説明

作業機械

【課題】 簡単な構造の補強板を用いてフレームの強度を高め、生産性の向上、製造コストの低減を図る。
【解決手段】 フレーム3を構成する右縦板6には補強板8を設け、この補強板8は、ポンプ挿通孔6Aの近傍となる周辺部分で右縦板6に沿って前,後方向に延びる1枚の板体により形成する構成とした。従って、ポンプ挿通孔6Aが設けられた右縦板6の前,後方向の中間位置を補強板8によって補強し、フレーム3の強度を高めることができる。また、1枚の板体からなる補強板8は、少ない部品点数、加工工数で製造することができる。さらに、補強板8は、本体板9の周縁部に設けた折曲げ部10、曲げ板部11をフレーム3の右縦板6に固着することにより、右縦板6との間で閉断面構造を形成し、フレーム3の強度をより一層高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばフレームにエンジン、油圧ポンプ等を搭載したリフトトラック等の作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、作業機械は、例えば地上から高所に荷物を運搬する荷役作業を行なうリフトトラック等が知られており、このリフトトラックは、自走可能な走行体に起伏可能な作業装置を備えている。
【0003】
そして、作業機械としてのリフトトラックは、例えば作業装置の先端側に設けられたフォーク等の作業具に荷物を積載した状態で、予め定められた荷下ろし場所の近傍まで走行した後、作業装置を起伏させることにより、積載した荷物を所定の荷下ろし場所へと持上げて荷下ろしするものである。
【0004】
また、リフトトラックは、底板と該底板の左,右両側に位置して前,後方向に延びる左,右の縦板とからなるフレームと、該フレームの前,後位置に車軸を介して設けられた左,右の前輪,後輪と、前記フレームの左側に設けられ、内部に運転室を画成するキャブと、前記フレームに搭載されたエンジン、油圧ポンプと、該油圧ポンプに供給する作動油を貯える作動油タンクとにより大略構成されている。
【0005】
また、リフトトラックは、フレームの限られたスペースにエンジン、油圧ポンプ、作動油タンク等の多くの機器類を搭載している。このため、リフトトラックは、例えばフレームの縦板にエンジン、油圧ポンプ等を通す機器挿通孔を形成し、エンジン、油圧ポンプ等を機器挿通孔に通すことにより、フレームの限られたスペースを有効的に使用する構成としている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平8−118966号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述した従来技術によるリフトトラックでは、フレームの縦板にエンジン、油圧ポンプ等の一部を挿通するための機器挿通孔を形成している。このため、フレームは、縦板に形成した機器挿通孔によって強度が低下するから、縦板には強度を高めるための補強部材を取付ける必要がある。
【0008】
しかし、フレームには、エンジン、油圧ポンプ、作動油タンク等の機器、これらを繋ぐ配管、配線等が設けられているから、補強部材は、これらを避けて複雑な形状になってしまう。このため、補強部材は、多くの板材を溶接して形成しなくてはならないから、高い強度を得るのが難しくなる上に、生産性の低下、製造コストの上昇等を招くという問題がある。
【0009】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、簡単な構造の補強板を用いてフレームの強度を高めることにより、生産性を向上でき、また製造コストを低減できるようにした作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明による作業機械は、前,後方向に延びるフレームを有し該フレームに原動機、油圧機器等が搭載されると共に前,後に位置して車輪が設けられた走行体と、該走行体に設けられた作業装置とを備えてなる。
【0011】
