説明

作業車両

【課題】マフラのクーリングを適切に行うことができる作業車両を提供すること。
【解決手段】作業車両10は、ラジエータ25と、冷却ファン26と、冷却風を外部に排出する排出口29が形成されたカウンターウェイト27と、ラジエータ25の下端近傍から排出口29の下端縁に向かって延出する整流板35と、ラジエータ25とカウンターウェイト27との間、かつ整流板35の下方に設けられたマフラ32と備えている。本発明では、マフラ32によって加熱されたマフラ32周囲の空気は、排暖気の流れによって生じる負圧により吸出隙間36から吸い出されて排暖気の流れに引き込まれるので、マフラ32周囲に熱がこもることを抑制でき、マフラ32のクーリングを適切に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工場や倉庫などでの荷役作業に用いられる作業車両として、エンジン型のフォークリフトが知られている。このようなエンジン型のフォークリフトでは、ラジエータの前方(作業機側)には、ラジエータに冷却風を送る冷却ファンが設けられ、ラジエータの後方にはカウンターウェイトが設けられている。カウンターウェイトには、当該カウンターウェイト内部を前後に貫通する排出口が形成されており、排出口は、カウンターウェイトのラジエータとの対向面に開口している。対向面は、ラジエータと若干離れた位置に形成されている。冷却ファンからラジエータに送られた冷却風は、ラジエータを冷却して暖められて排暖気となった後、排出口から外部に排出される。ラジエータと対向面との間には、排暖気の流れの下端に接するような位置にマフラが設けられている。
【0003】
このようなフォークリフトとして、ラジエータの下端部と排出口の下端縁とを結び、マフラの上方を覆う整流板を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載のフォークリフトでは、整流板によりラジエータとマフラとが仕切られており、マフラからラジエータ側に放射される放射熱が整流板により遮断されるので、ラジエータの冷却効率を良好に維持できる。
【0004】
【特許文献1】特開平11−139171号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のフォークリフトでは、マフラの上方が整流板により覆われるので、マフラから放熱される熱が整流板によりマフラの周囲にこもってしまい、これによりマフラのクーリングが適切に行われなくなってしまうという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、マフラのクーリングを適切に行うことができる作業車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の作業車両は、ラジエータと、前記ラジエータに冷却風を送る冷却ファンと、前記ラジエータを冷却する際に暖められて排暖気となった前記冷却風を外部に排出する排出口が形成されたカウンターウェイトと、前記ラジエータの下端近傍から前記排出口の下端縁に向けて延出する整流板と、前記ラジエータと前記カウンターウェイトとの間、かつ前記整流板の下方に設けられたマフラとを備え、前記整流板と前記排出口の下端縁との間には、前記排暖気の流れによって生じる前記排暖気周囲の負圧により、前記マフラによって加熱された前記マフラ周囲の空気を吸い出して前記排暖気の流れに引き込ませる吸出隙間が形成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の作業車両は、請求項1に記載の作業車両において、前記冷却ファンを駆動するエンジンと、前記エンジン、前記ラジエータ、前記整流板、および前記マフラを内部に収納する車体内の空間において、前記エンジン側の空間と前記整流板下方の前記マフラ側の空間とを仕切り、前記排出口から前記吸出隙間を介して前記マフラ側の空間に前記排暖気が進入した際に、当該排暖気が前記エンジン側の空間に進入することを防止する巻返防止部材とを備えていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の作業車両は、請求項1または請求項2に記載の作業車両において、前記整流板は、前記ラジエータ側から前記排出口側に向かうに従って上方に位置するように傾斜していることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の作業車両は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の作業車両において、前記整流板は、断熱性を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、マフラによって加熱されたマフラ周囲の空気は、排暖気の流れの周囲にベルヌーイ効果によって生じる負圧により、吸出隙間を介して排暖気の流れに引き込まれるので、マフラの周囲に熱がこもることを抑制でき、マフラのクーリングを適切に行うことができる。
また、整流板がラジエータの下端近傍から排出口の下端に向けて延出しており、マフラとラジエータとを仕切っているので、整流板により、マフラからラジエータ側に放射される放射熱を遮断でき、ラジエータの冷却効率を良好に維持できる。
【0012】
請求項2の発明によれば、当該作業車両が後側に走行したり、排出口に強風が入ることにより、排暖気が吸出隙間からマフラ側の空間に侵入した場合、巻返防止板によって当該排暖気がエンジン側の空間にまで進入することを防止できるので、エンジンの冷却効率を良好に維持できる。
【0013】
請求項3の発明によれば、整流板が排出口側に向かうに従って上方に位置するように傾斜しているので、マフラにより加熱されたマフラ周囲の空気は、整流板の内側(下方)に滞留することなく整流板に沿って上昇し、吸出隙間まで案内されることとなる。そのため、吸出隙間からのマフラ周囲の空気の吸出しを効率よく行うことができる。
