説明

低容積の電力増幅器装置

本発明は、平面XYに平行な少なくとも1つのプレートと、そのプレート上に装着される少なくとも2つの増幅器モジュール(41a、41b)とを含む低容積の増幅装置に関する。各増幅器モジュール(41a、41b)は、増幅器素子(11a、11b)と、縦の伝播の方向に合致する同じ方向Xに配置される入力接続導波路(12a、12b)および出力接続導波路(13a、13b)とを含み、その増幅器素子(11a、11b)は、伝播の方向Xに垂直な方向Yに配置される入力および出力軸(18a、18b)を有するこの低容積の増幅装置において、2つの増幅器モジュール(41a、41b)の入力接続導波路(12a、12b)は、別個のものであって、異なる長さ(La1、La2)を有すると共に互いに平行に装着され、前記2つの増幅器モジュール(41a、41b)の出力接続導波路(13a、13b)は、別個のものであって、異なる長さ(La2、Lb2)を有すると共に互いに平行に装着されること、および、同じ増幅器モジュールの入力および出力導波路の長さの合計(La1+La2、Lb1+Lb2)は各増幅器モジュールについて同一である、すなわち、La1+La2=Lb1+Lb2であること、が特徴である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低容積の電力増幅装置に関する。これは、半導体に基づくマイクロ波増幅器の分野、さらに具体的には電力合成システム、特にアクティブアンテナに応用される。
【背景技術】
【0002】
増幅装置の操作周波数の増大に伴う半導体素子の出力電力の低下のために、マイクロ波分野の特定用途において必要とされる出力電力を達成するように、いくつかの半導体素子増幅器を結合する必要性が生じている。特に、Kuバンドのアクティブアンテナの場合には、十分な電力レベルを得るために、いくつかの増幅器モジュールをアンテナのグリッドの1つのセルの中で結合することが必要になる場合が多い。この場合、このセルの寸法は数センチメートル程度のものである。
【0003】
統合または径方向アーキテクチャに基づく線路または導波路による現代の電力合成システムによっては、素子増幅器を、長方形導波路の出力インタフェースが下流側の装置と協動可能な状態で、制限された空間内において効率的に結合することは不可能である。
【0004】
いくつかの増幅器を結合する統合構造においては、増幅器は互いに平行に配置され、1つの同じ軸に沿って同心に配列される。増幅器の入力および出力導波路、ドライバ並びにコンバイナもこの同じ軸に沿って同心に配列される。Kuバンドおよび長方形導波路技術においては、このような増幅装置の幅は、主としてコンバイナの長方形導波路のかなりの大きさによって制約される。従って、標準Kuバンド長方形導波路の断面による内部寸法の値、すなわち1.9cmに等しい内部寸法の値のみを考慮すれば、例えば8個の増幅器を含む増幅装置の幅は、最低でも8倍の大きさ、すなわち15cmより大きくなる。この幅は、Kuバンドのアクティブアンテナに応用する場合の寸法的制約より遥かに大きいので、従って、この技術はこのタイプの用途には適していない。より高い周波数に適用する場合は、長方形導波路の大きさが縮小し、増幅装置の幅が、コンバイナによって決まるのではなく、素子増幅器と、デカップリングコンデンサと、この増幅器の分極ポートの幅によって定まることになる。従って、この幅も、アクティブアンテナのグリッドのセルに関して非常に重要である。
【0005】
特許文献の米国特許第5736908号明細書に記載されているような空間的結合技術は、長方形導波路の中に重ねて置かれたいくつかのプレート上に配置される複数の増幅器モジュールを含んでいる。単一のソースが発生する入力信号は、信号のエネルギーの空間分布のために増幅器モジュールの間に配分され、それが同じ原理に従って増幅されると、出力部において再合成される。この解決策は、一方では、信号の合成と、他方では、平面技術による線路および長方形導波路の出力インタフェースの間の信号移行との遂行を、単一のステップにおいて可能にする。この特性によって、合成損失と構造の容積とを最小化することが可能になる。しかし、この結合技術は、先行技術において記述されているように欠点および限界を露呈している。
【0006】
実際、長方形導波路の中に積み重ねられるプレートの枚数と、1つの同じプレート上の関連増幅器の個数とは、操作周波数の増加によって決まる長方形導波路の大きさの低減と共に減少する。
【0007】
