説明

位置計測装置

【課題】撮像距離に影響されず、画像中の形状が変化することのないランドマークを用いるとともに、周囲の明るさの影響を受けにくい位置検出処理を行う位置計測装置を得る。
【解決手段】撮像距離によらず相似形に撮像される放射状模様を有し、位置を計測する計測対象物に離間して付設される複数のランドマーク9と、前記複数のランドマーク9を同一画像に撮像するように設置固定されたカメラ8と、前記カメラ8の撮像画像から前記複数のランドマーク9の位置を検出し、該画像中の複数のランドマーク9の位置を用いて前記計測対象物であるスプレッダ5の位置を演算によって求める画像処理部7とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばクレーンに備えられているスプレッダの位置を計測する位置計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トランスファクレーンなどを用いてコンテナを搬送するとき、コンテナを把持するスプレッダの位置を計測して、コンテナの吊上げ高さや揺れなどを検出している。スプレッダの位置を計測する技術として、例えば非特許文献1には、スプレッダに設置したレーザ光源から、トローリーの二か所に各々設置した2台のCCDカメラへレーザ光を照射するように構成した位置計測装置が記載されている。この装置は、重心位置検出回路を用いて各CCDカメラが撮像したレーザ光の中心位置を求めてスプレッダの位置を計測している。
【0003】
また、トランスファクレーンのスプレッダの上面にランドマークを付設しておき、トローリーに備えたカメラによりランドマークを撮像し、当該撮像した画像からスプレッダの位置を求める位置計測装置がある。この位置計測装置は、例えば図13(A)に示したようにトローリー104の下部に1台のカメラ108を備え、図13(B)に示したような複数の同心円を模様としたランドマーク109をスプレッダ105の上面に付設しておく。このようなランドマーク109を、カメラ108を用いて撮像する。カメラ108から出力された画像データを例えばパソコン等を用いて処理し、画像中のランドマーク109の中心位置を検出してスプレッダ105の位置、即ちコンテナ102の揺れや高さなどを計測している。
【0004】
【非特許文献1】三菱重工技報、Vol.37、No.5(2000−11)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、スプレッダにレーザ光源を備えた場合には、トローリーに設けられている操縦席に操縦者などが搭乗すると当該操縦者などにレーザ光を照射する可能性がある。
また、スプレッダに設けられた同心円状模様のランドマークを撮像した場合には、スプレッダの吊り上げ高さを変化させたとき、所定の高さにおいて、いずれかの同心円が同じ大きさとなって画像に写り込む。しかし、スプレッダが上記の所定の高さに位置していない場合には、画像に写る同心円の大きさが様々なものとなって画像処理に不具合が生じ、スプレッダの位置の検出結果に大きなずれが生じる可能性があるという問題点があった。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、撮像距離に影響されず、画像中の形状が変化することのないランドマークを用いるとともに、周囲の明るさの影響を受けにくい位置検出処理を行う位置計測装置を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の観点である位置計測装置は、撮像距離によらず相似形に撮像される模様を有し、位置を計測する計測対象物に離間して付設される複数のランドマークと、前記複数のランドマークを同一画像に撮像するように設置固定されたカメラと、前記カメラの撮像画像から前記複数のランドマークの位置を検出し、該画像中の複数のランドマークの位置を用いて前記計測対象物の位置を演算によって求める画像処理部とを備える。
【0008】
好適には、前記ランドマークは、濃度の異なる複数の色を交互に配色した放射状模様を有する。
【0009】
好適には、前記画像処理部は、前記ランドマークの模様のエッジを検出して該ランドマークの位置を求める。
【0010】
好適には、前記画像処理部は、ベクトル符号相関法を用いて予め設定されているテンプレートと前記画像中のランドマークとの相関を求めて該ランドマークの位置を検出する。
【0011】
