説明

例えばアルツハイマー病のようなアミロイドまたはアミロイド様タンパク質に関連する疾患の治療のためのN−(メチル)−1H−ピラゾール−3−アミン誘導体、N−(メチル)−ピリジン−2−アミン誘導体、およびN−(メチル)−トリゾール−2−アミン誘導体

本発明は、アルツハイマー病などのアミロイドタンパク質に関連する障害および異常群、ならびにアミロイド様タンパク質に関連する疾患または状態群の治療において用いることができる式(II)の新規化合物に関する。本発明の化合物は、視覚系の組織における病的異常/変化に関連する眼疾患の治療において用いることもできる。本発明はさらに、これらの化合物を含む薬学的組成物ならびにアミロイドおよび/またはアミロイド様タンパク質に関連する疾患または状態を治療する、または予防するための薬剤を調製するための、これらの化合物の使用にも関する。アミロイドおよび/またはアミロイド様タンパク質に関連する疾患または状態の治療または予防法も開示する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルツハイマー病などのアミロイドタンパク質に関連する障害および異常群、ならびにアミロイド様タンパク質に関連する疾患または状態群の治療において用いることができる新規化合物に関する。本発明はさらに、これらの化合物を含む薬学的組成物およびアミロイドまたはアミロイド様タンパク質に関連する疾患または状態を治療するための薬剤を調製するための、これらの化合物の使用にも関する。アミロイドまたはアミロイド様タンパク質に関連する疾患または状態の治療法も開示する。
【0002】
本発明の化合物は、視覚系の組織における病的異常/変化に関連する、特にニューロン分解などの視覚系の組織におけるアミロイド-ベータ-関連の病的異常/変化に関連する眼疾患の治療において用いることもできる。前記病的異常は、例えば、皮質性視力欠損を引き起こす視覚皮質;緑内障を引き起こす前眼房および視神経;ベータ-アミロイド沈着による白内障を引き起こす水晶体;眼アミロイド症を引き起こす硝子体;原発性網膜変性および黄斑変性、例えば、加齢黄斑変性を引き起こす網膜;視神経ドルーゼン、視神経障害および視神経炎を引き起こす視神経;ならびに格子状ジストロフィを引き起こす角膜などの、眼の異なる組織に起こりうる。
【背景技術】
【0003】
多くの加齢疾患はアミロイドまたはアミロイド様タンパク質に基づく、または関連しており、部分的には病因ならびに疾患の進行に寄与する、アミロイドまたはアミロイド様物質の細胞外沈着物の蓄積によって特徴づけられる。これらの疾患には、アルツハイマー病(AD)や、例えば、軽度認知障害(MCI)、レヴィー小体痴呆、ダウン症候群、アミロイド症を伴う遺伝性脳出血(オランダ型)などの認知記憶能力の欠損によって特徴づけられる疾患または状態;グアム・パーキンソン痴呆複合などの神経障害が含まれるが、それらに限定されるわけではない。アミロイド様タンパク質に基づく、または関連する他の疾患は、進行性核上性麻痺、多発性硬化症;クロイツフェルト-ヤコブ病、パーキンソン病、HIV関連痴呆、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、封入体筋炎(IBM)、成人発症型糖尿病;老人性心アミロイド症;内分泌腫瘍、ならびに皮質性視力欠損を含む視覚皮質;緑内障を含む前眼房および視神経;ベータ-アミロイド沈着による白内障をふくむ水晶体;眼アミロイド症を含む硝子体;原発性網膜変性および黄斑変性、特に加齢黄斑変性を含む網膜;視神経ドルーゼン、視神経障害および視神経炎を含む視神経;および格子状ジストロフィを含む角膜などの、眼の異なる組織を標的とするアミロイド関連の眼疾患を含む他の疾患である。
【0004】
これらの疾患の病因は多様でありうるが、それらの特徴的な沈着物は多くの共通の分子成分を含むことが多い。顕著に、これは炎症誘発経路の局所活性化に起因し、それにより活性化補体成分、急性期反応物質、免疫調節物質、および他の炎症メディエータの同時沈着を引き起こしうる。
【0005】
アルツハイマー病(AD)は、アミロイド斑、すなわち脳内のタンパク質の異常な沈着物の蓄積によって引き起こされると主に考えられる神経障害である。患者の脳内で見られるアミロイドの最も多い型は、主にAβ原線維からなる。科学的証拠は、斑内のベータ-アミロイドタンパク質の生成および蓄積の増加が神経細胞死を引き起こし、これがADの発生および進行に寄与することを示している。次いで、戦略的脳領域における神経細胞の欠損は神経伝達物質の減少および記憶の障害を引き起こす。斑構築を主に担うタンパク質には、アミロイド前駆体タンパク質(APP)および2つのプレセニリン(プレセニリンIおよびプレセニリンII)が含まれる。ほとんどの細胞で構成的に発現され、異化される、アミロイド前駆体タンパク質(APP)の酵素βおよびγセクレターゼによる逐次分解は、39から43アミノ酸のAβペプチドの放出を引き起こす。APPの分解は、それらの斑で凝集する性向を高めると考えられる。これは特に、そのC末端の非常に疎水性の高い2つのアミノ酸残基により、凝集物を生じる高い性向を有するAβ(1-42)断片である。したがって、Aβ(1-42)断片はADにおける神経炎性斑形成の開始に主に関与し、その原因であると考えられ、したがって、病因となる高い可能性を有すると考えられる。したがって、アミロイド斑形成を標的とし、これを拡散することができる、特異的分子が必要とされている。
【0006】
ADの症状はゆっくり現れ、最初の症状は軽度の健忘のみでありうる。この段階で、個人は最近の事象、活動、家族や家庭内の物の名前を忘れることがあり、単純な計算問題を解けないことがある。疾患の進行に連れて、症状はより容易に認められ、十分に深刻となって、AD患者またはその家族は医学的助けをもとめるようになる。ADの中間段階の症状には、整容などの単純な作業のやり方を忘れることが含まれ、話し、理解、読み、または書きに問題が生じる。後期AD患者は不安または攻撃的になることもあり、家を出て徘徊し、最終的には全介護が必要となる。
【0007】
現在、ADを診断する唯一の確定的方法は、個人の死亡後の剖検で脳組織に斑およびもつれを特定することである。したがって、医師は患者がまだ生存中にはAD「かもしれない」または「おそらく」ADであるとの診断しか行うことができない。現行の方法を用いて、医師は「おそらく」ADを診断するためのいくつかの手段を用い、90パーセントまで正確にADを診断することができる。医師は患者の全般的健康、過去の医学的問題、および患者が毎日の活動を行う上で困難があればその履歴について質問する。記憶、問題解決、注意、計数、および言語の行動試験からは認知衰退についての情報が得られ、血液、尿、または髄液の検査などの医学的検査、および脳スキャンからはさらにいくつかの情報が得られる。
【0008】
ADの管理は薬物投与および非薬物投与による治療からなる。疾患の根源的経過を変化させる(進行を遅延または逆転させる)ことを目的とした治療は、これまでだいたいがうまくいっていない。神経細胞の化学メッセンジャー(神経伝達物質)の欠乏(欠陥)または機能不全を回復する薬剤、特にタクリンおよびリバスチグミンなどのコリンエステラーゼ阻害剤(ChEI)は、症状を改善することが明らかにされている。ChEIは神経伝達物質の酵素的分解を妨害し、それにより脳内で神経シグナルを伝達するのに利用可能な化学メッセンジャーの量を増加させる。
【0009】
この疾患の早期および中期の一部の患者のために、タクリン(COGNEX(登録商標)、Morris Plains、NJ)、ドネペジル(ARICEPT(登録商標)、Tokyo、JP)、リバスチグミン(EXELON(登録商標)、East Hanover、NJ)、またはガランタミン(REMINYL(登録商標)、New Brunswick、NJ)といった薬物がいくつかの症状の悪化の防止を限られた期間助けることもある。もう一つの薬物、メマンチン(NAMENDA(登録商標)、New York、NY)は、中等度から重度のADの治療のために認可されている。ADの精神症状発現に対処するための薬剤も利用可能である。同様に、いくつかの薬剤は、不眠、激昂、徘徊、不安、およびうつなどのADの行動症状を制御するのに役立ちうる。これらの症状を治療することで、患者をより快適にし、介護者にとって患者の介護が容易になることが多い。残念ながら、このクラスの薬剤が一貫してプラシーボよりも良いことを示す、著しい治療の進歩にもかかわらず、この疾患は進行し続け、精神機能への平均的効果はわずかなものでしかない。例えば、ChEIなどの、ADの薬物治療において用いられる薬物の多くは、胃腸機能障害、肝毒性および体重減少を含む副作用もある。
【0010】
アミロイド様タンパク質の蓄積および沈着物に基づく、または関連する他の疾患は、軽度認知障害、レヴィー小体痴呆(LBD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、封入体筋炎(IBM)および黄斑変性、特に加齢黄斑変性(AMD)である。
【0011】
軽度認知障害(MCI)は、最も一般には、わずかであるが、測定可能な記憶障害と定義される一般用語である。MCI患者は加齢と共に通常予想されるよりも大きい記憶の問題を経験するが、判断または推論の障害などの、他の痴呆症状は示さない。
【0012】
レヴィー小体痴呆(LBD)は、66歳以上の高齢者に起こりうる神経変性障害で、典型的には認知(思考)障害および異常な行動変化の症状を引き起こす。症状には認知障害、神経学的徴候、睡眠障害、および自律神経機能不全が含まれうる。認知障害はほとんどの症例におけるLBDの先行する特徴である。患者は混乱の反復エピソードを有し、これは徐々に悪化する。認知能力の変動は注意および敏捷の程度の推移に関連することが多い。認知障害および思考の変動は数分、数時間、または数日にわたって変動しうる。
【0013】
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、上位および下位運動ニューロンの変性によって特徴づけられる。一部のALS患者において、痴呆または失語症が見られることがある(ALS-D)。痴呆は、最も一般的には、前頭側頭痴呆(FTD)であり、これらの症例の多くは歯状回および前頭葉および側頭葉の表層のニューロン中にユビキチン陽性、タウ陰性封入体を有する。
【0014】
封入体筋炎(IBM)は、通常は50歳を超えた人に見られる肢体不自由疾患で、筋線維が炎症を起こし、萎縮し始めるが、脳は保存され、患者は完全な知能を保持する。アミロイド-βタンパク質の生成に関与する2つの酵素が、この高齢者の最も一般的な進行性筋疾患の患者の筋細胞内で増加することが見いだされ、アミロイド-βも増加する。
【0015】
黄斑変性は、網膜(眼の背部の紙のように薄い組織で、ここで光感受性細胞が視覚シグナルを脳に送る)の中心部である黄斑の劣化を引き起こす一般的な眼疾患である。鋭く、くっきりとした「まっすぐ」の視覚が黄変によって処理される。黄斑への損傷は盲点の発生およびかすみ目または乱視を引き起こす。加齢黄斑変性(AMD)は米国における視力障害の主因であり、66歳以上の人にとっては、白人の法的盲の主因である。およそ180万人の40歳以上のアメリカ人は進行したAMDを有し、中程度のAMDを有するさらに730万人は実質的な失明の危険にさらされている。政府は2020年までに290万人が進行したAMDを有すると見積もっている。AMDの被害者は、この盲目状態の原因および治療についていかに知られていないかを知って驚き、がっかりすることが多い。
【0016】
黄斑変性には、萎縮型黄斑変性および滲出型黄斑変性の2つの型がある。萎縮型は、黄斑の細胞がゆっくり壊れ始め、黄斑変性症例の85パーセントで診断される。両方の眼が通常は萎縮型AMDに冒されるが、一方の眼が失明する一方、他方の眼は影響されずに残ることもある。ドルーゼンは網膜下の黄色沈着物で、萎縮型AMDのよくある早期の徴候である。進行した萎縮型AMDまたは滲出型AMDを発生する危険度は、ドルーゼンの数またはサイズが増えるにつれて高くなる。萎縮型AMDがこの疾患の滲出型に変わることなく、進行し、失明を引き起こす可能性もあり;しかし、早期萎縮型AMDが滲出型に突然変化する可能性もある。
【0017】
滲出型は、症例の15パーセントを占めるにすぎないが、盲目の90パーセントの原因であり、進行したAMDであると考えられる(早期または中期の滲出型AMDはない)。この疾患の滲出型AMDは常に萎縮型よりも先に起こる。萎縮型が悪化するにつれ、一部の患者は黄斑の後ろに成長する異常な血管を有し始める。これらの血管は非常に脆弱で、体液および血液を漏出し(それ故に「滲出型」黄斑変性)、黄斑に対して急速な損傷を引き起こす。
【0018】
AMDの萎縮型は最初はわずかなかすみ目を引き起こすことが多い。次いで、特に視力の中心がかすみ始め、疾患が進行すると共にこの領域が大きくなる。一方の眼しか冒されていない場合、症状は認められないこともある。滲出型AMDにおいて、直線が波形に見えることがあり、中心視力の損失が急速に起こりうる。
【0019】
黄斑変性の診断は典型的には散瞳検査、視力検査、およびAMDの診断を助ける眼底検査と呼ばれる方法を用いての眼の背部の観察を含み、滲出型AMDが疑われる場合、フルオレセイン血管造影法を実施してもよい。萎縮型AMDが進行期に達したら、視力損失を予防するための現行の治療はない。しかし、抗酸化剤および亜鉛の特定の高用量処方は中間AMDが進行期へと進行するのを遅延または防止しうる。Macugen(登録商標)(ペガプタニブナトリウム注射剤)、レーザー光凝固術および光力学療法は黄変における異常な血管成長および出血を制御することができ、滲出型AMDを有する一部の患者にとって役に立つが、すでに失われている視力はこれらの技術で回復することはないであろう。視力がすでに失われている場合、生活の質の改善を助けることができる低視力補助器具がある。
【0020】
加齢黄斑変性(AMD)の最も早期の徴候の一つは、網膜色素上皮(RPE)の基底膜とブルーフ膜(BM)との間のドルーゼンとして公知の細胞外沈着物の蓄積である。Andersonらによって行われた最近の試験で、ドルーゼンがアミロイドベータを含むことが確認された。(Experimental Eye Research 78 (2004) 243- 256(非特許文献1))。
【0021】
プリオンはヒツジのスクラピー、ウシのウシ海綿状脳症およびヒトのクロイツフェルト-ヤコブ病などの神経変性疾患を引き起こす。この粒子で唯一公知の成分はタンパク質、PrPScのスクラピーイソ型である。プリオンは増殖するが、これらが核酸を含むという証拠はない。PrPScは非感染性の細胞内タンパク質PrPCから翻訳後プロセシングによって誘導され、その間にPrPCは大幅な高次構造変化を起こす。
【0022】
スクラピータンパク質PrPScは神経変性における重大な役割を有し、疾患発生中に次の3段階の転移を起こす:PrPC(タンパク質の通常の細胞内イソ型)−PrPSc:感染型(タンパク質のスクラピーイソ型)−タンパク質PrP27-30。
【0023】
そのような事象のカスケードはクロイツフェルト-ヤコブ病(CJD)、クールー、ゲルストマン-シュトロイスラー-シャインカー症候群(GSS)、ヒトの致死的家族性不眠、ヒツジおよびヤギのスクラピー、ミンクの脳症、ならびにウシのウシ海綿状脳症の発生中に起こる。
【0024】
細胞内非毒性タンパク質(PrPC)は、主にニューロンで発現される、分子量33000から35000のシアロ糖タンパク質である。前述の疾患において、PrPCは変化した型(PrPSc)に変換され、これはその通常の相同体からプロテアーゼ消化に対する相対的抵抗性によって区別される。PrPScは罹患動物および個人の中枢神経系に蓄積し、そのプロテアーゼ抵抗性コアは細胞外で凝集する。
【0025】
アミロイド症は単一の疾患実体ではなく、むしろアミロイドと呼ばれるワックス状のデンプン様タンパク質の細胞外組織沈着物によって特徴づけられる多様な進行性疾患過程群であり、アミロイドは1つまたは複数の臓器または体系に蓄積する。アミロイド沈着物が増えるにつれ、それらは臓器または体系の正常な機能を妨害し始める。アミロイド症には少なくとも15の異なる型がある。主要な型は、前駆状態が知られていない原発性アミロイド症、いくつかの他の状態の後に起こる続発性アミロイド症、および遺伝性アミロイド症である。
【0026】
続発性アミロイド症は、結核、家族性地中海熱と呼ばれる細菌感染、骨感染(骨髄炎)、慢性関節リウマチ、小腸の感染(肉芽腫性回腸炎)、ホジキン病、およびらいなどの慢性感染または炎症疾患を有する人で発生する。
【0027】
緑内障は、視神経障害の特徴的パターンでの網膜神経節細胞(RGC)の損失を含む、視神経の疾患群である。緑内障は、常にではないがしばしば、眼圧の上昇を伴い、これは房水またはその排出の循環の遮断によって起こりうる。
【0028】
眼内圧の上昇は緑内障発生の重大な危険因子であるが、緑内障を引き起こすのに確定的な眼内圧の閾値は規定することができない。
【0029】
損傷は生きている視神経線維への血液供給不足、神経の構造における弱さ、および/または神経線維そのものの健康における問題によっても引き起こされうる。
【0030】
未治療の緑内障は視神経の永久的損傷と、その結果として視野欠損を引き起こし、これは失明へと進行しうる。
【0031】
RGCは、眼からの視覚シグナルを脳に伝達する神経細胞である。アポトーシスの過程における2つの主要な酵素である、カスパーゼ-3およびカスパーゼ-8は、RGCのアポトーシスにつながる過程で活性化される。カスパーゼ-3はアミロイド前駆体タンパク質(APP)を切断して、アミロイドβを含む神経毒性断片を生成する。APPの保護効果なしで、網膜神経節細胞層におけるアミロイドβ蓄積はRGCの死滅および視力の不可逆的損失を引き起こす。
【0032】
異なる型の緑内障は、状態が慢性である場合の開放隅角緑内障、または急性緑内障が突然起こる場合の閉塞隅角緑内障に分類される。緑内障は通常、両眼を冒すが、この疾患は一方の眼で他方の眼に比べて急速に進行することもある。
【0033】
慢性開放隅角緑内障(COAG)は、原発性開放隅角緑内障(POAG)としても公知で、最も一般的な型の緑内障である。COAGは小柱網の顕微鏡的遮断によって引き起こされ、これはシュレム管への房水流出を減らし、眼内圧(IOP)を高める。POAGは通常、両眼を冒し、年齢および家族歴陽性に強く関連している。眼の排出メカニズムは加齢と共に徐々に詰まってくるため、POAGの頻度は高齢者では高くなる。慢性開放隅角緑内障を患う被験者の眼内圧が上昇しても、中心視野で欠損を感じるまでは、いかなる症状も伴わない。
【0034】
急性閉塞隅角緑内障(Acute Angle Closure Glaucoma、AACG)または閉塞隅角緑内障(closed-angle glaucoma)は、眼内圧が35から80mmHgに突然上昇することにより特徴づけられる、比較的稀な型の緑内障で、重度の疼痛および不可逆的な視力損失をもたらす。突然の圧上昇は、隅角(filtering angle)の閉塞および排出チャネルの遮断によって引き起こされる。狭い隅角を有する個人は突然の隅角閉塞の危険が高い。AACGは通常、単眼性に起こるが、危険は両眼にある。年齢、白内障および偽剥脱も、水晶体の拡大および隅角の密集または狭窄に関連するため、危険因子である。突然の緑内障発作は、重度の眼痛および頭痛、眼の炎症、悪心、嘔吐、ならびにかすみ目を伴いうる。
【0035】
混合または複合型緑内障は、開放および閉塞隅角緑内障の混合または組み合わせである。これは虹彩切開術後に隅角が開くが、IOPのコントロールのために薬物治療を必要とし続ける、急性ACGの患者、ならびに隅角の狭窄を徐々に発生するPOAGまたは偽剥脱性緑内障の患者で発症する。
【0036】
正常眼圧緑内障(NTG)は低眼圧緑内障(LTG)としても公知で、他の型の緑内障で見られるものと同様の進行性視神経損傷および周辺視野の欠損によって特徴づけられるが、眼内圧は正常範囲または正常よりも低いことさえある。
【0037】
先天性(乳児)緑内障は比較的稀な遺伝型の開放隅角緑内障である。排出領域の不十分な発生が眼内の圧上昇をもたらし、視神経損傷による視力の損失および眼の拡大を引き起こす。この疾患を発症した乳幼児で視力を保存するには、早期の診断および治療が不可欠である。
【0038】
続発性緑内障は、眼の傷害、眼の虹彩の炎症(虹彩炎)、糖尿病、白内障、またはステロイド感受性の個人におけるステロイド使用が原因となりうる。続発性緑内障は網膜剥離または網膜静脈閉塞もしくは遮断に関連することもある。
【0039】
色素性緑内障は虹彩からの色素顆粒の剥離によって特徴づけられる。顆粒は眼の排出システムの遮断を起こし、眼内圧の上昇および視神経の損傷を引き起こす。
【0040】
剥脱性緑内障(偽剥脱)は眼の前嚢および隅角における鱗状材料の沈着物によって特徴づけられる。鱗状材料の蓄積は排出システムを遮断し、眼圧を高める。
【0041】
緑内障の診断は、様々な試験を用いて行いうる。眼圧測定法は、眼の緊張および堅さを測定することにより、眼内の圧をもとめる。いくつかの型の眼圧計がこの試験のために利用可能で、最も一般的なものは圧平眼圧計である。厚さ測定により角膜の厚さをもとめ、これから次いで眼内圧をもとめる。隅角鏡検査は眼の隅角(filtering angle)および排出領域の検査を可能にする。隅角鏡検査は、異常な血管が房水の眼の外への排出を阻止しているかどうかを調べることもできる。検眼鏡検査は視神経の検査を可能にし、神経線維層下垂もしくは視神経円板における変化、または眼内圧上昇もしくは軸索脱落によって起こりうる、この構造のへこみ(陥凹)を検出することができる。隅角鏡検査は、血流欠乏または眼内圧上昇による神経への損傷を評価する上でも有用である。視野試験は視野を主観的にマッピングし、これは視神経への緑内障による損傷の徴候を検出しうる。これは視野欠損の特定のパターンによって表される。眼の干渉断層撮影法は神経線維層欠損の客観的尺度で、損傷軸索組織を通しての光透過の差を介して視神経線維層の厚さ(緑内障では変化している)を見ることにより行う。
【0042】
視神経ドルーゼンはタンパク質およびカルシウム塩の球形の結石で、軸索神経線維層に影響をおよぼす先天的に異常な血管構造を通しての分泌を表すと思われる。これらの蓄積は乳頭周囲神経線維層で起こり、神経線維層を加圧により直接、または神経線維層への血管供給の破壊により間接的のいずれかで損傷すると思われる。罹患した個人において、これらは通常は10歳以降に明白になる。これらは両眼に起こることが非常に多いが、一方の眼に発症することもあり、長年にわたって周辺視野の緩やかな欠損をきたすこともある。
【0043】
視神経障害は、脱髄、血液供給の遮断、栄養欠乏、または毒素が原因の視神経への損傷によって特徴づけられる疾患である。脱髄性視神経障害(以下の視神経炎参照)は典型的には、多発性硬化症などの根源にある脱髄プロセスによって引き起こされる。血液供給の遮断は虚血性視神経障害として公知で、視神経細胞の死滅または機能不全をもたらしうる。非動脈炎性虚血性視神経障害は通常、中年の人に起こる。危険因子には高血圧、糖尿病およびアテローム性動脈硬化症が含まれる。動脈炎性虚血性視神経障害は通常、高齢者で動脈(動脈炎)、特に側頭動脈(側頭動脈炎)の炎症後に起こる。視力の損失は急速であることもあり、または2から7日間かけてゆっくり発生することもあり、損傷は一方または両方の眼に起こりうる。毒素または栄養欠乏への曝露が原因の視神経障害を有する人では、通常は両眼が冒される。
【0044】
非動脈炎性虚血性視神経障害の患者の約40%は経時的に自然改善を経験する。非動脈炎性虚血性視神経障害は血圧、糖尿病およびコレステロールレベルをコントロールすることにより治療する。動脈炎性虚血性視神経障害は、第二の眼の視力損失を防ぐために、高用量のコルチコステロイドで治療する。
【0045】
視神経炎は一方または両方の眼の軽度または重度視力損失を伴い、全身性脱髄プロセス(上記参照)、ウイルス感染、ワクチン接種、髄膜炎、梅毒、多発性硬化症および眼内炎症(ブドウ膜炎)が原因でありうる。眼を動かすと痛く、視力は反復エピソードにより悪化しうる。診断は瞳孔の反応の検査および視神経円板が腫脹しているかどうかを調べることを含む。磁気共鳴画像法(MRI)は多発性硬化症または稀ではあるが視神経に押しつけられた腫瘍の証拠を示すことがあり、このような症例では視力は腫瘍の圧が軽減されれば改善する。視神経炎のほとんどの症例は、治療せずに2〜3ヶ月で改善する。いくつかの症例において、静脈内コルチコステロイドでの治療が必要となることもある。
【0046】
白内障は、眼の結晶性水晶体またはそのエンベロープ内で発生する混濁である。白内障は典型的には進行性の視力損失を引き起こし、治療せずに放置すると失明をきたすこともある。モルガニー白内障において、白内障皮質は進行性に液化して乳白色の液体を生成し、水晶体被膜が破裂し、漏れると、重度の炎症を引き起こしうる。治療せずに放置すると、白内障は水晶体形態性緑内障を引き起こすこともある。白内障は先天性であることもあり、または遺伝因子、高齢、長期紫外線被曝、放射線被曝、糖尿病、眼の傷害もしくは物理的外傷によって引き起こされることもある。
【0047】
水晶体嚢外摘出術(ECCE)は白内障を治療するための最も有効な治療である。手術において、水晶体を除去するが、水晶体被膜の大部分は無傷で残る。水晶体超音波吸引術は角膜の側方に小さい切開を施し、典型的には吸引前に水晶体を粉砕するために用いる。
【0048】
眼アミロイド症は、I型家族性アミロイド性多発神経障害(FAP)に関連する遺伝性障害で、異常な結膜血管、乾性角結膜炎、瞳孔異常、ならびに一部の症例では、硝子体混濁および続発性緑内障によって特徴づけられる。I型FAPは、肝臓、網膜色素上皮2、および脳の脈絡膜層で合成される四量体血漿タンパク質(プレアルブミン)である、トランスチレチン(TTR)における突然変異に関連している。異なる突然変異が、トランスチレチンをアミロイド原線維のひだ状構造へと重合させ、遺伝性アミロイド症を引き起こす。最もよく起こる突然変異はTTR-met303で、トランスチレチンの30位でメチオニンがバリンに置き換わる。
【0049】
IV型FAPは、格子状角膜ジストロフィ(LCD)に関連している。格子状角膜ジストロフィは、角膜支質における二重輪郭の屈折性格子線の存在によって特徴づけられる、遺伝性、原発性の、通常は両側性角膜アミロイド症である。I型LCD(Biber-Haab-Dimmer)は、中心支質の浅層から中層における白い点およびかすかな濁りを伴う多数の半透明の細い格子線の存在によって特徴づけられる、常染色体優性、両側対称性の角膜障害である。症状は20歳までに始まり、進行性の視力損失を引き起こす。ほとんどの患者は40歳までに角膜移植を必要とする。II型LCDは、全身性アミロイド症(メレトヤ症候群)に関連し、縁、中心角膜および支質における太い格子線の存在によって特徴づけられる。高齢になるまで視力に影響はない。III型LCDは中年の人に発症し、縁から縁へと伸びる太い格子線の存在によって特徴づけられる。IIIA型LCDは、支質におけるアミロイド沈着物の蓄積および支質とボーマン層との間のアミロイドのリボンの存在によって特徴づけられ、IIIA型LCDは角膜びらんの存在、白人における発生率、および常染色体優性遺伝パターンゆえに、III型LCDとは異なる。
【0050】
ダウン症候群(DS)または三染色体性21は最も一般的な遺伝障害で、発生率は新生児の約1:700であり、様々な先天性奇形を伴うことが多い。この障害は過剰の染色体21の存在が原因で、斑形成タンパク質であるアミロイド-ベータの早期沈着物および中年までのアルツハイマー病発生に関連している。さらに、DSに冒されている多くの人は小児期に発症する白内障を患い、多くは先天性緑内障を患う。切断されてアミロイドベータを生じるアミロイド前駆体タンパク質の遺伝子は、ヒトの染色体21の長腕上に位置するため、この遺伝子の過剰発現はダウン症候群におけるアミロイド前駆体タンパク質のレベル上昇およびアミロイド沈着を引き起こしうる。
【0051】
緑内障の治療法はない。緑内障治療のための薬物には、ベータ遮断薬(Timoptic、Betoptic)、カルボニックアンヒドラーゼ阻害剤(Trusopt、Azopt)、およびアルファアゴニスト(Alphagan、Iopidine)などの眼内房水の産生を減らす薬剤、ならびにプロスタグランジン(Xalatan)などの眼の背部で異なる経路を通して房水の排出の向きを変える薬剤が含まれる。レーザー手術には、房水がより効率的に眼から出て行くのを助ける方法である、線維柱帯形成術が含まれる。緑内障財団(Glaucoma Foundation)によれば、80%近い患者がこの方法に十分よく反応して、それ以上の手術を遅らせるか、または回避している。しかし、米国立眼研究所(National Eye Institute)によれば、レーザー手術後2年以内にすべての患者の半数で眼内圧が再び上昇する。薬物療法および最初のレーザー治療が眼内の圧を下げるのに不成功であった場合、切開手術を実施する。手術の1つの型である線維柱帯切除術は、眼の壁に開口部を設け、房水を排出できるようにする。しかし、緑内障財団によれば、線維柱帯切除術を受けた患者の約3分の1は5年以内に白内障を発生する。線維柱帯切除術が失敗した場合、さらなる切開法には眼の角膜と虹彩との間に排出チューブを設置する方法および房水を生成する眼の組織を破壊するためのレーザーまたは凍結治療の使用が含まれる。手術は患者の残された視覚を救うかもしれないが、視力を改善するものではない。視覚は実際には手術後に悪化することもある。
【0052】
加齢黄斑変性(AMD)は66歳以上の白人における失明の主な原因である。最近、黄斑変性研究は大きく進歩しているが、この疾患の経過中に起こる神経細胞死を救う治療はない。皮質性視力欠損、視神経ドルーゼン、視神経障害、視神経炎、眼アミロイド症および格子状角膜ジストロフィなどの、アミロイドベータ関連のニューロン分解に関連する他の眼疾患に対しても決定的な治療はない。
【0053】
アミロイド沈着物は典型的には3つの成分を含む。アミロイドタンパク質原線維はアミロイド材料の約90%を占め、いくつかの異なる型のタンパク質の1つを含む。これらのタンパク質は、コンゴー赤の結合部位を提示し、その結果アミロイドタンパク質の独特の染色特性をもたらす、独特のタンパク質配置である、いわゆる「ベータひだ状」シート原線維に折りたたむことが可能である。加えて、アミロイド沈着物はアミロイドP(五角形)成分(AP)、通常の血清アミロイドP(SAP)に関連する糖タンパク質、および結合組織の複合炭水化物である、グリコサミノグリカン(GAG)硫酸と密接に関連している。
【0054】
アルツハイマー病およびプリオン病の治療に向けての1つの発展は、それぞれAβおよびPrPの異常なβシート構造に結合し、それによりこれらの分子の凝集を防止する分子の設計であった。ペプチドのβシート構造は、水素結合が規則的パターンで隣接するアミノ酸鎖の間に形成される点で特徴づけられる。この配列により、安定な三次元構造が得られる。H結合受容体(C=O基)およびH結合供与体(NH基)は天然のβシートペプチドにおいて交互にならび、結合される原子はおおよそ一列になっている。各アミノ酸鎖内で、隣接するH結合供与体とH結合受容体との間の距離は特定の範囲内にある。特に、1つのアミノ酸残基内のH結合供与体(NH基)とH結合受容体(C=O基)との間の距離は3.5から4.0Åである。鎖間結合に関与する1つのアミノ酸残基のH結合受容体(C=O基)と次のアミノ酸残基のH結合供与体(NH基)との間の距離は2.6から2.9Åである。すなわち、1つのアミノ酸鎖内の隣接するH結合供与体とH結合受容体との間の距離は以下の範囲が交互にくる:
H結合供与体(アミノ酸1)−H結合受容体(アミノ酸1)=3.5から4.0Å;
H結合受容体(アミノ酸1)−H結合供与体2(アミノ酸2)=2.6から2.9Å。
【0055】
βシートを理想的に結合するために設計されたリガンドは、βシートのアミノ酸鎖におけるH結合供与体およびH結合受容体の順序に相補的な順序のH結合供与体およびH結合受容体を有する。
【0056】
国際公開公報第03/095429号(特許文献1)およびRzepecki et al., Synthesis (2003) 12, 1815-1826(非特許文献2)において、AβまたはPrPのβ構造に結合し、それによりその凝集を防止するとされる合成分子が記載されている。このために、カルボニル基含有リンカー、例えば、「AmpOx」および「Trimer」によって連結された複数のアミノピラゾール部分を含む特定の分子が合成された。