そして、上述した課題を解決するために、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記フレームには、少なくとも底板と該底板の左,右両側に位置して前,後方向に延びる左,右の縦板とにより構成し、前記フレームを構成する左,右の縦板のうち少なくとも一方の縦板には、当該縦板に沿って前,後方向に延びる1枚の板体からなる補強板を設ける構成としたことにある。
【0012】
請求項2の発明によると、前記補強板の周縁部には前記フレームの縦板側に折れ曲がる折曲げ部を設け、該折曲げ部の先端部を前記縦板に固着する構成としたことにある。
【0013】
請求項3の発明によると、前記原動機と油圧機器は前記縦板に対して左,右方向に連結し、前記フレームを構成する左,右の縦板のうち少なくとも一方の縦板には連結した前記原動機と油圧機器を搭載するときに該油圧機器が挿通する機器挿通孔を設け、前記補強板は前記機器挿通孔の近傍に配置する構成としたことにある。
【0014】
請求項4の発明によると、前記補強板の下端を前記底板上に乗せることにより位置決めした状態で前記補強板を前記縦板に固着する構成としたことにある。
【0015】
請求項5の発明によると、前記補強板は、前記前,後の車輪間となるフレームの前,後方向の中間位置に配置する構成としたことにある。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、フレームを構成する左,右の縦板のうち少なくとも一方の縦板には補強板を設けているから、該補強板によってフレームの強度を高めることができる。しかも、補強板は、縦板に沿って前,後方向に延びる1枚の板体により形成しているから、該補強板は、少ない部品点数、加工工数で容易に製造することができ、生産性の向上、製造コストの低減を図ることができる。
【0017】
請求項2の発明によれば、補強板の周縁部に設けた折曲げ部の先端部をフレームの縦板に固着することにより、縦板と補強板とによって高強度な閉断面構造を形成することができる。これにより、補強板はフレームの強度をより一層高めることができる。或いは、フレームの縦板、補強板を薄肉な板材により形成することができ、軽量化や製造コストの低減を図ることができる。
【0018】
請求項3の発明によれば、フレームの縦板には機器挿通孔を設けているから、フレームに原動機と油圧機器を搭載するときに、該油圧機器を機器挿通孔に挿通することにより、原動機、油圧機器等を限られたスペースに効率よく配設することができる。しかも、フレームの縦板には、機器挿通孔を囲んでその近傍に補強板を配置しているから、機器挿通孔を形成したことによる縦板の強度低下を補うことができ、フレームの強度を効果的に高めることができる。
【0019】
請求項4の発明によれば、補強板をフレームの縦板に取付けるときには、該補強板の下端をフレームの底板上に乗せることにより、該補強板を上,下方向に位置決めすることができる。これにより、補強板の位置決め作業を簡略化することができ、該補強板を縦板に容易に固着することができる。
【0020】
請求項5の発明によれば、走行時や作業時には、フレームは前輪と後輪の間に位置する前,後方向の中間位置で捩れを生じることがある。しかし、この中間位置には補強板を設けているから、捩れに対してもフレームの強度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態に係る作業機械としてリフトトラックを例に挙げ、図1ないし図9に従って詳細に説明する。
【0022】
図1において、1は作業機械としてのリフトトラックで、該リフトトラック1は、自走可能なホイール式の走行体2と、該走行体2に起伏可能に設けられた後述の作業装置22とにより大略構成されている。そして、リフトトラック1は、走行体2を走行させて作業場所まで自走した後、作業装置22を用いて地上から高所へと荷物を運搬する荷役作業を行うものである。また、リフトトラック1の走行体2は、後述のフレーム3、補強板8、前輪13、後輪15、エンジン16、油圧ポンプ17、作動油タンク20、キャブ21等により大略構成されている。
【0023】
3は走行体2のベースとなるフレームで、該フレーム3は、図2、図3に示す如く、前,後方向に延びる支持構造体として形成され、後述の底板4、左縦板5、右縦板6、支持台7等により大略構成されている。
