説明

位置規則性ポリマーの製造方法

本発明は、位置規則性ポリマー、特に、高い位置規則性度を有する頭−尾(HT)ポリ(3−置換)チオフェンの製造方法、この方法によって製造される新規なポリマー、この新規なポリマーを電界効果トランジスタ(FET)、エレクトロルミネッセンス、光起電性及びセンサーデバイスを含めて、光学的、電気光学的又は電子的デバイスにおける半導体又は電荷輸送材料としての使用、及び新規なポリマーを含むFET及び他の半導体部品又は材料に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置規則性ポリマー、特に、位置規則性度の高い、頭−尾(HT)ポリ(3−置換)チオフェンの製造方法、及びこの方法によって製造される新規ポリマーに関する。さらに、本発明は、前記新規ポリマーを、電界効果トランジスタ(FET)、エレクトロルミネッセンス、光起電及びセンサーデバイスなどの光学的、電気光学的又は電子デバイスにおいて半導体又は電荷輸送材料として利用することに関する。本発明は、さらに、新規ポリマーを含むFET及び他の半導体部品又は材料に関する。
【背景技術】
【0002】
有機材料は、近年、有機ベース薄膜トランジスタ及び有機電界効果トランジスタ(OFET)において活性層として有望であることが示された(Katz,Bao,and Gilant,Acc.Chem.Res.,2001,34,5,359を参照)。 このようなデバイスは、スマートカード、セキュリティタグ、及びフラットパネルディスプレイでのスイッチング素子において潜在的な用途を有する。有機材料は、もしこれが溶液から堆積できれば、迅速に、広い面積の製造ルートを可能にするので、シリコン類似物に比較して、実質的な経済優位性を有すると考えられる。
【0003】
デバイスの性能は、主として、半導体材料の電荷キャリア移動度及び電流オン/オフ比によって評価され、従って、理想的な半導体は、電荷キャリア移動度(>1×10−3cm−1−1)が高いことと共に、オフ状態の導電率は低くなければならない。さらに、半導体材料が酸化に比較的安定であること、即ち、酸化がデバイス性能を下げるので、イオン化ポテンシャルが高いことが重要である。
【0004】
従来の位置規則性、頭−尾(HT)ポリ(3−アルキルチオフェン)(P3AT)、特に、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)(P3HT)は、1×10−5から0.1cm−1−1の電荷キャリア移動度を示すので半導体材料としての使用が示唆された。P3ATは、電界効果トランジスタ(Sirringhaus et al,Nature,1999,401,685−688を参照)及び光起電性セル(Coakley,McGehee et al.,Chem.Mater.,2004,16,4533を参照)での活性正孔輸送層として良好な性能を示す半導体ポリマーである。電荷キャリア移動度、従って、これらの用途の性能は、ポリマー骨格のアルキル側鎖の位置再配置(又は位置規則性度)に強く依存していることが示された。以下に示すように、高い位置規則性度は、高度の頭−尾(HT)カップリング及び少量の頭−頭(HH)カップリング又は尾−尾(TT)カップリングを意味している。
【0005】
【化1】

このことにより、固体状態でポリマー充填が良好で、電荷キャリア移動度が高くなる。
【0006】
典型的には、性能を良くするために90%より大きい位置規則性度が必要である。位置規則性度を高めることに加えて、P3ATの配合物の加工性と印刷性を高めるためには、分子量は大きいことが望ましい。分子量がより大きいと、また、結果として、ポリマーのガラス転移温度が増加し、他方、ガラス転移温度が低いと高い温度で生じる望ましくない形態学的変化のために、操作の間にデバイス故障を引き起こす。
【0007】
高度に位置規則性HT−P3ATを製造するための従来技術の数種の方法が、例えば、R.D.McCulloughのレビュー、Adv.Mater.,1998,10(2),93−116及び本明細書に挙げられた参考文献に報告されている。
【0008】
例えば、位置規則性ポリマーは、以下に例示されているように、「Stilleの方法」(Stille,Iraqi,Barker et al.,J.Mater.Chem.,1998,8,25を参照)、
【0009】
【化2】

又は「鈴木の方法」(Suzuki,Guillerez,Bidan et al.,Synth.Met.,1998,93,123を参照)によって製造された。
【0010】
【化3】

しかしながら、この2つの方法は、有機金属中間体を得て、精製するための余分な工程を必要とする欠点がある。
【0011】
2,5−ジブロモ−3−アルキルチオフェンから出発し、≧90%の位置規則性度を有するHT−P3ATを製造する他の公知の方法としては、例えば、「Riekeの方法」を挙げることができ、この場合には、以下に例示及び開示(例えば、WO93/15086(A1))されているように、遊離体(ここでRはアルキル)を非常に反応性が高い亜鉛とTHF中で反応させる。
【0012】
【化4】

得られた有機亜鉛種を、次いで、ニッケル(II)触媒(Ni(dppe)Cl)と反応させ、ポリマーを与える。ニッケル(0)触媒であるNi(PPhを用いた反応では、位置規則性度の低い(65%)ポリマーを与えることが報告された。また、パラジウム(0)触媒(Pd(PPh)を用いた反応では、位置規則性度の低い(50%)ポリマーを与えることが報告された(Chen,J.Am.Chem.Soc.,1992,114,10087を参照)。
【0013】
また、McCullough et al.,Adv.Mater.,1999,11,(3),250−253、EP1028136A1及びUS6,166,172に記載されているように、位置規則性HT−P3ATの製造方法が知られており、これらの文献の開示全体は、参照することにより本出願に含まれる。このルートに従えば、以下に示すように、遊離体をTHF中でメチルマグネシウムブロミドと反応させる。
【0014】
【化5】

得られた有機マグネシウム試薬をニッケル(II)触媒と反応させ、位置規則性ポリマーを与える。この反応はさらに研究されている(McCullough et al.,Macromolecules,2005,38,8649)。この文献では、ニッケル(II)が「リビング」タイプの重合で開始剤として作用し、ポリマーの分子量がニッケル(II)触媒の濃度にかかわり、そして多分散度が約1.5、数平均分子量(Mn)が10,000の領域のポリマーが得られることが報告されている。
【0015】
Rieke及びMcCulloughの方法は、位置規則性の高いポリマーを得るためにニッケル(II)触媒を使うことを規定している。20から35,000の領域の分子量(Mn)が報告された。
【0016】
しかしながら、特に、FETにおける用途に対しては、従来報告されているより高い分子量を有するP3ATが望まれている。分子量がより高いポリマーは幾つかの利点を提供する。分子量が高くなると、ほとんどの特性はプラトーに達するまでポリマーの分子量に対応し、そこで、典型的にはほとんど依存性がなくなる。分子量による性能の変化を最小限にするため、従って、バッチからバッチの相違を最小にするために、この水平領域よりも充分に高い分子量を達成することが望ましい。水平領域よりも高い分子量のポリマーで起こる物理的絡み合いによって、機械特性が向上する。加えて、高分子量ポリマーの印刷配合物は、粘度が十分に高く、オフセット及びグラビアを含むグラフィック・アート印刷工程の分野で適用されうるが、他方、10センチポアズより小さい通常のP3HTによって達成される典型的な粘度では、上記の工程に対しては十分ではないと考えられる。
【0017】
しかしながら、100,000より大きいMnを有する位置規則性P3ATは、これまで従来技術として報告されなかった。
【0018】
従って、ポリマー、特に、高位置規則性度、高分子量、高純度、及び高収率のP3ATの経済的、効率的、及び環境面で有利である改良された製造方法に対する要求が依然としてあり、その方法は、特に工業的な大規模生産に適している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的は、こうした利点を有するが、しかし前記の従来技術の欠点がないポリマーの改良した製造方法を提供することにあった。本発明のその他の目的は、下記の詳細な記載から当業者には直ちに明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者らは、これらの目的が以下に記載した本発明の方法を提供することで達成されことを見いだした。そこでは、適切なモノマー、例えば、2,5−ジブロモ−3−アルキルチオフェンと適切なグリニヤール試薬、例えば、メチルマグネシウムブロミドを触媒量のニッケル(0)触媒、例えば、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)[Ni(COD)]、及び2座配位子、例えば、ジフェニルホスフィノプロパン(dppe)のようなホスフィン配位子の存在下で反応させる。驚くべきことに、Ni(II)触媒よりもむしろNi(0)触媒を使うと、分子量が非常に高く、位置規則性度が高いポリマーを与える非常に反応性の高い触媒系をもたらすことが見いだされた。Ni(0)及びNi(II)触媒を使った比較実験で、分子量及び位置規則性度がNi(0)触媒で改良されることが見いだされた。
【0021】
先行技術は、下に示すように、単座ホスフィン配位子の存在下、化学量論量のビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケルを添加することによる、2,5−ジブロモ−3−アルキルチオフェンの重合を報告している(Yamamoto,T.Macromolecules,1992,25,1214を参照)。
【0022】
【化6】