例えばKaバンドのような高い周波数に適用する場合には、長方形導波路の標準の大きさは増幅器モジュールの大きさよりも遥かに小さく、それによって、増幅器モジュールを、単一ソースによって励起される空間デバイダのトランジションおよび空間コンバイナのトランジションに連結するための長い伝達線路を有することが必要になる。この伝達線路は、損失の点で非常に不利であり、分割および合成の効率を低下させる。アクティブKuバンドアクティブアンテナの場合に8個の素子増幅器を結合するためには、小型化の点から4枚のプレートを有する構造が最良の適応形態であろう。しかし、この形態においては、このタイプのアーキテクチャは、構造の中心に位置するプレートに関して、好ましくない熱の取り扱い方を呈し、結合された増幅器の間の絶縁が欠如していることによって、特定の場合においては増幅装置の不安定性をもたらす可能性がある。
【0008】
文献の国際公開第2006096771号パンフレットは、別の空間結合技術を記述している。この空間結合技術においては、増幅器の軸が、入力および出力導波路に垂直な方向に沿って配置されるが、例えばKaバンドのような高い周波数に適用する場合には、長い入力伝達線路が、分割損失の点で不利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、低容積の増幅装置であって、既存の装置の欠点を含まず、かつ、数センチメートル程度の寸法しかないアクティブKuバンドアンテナのグリッドセルの中において、特に多数の増幅器を、高い合成効率でかつほとんど分割損失なしに結合することが可能になるような増幅装置を製造することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従って、本発明は、平面XYに平行な少なくとも1つのプレートと、そのプレート上に装着される少なくとも2つの増幅器モジュールとを含む低容積の増幅装置に関する。各増幅器モジュールは、増幅器素子と、縦の伝播の方向に合致する1つの同じ方向Xに向けられる入力接続導波路および出力接続導波路とを含み、この増幅器素子は、伝播の方向Xに垂直な方向Yに向けられる入力および出力軸を有する。この増幅装置は、さらに、2つの増幅器モジュールの入力接続導波路は、別個のものであって、異なる長さを有すると共に互いに平行に装着され、かつ、2つの増幅器モジュールの出力接続導波路は、別個のものであって、異なる長さを有すると共に互いに平行に装着されること、および、1つの同じ増幅器モジュールの入力および出力導波路の長さの合計は各増幅器モジュールについて同一であり、その場合、増幅器モジュールは少なくとも1つの列において平行に装着され、その列の増幅器素子の入力導波路の前に電力デバイダが設けられ、その列の増幅器素子の出力導波路は、その出力接続導波路(13a、13b)から電力コンバイナ(16)に伝達される信号が同相になるように、出力電力コンバイナに連結されること、という特徴を有する。
【0011】
列の増幅器素子の複数の入力導波路および複数の出力導波路は、それぞれが互いに隣接し、列の増幅器素子は、互いに対して2つの垂直な方向XおよびYにずれていることが有利である。
【0012】
入力デバイダおよび/または出力コンバイナは、接続導波路を分離する壁面を延長する抵抗性の隔壁を有することができることが有利である。
【0013】
増幅装置は、さらに、各入力接続導波路と対応する増幅器素子との間に配置される入力トランジションと、各出力接続導波路と対応する増幅器素子との間に配置される出力トランジションとを含むことが有利である。
【0014】
一実施形態によれば、増幅装置が2つの別個の増幅列を含み、各増幅列は同じ個数の増幅器モジュールを含み、第1列の増幅器モジュールは、伝播の方向に平行な対称軸のいずれかの側において、第2列の増幅器モジュールに対して対称に装着される。
【0015】
第1列の各増幅器モジュールは、方向Yに沿って向けられる入力および出力軸であって、第2列の増幅器モジュールの増幅器素子の入力および出力軸とそれぞれ同心に並べられる入力および出力軸を有する増幅器素子を含むことが有利である。
【0016】
2列のすべての増幅器モジュールの増幅器素子の出力接続導波路は、別個のものであって、互いに隣接し、かつすべての出力接続導波路に共通の1つの出力電力コンバイナに連結されることが有利である。
【0017】
増幅装置は、さらに、2つのトランジションと交差する2つの増幅列にそれぞれ連結される2つの出力部を有する第1入力電力デバイダを含み、各増幅列は、対応する増幅器モジュールの各入力接続導波路にそれぞれ連結される出力部を有する第2電力デバイダを含むことが有利である。第1入力電力デバイダはマイクロストリップ型の入力部を含むことができる。
【0018】
一実施形態によれば、増幅装置が、上下に重ねて置かれる少なくとも2つの増幅器モジュールを含み、この2つの増幅器モジュールは、上下に重ねて置かれる少なくとも2枚の別個のプレート上に配置されると共に、全く同じ個数の増幅器モジュールを含み、この2つの重ねて置かれる増幅器モジュールは、1つの入力導波路および1つの出力導波路を共通に有する。