【0024】
4はフレーム3の底部を構成する底板で、該底板4は、所定の厚みをもった鋼板材等を用いて前,後方向に延びる板体として形成されている。また、底板4は、前側に位置して後述の前輪13を支持する前輪支持部4Aと、後側に位置して後述の後輪15を支持する後輪支持部4Bと、前記前輪支持部4Aと後輪支持部4Bとの間に設けられた中間前板部4C、中間中板部4D、中間後板部4Eとにより大略構成されている。
【0025】
さらに、中間中板部4Dと中間後板部4Eとは、左縦板5の作動油タンク挿通孔5C、右縦板6のポンプ挿通孔6Aを避けるために前,後方向に間隔をもって配置されている。これにより、中間中板部4Dと中間後板部4Eとの間には、左縦板5の作動油タンク挿通孔5Cに挿入された作動油タンク20の配管接続部20Aと右縦板6のポンプ挿通孔6Aに挿入された油圧ポンプ17とが配置されている。また、中間中板部4Dと中間後板部4Eとは、中間中板部4Dよりも中間後板部4Eの方が高い位置に配設されている。
【0026】
5は底板4の左側に設けられた左縦板を示し、該左縦板5は、所定の厚みをもった鋼板材等からなり、ほぼ垂直に立ち上がって前,後方向に延びるように形成されている。また、左縦板5の前,後方向の中間位置には、前,後方向に離間して支持ブラケット5A,5Bが設けられ、該各支持ブラケット5A,5B上には後述のキャブ21が取付けられる。さらに、左縦板5の前,後方向の中間位置には、図3に示すように、作動油タンク挿通孔5Cが設けられ、該作動油タンク挿通孔5Cには、後述する作動油タンク20の配管接続部20Aが挿通される。
【0027】
6は底板4の右側に設けられた右縦板で、該右縦板6は、左縦板5の右側に所定の間隔をもってほぼ平行に配設されている。そして、右縦板6は、左縦板5と同様に、所定の厚みをもった鋼板材等を用いて形成され、ほぼ垂直に立ち上がって前,後方向に延びるように形成されている。また、右縦板6の右側には、前,後方向の中間位置に後述の支持台7を介してエンジン16、油圧ポンプ17等が取付けられ、後側には燃料タンク(図示せず)が取付けられている。
【0028】
さらに、右縦板6の前,後方向の中間位置には、図4に示す如く、機器挿通孔となるポンプ挿通孔6Aが形成され、該ポンプ挿通孔6Aは、図2、図3に示すように、後述するエンジン16に取付けられた油圧ポンプ17を挿通できるように大きく開口している。また、右縦板6の左側には、図5に示すように、ポンプ挿通孔6Aの上側位置に該ポンプ挿通孔6Aを囲むように後述の補強板8が取付けられている。
【0029】
ここで、フレーム3を構成する右縦板6は、前,後方向の中間位置に大きく開口するポンプ挿通孔6Aを設けたことにより、この前,後方向の中間位置で強度が低下する。このため、右縦板6の前,後方向の中間位置には、後述の補強板8を設ける構成としている。
【0030】
また、7は右縦板6の右側に取付けられた角枠状の支持台(図2、図3参照)で、該支持台7は、前輪13と後輪15との間となる前,後方向の中間位置で右縦板6にボルト止め等の手段で取付けられている。そして、支持台7は、後述のエンジン16、油圧ポンプ17、ラジエータ18、オイルクーラ19等を支持するものである。
【0031】
次に、8は右縦板6の左側に前,後方向に伸長して設けられた補強板で、該補強板8は、後述する前輪13と後輪15との間となる前,後方向の中間に位置して右縦板6のポンプ挿通孔6Aの近傍を跨いで設けられている。これにより、補強板8は、ポンプ挿通孔6Aの位置で右縦板6の強度を高めることができる。また、補強板8は、図6、図7に示すように、後述する本体板9と曲げ板部11とを一体的に固着することにより、右縦板6に沿って前,後方向に延びる1枚の板体として形成されている。
【0032】
9は補強板8の本体部分を構成する本体板を示している。この本体板9は、前,後方向に継目のない1枚の鋼板材を用い、前側に位置する前部板9A、中間に位置する中部板9Bおよび後側に位置する後部板9Cにより中央部が上側に突出した山形状に形成されている。また、本体板9には、中部板9Bの下側で右縦板6のポンプ挿通孔6Aに対応する位置に油圧ポンプ17を避けるようにポンプ用開口9Dが形成されている。これにより、本体板9は、全体としてポンプ挿通孔6Aの周囲で上側に湾曲しつつ前,後方向に延びる形状となっている。