【0057】
国際公開公報第03/095429号(特許文献1)に記載されている分子のいくつかは、2つの生物物理学的アッセイでAβの凝集物生成に対する阻害効果を有するとされている。Rzepecki et al., Synthesis (2003) 12, 1815-1826(非特許文献2)によれば、その中に記載されている分子の1つは溶液中の組換えPrPcの凝集を低減することができた。しかし、これらの試験では物理化学的性質は調査されなかった。
【0058】
物理化学的性質は神経治療薬による血液脳関門の透過において重要な役割を果たす。CNS薬物の成功に関連する因子について総説がまとめられている(H. Pajouhesh and G. R. Lenz, NeuroRx(登録商標): J. Am. Soc. Exp. Neurother. (2005) Vol. 2, 541(非特許文献3))。これらには、水とn-オクタノールとの間の分配係数(LogP)、すなわち、基本的には化合物の親油性が含まれる。国際公開公報第03/095429号(特許文献1)およびRzepecki et al., Synthesis (2003) 12, 1815-1826(非特許文献2)に記載されている化合物のいくつかは、好ましくないLogP計算値を有し、したがって血液脳関門を通過しないと予想される。特に、「AmpOx」はゼロよりも低いLogP計算値を有する。
【0059】
前述の文書に記載されている他の化合物は、その有害な副作用のために患者への投与が不適当となる性質を有している。例えば、「Trimer」は突然変異誘発性、発癌性および代謝的に不安定である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0060】
【特許文献1】国際公開公報第03/095429号
【非特許文献】
【0061】
【非特許文献1】Anderson et al., Experimental Eye Research 78 (2004) 243- 256
【非特許文献2】Rzepecki et al., Synthesis (2003) 12, 1815-1826
【非特許文献3】H. Pajouhesh and G. R. Lenz, NeuroRx: J. Am. Soc. Exp. Neurother. (2005) Vol. 2, 541
【発明の概要】
【0062】
アミロイド症を含む、アミロイドまたはアミロイド様タンパク質に関連する疾患または状態の治療において用いうる化合物を提供することが、本発明の目的であった。化合物は血液脳関門を通過可能でなければならない。さらに、化合物は薬学的に許容されなければならず、特に、化合物は突然変異誘発性もしくは発癌性を有するべきではなく、または代謝的に不安定であってはならない。
【0063】
本発明のさらなる目的は、視覚系の組織における病的異常/変化に関連する、特に、例えば、ニューロン分解などの、視覚系の組織におけるアミロイド-ベータ関連の病的異常/変化に関連する眼疾患に冒されている被験者のための改善された治療選択肢を提供することである。前記病的異常は、例えば、皮質性視力欠損を引き起こす視覚皮質;緑内障を引き起こす前眼房および視神経;ベータ-アミロイド沈着による白内障を引き起こす水晶体;眼アミロイド症を引き起こす硝子体;原発性網膜変性および黄斑変性、例えば、加齢黄斑変性を引き起こす網膜;視神経ドルーゼン、視神経障害および視神経炎を引き起こす視神経;ならびに格子状ジストロフィを引き起こす角膜などの、眼の異なる組織に起こりうる。
【0064】
本発明者らは驚くことに、これらの目的は以下に記載する一般式(II)の化合物によって達成しうることを見いだした。
【0065】
したがって、本発明は一般式(II)の化合物に関する。
【0066】
さらなる局面において、本発明は一般式(II)の化合物を含む薬学的組成物に関する。
【0067】
本発明のさらにもう一つの局面は、アミロイド症を含むアミロイドまたはアミロイド様タンパク質に関連する疾患または状態の治療用の薬剤を調製するための、一般式(II)の化合物の使用に関する。
【0068】
本明細書において同様に開示されるのは、アミロイドまたはアミロイド様タンパク質に関連する疾患または状態の治療法であって、そのような治療を必要とする被験者に一般式(II)の化合物の有効量を投与する段階を含む方法である。
【0069】
本発明のさらにもう一つの局面は、視覚系の組織における病的異常/変化に関連する眼疾患の影響を治療する、または軽減するための薬剤を調製するための、一般式(I)の化合物の使用に関する。
【0070】
本明細書において同様に開示されるのは、視覚系の組織における病的異常/変化に関連する眼疾患の影響を治療する、または軽減する方法であって、そのような治療を必要とする被験者に一般式(I)の化合物の有効量を投与する段階を含む方法である。
【0071】
視覚系の組織における病的異常/変化に関連する眼疾患は、例えば、ニューロン分解などの、視覚系の組織におけるアミロイド-ベータ関連の病的異常/変化に特に関連する。前記病的異常は、例えば、皮質性視力欠損を引き起こす視覚皮質;緑内障を引き起こす前眼房および視神経;ベータ-アミロイド沈着による白内障を引き起こす水晶体;眼アミロイド症を引き起こす硝子体;原発性網膜変性および黄斑変性、例えば、加齢黄斑変性を引き起こす網膜;視神経ドルーゼン、視神経障害および視神経炎を引き起こす視神経;ならびに格子状ジストロフィを引き起こす角膜などの、眼の異なる組織に起こりうる。
【0072】
さらなる局面において、本発明は本発明の化合物と、任意に少なくとも1つのさらなる生物活性化合物ならびに/または薬学的に許容される担体および/もしくは希釈剤および/もしくは賦形剤とを含む混合物(薬学的組成物などの)に関する。さらなる生物活性物質は、アミロイド症を含むアミロイドまたはアミロイド様タンパク質によって引き起こされる、またはそれらに関連する疾患および障害、アルツハイマー病に関与するAβタンパク質などのアミロイドまたはアミロイド様タンパク質に関連する疾患または障害群の薬物療法において用いられる公知の化合物でありうる。
【0073】
さらなる生物活性物質または化合物は、本発明の化合物と同じ、もしくは類似のメカニズムにより、または非関連の作用メカニズムにより、あるいは複数の関連および/または非関連の作用メカニズムにより、その生物効果を発揮しうる。
【0074】
試料または患者におけるアミロイド関連疾患または状態の診断のためのデータ収集法であって、以下の段階を含む方法も開示される:
(a)アミロイドタンパク質を含むことが疑われる試料または特定の体部分もしくは体領域を本発明の化合物と接触させる段階;
(b)化合物をアミロイドタンパク質に結合させる段階;
(c)タンパク質に結合した化合物を検出する段階;および
(d)任意にアミロイドタンパク質と結合する化合物の有無を試料または特定の体部分もしくは体領域におけるアミロイドタンパク質の有無と相関づける段階。
【0075】
本発明のもう一つの態様は、組織および/または体液におけるアミロイド形成斑負荷量の程度を定量する方法であって、以下の段階を含む方法である:
(a)調査中の組織および/または体液の代表試料を提供する段階;
(b)本発明の化合物によりアミロイドタンパク質の存在について試料を試験する段階;
(c)アミロイドタンパク質に結合した化合物の量を定量する段階;および
(d)組織および/または体液における斑負荷量を計算する段階。
【0076】
さらなる局面は、試料中またはインサイチューで本発明の化合物のアミロイドタンパク質への特異的結合を検出する段階を含む、患者におけるアミロイド関連疾患または状態に対する素因を調べるためのデータの収集法であって、以下の段階を含む方法に関する:
(a)アミロイドタンパク質を含むことが疑われる試料または特定の体部分もしくは体領域を、アミロイドタンパク質に特異的に結合する本発明の化合物と接触させる段階;
(b)化合物をアミロイドタンパク質に結合させて、化合物/タンパク質複合体を形成する段階;
(c)化合物/タンパク質複合体の形成を検出する段階;
(d)任意に化合物/タンパク質複合体の有無を試料または特定の体部分もしくは体領域におけるアミロイドタンパク質の有無と相関づける段階:および
(e)任意に化合物/タンパク質複合体の量を通常の対照値と比較する段階。
【0077】
本発明のさらにもう一つの局面は、抗体またはワクチン組成物での治療後に患者におけるわずかな残留疾患をモニターするためのデータの収集法であって、以下の段階を含む方法である:
(a)アミロイドタンパク質を含むことが疑われる試料または特定の体部分もしくは体領域を、アミロイドタンパク質に特異的に結合する本発明の化合物と接触させる段階;
(b)化合物をアミロイドタンパク質に結合させて、化合物/タンパク質複合体を形成する段階;
(c)化合物/タンパク質複合体の形成を検出する段階;
(d)任意に化合物/タンパク質複合体の有無を試料または特定の体部分もしくは体領域におけるアミロイドタンパク質の有無と相関づける段階:および
(e)任意に化合物/タンパク質複合体の量を通常の対照値と比較する段階。
【0078】
抗体またはワクチン組成物で治療中の患者の反応性を予測するためのデータの収集法であって、以下の段階を含む方法も記載する:
(a)アミロイドタンパク質を含むことが疑われる試料または特定の体部分もしくは体領域を、アミロイドタンパク質に特異的に結合する本発明の化合物と接触させる段階;
(b)化合物をアミロイドタンパク質に結合させて、化合物/タンパク質複合体を形成する段階;
(c)化合物/タンパク質複合体の形成を検出する段階;
(d)任意に化合物/タンパク質複合体の有無を試料または特定の体部分もしくは体領域におけるアミロイドタンパク質の有無と相関づける段階:および
(e)任意に化合物/タンパク質複合体の量を通常の対照値と比較する段階。
【0079】
本発明のさらなる局面は、本発明の化合物を含む、アミロイド関連疾患または状態の検出および診断のための試験キットである。
【発明を実施するための形態】
【0080】
第一の態様において、本発明は一般式(II)の化合物に関する