【0019】
トランジションの素子は、フィン線路、または基板上に置かれた金属化線路を含むプランジャ、またはガラスビーズを用いる機械的プランジャの中から選択することが有利である。
【0020】
入力および出力接続導波路は長方形断面を有する金属導波路であることが望ましい。さらに、電力デバイダおよび電力コンバイナも、長方形断面を有する金属導波路とすることができる。
【0021】
各入力接続導波路には位相調整素子を装備することが望ましい。
【0022】
増幅装置は、増幅装置の入力部において光ファイバおよびトランジションによって接続されるオプトエレクトロニックフィード装置を含むことが有利である。
【0023】
本発明の他の特徴および利点は、純粋に例示的かつ非限定的な例によって、添付の模式図を参照しながら記述される以下の説明において明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明による第1の例示的な増幅器モジュールの概略図である。
【図2】本発明による第1の例示的な増幅装置であって、プレート上に1列に結合された2つの増幅器モジュールを含む増幅装置の概略図である。
【図3a】本発明による第2の例示的な増幅装置であって、プレート上に1列に結合された4つの増幅器モジュールを含む増幅装置の概略図である。
【図3b】図3aと同じ増幅装置であるがデバイダおよびコンバイナ部分のみが異なる別の概略図である。
【図3c】図3aの増幅装置の縦断面図である。
【図3d】図3cの断面I−Iにおける図3aの増幅装置の横断面図である。
【図3e】図3cの断面J−Jにおける図3aの増幅装置の横断面図である。
【図4a】本発明の変形実施形態による増幅装置であって、重ねて置かれる2枚のプレート上に配置された2列の増幅器モジュールを含む増幅装置の、図3cの断面I−Iに相当する断面おける横断面図である。
【図4b】図4aの増幅装置の、図3cの断面J−Jに相当する断面おける横断面図である。
【図5a】本発明の変形実施形態による第3例としての増幅装置であって、1つの同じプレートの2つの列に結合された4つの増幅器モジュールを含む増幅装置の概略図である。
【図5b】本発明の変形実施形態による第4例としての増幅装置であって、1つの同じプレートの2つの列に結合された複数個の増幅器モジュールを含む増幅装置の概略図である。
【図6】単一のプレート上に結合された1列の2つの増幅器モジュールを含む本発明による増幅装置の変形実施形態の縦断面図である。
【図7a】本発明による例示的な隔壁の模式的詳細図である。
【図7b】本発明による隔壁タイプの1段型コンバイナの例の模式的詳細図である。
【図7c】本発明による隔壁タイプの2段型コンバイナの例の模式的詳細図である。
【図8a】本発明によるトランジションの1つの例の模式的断面図である。
【図8b】本発明によるトランジションの別の例の模式的断面図である。
【図8c】本発明によるトランジションのさらに別の例の模式的断面図である。
【図8d】本発明によるトランジションのさらに別の例の模式的断面図である。
【図9】本発明による増幅装置用フィード装置の例の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1に表現される増幅器モジュールは、増幅器素子11と、入力接続導波路12と、出力接続導波路13と、入力導波路および増幅器モジュールの間の信号移行を確実にする入力トランジション14と、出力導波路および増幅器モジュールの間の信号移行を確実にする出力トランジション15とを含む。入力および出力導波路12、13は、伝播の縦方向に合致する1つの同じ方向Xに向けられており、かつ、例えば長方形とすることができる断面を有する。増幅器素子11は、縦の伝播方向に垂直な方向Yに向けられる入力および出力軸18を有する。入力トランジション14および出力トランジション15は、縦の伝播方向Xに垂直であり、増幅器素子11と、長方形の入力導波路12および出力導波路13との間の電気的整合を確実に行う。
【0026】