好適には、前記テンプレートは、前記ランドマークの放射状模様の中心部分に対応する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、周囲の明るさの影響を抑制して精度良く計測対象物の位置を計測することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明の実施の一形態を説明する。
<第1の実施形態1>
図1は、本発明の第1の実施形態による位置計測装置の構成を示す説明図である。
図1(A)は、第1の実施形態による位置計測装置を備える、例えばトランスファクレーン1の概略構成を示しており、トランスファクレーン1がコンテナ2を吊り上げている状態を表している。
【0014】
トランスファクレーン1は、水平に配設されたガイド3、ガイド3に支持されるトローリー4、および、コンテナ2を把持するスプレッダ5を備えている。
トローリー4は、ガイド3に沿って移動するように構成されており、例えば4本のワイヤロープ6を用いてスプレッダ5を吊り上げている。なお、各ワイヤロープ6は、ウインチなどにより巻き上げ可能に備えられており、トローリー4は、スプレッダ5の地上高、即ちワイヤロープ6の長さを自在に調整できるように構成されている。
【0015】
スプレッダ5の上面には、画像処理部7の撮像対象であるランドマーク9が付設されている。図1(A)に例示したスプレッダ5には、当該スプレッダ5の長手方向に沿って二つのランドマーク9を離間して設けている。
画像処理部7は、トランスファクレーン1の適当な箇所に備えられ、例えば、トローリー4の操従席に配設されている。
カメラ8は、スプレッダ5の上面に付設されている二つのランドマーク9を撮像することができるようにトローリー4の下部に設置固定されている。
【0016】
ランドマーク9は、撮像距離によらず相似形に撮像される模様を有しており、例えば、図1(B)に示したように放射状模様を有している。この放射状模様は、例えば当該ランドマーク9の中心点から、白色と黒色とを交互に配色した模様が放射状に広がるように構成されている。詳しくは、上記の2色の境界部分が16ヵ所となるように模様が構成されている。ランドマーク9は、好ましくは16〜32分割された放射状模様を有している。
【0017】
なお、上記の放射状模様は、白色および黒色に限定されず、濃度の異なる2色により構成してもよい。また、放射状模様は、2色以上の複数色を組み合わせて構成してもよい。即ち、放射状模様は、カメラ8が撮像した画像において、当該模様のエッジが明確になる色を組み合わせて構成されたものである。また、図1(B)には、外周形状が四辺形のランドマーク9を例示しているが、当該ランドマーク9の縁端部の形状は、どのように形成されてもよい。
【0018】
図2は、第1の実施形態による位置計測装置の構成を示すブロック図である。この図は、図1に示した画像処理部7の構成を主に示している。
位置計測装置は、前述のようにスプレッダ5に付設される複数のランドマーク9、例えば工業用レンズを備えたCCDカメラ等であるカメラ8、カメラ8から出力される画像データを処理する画像処理部7によって構成されている。
画像処理部7は、カメラ8から出力された画像データを所定のデータ様式に変換する、具体的には、後述する演算処理部12が使用可能なデータに変換する画像入力処理手段11を備えている。
【0019】
また、画像処理部7は、画像入力処理手段11の出力データから、カメラ8によって撮像されたランドマーク9の位置を演算によって求め、このランドマーク9の位置に基づいて、スプレッダ5の高さや揺れを演算によって求める演算処理手段12を備えている。
また、画像処理部7は、演算処理手段12の演算結果に応じて所定の出力信号を生成する出力処理手段13と、後述するテンプレートなどを記憶している記憶手段14とを備えている。
出力処理手段13は、例えば、スプレッダ5の揺れを抑止する、図示を省略した制御機構部等に、前述の演算結果である位置情報等を出力するように接続構成されている。上記の制御機構部は、スプレッダ5に搭載されており、上記の位置情報から得られたスプレッダ5の揺れとワイヤロープ6の長さに対応させて、スプレッダ5の揺れを抑止するための適切な慣性力を発生させる機能を備えている。
また、出力処理手段13は、トランスファクレーン1の図示されない操縦席に備えられている表示装置に、前述の位置情報等を表示するように接続構成してもよい。
【0020】
画像処理部7は、例えばパソコン等を用いて構成してもよい。具体的には、パソコン等に搭載されているプロセッサなどのデバイスとソフトウエアプログラムとを用いて、前述の処理機能を有する各手段を備えるようにパソコン等の各部を設定/構成する。
【0021】