は独立に一重結合または二重結合を意味する。2つの

の選択は、薬学的適用のために十分な安定性を有する化合物をもたらすべきであることは明らかである。したがって、第一の好ましい代わりの態様において、一方の

は二重結合であり、他方の

は一重結合であるか、または第二の好ましい代わりの態様において、両方の

は一重結合である。一方の

が二重結合であり、他方の

が一重結合である、第一の好ましい代わりの態様は、2つの

が芳香族系の一部である態様を含むことが理解されるであろう。
【0081】
pは1、2または3である。
【0082】
各リンカーKは独立に、1つまたは複数のC1-4アルキル基で置換されていてもよいC1-3アルキレンである。好ましくは、各リンカーKは-CH2-、-CH2CH2-または-CH2CH2CH2-である。
【0083】
各Bは独立に5または6員飽和または不飽和複素環であり、ここで複素環Bは、C1-4アルキル, C1-4アルコキシ、モノ-およびジ-C1-4アルキルアミノ、C3-7シクロアルキルアミノ、ならびに5もしくは6員飽和ヘテロシクリルから選択される1つもしくは複数、好ましくは1つもしくは2つの置換基で置換されていてもよく、または2つの置換基は一緒になって、複素環Bと縮合している、飽和、不飽和もしくは芳香族5から7員環を形成してもよく、かつここで複素環Bは構成単位VおよびWに加えて、N、NR、SおよびOから選択される1つまたは複数、好ましくは1つまたは2つのヘテロ原子を含んでいてもよく、ここでRはHおよびC1-4アルキルから選択される。
【0084】
5または6員飽和ヘテロシクリル基は、炭素原子およびN、NH、OおよびSから選択される1つまたは複数、好ましくは1つまたは2つのヘテロ原子を含む。窒素および硫黄原子は任意に酸化されていてもよい。5または6員飽和ヘテロシクリル基は、任意のヘテロ原子または炭素原子でその側鎖に結合していてもよい。5または6員飽和ヘテロシクリル基の例には、ピロリジニル、ピペリジニルおよびモルホリニルが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0085】
好ましくは、各複素環Bは置換されていてもよいインドリン、置換されていてもよいピラゾリレン、置換されていてもよいピリジニレン、置換されていてもよい2-ピリジノニレン、置換されていてもよい2-ピペリドニレン、置換されていてもよいチアゾリレンおよび置換されていてもよいイソチアゾリレンから独立に選択される。より好ましくは、各複素環Bは以下の基から独立に選択される:

【0086】
これらの基は示された方向に組み込まれる必要はなく、反対の方向に組み込まれることもできる。例えば、



として組み込まれることもできる。しかし、好ましくは、これらは与えられた方向に組み込まれる。
【0087】
R1は-H、-ハロゲン、-C1-4アルキル、-NH2、-NH-C1-4アルキル、-C1-4アルキレン-NH2、-C1-4アルキレン-NH-C1-4アルキル、-アリール、-アリール-R3、-C1-4アルキレン-アリール、-C1-4アルキレン-アリール-R3、-ヘテロアリール、-ヘテロアリール-R3、-NH-C1-4アルキレン-アリール、-NH-C1-4アルキレン-アリール-R3、-OHおよび-O-C1-4アルキルから選択される。R1は好ましくは-H、-CH3、-NH-C1-4アルキルまたは-CH2-NH-CH3である。
【0088】
R3はC1-4アルキル、ハロゲン、OHまたはO-C1-4アルキルである。
【0089】
R2は-H、-アリール、-C1-4アルキルまたは以下の式の基である

式中、B、V、WおよびKは前述の定義のとおりであり、qは0または1であり、かつrは0または1である。
【0090】
好ましくは、R2はHまたはアリールである。
【0091】
各構成単位Wは独立にH結合受容体である。好ましくは、各構成単位Wは独立にNまたはC=Oである。
【0092】
各構成単位Vは独立に任意であり、存在する場合には、独立にH結合供与体である。各構成単位Vは好ましくはNHである。
【0093】
アリールは好ましくはフェニルなどの5から7員アリールである。
【0094】
ヘテロアリールは好ましくは5から7員ヘテロアリール(好ましくは5員ヘテロアリール)であり、これはO、SまたはNから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む。例は

である。
【0095】
ハロゲンは好ましくはFまたはClである。
【0096】
一つの態様において、式(II)の化合物は式(II')を有する


は独立に一重結合または二重結合を意味する。2つの

の選択は、薬学的適用のために十分な安定性を有する化合物をもたらすべきであることは明らかである。したがって、第一の好ましい代わりの態様において、一方の

は二重結合であり、他方の

は一重結合であるか、または第二の好ましい代わりの態様において、両方の

は一重結合である。一方の

が二重結合であり、他方の

が一重結合である、第一の好ましい代わりの態様は、2つの

が芳香族系の一部である態様を含むことが理解されるであろう。
【0097】
pは2または3である。
【0098】
各リンカーKは独立に、1つまたは複数のC1-4アルキル基で置換されていてもよいC1-3アルキレンである。好ましくは、各リンカーKは-CH2-または-CH2CH2-である。
【0099】
各Bは独立に5または6員複素環であり、ここで複素環Bは、C1-4アルキル, C1-4アルコキシ、モノおよびジC1-4アルキルアミノ、C3-7シクロアルキルアミノ、ならびに5もしくは6員飽和ヘテロシクリルから選択される1つもしくは複数、好ましくは1つもしくは2つの置換基で置換されていてもよく、または2つの置換基は一緒になって、複素環Bと縮合している、飽和、不飽和もしくは芳香族5から7員環を形成してもよく、かつここで複素環Bは構成単位VおよびWに加えて、N、NR、SおよびOから選択される1つまたは複数、好ましくは1つまたは2つのヘテロ原子を含んでいてもよく、ここでRはHおよびC1-4アルキルから選択される。
【0100】
5または6員飽和ヘテロシクリル基は、炭素原子およびN、NH、OおよびSから選択される1つまたは複数、好ましくは1つまたは2つのヘテロ原子を含む。窒素および硫黄原子は任意に酸化されていてもよい。5または6員飽和ヘテロシクリル基は、任意のヘテロ原子または炭素原子でその側鎖に結合していてもよい。5または6員飽和ヘテロシクリル基の例には、ピロリジニル、ピペリジニルおよびモルホリニルが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0101】
好ましくは、各複素環Bは置換されていてもよいピラゾリレン、置換されていてもよいピリジニレン、置換されていてもよい2-ピリジノニレン、置換されていてもよい2-ピペリドニレン、置換されていてもよいチアゾリレンおよび置換されていてもよいイソチアゾリレンから独立に選択される。より好ましくは、各複素環Bは以下の基から独立に選択される:

【0102】
R1はH、C1-4アルキル、NH2、NH-C1-4アルキル、C1-4アルキレン-NH2、C1-4アルキレン-NH-C1-4アルキル、OHおよびO-C1-4アルキルから選択される。R1は好ましくはH、CH3、NH-CH3またはCH2-NH-CH3である。
【0103】
R2はH、または以下の式の基である

式中、B、V、WおよびKは前述の定義のとおりであり、qは0または1である。
【0104】
好ましくは、R2はHである。
【0105】
各構成単位Wは独立にH結合受容体である。好ましくは、各構成単位Wは独立にNまたはC=Oである。
【0106】
各構成単位Vは独立に任意であり、存在する場合には、独立にH結合供与体である。各構成単位Vは好ましくはNHである。
【0107】
好ましい化合物を以下の表にまとめている。
【0108】





【0109】
本発明の化合物において、H結合供与体およびH結合受容体は好ましくは、導入部分で示したとおり、βシート構造のアミノ酸鎖におけるH結合供与体およびH結合受容体のパターンに本質的に相補的なパターンに配列される。特に、本発明の化合物における隣接するH結合供与体とH結合受容体との間の距離は、好ましくは2.6から2.9Åまたは3.5から4.0Åの範囲内である。
【0110】
本発明の化合物における隣接するH結合供与体とH結合受容体との間の距離は、例えば、化合物のドライディングモデルから直接測定することができる。または、MacroModel 7.2などの分子モデリングコンピュータープログラムを距離測定に用いることもできる。
【0111】
本発明の化合物は、βシート構造のアミノ酸鎖へのそれらの結合を促進するH結合供与体/受容体パターンを特徴とするだけでなく、神経治療薬としてのそれらの使用を促進する好ましい物理化学的性質も有する。特に、それらの親油性は、血液脳関門のそれらの透過を増強する範囲内である。好ましくは、本発明の化合物の水とn-オクタノールとの間の分配係数(milogP)計算値は0から4、より好ましくは1から3の範囲内である。
【0112】
milogP値は、P. Ertl of Novartis Pharma AGによって提供される、ワールドワイドウェブ(http://www.molinspiration.com)上で入手可能なソフトウェアに従って計算することができる。ソフトウェアのコピーは出願者からも入手可能である。
【0113】
親油性に加えて、分子の極性表面積(PSA)は神経治療薬としての化合物の適性を評価するための重要な因子である(H. Pajouhesh et al., NeuroRx(登録商標): J. Am. Soc. Exp. Neurother. (2005) Vol. 2, 541)。PSAは窒素および酸素原子ならびにそれらに結合している極性水素が占める表面積(Å2)と定義される。これは水素結合能力および極性を強く反映している。PSAは分子の三次元構造を考慮する一方で、位相PSA(TPSA)は対応する二次元構造に基づいている。PSAおよびTPSAは類似の結果を提供し、TPSAはコンピューター上の集中性が低い二次元表示ゆえに著しく多い処理量を可能にする。本発明の化合物は一般には、血液脳関門の透過を促進するTPSAを有する。好ましくは、本発明の化合物のTPSAは90Å2以下である。
【0114】
TPSA値は、P. Ertl of Novartis Pharma AGによって提供される、ワールドワイドウェブ(http://www.molinspiration.com)上で入手可能なソフトウェアに従って計算することができる。ソフトウェアのコピーは出願者からも入手可能である。
【0115】
一般式(II)の化合物は、ペプチド結合を形成し、続いてボランジメチルスルフィド複合物で還元して二級アミンとすることにより、段階的に構築することができる。
【0116】
本発明の化合物を単独で投与することも可能であるが、これらを標準の薬学的慣例に従って薬学的組成物に製剤することが好ましい。したがって、本発明は式(II)の化合物の治療上有効な量を薬学的に許容される賦形剤との混合物で含む薬学的組成物も提供する。
【0117】
薬学的に許容される賦形剤は薬学の技術分野において公知で、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 15th Ed., Mack Publishing Co., New Jersey (1991)に記載されている。薬学的賦形剤は所期の投与経路および標準の薬学的慣例に関して選択することができる。賦形剤はその受容者に対して有害でないという意味で許容されなければならない。
【0118】
本発明の薬学的組成物の製剤において用いうる薬学的に有用な賦形剤は、例えば、担体、媒体、希釈剤;エタノール、イソプロパノールなどの一価アルコールおよびグリコールなどの多価アルコールならびにダイズ油、やし油、オリーブ油、ベニバナ油、綿実油などの食用油;オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピルなどの油性エステルなどの溶媒;結合剤、補助剤、可溶化剤、増粘剤、安定化剤、崩壊剤、すべり剤、滑沢剤、緩衝化剤、乳化剤、湿潤剤、懸濁化剤、甘味剤、着色剤、着香剤、コーティング剤、保存剤、抗酸化剤、加工剤;リン酸カルシウム、マグネシウムステート、タルク、単糖、二糖、デンプン、ゼラチン、セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デキストロース、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、ポリビニルピロリドン、低融点ワックス、およびイオン交換樹脂などの薬物送達改変剤および増強剤を含んでいてもよい。
【0119】
本発明の化合物の投与(送達)のための経路には、以下の1つまたは複数が含まれるが、それらに限定されるわけではない:経口(例えば、錠剤、カプセル剤、または摂取可能な溶液として)、局所、粘膜(例えば、鼻スプレーまたは吸入用のエアロゾルとして)、鼻、非経口(例えば、注射可能な剤形により)、胃腸、脊髄内、腹腔内、筋肉内、静脈内、子宮内、眼内、皮内、頭蓋内、気管内、腟内、脳室内、脳内、皮下、眼(硝子体内または眼房内を含む)、経皮、直腸、口腔、硬膜外、および舌下。
【0120】
例えば、化合物は、即時、遅延、改変、持続、パルスまたは制御放出適用のために、錠剤、カプセル剤、卵形剤(ovule)、エリキシル剤、液剤または懸濁剤の形で経口投与することができ、これらは着香剤または着色剤を含んでいてもよい。
【0121】
錠剤は微結晶セルロース、ラクトース、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、第二リン酸カルシウムおよびグリシンなどの賦形剤、デンプン(好ましくはトウモロコシ、バレイショまたはタピオカデンプン)、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウムおよび特定の複合ケイ酸塩などの崩壊剤、ならびにポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、スクロース、ゼラチンおよびアカシアなどの造粒結合剤を含んでいてもよい。加えて、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ベヘン酸グリセリルおよびタルクなどの滑沢剤も含まれうる。類似の型の固体組成物をゼラチンカプセル剤の充填剤として用いてもよい。これに関する好ましい賦形剤には、ラクトース、デンプン、セルロース、乳糖または高分子量ポリエチレングリコールが含まれる。水性懸濁剤および/またはエリキシル剤のために、薬剤を様々な甘味または着香剤、着色物質または色素、乳化および/または懸濁化剤や、水、エタノール、プロピレングリコールおよびグリセリンなどの希釈剤、ならびにその組み合わせと混合してもよい。
【0122】
本発明の化合物を非経口投与する場合、そのような投与の例には以下の1つまたは複数が含まれる:化合物の静脈内、動脈内、腹腔内、クモ膜下、脳室内、尿道内、胸骨内、頭蓋内、筋肉内もしくは皮下投与;および/または注入技術を用いての投与。非経口投与のために、化合物は、他の物質、例えば、溶液を血液と等張にするための十分な塩またはグルコースを含んでいてもよい、滅菌水溶液の形で用いるのが最良である。水溶液は、必要があれば適当に緩衝化(好ましくはpH3から9に)すべきである。適当な非経口製剤の無菌条件下での調製は、当業者には周知の標準の薬学技術によって容易に達成される。
【0123】
前述のとおり、本発明の化合物は鼻内または吸入により投与することができ、加圧容器、ポンプ、スプレーまたはネブライザーから、適当な噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFA134AT)もしくは1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFA 227EA)などのヒドロフルオロアルカン、二酸化炭素または他の適当なガスを用いて、ドライパウダー吸入器またはエアロゾルスプレーの体裁で都合よく送達される。加圧エアロゾルの場合、用量単位は一定量を送達するためのバルブを提供することにより定量してもよい。加圧容器、ポンプ、スプレーまたはネブライザーは、例えば、溶媒としてエタノールおよび噴射剤の混合物を用いての、活性化合物の溶液または懸濁液を含んでいてもよく、溶媒は滑沢剤、例えば、トリオレイン酸ソルビタンをさらに含んでいてもよい。吸入器または注入器において用いるためのカプセルおよびカートリッジ(例えば、ゼラチン製)は、化合物およびラクトースまたはデンプンなどの適当な粉末基剤の混合粉末を含むように調合してもよい。
【0124】
または、本発明の化合物は坐剤またはペッサリーの形で投与することもでき、またはゲル、ヒドロゲル、ローション、液剤、クリーム、軟膏もしくは散布剤の形で局所に適用してもよい。本発明の化合物は、例えば、皮膚パッチを用いて皮膚または経皮投与してもよい。
【0125】
本発明の化合物は肺または直腸経路で投与してもよい。これらは眼経路で投与してもよい。眼科的使用のために、化合物は等張のpH調節した滅菌食塩水中の微粉化懸濁液として、または好ましくは等張のpH調節した滅菌食塩水中の溶液として、任意に塩化ベンジルアルコニウムなどの保存剤との組み合わせで製剤することができる。または、これらはワセリンなどの軟膏中で製剤してもよい。
【0126】
皮膚への局所適用のために、本発明の化合物は、例えば、以下の1つまたは複数の混合物に懸濁または溶解した活性化合物を含む適当な軟膏として製剤することができる:鉱油、流動パラフィン、白色ワセリン、プロピレングリコール、乳化ワックスおよび水。または、これらは、例えば、以下の1つまたは複数の混合物に懸濁または溶解した適当なローションまたはクリームとして製剤することもできる:鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリエチレングリコール、流動パラフィン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、ベンジルアルコールおよび水。
【0127】
典型的には、医師は個々の被験者のために最も適当であると思われる実際の用量を決定することになる。任意の特定の個人のための具体的用量レベルおよび投与頻度は変動することがあり、用いる具体的化合物の活性、その化合物の代謝的安定性および作用の長さ、年齢、体重、全身の健康、性別、食事、投与の様式および時間、排出の速度、薬物併用、特定の状態の重症度、ならびに個々の現行の治療を含む様々な因子に依存することになる。
【0128】
ヒト(体重およそ70kg)への投与のために推奨される本発明の化合物の用量は、単位用量あたりの活性成分0.1mgから1g、好ましくは1mgから500mgである。単位用量は、例えば、1日に1から4回投与してもよい。用量は投与経路に依存することになる。患者の年齢および体重ならびに治療する状態の重症度に応じて、用量に対する日常的変動を行う必要がありうることが理解されるであろう。投与の正確な用量および経路は最終的には担当医または獣医の自由裁量となる。
【0129】
本発明の化合物は他の治療薬との組み合わせで用いてもよい。本発明の化合物を同じ疾患に対して活性な第二の治療薬との組み合わせで用いる場合、各化合物の用量は化合物を単独で用いる場合と異なることがある。
【0130】
前述の組み合わせは薬学的製剤の形で用いるために都合よく提示されうる。そのような組み合わせの個々の成分は別の、または組み合わせた薬学的製剤中、任意の好都合な経路で、逐次または同時のいずれかで投与しうる。投与が逐次である場合、本発明の化合物または第二の治療薬のいずれを最初に投与してもよい。投与が同時である場合、組み合わせを同じまたは異なる薬学的製剤中のいずれで投与してもよい。同じ製剤中で組み合わせる場合、2つの化合物は安定かつお互いおよび製剤の他の成分と適合性でなければならないことが理解されるであろう。別々に製剤する場合、これらは当技術分野においてそのような化合物に対して公知の様式で都合よく、任意の好都合な製剤で提供しうる。
【0131】
本発明の薬学的組成物は、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 15th Ed., Mack Publishing Co., New Jersey (1991)に記載のとおり、それ自体が当業者には公知の様式で製造することができる。
【0132】
本発明の化合物で治療しうる疾患は、異常なタンパク質構造、特に異常なβシート構造の形成に関連しうる。本発明の文脈において、異常なタンパク質構造は、タンパク質またはペプチドが健常な個人で一般にとる三次元構造から、病的状態に関連する異なる三次元構造へと再度折りたたまれる場合に生じるタンパク質構造である。同様に、本発明の文脈における異常なβシート構造は、タンパク質またはペプチドが健常な個人で一般にとる三次元構造から、病的状態に関連するβシート構造へと再度折りたたまれる場合に生じるβシート構造である。
【0133】
特に、一つの態様において、本発明の化合物で治療しうる疾患は、アミロイドまたはアミロイド様タンパク質に関連する疾患または状態である。
【0134】
この疾患および障害群には、アルツハイマー病(AD)や、例えば、軽度認知障害(MCI)、レヴィー小体痴呆、ダウン症候群、アミロイド症を伴う遺伝性脳出血(オランダ型)などの認知記憶能力の欠損によって特徴づけられる疾患または状態;グアム・パーキンソン痴呆複合が含まれる。アミロイド様タンパク質に基づく、または関連する他の疾患は、進行性核上性麻痺、多発性硬化症;クロイツフェルト-ヤコブ病、パーキンソン病、HIV関連痴呆、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、封入体筋炎(IBM)、成人発症型糖尿病;老人性心アミロイド症;内分泌腫瘍、ならびに皮質性視力欠損を含む視覚皮質;緑内障を含む前眼房および視神経;ベータ-アミロイド沈着による白内障をふくむ水晶体;眼アミロイド症を含む硝子体;原発性網膜変性および黄斑変性、特に加齢黄斑変性を含む網膜;視神経ドルーゼン、視神経障害および視神経炎を含む視神経;および格子状ジストロフィを含む角膜などの、眼の異なる組織を標的とするアミロイド関連の眼疾患を含む他の疾患である。
【0135】
好ましい態様において、本発明の化合物はアルツハイマー病、軽度認知障害(MCI)、レヴィー小体痴呆(LBD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、封入体筋炎(IBM)および加齢黄斑変性(AMD)の治療のために用いることができる。特に好ましい態様において、本発明の化合物はアルツハイマー病の治療のために用いることができる。
【0136】
化合物のAβの凝集を阻害する能力は、例えば、Rzepecki et al., J. Biol. Chem., 2004, 279(46), 47497-47505に記載の蛍光相関分光法を用いて、またはチオフラビンT分光蛍光アッセイを用いて調べることができる。
【0137】
もう一つの態様において、本発明の化合物は、視覚系の組織における病的異常/変化に関連する、特に、例えばニューロン分解などの視覚系の組織におけるアミロイド-ベータ-関連の病的異常/変化に関連する眼疾患の影響を治療する、または軽減するために用いることもできる。前記病的異常は、例えば、皮質性視力欠損を引き起こす視覚皮質;緑内障を引き起こす前眼房および視神経;ベータ-アミロイド沈着による白内障を引き起こす水晶体;眼アミロイド症を引き起こす硝子体;原発性網膜変性および黄斑変性、例えば、加齢黄斑変性を引き起こす網膜;視神経ドルーゼン、視神経障害および視神経炎を引き起こす視神経;ならびに格子状ジストロフィを引き起こす角膜などの、眼の異なる組織に起こりうる。
【0138】
本発明の化合物は、少なくとも1つのさらなる生物活性化合物ならびに/または薬学的に許容される担体および/もしくは希釈剤および/もしくは賦形剤との混合物の形で提供することもできる。化合物および/またはさらなる生物活性化合物は、好ましくは治療上有効な量である。
【0139】
さらなる生物活性化合物の性質は混合物の所期の使用に依存することになる。さらなる生物活性物質または化合物は、本発明の化合物と同じ、もしくは類似のメカニズムにより、または非関連の作用メカニズムにより、あるいは複数の関連および/または非関連の作用メカニズムにより、その生物効果を発揮しうる。
【0140】
一般に、さらなる生物活性化合物には、神経伝達増強剤、精神治療薬、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、カルシウムチャネル遮断薬、生体アミン、ベンゾジアゼピン精神安定剤、アセチルコリン合成、保存または放出増強剤、アセチルコリンシナプス後受容体アゴニスト、モノアミンオキシダーゼ-Aまたは-B阻害剤、N-メチル-D-アスパラギン酸グルタミン酸受容体アンタゴニスト、非ステロイド性抗炎症薬、抗酸化剤、およびセロトニン作動性受容体アンタゴニストが含まれうる。特に、さらなる生物活性化合物は、アミロイド症の治療において用いられる化合物、酸化ストレスに対する化合物、抗アポトーシス化合物、金属キレート化剤、ピレンゼピンおよび代謝物などのDNA修復の阻害剤、3-アミノ-1-プロパンスルホン酸(3APS)、1,3-プロパンジスルホネート(1,3PDS)、α-セクレターゼ活性化剤、β-およびγ-セクレターゼ阻害剤、タウタンパク質、神経伝達物質、βシート破壊剤、アミロイドベータ排出/枯渇細胞成分の誘引剤、ピログルタミン酸化アミロイドベータ3-42を含むN末端切断型アミロイドベータの阻害剤、抗炎症分子、またはタクリン、リバスチグミン、ドネペジル、および/もしくはガランタミンなどのコリンエステラーゼ阻害剤(ChEI)、M1アゴニスト、任意のアミロイドまたはタウ修飾薬および栄養補助剤を含む他の薬物、任意の機能的に等価の抗体またはその機能的部分を含む抗体、AβペプチドのN末端部からの複数の近接アミノ酸残基の単一または反復伸長からなるAβ抗原性ペプチド断片からなる群より選択することができる。
【0141】
さらなる態様において、本発明の混合物は、ナイアシンまたはメマンチンを本発明の化合物、ならびに任意に薬学的に許容される担体および/または希釈剤および/または賦形剤と共に含んでいてもよい。
【0142】
本発明のさらにもう一つの態様において、さらなる生物活性化合物として、例えば、幻覚、妄想、思考障害(顕著な散乱、逸脱、脱線思考によって現れる)、および奇異または無秩序な行動、ならびに性快感消失、情動平坦化、感情鈍麻、および社会的引きこもりを含む、陽性および陰性精神病症状を治療するための、クロザピン、ジプラシドン、リスペリドン、アリピプラゾールまたはオランザピンなどの「非定型抗精神病薬」を、本発明の化合物、ならびに任意に薬学的に許容される担体および/または希釈剤および/または賦形剤と共に含む混合物が提供される。
【0143】
本発明の化合物との組み合わせで、混合物中で適当に用いることができる他の化合物は、例えば、国際公開公報第2004/058258号(特に16および17ページ参照)に記載されており、治療薬標的(36から39ページ)、アルカンスルホン酸およびアルカノール硫酸(39から51ページ)、コリンエステラーゼ阻害剤(51から56ページ)、NMDA受容体アンタゴニスト(56から58ページ)、エストロゲン(58から59ページ)、非ステロイド性抗炎症薬(60および61ページ)、抗酸化剤(61および62ページ)、ペルオキシソーム増殖因子活性化需受容体(PPAR)アゴニスト(63から67ページ)、コレステロール低下薬(68から75)、アミロイド阻害剤(75から77ページ)、アミロイド形成阻害剤(77から78ページ)、金属キレート化剤(78および79ページ)、抗精神病薬および抗うつ薬(80から82ページ)、栄養補助剤(83から89ページ)と脳内の生物活性物質の利用率を高める化合物(89から3ページ)ならびにプロドラッグ(93および94ページ)が含まれ、この文書は参照により本明細書に組み入れられる。
【0144】
一つの好ましい態様において、さらなる生物活性化合物は、任意の機能的に等価の抗体またはその機能的部分を含む抗体である。抗体は、好ましくはモノクローナル、キメラまたはヒト化抗体でありうる。
【0145】
本発明のさらなる局面において、本発明の化合物に加えて、アミロイドβ(Aβ)、特にアミロイドβの本来の高次構造、すなわちアミロイドオリゴマーおよび線維を認識して結合するが、非線形アミロイド種には結合しない、その機能的部分を含む抗体、または特にその機能的部分を含むモノクローナル抗体を含む混合物が提供される。
【0146】
特に、前記抗体はインビトロおよびインビボで、アミロイド形成性モノマーペプチド、具体的には、例えば、Aβモノマーペプチド1-39;1-40、1-41、1-42、または1-43などのβ-アミロイドモノマーペプチドであるが、特にAβ1-42モノマーペプチドの高分子量アミロイド原線維またはフィラメントへの凝集を阻害することができる。アミロイド形成性モノマーペプチドの凝集の阻害を通して、これらの抗体はアミロイド斑、特に二次構造の変化により不溶性となり、患畜またはヒトの脳内アミロイド斑の主要な部分であることが知られている、アミロイド型(1-42)の形成を防止または遅らせることができる。
【0147】
本発明のもう一つの局面において、混合物は、アミロイドモノマーペプチド、具体的には、例えば、Aβモノマーペプチド1-39;1-40、1-41、1-42、または1-43などのβ-アミロイドモノマーペプチドであるが、特にAβ1-42モノマーペプチドの凝集により形成される、あらかじめ形成された高分子量ポリマーアミロイド原線維またはフィラメントと共にインキュベートした後、該高分子量ポリマーアミロイド原線維またはフィラメントを脱凝集することができる抗体を含む。アミロイド形成性ポリマー原線維またはフィラメントの脱凝集を通して、これらの抗体はアミロイド斑の形成を防止または遅らせることができ、これは疾患に関連する症状の軽減およびその進行の遅延または逆転を引き起こす。
【0148】
本発明のさらにもう一つの局面において、混合物は、抗体であるが、特にモノクローナル抗体またはその機能的部分を含み、この抗体は特に高度の高次構造感受性と対になって、本明細書において前述した凝集阻害特性ならびに脱凝集特性の両方を示すという点で、二機能性または二重特異性である。
【0149】
一つの態様において、混合物は、高次構造エピトープ、特にアミロイドβペプチドのN末端部分にある、特にアミロイドβペプチドのN末端部分の以下のコア領域に埋め込まれた高次構造エピトープを認識して結合する抗体を含む:

【0150】
特に、アミノ酸残基12から24の間、特に残基14から23の間、特にアミノ酸残基14から20の間のβアミロイドタンパク質の領域であって、残基が主にβアミロイドタンパク質の結合に関与し、それぞれ16、17位と、19および20位と、14位にある、3つの別の認識および結合部位を含む領域に局在するエピトープ。
【0151】
特定の態様において、本発明の混合物は、本発明の化合物に加えて、任意の機能的に等価の抗体またはその機能的部分を含む抗体、特に二機能性抗体であるが、特にモノクローナル抗体、特に二機能性モノクローナル抗体を含み、この抗体は、それぞれ2005年12月01日および2005年12月09日にそれぞれDSM ACC2752、DSM ACC 2750およびDSM ACC2751として寄託されたFP 12H3、FP 12H3-C2、およびFP 12H3-G2、2005年12月08日にDSM ACC2755として寄託されたET 7E3、ならびに2005年12月08日にDSM ACC2756として寄託されたEJ 7H3からなる群より選択されるハイブリドーマ細胞株によって産生される抗体の特徴的性質を有する。
【0152】
特に、本発明は、それぞれ2005年12月01日および2005年12月09日にそれぞれDSM ACC2752、DSM ACC 2750およびDSM ACC2751として寄託されたFP 12H3、FP 12H3-C2、およびFP 12H3-G2、2005年12月08日にDSM ACC2755として寄託されたET 7E3、ならびに2005年12月08日にDSM ACC2756として寄託されたEJ 7H3からなる群より選択されるハイブリドーマ細胞株によって産生される、任意の機能的に等価の抗体またはその機能的部分を含む抗体に関する。
【0153】
前述の抗体は国際公開公報第2007/068412号に記載されており、その内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0154】
さらなる局面において、本発明の混合物に含まれる抗体はキメラ抗体もしくはその断片、またはヒト化抗体もしくはその断片である。本発明の混合物において適当に用いることができる、これらおよびさらなる抗体は、例えば、2007年7月13日提出の国際特許出願第PCT/US2007/073504号に記載されている。
【0155】
抗体がヒト化抗体である場合、これは好ましくは国際特許出願第PCT/US2007/073504号の配列番号:2および配列番号:4に示される軽鎖および重鎖を提示するか、または国際特許出願第PCT/US2007/073504号の配列番号:1および配列番号:3に示される軽鎖可変領域および重鎖可変領域を提示する。これらの配列は添付の配列表にも示している。
【0156】
本発明のさらにもう一つの局面において、本明細書において前述した本発明の化合物に加えて、その機能的に等価の断片を含む、AβペプチドのN末端部からのペプチド断片、特にAβペプチドのN末端部からの13から15の間の近接アミノ酸残基の単一または反復伸長からなるAβペプチド断片であるが、特にAβペプチドのN末端部からの残基1-15、1-14、および1-13からなる群より選択されるアミノ酸残基、特に残基1-15からなるAβペプチド断片であるが、特に、例えば、リポソームなどの担体粒子/アジュバントに結合されている、またはその中に組み込まれる、もしくは再構成される、本明細書において前述したAβペプチド断片を含む混合物が提供される。ペプチド断片はワクチン組成物中に含まれることもできる。特に、ペプチド抗原は、リポソーム担体/免疫アジュバントの脂質二重層への挿入を促進する、親油性または疎水性部分によって、特に、リポソーム二重層においてペプチドのアンカーとして機能し、ペプチドをリポソーム表面のすぐ近くに配置し、安定化させる大きさを有する、親油性または疎水性部分によって修飾される。
【0157】
本発明のさらなる態様において、親油性または疎水性部分は脂肪酸、トリグリセリドまたはリン脂質であるが、特に脂肪酸、トリグリセリドまたはリン脂質である。特に、疎水性部分はパルミチン酸であり、リポソーム製剤は加えて、例えば、脂質A、ミョウバン、リン酸カルシウム、インターロイキン1、ならびに/または多糖およびタンパク質のマイクロカプセルであるが、特にモノホスホリルもしくはジホスホリル脂質Aなどの解毒脂質A、またはミョウバンなどのアジュバントを含んでいてもよい。
【0158】
本発明の混合物において適当に用いることができる、これらおよびさらなる組成物は、例えば、国際公開公報第2007/068411号に記載されている。
【0159】
患者におけるアミロイド関連疾患もしくは状態またはアミロイド関連疾患もしくは状態に対する素因の診断は、試料中またはインサイチューで本発明の化合物のアミロイドタンパク質への特異的結合を検出することにより行ってもよく、これはアミロイド抗原を含むことが疑われる試料または特定の体部分もしくは体領域を、アミロイドタンパク質に結合する本発明の化合物と接触させる段階、本発明の化合物をアミロイドタンパク質に結合させて、化合物/タンパク質複合体を形成する段階、化合物/タンパク質複合体の形成を検出する段階および化合物/タンパク質複合体の有無を試料または特定の体部分もしくは体領域におけるアミロイドタンパク質の有無と相関づける段階、任意に化合物/タンパク質複合体の量を通常の対照値と比較する段階を含み、ここでこの凝集物の量の通常の対照値に比べての増加は患者がアミロイド関連疾患もしくは状態を患っている、またはそれを発生する危険度が高いことを示すと考えられる。
【0160】
本発明の化合物または混合物での治療後に患者におけるわずかな残留疾患のモニターは、試料中またはインサイチューで本発明の化合物のアミロイドタンパク質への特異的結合を検出することにより行ってもよく、これはアミロイド抗原を含むことが疑われる試料または特定の体部分もしくは体領域を、アミロイドタンパク質に結合する本発明の化合物と接触させる段階、化合物をアミロイドタンパク質に結合させて、化合物/タンパク質複合体を形成する段階、化合物/タンパク質複合体の形成を検出する段階および化合物/タンパク質複合体の有無を試料または特定の体部分もしくは体領域におけるアミロイドタンパク質の有無と相関づける段階、任意に化合物/タンパク質複合体の量を通常の対照値と比較する段階を含み、ここでこの凝集物の量の通常の対照値に比べての増加は患者がまだわずかな残留疾患を患っている可能性があることを示すと考えられる。
【0161】
本発明の化合物もしくは組成物または混合物での治療に対する患者の反応性の予測は、試料中またはインサイチューで本発明の化合物のアミロイドタンパク質への特異的結合を検出することにより行ってもよく、これはアミロイドタンパク質を含むことが疑われる試料または特定の体部分もしくは体領域を、アミロイドタンパク質に結合する本発明の化合物と接触させる段階、化合物をアミロイドタンパク質に結合させて、化合物/タンパク質複合体を形成する段階、化合物/タンパク質複合体の形成を検出する段階および化合物/タンパク質複合体の有無を試料または特定の体部分もしくは体領域におけるアミロイドタンパク質の有無と相関づける段階、任意に化合物/タンパク質複合体の量を治療の開始前と後とで比較する段階を含み、ここでこの凝集物の量の現象は患者が治療に対して反応性である高い可能性を有することを示すと考えられる。
【0162】
アミロイド関連疾患もしくは状態に対する素因を診断するため、または患者におけるわずかな残留疾患をモニターするため、または本明細書において前述した本発明の化合物もしくは組成物または混合物での治療に対する患者の反応性を予測するために、アミロイド関連疾患または状態の診断において用いうる生物試料は、例えば、血清、血漿、唾液、胃分泌物、粘液、脳脊髄液、リンパ液などの体液、または神経、脳、心臓もしくは血管組織などの生物から得た組織もしくは細胞である。試料中のアミロイドタンパク質の有無を調べるために、例えば、検出のための二次試薬を用いての間接的検出法を用いるアッセイ、ELISAならびに免疫沈降および凝集アッセイなどの、当業者には公知の任意のイムノアッセイ(Harlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory, New York, 1988, 555 to 612参照)を用いてもよい。これらのアッセイの詳細な説明は、例えば、Maertens and Stuyverの国際公開公報第96/13590号、Zrein et al. (1998)および国際公開公報第96/29605号に記載されている。
【0163】
インサイチュー診断のために、本明細書において前述した本発明の化合物もしくは組成物または混合物を、本発明の化合物とアミロイド抗原との間の特異的結合が起こりうるように、例えば、静脈内、鼻内、腹腔内、脳内、動脈内注射などの当技術分野において公知の方法により、診断する生物に投与してもよい。化合物/タンパク質複合体を化合物に結合した標識を通して検出してもよい。
【0164】
診断的適用あるいはアミロイド関連疾患もしくは状態に対する素因を診断するため、または患者におけるわずかな残留疾患をモニターするため、または本明細書において前述した本発明の化合物もしくは組成物または混合物での治療に対する患者の反応性を予測するための適用において用いるイムノアッセイは、典型的には標識した抗原、抗体、または検出のための二次試薬に頼る。これらのタンパク質または試薬は、コロイド金およびラテックスビーズなどの、酵素、放射性同位体、ならびに蛍光、発光および着色粒子を含む色素産生物質を含む、当業者には一般に公知の化合物で標識することができる。これらのうち、放射能標識はほとんどすべての型のアッセイのために用いることができ、変異型が最も多い。酵素結合標識は、放射能を避けなければならない場合、または迅速な結果が必要とされる場合に特に有用である。蛍光色素は、使用のために高価な装置を必要とするが、非常に高感度の検出法を提供する。これらのアッセイにおいて有用な抗体には、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、およびアフィニティ精製したポリクローナル抗体が含まれる。
【0165】
または、本発明の化合物を、プロテインAもしくはGまたは第二の抗体などの、免疫グロブリンに親和性を有する標識物質との反応によって、間接的に標識してもよい。抗体を第二の物質と結合させ、抗体に結合した第二の物質に親和性を有する標識した第三の物質を検出してもよい。例えば、抗体をビオチンに結合させ、抗体-ビオチン結合体を標識したアビジンまたはストレプトアビジンを用いて検出してもよい。同様に、抗体をハプテンに結合させ、抗体-ハプテン結合体を標識した抗ハプテン抗体を用いて検出してもよい。
【0166】
当業者であれば、本発明に従って用いうるこれらおよび他の適当な標識を知っているであろう。これらの標識の抗体またはその断片への結合は、当業者には一般に公知の標準的技術を用いて達成することができる。典型的な技術はKennedy, J. H., et al., 1976 (Clin. Chim. Acta 70:1-31)、およびSchurs, A. H. W. M., et al. 1977 (Clin. Chim Acta 81:1-40)によって記載されている。後者で言及されているカップリング技術はグルタルアルデヒド法、過ヨウ素酸法、ジマレイミド法、および他の方法で、これらはすべて参照により本明細書に組み入れられる。
【0167】
現行のイムノアッセイは分析物を検出するために二重抗体法を用いており、ここでは抗体を検出可能な標識で標識してある第二の抗体との反応性によって間接的に標識する。第二の抗体は好ましくは、モノクローナル抗体が由来する動物の抗体に結合するものである。すなわち、モノクローナル抗体がマウス抗体である場合、標識した第二の抗体は抗マウス抗体である。以下に記載するアッセイにおいて用いるモノクローナル抗体のために、この標識は好ましくは抗体でコーティングしたビーズ、特に磁気ビーズである。本明細書に記載のイムノアッセイで用いるポリクローナル抗体のために、標識は好ましくは放射性、蛍光または電気化学発光物質などの検出可能な分子である。
【0168】
もう一つの二重抗体系は、分析物の迅速評価に適合しているため、しばしば急速フォーマットシステムと呼ばれ、本発明の範囲内で用いてもよい。このシステムは抗体と分析物との間の高い親和性を必要とする。本発明の一つの態様に従い、アミロイド抗原の存在を、それぞれアミロイド抗原に特異的な一対の抗体を用いて調べる。前記抗体対の一方は本明細書において「検出抗体」と呼ばれ、前記抗体対の他方は本明細書において「捕捉抗体」と呼ばれる。モノクローナル抗体は捕捉抗体または検出抗体のいずれかとして用いることができる。モノクローナル抗体は捕捉および検出抗体の両方として、一つのアッセイで一緒に用いることもできる。本発明の一つの態様は、したがって、生物体液の試料中のアミロイド抗原を検出するために、二重抗体サンドイッチ法を用いる。この方法において、分析物(アミロイド抗原)を検出抗体と捕捉抗体との間にサンドイッチし、捕捉抗体は固体支持体に不可逆的に固定されている。検出抗体は、抗体-分析物サンドイッチの存在、したがって分析物の存在を特定するために、検出可能な標識を含むことになる。
【0169】
例示的固相物質には、ラジオイムノアッセイおよび酵素イムノアッセイの分野において周知のマイクロタイタープレート、ポリスチレンの試験管、磁気、プラスティックまたはガラスビーズおよびスライドが含まれるが、それらに限定されるわけではない。抗体を固相にカップリングする方法も当業者には周知である。最近、ナイロン、ニトロセルロース、酢酸セルロース、ガラス繊維および他の多孔性ポリマーなどのいくつかの多孔性材料が固体支持体として用いられている。
【0170】
組織および/または体液(動物、特に哺乳動物であるが、特に視覚系の組織における病的異常/変化に関連する、特に視覚系の組織におけるアミロイド-ベータ-関連の病的異常/変化に関連する眼疾患を患っているヒトの網膜神経節細胞層など)中の斑負荷量は、Ding, J. -D. et al., “Targeting age-related macular degeneration with Alzheimer's disease based immunotherapies: Anti-amyloid-b antibody attenuates pathologies in an age-related macular degeneration mouse model”, Vision Research (2007), doi:10.1016/j.visres.2007.07.025に開示されるものなどの、当技術分野において公知の方法によって計算することができる。
【0171】
本発明の化合物は、アミロイドタンパク質を検出するための試験キットに組み込むこともできる。試験キットは典型的には、化合物/タンパク質複合体の有無がアミロイドタンパク質の有無と相関するように、アミロイドタンパク質に結合させて化合物/タンパク質複合体を形成するため、および化合物/タンパク質複合体の形成を検出するための、本発明の1つまたは複数の化合物を保持する容器および化合物を使用するための説明書を含む。
【0172】
「試験キット」なる用語は一般に、当技術分野において公知の任意の診断キットを意味する。より具体的には、後者の用語はZrein et al. (1998)に記載の診断キットを意味する。
【0173】
実施例
本発明を以下の非限定的実施例によって例示する。
【0174】
2a:5-p-トリル-N-((5-p-トリル-1H-ピラゾル-3-イル)メチル)-1H-ピラゾル-3-アミン2塩酸塩の調製