しかしながら、この方法は、ただ、位置規則性度(65%)が低く、中間の分子量(Mn=15,000)を有するポリマーを与えるだけである。これ以外に、化学量論量のNi(COD)を使うことは、この試薬の毒性の理由から極めて望ましくない。
【0023】
(本発明の要約)
本発明は、式I
【0024】
【化7】

(式中、Aは、S又はSe、Bは、H又はF、nは、>1の整数、及びRは、任意に1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよく、かつ本発明の方法に対して記載された条件下では反応しないカルビル又はヒドロカルビル基である。)
で表される位置規則性ポリマーの製造方法であって、
式II
【0025】
【化8】

(式中、A、B及びRは、式Iで定義されるものであり、及びXとXは、各々独立して適切な脱離基である)
で表されるモノマーと、
マグネシウム又は反応性亜鉛又は有機マグネシウムハロゲン化物とを反応させ、有機マグネシウム又は有機亜鉛中間体又は有機マグネシウムもしくは有機亜鉛中間体の混合物を形成し、及び
得られた中間体を触媒量のNi(0)触媒及び2座配位子と接触し、及び得られた混合物を任意に攪拌及び/又は加熱してポリマーを形成する
ことによって製造する方法に関する。
【0026】
本発明は、さらに、
a1) 式IIで表される化合物と有機マグネシウムハロゲン化物とを有機溶媒中で反応して有機マグネシウム中間体を生成するか、又は
a2) 式IIで表される化合物とマグネシウム金属とを有機溶媒中で反応して有機マグネシウム中間体を生成するか、又は、
a3) 式IIで表される化合物と反応性亜鉛とを有機溶媒中で反応して有機亜鉛中間体を生成するか、又は
a4) 有機マグネシウム中間体をステップa1)又はa2)に記載されたように生成し、そして、前記中間体と亜鉛二ハロゲン化物とを反応して有機亜鉛中間体を生成し、
及び
b) 触媒量の2座有機配位子及び触媒量の有機Ni(0)化合物又は有機Ni(0)錯体を前記中間体に添加し、及び得られた混合物を任意に攪拌及び/又は加熱してポリマーを形成し、
及び
c) 任意に前記混合物からポリマーを回収する、
ことにより、上記及び下記のような位置規則性ポリマーを製造する方法に関する。
【0027】
本発明は、さらに、上記及び下記のような方法によって得られうる、又は得られる、特に、分子量及び位置規則性度が高い新規のポリマー、特に、新規のポリ−3−置換チオフェン又はセレノフェンに関する。
【0028】
本発明は、さらに、上記及び下記のような1種以上のポリマーを含む半導体又は電荷輸送材料、部品、又はデバイスに関する。
【0029】
本発明は、さらに、光学的、電気光学的又は電子的部品又はデバイス、電荷輸送有機電界効果トランジスタ(OFET)、集積回路(IC)、薄膜トランジスタ(TFT)、フラットパネルディスプレイ、高周波識別(RFID)タグ、エレクトロルミネッセンス又はフォトルミネッセンスデバイス又は部品、有機発光ダイオード(OLED)、ディスプレイのバックライト、光起電又はセンサーデバイス、電荷注入層、ショトキーダイオード、平坦化層、帯電防止膜、導電性基板又はパターン、電池の電極材料、光導電体、電子写真用途、電子写真記録、有機記憶デバイス、整列層における、又はDNA配列を検出及び識別するための、本発明のポリマーの電荷輸送、半導体性、導電性、光導電体性又は発光性材料としての使用に関する。
【0030】
本発明は、さらに、本発明の半導体又は電荷輸送材料、部品又はデバイスを含む光学的、電気光学的又は電子デバイス、FET、集積回路(IC)、TFT、OLED又は整列層に関する。
【0031】
本発明は、さらに、本発明の半導体又は電荷輸送材料、部品又はデバイス又はFET、IC、TFT又はOLEDを含む、フラットパネルディスプレイのためのTFT又はTFT配列、高周波識別(RFID)タグ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ又はバックライトに関する。
【0032】
本発明は、さらに、本発明のFET又はRFIDタグを含むセキュリティマーキング又はデバイスに関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
(発明の詳細な説明)
用語「位置規則性」は、少なくとも85%の位置規則性度を有するポリマーを意味する。 「位置規則性度」は、ポリマー中のモノマー単位での頭−尾カップリング数を全カップリング数で割り、百分率で表したものを意味する。特に、90%以上の位置規則性度を有するポリマーが好ましく、95%以上が非常に好ましく、96から100%がさらに好ましく、98から100%が最も好ましい。
【0034】
用語「触媒量」は、本発明の製造方法で反応させるモノマーの当量より明確に小さい量を意味し、好ましくは、モノマーの当量に対して>0から0.5、非常に好ましくは、>0から0.1、最も好ましくは、>0から0.05である。
【0035】
特定されない限り、分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって決定されるポリスチレン標準に対する数平均分子量Mnとして示す。重合度(n)は、数平均重合度を意味し、n=Mn/Muで定められ、式中、Muは単一の繰返し単位の分子量である(通常、式I1でのX21及びX22のような繰返し単位の一部ではないポリマー末端基は考慮されない)。
【0036】
上記及び下記の用語「カルビル基」は、いかなる非炭素原子も持たない(例えば、−C≡C−)、又は、任意に、例えば、N、O、S、P、Si、Se、As、Te又はGeのような少なくとも1個の非炭素原子と結合した少なくとも1個の炭素原子を含む(例えば、カルボニルなど)、任意の一価又は多価有機基部分を意味する。用語「ハイドロカーボン基」及び「ヒドロカルビル基」は、さらに、1個以上のH原子、及び任意に、例えば、N、O、S、P、Si、Se、As、Te又はGeのような1個以上のヘテロ原子を含んでいるカルビル基を意味する。
【0037】
また、3個以上のC原子からなる連鎖を含むカルビル又はヒドロカルビル基は、スピロ及び/又は縮合環を含めて、直鎖、分枝鎖及び/又は環式であってもよい。
【0038】
好ましいカルビル及びヒドロカルビル基としては、各々、任意に置換されていてもよく、そして1から40個、好ましくは、1から25個、非常に好ましくは、1から18個のC原子を有するアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ及びアルコキシカルボニルオキシ、さらに、6から40個、好ましくは、6から25個のC原子を有する任意に置換されていてもよいアリール又はアリールオキシ、なおさらに、各々、任意に置換されていてもよく、そして6から40個、好ましくは、7から40個のC原子を有するアルキルアリールオキシ、アリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、アリールカルボニルオキシ及びアリールオキシカルボニルオキシが挙げられる。
【0039】
カルビル又はヒドロカルビル基は、飽和又は不飽和の非環式基、又は飽和又は不飽和の環式基であってもよい。不飽和非環式又は環式基が好ましく、特に、アリール、アルケニル及びアルキニル基(特に、エチニル)が好ましい。C−C40カルビル又はヒドロカルビル基が非環式の場合、この基は直鎖又は分枝鎖であってもよい。C−C40カルビル又はヒドロカルビル基としては、例えば:C−C40アルキル基、C−C40アルケニル基、C−C40アルキニル基、C−C40アリル基、C−C40アルキルジエニル基、C−C40ポリエニル基、C−C18アリール基、C−C40アルキルアリール基、C−C40アリールアルキル基、C−C40シクロアルキル基、C−C40シクロアルケニル基、などが挙げられる。前記の基の内で、C−C20アルキル基、C−C20アルケニル基、C−C20アルキニル基、C−C20アリル基、C−C20アルキルジエニル基、C−C12アリール基及びC−C20ポリエニル基がそれぞれ好ましい。また、例えば、シリル基、好ましくはトリアルキルシリル基で置換されているアルキニル基、好ましくはエチニルのような炭素原子を含む基とヘテロ原子を含む基の組合せが挙げられる。