【0033】
ここで、ポンプ用開口9Dは、下向きに開口するほぼコ字状に形成され、右縦板6に形成されたポンプ挿通孔6Aの上側周囲を囲んでいる。これにより、ポンプ用開口9Dは、ポンプ挿通孔6Aに油圧ポンプ17が挿通するのを許しつつ、該ポンプ挿通孔6Aの周辺部分を補強することができる。
【0034】
一方、本体板9は、山形状(湾曲形状)に形成することにより、周囲の機器、配管等を避けつつ、前部板9A、中部板9B、後部板9Cの位置でそれぞれ大きな高さ寸法をもって形成することができる。これにより、本体板9は、後述の折曲げ部10と曲げ板部11との間隔を大きくすることができ、右縦板6に固着したときには、図8に示すように、大きな閉断面構造を形成することができる。
【0035】
さらに、本体板9の前部板9Aと後部板9Cとは、図6に示すように、それぞれの下端部の位置が上,下方向に異なり、前部板9Aよりも後部板9Cの方が寸法差Gだけ高い位置に配置されている。ここで、前部板9Aと後部板9Cとの寸法差Gは、底板4の中間中板部4Dと中間後板部4Eとの段差とほぼ同じ寸法に設定され、これにより、本体板9の前部板9A下端を底板4の中間中板部4D上に乗せ、後部板9C下端を底板4の中間後板部4E上に乗せることにより、補強板8を上,下方向の所定位置に位置決めすることができ、この後の溶接作業を容易に行なうことができる。
【0036】
10は本体板9の上側の周縁部に設けられた折曲げ部で、該折曲げ部10は、本体板9の上側の周縁部を右縦板6側(右側)に折曲げることにより、本体板9の山形状に沿うように形成されている。また、折曲げ部10は、本体板9の上側の周縁部を折曲げて形成することにより、補強板8の上側部分の強度を高めることができるから、右縦板6を効果的に補強することができる。
【0037】
ここで、折曲げ部10は、図9に示すように切出された本体板9′の各折曲げ代10A,10B,10Cを点線に沿って折曲げた後、折曲げ代10A,10B間の当接部10Dと折曲げ代10B,10C間の当接部10Eにそれぞれ溶接を施すことにより本体板9と一体形成されている。
【0038】
11は本体板9の右側に一体的に固着された折曲げ部としての曲げ板部を示している。この曲げ板部11は、折曲げ部10とほぼ同じ幅寸法をもった短冊状の鋼板材等からなり、該鋼板材の長さ方向の複数箇所に曲げ加工を施すことにより、本体板9のポンプ用開口9Dに沿うほぼコ字状に形成されている。また、曲げ板部11は、本体板9のポンプ用開口9Dとほぼ同様に、右縦板6のポンプ挿通孔6Aの上側周囲を囲むことにより、ポンプ挿通孔6Aに油圧ポンプ17が挿通するのを許しつつ、該ポンプ挿通孔6Aの近傍を補強するものである。
【0039】
そして、曲げ板部11は、図8に示すように、幅方向の端縁をポンプ用開口9Dの周囲に押し当て、この状態で溶接手段を施すことにより、本体板9に一体的に固着されている。これにより、曲げ板部11は、本体板9の下側の周縁部を曲げて形成することにより、補強板8の下側部分の強度を高めることができるから、折曲げ部10と一緒に右縦板6を効果的に補強することができる。
【0040】
このように構成された補強板8は、図8に示すように、本体板9のポンプ用開口9Dが右縦板6のポンプ挿通孔6Aに合うように折曲げ部10と曲げ板部11とを右縦板6の左側に押し当て、この状態で折曲げ部10の先端部、曲げ板部11の先端部と右縦板6の左側面との間に溶接手段を施すことにより、右縦板6に固着されている。このときに、補強板8は、本体板9の前部板9Aを底板4の中間中板部4Dに乗せると共に、後部板9Cを中間後板部4Eに乗せることにより、右縦板6の所定位置に容易に位置決めすることができる。
【0041】
そして、補強板8は、右縦板6に溶接されることにより、大きな断面積をもった閉断面構造を形成することにより、ポンプ挿通孔6Aによって強度が低下する右縦板6の前,後方向の中間位置を補強することができる。また、右縦板6は、前,後方向の中間位置を補強板8によって補強することにより、後述する前輪13と後輪15との間に生じる捩れに対しても、フレーム3の強度を高めることができる。
