説明

作業車両の変速装置

【課題】オペレータにとって操作性に優れ、最適な変速位置となる作業車両の変速装置を提供することである。
【解決手段】作業時の自動変速操作スイッチにより自動変速機能が入りに操作され、且つ所定時間長押しされた場合は、メモリに記憶されている副変速レバーにより選択された変速段と該変速段に対し予め設定された主変速位置を、自動変速操作スイッチを長押しした時点の副変速レバーによる変速段と主変速増減速スイッチによる主変速位置に更新して記憶させる処理を行う更新記憶機能部を有する制御装置を設けた作業車両の変速装置である。自動変速操作スイッチの長押しにより、容易にその時点の副変速位置と主変速位置をメモリに設定し直せる。したがって、コストもかからず使用態様を変更でき、オペレータにとって最適な変速位置で作業走行ができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用、建築用、運搬用等の作業機を連結した作業車両、特にトラクタなどの変速装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トラクタなどの作業車両の変速装置は、主変速装置の他に副変速装置などが組み合わされて多段変速の形態が取られている。したがって、目標の変速段にするためにはこれらの変速装置の操作が必要であり、操作が煩雑となるため、オペレータにとっても負担となっていた。また、路上走行の場合と作業時の場合とでは走行速度が異なるため、変速レバーを作業用の操作位置と路上走行用の操作位置の2箇所に切り替え可能として、作業用の操作位置では全部の主変速位置の切り替えを可能とし、路上走行用の操作位置では一部の主変速位置の切り替えを可能とするなどスイッチ操作の軽減を図ったものなどがある。
しかし、両操作位置では利用できる主変速位置が異なるため、両操作位置間で変速レバーを移動させる度に主変速位置が切り替わることで変速ショックが生じるという問題があった。
【0003】
そこで、下記特許文献1には、変速レバーに作業を想定した複数の主変速位置を組み合わせた第一操作ポジション(作業位置又は路上走行位置)と第一操作ポジションでの副変速位置を同一として且つ路上走行を想定し第一操作ポジションとは異なる主変速位置を組み合わせた第二操作ポジション(路上走行位置又は作業位置)を設け、車両が走行状態で、且つ変速レバーを第一操作ポジションから第二操作ポジションに切り替えた時には第二操作ポジションで組み合わされた主変速位置に関わらず主変速位置を維持する一方、車両が停止状態で、且つ変速レバーを第一操作ポジションから第二操作ポジションに切り替えた時には第二操作ポジションで組み合わされた主変速位置のうち、所定の変速位置へ切り替える制御手段を備えた作業車両の変速制御装置が開示されている。
【0004】
すなわち、車両が走行状態で、且つ変速レバーを第一操作ポジションから第二操作ポジションに切り替えた時には主変速位置は維持され、車両が停止状態で、且つ変速レバーを第一操作ポジションから第二操作ポジションに切り替えた時には主変速位置は所定の変速位置(作業位置から路上走行位置に切り替えた場合は最低速位置であり、路上走行位置から作業位置に切り替えた場合は使用時間が最も長い位置)へ切り替えられる。
【0005】
したがって、同一の副変速位置を保持した状態で変速レバーの操作ポジションを切り替えるだけで主変速位置を作業に適した位置、もしくは走行に適した位置だけに切り替え可能となり、各状態において主変速位置の設定が簡単になる。また、走行中に変速レバーを操作したときは変速レバーの操作ポジションに関わらず主変速位置を保持するので不意な増速や減速がなくなり、車両の操作性や安全性が向上する。一方、車両の停止中には、変速位置を最も使用頻度の高い位置(路上走行位置から作業位置に切り替えた場合)や最低速位置(作業位置から路上走行位置に切り替えた場合)など所定位置に自動で切り替えることでオペレータによる不要な変速操作を極力なくして変速に係る操作性の向上を図っている。
【0006】
また、下記特許文献2には、高低2段の変速位置を有する第1主変速装置と少なくとも3段以上の変速位置を有する第2主変速装置とからなる変速装置及び高中低3段の変速位置を有する副変速装置を備え、更に車体が走行状態か作業状態かを指定又は検出する手段を設け、車体が走行中に指定されているときは、副変速を高速位置に切り換え操作した場合の主変速の自動変速位置を中間の変速段とする車両の変速制御装置や、更に作業中に使用する頻度の高い変速位置を記憶する手段を設けて、車体が作業中に指定されているとき、副変速を切り換え操作した場合の主変速の自動変速位置は記憶手段に記憶された頻度の高い変速位置とする車両の変速制御装置が開示されている。
【0007】
このように、車体が走行中に指定されているときは、路上走行を行う場合の目標変速位置に素早く操作できるようにして、車体が作業中に指定されているときは、副変速を切り換え操作した場合に、作業中の目標変速位置である使用頻度の高い変速位置に瞬時に操作できることで、オペレータの操作労力の軽減を図っている。
【特許文献1】特開2005−147197号公報
【特許文献2】特開2003−42288号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記特許文献1記載の発明では、車両の停止中には、変速位置を最低速位置や最も使用頻度の高い位置などに自動で切り替えられるが、オペレータによってはそれ以外の変速位置にしたい場合もあり、柔軟性に欠ける。
また、前記特許文献2によっても、車体が走行中に指定されているとき、副変速を高速位置に切り換え操作した場合の主変速の自動変速位置は中間の変速段となり、車体が作業中に指定されているとき、副変速を切り換え操作した場合の主変速の自動変速位置は記憶手段に記憶された使用頻度の高い変速位置となることで、路上走行を行う場合の目標変速位置や作業中の目標変速位置に瞬時に操作できるが、記憶された変速位置以外の変速位置にしたい場合は、オペレータが設定、操作をし直す必要がある。
【0009】
作業内容や走行状態に応じた適切な速度はオペレータによって個人差があるため、できれば、作業開始時又は走行開始時には、個々のオペレータにとって最適な車速で作業又は走行できることが好ましい。この場合、特許文献1及び特許文献2記載の発明では、作業や走行を開始するときに、予め設定された(目標)変速位置で発進するため、オペレータにとっては最適な車速でない場合もある。
また、上記特許文献等記載の発明によれば、作業中では記憶手段に記憶された使用頻度の高い変速位置となるため、記憶された変速位置を変更するためには、更新したい変速位置において現在の記憶された変速位置よりも長く使用する必要があり、作業をし直さなければならない。したがって、従来の作業車両の変速装置では、作業開始時や走行開始時の車速を容易に変更できない。また、特許文献2記載のマイコンチェッカにより変更する場合でも、マイコンチェッカは外部入力装置であり持ち歩くのが面倒である。
【0010】
本発明の課題は、操作性に優れ、作業や走行を開始するときの変速位置の変更が容易にでき、個々のオペレータにとって最適な変速位置で作業や走行を開始できるトラクタなどの作業車両の変速装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の課題は、次の解決手段により解決される。
請求項1記載の発明は、耕耘を含む作業時の走行速度に応じて複数の変速段に変速操作が可能な副変速操作装置(179)と、前記複数の変速段の各々の変速段から更に細かい変速段である主変速の中の主変速位置を選択する手動操作が可能な主変速操作装置(192a,192b)と、作業時の前記副変速操作装置(179)により選択される各変速段に対して予め設定された主変速位置を記憶している記憶部(100a)と、前記副変速操作装置(179)により選択された変速段の中の前記記憶部(100a)により記憶された主変速位置に対応する作業走行車速に変速を行なう自動変速機能部とを有する制御装置(100)と、前記制御装置(100)の作業時の自動変速機能部を入り切り操作するための自動変速操作スイッチ(200)とを設けた作業車両の変速装置であって、前記制御装置(100)は、前記作業時の自動変速操作スイッチ(200)により自動変速機能が入りに操作され、且つ所定時間長押しされた場合は、長押しされた時点の前記副変速操作装置(179)による変速段に対して予め設定され、前記記憶部(100a)に記憶されている主変速位置を、前記作業時の自動変速操作スイッチ(200)が長押しされた時点の主変速操作装置(192a,192b)による主変速位置に更新して記憶させる処理を行う更新記憶機能部を有する作業車両の変速装置である。
【0012】
請求項2記載の発明は、路上走行を含む複数の変速段に変速操作が可能な副変速操作装置(179)と、前記複数の変速段の各々の変速段から更に細かい変速段である主変速の中の主変速位置を選択する手動操作が可能な主変速操作装置(192a,192b)と、路上走行時のエンジン回転数を加減するためのアクセル操作装置(175)と、前記副変速操作装置(179)により選択された路上走行の変速段に対して予め設定された主変速位置を記憶している記憶部(100a)と路上走行時にアクセル操作装置(175)の操作量に応じたエンジン回転数に対応する車速になるように適切な主変速位置を選択して自動で変速するとともに、該自動変速開始時には前記記憶部(100a)により記憶された主変速位置に対応する発進車速から自動で変速を開始する自動変速機能部とを有する制御装置(100)と、前記制御装置(100)の路上走行時の自動変速機能部を入り切り操作するための自動変速操作スイッチ(199)とを設けた作業車両の変速装置であって、前記制御装置(100)は、前記路上走行時の自動変速操作スイッチ(199)により自動変速機能が入りに操作され、且つ所定時間長押しされて、更に主変速操作装置(192a,192b)により主変速位置が操作され、再び路上走行時の自動変速操作スイッチ(199)が所定時間長押しされた場合は、前記路上走行の変速段に対して予め設定され、前記記憶部(100a)に記憶されている主変速位置を、前記主変速操作装置(192a,192b)により操作された主変速位置に更新して記憶させる処理を行う更新記憶機能部を有する作業車両の変速装置である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明によれば、作業時の自動変速操作スイッチ(200)を長押しすることで、容易に自動変速操作スイッチ(200)を長押しした時点(現時点)の副変速操作装置(179)による変速段と主変速操作装置(192a,192b)による主変速位置が記憶部(100a)に更新、記憶される。したがって、自動変速操作スイッチ(200)を長押しすることで、副変速操作装置(179)により選択された変速段に対して予め設定、記憶されている主変速位置から、現時点の主変速位置に更新して記憶させることができ、自由に設定し直せる。このように、コストもかからずに使用態様を変更できる。