塩化アセチル(6.16mL、86.60mmol)を無水MeCN(100mL)中の5-アミノ-3-(4-メチルフェニル)ピラゾール(5g、28.86mmol)および炭酸カリウム(14g、101.03mmol)の懸濁液に滴加した。反応混合物を16時間還流した。溶媒を蒸発させ、残渣をCHCl3に再懸濁し、1N HCl、飽和NaHCO3水溶液、H2Oおよび食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥した。溶媒を蒸発させ、粗製N-(1-アセチル-5-p-トリル-1H-ピラゾル-3-イル)アセトアミドをそれ以上精製せずに次の段階で用いた。
【0175】
粗製N-(1-アセチル-5-p-トリル-1H-ピラゾル-3-イル)アセトアミドをMeOH/THF/H2O(2:2:1、150mL)および33%アンモニア溶液2滴の混合物に溶解した。反応混合物を16時間撹拌し、次いで溶媒を蒸発させて、粗製N-(5-p-トリル-1H-ピラゾル-3-イル)アセトアミドをそれ以上精製せずに次の段階で用いた。
MS (ESI): m/z: 216.29 [MH+].
【0176】
無水MeCN(60mL)中の粗製N-(5-p-トリル-1H-ピラゾル-3-イル)アセトアミド(28.86mmol)、3,4-ジヒドロ-2H-ピラン(6.7mL、72.15mmol)およびトリフルオロ酢酸(43μL、0.58mmol)の混合物を16時間還流した。溶媒を蒸発させ、残渣をCH2Cl2(50mL)に再懸濁し、H2Oおよび食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥した。溶媒を蒸発させ、粗製N-(5-トリル-1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-1H-ピラゾル-3-イル)アセトアミドをそれ以上精製せずに次の段階で用いた。
MS (ESI): m/z: 300.33 [MH+].
【0177】
粗製N-(5-メチル-1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-1H-ピラゾル-3-イル)アセトアミド(28.86mmol)をEtOH/H2O(2:3、100mL)に水酸化カリウム(11g、202mmol)と共に溶解し、16時間還流した。反応混合物を濃縮し、次いでCHCl3で抽出した。合わせた有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥した。溶媒を蒸発させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(PE-EtOAc、7:3から3:7)により精製して、5-トリル-1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-1H-ピラゾル-3-アミン(2.99gの位置異性体Aおよび4.39gの位置異性体B、4段階で99%)を得た。
【0178】
位置異性体A:

位置異性体B:

【0179】

【0180】
メタノール(5mL)中の5-p-トリル-1H-ピラゾール-3-カルボン酸(250mg、1.24mmol)および硫酸(120μL、1.48mmol)を16時間加熱還流した。溶媒を蒸発させ、残渣をCH2Cl2に再懸濁した。残渣をろ過し、ろ液を水および食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥した。溶媒を蒸発させ、白色固体を前に回収した沈澱と合わせた。5-p-トリル-1H-ピラゾール-3-カルボン酸メチル(224mg、84%)を白色固体で得た。

【0181】
無水MeCN(3mL)中の5-p-トリル-1H-ピラゾール-3-カルボン酸メチル(224mg、1.03mmol)、3,4-ジヒドロ-2H-ピラン(190μL、2.07mmol)およびトリフルオロ酢酸(2μL、0.02mmol)の混合物を2時間還流した。溶媒を蒸発させた。残渣をCH2Cl2(50mL)に再懸濁し、H2Oおよび食塩水で洗浄した。Na2SO4で乾燥し、溶媒を蒸発させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(PE-EtOAc、6:4)にかけた後、1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-5-p-トリル-1H-ピラゾール-3-カルボン酸メチル(363mg、68%)を得た。
【0182】

【0183】
1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-5-p-トリル-1H-ピラゾール-3-カルボン酸メチル(363mg、0.70mmol)をMeOH/THF/H2O(1:2:1、4mL)の混合物に溶解した。水酸化リチウムを加え、反応混合物を16時間撹拌した。反応混合物を水で希釈し、DCMで洗浄した。水相を蒸発させた。1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-5-p-トリル-1H-ピラゾール-3-カルボン酸(205mg、定量的)を白色固体で得、これをそれ以上精製せずに次の段階で用いた。
【0184】

【0185】
5-トリル-1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-1H-ピラゾル-3-アミン(化合物A、81mg、0.31mmol)をDCM(10mL)中の1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-5-p-トリル-1H-ピラゾール-3-カルボン酸(100mg、0.34mmol)、ヨウ化2-クロロ-1-メチルピリジニウム(122mg、0.47mmol)およびN,N'-ジイソプロピルエチルアミン(163μL、0.94mmol)の溶液に加えた。反応混合物を室温で16時間撹拌した。反応混合物を水で希釈し、DCMで抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥して、濃縮した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(PE-EtOAc、9:1)で精製し、1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-N-(1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-5-p-トリル-1H-ピラゾル-3-イル)-5-p-トリル-1H-ピラゾール-3-カルボキサミド(70mg、43%)を得た。

【0186】
1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-N-(1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-5-p-トリル-1H-ピラゾル-3-イル)-5-p-トリル-1H-ピラゾール-3-カルボキサミド(142mg、0.27mmol)を無水THF(10mL)に懸濁し、ボランジメチルスルフィド複合物(177μL、1.86mmol)を滴加した。反応混合物を16時間還流下で撹拌した。次いで、反応混合物を0℃まで冷却し、MeOH(500μL)を加えた。次いで、混合物を10分間撹拌した。濃塩酸(12N)をpH<2となるまで加え、得られた混合物を16時間還流下で撹拌した。混合物を室温まで冷却し、沈澱をろ過し、水酸化ナトリウムの水溶液(1M)に加えた。水相をDCM(3×10mL)で抽出し、有機層をNa2SO4で乾燥した後、溶媒を蒸発させた。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(溶離剤:EtOAc)で精製し;5-p-トリル-N-((5-p-トリル-1H-ピラゾル-3-イル)メチル)-1H-ピラゾル-3-アミンを白色固体で得た。
【0187】
5-p-トリル-N-((5-p-トリル-1H-ピラゾル-3-イル)メチル)-1H-ピラゾル-3-アミン(27mg、0.078mmol)をメタノールHCl(3N、1mL)中で再結晶した。固体をろ過し、Et2Oで洗浄し、減圧下で乾燥した;白色固体。融点=132℃。

【0188】
2c:N5-プロピル-N2-((6-((6-(プロピルアミノ)ピリジン-3-イル)メチルアミノ)ピリジン-3-イル)メチル)ピリジン-2,5-ジアミンの調製

試薬:i)ヨウ化2-クロロ-1-メチルピリジニウム ii)KOH/EtOH/H2O iii)5/ヨウ化2-クロロ-1-メチルピリジニウム iv)n-プロピルアミン/還流、16時間 v)BMS/THF/32時間
ヨウ化2-クロロ-1-メチルピリジニウム(2.99g、10mmol)およびDIPEA(3mL)をTHF(150mL)中の6-アミノニコチン酸メチル1(760mg、5mmol)および6-ブロモニコチン酸2(1g、5mmol)の混合物に加えた。反応混合物をrt(=室温)で4日間撹拌した。反応終了時に、反応混合物を1/3量まで濃縮し、沈澱した生成物をろ過した。ろ液を濃縮し、クロロホルム(100ml)で希釈し、水および食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥した。溶媒を蒸発させて黄色粗生成物を得、これはEtOAc中で結晶化して6-(6-ブロモニコチンアミド)ニコチン酸メチル3を白色固体で得た(1g、65.4%)。融点234-235℃。

【0189】
KOHペレット(5g)をメタノールおよび水(150/50ml)中の6-(6-ブロモニコチンアミド)ニコチン酸メチル3(5g、14.8mmol)の懸濁液に加えた。反応混合物を4時間撹拌した。次いで、溶媒を蒸発させ、pHを2よりも低く調節した。白色固体をろ過し、冷水で洗浄し、減圧下で乾燥して、6-(6-ブロモニコチンアミド)ニコチン酸4を得た(1.8g、37%)。融点270-272℃。
【0190】

【0191】
ヨウ化2-クロロ-1-メチルピリジニウム(2.37g、18.6mmol)をTHF(100ml)中の6-(6-ブロモニコチンアミド)ニコチン酸4(2g、6.21mmol)および2-アミノ-5-ブロモピリジン5(1.07g、6.21mmol)の懸濁液に加え、続いてDIPEA(2.4g、18.6mmol)を加えた。反応混合物を室温で4日間撹拌した。懸濁液をろ過し、水(25ml)で洗浄した。ろ液を濃縮し、クロロホルムで希釈し、水および食塩水で洗浄し、次いでNa2SO4で乾燥した。蒸発中に生成物が沈澱し、これを減圧下で乾燥して、6-ブロモ-N-(5-(5-ブロモピリジン-2-イルカルバモイル)ピリジン-2-イル)ニコチンアミド6を黄色固体で得た(400mg、14%)。融点245-247℃。

【0192】
6-ブロモ-N-(5-(5-ブロモピリジン-2-イルカルバモイル)ピリジン-2-イル)ニコチンアミド6(350mg、0.73mmol)をニートのn-プロピルアミンに溶解した。反応混合物を還流温度で3日間加熱した。次いで、溶媒を蒸発させて粗生成物を得、これをEtOAc中で結晶化して、6-(プロピルアミノ)-N-(5-(5-(プロピルアミノ)ピリジン-2-イルカルバモイル)ピリジン-2-イル)ニコチンアミド7(122mg、収率38%)を白色固体で得た。融点249-250℃。

【0193】
BMS(129μL 1.73mmol)をTHF(15ml)中の6-(プロピルアミノ)-N-(5-(5-(プロピルアミノ)ピリジン-2-イルカルバモイル)ピリジン-2-イル)ニコチンアミド7(75mg、0.173mmol)の溶液に加えた。反応混合物を終夜還流して冷却し、次いでMeOHと続いて濃HClを加えた。混合物をさらに16時間還流した。次いで、反応混合物を濃縮し、残渣を水(5ml)で希釈し、pHをNaOH溶液を用いて14に調節した。水層をクロロホルム(50ml×3)で抽出し、合わせた有機層を水および食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥した。溶媒を蒸発させて残渣とし、これをシリカゲル(2:98、MeOH:EtOAc)で精製して褐色粘稠材料を得た(5mg、7%)。次いで、これをHCl/MeOHで処理して、N5-プロピル-N2-((6-((6-(プロピルアミノ)ピリジン-3-イル)メチルアミノ)ピリジン-3-イル)メチル)ピリジン-2,5-ジアミン塩酸塩8(5mg)をゴム状材料で得た。

【0194】
2h:N-ベンジル-5-((5-p-トリルチアゾル-2-イルアミノ)メチル)チアゾル-2-アミン2塩酸塩の調製

ヨウ化2-クロロ-1-メチルピリジニウム(0.55g、2.2mmol)、DIEA(0.37g、2.9mmol)および5-p-トリルチアゾル-2-アミン(0.27g、1.44mmol)をDMF(5mL)中の2-ブロモチアゾール-5-カルボン酸(0.30g、1.44mmol)の懸濁液に加えた。得られた溶液を室温で反応完了まで撹拌した。次いで、混合物をAcOEtで希釈し、水で洗浄し、Na2SO4で乾燥して濃縮した。粗生成物をカラム(30%AcOEt/PE)で精製して、2-ブロモ-N-(5-p-トリルチアゾル-2-イル)チアゾール-5-カルボキサミド(250mg、46%)を固体で得た。

【0195】
ベンジルアミン(0.143mL、1.32mmol)をDMF(4mL)中の2-ブロモ-N-(5-p-トリルチアゾル-2-イル)チアゾール-5-カルボキサミド(250mg、0.66mmol)の溶液に加えた。反応混合物を還流温度で2時間撹拌した。次いで、これをAcOEtで希釈し、水で洗浄し、Na2SO4で乾燥して濃縮した。粗生成物を沈澱(AcOEt/PE)により精製して、2-(ベンジルアミノ)-N-(5-p-トリルチアゾル-2-イル)チアゾール-5-カルボキサミド(190mg、71%)を固体で得た。

【0196】
BMS(0.2mL、2.1mmol)をTHF(6mL)中の2-(ベンジルアミノ)-N-(5-p-トリルチアゾル-2-イル)チアゾール-5-カルボキサミド(170mg、0.42mmol)の溶液に室温で加えた。得られた溶液を還流温度で終夜撹拌した。次いで、反応をMeOH(2mL)で停止し、1N HClをpHが2に達するまで加えた。反応混合物を還流温度で12時間撹拌した後、有機溶媒を蒸発させ、水溶液を1N NaOHで中和し、CHCl3で抽出し、Na2SO4で乾燥して濃縮した。粗生成物をカラム(AcOEt)で精製して、N-ベンジル-5-((5-p-トリルチアゾル-2-イルアミノ)メチル)チアゾル-2-アミン(30mg、18%)を得た。

【0197】
N-ベンジル-5-((5-p-トリルチアゾル-2-イルアミノ)メチル)チアゾル-2-アミン(20mg、0.05mmol)をメタノールHCl(3N、1mL)に溶解し、CHCl3/AcOEtを加えた。沈澱した固体をデカンテーションによりろ過し、減圧下で乾燥して、N-ベンジル-5-((5-p-トリルチアゾル-2-イルアミノ)メチル)チアゾル-2-アミン2塩酸塩を白色固体で得た(11mg、10%)。融点105-106℃。
【0198】
2j:N-ベンジル-5-((4-p-トリルチアゾル-2-イルアミノ)メチル)チアゾル-2-アミン2塩酸塩の調製

化合物2jを、4-p-トリルチアゾル-2-アミンおよび2-ブロモチアゾール-5-カルボン酸から出発して、2hについて記載したとおりに調製した:(3.5mg、59%)。融点106-108℃。

【0199】
2k:N-ベンジル-5-((5-(4-フルオロフェニル)-1H-ピラゾル-3-イルアミノ)メチル)チアゾル-2-アミン2塩酸塩の調製

ヨウ化2-クロロ-1-メチルピリジニウム(0.84g、3.3mmol)、DIPEA(0.78mL、4.4mmol)および3-アミノ-5-(4-フルオロフェニル)-1H-ピラゾール-1-カルボン酸tert-ブチル(0.5g、2.2mmol)をDMF(6mL)中の2-ブロモチアゾール-5-カルボン酸(0.45g、2.2mmol)の溶液に加えた。得られた溶液を室温で反応完了まで撹拌した。次いで、混合物をAcOEtで希釈し、水で洗浄し、Na2SO4で乾燥して濃縮した。粗生成物をカラム(50%-100%AcOEt/PE勾配)で精製して、3-(2-ブロモチアゾール-5-カルボキサミド)-5-(4-フルオロフェニル)-1H-ピラゾール-1-カルボン酸tert-ブチル(160mg、20%)を白色固体で得た。

【0200】
ベンジルアミン(0.1mL、0.87mmol)をジオキサン(3mL)中の3-(2-ブロモチアゾール-5-カルボキサミド)-5-(4-フルオロフェニル)-1H-ピラゾール-1-カルボン酸tert-ブチル(160mg、0.43mmol)の溶液に加えた。得られた溶液を85℃で24時間撹拌した。溶媒を蒸発させ、粗生成物をカラム(0-10%MeOH/AcOEt勾配)で精製して、2-(ベンジルアミノ)-N-(5-(4-フルオロフェニル)-1H-ピラゾル-3-イル)チアゾール-5-カルボキサミド(180mg、90%)を固体で得た。

【0201】
BMSをTHF(1mL)中の2-(ベンジルアミノ)-N-(5-(4-フルオロフェニル)-1H-ピラゾル-3-イル)チアゾール-5-カルボキサミド(50mg、0.13mmol)の溶液に加えた。得られた溶液を室温で終夜撹拌した。次いで、反応をMeOH(0.5mL)で停止し、1N HClをpH=2まで加えた。反応混合物を室温で3時間撹拌した後、有機溶媒を蒸発させ、水溶液をNaHCO3飽和水溶液で中和し、AcOEtで抽出し、Na2SO4で乾燥して濃縮した。粗生成物をカラム(0-2%MeOH/AcOEt勾配)で精製して、N-ベンジル-5-((5-(4-フルオロフェニル)-1H-ピラゾル-3-イルアミノ)メチル)チアゾル-2-アミン(59mg、98%)を得た。

【0202】
N-ベンジル-5-((5-(4-フルオロフェニル)-1H-ピラゾル-3-イルアミノ)メチル)チアゾル-2-アミン(59mg、0.13mmol)をメタノールHCl(3N、1mL)に溶解し、AcOEtを加えた。沈澱した固体をデカンテーションによりろ過し、減圧下で乾燥して、N-ベンジル-5-((5-(4-フルオロフェニル)-1H-ピラゾル-3-イルアミノ)メチル)チアゾル-2-アミン2塩酸塩を黄色固体で得た(14mg、25%)。融点78-80℃。
【0203】
2n:N-メチル-5-((4-p-トリルチアゾル-2-イルアミノ)メチル)チアゾル-2-アミン2塩酸塩の調製

化合物2nを、4-p-トリルチアゾル-2-アミンおよび2-(メチル(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)アミノ)チアゾール-5-カルバルデヒドから出発して、2wについて記載したとおりに調製した:(28mg、80%)。融点114-116℃。

【0204】
2o:N-メチル-5-((5-p-トリルチアゾル-2-イルアミノ)メチル)チアゾル-2-アミン2塩酸塩の調製

化合物2oを、5-p-トリルチアゾル-2-アミンおよび2-(メチル(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)アミノ)チアゾール-5-カルバルデヒドから出発して、2wについて記載したとおりに調製した:(70mg、78%)。融点は未測定(140℃よりも高温で分解)。

【0205】
2p:N-(ピリジン-2-イル)-5-((チアゾル-2-イルアミノ)メチル)チアゾル-2-アミン3塩酸塩の調製

DIBAL-H(ヘキサン中1M、16.88mL、16.88mmol)をCH2Cl2(16mL)中の2-ブロモチアゾール-5-カルボン酸エチル(2g、8.44mmol)の溶液に0℃で加えた。混合物を室温で6時間撹拌した。MeOH(6mL)で反応停止した後、Et2Oおよびロッシェル塩の飽和溶液を加え、反応混合物を二相がくっきりと分離するまで撹拌した。有機相を乾燥し、濃縮し、カラムクロマトグラフィ(30%-100%AcOEt/PE勾配)で精製して、(2-ブロモチアゾル-5-イル)メタノール(1.44g、88%)を油状物で得た。

【0206】
MnO2(3.8g、37.10mmol)をCHCl3(20mL)中の(2-ブロモチアゾル-5-イル)メタノール(1.44g、7.42mmol)の溶液に加えた。得られた混合物を室温で3日間撹拌した。次いで、溶液をセライトを通してろ過し、濃縮して2-ブロモチアゾール-5-カルバルデヒド(870mg、61%)を白色固体で得た。

【0207】
トルエン(7mL)中の2-ブロモチアゾール-5-カルバルデヒド(150mg、0.78mmol)および2-アミノ-チアゾール(78mg、0.78mmol)の溶液ならびに3Åモレキュラーシーブスを還流温度で終夜撹拌した。次いで、対応するイミンの濃黄色溶液を熱EtOH(50mL)中のNaBH4(147mg、3.9mmol)に注いだ。無色溶液をろ過し、濃縮し、カラムクロマトグラフィ(30%AcOEt/PE)で精製してN-((2-ブロモチアゾル-5-イル)メチル)チアゾル-2-アミン(110mg、51%)を固体で得た。

【0208】
2-アミノピリジン(0.150g、1.6mmol)をTHF(4mL)中のNaH(64mg、1.6mmol)の懸濁液に加えた。得られた溶液を65℃で45分間撹拌した。次いで、N-((2-ブロモチアゾル-5-イル)メチル)チアゾル-2-アミン(110mg、0.4mmol)を加え、反応混合物を65℃で終夜撹拌した。反応を水で停止し、反応混合物をAcOEtで抽出した。有機相を乾燥し、濃縮し、カラムクロマトグラフィ(AcOEt)で精製した。CHCl3からの沈澱を行って過剰の2-アミノピリジンを除去し、N-(ピリジン-2-イル)-5-((チアゾル-2-イルアミノ)メチル)チアゾル-2-アミンを淡黄色固体で得た(15mg、14%)。

【0209】
N-(ピリジン-2-イル)-5-((チアゾル-2-イルアミノ)メチル)チアゾル-2-アミン(15mg、0.05mmol)をメタノールHCl(3N、1mL)に溶解し、Et2Oを加えた。沈澱した固体をデカンテーションによりろ過し、減圧下で乾燥して、N-(ピリジン-2-イル)-5-((チアゾル-2-イルアミノ)メチル)チアゾル-2-アミン3塩酸塩を得た(14mg、2%、HPLCにより純度95.5%)。融点、分解>145℃。
【0210】
2q:N-ベンジル-5-((5-フルオロピリジン-2-イルアミノ)メチル)ピリジン-2-アミンの調製

試薬:i)ヨウ化2-クロロ-1-メチルピリジニウム/DIPEA/THF/室温で24時間 ii)ベンジルアミン/140℃ iii)BMS/THF/還流、24時間 iv)MeOH/HCl/室温/1時間
ヨウ化2-クロロ-1-メチルピリジニウム(2.2g、9.8mmol)およびDIPEA(1ml)をTHF中の5-フルオロピリジン-2-アミン1(554mg、4.9mmol)および6-ブロモニコチン酸2(1g、4.9mmol)の混合物に加えた。反応混合物を室温で2日間撹拌した。反応終了時に、反応混合物を1/3量まで濃縮し、沈澱した生成物をろ過した。ろ液を濃縮し、クロロホルム(100ml)で希釈し、水および食塩水で洗浄し、次いでNa2SO4で乾燥した。溶媒を蒸発させて黄色粗生成物を得、これはEtOAc中で結晶化して6-ブロモ-N-(5-フルオロピリジン-2-イル)ニコチンアミド3(1.05g、71%)を白色固体で得た。融点173-174℃。

【0211】
6-ブロモ-N-(5-フルオロピリジン-2-イル)ニコチンアミド3(500mg、1.68mmol)をベンジルアミン(2ml)に溶解し、140℃で48時間加熱した。次いで、反応混合物を濃縮した。生成物を酢酸エチルおよび石油エーテルから再結晶して、6-(ベンジルアミノ)-N-(5-フルオロピリジン-2-イル)ニコチンアミド4(500mg、92%)を白色固体で得た。
融点167-168℃。