【0040】
式IIにおけるX及びXは、互いに独立して、適切な脱離基であり、好ましくはハロゲン、非常に好ましくはBr、Cl又はIで、最も好ましくはBrである。好ましくは、XとXは同一である。
【0041】
式I及びIIでRは、好ましくは1から20個のC原子を有する直鎖、分枝鎖又は環式アルキルであって、これらは置換されていないか、又はF、Cl、Br又はIによって単置換又は多置換されており、かつ、1個以上の非隣接CH基は、O及び/又はS原子が互いに直接的に結合しないように、各々互いに独立して、−O−、−S−、−NR−、−SiR00−、−CY=CY−又は−C≡C−によって任意に置換されており、又Rは、好ましくは1から30個のC原子を有する任意に置換されたアリール又はヘテロアリールを表し、又は、P−Spを表し、
ここで
及びR00は、互いに独立して、H又は1から12個のC原子を有するアルキルであり、
及びYは、互いに独立して、H、F又はClであり、
Pは、任意に保護されている重合性又は反応性基であり、
Spは、スペーサー基又は単結合である。
【0042】
が、アルキル又はアルコキシラジカルの場合、すなわち、末端CH基は−O−によって置換されている場合、これは直鎖又は分枝鎖であってもよい。好ましくは直鎖であり、2から8個の炭素原子を有し、従って、好ましくは、例えば、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペントキシ、ヘキシルオキシ、ヘプトキシ、又はオクトキシ、さらに、メチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ノノキシ、デコキシ、ウンデコキシ、ドデコキシ、トリデコキシ又はテトラデコキシである。n−ヘキシル及びn−ドデシルが特に好ましい。
【0043】
が、アルキル基で、1個以上のCH基が−CH=CH−によって置換されている場合、これは直鎖又は分枝鎖であってもよい。これは2から12個のC原子を有する直鎖が好ましく、従って、好ましくはビニル、プロパ−1−、又はプロパ−2−エニル、ブタ−1−、2−又はブタ−3−エニル、ペンタ−1−、2−、3−又はペンタ−4−エニル、ヘキサ−1−、2−、3−、4−又はヘキサ−5−エニル、ヘプタ−1−、2−、3−、4−、5−又はヘプタ−6−エニル、オクタ−1−、2−、3−、4−、5−、6−又はオクタ−7−エニル、ノナ−1−、2−、3−、4−、5−、6−、7−又はノナ−8−エニル、デカ−1−、2−、3−、4−、5−、6−、7−、8−又はデカ−9−エニル、ウンデカ−1−、2−、3−、4−、5−、6−、7−、8−、9−又はウンデカ−10−エニル、ドデカ−1−、2−、3−、4−、5−、6−、7−、8−、9−、−10又はドデカ−11−エニルである。アルケニル基は、E−又はZ−構造、又はこれらの両方の構造を有するC=C結合を含むものであってもよい。
【0044】
が、オキサアルキルの場合、すなわち、1個のCH基が−O−で置換されている場合、これは好ましくは、例えば、直鎖2−オキサプロピル(=メトキシメチル)、2−(=エトキシメチル)又は3−オキサブチル(=2−メトキシエチル)、2−、3−、又は4−オキサペンチル、2−、3−、4−又は5−オキサヘキシル、2−、3−、4−、5−、又は6−オキサヘプチル、2−、3−、4−、5−、6−又は7−オキサオクチル、2−、3−、4−、5−、6−、7−又は8−オキサノニル、又は2−、3−、4−、5−、6−、7−、8−又は9−オキサデシルである。
【0045】
が、チオアルキルの場合、すなわち、1個のCH基が−S−で置換さられている場合、これは好ましくは、直鎖チオメチル(−SCH)、1−チオエチル(−SCHCH)、1−チオプロピル(−SCHCHCH)、1−(チオブチル)、1−(チオペンチル)、1−(チオヘキシル)、1−(チオヘプチル)、1−(チオオクチル)、1−(チオノニル)、1−(チオデシル)、1−(チオウンデシル)又は1−(チオドデシル)であり、ここで、好ましくはsp混成ビニル炭素原子に隣接するCH基が置換されている。
【0046】
が、フルオロアルキルの場合、これは好ましくは、iが1から15の整数である直鎖パーフルオロアルキル(C2i+1)、特に、CF、C、C、C、C11、C13、C15又はC17であり、より好ましくはC13である。
【0047】
−CY=CY−は、好ましくは、―CH=CH−、−CF=CF−又は−CH=C(CN)−である。
【0048】
アリール及びヘテロアリールは、好ましくは、最高25個のC原子を有し、また、縮合環を含んでいてもよく、1個以上の基Lで任意に置換されていてもよい、単環式、2環式又は3環式芳香族又はヘテロ芳香族基を意味し、ここで、Lはハロゲン又は1から12個のC原子を有し、1個以上のH原子がF又はClで置換されていてもよいアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル又はアルコキシカルボニル基である。
【0049】
特に好ましいアリール及びヘテロアリール基は、1個以上のCH基がさらにNで置換されていてもよいフェニル、ナフタレン、チオフェン、チエノチオフェン、ジチエノチオフェン、アルキルフルオレン及びオキサゾールであり、これらのすべては置換されていないか、上記で定義されたLによる単置換体又は多置換体であってよい。
【0050】
ポリマーは、また、3−位置が重合性又は反応性基で置換されていてもよく、この基はポリマーを形成する工程の間、任意に保護されている。このタイプの特に好ましいポリマーは、RがP−Spを意味する式Iで表せるものである。これらのポリマーは、これらがP基を介して架橋され(例えば、半導体部品用にポリマーを薄膜に加工する間に又は後にイン・サイチュー重合することで)、高い電荷輸送性及び高い熱的、機械的及び化学的安定性を有する架橋ポリマー膜を与えることができるので、特に、半導体又は電荷輸送材料として有用である。
【0051】
好ましくは、重合性又は反応性のP基は、
CH=CW−COO−、 CH=CW−CO−、
【0052】
【化9】

CH=CW−(O)k1−、CH−CH=CH−O−、(CH=CH)CH−OCO−、(CH=CH−CHCH−OCO−、(CH=CH)CH−O−、(CH=CH−CHN−、(CH=CH−CHN−CO−、HO−CW−、HS−CW−、HWN−、HO−CW−NH−、CH=CW−CO−NH−、CH=CH−(COO)k1−Phe−(O)k2−、 CH=CH−(CO)k1−Phe−(O)k2−、Phe−CH=CH−、HOOC−、OCN−、及びWSi−から選択され、ここで、Wは、H、Cl、CN、CF、フェニル又は1から5個のC原子を有するアルキル、特に、H、Cl又はCHであり、W及びWは、互いに独立して、H又は1から5個のC原子を有するアルキル、特に、H、メチル、エチル又はn−プロピルであり、W、W及びWは、互いに独立して、Cl、1から5個のC原子を有するオキサアルキル又はオキサカルボニルアルキルであり、W及びWは、互いに独立して、H、Cl又は1から5個のC原子を有するアルキルであり、Pheは、1個以上の上記で定義されている基Lで任意に置換されていてもよい1,4−フェニレンであり、そしてk1及びk2は、互いに独立して、0又は1である。
【0053】
あるいは、Pは、本発明の方法に記載された条件下で反応性がないようにこれらの基が保護された誘導体である。適切な保護基は、当業者には知られており、文献に記載されており(例えば、Greene and Greene,“Protective Groups in Organic Synthesis”,John Wiley and Sons,New York(1981))、例えば、アセタール又はケタールのようなものである。
【0054】
特に好ましい基Pは、CH=CH−COO−、CH=C(CH)−COO−、CH=CH−、CH=CH−O−、(CH=CH)CH−OCO−、(CH=CH)CH−O−、
【0055】
【化10】