図2は、本発明による第1の例示的な増幅装置であって、2つの増幅径路を構成する2つの増幅器モジュールを含む増幅装置の概略図を表現している。2つの増幅器モジュール41a、41bは、1つの同じプレートXY上に平行に、かつ1つの同じ列41において、次のように装着される。すなわち、2つの増幅器素子11a、11bの2つの入力導波路12a、12bと2つの出力導波路13a、13bとがそれぞれ互いに隣接するように、かつ、2つの増幅器素子11a、11bが1つの同じ軸上に同心に並ぶのではなく、互いに対して2つの垂直な方向XおよびYにずれるように装着されるのである。増幅器素子11a、11bは、別個の入力導波路および別個の出力導波路と、それぞれ、伝播方向Xに垂直な方向Yに沿う方向に向けられる入力および出力軸18a、18bとを有しており、増幅器素子11a、11bは、その入力導波路および出力導波路に対して、それぞれ、入力トランジション14a、14bおよび出力トランジション15a、15bによって接続される。2つの増幅器素子11a、11bの2つの入力導波路12a、12bと2つの出力導波路13a、13bとは、それぞれが、縦の伝播軸Xに沿って異なる長さLa1、La2およびLb1、Lb2を有するが、1つの同じ増幅器モジュールの入力および出力導波路の長さの合計は、すべての増幅器モジュールについて同一である。すなわち、
La1+La2=Lb1+Lb2
である。
【0027】
2つの増幅器素子11a、11bの2つの入力導波路12a、12bの前には、電力デバイダ16が設けられる。この電力デバイダ16は、例えば10.5GHzおよび14GHzバンドのマイクロ波入力信号を、2つの入力接続導波路12a、12b内を伝播する2つの成分に分割することを可能にする。また、2つの増幅器素子11a、11bの2つの出力導波路13a、13bは、それぞれの増幅器素子によって増幅された出力マイクロ波信号の再合成を可能にする電力コンバイナ17に連結される。各増幅器素子は、例えば図3cに表現されるように、デカップリングコンデンサ10を有する分極回路を含む。図3cは、4つの増幅径路を構成する1つの同じ列に結合された4つの増幅器モジュールを示す。
【0028】
電力デバイダ16は、金属導波路技術を用いて具現化され、長方形導波路形態の1つの入力部と2つの出力部とから構成される。このデバイダは「隔壁デバイダ(septum divider)」タイプのものとすることができる。このタイプのデバイダにおいては、2つの出力導波路は、一般的に分割位置において、「隔壁(septum:ラテン語)」を構成する薄い壁体であって金属または抵抗性のものとすることができる薄い壁体によって分離される。電力コンバイナ17も、金属導波路技術を用いて具現化され、長方形導波路形態の2つの入力部と1つの出力部とから構成され、かつ、「隔壁コンバイナ(septum combiner)」タイプのものとすることができる。「隔壁デバイダ」および「隔壁コンバイナ」タイプのデバイダ16およびコンバイナ17は、マイクロ波信号を、低容積において低損失で分割および合成することを可能にする。入力導波路12a、12bおよび出力導波路13a、13bの合計長さは2つの増幅器モジュール41a、41bについて同一であるので、コンバイナの入力部における信号は同相であり、2つの増幅径路によって増幅された信号の再合成は、移相器を追加することなく同相で行われる。この方法で結合される増幅器モジュールの個数は2つに限定されない。
【0029】
図3a〜3eは、1つの同じ列に結合されて4つの増幅径路を構成する4つの増幅器モジュールの概略図および断面図を示しているが、この図3a〜3eに表現されるように、2つの垂直な方向XおよびYにおいて互いにずらして配置される増幅器素子を含む多数の増幅器モジュールを結合することが可能である。この場合、異なる増幅器素子の入力導波路および出力導波路は、それぞれが互に隣接すると共に、異なる入力および出力長さを有するが、1つの同じ増幅器モジュールの入力および出力導波路の合計長さは、すべての増幅器モジュールについて同一である。従って、各増幅径路において、入力導波路に相当する電気径路は出力導波路に相当する電気径路とは異なるが、すべての径路について、1つの同じ径路の入力および出力導波路に相当する電気径路の合計は同一であり、それによって、出力においては、すべての信号が同一位相になり、従ってすべてのマイクロ波信号を移相器の追加なしに同相で再合成することが可能になる。
【0030】
図3bに表現される実施形態は、2段階の入力デバイダ16および出力コンバイナ17を含む増幅装置を示す。この実施形態においては、入力信号は2つのステップで分割される。第1ステップにおいて、信号は、2つの中間的な長方形導波路31、32に配分され、続いて、第2ステップにおいて、2つの中間的な長方形導波路31、32内に伝播するそれぞれの信号が再度2つに分割され、4つの増幅器素子11の4つの入力接続導波路12の中に配分される。出力コンバイナ17の部分においては、4つの増幅径路によって増幅された4つの信号は、2つのステップにおいて同相の対として合成される。第1ステップにおいては、増幅器11の4つの出力接続導波路13内を伝播する4つの出力信号が、2つの中間的な長方形出力導波路33、34内において同相で再合成され、続いて、第2ステップにおいて、2つの中間的な長方形導波路33、34内を伝播するそれぞれの信号が、再度、コンバイナ17の出力導波路内において同相で再合成される。