【0014】
請求項4の発明によれば、整流板は、断熱性を有しているので、マフラからラジエータ側に放射される放射熱を確実に遮断でき、ラジエータの冷却効率を十分に良好に維持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係る作業車両としてのフォークリフト10全体を示す側面図、図2は、フォークリフト10全体の平面図である。
フォークリフト10は、車体11の前後にそれぞれ左右の前輪12および後輪13を備えた4輪型であり、車体11内に搭載されたエンジン24(図3参照)で駆動されるエンジンフォークリフトである。ただし、本発明のフォークリフトとしては、後輪13が1つだけの3輪型であってもよい。
【0016】
車体11の前側には、荷役用の作業機14が設けられている。作業機14は、鉛直に立設されたマスト15と、マスト15に沿って昇降するフォーク爪16と、フォーク爪16を昇降駆動するリフトシリンダ17と、車体11に対して作業機14全体を所定角度範囲で前後に傾斜させるチルトシリンダ18とを備えている。
【0017】
車体11には、オペレータが着座するための運転席19が設けられている。運転席19の上方は、車体11上に取り付けられたヘッドガード20で覆われている。運転席19は下方のフードパネル21に一体に設けられている。フードパネル21は上下に開閉自在に設けられ、フードパネル21の下方には、エンジン24が収容されている。
【0018】
フードパネル21の前方には、やはり開閉自在なデッキパネル22が設けられ、後方にはサブボンネット23が設けられている。デッキパネル22を開けることで、エンジン24で用いられるオイルフィルタの交換作業等が行え、サブボンネット23を開けることで、ラジエータ25(図3参照)へのエンジン冷却水の補給等が行えるようになっている。
【0019】
図3は、ラジエータ25周辺の構成を示す断面図である。
このラジエータ25の前方には、エンジン24に設けられてラジエータ25に冷却風を送る冷却ファン26が設けられている。また、ラジエータ25の後方には、カウンターウェイト27が設けられている。カウンターウェイト27のラジエータ25との対向面28上部は、ラジエータ25から離れた側が下方となる斜面30となっている。また、対向面28の中央には、カウンターウェイト27を前後に貫通する排出口29が開口している。
冷却ファン26により車体11の下部側から吸引された冷却空気は、エンジン24表面およびラジエータ25を冷却して排暖気となった後、斜面30および後述する整流板35により排出口29へと案内され、当該排出口29から外部へ排出される。
【0020】
また、対向面28の下部には排気口31が開口している。この対向面28下部とラジエータ25下部との間にはマフラ32が設けられており、排気口31内には、マフラ32に接続される排気管33が設置される。マフラ32は、エンジン24に接続管34(エキゾーストマニホールド、触媒、およびエキゾーストパイプ)により接続されており、エンジン24から送られてくる高温の排気ガスを消音した後、排気管33を介して外部に排出する。
【0021】
図4は、整流板35周辺を示す平面図である。
このようなマフラ32の上方には、図3および図4に示すように、ラジエータ25の下端部から排出口29の下端縁に向かって延出し、マフラ32の上方を覆う整流板35が設けられている。この整流板35は、車体11を構成する図示しないフレームに固定されている。整流板35は、鋼板351と、鋼板351の下面に添付された断熱材352とを備えており、マフラ32からラジエータ25側に放射される放射熱を遮断し、ラジエータ25の冷却効率を向上させる。
【0022】
この整流板35は、後方に向かうに従って上方に位置するように傾斜しており、前述したように、カウンターウェイト27の斜面30と共に、ラジエータ25側から送られてくる排暖気を排出口29へ案内する。また、その際、整流板35は、斜面30と共に排暖気の流れを絞ることで、排暖気の流速を増加させる。このような整流板35の排出口29側端部は、排出口29内に位置しており、排出口29の端縁との間に吸出隙間36を形成している。この吸出隙間36は、整流板35と斜面30とにより排暖気の流れが急となる位置に形成されている。
【0023】
これにより、本実施形態では、マフラ32によって加熱されたマフラ32周囲の空気が、排暖気の流れ(ベルヌーイ効果)によって生じる負圧により吸出隙間36から吸い出されて排暖気の流れに引き込まれ、排暖気と共に排出口29から外部に排出されることとなるので、マフラ32周囲に熱がこもることを抑制でき、車体11下部から供給される空気などによりマフラ32のクーリングを適切に行うことができる。
しかも、吸出隙間36は、整流板35と斜面30とにより排暖気の流れが急となり、排暖気の流れによって生じる負圧が増大する位置に形成されているので、効率的にマフラ32周囲の空気を排出口29側に吸い出すことができる。
さらに、本実施形態では、整流板35は、後方側が上方に位置するように傾斜しているので、マフラ32によって加熱されて上昇するマフラ32周囲の空気を吸出隙間36へ円滑に案内できる。そのため、より効率的にマフラ32周囲の空気を排出口29側に吸い出すことができる。
【0024】
このようなフォークリフト10において、ラジエータ25の下方には、図3および図4に示すように、左右方向に延びる巻返防止板37が設けられている。この巻返防止板37により、車体11内において、エンジン24側の空間S1と、整流板35下方のマフラ32側の空間S2とが仕切られている。マフラ32側の空間S2は、図4に示すように、巻返防止板37とカウンターウェイト27との隙間により形成されて車体11側面に開口する通風口38を介して外部と連通している。