【0014】
そして、作業走行をするときの副変速操作装置(179)による変速段の中の主変速位置の変更が容易にでき、個々のオペレータにとって最適な速度で作業走行ができる。
また、オペレータの変更時や作業内容の変更時に即座に記憶部(100a)に記憶された副変速操作装置(179)による変速段に対する主変速位置を変更、更新できるため、柔軟な使用方法が可能となり、オペレータの要求に応じた操作性が向上するようになる。
【0015】
請求項2記載の発明によっても、路上走行時の自動変速操作スイッチ(199)を長押しして、更に主変速操作装置(192a,192b)による操作と路上走行時の自動変速操作スイッチ(199)の再度の長押しにより、主変速操作装置(192a,192b)により操作された主変速位置が記憶部(100a)に更新、記憶される。
したがって、自動変速操作スイッチ(199)を長押し等することで、副変速操作装置(179)により選択された変速段に対して予め設定、記憶されている主変速位置から、主変速操作装置(192a,192b)により操作した主変速位置に更新して記憶させることができ、自由に設定し直せる。この様に、コストもかからずに使用態様を変更できる。そして、路上走行を開始するときの副変速操作装置(179)による変速段の中の主変速位置の変更が容易にでき、個々のオペレータにとって最適な速度で走行を開始できる。
また、オペレータの変更時に即座に記憶部(100a)に記憶された副変速操作装置(179)による変速段に対する主変速位置を変更、更新できるため、柔軟な使用方法が可能となり、オペレータの要求に応じた操作性が向上するようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施の形態について以下図面と共に説明する。なお、本明細書では車両の前進方向に向かって左右をそれぞれ左、右といい、前後をそれぞれ前、後ということにする。ここで、本明細書において左右の走行車軸とは、作業車両の進行方向を向いて左右方向の走行車軸をいう。そして、本発明の実施の形態によれば、作業車両の一例であるトラクタを例として以下に説明する。
【0017】
図1には本発明の実施形態のトラクタの左側面図を示し、図2には、図1のトラクタのトランスミッション内の動力伝動図を示す。更に図3には図2の動力伝動図の油圧回路図を示し、図4には図1の変速装置の前後進動力入切用の油圧クラッチシリンダの構成図を示す。また、図5には図1のトラクタの制御ブロック図を示す。
【0018】
乗用四輪駆動の走行形態を有するトラクタ車体Tは、ステアリングハンドル73(図6,図7)で前輪61を操向しながら走行運転する。車体Tの後部にはロータリ耕耘装置等の作業機を3点リンク機構により昇降可能に装着して対地作業を行うことができる。この車体Tは、前端部にフロントアクスルハウジング(図示せず)に支架させるエンジンブラケットを介してエンジン62を搭載し、このエンジン62の後側にクラッチハウジングや、ミッションケース65等を一体的に連結し、このミッションケース65の最後部にリヤアクスルハウジング(図示せず)を設けて、左右両側部に後輪63を軸装する。
【0019】
図2には、図1のトラクタのトランスミッション内の動力伝動図を示す。
エンジン62は後側に突出のエンジン軸1を有し、このエンジン軸1をクラッチハウジング部の入力軸2に連結する。ミッションケース65内の伝動機構を介して後端部の出力軸3及びPTO軸14を連動すると共に、ミッションケース65の下部に設けた前輪出力軸5を連動する構成としている。この出力軸3はミッションケース65内の後部の略中央部において前後方向に沿うように軸受されて後端にドライブピニオンギヤ53を有し、リヤデフ45のデフリングギヤ46に噛合し、リヤアクスルハウジングに沿って軸装されたリヤデフ軸10と後輪軸11を遊星減速機構を介して連動する。また、前輪出力軸5はミッションケース65の下部からエンジン62の下部を経て、フロントアクスルハウジングの中央部に設けられるフロントデフ47の入力軸26に連結され、このフロントアクスルハウジングに沿って軸装されるフロントデフ軸12及び遊星減速機構等を介して前輪軸13へ連動する構成としている。なお、入力軸2から油圧ポンプ80(図3)への動力取り出し用のギヤ駆動軸15,17が入力軸2に並列配置されている。
【0020】
図2に示すトランスミッションの噛合式変速装置は、エンジン軸1によって駆動される入力軸2から入力ギヤ31に連動されるPTO変速カウンタギヤ44を有するPTOカウンタ軸9上にPTOクラッチパック66を設けている。PTOクラッチパック66や入力ギヤ31などからなるPTOの動力伝達部の構成をPTOクラッチEということにする。
【0021】
また入力軸2には前後進切替用の前後進切替ギア42、42が遊転状態に設けられ、一方の後進側の前後進切替ギア42には入力軸2と並列配置されたバックカウンタ軸8に設けられたバックカウンタギア43が噛合し、他方の前進側の前後進切替ギア42には主変速軸19上に固定した入力ギヤ48と該主変速軸19上に遊転自在に設けた有効径の異なる4つの主変速ギヤ33を設ける。これら4つの主変速ギヤ33は、四段変速に構成され、クラッチパック76によって切替シフトされ、4つの主変速ギヤ33から構成される変速装置を主変速油圧クラッチAということにする。
【0022】
前記主変速軸19上には、前記主変速油圧クラッチAの4つの主変速ギヤ33のうち、最も有効径の小さい主変速ギヤ33(第1速用)と3番目に有効径の小さい主変速ギヤ33(第3速用)との間にクラッチパック76を固定して設け、2番目に有効径の小さい主変速ギヤ33(第2速用)と最も有効径の大きい主変速ギヤ33(第4速用)との間にクラッチパック76を固定して設ける。前記2つのクラッチパック76には、各主変速ギヤ33を主変速軸19と一体回転するように連結する摩擦クラッチが各々設けられている。
【0023】
また、前後進切替ギヤ42の前進側のギヤと噛合可能な入力ギヤ48は、前後進切替ギヤ42の後進側のギヤともバックカウンタ軸8上のバックカウンタギヤ43と噛合っており、該前後進切替ギヤ42のうちの前進側のギヤ42と後進側のギヤ42とを、前後独立した摩擦クラッチから成る2つの前後進切替クラッチパック60の切替によって択一的に入力軸2と一体化して、前進走行と後進走行とに切替えられる構成である。後述する油圧シリンダ85(図3)を含めこれらギヤ42とクラッチパック60などからなる構成を前後進油圧クラッチDということにする。
また、前後進油圧クラッチDの切替を手動で行う前後進切替レバー115(図6)をステアリングハンドル73のポスト部分に設け、クラッチペダル119(図6)はハンドルポストの足下に設けている。
【0024】
主変速軸19と同軸芯位置に設けられた副変速軸20にはクラッチパック76によって切替シフトされる有効径の異なる2つの高低速切替ギヤ34が設けられており、主変速後の駆動力を更に減速して高速と低速とに切り替えることができる。この高速と低速とに切り替え可能なギア構成をハイ・ロー変速クラッチBということにする。
【0025】
さらに副変速軸20と同軸上には有効径の異なる3つの副変速ギヤ35を有する出力軸3が配置されている。出力軸3は副変速ギヤ35により三段変速する構成としている。この三段変速可能なギヤ35の構成を副変速ギア伝動機構Cということにする。
【0026】
また、副変速ギヤ35に噛合するクリープカウンタギヤ49を備えたクリープカウンタ軸21が出力軸3に並列位置に設けられている。また主変速ギヤ33や高低速切替ギヤ34等と噛合する主変速カウンタギヤ39と高低速切替ギヤ40を有する走行カウンタ軸6が主変速軸19や副変速軸20と並列位置に配置されており、主変速軸19から伝動される回転が主変速ギヤ33で変速されて、その回転が主変速カウンタギヤ39と高低速切替ギア40を順次経由して副変速軸20に設けられた高低速切替ギヤ34に伝達される。高低速切替ギヤ34に伝達された動力はクラッチパック76を介して副変速軸20上に設けた副変速ギヤ35による変速機構を介して出力軸3に伝達される。
この走行動力伝達系では、PTO正逆切替ギヤ37機構を備えたPTO連動軸4を回転する伝動形態である正逆転PTOを設けている。
【0027】
また、前記副変速ギヤ35と噛み合う副変速カウンタギヤ38の副変速カウンタ軸27を回転自在に支持すると共に、出力軸3から前輪取出ギヤ36を介して連動される前輪連動ギヤ51を有する前輪連動軸28を設け、この前輪連動軸28の前方延長軸芯上にはPTO減速ギヤ50を有するPTO減速軸23を設けている。さらに、前輪連動軸28の並行位置にPTO連動軸4を設け、該PTO連動軸4と同軸芯上前端部にPTO連動軸4を正転と逆転に切替えるPTO正逆切替ギヤ37のPTO正逆切替軸22と、PTO変速ギヤ32のPTO変速軸18を配置している。
【0028】
また、PTO正逆切替ギヤ37と噛合するPTO逆回転カウンタギヤ52を有するPTO逆回転カウンタ軸24が前記PTO正逆切替軸22の側部に設けられ、PTOクラッチパック66の入りによって、入力軸2からPTO変速ギヤ32、PTO変速カウンタギヤ44及びPTO正逆切替ギヤ37等を介してPTO正逆切替軸22へ動力が伝動するように構成している。前記正逆切替ギヤ37は前記PTO変速ギヤ32と同形態のクラッチリングを用いる形態としている。このPTO正逆切替軸22の側方にはPTO逆回転カウンタギヤ52を有する逆回転カウンタ軸24を設け、PTO逆回転カウンタギヤ52は、PTO減速ギヤ50からの連動を受けてPTO正逆切替ギヤ37を逆回転することができる。なお、前記PTOカウンタ軸9の後方に減速軸23が配置される。
【0029】
更に、ミッションケース65内の下段部に配置された前輪出力軸5は、ミッションケース65の後部底部に軸装されて、前輪連動軸25やカップリング等を介して前記フロントデフ47の入力軸26へ連結する。この前輪出力軸5の横側には前輪駆動軸7が配置されている。前輪駆動軸7の後端には前輪ギヤ55が設けられている。また、前記出力軸3の後端部の前輪取出ギヤ36に前輪連動軸28上の第1の前輪連動ギヤ51が噛合し、該第1の前輪連動ギヤ51を介して前輪連動軸28に伝達される出力軸3の駆動力は、前輪連動軸28と一体回転する第2の前輪連動ギア54に伝達されて、該前輪連動ギア54から前輪駆動軸7に伝達される。
【0030】
また前輪駆動クラッチパック67を前輪駆動軸7上に設け、この駆動軸7の前端部から前輪出力軸5へギヤ連動する。また、有効径の異なる2つの前輪駆動切替ギヤ41が前輪駆動クラッチパック67の左右に配置されており、該2つの前輪駆動切替ギヤ41は、カウンタ軸59に設けた有効径の異なる2つの切替駆動カウンタギヤ56に各々噛み合わされ、前輪駆動クラッチパック67を択一的に接続することにより、2つの減速比のうちのいずれか一方の減速比で前輪駆動軸7を駆動することができる。