又はこれらの保護された誘導体である。
【0056】
基Pの重合は、当業者に知られ、文献(例えば、D.J.Broer;G.Challa;G.N.Mol,Macromol.Chem,1991,192,59)に記載された方法に従って実施することができる。
【0057】
適切なスペーサー基Spは当業者に知られている。スペーサー基Spは、好ましくは、式Sp’−X’で表され、P−Sp−はP−Sp’−X’−であり、ここで、
Sp’は、置換されていないか、F、Cl、Br、I又はCNによって単置換又は多置換されており、30個までのC原子を有するアルキレンであり、また、1個以上の非隣接CH基は互いに独立して、O及び/S原子が互いに直接的に結合しないように、−O−、−S−、−NH−、−NR−、−SiR00−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCO−O−、−S−CO−、−CO−S−、―CH=CH−又は−C≡C−で置換されることが可能であり、
X’は、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−O−COO−、−CO−NR−、−NR−CO−、−NR−CO−NR00−、−OCH−、−CHO−、−SCH−、−CHS−、−CFO−、−OCF−、−CFS−、−SCF−、―CFCH−、−CHCF−、−CFCF−、―CH=N−、―N=CH−、−N=N−、−CH=CR−、−CY=CY−、−C≡C−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−又は単結合であり、
及びR00は、互いに独立して、H又は1から12個のC原子を有するアルキルであり、及び
及びYは、互いに独立して、H、F、Cl又はCNである。
【0058】
X’は、好ましくは、−O−、−S−、−OCH−、−CHO−、−SCH−、−CHS−、−CFO−、−OCF−、−CFS−、−SCF−、−CHCH−、 −CFCH−、−CHCF−、−CFCF−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−CH=CR−、−CY=CY−、−C≡C−又は単結合、特に好ましくは、−O−、−S−、−C≡C−、−CY=CY−、又は単結合である。他の好ましい態様において、X’は、例えば、−C≡C−又は−CY=CY−のような共役系を形成できる基、又は単結合である。
【0059】
典型的な基Sp’は、例えば、−(CH−、−(CHCHO)−CHCH−、−CHCH−S−CHCH−又は−CHCH−NH−CHCH−又は−(SiR00−O)−であり、pは2から12の整数、qは1から3の整数、並びにR及びR00は、上記で示されたものと同じ意味を有する。
【0060】
好ましい基Sp’は、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、ウンデシレン、ドデシレン、オクタデシレン、エチレンオキシエチレン、メチレンオキシブチレン、エチレン−チオエチレン、エチレン−N−メチル−イミノエチレン、1−メチルアルキレン、エテニレン、プロペニレン及びブテニレンである。
【0061】
より好ましいRは、任意に1個以上のフッ素原子で置換されていてもよいC−C20アルキル、C−C20アルケニル、C−C20アルキニル、C−C20アルコキシ、C−C20チオアルキル、C−C20シリル、C−C20アミノ又はC−C20フルオロアルキルから選択され、特に、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、チオアルキル又はフルオロアルキルから選択され、これらのすべては、直鎖で、かつ、1から12個、好ましくは、5から12個のC原子を有し、最も好ましくは、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル又はドデシルである。
【0062】
本発明の方法の第1ステップ(ステップa)では、式IIの3−置換チオフェン又はセレノフェン(以下、「遊離体」と呼ばれる)を有機マグネシウムハロゲン化物と、又はマグネシウムと、又は反応性亜鉛と反応させる。
【0063】
第1の好ましい態様では、式IIのモノマーと有機マグネシウムハロゲン化物とを反応させる(ステップa1)。前記有機マグネシウムハロゲン化物は、好ましくは、式III:
−Mg−X III
(式中、
は、置換されていないか、F、Cl、Br又はIによって単置換又は多置換されている1から20個のC原子を有する直鎖、分枝鎖、又は環状アルキルであって、かつ、ここで、1個以上の非隣接CH基は、O及び/又はS原子が互いに直接的に結合しないように、各々互いに独立して、−O−、−S−、−NR−、−SiR00−、−CY=CY−又は−C≡C−によって任意に置換されていてもよく、又は
1個以上の基Lによって任意に置換されていてもよいアリール又はヘテロアリールであり、
Lは、F、Cl、Br、I又は1から20個のC原子を有するアルキル、アルコキシ又はチオアルキルであり、ここで、1個以上のH原子は、F又はClによって置換されていてもよく、及び
、Y、R、R00及びXは、式IIで定義されたとおりである)、
から選択される。
【0064】
が、アルキル基の場合、これは直鎖又は分枝鎖であってよい。好ましくは、直鎖で、2、3、4、5、6、7又は8個の炭素原子を有し、従って、好ましくは、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、又はペンタデシルである。
【0065】
が、1個以上のCH基が−CH=CH−によって置換されているアルキル基の場合、これは直鎖又は分枝鎖であってよい。好ましくは、2から10個のC原子を有する直鎖であり、従って、好ましくは、ビニル、プロパ−1−、又はプロパ−2−エニル、ブタ−1−、2−又はブタ−3−エニル、ペンタ−1−、2−、3−又はペンタ−4−エニル、ヘキサ−1−、2−、3−、4−又はヘキサ−5−エニル、ヘプタ−1−、2−、3−、4−、5−又はヘプタ−6−エニル、オクタ−1−、2−、3−、4−、5−、6−又はオクタ−7−エニル、ノナ−1−、2−、3−、4−、5−、6−、7−又はノナ−8−エニル、デカ−1−、2−、3−、4−、5−、6−、7−、8−又はデカ−9−エニルである。
【0066】
は、また、例えば、2−ブチル(=1−メチルプロピル)、2−メチルブチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、2−エチルヘキシル、2−プロピルペンチル、4−メチルヘキシル、2−ヘキシル、2−オクチル、2−ノニル、2−デシル、2−ドデシル、1,1,1−トリフルオロ−2−オクチル、1,1,1−トリフルオロ−2−ヘキシルのようなカイラル基又は例えば、イソプロピル、イソブチル(=メチルプロピル)又はイソペンチル(=3−メチルブチル)のようなアキラル分枝鎖基であってもよい。
【0067】
が、アリール又はヘテロアリールの場合、好ましくは、フェニル、ベンジル、フッ素化フェニル、ピリジン、ピリミジン、ビフェニル、ナフタレン、チオフェン、セレノフェン、フッ素化チオフェン、ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェン、チアゾール及びオキサゾールから選択され、これらのすべては、置換されていないか、上記で定義されているLにより単置換又は多置換されている。
【0068】
非常に好ましくは、Rは、1から12個のC原子を有する直鎖又は分枝鎖アルキル又はアルケニルであり、フェニル又はベンジル、特に、ビニル、ブチル、プロピル又はイソプロピルである。
【0069】
好ましくは、遊離体を溶媒に溶解し、この溶液に有機マグネシウムハロゲン化物を、非常に好ましくは、不活性ガス雰囲気で、好ましくは、0から25℃の間の温度で添加する。あるいは、有機マグネシウムハロゲン化物を溶解し、この溶液に遊離体を添加する。溶液に添加する化合物は、また、それ自体が溶媒に溶解されてよく、2種類の溶液を次いで混合する。有機マグネシウムハロゲン化物は、好ましくは、遊離体に対して0.9から1.05の当量比で、最も好ましくは、0.95から0.98の当量比で添加する。
【0070】
適切で好ましい溶媒を、環状又は直鎖有機エーテルから選択する。非限定的な好ましい溶媒としては、THF、2−メチルテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、テトラヒドロピラン及びジオキサンが挙げられる。また、2種以上の溶媒の混合物を使用することが可能である。
【0071】
反応物の添加は、酸素及び水の非存在下、例えば、窒素又はアルゴンのような不活性ガス雰囲気で実施することが好ましい。温度は、0℃から溶媒の還流まで任意であってもよい。好ましくは、反応物を各々0℃から室温で添加する。
【0072】
遊離体と有機マグネシウムハロゲン化物が反応して、グリニヤール中間体を生成する。反応条件(溶媒、温度、雰囲気)は、上に述べたとおりである。典型的には、反応混合物を所定の時間、例えば、5分から1時間、0から25℃の間の温度で攪拌し、次いで、所定の時間、例えば、10分から2時間還流する。他の反応時間又は条件については、当業者は、一般的な知識に基づいて選択することができる。
【0073】
式II及びIIIの化合物は、反応してグリニヤール中間体を生成し、これは通常、式IVa及びIVbの位置化学異性体混合物であり、典型的には、少量の式IVcの二重グリニヤール生成物も含む。
【0074】
【化11】