【0042】
12,12はフレーム3を構成する底板4の前輪支持部4Aに左,右方向に突出して設けられた左,右の前車軸(図2中に図示)で、該各前車軸12は、前輪支持部4Aの下側に設けられたデファレンシャル装置(図示せず)から左,右方向に延び、それぞれの先端部には前輪13が回転可能に取付けられている。そして、左,右の前輪13は、キャブ21内に配設されたステアリング装置(図示せず)によって操舵され、走行体2を直進走行、左旋回走行、右旋回走行させるものである。また、左,右の前輪13は、回転源となる走行用油圧モータ(図示せず)に接続されている。
【0043】
14,14はフレーム3を構成する底板4の後輪支持部4Bに左,右方向に突出して設けられた左,右の後車軸で、該各後車軸14の基端部は、後輪支持部4Bの下側に設けられたデファレンシャル装置(図示せず)から左,右方向に延び、それぞれの先端部には後輪15が回転可能に取付けられている。また、後輪15は、ステアリング装置により前輪13と連動して操舵することができる。そして、左,右の後輪15は、回転源となる走行用油圧モータに接続されている。
【0044】
これにより、左,右の前輪13と左,右の後輪15は、回転源となる走行用油圧モータからそれぞれのデファレンシャル装置に回転が伝達されることにより、走行体2を前進走行、後退走行させることができる。
【0045】
16は支持台7の後側寄りにエンジンマウント(図示せず)を介して搭載された原動機としてのエンジン(図2中に図示)で、該エンジン16は、左,右方向に延在する横置き状態に配設されている。
【0046】
17はエンジン16の左側に連結された油圧ポンプを示している。この油圧ポンプ17は、エンジン16によって駆動されることにより、後述の作動油タンク20からの作動油を油圧モータ、作業装置22等に供給するもので、作動油配管(図示せず)を介して作動油タンク20の配管接続部20Aに接続されている。そして、油圧ポンプ17は、図3中に二点鎖線で示すように、エンジン16と一緒に支持台7上に搭載され、該支持台7を右縦板6に取付けることにより、図2に示す如く、右縦板6のポンプ挿通孔6Aに挿通されて左,右の縦板5,6間に配設されている。
【0047】
18は支持台7の前側寄りに配設されたラジエータで、該ラジエータ18は、エンジン冷却水を冷却するものである。また、19はラジエータ18の前側に重ねて設けられたオイルクーラで、該オイルクーラ19は、作動油タンク20に戻される作動油を冷却するものである。
【0048】
20はフレーム3の前,後方向の中間に位置して左縦板5に取付けられた作動油タンク(図2中に図示)で、該作動油タンク20は、その配管接続部20Aを作動油タンク挿通孔5Cに挿通した状態で、左縦板5に取付けられている。そして、作動油タンク20は、作動油を貯えるもので、配管接続部20Aが作動油配管(図示せず)を介して油圧ポンプ17とオイルクーラ19に接続されている。
【0049】
21は左側の前輪13と後輪15との間に位置してフレーム3の左側に設けられたキャブで、該キャブ21は、運転室を画成する中空構造体として形成され、左縦板5の支持ブラケット5A,5B上に支持されている。また、キャブ21内には、ステアリング装置、運転席、操作レバー等(いずれも図示せず)が配設されている。
【0050】
次に、22は地上から高所に荷物を運搬する荷役作業等を行なう作業装置で、該作業装置22は、走行体2の後部に起伏可能に設けられている。また、作業装置22は、基端側がフレーム3の後部上端側にピン結合され、先端側が前側に延びたブーム23と、該ブーム23の先端側に回動可能に取付けられたフォーク等の荷役具24とにより大略構成されている。
【0051】
ここで、ブーム23は、複数段の伸縮式ブームとして構成され、ブーム伸縮シリンダ23Aによって伸縮することができる。また、ブーム23は、フレーム3との間に設けられたブーム起伏シリンダ25を伸縮させることにより起伏することができる。
【0052】
