説明

低摩擦電気接点

【課題】耐食性および耐酸化性を提供し、低下した係合/係脱力およびその結果の摩耗要件との組合わせで低い接触電気抵抗を保持する電気接点表面を提供すること。
【解決手段】形成した結晶粒および該結晶粒の一部の上に付着している低摩擦ポリマー粒子の表面を有するニッケル、スズまたは貴金属の伝導性表面を含む電気接点であって、接点の抵抗が約100mAで測定して約1オーム以下であり、ポリマー粒子を液体中の該粒子の分散系から該結晶粒上に付着させる、前記接点。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2005年3月15日に出願された代理人整理番号2151.4164.001(DP−313723)、発明者Charles R.HarringtonおよびGeorge A.DrewのPolymeric Dispersions for Wear−Resistant,Low Resistance Electrical Interconnectionsという名称の米国仮特許出願第60/661706号に対する優先権を主張するものである。この米国仮特許出願を本明細書中で参考として援用する。
【0002】
技術分野
本発明は、耐食性および耐酸化性を提供し、低下した係合/係脱力およびその結果の摩耗要件との組合わせで低い接触電気抵抗を保持する電気接点表面に関する。
【0003】
背景技術
自動車および他の有用な製品の電気的内容物は継続的に増加しており、それに対応した確実な電気的相互接続に対する需要の増大をもたらしている。自動車用コネクターの場合、多くの用途で多端子雄/雌型コネクターが必要とされている。多端子コネクターでは接続を係合または係脱するのに相当の力が必要であり、当然ながら、そのようなコネクターは十分かつ適切に係合することが重要である。
【0004】
自動車業界では、同様に耐摩耗性低摩擦電気端子および耐摩耗性低電力スライドスイッチが必要とされている。
【0005】
電気端子は一般に、有益な物理的および電気的性質を提供する銅合金を用いて作成される。銅合金の端子または元となるストリップは空気中で酸化するので、そのような銅合金表面上を典型的にはスズ、銀または金の層で電気めっきする。これら表面金属は、酸化および摩耗に対する保護を銅合金表面に提供する。
【0006】
低摩擦ポリマー粒子が、そのような電気めっきされた金属、例えばスズ、銀および金に施用されている。米国特許第6254979号参照。
【0007】
低摩擦絶縁性ポリマー粒子を迅速かつ効率的に施用することが、効率的な製造方法において望ましい。
【0008】
発明の概要
形成した結晶粒(grain)および該結晶粒の一部の上に付着している低摩擦ポリマー粒子の表面を有するニッケル、スズまたは貴金属の伝導性表面を含む電気接点であって、接点の抵抗が約100mAで測定して約1オーム以下であり、ポリマー粒子を、周囲圧力において約100℃以下の引火点を有する液体中の該粒子の分散系から該結晶粒上に付着させる、前記電気接点について記載する。
【0009】
他の態様は、形成した結晶粒および該結晶粒の一部の上に付着している低摩擦電気絶縁性ポリマー粒子の表面を伴いニッケル、スズまたは貴金属を含む伝導性表面を含む電気接点であって、接点の抵抗が約100mAで測定して約1オーム以下であり、ポリマー粒子を有機液体中の該粒子の分散系から該結晶粒上に付着させ、該液体が25℃において少なくとも約1mmHgの蒸気圧を有する、前記電気接点である。
【0010】
本発明の他の態様は、2つの伝導性接点表面間の低摩擦係合および該表面間の低い接点抵抗を有する電気接点の作成方法であって、結晶粒の形でニッケル、スズまたは貴金属を接点の表面上に提供し、低摩擦絶縁性ポリマーの粒子を液体中の該低摩擦粒子の分散系から該結晶粒の一部の上に付着させることを含む方法である。ここにおいて、得られる接点の抵抗は約100mAで測定して約1オーム以下であり、ポリマー粒子を、周囲圧力において約100℃以下の引火点を有する液体中の該粒子の分散系から該結晶粒上に付着させる。
【0011】
他の態様は、2つの接点表面間の低摩擦係合および該表面間の低い接点抵抗を有する電気接点の作成方法であって、結晶粒の形でニッケル、スズまたは貴金属を接点の表面上に提供し、低摩擦ポリマーの粒子を液体中の該低摩擦粒子の分散系から該結晶粒の一部の上に付着させることを含む方法である。ここにおいて、得られる接点の抵抗は約100mAで測定して約1オーム以下であり、ポリマー粒子を有機液体中の該粒子の分散系から該結晶粒上に付着させ、該液体は25℃において少なくとも1mmHgの蒸気圧を有する。
【0012】
発明の詳細な記述
本出願で利用する電気接点は、多様な電気伝導性固体材料、例えば、基材上に付着している銅合金または他の伝導性材料を伴うプラスチック等で作成することができる。そのような銅合金等の耐食性または耐酸化性を増大させるために、他の電気的補正(electrically corrective)金属、例えば、ニッケルもしくはスズ、または金、銀、パラジウムもしくは白金などの貴金属をその銅等の上に付着させてもよい。そのような材料は、空気中および他の酸化環境中での確実な電気接触を促進することができる。これらの材料は事実上結晶粒状であることを特性とすることができ、最初に施用して艶消し表面テキスチャーをもたらしてもよい。そのような材料の施用は当業者に周知である。そのような金属をコーティングするためのそのような周知の方法を施用するためには、Metals Handbook、第9版、第5巻を参照のこと。