【0031】
前輪駆動クラッチパック67を中立位置にシフトするときは前輪61を駆動させない後輪駆動の二駆形態とし、この前輪駆動クラッチパック67を油圧操作によって切り換えて低速位置にシフトするときは前輪61を後輪63に対して約1倍の等速駆動させる四駆形態とし、また、この前輪駆動クラッチパック67を油圧操作によって切り換えて高速位置にシフトするときは前輪61を後輪63に対して約2倍に増速駆動させる四駆形態とすることによって走行することができる。
【0032】
上記構成からなる噛合式変速装置により、エンジン62の回転動力は主クラッチを構成する前後進油圧クラッチDを経由して4段の変速段からなる主変速油圧クラッチAと2段の変速段からなるハイ・ロー変速クラッチB及び3段の変速段からなる副変速ギア伝動機構Cで合計24段のうちのいずれかの変速段に変速され、得られた回転動力はリヤデフ45を経て後輪63が駆動される。また、前記副変速ギア伝動機構Cで変速された回転動力は前輪駆動クラッチパック(二駆四駆切替クラッチ)67にも伝達され、該クラッチパック67により前輪61が「等速」もしくは「増速」に切り換えられた後、フロントデフ47を経て前輪61が駆動される。
【0033】
また、PTO変速ギヤ32、走行系の主変速ギヤ33、高低速切替ギヤ34及び副変速ギヤ35等を、ドライブピニオンギヤ53を有する出力軸3の軸芯上に沿って配置する構成とする。走行系の伝動は、入力軸2から出力軸3の軸芯上に配置される主変速ギヤ33、高低速切替ギヤ34及び複変速ギヤ35等を介してドライブピニオンギヤ53へ多段変速連動される。また、PTO系の変速は、この出力軸3の軸芯上の前端部に設けられるPTO変速ギヤ32を介して連動される。
【0034】
次に図3には図2の動力伝動図の油圧回路図を示す。
図3の油圧回路図では左右の後輪63を独立して制動する左右のブレーキシリンダ83、前輪61へ伝達する動力を「等速」もしくは「増速」に切り換える四駆切換クラッチシリンダ99、ステアリングハンドル73の回転操作により作動するパワーステアリング装置103、PTOクラッチシリンダ104、PTOクラッチ切替換弁105、PTOクラッチ比例圧力制御弁106などが設けられている。なお、一点鎖線部分の回路101はメイン油圧回路(作業機昇降・作業機水平や外部油圧取出しなど)となり、サブ回路(走行・ブレーキ・デフロック・PTO側回路)とあまり関係がないため、回路図の図示を省略している。
【0035】
油圧ポンプ80から吐出した作動油は、減圧弁81aを介して主変速油圧クラッチAの第4速用と第2速用の各ギア33をクラッチパック76を介してそれぞれ作動させる油圧クラッチシリンダ88と油圧クラッチシリンダ87を切り替える主変速(2−4)クラッチ比例圧力制御弁(2−4速昇圧ソレノイド)89に供給され、さらに主変速油圧クラッチAの第1速用と第3速用の各ギア33をそれぞれ作動させる油圧クラッチシリンダ91と油圧クラッチシリンダ92を切り替える主変速(1−3)クラッチ比例圧力制御弁(1−3速昇圧ソレノイド)93に供給される。
【0036】
減圧弁81aを経由する作動油は、前後進クラッチシリンダ85のオン・オフ制御弁129を介して前後進クラッチシリンダ85の前進側と後進側の油圧クラッチDを切り替える切替弁86(前進ソレノイド86F,後進ソレノイド86R)に供給される。該前後進クラッチシリンダ85の前進側と後進側の油圧クラッチDのいずれに作動油が供給されているかは前進側クラッチ圧力センサ110(図5)と後進側クラッチ圧力センサ111(図5)で検出できる。また、前・後進クラッチDの油圧を昇圧するための前後進昇圧ソレノイド90を設けている。
【0037】
そして、同様に、上記及び下記油圧クラッチシリンダに供給される作動油はそれぞれの油圧クラッチシリンダへの入口側の油路に設けた圧力センサ(例えば油圧クラッチAの第1速用から第4速用までの圧力センサ145a〜145dやPTOクラッチEの圧力センサ146など(図5))で検知できる構成になっている。
【0038】
また、油圧ポンプ80から吐出した作動油は、減圧弁81bを介してブレーキバルブ82aを経由して左右のブレーキシリンダ83に分岐供給される。前記ブレーキバルブ82aは後輪63を選択する切替制御弁であり、該ブレーキバルブ82aはブレーキ力を調整する圧力制御弁82bと一体構成となっている。
【0039】
さらに、減圧弁81bを経由する作動油は、前記第1速〜第4速用の各ギア33で変速された速度を「高速」と「低速」の二つのギヤ40のいずれかにクラッチパック76を介して作動させるハイ・ロー油圧クラッチシリンダ95を切り替えるための制御弁96a,96bに供給される。
また、減圧弁81bを経由する作動油は、デフロック制御弁97を経てフロントデフ47用の前輪デフロックシリンダ98a及びリアデフ45用の後輪デフロックシリンダ98bに分岐される。
【0040】
さらに、前輪駆動クラッチパック67のギア41の切替用の油圧シリンダ99には切替制御弁94を経て前記減圧弁81bを経由する作動油が供給される。
同様に、減圧弁81bを経由する作動油は、PTO用バルブ105,106を介してPTOクラッチシリンダ104に供給され、PTOクラッチEの圧力を調整する。
また図3に示す油圧ポンプ80からの油圧は、パワステアリングハンドル73の操作で作動されるパワステ油圧弁107に作動油を供給する構成である。
【0041】
図4には、前後進ギア42,42の切替を行う前後進クラッチシリンダ85の断面構成図を示す。
シリンダ85の前後一対のシリンダ85F、85R内には流入する作動油(オイル)によりそれぞれ作動するピストン78F、78Rと該ピストン78F、78Rの作動で互いに接触する複数組の摩擦板からなる前後進切替クラッチパック60、60がそれぞれ設けられている。
【0042】
クラッチペダル119の非操作時(足踏み式ペダル119の踏み込み操作をしていない時)には前進と後進用のいずれかのシリンダ85F、85R内にオイルが流入してピストン78F又は78Rが作動状態であり、前後進切替クラッチパック60、60が接続状態となり、エンジン動力が変速装置内の前進側の駆動機構又は後進側の駆動機構に伝達される。また各シリンダ85F、85R内にはリターンスプリング(圧縮スプリング)77F、77Rが設けられており、該リターンスプリング77F、77Rはそれぞれ前進、後進クラッチパック60、60の接続状態を解除する側に付勢される。したがってクラッチペダル119を操作すると(足踏み式ペダル119の踏み込み操作をすると)とシリンダ85F又は85R内のオイルが流出して、リターンスプリング77F又は77Rの付勢力でピストン78F又は78Rが戻し方向に移動し、該前進又は後進用のクラッチパック60の接続状態が解除される。
【0043】
また、図6には、図1のトラクタの操縦席付近の上面図を示し、図7には同じく斜視図を示し、図8(a)には図6及び図7に示したスイッチボックス180の平面図を示し、図8(b)には図8(a)の側面図を示す。
トラクタの操縦席16の左側には、トラクタの前進と後進の切り替えを行う前後進切替レバー115や駐車ブレーキ172、前方側のPTOチェンジレバー173a(2速−N(中立)−1速にチェンジ可能)、後方側のPTOチェンジレバー173b等を配置している。後方側のPTOチェンジレバー173bは、型式によって3種類ある(機能が異なるだけで図は同じである)。
【0044】
Z型は正逆切換レバー(前側が正転、後側が逆転)であり、WX型はエコノミーPTO切換レバー(前側が切−後側が入)であり、入りにすると、PTO軸が所定回転ダウンする。また、GWD型はグランドPTO切換レバー(前側が切−後側が入)であり、入りにするとPTO軸の回転が車速に同期(シンクロ)する。
【0045】
一方、トラクタの操縦席16の右側には、エンジン回転数を変更するアクセル操作装置としてのアクセルペダル175やアクセルレバー176(前に倒すとエンジン回転数増大、一番手前にするとアイドリングになる)、更に圃場や建設、土木作業場など(以下、圃場という)の作業領域(以下、圃場内という)における作業時のエンジン回転数を設定してメモリ(記憶部)100aに記憶させるためのエンジン回転数記憶スイッチ177aなどがある。エンジン回転数記憶スイッチ177aは、いわゆるシーソースイッチであり、上側又は下側を押して指を離すと自動的に押していない状態に戻る。また、コントローラ(制御装置)100のメモリ100aには2通りのエンジン回転数を記憶できるので、その切換スイッチである。
【0046】
例えば、エンジン回転数記憶スイッチ177aの上側を押すとエンジン回転数がA回転数になり、下側を押すとB回転数となる。上側を押して指を離すとエンジン回転数記憶スイッチ177aは押す前の位置に戻るが、スイッチ177aは入り状態になっており、エンジン回転数はコントローラ100によりA回転数になるように制御されて保持される。同様に、下側を押して指を離すとエンジン回転数記憶スイッチ177aは押す前の位置に戻るが、スイッチ177aは入り状態になっており、エンジン回転数はコントローラ100によりB回転数に制御されて保持される。
【0047】
本実施形態の場合は2通りのエンジン回転数を記憶できる例を示しているが、それよりも多い3通り以上の回転数を記憶できる構成でも良い。この場合は、スイッチを換える必要があり、例えば、上下左右にシーソーするスイッチにすると4通りの回転数が記憶可能となる。
【0048】
また、エンジン回転数記憶スイッチ177aの後方のエンジン回転数設定スイッチ177bもシーソースイッチであり、上側又は下側を押して指を離すと自動的に押していない状態に戻る。そして、エンジン回転数記憶スイッチ177aを押した後(上側又は下側)、押した状態のままエンジン回転数設定スイッチ177bの上側を押すとエンジン回転数が上昇し、又は下側を押すとエンジン回転数が下降する。エンジン回転数記憶スイッチ177aは押した状態でなくてもよい。そして、新たに設定した回転数がメモリ100aに記憶される。
【0049】
更に、アクセルレバー176の後方には、副変速操作装置としての副変速レバー179(低速179e、中速179d、高速179c、路上走行速179b)を設けており、低速8段、中速8段、高速8段、路上走行速4段(高速8段の上側4段)などの変速が可能である。副変速レバー179はレバーガイド179aに沿って前後方向と左右方向に作動し、前方右側に倒すと高速179c、前方左側に倒すと路上走行速179b、後方右側に倒すと中速179d、後方左側に倒すと低速179eとなる。そして、前後方向位置及び左右方向位置は副変速レバー位置センサ(179ba〜179ea)(図5)により検出されて、当該センサ信号がコントローラ100(図5)に入力される。また、後述する主変速増減速スイッチ192a,192bの操作による主変速位置も各センサ192aa,192baから当該センサ信号がコントローラ100に入力される。
【0050】