図1のトランスファクレーン1は、例えば、ワイヤロープ6の長さを20[m]程度としてスプレッダ5を吊り上げている。このような長さのワイヤロープ6によって吊り上げられているスプレッダ5の位置を計測するときには、例えば、次の要件(i)または要件(ii)に示したカメラ8およびランドマーク9が用いられる。なお、ここで例示するランドマーク9は、外周が四辺形に形成されたものである。
【0022】
(i)カメラ8は、撮像可能な画像サイズが640×480[pixel]、例えば1/3サイズのCCD素子を使用しており、画素サイズが7.4[μm]、焦点距離が75[mm]の撮像性能を備えている。
このとき用いられるランドマーク9は、四方のサイズが70[mm]以上の大きさを有している。
【0023】
(ii)カメラ8は、撮像可能な画像サイズが1024×1024[pixel]、例えば1/2サイズのCCD素子を使用しており、画素サイズが5.5[μm]、焦点距離が50[mm]の撮像性能を備えている。
このとき用いられるランドマーク9は、四方のサイズが80[mm]以上の大きさを有している。
なお、(ii)に例示したカメラ8およびランドマーク9を用いた場合には、(i)のものに比べて画像の解像度が高く、ランドマーク9もしくはスプレッダ5の位置の計測範囲を広くすることが可能である。
【0024】
次に動作について説明する。
[スプレッダの位置を計測する動作]
図3および図4は、第1の実施形態による位置計測装置の計測動作を示す説明図である。
図3(A)は、図1に示したトランスファクレーン1において、トローリー4から吊り下げられているスプレッダ5をカメラ8の設置位置から視た状態を表している。また、図3(B)は、カメラ8が図3(A)に示したスプレッダ5を撮像した画像20を表している。
【0025】
図3(A)に示したスプレッダ5は、前述のようにトローリー4から吊り下げられており、図中破線で示した静止位置5aから、矢印aで示したように揺れた状態を表している。図3のスプレッダ5には、前述のランドマーク9である、ランドマーク9a,9bが距離Dをもって付設されている。
ここで、ランドマーク9aとランドマーク9bとの中間点を位置Pとする。また、静止位置5aの中心点を原点Osとし、スプレッダ5の長手方向をY軸、短手方向をX軸とした直交座標を設定する。この座標系において、揺れたスプレッダ5の位置Pの座標値を(Xs,Ys)とする。
【0026】
なお、スプレッダ5の位置Pは、当該スプレッダ5の静止状態において原点Osと同一点である。
また、図3では、距離Dを分かりやすく示すためにランドマーク9a,9bを円形状に表しているが、ランドマーク9a,9bの形状は図示したものに限定されない。
ランドマーク9a,9bは、図1(B)に示したように、放射状模様を有しており、各ランドマーク9a,9bの放射状模様の中心点が距離Dをもって離間されている。
【0027】
また、図3(B)に示した画像20において、破線で示した静止位置5aの中心点を原点Ocとし、画像20の中のスプレッダ5の長手方向をy軸、短手方向をx軸とした直交座標を設定する。この座標系において、画像20中におけるスプレッダ5の位置Pの座標を(x,y)とする。また、画像中のランドマーク9aの座標を(x,y)、ランドマーク9bの座標を(x,y)とする。また、画像中のランドマーク9aとランドマーク9bとの間の距離をdとする。
【0028】
前述の原点Osは、トランスファクレーン1のスプレッダ5が静止した状態において予め設定されている。また、カメラ8は、前述のようにトローリー4に固定されているので、画像20において静止状態のスプレッダ5に設定される原点Ocも、予め画像20の中の所定の位置に設定されるものである。
画像処理部7は、例えば記憶手段14に、予め画像20の中における原点Ocの位置を記憶させておき、演算処理手段12などが後述する画像処理を行う際には、記憶手段14に記憶されている原点Ocを使用する。
【0029】
図4(A)は、画像処理部7がスプレッダ5の位置を計測するときに用いる各値を示している。図4(A)に示した直交座標は、X軸およびY軸に関して、図3(A)に示した座標系と同様に設定されている。
図4(A)において、原点Osは、トローリー4の例えば下端面に設定されており、前述のX軸とY軸によって形成されるX−Y平面に直交するZ軸が設定されている。また、図4(B)は、図4(A)に示した各部のZ軸方向における配置関係を抽出し、各部の間の距離等を表している。
【0030】