【0013】
低摩擦粒子の施用において、最終製品は、金属結晶粒の中、その周囲およびその上に適合するポリマー材料粒子であることを特性とすることができる。ポリマー粒子を伴う表面が電気接点として機能することができるように、その基材を完全には絶縁しないポリマー粒子を得ることが目的であることを理解すべきである。したがって、典型的には、最終的な電気的相互接続が、約100mAで測定して約1オーム(Ω)以下を超えない表面電気抵抗を示すことが望ましい。金属結晶粒上および露出している隙間内への低摩擦絶縁性ポリマー粒子の施用では、施用を効率的かつ効果的に実施することが望ましい。すなわち、粒子を液体の懸濁液または分散系中に存在させ、該液体を、基材上への該懸濁液の施用後直ちに除去することができる。
【0014】
多様な低摩擦絶縁性ポリマー粒子、例えばポリイミドおよび他のフルオロカーボン、例えばテロマーを利用することができるが、好ましい粒子はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である。これらの粒子は商業的にサイズにおいて0.1〜100μmを超えるものまでさまざまであるが、0.1〜3μmの範囲内で好ましく機能する。特徴付ける基準は、接点それ自体はあまり高い抵抗を有さないため、該接点は、電気的観点からは用いることができないが、電流を適切に運ぶということである。そのような接点表面ではしばしば、それらが雄/雌端子であるかスライドスイッチ接点であるか任意の他の電気接点であるかにかかわらず、結果として生じる電気抵抗が、一般に1ニュートンの力で約100mAにおいて測定して1オーム以下である。
【0015】
懸濁液中の粒子のためのキャリヤーは、材料が伝導性表面への施用後迅速かつ効率的に除去されるものであるべきである。相応して、有利な液体は、約100℃以下の引火点を有するものであることができる。そのような材料は非常に多様であり、材料のブレンドまたは混合物、例えば共沸混合物で作成することができる。いくつかの適切な材料は、炭素原子が1〜6個である低級アルカノール、グリコールまたはグリコールエーテルか、炭素原子が3〜6個である低級ケトンか、あるいはそのようなアルコールもしくはグリコールもしくは石油蒸留物(引火点160°F:71℃)のエチレンまたはプロピレンオキシド誘導体である。
【0016】
液体キャリヤーに適した他の材料は、粒子の沈殿防止剤のための有機液体、例えば、25℃において1mm水銀(Hg)以上の蒸気圧を有するものであることができる。そのような材料としては、2,3−ジヒドロデカフルオロペンタンのようなフルオロカーボン;ポリテトラフルオロエチレン、オメガ−ヒドロ−アルファ(メチルシクロヘキシル)(25℃において蒸気圧226mm水銀);臭化n−プロピル(20℃において100mm水銀を超える蒸気圧);エチルノナフルオロブチルまたはイソブチルエーテル(25℃において109mm水銀の蒸気圧);ペンタン、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5,−デカフルオロ−3−メトキシ−4(トリフルオロメチル)(68°Fにおいて41mm水銀);CFCHFCHFCFCF(77°Fにおいて226mm水銀)のようなハロゲン化フルオロカーボンなどが挙げられる。
【0017】
キャリヤーを同様に水とブレンドして、液体キャリヤーの引火点特性を制御してもよいことを理解すべきである。液体キャリヤーは、水と混和性または不混和性であることができる。重要な基準は、液体が、電気伝導性基材上に粒子材料を効果的に分散させるのに十分に作用した後、製造目的に関し効率的に除去され、粒子の付着層を残すことができるということである。
【0018】
ポリマー粒子の量は広く変動することができ、例えば、粒子/液体組成物全体の約0.1重量%〜約30重量%であることができる。引火点および蒸気圧は、当業者に公知の任意の適切な試験により決定することができることも、理解すべきである。キャリヤーの引火点および蒸気圧は、内部に分散している粒子を含むまたは含まないキャリヤーで決定することができる。
【0019】
ポリマー粒子を基材上に付着させるために、多種多様な施用技術を利用することができることを理解すべきである。そのような技術としては、浸漬;吹付け、例えばエアスプレーまたはエアレススプレーおよびエアゾール;ロールコーティング;ワイピング(wiping);刷毛塗り;スピニング(spinning)(基材が回転し、液体コーティングをそれに施用する)などが挙げられる。液体を任意の効率的な方法で基材から除去し、それにより金属基材上に付着し分散した粒子を残すことができる。周囲温度での自然乾燥は一つの技術である。他の方法は、より高温および/またはより低圧を利用して液体の揮発を増大させることである。
【0020】
いくつかの適切なポリマー材料分散系製品としては、DuPont Dry Film Ra分散系、DuPont Vydax 3622分散系、DuPont Dry Film WDL5W分散系、DuPont LW 1200分散系+イソプロピルアルコールなどが挙げられる。
【0021】
用いることができる組成物を含有するさまざまな液体の成分は以下のとおりである:
【0022】
【表1】