本実施の形態によるリフトトラック1は、上述の如き構成を有するもので、次に、リフトトラック1を用いて荷役作業を行う場合について説明する。
【0053】
まず、作業装置22の荷役具24に荷物を積載し、走行体2を走行させて作業現場まで移動する。そして、キャブ21内のオペレータが作業装置22用の操作レバーを操作する。これにより、ブーム起伏シリンダ25によってブーム23が起立すると共に、ブーム伸縮シリンダ23Aによってブーム23が伸長し、荷役具24に積載した荷物を地上から高所へと運搬する荷役作業を行うことができる。
【0054】
また、走行体2の走行時や作業装置22による荷物の運搬時には、例えばフレーム3を捩るように荷重が作用する。しかし、フレーム3は、右縦板6に設けた補強板8により強度を高めているから、捩れ等の荷重に対しても十分に耐えることができる。
【0055】
かくして、本実施の形態によれば、フレーム3を構成する右縦板6には補強板8を設け、該補強板8は、ポンプ挿通孔6Aの近傍となる周辺部分で右縦板6に沿って前,後方向に延びる1枚の板体により形成している。従って、ポンプ挿通孔6Aが設けられた右縦板6の前,後方向の中間位置を補強板8によって補強し、フレーム3の強度を高めることができる。しかも、1枚の板体として形成された補強板8は、少ない部品点数、加工工数で容易に製造することができるから、生産性の向上、製造コストの低減を図ることができる。
【0056】
また、補強板8は、本体板9の周縁部に設けた折曲げ部10、曲げ板部11をフレーム3の右縦板6に固着することにより、右縦板6との間に大きな断面積をもった閉断面構造を形成することができる。これにより、補強板8は、閉断面構造によってフレーム3の強度をより一層高めることができる。或いは、フレーム3、補強板8を薄肉な板材により形成することができ、これらの軽量化や製造コストの低減を図ることができる。
【0057】
一方、フレーム3の右縦板6にポンプ挿通孔6Aを設けた場合でも、補強板8には、本体板9の上側周縁部に折曲げ部10を設け、下側周縁部に曲げ板部11を設けているから、本体板9の強度、即ち右縦板6の強度を効果的に高めることができる。
【0058】
また、補強板8は、右縦板6に取付けるときに、本体板9の前部板9A下端を底板4の中間中板部4Dに乗せ、本体板9の後部板9C下端を底板4の中間後板部4Eに乗せることにより、右縦板6(ポンプ挿通孔6A)に対して所定の位置に容易に位置決めすることができる。従って、補強板8を右縦板6に溶接するときの位置決め作業を簡略化することができ、組立作業時の作業性を向上することができる。
【0059】
さらに、補強板8は、前輪13と後輪15の間に位置するフレーム3の前,後方向の中間位置に設けているから、この中間位置に生じるフレーム3の捩れ変形も抑えることができ、耐久性、信頼性を向上することができる。
【0060】
なお、実施の形態では、フレーム3を構成する右縦板6に補強板8を設け、該補強板8によって右縦板6のポンプ挿通孔6Aの周囲の強度を高める構成とした。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば図2中に二点鎖線で示す第1の変形例のように、右縦板6の補強板8に加えて、フレーム3の左縦板5にも補強板8とほぼ同様に形成された他の補強板31を設ける構成としてもよい。この場合には、補強板31によって左縦板5の作動油タンク挿通孔5Cの周囲の強度を高めることができる。また、右縦板6の補強板8を廃止し、左縦板5だけに補強板31を設ける構成としてもよい。
【0061】
また、実施の形態では、補強板8は、本体板9の一部を折曲げて折曲げ部10を形成し、曲げ板部11を溶接して本体板9と一体化させることにより1枚の板体として形成した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば図10に示す第2の変形例のように、1枚の板材に曲げ加工(プレス加工)を施すことにより補強板41を形成する構成としてもよい。即ち、第2の変形例による補強板41は、本体板42の上側に曲げ加工によって上側折曲げ部43を形成し、本体板42の下側に曲げ加工によって下側折曲げ部44を形成する構成としてもよい。