ここで、図4(A)に破線で示した画像平面20aは、カメラ8の受光素子面の位置を表し、焦点Foは、カメラ8の撮像焦点の位置を表している。画像平面20aから焦点Foまでの距離をfとする。また、原点Os即ちトローリー4から焦点Foまでの距離をZcとする。また、焦点Foからスプレッダ5即ち位置Pまでの距離をhとする。また、原点Osからスプレッダ5即ち位置Pまでの距離をZsとする。換言すると、位置PのZ軸方向の座標値はZsとなる。
【0031】
画像処理部7の演算処理手段12は、図3に示したスプレッダ5の揺れによる変位を演算によって求める。
カメラ8が撮像した画像は画像入力手段11によって所定の様式の画像データに変換される。この画像データを入力した演算処理手段12は、図3(B)に示した画像20の中に含まれているランドマーク9a,9bの各座標値を、後述するテンプレートマッチング処理によって求める。なお、上記のランドマーク9a,9bの座標値は、各ランドマークの放射状模様の中心点の座標値であり、具体的には、図3(B)に示したランドマーク9aの座標値(x,y)とランドマーク9bの座標値(x,y)である。
画像20における座標値(x、y)および座標値(x、y)を求めた後、当該画像20の中における距離dを次の式(1)を用いて求める。
【0032】
【数1】

【0033】
演算処理手段12は、距離dを求めた後、次の式(2)を用いて画像20の中のスプレッダ5の位置を求める。詳しくは、画像20に写り込んでいる、揺れて変位したスプレッダ5の中心点、即ち画像20の中に含まれている位置Pの座標値(x,y)を求める。
【0034】
【数2】

【0035】
図3(A)に示した距離Dは、実物のスプレッダ5の上面に付設されているランドマーク9aとランドマーク9bとの間隔であり、予め定められている数値である。そこで、スプレッダ5の位置計測処理において、予め距離Dの値を記憶手段14等に記憶させておく。演算処理手段12は、適宜、記憶手段14から距離Dの値を読み出して演算に用いる。
【0036】
前述の式(2)により、画像20の中における距離dが求められると、予め実際の距離Dが分かっているので、画像20の中に写っているスプレッダ5の座標値(x,y)から、実際のスプレッダ5の位置を表す座標値(Xs,Ys)を求めることができる。
上述の説明は、図3(A)ならびに図4(A)に示した座標系においてX方向およびY方向の座標値に関するものであるが、Z方向の座標値、即ち、スプレッダ5が実際に位置する高さに関しても、演算によって求めることができる。
【0037】
予め、カメラ8の焦点Foおよび受光素子即ち画像平面20aの位置が分かっている。即ち、図4に示した距離f、座標値Zcは、予め定められている値である。距離fならびに座標値Zcの各値を、記憶手段14に予め記憶させておく。
演算処理手段12は、記憶手段14に記憶されている距離D、距離d、距離f、座標値Zcを用いて、次の式(3)の演算を行い、スプレッダ5の実際の位置を示す座標値(Xs,Ys,Zs)を求める。なお、図4に示した距離hは、式(3)に含まれている(D/d)×fに該当する。
【0038】
【数3】

【0039】
このように画像処理部7は、三角測量を用いてスプレッダ5の位置Pを求める。ここで説明した位置Pの座標値は、揺れているスプレッダ5の位置情報である。位置Pの座標値(Xs,Ys,Zs)等を表すデータは、出力処理手段13によって所定のデータ様式に変換され、例えば、前述の制御機構部等へ出力される。
【0040】
[画像中のランドマークの位置を求める処理動作]
画像処理手段12による、画像20に含まれているランドマーク9a,9bの位置を求める処理動作を説明する。
画像処理手段12は、ベクトル符号相関法を用いて画像の明暗または濃淡の変化を検出する。
ベクトル符号相関法は、注目画素の周辺8画素について輝度変化の傾きを符号化するものであり、このような符号化を例えば撮像した画像に対して行い、さらに符号化した画像と予め用意されているテンプレートとの相関を演算によって求めるものである。
上記のテンプレートは、所定の画像パターンをベクトル符号化したデータである。
【0041】
図5は、第1の実施形態による位置計測装置の処理動作を示す説明図である。この図は、画像処理部7へ入力された画像の一部分を符号化する処理を示している。
例えば、図5の図中左側に示した画素bを注目画素としたとき、画素bの周辺8画素を抽出する。これらの画素は、例えば輝度を表す0〜255の値を有している。上記の画素bおよび周辺画素の9画素をPrewittフィルタにより処理する。
【0042】