【0075】
式中、A、B、X、X及びRは、式IIで定義されたものと同じ意味を有する。
【0076】
中間体の比率は、例えば、式II及びIIIの遊離体の比、溶媒、温度、及び反応時間などの反応条件に依存する。前記の反応条件では、式IVa及び式IVbの中間体の比率は、通常、90%以上、より典型的には95%以上である。式IVaと式IVbの比は、典型的には3:1から5:1の間である。
【0077】
第2の好ましい態様は、WO2005/014691A2に記載された方法に類似して、第1ステップ(ステップa2)で有機マグネシウム中間体、又は式IVa−cの中間体混合物を、有機マグネシウムハロゲン化物の代わりに純粋のマグネシウムを使うことで生成する方法に関する。例えば、2,5−ジブロモ−3−アルキルチオフェンをマグネシウム金属と有機溶媒中、WO2005/014691A2に記載された条件下で反応してチオフェン有機マグネシウム中間体、又は中間体混合物を生成し、これらを上記及び下記のように第2ステップでNi(0)触媒の存在下、重合する。
【0078】
第3の好ましい態様は、第1ステップ(ステップa3)で、有機マグネシウム中間体の代わりに、例えば、WO93/15086A1に記載されたプロセスと類似して、有機亜鉛中間体、又は有機亜鉛中間体混合物を、式IIの遊離体と反応性亜鉛、例えば、「Rieke亜鉛」とを反応させて生成する方法に関する。
【0079】
第4の好ましい態様は、第1ステップ(ステップa4)で、有機マグネシウム中間体又は有機マグネシウム中間体混合物をステップa1)又はステップa2)で記載したように製造し、次いで、有機亜鉛中間体又は有機亜鉛中間体混合物を、有機マグネシウム中間体と、例えば、ZnClのような亜鉛二ハロゲン化物との金属交換反応によって製造する方法に関する。これは当業者によって知られた方法で達成することができ、文献に記載されている(例えば、E.Nakamura in Organometallics in Synthesis.A Manual,M.Schlosser(Ed.),Chichester,Wiley,2002を参照)。
【0080】
本発明の方法の第2ステップ(ステップb)では、有機マグネシウム中間体又は有機亜鉛中間体、又は中間体混合物を、触媒量のNi(0)化合物及び2座配位子と接触させる。これに関して、「接触させる」とは、例えば、Ni(0)触媒及び配位子を、上記の条件下で中間体を含む溶液に添加することを意味する。あるいは、触媒及び配位子を溶媒に溶解し、中間体又はこれらの溶液を添加し、又は触媒及び配位子の溶液を中間体又はこれらの溶液に添加する。
【0081】
好ましくは、上記条件下、非常に好ましくは、0℃から還流温度で、最も好ましくは、還流温度で、触媒及び配位子を直接的に、上記第1ステップの中間体を含んだ反応混合物に添加する。
【0082】
触媒の添加を、好ましくは、2ステップで実施する:第1に、2座配位子を添加し、その後、Ni(0)触媒を添加する。あるいは、配位子及びNi(0)触媒を乾燥溶媒、例えば、上記溶媒に予備溶解し、次いで、溶液として反応混合物に添加する。
【0083】
有機2座配位子は、好ましくは、ホスフィン配位子である。基本的には、当業者に公知の任意の2座ホスフィン配位子が使用できる。適切な好ましいホスフィン配位子の非限定的な例としては、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(dppe)、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン(dppp)、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン(dppb)、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(dppf)、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(BINAP)、及び1,2−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)エタンが挙げられる。
【0084】
ニッケル触媒として、基本的には、当業者に公知の任意のニッケル(0)触媒が使用できる。適切な好ましい、非限定的な触媒の例としては、有機Ni(0)化合物又はNi(COD)又はニッケル(0)テトラカルボニル[Ni(CO)]のような錯体が挙げられる。
【0085】
Ni(0)触媒に対する配位子の比は、好ましくは、10:1から0.1:1、非常に好ましくは、5:1から1:1、最も好ましくは、2.2:1である。
【0086】
好ましくは、触媒を、Ni(0)の量がチオフェン遊離体の0.1から10%、非常に好ましくは、0.5から1モル%添加する。
【0087】
それから触媒系は重合反応を開始する。反応混合物を攪拌又は他の方法でかき混ぜ、不活性ガス雰囲気を適用し、典型的には、温度を0℃から還流温度に保ち、好ましくは、還流し、反応時間を数分から数時間又は数日、典型的には、20から40時間にすることを含めて、好ましくは、反応を上記の条件で行なう。
【0088】
本発明の方法は、従来技術として開示された方法で使われたNi(II)触媒の代わりに、Ni(0)触媒を添加することによって特徴付けられる。Ni(II)の代わりにNi(0)を使うことは、反応機構での予備還元ステップを回避する。従って、従来技術の方法では、Ni(II)はイン・サイチューでNi(0)触媒に還元されてはじめて活性触媒になり、この還元は、2個のチオフェン有機マグネシウム中間体の酸化カップリングによって起こり、以下の反応スキーム1に例示されているように好ましくない尾−尾(TT)異性体を生じる。
【0089】
反応スキーム1 (Ni(II)触媒のイン・サイチュー還元):
【0090】
【化12】

対照的に、本発明の方法では、Ni(0)触媒を使い、それで活性触媒を生成するための予備還元ステップは必要がなく、そして好ましくないTTカップリングを回避する。
【0091】
反応は、次いで、Ni(0)触媒のチオフェン(セレノフェン)ブロミド結合への酸化付加によって進行する。その後のチオフェン(セレノフェン)有機マグネシウム試薬による臭素の求核的置換、及びNi(0)の還元脱離は、チオフェン−チオフェン(セレノフェン−セレノフェン)結合を生成し、及び活性Ni(0)触媒を再生する。
【0092】
次のステップ(ステップc)では、ポリマーを典型的には、反応混合物から単離し、当業者に公知の標準的な方法で精製する。
【0093】
本発明の方法では、式IVaの中間体、又は対応する有機亜鉛中間体の割合が高い場合、式Ia、
【0094】
【化13】