【0212】
BMS(400μL)をTHF(20mL)中の6-(ベンジルアミノ)-N-(5-フルオロピリジン-2-イル)ニコチンアミド4の溶液に加えた。反応混合物を16時間還流した。次いで、反応混合物を室温まで冷却した。MeOH(2mL)と、続いて濃HClを加えた。反応混合物を8時間還流し、濃縮し、水(2mL)で希釈した。pHを14に調節し、反応混合物をクロロホルム(50mL×2)で抽出した。すべての有機相を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥した。溶媒を蒸発させて粗生成物を得、これをシリカゲル(1:1、EtOAc:石油エーテル)で精製して、N-ベンジル-5-((5-フルオロピリジン-2-イルアミノ)メチル)ピリジン-2-アミン5を得た。これをHCl/MeOHで処理して対応する塩(50mg 13%)を白色固体で得た。融点166-168℃。

【0213】
2sの調製:

試薬:i)ヨウ化2-クロロ-1-メチルピリジニウム/DIPEA/室温/3日間 ii)ベンジルアミン/110℃/終夜 iii)BMS/THF/MeOH/HCl iv)MeOH/HCl
THF(20ml)中の5-(4-フルオロフェニル)-1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-1H-ピラゾール-3-カルボン酸1(400mg、1.37mmol)およびヨウ化2-クロロ-1-メチルピリジニウム(524mg、2.0mmol)の懸濁液に、DIPEA(0.46 ml)と、続いて6-ブロモピリジン-2-アミン2(237mg、1.37mmol)を加えた。懸濁液を72時間撹拌した。次いで、反応混合物を濃縮し、水(10ml)で希釈し、ジクロロメタン(50ml×2)で抽出した。すべての有機相を水および食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥して濃縮した。残渣をシリカゲルカラム(EtOAc:石油エーテル、1:4)で精製して、N-(6-ブロモピリジン-2-イル)-5-(4-フルオロフェニル)-1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-1H-ピラゾール-3-カルボキサミド3(180mg)を白色固体で得た。融点151-152℃。

【0214】
N-(6-ブロモピリジン-2-イル)-5-(4-フルオロフェニル)-1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-1H-ピラゾール-3-カルボキサミド3(300mg、0.67mmol)をベンジルアミン(3ml)に溶解した。反応混合物を130℃で24時間加熱した。次いで、反応混合物をシリカゲルカラム(EtOAc:石油エーテル、1:5)で精製して、N-(6-(ベンジルアミノ)ピリジン-2-イル)-5-(4-フルオロフェニル)-1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-1H-ピラゾール-3-カルボキサミド4を白色固体で得た(187mg、59%)。融点139-140℃。

【0215】
ボランジメチルスルフィド(50μL)をTHF(10ml)中のN-(6-(ベンジルアミノ)ピリジン-2-イル)-5-(4-フルオロフェニル)-1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-1H-ピラゾール-3-カルボキサミド4(180mg、0.38mmol)の溶液に加えた。反応混合物を終夜還流し、冷却した。MeOHと、続いて濃HClを加え、反応混合物を5時間加熱した。次いで、反応混合物を減圧下で濃縮し、水(5ml)で希釈し、クロロホルム(50ml×2)で抽出した。合わせた有機層を水および食塩水で洗浄し、次いでNa2SO4で乾燥して、減圧下で濃縮した。粗生成物をシリカゲル(50%EtOAc:石油エーテル)で精製して、N2-ベンジル-N6-((5-(4-フルオロフェニル)-1H-ピラゾル-3-イル)メチル)ピリジン-2,6-ジアミン5(20mg)を油状材料で得、これをメタノール塩酸で2時間処理した。溶媒を減圧下で蒸発させて、ゴム状材料を得た(20mg)。

【0216】
2t:N-ベンジル-6-((5-(4-フルオロフェニル)-1H-ピラゾル-3-イルアミノ)メチル)ピリジン-2-アミンの調製

試薬:i)ヨウ化2-クロロ-1-メチルピリジニウム/DIPEA/室温/3日間 ii)ベンジルアミン/110℃/終夜 iii)BMS/THF/MeOH/HCl
ヨウ化2-クロロ-1-メチルピリジニウム(950mg、3.7mmol)およびDIPEA(0.7mL)を無水DCM/DMF(30/5mL)中の6-ブロモピコリン酸2(500mg、2.47mmol)の溶液に加えた。反応混合物を1時間撹拌した。3-アミノ-5-(4-フルオロフェニル)-1H-ピラゾール-1-カルボン酸tert-ブチル1を加えた(650mg、2.47mmol)。得られた黄色反応混合物を3日間撹拌した。次いで、反応混合物を減圧下で濃縮し、残渣をクロロホルムで希釈し、水および食塩水で洗浄し、次いでNa2SO4で乾燥した。得られた粗製混合物をシリカゲル(EtOAc:石油エーテル、1:3)で精製して、6-ブロモ-N-(5-(4-フルオロフェニル)-1H-ピラゾル-3-イル)ピコリンアミド3(450mg、50%)を白色固体で得た。
融点245-247℃。

【0217】
6-ブロモ-N-(5-(4-フルオロフェニル)-1H-ピラゾル-3-イル)ピコリンアミド3(200mg、0.55mmol)をニートのベンジルアミン(5ml)に溶解した。反応混合物を24時間加熱した。次いで、溶媒を蒸発させ、残渣をシリカゲル(EtOAc:石油エーテル、1:4)で精製して、6-(ベンジルアミノ)-N-(5-(4-フルオロフェニル)-1H-ピラゾル-3-イル)ピコリンアミド4(180mg、84%)を得た。
融点185-187℃。

【0218】
ボロンジメチルスルフィド(50mg、0.66mmol)を6-(ベンジルアミノ)-N-(5-(4-フルオロフェニル)-1H-ピラゾル-3-イル)ピコリンアミド4(150mg、0.37mmol)の溶液に加えた。反応混合物を16時間還流した。反応混合物を室温まで冷却した後、MeOH(2mL)と、続いて濃HClを加えた。反応混合物をさらに12時間還流した。反応混合物を濃縮し、水(4ml)で希釈し、pHをNaOH溶液を用いて12に調節した。反応混合物をクロロホルム(40×3mL)で抽出した。次いで、すべての有機層を水および食塩水で洗浄し、次いでNa2SO4で乾燥し、粗生成物をシリカゲルカラム(100%EtOAc)で精製して、油状材料を得(40mg、27%)、次いでこれをHCl/MeOHで処理して、N-ベンジル-6-((5-(4-フルオロフェニル)-1H-ピラゾル-3-イルアミノ)メチル)ピリジン-2-アミン塩酸塩6(20mg、39%)を得た。
融点133-134℃。

【0219】
2uの調製:
3-(2,3-ジヒドロチオフェン-2-イル)-N-((5-(4-フルオロフェニル)-1H-ピラゾル-3-イル)メチル)-1H-ピラゾル-5-アミン(7)の調製

試薬:i)EtOH、H2SO4/16時間還流 ii)DHP/TFA/THF/16時間還流 iii)LiOH/H2O/MeOH

試薬:i)ヨウ化2-クロロ-1-メチルピリジニウム/DCM/DIPEA ii)BMS/THF/還流 iii)HCl/MeOH
3-4滴の濃H2SO4をEtOH中の5-(4-フルオロフェニル)-1H-ピラゾール-3-カルボン酸1の溶液に加えた。反応混合物を2日間還流した。反応混合物を濃縮し、クロロホルム(100ml)で希釈し、飽和NaHCO3溶液、水および食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥した。溶媒を減圧下で蒸発させて、5-(4-フルオロフェニル)-1H-ピラゾール-3-カルボン酸エチル2を褐色固体で得た(1.05g、93%)。融点148-150℃。

【0220】
DHP(20.4mmol、1.7ml)を無水THF(50ml)中の5-(4-フルオロフェニル)-1H-ピラゾール-3-カルボン酸エチル2(800mg、3.4mmol)の溶液に加え、続いて触媒量のTFA(20μL)を加えた。次いで、反応混合物を2日間還流した。反応混合物を濃縮し、クロロホルム(100ml)で希釈し、水および食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥した。粗生成物をシリカゲル(石油エーテル:EtOAc、9:1)で精製して、5-(4-フルオロフェニル)-1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-1H-ピラゾール-3-カルボン酸エチル3(600mg、55.5%)を白色固体で得た。融点95-96℃。

【0221】
LiOH(120mg、5mmol)をTHF/H2O(1:1、5ml)中の5-(4-フルオロフェニル)-1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-1H-ピラゾール-3-カルボン酸エチル3(1.1g、3.4mmol)の溶液に加えた。反応混合物を終夜撹拌した。澄明溶液を濃縮し、クロロホルム(25ml)に懸濁した。固体をろ過し、減圧下で乾燥して、5-(4-フルオロフェニル)-1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-1H-ピラゾール-3-カルボン酸4(987mg、99%)を白色固体で得た。融点188-190℃。

【0222】
ヨウ化2-クロロ-1-メチルピリジニウム(650mg、2.5mmol)をTHF/DMF(20/2ml)中の5-(4-フルオロフェニル)-1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-1H-ピラゾール-3-カルボン酸4(500mg、1.72mmol)の溶液に加え、続いてDIPEA(0.5ml)を加えた。反応混合物を30分間撹拌し、次いで3-アミノ-5-(チオフェン-2-イル)-1H-ピラゾール-1-カルボン酸tert-ブチル5(456mg、1.72mmol)を加えた。反応混合物を2日間撹拌した。反応混合物を濃縮し、クロロホルム(100ml)で希釈し、水および食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、溶媒を蒸発させた。粗生成物を十分に乾燥し、THF(10ml)に溶解し、続いてBMS(0.3ml)を加えた。反応混合物を終夜加熱し、冷却し、次いでMeOHおよび濃HClを加えた。反応混合物をさらに5時間加熱した。反応混合物を冷却し、濃縮し、水(5ml)で希釈し、pHをNaOHペレットで14に調節し、クロロホルム(50ml×2)で抽出した。すべての有機層を水および食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、溶媒を蒸発させた。粗生成物をシリカゲルカラム(4:1、EtOAc:石油エーテル)で精製して、N-((5-(4-フルオロフェニル)-1H-ピラゾル-3-イル)メチル)-5-(チオフェン-2-イル)-1H-ピラゾル-3-アミン7(66mg、全収率11%)を得た。融点128-130℃。

【0223】
2w:N-メチル-5-((チアゾル-2-イルアミノ)メチル)チアゾール-2-アミン2塩酸塩の調製

TFA(22μL、0.3mmol)およびDHP(3.9mL、43.5mmol)をCH3CN(40mL)中の2-アミノチアゾール-5-カルボン酸エチル(5g、29mmol)の懸濁液に室温で加えた。得られた混合物を還流温度で終夜撹拌した。反応混合物を濃縮し、AcOEt/PEに溶解し、4℃で終夜維持した。得られた白色固体をろ過し、PEで洗浄して、2-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イルアミノ)チアゾール-5-カルボン酸エチル(4.73g、64%)を得た。

【0224】
2-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イルアミノ)チアゾール-5-カルボン酸エチル(4.73g、18.5mmol)をTHF(20mL)中のNaH(740mg、18.5mmol)の懸濁液に0℃で加え、続いてヨウ化メチル(1.15mL、18.5mmol)を加えた。得られた混合物を還流温度で3時間加熱した。水で反応停止し、AcOEtで抽出した後、粗生成物をカラムクロマトグラフィ(50%AcOEt/PE)で精製して、2-(メチル(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)アミノ)チアゾール-5-カルボン酸エチル(2.02g、40%)を油状物で得た。

【0225】
LiAlH4(425mg、11.20mmol)をTHF(20mL)中の2-(メチル(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)アミノ)チアゾール-5-カルボン酸エチル(2.02g、7.47mmol)の溶液に0℃で少しずつ加えた。0℃で30分間撹拌した後、反応をH2O(1mL)、5%NaOH(3mL)および再度H2O(5mL)でゆっくり停止した。次いで、AcOEtを加えた。反応混合物をNa2SO4で乾燥し、セライトを通してろ過した。ろ液を濃縮し、カラムクロマトグラフィ(30%-50%AcOEt/PE勾配)で精製して、(2-(メチル-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)アミノ)チアゾル-5-イル)メタノール(1.5g、93%)を油状物で得た。

【0226】
MnO2(3g、34.82mmol)をCHCl3(50mL)中の(2-(メチル(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)アミノ)チアゾル-5-イル)メタノール(1.59g、6.96mmol)の溶液に加えた。得られた混合物を室温で2日間撹拌した。次いで、溶液をセライトを通してろ過し、濃縮して、2-(メチル-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)アミノ)チアゾール-5-カルバルデヒド(1.5g、96%)を黄色油状物で得た。

【0227】
トルエン(11mL)中の2-(メチル(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)アミノ)チアゾール-5-カルバルデヒド(250mg、1.10mmol)および2-アミノチアゾール(110mg、1.10mmol)の溶液ならびにモレキュラーシーブス3Åを還流温度で終夜撹拌した。次いで、対応するイミンの濃黄色溶液を熱EtOH(80mL)中のNaBH4(212mg、5.61mmol)に注いだ。無色溶液をろ過し、濃縮し、カラムクロマトグラフィで精製して、N-メチル-N-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-5-((チアゾル-2-イルアミノ)メチル)チアゾル-2-アミン(50mg、17%)を固体で得た。

【0228】
CHCl3中10%TFA(5mL)中のN-メチル-N-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-5-((チアゾル-2-イルアミノ)メチル)チアゾル-2-アミン(50mg、0.16mmol)の溶液を室温で終夜撹拌した。溶媒を蒸発させた後、残渣をMeOHに溶解し、Na2CO3で中和し、CHCl3で抽出した。有機相を乾燥し、濃縮し、カラムクロマトグラフィで精製して、N-メチル-5-((チアゾル-2-イルアミノ)メチル)チアゾル-2-アミン(28mg、77%)を固体で得た。

【0229】
N-メチル-5-((チアゾル-2-イルアミノ)メチル)チアゾル-2-アミン(28mg、0.12mmol)をメタノールHCl(3N、1mL)に溶解し、Et2Oを加えた。沈澱した固体をデカンテーションによりろ過し、減圧下で乾燥して、N-メチル-5-((チアゾル-2-イルアミノ)メチル)チアゾル-2-アミン2塩酸塩を白色固体で得た(29mg、79%)。融点128-130℃。
【0230】
2y:N2-((6-(ベンジルアミノ)ピリジン-3-イル)メチル)ピリジン-2,6-ジアミンの調製

試薬:i)向山試薬/THF/DIPEA/室温で2日間 ii)ベンジルアミン/140℃で16時間 iii)BMS/THF/24時間 iv)HCl/MeOH/室温/3時間
ヨウ化2-クロロ-1-メチルピリジニウム(2.18g、9.8mmol)およびDIPEA(2.1ml、11.5mmol)をTHF中の6-ブロモピリジン-2-アミン1(1g、5.7mmol)および6-ブロモニコチン酸2(1.16g、5.7mmol)の混合物に加えた。反応混合物を室温で2日間撹拌した。反応終了時に、反応混合物を濃縮し、クロロホルム(150ml)で希釈し、水および食塩水で洗浄し、次いでNa2SO4で乾燥した。溶媒を蒸発させて、黄色粗生成物を得、これをEtOAc中で結晶化させて、6-ブロモ-N-(6-ブロモピリジン-2-イル)ニコチンアミド3(1.1g、54%)を白色固体で得た。
融点171-173℃。

【0231】
6-ブロモ-N-(6-ブロモピリジン-2-イル)ニコチンアミド(650mg、1.8mmol)3をベンジルアミン(2ml)に溶解し、140℃で24時間加熱した。次いで、反応混合物を濃縮し、生成物を酢酸エチルおよび石油エーテルから再結晶して、6-(ベンジルアミノ)-N-(6-(ベンジルアミノ)ピリジン-2-イル)ニコチンアミド4(450mg、62%)を白色固体で得た。融点132-133℃。

【0232】
BMS(2.2mmol、165μL)(400μL)をTHF(20ml)中の6-ブロモ-N-(6-ブロモピリジン-2-イル)ニコチンアミド4(300mg、0.73mmol)の溶液に加えた。反応混合物を16時間還流した。次いで、反応混合物を室温まで冷却し、MeOH(2mL)と、続いて濃HClを加え、反応混合物を8時間還流した。反応混合物を濃縮し、水(2ml)で希釈し、pHを14に調節し、反応混合物をクロロホルム(50ml×2)で抽出した。合わせた有機相を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥した。溶媒を蒸発させて粗生成物を得、これをシリカゲル(1:1、EtOAc:石油エーテル)で精製して白色固体を得、これをMeOH/HClで処理して、N2-((6-(ベンジルアミノ)ピリジン-3-イル)メチル)ピリジン-2,6-ジアミン5の塩酸塩(50mg、49%)を白色固体で得た。融点261-262℃。

【0233】
2z:N-(ピリジン-2-イル)-5-((4-p-トリルチアゾル-2-イルアミノ)メチル)チアゾル-2-アミン3塩酸塩の調製

化合物2zを、2-ブロモチアゾール-5-カルバルデヒドおよび4-p-トリルチアゾル-2-アミンから出発して、2pについて記載したとおりに調製した:(29mg、38%)。融点169-170℃。

【0234】
2aa:4-(4-クロロフェニル)-N-((2-(メチルアミノ)チアゾル-5-イル)メチル)チアゾル-2-アミン2塩酸塩の調製

化合物2aaを、2-(メチル-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)アミノ)チアゾール-5-カルバルデヒドおよび4-(4-クロロフェニル)チアゾル-2-アミンから出発して、2wについて記載したとおりに調製した:(30mg、77%)。融点122-123℃。

【0235】
2ab N5-プロピル-N2-((6-(プロピルアミノ)ピリジン-3-イル)メチル)ピリジン-2,5-ジアミンの調製

試薬:i)ヨウ化2-クロロ-1-メチルピリジニウム/DIPEA/室温/4日間 ii)n-プロピルアミンTHF/DMSO/60-70℃/2日間 iii)BMS/THF/HCl 24時間 iv)MeOH/HCl 室温/3時間
DIPEA(5.5ml、29mmol)およびヨウ化2-クロロ-1-メチルピリジニウム(8g、26mmol)をTHF(150ml)中の5-ブロモピリジン-2-アミン1(2.56g、14.8mmol)および6-ブロモニコチン酸(3g、14.8mmol)2の溶液に加えた。反応混合物を室温で4日間撹拌した。次いで、沈澱をろ過した。ろ液を濃縮し、クロロホルム(250ml)に溶解し、水および食塩水で洗浄して、Na2SO4で乾燥した。溶媒を蒸発させて粗生成物を得、これを酢酸エチルから再結晶して、6-ブロモ-N-(5-ブロモピリジン-2-イル)ニコチンアミド3(4.3g、81%)を白色固体で得た。融点204-205℃。

【0236】
n-プロピルアミン(ニート、5ml)中の6-ブロモ-N-(5-ブロモピリジン-2-イル)ニコチンアミド3(1.1g、3.0mmol)の溶液を80℃で2日間加熱した。次いで、溶媒を蒸発させて、6-(プロピルアミノ)-N-(5-(プロピルアミノ)ピリジン-2-イル)ニコチンアミド4を白色固体で得た(880mg、91%)。融点134-135℃。

【0237】
BMS(215μL)をTHF(10ml)中の4(180mg、0.575mmol)の溶液に加えた。反応混合物を還流温度で終夜撹拌した。反応混合物を室温まで冷却した。次いで、メタノール(2ml)をゆっくり加え、続いて濃HCl(3mL)を加えた。反応混合物をさらに5時間還流した。次いで、反応混合物を冷却し、減圧下で濃縮し、冷水で希釈し、pHをKOHペレットで14に調節して、クロロホルム(50ml×3)で抽出した。有機相を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥した。溶媒を蒸発させて粗生成物を得、これをシリカゲルカラム(EtOAc:PE、80:20)で精製して、生成物(10mg、6.3%)を得た。融点129-130℃。

【0238】
2acの調製:
N-ベンジル-6-((5-(チオフェン-2-イル)-1H-ピラゾル-3-イルアミノ)メチル)ピリジン-2-アミン(5)の調製

試薬:i)ヨウ化2-クロロ-1-メチルピリジニウム/DIPEA/室温/3日間 ii)ベンジルアミン/120℃/16時間 iii)BMS/THF/MeOH/HCl iv)HCl/MeOH
ヨウ化2-クロロ-1-メチルピリジニウム(580mL、2.2mmol)およびDIPEA(0.4mL)を無水DCM/DMF(20/2mL)混合物中の6-ブロモピコリン酸2(304mg、1.5mmol)の溶液に加えた。反応混合物を1時間撹拌した後、3-アミノ-5-(チオフェン-2-イル)-1H-ピラゾール-1-カルボン酸tert-ブチル1(400mg、1.5mmol)を加えた。得られた黄色反応混合物を3日間撹拌した。次いで、反応混合物を減圧下で濃縮した。残渣をクロロホルム中で希釈し、水および食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥した。溶媒を蒸発させた後、粗生成物をシリカゲルカラム(EtOAc:石油エーテル、1:1)で精製して、6-ブロモ-N-(5-(チオフェン-2-イル)-1H-ピラゾル-3-イル)ピコリンアミド3(307mg、58%)を得た。
MS (ESI): m/z = 349 (M+H) 350.8 (M+2H)
【0239】
6-ブロモ-N-(5-(4-フルオロフェニル)-1H-ピラゾル-3-イル)ピコリンアミド3(307mg、0.88mmol)をそれ以上の特徴づけをせずにニートのベンジルアミン(3mL)に溶解した。反応混合物を130℃で24時間加熱した。次いで、溶媒を蒸発させ、残渣をシリカゲル(EtOAc:石油エーテル、1:4)で精製して、6-(ベンジルアミノ)-N-(5-(チオフェン-2-イル)-1H-ピラゾル-3-イル)ピコリンアミド4を粘稠固体で得た(200mg、58%)。