【0031】
本発明の第1の変形形態によれば、図3aの増幅器モジュールを対の形でグループ化することができる。各対のモジュールは、図4aおよび4bの断面I−Iおよび断面J−Jの横断面図に示されるように、重ねて置かれる2つの別個のプレート21、22上に配置される。この場合、各対は、重ねて置かれる2つの増幅器モジュール23、24を含み、この2つの増幅器モジュール23、24は、1つの入力接続導波路および1つの出力接続導波路を共通に有する。従って、1つの同じ入力接続導波路が、2つの入力トランジションによって、2つの素子増幅器を励起する。出力側においては、2つの素子増幅器が、それぞれ、2つの出力トランジションによって同じ出力接続導波路に結合される。2枚のプレートを互いに反対向きに配置することによって、外部への熱流束を除去することが可能になる。同様の方法で2つより多い個数の増幅器モジュールを一緒にグループ化することができる。この場合、グループ化されたモジュールは、互いに重ねて置かれる別個のプレート上に配置される。
【0032】
図5aに模式的に表現される第3の例は、本発明の第2の変形形態に従って、1つの同じプレート上に結合される4つの増幅器モジュールを含む増幅装置を示している。
【0033】
4つの増幅器モジュールは、伝播軸に平行な2つの別個の増幅列41、42において対として結合され、各増幅列は、同じ個数の増幅径路、例えば図5aに示すように2つの径路を含み、各増幅径路は1つの増幅器モジュールを含む。増幅装置は、プレーナ型の第1入力電力デバイダ40を含み、そのアクセスポートはマイクロストリップ型の入力部によって実現される。このマイクロストリップ型入力部は、2つの増幅列のそれぞれ1つに連結される2つの長方形入力導波路であって、2つのトランジション43、44と交差する2つの長方形入力導波路を照射するように、入力マイクロ波信号1を2つの成分に分割することを可能にする。代わりの方式として、電力デバイダ40をデバイダ隔壁とすることも可能である。各増幅列41、42において、2つの増幅径路の前に第2の電力デバイダ16a、16bを設ける。この第2の電力デバイダ16a、16bは、対応する増幅器モジュール41a、41b、42a、42bの各入力接続導波路12にそれぞれ連結される2つの出力部を含んでいる。例えばデバイダ隔壁タイプの第2電力デバイダ16a、16bは、トランジション43、44のいずれかから生じるマイクロ波信号の成分を、2つの対応する増幅径路の2つの入力接続導波路12内をそれぞれ伝播する2つの新しい成分に2回目として分割することを可能にする。第1列41の2つの増幅径路の2つの増幅器モジュール41a、41bは、電波の方向Xに平行な対称軸45のいずれかの側において、第2列42の2つの増幅器モジュール42a、42bに対して対称に装着される。第1列41の各増幅器モジュール41a、41bは増幅器素子11a、11bを含み、この増幅器素子11a、11bは、方向Yに沿うように向けられた入力および出力軸18a、18bであって、第2列42の増幅器モジュール42a、42bの増幅器素子19a、19bの入力および出力軸20a、20bとそれぞれ同心に並べられる入力および出力軸18a、18bを有する。2つの列のすべての増幅器素子の出力接続導波路13は、分離されて互いに隣接しており、これによって、2つの列41、42のすべての出力導波路に共通の出力電力コンバイナ17の出力部において、すべての信号の同相における再合成が可能になる。
【0034】
信号は、入力デバイダ40の出力トランジション43、44から、長方形の接続導波路12内を伝播し、各列41、42の第2デバイダ16a、16bと交差して分割された後、増幅器モジュール41a、41b、42a、42bの入力トランジション素子14に向かって伝播する。増幅された後、信号は、出力接続導波路内を、信号が同相で再合成される出力コンバイナ17まで伝播する。
【0035】
各列における増幅器モジュールの個数は2つに限られない。図5bは、各列41、42ごとに4つの増幅器モジュール41i、42iの結合を示しているが、この図5bから分かるように、各列に多数の増幅器モジュールを結合することが可能である。
【0036】