更に前後進切替レバー115の操作位置を検出する前後進レバーセンサ167(図5)やアクセルペダル175の踏み込み位置を検出するアクセルポジションセンサ175a(図5)等によるセンサ信号がコントローラ100に入力されることで、コントローラ100によりそれぞれの操作内容に応じた制御が行われる。
【0051】
図2には副変速ギア伝動機構Cの拡大図を示している。
副変速レバー179の位置が低速179eでは、ギア137がギア139に噛み合い、伝動の流れは、副変速軸20、副変速ギヤ35、副変速カウンタギヤ38、ギア134、ギア140、ギア135、クリープカウンタギヤ49a、クリープカウンタギヤ49b、ギア136、ギア139、ギア137、出力軸3となる。
副変速レバー179の位置が中速179dでは、ギア131がギア133に噛み合い、伝動の流れは、副変速軸20、副変速ギヤ35、副変速カウンタギヤ38、ギア134、ギア140、ギア133、ギア131、出力軸3となる。
【0052】
副変速レバー179の位置が高速179cでは、ギア131がギア130に噛み合い、伝動の流れは副変速軸20、副変速ギヤ35、ギア130、ギア131、出力軸3となる。 路上走行速179bでは副変速のレバー位置の変更はなく、高速位置の状態であり、高速の上側4段(5速〜8速)を使用する。
【0053】
なお、トランスミッション内の副変速ギア伝動機構Cは3段であるが、副変速レバー179の変速位置は、4段(低速179e、中速179d、高速179c、路上走行速179b)である。主変速油圧クラッチAは4段、ハイ・ロー変速クラッチBは2段であるため、低速、中速、高速で副変速の位置に対する変速段数は各8段となる。すなわち、副変速が低速で8段、副変速が中速で8段、副変速が高速で8段となる。路上走行速については、高速8段の上側(高速側)4段となり、コントローラ100により上側4段のみ使用することにしている。したがって、副変速レバー179を路上走行速にしても、トランスミッション内の変速機構は何も動かず、高速位置のままである。
【0054】
また、サブコントロールレバー1連目178aは外部油圧取り出しレバーのことであり、トラクタのロータリ耕耘装置を外して別の作業機を駆動するときなどに高圧のオイルを供給するためのものである。サブコントロールレバー1連目178aの後方にはサブコントロールレバー2連目178bを配置しており、3連目(図示せず)や4連目(図示せず)を設けても良い。
【0055】
ドラフト比調整ダイヤル182は、ドラフトコントロールの感度を調整するダイヤルであり、左側に回すとポジション側、右側に回すとドラフト側となり、ポジション側(左側)にするほど負荷にかかわらず、設定している耕耘深さを維持する制御となる。また、ドラフト比調整ダイヤル182を右側に回すと負荷優先となる。すなわち、所定以上の負荷が作業機に作用すると、耕深よりも負荷を軽くするために作業機(ロータリ耕耘装置など)の図示しない作業機の昇降シリンダを少し上げるように制御する。
【0056】
したがって、圃場の状態やオペレータの好みでドラフト比を調整できる。表1には、ドラフト比の調整と圃場の状態との関係を示す。
(表1)
ドラフト比 1 5
調整ダイヤル (左回し) (右回し)
耕深 浅くする ←→ 深くする
土質 軽い ←→ 重い
【0057】
すなわちポジション側(左)に回すほど、負荷に対するロータリ耕耘装置の昇降変化量が少なくなり、耕す深さを優先する。ドラフト側(右)に回すほど負荷に対するロータリ耕耘装置の昇降変化量が大きくなり、負荷の軽減を図るようにする。
【0058】
そして、ロータリ耕耘装置の上げ調整ダイヤル183は、ロータリ耕耘装置の高さを調整するためのものであって、左側に回すとロータリ耕耘装置の高さが低くなり、右側に回すと高くなる。上げ調整ダイヤル183により、ロータリ耕耘装置の3点リンク機構の高さを調整できる。作業機によっては最も高く上げるとトラクタ本体に当たる場合もあるが、作業機の高さをリフトシリンダの伸縮により調整することで、このような不具合を防止できる。また、それほど上げる必要のない作業機は、この上げ調整ダイヤル183で調整して、効率的な作業を行うことができる。
【0059】
そして、傾き調整ダイヤル184は、ロータリ耕耘装置の傾きを調整するもので、左側に回すと右上がりとなり、右側に回すと右下がりとなる。更に4WD切替スイッチ185は走行ローダと2WDと4WDとフルターンと2WDターンに切換ができる。
【0060】
走行ローダは、路上走行やローダ作業時に使用し、通常は2輪駆動である。しかし、トラクタがぬかるみに入ったり、急な坂道、凹凸道になった場合は、自動的に4輪駆動になる。そして、ブレーキをかけると自動的に4輪駆動になったり、運転中に停止すると4輪駆動になる。すなわち、4輪駆動になることで2輪駆動の場合と比べて走行ブレーキ機能がより発揮され、安定して走行停止ができるようになる。
【0061】
2WD(2輪駆動)の場合は後輪63、63が駆動し、4WD(4輪駆動)の場合は4輪(前輪61、61、後輪63、63)が駆動する。また、フルターンは4WDにおいて旋回時に前輪61、61の速度が増速され、素早い旋回となる。更に2WDターンは固い圃場などでは、旋回時のみ前輪61、61の駆動となり、旋回が素早くスムーズに行える。
【0062】
更に、水平シリンダ(図示せず)の手動上げ下げスイッチ186を手動で操作することにより、ロータリ耕耘装置などの3点リンク機構の水平シリンダを動かすことができる。そして、圃場の状態により、ロータリ耕耘装置の左右傾斜を調整する。また、手動上げ下げスイッチ186は、ロータリ耕耘装置などの作業機の脱着等に使用する。
【0063】
また、PTO入り切りスイッチ187を押しながら右側に回すとPTOが入りになってロータリ耕耘装置が作動し、PTOが入り状態の時に押すと自動でPTOが切りに戻るとロータリ耕耘装置が停止する。更に、PTO手動自動スイッチ188を左側に回すと手動になり、ロータリ耕耘装置の作動を手動で設定して操作する。この場合は、PTO入り切りスイッチ187により、PTO変速が入っているとロータリ耕耘装置が常時作動する。
【0064】
また、PTO手動自動スイッチ188を右側に回すと自動になり、ロータリ耕耘装置の作動が自動で行われる。この場合、ロータリ耕耘装置を上昇させると自動でロータリ耕耘装置の回転が止まり、ロータリ耕耘装置を下降させると自動でロータリ耕耘装置の回転が再開する。
【0065】
そして、PTO手動自動スイッチ188が手動側に設定されている場合は、PTO入り切りスイッチ187が入りの状態で、チェンジが入っていると(PTOチェンジレバー173が中立以外の時の状態をいう)常時PTO軸14が回転する。PTO手動自動スイッチ188が自動側に設定されている場合は、クラッチペダル119を踏んだり、ロータリ耕耘装置を上昇させることにより回転が止まる。この機能は、主に水田作業で利用する。
【0066】
そして、デフロックスイッチ189は、シーソースイッチであり、操縦席16とは反対側を押すとデフロックとなり、もう一度押すとデフロックは解除される。なお、オペレータの腕などが不用意に当たることによる誤操作を防止するため、座席16側は押せない構成である。
【0067】
そして、操縦席16右側のアームレスト部には作業機の昇降位置をコントロールするための作業機ポジションレバー190が配置されており、作業機ポジションレバー190を後側に倒すと作業機は上昇し、前側に倒すと作業機は下降する。この作業機ポジションレバー190の操作角度をポテンショメータ(図示せず)により検出することでその検出値に応じて作業機は昇降する。
【0068】
また、作業機昇降スイッチ191はシーソースイッチであり、後側をワンプッシュするとロータリ耕耘装置は最大位置まで上昇し、前側をワンプッシュすると作業機ポジションレバー190の設定位置まで下降する。最大位置とは、上げ調整ダイヤル183で調整した位置のことである。
【0069】
更に、主変速操作装置としての主変速増減速スイッチ192a,192bは、主変速の変速段のシフトアップ(シフトダウン)用のスイッチであり、副変速レバー179によって操作された変速段(低速、中速、高速、路上走行速)を更に細かく手動で変速するためのものである。主変速増減速スイッチ192a,192bによって上述のように低速は更に8段(1速〜8速の主変速位置)、中速は更に8段(1速〜8速の主変速位置)、高速は更に8段(1速〜8速の主変速位置)、路上走行速は4段(通常、高速の5速〜8速の主変速位置)に変速が可能である。
【0070】
主変速増速スイッチ192aは主変速の変速段(主変速位置)のシフトアップ用のスイッチであり、一回押すごとに変速段がシフトアップし、主変速減速スイッチ192bは、変速段のシフトダウン用のスイッチであり、一回押すごとに変速段がシフトダウンする。エンジン回転数に関係なく、手動操作されると操作された変速段に応じた速度に変速される。
【0071】
また、これらスイッチの後方にはシガーライター194がある。そして、スイッチボックス180にある作業機上昇・下降モニターランプ195はロータリ耕耘装置などの作業機が上昇又は下降する際に点灯する。また、ATシフト作業感度ダイヤル196は、後述するATシフト作業スイッチ(作業時の自動変速操作スイッチである)200が入りのときに作用する。
ATシフト作業スイッチ200を入りにすると、後述する自動変速(オートドライブ)が作用するが、ATシフト作業感度ダイヤル196は、この自動的に車速を増減速する自動変速の感度を変更するダイヤルであり、右側に回すと感度がアップし、左側に回すと感度がダウンする。なお、スイッチボックス180内のスイッチを操作しない場合は蓋211を閉じてスイッチボックス180内に埃などが入ることを防いでいる。
【0072】
下げ速度ダイヤル197は、作業機下降速度を調整するダイヤルであって、右側に回すと速度が大きくなって作業機は速く降りる。したがって、重量が軽い作業機(例えば水田の代掻機など)などに好適である。一方、左側に回すと速度が小さくなって作業機は遅く降りる。この場合は重量が重い作業機(例えばスキ作業機)などに好適である。
【0073】
そして、ブレーキ調整ダイヤル198を左側に回すとブレーキが弱くなり、右側に回すとブレーキが強くかかる。ブレーキ調整ダイヤル198は、後述するオートブレーキ入切スイッチ206が入りのときに作用する。
【0074】
また、ATシフト路上スイッチ(路上走行時の自動変速操作スイッチである)199を入りにすると、ATシフト路上スイッチセンサ199aからコントローラ100に当該センサ信号が入力されて、副変速レバー179を路上走行速に設定した路上走行のときにエンジン回転数に応じて副変速高速8段の上側4段のうちの適切な変速段に自動で変速する変速可能な自動変速(オートドライブ)機能がオンして自動変速制御となる。ATシフト路上スイッチ199が入りのときは主変速増減速スイッチ192a、192bを操作しても無効となり、アクセルペダル175の踏み込みのみで変速する。