【0240】
ボランジメチルスルフィド(85μL、1.06mmol)を6-(ベンジルアミノ)-N-(5-(4-フルオロフェニル)-1H-ピラゾル-3-イル)ピコリンアミド4(200mg、0.53mmol)の溶液に加えた。反応混合物を16時間還流した。反応混合物を室温まで冷却し、MeOH(2mL)と、続いて濃HCl(2mL)を加え、反応混合物をさらに4時間還流した。反応混合物を濃縮し、水(4ml)で希釈し、pHをNaOH溶液を用いて14に調節し、続いて反応混合物をクロロホルム(40ml×3)で抽出した。次いで、すべての有機層を水および食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥した。溶媒を蒸発させた後、粗生成物をEtOAcおよび石油エーテルから再結晶して、N-ベンジル-6-((5-(4-フルオロフェニル)-1H-ピラゾル-3-イルアミノ)メチル)ピリジン-2-アミンを得た(80mg、41%)。融点117-118℃。
【0241】
次いで、組成物20mgをHCl/MeOHで処理して、5、N-ベンジル-6-((5-(4-フルオロフェニル)-1H-ピラゾル-3-イルアミノ)メチル)ピリジン-2-アミン塩酸塩を得た。融点120-122℃。

【0242】
2ad:N-プロピル-5-((5-((4-p-トリルチアゾル-2-イルアミノ)メチル)チアゾル-2-イルアミノ)メチル)チアゾル-2-アミン3塩酸塩の調製

DMAP(35mg、0.29mmol)、Et3N(16mL、116mmol)および二炭酸ジ-tert-ブチル(13mL、58mmol)をTHF(100mL)中の2-アミノチアゾール-5-カルボン酸エチル(10g、58.1mmol)の溶液に加えた。得られた溶液を室温で反応完了まで撹拌した。溶媒を蒸発させ、粗生成物をPEで沈澱させて精製し、2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)チアゾール-5-カルボン酸エチル(14.2g、90%)を白色固体で得た。

【0243】
EtOH/H2O(1:1)(60mL)中の2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)チアゾール-5-カルボン酸エチル(5g、18.36mmol)およびKOH(10.3g、184mmol)の溶液を室温で12時間撹拌した。溶液を1N HClで酸性化し、沈澱をろ過し、乾燥して、2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)チアゾール-5-カルボン酸(3.84g、86%)を白色固体で得た。

【0244】
ヨウ化2-クロロ-1-メチルピリジニウム(0.47g、1.84mmol)、DIEA(0.44mL、2.5mmol)および4-p-トリルチアゾル-2-アミン(0.24g、1.23mmol)をDMF(5mL)中の2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)チアゾール-5-カルボン酸(0.30g、1.23mmol)の溶液に加えた。得られた溶液を室温で反応完了まで撹拌した。次いで、反応混合物をAcOEtで希釈し、水で洗浄し、Na2SO4で乾燥して、濃縮した。粗生成物をカラム(100%AcOEt)で精製し、5-(4-p-トリルチアゾル-2-イルカルバモイル)チアゾル-2-イルカルバミン酸tert-ブチル(80mg、17%)を固体で得た。

【0245】
TFA(0.100mL)をCHCl3(1mL)中の5-(4-p-トリルチアゾル-2-イルカルバモイル)チアゾル-2-イルカルバミン酸tert-ブチル(80mg、0.19mmol)の溶液に加えた。得られた溶液を室温で終夜撹拌した。次いで、溶媒を蒸発させ、粗生成物をH2Oに溶解した。NaHCO3飽和水溶液で中和した後、AcOEtで抽出し、乾燥して濃縮した。カラムクロマトグラフィ(100%AcOEt)で精製して、2-アミノ-N-(4-p-トリルチアゾル-2-イル)チアゾール-5-カルボキサミド(40mg、67%)を白色固体で得た。

【0246】
ヨウ化2-クロロ-1-メチルピリジニウム(0.048g、0.18mmol)、DIEA(0.045mL、0.25mmol)および2-アミノ-N-(4-p-トリルチアゾル-2-イル)チアゾール-5-カルボキサミド(0.04g、0.126mmol)をDMF(1mL)中の2-ブロモチアゾール-5-カルボン酸(26mg、0.126mmol)の溶液に加えた。得られた溶液を室温で反応完了まで撹拌した。次いで、固体をAcOEtで沈澱させ、固体を遠心沈降により分離して、2-ブロモ-N-(5-(4-p-トリルチアゾル-2-イルカルバモイル)チアゾル-2-イル)チアゾール-5-カルボキサミド(20mg、30%)を固体で得、これをそれ以上精製せずに次の段階で用いた。

【0247】
ニートのプロピルアミン(0.5mL)中の2-ブロモ-N-(5-(4-p-トリルチアゾル-2-イルカルバモイル)チアゾル-2-イル)チアゾール-5-カルボキサミド(15mg、0.03mmol)の溶液を還流温度で24時間撹拌した。溶媒を蒸発させ、粗生成物をカラムクロマトグラフィ(0%〜5%MeOH/AcOEt)で精製して、2-(プロピルアミノ)-N-(5-(4-p-トリルチアゾル-2-イルカルバモイル)-チアゾル-2-イル)チアゾール-5-カルボキサミド(15mg、17%)を得た。

【0248】
BMS(0.015mL、0.15mmol)をTHF(1mL)中の2-(プロピルアミノ)-N-(5-(4-p-トリルチアゾル-2-イルカルバモイル)チアゾル-2-イル)チアゾール-5-カルボキサミド(15mg、0.03mmol)の溶液に室温で加えた。得られた溶液を室温で終夜撹拌した。次いで、反応をMeOH(0.5mL)で停止した。1N HClをpH=2まで加えた。反応混合物を室温で12時間撹拌した後、有機溶媒を蒸発させ、水溶液をNaHCO3飽和水溶液で中和し、AcOEtで抽出し、Na2SO4で乾燥して濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィ(0%〜5%MeOH/AcOEt)で精製して、N-プロピル-5-((5-((4-p-トリルチアゾル-2-イルアミノ)メチル)チアゾル-2-イルアミノ)メチル)チアゾル-2-アミン(5mg、32%)を得た。

【0249】
N-プロピル-5-((5-((4-p-トリルチアゾル-2-イルアミノ)メチル)チアゾル-2-イルアミノ)メチル)-チアゾル-2-アミン(5mg、0.01mmol)をメタノールHCl(3N、0.5mL)に溶解し、Et2Oを加えた。沈澱した固体をデカンテーションによりろ過し、減圧下で乾燥して、N-プロピル-5-((5-((4-p-トリルチアゾル-2-イルアミノ)メチル)チアゾル-2-イルアミノ)メチル)チアゾル-2-アミン3塩酸塩を白色固体で得た(1.6mg、32%)。
融点>135℃ 分解。
【0250】
2ae:4-ベンジル-N-((2-(ベンジルアミノ)チアゾル-5-イル)メチル)チアゾル-2-アミン2塩酸塩の調製

化合物2aeを、4-ベンジルチアゾル-2-アミンおよび2-ブロモチアゾール-5-カルボン酸から出発して、2hについて記載したとおりに調製した:(10mg、29%)。融点78-79℃。

【0251】
2af:4-ベンジル-N-((2-(メチルアミノ)チアゾル-5-イル)メチル)チアゾル-2-アミン2塩酸塩の調製

化合物2afを、4-ベンジルチアゾル-2-アミンおよび2-(メチル(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)アミノ)チアゾール-5-カルバルデヒドから出発して、2wについて記載したとおりに調製した:(50mg、46%)。融点126-127℃。

【0252】
2ag:5-ベンジル-N-((2-(ベンジルアミノ)チアゾル-5-イル)メチル)チアゾル-2-アミン2塩酸塩の調製

化合物2agを、5-ベンジルチアゾル-2-アミンおよび2-ブロモチアゾール-5-カルボン酸から出発して、2hについて記載したとおりに調製した:(25mg、69%)。融点96-97℃。

【0253】
2ah:5-ベンジル-N-((2-(メチルアミノ)チアゾル-5-イル)メチル)チアゾル-2-アミン2塩酸塩の調製

化合物2ahを、5-ベンジルチアゾル-2-アミンおよび2-(メチル-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)アミノ)チアゾール-5-カルバルデヒドから出発して、2wについて記載したとおりに調製した(55mg、69%)。融点76-77℃。

【0254】
2ai:5-p-トリル-N-((5-((5-p-トリル-1H-ピラゾル-3-イル)メチルアミノ)-1H-ピラゾル-3-イル)メチル)-1H-ピラゾル-3-アミン3塩酸塩の調製
1. 1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-5-p-トリル-1H-ピラゾル-3-アミンの合成:
1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-5-p-トリル-1H-ピラゾル-3-アミンを化合物2aについて記載したとおりに調製した。
【0255】
1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-5-p-トリル-1H-ピラゾール-3-カルボン酸を2aについて前述したとおりに調製した。
【0256】
2. 5-p-トリル-N-((5-((5-p-トリル-1H-ピラゾル-3-イル)メチルアミノ)-1H-ピラゾル-3-イル)メチル)-1H-ピラゾル-3-アミン3塩酸塩の合成

メタノール(200mL)中の5-ニトロ-3-ピラゾール-カルボン酸(8g、50.90mmol)および硫酸(5mL、1.48mmol)を4時間加熱還流した。溶媒を蒸発させ、残渣をCH2Cl2に再懸濁し、水および食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥した。5-ニトロ-1H-ピラゾール-3-カルボン酸メチル(7.5g、86%)を白色固体で得た。

【0257】
無水MeCN(100mL)中の5-ニトロ-1H-ピラゾール-3-カルボン酸メチル(7.5g、43.8mmol)、3,4-ジヒドロ-2H-ピラン(8mL、87.7mmol)およびトリフルオロ酢酸(65μL、0.9mmol)の混合物を16時間還流した。溶媒を蒸発させ、残渣をCH2Cl2(50ml)に再懸濁し、H2Oおよび食塩水で洗浄した。Na2SO4で乾燥し、溶媒を蒸発させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(PE-EtOAc、9:1)にかけた後、1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-5-ニトロ-1H-ピラゾール-3-カルボン酸メチル(3.71mg、33%)を得た。

【0258】
1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-5-ニトロ-1H-ピラゾール-3-カルボン酸メチル(500mg、0.70mmol)をMeOH/THF/H2O(1:2:1、20mL)の混合物に溶解した。水酸化リチウム(56.3mg、2.35mmol)を加え、反応混合物を16時間撹拌した。反応混合物を水で希釈し、DCMで洗浄した。水相を蒸発させて、1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-5-ニトロ-1H-ピラゾール-3-カルボン酸(300mg、64%)を白色固体で得、これをそれ以上精製せずに次の段階で用いた。

【0259】
5-トリル-1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-1H-ピラゾル-3-アミン(97mg、0.38mmol)をDCM(10mL)中の1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-5-ニトロ-1H-ピラゾール-3-カルボン酸(100mg、0.41mmol)、ヨウ化2-クロロ-1-メチルピリジニウム(145mg、0.56mmol)およびN,N'-ジイソプロピルエチルアミン(193μL、1.13mmol)の溶液に加えた。反応混合物を室温で16時間撹拌した。反応混合物を水で希釈し、DCMで抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濃縮した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(PE-EtOAc、8:2)で精製して、5-ニトロ-1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-N-(1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-5-p-トリル-1H-ピラゾル-3-イル)-1H-ピラゾール-3-カルボキサミド(60mg、33%)を得た。

【0260】
メタノール(5mL)およびPd/CをTHF中の5-ニトロ-1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-N-(1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-5-p-トリル-1H-ピラゾル-3-イル)-1H-ピラゾール-3-カルボキサミド(183mg、0.38mmol)の溶液に加えた。次いで、フラスコを排気し、水素を充填した。反応混合物を16時間撹拌した。触媒をセライト上でろ過し、溶液を濃縮し、乾燥して、5-アミノ-1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-N-(1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-5-p-トリル-1H-ピラゾル-3-イル)-1H-ピラゾール-3-カルボキサミド(170mg、定量的)を得た。

【0261】
5-アミノ-1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-N-(1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-5-p-トリル-1H-ピラゾル-3-イル)-1H-ピラゾール-3-カルボキサミド(102mg、0.23mmol)をDCM(10mL)中の1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-5-p-トリル-1H-ピラゾール-3-カルボン酸(59mg、0.20mmol)、ヨウ化2-クロロ-1-メチルピリジニウム(79mg、0.31mmol)およびN,N'-ジイソプロピルエチルアミン(105μL、0.62mmol)の溶液に加えた。反応混合物を室温で16時間撹拌した。反応混合物を水で希釈し、DCMで抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濃縮した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(PE-EtOAc、7:3)で精製して、1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-N-(1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-3-(1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-5-p-トリル-1H-ピラゾル-3-イルカルバモイル)-1H-ピラゾル-5-イル)-5-p-トリル-1H-ピラゾール-3-カルボキサミド(25mg、15%)を得た。

【0262】
1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-N-(1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-3-(1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-5-p-トリル-1H-ピラゾル-3-イルカルバモイル)-1H-ピラゾル-5-イル)-5-p-トリル-1H-ピラゾール-3-カルボキサミド(28mg、0.04mmol)を無水THF(500μL)に懸濁し、ボランジメチルスルフィド複合物(26μL、0.27mmol)を滴加した。反応混合物を還流下で16時間撹拌した。次いで、反応混合物を0℃まで冷却し、MeOH(50μL)を加え、混合物を10分間撹拌した。濃塩酸(12N)をpH<2が得られるまで加えた。得られた混合物を50℃で16時間撹拌した。混合物を室温まで冷却し、溶媒を蒸発させた。残渣をTHFに再懸濁し、沈澱をろ過し、冷THFで洗浄した。5-p-トリル-N-((5-((5-p-トリル-1H-ピラゾル-3-イル)メチルアミノ)-1H-ピラゾル-3-イル)メチル)-1H-ピラゾル-3-アミンを白色固体で得た。
5-p-トリル-N-((5-((5-p-トリル-1H-ピラゾル-3-イル)メチルアミノ)-1H-ピラゾル-3-イル)メチル)-1H-ピラゾル-3-アミン(10mg、0.023mmol)をメタノールHCl(3N、0.5mL)中で再結晶した。固体をろ過し、Et2Oで洗浄し、減圧下で乾燥して、白色固体を得た。融点=167℃。

【0263】
2ak:N-ベンジル-5-((4-(4-クロロフェニル)チアゾル-2-イルアミノ)メチル)チアゾル-2-アミン2塩酸塩の調製

化合物2akを、4-(4-クロロフェニル)チアゾル-2-アミンおよび2-ブロモチアゾール-5-カルボン酸から出発して、2hについて記載したとおりに調製した(31mg、49%)。融点105-106℃。

【0264】
2al:N-ベンジル-5-((4-(チオフェン-2-イル)チアゾル-2-イルアミノ)メチル)チアゾル-2-アミン2塩酸塩の調製

化合物2alを、4-(チオフェン-2-イル)チアゾル-2-アミンおよび2-ブロモチアゾール-5-カルボン酸から出発して、2hについて記載したとおりに調製した(6mg、50%);融点97-99℃。

【0265】
2am:N-ブチル-6-((5-(4-フルオロフェニル)-1H-ピラゾル-3-イルアミノ)メチル)ピリジン-2-アミンの調製

化合物2amを、2sについて記載したとおりに合成した(59%)。融点93-94℃。

【0266】
実施例1
様々な化合物のmilogPおよびTPSA値を表1に示す。milogPおよびTPSA値は、P. Ertl of Novartis Pharma AGによって提供される、ワールドワイドウェブ(http://www.molinspiration.com)上で入手可能なソフトウェアに従って計算することができる。
【0267】
【表1】

【0268】
実施例2:
いくつかの小分子のアミロイドベータ(Aβ)1-42ペプチドの凝集を阻害する能力を、チオフラビンT分光蛍光アッセイを用いて試験した。
【0269】
(Aβ)ペプチドフィルムの調製
Aβ1-42凍結乾燥粉末(Bachem)をヘキサフルオロイソプロパノール(HEIP)中で1mMに再構成した。ペプチド溶液を室温で15分間超音波処理し、終夜撹拌し、一定量を非シリコン処理マイクロ遠心チューブに入れた。次いで、HEIPをアルゴン気流下で蒸発させた。得られたペプチドフィルムを減圧下で10分間乾燥し、密封し、-80℃で使用まで保存した。
【0270】
Aβ1-42凝集の阻害
小分子仲介性のAβ1-42凝集の阻害についてアッセイするために、各実験前に小分子を無水ジメチルスルホキシド(DMSO、Sigma-Aldrich)中、7.4mMの濃度になるまで溶解した。Aβ1-42ペプチドフィルムをDMSO中、400μMに達するまで溶解した。PBS緩衝液中のアッセイ溶液を非シリコン処理インキュベーションチューブ内で以下の濃度になるよう調製した:330μM小分子、33μM Aβ1-42、10μMチオフラビンT(ThT)、および12.8%DMSO。したがって、小分子のAβ1-42に対する最終モル比は10:1であった。最大RFUを測定するために、小分子を含まない陽性対照を調製した。Aβ1-42を含まない陰性対照を各小分子について調製した。3-アミノピラゾールトリマー(Trimer)をすべてのアッセイで試験して、独立の実験の間の再現性を確認した。溶液を37℃で24時間インキュベートし、分光蛍光(相対蛍光単位;RFU)をPerkin-Elmer FluoroCount分光蛍光計により黒色384穴アッセイプレート(Perkin-Elmer)の6重複試料で読み取った。凝集の阻害を以下の式により阻害の平均%または±1標準偏差(SD)で表した:

【0271】
機能性分子の選択のためのカットオフ基準は阻害能力50%と規定した。
【0272】
結果
ThTアッセイにおいて、小分子のAβ1-42の凝集を阻害する能力を試験した。これらの分子の結果を以下の表にまとめている。合成した小分子はすべて、ThTアッセイにおいてAβ1-42の凝集をある程度まで阻害し、試験した分子のいくつかは50%を超える阻害能力を示した。
【0273】
【表2】

*アミロイドβ1-42非存在下での蛍光化合物
表:小分子によるAβ1-42凝集の阻害およびあらかじめ生成したAβ1-42線維の脱凝集
【0274】
小分子のAβ1-42凝集の阻害を仲介する能力を、小分子とAβ1-42のモル比10:1で評価した。結果を2つの独立の実験の平均±標準偏差で表す。
【0275】
実施例3
5nMオレゴングリーン標識AβペプチドによるFCS-アッセイ
化合物の脱凝集特性を分析するために、あらかじめ生成した凝集物を用いたが、これらはFCS測定の前にオレゴングリーン標識Aβ1-42の500nM DMSO保存溶液を脱イオン水で1:1希釈することにより直接誘導した。オレゴングリーン標識Aβペプチドの最終濃度は1×PBSおよび3%DMSO中5nMであった。濃度依存性測定の再現性を改善するために、すべての試料を4重に調製した。
【0276】
表:FCS測定:化合物を加えない対照反応で得た「ピークの数」値のパーセンテージ

nd:実施していない
【0277】
表:FCS測定:化合物を加えない対照反応で得た「ピーク×高さ」値のパーセンテージ

nd:実施していない
【0278】
実施例4
培養した網膜神経節細胞(RGC)アポトーシスに対する本発明の化合物の効果
視覚系の組織における病的異常/変化に関連する、特に、例えばニューロン分解などの視覚系の組織におけるアミロイド-ベータ-関連の病的異常/変化に関連する眼疾患に関連する網膜神経節細胞(RGC)死を低減するための、本発明の化合物のインビトロでの能力を評価するために、ラットおよびマウス由来の培養したRGCを用いる。
【0279】
細胞を分離するために、屠殺時に動物を麻酔し、眼を摘出して、網膜を切除し、これを2mg/mlパパイン溶液中、37℃で25分間インキュベートして細胞外マトリクスを分解する。処理の最後に、細胞をプロテアーゼ阻害剤存在下、RCG培地で3回洗浄してパパインの作用を停止する。次いで、組織をパスツールピペット内を急速に上下に通過させて細胞が分散するまで粉砕する。市販のコールターカウンターを用いて、細胞懸濁液中の細胞密度を測定した後、細胞を95%空気/5%CO2中、37℃で培養する。
視覚系の組織における病的異常/変化に関連する、特に、例えばニューロン分解などの視覚系の組織におけるアミロイド-ベータ-関連の病的異常/変化に関連する眼疾患からの損傷を模擬するため、および本発明の化合物の防止効果を評価するために、細胞をL-グルタミン酸塩と共に本発明の化合物存在下、または非存在下で3日間インキュベートする。緩衝液だけで培養した細胞を対照とする。
【0280】
RGCの生存を調べるために、インキュベーション期間の最後に細胞を、リン酸緩衝化食塩水(PBS)中3.7%ホルムアルデヒドにより室温で30分間固定し、PBS中で3回洗浄し、RGC特異的マーカーのThy 1.1またはNF-L抗体を含むPBS中で1時間インキュベートする。ついで、抗体を洗浄により除去し、細胞を蛍光標識した二次抗体であるヤギ抗マウスIgG、ヤギ抗ウサギIgGまたはウサギ抗ヤギIgGと共に30分間インキュベートする。インキュベーションの最後に、細胞を洗浄し、DAPI溶液で5分間染色し、洗浄する。生存しているRGCを蛍光顕微鏡で計数する。
【0281】
実施例5
インビボでの網膜神経節細胞(RGC)アポトーシスに対する本発明の化合物の効果
視覚系の組織における病的異常/変化に関連する、特に、例えばニューロン分解などの視覚系の組織におけるアミロイド-ベータ-関連の病的異常/変化に関連する眼疾患に罹患している個人の網膜神経節細胞(RGC)死を低減するための、本発明の化合物のインビボでの能力を評価するために、ラットおよびマウスを用いて2から16週間誘導した眼内圧(IOP)試験を行う。網膜神経節細胞死を試験終了時に、インビトロ画像法および組織学的終点分析の両方で測定した。
【0282】
視覚系の組織における病的異常/変化に関連する、特に、例えばニューロン分解、などの視覚系の組織におけるアミロイド-ベータ-関連の病的異常/変化に関連する特定の眼疾患、特に緑内障に関連する眼内圧の上昇を模擬するために、動物をまず腹腔内ケタミン(75mg/kg)およびキシラジン(5mg/kg)と、局所プロパラカイン1%点眼液で麻酔する。次いで、2つのいずれかの方法を用いてラットおよびマウスの一方の眼(一側性)のIOPを人工的に上昇させる。第一の方法では、麻酔した動物の房水流出領域を小柱に垂直、虹彩に平行のスリットランプの532nm半導体レーザーで処理することにより、小柱網にレーザーによる損傷を与える。動物に、サイズ50μm、0.4W、および0.6秒間の40〜50スポットの初期処理を行う。IOPを人工的に上げる第二の方法では、麻酔した動物の一方の眼の強膜上静脈に高張食塩水50μlを、静脈を白くする(blanch)のに十分な力で微細針を用いて注射する。
【0283】
IOPを測定するために、市販の手持ち式眼圧計(Tonopen XL-VET)を用いる。測定は、動物を麻酔下で、レーザー処理の直前、1日後、次いで実験期間中1週間に1回行い、10回の読み取り値の平均とする。1週間の間隔で、動物の両眼のIOPの差が6mmHg未満であれば、その動物はそれ以上試験に含めない。
【0284】
RGCアポトーシスに対する本発明の化合物の防止効果を評価するために、IOP誘導処理を受けた動物の半数に、IOP上昇時に本発明の化合物の硝子体内または静脈内注射を投与する。動物の半数は対照とする。RGCの数を、誘導したIOP上昇の2、4、8および16週間後に、インビボ画像法および組織学的終点分析の両方で測定する。インビボでアポトーシス進行中のRGCの分析を、DARC法により実施する。DARC法は、アポトーシス細胞に特異的に結合する蛍光体結合アネキシン5を動物に硝子体内投与し、インビボでアポトーシス進行中のRCGを可視化する方法である。必要があれば、完全な軸索をもはや持たず、その標的との連結性を失った生存RCGを特定するために、この方法をSCNからの視神経の逆標識(backlabelling)と併せて用いてもよい。
【0285】
加えて、RCGの総数を測定するために、網膜および視神経の終点組織学的分析を屠殺時に行う。動物の網膜を4%パラホルムアルデヒド中で固定し、Thy 1.1、NF-LおよびSMI 32などのRGC特異的マーカー、ならびにアポトーシス進行中の細胞に特異的な抗体を用いて、切片またはホールマウントで染色する。これらの方法のそれぞれにおいて、RGCの総数をIOPの外科的上昇の2、4、および8、ならびに16週間後に測定する。
【0286】
IOP上昇後に視神経に残っているRGC軸索の数を測定するために、動物の視神経を切除し、神経を4%パラホルムアルデヒド中で固定し、切断し、分析のためにトルイジンブルーで染色する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(II)の化合物:

式中

は独立に一重結合または二重結合を意味し;
pは1、2または3であり;
各リンカーKは独立に、1つまたは複数のC1-4アルキル基で置換されていてもよいC1-3アルキレンであり;
各Bは独立に5または6員飽和または不飽和複素環であり、ここで複素環Bは、C1-4アルキル, C1-4アルコキシ、モノ-およびジ-C1-4アルキルアミノ、C3-7シクロアルキルアミノ、ならびに5もしくは6員飽和ヘテロシクリルから選択される1つもしくは複数の置換基で置換されていてもよく、または2つの置換基が一緒になって、複素環Bと縮合する、飽和、不飽和もしくは芳香族5から7員環を形成してもよく、かつここで複素環Bは構成単位VおよびWに加えて、N、NR、SおよびOから選択される1つまたは複数のヘテロ原子を含んでいてもよく、ここでRはHおよびC1-4アルキルから選択され;
各構成単位Wは独立にH結合受容体であり;
各構成単位Vは独立に任意であり、存在する場合には、独立にH結合供与体であり;
R1は-H、-ハロゲン、-C1-4アルキル、-NH2、-NH-C1-4アルキル、-C1-4アルキレン-NH2、-C1-4アルキレン-NH-C1-4アルキル、-アリール、-アリール-R3、-C1-4アルキレン-アリール、-C1-4アルキレン-アリール-R3、-ヘテロアリール、-ヘテロアリール-R3、-NH-C1-4アルキレン-アリール、-NH-C1-4アルキレン-アリール-R3、-OHおよび-O-C1-4アルキルから選択され;かつ
R3はC1-4アルキル、ハロゲン、OHまたはO-C1-4アルキルであり;
R2は-H、-C1-4アルキル、-アリールまたは以下の式の基であり

式中、B、V、WおよびKは前述の定義のとおりであり、qは0または1であり、かつrは0または1である。
【請求項2】
各構成単位Wが独立にNまたはC=Oである、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
各構成単位VがNHである、請求項1または2記載の化合物。
【請求項4】
各リンカーKが-CH2-、-CH2CH2-または-CH2CH2CH2-である、請求項1から3のいずれか一項記載の化合物。
【請求項5】
各複素環Bが置換されていてもよいピラゾリレン、置換されていてもよいピリジニレン、置換されていてもよい2-ピリジノニレン、置換されていてもよい2-ピペリドニレン、置換されていてもよいチアゾリレンおよび置換されていてもよいイソチアゾリレンから独立に選択される、請求項1から4のいずれか一項記載の化合物。
【請求項6】
R1が-H、-CH3、-NH-C1-4アルキルまたは-CH2-NH-CH3である、請求項1から5のいずれか一項記載の化合物。
【請求項7】
R2がHまたはアリールである、請求項1から7のいずれか一項記載の化合物。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項記載の化合物を含む薬学的組成物。
【請求項9】
薬学的に許容される担体または賦形剤をさらに含む、請求項8記載の薬学的組成物。
【請求項10】
アミロイドおよび/またはアミロイド様タンパク質に関連する疾患または状態の治療または予防用の薬剤を調製するための、請求項1から7のいずれか一項記載の化合物の使用。
【請求項11】
疾患が神経障害である、請求項10記載の使用。
【請求項12】
神経障害がアルツハイマー病(AD)、レヴィー小体痴呆(LBD)、ダウン症候群、アミロイド症を伴う遺伝性脳出血(オランダ型)、グアム・パーキンソン痴呆複合または軽度認知障害(MCI)である、請求項11記載の使用。
【請求項13】
神経障害がアルツハイマー病である、請求項12記載の使用。
【請求項14】
疾患が進行性核上性麻痺、多発性硬化症、封入体筋炎(IBM)、クロイツフェルト-ヤコブ病、パーキンソン病、HIV関連痴呆、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、封入体筋炎(IBM)、成人発症型糖尿病、老人性心アミロイド症、内分泌腫瘍、緑内障、眼アミロイド症、原発性網膜変性、黄斑変性(加齢黄斑変性(AMD)など)、視神経ドルーゼン、視神経障害、視神経炎、または格子状ジストロフィである、請求項10記載の使用。
【請求項15】
アミロイドおよび/またはアミロイド様タンパク質に関連する疾患または状態の治療または予防法であって、そのような治療を必要とする被験者に請求項1から7のいずれか一項記載の化合物の有効量を投与する段階を含む方法。
【請求項16】
疾患が神経障害である、請求項15記載の方法。
【請求項17】
神経障害がアルツハイマー病(AD)、レヴィー小体痴呆(LBD)、ダウン症候群、アミロイド症を伴う遺伝性脳出血(オランダ型)、グアム・パーキンソン痴呆複合または軽度認知障害(MCI)である、請求項16記載の方法。
【請求項18】
神経障害がアルツハイマー病である、請求項17記載の方法。
【請求項19】
疾患が進行性核上性麻痺、多発性硬化症、封入体筋炎(IBM)、クロイツフェルト-ヤコブ病、パーキンソン病、HIV関連痴呆、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、封入体筋炎(IBM)、成人発症型糖尿病、老人性心アミロイド症、内分泌腫瘍、緑内障、眼アミロイド症、原発性網膜変性、黄斑変性(加齢黄斑変性(AMD)など)、視神経ドルーゼン、視神経障害、視神経炎、または格子状ジストロフィである、請求項15記載の方法。
【請求項20】
アミロイドおよび/またはアミロイド様タンパク質に関連する疾患または状態を治療または予防するための、請求項1から7のいずれか一項記載の化合物。
【請求項21】
疾患が神経障害である、請求項10記載の化合物。
【請求項22】
神経障害がアルツハイマー病(AD)、レヴィー小体痴呆(LBD)、ダウン症候群、アミロイド症を伴う遺伝性脳出血(オランダ型)、グアム・パーキンソン痴呆複合または軽度認知障害(MCI)である、請求項11記載の化合物。
【請求項23】
神経障害がアルツハイマー病である、請求項12記載の化合物。
【請求項24】
疾患が進行性核上性麻痺、多発性硬化症、封入体筋炎(IBM)、クロイツフェルト-ヤコブ病、パーキンソン病、HIV関連痴呆、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、封入体筋炎(IBM)、成人発症型糖尿病、老人性心アミロイド症、内分泌腫瘍、緑内障、眼アミロイド症、原発性網膜変性、黄斑変性(加齢黄斑変性(AMD)など)、視神経ドルーゼン、視神経障害、視神経炎、または格子状ジストロフィである、請求項10記載の化合物。
【請求項25】
請求項1から7のいずれか一項記載の化合物と、任意に少なくとも1つのさらなる生物活性化合物ならびに/または薬学的に許容される担体および/もしくは希釈剤および/もしくは賦形剤とを含む混合物。
【請求項26】
さらなる生物活性化合物がアミロイド症の治療において用いられる化合物である、請求項25記載の混合物。
【請求項27】
さらなる生物活性化合物が抗体、ワクチン、酸化ストレスに対する化合物、抗アポトーシス化合物、金属キレート化剤、ピレンゼピンおよび代謝物などのDNA修復の阻害剤、3-アミノ-1-プロパンスルホン酸(3APS)、1,3-プロパンジスルホネート(1,3PDS)、α-セクレターゼ活性化剤、β-およびγ-セクレターゼ阻害剤、タウタンパク質、神経伝達物質、βシート破壊剤、アミロイドベータ排出/枯渇細胞成分の誘引剤、ピログルタミン酸化アミロイドベータ3-42を含むN末端切断型アミロイドベータの阻害剤、抗炎症分子、またはタクリン、リバスチグミン、ドネペジル、および/もしくはガランタミンなどのコリンエステラーゼ阻害剤(ChEI)、M1アゴニストならびに任意のアミロイドまたはタウ修飾薬および栄養補助剤を含む他の薬物からなる群より選択される、請求項25または26記載の混合物。
【請求項28】
さらなる生物活性化合物がコリンエステラーゼ阻害剤(ChEI)である、請求項27記載の混合物。
【請求項29】
さらなる生物活性化合物がタクリン、リバスチグミン、ドネペジル、ガランタミン、ナイアシンおよびメマンチンからなる群より選択される、請求項27記載の混合物。
【請求項30】
さらなる生物活性化合物が、任意の機能的に等価の抗体またはその機能的部分を含む抗体、特にモノクローナル抗体である、請求項25記載の混合物。
【請求項31】
任意の機能的に等価の抗体またはその機能的部分を含む抗体、特にモノクローナル抗体がアミロイドβに結合する抗体である、請求項30記載の混合物。
【請求項32】
任意の機能的に等価の抗体またはその機能的部分を含む抗体、特にモノクローナル抗体が、アミロイドモノマーおよび/またはポリマー性可溶性アミロイドペプチド、特に、例えば、Aβモノマーペプチド1-39;1-40、1-41、もしくは1-42などのβ-アミロイドモノマーペプチド、および/または複数のAβモノマー単位を含むポリマー性可溶性β-アミロイドペプチドであるが、特にAβ1-42モノマーおよび/または複数のAβ1-42モノマー単位を含むAβポリマー性可溶性アミロイドペプチドと共にインキュベートした後、Aβモノマーの高分子量ポリマー原線維またはフィラメントへの凝集を阻害し、加えて、アミロイドモノマーペプチド、特に、例えば、Aβモノマーペプチド1-39;1-40、1-41、または1-42などのβ-アミロイドモノマーペプチドであるが、特にAβ1-42モノマーペプチドの凝集により形成される、あらかじめ形成された高分子量ポリマーアミロイド原線維またはフィラメントと共にインキュベートした後、あらかじめ形成されたポリマー原線維またはフィラメントを脱凝集することができる抗体である、請求項30または31記載の混合物。
【請求項33】
抗体がキメラ抗体もしくはその機能的部分、またはヒト化抗体もしくはその機能的部分である、請求項30記載の混合物。
【請求項34】
抗体が以下のハイブリドーマ細胞株によって産生される抗体の特徴的性質を有する抗体群から選択されるモノクローナル抗体である、請求項30記載の混合物:
a)2005年12月01日および2005年12月09日にそれぞれDSM ACC2752として寄託されたFP 12H3;
b)2005年12月01日および2005年12月09日にそれぞれDSM ACC2750として寄託されたFP 12H3-C2;
c)2005年12月01日および2005年12月09日にそれぞれDSM ACC2751として寄託されたFP 12H3-G2;
d)2005年12月08日にDSM ACC2755として寄託されたET 7E3;ならびに
e)2005年12月08日にDSM ACC2756として寄託されたEJ 7H3。
【請求項35】
抗体が以下のハイブリドーマ細胞株によって産生される抗体群から選択されるモノクローナル抗体である、請求項30記載の混合物:
a)2005年12月01日および2005年12月09日にそれぞれDSM ACC2752として寄託されたFP 12H3;
b)2005年12月01日および2005年12月09日にそれぞれDSM ACC2750として寄託されたFP 12H3-C2;
c)2005年12月01日および2005年12月09日にそれぞれDSM ACC2751として寄託されたFP 12H3-G2;
d)2005年12月08日にDSM ACC2755として寄託されたET 7E3;ならびに
e)2005年12月08日にDSM ACC2756として寄託されたEJ 7H3。
【請求項36】
抗体が国際特許出願第PCT/US2007/073504号の配列番号:2および配列番号:4に示される軽鎖および重鎖を提示するヒト化抗体である、請求項30記載の混合物。
【請求項37】
抗体が国際特許出願第PCT/US2007/073504号の配列番号:1および配列番号:3に示される軽鎖可変領域および重鎖可変領域を提示するヒト化抗体である、請求項30記載の混合物。
【請求項38】
さらなる生物活性化合物が、AβペプチドのN末端部からの複数の近接アミノ酸残基の単一または反復伸長、特に13から15の間の近接アミノ酸残基の伸長からなるAβ抗原性ペプチド断片である、請求項25記載の混合物。
【請求項39】
Aβ抗原性ペプチド断片がAβ1-15ペプチド抗原である、請求項38記載の混合物。
【請求項40】
1-15ペプチド抗原が、リポソーム中で再構成されるペプチドの各末端で、共有結合したパルミトイル残基、特に2から4の間、より特に4残基によって修飾されているパルミトイル化Aβ1-15ペプチド抗原である、請求項38記載の混合物。
【請求項41】
化合物および/またはさらなる生物活性化合物が治療上有効な量で存在する、請求項25から40のいずれか一項記載の混合物。
【請求項42】
試料または患者におけるアミロイド関連疾患または状態の診断のためのデータ収集法であって、以下の段階を含む方法:
(a)アミロイドタンパク質を含むことが疑われる試料または特定の体部分もしくは体領域を請求項1から7のいずれか一項記載の化合物と接触させる段階;
(b)化合物をアミロイドタンパク質に結合させる段階;
(c)タンパク質に結合した化合物を検出する段階;および
(d)任意にアミロイドタンパク質と結合する化合物の有無を試料または特定の体部分もしくは体領域におけるアミロイドタンパク質の有無と相関づける段階。
【請求項43】
組織および/または体液におけるアミロイド形成斑負荷量の程度を定量する方法であって、以下の段階を含む方法:
(a)調査中の組織および/または体液の代表試料を提供する段階;
(b)請求項1から7のいずれか一項記載の化合物によりアミロイドタンパク質の存在について試料を試験する段階;
(c)アミロイドタンパク質に結合した化合物の量を定量する段階;および
(d)組織および/または体液における斑負荷量を計算する段階。
【請求項44】
段階(c)における定量をアミロイドタンパク質と結合する化合物の有無がアミロイドタンパク質の有無と相関するように行う、請求項43記載の方法。
【請求項45】
試料中またはインサイチューで請求項1から7のいずれか一項記載の化合物のアミロイドタンパク質への特異的結合を検出する段階を含む、患者におけるアミロイド関連疾患または状態に対する素因を調べるためのデータの収集法であって、以下の段階を含む方法:
(a)アミロイドタンパク質を含むことが疑われる試料または特定の体部分もしくは体領域を、アミロイドタンパク質に特異的に結合する請求項1から7のいずれか一項記載の化合物と接触させる段階;
(b)化合物をアミロイドタンパク質に結合させて、化合物/タンパク質複合体を形成する段階;
(c)化合物/タンパク質複合体の形成を検出する段階;
(d)任意に化合物/タンパク質複合体の有無を試料または特定の体部分もしくは体領域におけるアミロイドタンパク質の有無と相関づける段階:および
(e)任意に化合物/タンパク質複合体の量を通常の対照値と比較する段階。
【請求項46】
抗体またはワクチン組成物での治療後に患者におけるわずかな残留疾患をモニターするためのデータの収集法であって、以下の段階を含む方法:
(a)アミロイドタンパク質を含むことが疑われる試料または特定の体部分もしくは体領域を、アミロイドタンパク質に特異的に結合する請求項1から7のいずれか一項記載の化合物と接触させる段階;
(b)化合物をアミロイドタンパク質に結合させて、化合物/タンパク質複合体を形成する段階;
(c)化合物/タンパク質複合体の形成を検出する段階;
(d)任意に化合物/タンパク質複合体の有無を試料または特定の体部分もしくは体領域におけるアミロイドタンパク質の有無と相関づける段階:および
(e)任意に化合物/タンパク質複合体の量を通常の対照値と比較する段階。
【請求項47】
抗体またはワクチン組成物で治療中の患者の反応性を予測するためのデータの収集法であって、以下の段階を含む方法:
(a)アミロイドタンパク質を含むことが疑われる試料または特定の体部分もしくは体領域を、アミロイドタンパク質に特異的に結合する請求項1から7のいずれか一項記載の化合物と接触させる段階;
(b)化合物をアミロイドタンパク質に結合させて、化合物/タンパク質複合体を形成する段階;
(c)化合物/タンパク質複合体の形成を検出する段階;
(d)任意に化合物/タンパク質複合体の有無を試料または特定の体部分もしくは体領域におけるアミロイドタンパク質の有無と相関づける段階:および
(e)任意に化合物/タンパク質複合体の量を通常の対照値と比較する段階。
【請求項48】
請求項1から7のいずれか一項記載の化合物を含む、アミロイド関連疾患または状態の検出および/または診断のための試験キット。
【請求項49】
化合物/タンパク質複合体の有無がアミロイドタンパク質の有無と相関するように、アミロイドタンパク質に結合させて化合物/タンパク質複合体を形成するため、および化合物/タンパク質複合体の形成を検出するための、請求項1から7のいずれか一項記載の1つまたは複数の化合物を保持する容器および化合物を使用するための説明書を含む、請求項48記載の試験キット。
【請求項50】
視覚系の組織における病的異常/変化に関連する、特に視覚系の組織におけるアミロイド-ベータ-関連の病的異常/変化に関連する眼疾患または状態を治療する、または予防するための薬剤を調製するための、請求項1から7のいずれか一項記載の化合物の使用。
【請求項51】
眼疾患または状態がニューロン分解、皮質性視力欠損、緑内障、ベータ-アミロイド沈着による白内障、眼アミロイド症、原発性網膜変性、黄斑変性、例えば、加齢黄斑変性、視神経ドルーゼン、視神経障害、視神経炎、および格子状ジストロフィからなる群より選択される、請求項50記載の使用。
【請求項52】
視覚系の組織における病的異常/変化に関連する、特に視覚系の組織におけるアミロイド-ベータ-関連の病的異常/変化に関連する眼疾患または状態を治療する、または予防する方法であって、そのような治療を必要とする被験者に請求項1から7のいずれか一項記載の化合物の有効量を投与する段階を含む方法。
【請求項53】
眼疾患または状態がニューロン分解、皮質性視力欠損、緑内障、ベータ-アミロイド沈着による白内障、眼アミロイド症、原発性網膜変性、黄斑変性、例えば、加齢黄斑変性、視神経ドルーゼン、視神経障害、視神経炎、および格子状ジストロフィからなる群より選択される、請求項52記載の方法。
【請求項54】
視覚系の組織における病的異常/変化に関連する、特に視覚系の組織におけるアミロイド-ベータ-関連の病的異常/変化に関連する眼疾患または状態を治療する、または予防するための、請求項1から7のいずれか一項記載の化合物。
【請求項55】
眼疾患または状態がニューロン分解、皮質性視力欠損、緑内障、ベータ-アミロイド沈着による白内障、眼アミロイド症、原発性網膜変性、黄斑変性、例えば、加齢黄斑変性、視神経ドルーゼン、視神経障害、視神経炎、および格子状ジストロフィからなる群より選択される、請求項54記載の化合物。

【公表番号】特表2010−510272(P2010−510272A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−537556(P2009−537556)
【出願日】平成19年11月23日(2007.11.23)
【国際出願番号】PCT/EP2007/010219
【国際公開番号】WO2008/061795
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(506027491)エーシー イミューン ソシエテ アノニム (14)
【Fターム(参考)】