【0023】
【表2】

【0024】
【表3】

【0025】
【表4】

【0026】
【表5】

【0027】
【表6】

【0028】
【表7】

【0029】
【表8】

【0030】
【表9】

【0031】
表1で精察した試験手順は以下の通りである:
この節では、裸の試料およびPTFEでコーティングした試料を評価するために用いた試験手順および装置を明記する。裸の艶消しスズに関する平均標準滑り試験データセットを、分析手順を例証するためにベースラインの条件を用いて提示する。
【0032】
試料調製
試験試料を、各試料上の残留PTFE質量の量を評価することができるように調製した。各PTFE製品を、100mΩ未満の表面抵抗をもたらすことができるPTFE質量濃度まで十分に希釈した。各候補濃度をサンプリング(10μl)してスズ試料の上面に施用した後、10分間にわたり85℃に加熱して液体を蒸発させた。各製品濃度について特定された密度および質量分率を用いて、分配されたPTFE質量を決定した。PTFE粒子が散布された面積を概算して、各領域での単位面積あたりのPTFE質量を評価した。
【0033】
試験装置
3種の計器を用いて、調製した裸の試料またはコーティング試料それぞれの特性を決定した。標準滑り試験を23対の裸のスズ試料で実施して、表面抵抗、摩擦および摩耗のベースラインレベルを決定した。各PTFE製品の性能は、少なくとも2対の艶消しスズ製品ストリップ試料を用いて決定した。一方の試料セットでは、接点プローブ[17]を用いて、散布されたPTFE領域中の5カ所に加えた法線力に相関する電気抵抗について試験した。1N(荷重100g)の法線力での抵抗値を、相互比較のために各データセットから内挿した。他方の試料セットでは、直径3.2mmの鋼球を有する標準的用具を用いて型押しして、コーティングした領域にくぼみのある表面を形成させた。その後、くぼみ対および平面対のそれぞれを別個に取り付けて、滑り試験を実施した。
【0034】
“平面上のくぼみ(dimple on flat)”滑り試験では、10サイクルの端子接続/切断の模擬試験中に生じる摩擦力に基づき異なる材料および潤滑剤を区別することができる。この標準滑り試験は、単一接触点上のくぼみのある試料上に位置決めされた塊(250g)からなり、これは、その真下で前後に動く平面試料上に摩耗の軌跡(wear track)を作り出す。生じる摩擦力を、校正済みのセンサーで継続的に測定し、長さ2.5mmの各ストローク(半サイクル)の終点間でコンピューターにより250回定期的にサンプリングした。
【0035】
滑り摩擦の分析
各滑りストロークの間に生じた摩擦力を、潤滑剤を加えていないすべての試料対について滑りサイクル数に対して平均化する。接触点上での垂直荷重は2.5N(250g)であった。第1ストロークの後に各裸の試料により生じた力は、1.2Nから第2サイクル(第4ストローク)終了後の1.9Nに増大した。そしてその後、おそらく艶消し表面テキスチャーが平滑化するため、第10サイクル後の1.0Nまで徐々に低下する。力のデータの標準偏差は3.5サイクルの滑りでピーク値まで増大し、これは試験開始時または終了時より約5倍大きかった。裸のスズの表面に関する表1の全体的仕事値(64mJ)は、23対の試料すべてに関するサイクル全体で測定した平均摩擦力(1.27N)と試験距離の合計(50mm)との積として算出した。
【0036】
粒径、液体タイプ、液体製品の密度、製品質量、製品体積、アルコールの体積分率を識別する、電気めっきされた基材上に置かれたさまざまな分散系の施用、ならびに液体の蒸発除去後の粒子密度、表面電気抵抗、必要な滑り仕事力(sliding work force)および摩耗深さを識別する試験結果を、以下の表1に挙げる。
【0037】
【表10】