図6に表現される実施形態においては、増幅装置が、各増幅器素子のすぐ上流側およびすぐ下流側の入力および出力接続導波路内に配置される整合導波路55の部分を含む。さらに、入力デバイダ16およびコンバイナ17は、それぞれ、入力部および出力部において、長方形の接続導波路を分離する金属壁48を延長する抵抗性の隔壁を含む。例えば図7aに表現されるように、各隔壁は、抵抗性の表面が装備された少なくとも1つの壁体51を含む。この抵抗性の表面の機能は、増幅器モジュールの間の絶縁を確保することにある。その絶縁によって、各増幅器モジュールを他のモジュールとは別個に調整できるようになるので、増幅装置の電気的安定性が改善され、かつ、その位相の調整が簡単化されるのである。この抵抗性の表面は、2枚の同一基板46、47の間の対称平面に配置される抵抗性の膜であって、例えばアルミナまたは窒化アルミニウムのようなセラミックの膜から構成することができる。図7bに表現されるように、1段階の隔壁においては、壁面51の抵抗性表面が、すべて、コンバイナまたはデバイダの入力部50から1つの同じ距離に装着される。
【0037】
図3bに表現される例のような1つの同じ列に2つより多い増幅器モジュールを含む増幅装置の場合には、代替方式として、複数段階、例えば図7cのコンバイナに示すような2段階の隔壁を用いることが可能である。この場合は、コンバイナの入力部50から所定距離に配置される抵抗性膜を備えた第1壁面52と、第1壁面52の抵抗性膜に対してずらされた位置に後置して配置される抵抗性膜を備えたもう1つの壁面53とが含まれる。隔壁を含むデバイダは、コンバイナに対して入力部および出力部を入れ換えることによって類似の形態を有する。デバイダ16の2段階隔壁は、入力信号の分割を2つの連続するステップにおいて遂行する。すなわち、信号の4つの成分が得られ、各成分は、4つの増幅モジュールの4つの入力接続導波路の1つに導かれる。この場合、まず、2つの成分への第1の信号分割は、第1隔壁段階の第1壁面52によって実行され、続いて、この成分のそれぞれが、第2の分割として、第2隔壁段階の別の2つの壁面53によってさらに2つの成分に分割される。出力導波路13においては、コンバイナ17も、2段階の隔壁を含み、隔壁の壁面53、52によって、2つの連続するステップにおける信号の再合成を可能にする。デバイダおよびコンバイナの隔壁の壁面の個数は、上記の例示的な実施形態に表現されるような3つに制限されるわけではなく、増幅装置の種々の増幅径路に必要とされる信号成分の数に応じて適応させることができる。
【0038】
位相の調整は、各入力接続導波路12の中に装着される位相調整素子54によって実行することができる。この調整は、信号が増幅器モジュールによって増幅された後、これらの信号の出力導波路における同相での再合成を確実に実行し得るように、接続導波路12内を伝播する信号間の相対的な位相を制御するためのものである。この機能によって、製造公差による被合成信号の位相不均衡に起因する損失が除去され、合成損失を最小化することが可能になる。位相調整素子54は、例えば、多様な形状の誘電体素子として具現化することができる。代わりの方式として、移相素子を、マイクロメータネジで調整可能な誘電体のウエハまたは薄層を有する移相器とすることができる。この場合は、この誘電体素子が接続導波路12の中に押し込まれる深さによって、接続導波路12内を伝播する信号の位相を変化させることができる。
【0039】
入力および/または出力トランジションは、例えば、図8aに表現されるように、マイクロストリップ線路62に関わるスロット61を備えたフィン線路60を用いて製造することができる。入力接続導波路内を伝播する信号は、基板63の低面上に形成されるVivaldiアンテナ64によって捕捉される。基板63の低面上の金属化の端部は点線で示されている。Vivaldiアンテナの出力部においては、開放λ/4スタブ65と、基板の2つの金属化面を連結する金属化孔66とによって、スロットモードから、マイクロストリップ線路62内を伝播するマイクロストリップモードへの転移が可能になる。
【0040】
代替方式として、図8bに表現されるように、トランジションを、基板68の上に置かれる金属化線路67を含むプランジャ70を用いて具現化すること、あるいは、図8cに表現されるように、ガラスビーズ69と、ガラスビーズのコアを延長する円筒部71と、トランジションの整合に寄与する誘電体72とを用いる機械式プランジャによって具現化することができる。
【0041】
さらに代わりの方式として、入力部および出力部において、2つの異なるタイプのトランジションを組み合わせることが可能である。例えば、図8dに表現されるように、フィン線路60を含む入力トランジションと、基板上に装着されるプランジャ70を含む出力トランジションとを用いることが可能である。この図においては、増幅器素子の入力部73と出力部74とが同じ軸上にはない。
【0042】
図9は、低容積の電力増幅装置の入力部において適用し得る例示的なフィード装置を示す。このフィード装置は、例えばフォトダイオードまたは増幅器を備えたフォトダイオードのようなオプトエレクトロニック装置80を含み、増幅されるべきRF信号によって変調される光信号を光ファイバ81から受け取る。フォトダイオード装置による検出後、RF信号は、トランジション82によって電力デバイダへの入力として伝達される。