(式中、A、B、R及びnは、上記と同じ意味を有する)
で例示されるように、ポリマーのHTカップリング量は多くなる。
【0095】
本発明のポリマーの位置規則性度は、好ましくは、少なくとも85%、特に、90%以上、非常に好ましくは、95%以上、最も好ましくは、96から100%である。
【0096】
本発明のポリマーは、好ましくは、2から5,000、特に、10から5,000、非常に好ましくは、50から1,500、最も好ましくは、100から1,000の重合度(繰返し単位数n)を有する。さらに、好ましいポリマーは、n≧150である。さらに好ましいポリマーは、n≧200である。さらに好ましいポリマーは、n≧400である。さらに好ましいポリマーは、n≦5,000である。さらに好ましいポリマーは、n≦3,000である。さらに好ましいポリマーは、n≦1,500である。
【0097】
本発明のポリマーの数平均分子量Mnは、好ましくは、5,000から300,000、特に、25,000より高く、非常に好ましくは、50,000より高く、最も好ましくは、75,000より高い。さらに好ましいポリマーの分子量Mnは、50,000から300,000、非常に好ましくは、100,000から250,000である。Mnは、数平均分子量として定義され、典型的には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーでポリスチレン標準に換算して決定される。
【0098】
本発明の他の好ましい態様では、ポリマー末端基は、重合の間に、又は重合後に化学的に修飾(「末端キヤップされた」)される。末端キヤッピングは、重合反応混合物からポリマーを回収する前または後、ポリマーの処理の前または後、又は精製の前または後に実施することができ、材料費、時間、及び反応条件に関してどれがより適切で、より効果的であるかに依存する。例えば、末端キヤッピングに高価な共反応物が使われる場合、ポリマーの精製後に末端キヤッピングを実施することがより経済的であるかもしれない。経済的に共反応物よりも精製の労力がもっと重要である場合、精製よりも前、又は、さらに重合反応混合物からポリマーを回収する前に末端キヤッピングを実施することが好ましいかもしれない。
【0099】
適切な末端キヤッピング方法は、当業者には公知であり、例えば、US6,602,974、WO2005/014691、又はEP05002918.0に記載されている。さらに、末端キヤッピングを下記のように実施することができる。
【0100】
本発明の方法の結果として、重合ステップの終了時に末端基(X及びX)は、ハロゲン又はグリニヤール基のいずれかである。また、少量の末端基Rが、チオフェン中間体の製造からくる副生物Rとの反応の結果として存在しうる。末端キヤッピングのために、典型的には、脂肪族グリニヤール試薬RMgX又はジアルキルグリニヤール試薬MgR(ここで、Xはハロゲン、及びRは脂肪族基である)、又は活性マグネシウムを添加して残存ハロゲン末端基をグリニヤール基に転化する。その後、例えば、アルキル末端基に転化するために、グリニヤールに結合するω−ハロアルカンを過剰量添加する。あるいは、水素末端基にするために、例えば、アルコールのような非溶媒で重合反応を停止する。
【0101】
反応性官能末端基、例えば、ヒドロキシル又はアミン基又はこれらの保護された基を提供するために、ハロゲン末端基を、例えば、グリニヤール試薬R’MgX(ここで、R’は反応性官能基又は保護された反応性官能基である)と反応する。
【0102】
グリニヤール試薬の代わりに有機リチウム試薬を用い、その後、ω−ハロアルカンを添加して末端キヤッピングを実施することも可能である。
【0103】
また、例えば、US6602974に記載されているビルスマイヤー(Vilsmeier)反応のような方法によって、H末端基を反応性官能基で置換してアルデヒド基を導入し、その後、金属水素化物でヒドロキシル基へ還元することが可能である。
【0104】
末端キヤッピングの前にポリマーが完全に処理されている場合、グリニヤールカップリングのためにポリマーを、例えば、ジエチルエーテル又はTHFのような良溶媒に溶解することが好ましい。次いで、溶液を、例えば、上記の有機グリニヤール試薬であるRMgX又はMgR又はR’MgX、又は亜鉛試薬、RZnX、R’ZnX又はZnR(ここで、R及びR’は上記で定義されているものと同じ)で処理する。次いで、適切なニッケル又はパラジウム触媒をハロアルカンとともに添加する。
【0105】
非常に好ましいものは、末端基が重合の間又はその後にH又はアルキル基によって置換された末端キヤップされたポリマーである(以下、「H又はアルキル基で末端キヤップされたポリマー」と呼ばれる)。
【0106】
好ましくは、末端キヤッピングをポリマーの精製前に実施する。さらに好ましくは、末端キヤッピングを上記及び下記の方法におけるステップd)の後に実施する。本発明の別の好ましい態様では、末端キヤップ剤を重合中に添加して末端基を除去し、ポリマーの分子量を制御する可能性がある。
【0107】
好ましくは、本発明に従って、ポリマー試料中の実質的にすべての分子を末端キヤップし、しかし、少なくとも80%、好ましくは、少なくとも90%、最も好ましくは、少なくとも98%を末端キヤップする。
【0108】
本発明のポリマー末端基の化学変性(末端キヤッピング)によって、異なった末端基を有する新規なポリマーを製造することが可能である。これらのポリマーは、好ましくは、式I1、
【0109】
【化14】