Prewittフィルタは、図5の中央上段に示した画像の横方向のフィルタと、図5の中央下段に示した縦方向のフィルタとからなるものである。具体的なフィルタリング処理は、上記の9個の画素値に横方向のフィルタである係数行列を乗算し、その値、即ち注目画素bの横方向の傾きを求める。また、上記の9個の画素値に縦方向のフィルタである係数行列を乗算し、その値、即ち前述の注目画素bの縦方向の傾きを求める。
【0043】
このようにして求めた横方向の傾き(図中“−68”と記載した値)、および、縦方向の傾き(図中“68”と記載した値)を各々所定の閾値と比較する。この閾値は、上記の各傾きを、例えば、“正の傾き”、“傾きなし”、“負の傾き”に分類する、適当な二つの値である。これらの閾値と上記の各傾きとを比較し、比較結果に応じて三つの値に符号化する。具体的には、“正の傾き”を「01」、“傾きなし”を「00」、“負の傾き”を「10」として、2ビットで表現される符号に変換する。このようにして画像の所定部分のベクトル符号を求める。
【0044】
図6は、第1の実施形態による位置計測装置の処理動作を示す説明図である。この図は、各画素の傾きをベクトル符号化して、カメラ8からの入力画像とテンプレートとの相関を求める処理を示している。
カメラ8が撮像した画像は、前述のように演算処理手段12によってベクトル符号化が行なわれる。また、記憶手段14に記憶されているテンプレートも、前述のようにベクトル符号化されたものである。
なお、テンプレートは、例えば図1(B)に破線で示した部分Tに対応するデータであり、ランドマーク9の放射状模様の中心部分を表している。
【0045】
演算処理手段12は、図6に示したベクトル符号化された部分画像とテンプレートとのXOR(exclusive or)を求めて画素毎のマッチングを検出する。
カメラ8が撮像した画像を前述のように処理した部分画像の各ベクトル符号とテンプレートの各ベクトル符号との排他的論理和(XOR結果)を求め、図6の図中右下側に例示した同値関係テーブルを用いて前述のXOR結果の相違度を求める。
なお、上記の同値関係テーブルは、例えば記憶手段14に記憶されており、演算処理手段12が適宜参照可能なように、画像処理部7の内部に備えられている。
【0046】
演算処理手段12は、前述のようにして各画素における相違度を表す値を求め、さらに、これらの値の総和を求める。この相違度の総和が、前述の部分画像とテンプレートとの相違度を表す値である。
演算処理手段12は、順次異なる部分画像と、前述のテンプレートとの相違度を求め、相違度が所定の値よりも小さくなった部分画像を探す。相違度が小さい部分画像があったとき、当該部分画像の座標値を求める。
【0047】
ここで使用したテンプレートは、前述のようにランドマーク9の中心部分を表したものである。そのため、相違度が小さい部分画像にはランドマーク9aあるいはランドマーク9bの中心部分が写っている可能性が高い。即ち、この部分画像の座標値が、ランドマーク9aの座標値(x,y)、あるいはランドマーク9bの座標値(x,y)であると考えられる。
このように、演算処理手段12は、カメラ8が撮像した画像20の中から、当該画像20の画素を単位として、ランドマーク9a,9bの放射状模様の中心部分を探し出し、当該中心部分の座標値を求める。
【0048】
図13(B)に示した同心円状模様のランドマーク109を用いて前述のような相関を求めて位置計測を行った場合と、前述のように放射状模様のテンプレート9を用いて位置計測を行った場合とを比較する。
【0049】
図7〜図10は、第1の実施形態による位置検出装置が画像から検出したランドマークの位置を示す説明図である。
図7および図8は、スプレッダ5の高さ即ちランドマークの位置を、図4に示したZ軸方向に沿って変化させ、各高さにおいて静止状態のスプレッダ5もしくはランドマークを撮像したときの当該撮像画像中のランドマークの位置を示している。
詳しくは、図7,8は、スプレッダ5の実際の高さと、この高さにおいて撮像された画像中のランドマークの位置との関係を表したグラフであり、ランドマークの位置を、図3に示した座標系のx軸方向の位置と、y軸方向の位置とに分けて表している。
【0050】
また、図7および図8のグラフは、縦軸がカメラ8の撮像した画像においてランドマークが検出された位置の画素[pixel]を表し、横軸がスプレッダ5の高さ、即ちカメラ8が設置されたトローリー4とランドマークとの間の距離[mm]を表している。
なお、ここでグラフに例示した高さは、図1等に示したトランスファクレーン1におけるスプレッダ5の実際の高さであるとは限らない。
【0051】