【0043】
本明細書において提案した解決策は、6センチメートル程度のアンテナのグリッドセル内において、多数の増幅器モジュール、例えば8個の増幅器を1つ以上の列および1つ以上のプレートに結合することを可能にするものであり、さらに、次の各項の特徴を備えている。
・装置の印加電力に関して効率を低下させないような、デバイダおよびコンバイナのきわめて低い挿入損失
・下流側に置かれる回路のインタフェースと直接的に適合させるための長方形導波路の出力部
・上流側に置かれる回路とのさらに良好な適合性を可能にする平面技術による入力部
・増幅器の電気的安定性に必要なデカップリングコンデンサの装着を可能にするための増幅器回りの十分な空間
・半導体の接合部温度に関する空間的制約を遵守するためのきわめて良好な熱の取り扱い方
・機器の重量を最小化するような低容積
・低コストの解決策の提供を可能にする組み立ての容易さ
・光ファイバによるRF信号搬送用システムとの適合の可能性
【0044】
本発明を特定の実施形態と関連付けて記述したが、本発明は決してそれに限定されないこと、および、記述された手段並びにそれらの組合せのあらゆる技術的等価物が本発明の範囲内のものであれば、本発明はそれらを含むことは全く明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面XYに平行な少なくとも1つのプレートと、そのプレート上に装着される少なくとも2つの増幅器モジュール(41a、41b)とを含む低容積の増幅装置であって、各増幅器モジュール(41a、41b)は、接続の順序において、入力接続導波路(12a、12b)と、入力トランジション(14a、14b)と、増幅器素子(11a、11b)と、出力トランジション(15a、15b)と、出力接続導波路(13a、13b)とを含み、前記入力接続導波路(12a、12b)および前記出力接続導波路(13a、13b)は、縦の伝播の方向に合致する1つの同じ方向Xに向けられ、前記増幅器素子(11a、11b)は、伝播の方向Xに垂直な方向Yに向けられる入力および出力軸(18a、18b)を有する低容積の増幅装置において、前記2つの増幅器モジュール(41a、41b)の入力接続導波路(12a、12b)は、別個のものであって、異なる長さ(La1、Lb1)を有すると共に互いに平行に装着され、前記2つの増幅器モジュール(41a、41b)の出力接続導波路(13a、13b)は、別個のものであって、異なる長さ(La2、Lb2)を有すると共に互いに平行に装着されること、および、1つの同じ増幅器モジュールの入力および出力導波路の長さの合計(La1+La2、Lb1+Lb2)は各増幅器モジュールについて同一であり、すなわち、La1+La2=Lb1+Lb2であり、さらに、前記増幅器モジュール(41a、41b)は少なくとも1つの列(41)において平行に装着され、その列(41)の前記増幅器素子(11a、11b)の入力導波路(12a、12b)の前に電力デバイダ(16)が設けられ、その列(41)の前記増幅器素子(11a、11b)の出力導波路(13a、13b)は、その出力接続導波路(13a、13b)から電力コンバイナ(16)に伝達される信号が同相になるように、出力電力コンバイナ(17)に連結されることを特徴とする増幅装置。
【請求項2】
前記列(41)の増幅器素子(11a、11b)の入力導波路(12a、12b)および出力導波路(13a、13b)がそれぞれ互いに隣接し、かつ、前記列(41)の増幅器素子(11a、11b)は、互いに対して2つの垂直な方向XおよびYにずれていることを特徴とする請求項1に記載の増幅装置。
【請求項3】
前記入力および出力接続導波路(12、13)が長方形断面の金属導波路であることを特徴とする請求項1または2に記載の増幅装置。
【請求項4】
前記入力デバイダ(16)および/または前記出力コンバイナ(17)が、前記接続導波路を分離する壁面を延長する少なくとも1つの抵抗性の隔壁(51)を含むことを特徴とする請求項1〜3の一項に記載の増幅装置。
【請求項5】
前記増幅装置が2つの別個の増幅列(41、42)を含み、各増幅列は同じ個数の増幅器モジュール(41a、41b、42a、42b)を含み、第1列(41)の増幅器モジュール(41a、41b)は、伝播の方向に平行な対称軸(45)のいずれかの側において、第2列(42)の増幅器モジュール(42a、42b)に対して対称に装着されることを特徴とする請求項2〜4の一項に記載の増幅装置。
【請求項6】