【0038】
表1.艶消し表面仕上げを有する電気めっきされたスズ上で得られた試験結果を区別するために用いた粒子密度の計算に関連する基本的PTFE分散系パラメーター。粒子は水またはイソプロピルアルコール(IPA)を用いて分散させた。
【0039】
製品7はMiller−Stevenson Chemical Companyにより供給される製品であり、製品4(DuPont−LW 1200)を水で10倍に希釈し、0.2重量%の界面活性剤を加えることにより調製した。製品4は2.3重量%のアルキルポリグリコールエーテルも含有することに留意すべきである。
【0040】
本発明をさまざまな具体的態様の参照により記載してきたが、記載した発明の概念の精神および範囲内で非常に多くの変更を加えてもよいことを理解すべきである。したがって、本発明は、記載した態様に限定されることなく、以下の特許請求の範囲の言語により定義される完全な範囲を有するものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
形成した結晶粒および該結晶粒の一部の上に付着している低摩擦ポリマー粒子の表面を有しニッケル、スズまたは貴金属を含む伝導性表面を含む電気接点であって、接点の抵抗が約100mAで測定して約1オーム以下であり、ポリマー粒子を、周囲圧力において約100℃以下の引火点を有する液体中の該粒子の分散系から該結晶粒上に付着させる、前記電気接点。
【請求項2】
液体が粒子と相溶性である、請求項1に記載の接点。
【請求項3】
液体が低級脂肪族アルコールまたはグリコールを含む、請求項1に記載の接点。
【請求項4】
液体が低級脂肪族ケトンを含む、請求項1に記載の接点。
【請求項5】
液体が水と混和性である、請求項1に記載の接点。
【請求項6】
液体が共沸液体である、請求項1に記載の接点。
【請求項7】
接点がスライドスイッチを含む、請求項1に記載の接点。
【請求項8】
接点が雄/雌コネクター端子である、請求項1に記載の接点。
【請求項9】
形成した結晶粒および該結晶粒の一部の上に付着している低摩擦電気絶縁性ポリマー粒子の表面を伴いニッケル、スズまたは貴金属を含む伝導性表面を含む電気接点であって、接点の抵抗が約100mAで測定して約1オーム以下であり、ポリマー粒子を有機液体中の該粒子の分散系から該結晶粒上に付着させ、該液体が25℃において少なくとも約1mmHgの蒸気圧を有する、前記電気接点。
【請求項10】
2つの接点表面間の低摩擦係合および該表面間の低い接点抵抗を有する電気接点の作成方法であって、
結晶粒の形でニッケル、スズまたは貴金属を接点の表面上に提供し、そして
低摩擦絶縁性ポリマーの粒子を液体中の該低摩擦粒子の分散系から該結晶粒の一部の上に付着させる、
ことを含み、ここにおいて、得られる接点の抵抗は約100mAで測定して約1オーム以下であり、ポリマー粒子を、周囲圧力において約100℃以下の引火点を有する液体中の該粒子の分散系から該結晶粒上に付着させる、前記方法。
【請求項11】
液体が粒子と相溶性である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
液体が低級脂肪族アルコールまたはグリコールを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
液体が低級脂肪族ケトンを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
液体が水と混和性である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
液体が共沸液体である、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
接点がスライドスイッチを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
接点が雄/雌コネクター端子である、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
2つの接点表面間の低摩擦係合および該表面間の低い接点抵抗を有する電気接点の作成方法であって、
結晶粒の形でニッケル、スズまたは貴金属を接点の表面上に提供し、そして
低摩擦ポリマーの粒子を液体中の該低摩擦粒子の分散系から該結晶粒の一部の上に付着させる、
ことを含み、ここにおいて、得られる接点の抵抗は約100mAで測定して約1オーム以下であり、ポリマー粒子を有機液体中の該粒子の分散系から該結晶粒上に付着させ、該液体は25℃において少なくとも1mmHgの蒸気圧を有する、前記方法。

【公開番号】特開2006−261118(P2006−261118A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−70648(P2006−70648)
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【出願人】(599023978)デルファイ・テクノロジーズ・インコーポレーテッド (281)
【Fターム(参考)】