図7は、スプレッダ5に図13(B)に示したランドマーク109を付設し、これをカメラ8にて撮像して、画像処理部7が画像中のスプレッダ5の位置を検出したときの検出結果を示すグラフである。
図7(A)は、スプレッダ5の高さを変化させたとき、即ち図4に示したZ軸方向にランドマーク109の位置を変化させたときの、画像中のx軸方向の検出位置を示したグラフである。図7(A)の横軸は、スプレッダ5の高さ、即ちランドマークのZ軸方向の実際の位置であり、縦軸は、撮像した画像中のランドマーク109のx軸方向の検出位置である。
図7(B)は、同様にスプレッダ5の高さを変化させたときの、画像中のy軸方向の検出位置を示したグラフである。図7(B)の横軸は、図7(A)と同様にスプレッダ5の高さであり、縦軸は、撮像した画像中のランドマーク109のy軸方向の検出位置である。
【0052】
カメラ8の撮像性能等が影響し、カメラ8とランドマーク109との間が、ある程度の距離になると、画像中の同心円状模様が適当な大きさとなるように撮像することが難しくなる。換言すると、図13(B)に破線で示した部分Tに、同心円状模様が好適に含まれている画像が得られなくなる。なお、上記の部分Tは、後述するテンプレートとの相関を求める部分である。
【0053】
上記のように同心円状模様が適当な大きさに撮像されていない画像に対してベクトル符号相関法による処理を行い、図示を省略した同心円状模様に対応するテンプレートとの相関を求めると、当該ランドマーク109の中心部分を正確に検出することが困難になる、
そのため、図7(A)および図7(B)に示したように、実際のランドマーク109は静止状態であっても、画像中から検出されるランドマーク109の位置が一定にならず、不安定になる場合がある。
【0054】
図8は、スプレッダ5に図1(B)に示したランドマーク9を付設し、これをカメラ8にて撮像して、画像処理部7がスプレッダ5の位置を検出したときの検出結果を示すグラフである。
図8(A)は、スプレッダ5の高さを変化させたとき、即ち図4に示したZ軸方向にランドマーク9の位置を変化させたときの、画像中のx軸方向の検出位置を示したグラフである。図8(A)の横軸は、スプレッダ5の高さ、即ちランドマーク9のZ軸方向の実際の位置であり、縦軸は、撮像した画像中のランドマーク9のx軸方向の検出位置である。
図8(B)は、同様にスプレッダ5の高さを変化させたときの、y軸方向の検出位置を示したグラフである。図8(B)の横軸は、図8(A)と同様にスプレッダ5の高さであり、縦軸は、撮像した画像中のランドマーク9のy軸方向の検出位置である。
【0055】
放射状模様のランドマーク9を、ベクトル符号相関法により画像処理した場合には、前述のように撮像画像の画素単位で位置を特定し、当該放射状模様の中心部分を検出することが可能である。図8(A)および図8(B)に示したように、ランドマーク9が実際に静止しているときには、画像中から検出したランドマーク9の位置も一定となる。
【0056】
図9および図10は、スプレッダ5の高さ、即ちランドマークの位置を図4に示したZ軸方向に沿って変化させ、各高さにおいて揺れているスプレッダ5もしくはランドマークを撮像したとき、当該撮像した画像中のx軸方向またはy軸方向のランドマークの位置を示している。
【0057】
図9は、スプレッダ5に同心円状模様のランドマーク109を付設し、これをカメラ8にて撮像して、画像処理部7が検出したスプレッダ5の揺れを示すグラフである。
図9(A)は、スプレッダ5の揺れに応じて画像から検出されるx軸方向のランドマーク109の位置を示すグラフである。
図9(B)は、スプレッダ5の揺れに応じて画像から検出されるy軸方向のランドマーク109の位置を示すグラフである。
図10(A)は、スプレッダ5の揺れに応じて画像から検出されるx軸方向のランドマーク9の位置を示すグラフである。
図10(B)は、スプレッダ5の揺れに応じて画像から検出されるy軸方向のランドマーク9の位置を示すグラフである。
【0058】
図9および図10に示された計測結果から、画像処理部7によるランドマークの検出処理には、放射状模様のランドマーク9を用いた場合と同心円状模様のランドマーク109を用いた場合とでは大きな差異が生じないことがわかる。換言すると、図4に示したカメラ8の撮像平面20aに平行なスプレッダ5の揺れ、もしくはランドマークの移動について、ランドマーク9を用いた場合の位置計測とランドマーク109を用いた場合の位置計測とは、同様な精度で行うことが可能である。
【0059】