【0062】
さらに、実施の形態では、作業装置22の先端側に荷役作業用の荷役具24を設けたリフトトラック1を例に挙げて説明している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば作業装置の先端側に作業員が搭乗する作業台が設けられた高所作業車等の他の作業機械にも広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施の形態に適用されるリフトトラックを示す正面図である。
【図2】リフトトラックをキャブ、作業装置等を取外した状態で示す平面図である。
【図3】補強板が取付けられたフレームにエンジン、油圧ポンプを取付ける状態を示す外観斜視図である。
【図4】右縦板の前,後方向中間位置を左側から拡大して示す要部拡大図である。
【図5】右縦板の左側に補強板を取付けた状態を拡大して示す要部拡大図である。
【図6】補強板を拡大した状態で左側からみた外観斜視図である。
【図7】補強板を拡大した状態で右側からみた外観斜視図である。
【図8】右縦板に対する補強板の取付状態を図3中の矢示VIII−VIII方向からみた要部拡大の断面図である。
【図9】補強板を曲げ加工前、組立前の状態で示す分解斜視図である。
【図10】本発明の第2の変形例による補強板を拡大した状態で右側からみた外観斜視図である。
【符号の説明】
【0064】
1 リフトトラック(作業機械)
2 走行体
3 フレーム
4 底板
4A 前輪支持部
4B 後輪支持部
4C 中間前板部
4D 中間中板部
4E 中間後板部
5 左縦板
5A,5B 支持ブラケット
5C 作動油タンク挿通孔
6 右縦板
6A ポンプ挿通孔
8,31,41 補強板
9,9′,42 本体板
9A 前部板
9B 中部板
9C 後部板
9D ポンプ用開口
10 折曲げ部
11 曲げ板部(折曲げ部)
13 前輪(車輪)
15 後輪(車輪)
16 エンジン(原動機)
17 油圧ポンプ
20 作動油タンク
20A 配管接続部
22 作業装置
43 上側折曲げ部
44 下側折曲げ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前,後方向に延びるフレームを有し該フレームに原動機、油圧機器等が搭載されると共に前,後に位置して車輪が設けられた走行体と、該走行体に設けられた作業装置とを備えてなる作業機械において、
前記フレームには、少なくとも底板と該底板の左,右両側に位置して前,後方向に延びる左,右の縦板とにより構成し、
前記フレームを構成する左,右の縦板のうち少なくとも一方の縦板には、当該縦板に沿って前,後方向に延びる1枚の板体からなる補強板を設ける構成としたことを特徴とする作業機械。
【請求項2】
前記補強板の周縁部には前記フレームの縦板側に折れ曲がる折曲げ部を設け、該折曲げ部の先端部を前記縦板に固着する構成としてなる請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記原動機と油圧機器は前記縦板に対して左,右方向に連結し、前記フレームを構成する左,右の縦板のうち少なくとも一方の縦板には連結した前記原動機と油圧機器を搭載するときに該油圧機器が挿通する機器挿通孔を設け、前記補強板は前記機器挿通孔の近傍に配置する構成としてなる請求項1または2に記載の作業機械。
【請求項4】
前記補強板の下端を前記底板上に乗せることにより位置決めした状態で前記補強板を前記縦板に固着する構成としてなる請求項1,2または3に記載の作業機械。
【請求項5】
前記補強板は、前記前,後の車輪間となるフレームの前,後方向の中間位置に配置する構成としてなる請求項1,2,3または4に記載の作業機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−88920(P2006−88920A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−277717(P2004−277717)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】