前記第1列(41)の各増幅器モジュール(41a、41b)が、前記方向Yに沿って向けられる入力および出力軸(18a、18b)であって、前記第2列(42)の増幅器モジュール(42a、42b)の増幅器素子(19a、19b)の入力および出力軸(20a、20b)とそれぞれ同心に並べられる入力および出力軸(18a、18b)を有する増幅器素子(11a、11b)を含むことを特徴とする請求項5に記載の増幅装置。
【請求項7】
前記2列(41、42)のすべての増幅器モジュール(41a、41b、42a、42b)の増幅器素子の出力接続導波路(13)が、別個のものであって、互いに隣接し、かつすべての出力接続導波路(13)に共通の1つの出力電力コンバイナ(17)に連結されることを特徴とする請求項6に記載の増幅装置。
【請求項8】
前記増幅装置が、さらに、2つのトランジション(43、44)と交差する前記2つの増幅列(41、42)にそれぞれ連結される2つの出力部を有する第1入力電力デバイダ(40)を含むこと、および、各増幅列(41、42)は、対応する前記増幅器モジュール(41a、41b、42a、42b)の各入力接続導波路(12)にそれぞれ連結される出力部を有する第2電力デバイダ(16a、16b)を含むことを特徴とする請求項4〜7の一項に記載の増幅装置。
【請求項9】
前記第1入力電力デバイダ(40)がマイクロストリップ型の入力部を有することを特徴とする請求項8に記載の増幅装置。
【請求項10】
前記増幅装置が、互いに重ねて置かれる少なくとも2つの増幅器モジュール(23、24)を含み、この2つの増幅器モジュールは、互いに重ねて置かれる少なくとも2枚の別個のプレート(21、22)上に配置されると共に、全く同じ個数の増幅器モジュール(23、24)を含むこと、および、この2つの重ねて置かれる増幅器モジュール(23、24)は、1つの入力導波路および1つの出力導波路を共通に有することを特徴とする請求項1〜9の一項に記載の増幅装置。
【請求項11】
前記トランジションの素子(14a、14b、15a、15b、43、44)が、フィン線路(60)、または基板(68)上に置かれた金属化線路(67)を含むプランジャ(70)、またはガラスビーズ(69)を用いる機械的プランジャ(75)の中から選択されることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の増幅装置。
【請求項12】
前記電力デバイダおよび前記電力コンバイナが長方形断面を有する金属導波路であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の増幅装置。
【請求項13】
各入力接続導波路(12)に位相調整素子(54)が装備されることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の増幅装置。
【請求項14】
前記増幅装置が、この増幅装置の入力部において光ファイバ(81)およびトランジション(82)によって接続されるオプトエレクトロニックフィード装置(80)を含むことを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の増幅装置。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図3d】
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【図3e】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図7c】
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【図8a】
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【図8b】
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【図8c】
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【図8d】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−525038(P2012−525038A)
【公表日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−506484(P2012−506484)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【国際出願番号】PCT/EP2010/055300
【国際公開番号】WO2010/122074
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(505157485)テールズ (231)
【Fターム(参考)】