このように、ベクトル符号相関法を用いた位置計測を行う場合には、放射状模様のランドマーク9を用いると、同心円状模様のランドマーク109を用いた場合に比べて、スプレッダ5の高さについて安定した計測結果が得られることがわかる。即ち、画像処理部7は、ランドマーク9をスプレッダ5などの計測対象物に付設したとき、カメラ8が設置されたトローリー4の撮像位置と計測対象物との間の距離を、より正確に計測することができる。また、撮像した画像から、より正確なスプレッダ5の位置を計測することができる。
【0060】
図11は、第1の実施形態による位置計測装置の動作を示す説明図である。この図は、カメラ8が撮像した画像中のランドマーク9を示したものである。
図11(A)は、例えば照明装置等を用いてランドマーク9の周囲を通常の明るさとして撮像した場合の画像中のランドマーク9である。換言すると、カメラ8の撮像性能に適合した明るさの周辺環境において撮像した画像である。
図11(B)は、上記の照明装置等による照明光が無い状態で撮像した場合の画像中のランドマーク9であり、例えば照明光のない屋内で撮像した画像である。
図11(C)は、例えば、図11(A)に示したように撮像される通常の明るさを有する照明装置に追加照明装置を加えて、相当に明るい状態で撮像した場合の画像中のランドマーク9であり、放射状模様の中心部分に若干のハレーションが生じている。
【0061】
画像処理部7は、前述のようにベクトル符号相関法を用いてランドマーク9の位置を検出しており、図11に示した各画像においても、同様に画像中のランドマーク9の位置、詳しくはランドマーク9の中心部分の座標値を十分な精度で検出することが可能である。
具体的には、例えば図1のスプレッダ5に付設されたランドマーク9を撮像する際に、トランスファクレーン1に備えられている、図示を省略した照明装置等を用いてスプレッダ5を照らした場合でも、安定した位置計測を行うことが可能である。
【0062】
トランスファクレーン1が稼働することによって前述の照明装置からの照射光が何らかの構造物によって遮られ、スプレッダ5の上面においてランドマーク9の周辺の明るさが変化する場合がある。
画像処理部7の演算処理手段12は、画像の明るさの変動に対して頑健なベクトル符号相関法を用いてカメラ8からの画像データを処理しているので、上記のように撮像を行っている際にランドマーク9を照らし出す明るさが変化したときでも、精度よくランドマーク9の位置を検出することができる。
【0063】
図12は、第1の実施形態による位置検出装置の検出結果を示す説明図である。この図は、図11(A)〜(C)に例示した各画像から求めた位置と、実際の位置との間にずれが発生する頻度を示したグラフである。図12には、図11(A)の画像に対応する“通常の照明におけるランドマーク検出時の誤差”、図11(B)の画像に対応する“照明のない状態におけるランドマーク検出時の誤差”、および図11(C)の画像に対応する“追加照明におけるランドマーク検出時の誤差”の各分布を示している。
【0064】
図12に示した誤差分布は、図3に示したx軸方向の位置検出において生じた誤差を示している。図12の縦軸は、撮像した画像中のランドマーク9の位置を検出する画像処理を行ったとき、誤差が含まれる頻度[%]を示しており、横軸は、上記の位置を検出する画像処理において発生した誤差の大きさを表している。なお、誤差の大きさを、画像中の画素[pixel]を単位として表しており、誤差を含んでいない場合を“0”[pixel]とし、この画素の位置から外れた画素数を用いて誤差分布を表している。
【0065】
図12に示した一例では、計測位置の誤差分布が±4[pixel]の範囲内に収まっており、また、計測誤差の発生頻度も1[pixel]ずれる場合が25[%]に満たない程度である。
演算処理手段12が、ベクトル符号相関法を用いて画像処理を行うことにより、ランドマーク9の明るさ、即ち照明装置等による照明光の有無により検出位置の誤差発生頻度が顕著に変化せず、ランドマーク9の周囲の明るさ変化の影響を抑えて位置検出処理を行うことができる。
また、上記のようにベクトル符号相関法を用いて画像処理を行うことにより、一般的な正規相関法を用いた画像処理に比べて処理時間を短縮することができる。
【0066】
以上のように、第1の実施形態によれば、放射状模様のランドマーク9を計測対象のスプレッダ5に付設し、カメラ8が撮像したランドマーク9を含む画像から、画像処理部7がベクトル符号相関法を用いてランドマーク9の画像中の座標値を検出する。また、検出した座標値から計測対象物のスプレッダ5の高さ、もしくはカメラ8の設置位置とスプレッダ5の位置との間の距離を求めるようにした。このようにすることによって、撮像画像の画素単位でランドマーク9の位置を検出することができ、精度の高い計測を行うことができる。