【0025】
本実施形態では、このように、エンジン24側の空間S1と、整流板35下方のマフラ32側の空間S2とが巻返防止板37により仕切られているので、フォークリフト10の高速バック走行時や、排出口29内に強風が入った時に、例え排暖気が排出口29から吸出隙間36を介してマフラ32側の空間S2に侵入してきても、巻返防止板37により、排暖気がエンジン24側の空間S1に進入することを防止でき、エンジン24の冷却効率を良好に維持できる。また、マフラ32側の空間S2と外部とを連通する通風口38が形成されているので、マフラ32側の空間S2に侵入し、巻返防止板37によりエンジン24側の空間S1への侵入を阻止された排暖気を通風口38を介して外部へ排出できる。
【0026】
〔実施形態の変形〕
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
図5は、バックカバー39を示す断面図である。
前記実施形態では、ラジエータ25からの排暖気をカウンターウェイト27の斜面30および整流板35により排出口29へと導いていたが、図5に示すように、ラジエータ25の背面に取り付けられたダクト状、かつ後方側に向かうに従って先すぼまり状のバックカバー39により、ラジエータ25からの排暖気を排出口29へ導いてもよい。この場合、バックカバー39の底面が、排出口29との間に吸出隙間36を形成する整流板35となる。
【0027】
図6は、整流板35の変形例を示す断面図である。
前記実施形態では、整流板35は、ラジエータ25側から排出口29側に向かうに従って上方に位置するように傾斜していたが、整流板35は、図6に示すように、マフラ32の外縁に沿って中央部分が上方に膨出した断面凸状に形成されていてもよく、どのような形状に形成されていてもよい。
また、前記実施形態では、整流板35の排出口29側の端部は、排出口29の下端縁の上方に位置していたが、整流板35の排出口29側の端部は、排出口29の下端縁との間に吸出隙間36を形成するならば、図6に示すように、排出口29の下端縁の側方に位置していてもよい。
【0028】
さらに、前記実施形態では、整流板35は、鋼板351と、鋼板351の下面に添付された断熱材352とを備えて構成されていたが、整流板は、断熱性を有する素材から構成されていてもよいし、断熱性を有していなくてもよい。
加えて、前記実施形態では、整流板35は、ラジエータ25の下端部に連結されていたが、ラジエータ25の下端部に連結されていなくてもよく、一端がラジエータ25の下端近傍に配置されていればよい。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、フォークリフトやショベルローダ、およびホイールローダなどの作業車両に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態に係るフォークリフト全体を示す側面図。
【図2】フォークリフト全体の平面図。
【図3】ラジエータ周辺の構成を示す断面図。
【図4】整流板周辺を示す平面図。
【図5】バックカバーを示す断面図。
【図6】整流板の変形例を示す断面図。
【符号の説明】
【0031】
10…フォークリフト(作業車両)、24…エンジン、25…ラジエータ、26…冷却ファン、27…カウンターウェイト、29…排出口、32…マフラ、35…整流板、36…吸出隙間、37…巻返防止板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジエータと、
前記ラジエータに冷却風を送る冷却ファンと、
前記ラジエータを冷却する際に暖められて排暖気となった前記冷却風を外部に排出する排出口が形成されたカウンターウェイトと、
前記ラジエータの下端近傍から前記排出口の下端縁に向けて延出する整流板と、
前記ラジエータと前記カウンターウェイトとの間、かつ前記整流板の下方に設けられたマフラとを備え、
前記整流板と前記排出口の下端縁との間には、前記排暖気の流れによって生じる前記排暖気周囲の負圧により、前記マフラによって加熱された前記マフラ周囲の空気を吸い出して前記排暖気の流れに引き込ませる吸出隙間が形成されている
ことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
請求項1に記載の作業車両において、
前記冷却ファンを駆動するエンジンと、
前記エンジン、前記ラジエータ、前記整流板、および前記マフラを内部に収納する車体内の空間において、前記エンジン側の空間と前記整流板下方の前記マフラ側の空間とを仕切り、前記排出口から前記吸出隙間を介して前記マフラ側の空間に前記排暖気が進入した際に、当該排暖気が前記エンジン側の空間に進入することを防止する巻返防止部材とを備えている
ことを特徴とする作業車両。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の作業車両において、
前記整流板は、前記ラジエータ側から前記排出口側に向かうに従って上方に位置するように傾斜している
ことを特徴とする作業車両。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の作業車両において、
前記整流板は、断熱性を有している
ことを特徴とする作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−292363(P2009−292363A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−149112(P2008−149112)
【出願日】平成20年6月6日(2008.6.6)
【出願人】(000184643)コマツユーティリティ株式会社 (106)
【Fターム(参考)】