なお、主変速増減速スイッチ192a、192bを手動操作するときは、ATシフト路上スイッチ199やATシフト作業スイッチ200が切りのときである。
【0075】
副変速が路上走行速のときは、副変速高速の上側4段(5速〜8速)を使用するが、ATシフト路上スイッチ199が切りのときに主変速増減速スイッチ192a、192bを操作して、例えば、3速〜8速にして、その後、ATシフト路上スイッチ199を入り状態にすると、アクセルペダル175の操作のみで3速〜8速の間を自動変速する。
【0076】
そして、ATシフト作業スイッチ200を入りにすると、メモリ100aには副変速レバー179のそれぞれの位置(低速、中速、高速)における使用時間が一番長い主変速位置(1速〜8速の8段の変速段)が記憶されているが、ATシフト作業スイッチ200を入りにして、副変速レバー179を変速操作(低速、中速、高速)すると、ATシフト作業スイッチセンサ200a及び副変速レバー位置センサ(179ba〜179ea)からコントローラ100に当該センサ信号等が入力されて、メモリ100aに記憶されている主変速位置に自動的に変速されるようになる。
【0077】
副変速レバー179の位置が路上走行速である路上走行時に、ATシフト路上スイッチ199を入りにするとエンジンの回転数に応じて自動で変速制御され、発進、停止時のクラッチ119の操作のみで走行中の変速操作は要しない。また、クラッチペダル119を踏んでいなくても、前後進切替レバー115が中立の場合は車体Tが停車した状態であり、前後進切替レバー115を操作してアクセルペダル175を踏み込んでいくと加速しながら自動変速される。そして、自動変速(オートドライブ)制御時には、アクセルペダル175の踏み込み量に応じたエンジン回転数に対応する車速になるように自動的に変速される。
【0078】
すなわち、アクセルペダル175を踏み込んだ状態ではエンジン回転数が高回転数になり、現在の主変速位置(図2の主変速油圧クラッチAとハイロー変速クラッチBの8段変速のうちの現在の変速位置である。ただし、8速より上はないため、8速は除く)では加速しても車速を上げることができない場合は、コントローラ100により現在の変速位置に対してシフトアップする。ブレーキを踏んで減速するときには、アクセルペダル175は踏んでいないので、車速に対応した変速位置に自動変速する。
【0079】
そして、接続感度変速スイッチ201を押すと入り、再び押すと切りになり、接続感度変速スイッチ201を入り切りすることで、主変速油圧クラッチAにより主変速を変速したときの接続フィーリングを変更できる。例えば、接続感度変速スイッチ201を入りにするとランプ201aが点灯して緩やかな変速をし、切りにするとランプ201aが消灯して急接続(クラッチの早めの接続)をする。プラウなどを後部に装着する牽引系の作業で接続感度変速スイッチ201を使用して切りにすると、主変速油圧クラッチAによる主変速の変速操作時に主変速油圧クラッチAの接続時間が短くなる。
【0080】
更に、接続感度PTOスイッチ202はPTOクラッチEのつながり方の変更ができる。接続感度PTOスイッチ202を押すたびに、ロータリ、牧草1、牧草2の順で点灯する。接続感度PTOスイッチ202をロータリにすると、PTOクラッチEのつながり方が速くなる。主にロータリ耕耘装置などの作業機で使用する。PTO軸14が回転し始めると、すぐに圃場の土の抵抗に負けない回転力で回る。
【0081】
また、接続感度PTOスイッチ202を牧草1あるいは牧草2にすると、PTOクラッチEのつながりが緩やかになる。牧草1と牧草2で2種類の変速が可能である。主に牧草作業機やスノーブロワーなどPTOクラッチEの接続をゆっくり行う作業機で使用する。接続感度PTOスイッチ202をロータリにした場合と同様にPTO軸14で使用する。
【0082】
水平感度スイッチ203は、作業機の自動水平制御装置の動作感度を切り換えるためのスイッチであり、水平感度スイッチ203を押すと、動作感度が鈍くなって自動水平制御の動きが遅くなる。そして、再び水平感度スイッチ203を押すと動作感度が元に戻る。そして、バックアップ入切スイッチ204を入りにすると、トラクタの後進時にロータリ耕耘装置が自動で上昇する。
【0083】
また、オートリフト入切スイッチ205を入りにしてステアリングハンドル73を回すと、自動でロータリ耕耘装置が上昇する。更にオートブレーキ入切スイッチ206を入りにしてステアリングハンドル73を回すと、自動で旋回内側の後輪63のみにブレーキがかかる。そして、水平切換スイッチ207により、ロータリ耕耘装置などの作業機の水平制御を行うことができる。水平切換スイッチ207を押すと、自動水平、手動、平行、傾斜の順にランプが点灯する。自動水平では、水平センサ(図示せず)により、自動的に水平を保持する。手動の場合は、傾き調整ダイヤル184で手動調整する。平行では、トラクタ車体Tに対して、ロータリ耕耘装置を常に平行に保つ。そして、傾斜では、地面に対してロータリ耕耘装置をある一定の角度をもたせるように制御する。
【0084】
3点切換スイッチ208は、リフトシリンダ(図示せず)の取り付け穴の選択によって、スイッチボックス180の3点切換スイッチ208の選択を行う。カテゴリ1の作業機(ロワーリンクの前穴に付けるとき)は1を選択し、カテゴリ2の作業機(ロワーリンクの後穴に付けるとき)は2を選択する。そして、オートアクセルスイッチ209は、入りにした状態でロータリ耕耘装置を上昇すると、エンジン回転数が1700rpm程度まで低下する。
【0085】
トラクタの作業時には、上述のように、ATシフト作業スイッチ200を入りにすると、メモリ100aには副変速レバー179のそれぞれの位置(低速、中速、高速)における使用時間が一番長い主変速位置(1速〜8速の8段の変速段)が記憶されている。このメモリ100aに記憶されている副変速レバー179の操作位置と主変速位置との組み合わせを、メモリ変速位置と言う場合がある。そして、ATシフト作業スイッチ200を入りにして、副変速レバー179を変速操作(低速、中速、又は高速に操作)すると、その副変速位置における作業走行時のメモリ100aに記憶されている主変速位置(メモリ変速位置)に自動的に変速されるようになる。
【0086】
しかし、本実施形態によれば、更に、メモリ100aに記憶されている主変速位置をオペレータが任意に更新、変更できる構成とした。すなわち、ATシフト作業スイッチ200を入りにして所定時間(例えば、5秒程度)長押しすると、その時(現時点)の副変速レバー179の操作位置と主変速位置をEEPROMなどのメモリ100aに更新、記憶する構成である。すなわち、メモリ変速位置が更新されて、新たな副変速レバー179の操作位置と主変速位置との組み合わせがメモリ100aに記憶される。
【0087】
従来のトラクタでは、上述のように、一番長く作業(作業時に使用)した位置を副変速レバー179の位置毎で1速のみ記憶して(作業時における副変速レバー179の各位置ごとに一番使用時間が長い主変速位置を記憶して)その主変速位置を作業走行時の主変速位置とするため、一度記憶された主変速位置を変更するためには、更新したい主変速位置において現在の記憶された主変速位置よりも長く使用する必要があり、作業をし直さなければならなかった。または、ATシフト作業スイッチ200を切りにして手動で主変速増減速スイッチ192a、192bを操作することで変速走行しなければならなかった。
【0088】
しかし、本構成を採用することにより、ATシフト作業スイッチ200を長押しすることで、容易にATシフト作業スイッチ200を長押しした時点(現時点)の副変速レバー179による副変速位置とその副変速位置における主変速位置がメモリ100aに更新、記憶される。すなわち、新たな副変速レバー179の操作位置と主変速位置との組み合わせがメモリ変速位置としてメモリ100aに記憶される。このように、副変速レバー179により選択された副変速位置に対して予め設定、記憶されている主変速位置から、現時点の主変速位置に更新して記憶させることができ、自由に設定し直せる。
【0089】
したがって、本構成による作業車両の変速装置は、コストもかからず使用態様を変更でき、経済的で操作性に優れる。そして、作業走行をするときの副変速レバー179による副変速位置に対する主変速位置の変更が容易にでき、個々のオペレータにとって最適な速度で作業走行ができる。また、オペレータの変更時や作業内容の変更時に、即座にメモリ100aに記憶された作業走行時の副変速レバー179の操作位置に対応する主変速位置を変更、更新できるため、柔軟な使用方法が可能となり、オペレータの要求に応じた操作性が向上するようになる。
【0090】
図9には、図1のトラクタのコントローラによる制御例のフローを示す。
トラクタによる作業を開始すると、コントローラ100により各センサ、スイッチ類の読み込みが行われるが、このときにATシフト作業スイッチ200のオンを確認する。
【0091】
作業開始時には、まずATシフト作業スイッチ200をオンして、副変速レバー179を(例えば中速位置に)操作する。副変速レバー179を操作すると、主変速位置がその副変速位置(中速位置)で長く使用されている主変速位置(メモリ100aに記憶されている主変速位置であって、例えば4速)となる。この4速は液晶表示部215(図5、図7)に表示される。ここで、4速以外を希望する場合は、主変速増減速スイッチ192a,192bを押すことにより、例えば4速から2速に変更する場合は、減速スイッチ192bを2回押して2速にすると、図9の「各センサ、スイッチ類の読み込み」により、4速以外(この例では2速)に操作後の主変速の位置(2速)を読み込む。このとき液晶表示部215には、「2速へ変更?」と所定時間表示されるが、所定時間が過ぎると無効となり、「4速」表示に戻る。そして、この所定時間内にATシフト作業スイッチ200を長押しする(ステップA)ことでYesに進み、この時点の副変速レバー179(中速位置)と主変速の位置(この例では2速)がメモリ変速位置として更新記憶される。
【0092】
なお、主変速増減速スイッチ192a、192bを手動操作するときは、ATシフト作業スイッチ200が切りのときであるため、手動操作で変速して走行する場合は、ATシフト作業スイッチ200を切りにする。ATシフト作業スイッチ200はオン−オフスイッチであり、ATシフト作業スイッチ200を長押しせずに短押しすると、ATシフト作業スイッチ200は切り状態になって、すなわち、自動変速(オートドライブ)機能は解除されて手動変速走行となる。
図9のステップAにおいてATシフト作業スイッチ200を長押しする時点では、自動変速機能がオンであるため、実際には主変速増減速スイッチ192a、192bを操作しても、その操作は無効であり変速されない。
【0093】