【0067】
また、画像処理部7が撮像画像中のランドマーク9を検出するとき、ランドマーク9の放射状模様のエッジを検出し、このときベクトル符号相関法による処理を行うようにした。このようにすることによって、撮像画像の各画素値の傾斜を取り扱うことから、撮像するランドマーク9の周辺の明るさが変化しても、撮像画像から精度よくランドマーク9の位置を検出することができる。
【0068】
本実施形態では、トランスファクレーン1の上側に配設されたカメラ8により、下方に位置するスプレッダ5を撮像し、当該スプレッダ5の位置を計測する位置計測装置を説明した。本発明の位置計測装置は、上記のようなクレーンに吊り上げられたスプレッダの位置を計測することに限定されず、カメラ8の撮像方向を水平とし、当該撮像方向に配置されている計測対象物の位置を三次元的に計測することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の第1の実施形態による位置計測装置の構成を示す説明図である。
【図2】第1の実施形態による位置計測装置の構成を示すブロック図である。
【図3】第1の実施形態による位置計測装置の計測動作を示す説明図である。
【図4】第1の実施形態による位置計測装置の計測動作を示す説明図である。
【図5】第1の実施形態による位置計測装置の処理動作を示す説明図である。
【図6】第1の実施形態による位置計測装置の処理動作を示す説明図である。
【図7】第1の実施形態による位置検出装置が画像から検出したランドマークの位置を示す説明図である。
【図8】第1の実施形態による位置検出装置が画像から検出したランドマークの位置を示す説明図である。
【図9】第1の実施形態による位置検出装置が画像から検出したランドマークの位置を示す説明図である。
【図10】第1の実施形態による位置検出装置が画像から検出したランドマークの位置を示す説明図である。
【図11】第1の実施形態による位置計測装置の動作を示す説明図である。
【図12】第1の実施形態による位置検出装置の検出結果を示す説明図である。
【図13】従来の位置計測装置の構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0070】
1…トランスファクレーン、2…コンテナ、3…ガイド、4…トローリー、5…スプレッダ、6…ワイヤロープ、7…画像処理部、8…カメラ、9,9a,9b…ランドマーク、11…画像入力手段、12…演算処理手段、13…出力処理手段、14…記憶手段、20…画像、20a…画像平面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像距離によらず相似形に撮像される模様を有し、位置を計測する計測対象物に離間して付設される複数のランドマークと、
前記複数のランドマークを同一画像に撮像するように設置固定されたカメラと、
前記カメラの撮像画像から前記複数のランドマークの位置を検出し、該画像中の複数のランドマークの位置を用いて前記計測対象物の位置を演算によって求める画像処理部と、
を備える位置計測装置。
【請求項2】
前記ランドマークは、濃度の異なる複数の色を交互に配色した放射状模様を有することを特徴とする請求項1に記載の位置計測装置。
【請求項3】
前記画像処理部は、前記ランドマークの模様のエッジを検出して該ランドマークの位置を求めることを特徴とする請求項1または2に記載の位置計測装置。
【請求項4】
前記画像処理部は、ベクトル符号相関法を用いて予め設定されているテンプレートと前記画像中のランドマークとの相関を求めて該ランドマークの位置を検出することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の位置計測装置。
【請求項5】
前記テンプレートは、前記ランドマークの放射状模様の中心部分に対応することを特徴とする請求項4に記載の位置計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−91517(P2010−91517A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−264000(P2008−264000)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(598123138)学校法人 創価大学 (49)
【出願人】(800000080)タマティーエルオー株式会社 (255)
【Fターム(参考)】