(式中、A、B、n及びRは、式I及びIIで定義されたものと同じ意味を有し、X11及びX22は、互いに独立して、H、ハロゲン、スズ酸塩、ボロン酸塩、又は1個以上のヘテロ原子を含んでもよい脂肪族、脂環式又は芳香族基である)
から選択される。
【0110】
特に好ましくは、X11及びX22は、H又は1から20個、好ましくは、1から12個、非常に好ましくは、1から6個のC原子を有する直鎖又は分枝鎖アルキル、最も好ましくは、イソプロピル又はtert−ブチルのような直鎖アルキル又は分枝鎖アルキルから選択される。芳香族基X11及びX22は、かさ高くなりがちで、あまり好ましくない。
【0111】
上記のように、末端基X11及びX22を、好ましくは、前記式I1のポリマーとグリニヤール試薬MgRX、MgR又はMgR’X(式中、R及びR’は、式I2で定義されるX11又はX22である)とを反応させることによって導入する。
【0112】
適切な官能末端基、X11及び/又はX22を導入することで、本発明のポリマーからブロックコポリマーを製造することが可能である。例えば、式I2のポリマーにおける末端基X11及びX22の一方又は両方が、反応性基又は、例えば、任意に保護されたヒドロキシ又はアミン基のように保護された反応性基の場合、これらと(保護基を除去した後で)式I2の他のポリマーの末端基(例えば、異なった基、R及び/又はX11及び/又はX22を有する)とを、又は異なった構造のポリマーとを反応させることができる。X11及びX22の内の1つが反応性基の場合、ジブロックコポリマーを形成することができる。X11及びX22の両方が反応性基の場合、トリブロックコポリマーを形成できる。
【0113】
あるいは、反応性又は保護された反応性基X11及び/又はX22を導入し、触媒と1種類以上のモノマーを添加し、そして基X11及び/又はX22のサイトから新たな重合反応を始めることによってブロックコポリマーを形成することができる。
【0114】
適切な末端官能基及びこの基の導入方法は、上記の開示及び従来技術からもってくることができる。また、ブロックコポリマーの詳細な製造方法は、例えば、US6602974から理解できる。
【0115】
本発明のポリマーは、光学的、電子的、及び半導体材料として、特に、電界効果トランジスタ(FET)での電荷輸送材料として、例えば、集積回路、IDタグ又はFTF用途として有用である。あるいは、ポリマーは、エレクトロルミネッセンスディスプレイ用途の有機発光ダイオード(OLED)において、又は例えば、液晶ディスプレイのバックライトとして、光起電性又はセンサー材料として、電子写真記録のために、及び他の半導体用途のために使われうる。
【0116】
本発明のポリマーは、特に、有利な溶解度特性を示し、これらの化合物の溶液を使った製造プロセスが可能である。従って、層と被覆を含む薄膜は、例えば、スピン被覆のような低い製造経費で形成されうる。適切な溶媒又は溶媒混合物としては、アルカン及び/又は芳香族、特に、フッ素化又は塩素化誘導体が挙げられる。
【0117】
1種以上のポリマー及び1種以上の溶媒を含む溶液又は配合物は、本発明の別の態様である。配合物は、さらに、例えば、触媒、増感剤、安定剤、禁止剤、連鎖移動剤、共反応性モノマー、界面活性剤、滑沢剤、湿潤剤、分散剤、疎水性剤、接着剤、流動性向上剤、消泡剤、脱気剤、希釈剤、反応性希釈剤、補助剤、着色剤、染料、顔料又はナノ粒子から選択される1種以上の他の適切な成分又は添加物を含む。
【0118】
本発明のポリマーは、特に、FETでの電荷輸送材料として有用である。このようなFETは、有機半導体材料がゲート誘電体とドレイン及びソース電極の間に膜として配置されており、一般的には、例えば、US5,892,244、WO00/79617、US5,998,804、及び発明の背景及び従来技術の章で引用されている文献、及び以下に列挙の文献から知られている。本発明の化合物の溶解特性、従って広い表面加工性を利用することで製造経費を低くできる利点から、これらのFETの好ましい用途は、例えば、集積回路、TFTディスプレイ及びセキュリティー用途である。
【0119】
セキュリティー用途では、電界効果トランジスタ及びトランジスタ又はダイオードのような半導体材料を有する他のデバイスを、IDタグ又はセキュリティーマーキングのために使って、紙幣のような有価証券、クレジットカード又はIDカード、国のID文書、免許証又は切手、チケット、株券、小切手など金銭価値を有するあらゆる製品を証明し、これらの偽造を防止することができる。
【0120】
あるいは、本発明のポリマーを有機発光素子又はダイオード(OLED)、例えば、ディスプレイ用途において、又は例えば、液晶ディスプレイのバックライトの用途に用いることができる。一般的なOLEDは、多層構造で実現される。発光層は一般的には1つ以上の電子輸送及び/又は正孔輸送層の間に挟まれる。電圧を印加することによって、電荷キヤリアーとしての電子及び正孔は発光層に向かって動き、これらの再結合が、発光層に含まれるルモフォー(lumophor)単位を励起し、従って発光を生じる。本発明の化合物、材料、及び膜を、これらの電気的及び/又は光学的特性に対応して、1つ以上の電荷輸送層及び/又は発光層に使用することができる。さらに、これらの発光層での使用は、本発明のポリマーが、これ自体、エレクトロルミネッセンス特性を示し、あるいは電子発光基又は化合物を含んでいる場合に特に有利である。OLEDで使うための適切な単量体、オリゴマー、及びポリマー化合物又は材料の加工、これに加えて、選択、キャラクタリゼーションは、当業者には公知である(例えば、Meerholz,Synthetic Materials,111−112,2000,31−34,Alcala,J.Appl.Phys.,88,2000,7124−7128及びこれらの文献に引用された文献を参照)。
【0121】
他の用途では、特に、フォトルミネッセンス特性を示す本発明のポリマーを光源材料、例えば、EP0889350A1又はC.Weder et al.,Science,279,1998,835−837に記載されているようなディスプレイ素子の材料として使用することができる。
【0122】
本発明のさらなる態様は、本発明のポリマーの酸化及び還元形態に関する。電子の損失又は獲得のいずれによっても、導電率が高く高度に非局在化イオン形態が結果的に形成される。これは一般的なドーパントへの暴露で起こりうる。適切なドーパント及びドーピングの方法は、当業者に公知である(例えば、EP0528662、US5,198,153又はWO96/21659)。
【0123】
ドーピング方法は、典型的には、半導体材料のレドックス反応での酸化剤又は還元剤による処理を意味し、適用ドーパントから誘導された対応する対イオンを持つ非局在化イオン中心を材料中に形成する。適切なドーピング方法としては、例えば、大気圧下、又は減圧下でのドーピング蒸気への暴露、ドーパント含有溶液中での電気化学的なドーピング、熱的に拡散させるためにドーパントと半導体材料との接触、及び半導体材料へのドーパントのイオン注入が挙げられる。
【0124】
電子がキヤリアーとして利用される場合、適切なドーパントは、例えば、ハロゲン(例えば、I、Cl、Br、ICl、ICl、IBr及びIF)、ルイス酸(例えば、PF、AsF、SbF、BF、BCl、SbCl、BBr及びSO)、プロトン酸、有機酸、又はアミノ酸(例えば、HF、HCl、HNO、HSO、HClO、FSOH及びClSOH)、遷移金属化合物(例えば、FeCl、FeOCl、Fe(ClO、Fe(4−CHSO、TiCl、ZrCl、HfCl、NbF、NbCl、TaCl、MoF、MoCl、WF、WCl、UF及びLnCl(ここでLnはランタノイド系元素である)、アニオン(例えば、Cl、Br、I、I、HSO、SO2−、NO、ClO、BF、PF、AsF、SbF、FeCl、Fe(CN)3−、及び種々のスルホン酸のアニオン、例えば、アリールSO)が挙げられる。正孔がキヤリアーとして利用される場合、ドーパントの例としては、カチオン(例えば、H、Li、Na、K、Rb及びCs)、アルカリ金属(例えば、Li、Na、K、Rb、及びCs)、アルカリ土類金属(例えば、Ca、Sr、及びBa)、O、XeOF、(NO)(SbF)、(NO)(SbCl)、(NO)(BF)、AgClO、HIrCl、La(NO・6HO、FSOOOSOF、Eu、アセチルコリン、R(Rはアルキル基である)、R(Rはアルキル基である)、RAs(Rはアルキル基である)、及びR(Rはアルキル基である)が挙げられる。
【0125】
本発明のポリマーの導電性形態は、用途で有機「金属」として使うことができ、非限定的な例としては、有機発光ダイオード用途における電荷注入層及びITO平坦化層、フラットパネルディスプレイ及びタッチスクリーン用の膜、帯電防止膜、印刷導電基板、例えば、印刷回路板及びコンデンサーのような電子的用途におけるパターン又は経路が挙げられる。
【実施例】
【0126】
以下の例は、限定することなく本発明を説明する。
【0127】
例1: 位置規則性ポリ(3−ヘキシル)チオフェン
ブチルマグネシウムクロリド(1.8MのTHF溶液10.3ml、18.7mmol)を、18−20℃、N下で 2,5−ジブロモ−3−ヘキシルチオフェン(6.33g、19.3mmol)の無水THF(60ml)溶液に添加する。この混合物を18−20℃で25分間攪拌し、次いで1時間還流して加熱する。還流を止め、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(0.137g、0.33mmol)、次いでビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)(39mg、0.14mmol)を添加し、得られた混合物を30時間、還流する。反応混合物を18−20℃に冷却し、次いでメタノールに注いだ。析出物をろ過し、アセトンで洗浄してから加熱クロロベンゼンに溶解する。この溶液をメタノールに滴下して、紫色の析出物を形成する。これをさらにヘプタンで30時間、洗浄(ソックスレー)する。生成物を真空オーブンで乾燥し、紫色の固体としてポリマーを得る(2.51g、77%)。
【0128】
GPC(CCl、60℃、RI)Mn121,000、Mw447,000。HNMR(CDCl、300MHz)d6.98(s、1H)、2.81(t、2H)、1.71(m、2H)、1.5−1.3(m、6H)、0.91(t、3H)。位置規則性度は96%である。
【0129】
例2−比較実験
チオフェン有機マグネシウム試薬の2つの同じ溶液を以下のように製造する。
【0130】
n−ブチルマグネシウムクロリドの溶液(1.8MのTHF溶液7.4ml、13.5mmol)を、2,5−ジブロモ−3−ヘキシルチオフェン(4.65g、14.2mmol)のTHF(45ml)溶液に添加する。溶液を20分間攪拌し、次いで1時間還流する。還流を止め、[1,2−ビス(ジフェニル−ホスフィノ)エタン]二塩化ニッケル(II)(53mg、0.098mmol)を添加するか、又は1,2−ビス(ジフェニル−ホスフィノ)エタン(86mg、0.21mmol)と続いてNi(COD)(25mg、0.092mmol)を添加する。反応物をさらに25時間、還流し、冷却してメタノールに注ぐ。得られる析出物をろ過し、アセトン(20時間)及びイソ−ヘキサン(23時間)で抽出(ソックスレー)する。生成物を減圧下で乾燥して紫色の固体を得る。位置規則性度をメチレンプロトンの積分によって計算する。各々、2.95と2.65ppmの間、2.6625と2.50ppmの間を積分する。
【0131】
Ni(II):質量=1.91g(80%)、GPC(CCl、60℃、RI)Mn75,500、Mw110,000、HNMR(図1aを参照)による位置規則性度は95.6%である。
【0132】
Ni(0):質量=1.83g(76%)、GPC(CCl、60℃、RI)Mn141,000、Mw386,000、HNMR(図1bを参照)による位置規則性度は96.2%である。
【0133】
例3:位置規則性ポリ(3−ヘキシル)セレノフェン
n−ブチルマグネシウムクロリド(2MTHF溶液2.65ml、5.3mmol)を、18−20℃、N下で 2,5−ジブロモ−3−ヘキシルセレノフェン(2.12g、5.69mmol)の無水THF(18ml)溶液に添加する。この混合物を18−20℃で25分間攪拌し、次いで1時間、還流する。還流を止め、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(46.8mg、0.11mmol)、次いでビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)(15.6mg、0.059mmol)を添加し、得られる混合物を30時間還流する。反応混合物を40℃に冷却して, 次いで温かいメタノールに注ぐ。析出物をろ過し、洗浄(ソックスレー)をアセトンで15時間、メタノールで5時間、イソヘキサンで25時間行なう。この溶液を熱いクロロベンゼンに溶解し、メタノール中に析出する。生成物をろ過し、減圧下で乾燥して紫色の固体としてポリマーを得る(1.04g、85%)。
【0134】
GPC(CCl、60℃、RI)Mn112,000、Mw314,000。HNMR(CDCl、300MHz)d7.11(s、1H)、2.73(t、1.9H)、2.55(brm、0.1H)、1.69(m、2H)、1.5−1.25(m、6H)、0.91(t、3H)(位置規則性度=96%)。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1a】例2で製造されたポリ(3−ヘキシル)チオフェンのH−NMRスペクトルを示す。
【図1b】例2で製造されたポリ(3−ヘキシル)チオフェンのH−NMRスペクトルを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