したがって、現在の主変速位置が2速になるわけではなく、4速のままである。すなわちATシフト作業スイッチ200をオン時で主変速増減速スイッチ192a,192bを操作しても、現在の主変速位置は変更されない。
【0094】
ステップAに進み、ATシフト作業スイッチ200を5秒間長押ししたときは、現時点(ATシフト作業スイッチ200を長押しした時点)の副変速位置である中速、主変速位置が2速の組み合わせがメモリ変速位置としてメモリ100aに記憶され、液晶表示部215に表示される。
【0095】
例えば、ATシフト作業スイッチ200を長押しして新たなメモリ変速位置を記憶後は、一旦ATシフト作業スイッチ200を短押しして切りにしても、再びATシフト作業スイッチ200を押すと、主変速位置が2速となり、液晶表示部215に「2速」と表示される。再びATシフト作業スイッチ200を押さない場合は、手動変速走行となる。
【0096】
また、例えば、ATシフト作業スイッチ200が切り状態で、副変速レバー179を低速位置にして、主変速位置を主変速増減速スイッチ192a,192bにより3速にしてATシフト作業スイッチ200を5秒間長押しすると、この副変速位置が低速、主変速位置が3速の組み合わせがメモリ100aに記憶されるようにしてもよい。すなわち、このように副変速位置と主変速位置の組み合わせをメモリ変速位置としてメモリ100aに記憶させ、一旦記憶させると、メモリ100aの記憶を解除しない限り、その副変速位置に対する主変速位置(上記の例では副変速位置が中速で主変速位置が2速の組み合わせ、副変速位置が低速で主変速位置が3速の組み合わせなど)は固定の状態となって、次回の作業開始時にATシフト作業スイッチ200をオンして、副変速レバー179を操作すると、その副変速位置に対する主変速位置(上記の例では副変速位置が中速の時は主変速位置が2速となり、副変速位置が低速の時は主変速位置が3速となる)に自動的になる。
【0097】
一方、メモリ100aの更新記憶されたメモリ変速位置の記憶を解除する場合は、所定時間内に所定回数以上連続してATシフト作業スイッチ200を押し続ける操作をする(例えば、5秒間に5回以上)。メモリ100aの更新記憶されたメモリ変速位置の記憶を解除すると、元の状態に戻り、すなわちその副変速位置に対する一番長い時間使用した主変速位置がメモリ変速位置として記憶された状態となる。
【0098】
また、副変速位置を高速にすると、一番長い時間使用した主変速位置(例えば5速)となるが、上記のように主変速増減速スイッチ192a,192bを押すことにより、主変速位置を(例えば5速から4速に)変更してATシフト作業スイッチ200を5秒間長押ししたときは、新しい組み合わせ(副変速位置が高速で主変速位置が4速の組み合わせ)がメモリ変速位置としてメモリ100aに記憶され、解除しない限りこのままの状態となる。
【0099】
上述のように、ATシフト作業スイッチ200はオン−オフスイッチであり、スイッチを押してオンにするとスイッチが入り状態になるが、もう一度スイッチを押す(短押し)とオフ(切り状態)になる。ステップAにおいて、副変速レバー179を(例えば、中速位置に)操作して、ATシフト作業スイッチ200を長押しせず短押ししてしまうと、ATシフト作業スイッチ200は切り状態になって、すなわち、自動変速(オートドライブ)機能は解除されて手動変速走行となる。
【0100】
なお、ATシフト作業スイッチ200をオンして、副変速レバー179のみを(例えば中速位置に)操作して主変速位置を変更操作しない場合でも、現在の主変速位置とメモリ100aに記憶されている主変速位置が違う場合がある。したがって、ステップAにおいてATシフト作業スイッチ200を5秒間長押しすると、操作した副変速レバー位置(中速位置)における最も使用時間の長い主変速位置が更新されて、現在の主変速位置と副変速レバー179が中速位置の組み合わせがメモリ変速位置としてメモリ100aに更新、記憶される。
【0101】
また、例えば操作した副変速レバー位置(中速位置)における最も使用時間の長い主変速位置と同じ主変速位置に主変速増減速スイッチ192a,192bによって操作した場合(メモリ100aに記憶されているメモリ変速位置の組み合わせ)でも、ATシフト作業スイッチ200を長押しすることで更新されて、同じ組み合わせが再記憶される。
このように、ATシフト作業スイッチ200を長押しすると、副変速レバー179、主変速増減速スイッチ192a,192bの操作の有無にかかわらず、その時点における副変速位置と主変速位置との組み合わせがメモリ変速位置として記憶される。
【0102】
図5に示すように、ATシフト作業スイッチ200が入りの場合はATシフト作業スイッチセンサ200aから当該信号がコントローラ100に入力される。また、主変速増減速スイッチセンサ192aa,192baからは主変速位置の検出信号がコントローラ100に入力され、副変速レバー位置センサ179ba〜179eaからは副変速レバー179の操作位置の検出信号がコントローラ100に入力される。
【0103】
コントローラ100内にはタイマー100bが内蔵されており、ATシフト作業スイッチ200が入りとなってから5秒間長押しされたときは、現時点における副変速レバー179の操作位置及び主変速位置がメモリ100aに記憶される。ATシフト作業スイッチ200の長押し操作後は自動変速(オートドライブ)機能であるため、記憶された副変速レバー179の操作位置及び主変速位置(メモリ変速位置)に対応する車速で直ぐに走行可能である。また、一旦ATシフト作業スイッチ200を切り状態とし、再び入り状態としても前回記憶した値(メモリ変速位置として更新、記憶された副変速位置と主変速位置)に対応する車速で走行可能となる。
【0104】
したがって、次回の作業走行時には、更新、記憶された当該副変速レバー179の位置における主変速位置(上記の例では副変速位置が中速で主変速位置が2速の組み合わせ、副変速位置が低速で主変速位置が3速の組み合わせなど)に対応する車速になる。
【0105】
また、図9に示したフローにおいて、ステップAに続いて、更にATシフト作業スイッチ200を所定時間(例えば、5秒程度、すなわち合計10秒)押し続けた場合(図10のステップB)には、メモリ100aに記憶されている主変速位置を各副変速レバー位置における初期設定の位置(工場出荷時は設定初期値(初期設定変速段)が基準となる)にしても良い。図9に示したフローにより、一旦メモリ100aに更新、記憶させた副変速と主変速位置の組み合わせを解除して、初期設定変速段に戻したい場合は、以下の操作をすればよい。
【0106】
図10には、図1のトラクタのコントローラによる別の制御例のフローを示す。
トラクタによる作業を開始すると、コントローラ100により各センサ、スイッチ類の読み込みが行われる。そして、図9の場合と同様に、ATシフト作業スイッチ200が入りであって、5秒間長押しされて(ステップA)、更に5秒間長押しされたとき(ステップB)は、メモリ100aに記憶されている副変速位置と主変速位置の組み合わせ(各副変速レバー179位置における最も使用時間の長い主変速位置の組み合わせや図9のフローで新たに記憶された副変速位置と主変速位置の組み合わせなど)が解除されて、現時点の副変速位置に対応する初期設定変速段が有効となる。なお、現時点の副変速位置に対応する初期設定変速段がメモリ変速位置としてメモリ100aに記憶されるわけではない。初期設定変速段(工場出荷時の設定初期値)は記憶値として常時保有している。すなわち初期設定変速段はメモリ100aの一部として保有しており、それを再び有効にすることで現在の主変速位置が初期設定変速段になる。
【0107】
一方、ステップBにおいて、更に5秒間長押しされなかった場合は、図9の場合と同様に、現時点における副変速位置と主変速位置がメモリ100aに記憶される。
本構成を採用することにより、メモリ100aに記憶されている各副変速レバー179位置における主変速位置(メモリ変速位置)ではなく工場出荷時の設定初期値を有効にすることで、簡単に工場出荷時の状態にリセットできる。例えば、オペレータの変更時や作業内容の変更時など、前回に使用した条件である副変速位置と主変速位置の組み合わせが有効になると、副変速レバー179を操作した場合に予期していない主変速位置になるなど、次回に作業するオペレータにとって使いづらくなる。しかし、このような場合でも容易に工場出荷時の状態に戻すことができるため、使いやすく、安全である。
【0108】
オペレータによっても個人差があるため一概には言えないが、工場出荷時の設定初期値(初期設定変速段)は一番最適と思われる値(主変速位置)に設定されており、途中で記憶更新させると、この初期設定値が不明(メモリ100aには記憶されている)となってしまい、元に戻したくても戻せなくなる。しかし、本構成を採用することで、容易に現時点の副変速位置に対応する初期設定変速段に戻すことができる。
【0109】
また、メモリ100aに記憶される主変速位置は、副変速レバー179のそれぞれの位置(低速、中速、高速)ごとにメモリ100aの各エリア(エリアA、エリアB、エリアC(図5))に記憶される構成としても良い。このように、エリア毎に記憶させることで、副変速レバー179の位置を跨って使用する場合でも、エリアを切り替えるだけでよいためコントローラ100による制御が容易となる。この場合は、制御プログラム上、エリアの指定のみで済むが、エリアを指定していない場合は、その都度、副変速レバー179の位置と主変速位置の指定が必要となる。
【0110】
また、エリア毎に分けて記憶させておくことで、例えば、エリア内の値のみを取り出して表示させたりすることが容易となる。メンテナンス時などに、記憶されている値(メモリ変速位置)と、実際に液晶表示部215に表示されている値との比較等が容易となる。
【0111】
図11には、図1のトラクタのコントローラによる別の制御例のフローを示す。
図9や図10の場合と同様に、トラクタによる作業を開始すると、コントローラ100により各センサ、スイッチ類の読み込みが行われる。そして、ATシフト作業スイッチ200が入りであって、5秒間長押しされた場合に(ステップA)、副変速レバー179の位置が低速のときは、メモリ100aのエリアAに記憶され、副変速レバー179の位置が中速のときは、メモリ100aのエリアBに記憶され、副変速レバー179の位置が高速のときは、メモリ100aのエリアCに記憶される。
【0112】
同一の作業機であっても作業中に副変速レバー179を操作する場合は副変速レバー179の位置を跨って使用する場合があり、副変速レバー179の位置ごとで個別に主変速位置を記憶可能とすれば、作業の汎用性も増す。例えば、作業機の種類として、ロータリ作業機、スキ作業機、代掻き作業機等があるが、どのような作業機であっても、同一の作業機で連続して作業を行なう場合、副変速レバー179を操作して副変速レバー179の位置を跨って使用することもある。
【0113】
