通な印刷回路板(44)の上に配置されていることを特徴とする、請求項3に記載の位置決めシステム。
【請求項5】
モーター(18)が、ギアシステム(20、24、26、28)を介してスピンドル(14)を駆動し、このスピンドル上をポジショナー(10)が動くことを特徴とする、前回各請求項のいずれかに記載の位置決めシステム。
【請求項6】
モーター(18)に、スピンドル(14)と平行な軸(19)が設けられていることを特徴とする、請求項5に記載の位置決めシステム。
【請求項7】
モーター(18)と測定装置を収めるハウジング(16)が、スピンドル(14)とポジショナー(10)を収めるポジショナーハウジング(12)に、軸平行に取り付けられていることを特徴とする、請求項3、5および6のいずれかに記載の位置決めシステム。
【請求項8】
牽引ワイヤ(32)が、ポジショナーハウジング(12)においてスピンドル(14)と平行に延び、正面でポジショナーハウジング(12)から外に出て、180°方向変換し、正面でハウジング(16)に入ることを特徴とする、請求項7に記載の位置決めシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−155731(P2007−155731A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−326511(P2006−326511)
【出願日】平成18年12月4日(2006.12.4)
【出願人】(506267488)ジク ステグマン ゲーエムベーハー (8)
【Fターム(参考)】