(式中、Aは、S又はSe、Bは、H又はF、nは、>1の整数、及びRは、任意に1種以上のヘテロ原子を含んでいてもよく、かつ本発明の方法に対して記載された条件下では反応しないカルビル又はヒドロカルビル基である。)
で表される位置規則性ポリマーの製造方法であって、
式II:
【化2】

(式中、A、B及びRは式Iで定義されるものであり、及びX及びXは、各々独立して適切な脱離基である)
で表されるモノマーと、
マグネシウム又は反応性亜鉛又は有機マグネシウムハロゲン化物とを反応させ、有機マグネシウム又は有機亜鉛中間体又は有機マグネシウムもしくは有機亜鉛中間体の混合物を生成し、及び
得られた中間体を触媒量のNi(0)触媒及び2座配位子と接触し、得られた混合物を任意に攪拌及び/又は加熱してポリマーを形成する
製造方法。
【請求項2】
a1) 式IIで表される化合物と有機マグネシウムハロゲン化物とを有機溶媒中で反応して有機マグネシウム中間体を生成するか、又は、
a2) 式IIで表される化合物とマグネシウム金属とを有機溶媒中で反応して有機マグネシウム中間体を生成するか、又は、
a3) 式IIで表される化合物と反応性亜鉛とを有機溶媒中で反応して有機亜鉛中間体を生成するか、又は、
a4) 有機マグネシウム中間体をステップa1)又はa2)に記載されたように生成し、そして、前記中間体と亜鉛二ハロゲン化物とを反応して有機亜鉛中間体を生成し、
及び
b) 触媒量の2座有機配位子及び触媒量の有機Ni(0)化合物又は有機Ni(0)錯体を前記中間体に添加し、及び得られた混合物を任意に攪拌及び/又は加熱してポリマーを形成し、
及び、
c) 任意に前記混合物からポリマーを回収する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記モノマーが式IIで表され、式中、
Aは、S又はSe、
Bは、H、及び
は、置換されていないか、又はF、Cl、Br又はIによって単置換又は多置換されている1から20個のC原子を有する直鎖、分枝鎖又は環式アルキルであって、かつ、ここで、1個以上の非隣接CH基は、O及び/又はS原子が互いに直接的に結合しないように、各々互いに独立して、−O−、−S−、−NR−、−SiR00−、−CY=CY−又は−C≡C−によって任意に置換されており、又は
好ましくは、1から30個のC原子を有する任意に置換されたアリール又はヘテロアリールを表し、又は
P−Spを表し、
ここで、
及びR00は、互いに独立して、H又は1から12個のC原子を有するアルキルであり、
及びYは、互いに独立して、H、F又はClであり、
Pは、保護されていてもよい重合性又は反応性基であり、
Spは、スペーサー基又は単結合であり、及び
及びXは、互いに独立して、Cl、Br又はIである、
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
が、1個以上のフッ素原子で置換されていてもよいC−C20アルキル、C−C20アルケニル、C−C20アルキニル、C−C20アルコキシ、C−C20チオアルキル、C−C20シリル、C−C20アミノ又はC−C20フルオロアルキルから選択されることを特徴とする、請求項1から3の1つ以上に記載の方法。
【請求項5】
前記有機マグネシウムハロゲン化物が、式III:
−Mg−X III
(式中、
は、1個以上の基Lによって置換されていてもよいアリール又はヘテロアリール;又は、無置換もしくはF、Cl、Br又はIによって単置換又は多置換されている1から20個のC原子を有する直鎖、分枝鎖又は環式アルキルであって、ここで、1個以上の非隣接CH基は、O及び/又はS原子が互いに直接的に結合しないように、各々互いに独立して−O−、−S−、−NR−、−SiR00−、−CY=CY−又は−C≡C−によって置き換えられていてもよく、
Lは、F、Cl、Br、I又は1から20個のC原子を有するアルキル、アルコキシ又はチオアルキルであり、ここで、1個以上のH原子は、F又はClによって置換されていてもよく、
及びYは、互いに独立してH、F又はClであり、
及びR00は、互いに独立してH、1から12個のC原子を有するアルキル又はアリールであり、
は、式IIで定義されたとおりである。)
で表されるものから選択されることを特徴とする、請求項1から4の1つ以上に記載の方法。
【請求項6】
前記2座配位子がホスフィン配位子であることを特徴とする、請求項1から5の1つ以上に記載の方法。
【請求項7】
前記2座配位子が、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(dppe)、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン(dppp)、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン(dppb)、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(dppf)、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(BINAP)、及び1,2−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)エタンから選択されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記Ni(0)触媒が、Ni(COD)又はNi(CO)であることを特徴とする、請求項1から7の1つ以上に記載の方法。
【請求項9】
THF、2−メチルテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、テトラヒドロピラン又はジオキサンから選択される溶媒中で実施することを特徴とする、請求項1から8の1つ以上に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリ(3−置換)チオフェンの位置規則性度が95%以上、重合度n≧150であることを特徴とする、請求項1から8の1つ以上に記載の方法。
【請求項11】
位置規則性度が95%以上で、重合度n≧150である、ポリ(3−置換)チオフェン。
【請求項12】
請求項11に記載の1つ以上のポリマーを含む、半導体又は電荷輸送材料、部品又はデバイス。
【請求項13】
光学的、電気光学的又は電子的部品又はデバイス、電荷輸送有機電界効果トランジスタ(OFET)、集積回路(IC)、薄膜トランジスタ(TFT)、フラットパネルディスプレイ、高周波識別(RFID)タグ、エレクトロルミネッセンス又はフォトルミネッセンスデバイス又は部品、有機発光ダイオード(OLED)、ディスプレイのバックライト、光起電又はセンサーデバイス、電荷注入層、ショトキーダイオード、平坦化層、帯電防止膜、導電性基板又はパターン、電池の電極材料、光導電体、電子写真用途、電子写真記録、有機記憶デバイス、整列層における、又はDNA配列を検出及び識別するための、請求項11に記載のポリマーの電荷輸送、半導体性、導電性、光導電体性又は発光性材料としての使用。
【請求項14】
請求項11又は12に記載のポリマー、半導体又は電荷輸送材料、部品又はデバイスを含む、光学的、電気光学的又は電子的デバイス、FET、IC、TFT、OLED又はRFIDタグ。

【図1a】
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【図1b】
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【公表番号】特表2009−520043(P2009−520043A)
【公表日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−541607(P2008−541607)
【出願日】平成18年10月25日(2006.10.25)
【国際出願番号】PCT/EP2006/010267
【国際公開番号】WO2007/059838
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】