そして、副変速レバー179の位置によって、使用したい主変速位置が異なることもあるので、副変速レバー179のそれぞれの位置(低速、中速、高速)ごとに使用(設定)したい主変速位置が記憶されることで、副変速レバー179を操作すると速やかに記憶されている主変速位置となるため、作業効率も向上する。特に同一の作業機であっても、副変速レバー179の位置を変更する場合も多いので、そのような場合に有用である。
【0114】
一方、路上走行時はATシフト路上スイッチ199を入りにして、副変速レバー179を低速179e、中速179d、高速179c、路上走行速179bのうちの路上走行速179bに操作すると、エンジン回転数に応じて副変速高速8段の上側4段のうちの適切な変速段に自動で変速する変速可能な自動変速(オートドライブ)機能がオンして自動変速制御となる。このときの発進時の初期速度をオペレータが任意に設定できるようにすれば、次回の走行開始時には、副変速レバー179を路上走行位置に操作するだけで、オペレータにとって最適な速度で発進できるため、操作性に優れる。
【0115】
従来のトラクタでは、副変速レバー179を路上走行速の位置にすると発進時の初期速度がトラクタの種類ごとに固定され、記憶されているものが多い。しかし、オペレータにとっては、記憶されている初期設定変速段(工場出荷時に初期設定されている主変速位置)に対応する初期速度が速すぎる場合や遅すぎる場合があり、オペレータの最適な初期速度には個人差がある。
そこで、ATシフト路上スイッチ199の操作により、容易に初期設定されている主変速位置(初期設定変速段)を変更、記憶させることができれば、次回の走行開始時には、個々のオペレータにとって最適な初期速度で発進、走行できる。
【0116】
図12には、図1のトラクタのコントローラによる別の制御例のフローを示し、図13には、図1のトラクタのメータパネルの表示部215の表示例を示した図を示す。
例えば、トラクタによる走行を開始すると、コントローラ100により各センサ、スイッチ類の読み込みが行われる。路上走行開始時に自動変速を行いたい場合、まずATシフト路上スイッチ199をオンして、副変速レバー179を路上走行位置に操作する。なお、この操作は逆でもかまわない。すなわち、副変速レバー179を路上走行位置に操作してから、ATシフト路上スイッチ199をオンしても良い。
【0117】
副変速レバー179を路上走行位置に操作すると、主変速位置が路上走行時の初期設定速(初期設定されている主変速位置(メモリ100aに記憶されている主変速位置であって、例えば5速))になる。
【0118】
次に、ATシフト路上スイッチ199を5秒間長押しすると(ステップC)、自動変速(オートドライブ)制御時で路上走行時の初期設定速を変更、記憶できる自動変速初期位置設定モードMに入る。トラクタを運転中はステップCのようにATシフト路上スイッチ199を長押しする操作は行なわない。ATシフト路上スイッチ199が入り状態であってもATシフト路上スイッチ199を長押しする操作は停車時に行う。
【0119】
また、このモードMは路上走行時にのみ必要なものである。前述の作業時には、主変速位置は基本的に変更せず、固定のまま走行する。そして、主変速位置を変更したい場合はATシフト作業スイッチ200を手動にするか、または、前述のようにメモリ100aに更新、記憶させる操作をする。作業時には作業効率を上げるために路上走行時に比べて簡素化させている。
【0120】
そして、自動変速初期位置設定モードMに入ると、図13に示すように、コントローラ100により主変速位置の1速〜8速がメーターパネル213の表示部215に詳しく表示され、その中で現在の初期設定されている主変速位置である初期設定変速段(例えば5速)がコントローラ100により点滅表示される。なお、図13の「路上」とは、副変速レバー179を路上走行位置179bに操作した場合であって、その隣の「1〜8」の数字は8段(1速〜8速)の変速段が可能であることを示している。更に表示部215の左下側には現在の車速(時速)が表示され、同様に右下側には燃料量及び水温が表示される。 このように、現在メモリ100aに記憶されている初期設定変速段(走行開始時の発進変速段である)が視認できることで、オペレータの誤操作を防ぐとともに、わざわざ確認する手間を省くことで、トラクタの操作性が向上する。
【0121】
そして、ステップD(図12)に進み、主変速増減速スイッチ192a、192bを操作して任意の主変速位置に変更する。このときATシフト路上スイッチ199がオン時で自動変速機能が作用しているため、実際に、変更した主変速位置に対応する車速に変速するわけではない。
そして、ステップEに進み、再びATシフト路上スイッチ199を所定時間(例えば、5秒程度)長押しした場合に、変更した主変速位置を走行開始時の発進変速段としてメモリ100aに記憶する。
【0122】
本構成を採用することにより、ATシフト路上スイッチ199を長押しすることで容易にメモリ100aに記憶されている副変速レバー179が路上走行速の場合の初期設定変速段(主変速位置)を更新でき、自由に設定し直せることで、コストもかからず使用態様を変更できる。メモリ100aに記憶されている副変速レバー179が路上走行速の場合の主変速位置が工場出荷時に初期設定されている初期設定変速段ではなく、新たに更新記憶された発進変速段であっても、ATシフト路上スイッチ199の長押しや主変速増減速スイッチ192a、192bの操作により、更に更新、記憶できる。
【0123】
したがって、走行を開始するときの初期設定変速段などの変更が容易にでき、個々のオペレータにとって最適な速度で走行を開始できる。また、オペレータの変更時や作業内容の変更時に即座にメモリ100aに記憶された初期設定変速段を変更できるため、柔軟な使用方法が可能となり、トラクタの汎用性が増すと共に、作業者の意図が反映して作業能率が向上するようになる。
【0124】
図14には、図1のトラクタのコントローラによる別の制御例のフローを示す。
図12に示したフローのステップCの後、更にそのままATシフト路上スイッチ199を所定時間(例えば、5秒程度、すなわち合計10秒)長押しした場合(図14のステップE)には、自動変速初期位置設定モードMに入らずに、メモリ100aに記憶されている主変速位置が初期設定されている主変速位置(工場出荷時は設定初期値(初期設定変速段)が基準となる)となるようにしても良い。
【0125】
本構成を採用することにより、ATシフト路上スイッチ199を更に長押しすることで、自動変速時の発進変速段を簡単に工場出荷時の状態(初期設定変速段)にリセットできる。例えば、オペレータの変更時や作業内容の変更時など、次回に使用する状態や状況が不明な場合に、前回に使用した条件である副変速位置と主変速位置の組み合わせが記憶されていると、副変速レバー179を操作した場合に予期していない主変速位置になるなど、次回に作業するオペレータにとって使いづらくなる。しかし、このような場合は工場出荷時の状態に戻して記憶させておけば、次回の使用時に、オペレータが変わっても分かりやすいため使いやすく、安全である。
【0126】
図15には、図1のトラクタのコントローラによる別の制御例のフローを示す。
また、図12及び図14のフローにおいて、自動変速初期位置設定モードMに入っている場合は、トラクタの走行が不可能な構成にすると良い。すなわち、自動変速初期位置設定モードMに入っている時に前後進切替レバー115を操作しても、当該操作を受け付けず、前進ソレノイド86F及び後進ソレノイド86R(図5)を昇圧しない構成である。
【0127】
図15に示すように、トラクタによる作業を開始すると、コントローラ100により各センサ、スイッチ類の読み込みが行われる。路上走行開始時には、まずATシフト路上スイッチ199をオンして、副変速レバー179を路上走行位置に操作する。そして、図12及び図14のステップCによれば、ATシフト路上スイッチ199を所定時間(例えば、5秒程度)長押しすると自動変速初期位置設定モードMに入るが、その時に前後進切替レバー115を操作してもコントローラ100は当該操作を受け付けず、前進ソレノイド86F及び後進ソレノイド86R(リニアクラッチ86F,86Rともいう)の昇圧を禁止する。
すなわち、図15のステップFにおいて、自動変速初期位置設定モードMに入っている場合は、前後進切替レバー115を操作してもコントローラ100によって、前進ソレノイド86F及び後進ソレノイド86R(リニアクラッチ86F,86Rともいう)の昇圧をしない構成である。
一方、ステップFにおいて、自動変速初期位置設定モードMに入っていない場合は、前後進切替レバー115を操作すると、コントローラ100により前進ソレノイド86F及び後進ソレノイド86Rを昇圧する。
【0128】
自動変速初期位置設定モードMに入っているときに、誤って前後進切替レバー115を操作した場合、トラクタが発進してしまうと危険であるが、本構成を採用することにより、自動変速初期位置設定モードMに入っている場合は前進ソレノイド86F及び後進ソレノイド86Rの動作を強制的に不可能とすることで、オペレータが誤った操作をしてもトラクタが動くことがないため安全である。
【0129】
なお、自動変速初期位置設定モードMではないときにも前後進切替レバー115を誤操作する場合があるが、オペレータが運転しようとする意識があるために基本的にこのような場合でも対処可能である。しかし、自動変速初期位置設定モードMの設定中ではモード設定に気が取られてしまい対処が遅れる場合がある。例えば、前後進切替レバー115にオペレータの服や袖口、膝などが当たる場合があり、モード設定中であるのに何故動き出すのか認識できない場合があるため、このような場合でもより安全性を確保したものである。
【0130】
図16には、図1のトラクタのコントローラによる別の制御例のフローを示す。
図16には、図12のフローのステップDにおいて、主変速増減速スイッチ192a、192bを操作したときの別の例を示している。このステップDにおいて、主変速増減速スイッチ192a、192bを操作して主変速位置が設定可能な最大主変速位置(上限規制主変速位置であり、例えば、6速)になった場合はそれ以上(6速以上)の増速操作を規制する構成である。なお、主変速位置は上述の1速〜8速まで設定、記憶可能であるが、例えば6速で牽制する。そして、ステップDで発進車速(発進変速段)の初期値を変更操作し、ステップGの判断で6速以上に操作されると増速操作は無効となる。
【0131】
一方、ステップDにおいて、主変速増減速スイッチ192a、192bを操作したときの主変速位置が設定可能な最大主変速位置未満(上述の例では5速以下)である場合は、主変速増減速スイッチ192a、192bにより操作された主変速位置が記憶可能になる主変速位置を受け付けてステップEに進み、ATシフト路上スイッチ199を所定時間(例えば、5秒程度)長押しすると、変更した主変速位置を走行開始時の発進変速段としてメモリ100aに記憶する。
【0132】
上述の例では、ステップGの判断で発進車速の初期値変更操作が6速未満であれば受付有効となる。すなわち、図16中の「増減速スイッチ操作位置に応じた主変速位置に変速」とは、制御プログラム上有効にするということであり、次に、ステップEでATシフト路上スイッチ199が5秒間押されると、有効にしている発進車速の主変速位置(発進変速段)をメモリ100aに記憶する。
【0133】
最大主変速位置(例えば、8速など)やその付近の主変速位置までメモリ100aに記憶設定が可能であると、設定したオペレータ自身は都合がよいが、適正な速度には個人差があるため、オペレータの変更時には速いと感じる場合もある。特に、発進車速が7速や8速などの高速状態に設定されていると、アクセルペダル175を不用意に踏み込むと急発進して危険な場合がある。
したがって、安全性の確保の観点からも、このように主変速位置が設定可能な上限規制値である最大主変速位置を定め、この最大主変速位置以上の発進車速の設定操作を受け付けないことが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明は、トラクタなどの作業車両の操作性を良くすることができ、農業用、建築用、運搬用等の様々な作業車両に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】本発明の一実施形態のトラクタの左側面図である。
【図2】図1のトラクタのトランスミッション内の動力伝動図である。
【図3】図2の動力伝動図の油圧回路図である。
【図4】図1の変速装置の前後進動力入切用の油圧クラッチシリンダの構成図である。
【図5】図1のトラクタの制御ブロック図である。
【図6】図1のトラクタの操縦席付近の上面図である。
【図7】図1のトラクタの操縦席付近の斜視図である。
【図8】図8(a)は図6及び図7のスイッチボックスの平面図であり、図8(b)は側面図である。
【図9】図1のトラクタのコントローラによる制御例のフローである。
【図10】図1のトラクタのコントローラによる別の制御例のフローである。
【図11】図1のトラクタのコントローラによる別の制御例のフローである。
【図12】図1のトラクタのコントローラによる別の制御例のフローである。
【図13】図1のトラクタのメータパネルの表示部の表示例を示した図である。
【図14】図1のトラクタのコントローラによる別の制御例のフローである。
【図15】図1のトラクタのコントローラによる別の制御例のフローである。
【図16】図1のトラクタのコントローラによる別の制御例のフローである。
【符号の説明】
【0136】
1 エンジン軸 2 入力軸
3 出力軸 4 PTO連動軸
5 前輪出力軸 6 走行カウンタ軸
7 前輪駆動軸 8 バックカウンタ軸
9 PTOカウンタ軸 10 リヤデフ軸
11 後輪軸 12 フロントデフ軸
13 前輪軸 14 PTO軸
15,17 ギヤ駆動軸 16 操縦席
18 PTO変速軸 19 主変速軸
19 主変速軸 20 副変速軸
21 クリープカウンタ軸 22 PTO正逆切替軸
23 PTO減速軸 24 PTO逆回転軸
25 前輪連動軸 26 入力軸
27 副変速カウンタ軸 28 前輪連動軸
30 アームレスト 31 入力ギヤ
32 PTO変速ギヤ 33 主変速ギヤ
34 高低速切替ギヤ 35 副変速ギヤ
36 前輪取出ギヤ 37 PTO正逆切替ギヤ
38 副変速カウンタギヤ 39 主変速カウンタギヤ
40 高低速切替ギヤ 41 前輪駆動切換ギヤ
42 前後進切替ギヤ 43 バックカウンタギヤ
44 PTO変速カウンタギヤ
45 リヤデフ 46 デフリングギヤ
47 フロントデフ 48 入力ギヤ
49 クリープカウンタギヤ
50 PTO減速ギヤ 51 前輪連動ギヤ
52 PTO逆回転ギヤ 53 ドライブピニオンギヤ
54 前輪連動ギヤ 55 前輪ギヤ
56 切替駆動カウンタギヤ
59 カウンタ軸
60 前後進切替クラッチパック
61 前輪 62 エンジン
63 後輪 65 ミッションケース
66 PTOクラッチパック
67 前輪駆動クラッチパック
73 ステアリングハンドル 76 クラッチパック
77F、77R リターンスプリング
78F、78R ピストン 80 油圧ポンプ
81a,81b 減圧弁 82a ブレーキバルブ
82b 圧力制御弁 83 ブレーキシリンダ
85 前後進クラッチシリンダ
86 前後進クラッチ比例圧力制御弁(切替弁)
86F、86R ソレノイド
89 主変速(2−4)クラッチ比例圧力制御弁
90 前後進昇圧ソレノイド
87,88,91,92 油圧クラッチシリンダ
93 主変速(1−3)クラッチ比例圧力制御弁
94 切替制御弁
95 ハイ・ロー油圧クラッチシリンダ
96a,96b 制御弁 97 デフロック制御弁
98a 前輪デフロックシリンダ
98b 後輪デフロックシリンダ
99 四駆切替クラッチシリンダ
100 制御処理装置(コントローラ)
100a メモリ 100b タイマー
101 メイン油圧回路 103 パワーステアリング装置
104 PTOクラッチシリンダ
105 PTOクラッチ切替換弁
106 PTOクラッチ比例圧力制御弁
107 パワステ油圧弁 110 前進側クラッチ圧力センサ
111 後進側クラッチ圧力センサ
115 前後進切替レバー 119 クラッチペダル
129 オン・オフ制御弁
130,131,133〜137,139,140 ギア
145、146 圧力センサ 167 前後進レバーセンサ
170 車速センサ 172 駐車ブレーキ
173 PTOチェンジレバー
175 アクセルペダル
175a アクセルポジションセンサ
176 アクセルレバー
177a、177b エンジン回転数記憶スイッチ
178a、178b サブコントロールレバー
179 副変速レバー 179a レバーガイド
179b 副変速路上速位置
179c 副変速高速位置 179d 副変速中速位置
179e 副変速低速位置
179ba〜179ea 副変速レバー位置センサ
180 スイッチボックス 182 ドラフト比調整ダイヤル
183 上げ調整ダイヤル 184 傾き調整ダイヤル
185 4WD切替スイッチ
186 手動上げ下げスイッチ
187 PTO入り切りスイッチ
188 PTO手動自動スイッチ
189 デフロックスイッチ
190 作業機ポジションレバー
191 昇降用スイッチ(作業機昇降スイッチ)
192a、192b 主変速増減速スイッチ
192aa、192ba 主変速増減速スイッチセンサ
194 シガーライター
195 作業機上昇・下降モニターランプ
196 ATシフト作業感度ダイヤル
197 下げ速度ダイヤル 198 ブレーキ調整ダイヤル
199 ATシフト路上スイッチ(路上走行時の自動変速操作スイッチ)
199a ATシフト路上スイッチセンサ
200 ATシフト作業スイッチ(作業時の自動変速操作スイッチ)
200a ATシフト作業スイッチセンサ
201 接続感度変速スイッチ
201a ランプ 202 接続感度PTOスイッチ
203 水平感度スイッチ
204 バックアップ入切スイッチ
205 オートリフト入切スイッチ
206 オートブレーキ入切スイッチ
207 水平切換スイッチ 208 3点切換スイッチ
209 オートアクセルスイッチ
211 蓋 213 メータパネル
215 表示部 A 主変速油圧クラッチ
B ハイ・ロー変速クラッチ
C 副変速ギア伝動機構 D 前後進クラッチ
E PTOクラッチ T トラクタ車体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耕耘を含む作業時の走行速度に応じて複数の変速段に変速操作が可能な副変速操作装置(179)と、前記複数の変速段の各々の変速段から更に細かい変速段である主変速の中の主変速位置を選択する手動操作が可能な主変速操作装置(192a,192b)と、作業時の前記副変速操作装置(179)により選択される各変速段に対して予め設定された主変速位置を記憶している記憶部(100a)と、前記副変速操作装置(179)により選択された変速段の中の前記記憶部(100a)により記憶された主変速位置に対応する作業走行車速に変速を行なう自動変速機能部とを有する制御装置(100)と、前記制御装置(100)の作業時の自動変速機能部を入り切り操作するための自動変速操作スイッチ(200)とを設けた作業車両の変速装置であって、
前記制御装置(100)は、前記作業時の自動変速操作スイッチ(200)により自動変速機能が入りに操作され、且つ所定時間長押しされた場合は、長押しされた時点の前記副変速操作装置(179)による変速段に対して予め設定され、前記記憶部(100a)に記憶されている主変速位置を、前記作業時の自動変速操作スイッチ(200)が長押しされた時点の主変速操作装置(192a,192b)による主変速位置に更新して記憶させる処理を行う更新記憶機能部を有することを特徴とする作業車両の変速装置。
【請求項2】
路上走行を含む複数の変速段に変速操作が可能な副変速操作装置(179)と、前記複数の変速段の各々の変速段から更に細かい変速段である主変速の中の主変速位置を選択する手動操作が可能な主変速操作装置(192a,192b)と、路上走行時のエンジン回転数を加減するためのアクセル操作装置(175)と、前記副変速操作装置(179)により選択された路上走行の変速段に対して予め設定された主変速位置を記憶している記憶部(100a)と路上走行時にアクセル操作装置(175)の操作量に応じたエンジン回転数に対応する車速になるように適切な主変速位置を選択して自動で変速するとともに、該自動変速開始時には前記記憶部(100a)により記憶された主変速位置に対応する発進車速から自動で変速を開始する自動変速機能部とを有する制御装置(100)と、前記制御装置(100)の路上走行時の自動変速機能部を入り切り操作するための自動変速操作スイッチ(199)とを設けた作業車両の変速装置であって、
前記制御装置(100)は、前記路上走行時の自動変速操作スイッチ(199)により自動変速機能が入りに操作され、且つ所定時間長押しされて、更に主変速操作装置(192a,192b)により主変速位置が操作され、再び路上走行時の自動変速操作スイッチ(199)が所定時間長押しされた場合は、前記路上走行の変速段に対して予め設定され、前記記憶部(100a)に記憶されている主変速位置を、前記主変速操作装置(192a,192b)により操作された主変速位置に更新して記憶させる処理を行う更新記憶機能部を有することを特徴とする作業車両の変速装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−19401(P2010−19401A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−182832(P2008−182832)
【出願日】平成20年7月14日(2008.7.14)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】